判例検索β > 平成29年(ワ)第40193号
損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟
事件番号平成29(ワ)40193
事件名損害賠償請求事件
裁判年月日平成30年9月6日
法廷名東京地方裁判所
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平成30年9月6日判決言渡

同日原本交付

平成29年(ワ)第40193号

裁判所書記官

損害賠償請求事件

口頭弁論終結日平成30年7月6日
判決原聖二小林英了同大野浩之木村広行同山口裕司同多田宏文同祝谷和宏原告訴訟代理人弁理士

津田同松野知紘同酒谷誠一
原告補佐人弁理士

野本裕史被告
スーパーセル

被野同大同グ
原告訴訟代理人弁護士

告リー株式会社告
Supercell株式会社


オーワイ

被告ら訴訟代理人弁護士

吉田和彦同奥村直樹同本飛翔
被告ら訴訟復代理人弁護士

西村英和
被告ら補佐人弁理士

鈴木信彦同山大浦博司同山崎貴明主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
被告らは,原告に対し,連帯して1億円及びこれに対する平成29年12月9日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。第2事案の概要
1本件は,発明の名称を「コンピュータ,その制御方法,及びその制御プログラ
ム」とする特許権(第5952947号)を有する原告が,被告らによる別紙被告製品目録記載のゲームアプリのゲームプログラムの作成,配信が上記特許権を侵害し,また,侵害するものとみなされると主張して,被告らに対し,民法709条に基づく損害賠償金
(一部請求)
及び遅延損害金の支払を求める事案である。
2前提事実(後掲各証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実)
原告は,
ソーシャルネットワーキングサービス及びオンラインゲームプラットフォームの提供等を目的とする株式会社であり,ゲームアプリの開発,配信等を行っている。
(弁論の全趣旨)
被告スーパーセルオーワイは(所在地は省略)所在の会社であり,ゲームアプリの開発,配信等を行っている。
(争いがない)

被告Supercell株式会社(以下,被告スーパーセルオーワイと被告Supercell株式会社を「被告ら」と総称する。)は(所在地は省略)所在の株式会社であり,被告スーパーセルオーワイの関連会社である。(争い
がない)
原告は,下記の特許権(以下「本件特許権」又は「本件特許」という。)を有
している。
(争いがない)
特許番号

特許第5952947号

発明の名称

コンピュータ,その制御方法,及びその制御プログラム

登録日

平成28年(2016年)6月17日

出願日

平成27年(2015年)8月14日

出願番号

特願2015-160036(特願2015-12331

6の分割)

原出願日

平成25年(2013年)9月27日

本件特許権に係る特許請求の範囲の請求項6及び8の記載は以下のとおりである(争いがない。以下,請求項6に記載された発明を「本件発明1」といい,請求項8に記載された発明を「本件発明2」といい,本件発明1と本件発明2を併せて「本件各発明」と総称する。また,本件特許に係る明細書及び図面を「本件明細書」と総称する。。


請求項6の記載
「記憶部を備えるコンピュータの制御プログラムであって,
プレイヤからの指示に基づいて,
少なくとも他プレイヤの攻撃から防御す

るためのゲーム媒体を含み得るゲーム媒体をゲーム空間内に配置することによりゲームを進行させることと,
ゲーム媒体の配置位置を規定する,
他プレイヤの攻撃に対する防御に用い
るテンプレートを作成することであって,
プレイヤによって選択されたゲー
ム空間の全体に配置済のゲーム媒体及びその配置位置を前記テンプレート
とすることと,
前記ゲーム空間内に配置されたゲーム媒体の種類及び位置と,
前記テンプ
レートと,前記テンプレートに対応するサムネイルと,を前記記憶部に記憶することと,
前記ゲーム空間と,所定のボタンと,を含むゲーム進行画面を表示することと,
前記ゲーム進行画面において,前記所定のボタンがプレイヤによって選択
されたことに応答して,
テンプレートに対応するサムネイルを含むテンプレ
ート選択画面を表示することと,
前記テンプレート選択画面において,プレイヤの指示に応答して,特定のサムネイルに対応するテンプレートを選択することと,
前記選択されたテンプレートを適用することと,

