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特許権侵害による損害賠償債務不存在確認等請求事件 特許権 民事訴訟
事件番号平成29(ワ)28060
事件名特許権侵害による損害賠償債務不存在確認等請求事件
裁判年月日平成30年6月28日
法廷名東京地方裁判所
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平成30年6月28日判決言渡

同日原本領収

平成29年(ワ)第28060号
口頭弁論終結日

裁判所書記官

特許権侵害による損害賠償債務不存在確認等請求事件

平成30年4月27日
判決原告
株式会社ヒラノテクシード

同訴訟代理人弁護士

中康之青海利之飯井島奈絵
同補助参加人
エスケーシー

コーロン

インコーポレイテッド

上康山康文藤未来村上遼塩越希門被裕後田城
同訴訟代理人弁護士

ピーアイ

口株
同訴訟代理人弁護士

平野惠稔黒田佑輝
手代

会木社カ人告式正ネカ啓主文1
本件訴えを却下する。

2
訴訟費用は,補助参加により生じた費用は原告補助参加人の負担とし,その余は原告の負担とする。

第1
1実及び理由
請求
被告が,原告及び原告補助参加人に対し,原告が原告補助参加人に別紙1機械装置目録記載の各機械装置を製造販売し,原告補助参加人が上記各機械装置を使用して別紙2製品目録記載の各製品を製造販売したことにより,別紙3特許権目録記載の各特許権を侵害したことを理由とする不法行為に基づく損害賠
償請求権を有しないことを確認する。
2
原告が平成5年12月2日から現在に至るまで被告との間で締結した特許実施許諾契約に基づき原告補助参加人に対して別紙1機械装置目録記載の各機械装置を使用させることができる地位にあったことを確認する。

第2

事案の概要
本件は,発明の名称を「樹脂フィルムの連続製造方法及び装置及び設備」とする別紙3特許権目録記載の各特許権(以下,「本件各特許権」といい,このうち同目録記載2の特許権を「本件米国特許権」という。)を有していた被告から独占的通常実施権の許諾を受けて,別紙1機械装置目録記載の各機械装置
(以下「本件各機械装置」という。)を製造し原告補助参加人に販売した原告が,被告に対し,①原告が原告補助参加人に本件各機械装置を製造販売し,原告補助参加人が本件各機械装置を使用して別紙2製品目録記載の各製品(以下「本件各製品」という。)を製造販売したことにつき,被告が原告及び原告補助参加人に対して本件各特許権の侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償
請求権(以下「本件損害賠償請求権」という。)を有しないことの確認を求める(以下「本件不存在確認請求」という。)とともに,②原告が上記通常実施権の許諾時から現在に至るまで原告補助参加人に対して本件各機械装置を使用させることができる地位にあったことの確認を求める(以下「本件地位確認請求」という。)事案である。
被告は,本件不存在確認請求及び本件地位確認請求に係る訴えはいずれも確認の利益がなく不適法であるとして,本件訴えを却下するとの判決を求めた。
1
前提事実(後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)⑴

被告は,平成5年12月当時,本件各特許権を有していたが,いずれも平成22年までに存続期間の満了により消滅している。(甲1,2)被告は,平成5年12月2日付けで,原告に対し,本件各特許権につき独
占的通常実施権を許諾した(以下,「本件実施許諾契約」といい,これによる通常実施権を「本件通常実施権」という。)。(甲3)
原告は,本件通常実施権の許諾後,本件各機械装置を製造し,平成17年3月頃から平成20年2月頃までの間,被告の競合会社である原告補助参加人(ただし,当時はその前身であるコーロン

レイテッド及びエスケーシー

カンパニー

インダストリー

インコーポ

リミテッド)に対して本件各機

械装置を販売した。
原告補助参加人は,平成20年4月頃以降,韓国内において本件各機械装置を使用して本件各製品を製造し,日本及びアメリカ合衆国(以下「米国」という。)に輸出した。
また,原告補助参加人が韓国内で販売した本件各製品の一部は,部材とし
て携帯電話製品に組み込まれて,米国に輸出された。

被告は,平成22年7月,本件実施許諾契約には原告が本件通常実施権に基づき製造した樹脂フィルムの製造機械装置を被告の競合会社に販売することを禁止する特約(以下「販売禁止特約」という。)が付されており,
原告補助参加人による本件各製品の製造販売は本件米国特許権を侵害するものであるとして,原告補助参加人に対して損害賠償を求める訴訟を米国テキサス州東部地区連邦地方裁判所(その後,米国カリフォルニア州中部地区連邦地方裁判所に移送)に提起した(以下「別件米国訴訟」という。)。(甲13)

