判例検索β > 平成28年(わ)第2315号
窃盗、窃盗未遂等被告事件
事件番号平成28(わ)2315
事件名窃盗,窃盗未遂等被告事件
裁判年月日平成30年8月30日
法廷名千葉地方裁判所
裁判日:西暦2018-08-30
情報公開日2018-09-25 12:00:07
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平成28年

第2315号,平成29年

第162号,第440号,第640号,第

876号,第967号,第1016号,第1203号,第1388号窃盗
窃盗未遂,
覚せい剤取締法違反,
大麻取締法違反,
医薬品,
医療機器等の品質,
有効性及び安全性の確保等に関する法律違反,道路交通法違反被告事件平成30年8月30日

千葉地方裁判所刑事第1部判決

主文
被告人を懲役10年及び罰金30万円に処する
未決勾留日数中450日をその懲役刑に算入する。
その罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
千葉地方検察庁で保管中の覚せい剤6袋,指定薬物4袋,大麻3袋(ラップで包まれ,チャック付きビニール袋に在中しているもの)を没収する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,
第1(平成29年7月21日付け起訴状記載の公訴事実)
営利の目的で,みだりに,平成27年11月19日,千葉県船橋市(以下省略)において,
覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパン塩類を含有する白色結晶状粉末49.55gを所持し,
第2(平成29年8月18日付け起訴状記載の公訴事実)
平成27年12月30日,同県柏市(以下省略)店舗駐車場において,1みだりに,
覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパン及びその塩類を含有
する白色結晶状粉末1.992g
2みだりに,大麻である乾燥植物片0.628g
3医療等の用途以外の用途に供するため,いずれも指定薬物である1-(インダン―5―イル)―2―(ピロリジン―1―イル)ブタン―1―オン(通称等5―PPDI)2―アミノ―1―フェニル―プロパン―1―オン

(以下
基本骨格
という。

の2位にアミノ基の代わりに1―ピロリジニル基が1つ結合し,かつ,3位に直鎖状プロピル基が1つ結合し,かつ,ベンゼン環の2位から6位までに水素以外が結合していない物であって基本骨格の2位,3位及び当該ベンゼン環にさらに置換基が結合していないもの,
基本骨格の2位にアミノ基の代わりに1―ピロリジニル基が1つ結合し,かつ,3位に直鎖状ブチル基が1つ結合し,かつ,ベンゼン環の2位から6位までに水素以外が結合していない物であって基本骨格の2位,3位及び当該ベンゼン
環にさらに置換基が結合していないもの,基本骨格の2位にアミノ基の代わりに1―ピロリジニル基が1つ結合し,かつ,3位にエチル基が1つ結合し,かつ,ベンゼン環の4位にメトキシ基が1つ結合している物であって基本骨格の2位,3位及び当該ベンゼン環にさらに置換基が結合していないものを含有する肌色粉末6.850gをそれぞれ所持し,

第3(平成29年5月30日付け起訴状記載の公訴事実)
氏名不詳者と共謀の上,平成28年9月24日頃,埼玉県三郷市(以下省略)倉庫敷地内において,同所に駐車中の同社代表取締役A管理の普通貨物自動車1台(時価約250万円相当)を乗り去り窃取し,
第4(平成29年6月22日付け起訴状記載の公訴事実第1)

公安委員会の運転免許を受けないで,平成28年9月29日午前3時38分頃,千葉県船橋市(以下省略)付近道路において,普通乗用自動車を運転し,第5(平成29年6月22日付け起訴状記載の公訴事実第2)
判示第4の日時頃,判示第4の場所先において,判示第4の車両を運転中,自車をB運転の大型貨物自動車に衝突させ,同車右側面部を損壊(損害額140万6062
円相当)する交通事故を起こしたのに,自車を道路上に放置して立ち去り,道路における危険を防止する等の必要な措置を講じず,かつ,その事故の発生の日時及び場所等の法律の定める事項を,直ちに最寄りの警察署の警察官に報告せず,第6(平成29年3月21日付け起訴状記載の公訴事実)
Cと共謀の上,平成28年10月1日頃,千葉市(以下省略)駐車場において,同所に駐車中のD所有の普通貨物自動車(時価約300万円相当)の施錠を外して同車内に乗り込み,
同車のエンジンキーシリンダーを取り外すなどして同車を窃取しようとしたが,同車のエンジンが始動しなかったため,その目的を遂げず,第7(平成29年6月14日付け起訴状記載の公訴事実)
氏名不詳者と共謀の上,平成28年10月11日頃,同県松戸市(以下省略)駐車場において,同所に駐車中のE所有の普通貨物自動車1台(時価約170万円相当)
を乗り去り窃取し,
第8(平成28年12月21日付け起訴状記載の公訴事実)
分離前の相被告人Fと共謀の上,平成28年10月31日頃,同県佐倉市(以下省略)駐車場において,同所に駐車中のG所有の普通乗用自動車1台(時価約30万円相当)を乗り去り窃取し,

