判例検索β > 平成29年(行ケ)第10116号
審決取消請求事件 特許権 行政訴訟
事件番号平成29(行ケ)10116
事件名審決取消請求事件
裁判年月日平成30年9月20日
法廷名知的財産高等裁判所
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平成30年9月20日判決言渡
平成29年(行ケ)第10116号
口頭弁論終結日

審決取消請求事件

平成30年7月17日
判原決告
フラウンホッファー-ゲゼルシャ
フト

ツァ

デァ

アンゲヴァンテン

ュンク

同訴訟代理人弁理士

フォアシ

エー.ファオ

岡田扇被
フェルダールング

谷啓一告特
同指定代理人

井上信一酒井朋広板谷玲子佐藤聡史主許全庁長官文1
原告の請求を棄却する。

2
訴訟費用は原告の負担とする。

3
この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を
30日と定める。
事実及び理由

第1

請求
特許庁が不服2015-5914号事件について平成29年1月10日にした審決を取り消す。
第2
1
事案の概要(後掲証拠及び弁論の全趣旨から認められる事実)
特許庁における手続の経緯等
(1)

原告は,発明の名称を「オーディオエンコーダ,オーディオデコーダ,符
号化されたオーディオ情報,オーディオ信号を符号化および復号化する方法およびコンピュータ・プログラム」とする発明について,平成22年1月28日を国際出願日とする特許出願(特願2011-546842号。パリ条約に基づく優先権主張・平成21年1月28日,米国。請求項の数14)をしたが,平成26年11月25日付けで拒絶査定を受けた。
(2)

原告は,平成27年3月31日,特許庁に対し,拒絶査定不服審判を請求
し,特許庁は,これを不服2015-5914号事件として審理した。原告は,平成28年6月21日付けで特許請求の範囲の記載を補正した(甲2。以下「本件補正」という。)。
(3)

特許庁は,
平成29年1月10日付けで審判請求は成り立たない旨の審決

(以下「本件審決」という。)をし(出訴期間として90日を附加),その謄本は,同月24日原告に送達された。
(4)

原告は,
平成29年5月20日,
本件審決の取消しを求めて本件訴訟を提

起した。
2
特許請求の範囲の記載
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1,
請求項9及び請求項13の記載は,
次のとおりである(甲2。以下において「特許請求の範囲」という場合には本件補正後のものをいう。)。以下,請求項9の発明を「本願発明9」,請求項13の発明を「本願発明13」といい,その明細書(甲1)を,図面を含めて「本件明細書」という。
【請求項1】
符号化オーディオ情報(210)に基づいて復号化オーディオ情報(212)を提供するためのオーディオデコーダ(200)であって,
前記符号化オーディオ情報(210)によって示されるオーディオ情報の時間-周波数表現(242)をオーディオ情報の時間領域表現(252)にマッピングするように構成されるウィンドウベースの信号変換器

(250)
を含み,
前記ウィンドウ・ベースの信号変換器は,ウィンドウ情報(272)を用いて異なる移行傾斜(310a,312a,314a,316a,318a,310b,312b,314b,316b,318b)のウィンドウおよびそれらと関連して異なる変換長を有するウィンドウを含む複数のウィンドウ(310,312,314,316,318)からウィンドウを選択するように構成され,
前記オーディオデコーダ(200)は,オーディオ情報の所定のフレームに関連する時間-周波数表現の所定の部分の処理のためのウィンドウを選択するために可変符号語長のウィンドウ情報(224)を評価するように構成されるウィンドウ・セレクタ(270)を含み,
前記オーディオデコーダは,
前記可変符号語長のウィンドウ情報を用いて,
移行傾斜の選択と変換長の選択との間の依存関係または隣接するフレームのウィンドウ形状の間の相関関係を利用するように構成される,オーディオデコーダ(200)。
【請求項9】
入力オーディオ情報
(110)
に基づいて符号化オーディオ情報
(192)
を提供するためのオーディオエンコーダ(100)であって,
前記入力オーディオ情報(110)の複数のウィンドウ化された部分に基づいてオーディオ信号パラメータ(132)のシーケンスを提供するように構成されたウィンドウ・ベースの信号変換器(130)を含み,
前記ウィンドウ・ベースの信号変換器(130)は,前記入力オーディオ情報(110)の特性に基づいて前記入力オーディオ情報のウィンドウ化された部分を得るためのウィンドウ・タイプを適応させるように構成され,前記ウィンドウ・ベースの信号変換器(130)は,長い移行傾斜を有するウィンドウおよび短い移行傾斜を有するウィンドウ(310,312,314,316,318)の使用の間で切り替わるように構成され,さらに,2つ以上の異なる変換長を有するウィンドウの使用の間で切り替わるように構成され,
前記ウィンドウ・ベースの信号変換器(130)は,前記入力オーディオ情報の先の部分および前記入力オーディオ情報の現在の部分のオーディオ・コンテンツを変換するために用いられるウィンドウ・タイプに基づいて前記入力オーディオ情報の現在の部分を変換するために用いられるウィンドウ・タイプを決定するように構成され,
前記オーディオエンコーダは,可変長符号語を用いて前記入力オーディオ情報(110)の現在の部分を変換するために用いられるウィンドウのタイプを示すウィンドウ情報(140)を符号化するように構成され,前記オーディオエンコーダは,前記可変長符号語を用いて,移行傾斜の選択と変換長の選択との間の依存関係または隣接するフレームのウィンドウ形状の間の相関関係を利用するように構成される,オーディオエンコーダ(100)。
【請求項13】
入力オーディオ情報に基づいて符号化オーディオ情報を提供する方法(1100)であって,
前記入力オーディオ情報の複数のウィンドウ化された部分に基づいてオーディオ信号パラメータのシーケンスを提供するステップ(1110)であって,前記入力オーディオ情報の特性に基づいて前記入力オーディオ情報のウィンドウ化された部分を得るためのウィンドウタイプを適応させるために,・
長い移行傾斜を有するウィンドウおよび短い移行傾斜を有するウィンドウの使用の間で,および,それらと関連して2つ以上の異なる変換長を有するウィンドウの使用の間で切り替えが実行されるステップ(1110),および可変長符号語を用いて前記入力オーディオ情報の部分を変換するために用いられるウィンドウのタイプを示す情報を符号化するステップを含み,可変長符号語を用いて,移行傾斜の選択と変換長の選択との間の依存関係または隣接するフレームのウィンドウ形状の間の相関関係が利用される,方法(1100)。
3
本件審決の理由の要旨
本件審決の理由は,別紙審決書(写し)のとおりであり,要するに,請求項9の「前記オーディオエンコーダは,前記可変長符号語を用いて,移行傾斜の選択と変換長の選択との間の依存関係または隣接するフレームのウィンドウ形状の間の相関関係を利用する」(以下「本件発明特定事項」という。)とはエンコーダのいかなる技術事項を特定しているのか不明であり,このことは請求項13についても同様であるから,特許請求の範囲の記載は特許法36条6項2号の明確性の要件(以下「明確性要件」という。)を満たさないというものである。

4
取消事由
明確性要件についての判断の誤り

第3
1
原告主張の取消事由(明確性要件についての判断の誤り)
本件審決は本件発明特定事項が不明確であるとして,特許発明の範囲の記載が明確性要件を満たさないとしたが,
明確性要件についての本件審決の判断は,
次のとおり誤りである。

2
請求項9について
(1)

本件明細書の記載

本願発明9のオーディオエンコーダ100における可変長符号語エンコーダ180は,可変長符号語182を提供するために,可変長符号語を用いて,本件発明特定事項の技術事項に基づいて,ウィンドウ情報140を符号化しており,このことは,本件明細書の段落【0044】,【0046】及び図1(「可変長符号語符号化」の部分)に明確に記載されている。そして,「可変長符号語」を用いたウィンドウのタイプを示すウィンドウ・タイプ情報140に対する具体的な符号化において,前記オーディオエンコーダは,移行傾斜の選択と変換長の選択との間の依存関係,あるいは,隣接するフレームのウィンドウ形状の間の相関関係を利用して処理を行うもので,その具体的な処理内容は,本件明細書の段落【0063】~【0071】に記載されているが,これは,正に本願発明9の特定事項の内容をなすものである。


「移行傾斜の選択と変換長の選択との間の依存関係」についての具体的な説明例が図5に示されているが,この場合,ウィンドウ長が長いことを示す「window_length」が「0」であれば,常に,長い変換長が必ずあり(段落【0064】),「transform_length」の値を無視することができる(段落【0065】,図6a)。

「隣接するフレームのウィンドウ形状の間の相関関係」は,本件明細書の段落【0057】~【0059】及び図4に基づいて,ウィンドウ形状の間での一定の移行のみが可能であることにより理解することができる。

このように,本願発明9に係るオーディオエンコーダ100は,「可変長符号語を用いて前記入力オーディオ情報(110)の現在の部分を変換するために用いられるウィンドウのタイプを示すウィンドウ情報
(140)
を符号化するように構成され,前記可変長符号語を用いて,移行傾斜の選択と変換長の選択との間の依存関係または隣接するフレームのウィンドウ形状の間の相関関係を利用するように構成される」(請求項9)ことにより,低減されたビット要求でウィンドウ・タイプを示すウィンドウ情報140の符号化を可能にするといった特有の効果を有する。
以上のとおり,オーディオエンコーダ100において本件発明特定事項が含まれる必要があるため,本件発明特定事項はオーディオエンコーダにおける技術事項を特定しているものと言える。そのため,特許請求の範囲の請求項9の記載は明確性要件を満たす。