米国カリフォルニア州中部地区連邦地方裁判所は,平成29年5月24日,別件米国訴訟において,原告補助参加人による本件各製品の製造販売
は本件米国特許権を侵害するものであるなどとして,原告補助参加人に対して損害賠償を命ずる判決をした。(乙1)
被告は,現在まで,原告に対して本件損害賠償請求権を主張し,又はこれを行使したことはない。また,被告は,平成30年4月27日の本件第4回弁論準備手続期日において,原告に対して本件損害賠償請求権を将来にわた
って主張及び行使しない旨の一部和解に応じられる旨述べた(これに対し,原告は,そのような一部和解には応じられないと述べた。)。
2
当事者の主張

(原告の主張)
本件不存在確認請求の確認の利益について

本件実施許諾契約には販売禁止特約が付されていないにもかかわらず,被告が別件米国訴訟において本件実施許諾契約には販売禁止特約が付されている旨主張し,原告補助参加人に対して本件米国特許権の侵害に基づく損害賠償を求めていることにより,原告は,本件通常実施権を侵害され,その法的地位が危険にさらされている。
この危険を除去するには,原告と被告と原告補助参加人との間で生じている紛争の原因である販売禁止特約の有無を確定することにより,上記紛争を抜本的かつ一挙的に解決する必要があるから,被告が原告及び原告補助参加人に対して本件損害賠償請求権を有しないことを確認する必要がある。本件地位確認請求の確認の利益について


本件地位確認請求は,①原告補助参加人による本件各製品の製造販売が本件各特許権を侵害しないこと,②被告が別件米国訴訟において本件実施許諾契約には販売禁止特約が付されている旨主張し,原告補助参加人に対して損害賠償を求めていることにより,本件通常実施権を侵害していること,③被告が今後,本件実施許諾契約に販売禁止特約が付されている旨主張すると本件通常実施権を侵害することになること,以上を確定するため,
原告が現在,本件通常実施権に基づき原告補助参加人に対して本件各機械装置を使用させることができる地位にあることの確認を求めるものである。イ
また,本件地位確認請求が,原告が過去において上記地位にあったことを確認するものであるとしても,それにより紛争を抜本的に解決することができるから,確認の利益がある。

(被告の主張)
本件不存在確認請求の確認の利益について

原告に対する本件損害賠償請求権の不存在確認を求める部分
被告は,原告に対して,本件損害賠償請求権を行使したことも,行使する意思を示したこともなく,将来において行使する意向もないから,
被告が原告に対して本件損害賠償請求権を有しないことを即時に確定する利益があるとは認められない。
原告は,被告が原告補助参加人に対して別件米国訴訟を提起したことのみをもって確認の利益がある旨主張するが,特許権者が競合他社に対して特許権侵害に基づく損害賠償請求訴訟を提起したからといって,直
ちに当該競合他社の上流又は下流に位置する他の企業に対する権利行使をするおそれが生ずるものでないから,原告の上記主張は不当である。イ
原告補助参加人に対する本件損害賠償請求権の不存在確認を求める部分被告が別件米国訴訟において原告補助参加人に対して損害賠償を求めて
いることにより原告と原告補助参加人との間で生ずる紛争は,原告補助参加人が原告に対して求償権を有するか否かであり,この紛争を解決するためには,原告補助参加人に対して上記求償権の不存在確認を求める訴訟を提起することがより直截的であり,紛争解決の実効性が高い。
原告補助参加人に対する本件損害賠償請求権の不存在確認を求める部分について認容する判決が確定したとしても,その既判力は原告補助参加人には及ばず,被告の原告補助参加人に対する本件損害賠償請求権の不存在
や原告補助参加人の原告に対する求償権の不存在が,被告と原告補助参加人との間,あるいは原告と原告補助参加人との間で確定することはないから,原告が原告補助参加人から求償されるおそれを払拭することはできない。
したがって,被告が原告補助参加人に対して本件損害賠償請求権を有し
ないことを確認する利益がない。
本件地位確認請求の確認の利益について

本件地位確認請求のうち,原告が過去のある時点において原告補助参加人に対して本件各機械装置を製造販売しても本件各特許権を侵害しないという地位にあったことの確認を求める部分については,被告が当該時点に
おける原告の侵害行為を主張している場合には,その侵害行為を理由とする現在の損害賠償請求権の不存在を確認すべきであるから,確認の利益がない。