第9(平成29年2月8日付け起訴状記載の公訴事実)
判示第8のFと共謀の上,平成28年11月12日午前4時頃,同県松戸市(以下省略)駐車場において,同所に駐車中のH管理の普通乗用自動車1台(時価約80万円相当)を乗り去り窃取し,
第10(訴因変更後の平成29年4月18日付け起訴状記載の公訴事実第1)
法定の除外事由がないのに,平成28年11月30日頃,同県流山市(以下省略)駐車場に駐車中の自動車内において,覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパンの塩類若干量を含有する水溶液を自己の身体に注射し,もって覚せい剤を使用し,第11(平成29年4月18日付け起訴状記載の公訴事実第2)
平成28年11月30日,同市(以下省略)駐車場において,

1みだりに,
覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパン及びその塩類を含有する白色結晶状粉末2.160g
2みだりに,大麻である乾燥植物片7.008g
3医療等の用途以外の用途に供するため,いずれも指定薬物である2―アミノ―1―フェニル―プロパン―1―オン(以下基本骨格という。)の2位にアミノ基の代わりに1―ピロリジニル基が1つ結合し,かつ,3位に直鎖状プロピル基が1つ結合し,かつ,ベンゼン環の2位から6位までに水素以外が結合していない物であって基本骨格の2位,3位及び当該ベンゼン環にさらに置換基が結合していないもの,基本骨格の2位にアミノ基の代わりに1―ピロリジニル基が1つ結合し,かつ,3位に直鎖状ブチル基が1つ結合し,かつ,ベンゼン環の2位から6位までに水素以外が結合していない物であって基本骨格の2位,3位及び当該ベンゼン環にさらに置換基
が結合していないもの,(インダン―5―イル)
1―
―2―
(ピロリジン―1―イル)
ブタン―1―オン
(通称等α―PBPindane

analog,
5―PPDI)

を含有する茶色粉末1.385g
をそれぞれ所持した。
(争点に対する判断)
第1覚せい剤の営利目的所持(判示第1の事実)について
1争点
弁護人は,覚せい剤の営利目的所持(判示第1の事実)について,ホテルの部屋に忘れた紙袋の中の茶封筒から発見されたチャック付きビニール袋入り覚せい剤(以下本件覚せい剤という。
)は,被告人と一緒に部屋を利用したIのものであり,被告

人が所持したものではない,と主張する。
2I証言の要旨及びその信用性
⑴I証言の要旨
Iは,要旨,
被告人とはパチンコ仲間として付き合っており,本件当日,二人でホテルに泊まった。ホテルの部屋に忘れた紙袋は自分のものである。紙袋には,自分の書類や夫の携帯電話機を入れていたが,本件覚せい剤が入った茶封筒を入れたことはなく,自分のものではない。それが入っていたことも知らなかった。一緒にホテルの部屋を利用した被告人のものではないかと想像はできるが,いつどこで紙袋に入ったかは分からないなどと証言する。⑵I証言の信用性
ア本件覚せい剤が入った茶封筒は,Iの持っていた紙袋の中から発見されており,まずIの関与が疑われる状況にあるのに,I証言には,曖昧かつ不自然な点がある。すなわち,I名義の貯金口座の取引履歴(弁11)によれば,本件覚せい剤をホテルの部屋に忘れた当日,Jなる者からIに対して38万円もの振込がされており,その後同口座から42万円が引き出され,13万円が被告人に送金されている。被告人とIは一緒に覚せい剤を使用する仲でもあり,Iのこのような多額の金銭のやり取りは
本件覚せい剤に関するものではないかとの疑いもあるところ,Iは,上記取引履歴について,
Jから生活費として38万円を借りたが,どういう状況で借りたのかは覚えていない。部屋を借りるために42万円を引き出したがパチンコ代に全て費消した。パチンコで勝った13万円を被告人に送金したのだと思うが,何のために送金したのか,なぜ被告人と一緒にいる間に引き出した42万円の中から直接手渡ししなかったのかは分からないなどと曖昧かつ不自然な説明をしている。I証言の全てを直ちに信用することはできない。
イしかし,
本件覚せい剤が在中していたチャック付きビニール袋から被告人の指紋が検出されていること,本件覚せい剤が入っていた紙袋の中には,Iではなく被告人が当時吸っていた銘柄のたばこ1箱が入っていたことなどの客観的な事実に照ら
すと,I証言は一定の合理性を持つ部分もある。また,Iは,本件覚せい剤が入った茶封筒の所有者や覚せい剤が紙袋の中に入った経緯は分からない旨証言しており,殊更被告人に不利な証言をしているわけでもない。更に後記の被告人の自白と併せて検討すると,本件覚せい剤は自分のものではなく,被告人が紙袋に入れたのではないかとのI証言は,その限度で信用できる。