本件発明特定事項の実施例における具体的な手段が「可変長符号語エンコーダ180」であるとしても,請求項9に記載の「オーディオエンコーダ」自体が,符号化のために「前記オーディオエンコーダは,前記可変長符号語を用いて,移行傾斜の選択と変換長の選択との依存関係または隣接するフレームのウィンドウ形状の間の相関関係を利用する」ように構成され,その役割により本願発明9の効果が得られることは明確であるから,上記特許請求の範囲の記載に不明な点はない。

(2)

オーディオデコーダに関する記載との関係
本願発明9に係るオーディオエンコーダにより提供された符号化オーディ
オ情報(ビットストリーム)192に基づいて復号化オーディオ情報212を提供するオーディオデコーダの発明は請求項1に記載されている。本件明細書の段落【0079】~【0086】には,オーディオデコーダのウィンドウ・セレクタ270における処理について,
可変符号語長ウィンドウ
情報224を評価するように構成され,その評価は,移行傾斜の選択と変換長の選択との間の依存関係又は隣接するフレームのウィンドウ形状の間の相関関係を利用して行われることが記載されている。また,上記の「移行傾斜の選択と変換長の選択との間の依存関係」,
「隣接するフレームの
ウィンドウ形状の間の相関関係」といった文言については,段落【0014】及び【0015】に明示的に記載されている。
本件審決において,
オーディオデコーダに関する発明に係る請求項1の
記載について明確性要件違反があるとはされていないところ,オーディオデコーダにおける復号化の処理は,オーディオエンコーダにおける符号化の際に行った処理の逆処理を実行するのが通常であるから,復号化で行われる処理は,符号化で行った処理と概念的に共通する処理が含まれる。すなわち,符号化オーディオ情報(ビットストリーム)192に含まれる可変符号語長ウィンドウ情報224は,オーディオエンコーダ100の可変長符号語エンコーダ180において,可変符号語長を用いて,移行傾斜の選択と変換長の選択との間の依存関係又は隣接するフレームのウィンドウ形状の間の相関関係を利用して符号化されたものであるため,オーディオデコーダ200における復号化の処理の際に,可変符号語長を用いて,移行傾斜の選択と変換長の選択との間の依存関係又は隣接するフレームのウィンドウ形状の間の相関関係を利用して,可変符号語長のウィンドウ情報224を評価することができる。
符号化処理と復号化処理との間の相互関係とは,オーディオエンコーダが特定の状況においてオーディオデコーダが必要としない情報をビットストリームに含めないということであり,どの情報をオーディオデコーダが必要とせず,オーディオエンコーダが無視することができるかについて,本件明細書の段落【0081】~【0085】に詳細に説明されている。
以上より,本件発明特定事項は,オーディオデコーダ200に限ることなく,オーディオエンコーダ100においても共通に含まれる必要があり,このことからも,本件発明特定事項は,オーディオエンコーダにおける技術事項を特定しているものであるといえ,特許請求の範囲の請求項9の記載は明確性要件を満たすものである。
3
請求項13について
本願発明13は,本願発明9に対応する方法の発明であり,上記に述べたところが妥当するから,特許請求の範囲の請求項13の記載についても明確性要件を満たす。
第4
1
被告の反論
特許請求の範囲の請求項9及び請求項13の記載が明確性要件を満たさない
とした本件審決の判断に誤りはない。
2
請求項9について
(1)

本件明細書の記載
請求項9の「オーディオエンコーダは,前記可変長符号語を用いて,」「依

存関係」
「または」
「相関関係を利用するように構成され」
との記載において,
可変長符号語を用いて依存関係又は相関関係を利用するというのは日本語として極めて分かりにくく,
特許請求の範囲の記載自体から技術的意味が明らか
とはいえない。そこで,本件明細書の記載を検討する。

「前記可変長符号語を用いて,移行傾斜の選択と変換長の選択との間の依存関係」「を利用するように構成される」との点について
本件明細書の主として段落【0063】~【0067】及び図6a,図7a~cからは,
可変長符号語エンコーダ180は,
「現在のフレームのwi
ndow_length」情報が「0」であれば「transform_length」
情報を提供せず,逆に「現在のフレームのwindow_le
ngth」情報が「1」であれば「transform_length」情報を提供すること,現在のフレームのwindow_length」「0」「

の場合に,
「現在のフレームのtransform_length」が「未
送信(=0)」であるのに対し,
「現在のフレームのwindow_len
gth」が「1」の場合には,
「現在のフレームのtransform_l
ength」は「0(または未送信)」,「0」,「1」のいずれかであることが示され,「window_length」の選択(「0」か「1」かの選択)と,
「transform_length」の選択とに,依存する
関係があることが理解できる。また,
「window_length」が,
請求項9の「移行傾斜」に,
「transform_length」が請求
項9の「変換長」に対応しているものと解される。さらに,
「可変長符号語
エンコーダ180」は,段落【0044】の記載から,「オーディオエンコーダ100」
に含まれ,「可変長符号語182を提供する」
かつ
ものであり,
ここで,
「オーディオエンコーダ100」は,請求項9の「オーディオエンコーダ」
に対応しているものと解される。
これによれば,
本件明細書の段落
【0063】~【0067】には,「オーディオエンコーダ100」に含まれる
「可変長符号語エンコーダ180」
が,
移行傾斜の選択と変換長の選択
との間の依存関係を利用して,
可変長符号語を提供する態様が記載されてい
る,ということができる。
以上に対し,請求項9には,「オーディオエンコーダは,・・・を用いて,・
・・を利用するように構成され」
と,
主語が
「オーディオエンコーダ」
であるものとして記載されているから,
「可変長符号語エンコーダ」につい
て記載された本件明細書の段落【0063】~【0067】と対応するものとはいえない。
また,請求項9の「可変長符号語を用いて,」「依存関係・・・を利用する」ことと,上記本件明細書における「依存関係を利用して,可変長符号語を提供する」ことは,前者が「可変長符号語」を用いることで「依存関係」を何らかの形で利用する意味に解されるのに対し,後者は,
「依存関係」を
利用して
「可変長符号語」
を提供することと解され,
特許請求の範囲の記載
と本件明細書の記載が対応する関係にない。
以上のとおり,請求項9の「前記可変長符号語を用いて,移行傾斜の選択と変換長の選択との間の依存関係」「を利用するように構成される」の記載は本件明細書の段落【0063】~【0067】の記載事項と対応していないから,
本件明細書の当該段落の記載を考慮しても,
その技術的意味が
明らかとはいえない。

「前記可変長符号語を用いて,」「隣接するフレームのウィンドウ形状の間の相関関係を利用するように構成される」との点について
(ア)

本件明細書の段落【0063】~【0067】の可変長符号語エンコ
ーダに関する説明には,隣接するフレームのウィンドウ形状の間の相関関係に触れた記載はないから,これらの段落の記載からは「隣接するフレームのウィンドウ形状の間の相関関係を利用する」ことの意義は明らかではない。
次に,本件明細書の段落【0057】~【0059】及び図4からは,「第1のフレームのためのウィンドウ・タイプが与えられる場合,(2つの次のフレームから)第2のフレームのためのウィンドウ・タイプの選択は制限される。」(段落【0057】)との記載があることや,図4に,
「from」の欄に示されている各ウィンドウの選択と,
「to」
の欄に示されている各ウィンドウとの間の選択との関係に,制限があることが示されていることから,隣接するフレームのウィンドウ形状の間に相関関係があることを理解することができる。
もっとも,
本件明細書の段落
【0057】【0059】

の記載は,
「ウ
ィンドウ・シーケンス決定器138」が「異なるウィンドウ」を選択する際の処理に関する記載と理解するのが自然である(段落【0047】)。そうすると,「ウィンドウ・シーケンス決定器138」は,「オーディオエンコーダ100」中の「ウィンドウ・ベースの信号変換器130」に含まれる
(段落
【0040】
及び図1)
のであるから,
上記段落
【0057】

【0059】
の記載は,
「ウィンドウ・ベースの信号変換器130」
が,
隣接するフレームのウィンドウ形状の間の相関関係を利用して,
「異なる
ウィンドウ」を「選択」することについてのものと解される。そして,上記段落【0057】~【0059】及び図4には「可変長符号語」についての記載はないから,上記段落の記載は,
「可変長符号語」を用いること
とは,何ら関係がないといえる。
以上のとおり,
本件明細書の記載からは,
「可変長符号語」
を用いて,
「隣接するフレームのウィンドウ形状の間の相関関係」を利用することの技術的意味は明らかではない。
(イ)

本件明細書の主として段落【0081】~【0087】には,オーデ
ィオデコーダ200に含まれるウィンドウ・セレクタ270は,
現在のフ
レームに関連するウィンドウ・タイプを決定するために,
前のフレームの
移行傾斜
「window_length」
情報及び現在のフレームの移行
傾斜
「window_length」
情報を評価し,
前のフレームの移行
傾斜情報及び現在のフレームの移行傾斜情報が共に(値「1」)の存在を示す場合には,
現在のフレームの変換長
「transform_leng
th」
情報を評価することが必要であることが理解でき,ウィンドウ・セレクタ270が,
隣接するフレームのウィンドウ形状の間の相関関係及び
現在のフレームの変換長を利用して,
可変符号語長ウィンドウ情報を評価
する態様が記載されているものといえる。
これに対し,請求項9の「前記可変長符号語を用いて,」
「隣接するフ
レームのウィンドウ形状の間の相関関係を利用するように構成される」は,
「利用する」の主語が「オーディオエンコーダ」であるものとして記載されているから,
「オーディオデコーダ200」
の動作に係る上記の態
様を表現しているものとして理解することはできない。
また,
請求項9の
「可変長符号語を用いて,」
「相関関係を利用する」ことと,上記態様に
おける,
「オーディオデコーダ200」に含まれる「ウィンドウ・セレク
タ270」「隣接するフレームのウィンドウ形状の間の相関関係およが,
び現在のフレームの変換長を利用して,
可変符号語長ウィンドウ情報を評
価する」こととは,前者が「可変長符号語」を用いることで「相関関係」を何らかの形で利用する意味に解されるのに対し,
後者は,
「相関関係」
を利用して
「可変長符号語」
を評価することと解されることからすれば,
両者は対応する関係にない。
以上のとおり,請求項9の「前記可変長符号語を用いて,」
「隣接する
フレームのウィンドウ形状の間の相関関係を利用するように構成される」の記載は,オーディオデコーダについての上記段落【0081】~【0087】
の記載事項と対応していないから,
当該段落の記載を考慮しても,
請求項9の上記記載の技術的意味が明らかとはいえない。
(2)