を実行させる,コンピュータの制御プログラム。


請求項8の記載
「記憶部と,
処理部と,を備え,該処理部は,

プレイヤからの指示に基づいて,
少なくとも他プレイヤの攻撃から防御す
るためのゲーム媒体を含み得るゲーム媒体をゲーム空間内に配置することによりゲームを進行させ,
ゲーム媒体の配置位置を規定する,
他プレイヤの攻撃に対する防御に用い
るテンプレートを作成することであって,
プレイヤによって選択されたゲー

ム空間の全体に配置済のゲーム媒体及びその配置位置を前記テンプレートとし,
前記ゲーム空間内に配置されたゲーム媒体の種類及び位置と,
前記テンプ
レートと,前記テンプレートに対応するサムネイルと,を前記記憶部に記憶し,

前記ゲーム空間と,所定のボタンと,を含むゲーム進行画面を表示し,前記ゲーム進行画面において,前記所定のボタンがプレイヤによって選択されたことに応答して,
テンプレートに対応するサムネイルを含むテンプレ
ート選択画面を表示し,
前記テンプレート選択画面において,プレイヤの指示に応答して,特定のサムネイルに対応するテンプレートを選択し,
前記選択されたテンプレートを適用する,

コンピュータ。

本件発明1及び2を構成要件に分説すると,下記ア及びイ記載のとおりとなる
(以下,
分説された構成要件の符号に従い
「構成要件1A」
などと表記する。。


本件発明1の構成要件の分説
1A

記憶部を備えるコンピュータの制御プログラムであって,

1B

プレイヤからの指示に基づいて,
少なくとも他プレイヤの攻撃から
防御するためのゲーム媒体を含み得るゲーム媒体をゲーム空間内に配置することによりゲームを進行させることと,

1C

ゲーム媒体の配置位置を規定する,
他プレイヤの攻撃に対する防御
に用いるテンプレートを作成することであって,
プレイヤによって選

択されたゲーム空間の全体に配置済のゲーム媒体及びその配置位置を前記テンプレートとすることと,
1D

前記ゲーム空間内に配置されたゲーム媒体の種類及び位置と,
前記
テンプレートと,前記テンプレートに対応するサムネイルと,を前記記憶部に記憶することと,

1E

前記ゲーム空間と,所定のボタンと,を含むゲーム進行画面を表示することと,

1F

前記ゲーム進行画面において,
前記所定のボタンがプレイヤによっ
て選択されたことに応答して,
テンプレートに対応するサムネイルを

含むテンプレート選択画面を表示することと,
1G

前記テンプレート選択画面において,プレイヤの指示に応答して,特定のサムネイルに対応するテンプレートを選択することと,
1H
1I

前記選択されたテンプレートを適用することと,
を実行させる,コンピュータの制御プログラム。

本件発明2の構成要件の分説
2A

記憶部と,

2B

処理部と,を備え,該処理部は,

2C

プレイヤからの指示に基づいて,少なくとも他プレイヤの攻撃から防御するためのゲーム媒体を含み得るゲーム媒体をゲーム空間内に配置することによりゲームを進行させ,

2D

ゲーム媒体の配置位置を規定する,他プレイヤの攻撃に対する防御に用いるテンプレートを作成することであって,プレイヤによって選択されたゲーム空間の全体に配置済のゲーム媒体及びその配置位置を前記テンプレートとし,

2E

前記ゲーム空間内に配置されたゲーム媒体の種類及び位置と,前記テンプレートと,前記テンプレートに対応するサムネイルと,を前記
記憶部に記憶し,
2F

前記ゲーム空間と,所定のボタンと,を含むゲーム進行画面を表示し,

2G

前記ゲーム進行画面において,前記所定のボタンがプレイヤによって選択されたことに応答して,テンプレートに対応するサムネイルを
含むテンプレート選択画面を表示し,
2H

