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検察官による証人等の氏名等の開示に係る措置に関する裁定決定に対する即時抗告棄却決定に対する特別抗告事件
事件番号平成30(し)170
事件名検察官による証人等の氏名等の開示に係る措置に関する裁定決定に対する即時抗告棄却決定に対する特別抗告事件
裁判年月日平成30年7月3日
法廷名最高裁判所第二小法廷
裁判種別決定
結果棄却
原審裁判所名大阪高等裁判所
原審事件番号平成30(く)62
原審裁判年月日平成30年3月22日
判示事項刑訴法299条の4,299条の5と憲法37条2項前段
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平成30年(し)第170号検察官による証人等の氏名等の開示に係る措置に関する裁定決定に対する即時抗告棄却決定に対する特別抗告事件
平成30年7月3日第二小法廷決定

主文
本件抗告を棄却する
理1由
本件抗告の趣意のうち,刑訴法299条の4,299条の5は,憲法37条
2項前段に違反する旨の主張について
(1)

刑訴法299条の4は,検察官が,証人,鑑定人,通訳人又は翻訳人(以
下「証人等」という。)の尋問を請求するに際し,相手方に対し,証人等の氏名及び住居を知る機会を与えるべき場合において,証人等又はその親族に対する加害行為等のおそれがあるときには,被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがある場合を除き,1項において,弁護人にその証人等の氏名及び住居を知る機会を与えた上でこれらを被告人に知らせてはならない旨の条件を付す等の措置(以下「条件付与等措置」という。)をとることができるとし,2項において,条件付与等措置によっては加害行為等を防止できないおそれがあるときには,被告人及び弁護人に対し,その証人等の氏名又は住居を知る機会を与えず,証人等の氏名に代わる呼称,住居に代わる連絡先を知る機会を与える措置(以下「代替開示措置」という。)をとることができるなどとするものである。
(2)

刑訴法299条の5は,1項において,被告人又は弁護人は,検察官のと
った措置に不服があるとき,裁判所に対して裁定請求をすることができるとし,3項において,裁判所は,裁定請求について決定をするとき,検察官の意見を聴かなければならないとし,4項において,裁判所の決定に不服があるとき,即時抗告をすることができるなどとするものである。
(3)

条件付与等措置及び代替開示措置は,証人等又はその親族に対する加害行
為等のおそれがある場合に,弁護人に対し証人等の氏名及び住居を知る機会を与えた上で一定の事項が被告人その他の者に知られないようにすることを求めることなどでは,証人等の安全を確保し,証人等が公判審理において供述する負担を軽減することが困難な場合があることから,加害行為等を防止するとともに,証人等の安全を確保し,証人等が公判審理において供述する負担を軽減し,より充実した公判審理の実現を図るために設けられた措置であると解される。このうち,代替開示措置については,検察官が,被告人及び弁護人に対し,証人等の氏名又は住居を知る機会を与えなかったとしても,それにより直ちに被告人の防御に不利益を生ずることとなるわけではなく,被告人及び弁護人は,代替的な呼称又は連絡先を知る機会を与えられることや,証人等の供述録取書の取調べ請求に際してその閲覧の機会が与えられることその他の措置により,証人等と被告人その他の関係者との利害関係の有無を確かめ,予想される証人等の供述の証明力を事前に検討することができる場合があり,被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがないこととなる場合があるということができる。
(4)

しかしながら,検察官は,被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれ
があるときには,条件付与等措置も代替開示措置もとることができない。さらに,検察官は,条件付与等措置によっては加害行為等を防止できないおそれがあるときに限り代替開示措置をとることができる。裁判所は,検察官が条件付与等措置若しくは代替開示措置をとった場合において,加害行為等のおそれがないとき,被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるとき,又は検察官が代替開示措置をとった場合において,条件付与等措置によって加害行為等を防止できるときは,被告人又は弁護人の裁定請求により,決定で,検察官がとった措置の全部又は一部を取り消さなければならない。裁定請求があった場合には,検察官は,裁判所からの意見聴取において,刑訴法299条の5第1項各号に該当しないことを明らかにしなければならず,裁判所は,必要なときには,更に被告人又は弁護人の主張を聴くなどすることができるということができる。そして,裁判所の決定に対しては,即時抗告をすることができる。これらに鑑みれば,刑訴法299条の4,299条の5は,被告人の証人審問権を侵害するものではなく,憲法37条2項前段に違反しないというべきである。
(5)

以上のように解すべきことは,当裁判所の判例(最高裁昭和23年(れ)
第833号同24年5月18日大法廷判決・刑集3巻6号789頁,最高裁昭和23年(れ)第1069号同25年9月27日大法廷判決・刑集4巻9号1774頁,最高裁昭和26年(あ)第2357号同27年4月9日大法廷判決・刑集6巻4号584頁)の趣旨に徴して明らかである。
2
その余の主張について

刑訴法299条の5の憲法37条1項違反をいう点は,刑訴法299条の5は,所論のいうように受訴裁判所の裁判官に係属中の被告事件について予断を抱かせるものではないから(最高裁昭和24年新(れ)第104号同25年4月12日大法廷判決・刑集4巻4号535頁参照),前提を欠き,その余は単なる法令違反の主張であって,いずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない。
3
よって,刑訴法434条,426条1項により,裁判官全員一致の意見で,
主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官

山本庸幸

裁判官

鬼丸かおる
裁判官

菅野博之)

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