判例検索β > 平成29年(行ケ)第10213号
審決取消請求事件 特許権 行政訴訟
事件番号平成29(行ケ)10213
事件名審決取消請求事件
裁判年月日平成30年9月10日
法廷名知的財産高等裁判所
裁判要旨特 判決年月日 平成30年9月10日 担
許 当 知財高裁第2部
権 部
事 件 番 号 平成29年(行ケ)第10213号
○ 特許法159条2項により読み替えて準用される同法50条ただし書に当たる場合
であっても,特許出願に対する審査・審判手続の具体的経過に照らし,出願人の防御の
機会が実質的に保障されていないと認められるようなときには,同法159条2項によ
り準用される同法50条本文に基づき拒絶理由通知をしなければならず,しないことが
違法になる場合もあり得る。
○ 拒絶査定の理由が拡大先願(特許法29条の2)であるところ,刊行物 に基づく 新
規性欠如(同法29条1項3号)及び進歩性欠如(同条2項) を理由として, 拒絶理由
通知をすることなく拒絶査定不服審判請求と同時にした限定的減縮を目的とする補正を
却下し,同請求を不成立とした審決には,特許法159条2項により準用される同法5
0条本文所定の手続を怠った違法があるとされた事例。
○ 発明の名称を「スロットマシン」とする発明について, 審決には, 相違点の看過が
あり,その相違点が容易想到であるとも認められない から,新規性及び進歩性の判断に
誤りがあるとされた事例。
(事件類型)審決(拒絶)取消 (結論)審決取消
(関連条文)特許法159条1項,2項,50条,53条1項,17条の2第1項3号,
4号,第5項2号,第6項,126条7項,29条1項3号・2項
(関連する権利番号等)特願2014-224539号,不服2016-18811号,
特開2008-284231号,特願2010-194145号
判 決 要 旨
1 本件は,発明の名称を「スロットマシン」とする本願発明についての拒絶査定不服審
判請求不成立審決に対する取消訴訟である。
原告は,拒絶査定不服審判請求と同時に本件補正をしたが,審決は,本件補正後の特許
請求の範囲の請求項1記載の発明(以下「本願補正発明」という。)は刊行物1記載の引
用発明1又は引用発明2と同一であり,仮に相違する点があるとしても,引用発明1又は
引用発明2から当業者が容易に想到し得たなどとして,本件補正を却下し,拒絶査定不服
審判請求を不成立とした。
原告は,取消事由として,①本件補正の却下に当たり刊行物1に基づく拒絶理由通知を
行わなかったことによる手続違背,②独立特許要件違反の判断(新規性・進歩性判断)の
誤りを主張した。
2 本判決は,以下のとおり判示して審決を取り消した。
(1) 取消事由1(拒絶理由通知欠缺による手続違背)について
-1-
ア 特許法50条本文は,同法159条2項により拒絶査定不服審判において査定の
理由と異なる拒絶の理由(以下「新拒絶理由」という。)を発見した場合に準用されてお
り,出願人の防御の機会の保障という趣旨は,拒絶査定不服審判において新拒絶理由が発
見された場合にも及ぶものである。
また,従前の拒絶理由通知に示されていなかった新たな刊行物(以下「新規引用文献」
という。)に基づく独立特許要件違反を理由として,拒絶査定不服審判請求時に行われる
補正(以下「審判請求時補正」という。)が却下され,補正前の特許請求の範囲の記載(以
下「補正前クレーム」という。)に基づいて拒絶査定不服審判請求不成立審決がされてし
まうと,審決取消訴訟において補正後の特許請求の範囲の記載(以下「補正後クレーム」
という。)に基づく独立特許要件違反の判断の当否や補正前クレームに基づく拒絶理由の
判断の当否を争うことはできるものの,審査段階における特許法17条の2第1項3号所
定の補正の場合とは異なり,新規引用文献に基づく拒絶理由を回避するための補正をする
機会が残されていない点において,出願人にはより過酷である。
さらに,平成5年法律第26号による特許法の改正(以下「平成5年改正」という。)
は,特許法17条の2第5項2号所定の特許請求の範囲の減縮(以下「限定的減縮」とい
う。)を目的とする審判請求時補正においては,審査段階における先行技術調査の結果を
利用することを想定していたことが明らかであり,これを却下する際に,独立特許要件の
判断において,審査段階において提示されていなかった新規引用文献を主たる引用例とす
るなど,審査段階において全く想定されていなかった判断をすることは,平成5年改正の
本来の趣旨に沿わないものということができる。
加えて,平成5年改正が目的とする審理が繰り返し行われることを回避することにより,
審査・審判全体の効率性を図ることは,重要ではあるが,新規引用文献に基づく独立特許
要件違反を理由として審判請求時補正を却下せずに,この新規引用文献に基づく拒絶理由
を通知したとしても,限定的減縮である審判請求時補正による補正後クレームについて,
特許法17条の2第3項~6項による制限の範囲内で補正することができるにすぎないか
ら,審理の対象が大きく変更されることは考え難く,そのような審理の繰返しを避けるべ
き強い理由があるとはいえない。
以上の諸点を考慮すると,特許法159条2項により読み替えて準用される同法50条
ただし書に当たる場合であっても,特許出願に対する審査・審判手続の具体的経過に照ら
し,出願人の防御の機会が実質的に保障されていないと認められるようなときには,同法
159条2項により準用される同法50条本文に基づき拒絶理由通知をしなければなら
ず,しないことが違法になる場合もあり得るというべきである。
イ 本件拒絶査定の理由は,拡大先願(特許法29条の2)であるのに対し,審決が
拒絶査定不服審判請求と同時にした限定的減縮を目的とする本件補正を却下した理由は,
刊行物1を理由とする新規性欠如(同法29条1項3号)及び進歩性欠如(同条2項)で
あって,適用法条も,引用文献も異なる。刊行物1は,本件補正を受けた前置報告書にお
-2-
いて初めて原告に示されたものであるが,刊行物1に基づく拒絶理由通知はされていない
ことから,原告には,刊行物1に基づく拒絶理由を回避するための補正をする機会はなか
った。
以上に照らすと,審決時において,原告の防御の機会が実質的に保障されていないと認
められるから,審判合議体は,同法159条2項により準用される同法50条本文に基づ
き,新拒絶理由に当たる刊行物1に基づく拒絶理由を通知すべきであった。それにもかか
わらず,上記拒絶理由通知をすることなく本件補正を却下した審決には,同法159条2
項により準用される同法50条本文所定の手続を怠った違法がある。
(2) 取消事由2(独立特許要件違反の判断〔新規性・進歩性判断〕の誤り)について
ア 引用発明1の「チャンスゾーン演出」は,本願補正発明の「特定演出」に相当し
ないから,本願補正発明は,引用発明1と同一ではない。
また,引用発明1において,本願補正発明の「特定演出」に係る構成を採用することを,
当業者が容易に想到し得たことを認めるに足りる根拠はない。
イ 引用発明2の「ボーナスに当選している旨」の「報知」は,本願補正発明の「特
別演出」に相当しないから,本願補正発明は,引用発明2と同一ではない。
また,引用発明2において,本願補正発明の「特別演出」に係る構成を採用することを,
当業者が容易に想到し得たことを認めるに足りる根拠はない。
-3-
戻る / PDF版
平成30年9月10日判決言渡
平成29年(行ケ)第10213号
口頭弁論終結日

審決取消請求事件

平成30年8月20日
判決原告株
同訴訟代理人弁理士

木原堀井中田雅彦岩井將晃佐藤ま被同告指定代許社三美共武豊庁り長こ官瀬津太朗久司郎赤穂州佐藤聡史板1人会安主理特式谷玲子特許庁が不服2016-18811号事件について平成29年10月
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由

第1

郎文
11日にした審決を取り消す。
2一
原告の求めた裁判

主文同旨

第2

事案の概要

本件は,
特許出願の拒絶査定不服審判請求に対する不成立審決の取消訴訟である。争点は,①拒絶査定不服審判請求と同時にする補正の却下に当たり拒絶理由通知を行わなかったことによる手続違背(以下,
「拒絶理由通知欠缺による手続違背」とい
う。
)の有無,②独立特許要件違反の判断(新規性・進歩性判断)の誤りの有無である。
1
特許庁における手続の経緯

原告は,名称を「スロットマシン」とする発明について,平成22年12月22日にした出願(特願2010-286306号)の分割出願として,平成26年11月4日,特許出願をし(特願2014-224539号,請求項の数1。甲3~6。以下,
「本願」という。,同月14日,特許請求の範囲,明細書及び図面を補正)
する手続補正をしたところ
(甲7)平成27年12月18日付けで拒絶理由通知を

受けたため(甲10。以下,
「本件拒絶理由通知」という。,平成28年3月1日に

特許請求の範囲及び明細書を補正する手続補正をしたが(甲8。以下,「本件拒絶査
定前補正」という。,同年9月13日付けで拒絶査定を受けた(甲11。以下,)
「本
件拒絶査定」という。。

原告は,平成28年12月14日,拒絶査定不服審判請求をし(不服2016-18811号。甲20。以下,
「本件拒絶査定不服審判請求」という。,同日,特許

請求の範囲及び明細書を補正する手続補正をしたが(甲9。以下,「本件補正」とい
う。,特許庁は,平成29年10月11日,本件補正を却下した上,)
「本件審判の請
求は,成り立たない。
」との審決をし,その謄本は,同年10月24日,原告に送達
された。
2
本願発明及び本願補正発明の要旨

本件拒絶査定前補正後の特許請求の範囲の請求項1記載の発明
(以下,本願発明」

という。及び本件補正後の特許請求の範囲の請求項1記載の発明

(甲9。
以下,
「本
願補正発明」という。
)は,次のとおりである(なお,分説のための符号は,審判合

議体において付したものである。。

(1)本願発明(甲8)
【請求項1】
A
各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を備え,
B
前記可変表示部を変動表示した後,前記可変表示部の変動表示を停止すること
で表示結果を導出し,該表示結果に応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて,
C
有利状態に制御するための有利量を付与することを決定する有利量付与決定手
段と,
D
付与された有利量を消費することによって前記有利状態に制御する有利状態制
御手段と,
I
前記有利状態中において特定演出を実行する特定演出実行手段と,
J
前記有利量付与決定手段により有利量を付与することが決定された旨を前記特
定演出とは異なる特別演出を実行することで報知する有利量付与報知手段とを備え,K
前記有利量付与報知手段は,前記有利量付与決定手段により有利量を付与する
ことが前記特定演出の実行中に決定されたときには,当該特定演出の終了後に前記特別演出を実行する,スロットマシン。
(2)本願補正発明(甲9。下線は,補正箇所である。

【請求項1】
A
各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を備え,
B
前記可変表示部を変動表示した後,前記可変表示部の変動表示を停止すること
で表示結果を導出し,該表示結果に応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて,
C
有利状態に制御するための有利量を付与することを決定する有利量付与決定手
段と,
D
付与された有利量を消費することによって前記有利状態に制御する有利状態制
御手段と,
E
前記有利量付与決定手段により決定された有利量の付与を前記有利状態中にお
いて報知可能な特定演出を実行する特定演出実行手段と,
F
前記有利量付与決定手段により決定された有利量の付与を前記特定演出とは異
なる特別演出を実行することで報知する有利量付与報知手段とを備え,G
前記有利量付与報知手段は,前記有利量付与決定手段により有利量を付与する
ことが前記特定演出の実行中に決定されたときには,当該特定演出の終了後に前記特別演出を実行することが可能であり,
H
有利量の付与を報知する前記特定演出の実行中に前記有利量付与決定手段によ
り有利量を付与することが決定されたときには,当該特定演出を実行することで有利量の付与を報知し,当該特定演出の実行中に付与することが決定された有利量の付与を当該特定演出終了後に前記特別演出を実行することで報知する,スロットマシン。
3
審決の理由の要点
(1)本件補正の却下の決定

結論

本件補正を却下する。

理由
(ア)本件補正は,
特許請求の範囲の請求項1の記載を含んでおり,
本件補正

前の本件拒絶査定前補正における特許請求の範囲の記載は,前記2(1)のとおりであり,本件補正における特許請求の範囲の記載は,前記2(2)のとおりである。(イ)本件補正中の各補正事項は,
いずれも,
特許法17条の2第5項第2号
に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し,本願の出願時の明細書の記載等に基づくものといえ,新規事項を追加するものではない。(ウ)本願の原出願の出願日前に頒布された刊行物である特開2008-284231号公報(甲1。以下,
「刊行物1」という。
)には,次の発明(以下,
「引

用発明1」という。
)が記載されている。
「a

透視窓3に連続的に変化させつつ表示させる互いに識別可能な複数種類の図
柄が外周部に描かれているリール2L,2C,2Rを備え,
b
各リールが回転し,各リールの図柄が連続的に変動した後,リールの回転が停
止し,表示結果が導出表示され,入賞ライン上に予め定められた図柄の組合せが停止した場合に入賞が発生る〔判決注・
「発生する」の誤記と認める。
〕スロットマシ
ン1において,
c
RT1~RT5は,リプレイ(1)~(3)が当選する確率が初期遊技状態の
ときよりも高く,遊技制御基板40のCPU41aにより,ビッグボーナス(1),
ビッグボーナス(2)
,レギュラーボーナスに入賞したと判定されると,それぞれ,
各ボーナスに移行した後,RT1,RT2,RT3に制御されたゲームを所定回数行い,
また,
リプレイ
(2)リプレイ

(3)に入賞したと判定されると,
それぞれ,
RT4,RT5に制御されたゲームを所定回数行い,
d
遊技制御基板40のCPU41aにより,RT1~RT5に制御されていると
判定されたときには,対応するRTカウンタの値を1だけ減算し,1ゲームの処理を終了させ,抽選処理において,遊技状態がRTであるときには,リプレイ(1)~(3)が当選する確率が初期遊技状態のときよりも高くなるように設定された判定値数を取得し,
e1

サブ制御部91は,遊技状態がRT1~RT3に制御されてから所定回数ゲ
ームが行なわれるまでチャンスゾーン演出を実行し,
f1

サブ制御部91は,RT4又はRT5に制御されてRTが継続することを報
知する上乗せ成功演出又はRT4又はRT5中であるときにRT中演出を実行し,g1

サブ制御部91は,リプレイ(2)又はリプレイ(3)入賞してRT4又は
RT5に制御されているが仮に当該入賞がなかったとしたときに未だRT1~RT3への制御が行なわれている期間はチャンスゾーン演出を継続して行い,仮想の残りゲーム数を消化した場合に上乗せ成功演出又はRT中演出を開始させ,
h1

リプレイ(2)又はリプレイ(3)入賞してRT4又はRT5に制御されて
いるが仮に当該入賞がなかったとしたときに未だRT1~RT3への制御が行なわれている期間はチャンスゾーン演出が〔判決注・
「チャンスゾーン演出を」の誤記と
認める。継続して行い,

仮想の残りゲーム数を消化した場合に上乗せ成功演出又は
RT中演出を開始させる,スロットマシン1」
(エ)刊行物1には,次の発明(以下,
「引用発明2」という。
)が記載されて
いる。
「a

透視窓3に連続的に変化させつつ表示させる互いに識別可能な複数種類の図
柄が外周部に描かれているリール2L,2C,2Rを備え,
b
各リールが回転し,各リールの図柄が連続的に変動した後,リールの回転が停
止し,表示結果が導出表示され,入賞ライン上に予め定められた図柄の組合せが停止した場合に入賞が発生するスロットマシン1において,
c
RT1~RT5は,リプレイ(1)~(3)が当選する確率が初期遊技状態の
ときよりも高く,遊技制御基板40のCPU41aにより,ビッグボーナス(1),
ビッグボーナス(2)
,レギュラーボーナスに入賞したと判定されると,それぞれ,
各ボーナスに移行した後,RT1,RT2,RT3に制御されたゲームを所定回数行い,
また,
リプレイ
(2)リプレイ

(3)に入賞したと判定されると,
それぞれ,
RT4,RT5に制御されたゲームを所定回数行い,
d
遊技制御基板40のCPU41aにより,RT1~RT5に制御されていると
判定されたときには,対応するRTカウンタの値を1だけ減算し,1ゲームの処理を終了させ,抽選処理において,遊技状態がRTであるときには,リプレイ(1)~(3)が当選する確率が初期遊技状態のときよりも高くなるように設定された判定値数を取得し,
e2

サブ制御部91は,RT1~RT3の残りゲーム数が3ゲームになったと判
定されたときに3ゲームに亘って所定の連続演出を行う上乗せ・ボーナス連続演出を行い,最終的にRTが継続する旨を報知し,

f2

サブ制御部91は,RT1~RT3の残りゲーム数が3ゲームになったと判
定されたときに3ゲームに亘って所定の連続演出を行う上乗せ・ボーナス連続演出を行い,上乗せ・ボーナス連続演出を実行しているときに,ボーナスに当選したときには最終的にボーナスに当選している旨を報知し,
g2

サブ制御部91は,上乗せ・ボーナス連続演出において,所定の演出を行な
いRTが継続するか否かを報知した後,上乗せ・ボーナス連続演出を実行しているときに,ボーナスに当選したときにはさらに所定の演出を行なってボーナスに当選しているか否かを報知し,
h2

RT1~RT3の残りゲーム数が3ゲームになったと判定されたときに3ゲ
ームに亘って所定の連続演出を行う上乗せ・ボーナス連続演出において,所定の演出を行ないRTが継続するか否かを報知した後,上乗せ・ボーナス連続演出を実行しているときに,ボーナスに当選したときにはさらに所定の演出を行なってボーナスに当選しているか否かを報知する,スロットマシン1」
(オ)本願補正発明と引用発明1とを対比すると,
次のa~hのとおり,
引用
発明1の構成a~h1は,それぞれ,本願補正発明における構成A~Hに相当するから,本願補正発明と引用発明1とに相違する点はなく,両者は同一である。a
引用発明1における構成a(
「透視窓3に連続的に変化させつつ表

示させる互いに識別可能な複数種類の図柄が外周部に描かれているリール2L,2C,2R」
)は,本願補正発明における構成A(
「各々が識別可能な複数種類の識別
情報を変動表示可能な可変表示部」
)に相当する。
b
引用発明1における構成b「各リールが回転し,

各リールの図柄が

連続的に変動した後,リールの回転が停止し,表示結果が導出表示され,入賞ライン上に予め定められた図柄の組合せが停止した場合に入賞が発生するスロットマシン1」
)は,本願補正発明における構成B(
「前記可変表示部を変動表示した後,前
記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し,該表示結果に応じて入賞が発生可能なスロットマシン」
)に相当する。

c
引用発明1における構成c(
「RT1~RT5は,リプレイ(1)~

(3)が当選する確率が初期遊技状態のときよりも高く,遊技制御基板40のCPU41aにより,ビッグボーナス(1)
,ビッグボーナス(2)
,レギュラーボーナ
スに入賞したと判定されると,それぞれ,各ボーナスに移行した後,RT1,RT2,
RT3に制御されたゲームを所定回数行い,
また,
リプレイ
(2)リプレイ

(3)
に入賞したと判定されると,それぞれ,RT4,RT5に制御されたゲームを所定回数行い」
)は,本願補正発明における構成C(
「有利状態に制御するための有利量
を付与することを決定する有利量付与決定手段」
)に相当する。
d
引用発明1における構成d(
「遊技制御基板40のCPU41aに

より,RT1~RT5に制御されていると判定されたときには,対応するRTカウンタの値を1だけ減算し1ゲームを終了させ,抽選処理において,遊技状態がRTであるときには,リプレイ(1)~(3)が当選する確率が初期遊技状態のときよりも高くなるように設定された判定値数を取得し」は,

本願補正発明における構成
D(
「付与された有利量を消費することによって前記有利状態に制御する有利状態制御手段」
)に相当する。
e
引用発明1における構成e1の「サブ制御部91」が,
「チャンスゾ

ーン演出」を「遊技状態がRT1~RT3に制御されてから所定回数ゲームが行なわれるまで行」うことにより,
「遊技制御基板40のCPU41a」により「判定」
された「遊技状態がRT1~RT3に制御されたゲームを所定回数行」うこと(構成c)を当該「演出」により示すことは,本願補正発明における構成Eの「特定演出実行手段」が,
「特定演出」を「前記有利状態中」において実行することにより,「前記有利量付与決定手段」により「決定」された「有利量の付与」を「報知可能」であることに相当する。
したがって,引用発明1における構成e1(
「サブ制御部91は,遊技状態がRT
1~RT3に制御されてから所定回数ゲームが行なわれるまでチャンスゾーン演出を実行し」
)は,本願補正発明における構成E(
「前記有利量付与決定手段により決

定された有利量の付与を前記有利状態中において報知可能な特定演出を実行する特定演出実行手段」
)に相当する。
f
引用発明1における構成f1「サブ制御部91は,

RT4又はRT

5に制御されてRTが継続することを報知する上乗せ成功演出,RT4又はRT5中であるときにRT中演出を実行し」
)は,本願補正発明における構成F(
「前記有
利量付与決定手段により決定された有利量の付与を前記特定演出とは異なる特別演出を実行することで報知する有利量付与報知手段」
)に相当する。
g
引用発明1における構成g1の
「リプレイ
(2)
又はリプレイ
(3)

入賞してRT4又はRT5に制御されている」
というのは,
「遊技制御基板40のC
PU41a」により
「RT4,RT5に制御されたゲームを所定回数行」うこと(構
成c)が「チャンスゾーン演出」を「継続している行っている間」にリプレイ(2)又はリプレイ(3)に入賞し「判定」されたということであるから,本願補正発明の構成Gにおける,
「前記有利量付与決定手段」により「有利量を付与」することが
「前記特定演出」の「実行中」に「決定」されたことに相当する。また,引用発明1の構成g1において,
「チャンスゾーン演出」を「継続した後」
に「上乗せ成功演出又はRT中演出」を「開始」させることは,本願補正発明における構成Gにおいて,
「当該特定演出」の「終了後」に「前記特別演出」を「実行す
ることが可能」であることに相当する。
したがって,引用発明1における構成g1(
「サブ制御部91は,リプレイ(2)
又はリプレイ(3)入賞してRT4又はRT5に制御されているが仮に当該入賞がなかったとしたときに未だRT1~RT3への制御が行なわれている期間はチャンスゾーン演出を継続して行い,仮想の残りゲーム数を消化した場合に上乗せ成功演出又はRT中演出を開始させ」
)は,本願補正発明における構成G(
「前記有利量付
与報知手段は,前記有利量付与決定手段により有利量を付与することが前記特定演出の実行中に決定されたときには,当該特定演出の終了後に前記特別演出を実行することが可能であり」
)に相当する。

h
引用発明1における構成h1の
「リプレイ
(2)
又はリプレイ
(3)