前記テンプレート選択画面において,プレイヤの指示に応答して,
特定のサムネイルに対応するテンプレートを選択し,
2I
前記選択されたテンプレートを適用する,

2J

コンピュータ。

被告スーパーセルオーワイは,別紙被告製品目録記載のゲームアプリ「クラッシュ・オブ・クラン」のゲームプログラムを作成し,プレイヤが保有するスマートフォン等の携帯端末等に配信した(以下,
ムアプリを「本件ゲーム」といい,同ゲームプログラムを「本件プログラム」といい,本件プログラムがインストールされた携帯端末等を「本件携帯端末」という。。
)(争いがない)
被告Supercell株式会社は,被告スーパーセルオーワイの関連会社であり,主に,マーケティングのためのコンテンツを準備したり,日本国内の広告代理店と連絡を取ったりすることにより,被告スーパーセルオーワイの事業を補助した。(乙12)
被告スーパーセルオーワイは,平成30年1月25日,本件ゲームにつき,
日本国内で通常の方法で使用した場合にレイアウトエディタのアイコンを表示させず,
アイコンがあった場所をタップしてもレイアウトエディタ機能が起動しないようにする仕様変更を行った。(乙37,38の1及び2,乙39)3争点
本件プログラム及び本件携帯端末が本件各発明の技術的範囲に属するか否
か(争点1)

本件プログラム及び本件携帯端末の構成(争点1-1)


本件プログラム及び本件携帯端末は本件各発明の構成要件を充足するか
否か(なお,被告らは,
特段争わない。(争点1-2)

「テンプレート」の充足性(構成要件1C,1D,1F,1G及び1H
「プレイヤによって選択されたゲーム空間の全体に配置済のゲーム媒体及びその配置位置を前記テンプレートとする」の充足性(構成要件1C及「サムネイル」の充足性(構成要件1D,1F及び1G並びに2E,2「記憶部」の充足性(構成要件1A及び1D並びに2A及び2E)(争点

「選択されたテンプレートを適用する」の充足性(構成要件1H及び2間接侵害(特許権侵害行為)の成否(争点2)
本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものか(争点3)ア
ウェブサイト「SUPERCELL

Community

FORUM

S!」の記載事項に基づく新規性欠如の有無(争点3-1)

被告スーパーセルオーワイがアップル社に提出したプログラムに基づく
新規性欠如の有無(争点3-2)

既存のゲーム「CIVILIZATION
tエ
Ⅳ」及び「StarCraf

Ⅱ」に基づく進歩性欠如の有無(争点3-3)
構成要件1C及び2Dについてのサポート要件違反の有無(争点3-4)
被告Supercell株式会社の特許権侵害行為への関与の有無(争点4)
損害発生の有無及びその額(争点5)
4争点に対する当事者の主張
本件プログラム及び本件携帯端末が本件各発明の技術的範囲に属するか否か(争点1)

本件プログラム及び本件携帯端末の構成(争点1-1)
(原告の主張)
本件プログラム及び本件携帯端末の構成を,本件各発明の構成要件と対比である(以下,分説され
た構成に付された符号に従い「構成1a」などと表記する。。


本件プログラムの構成
1a

メモリを備える本件携帯端末の制御プログラムであって,
1b

プレイヤからの操作に基づいて,
少なくとも他プレイヤの攻撃か
ら防御するための防衛設備を含み得る施設を自分の村内に配置す
ることによりゲームを進行させることと,

1c

施設の配置位置を定める,
他プレイヤの攻撃からの防御に使用さ
れるレイアウトを作成することであって,
プレイヤによって選択さ

れた自分の村の全体に配置された全ての施設及びその配置位置を
レイアウトとすることと,
1d

施設を配置,
移動又は除去する旨の指示をその都度サーバに送信
するとともに,自分の村に配置された施設の種類及び位置と,作成したレイアウトと,レイアウトに対応する縮小画像と,をメモリに
記憶することと,
1e

自分の村と,
「レイアウトエディタ」
アイコンと,
を含む基本画面
を表示することと,

1f

基本画面において,
「レイアウトエディタ」アイコンがプレイヤ

によってタップされたことに応答して,
レイアウトに対応する縮小

画像を含むレイアウトエディタ画面を表示することと,
1g

レイアウトエディタ画面において,
1つの縮小画像がプレイヤに
よってタップされたことに応答して,
該1つの縮小画像に対応する
レイアウトを選択することと,

1h

自分の村において,選択されたレイアウトに含まれる施設を,選
択されたレイアウトによって規定された配置位置に配置すること
と,

1i

を実行させる,本件携帯端末の制御プログラム。

本件携帯端末の構成
2a

メモリと,

2b

プロセッサと,を備え,このプロセッサは,
2c

プレイヤからの操作に基づいて,少なくとも他プレイヤの攻撃か
ら防御するための防衛設備を含み得る施設を自分の村内に配置す
ることによりゲームを進行させ,

2d

施設の配置位置を定める,他プレイヤの攻撃からの防御に使用さ
れるレイアウトを作成することであって,プレイヤによって選択さ
れた自分の村の全体に配置された全ての施設及びその配置位置を
レイアウトとし,
2e