オーディオデコーダについての記載との関係
請求項9は「オーディオエンコーダ(100)」の発明であり,本件発明
特定事項もオーディオエンコーダを特定する事項であるのに対し,請求項1は「オーディオデコーダ(200)」の発明である点で異なる。そして,請求項1の「オーディオデコーダ200」が含む「ウィンドウ・セレクタ(270)」との関係で,請求項1の発明特定事項の技術的意味が理解できるとしても,そのことから,請求項9の技術的意味が理解できることが一義的に導かれるとはいえない。
3
請求項13について
本願発明13は,本願発明9に対応する方法の発明であり,上記に述べたところが妥当するから,特許請求の範囲の請求項13の記載についても明確性要件を満たさない。

第5
1
当裁判所の判断
本願発明9及び本願発明13について

(1)

特許請求の範囲の記載
本願発明9及び本願発明13に係る特許請求の範囲の記載は,前記第2の
2の【請求項9】及び【請求項13】のとおりであり,請求項9の記載は次のとおり分説することができる。
以下,
各分説を,
その符号に従い
「分説A」
などという。
A
入力オーディオ情報(110)に基づいて符号化オーディオ情報(192)を提供するためのオーディオエンコーダ(100)であって,
B
前記入力オーディオ情報(110)の複数のウィンドウ化された部分に基づいてオーディオ信号パラメータ(132)のシーケンスを提供するように構成されたウィンドウ・ベースの信号変換器(130)を含み,
C
前記ウィンドウ・ベースの信号変換器(130)は,前記入力オーディオ情報(110)の特性に基づいて前記入力オーディオ情報のウィンドウ化された部分を得るためのウィンドウ・タイプを適応させるように構成され,

D
前記ウィンドウ・ベースの信号変換器(130)は,長い移行傾斜を有するウィンドウおよび短い移行傾斜を有するウィンドウ
(310,
312,
314,316,318)の使用の間で切り替わるように構成され,さらに,2つ以上の異なる変換長を有するウィンドウの使用の間で切り替わるように構成され,

E
前記ウィンドウ・ベースの信号変換器(130)は,前記入力オーディオ情報の先の部分および前記入力オーディオ情報の現在の部分のオーディオ・コンテンツを変換するために用いられるウィンドウ・タイプに基づいて前記入力オーディオ情報の現在の部分を変換するために用いられるウィンドウ・タイプを決定するように構成され,

F
前記オーディオエンコーダは,可変長符号語を用いて前記入力オーディオ情報(110)の現在の部分を変換するために用いられるウィンドウのタイプを示すウィンドウ情報(140)を符号化するように構成され,
G
前記オーディオエンコーダは,前記可変長符号語を用いて,移行傾斜の選択と変換長の選択との間の依存関係または隣接するフレームのウィンドウ形状の間の相関関係を利用するように構成される,オーディオエンコーダ(100)。
(2)

本件明細書の記載
本件明細書には,以下のような記載がある。また,図面の一部は別紙本件
明細書図面目録のとおりである
(なお,
図面の表題「FIGURE


1A」

等)は,「FIGURE」を「図」と読み替え,アルファベットの大文字を小文字に読み替える。)。

技術分野
【0001】

本発明による実施例は,入力されたオーディオ情報に基づ

いて符号化されたオーディオ情報を得るためのオーディオエンコーダ,および符号化されたオーディオ情報に基づいて復号化されたオーディオ情報を得るためのオーディオデコーダに関する。本発明による更なる実施例は,符号化されたオーディオ情報に関する。本発明によるさらに他の実施例は,符号化されたオーディオ情報に基づいて復号化されたオーディオ情報を提供する方法,および入力されたオーディオ情報に基づいて符号化されたオーディオ情報を提供する方法に関する。更なる実施例は,発明の方法を実行するためのコンピュータ・プログラムに関する。【0002】

本発明の実施例は,統合音声音響符号化(USAC)ビッ

トストリーム構文の提案された更新に関する。

背景技術
【0003】

以下に,発明およびその効果を理解しやすくするために,

この発明のいくつかの背景が説明される。過去の10年の間に,デジタル的にオーディオ・コンテンツを格納して配布するという可能性において大きい努力が加えられた。この方法における1つの重要な業績は,国際基準ISO/IEC

14496-3の定義である。この基準のパー

ト3は,オーディオ・コンテンツの符号化および復号化に関連し,パート3のサブパート4は一般のオーディオ符号化に関連する。ISO/IEC

14496のパート3,サブパート4は,一般のオーディオ・コ
ンテンツの符号化および復号化のための概念を定義する。さらに,品質を改善しおよび/または必要なビットレートを低下させるために,さらなる改良が提案された。
【0004】

しかしながら,前記基準に示されている概念によれば,時

間領域オーディオ信号は,時間-周波数表現に変換される。時間領域から時間-周波数領域への変換は,典型的には変換ブロックを用いて実行され,それは時間領域サンプルの「フレーム」として指定される。例えばフレームの半分がシフトして重なり合うフレームを使用することが有利であることが分かっており,その理由は,重なりが効果的にアーチファクトを回避する(または,少なくとも減らす)ことができるからである。さらに,時間的に限られたフレームのこの処理から生じているアーチファクトを回避するために,ウィンドウ機能が実行されなければならないことが分かっている。また,ウィンドウ機能は,次の時間的に移され重なり合うフレームの重複および加算処理の最適化を可能にする。【0005】

しかしながら,一定の長さのウィンドウを用いて,能率的

にエッジ,すなわちオーディオ・コンテンツの中の急激な移行またはいわゆる過渡信号を表すことは問題を含むことが分かっており,その理由は,移行のエネルギーはウィンドウの全ての期間に広げられ,それは聞き取れるアーチファクトという結果になるからである。したがって,オーディオ・コンテンツのおよそ変化しない部分は長いウィンドウを用いて符号化され,オーディオ・コンテンツの移行部分(例えば,過渡信号を含む部分)は短いウィンドウを用いて符号化されるように,異なる長さのウィンドウの間で切り替えることが提案された。
【0006】

しかしながら,時間領域から時間-周波数領域までオーデ

ィオ・コンテンツの変換のための異なるウィンドウの間で選択することができるシステムにおいて,もちろん,与えられたフレームの符号化されたオーディオ・コンテンツの復号化のためにどのウィンドウが用いられるべきかをデコーダに示す必要がある。
【0007】

従来のシステムにおいて,例えば国際基準ISO/IEC

14496-3,パート3,サブパート4によるオーディオデコーダにおいて,現在のフレームで使用するウィンドウ・シーケンスを示す「window_sequence」
と呼ばれているデータのエレメントは,
いわゆる「ics_info」ビットストリーム・エレメントにおけるビットストリームに2ビットで書き込まれる。先行フレームのウィンドウ・シーケンスを考慮に入れることによって,
8つの異なるウィンドウ・
シーケンスが示される。
【0008】

上記説明からみて,オーディオ情報を表している符号化さ

れたビットストリームのビット・ロードが,使用されるウィンドウのタイプを示す必要によってつくられることが分かる。

発明が解決しようとする課題
【0010】

この状況からみて,オーディオ・コンテンツの時間領域表

現およびオーディオ・コンテンツの時間-周波数領域表現の間の変換のために用いられるウィンドウのタイプのよりビットレート効率のよいシグナリングを可能にする概念をつくりたいという要求がある。

課題を解決するための手段
【0011】

この課題は,請求項1に記載のオーディオデコーダ,請求

項9に記載のオーディオエンコーダ,請求項12に記載の符号化されたオーディオ情報,請求項14に記載の復号化されたオーディオ情報を提供する方法,請求項15に記載の符号化されたオーディオ情報を提供する方法および請求項16に記載のコンピュータ・プログラムによって解決される。
【0012】

本発明による実施例は,符号化されたオーディオ情報に基
づいて復号化オーディオ情報を提供するためのオーディオデコーダを提供する。オーディオデコーダは,符号化されたオーディオ情報によって記載されている時間-周波数表現をオーディオ・コンテンツの時間領域表現にマッピングするように構成されるウィンドウ・ベースの信号変換器を含む。ウィンドウ・ベースの信号変換器は,ウィンドウ情報に基づいて,異なる移行傾斜のウィンドウおよび異なる変換長のウィンドウを含む複数のウィンドウからウィンドウを選択するように構成される。オーディオデコーダは,オーディオ情報の与えられたフレームに関連する時間-周波数表現の所定の部分(例えばフレーム)の処理のためのウィンドウを選択するために,可変符号語長のウィンドウ情報を評価するように構成されるウィンドウ・セレクタを含む。
【0013】