入賞してRT4又はRT5に制御されている」というのは,
「遊技状態がRT1,R
T2,RT3に制御されたゲームを所定回数行」うこと(構成c)を当該「演出」により示している「チャンスゾーン演出」を継続して行っている間に「遊技制御基板40のCPU41a」
により
「RT4,
RT5に制御されたゲームを所定回数行」
うことがリプレイ(2)又はリプレイ(3)に入賞し「判定」された(構成c)ということであるから,本願補正発明の構成Hにおける,
「有利量の付与」を「報知」
する「前記特定演出」の実行中に「前記有利量付与決定手段」により「有利量を付与」することが「決定」されたということに相当する。
そして,引用発明1における構成h1の「チャンスゾーン演出」を継続して「行って」いることは,未だRT1~RT3への制御が行なわれており,「遊技状態がR
T1,RT2,RT3に制御されたゲームを所定回数行」うこと(構成c)を当該「演出」
により示しているから,
本願発明の構成Hにおいて,
「当該特定演出」「実

行」することで「有利量の付与」を「報知」することに該当する。また,引用発明1における構成h1の「チャンスゾーン演出」を継続して行っている間に,
「リプレイ(2)又はリプレイ(3)に入賞」し,
「RT4,RT5に制
御されたゲームを所定回数行」えること(構成c)を,
「チャンスゾーン演出を継続
して行い,仮想の残りゲーム数を消化した場合」に「上乗せ成功演出又はRT中演出を開始させる」
ことを当該
「上乗せ成功演出又はRT中演出」
により示すことは,
本願補正発明における構成Hにおいて,
「当該特定演出」の実行中に「付与すること
が決定」された「有利量の付与」を「当該特定演出終了後」に「前記特別演出を実行する」ことで「報知」することに相当する。
したがって,引用発明1における構成h1(
「リプレイ(2)又はリプレイ(3)
入賞してRT4又はRT5に制御されているが仮に当該入賞がなかったとしたときに未だRT1~RT3への制御が行われている期間はチャンスゾーン演出を継続して行い,仮想の残りゲーム数を消化した場合に上乗せ成功演出又はRT中演出を開始させる」
)は,本願補正発明における構成H(
「有利量の付与を報知する前記特定
演出の実行中に前記有利量付与決定手段により有利量を付与することが決定されたときには,当該特定演出を実行することで有利量の付与を報知し,当該特定演出の実行中に付与することが決定された有利量の付与を当該特定演出終了後に前記特別演出を実行することで報知する」
)に相当する。
(カ)本願補正発明と引用発明2とを対比すると,
次のa~eのとおり,
引用
発明2の構成a~h2は,それぞれ,本願補正発明における構成A~Hに相当するから,本願補正発明と引用発明2とに相違する点はなく,両者は同一である。a
引用発明2における構成a~dと本願補正発明における構成A~D
との対比については,前記(オ)a~dと同様である。
b
引用発明2における構成e2「サブ制御部91は,

RT1~RT3

の残りゲーム数が3ゲームになったと判定されたときに3ゲームに亘って所定の連続演出を行う上乗せ・ボーナス連続演出を行い,最終的にRTが継続する旨を報知し」
)は,本願補正発明における構成E(
「前記有利量付与決定手段により決定され
た有利量の付与を前記有利状態中において報知可能な特定演出を実行する特定演出実行手段」
)に相当する。
c
引用発明2における構成f2の「ボーナス」というのは,それに移
行して終了した後,
「RT1,RT2,RT3に制御されたゲームを所定回数行」う
構成とされており(構成c)
,当該「ボーナス」状態への移行は,
「遊技制御基板4
0のCPU41a」により,ボーナスに入賞したと「判定」されたときに生じるものである(構成c)

そうすると,引用発明2における構成f2の「ボーナスに当選」するとは,「遊技
制御基板40のCPU41a」により,ボーナスに移行して終了した後,「RT1,
RT2,RT3に制御されたゲームを所定回数行」えること(構成c)が決定されたということであるから,引用発明2における構成f2において,ボーナスに移行して終了した後に「RT1,RT2,RT3に制御されたゲームを所定回数行」えることを,
「最終的にボーナスに当選している旨を報知」する「上乗せ・ボーナス連続演出」
を行うことで
「報知」
することは,
本願補正発明における構成Fにおいて,
「前記有利量付与決定手段により決定された有利量の付与」を「前記特定演出とは異なる特別演出」を実行することで「報知」することに相当する。したがって,引用発明2における構成f2(
「サブ制御部91は,RT1~RT3
の残りゲーム数が3ゲームになったと判定されたときに3ゲームに亘って所定の連続演出を行う上乗せ・ボーナス連続演出を行い,上乗せ・ボーナス連続演出を実行しているときに,ボーナスに当選したときには最終的にボーナスに当選している旨を報知し」
)は,本願補正発明における構成F(
「前記有利量付与決定手段により決
定された有利量の付与を前記特定演出とは異なる特別演出を実行することで報知する有利量付与報知手段」
)に相当する。
d
引用発明2における構成g2の「上乗せ・ボーナス連続演出を実行
しているときに,ボーナスに当選したとき」というのは,
「遊技制御基板40のCP
U41a」により,ボーナスに移行して終了した後に「RT1,RT2,RT3に制御されたゲームを所定回数行」えることと(構成c)「上乗せ・ボーナス連続演,
出を実行しているとき」に「判定」されたということであるから,本願補正発明の構成Gにおいて,
「前記有利量付与決定手段」
により
「有利量を付与」
することが
「前
記特定演出の実行中」に「決定」されたときに相当する。
また,引用発明2の構成g2において,
「上乗せ・ボーナス連続演出において,所
定の演出を行ないRTが継続するか否かを報知した後」「さらに所定の演出を行な,
ってボーナスに当選しているか否かを報知」することは,本願補正発明における構成Gにおいて,
「当該特定演出の終了後」に「前記特別演出を実行することが可能」であることに相当する。
したがって,引用発明2における構成g2(
「サブ制御部91は,上乗せ・ボーナ
ス連続演出において,所定の演出を行ないRTが継続するか否かを報知した後,上乗せ・ボーナス連続演出を実行しているときに,ボーナスに当選したときにはさらに所定の演出を行なってボーナスに当選しているか否かを報知し」は,)
本願補正発
明における構成G「前記有利量付与報知手段は,

前記有利量付与決定手段により有
利量を付与することが前記特定演出の実行中に決定されたときには,当該特定演出の終了後に前記特別演出を実行することが可能であり」
)に相当する。
e
引用発明2の構成h2において,
「RTが継続する」ことを「報知」

する「RT1~RT3の残りゲーム数が3ゲームになったと判定されたときに3ゲームに亘って所定の連続演出を行う上乗せ・ボーナス連続演出において,所定の演出を行な」
っていることは,
本願補正発明の構成Hにおいて,
「有利量の付与」「報

知」する「前記特定演出の実行中」であることに相当する。
引用発明2の構成h2において,
「上乗せ・ボーナス連続演出を実行しているとき
に,ボーナスに当選したとき」というのは,
「遊技制御基板40のCPU41a」に
より,ボーナスに移行して終了した後に「RT1,RT2,RT3に制御されたゲームを所定回数行」うことと「判定」されたときであるから(構成c),本願補正発
明の構成Hにおいて,
「前記有利量付与決定手段」により「有利量を付与」すること
が「決定」されたということに相当する。
そして,引用発明2における構成h2において,
「上乗せ・ボーナス連続演出にお
いて,所定の演出」を行うことで「RTが継続すること」を「報知」した後,「さら
に所定の演出」を行なって「ボーナスに当選していること」を「報知」するというのは,
「上乗せ・ボーナス連続演出において,所定の演出」を行うことで「RTが継続すること」を「報知」した後,
「3ゲームに亘って所定の連続演出を行う上乗せ・
ボーナス連続演出」を実行しているときに,ボーナスに移行して終了した後に「RT1,RT2,RT3に制御されたゲームを所定回数行うこと」と「判定」されたこと
(構成c)「さらに所定の演出」
を,
を行なって
「ボーナスに当選していること」
を「報知」していることであるから,本願補正発明における構成Hにおいて,「当該
特定演出」を実行することで「有利量の付与」を「報知」し,
「当該特定演出の実行
中」に「決定」された「有利量の付与」を「当該特定演出」終了後に「前記特別演出」を実行することで報知することに相当する。
したがって,
引用発明2における構成h2「RT1~RT3の残りゲーム数が3(
ゲームになったと判定されたときに3ゲームに亘って所定の連続演出を行う上乗せ・ボーナス連続演出において,所定の演出を行ないRTが継続するか否かを報知した後,上乗せ・ボーナス連続演出を実行しているときに,ボーナスに当選しているか否かを報知する,スロットマシン1」
)は,本願補正発明における構成H(
「有
利量の付与を報知する前記特定演出の実行中に前記有利量付与決定手段により有利量を付与することが決定されたときには,当該特定演出を実行することで有利量の付与を報知し,当該特定演出の実行中に付与することが決定された有利量の付与を当該特定演出終了後に前記特別演出を実行することで報知する,スロットマシン」)
に相当する。
(キ)前記(オ),(カ)のとおり,本願補正発明は,引用発明1又は引用発明2と同一であるから,特許法29条1項3号に該当し,特許出願の際独立して特許を受けることができない。
また,仮に相違する点があるとしても,本願補正発明は,引用発明1又は引用発明2から当業者が容易に想到し得たものであるから,特許法29条2項により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
(ク)以上のとおり,
本件補正は,
特許法17条の2第6項において準用する
同法126条7項に違反するので,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項により却下すべきものである。
(2)本願発明について

原査定の拒絶の理由で引用された,本願の原出願の出願日前の他の特許
出願であって,その出願後に出願公開がされた特願2010-194145号(甲2。以下,
「本件先願」という。
)の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲
又は図面には,次の発明(以下,
「先願発明」という。
)が記載されている。
「a

8種類の図柄を図柄表示窓8に可変表示させるリール8a~8cを備え,b
リール回転の後に,全リールの回転停止が確認されると,当選役に対応する図
柄の組合せが有効入賞ライン上に停止することで入賞が発生する回胴式遊技機Aにおいて,
c
押し順報知が実施されて,当選したAT小役を確実に停止させることで保有メ
ダルを漸増させるART遊技状態における回胴遊技を実行できるART遊技回数の上乗せ抽選を実行し,当選した場合には,その上乗せ回数分の値をART遊技回数カウンタに加算する副制御部と,
d
副制御部は,途中の上乗せ分も含めた遊技回数を消化し,1セット分のART
遊技実行を繰り返し,
i
副制御部は,ART遊技回数カウンタの値(ART遊技の残回数)が5未満に
なったとき,
ART遊技が実行される都度,
選択された連続エンディング演出を順々
に実行し,
j
副制御部は,上乗せ当選が発生している場合には,上乗せ報知を行う終了時上
乗せ報知演出内容の演出を実行し,
k
副制御部は,連続演出の遊技期間(4ゲーム)中に,上乗せ当選が発生してい
た場合には,最終連続演出の後に,終了時上乗せ報知演出内容の演出を実行する,回胴式遊技機A」

本願発明と先願発明とを対比すると,先願発明における構成a~d,i
~kは,それぞれ,本願発明における構成A~D,I~Kに相当するから,本願発明は先願発明と実質的に同一である。そして,本願発明の発明者が先願発明の発明者と同一ではなく,また,本願の原出願時において,その出願人が本件先願の出願人と同一でもない。したがって,本願発明は,特許法29条の2により,特許を受けることができない。
第3
1
原告主張の審決取消事由
取消事由1(拒絶理由通知欠缺による手続違背)

審決は,本件拒絶理由通知及び本件拒絶査定が本件先願を引用して特許法29条の2により特許を受けることができないとするものであったにもかかわらず,出願人である原告に対して拒絶理由を通知せずに,刊行物1を引用して本願補正発明は同法29条1項3号及び同条2項により独立特許要件を具備しないとして,本件補正を却下した。
この独立特許要件の判断は,(先行技術)
証拠
及び適用法条のいずれにおいても,
本件拒絶理由通知および本件拒絶査定における拒絶理由と異なっているにもかかわらず,原告に対し意見書提出及び補正の機会を与えなかった点において,原告に対する手続保障に明らかに欠けるものといえ,審決の結論に影響を与える重大な瑕疵がある。
(1)特許法159条2項は,同法50条を準用し,拒絶査定不服審判において拒絶査定の理由と異なる拒絶理由(以下,
「新拒絶理由」という。
)が発見された場
合には,改めて新拒絶理由の通知を行うことを要するが,拒絶査定不服審判の請求時に行われた特許法17条の2第5項2号所定の特許請求の範囲の減縮(以下,平成6年法律第116号による改正の前後を通じて,
「限定的減縮」という。
)を目的
とする補正(以下,
「審判請求時補正〔限定的減縮〕
」という。
)を新拒絶理由に基づ
いて独立特許要件違反として却下する場合には,
「この限りでない」としている。
このように,特許法は,審判請求時補正〔限定的減縮〕を新拒絶理由に基づいて独立特許要件違反として却下する場合には,同法50条本文とは異なる扱いをすることがあり得る旨を規定しているにすぎず,その新拒絶理由を改めて通知しないことが絶対的に適法となることを認めているわけではない。
また,行政処分に至る手続が,形式的には明文規定に反していないように見えても,その行政処分の根拠法令に定められた手続規定の趣旨に反しており,かつ,その違反がその行政処分の結論に影響を与えるような重大なものである場合には,その行政処分は,
違法として取消の対象になる
(最高裁昭和46年10月28日判決・
民集25巻7号1037頁,最高裁昭和50年5月29日判決・民集29巻5号662頁)

(2)新拒絶理由が発見された場合に特許法159条2項が準用する同法50条本文がその新拒絶理由を通知して意見書提出及び補正の機会を与えることとされている趣旨は,行政法の一般理念に基づいて出願人に意見書提出及び補正の機会を与えて出願人の特許を受ける権利に関する手続保障を行う点にある。他方,新拒絶理由が発見されたものの,その新拒絶理由により独立特許要件違反であるとして審判請求時補正〔限定的減縮〕を却下する場合に,特許法50条本文とは異なる扱いが許容されている趣旨は,次の点にある。すなわち,審査においては,関連する先行技術を漏れなく発見するように先行技術調査が行われ(特許・実用新案審査基準〔以下,
「審査基準」という。
〕第Ⅰ部第2章第2節。甲12)
,発見
された拒絶理由の全てを通知するものとされ(審査基準第Ⅰ部第2章第3節。甲13)拒絶査定には解消されていない全ての拒絶理由を示すものとされ,
(審査基準第
Ⅰ部第2章第5節。
甲14)かつ,

拒絶査定不服審判請求時に行われる補正
(以下,
「審判請求時補正」という。
)は,特許請求の範囲の限定的減縮等を目的とするもの
に限られており,
この補正の前後で先行技術調査の範囲は変わっていないことから,拒絶理由の通知を行うことなく補正を却下したとしても,審査及び審理が適正に行われている限り,その拒絶理由が出願人が全く予期し得ない想定外の拒絶理由であったとは考えられず,出願人にとって手続保障に欠けるところはないと考えられるためである。
(3)そうすると,審判請求時補正〔限定的減縮〕を独立特許要件の違反を理由に意見書提出及び補正の機会を与えることなく却下することが特許法159条2項が準用する同法50条が要請している手続保障の趣旨に欠けるような事態を生じさせる事情がある場合には,そのような却下は,出願人に適正な手続保障を与えるという同条の趣旨に反するものである。また,補正の機会が与えられれば,独立特許要件の判断の対象となる請求項に記載の発明の内容が変化するのであるから,新拒絶理由に対して意見書提出及び補正の機会を与えることなく補正却下が行われることが,審決の結論に影響を与えることは明らかである。したがって,そのような場合には,審決に至るまでの審理手続に審決を取り消すに値する瑕疵を生じさせるというべきである(知財高裁平成26年2月5日判決判例時報2230号81頁,知財高裁平成23年10月4日判決判例時報2139号79頁参照)。
(4)本件においては,審決は,刊行物1を引用して本願補正発明は特許法29条1項3号及び同条2項により独立特許要件を具備しないとして,本件補正を却下したが,本件拒絶理由通知及び本件拒絶査定には,刊行物1はもとより,同条1項3号及び同条2項による拒絶理由すら記載されていない。
本件拒絶査定のように,特許法29条の2に基づく拒絶理由のみが拒絶査定において示された場合,出願人は,出願に係る発明に対する同法29条1項各号に定める先行技術は存在せず,同項各号に基づく拒絶理由はもちろんのこと,同条2項に基づく拒絶理由も存在しないとの判断が示されたものと考える。
そこで,出願人である原告は,本願の審査経過から特許法29条1項各号に定める先行技術は存在しないという前提に立って本件拒絶査定に対応したところ,審決において同項3号に定める先行技術の存在を唐突に突き付けられた。しかも,審決があった後においては,もはや原告に補正の機会は存しない。
このように,
審決において,
「特許法29条1項各号に定める先行技術は存在しな
い」との審査段階での判断を真逆に覆す新拒絶理由に基づき,かつ,それを通知することなく,独立特許要件の判断を行ったことは,出願人である原告に対する手続保障に欠けるものである。
(5)被告は,平成5年法律第26号(以下,
「平成5年法」という。
)では,平
成5年法による改正後の特許法159条2項における同法50条ただし書の読み替えにより,審判請求時補正〔限定的減縮〕による補正後の発明について,新拒絶理由が発見された場合でも,同法159条1項で準用する同法53条の補正却下の規定を優先して適用するようにされていることによって,平成5年法が目的とする,審理が繰り返し行われることの回避が担保されているのであり,本願補正発明が独立特許要件を満たさないことを理由として,本件補正を却下したことは,特許法の各条文に従ってされた適法なものであって,立法趣旨を踏まえても妥当なものであるなどと主張する。
しかし,審査基準第Ⅰ部第2章第6節(甲25)によると,審査段階における最後の拒絶理由通知後の補正に対する独立特許要件の審査(特許法50条ただし書が直接適用される場面)では,それまでの審査において審査の対象となっていない条文に基づく拒絶理由で独立特許要件が充足されていないと判断される場合には,その拒絶理由で補正を却下してはならず,
その拒絶理由を通知するものとされており,
拒絶理由を通知して補正の機会を与えるとともに,その補正後の発明について再び審査を行うことが「審査の繰り返し」とは考えられていないといえる。そして,同じ特許法50条ただし書を準用する同法159条が適用される場面において,
「審理の繰り返し」の意味を別異に解する理由はないから,審判請求時補正に対し独立特許要件の審理を行う際に,それまでの手続過程において出願人に提示されていない条文に基づく新拒絶理由で独立特許要件が充足されていないと判断される場合に,その新拒絶理由を通知して補正の機会を与えるとともに,その補正後の発明について再び審理を行うことも,同様に「審理の繰り返し」に該当しない。したがって,本件のように,独立特許要件の判断を行う際にそれまでの手続過程において出願人に提示されていない条文に基づく新拒絶理由を通知することなく,審判請求時補正を却下することが,平成5年法の趣旨に沿う旨の被告の主張は理由がない。
(6)被告は,原告は,刊行物1に基づく新拒絶理由が記載されている前置報告書(甲22)に対して上申書(甲23)を提出しており,この新拒絶理由に対し意見を述べる機会があったと主張する。
しかし,上申書では,本願補正発明に関する主張を行うことができるにすぎず,補正の機会が与えられているわけではないから,上申書の提出をもって,新拒絶理由を通知して補正の機会を与えることへの代替的な手続保障とすることはできない。2
取消事由2(独立特許要件違反の判断〔新規性・進歩性判断〕の誤り)次の(1)及び(2)のとおり,引用発明1は,本願補正発明の「特定演出」に相当する構成を備えておらず,引用発明2は,本願補正発明の「特別演出」に相当する構成を備えていない。
したがって,本願補正発明が引用発明1又は引用発明2と同一である旨の審決の判断は誤りである。
また,本願補正発明は引用発明1又は引用発明2から当業者が容易に想到し得た旨の審決の判断も,本願補正発明と引用発明1又は引用発明2との一致点・相違点に関する誤った判断を前提とするものであるから,誤りである。
(1)引用発明1と本願補正発明との相違点の看過
審決は,引用発明1の「チャンスゾーン演出」が本願補正発明の「特定演出」に相当することを前提として,引用発明1の構成e1,g1,h1がそれぞれ本願補正発明の構成E,G,Hに相当すると判断したが,以下のとおり,引用発明1の「チャンスゾーン演出」は,本願補正発明の「特定演出」に相当しないから,上記判断は誤りである。

審決は,
「チャンスゾーン演出」は,
「遊技状態がRT1~RT3に制御

されてから所定回数ゲームが行われるまで行」うものであり,かつ,「遊技制御基板
40のCPU41a」により「判定」された「遊技状態がRT1~RT3に制御されたゲームを所定回数行」うことを示す演出であると認定した。また,審決は,「所
定回数」が「有利量」に相当すると認定した。
そうすると,審決が認定した「チャンスゾーン演出」とは,『遊技状態がRT1「
~RT3に制御されたゲームを所定回数行う』という有利量の消費によって制御されているRT1~RT3を報知する演出」である。また,
「チャンスゾーン演出」の
報知対象は,消費中の「有利量」である。

本願補正発明において,
「特定演出」は,
「前記有利量付与決定手段によ

り決定された有利量の付与を前記有利状態中において報知可能な特定演出」と規定されているから
(構成E)

「特定演出」「有利量の付与を報知する演出」
は,
である。
また,本願補正発明において,
「有利状態制御手段」は,
「付与された有利量を消
費することによって前記有利状態に制御」するから(構成D)
,有利状態は,付与さ
れた有利量の消費によって制御されるものである。
そうすると,
「特定演出」は,付与された(付与済みの)有利量の消費によって制御される有利状態中において「有利量の付与を報知可能な特定演出」であるから,「特定演出」の報知対象は,消費中の「有利量」とは別であって,未だに消費されていない「有利量」である。
本件補正後の明細書及び図面(甲4,6~9。以下,
「本願明細書」という。
)の
記載(
【0244】【0333】【0382】【0443】【0449】,



)によると,
「ATモード」「連続演出」「ATモード中のナビストックの上乗せ」が,それぞ,

れ「有利状態」「特定演出」「有利量の付与」に相当するが,


「特定演出」の上記ク
レーム解釈は,このような本願明細書の記載を参酌して得られる解釈とも矛盾しない。

前記ア,イのとおり,引用発明1の「チャンスゾーン演出」は,
「有利量

の消費によって制御されているRT1~RT3を報知する演出」であるのに対し,本願補正発明の「特定演出」は,
「有利量の付与を報知する演出」である点において
相違する。
また,引用発明1の「チャンスゾーン演出」の報知対象は,
「消費中の有利量」で
あるのに対し,本願補正発明の「特定演出」の報知対象は,現在,制御されている有利状態を発生させた「有利量」とは別の,
「未だに消費されていない有利量」であ
る点において相違する。