3被告人の供述及びその信用性
⑴被告人の供述要旨
被告人は,捜査段階から第9回公判期日まで,
本件覚せい剤はKという人物から依頼されて自ら仕入れたものであり,知り合いに手数料等をのせて売るつもりであった。Iとホテルに入る際に,本件覚せい剤が入った封筒をむき出しで持って行くのもなにかと思ったので,Iの紙袋の上に置いて,自らがその紙袋を持ってホテルに入ったなどと供述し,本件覚せい剤の所持を認めていた。しかし,被告人は,突如,弁論再開後の第14回公判期日の被告人質問において,本件覚せい剤は自分のものではない。自分がIの紙袋を持ってホテルに入ったかは覚えていない。ホテルの部屋でソファに座った際,横に紙袋があり,その一番上に載っていた封筒が何となく気になって中身を引っ張り出して見たところ,大量の覚せい剤であった。量が量なので関わらない方がよいと思い,Iには何も言わなかったなどと供述し,本件覚せい剤の所持を否認するに至った。
⑵上記各供述の信用性
ア被告人の変遷前の自白は,本件覚せい剤を入手した経緯やその相手,本件覚せい剤をIが所持していた紙袋に入れた状況,覚せい剤の販売方法やその相手等を具体
的かつ詳細に供述するものであって,その内容に特段不自然・不合理な点はない。実際に販売相手とされる者から被告人管理の預金口座に複数回にわたり入金がされている事実とも符合している。また,上記のとおり,本件覚せい剤入りのチャック付きビニール袋は,裸の状態ではなく茶封筒に入った状態で紙袋に入っていたのに,そのチャック付きビニール袋に被告人の左手親指の指紋が複数付着していたということ
は,
特段の理由もなく他人の荷物の中の物を無断で開披するとは考え難いことからして,
被告人が本件覚せい剤の入った茶封筒をIの紙袋に入れたという変遷前の上記自白の信用性を強く支える事実である。被告人の変遷前の自白は概ね信用できる。この点,弁護人は,被告人がIの所持していた本件覚せい剤に何らかの拍子に触れる可能性は否定できないと主張する。しかし,本件覚せい剤が入っていたチャック付
きビニール袋は茶封筒の中に入っていたのであるから,これをあえて取り出すなどしなければチャック付きビニール袋に被告人の指紋が付くことは考え難い。また,被告人は,第14回公判期日の被告人質問において,
車の中にいた時点では茶封筒がなかったから気になって中身を見たたまたま目について気になったので中身を引っ張り出したなどと供述するが,何の変哲もない茶封筒の存在に必要以上に意を払っている点でやや不自然さは否めないし,中身を出した理由について合理的な説明がなく,信用できない。
イ一方,
被告人は,
上記のとおり供述を変遷させた理由について,
Iの子供が施設に入所していると聞き,その境遇に同情し,単純所持であれば自分が罪を被ってもよいと思い,これまでIを庇っていた。しかし,平成29年11月1日に自分自身が入籍したことや予想以上に求刑が重かったことなどから,周囲の人の助言もあって,本当のことを話すこととしたなどと述べる。しかし,判示第1の事実の当時,被告人とIは知り合って約1か月しか経っておらず,その後ほとんど連絡もなく,関係は続かなかったというのであり,重い刑が予想される覚せい剤営利目的所持の罪を被ってまでして同人を庇うほどの関係にはない。被告人は,
単純所持であれば自分が罪を被ってもよいと思っていたが,営利目的所持になるとは当時認識できなかったなどとも言うが,逮捕当初から本件は覚せい剤営利目的所持の嫌疑であり,被告人自身,勾留質問や弁解録取を含む取調べ,更には起訴を経て,
本件が覚せい剤営利目的所持の事案であることを認識していたことは明らかである。のみならず,被告人は,平成29年11月1日に入籍しているのに,その後の第9回公判期日(同月16日)の被告人質問においても,本件覚せい剤の所持
を認めており,入籍が供述変遷の理由とは認められないし,この被告人質問の中で,被告人自身10年くらい刑務所に行くと思っている旨述べているのであって,求刑が予想以上に重かったともいえない。供述の変遷に合理的な理由はない。変遷後の供述の内容をみても,上記のとおり,本件覚せい剤を茶封筒から取り出した経緯等にやや不自然な点がある。また,被告人は,大量の覚せい剤を目の当たりに
して関わらない方がよいと思ったと言いながら,
Iが紙袋を忘れたことに気付いた後,
Iと共に立寄り先であるパチンコ店や判示第1のホテルに戻り,一緒に紙袋を探している。本件覚せい剤を発見した人物が警察へ通報することにより,覚せい剤所持の事実で逮捕される危険がある中で,自分のものでもない本件覚せい剤が入った紙袋を一緒に探すというのは,被告人の前科の内容にも照らせば,甚だ不自然,不合理といわざるを得ない。むしろ,このような被告人の行動は,上記変遷前の自白と整合するものといえる。被告人の変遷後の供述を信用することはできない。
ウこうしてみると,変遷前の被告人の自白は,捜査段階から第9回公判期日まで一貫していた上,チャック付きビニール袋の指紋付着状況,本件直後に危険を冒して紙袋をIと一緒に探すという行動等からして,信用性が認められる。他方,これらと整合せず,合理的な理由なく変遷した後の供述は信用できない。