本発明の本実施例は,どのタイプのウィンドウがオーディ

オ・コンテンツの時間-周波数領域表現を時間領域表現に変換するために用いられるべきであるかについて示す情報を格納または送信するために必要なビットレートが,可変符号語長のウィンドウ情報を用いて低減されることができることを発見したことに基づく。適当なウィンドウを選択するために必要な情報がこの種の可変符号語長の表現のために適切であるので,可変符号語長のウィンドウ情報が適切であることが分かっている。
【0014】

短い変換長が概して1つか2つの長い移行傾斜を有するウ

ィンドウのために用いられないため,例えば,可変符号語長のウィンドウ情報を用いることにより,移行傾斜の選択および変換長の選択の間に依存関係があることを利用することができる。したがって,重複情報の伝送は可変符号語長のウィンドウ情報を用いて回避されることができ,それにより,符号化されたオーディオ情報のビットレート効率を改善する。
【0015】

さらなる例として,隣接するフレームのウィンドウ形状間

に概して相関がある点に留意する必要があり,(現在考慮されたウィンドウと隣接している)もう一つの隣接するウィンドウのウィンドウ・タイプは現在のフレームのためのウィンドウ・タイプの選択を制限する場合のためのウィンドウ情報の符号語長を選択的に減らすために利用されることができる。
【0016】

上記を要約すると,可変符号語長のウィンドウ情報の使用

は,(一定符号語長のウィンドウ情報と比較したとき)オーディオデコーダの複雑さを著しく増加させることなく,オーディオデコーダの出力波形を変えることなく,ビットレートの節減を可能にする。また,符号化されたオーディオ情報の構文は場合によっては単純化されることさえでき,そのことは後ほど詳述する。
【0029】

本発明による他の実施例は,入力オーディオ情報に基づい

て符号化されたオーディオ情報を提供するためのオーディオエンコーダを作製する。オーディオエンコーダは,入力オーディオ情報の複数のウィンドウ化された部分(例えば,重複または非重複フレーム)に基づいてオーディオ信号パラメータ(例えば,入力オーディオ情報の時間-周波数領域表現)のシーケンスを提供するように構成されるウィンドウ・ベースの信号変換器を含む。ウィンドウ・ベースの信号変換器は,好ましくは,ウィンドウ形状を入力オーディオ情報の特性に基づいて入力オーディオ情報のウィンドウ化された部分を得るためのウィンドウの形に適応するように構成される。ウィンドウ・ベースの信号変換器は,(比較的)長い移行傾斜を有するウィンドウおよび(比較的)短い移行傾斜を有するウィンドウの使用の間で切り替わり,更に2つ以上の異なる変換長を有するウィンドウの使用の間で切り替わるように構成される。ウィンドウ・ベースの信号変換器は,入力オーディオ情報の前の部分(例えばフレーム)および入力オーディオ情報の現在の部分のオーディオ・コンテンツを変換するために用いられるウィンドウ・タイプに基づいて入力オーディオ情報の現在の部分(例えばフレーム)を変換するために用いられるウィンドウ・タイプを決定するように構成される。また,オーディオエンコーダは,可変長符号語を用いて入力オーディオ情報の現在の部分を変換するために用いられるウィンドウのタイプを示すウィンドウ情報を符号化するように構成される。
このオーディオエンコーダは,
発明のオーディオデコーダに関連してすでに述べられた効果を提供する。特に,これが可能である状況のいくらかまたは全ての比較的長い符号語の使用を回避することによって符号化されたオーディオ情報のビットレートを減らすことは可能である。
【0032】

本発明による他の実施例は,入力オーディオ情報に基づい

て符号化オーディオ情報を提供する方法を作成する。この方法は,入力オーディオ情報の複数のウィンドウ化された部分に基づいてオーディオ信号パラメータ(例えば時間-周波数領域表現)のシーケンスを提供することを含む。オーディオ信号パラメータのシーケンスを提供するために,入力オーディオ情報の特性に基づいて入力オーディオ情報のウィンドウ化された部分を得るためのウィンドウ形状を適応させるために,長い移行傾斜を有するウィンドウおよび短い移行傾斜を有するウィンドウの使用の間で,更に,2つ以上の異なる変換長を有するウィンドウの使用の間で切り替えが行われる。この方法は,可変長符号語を用いて,入力オーディオ情報の現在の部分を変換するために用いられるウィンドウのタイプを示すウィンドウ情報を符号化することを含む。

発明を実施するための形態
(ア)

オーディオエンコーダ概要

【0035】

オーディオエンコーダ概要
以下に,発明概念を適用することができるオーディオエンコーダが説明される。しかしながら,図1を参照して記載されているオーディオエンコーダは,本発明が適用されることができるオーディオエンコーダの単なる実施例であると考えるべきである点に留意する必要がある。しかしながら,比較的簡単なオーディオエンコーダが図1を参照して議論されるが,本発明がもっと複雑なオーディオエンコーダにおいて,例えば,異なる符号化コアモードの間で(例えば,周波数領域符号化および線形予測領域符号化の間で)切り替えができるオーディオエンコーダに本発明が適用されることができる点に留意する必要がある。それにもかかわらず,単純性のために,単純な周波数領域オーディオエンコーダの基本概念を理解することは有用であると思われる。【0037】

図1に示される音声エンコーダ100は,例えば時間領

域オーディオ信号のような入力オーディオ情報110を受信するように構成される。さらに,オーディオエンコーダ100は,例えば入力オーディオ情報110をダウンサンプリングしたり,入力オーディオ情報110のゲインを制御することにより,任意に入力オーディオ情報110を前処理するように構成される任意のプリプロセッサ120を含む。また,オーディオエンコーダ100は,時間-周波数領域におけるスペクトル値のようなオーディオ信号パラメータのシーケンスを得るために,主要な構成要素として,入力オーディオ情報110またはその前処理バージョン122を受信し,入力オーディオ情報110またはその前処理バージョン122を周波数領域(または,時間-周波数領域)に変換するように構成されるウィンドウ・ベースの信号変換器130を含む。この目的のために,ウィンドウ・ベースの信号変換器130は,入力オーディオ情報110,122のサンプルのブロック(例えば「フレーム」)をスペクトル値132のセットに変換するように構成されるウィンドウ化器/変換器136を含む。
例えば,
ウィンドウ化器/変換器136は,1セットのスペクトル値を入力オーディオ情報のサンプルの各ブロックに(すなわち,各「フレーム」に)提供するように構成される。しかしながら,入力オーディオ情報110,122のサンプルのブロック(すなわち「フレーム」)は,好ましくは,入力オーディオ情報110,122のサンプルの時間的に隣接するブロック
(フレーム)
が複数のサンプルを共有するように,
重複してもよい。
例えば,
2つの時間的に続くサンプルのブロック
(フ
レーム)は,サンプルのほぼ50%重複する。したがって,ウィンドウ化器/変換器136は,例えば修正離散コサイン変換(MDCT)のようないわゆる重複変換を実行するように構成される。しかしながら,修正離散コサイン変換を実行するときに,ウィンドウ化器/変換器136はウィンドウをサンプルの各ブロックに適用することができ,それによって,(サンプルのブロックの先端および後端の時間的近傍に時間的に配置される)周辺サンプルより(サンプルのブロックの時間的中心の近傍に時間的に配置される)中心サンプルを強く重み付けする。ウィンドウ化は,ブロックへの入力オーディオ情報110,122の分割から生じるアーチファクトを回避するのに役立つ。このように,時間領域から時間-周波数領域への変換の前または間のウィンドウの適用は,入力オーディオ情報110,122のサンプルの次のブロックとの間の滑らかな移行を可能にする。ウィンドウ化に関する詳細について,国際基準ISO/IEC

14496,パート3,サ

ブパート4およびそこに引用されている書類が参照される。オーディオエンコーダの非常に単純なバージョンにおいて,(サンプルのブロックとして定義される)
オーディオフレームの2Nの数のサンプルは,
信号特性から独立したNのスペクトル係数のセットに変換される。しかしながら,移行の場合,オーディオ情報を復号化するときに,移行のエネルギーは全フレームに広げられるため,
オーディオ情報110,
122の2Nのサンプルの同一の変換長が入力オーディオ情報110,112の特性とは無関係に用いられるという概念が移行の重大な低下をもたらすことがわかった。それにもかかわらず,短い変換長(例えば,変換につき2N/8=N/4サンプル)が選択される場合,端の符号化における改良を得ることができることが分かっている。しかしながら,長い変換長と比較したとき短い変換長に対して少ないスペクトル値が得られる場合であっても,短い変換長の選択が概して必要なビットレートを増加させることも分かった。
したがって,
オーディオ・
コンテンツの移行(端として指定される)の近傍において長い変換長(例えば,変換につき2Nサンプル)から短い変換長(例えば,変換につき2N/8=N/4サンプル)へ切り替え,移行後に長い変換長(例えば,変換につき2Nサンプル)に切り換えることを推薦できることがわかった。変換長の切り替えは変換の前または間に入力オーディオ情報110,122のサンプルをウィンドウ化するために適用されるウィンドウの変更に関連する。
【0040】したがって,
ウィンドウ・ベースの信号変換器130は,
ウィンドウ化器/変換器136がウィンドウの適当なタイプ(「ウィンドウ・シーケンス」)を用いることができるように,ウィンドウ化器/変換器136にウィンドウ・タイプ情報140を提供するように構成されるウィンドウ・シーケンス決定器138を含む。例えば,ウィンドウ・シーケンス決定器130は,入力オーディオ情報110または前処理された入力オーディオ情報122を直接評価するように構成される。しかしながら,オーディオエンコーダ100は,入力オーディオ情報110または前処理された入力オーディオ情報122を受信し,入力オーディオ情報110,122から,入力オーディオ情報110,122の符号化のために関連する情報を得るために,音響心理学的なモデルを適用するように構成された,音響心理学モデル・プロセッサ150を含む。例えば,音響心理学モデル・プロセッサ150は,
入力オーディオ情報110,
122の範囲内で移行を確認して,
対応する入力オーディオ情報110,122の移行の存在のため,短い変換長が要求されるフレームの信号を送るウィンドウ長の情報152を提供するように構成される。
【0044】