被告は,
「ATモード中のナビストックの上乗せ」ではなく,
「ATモー

ドのゲーム数を所定ゲーム加算すること」が「有利量の付与」に相当すると主張する。
しかし,特定演出の報知に相当する「WIN+1set」は,獲得済みのナビストックがATモードの継続に活用されるときに表示されるメッセージであり,ナビストックの獲得を事後的に報知するメッセージと解釈するにせよ,獲得済みのナビストック数を1消費してAT1回分の50ゲームのATモードでのゲームを継続することを報知するメッセージと解釈するにせよ,その報知対象は,報知の段階では未だにゲームとして消化されていないことに変わりがなく,WIN+1set」「
は,
「未だに消費されていない有利量」を報知している。
したがって,被告の主張は,前記イの解釈を左右するものではない。オ
被告は,本願補正発明の構成C~Eの記載は,被告が主張するような意
味で明確であり,本願明細書に矛盾する記載はないと主張する。
しかし,特定演出の報知の対象について,原告主張の「未だに消費されていない有利量」
と解釈する以外に,
「有利状態に制御された後の有利量の付与に報知対象が
限定されているとはいえない」と解釈する余地もあるのであれば,特許請求の範囲の記載だけでは「特定演出」の技術的意義を一義的に明確に理解できるとはいえないから,発明の要旨認定をするに当たり,明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌すべきである。そして,本願明細書の記載を参酌すると,特定演出の報知に相当する「WIN+1set」は,
「未だに消費されていない有利量」を報知の対象として
いることから,特定演出の報知の対象は,
「未だ消費されていない有利量」であると
解釈すべきである。
(2)引用発明2と本願補正発明との相違点の看過
審決は,引用発明2の「上乗せ・ボーナス連続演出の実行中にボーナスに当選したときに行われる『報知』
」が本願補正発明の「特別演出」に相当することを前提と
して,引用発明2の構成f2,g2,h2がそれぞれ本願補正発明の構成F,G,Hに相当すると判断したが,以下のとおり,引用発明2の「上乗せ・ボーナス連続演出の実行中にボーナスに当選したときに行われる
『報知』は,
」本願補正発明の
「特
別演出」に相当しないから,上記判断は誤りである。
ア(ア)本願補正発明では,
「特定演出」について,
「前記有利量付与決定手段
により決定された有利量の付与を前記有利状態中において報知可能な特定演出」と規定する(構成E)一方,
「特別演出」について,
「前記有利量付与決定手段により
決定された有利量の付与を前記特定演出とは異なる特別演出を実行することで報知する」と規定している(構成F)

したがって,
「特別演出」は,
「特定演出」とは異なるものの,両演出は,いずれ
も「有利量付与決定手段により決定された有利量の付与」を報知対象としている点において共通する。
(イ)審決は,本願補正発明の「有利量の付与を・・・報知可能な特定演出」に,引用発明2の「RTの継続を・・・報知する連続演出」が相当するとして,本願補正発明の「特定演出」の報知対象である「有利量の付与」に対し,引用発明2の「RTの継続」を対応させた。
その一方で,審決は,『最終的にボーナスに当選している旨を報知』する『上乗「
せ・ボーナス連続演出』を行うことで『報知』することは,本願補正発明における構成Fにおいて,
『前記有利量付与決定手段により決定された有利量の付与』を『前記特定演出とは異なる特別演出』を実行することで『報知』することに相当する」として,本願補正発明の「特別演出」の報知対象である「有利量の付与」に対し,引用発明2の「ボーナスに当選している旨」を対応させた。
(ウ)

審決は,
「ボーナスに当選している旨」が「RTの継続」に相当する

と判断したが,次のとおり,誤りである。
そもそも,刊行物1には,遊技者がボーナス当選の報知をRT継続の報知と同視すると解釈できる記載は存在しない。
また,刊行物1の記載(
【0106】【0107】【0109】【0110】【0




116】
)によると,引用発明2は,ボーナスに当選した後,ボーナスの絵柄の組合せを入賞ラインに揃えることにより,そのボーナスの入賞が発生し,その入賞に基づいてボーナスの状態に移行し,更にそのボーナスの状態が終了した後に,ようやく,RT1,RT2又はRT3に移行するという流れで遊技が進む。このように,引用発明2においては,ボーナスに当選した後,さまざまなことを経由して,RT1,RT2又はRT3に移行する。
したがって,
引用発明2において,
「ボーナスに当選している旨」「RTの継続」

に相当するとはいえない。
(エ)前記(ア)~(ウ)によると,引用発明2においては,
「特定演出」と「特別
演出」とがいずれも「前記有利量付与決定手段により決定された有利量の付与」を報知対象としている点において共通するとはいえないから,
引用発明2の
「上乗せ・
ボーナス連続演出の実行中にボーナスに当選したときに行われる『報知』」は,本願
補正発明の「特別演出」に相当しない。

審決は,引用発明2の「ボーナスに当選している旨を報知する上乗せ・
ボーナス連続演出」が,本願補正発明の「特定演出とは異なる特別演出」に相当すると判断したが,その理由を明らかにしていない。審決は,刊行物1の「RTが継続する旨の報知のための演出」「ボーナスに当選している旨の報知のための演出」と,
とでは少なくとも報知する内容が異なるから報知内容に応じて演出内容も当然に異なるであろう,という根拠のない推測の域を出ないものと考えられる。しかし,
刊行物1には,所定の演出を行ないRTが継続するか否かを報知した後,「
さらに所定の演出を行なってボーナスに当選しているか否かを報知する」【045(
2】と記載されているところ,

「RTが継続する旨を報知する所定の演出」
及び
「ボ
ーナスに当選している旨を報知する所定の演出」の具体的内容については記載されていない一方,いずれも同じ名称の「所定の演出」という概念で説明されている。そうすると,刊行物1に記載された「RTが継続する旨を報知する所定の演出」と「ボーナスに当選している旨を報知する所定の演出」とは同じ演出内容であると理解できるにとどまり,両演出が異なる演出内容であるとは断定できない。したがって,引用発明2の「ボーナスに当選している旨を報知する上乗せ・ボーナス連続演出」は,
「特定演出とは異なる・・・演出」とはいえないから,本願補正
発明の「特別演出」に相当しない。
第4

被告の主張
1
取消事由1(拒絶理由通知欠缺による手続違背)に対し
(1)ア

平成5年法による改正(以下,
「平成5年改正」という。
)により,特許

法17条の2(平成5年法による改正後当時のもの。以下,第4の1(1)において同じ。に規定される特許請求の範囲の補正について,

その範囲の適正化が図られるこ
ととなった。これは,特許請求の範囲の補正が何回も行われることにより審査の遅延が生じること,そのような補正が行われなかった出願との間に不公平が生じること,及び,第三者にとっての監視負担が過大となることといった平成5年改正前における種々の弊害を防止することを図ったものである(乙1~3)。

平成5年改正では,不適法な補正の取扱いが拒絶理由の対象となったこ
と(特許法49条1号)に合わせて,拒絶理由通知について特許法50条ただし書が設けられ,最後の拒絶理由通知後の補正について拒絶理由と同じ要件により補正を却下する場合には,同法53条の補正却下の規定を優先して適用することを規定するとともに,同条が改められ,その対象に,新規事項を追加する補正のほか,独立特許要件を満たさない補正が含まれることとなった(同条1項,同法17条の2第4項で準用する同法126条3項)

これにより,最後の拒絶理由通知に対応してする特許請求の範囲の補正が,特許法17条の2第3項2号に規定する特許請求の範囲の減縮(限定的減縮)を目的とする補正である場合には,その補正後の発明が特許可能なものでないときは,拒絶理由を通知するのではなく,補正却下がされることになり,その結果,特許請求の範囲の補正を何度も繰り返すことによって審査が繰り返し行われることを回避することが可能となっている(乙2)


平成5年改正は,審理の迅速性の確保等を図ることを目的として,拒絶
査定不服審判をその対象としている(乙2~4)

すなわち,特許法159条1項において同法53条を準用するに際し,補正却下の対象となる補正として同法17条の2第1項5号に規定する審判請求時の補正が含まれるものとされた(乙1,2)
。ここで,上記審判請求時の補正のうち,限定的
減縮を目的とする特許請求の範囲の補正による補正後の発明が独立特許要件を満たさない場合に補正却下されることは,前記イと同様とされている。また,特許法159条2項では,読み替え規定が追加され,審査と同じく,審判段階で,査定の理由とは異なる拒絶の理由を発見した場合に準用される同法50条においても,ただし書を読み替えて,上記審判請求時の補正について,同法159条1項で準用する同法53条の補正却下の規定を優先して適用することとされた(乙1,2)


以上のように,平成5年法では,特許法159条2項における同法50
条ただし書の読み替えにより,審判請求時の限定的減縮を目的とする特許請求の範囲の補正による補正後の発明について,査定と異なる拒絶の理由(新拒絶理由)が発見された場合でも,同法159条1項で準用する同法53条の補正却下の規定を優先して適用するようにされていることにより,平成5年法が目的とする,審理が繰り返し行われることの回避が担保されているのである。
(2)審決が引用した刊行物1は,本件拒絶査定に至るまでの審査の過程では引用されていないことから,本願補正発明には,特許法159条2項の「査定の理由と異なる拒絶の理由」
(新拒絶理由)があることになる。
しかし,前記(1)のとおり,本願補正発明のような審判請求時補正〔限定的減縮〕による補正後の発明につき,新拒絶理由が発見された場合には,同法159条1項で準用する同法53条の補正却下の規定を優先して適用し,拒絶理由を通知しないものとされている。そこで,審決は,同条1項により本件補正を却下したものである。
仮に,このような新拒絶理由が発見されたときに,同法159条2項で読み替えて準用する同法50条ただし書に基づいて同法53条1項を優先適用せず,その拒絶理由を通知することとした場合,審判請求時補正により補正された発明に対し再び審理を行わなければならなくなり,さらに,その拒絶理由に対応してされた補正後の発明についても再度審理を行う必要が生じることとなるのであって,かえって,
前記(1)オの平成5年法の立法趣旨に反する状況に陥る上に,拒絶査定不服審判の制度本来の趣旨に沿わないものとなる(乙2)

(3)以上のとおり,
本件審判手続において,
本願補正発明が独立特許要件を満た
さないことを理由として,本件補正を却下したことは,特許法の各条文に従ってされた適法なものであり,立法趣旨を踏まえても妥当なものである。(4)ア

原告は,新拒絶理由により独立特許要件違反であるとして審判請求時補
正〔限定的減縮〕を却下する場合に,特許法50条本文とは異なる扱いが許容されている趣旨は,①審査においては,関連する先行技術を漏れなく発見するように先行技術調査が行われ,②発見された拒絶理由の全てを通知するものとされ,③拒絶査定には解消されていない全ての拒絶理由を示すものとされ,かつ,④審判請求時補正は,特許請求の範囲の限定的減縮等を目的とするものに限られており,この補正の前後で先行技術調査の範囲は変わっていないことから,⑤拒絶理由の通知を行うことなく補正を却下したとしても,審査及び審理が適正に行われている限り,その拒絶理由が出願人が全く予期し得ない想定外の拒絶理由であったとは考えられず,出願人にとって手続保障に欠けるところはないと考えられるためであると主張する。イ
しかし,審判請求時補正〔限定的減縮〕がされると,特許することがで
きるか否かの心証が直ちに形成できる場合を除き,補正により新たに特許請求の範囲に含まれることとなった発明特定事項を対象とする先行技術調査を含む,追加の先行技術調査が必要となる。その理由として,拒絶査定までの審査の過程で行われる先行技術調査には,その後の審判請求時補正によって,その先行技術調査時点の特許請求の範囲の発明特定事項を減縮するために特許請求の範囲に組み入れられる可能性のある,発明の詳細な説明又は図面に記載されているあらゆる事項を,網羅的に調査対象とすることまでは,要求されていない(前記ア①~③も,そのような要求があることを意味するものではない。という側面があることや,)
審査の過程で
は知り得なかった審判請求書等における請求人の主張内容も考慮して,適切な調査範囲を再検討すべき場合があることが挙げられる。本件のように,特定の制御手順を実行する手段により特定されるスロットマシンのような発明では,限定的減縮を目的とする補正であっても,その制御手順の具体的内容を限定する補正が許されることから,特許請求の範囲に組み入れられる可能性のある事項を想定することは困難であるといえる。
また,本件のように,特定の制御手順を実行する手段により特定されるスロットマシンのような発明についての審査の過程で行われる先行技術調査には,審判請求時補正の前から存在している発明特定事項(例えば,
「特定演出」や「特別演出」

について,それが抽象的な上位概念の記載である場合,発明の詳細な説明や図面のほか,意見書等における出願人の主張も考慮の上,種々の下位概念(例えば,「WI
N
+1set」といったメッセージの表示や「上乗せだ!」といったメッセージ
の表示)を極力広く包含するような技術的範囲を想定して,その範囲内において漏れなく先行技術調査するように努めるものの,その時点では上記の想定が困難な下位概念(例えば,刊行物1の「チャンスゾーン演出」や「上乗せ・ボーナス連続演出」
)を含む,あらゆる技術的範囲について完全に先行技術調査することまでは,要求されていない(前記ア①~③も,そのような要求があることを意味するものではない。
)という側面もある。このような場合に完全な先行技術調査を行うためには,精読すべき文献数が著しく増加することから,その負担が大きく,その結果審査の遅延を招く上,そもそも事実上不可能なものというべきである。
以上のとおり,審査の過程で行われる先行技術調査には,上記のような二つの側面があることに鑑みると,前記ア④の審判請求時補正の前後で先行技術調査の範囲が変わっていないことを,手続保障に欠けるものではないことの条件として設定する原告の主張は,失当である。

前記イのとおり,追加の先行技術調査により,審判請求時補正により新
たに特許請求の範囲に含まれることとなった発明特定事項に対応する先行技術文献が新たに発見される可能性があるほか,審判請求時補正の前から存在している発明特定事項が上位概念で記載されていることに起因して,審査の過程では発見が困難な下位概念を開示する先行技術文献が新たに発見される可能性もある。そして,本件のように,審査の過程では発見されなかった新拒絶理由が発見されたとき,その拒絶理由を通知することとした場合には,それに対して補正がされることによりその補正後の発明についても再び審理を行わなければならなくなる以上,前記(2)のとおり,平成5年法の立法趣旨に反する状況に陥る上に,拒絶査定不服審判の制度本来の趣旨に沿わないこととなることは明らかである。

なお,原告は,刊行物1に基づく新拒絶理由が記載されている前置報告
書(甲22)に対して上申書(甲23)を提出しており,この新拒絶理由に対し意見を述べる機会があった。
2
取消事由2(独立特許要件違反の判断〔新規性・進歩性判断〕の誤り)に対

(1)引用発明1と本願補正発明との相違点の看過に対し

原告は,
本願明細書の記載によると,
「ATモード中のナビストックの上

乗せ」が「有利量の付与」に相当すると主張するが,誤りである。本願明細書の記載(
【0244】~【0246】【0398】【0437】【04



49】~【0453】【図31】

)によると,①継続抽選で継続成功が決定されているときに,特別条件(イチゴ当選)が成立して上乗せ抽選処理で上乗せ当選した場合(図31(g)に移行する場合)の図31(d)に示される「WIN+1set」は,
「ナビストック数が1以上あり,継続抽選で継続成功が決定されたとき,ナビストック数を1消費し,ATモードのゲーム数が50ゲーム加算されたこと」に依拠したメッセージであり,②継続抽選で継続失敗が決定されているときに,特別条件(イチゴ当選)が成立して上乗せ抽選処理で上乗せ当選した場合(図31(f)に移行する場合)の図31(d)に示される「WIN+1set」は,「上乗せ抽選処
理で上乗せ当選し,ナビストックを消費することなくATモードのゲーム数が50ゲーム加算されたこと」に依拠したメッセージであるといえるから,③「ATモードのゲーム数を所定ゲーム加算すること」が「有利量の付与」に相当する。イ
原告は,引用発明1の「チャンスゾーン演出」は,
「有利量の消費によっ

て制御されているRT1~RT3を報知する演出」であるのに対し,本願補正発明の「特定演出」は,
「有利量の付与を報知する演出」である点において相違すると主
張する。
しかし,引用発明1は,
「RT1~RT5は,リプレイ(1)~(3)が当選する
確率が初期遊技状態のときよりも高く」
(構成c)

「遊技制御基板40のCPU41
aにより,ビッグボーナス(1)
,ビッグボーナス(2)
,レギュラーボーナスに入
賞したと判定されると,それぞれ,各ボーナスに移行した後,RT1,RT2,RT3に制御されたゲームを所定回数行い」
(構成c)「サブ制御部91は,遊技状態

がRT1~RT3に制御されてから所定回数ゲームが行なわれるまでチャンスゾーン演出を実行」する(構成e1)構成を有している。
そこで,
「ビッグボーナス(1)
,ビッグボーナス(2)
,レギュラーボーナスに入
賞したと判定されると」「RT1,RT2,RT3に制御されたゲームを所定回数,
行」えることになるから,各ボーナスに入賞した時点で「RT1,RT2,RT3に制御されたゲームを所定回数行」えることが決定されるといえる。そして,引用発明1における構成cの「RT1,RT2,RT3に制御されたゲーム」を行う「所定回数」は,本願補正発明における構成Cの「有利状態に制御するための有利量」に相当するとともに,構成cの「RT1,RT2,RT3に制御されたゲームを所定回数行」うことは,構成Cの「有利状態に制御するための有利量を付与」することを「決定」することに相当する。
以上のことから,引用発明1の「チャンスゾーン演出」の「実行」は,「RT1,
RT2,RT3に制御されたゲームを所定回数行」えること,すなわち,有利量が付与されたことを意味する。
したがって,
引用発明1の
「チャンスゾーン演出」
は,
本願補正発明の「有利量の付与を報知する演出」である「特定演出」に相当するといえる。

原告は,引用発明1の「チャンスゾーン演出」の報知対象は,
「消費中の
有利量」であるのに対し,本願補正発明の「特定演出」の報知対象は,現在,制御されている有利状態を発生させた「有利量」とは別の,
「未だに消費されていない有
利量」である点において相違すると主張する。
しかし,本願補正発明の構成C~Eは,有利量の報知に関しては,有利状態に制御するための有利量を消費することによって制御される有利状態中において,有利量付与決定手段により決定された有利量の付与を報知可能であることを特定しているにすぎず,有利状態に制御された後の有利量の付与に報知対象が限定されているとはいえない。
また,本願補正発明の構成C~Eの記載は,上記のような意味で明確であり,本願明細書に矛盾する記載はない。
そうすると,本願補正発明から,引用発明1のような消費中の有利量を報知する発明を除外する理由はなく,引用発明1の構成c~eは,本願補正発明の構成C~Eに相当するといえる。また,本願補正発明の構成Eにおいて,特定演出の報知対象は,未だに消費されていない「有利量」に限定されるものではなく,消費中の「有利量」も含まれるといえる。

以上によると,引用発明1の「チャンスゾーン演出」は,本願補正発明
の「特定演出」に相当する。
したがって,引用発明1の構成e1,g1及びh1が,本願補正発明の構成E,G,Hに相当するとした審決の判断に誤りはない。
(2)引用発明2と本願補正発明との相違点の看過に対し

原告は,引用発明2において,
「ボーナスに当選している旨」が「RTの

継続」に相当するとはいえず,
「特定演出」と「特別演出」とがいずれも「前記有利
量付与決定手段により決定された有利量の付与」を報知対象としている点において共通するとはいえないから,引用発明2の「上乗せ・ボーナス連続演出の実行中にボーナスに当選したときに行われる『報知』
」は,本願補正発明の「特別演出」に相
当しないと主張する。
しかし,引用発明2は,
「RT1~RT5は,リプレイ(1)~(3)が当選する
確率が初期遊技状態のときよりも高く」
(構成c)

「遊技制御基板40のCPU41
aにより,ビッグボーナス(1)
,ビッグボーナス(2)
,レギュラーボーナスに入
賞したと判定されると,それぞれ,各ボーナスに移行した後,RT1,RT2,RT3に制御されたゲームを所定回数行い」
(構成c)「サブ制御部91は,RT1~

RT3の残りゲーム数が3ゲームになったと判定されたときに3ゲームに亘って所定の連続演出を行う上乗せ・ボーナス連続演出を行い,上乗せ・ボーナス連続演出を実行しているときに,ボーナスに当選したときには最終的にボーナスに当選している旨を報知」する(構成f2)構成を有している。
そこで,
「ビッグボーナス(1)
,ビッグボーナス(2)
,レギュラーボーナスに入
賞したと判定されると」「RT1,RT2,RT3に制御されたゲームを所定回数,
行」えることになるから,各ボーナスに入賞した時点で「RT1,RT2,RT3に制御されたゲームを所定回数行」えることが決定されるといえる。そして,刊行物1の記載(
【0004】【0398】等)によると,ボーナスに当

選した状態はボーナスに入賞するまで維持されるから,
引用発明2において,
「ボー
ナスに当選している旨」の「報知」がされると,確実に各ボーナスに入賞して各ボーナスに移行することは明らかである。
そうすると,
「ボーナスに当選している旨」の「報知」は,
「各ボーナスに移行し
てボーナスが終了した後」「RT1,RT2,RT3に制御されたゲームを所定回,
数行」えること,すなわち,有利量が付与されたことを意味する。したがって,
「RTが継続する旨」の「報知」
(構成e2。特定演出)と「ボーナ
スに当選している旨」の「報知」
(構成f2。特別演出)とは,いずれもRT(RT
1~RT5のいずれか)
に制御されるゲームを所定回数行えること
(有利量の付与)
を報知する演出である点で共通しており,引用発明2の「ボーナスに当選している旨」の「報知」は,本願補正発明の「特別演出」に相当する。

原告は,引用発明2の「ボーナスに当選している旨を報知する上乗せ・ボーナス連続演出」は,
「特定演出とは異なる・・・演出」とはいえないから,本願
補正発明の「特別演出」に相当しないと主張する。
しかし,刊行物1の【0452】の「RTが継続するか否か」の「報知」と,「ボ
ーナスに当選しているか否か」の「報知」とは,少なくとも「RTが継続するか否か」と「ボーナスが当選しているか否か」とが区別できる点で報知する内容が異なるから,両演出は互いに異なる演出であるといえる。
したがって,引用発明2における構成f2において,ボーナスに移行して終了した後に「RT1~RT3に制御されたゲームを所定回数行」えることを,「最終的に
ボーナスに当選している旨を報知」する「上乗せ・ボーナス連続演出」を行うことで「報知」することは,本願補正発明における構成Fにおいて,
「前記有利量付与決
定手段により決定された有利量の付与」を「前記特定演出とは異なる特別演出」を実行することで「報知」することに相当する旨の審決の判断に誤りはなく,引用発明2の構成g2及びh2が,それぞれ本願補正発明の構成G及びHに相当するとの審決の判断にも誤りはない。
仮に,特定演出と特別演出とが異なるというためには,両演出の報知内容以外も異なる必要があるとしても,両演出を報知内容に応じて異なる演出内容とすることは,当業者が適宜なし得ることである。
第5
1
当裁判所の判断
取消事由1(拒絶理由通知欠缺による手続違背)について
(1)本願について,審決に至る経緯をみると,次のとおりである。ア
前記第2の1のとおり,
本願は,
審査段階で本件拒絶理由通知
(甲10)