4結論
以上によれば,本件覚せい剤は,被告人がIの紙袋に入れて所持していたものと認められる。
なお,本件覚せい剤の量が約49.55gと多いこと,被告人自身,手数料等を上乗せして売るつもりであったと供述していることなどからすれば,本件覚せい剤の所
持は営利目的によるものと認められる。
第2

違法収集証拠排除の主張について

1争点
本件では,
平成28年5月に発生した自動車盗事件を被疑事実として発付された各検証許可状に基づいて,
被告人らの使用車両複数台にそれぞれGPS端末を取り付け
てそれらの位置情報を検索して取得する方法による捜査(以下本件GPS捜査という。
)が行われている。
弁護人は,本件GPS捜査における検証許可状の発付,取得及び執行のいずれの段階にも違法性がある上,
他に無令状によるGPS捜査が実施された可能性も否定でき
ず,その違法性は重大であるから,本件GPS捜査が実施されていた又は他のGPS
捜査が実施されていた可能性が高い期間に発生した判示第3から第11までの各事件に関し,
GPS捜査によって得られた証拠及びそれと密接な関連性を有する証拠については,違法収集証拠として排除すべきである,と主張する(なお,弁護人は,解任前の弁護人が上記証拠につき同意しているものの,刑訴法326条1項の相当と認めるときに当たらない,と主張するものと解される。。)
2本件GPS捜査の経緯
関係証拠によれば,本件GPS捜査の経緯は以下のとおりである。⑴

被疑者及び使用車両の特定

平成27年末から千葉県内及び隣接する埼玉県内でトヨタハイエースを狙った連続自動車盗事件が発生していたところ,防犯カメラ映像の精査,被害車両に搭載されていたGPS端末の位置情報の確認等の内偵捜査から,
被疑者として被告人,
Lらが,
その使用車両としてトヨタ白色マークX等がそれぞれ浮上し,
更に被告人らの使用車
両の駐車場所(以下犯行拠点駐車場という。
)等が判明した。
平成28年5月2日
(以下,
断りのない限り月日は平成28年とする。から同月3

日にかけて,千葉県鎌ケ谷市内の駐車場において,トヨタハイエースの盗難被害が発生した。被害車両に搭載されていたGPS端末の位置情報,犯行拠点駐車場を撮影し
ている捜査秘匿カメラの映像,その他の防犯カメラ映像等により,この事件に被告人及びLが関与している嫌疑が相当程度認められた。また,捜査の結果,当時の被告人らの使用車両として,トヨタ白色イプサム(以下白色イプサムという。)やトヨタ
黒色マークX(以下黒色マークXという。
)が判明した。