また,原告が現時点において前記地位にあることの確認を求める部分については,本件各特許権がその存続期間の満了によりいずれも消滅してお
り,被告も,原告が現時点において本件各特許権を侵害しているなどといった主張をしたことはなく,そのような主張をする意向もないから,確認の利益がない。
第3
1
当裁判所の判断
本件不存在確認請求の確認の利益の有無について
前記前提事実

アのとおり,被告は,別件米国訴訟において,本件実施許諾契約には販売禁止特約が付されており,原告補助参加人による本件各製品の製造販売が本件米国特許権の侵害に当たる旨主張しているところ,この主張を前提にすれば,被告は,原告補助参加人に本件各機械装置を製造販売した原告に対しても,販売禁止特約に違反して本件各特許権を侵害したとして,損害賠償を求め得ることになる。
しかしながら,

被告は,本件訴訟の提起前に,

原告に対して本件損害賠償請求権を主張し,又はこれを行使したことはない上,平成30年4月27日の本件第4回弁論準備手続期日において,原告に対して本件損害賠償請求権を将来にわたって主張及び行使しない旨の一部和解に応じられる旨述べているのであるから,被告が原告に対して本件損害賠償請求権を行使するおそれが現に存在するとは認められない。
したがって,本件不存在確認請求のうち,原告に対する本件損害賠償請求権が存在しないことの確認を求める部分については,即時に確定する必要があるとはいえず,確認の利益は認められない。

また,別件米国訴訟において原告補助参加人に対して損害の賠償を命ずる判決が確定し,原告補助参加人が被告に対してその損害を賠償した場合には,原告が原告補助参加人から求償されるおそれがあることは否定し難いものの,本件の当事者である原告と被告との間において,被告の原告補助参加人に対する本件損害賠償請求権が存在しないことを確認する判決が確定したとして
も,その判決の既判力は原告と原告補助参加人との間には及ばないから,原告が原告補助参加人から求償されるおそれを除去することはできない。したがって,本件不存在確認請求のうち,原告補助参加人に対する本件損害賠償請求権が存在しないことの確認を求める部分についても,確認の利益は認められない。

これに対し,原告は,原告と被告と原告補助参加人との間で生じている紛争を抜本的かつ一挙的に解決するため,その紛争の原因である販売禁止特約の有無を確定する必要がある旨主張する。しかしながら,被告が原告及び原告補助参加人に対して本件損害賠償請求権を有しないことを確認する判決が確定したとしても,そもそも販売禁止特約の有無の判断は判決理由中で示されるにすぎず,その判断に既判力は生じない(なお,本件の当事者ではない原告補助参加人に既判力が及ばないこと
も,前記のとおりである。)から,原告が主張する上記事情は,被告が原告及び原告補助参加人に対して本件損害賠償請求権を有しないことを確認する利益の有無についての上記判断を左右しない。
以上によれば,本件不存在確認請求に係る訴えには確認の利益が認められない。

2
本件地位確認請求の確認の利益の有無について
本件地位確認請求の趣旨は,「原告が平成5年12月2日から現在に至るまで本件実施許諾契約に基づき原告補助参加人に対して本件各機械装置を使用させることができる地位にあったこと」の確認を求める旨であるから,本
件地位確認請求は,過去の法律上の地位の確認と現在の法律上の地位の確認の両者を求めるものであると解される。
そこで確認の利益の有無について検討すると,本件地位確認請求のうち過
り,被告が原告に対して本件損害賠償請求権を行使するおそれが現に存在するとは認められない以上,上記地位を即時に確定する必要があるとは認められない。
また,現在の法律上の地位の確認を求める部分についても,前記前提事実のとおり,本件各特許権は既に存続期間の満了により全て消滅しているのであるから,被告が,本件各機械装置の現在における使用が本件各特許権の
侵害に当たるなどと主張することは考えられない(被告もそのような主張をする意向はないと述べている。)から,これについても,上記地位を即時に確定する必要があるとは認められない。以上によれば,本件地位確認請求に係る訴えにも確認の利益が認められない。
3
結論
よって,本件訴えは,確認の利益が認められず不適法なものであるから,これを却下することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第47部

裁判長裁判官

沖中康人
裁判官

横山真通
裁判官

髙櫻慎

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