を受けたが,その拒絶理由は,①請求項1に係る発明が,特願2010-194145号(特開2012-050540号,本件先願)の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり,特許法29条の2により,特許を受けることができない旨,及び,②請求項1の「有利量」に係る記載について,有利量が具体的に特定されておらず,それぞれの有利量の内容が同じ構成も含まれるが,発明の詳細な説明では,そのような構成については記載も示唆もされていない点において,同法36条6項1号の要件を満たしていない旨の二つであった。
そして,本件拒絶査定(甲11)は,本件拒絶理由通知記載の上記拒絶理由①を拒絶理由とするものであった。

前記第2の1のとおり,原告は,本件拒絶査定に対し,本件拒絶査定不
服審判請求をするとともに,本件補正を行ったことから,本件拒絶査定不服審判請求は,審査官による前置審査に付された。
そして,審査官は,平成29年2月3日付け前置報告書(甲22)において,①本願補正発明は,新たに引用された文献である特開2008-284231号公報(刊行物1)に基づき,特許法29条1項3号及び同条2項により,独立特許要件を充足しない,②本願補正発明は,構成要件Hの「当該特定演出を実行することで有利量の付与を報知し」との記載中の「有利量」が,特定演出に係る有利量であるのか,特定演出の実行中に決定された有利量であるのかが判断できず,発明が不明確であるから,同法36条6項2号により,独立特許要件を充足しない,③したがって,本件補正は,同法17条の2第6項において準用する同法126条7項に違反するから,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項により却下されるべきものであり,本願は,本件拒絶査定の理由に示したとおり拒絶されるべきものである旨を報告した。

原告は,平成29年3月30日付け上申書(甲23)を提出し,前記イ
の前置報告に対し,本願補正発明が新規性及び進歩性を有する旨反論した。エ
審判合議体は,原告に対し,改めて拒絶理由通知をすることなく,前記
第2の1のとおり,平成29年10月11日,本件補正を却下した上,本件拒絶査定不服審判請求は成り立たない旨の審決をした。
審決は,前記第2の3(1)イのとおり,本願補正発明が刊行物1に基づき特許法29条1項3号及び同条2項により独立特許要件を充足しないことを,本件補正を却下する理由とした。
(2)

本件補正は,特許法17条の2第1項4号所定の審判請求時補正として同
条5項2号所定の限定的減縮を目的とするもの(審判請求時補正〔限定的減縮〕)で
あるから,同条6項により準用される同法126条7項により,本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明(本願補正発明)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない(独立特許要件)

また,同法159条2項により準用される同法50条本文は,拒絶査定不服審判において査定の理由と異なる拒絶の理由(新拒絶理由)を発見した場合は,その新拒絶理由を通知して意見書を提出する機会を与えなければならないとしているが,同法159条2項により読み替えて準用される同法50条ただし書は,同法159条1項により読み替えて準用される同法53条1項による補正却下の決定をするときは,この限りでないとしており,同法159条1項により読み替えて準用される同法53条1項は,審判請求時補正が同法17条の2第6項に違反するときは,決定をもってその補正を却下しなければならないとしている。
そして,前記(1)のとおり,審決が本件補正を却下する理由とした,①本願補正発明が刊行物1記載の発明と同一であること
(同法29条1項3号)②本願補正発明

が刊行物1記載の発明に基づいて容易に発明をすることができたこと(同条2項)は,本件拒絶査定の理由と異なる拒絶の理由(新拒絶理由)であるとともに,独立特許要件違反の理由ともなるものである。
そこで,審判合議体は,同法159条2項により準用される同法50条本文により拒絶理由通知をすべき義務は,同法159条2項により読み替えて準用される同法50条ただし書により適用がないものとして,前記第2の3(1)のとおり,審決において,本件補正が同法17条の2第6項により準用する同法126条7項に違反することを理由として,同法159条1項により読み替えて準用する同法53条1項を適用して本件補正を却下したものである。
(3)しかし,
特許法50条本文は,拒絶査定をしようとするときは,出願人に対し拒絶理由を通知し,相当の期間を指定して,意見書を提出する機会を与えなければならないと規定し,拒絶理由を通知した場合には,同法17条の2第1項1号又は3号により出願人には上記指定期間内に補正をする機会が与えられる。これは,出願人に対し意見書の提出及び補正による拒絶理由の解消の機会を与えて,出願人の防御の機会を保障するとともに,その意見書を基にして審査官が再審査をする機会とする趣旨であると解される。そして,同法50条本文は,同法159条2項により拒絶査定不服審判において査定の理由と異なる拒絶の理由(新拒絶理由)を発見した場合に準用されており,上記の出願人の防御の機会の保障という趣旨は,拒絶査定不服審判において新拒絶理由が発見された場合にも及ぶものである。また,同法53条1項(同法159条1項により読み替えて準用される場合を含む。により特許請求の範囲の記載についてした補正が却下された場合には,)
既に拒
絶理由が通知された補正前の特許請求の範囲の記載(以下,
「補正前クレーム」とい
う。により拒絶理由の有無が判断されることになるから,

拒絶査定又は拒絶査定不
服審判請求不成立審決に至ることが少なくないが,審査段階において同法17条の2第1項3号所定の補正(以下,
「3号補正」という。
)がされた場合には,従前の
拒絶理由通知に示されていなかった新たな刊行物
(以下,
「新規引用文献」
という。

に基づく独立特許要件違反を理由として,その3号補正が却下され,補正前クレームに基づいて拒絶査定がされたとしても,拒絶査定不服審判請求等において補正後の特許請求の範囲の記載(以下,
「補正後クレーム」という。
)に基づく独立特許要
件違反の判断の当否や補正前クレームに基づく拒絶理由の判断の当否を争い得ることに加え,審判請求時補正により,新規引用文献に基づく拒絶理由を回避するための補正をする機会がある。これに対し,新規引用文献に基づく独立特許要件違反を理由として,審判請求時補正が却下され,補正前クレームに基づいて拒絶査定不服審判請求不成立審決がされてしまうと,審決取消訴訟において補正後クレームに基づく独立特許要件違反の判断の当否や補正前クレームに基づく拒絶理由の判断の当否を争うことはできるものの,審査段階における3号補正の場合とは異なり,新規引用文献に基づく拒絶理由を回避するための補正をする機会が残されていない点において,出願人にはより過酷であるということができる。
さらに,同法53条1項(同法159条1項により読み替えて準用される場合を含む。において,

3号補正及び審判時請求補正が独立特許要件に違反しているとき
はその補正を却下しなければならない旨が定められ,同法50条ただし書(同法159条2項により読み替えて準用される場合を含む。
)において,同法53条1項
(同法159条1項により読み替えて準用される場合を含む。
)により3号補正及
び審判請求時補正を却下する決定をするときは拒絶理由通知を要しない旨が定められたのは,平成5年改正によるものであるが,同改正においては,3号補正及び審判請求時補正については,既に行われた審査結果を有効に活用することができる範囲とするとの観点から,その目的を特定のものに限定することが定められ(目的要件の創設)その一つとして限定的減縮が定められた

(平成5年法による改正後の特
許法17条の2第3項2号。この規定が平成6年法律第116号による特許法改正によって現行特許法17条の2第5項2号の規定となったが,実質的な変更を伴うものではない。。このような改正経緯に照らすと,平成5年改正は,審判請求時補)
正〔限定的減縮〕においては,審査段階における先行技術調査の結果を利用することを想定していたことが明らかであり,審判請求時補正〔限定的減縮〕を却下する際に,独立特許要件の判断において,審査段階において提示されていなかった新規引用文献を主たる引用例とするなど,審査段階において全く想定されていなかった判断をすることは,平成5年改正の本来の趣旨に沿わないものということができ,そのような場合に,同法159条2項により読み替えて準用される同法50条ただし書をそのまま適用することについては,慎重な検討を要するものということができる。
加えて,平成5年改正により,同法50条ただし書(同法159条2項により読み替えて準用される場合を含む。
)において,同法53条1項(同法159条1項に
より読み替えて準用される場合を含む。
)により3号補正及び審判請求時補正を却
下する決定をするときは拒絶理由通知を要しない旨が定められたのは,再度拒絶理由が通知され,審理が繰り返し行われることを回避する点にあると解される。もとより,審理が繰り返し行われることを回避することにより,審査・審判全体の効率性を図ることは,重要ではあるが,新規引用文献に基づく独立特許要件違反を理由として審判請求時補正を却下せずに,この新規引用文献に基づく拒絶理由を通知したとしても,限定的減縮である審判請求時補正による補正後クレームについて,特許法17条の2第3項~6項による制限の範囲内で補正することができるにすぎないから,審理の対象が大きく変更されることは考え難く,そのような審理の繰返しを避けるべき強い理由があるということはできない。他方,前記のとおり,新規引用文献に基づく独立特許要件違反を理由として,審判請求時補正が却下されて,補正前クレームに基づいて拒絶査定不服審判請求不成立審決がされた場合には,新規引用文献に基づく独立特許要件違反を理由として,審査段階における3号補正が却下されて,補正前クレームに基づいて拒絶査定がされた場合とは異なり,新規引用文献に基づく拒絶理由を回避するための補正の機会が残されていない点において,出願人にはより過酷であり,この補正の機会の有無により,最終的に特許査定を得られるか否かが左右されるという重大な結果を招く可能性もある。なお,平成27年9月改訂の審査基準では,限定的減縮を目的とする3号補正について,補正後クレームに新規性(同法29条1項)
,進歩性(同条2項)
,拡大先
願(同法29条の2)及び先願(同法39条)に係る拒絶理由が存在する場合で,補正前クレームに係る最後の拒絶理由通知において,上記拒絶理由に対応する拒絶理由を通知していなかったときは,その理由で補正を却下してはならず,補正後クレームに基づいて拒絶理由通知をするものとされている(甲25,乙7)。
以上の諸点を考慮すると,特許法159条2項により読み替えて準用される同法50条ただし書に当たる場合であっても,特許出願に対する審査・審判手続の具体的経過に照らし,出願人の防御の機会が実質的に保障されていないと認められるようなときには,同法159条2項により準用される同法50条本文に基づき拒絶理由通知をしなければならず,しないことが違法になる場合もあり得るというべきである。
(4)本件においては,
前記(1)のとおり,
本件拒絶査定の理由は,
本件先願を理由
とする拡大先願(特許法29条の2)であるのに対し,審決が本件補正を却下した理由は,刊行物1を理由とする新規性欠如(同法29条1項3号)及び進歩性欠如(同条2項)であって,適用法条も,引用文献も異なるものである。刊行物1は,本件補正を受けた前置報告書において初めて原告に示されたものであるが,刊行物1に基づく拒絶理由通知はされていないことから,原告には,刊行物1に基づく拒絶理由を回避するための補正をする機会はなかった。
なお,刊行物1の出願人は原告自身ではあるものの,後記2のとおり,刊行物1記載の引用発明1及び引用発明2は,
本願補正発明の
「特定演出」
又は
「特別演出」
の構成を欠くものと認められ,
「特定演出」及び「特別演出」は本願発明の発明特定
事項でもあることからすると,原告において,本件補正までに,刊行物1に基づく拒絶理由を回避するための補正をしておくべきであったものということもできず,その他,刊行物1に基づく拒絶理由通知がなくても原告の防御の機会が実質的に保障されていたと認められる特段の事情も見当たらない。
以上の本願に対する審査・審判手続の具体的経過に照らすと,刊行物1に基づく拒絶理由通知がされていない審決時において,原告の防御の機会が実質的に保障されていないと認められるから,審判合議体は,同法159条2項により準用される同法50条本文に基づき,新拒絶理由に当たる刊行物1に基づく拒絶理由を通知すべきであったということができる。それにもかかわらず,上記拒絶理由通知をすることなく本件補正を却下した審決には,同法159条2項により準用される同法50条本文所定の手続を怠った違法があり,この違法は審決の結論に影響を及ぼすものと認められる。これに反する被告の主張を採用することはできない。(5)被告は,
原告は,
刊行物1に基づく新拒絶理由が記載されている前置報告書
(甲22)に対して上申書(甲23)を提出しており,この新拒絶理由に対し意見を述べる機会があったと主張する。
しかし,
原告が上申書により刊行物1に基づく新拒絶理由に対し反論したことは,前記(1)ウのとおりであるが,原告に対し刊行物1に基づく拒絶理由通知はされていないことから,原告には,刊行物1に基づく拒絶理由を回避するための補正をする機会がなかったことに変わりはないのであって,原告の上記反論の存在を加味しても,前記(4)のとおり,刊行物1に基づく拒絶理由通知がされていない審決時において,原告の防御の機会が実質的に保障されていないと認められるとの判断が左右されるものではない。
(6)以上によると,
拒絶理由通知欠缺による手続違背をいう取消事由1は,
理由
がある。
2
取消事由2(独立特許要件違反の判断〔新規性・進歩性判断〕の誤り)につ
いて
(1)本願補正発明について

本願明細書には,以下の記載がある。
(ア)技術分野

【0001】
本発明は,たとえば,スロットマシンに関する。詳しくは,各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を備え,前記可変表示部を変動表示した後,前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し,該表示結果に応じて入賞が発生可能なスロットマシンに関する。
(イ)背景技術
【0002】
スロットマシンは,一般に,外周部に識別情報としての複数種類の図柄が描かれた複数(通常は3つ)のリールを有する可変表示装置を備えており,各リールは,遊技者がスタートレバーを操作することにより回転を開始し,また,遊技者が各リールに対応して設けられた停止ボタンを操作することにより,その操作タイミングから予め定められた最大遅延時間の範囲内で回転を停止する。そして,全てのリールの回転を停止したときに導出された表示結果に従って入賞が発生する。【0003】
入賞となる役の種類としては,小役,特別役,再遊技役といった種類がある。ここで,小役の入賞では,小役の種類毎に定められた数のメダルが払い出されるという利益を遊技者が得ることができる。特別役の入賞では,次のゲームからレギュラーボーナスやビッグボーナスといった遊技者にとって有利な遊技状態へ移行されるという利益を遊技者が得ることができる。再遊技役の入賞では,賭数の設定に新たなメダルを消費することなく次のゲームを行なうことができるという利益を得ることができる。
【0004】
各役の入賞が発生するためには,一般的には,事前(通常はスタートレバー操作時)に行なわれる内部抽選で当選することが条件となる。そして,内部抽選に当選している役を構成する図柄の組合せを有効なラインに揃えるようにするとともに,内部抽選に当選していない役を構成する図柄の組合せを有効なラインに揃えないようにするリール制御が行なわれる。
(ウ)発明が解決しようとする課題
【0007】
しかしながら,いまいち,面白みを向上させることができなかった。【0008】
この発明の目的は,かかる実情に鑑み考え出されたスロットマシンを提供することである。
(エ)課題を解決するための手段
【0009】
各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を備え,前記可変表示部を変動表示した後,前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し,
該表示結果に応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて,
有利状態に制御するための有利量を付与することを決定する有利量付与決定手段と,
付与された有利量を消費することによって前記有利状態に制御する有利状態制御手段と,
前記有利量付与決定手段により決定された有利量の付与を前記有利状態中において報知可能な特定演出を実行する特定演出実行手段と,
前記有利量付与決定手段により決定された有利量の付与を前記特定演出とは異なる特別演出を実行することで報知する有利量付与報知手段とを備え,前記有利量付与報知手段は,前記有利量付与決定手段により有利量を付与することが前記特定演出の実行中に決定されたときには,当該特定演出の終了後に前記特別演出を実行することが可能であり,
有利量の付与を報知する前記特定演出の実行中に前記有利量付与決定手段により有利量を付与することが決定されたときには,当該特定演出を実行することで有利量の付与を報知し,当該特定演出の実行中に付与することが決定された有利量の付与を当該特定演出終了後に前記特別演出を実行することで報知する。なお,以下の構成を備えるものであってもよい。
(1)

1ゲームに対して賭数を設定することによりゲームが開始可能となると
ともに,表示状態を変化させることが可能な可変表示装置に表示結果が導出されることにより1ゲームが終了し,該可変表示装置の表示結果に応じて入賞が発生可能とされたスロットマシン(スロットマシン1)であって,
前記可変表示装置に表示結果が導出される前に,複数種類の入賞について発生を許容するか否かを決定する事前決定手段(内部抽選処理)と,
前記可変表示装置に表示結果を導出させるための操作を受付ける導出操作受付手段(ストップスイッチ8L~8R)と,
前記事前決定手段の決定結果および前記導出操作受付手段が受付けた操作に応じて,前記可変表示装置に表示結果を導出させる制御を行なう導出制御手段(リール回転処理)と,
特典(ナビストック,ポイントなど)を付与する特典付与手段(図26のSM10)と,
充足することによって前記特典の付与が行なわれることを報知する達成条件を提示する達成条件提示手段(図26のSM04)と,
前記達成条件提示手段により前記達成条件が提示されているか否かに関わらず,予め定められた移行条件が成立しているときにおいて,当該移行条件および前記導出操作受付手段が受付けた操作手順に応じて,複数の遊技状態(RT1,RT2,高確率状態,
低確率状態など)
の間で遊技状態を制御する遊技状態制御手段
(図6,
図14(b)参照)と,
所定の情報(有利状態に移行させるための操作手順)を報知する報知手段(図26のSM11)とを備え,
前記複数の遊技状態は,前記達成条件提示手段により提示されている達成条件を充足させる割合が所定割合である所定遊技状態と該所定遊技状態であるときよりも高い有利遊技状態(たとえば,ミッション演出1については,達成割合が高いRT2と,達成割合が低いRT1)とを含み,
前記報知手段は,前記達成条件提示手段により達成条件が提示されている場合でかつ前記所定遊技状態に制御されている場合(たとえば,ミッション演出1が実行されており,RT1に制御されている場合)において,前記導出操作受付手段が受付けた操作手順に応じて前記有利遊技状態に制御可能となる移行条件が成立したとき(たとえば,RT2に移行させるための昇格リプレイに当選したとき)に,当該有利遊技状態に制御させる操作手順を特定するための情報(昇格リプレイを入賞させるための操作手順)を報知する。
【0017】
(2)

上記(1)のスロットマシンにおいて,前記達成条件提示手段は,前記
達成条件の提示を開始するときの遊技状態が前記有利遊技状態となるように,前記達成条件を提示する(図26のSM04参照)

【0020】
(3)

上記(1)または(2)のスロットマシンにおいて,前記達成条件は,
前記事前決定手段の決定結果が特定結果(リプレイ当選,あるいははずれ)となったことを条件として成立し,
前記有利遊技状態は,
前記事前決定手段の決定結果が前記特定結果となる割合が,
前記所定遊技状態であるときよりも高い遊技状態である(たとえば,リプレイ当選確率は,RT1であるときよりもRT2の方が高くなるように設定されている)。
【0023】
(4)

上記(1)または(2)のスロットマシンにおいて,前記事前決定手段
による有利度
(設定値)
を設定する有利度設定手段
(設定変更を行なうための処理)
と,
前記事前決定手段が用いるデータであって,前記有利度設定手段により有利度が新たに設定される場合でも初期化されることのない第1モードデータ(RTフラグ)
と,前記有利度設定手段により有利度が新たに設定される場合に初期化される第2モードデータ(内部中RTまたはBBを示す遊技状態フラグ)と,を含むモードデータを設定するモードデータ設定手段と,
前記第2モードデータが設定される場合に前記第1モードデータを初期化する第1モードデータ初期化手段とを備え,
前記事前決定手段は,
前記第2モードデータが設定されている場合に,該第2モードデータを用いて入賞の発生を許容するか否かを決定し,
前記第2モードデータが設定されていない場合に,前記第1モードデータを用いて入賞の発生を許容するか否かを決定する(図9~図13参照)。
【0036】
(5)

上記(1)~(4)のいずれかのスロットマシンにおいて,

所定期間(50ゲーム)に亘り,前記事前決定手段の決定結果に応じた決定結果情報を報知する決定結果情報報知手段(ATモード中におけるナビ演出を実行するための処理)と,
前記所定期間における残り期間が特定期間(5ゲーム)となるまでに,前記所定期間が経過した後においても継続して前記決定結果情報を報知するか否かを決定する継続決定手段(継続抽選,図25)と,
前記特定期間において,前記継続決定手段で継続すると決定したときに特定演出(連続演出)を実行する演出実行手段(図30,31参照)と,
前記所定期間における残り期間が特定期間(5ゲーム)となるまでに所定の特別条件(特別条件,イチゴ当選)が成立したことを条件に,前記決定結果情報を報知する期間を前記所定期間よりも短い期間(10ゲーム)延長する第1延長手段と,前記所定期間における残り期間が前記特定期間となってから当該所定期間が経過するまでに前記特別条件が成立したことを条件に,前記決定結果情報を報知する期間を,前記所定期間以上の期間(50ゲーム,60ゲーム)延長する第2延長手段とを備え,
前記演出実行手段は,前記継続決定手段で継続しないと決定したときであっても前記第2延長手段により前記所定期間以上の期間延長する場合に,前記特定演出を実行する(図31(c)
(d)参照)

【図30】

【図31】

【0037】
このような構成によれば,所定期間における残り期間が特定期間となるまでにおいては,特別条件が成立して決定結果情報を報知する期間が延長されることに対する期待感を抱かせることができる。また,残り期間が特定期間となったときには,特定演出によって,所定期間が経過した後においても継続して決定結果情報が報知されるか否かを煽ることができる。さらに,残り期間が特定期間となってから所定期間が経過するまでに特別条件が成立することに対する期待感を抱かせることができる。
【0038】
上記(5)のスロットマシンにおいて,前記演出実行手段は,前記継続決定手段で継続しないと決定したときであっても前記第2延長手段により前記所定期間以上の期間延長する場合に,
前記特定演出が終了した後において特別演出を実行する
(図
31(e)参照)

【0039】
このような構成によれば,特定演出が終了した後に特別条件の成立に応じて特別演出が実行されるため,特定演出を阻害することなく特別条件成立によって,決定結果情報を報知する期間が延長されることを報知することができる。また,このように特定演出が終了した後に特別演出が実行された場合には,決定結果情報を報知する期間が,所定期間以上の期間延長されるため,残り期間が特定期間となってから特別条件が成立したにも関わらず短い期間しか延長されないものと比較して,遊技者に満足感を与えることができる。
(オ)発明を実施するための形態
【0059】
本実施の形態のスロットマシン1においてゲームを行なう場合には,まず,メダルをメダル投入部4から投入するか,あるいはクレジットを使用して賭数を設定する。クレジットを使用するには1枚BETスイッチ5,またはMAXBETスイッチ6を操作すればよい。
遊技状態に応じて定められた規定数の賭数が設定されると,
入賞ラインL1~L4(図1参照)のうち遊技状態に応じて定められた入賞ラインが有効となり,スタートスイッチ7の操作が有効な状態,すなわち,ゲームが開始可能な状態となる。遊技状態に対応する規定数を超えてメダルが投入された場合には,その分はクレジットに加算される。
【図1】