施設を配置,移動又は除去する旨の指示をその都度サーバに送信
するとともに,自分の村に配置された施設の種類及び位置と,作成したレイアウトと,レイアウトに対応する縮小画像と,をメモリに
記憶し,
2f

自分の村と,
「レイアウトエディタ」
アイコンと,
を含む基本画面
を表示し,

2g

基本画面において,
「レイアウトエディタ」アイコンがプレイヤ

によってタップされたことに応答して,レイアウトに対応する縮小
画像を含むレイアウトエディタ画面を表示し,
2h

レイアウトエディタ画面において,1つの縮小画像がプレイヤに
よってタップされたことに応答して,該1つの縮小画像に対応するレイアウトを選択し,

2i

自分の村において,選択されたレイアウトに含まれる施設を,選
択されたレイアウトによって規定された配置位置に配置する,

2j

本件携帯端末。

(被告らの主張)
本件プログラムが,原告主張の構成1b,1e,1f,1g及び1ⅰを備え,本件携帯端末が構成2b,2c,2f,2g,2h及び2jを備えていることは認め,その余は否認する。本件プログラム及び本件携帯端末の構成のうち争いがある部分について被告らが主張する構成は,下記

のと

おりである。
本件ゲームプログラムの構成
1a’メモリを備えるか備えないかを問わない本件携帯端末の制御プログラムであって,
1c’施設の配置位置を定める,他プレイヤの攻撃からの防御に使用されるレイアウトを作成することであって,プレイヤによって選択された自分の村の全体に配置済の施設及びその配置位置をレイア
ウトとすることはなく,自分の村に配置された全ての施設その配置
位置をレイアウトとすることと,
1d’自分の村に配置された施設の種類及び位置,作成したレイアウト及びレイアウトに対応する縮小画面のいずれもメモリに記憶す
ることはなく,施設を配置,移動又は除去する旨の指示をその都度サーバに送信するとともに,レイアウトに対応する縮小画面をレイ
アウトエディタ画面表示の際にその都度作成することと,
1h’選択されたレイアウトを有効にすることはできず,選択されたレイアウトを有効にする旨のプレイヤの指示をサーバに送信し,サーバが有効にしたレイアウトを表示することと,
本件携帯端末の構成

2a’

メモリを備えるか備えないかを問わず,

2d’施設の配置位置を定める,他プレイヤの攻撃からの防御に使用されるレイアウトを作成することであって,プレイヤによって選択された自分の村の全体に配置済の施設及びその配置位置をレイア
ウトとすることはなく,自分の村に配置された全ての施設及びその配置位置をレイアウトとし,
2e’自分の村に配置された施設の種類及び位置,作成したレイアウト及びレイアウトに対応する縮小画面のいずれもメモリに記憶す
ることはなく,施設を配置,移動又は除去する旨の指示をその都度サーバに送信するとともに,レイアウトに対応する縮小画面をレイアウトエディタ画面表示の際にその都度作成し,
2i’選択されたレイアウトを有効にすることはできず,選択された
レイアウトを有効にする旨のプレイヤの指示をサーバに送信し,サーバが有効にしたレイアウトを表示する,