さらに,オーディオエンコーダ100は,ウィンドウ・

シーケンス決定器138からウィンドウタイプ情報140を受信し,・
それに基づいて,ウィンドウ化器/変換器136によって実行されるウィンドウ化/変換動作のために用いられるウィンドウのタイプを示す可変長符号語182を提供するように構成される可変長符号語エンコーダ180を含む。可変長符号語エンコーダ180に関する詳細は後述される。
【0046】上記を要約すると,オーディオエンコーダ100は,入力オーディオ情報110に基づいて符号化オーディオ情報192を提供するように構成される。オーディオエンコーダ100は,重要なコンポーネントとして,入力オーディオ情報110の複数のウィンドウ化された部分に基づいてオーディオ信号パラメータ132のシーケンス(例えば,スペクトル値のシーケンス)を提供するように構成されるウィンドウ・ベースの信号変換器130を含む。ウィンドウ・ベースの信号変換器130は,入力オーディオ情報のウィンドウ化された部分を得るためのウィンドウ・タイプがオーディオ情報の特性に基づいて選択されるように構成される。ウィンドウ・ベースの信号変換器130は,長い移行傾斜を有するウィンドウと短い移行傾斜を有するウィンドウの使用との間で切り替わるように構成され,また,2つ以上の異なる変換長を有するウィンドウの使用の間で切り替わるように構成される。たとえば,ウィンドウ・ベースの信号変換器130は,入力オーディオ情報の先の部分(例えばフレーム)のために用いられるウィンドウ・タイプに基づいて,そして,入力オーディオ情報の現在の部分のオーディオ・コンテンツに基づいて,入力オーディオ情報の現在の部分(例えばフレーム)を変換するために用いられるウィンドウ・タイプを決定するように構成される。しかしながら,オーディオエンコーダは,例えば可変長符号語エンコーダ180を用いて,可変長符号語を用いた入力オーディオ情報の現在の部分(例えばフレーム)を変換するために用いられるウィンドウのタイプを示すウィンドウ・タイプ情報140を符号化するように構成される。
(イ)

ウィンドウ・タイプの変換について

【0047】

ウィンドウ・タイプの変換

以下において,ウィンドウ化器/変換器136によって適用されることができ,ウィンドウ・シーケンス決定器138によって選択される異なるウィンドウの詳細な説明が示される。しかしながら,ここで述べられるウィンドウは,例証としてのみとられるべきものである。次に,ウィンドウ・タイプの効果的な符号化のための発明概念が示される。
【0048】今,
変換ウィンドウの異なるタイプの図解表現を示す図3
を参照して,
新しいサンプルウィンドウの上の概要が与えられる。
しか
しながら,付加的にISO/IEC

14496-3,パート3,サブ

パート4が参照され,
そこにおいて,
変換ウィンドウを適用する概念は
さらに詳細に示される。
【0049】図3は,
(比較的)長い左側ウィンドウ傾斜310a(1
024サンプル)
および長い右側ウィンドウ傾斜310b
(1024サ
ンプル)を含む第1のウィンドウ・タイプ310の図解図を示す。第1のウィンドウ・タイプ310がいわゆる「長い変換長」を含むように,合計2048のサンプルおよび1024のスペクトル係数は第1のウィンドウ・タイプ310に関連付けられる。
【0050】第2のウィンドウ・タイプ312は,
「long_sta
rt_sequence」
または
「long_start_windo
w」として指定される。第2のウィンドウ・タイプは,(比較的)長い左側ウィンドウ傾斜312a(1024サンプル)および(比較的)短い右側ウィンドウ傾斜312b(128サンプル)を含む。第2のウィンドウ・タイプ312が長い変換長を含むように,
合計2048のサン
プルおよび1024のスペクトル係数が第2のウィンドウタイプに関・
連付けられる。
【0051】第3のウィンドウ・タイプ314は,
「long_sto
p_sequence」
または
「long_stop_window」
として指定される。第3のウィンドウ・タイプ314は,短い左側ウィンドウ傾斜314a
(128サンプル)
および長い右側ウィンドウ傾斜
314b(1024サンプル)を含む。第3のウィンドウ・タイプが長い変換長を含むように,
合計2048のサンプルおよび1024のスペ
クトル係数が第3のウィンドウ・タイプ314に関連付けられる。【0052】第4のウィンドウ・タイプ316は,
「stop_sta
rt_sequence」
または
「stop_start_windo
w」として指定される。第4のウィンドウ・タイプ316は,短い左側ウィンドウ傾斜316a
(128サンプル)
および短い右側ウィンドウ
傾斜316b(128サンプル)を含む。第4のウィンドウ・タイプが「長い変換長」
を含むように,
合計2048のサンプルおよび1024
のスペクトル係数が第4のウィンドウ・タイプに関連付けられる。【0053】第5のウィンドウ・タイプ318は,第1ないし第4のウィンドウ・タイプと著しく異なる。第5のウィンドウ・タイプは,時間的に重複するように配置される8つの
「短いウィンドウ」
またはサブウ
ィンドウ319a-319hの重ね合わせを含む。
短いウィンドウ31
9a-319hの各々は,
256サンプルの長さを含む。
したがって,
256のサンプルを128のスペクトル値に変換する
「短い」
MDCT
変換は,
短いウィンドウ319a-319hの各々に関連付けられる。
したがって,
128スペクトル値の8セットは各々第5のウィンドウ・
タイプ318に関連しており,
その一方で,
1024スペクトル値の1
セットは第1-第4のウィンドウ・タイプ310,312,314,316の各々に関連する。
したがって,
第5のウィンドウ・タイプが,
「短
い」変換長を含むということができる。それにもかかわらず,第5のウィンドウ・タイプは,
短い左側ウィンドウ傾斜318aおよび短い右側
ウィンドウ傾斜318bを含む。
(ウ)

変換ウィンドウ・タイプ間の移行

【0057】

変換ウィンドウ・タイプ間の移行

ウィンドウ・シーケンス(または変換ウィンドウのタイプ)の間の許可された移行の図解図である図4を参照して,若干の詳細が説明される。それぞれウィンドウ・タイプ310,312,314,316,318の1つを有する2つの次の変換ウィンドウがオーディオサンプルの部分的に重なり合うブロックに適用されることなく,第1のウィンドウの右側ウィンドウ傾斜が,部分的な重なりによって生じるアーチファクトを回避するために第2の,次のウィンドウの左側ウィンドウ傾斜と適合しなければならないと理解することができる。したがって,
(2つの次のフレームから)第1のフレームのためのウィンドウ・タイプが与えられる場合,(2つの次のフレームから)第2のフレームのためのウィンドウ・タイプの選択は制限される。図4において見られるように,第1のウィンドウが「only_long_sequence」ウィンドウである場合,第1のウィンドウの後に「only_long_sequence」ウィンドウまたは「long_start_sequence」ウィンドウが続く。対照的に,「only_long_sequence」ウィンドウが第1フレームを変換するために使われる場合,第1フレームの後の第2のフレームのために
「eight_short_sequence」
ウィンドウ,
「l
ong_stop_sequence」ウィンドウまたは「stop_start_sequence」ウィンドウを使用することができない。同様に,「long_stop_sequence」ウィンドウが第1フレームで使われる場合,第2のフレームは「only_long_sequence」ウィンドウまたは「long_start_sequence」ウィンドウを使用することができるが,第2のフレームは「eight_short_sequence」ウィンドウ,「long_stop_sequence」ウィンドウまたは「stop_start_sequence」ウィンドウを使用することができない。
【0058】対照的に,(2つの次のフレームから)第1のフレームが「long_start_sequence」ウィンドウ,「eight_short_sequence」ウィンドウまたは「stop_start_sequence」ウィンドウを用いる場合,(2つの次のフレームから)第2のフレームは「only_long_sequence」ウィンドウまたは「long_start_sequence」ウィンドウを用いることができなくて,「eight_short_sequence」ウィンドウ,「long_stop_sequence」ウィンドウまたは「stop_start_sequence」ウィンドウを用いることができる。
【0059】ウィンドウ・タイプ「only_long_sequence」「long_start_sequence」「eight_short_sequence」「long_stop_sequence」および「stop_start_sequence」間の可能な移行は,図4における「チェック」によって示される。対照的に,「チェック」がないウィンドウ・タイプ間の移行は,いくつかの実施例において許容されない。
(エ)

実施例ウィンドウ・シーケンス

【0063】

しかしながら,以下において詳細に説明されるように,

本発明はオーディオフレームに関連するウィンドウのタイプを符号化するための特に効果的な概念をつくる。この問題に関して,合計5種類の異なるウィンドウ310,312,314,316,318が図5のウィンドウ・シーケンス500において用いられる点に留意する必要がある。したがって,フレームのタイプを符号化するために3ビットを使用することは「通常」必要である。対照的に,本発明は,低減されたビット要求でウィンドウ・タイプの符号化を可能にする概念をつくる。
【0064】