【0060】
入賞ラインとは,各リール2L,2C,2Rの透視窓3に表示された図柄の組合せが入賞図柄の組合せであるかを判定するために設定されるラインである。本実施の形態では,図1に示すように,リール2Lの上段,リール2Cの中段,リール2Rの下段,すなわち右下がりに並んだ図柄に跨って設定された入賞ラインL1,リール2Lの下段,リール2Cの中段,リール2Rの上段,すなわち右上がりに並んだ図柄に跨って設定された入賞ラインL2,
リール2Lの上段,
リール2Cの中段,
リール2Rの上段,すなわちV字型に並んだ図柄に跨って設定された入賞ラインL3,リール2Lの下段,リール2Cの中段,リール2Rの下段,すなわち逆V字型に並んだ図柄に跨って設定された入賞ラインL4,の4種類が入賞ラインとして定められており,通常遊技状態,準備モード,RT,ビッグボーナス,レギュラーボーナスにおいては規定数の賭数が設定されると入賞ラインL1~L4の全てが有効となる。なお,入賞ラインは,L1~L4に示すラインに限らず,たとえば各リール2L,2C,2Rの上段に並んだ図柄に跨るライン,各リール2L,2C,2Rの中段に並んだ図柄に跨るライン,各リール2L,2C,2Rの下段に並んだ図柄に跨るラインなどを含むものであってもよい。
【0061】
ゲームが開始可能な状態でスタートスイッチ7を操作すると,各リール2L,2C,2Rが回転し,各リール2L,2C,2Rの図柄が連続的に変動する。この状態でいずれかのストップスイッチ8L,8C,8Rを操作すると,対応するリール2L,2C,2Rの回転が停止し,透視窓3に表示結果が導出表示される。【0062】
そして全てのリール2L,2C,2Rが停止されることで1ゲームが終了し,有効化されたいずれかの入賞ラインL1~L4上に予め定められた図柄の組合せ(以下,役とも呼ぶ)が各リール2L,2C,2Rの表示結果として停止した場合には入賞が発生し,その入賞に応じて定められた枚数のメダルが遊技者に対して付与され,
クレジットに加算される。
また,
クレジットが上限数
(本実施の形態では50)
に達した場合には,メダルが直接メダル払出口9(図1参照)から払い出されるようになっている。なお,有効化された複数の入賞ライン上にメダルの払出を伴う図柄の組合せが揃った場合には,有効化された入賞ラインに揃った図柄の組合せそれぞれに対して定められた払出枚数を合計し,合計した枚数のメダルが遊技者に対して付与されることとなる。ただし,1ゲームで付与されるメダルの払出枚数には,上限(本実施の形態では,15枚)が定められており,合計した払出枚数が上限を超える場合には,上限枚数のメダルが付与されることとなる。また,有効化されたいずれかの入賞ラインL1~L4上に,遊技状態の移行を伴う図柄の組合せが各リール2L,2C,2Rの表示結果として停止した場合には図柄の組合せに応じた遊技状態に移行するようになっている。
【0063】
また,本実施の形態におけるスロットマシン1にあっては,ゲームが開始されて各リール2L,2C,2Rが回転して図柄の変動が開始した後,いずれかのストップスイッチ8L,8C,8Rが操作されたときに,当該ストップスイッチ8L,8C,8Rに対応するリールの回転が停止して図柄が停止表示される。ストップスイッチ8L,8C,8Rの操作から対応するリール2L,2C,2Rの回転を停止するまでの最大停止遅延時間は190ms(ミリ秒)である。リール2L,2C,2Rは,1分間に80回転し,80×21(1リール当たりの図柄コマ数)=1680コマ分の図柄を変動させるので,190msの間では最大で4コマの図柄を引き込むことができることとなる。つまり,停止図柄として選択可能なのは,ストップスイッチ8L,8C,8Rが操作されたときに表示されている図柄と,そこから4コマ先までにある図柄,合計5コマ分の図柄である。
【0098】
本実施の形態のスロットマシン1においては,可変表示装置2のいずれかの入賞ライン上に役図柄が揃うと,入賞となる。入賞となる役の種類は,遊技状態に応じて定められているが,大きく分けて,ビッグボーナス,レギュラーボーナスへの移行を伴う特別役と,メダルの払い出しを伴う小役と,賭数の設定を必要とせずに次のゲームを開始可能となる再遊技役とがある。
なお,
ビッグボーナスをBBと示し,
ビッグボーナス中に提供されるレギュラーボーナスをRBと示す場合がある。また,
ビッグボーナス,レギュラーボーナスを単にボーナスという場合もある。遊技状態に応じて定められた各役の入賞が発生するためには,内部抽選に当選して,当該役の当選フラグがRAM41cに設定されている必要がある。
【0100】
本実施の形態におけるスロットマシンは,図6に示すように,メイン制御部41により,ボーナス終了後に制御される準備モード,所定条件が成立(後述する準備モードあるいはRT2において特殊出目停止,あるいは通常遊技状態において32ゲーム消化)することにより制御されるRT1,RT1において所定の有利条件が成立(後述する昇格リプレイ入賞)することにより制御されるRT2,RT1やRT2などの有利な状態において所定の終了条件が成立
(後述する転落リプレイ入賞)
することにより制御される通常遊技状態,ボーナス内部当選したときに制御される内部中RT,およびボーナス入賞により制御されるボーナスのうち,いずれかに制御される。RT1およびRT2は,各々,後述するように再遊技役の当選率が極めて高確率となる点において,準備モードおよび通常遊技状態よりも遊技者にとって有利な状態といえる。なお,RT1およびRT2を,RT,有利な状態などという場合もある。
【0101】
また,本実施の形態におけるスロットマシンは,上記のように,メイン制御部41により,遊技状態を準備モード,RT1,RT2,通常遊技状態,内部中RT,ボーナスに制御可能となる。
【0102】
図5
(a)を参照して,
入賞役のうち特別役には,ビッグボーナス1~5(以下,
各々のビッグボーナスをBBと称する)の5種類のボーナスが含まれる。【0110】
次に,入賞役のうち小役について説明する。入賞役のうち小役には,ブドウ1~ブドウ8,バナナブドウ1~バナナブドウ12,メロン,イチゴ1,イチゴ2,1枚役1,1枚役2が含まれる。
【0121】
次に,入賞役のうち再遊技役について説明する。入賞役のうち再遊技役には,通常リプレイ,
昇格リプレイ,
転落リプレイ1,
転落リプレイ2,
制御用リプレイ1,
制御用リプレイ2が含まれる。再遊技役のいずれかに入賞したときには,メダルの払い出しはないが次のゲームを改めて賭数を設定することなく開始できるので,次のゲームで設定不要となった賭数に対応した枚数分のメダルが払い出されるのと実質的には同じこととなる。
【0146】
本実施の形態においては,各役および役の組合せの判定値数から,小役や再遊技役などの一般役,特別役がそれぞれ単独で当選する判定値の範囲と,一般役のいずれかと特別役とが重複して当選する判定値の範囲と,が特定されるようになっており,内部抽選における当選は,排他的なものではなく,1ゲームにおいて一般役と特別役とが同時に当選することがあり得る。ただし,種類の異なる特別役については,重複して当選する判定値の範囲が特定されることがなく,種類の異なる特別役については,排他的に抽選を行なうものである。
【0156】
以上より,RT1,RT2,RT3ともいう通常遊技状態,およびRT4ともいう準備モード各々における,いずれかのリプレイに当選する確率は,上記割り当てられた判定値数の合計から,以下のようになる。
通常遊技状態であるときのリプレイ当選確率・・・

8935/65536

準備モードであるときのリプレイ当選確率・・・・

8935/65536

RT1であるときのリプレイ当選確率・・・・・・32768/65536RT2であるときのリプレイ当選確率・・・・・・47000/65536これらより,本実施の形態においては,いずれかのリプレイに当選する確率が,RT1およびRT2であるときに高くなり,通常遊技状態および準備モードであるときに低くなるように設定されている。このため,RT1およびRT2は,通常遊技状態あるいは準備モードであるときよりも,リプレイの当選確率が高い点で,遊技者にとって有利な状態であるといえる。また,RT1よりもRT2であるときの方が,いずれかのリプレイに当選する確率が高くなるように設定されている。【0171】
また,本実施の形態では,引込コマ数として0~4の値が定められており,停止操作を検出してから最大4コマ図柄を引き込んでリールを停止させることが可能である。すなわち停止操作を検出した停止操作位置を含め,最大5コマの範囲から図柄の停止位置を指定できるようになっている。また,1図柄分リールを移動させるのに1コマの移動が必要であるので,停止操作を検出してから最大4図柄を引き込んでリールを停止させることが可能であり,停止操作を検出した停止操作位置を含め,最大5図柄の範囲から図柄の停止位置を指定できることとなる。【0172】
本実施の形態では,いずれかの役に当選している場合には,当選役を入賞ライン上に4コマの範囲で最大限引き込み,当選していない役が入賞ライン上に揃わないように引き込む引込コマ数が定められた停止制御テーブルを作成し,リールの停止制御を行なう一方,いずれの役にも当選していない場合には,いずれの役も揃わない引込コマ数が定められた停止制御テーブルを作成し,
リールの停止制御を行なう。
これにより,停止操作が行なわれた際に,入賞ライン上に最大4コマの引込範囲で当選している役を揃えて停止させることができれば,これを揃えて停止させる制御が行なわれ,当選していない役は,最大4コマの引込範囲でハズシて停止させる制御が行なわれることとなる。
【0205】
BET処理により賭数が設定され,スタートスイッチ7が操作されると,内部抽選用の乱数を抽出し,抽出した乱数の値に基づいて遊技状態に応じて定められた各役への入賞を許容するかどうかを決定する内部抽選処理を行なう。抽選処理では,抽選結果に応じてRAM41cに設定されている当選フラグの設定状況を示す内部当選コマンドが演出制御基板90に送信される。また,抽選処理では,BB1~BB5のいずれかに当選したときに,内部中RTに制御するための処理(たとえば,遊技状態フラグの値に内部中RTフラグの値を設定など)が行なわれる。【0239】
本実施の形態におけるナビ演出としては,遊技者にとって有利となる図柄組合せ(たとえば,昇格リプレイ・通常リプレイ,ブドウ1~8)を導出させるための有利操作手順を特定可能に報知する完全ナビ演出,遊技者が有利操作手順で操作する可能性を高めるために有利操作手順以外の操作手順を特定可能に報知して操作手順を絞り込ませる一部ナビ演出が設けられている。
【0240】
より具体的に,たとえば左押しリプに当選したときには,左リールを第1停止させることにより有利となる図柄組合せとして昇格リプレイを入賞させることができるため,完全ナビ演出として「第1に左!」といったメッセージが,一部ナビ演出として「右ではないぞ!」あるいは「中ではないぞ!」といった操作手順の選択肢を2択に絞り込むメッセージが,液晶表示器51に表示される。
【0241】
また,中押しブドウ1に当選したときには,中リールを第1停止させることにより有利となる図柄組合せとしてブドウ1~8のいずれかを確実に入賞させることができるため,完全ナビ演出として「第1に中!」といったメッセージが,一部ナビ演出として「左ではないぞ!」あるいは「右ではないぞ!」といったようい〔判決注・
「といったように」の誤記と認める。
〕操作手順の選択肢を2択に絞り込むメッ
セージが,液晶表示器51に表示される。
【0242】
なお,ナビ演出の態様は,このような態様に限らず,遊技者が当選状況に応じて区別可能な態様であればどのようなものであってもよい。また,ナビ演出は,液晶表示器51に表示するものに限らず,演出効果LED52,スピーカ53,54,リールLED55等を用いて実行するものであってもよい。
【0243】
また,RT中における演出状態としては,アシストタイムモード(ATモード),
チャンスゾーンモード(CZモード)
,デンジャラスモード(DZモード)
,および
ノーマルモードが設けられている。所定の抽選条件が成立したときに,サブ制御部91により実行される演出状態抽選により,
RT中における演出状態は決定される。
また,サブ制御部91により実行される演出状態制御処理により,RT1に制御されるときに,決定されている演出状態に制御される。以下,演出状態について,図14(a)を参照して説明する。図14(a)は,サブ制御部91により制御されるRT中の演出状態の遷移を説明するための図である。
【0244】
[ATモードについて]
ATモードは,特定の当選状況となったときに必ず完全ナビ演出を実行する演出状態をいう。ATモードは,図14(a)に示すように,所定期間として50ゲームに亘り制御される。ATモードは,ナビストック数を上限として,付与されているナビストック数を1消費する毎に繰り返し制御可能となる。ナビストックは,後述するように,演出状態抽選でATモードに当選したときにランダムに決定されて付与される。
【0245】
ATモードにおいて所定期間経過したときで,ナビストック数が1以上であるときに,当該ATモードに引き続きATモードに制御するか否か,すなわち継続させるか否かを抽選する継続抽選がサブ制御部91により行なわれる。【0246】
継続抽選の結果にしたがって,継続させると決定されたときには,図14(a)に示すように,ナビストック数を1消費して,ATモードに継続して制御させる。なお,ATモードへの制御を開始するタイミングは,次のゲームが開始されるときであってもよく,あるいは一旦演出状態をDZモードに制御させた後,転落リプレイに当選したゲームが開始されるときであってもよい。
【0247】
一方,継続させないと決定されたときには,図14(a)に示すように,演出状態がDZモードに制御される。なお,継続抽選において継続させないと決定されたときには,ATモードへの制御を再開する再開タイミングが決定され,当該再開タイミングに到達したときにATモードに制御される。
再開タイミングは,
たとえば,
通常遊技状態に一旦制御された後再びRT1に制御されるタイミング,2回通常遊技状態に制御された後再びRT1に制御されるタイミング,ボーナス当選して終了したタイミングなど,複数タイミングのうちいずれかあるいは抽選で決定されたタイミングであってもよい。
【0248】
ATモードにおいて所定期間経過したときで,ナビストック数が0であるときには,演出状態をDZモードに制御される。このため,ATモードからDZモードに制御されたときに,ナビストックが残存しているか否かを特定不能にすることにより,ナビストックが残存しており再びATモードに制御されることに対する期待感を持続させることができる。
【0249】
[CZモード,DZモード,ノーマルモードについて]
CZモードは,特定の当選状況となったときに,所定の実行割合にしたがってナビ演出を実行するか否かを決定し,実行すると決定されたときに一部ナビ演出を実行し,実行しないと決定されたときに特定の当選状況のうちのいずれかとなっている旨のみを報知する演出状態をいう。実行割合は,後述するように,演出状態抽選でCZモードに決定されたときに複数種類から決定される。
【0250】
DZモードは,特定の当選状況となったときに,特定の当選状況のいずれかとなっている旨のみを報知する演出状態をいう。ノーマルモードは,特定の当選状況となったときにおいて当該当選状況に起因して何らの報知も行なわない演出状態をいう。
【0251】
RTに制御されるときであって,ノーマルモード,DZモード,およびCZモードのいずれかの演出状態に制御されているときであっても,図14(a)に示すように,
転落リプレイ入賞させることなく所定回数として10ゲーム消化したときに,サブ制御部91により実行される演出状態制御処理により,ATモードに制御される。なお,ATモードに制御するタイミングは,次のゲームが開始されるときであってもよく,あるいは転落リプレイに当選したゲームが開始されるときであってもよい。
【0252】
ここで,演出状態の有利度合いについて検討する。RT中において,ノーマルモード,DZモード,およびCZモードのいずれかに演出状態が制御されているときには,一部ナビ演出が実行されるかナビ演出が実行されない。このため,転落リプレイ入賞を意図的に回避することができない。一方,RT中に,ATモードに演出状態が制御されているときには,完全ナビ演出が必ず実行される。このため,転落リプレイ入賞を意図的に回避することができる。よって,ATモードは,ノーマルモード,DZモード,およびCZモードよりも遊技者にとって有利度合いが高い演出状態であるといえる。
【0265】
演出状態抽選では,遊技の進行に応じて付与されるポイントの量に応じて,ポイントの量が多いほど遊技者にとって有利度合いが高い演出状態に高い割合で決定される。本実施の形態におけるスロットマシンにおいては,RT中において,演出状態抽選により決定された演出状態に制御し,当該演出状態に応じて前述したナビ演出が実行される。
【0333】
本実施の形態におけるスロットマシンでは,上記のようにして付与された付与ポイント総数に応じて,サブ制御部91により演出状態制御処理が行なわれる。演出状態制御処理では,所定の抽選条件が成立したときに演出状態抽選を行なうための演出状態抽選処理,ATモードに制御する期間を特定するためのナビストック数を抽選するナビストック数抽選処理,CZモードにおいて一部ナビ演出が実行される実行割合を抽選するための実行割合抽選処理,ATモードに継続して制御させるか否かを抽選するための継続抽選処理
(これらの抽選を,
以下では各種抽選ともいう)
が行なわれる。
【0334】
演出状態抽選処理では,図20~図22に示すテーブルのうち成立した抽選条件に応じたテーブルを用いて,付与ポイント総数に応じた当選率に従って,複数種類の演出状態のうちから一の演出状態が抽選により決定される。
【0375】
図20~図22を参照して説明した演出状態抽選において,ATモードに決定されたとき,あるいはRTにおける演出状態がATモード以外であるときに転落リプレイ入賞することなく所定回数ゲーム消化されたときには,当該ATモードに制御する期間を特定するためのナビストック数を抽選するナビストック数抽選処理がサブ制御部91により実行される。
【0390】
また,ATモードにおいて45ゲーム消化したときであって,ナビストック数が1以上残存している場合には,ナビストックを1消費してATモードに継続して制御させるか否かを抽選するための継続抽選処理がサブ制御部91により実行される。【0396】
また,ATモード中において特別条件が成立したときには,ATモードに制御されるゲーム数に所定ゲーム数加算(上乗せ)するか否かを抽選するための上乗せ抽選処理がサブ制御部91により実行される。特別条件は,予め定められた条件であればよく,たとえばイチゴ1+イチゴ2など,イチゴ1を含む抽選対象役に当選することにより成立する。また,上乗せ抽選処理は,特別条件成立時のATモードの残りゲーム数,および継続抽選で継続成功に決定されているか否かに応じて,異なる割合にしたがって,上乗せされるゲーム数が決定される。
【0397】
たとえば,ATモードの残りゲーム数が6ゲーム以上であるときに特別条件が成立したときの上乗せ抽選処理では,50%の確率で上乗せすると決定されて,10ゲームが加算される。また,ATモードの残りゲーム数が5ゲーム以下であるときに特別条件が成立したときであって,継続抽選で継続成功に決定されているときの上乗せ抽選処理では,50%の確率で上乗せすると決定されて,10ゲームが,継続することが決定されている次のATモードのゲーム数に加算される。これにより,
次のATモードのゲーム数が,60ゲームとなる。
【0398】
一方,ATモードの残りゲーム数が5ゲーム以下であるときに特別条件が成立したときであって,
継続抽選で継続失敗に決定されているときの上乗せ抽選処理では,10%の確率で上乗せすると決定されて,ナビストックを消費することなく,50ゲームに亘りATモードに制御される。
【0399】
このように,ATモードの残りゲーム数が,5ゲーム以下であって,継続失敗に決定されているときに,特別条件が成立したときには,ナビストックを1消費してATモードに制御されるゲーム数と同じゲーム数に亘りATモードに制御されることとなり,遊技者に対する期待感を煽ることができる。なお,ATモードの残りゲーム数が5ゲーム以下であって,継続失敗に決定されているときに,特別条件が成立したときにATモードに制御されるゲーム数は,ナビストックを1消費してATモードに制御されるゲーム数以上であればよく,たとえば60ゲームなどであってもよい。
【0436】
また,RTであるときであって,演出状態がATモードであるときには,AT用演出が行なわれる。ここで,図29~図31を用いて,AT用演出の一例について説明する。図29~図31は,AT用演出の一例を説明するための図である。ここでは,AT用演出は,液晶表示器51の所定表示領域において実行される例について説明する。
【0437】
図29は,ATモードの残りゲーム数が6ゲーム以上存在する場合に,イチゴ当選することにより10ゲーム上乗せされたときのAT用演出を説明する。図29
(a)
は,ATモードが開始されたときのAT用演出を示している。AT用演出として,所定表示領域内において,所定のキャラクタが草原を歩くような演出が行なわれるとともに,
所定表示領域の右上において,
ATモードの残りゲーム数が表示される。
なお,本実施の形態におけるATモード中においては,後述するように,残りゲーム数が5ゲームとなったときに連続演出が開始されるため,そのゲーム数を差し引いたゲーム数である45ゲームが表示される。このゲーム数は,ゲームが消化される毎に1ずつ減算表示される。
【図29】

【0438】
図29(b)は,15ゲーム消化したときのAT用演出を示している。所定表示領域の右上において,残り30ゲームであることが表示されている。また,図29(b)では,当該ゲームの内部抽選においてイチゴに当選して,上乗せ契機となる特別条件が成立している例を示している。特別条件が成立することにより,前述した上乗せ抽選処理が行なわれる。ここでは,上乗せ抽選処理によって10ゲーム加算に当選したとする。
【0439】
図29(c)は,上乗せ抽選の結果,残りゲーム数に10ゲーム加算表示されたときのAT用演出を示している。
上乗せ抽選により10ゲーム加算されたときには,
図29(c)に示すように,キャラクタがVサインをする動作表示が行なわれるとともに,残りゲーム数に10ゲーム加算されて,残り40ゲームであることが表示されている。
【0440】
次に,図30および図31を用いて,ATゲームの残りゲーム数が5ゲームとなり,連続演出が実行されたときのAT用演出を説明する。なお,図30では,連続演出実行中に特別条件が成立しなかったときの例を示す。また,図31では,連続演出実行中に特別条件が成立したときの例を示す。
【0441】
まず,図30を参照し,図30(a)では,残り0ゲームであることが表示されている。すなわち,ATモードの残りゲーム数が当該ゲームを含めて6ゲームであることが示されている。
【0442】
図30(b)では,次のゲームが開始されて連続演出が開始されたときの表示状態を示している。この状態でATモードの残りゲーム数が当該ゲームを含めて5ゲームとなる。
【0443】
連続演出は,所定期間(5ゲーム)にわたり一連の物語を展開する演出を行なった後に,物語の結末としてATモードが継続するか否かを報知する演出である。これにより,所定期間に亘って,ATモードが継続することを煽ることができ,遊技の興趣を向上させることができる。本実施の形態における連続演出は,「バトル開
始!」といったメッセージが表示されるとともに,剣を持った味方キャラクタと,槍を持った敵キャラクタとが表示されて開始され,味方キャラクタと敵キャラクタとが戦う演出を行なった後,たとえば味方キャラクタが勝利することによりATモードが継続することを報知し,味方キャラクタが敗北することによりATモードが継続しないことを報知する。
【0444】
図30(c)および(d)は,継続抽選で継続失敗に決定されており,ATモードが継続しないときに行なわれる連続演出を示している。図30(c)で示されるように,敵キャラクタからの攻撃を受けて,図30(d)で示されるように,味方キャラクタが倒れるとともに「LOSE」といったメッセージが表示されて,敗北したことが報知されている。これにより,ATモードが継続しないことを遊技者に報知することができる。
【0445】
図30(e)は,AT用演出が終了した後の演出を示している。図30(e)では,AT用演出が終了した後の演出例として,残りゲームが表示されず,キャラクタのみによる演出が行なわれている。これにより,ATモードでないことを遊技者に報知することができる。
【0446】
図30(f)および(g)は,継続抽選で継続成功に決定されており,ATモードが継続するときに行なわれる連続演出を示している。図30(f)で示されるように,敵キャラクタに攻撃を与えて,図30(g)で示されるように,敵キャラクタが倒れるとともに「WIN