本件プログラム及び本件携帯端末は本件各発明の構成要件を充足するか(争点1-2

ないし



「テンプレート」の充足性(構成要件1C,1D,1F,1G及び1H並びに2D,2E,2G,2H及び2I)
(原告の主張)
本件各発明の「テンプレート」は,①ゲーム媒体の配置位置を規定するもので他プレイヤの攻撃に対する防御に用いるものであり,かつ,②プレ
イヤによって選択されたゲーム空間の全体に配置済のゲーム媒体及びその配置位置であって,
文言上それ以上の限定はされていない。
また,
「テン
プレート」の国語的意味は,コンピュータのソフトウェアで,すぐに利用できるよう設定済みのパターンであるとされる。
本件プログラムの構成1c及び本件携帯端末の構成2dは,それぞれ上
記①及び②に該当する。また,本件ゲームでは,レイアウトを有効にすることでレイアウトどおりのゲーム媒体の配置をすぐに利用できるのであるから,上記のレイアウトはすぐ利用できるように設定済みのパターンであるといえる。
したがって,本件プログラム及び本件携帯端末は,本件各発明の「テン
プレート」との文言を充足する。
被告らは,本件各発明の「テンプレート」は,ゲーム空間の一部に含まれるゲーム媒体の種類とその配置位置を別途記憶し,それを既存のゲーム空間に適用し,
それによってゲーム空間内のゲーム媒体を移動させるもの
であって,
ゲーム空間である自分の村そのものとは異なる概念であるのに
対し,レイアウトのデータはそれぞれが別個のゲームデータであり,ゲーム空間である自分の村そのものであるから「テンプレート」に該当しないと主張する。しかし,ゲーム空間である自分の村そのものではゲームの進行に影響を与える操作ができるのに対し,レイアウトエディタ機能ではそのような操作ができないこと,ゲーム空間である自分の村そのものではアーミーキャンプのキャラクタ等を見ることができるのに対し,レイアウト
エディタ機能ではそれらを見ることができないことなどから,
レイアウト
のデータは,
ゲーム空間である自分の村そのものとは異なるものであるこ
とが明らかであるから,被告らの主張は失当である。
(被告らの主張)
本件各発明の特許請求の範囲では「テンプレート」とは別に「ゲーム空
間」
という概念が規定されていることや,
「テンプレート」
がゲーム媒体の
配置位置を規定するものであり,ゲーム媒体はそれをゲーム空間内に配置することによってゲームを進行するものであるとされていることなどに照らせば,
「テンプレート」と「ゲーム空間」は異なる概念である。
また,本件明細書(段落【0007】【0028】【0045】【00,



47】【0049】【0068】等)によれば,本件各発明の「テンプレ,

ート」とは,ゲーム空間の一部に含まれるゲーム媒体の種類とその配置位置を別途記憶し,それを既存のゲーム空間に適用し,既存のゲーム空間内で既に配置されていたゲーム媒体を別途新たな位置に配置(移動)させるものであるから,そのような記載を参酌すれば「テンプレート」と「ゲー
ム空間」は異なる概念であると解釈することが相当である。
本件ゲームでは,
レイアウトエディタ機能を使用して自分の村に関する
複数のレイアウトを作成及び保存することができるところ,レイアウトエディタ機能は自分の村に配置された全ての施設の種類及び配置位置の組合せを別個のゲームデータとして保存する機能であり,レイアウトは「ゲーム空間」そのものであって,既存のレイアウトの一部にそれを適用してゲーム媒体の一部を移動させるものではないから,本件各発明における「テンプレート」には当たらない。
したがって,本件プログラム及び本件携帯端末は,本件各発明の「テンプレート」との文言を充足しない。
「プレイヤによって選択されたゲーム空間の全体に配置済のゲーム媒体
及びその配置位置を前記テンプレートとする」の充足性(構成要件1C及び2D)
(原告の主張)
本件明細書では,
ゲーム空間における任意の2点をタップすることによ
り範囲が選択されることが明確に記載されており,
これによってゲーム空