9月18日から10月4日までの間のGPS捜査

ア警察官らは,5月2日に発生した自動車盗事件の被害品の隠匿・処分先,被疑者として浮上している被告人らの潜伏先の把握等の捜査を行う必要があったが,被告人らの行動範囲が広域にわたること,深夜から早朝にかけての行動が多いため追尾する警察車両の前照灯の光等により警戒する被告人らに気付かれるおそれがあることなどから,GPS捜査を行う必要があると判断した。しかし,GPS捜査が,公道上
のみならず,内部の状況を窺い知れない私有地内での対象車両の位置,動向等を含めて把握するものとなり,
被告人らのプライバシーを侵害するとして強制処分と評価さ
れる可能性があることなどを考慮して,検証許可状を請求することとした。裁判官は,9月14日,警察官からの請求を受け,5月2日に発生した上記自動車盗事件を被疑事実とした上,
検証すべき物を被告人らの使用車両である黒色マークX
及び白色イプサムとしてGPS捜査を許可する旨の各検証許可状を発付した。各検証許可状では,取り付けるGPS端末4台を固有番号で指定した上,検証すべき内容及び実施方法につき,
上記各車両の位置情報を移動追跡装置及びM株式会社が提供するサービスを利用して,千葉県警察本部刑事部捜査第三課設置のパーソナルコンピュータ又は携帯電話端末機により,電気通信回線を通じて取得する。と定め,検証の期
間を移動追跡装置を取り付けた日から10日間としていた。また,検証に関する
条件として,
⑴移動追跡装置の取付け及び取外し場所は,公道上,公共施設の駐車場等一般来場者その他の不特定多数の者の立入りが認められている場所又は警察官が立入りを許可されている場所に限る。⑵移動追跡装置の取外しは,新たな検証許可状の発付があった場合を除き,検証の期間経過後遅滞なく行う。⑶検証すべき物が本件被疑事実と明らかに関連がないと認められた場合には,速やかに検証を中止する。と定めていた。警察官らは,検証手続の執行に先立ち,M株式会社の社員に対して各検証許可状を呈示した上,9月18日,パチンコ店駐車場において,黒色マークXに検証許可状で指定されたGPS端末1台を取り付け,
検証許可状に定められた内容及び実施方法に
従って,同日から同月24日までの間,合計28回にわたり同車両の位置情報検索を
行った。
白色イプサムについても,
同様にして,
同月19日,
公共の駐車場において,
GPS端末1台を取り付け,同日から同月25日までの間,合計130回にわたり同車両の位置情報検索を行った。
イ引き続き,警察官らは,上記各車両にGPS端末を付けたまま,先の各検証許可状に記載された条件に従い,検証期間内に再度検証許可状を請求した。裁判官は,
9月27日に黒色マークXについて,同月28日に白色イプサムについて,それぞれ期間を令状発付日の翌日から10日間

GPS
捜査を許可する旨の検証許可状を発付した。
警察官らは,M株式会社の社員に対して各検証許可状を呈示した上,黒色マークXについては,同月29日から10月4日までの間,合計184回にわたり,検証許可状に定められた内容及び実施方法に従って位置情報検索を行い,同日,警察署において,押収した同車両からGPS端末を取り外した。白色イプサムについても,9月29日に合計16回にわたり,
検証許可状に定められた内容及び実施方法に従って位置
情報検索を行い,同日,警察署において,押収した同車両からGPS端末を取り外した。
ウ警察官らは,被告人の行動確認を実施中(これについては,上記GPS捜査の
位置情報検索によるものと思料される。この点は検察官も認めている。,被告人の使)
用車両がトヨタハイエースと帯同走行している状況を発見して追跡したところ,後にそのハイエースが判示第3の被害車両であることが判明した。また,判示第6の事実については,被害者が,警察官からの連絡を受け,被害を確認・申告しており,上記GPS捜査の結果による可能性がある。

上記GPS捜査を終了した後の10月11日,警察官らは,被告人らの立回り先の捜索に備え,その一つである共犯者の元住居に赴いた際,駐車場で作業する男らが停めてあったハイエースを移動し始めたため追尾したところ,それが判示第7の被害車両であることが判明した。