+1set」といったメッセージが表示されて,勝
利したことおよびATモードが継続することが報知されている。これにより,ATモードが継続することを遊技者に明確に報知することができる。また,継続することに伴い,図30(h)に示すように,キャラクタがVサインをする動作表示が行なわれるとともに,残り45ゲームであることが表示される。
【0447】
次に,図31を参照し,図31(a)では,残り0ゲームであることが表示されている。図31(b)では,次のゲームが開始されて連続演出が開始されたときの表示状態を示している。なお,図31(b)では,当該ゲーム以降の連続演出中のゲームの内部抽選においてイチゴに当選して特別条件が成立している例を示している。
【0448】
特別条件が成立することにより,前述した上乗せ抽選処理が行なわれる。上乗せ抽選処理では,前述したように,すでに継続抽選で継続成功が決定されているときに当選すると,10ゲーム加算され,継続抽選で継続失敗が決定されているときに当選すると,50ゲーム加算されることになる。また,ゲーム数が加算されることに起因して,ATモードが継続するときに行なわれる連続演出,すなわち味方キャラクタが勝利する連続演出に書き換えられる。
【0449】
このため,図31(c)および(d)に示されるように,敵キャラクタに攻撃を与えて,敵キャラクタが倒れるとともに「WIN

+1set」といったメッセー

ジが表示されて,勝利したことおよびATモードが継続することが報知される。これにより,連続演出が終了する。
【0450】
図31(e)は,連続演出中においてイチゴ当選して特別条件が成立したことに伴って特別演出が実行されている表示状態を示している。連続演出中に,特別条件が成立して,上乗せされることが決定されたときには,当該連続演出が終了した後に,特別演出が実行される。図31(e)では,
「上乗せだ!」といったメッセージ
が表示されている。なお,図31(e)の特別演出については,特別条件が成立したときに必ず実行するものであってもよく,特別条件が成立したときに所定確率にしたがって実行するものであってもよく,特別条件が成立したときであっても実行しないものであってもよい。
【0451】
図31(f)は,継続抽選で継続失敗が決定されているときに,特別条件が成立して上乗せ当選することにより50ゲーム加算されたときの表示状態を示している。図31(f)に示すように,キャラクタがVサインをする動作表示が行なわれるとともに,残り45ゲームであることが表示される。
【0452】
図31(g)は,継続抽選で継続成功が決定されているときに,特別条件が成立して上乗せ当選することにより10ゲーム加算されたときの表示状態を示している。図31(g)に示すように,キャラクタがVサインをする動作表示が行なわれるとともに,残り55ゲームであることが表示される。
【0453】
なお,連続演出中に特別条件が成立して上乗せ当選したときに実行される特別演出は,継続抽選で継続成功と決定されているときと,継続失敗と決定されているときとで,異なる態様で実行するようにしてもよい。たとえば,継続抽選で継続成功と決定されていたときには,
「10ゲーム上乗せだ!」
といったメッセージを表示す
るのに対し,継続失敗と決定されていたときには,
「50ゲーム上乗せだ!」といっ
たメッセージを表示するようにしてもよい。
【0459】
(5)

前述した実施の形態によれば,ATモードにおける残りゲーム数が5ゲ
ームとなるまでにおいて,
特別条件が成立することにより,
ゲーム数が上乗せされ,
図29(c)で示したように,残りゲーム数が加算表示されることに対する期待感を抱かせることができる。また,ATモードにおける残りゲーム数が5ゲームとなったときには,図30(b)などで説明した連続演出が実行されることによって,ATモードが継続するか否かを煽ることができる。さらに,ATモードにおける残りゲーム数が5ゲームとなってから当該5ゲーム消化するまでに特別条件が成立することに対する期待感を抱かせることができるとともに,図31(e)で示したように,
連続演出が終了した後に特別条件の成立に応じて特別演出が実行されるため,特定演出を阻害することなく特別条件成立によって,ATモードに制御するゲーム数が上乗せされたことを報知することができる。また,このように特定演出が終了した後に特別演出が実行された場合には,上乗せされるゲーム数が,ナビストックを1消費したときと同じ50ゲームであるため,ATモードにおける残りゲーム数が5ゲームとなってから特別条件が成立したにも関わらず少ないゲーム数しか上乗せされないものと比較して,遊技者に満足感を与えることができる。イ
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載及び前記アの記載による
と,本願補正発明について,次のとおり認めることができる。
(ア)技術分野
本願補正発明は,各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を備え,可変表示部を変動表示した後,可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し,表示結果に応じて入賞が発生可能なスロットマシンに関するものである(
【0001】。

(イ)発明が解決しようとする課題
本願補正発明は,面白みを向上させるスロットマシンを提供することを目的とする(
【0007】【0008】。


(ウ)課題を解決するための手段
本願補正発明は,前記(イ)を目的とし,本願補正発明の構成を採用したものである(
【0009】。

(エ)発明を実施するための形態
a
1ゲームの流れ

本願補正発明の実施形態に係るスロットマシン1は,メダル投入又はクレジットにより賭数が設定され,
スタートスイッチ7が操作されると,
各リール2L,
2C,
2Rが回転し,
各リール2L,
2C,
2Rの図柄が連続的に変動する【0059】


【0061】【図1】。


スロットマシン1は,スタートスイッチ7が操作されたタイミングで,内部抽選用の乱数を抽出し,抽出した乱数の値に基づいて遊技状態(準備モード,RT1,RT2,通常遊技状態,内部中RT,ボーナス)に応じて定められた各役(特別役,小役,再遊技役)への入賞を許容するか(
「当選」
)を判定する内部抽選処理を行う

【0098】【0101】【0102】【0110】【0121】【0146】,





【0205】。

スロットマシン1は,いずれかのストップスイッチ8L,8C,8Rが操作されたときに,そのストップスイッチ8L,8C,8Rに対応するリール2L,2C,2Rの回転を停止させて図柄を表示する。このとき,内部抽選に当選している役を構成する図柄の組合せを有効なラインに極力揃えるようにするとともに,内部抽選に当選していない役を構成する図柄の組合せを有効なラインに極力揃えないようにするリール制御が行われる。全てのリール2L,2C,2Rが停止されることで1ゲームが終了し,有効化されたいずれかの入賞ラインに役を構成する図柄の組み合わせが各リール2L,2C,2Rの表示結果として停止した場合にはその役への入賞が発生し,
その入賞に応じて定められた枚数のメダルが遊技者に対して付与され,クレジットに加算される。また,遊技状態の移行を伴う役に入賞した場合は,次のゲーム以降その役に応じた遊技状態に移行する。【0062】【0063】【01(


71】【0172】


b
RT中の演出状態

スロットマシン1の遊技状態のうち,
RT1及びRT2
(以下,RT」

ともいう。

は,賭数を設定せずに次のゲームを開始できる再遊技役の当選率が極めて高確率となる点において,準備モード及び通常遊技状態よりも遊技者にとって有利な状態である(
【0100】【0121】【0156】。



RT中の演出状態としては,アシストタイムモード(ATモード),チャンスゾー
ンモード(CZモード)
,デンジャラスモード(DZモード)及びノーマルモードが
設けられている(
【0243】。

ATモードは,特定の当選状況となったときに必ず完全ナビ演出を実行する演出状態をいう。完全ナビ演出とは,遊技者にとって有利となる図柄組合せを導出させるための有利操作手順を特定可能に報知する演出(例えば,
「第1に左!」又は「第
1に中!」等)である(
【0239】~【0241】【0244】。


CZモードは,特定の当選状況となったときに,所定の実行割合に従ってナビ演出を実行するか否かを決定し,
実行すると決定されたときに一部ナビ演出を実行し,
実行しないと決定されたときに特定の当選状況のうちのいずれかとなっている旨のみを報知する演出状態をいう。一部ナビ演出とは,遊技者が有利操作手順で操作する可能性を高めるために有利操作手順以外の操作手順を特定可能に報知して操作手順を絞り込ませる演出(例えば,
「右ではないぞ!」又は「中ではないぞ!」等)で
ある(
【0239】~【0241】【0249】。


DZモードは,特定の当選状況となったときに,特定の当選状況のいずれかとなっている旨のみを報知する演出状態をいう。ノーマルモードは,特定の当選状況となったときにおいてその当選状況に起因して何らの報知も行わない演出状態をいう。(
【0250】

RT中に,ATモードに演出状態が制御されているときには,完全ナビ演出が必ず実行されるため,ATモードは,ノーマルモード,DZモード及びCZモードよりも遊技者にとって有利度合いが高い演出状態である(
【0252】。

c
ATモードのゲーム数

スロットマシン1において,ATモードは,所定期間として50ゲームにわたり制御される。ATモードは,ナビストック数を上限として,付与されているナビストック数を1消費する毎に繰り返し制御可能となる。ナビストックは,演出状態抽選でATモードに当選したときにランダムに決定されて付与される。【0244】(

【0265】【0333】【0334】【0375】




ATモードにおいて45ゲーム消化したときであって,ナビストック数が0であるときには,演出状態はDZモードに制御される。ナビストック数が1以上残存している場合には,ナビストックを1消費してATモードに継続して制御させるか否かを抽選するための継続抽選処理が行われる。継続させると決定されたとき(継続成功)には,ナビストック数を1消費して,ATモードを継続する。継続させないと決定されたとき(継続失敗)には,演出状態はDZモードに制御される。【02(
45】~【0248】【0390】


また,ATモード中において特別条件が成立したときには,ATモードに制御されるゲーム数に所定ゲーム数加算(上乗せ)するか否かを抽選するための上乗せ抽選処理が行われる。特別条件は,予め定められた条件であればよく,例えばイチゴ1+イチゴ2など,
イチゴ1を含む抽選対象役に当選することにより成立する。

【0
396】

ATモードの残りゲーム数が6ゲーム以上であるときに特別条件が成立して上乗せが決定されると,10ゲームが加算される(
【0397】【0438】。


残りゲーム数が5ゲーム以下で特別条件が成立して上乗せが決定されると,①継続抽選処理で継続成功している場合は,
(継続成功による50ゲームに加えて)
10
ゲームが次のATモードのゲーム数に加算され(次のATモードのゲーム数が60ゲームとなる)②継続抽選処理で継続失敗している場合は,,
ナビストックを消費す
ることなく,50ゲームが次のATモードのゲーム数に加算される(次のATモードのゲーム数が50ゲームとなる。(
)【0397】~【0399】【0448】。


d
AT用演出

スロットマシン1において,RT中の演出状態がATモードであるときには,AT用演出が行われる(
【0436】。

ATモードの残りゲーム数が6ゲーム以上存在する場合には,
AT用演出として,
所定表示領域内において,所定のキャラクタが草原を歩くような演出が行われるとともに,所定表示領域の右上において,ATモードの残りゲーム数が表示される。後記のとおり,残りゲーム数が5ゲームとなったときに特定演出(連続演出)が開始されるため,
そのゲーム数を差し引いたゲーム数が表示される。
このゲーム数は,
ゲームが消化される毎に1ずつ減算表示される。【0437】【図29】(


ATモードの残りゲーム数がそのゲームを含めて5ゲームとなると,特定演出
(連
続演出)が開始される。特定演出(連続演出)は,所定期間(5ゲーム)にわたり一連の物語を展開する演出を行った後に,物語の結末としてATモードが継続するか否かを報知する演出である。例えば,
「バトル開始!」といったメッセージが表示
されるとともに,味方キャラクタと敵キャラクタが戦う演出を行った後,ATモードが継続される場合は,
「WIN

+1set」
というメッセージと敗北した敵キャ

ラクタとが表示され,ATモードが継続されない場合は,
「LOSE」というメッセ
ージと敗北した味方キャラクタとが表示される。【0036】【0440】【04(


43】~【0446】【図30】


連続演出中に特別条件が成立(例えば,イチゴを含む抽選対象役に当選)して,上乗せ抽選処理で上乗せされることが決定すると,特定演出(連続演出)が終了した後,特別演出が実行され,敗北した敵キャラクタとともに「上乗せだ!」というメッセージが表示される(
【0038】【0440】【0447】~【0450】



【図31】。

e
AT用演出による効果

スロットマシン1は,ATモードにおける残りゲーム数が5ゲームとなったときには特定演出(連続演出)を実行することによって,ATモードが継続するか否かに対する期待感を遊技者に対して煽ることができる。また,ATモードにおける残りゲーム数が5ゲームとなってからその5ゲームを消化するまでに特別条件が成立することに対する期待感を遊技者に抱かせることができるとともに,特定演出(連続演出)が終了した後に特別条件の成立に応じて特別演出が実行されるため,特定演出(連続演出)を阻害することなく,特別条件の成立によって,ATモードに制御するゲーム数が上乗せされたことを報知することができる。【0037】【00(

39】【0459】


(2)刊行物1について

刊行物1には,以下の記載がある。
(ア)技術分野

【0001】
本発明は,たとえば,コイン遊技機等のスロットマシンに関する。詳しくは,遊技用価値を用いて1ゲームに対して所定数の賭数を設定することによりゲームを開始させることが可能となり,複数種類の識別情報を変動表示させる可変表示装置に表示結果が導出されることにより1ゲームが終了し,該可変表示装置に導出された表示結果に応じて入賞が発生可能であるスロットマシンに関する。(イ)背景技術
【0005】
このようなスロットマシンには,リプレイ入賞による賭数の設定にメダルを消費しないで済むという利益を遊技者が得られることを利用して,通常の遊技状態とはリプレイ以外の役の当選確率を変えずにリプレイの当選確率を高くするRT(ReplayTime)を,ビッグボーナスやレギュラーボーナスのようなボーナス以外の遊技状態として定めているものがある。また,このようなRTに制御する期間は,所定のRT図柄が導出されてからゲームが所定回行なわれるまでのもの(たとえば,
特許文献1参照)があった。
(ウ)発明が解決しようとする課題
【0006】
RTへ制御する条件は,特許文献1のスロットマシンではRT図柄を導出させることであった。すなわち,特許文献1のスロットマシンでは,内部抽選によってRT図柄を構成する役に当選することが前提となるものであった。しかしながら,RT図柄を構成する役に当選するか否かは,一定確率に従って抽選が行なわれるものである。このため,実質的にRTへ制御される確率が変化することなく,RTへ制御されることに対し遊技者が抱く期待感にメリハリをつけることができなかった。その結果,遊技が単調なものとなっていた。
【0007】
この発明は,かかる実情に鑑み考え出されたものであり,その目的は,遊技者にとって有利な遊技状態へ制御されることに対し遊技者が抱く期待感にメリハリをつけたスロットマシンを提供することである。
(エ)課題を解決するための手段の具体例およびその効果
【0008】
(1)

遊技用価値(メダル,クレジット)を用いて1ゲームに対して所定数の
賭数(3,ただしレギュラーボーナス中は1)を設定することによりゲームを開始させることが可能となり,複数種類の識別情報を変動表示させる可変表示装置に表示結果が導出されることにより1ゲームが終了し,該可変表示装置に導出された表示結果に応じて入賞が発生可能であるスロットマシン(スロットマシン1)において,
ゲーム毎に前記可変表示装置の表示結果が導出されるより前
(ゲーム開始時)
に,
通常遊技状態(通常遊技状態,初期遊技状態)よりも遊技者にとって有利な特別遊技状態への移行を伴う複数種類の移行入賞(ビッグボーナス(1),ビッグボーナス
(2)
,レギュラーボーナス,変形例におけるチャレンジボーナス)
,および前記遊
技用価値を用いることなく次のゲームを行なうことが可能な複数種類の再ゲーム入賞(リプレイ(1)~リプレイ(3)
)を含む複数種類の入賞各々の発生を許容する
か否かを決定する事前決定手段(S402)と,
該事前決定手段の決定結果に応じて,前記可変表示装置の表示結果を導出させる導出制御手段(S403)と,
前記移行入賞が発生したことを条件として,前記特別遊技状態に制御する特別遊技状態制御手段(S404)と,
前記事前決定手段により前記再ゲーム入賞の発生を許容する旨の決定がなされる確率が前記通常遊技状態よりも高い特殊遊技状態(RT1~RT5)に制御する特殊遊技状態制御手段(S405)とを備え,
前記特殊遊技状態制御手段は,
前記特別遊技状態が終了したことを条件として,前記特殊遊技状態であって前記事前決定手段により前記複数種類の再ゲーム入賞のうち特定の再ゲーム入賞(リプレイ(2)
,リプレイ(3)
)の発生を許容する旨の決定がされる確率が異なる複
数種類の第1特殊遊技状態(RT1~RT3)のうち,発生した移行入賞の種類に応じた第1特殊遊技状態を開始させる第1特殊遊技状態開始手段(S1016,S1019,S1021)と,
前記第1特殊遊技状態が開始された後に消化したゲーム数が規定ゲーム数(RT1:50ゲーム,RT2:40ゲーム,RT3:5ゲーム,RT4:200ゲーム,RT5:100ゲーム)に到達したとき,および前記第1特殊遊技状態が開始された後に前記特定の再ゲーム入賞が発生したときに,当該第1特殊遊技状態を終了させる第1特殊遊技状態終了手段(図21のS1012で減算されて0になるとRTが終了する,図21のS1006またはS1008においてYESと判定されてS1007またはS1008aにおいてRTカウンタの値が初期化される)と,前記第1特殊遊技状態が開始された後,前記特定の再ゲーム入賞が発生したときに,前記特殊遊技状態のうちの第2特殊遊技状態(RT4,RT5)を新たに開始させる第2特殊遊技状態開始手段(図21のS1007,S1008a)とを含む。
(オ)発明を実施するための最良の形態
【0047】
本実施の形態のスロットマシン1の筐体内部には,外周に複数種の図柄が配列されたリール2L,2C,2R(以下,左リール,中リール,右リールともいう)が水平方向に並設されており,図1に示すように,これらリール2L,2C,2Rに配列された図柄のうち連続する3つの図柄が前面扉に設けられた透視窓3から見えるように配置されている。
【図1】

【0048】
リール2L,2C,2Rの外周部には,図2に示すように,それぞれ「メロン」,
「ブドウ」「バナナ」「チェリー」「星」「赤7(図2においては黒塗りの7),,




「白7(図2においては白抜きの7),
」「BAR」といった互いに識別可能な複数種
類の図柄が所定の順序で,それぞれ21個ずつ描かれている。リール2L,2C,2Rの外周部に描かれた図柄は,透視窓3において各々上中下三段に表示される。また,リール2L,2C,2Rの図柄が描かれた部分以外は白色であり,高い透過率で光を透過するようになっており,図柄が描かれた部分についても,その図柄の色彩に応じて光を透過するようになっている。
【0049】
各リール2L,2C,2Rは,各々対応して設けられリールモータ32L,32C,32R(図3参照)によって回転させることで,各リール2L,2C,2Rの図柄が透視窓3に連続的に変化しつつ表示されるとともに,各リール2L,2C,2Rの回転を停止させることで,透視窓3に3つの連続する図柄が表示結果として導出表示されるようになっている。
【図3】