ここで,図6a,更には,図7a,7bおよび7cを参

照して,ウィンドウ・タイプを符号化するための発明概念が説明される。図6aは,ウィンドウ・タイプを符号化するための規則を含むウィンドウ・タイプ情報の提案された構文を表す表を示す。説明の目的で,ウィンドウ・シーケンス決定器138によって可変長符号語エンコーダ180に提供されるウィンドウ・タイプ情報140が現在のフレームのウィンドウ・タイプを示し,値「only_long_sequence」,
「long_start_sequence」,
「e
ight_short_sequence」,「long_stop_sequence」「stop_start_sequence」,
および値「stop_1152_sequence」と「stop_start_1152_sequence」のどちらかの中の1つをとることができると仮定される。しかしながら,発明の符号化概念によれば,可変長符号語エンコーダ180は,現在のフレームに関連するウィンドウの右側ウィンドウ傾斜の長さを示す1ビット「window_length」情報を提供する。図7aで分かるように,1ビット「window_length」情報の「0」の値は1024サンプルの右側ウィンドウ傾斜の長さを表し,値「1」は128サンプルの右側ウィンドウ傾斜の長さを表す。したがって,ウィンドウ・タイプが「only_long_sequence」(第1のウィンドウ・タイプ310)
または
「long_stop_sequence」
(第3のウィンドウ・タイプ314)である場合,可変長符号後エンコーダ180は「window_length」情報の「0」の値を提供する。任意には,可変長符号語エンコーダ180は,
「0」の「w
indow_length」情報をタイプ「stop_1152_sequence」(ウィンドウ・タイプ330)のウィンドウに提供することもできる。
対照的に,
可変長符号語エンコーダ180は,
「w
indow_length」情報の「1」の値を「long_start_sequence」
(第2のウィンドウ・タイプ312),
「s
top_start_sequence」(第4のウィンドウ・タイプ316)および,

「eight_short_sequence」
(第5のウィンドウ・タイプ318)に提供することができる。任意には,可変長符号語エンコーダ180は,「1」の「window_length」情報を「stop_start_1152_sequence」(ウィンドウ・タイプ332)に提供することもできる。さらに,可変長符号語エンコーダ180は,「window_length」情報の「1」の値をウィンドウ・タイプ362,366,368,382の1つ以上に,任意に提供することができる。
【0065】しかしながら,可変長符号語エンコーダ180は,現在のフレームの1ビット「window_length」情報の値に基づいて,選択的に,別の1ビット情報,すなわち,現在のフレームのいわゆる「transform_length」情報を提供するように構成される。現在のフレームの「window_length」情報が
(ウィンドウ・タイプ
「only_long_sequence」
「long_stop_sequence」および任意に「stop_1152_sequence」のために)値「0」をとる場合,可変長符号語エンコーダ180はビットストリーム192に含ませるために「transform_length」情報を提供しない。対照的に,現在のフレームの「window_length」情報が(ウィンドウ・タイプ「long_start_sequence」,「s
top_start_sequence」,「eight_short_sequence」および,任意に,「LPD_start_sequence」および「stop_start_1152_sequence」のために)値「1」をとる場合,可変長符号語エンコーダ180はビットストリーム192に含ませるために1ビット「transform_length」情報を提供する。「transform_length」情報が現在のフレームに適用される変換長を表すようにそれが与えられている場合,「transform_length」情報は提供される。このように,「transform_length」情報は,ウィンドウ・タイプ「long_start_sequence」,「stop_start_sequence」および,任意に,「stop_start_1152_sequence」および「LPD_start_sequence」のための第1の値(例えば値「0」)をとるために提供され,それによって,現在のフレームに適用されるMDCTカーネルサイズが1024サンプル(または1152サンプル)であることを示す。対照的に,「eight_short_sequence」ウィンドウ・タイプが現在のフレームに関連している場合,「transform_length」情報は第2の値(例えば,値「1」)をとるために可変長符号語エンコーダ180によって提供され,それによって,現在のフレームに関連するMDCTカーネルサイズが128サンプル(図7bの構文表現を参照)であることを示す。
【0066】要約すると,現在のフレームに関連するウィンドウの右側ウィンドウ傾斜が比較的長い(長いウィンドウ傾斜310b,314b,330b)場合,すなわちウィンドウ・タイプ「only_long_sequence」「long_stop_sequence」および「stop_1152_sequence」に対して,ビットストリーム192に含めるために,可変長符号語エンコーダ180は,現在のフレームの1ビット「window_length」情報だけを含む1ビット符号語を提供する。対照的に,現在のフレームに関連するウィンドウの右側ウィンドウ傾斜が短いウィンドウ傾斜312b,316b,318b,332bである場合,すなわちウィンドウ・タイプ「long_start_sequence」「eight_short_sequence」「stop_start_sequence」および,任意に,「stop_start_1152_sequence」に対して,ビットストリーム192に含めるために,可変長符号語エンコーダ180は,1ビット「window_length」情報および1ビット「transform_length」情報を含む2ビット符号語を提供する。このように,「only_long_sequence」ウィンドウ・タイプおよび「long_stop_sequence」ウィンドウ・タイプの場合に(そして,任意に「stop_1152_sequence」ウィンドウ・タイプに対して),1ビットが節約される。
【0067】

このように,現在のフレームに関連するウィンドウ・タ

イプに応じて,わずか1または2ビットが,5つの(またはより多くの)可能なウィンドウ・タイプからの選択を符号化するために必要とされるだけである。
【0068】

ここで,図6aが,コラム620に示される「wind

ow_length」情報の値に,および,コラム624に示される規定位置および(必要であれば)「transform_length」情報の値に,ウィンドウ・タイプ・カラム630において定められるウィンドウ・タイプのマッピングを示すことに注意しなければならない。
【0069】

図6bは,現在のフレームのウィンドウ・タイプから,

現在のフレームの「window_length」情報,および「transform_length」情報(または「transform_length」情報がビットストリーム192から省略されるという指示)を引き出すためのマッピングの図解図を示す。このマッピングは,現在のフレームのウィンドウ・タイプを示すウィンドウ・タイプ情報140を受信して,それを図6bの表のコラム660に示す「window_length」情報に,および,図6bの表のコラム662で示す「transform_length」情報にマッピングする,
可変長符号語エンコーダ180によって実行される。
特に,
「window_length」情報が所定の値(例えば「1」)を取るか,さもなければ,「transform_length」情報の供給を省略するか,またはビットストリーム192への「transform_length」情報の包含を抑制する場合だけ,可変長符号語エンコーダ180は「transform_length」情報を提供する。したがって,現在のフレームのウィンドウ・タイプに基づいて,図6bの表のコラム664に示すように,所定のフレームのためのビットストリーム192に含まれるウィンドウタイプ・ビットの数を変化させることができる。
(オ)

オーディオデコーダ概説

【0079】

可変符号語長ウィンドウ情報224は,通常は,1フレ

ームにつき1または2ビットを含む。好ましくは,可変符号語長ウィンドウ情報は,現在のフレームの「window_length」情報を有する第1ビットおよび現在のフレームの「transform_length」情報を有する第2ビットを含み,第2ビット(「transform_length」
ビット)
の存在は,
第1ビット「w

indow_length」ビット)の値に依存している。このように,ウィンドウ・セレクタ270は,現在のフレームに関連する「window_length」ビットの値に基づいて,現在のフレームに関連するウィンドウ・タイプについて決定するための1または2ウィンドウ情報ビット(「window_length」および「transform_length」)を選択的に評価するように構成される。それにもかかわらず,「transform_length」ビットがない場合,ウィンドウ・セレクタ270は,当然,「transform_length」ビットがデフォルト値をとると仮定することができる。
【0080】

好ましい実施例において,ウィンドウ・セレクタ270

は,図6aを参照して上述のように構文を評価して,ウィンドウ情報を前記構文に従って272に提供するように構成されることができる。【0081】まず,オーディオデコーダ200が周波数領域コアモードで常に作動すると仮定すると,すなわち,周波数領域コアモードと線形予測領域コアモードとの間で切り替えがないと過程すると,上述の5つのウィンドウ・タイプ(「only_long_sequence」「long_start_sequence」「long_stop_sequence」「stop_start_sequence」および「eight_short_sequence」)を区別するのに十分である。この場合,前のフレームの「window_length」情報,現在のフレームの「window_length」情報および(利用できる場合)現在のフレームの「transform_length」情報は,ウィンドウ・タイプについて決めるのに十分である。
【0082】

たとえば,(少なくとも3つの次のフレームのシーケン

スを通じて)周波数領域コアモードのみにおける動作を仮定すると,それは前のフレームの「window_length」情報が長い移行傾斜(値「0」)を示し,そして,現在のフレームの「window_length」情報はウィンドウ・タイプ「only_long_sequence」
がこの場合エンコーダによって送信されない
「t
ransform_length」情報を評価しないで現在のフレームに関連する長い移行傾斜(値「0」)を示すという事実から結論されることができる。
【0083】

また,周波数領域コアモードだけの動作を仮定すると,

前のフレームの「window_length」情報が長い(右側)移行傾斜を示すという事実から,そして,(この場合,エンコーダによって生成されおよび/または送信されるか,生成されおよび/または送信されない)現在のフレームの「transform_length」情報を評価しなかったとしても,現在のフレームの「window_length」情報が短い(右側)移行傾斜(値「1」)を示し,
ウィンドウ・タイプ
「long_start_sequence」
が現在のフレームに関係しているという事実から結論されることができる。
【0084】さらに,
周波数領域コアモードだけの動作を仮定すると,
前のフレームの「window_length」情報が短い(右側)移行傾斜(値「1」)の存在を示し,そして,(いずれにしろ対応するオーディオエンコーダによって通常は設けられていない)現在のフレームの「transform_length」情報を評価しなかったとしても,現在のフレームの「window_length」情報が長い(右側)移行傾斜(値「0」)を示し,ウィンドウ・タイプ「long_stop_sequence」が現在のフレームに関連するという事実から結論されることができる。
【0085】