10月26日から11月30日(被告人逮捕)までの間のGPS捜査
アしかし,依然として,5月2日に発生した上記自動車盗事件の被害品の隠匿・処分先,被告人らの潜伏先等は明らかにならなかった。警察官らは,被告人らの行動確認等の捜査の結果,被告人らの使用車両として,トヨタ白色マークX(以下白色マークX①という。)を新たに把握したため,上記同様の理由から,白色マークX①についても検証許可状の発付を受けてGPS捜査を行う必要があると判断した。
裁判官は,10月25日,警察官の請求を受け,5月2日に発生した上記自動車盗事件を被疑事実として,取り付けるGPS端末4台を固有番号で指定し,⑵アと同様の内容及び実施方法・期間・条件を定めた上,白色マークX①に対するGPS捜査を行うことを許可する旨の検証許可状を発付した。
警察官らは,⑵アと同様,検証手続の執行に先立ち,M株式会社の社員に検証許可状を呈示した上,10月26日,公共の駐車場において,白色マークX①に検証許可状で指定されたGPS端末1台を取り付け,同日から11月3日までの間,合計198回にわたり,
検証許可状で定められた内容及び実施方法に従って位置情報検索を行った。なお,同日,取り付けたGPS端末の電池切れを防ぐため,公共の駐車場において,検証許可状で指定された別のGPS端末に付け替えた。
イ引き続き,警察官らは,白色マークX①にGPS端末を取り付けたまま,先の
検証許可状に記載された条件に従い,検証期間内に改めて検証許可状を請求した。裁判官は,11月4日,14日及び24日,白色マークX①について,期間を令状発付の内容及び実施方法・期間・条件を定め,
GPS捜査を許可する旨の検証許可状を発付した。
警察官らは,M株式会社の社員に各検証許可状を呈示した上,同月5日から12日
までの間に合計152回,同月15日から17日までの間に合計9回,同月26日に合計3回,
各検証許可状に定められた内容及び実施方法に従って位置情報検索を行った。その後,12月15日,警察署において,押収した同車両からGPS端末を取り外した。
ウ同様に,被告人らの使用車両である別のトヨタ白色マークX(以下白色マークX②という。)について,警察官らは,11月16日及び同月30日,

同様の

検証すべき内容及び実施方法・(ただし,
期間
同月30日付け検証許可状においては,
期間は令状発付日の翌日から10日間とされている。・条件でGPS捜査を許可する)
各検証許可状の発付を受けた。これにより,白色マークX②にGPS端末が取り付けられ,被告人が逮捕される同日まで,各検証許可状で定められた内容及び実施方法に従って位置情報検索が行われた。
エ警察官らは,上記GPS捜査による位置情報検索により被告人の行動確認を実施中,
被告人らが判示第8の犯行に及ぶのを現認するとともにその被害車両を発見した。また,判示第9の事実については,被害者が,警察官からの連絡を受け,被害を確認・申告しており,上記GPS捜査の結果によるものである(この点は検察官も認めている。。

被告人は,その後の11月30日,判示第8の事実を被疑事実とする逮捕状により通常逮捕された。


各検証許可状の被告人に対する呈示

警察官らは,各GPS捜査に先立って,被告人らに各検証許可状を呈示したことはない。しかし,被告人逮捕後の平成29年1月21日の取調べで白色マークX①に関する検証許可状を,
同年3月18日の取調べで黒色マークX及び白色マークX②に関する各検証許可状を,被告人に対して事後的に呈示した。また,警察官は,同年4月25日の取調べで,被告人に対し,白色イプサムにGPS端末を取り付けてGPS捜査を行った旨告知したが,その際に検証許可状の呈示を失念した。3本件GPS捜査の違法性及び証拠排除
当裁判所の判断

ア上記2で認定した事実によれば,警察官らは,判示第3から第11までの各犯行がされた期間に,各検証許可状の発付を受けた上,被告人らの使用車両に承諾なく秘かにGPS端末を取り付け,
同車両の位置情報を検索して動向を把握するGPS捜
査を実施している。GPS捜査は,個人のプライバシーの侵害を可能とする機器をその所持品に秘かに装着することによって,合理的に推認される個人の意思に反してその私的領域に侵入する捜査手法であり,令状がなければ行うことができない強制の処分であると解されるところ,現行法上,同捜査を想定した令状はなく,その適法性には
刑集71巻3号13頁参照)
。そのため,各検証許可状に係る被疑事実におけるGP