【0064】
ゲームが開始可能な状態でスタートスイッチ7を操作すると,各リール2L,2C,2Rが回転し,各リール2L,2C,2Rの図柄が連続的に変動する。この状態でいずれかのストップスイッチ8L,8C,8Rを操作すると,対応するリール2L,2C,2Rの回転が停止し,透視窓3に表示結果が導出表示される。【0065】
そして全てのリール2L,2C,2Rが停止されることで1ゲームが終了し,有効化されたいずれかの入賞ライン(以下有効ラインと呼ぶ)上に予め定められた図柄の組合せ(以下,役とも呼ぶ)が各リール2L,2C,
〔判決注・
「2L,2C,
2R」の誤記と認める。
〕の表示結果として停止した場合には入賞が発生し,その入
賞に応じて定められた枚数のメダルが遊技者に対して付与され,クレジットに加算される。また,クレジットが上限数(本実施の形態では50)に達した場合には,メダルが直接メダル払出口9(図1参照)から払い出されるようになっている。なお,複数の有効ライン上にメダルの払出を伴う図柄の組合せが揃った場合には,有効ラインに揃った図柄の組合せそれぞれに対して定められた払出枚数を合計し,合計した枚数のメダルが遊技者に対して付与されることとなる。ただし,1ゲームで付与されるメダルの払出枚数には,上限(本実施の形態では,15枚)が定められており,合計した払出枚数が上限を超える場合には,上限枚数のメダルが付与されることとなる。また,いずれかの有効ライン上に,遊技状態の移行を伴う図柄の組合せが各リール2L,2C,2Rの表示結果として停止した場合には図柄の組合せに応じた遊技状態に移行するようになっている。
【0104】
上記スロットマシン1においては,可変表示装置2のいずれかの入賞ライン上に役図柄が揃うと,入賞となる。入賞となる役の種類は,遊技状態に応じて定められているが,大きく分けて,ビッグボーナス(1)
,ビッグボーナス(2)
,レギュラ
ーボーナスのいずれかへの移行を伴う特別役と,メダルの払い出しを伴う小役と,賭数の設定を必要とせずに次のゲームを開始可能となる再遊技役とがある。なお,ビッグボーナス(1)およびビッグボーナス(2)を単にビッグボーナスという場合もある。また,ビッグボーナスをBBと示す場合があり,レギュラーボーナスをRBと示す場合がある。ビッグボーナスおよびレギュラーボーナスを単にボーナスという場合もある。
【0105】
図6は,このスロットマシン1において入賞となる役の種類,可変表示装置2における図柄の組合せ,ボーナスの終了条件,および次のゲームから移行されるRTの種類を説明する図である。本実施の形態におけるRTの種類としては,再遊技役に当選する確率が各々異なるRT1~RT5が設けられている。なお,RT1~RT5に制御されている遊技状態を単にRTという場合もある。
【0106】
ビッグボーナス(1)は,初期遊技状態またはRTにおいて入賞ラインのいずれかに
「赤7-赤7-赤7」
の組合せが揃ったときに入賞となる。
ビッグボーナス
(2)
は,
初期遊技状態またはRTにおいて入賞ラインのいずれかに
「白7-白7-白7」
の組合せが揃ったときに入賞となる。ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2)が入賞すると,遊技状態がそれぞれビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2)に移行する。
【0109】
また,ビッグボーナス(1)の終了後は,当選したときの遊技状態に関わらず,所定の終了条件が成立するまでRT1に遊技状態が制御される。
ビッグボーナス
(1)
終了後のRT1の終了条件は,ビッグボーナスやレギュラーボーナスの特別役に入賞すること,RT4またはRT5に移行されること,またはRT1に制御されてから50回ゲームが行なわれることにより成立する。
【0110】
また,ビッグボーナス(2)の終了後は,当選したときの遊技状態に関わらず,所定の終了条件が成立するまでRT2に遊技状態が制御される。
ビッグボーナス
(2)
終了後のRT2の終了条件は,ビッグボーナスやレギュラーボーナスの特別役に入賞すること,RT4またはRT5に移行されること,またはRT2に制御されてから40回ゲームが行なわれることにより成立する。
【0112】
レギュラーボーナスは,初期遊技状態またはRTにおいて入賞ラインのいずれかに「白7-白7-赤7」の組合せが揃ったときに入賞となる。レギュラーボーナスが入賞すると,遊技状態がレギュラーボーナスに移行する。
【0114】
レギュラーボーナスの終了後は,所定の終了条件が成立するまでRT3に遊技状態が制御される。レギュラーボーナス終了後のRT3の終了条件は,ビッグボーナスやレギュラーボーナスの特別役に入賞すること,RT4またはRT5に移行されること,
またはRT3に制御されてから5ゲームが行なわれることにより成立する。【0116】
後述する内部抽選においてビッグボーナス(1)
,ビッグボーナス(2)
,レギュ
ラーボーナスに当選していても,ストップスイッチ8L,8C,8Rをこれらの役に入賞可能とする適正なタイミングで操作しなければ,これらの役に入賞することはない。ビッグボーナス(1)
,ビッグボーナス(2)
,レギュラーボーナスを構成
する図柄が,リール2L,2C,2R各々において5コマ以内に配置されていないためである。もっとも,これらの役に当選しているが適正なタイミングで操作されなかったために入賞しなかった場合には,後述するチャンス目(入賞の観点で言うと,はずれ)が導出されることがある。
【0125】
リプレイに入賞したときには,メダルの払い出しはないが次のゲームを改めて賭数を設定することなく開始できるので,次のゲームで設定不要となった賭数3に対応した3枚のメダルが払い出されるのと実質的には同じこととなる。【0126】
リプレイ(2)入賞後は,所定の終了条件が成立するまでRT4に遊技状態が制御される。リプレイ(2)入賞後のRT4の終了条件は,ビッグボーナスやレギュラーボーナスの特別役に入賞すること,またはRT4に制御されてから200回ゲームが行なわれることにより成立する。
【0127】
リプレイ(3)入賞後は,所定の終了条件が成立するまでRT5に遊技状態が制御される。リプレイ(3)入賞後のRT5の終了条件は,ビッグボーナスやレギュラーボーナスの特別役に入賞すること,またはRT5に制御されてから100回ゲームが行なわれることにより成立する。前述したRT1~RT5は,内部抽選においてビッグボーナスやレギュラーボーナスの特別役に当選した場合であっても終了しない。
【0143】
図7(a)~図7(f)で示したように,リプレイ(1)~(3)のいずれかが当選する確率が,初期遊技状態であるときに(7900+1+1)/65536≒12.057%となり,RT1であるときに(36871+1108+221)/65536≒58.28%となり,RT2であるときに(36711+998+491)/65536≒58.28%となり,RT3であるときに(28370+4915+4915)/65536≒58.28%となり,RT4またはRT5であるときに(38000+100+100)/65536≒58.28%となるように判定値数が設定されている。このように,リプレイ(1)~(3)のいずれかが当選する確率は,初期遊技状態であるときよりもRT1~RT5のときの方が高くなるように判定値数が設定されている。このため,RT1~RT5は,初期遊技状態であるときよりも遊技者にとって有利な遊技状態といえる。
【0193】
演出制御基板90のCPU91aは,このように遊技制御基板40のCPU41aから送られてくるコマンドに基づいて,後述するように,各種の演出を行なうものとしている。
【0197】
また,遊技状態がビッグボーナスまたはレギュラーボーナスにあるときにそれぞれ実行されるボーナス中演出がある。さらに,ビッグボーナス(1),ビッグボーナ
ス(2)またはレギュラーボーナスに入賞したときに実行されるボーナス入賞演出や,ビッグボーナスが終了したときに実行されるボーナス終了演出がある。また,遊技状態がRT1~RT3に制御されてからボーナスに入賞するかまたは所定回数ゲーム(RT1:50,RT2:40,RT3:5)が行なわれるまで実行されるチャンスゾーン演出,遊技状態がRT1~RT3に制御されてからボーナスに入賞することなく所定回数ゲームが行なわれたときにRT4またはRT5に制御されてRTが継続すること(上乗せ成功)またはRT4またはRT5に制御されずRTが継続しないこと(上乗せ失敗)を報知する上乗せ演出,RT4またはRT5中(チャンスゾーン演出中を除く)であるときに実行されるRT中演出がある。これらの演出の実行態様は,演出モードによって異なるものとなる。
【0207】
チャンスゾーン演出は,ビッグボーナスまたはレギュラーボーナスの終了後,すなわちRT1~RT3のいずれかが開始するゲームのために賭数が設定されたときに開始され,遊技状態がRT1~RT3に制御されてからボーナスに入賞するかまたは所定回数ゲーム(RT1:50,RT2:40,RT3:5)が行なわれることで終了する。
【0208】
RT中演出は,リプレイ(2)またはリプレイ(3)が入賞した次のゲーム,すなわちRT4またはRT5が開始するゲームを開始させるためにスタートスイッチ7が操作されたとき(チャンスゾーン演出中であるときは当該チャンスゾーン演出が終了した後にスタートスイッチ7が操作されたとき)に開始され,ビッグボーナス(1)
,ビッグボーナス(2)またはレギュラーボーナスが入賞するか,規定ゲーム数に到達することで終了する。
【0240】
図14は,遊技制御基板40のCPU41aが1ゲーム毎に行なうゲーム制御処理を示すフローチャートである。この処理は,電源を投入し,所定のブート処理を行なった後,またはリセット/設定スイッチ38の操作により設定変更を行なった直後にも実行される。1ゲームの処理が開始すると,まず,1枚BETスイッチ5またはMAXBETスイッチ6を操作することにより,あるいはメダル投入口4からメダルを投入することにより賭数を設定し,スタートスイッチ7を操作することにより当該ゲームの実質的な開始を指示するBET処理を行なう(ステップS401)前のゲームでリプレイ入賞していた場合には,

リプレイゲーム中フラグにより
前のゲームと同じ賭数(この実施の形態では3)が自動設定される(この段階でリプレイゲーム中フラグが消去される)なお,

BET処理の詳細については後述する。
【図14】

【0241】
BET処理により賭数が設定され,スタートスイッチ7が操作されると,内部抽選用の乱数を抽出し,抽出した乱数の値に基づいて遊技状態に応じて定められた各役への入賞を許容するかどうかを決定する抽選処理を行なう(ステップS402)。
抽選処理では,RAM41cにおける当選フラグの設定状況を示す当選状況通知コマンドが演出制御基板90に送信される。なお,抽選処理の詳細については後述する。
【0242】
抽選処理が終了すると,次にリール回転処理が行なわれる(ステップS403)。
リール回転処理では,前回のゲームでのリール2L,2C,2Rの回転開始から1ゲームタイマが計時する時間が所定時間(たとえば,4.1秒)が経過していることを条件に,リールモータ32L,32C,32Rを駆動させ,左,中,右の全てのリール2L,2C,2Rを回転開始させる。リール2L,2C,2Rの回転開始から所定の条件(回転速度が一定速度に達した後,リールセンサ333SL,3SC,
3SRにより基準位置を検出すること)
が成立すると,
ストップスイッチ8L,
8C,8Rを操作有効とする。その後,ストップスイッチ8L,8C,8Rが遊技者によって操作されること,または自動停止時間が経過したことにより,リールモータ32L,32C,32Rを駆動停止させ,リール2L,2C,2Rの回転を停止させる。リール2L,2C,2Rの回転開始時,および回転停止時に,それぞれリール回転コマンド,
リール停止コマンドが演出制御基板90に送信される。
なお,
リール回転処理の詳細については後述する。
【0243】
リール2L,2C,2Rの駆動がそれぞれ停止すると,その停止時における表示結果において,入賞ライン上に上記したいずれかの役図柄が導出表示されたかどうかを判定する入賞判定処理が行なわれる
(ステップS404)この入賞判定処理で

いずれかの役に入賞したと判定されると,遊技制御基板40において発生した入賞に応じた各種の処理が行なわれる。ここで,入賞の判定結果を示す入賞情報コマンドが演出制御基板90に送られる。
なお,
入賞判定処理の詳細については後述する。
【0244】
入賞判定処理が終了すると,払出処理が行なわれる(ステップS405)。払出処
理では,入賞判定処理において設定した払い出し予定数だけメダルの払出しまたはクレジット加算させる。ただし,データとして蓄積されているクレジットの数が50に達した場合は,ホッパーモータ34を駆動させることにより,超過した枚数のメダルをメダル払出口9から払い出させる。
また,
入賞に関わらない各種の処理
(た
とえば,ビッグボーナスの終了制御に関する処理や,持ち越しのない当選フラグの消去など)も行なわれる。なお,払出処理では,特別ワーク41c-3に格納されるビッグボーナス(1)
,ビッグボーナス(2)
,レギュラーボーナスの当選フラグ
が消去されない。これにより,ビッグボーナス(1)
,ビッグボーナス(2)
,レギ
ュラーボーナスの当選フラグは,次のゲームに持ち越される。払出処理の最後,すなわち1ゲームの最後で次のゲームの遊技状態を示す遊技状態コマンドが演出制御基板90に送られる。なお,払出処理の詳細については後述する。そして,1ゲーム分の処理が終了し,次の1ゲーム分の処理が開始する。
【0293】
ステップS1011においては,RT1~RT5に制御されていることおよび制御されているRTの残りゲーム回数を示すRT1~RT5カウンタのうちすべての値が0であるか否か,すなわち,RT1~RT5のいずれにも制御されていないかが判定される。RT1カウンタ~RT5カウンタのうちいずれかの値が0でない,すなわちRT1~RT5のいずれかに制御されていると判定されたときには,対応するRTカウンタの値を1だけ減算しステップS1005へ移行する。RT1カウンタ~RT5カウンタのうちすべての値が0である,すなわちRT中でないと判定されたときには,そのままステップS1005へ移行する。
【0295】
ステップS1006では,リプレイ(2)に入賞したか否かが判定される。リプレイ(2)に入賞したと判定されたときには,ステップS1007において,前述したRTカウンタの値を初期化した後,RT4カウンタの値に200を設定し,ステップS1023へ移行される。一方,リプレイ(2)に入賞したと判定されなかったときには,ステップS1008において,リプレイ(3)に入賞したか否かが判定される。リプレイ(3)に入賞していないと判定されたときには,ステップS1023へ移行される。リプレイ(3)に入賞していると判定されたときには,前述したRTカウンタの値を初期化した後,RT5カウンタの値に100を設定し,ステップS1023へ移行される。
【0297】
ステップS1013においては,ボーナスカウンタの値が0であるか否かが判定される。すなわち,ボーナスに対応して予め定められた払出枚数分のメダルが払い出されたか否かが判定される。ボーナスカウンタの値が0でないと判定されたときには,ステップS1023へ移行される。一方,ボーナスカウンタの値が0であると判定されたときには,ビッグボーナス(1)中であるか否かが判定される(ステップS1014)
。ビッグボーナス(1)中であると判定されたときには,ビッグボーナス(1)中フラグをOFF状態に設定し,ビッグボーナスにおけるゲーム数および入賞数をカウントするためのカウンタの値をクリアして初期化する(ステップS1015)なお,

ステップS1015においては,
さらに,
ビッグボーナス
(1)
の終了後にフリーズ状態に制御するための,
エンディング演出待ち時間を設定する。
そして,ステップS1016では,RT1~RT5カウンタの値が設定されている場合には0に初期化して,RT1カウンタの値に50を設定し,ステップS1023へ移行される。ステップS1014においてビッグボーナス(1)中でないと判定されたときには,ステップS1017へ移行される。
【0298】
ステップS1017では,ビッグボーナス(2)中であるか否かが判定される。ビッグボーナス(2)中であると判定されたときには,ビッグボーナス(2)中フラグをOFF状態に設定し,ビッグボーナスにおけるゲーム数および入賞数をカウントするためのカウンタの値をクリアして初期化する
(ステップS1018)なお,

ステップS1018においては,さらに,ビッグボーナス(2)の終了後にフリーズ状態に制御するための,エンディング演出待ち時間を設定する。そして,ステップS1019では,RT1~RT5カウンタの値が設定されている場合には0に初期化して,
RT2カウンタの値に40を設定し,
ステップS1023へ移行される。
ステップS1017においてビッグボーナス
(2)
中でないと判定されたときには,
ステップS1020へ移行される。
【0299】
ステップS1020では,レギュラーボーナス中フラグをOFF状態に設定し,レギュラーボーナスにおけるゲーム数および入賞数をカウントするためのカウンタの値をクリアして初期化する。なお,ステップS1020においては,さらに,レギュラーボーナスの終了後にフリーズ状態に制御するための,エンディング演出待ち時間を設定する。そして,ステップS1021では,RT1~RT5カウンタの値が設定されている場合には0に初期化して,RT3カウンタの値に5を設定し,ステップS1023へ移行される。
【0300】
ステップS1023においては,RAM41cにおけるビッグボーナス(1)中フラグ,ビッグボーナス(2)中フラグ,レギュラーボーナス中フラグ,およびRTカウンタに基づいて,次のゲームで適用される遊技状態を示す遊技状態コマンドを生成して,演出制御基板90に送信する(ステップS1023)。そして,払出処
理を終了して,図14のフローチャートに復帰し,1ゲームの処理が終了する。【0301】
以上のようなゲームの繰り返しにおいて,遊技制御基板40のCPU41aは,初期遊技状態,RT1~RT5,ビッグボーナス,レギュラーボーナスの間で遊技状態の移行を行なっており,遊技の進行状況に応じてコマンドを演出制御基板90に送信している。これに対して,演出制御基板90のCPU91aは,遊技制御基板40から受信したコマンドに基づいて,独自の演出を行なっている。【0345】
Ss558で遊技状態がRT4またはRT5であれば,RAM91cにおいて更新されるゲーム回数カウンタの値が0であるか否かを判定する
(Ss558a)ゲ

ーム回数カウンタとは,RT1~RT3に制御されているときにリプレイ(2)またはリプレイ(3)に入賞してRT4またはRT5に制御されたときに,仮に当該リプレイ(2)またはリプレイ(3)に入賞しなかったとしたときに継続してRT1~RT3に制御される仮想の残りゲーム数が設定され,ゲームが行なわれる毎に1ずつ減算される。ゲーム回数カウンタは,たとえば,ゲーム数の上限が50ゲームのRT1に制御されてから10ゲーム目でリプレイ(2)に入賞してRT4に制御されたときに,仮にこのリプレイ(2)入賞がなかったとしたときに継続してRT1に制御される仮想の残りゲーム数が(50-10)=“40”であり,この“40”が設定され,ゲームが行なわれる毎に1ずつ減算される。よって,ゲーム回数カウンタの値が1以上であれば,RT1~RT3に制御されているときにリプレイ(2)またはリプレイ(3)に入賞してRT4またはRT5に制御されているが,当該リプレイ(2)またはリプレイ(3)入賞がなかったと仮定したときに未だRT1~RT3への制御が行なわれている期間であることを示す。
【0346】
Ss558aにおいて,ゲーム回数カウンタの値が0でなければ,未だ前述した仮想の残りゲーム数が消化されておらず,リプレイ(2)またはリプレイ(3)入賞してRT4またはRT5に制御されているが仮に当該入賞がなかったとしたときに未だRT1~RT3への制御が行なわれている期間であるため,前述したSs559に移行する。これにより,チャンスゾーン演出が継続して行なわれる。一方,Ss558aにおいて,ゲーム回数カウンタの値が0であれば,前述した仮想の残りゲーム数を消化しているため,RAM91cにRT中演出中フラグが設定されているかどうかを判定する
(Ss566)RT中演出中フラグが設定されていなけれ

ば,前回のゲームでリプレイ(2)またはリプレイ(3)に入賞し,今回のゲームから遊技状態がRT4またはRT5になる場合,または既にRT4またはRT5に制御されており仮想の残りゲーム数を消化した場合ということであり,新たにRT中演出を開始させることとなるので,RAM91cにRT中演出中フラグを設定する(Ss567)

【0367】
次に,Ss591pでは,表示制御回路92にRT4またはRT5のいずれに制御されているかに応じて制御されているRTを報知するための上乗せ成功演出の演出データの書き込み指令を出力する。これにより,表示制御回路92においてCGROM142から上乗せ成功演出の演出データが読み出され,一時記憶メモリ155の演出データ領域に書き込まれる。上乗せ成功演出の演出データが書き込まれたことで,
大当たり演出や連続演出の演出データが書き込まれていた場合であっても,演出データ領域から消去される(少なくとも連続演出の演出データのうちの先頭のデータが消されるので,
一部のデータが残っていたとしても認識不能となる)そし

て,Ss591rの処理に進む。上乗せ成功演出とは,たとえば,キャラクタが出現して所定のゲームを行なって勝つ等,
「RT継続成功」
を想起させる演出が行なわ
れる。
【0398】
また,特にRT中では,ボーナスを狙って停止操作を行なっても,リプレイが非常に高確率で当選しているうえに,リプレイが揃う制御がボーナスが揃う制御よりも優先されるため,ボーナスに当選しているか否かを判別することが困難となる。また,ボーナスの当選フラグは,該ボーナスが入賞するまで次ゲーム以降に持ち越されるため,RTが規定ゲーム数に到達することによって終了した後に,その間に当選したボーナスを入賞させることが可能となるので,RTの終了時にボーナスの当選に対する遊技者の期待感を高めることができる。
【0450】
(4-3)

また,たとえば,RT1~RT3の残りゲーム数またはゲーム回数カウンタの値が所定ゲーム数になったときに,複数のゲームに亘って所定の演出を行なって最終的にボーナス当選の有無を報知するとともに,RTが継続するか否かを報知する演出(たとえば,上乗せ・ボーナス連続演出という)を行なうように構成してもよい。上乗せ・ボーナス連続演出は,複数のゲームに亘り,たとえばキャラクタが出現して所定のゲーム目的を達成するか否かに関わる演出等を行ない,最終的にRTが継続するか否か,およびボーナスに当選しているか否かを報知する演出が行なわれるものであればよい。なお,この場合,Ss597では,上乗せ・ボーナス連続演出中であるときにも,RAM91cに設定されているデモ無効フラグを消去しないように構成してもよい。
【0451】
上乗せ・ボーナス連続演出は,次のような処理を行なうことにより実行されるようにしてもよい。たとえば,図29のSs559aにおいてRT1~RT5のうちいずれかであると判定された後に,RT1~RT3の残りゲーム数が3ゲームになったか否かまたはゲーム回数カウンタの値が3になったか否かを判定する処理を行なう。そして,3ゲームになったと判定されたときに,現在の遊技状態がRT4またはRT5であるか否かおよびボーナスに当選しているか否かに応じた上乗せ・ボーナス連続演出を行なうための演出データを演出データ領域に書き込む処理を行なうように構成してもよい。これにより,上乗せ・ボーナス連続演出が開始されて,以後3ゲームに亘って所定の連続演出が行なわれた後,最終的にRTが継続するか否かおよびボーナスに当選しているか否かが報知される。なお,上乗せ・ボーナス連続演出を実行しているときに,リプレイ(2)またはリプレイ(3)に入賞したときには,演出データを演出データ領域に書き込まれた演出データをRT4またはRT5であるときの演出データに書き換える処理を行ない,最終的にRTが継続する旨を報知するように構成してもよい。また,上乗せ・ボーナス連続演出を実行しているときに,ボーナスに当選したときには,演出データを演出データ領域に書き込まれた演出データをボーナスに当選しているときの演出データに書き換える処理を行ない,最終的にボーナスに当選している旨を報知するように構成してもよい。【0452】
なお,上乗せ・ボーナス連続演出における,RTが継続するか否かおよびボーナスに当選しているか否かを報知するパターンとして,次のような報知パターンを採用することが考えられる。第1として,まず,所定の演出を行ないRTが継続するか否かを報知した後,さらに所定の演出を行なってボーナスに当選しているか否かを報知する先RT報知パターンを採用してもよい。また,第2として,まず,所定の演出を行ないボーナスに当選しているか否かを報知した後,さらに所定の演出を行なってRTが継続するか否かを報知する先ボーナス報知パターンを採用してもよい。さらに,第3として,たとえば,所定の演出を行ないボーナスに当選しているか否かおよびRTが継続するか否かを同時に報知する同時報知パターンを採用してもよい。また,このような複数種類の報知パターンのうちから,乱数等によりランダムに選択決定した一の報知パターンを報知パターンとして採用するように構成してもよい。

前記アの記載によると,刊行物1について,次のとおり認めることがで
きる。
(ア)技術分野
刊行物1記載の発明(以下,
「刊行物1発明」という。
)は,スロットマシンに関
するものである(
【0001】。

(イ)背景技術
このようなスロットマシンには,リプレイ入賞による賭数の設定にメダルを消費しないで済むという利益を遊技者が得られることを利用して,通常の遊技状態とはリプレイ以外の役の当選確率を変えずにリプレイの当選確率を高くするRT(ReplayTime)を,ビッグボーナスやレギュラーボーナスのようなボーナス以外の遊技状態として定めているものがある(
【0005】。

(ウ)発明が解決しようとする課題
しかし,RTへ制御する条件は,一定確率に従って抽選が行われるものである。このため,実質的にRTへ制御される確率が変化することはなく,RTへ制御されることに対し遊技者が抱く期待感にメリハリをつけることができなかった。その結果,遊技が単調なものとなっていた。そこで,刊行物1発明の目的は,遊技者にとって有利な遊技状態へ制御されることに対し遊技者が抱く期待感にメリハリをつけたスロットマシンを提供することである。【0006】【0007】(