しかしながら,前のフレームの「window_len

gth」情報が短い(右側)移行傾斜の存在を示し,そして,現在のフレームの「window_length」情報も短い移行傾斜(値「1」)の存在を示す場合,現在のフレームの「transform_length」
情報を評価することが必要かもしれない。
この場合,
現在のフレームの「transform_length」情報が第1の値(例えばゼロ)をとる場合,ウィンドウ・タイプ「stop_start_sequence」は現在のフレームに関連している。そうでなければ,すなわち,現在のフレームの「transform_length」情報が第2の値(例えば1)をとる場合,ウィンドウ・タイプ「eight_short_sequence」が現在のフレームに関連すると結論されることができる。
【0086】上記を要約すると,ウィンドウ・セレクタ270は,現在のフレームに関連するウィンドウ・タイプを決定するために,前のフレームの「window_length」情報および現在のフレームの「window_length」情報を評価するように構成される。さらに,現在のフレームの「window_length」情報の値に基づいて(そして,場合により,前のフレームの「window_length」情報またはコアモード情報に基づいて),現在のフレームに関連するウィンドウ・タイプを決定するために,ウィンドウ・セレクタ270は,選択的に,現在のフレームの「transform_length」情報を考慮に入れるように構成される。このように,ウィンドウ・セレクタ270は,現在のフレームに関連するウィンドウ・タイプを決定するために,可変符号語長ウィンドウ情報を評価するように構成される。
【0087】

図6cは,現在のフレームのウィンドウ・タイプ上への

前のフレームの「window_length」情報,現在のフレームの
「window_length」
情報および現在のフレームの
「t
ransform_length」
情報のマッピングを表す表を示す。
現在のフレームの「window_length」情報および現在のフレームの「transform_length」情報は,可変符号語長ウィンドウ情報224によって表されることができる。現在のフレームのウィンドウ・タイプは,ウィンドウ情報272によって表されることができる。図6cの表によって示されているマッピングは,ウィンドウ・セレクタ270によって実行されることができる。
2
請求項9の明確性について
(1)

特許法36条6項2号は,特許請求の範囲の記載に関し,特許を受けよう
とする発明が明確でなければならない旨規定するが,同号がこのように規定した趣旨は,特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合には,特許が付与された発明の技術的範囲が不明確となり,権利者がどの範囲において独占権を有するのかについて予測可能性を奪うなど第三者の利益が不当に害されることがあり得るので,
そのような不都合な結果を防止することにある。
そして,特許を受けようとする発明が明確であるか否かは,特許請求の範囲の記載だけではなく,
願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し,
また,
当業者の出願当時における技術常識を基礎として,
特許請求の範囲の記載が,
第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
(2)

本件審決は,
本件発明特定事項が不明確であると判断しているところ,

件発明特定事項は分説Gに含まれるから,まずは特許請求の範囲の記載に基づき分説Gの意義を検討する。

分説G(「前記オーディオエンコーダは,前記可変長符号語を用いて,移行傾斜の選択と変換長の選択との間の依存関係または隣接するフレームのウィンドウ形状の間の相関関係を利用するように構成される」のうち,)
「前記可変長符号語」とは,分説Fの記載により,オーディオエンコーダがウィンドウ情報を符号化するために用いるものであることが理解される。そして,分説Gの記載において,「前記可変長符号語を用いて」の部分は「利用する」にかかっていると解することができるから,分説Gは,①オーディオエンコーダは,前記可変長符号語を用いて,移行傾斜の選択と変換長の選択との間の依存関係を利用するように構成される(以下「分説G1」という。),又は②

オーディオエンコーダは,前記可変長符号語

を用いて,隣接するフレームのウィンドウ形状の間の相関関係を利用するように構成される(以下「分説G2」という。)ことと同義であると理解できる。

分説G1の「移行傾斜の選択と変換長の選択との間の依存関係」について,分説Dによれば,「移行傾斜」として長い移行傾斜と短い移行傾斜の2つが存在し,「変換長」にも2つ以上の異なる長さが存在し,これらはウィンドウの特徴を示すものであることが読み取れるが,「移行傾斜」及び「変換長」によって表されるウィンドウの特徴がどのようなものであるか明らかではないから,特許請求の範囲からは,可変長符号語を用いて符号化されるウィンドウ情報(分説F参照)と,「移行傾斜」と「変換長」によって表されるウィンドウの特徴がいかなる関係にあるのかは不明である。そうすると,分説G1の「可変長符号語を用い」ることと,「移行傾斜の選択と変換長の選択との間の依存関係」とがどのような技術的関係にあるのかも不明である。
また,
分説G2の
「隣接するフレームのウィンドウ形状の間の相関関係」
の文言から,「フレーム」と「ウィンドウ形状」が対応する関係にあることを読み取ることができるものの,
「ウィンドウ形状」と,
「ウィンドウ・
タイプ」(分説E)ないし「ウィンドウのタイプ」(分説F)の関係も不明であり,隣接するフレームのウィンドウ形状の間にいかなる関係があるのかも明らかでないから,特許請求の範囲からは,可変長符号語を用いて符号化されるウィンドウ情報(分説F参照)と,「隣接するフレームのウィンドウ形状」とがいかなる関係にあるのかは不明である。そうすると,分説G2の「可変長符号語を用い」ることと,「隣接するフレームのウィンドウ形状の間の相関関係」とがどのような技術的関係にあるのかも不明である。
(3)

このように,
特許請求の範囲の記載からは分説Gの意義は明らかではない

ため,本件明細書の記載に基づいてその意義を検討する。

分説G1について
(ア)

上記1(2)オ(ア)の本件明細書の記載及び図1a,bからは,オーディ
オエンコーダ100は,ウィンドウ・シーケンス決定器138からウィンドウ・タイプ情報140を受信し,それに基づいて,ウィンドウ化器/変換器136によって実行されるウィンドウ化/変換動作のために用いられるウィンドウのタイプを示す可変長符号語182を提供するように構成される可変長符号語エンコーダ180を含むこと,オーディオエンコーダは,例えば可変長符号語エンコーダ180を用いて,可変長符号語を用いた入力オーディオ情報の現在の部分(例えばフレーム)を変換するために用いられるウィンドウのタイプを示すウィンドウ・タイプ情報140を符号化するように構成されることが理解できる。そして,同(イ)の本件明細書の記載及び図3a,bからは,変換ウィンドウのタイプについて,
第1のウィンドウ・タイプ
(only_long
_sequence)として長い左側ウィンドウ傾斜及び長い右側ウィンドウ傾斜並びに長い変換長を含むもの(段落【0049】),第2のウィンドウ・タイプ
(long_start_sequence)
として長
い左側ウィンドウ傾斜及び短い右側ウィンドウ傾斜並びに長い変換長を含むもの(段落【0050】),第3のウィンドウ・タイプ(long_stop_sequence)として短い左側ウィンドウ傾斜及び長い右側ウィンドウ傾斜並びに長い変換長を含むもの
(段落
【0051】,

第4のウィンドウタイプ

(stop_start_sequence)
として短い左側ウィンドウ傾斜及び短い右側ウィンドウ傾斜並びに長い変換長を含むもの(段落【0052】),第5のウィンドウ・タイプ(eight_short_sequence)として短い左側ウィンドウ傾斜及び短い右側ウィンドウ傾斜並びに短い変換長を含むもの
(段落
【0
053】)等があることが理解できる。
さらに,同(エ)の本件明細書の記載及び図5,図6a,b,図7a~cからは,ウィンドウのタイプの符号化に関し,右側ウィンドウ傾斜が長いことを示す「window_length」
(判決注:「移行傾斜」に
対応する。)が「0」であれば,変換長は常に長い変換長となり,「tr
ansform_length」
(判決注:「変換長」に対応する。)の
値を省略することができることから,
可変長符号語エンコーダ180は,
現在のフレームのウィンドウの右側ウィンドウ傾斜が長い場合,現在のフレームの1ビット「window_length」情報だけを含む1ビット符号語のみを提供し,現在のフレームの右側ウィンドウ傾斜が短い場合,
1ビットの
「window_length」
情報及び1ビットの
「transform_length」情報を含む2ビット符号語を提供することにより,現在のフレームのウィンドウの右側ウィンドウ傾斜が長い場合,1ビットが節約されることが理解される。
(イ)

以上によれば,本件明細書には,右側の移行傾斜が長いウィンドウに
は短い変換長が選ばれることはないという関係があることから,このような関係を利用して可変長符号語を得ることが記載されていると理解でき,本件明細書の段落【0014】の「移行傾斜の選択と変換長の選択との間の依存関係」も,右側の移行傾斜が長いウィンドウには短い変換長が選ばれることはないという関係を意味すると解される。
したがって,本件明細書には,オーディオエンコーダにおいて,このような「移行傾斜の選択と変換長の選択との間の依存関係」を利用することにより可変長符号語を得ることが記載されているということができる。なお,被告は,本件明細書の段落【0063】~【0067】が「可変長符号語エンコーダ」
についての記載であることを理由に,
これらの段
落の記載は,
請求項9の「オーディオエンコーダ」に関する記載と対応し
ていないと主張するが,
「可変長符号語エンコーダ」はオーディオエンコ
ーダに含まれており,
オーディオエンコーダに含まれる可変長符号語エン
コーダがウィンドウタイプ情報の符号化をするように構成されているこ・
とは,実施例にすぎないと解されるから(上記(ア)参照),上記段落の記載は請求項9のオーディオエンコーダに関する記載と理解することができ,この点に関する被告の主張は採用できない。
(ウ)