S捜査の必要性等を考慮したとしても,本件GPS捜査には違法の疑いがある。イしかし,本件GPS捜査は上記最高裁判決の前に実施されたものである。警察官らは,上記のとおり,本件GPS捜査が被告人らのプライバシーを侵害する強制処分に当たる可能性があること,
GPS捜査が同意なくGPS端末を対象車両に取り付
けて情報機器の画面表示を読み取って同車両の所在と移動状況を把握する点で検証と同様の性質を有していることを考慮し,事前の司法審査を経るべく,検証許可状を請求し,裁判官から各検証許可状の発付を受け,その有効性を信頼した上で,検証許可状に記載された検証すべき内容及び実施方法・期間・条件を遵守して本件GPS捜査を実施していることからすれば,
警察官らに令状主義を潜脱する意図がなかったこ
とは明らかである。そうすると,本件GPS捜査には令状主義の精神を没却するような重大な違法があるとはいえず,同捜査により得られた証拠を許容することが,将来
における違法な捜査の抑制の見地からしても相当でないとは認められない。ウ
そもそも,判示第4の事実(無免許運転)及び第5の事実(報告義務違反等)
については,発生時期が本件GPS捜査の実施期間中であったというだけであって,これらに関する証拠は,いずれも本件GPS捜査とは無関係に収集されたものである。判示第7の事実(自動車盗)についても,上記のとおり,被害車両がGPS捜査の実施されていない間に,これと無関係に発見,押収されており,その他の証拠も本件GPS捜査との関連性はない。
判示第8の事実(自動車盗)についても,本件GPS捜査の位置情報検索により被告人の行動確認をしていた警察官が偶々同犯行を現認するとともに被害車両を発見するに至ったものであって,これに関する証拠は,いずれも本件GPS捜査により直
接得られたもの又はこれと密接な関連性を有するものとは認められない。判示第10の事実(覚せい剤使用)及び第11の事実(覚せい剤,大麻,指定薬物所持)に関する証拠についても,単に判示第8の事実による通常逮捕に伴う捜索,差押え又はその際の尿の任意提出等により収集されたというものにすぎず,やはり本件GPS捜査により直接得られたもの又はこれと密接な関連性を有するものとは認め
られない。
弁護人の主張に対する検討
アこれに対し,弁護人は次のとおり主張する。
すなわち,
①重大事案でなくGPS捜査の高度の必要性もない5月2日に発生した上記自動車盗事件を被疑事実として検証許可状を発付したこと自体が違法であること,②本件GPS捜査の実施期間は2か月余りにわたり,その間の位置情報検索の回数は合計721回に及んでいる点でプライバシー侵害の程度は重大であり,上記被疑
事実との関連性を欠くGPS捜査が行われた可能性が否定できないこと,③本件各検証許可状が被告人に対して事前呈示されたことはなく,事後呈示も迅速さを欠いていている
(白色イプサムに関する検証許可状については事後呈示すらない。上,)
位置情
報検索作業に立会人を付するなどの第三者の関与が確保されていないこと,④捜査機

関による被告人の行動確認の内容等からして,他にも無令状でのGPS捜査が実施されていた可能性が否定できないことなどを理由に,
本件GPS捜査を含む一連のGP
S捜査には重大な違法があり,
これによって得られた証拠及びそれと密接な関連を有
する証拠については,証拠排除すべきである,などというものである。イしかし,所論①の要件(事案の重大性及びGPS捜査の高度の必要性)につい
ては,上記最高裁判決の補足意見に基づくものと思われるが,本件GPS捜査が同判決の前に実施されていることからすれば,当時,同要件を充足していなかったからといって,
その違法性が遡って直ちに令状主義を潜脱する重大なものであるということにはならない。
所論②については,本件GPS捜査は,その目的等からして,一定期間にわたり継
続的に対象車両の位置情報検索を行わなければならず,プライバシー侵害の可能性があるため,
裁判官による事前の審査を経て発付された令状に従って行われているのであって,
そこに令状主義の精神を没却するような重大な違法がないことは既に述べたとおりである。本件各検証許可状においては,