(エ)発明を実施するための最良の形態
a
スロットマシン1の構成

スロットマシン1の筐体内部には,
外周に複数種の図柄が配列されたリール2L,
2C,2Rが水平方向に並設されている。ゲームが開始可能な状態でスタートスイッチ7を操作すると,遊技状態に応じて定められた各役への入賞を許容するか(当選)を決定するとともに(抽選処理)
,各リール2L,2C,2Rが回転し,各リー
ル2L,2C,2Rの図柄が連続的に変動する。この状態でいずれかのストップスイッチ8L,8C,8Rを操作すると,対応するリール2L,2C,2Rの回転が停止し,リール2L,2C,2Rに配列された図柄のうち連続する三つの図柄が前面扉に設けられた透視窓3から上中下3段に表示される(リール回転処理)。
有効化されたいずれかの入賞ライン上に予め定められた図柄の組合せ(役)が各リール2L,2C,2Rの表示結果として停止した場合には入賞が発生し(入賞判定処理)その入賞に応じて定められた枚数のメダルが遊技者に対して付与され,,

レジットに加算される(払出処理)
。また,遊技状態の移行を伴う役に入賞した場合
は,次のゲーム以降その役に応じた遊技状態に移行する。
スロットマシン1においては,遊技制御基板40のCPU41aがゲームの制御処理(抽選処理,リール回転処理,入賞判定処理,払出処理等)を行っている。また,演出制御基板90のサブ制御部91(CPU91a)が,遊技制御基板40から受信したコマンドに基づいて各種の演出を行っている。

【0047】【0049】


【0064】

【0065】【0193】【0240】


~【0244】【0301】【図1】【図3】【図14】





b
RT1~RT5の遊技状態

スロットマシン1の遊技状態のうち,RT1~RT5(以下,併せて「RT」ともいう。
)は,リプレイ(1)~(3)
(入賞すると次のゲームを改めて賭数を設定
することなく開始できる役)の当選確率が,初期遊技状態よりも高くなるように判定値数が設定されており,初期遊技状態よりも遊技者にとって有利な遊技状態である(
【0105】【0125】【0143】。



RT1は,ビッグボーナス(1)の終了後,所定の終了条件が成立するまで制御される遊技状態である。終了条件は,ビッグボーナスやレギュラーボーナスの特別役に入賞すること,RT4若しくはRT5に移行されること,又はRT1に制御されてから50回ゲームが行われることにより成立する。【0109】(

RT2は,ビッグボーナス(2)の終了後,所定の終了条件が成立するまで制御される遊技状態である。終了条件は,ビッグボーナスやレギュラーボーナスの特別役に入賞すること,RT4若しくはRT5に移行されること,又はRT2に制御されてから40回ゲームが行われることにより成立する。【0110】(

RT3は,レギュラーボーナスの終了後,所定の終了条件が成立するまで制御される遊技状態である。終了条件は,ビッグボーナスやレギュラーボーナスの特別役に入賞すること,RT4若しくはRT5に移行されること,又はRT3に制御されてから5ゲームが行われることにより成立する。【0114】


RT4は,リプレイ(2)入賞後,所定の終了条件が成立するまで制御される遊技状態である。終了条件は,ビッグボーナスやレギュラーボーナスの特別役に入賞すること,又はRT4に制御されてから200回ゲームが行われることにより成立する。【0126】


RT5は,リプレイ(3)入賞後,所定の終了条件が成立するまで制御される遊技状態である。終了条件は,ビッグボーナスやレギュラーボーナスの特別役に入賞すること,又はRT5に制御されてから100回ゲームが行われることにより成立する。【0127】


RT1~RT5に制御されてからの残りのゲーム回数は,対応するRTカウンタ(初期値はそれぞれ50,40,5,200,100)の値により示される。遊技制御基板40のCPU41aは,払出処理において,遊技状態がRT1~RT5のいずれかに制御されていると判定したときには,対応するRTカウンタの値を1だけ減算し,1ゲームを終了させる。【0293】【0295】【0297】~【0(


300】

c
チャンスゾーン演出,上乗せ演出,RT中演出

スロットマシン1のサブ制御部91は,チャンスゾーン演出,上乗せ演出,RT中演出を行う(
【0193】【0197】【図3】。



チャンスゾーン演出は,遊技状態がRT1~RT3に制御されてから開始され,ボーナスに入賞するか又は所定回数ゲーム(RT1は50回,RT2は40回,RT3は5回)が行われることで終了する(
【0197】【0207】。


上乗せ演出は,遊技状態がRT1~RT3に制御されてからボーナスに入賞することなく所定回数ゲームが行われたときに行われ,RT4若しくはRT5に制御されてRTが継続すること(上乗せ成功)又はRT4若しくはRT5に制御されずRTが継続しないこと(上乗せ失敗)を報知する(
【0197】。上乗せ成功演出は,

例えば,キャラクタが出現して所定のゲームを行って勝つ等,
「RT継続成功」を想
起させる演出が行われる(
【0367】。

RT中演出は,
遊技状態がRT4又はRT5に制御されてから開始され
(ただし,
チャンスゾーン演出中であるときはそのチャンスゾーン演出が終了した後),ボー
ナスに入賞するか又は所定回数ゲーム(RT4は200回,RT5は100回)が行われることで終了する(
【0197】【0208】。


d
変形態様(上乗せ・ボーナス連続演出)

RT1~RT3の残りゲーム数が所定ゲーム数(例えば3ゲーム)になったときに,複数のゲーム(例えば3ゲーム)にわたって所定の連続演出(例えばキャラクタが出現して所定のゲーム目的を達成するか否かに関わる演出等)を行った後,最終的にRTが継続するか否か及びボーナス当選の有無を報知する演出(上乗せ・ボーナス連続演出)を行うように構成してもよい。上乗せ・ボーナス連続演出を実行しているときに,ボーナスに当選したときには,演出データをボーナスに当選しているときの演出データに書き換える処理を行い,最終的にボーナスに当選している旨を報知してもよい。【0450】【0451】



上乗せ・ボーナス連続演出における,RTが継続するか否か及びボーナスに当選しているか否かを報知するパターンとして,まず,所定の演出を行いRTが継続するか否かを報知した後,更に所定の演出を行ってボーナスに当選しているか否かを報知する先RT報知パターンを採用してもよい(
【0452】。

(3)引用発明1及び引用発明2の認定
前記(2)によると,刊行物1には,以下の引用発明1及び引用発明2が記載されていると認められ,誤記を除き,審決の引用発明1及び引用発明2の認定に誤りは認められない。

「a

引用発明1

透視窓3に連続的に変化させつつ表示させる互いに識別可能な複数種類の図
柄が外周部に描かれているリール2L,2C,2Rを備え,
b
各リールが回転し,各リールの図柄が連続的に変動した後,リールの回転が停
止し,表示結果が導出表示され,入賞ライン上に予め定められた図柄の組合せが停止した場合に入賞が発生するスロットマシン1において,
c
RT1~RT5は,リプレイ(1)~(3)が当選する確率が初期遊技状態の
ときよりも高く,遊技制御基板40のCPU41aにより,ビッグボーナス(1),
ビッグボーナス(2)
,レギュラーボーナスに入賞したと判定されると,それぞれ,
各ボーナスに移行した後,RT1,RT2,RT3に制御されたゲームを所定回数行い,
また,
リプレイ
(2)リプレイ

(3)に入賞したと判定されると,
それぞれ,
RT4,RT5に制御されたゲームを所定回数行い,
d
遊技制御基板40のCPU41aにより,RT1~RT5に制御されていると
判定されたときには,対応するRTカウンタの値を1だけ減算し,1ゲームの処理を終了させ,抽選処理において,遊技状態がRTであるときには,リプレイ(1)~(3)が当選する確率が初期遊技状態のときよりも高くなるように設定された判定値数を取得し,
e1

サブ制御部91は,遊技状態がRT1~RT3に制御されてから所定回数ゲ
ームが行なわれるまでチャンスゾーン演出を実行し,
f1

サブ制御部91は,RT4又はRT5に制御されてRTが継続することを報
知する上乗せ成功演出又はRT4又はRT5中であるときにRT中演出を実行し,g1

サブ制御部91は,リプレイ(2)又はリプレイ(3)入賞してRT4又は
RT5に制御されているが仮に当該入賞がなかったとしたときに未だRT1~RT3への制御が行なわれている期間はチャンスゾーン演出を継続して行い,仮想の残りゲーム数を消化した場合に上乗せ成功演出又はRT中演出を開始させ,h1

リプレイ(2)又はリプレイ(3)入賞してRT4又はRT5に制御されて
いるが仮に当該入賞がなかったとしたときに未だRT1~RT3への制御が行なわれている期間はチャンスゾーン演出を継続して行い,仮想の残りゲーム数を消化した場合に上乗せ成功演出又はRT中演出を開始させる,スロットマシン1」イ
「a

引用発明2

透視窓3に連続的に変化させつつ表示させる互いに識別可能な複数種類の図
柄が外周部に描かれているリール2L,2C,2Rを備え,
b
各リールが回転し,各リールの図柄が連続的に変動した後,リールの回転が停
止し,表示結果が導出表示され,入賞ライン上に予め定められた図柄の組合せが停止した場合に入賞が発生するスロットマシン1において,
c
RT1~RT5は,リプレイ(1)~(3)が当選する確率が初期遊技状態の
ときよりも高く,遊技制御基板40のCPU41aにより,ビッグボーナス(1),
ビッグボーナス(2)
,レギュラーボーナスに入賞したと判定されると,それぞれ,
各ボーナスに移行した後,RT1,RT2,RT3に制御されたゲームを所定回数行い,
また,
リプレイ
(2)リプレイ

(3)に入賞したと判定されると,
それぞれ,
RT4,RT5に制御されたゲームを所定回数行い,
d
遊技制御基板40のCPU41aにより,RT1~RT5に制御されていると
判定されたときには,対応するRTカウンタの値を1だけ減算し,1ゲームの処理を終了させ,抽選処理において,遊技状態がRTであるときには,リプレイ(1)~(3)が当選する確率が初期遊技状態のときよりも高くなるように設定された判定値数を取得し,
e2

サブ制御部91は,RT1~RT3の残りゲーム数が3ゲームになったと判
定されたときに3ゲームに亘って所定の連続演出を行う上乗せ・ボーナス連続演出を行い,最終的にRTが継続する旨を報知し,
f2

サブ制御部91は,RT1~RT3の残りゲーム数が3ゲームになったと判
定されたときに3ゲームに亘って所定の連続演出を行う上乗せ・ボーナス連続演出を行い,上乗せ・ボーナス連続演出を実行しているときに,ボーナスに当選したときには最終的にボーナスに当選している旨を報知し,
g2

サブ制御部91は,上乗せ・ボーナス連続演出において,所定の演出を行な
いRTが継続するか否かを報知した後,上乗せ・ボーナス連続演出を実行しているときに,ボーナスに当選したときにはさらに所定の演出を行なってボーナスに当選しているか否かを報知し,
h2

RT1~RT3の残りゲーム数が3ゲームになったと判定されたときに3ゲ
ームに亘って所定の連続演出を行う上乗せ・ボーナス連続演出において,所定の演出を行ないRTが継続するか否かを報知した後,上乗せ・ボーナス連続演出を実行しているときに,ボーナスに当選したときにはさらに所定の演出を行なってボーナスに当選しているか否かを報知する,スロットマシン1」
(4)本願補正発明と引用発明1との対比
本願補正発明と引用発明1とを対比すると,次のとおり,引用発明1の「チャンスゾーン演出」は,本願補正発明の「特定演出」に相当しないから,本願補正発明が引用発明1と同一であるとは認められない。また,引用発明1において,本願補正発明の「特定演出」に係る構成を採用することを,当業者が容易に想到し得たことを認めるに足りる証拠はない。

本願補正発明の「特定演出」の技術的意義
(ア)前記第2の2(2)のとおり,本願補正発明の「特定演出」は,「前記有利

量付与決定手段により決定された有利量の付与」「前記有利状態中」を
において
「報
知可能」なものである(構成要件E)

そして,
「前記有利量付与決定手段」は,
「有利量を付与すること」を決定するも
のであるから(構成要件C)「特定演出」における報知の対象は,有利量付与決定,
手段により有利量を付与することが決定されたという事実であると解するのが相当である。
もっとも,
「特定演出」は,
「前記有利状態中」に実行されるものであるが,
「前記
有利状態」は,
「付与された有利量を消費することによって・・・制御」されるものであるから(構成要件D)「特定演出」における報知の対象が,

「特定演出」を実行
する際の有利状態を制御するために消費中の有利量を付与することが決定されたという事実を指すのか,この消費中の有利量の付与とは別に,有利量を付与することが決定されたという事実を指すのかは,特許請求の範囲の記載のみにより一義的に明確に理解することはできない。
(イ)そこで,本願明細書を参酌すると,
「課題を解決するための手段」欄に
おいて,
「特定演出(連続演出)
」は,①所定期間(50ゲーム)における残り期間が特定期間(5ゲーム)となるまでに,前記所定期間が経過した後においても継続して,複数種類の入賞について発生を許容するか否かを決定する事前決定手段(内部抽選処理)の決定結果に応じた決定結果情報を報知する(ATモード中におけるナビ演出を実行するための処理)か否かを決定する継続決定手段(継続抽選,図25)により,継続すると決定したときに,前記特定期間において実行される(図30,図31参照)とともに,②前記継続決定手段で継続しないと決定したときであっても,前記所定期間における残り期間が特定期間(5ゲーム)となってからその所定期間が経過するまでに,所定の特別条件(特別条件,イチゴ当選)が成立したことを条件に,前記決定結果情報を報知する期間を,前記所定期間以上の期間(50ゲーム,60ゲーム)延長する第2延長手段により,前記所定期間以上の期間延長する場合に実行される(図31(c)
(d)参照)とされている(
【0009】【0

036】。また,

「特定演出」によって,所定期間における残り期間が特定期間となったときには,所定期間が経過した後においても継続して決定結果情報が報知されるか否かを煽ることができるとされている(
【0037】。

また,
「発明を実施するための形態」欄においては,RTであるときであって,演出状態がATモードであるときに,所定期間として50ゲームにわたり制御されるATモードの残りゲーム数が5ゲームとなったときに実行される「連続演出」【0(
244】【0436】【0440】【図30】【図31】




)が,
「特定演出」に相当
するとされており【0459】,

)ATモードの残りゲーム数が6ゲーム以上存在す
る場合に,所定表示領域の右上にATモードの残りゲーム数を表示するAT用演出(
【0437】【図29】

)は,
「特定演出」に相当するものとはされていない。そし
て,
「特定演出」に相当するとされる上記「連続演出」は,ATモードの残り5ゲームにわたり一連の物語を展開する演出を行った後に,物語の結末としてATモードが継続するか否かを報知する演出であり,これにより,ATモードの残り5ゲームにわたって,ATモードが継続することに対する遊技者の期待感を煽ることができるとされ,味方キャラクタと敵キャラクタとが戦う演出を行った後,敵キャラクタが倒れるとともに「WIN

+1set」といったメッセージが表示されて,AT

モードが継続することが報知されるとされている(
【0443】【0446】【04


49】【0459】【図30】【図31】。




このような本願明細書の記載によると,本願補正発明における「特定演出」は,有利状態が継続する所定期間における残り期間が特定期間となったときに,上記所定期間が経過した後においても上記有利状態が継続することに対する遊技者の期待感を煽ることを目的とするものであって,
「特定演出」
を実行する際の有利状態を制
御するために消費中の有利量を付与することが決定されたという事実を報知するものを含むものではなく,上記所定期間経過後に継続して有利状態を制御するための有利量など,現に消費中の有利量とは別の有利量を付与することが決定されたという事実を報知するものであると解するのが相当である。

引用発明1の「チャンスゾーン演出」について

引用発明1の「チャンスゾーン演出」
(構成e1)は,その具体的な演出内容は刊
行物1に記載されていないものの,遊技状態がRT1~RT3に制御されてから開始され,ボーナスに入賞するか又はゲームが所定回数(RT1は50回,RT2は40回,
RT3は5回)
行われることにより終了するものである
(前記(2)イ(エ)c)

そうすると,
「チャンスゾーン演出」は,RT1~RT3に制御されたゲームを所定回数行える状態にあることを報知するにとどまるものと認められ,現に消費中の有利量(ゲーム数)とは別の有利量を付与することが決定されたという事実を報知するものであるとは認められない。

被告の主張について

被告は,本願補正発明の構成要件C~Eは,有利量の報知に関しては,有利状態に制御するための有利量を消費することによって制御される有利状態中において,有利量付与決定手段により決定された有利量の付与を報知可能であることを特定しているにすぎず,有利状態に制御された後の有利量の付与に報知対象が限定されているとはいえないし,本願補正発明の構成要件C~Eの記載はそのような意味で明確であり,本願明細書に矛盾する記載はないなどと主張する。
しかし,本願補正発明における「特定演出」は,これを実行する際の有利状態を制御するために消費中の有利量を付与することが決定されたという事実を報知するものを含むものではなく,有利状態が継続する所定期間経過後に継続して有利状態を制御するための有利量など,現に消費中の有利量とは別の有利量を付与することが決定されたという事実を報知するものであると解するのが相当であることは,前記アのとおりである。

小括

以上によると,引用発明1の「チャンスゾーン演出」は,本願補正発明の「特定演出」に相当しない。
したがって,本願補正発明が引用発明1と同一であるとは認められない。また,引用発明1において,本願補正発明の「特定演出」に係る構成を採用することを,当業者が容易に想到し得たことを認めるに足りる根拠はない。なお,前記第2の3(1)イ(キ)のとおり,審決は,
「仮に相違する点があるとしても,本願補正発
明は,引用発明1又は引用発明2から当業者が容易に想到し得たものである」と判断したところ,この特許法29条2項に係る判断は,本願補正発明と引用発明1との相違点が特定されておらず,本願補正発明と引用発明1との相違点に係る本願補正発明の構成がいかなる論理付けにより容易想到であるといえるのかも何ら記載されていないものである。
(5)本願補正発明と引用発明2との対比
本願補正発明と引用発明2とを対比すると,次のとおり,引用発明2の「ボーナスに当選している旨」の「報知」は,本願補正発明の「特別演出」に相当しないから,本願補正発明が引用発明2と同一であるとは認められない。また,引用発明2において,本願補正発明の「特別演出」に係る構成を採用することを,当業者が容易に想到し得たことを認めるに足りる証拠はない。

本願補正発明の「特別演出」の技術的意義

前記第2の2(2)のとおり,本願補正発明の「特別演出」は,
「前記有利量付与決定
手段により決定された有利量の付与」を「報知する」ものである(構成要件F)。
そして,
「有利量」
とは,
「有利状態に制御するための」
ものであり
(構成要件C)

それを「消費することによって・・・有利状態に制御する」ものである(構成要件D)

そうすると,
「特別演出」における報知の対象は,それを消費することによって有利状態に制御することができる有利量を付与することが決定されたという事実である。

引用発明2の「ボーナスに当選している旨」の「報知」について

引用発明2において,
「サブ制御部91は,
RT1~RT3の残りゲーム数が3ゲ
ームになったと判定されたときに3ゲームに亘って所定の連続演出を行う上乗せ・ボーナス連続演出を行い,上乗せ・ボーナス連続演出を実行しているときに,ボーナスに当選したときには最終的に
『ボーナスに当選している旨』『報知』する

」(構
成f2)

しかし,
「ボーナスに当選している旨」は,ボーナスに当選したという過去の事実又はボーナスに当選しているという状態であるから,直ちに量的要素を伴う有利量を付与することが決定されたという事実であるということはできない。また,刊行物1によると,ボーナスに「入賞」すると,遊技状態がボーナスに移行し(
【0008】【0065】【0104】【0106】【0112】,ボーナス,




の終了後は,初期遊技状態よりも遊技者にとって有利な遊技状態であるRT1~RT3に遊技状態が制御され,ボーナスに入賞するか,RT4又はRT5に移行しない限り,所定回数(RT1は50回,RT2は40回,RT3は5回)のゲームを行うことができる(
【0109】【0110】【0114】【0143】



)とされて
いるが,ボーナスに「当選」していても,ストップスイッチ8L,8C,8Rをこれらの役に入賞可能とする適切なタイミングで操作しなければ,これらの役に「入賞」することはない(
【0116】
)とされているから,ボーナスの「入賞」であれ
ばともかく,ボーナスの「当選」をもって,有利状態であるRT1~RT3のゲーム数を付与することが決定されたということはできない。ボーナスの当選フラグがそのボーナスが「入賞」するまで次のゲームに持ち越される(
【0244】【039

8】
)としても,ボーナスに「入賞」する前に遊技者がゲームを終了してしまえば,ボーナスに「入賞」することはないことからすると,ボーナスの当選フラグが持ち越されることは,上記判断を左右するものではない。
そうすると,引用発明2の「ボーナスに当選している旨」の「報知」は,それを消費することによって有利状態に制御することができる有利量を付与することが決定されたという事実を報知するものとはいえない。

被告の主張について

被告は,ボーナスに入賞した時点でRT1~RT3に制御されたゲームを所定回数行えることが決定されるといえるところ,ボーナスに当選した状態はボーナスに入賞するまで維持されるから,引用発明2において,
「ボーナスに当選している旨」
の「報知」がされると,確実に各ボーナスに移行することは明らかであると主張する。
しかし,前記イのとおり,ボーナスに当選した状態がそのボーナスに入賞するまで維持されるとしても,ストップスイッチ8L,8C,8Rをボーナスに入賞可能とする適切なタイミングで操作しなければ,ボーナスに入賞することはなく,ボーナスに入賞する前に遊技者がゲームを終了してしまえば,結局,ボーナスに入賞することはないのであるから,
「ボーナスに当選している旨」の「報知」がされると確
実にボーナスに移行するということはできない。

小括

以上によると,引用発明2の「ボーナスに当選している旨」の「報知」は,本願補正発明の「特別演出」に相当しない。
したがって,本願補正発明が引用発明2と同一であるとは認められない。また,引用発明2において,本願補正発明の「特別演出」に係る構成を採用することを,当業者が容易に想到し得たことを認めるに足りる証拠はない。なお,前記第2の3(1)イ(キ)のとおり,審決は,
「仮に相違する点があるとしても,本願補正発
明は,引用発明1又は引用発明2から当業者が容易に想到し得たものである」と判断したところ,この特許法29条2項に係る判断は,本願補正発明と引用発明2との相違点が特定されておらず,本願補正発明と引用発明2との相違点に係る本願補正発明の構成がいかなる論理付けにより容易想到であるといえるのかも何ら記載されていないものである。
3
結論

以上によると,取消事由1及び2は,いずれも理由があり,審決にはその結論に影響を及ぼす違法があるから,原告の請求を認容することとして,主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第2部

裁判長裁判官
森義之礼子
裁判官
森岡古庄
裁判官

トップに戻る

saiban.in