これに対し,特許請求の範囲の請求項9には,オーディオエンコーダ
において可変長符号語がいかなる方法により符号化されるかについて特定する記載はなく,分説G1には,オーディオエンコーダが,
「前記(判
決注:分説Fに記載の)
可変長符号語を用いて」
何らかの方法により
「移
行傾斜の選択と変換長の選択との間の依存関係」「を利用する」ことが記載されているものと解さざるを得ない。そうすると,分説G1の記載は,上記の本件明細書から読み取れる,オーディオエンコーダが「移行傾斜の選択と変換長の選択との間の依存関係」を利用して可変長符号語を得ることとは異なるものというほかなく,本件明細書の記載を参照しても,分説G1に記載された,オーディオエンコーダが「前記可変長符号語を用いて」「依存関係を利用する」ことの意義は明らかではないと言わざるを得ない。
(エ)

以上のとおりであるから,本件明細書の記載を参酌しても,分説G1
の技術的意義を理解することができない。

分説G2について
(ア)

上記1(2)オ(ウ)の本件明細書の記載及び図4からは,
変換ウィンドウ


タイプ間の移行について,第1のフレームのためのウィンドウ・タイプによって,第2のフレームのためのウィンドウ・タイプの種類の選択が制限されることが理解され,これによれば「隣接するフレームのウィンドウ・タイプの種類の間に一定の関係がある」ということができる。そして,分説G2には「隣接するフレームのウィンドウ形状の間の相関関係」との記載があるから,分説G2の「ウィンドウ形状」と上記の本件明細書の「ウィンドウ・タイプ」の関係が問題となる。
(イ)

本件明細書には「ウィンドウ形状」と「ウィンドウ・タイプ」が同義
であることを明示した記載はなく,段落【0102】の記載(「このように,本発明による実施例において,「ウィンドウ形状」,すなわち移行の形は,ウィンドウ・タイプ,すなわち移行傾斜の一般の長さ(長いか短い)
および変換長の一般の長さ
(長いか短い)
とは別に決定される。)

からは,「ウィンドウ形状」と「ウィンドウ・タイプ」が異なる概念であると解し得る。そして,両者が異なる概念であるとすると,上記(ア)の「隣接するフレームのウィンドウタイプの種類の間に関係があること」・
から分説G2の「隣接するフレームのウィンドウ形状の間の相関関係」の意義を理解することはできない。加えて,本件明細書には「ウィンドウ形状」と可変長符号語とがどのような関係に立つかについて記載した箇所も存在しないから,本件明細書から分説G2における「前記可変長符号語を用いて」隣接するフレームのウィンドウ形状の間の相関関係」「
「を利用する」ことの意味を理解することはできない。
(ウ)

ここで,仮に「ウィンドウ形状」と「ウィンドウ・タイプ」が同義で
あるものとして検討すると,
上記(ア)における隣接するフレームのウィン
ドウ・タイプの種類の間の関係と分説G2の「隣接するフレームのウィンドウ形状の間の相関関係」及び本件明細書の段落【0015】の「隣接するフレームのウィンドウ形状間に概して相関がある点」とは,いずれも,隣接するウィンドウのウィンドウ形状(すなわち,ウィンドウ・タイプ)が現在のフレームのためのウィンドウ形状(すなわち,ウィンドウ・タイプ)の選択を制限するという関係にあることを示すものと理解することが可能である。そして,上記1(2)オ(エ)のウィンドウのタイプの符号化に関する本件明細書の記載を考慮すれば,本件明細書の記載から,オーディオエンコーダにおいて,このような「隣接するフレームのウィンドウ形状(すなわち,ウィンドウ・タイプ)間の相関関係」を利用することにより可変長符号語を得るという技術思想を読み取る余地がある。
しかし,
上記ア(ウ)に説示したとおり,
特許請求の範囲の請求項9には,
オーディオエンコーダにおいて可変長符号語がいかなる方法により符号化されるかについて特定する記載はなく,分説G2には,オーディオエンコーダが,
「前記(判決注:分説Fに記載の)可変長符号語を用いて」
何らかの方法により「隣接するフレームのウィンドウ形状の間の相関関係」「を利用する」ことが記載されていると解さざるを得ない。そうすると,分説G2の記載は,上記のとおり本件明細書から読み取れる,オーディオエンコーダが「隣接するフレームのウィンドウ形状(ウィンドウ・タイプ)間の相関関係」を利用して可変長符号語を得ることとは異なるものというほかなく,本件明細書の記載を参照しても,分説G2に記載された,
オーディオエンコーダが
「前記可変長符号語を用いて」
「相
関関係を利用する」ことの意義は明らかではないと言わざるを得ない。(エ)

以上のとおりであるから,本件明細書の記載を参酌しても,分説G2
の技術的意義を理解することができない。
(4)

このように,
分説G1及び分説G2の意義は明らかでなく,分説Gの技術

的意義は不明ということになるから,特許請求の範囲の請求項9の記載は明確性要件を充足しないというべきである。
3
請求項13の明確性について
本願発明13は入力オーディオ情報に基づいて符号化オーディオ情報を提供する方法の発明であり,請求項13には「可変長符号語を用いて,移行傾斜の選択と変換長の選択との間の依存関係または隣接するフレームのウィンドウ形状の間の相関関係が利用される,方法」との記載がある。
この部分についても,上記2(2)アと同様,①

可変長符号語を用いて,移行

傾斜の選択と変換長の選択との間の依存関係が利用される,又は②
可変長符

号語を用いて,隣接するフレームのウィンドウ形状の間の相関関係が利用されることが記載されていると解することができる。
そして,
上記2(3)において述
べたのと同様に,請求項13の「可変長符号語を用いて」
「依存関係」又は「相
関関係」「が利用される」ことと,本件明細書から読み取れる技術思想は異なるものというべきであるから,本件明細書の記載を参酌しても,請求項13の「可変長符号語を用いて,移行傾斜の選択と変換長の選択との間の依存関係または隣接するフレームのウィンドウ形状の間の相関関係が利用される」の技術的意義を理解することはできない。
したがって,特許請求の範囲の請求項13の記載も明確性要件を充足しないというべきである。
4
原告の主張について
(1)

原告は,本件明細書の記載(段落【0057】~【0059】,【006
3】~【0071】)から「移行傾斜の選択と変換長の選択との間の依存関係」及び「隣接するフレームのウィンドウ形状の間の相関関係」の意義は明らかであり,本願発明9に係るオーディオエンコーダ100は,分説F及び分説Gの構成により,低減されたビット要求でウィンドウ・タイプを示すウィンドウ情報140の符号化を可能にするといった特有の効果を有するから,分説Gはオーディオエンコーダにおける技術事項を特定しており,本願発明9の特許請求の範囲の記載は明確性要件を満たすと主張する。
しかし,本件明細書の記載から「移行傾斜の選択と変換長の選択との間の依存関係」及び「隣接するフレームのウィンドウ形状の間の相関関係」の意義が理解できるとしても,分説Gにおける,「可変長符号語を用いて」「移行傾斜の選択と変換長の選択との間の依存関係」又は「隣接するフレームのウィンドウ形状の間の相関関係」「を利用する」ことの意義が明らかではないのは,上記3(3)において説示したとおりであり,原告の主張は採用できない。
(2)

原告は,
特許請求の範囲の請求項1に記載されたオーディオデコーダの発

明における復号化処理と本願発明9のオーディオエンコーダにおける符号化処理は概念的に共通する処理が含まれているところ,特許請求の範囲の請求項1の記載の明確性は否定されていないのであるから,これに対応する請求項9の記載も明確性要件を満たす旨主張する。
本件明細書の上記1(2)エ(オ)の記載及び図6a,cからは,オーディオデコーダのウィンドウ・セレクタは,現在のフレームに関連するウィンドウ・タイプを決定するために,前のフレーム及び現在のフレームの「window_length」情報を評価し,現在のフレームの「window_length」情報の値に基づいて,選択的に現在のフレームの「transform_length」情報を考慮するように構成されることが理解され,このような復号化の処理は,本件明細書から理解されるオーディオエンコーダによる符号化の処理
(上記2(3)ア(ア))
と対応するものと言う余地がある。
しかし,特許請求の範囲の記載におけるオーディオデコーダに関する記載(請求項1の「可変符号語長のウィンドウ情報(224)を評価するように構成されるウィンドウ・セレクタ(270)を含み,」「前記可変符号語長のウィンドウ情報を用いて,移行傾斜の選択と変換長の選択との間の依存関係または隣接するフレームのウィンドウ形状の間の相関関係を利用するように構成される」)と,オーディオエンコーダに関する記載(分説Gの「前記可変長符号語を用いて,移行傾斜の選択と変換長の選択との間の依存関係または隣接するフレームのウィンドウ形状の間の相関関係を利用するように構成される」)は,復号化処理と符号化処理の観点からみて対応した記載にはなっていない。
したがって,原告の主張する点は上記3の判断を左右するものではない。5
以上のとおりであるから,特許請求の範囲の請求項9及び請求項13の記載は明確性要件を充足しないとした本件審決の判断に誤りはない。
よって,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとして主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部

裁判長裁判官
鶴岡高橋寺田稔彦
裁判官

裁判官

利彦
(別紙)
本件明細書図面目録

FIGURE

4
FIGURE

5
FIGURE

6A

FIGURE

6B

FIGURE

6C

FIGURE

7A

FIGURE

7B

FIGURE

7C

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