検証すべき物が本件被疑事実と明らかに関連がないと認められる場合には,速やかに検証を中止する。

との条件が付さ
れており,対象車両の過剰な位置情報検索を抑制する配慮がされている。また,本件GPS捜査で得られた情報をもとに行われた捜査により,本件各検証許可状の被疑事実以外の判示第3,第6及び第9の事実の各被害車両が発見されるなどしているが,これは本件GPS捜査の実施期間中に,
偶々被告人が各犯行を繰り返していたためで
あって,
警察官らがこれらの事件の捜査を意図して本件GPS捜査を実施していたものではない。
他に別件を意図して本件GPS捜査が実施されたことを疑うべき事情はない。
所論③については,刑訴法222条1項,110条は,処分を受ける者への令状の事前呈示を規定しているところ,これは執行手続の公正さを担保することを目的とするものである。
GPS捜査は捜査対象者に知られず秘かに行うのでなければその目的を達成できないものであるから,本件各検証許可状の発付に際して,事前の令状呈示
はそもそも予定されていなかったと解するのが相当である。他方で,これに代わり得る手続の公正担保の手段として,GPS端末を貸与し,位置情報を取得する際に利用するサービスを提供するM株式会社の社員に対し,検証許可状が事前に呈示されているほか,黒色マークX,白色マークX①②に関するGPS捜査については,各検証許可状が被告人に対して事後的に呈示され,白色イプサムに関するGPS捜査について
も,検証許可状の呈示こそ失念しているが,逮捕後の取調べでGPS捜査が行われた旨被告人に対して告知されており,
実質的には同捜査に対する不服申立て等の機会が
与えられたものといえる。警察官が意図的に各検証許可状の呈示を遅らせたり,白色イプサムに関する検証許可状を呈示せずにGPS捜査の実施を隠匿したとは認められない。また,本件GPS捜査の内容及び実施方法は,上記のとおり,各車両の位置
情報を,M株式会社が提供するサービス等を利用して,警察本部のパーソナルコンピュータ又は携帯電話端末機に,電気通信回線を通じて取得するというものであって,人の住居等で執行するものではないし,各検証許可状で定められた検証すべき内容及び実施方法・条件を見ても,第三者の立会いは予定されていない。これらの点をもって,令状主義の精神を没却するような重大な違法があるとはいえない。
所論④については,2⑴で認定したとおり,防犯カメラ映像,内偵捜査等から被告人らの嫌疑が浮上してきたのであって,本件GPS捜査の開始前にGPS捜査が行われたことを窺わせる事情は見受けられない。所論は抽象的な可能性を指摘するものにとどまる。確かに,検証の必要性に関する捜査報告書等をみると,検察官がGPS捜査を実施したことを認めている車両以外の車両についてもGPS捜査が実施されていたことが窺われるものの,他のGPS捜査が実施されていたとしても,それによって得られた証拠と判示第3から第11までの事実の有罪認定に供した証拠には関連性がない。したがって,いずれにしても違法収集証拠として排除するほどの重大な違法があるとはいえない。
⑶結論
以上によれば,本件GPS捜査には,令状主義の精神を没却するような重大な違法
があるとはいえず,これにより得られた証拠を許容することが,将来における違法な捜査の抑制の見地からしても相当でないとは認められない。また,少なくとも判示第4,第5,第7,第8,第10及び第11の事実に関する証拠は,本件GPS捜査により直接収集されたもの又は密接な関連性を有するものとも認められない。したがって,弁護人が証拠排除を主張する判示第3から第11までの事実の証拠の標目に
掲げた証拠については,いずれも違法収集証拠とはいえず,証拠能力が認められる。(量刑の理由)
1本件は,
①共犯者との共謀による自動車盗5件
(うち1件は未遂)②営利目的

での覚せい剤所持1件,③非営利目的での覚せい剤,大麻及び指定薬物所持2件,④覚せい剤の自己使用1件,⑤無免許運転1件,⑥交通事故惹起後の危険防止,報告義
務違反1件の事案である。
2本件量刑において中心的な位置を占めるのは,自動車盗及び覚せい剤の営利目的所持を含む薬物事件である。自動車盗についてみると,施錠された被害車両のドアを針金等の道具を用いて解錠した上,エンジンキーシリンダーを取り外すなどしてエンジンを始動させて乗り去るという手慣れた態様であり,その件数や半数以上が転売
目的であったことなどに照らしても,常習的・職業的な犯行である。被害額は合計約530万円にも上っており,
被害車両が還付されるまでに被害者らの被った迷惑も軽
視できない。覚せい剤の営利目的所持についてみると,知人らに対する密売を繰り返す中での犯行であり,その所持量も合計49.55gと多い。自身も覚せい剤を使用したり,他の違法薬物と共に所持したりしており,被告人の違法薬物への親和性及び薬物犯罪の常習性は顕著である。これらに加え,被告人は,上記累犯前科のとおり,平成16年に強盗致傷,
窃盗
(自動車盗)覚せい剤の使用及び所持の罪により懲役1

1年に処せられ,平成27年5月末に刑の執行を終了したばかりであったのに,同年11月以降又しても同種の各犯行を繰り返していることも併せ考えると,上記の各常習性が裏付けられるだけでなく,被告人の規範意識は乏しいといわざるを得ない。また,被告人は,自動車盗の手段として常習的に無免許運転を繰り返していただけ
でなく,物損事故を起こすや,これらの犯罪の発覚を恐れて,事故現場から逃走しており,誠に身勝手というほかない。
3そうすると,被告人の刑事責任は相当に重く,判示第1以外の犯行については事実を認めていること,既遂の自動車盗4件の被害車両が全て被害者に還付され,判示第3及び第6の被害者に対して合計11万6000円の弁償をし,その他の被害者
に対しても謝罪文を送付したこと,妻が社会復帰後に被告人と同居して監督する旨誓約していることなど,被告人のために酌むべき事情を十分に考慮しても,主文の刑が相当であると判断した。
(裁判長裁判官

野原俊郎

裁判官

内藤尚子

裁判官

加藤優輝)

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