間の一部の範囲を選択してテンプレートとする態様とゲーム空間の全体をテンプレートとする態様の2種類の態様が記載されているところ,本件特許は,上記の2種類の態様のうち,任意の2点をゲーム空間の左上の点および右下の点とすることによりゲーム空間の全体をテンプレートとする態様に着目したものである。すなわち,構成要件1C及び2Dの「プレ
イヤによって選択されたゲーム空間の全体」という要件における「ゲーム空間の全体」は文字通りゲーム空間全体を意味する。
本件ゲームでは,レイアウトエディタ機能において,複数の縮小画像のうちのいずれかをタップできるところ,例えば「使用中」とされている縮小画像をタップした後に「レイアウトをコピー」アイコンをタップしてコ
ピー操作をすると,
自分の村の全体に配置された全ての施設及びその配置
位置が新たなレイアウトとして保存されるのであるから,自分の村の全体すなわちゲーム空間全体が選択されるとともに,その自分の村に配置されている施設すなわちゲーム媒体が選択されている。
したがって,本件プログラム及び本件携帯端末は,
「プレイヤによって
選択されたゲーム空間の全体に配置済のゲーム媒体及びその配置位置を前記テンプレートとする」との文言を充足する。
これに対し,被告らは,特許請求の範囲及び本件明細書の記載によればテンプレートの作成,適用の場面でプレイヤによる範囲の選択が必須とされていることは明らかであり,ゲーム空間の範囲を選択する操作を経ないでテンプレートを作成,適用するという発明は記載されていないと主張す
る。しかしながら,本件明細書の記載は第1及び第2実施形態としてテンプレートの作成,適用の具体例を示したにすぎないのであるから,そのような単なる実施例の記載をもって「テンプレート」の文言が限定解釈される理由はない。
また,被告らは,構成要件1C及び2Dの「ゲーム空間の全体」という
文言は,ゲーム空間全体の中で範囲選択された部分を,プレイヤによって選択されたゲーム空間の全体と表現しているにすぎないと主張する。しかしながら,構成要件1C及び2Dに「一部」等の文言は記載されていないし,本件特許の出願過程で「ゲーム空間の全体」という文言はゲーム空間の全体を意味するとして出願人により明確に主張されており,本件明細書
における根拠も明らかにされた上で特許査定に至っているのであるから,被告らの主張は失当である。
(被告らの主張)
構成要件1C及び2Dの記載によれば,本件各発明ではプレイヤによるゲーム空間内における範囲の指示(選択)が必須であり,このような範囲
の指示が存在しない態様は想定されていない。なお,構成要件1C及び2Dには「全体」という文言が存在するところ,これはゲーム空間の中で範囲選択された部分をもってプレイヤによって選択されたゲーム空間の全体と表現するものであるから,
「全体」という文言を根拠として範囲の選
択という要素が不要であると解釈することはできない。
本件明細書の記載によっても,本件ゲームは,プレイヤがゲーム空間内の範囲全体から一部の範囲を選択し,その選択した範囲についてテンプレートを作成することができるというものであり,また,ゲーム空間内の範囲を自由に選択し,
その選択した範囲にテンプレートを適用することがで
きる技術を提供し,
これによりゲーム媒体の変更や配置の変更を容易に行
うことが可能となり,街づくりにおけるユーザビリティを向上させてプレ
イヤをゲームに惹きつけ続けることを可能としたものである(段落【0006】及び【0018】
)から,本件各発明の「テンプレート」は,ゲーム
空間内のプレイヤが指定した範囲について作成され,ゲーム空間内のプレイヤが指定した範囲に適用されるものであることが明らかである。本件ゲームでは,レイアウトエディタ機能において,レイアウトを編集
する場合にプレイヤによる範囲選択のステップは存在していないし,作成したレイアウトを有効化する場合であっても別個のゲームデータとして存在するゲーム空間に切り替えているにすぎない(複数存在するゲームデータのうちから特定の一つを選択しているにすぎない)のであるから,一つのゲーム空間における範囲という概念や,
範囲を選択するというステッ

プは存在していない。
仮に,本件明細書(段落【0037】
)の任意の2点のタップにより当該
2点を対頂点とする範囲が選択されるという記載によって,ゲーム空間の全体をテンプレートとする態様が記載されているという原告の主張が正しいとしても,結局のところ,その態様はゲーム空間のうちどの部分を選
択するかの決定権をプレイヤが有していることを必須の構成要素とするものであるところ,
本件プログラムも本件携帯端末もそのような構成要素
は有していないから,原告の主張は失当である。
したがって,本件プログラム及び本件携帯端末は,
「プレイヤによって
選択されたゲーム空間の全体に配置済のゲーム媒体及びその配置位置を前記テンプレートとする」との文言を充足しない。
「サムネイル」の充足性(構成要件1D,1F及び1G並びに2E,2G及び2H)
(原告の主張)
特許請求の範囲によれば,
「サムネイル」とはテンプレートに対応する
ものである。また,
「サムネイル」の国語的意味は,コンピュータで全体像

を大まかに把握するための縮小画面であるとされている。
本件ゲームのレイアウトとレイアウトエディタ画面における縮小画面が対応関係にあることは一目瞭然であり,また,上記の縮小画面によってレイアウトを少なくとも大まかに把握することができる。
したがって,本件プログラム及び本件携帯端末は,本件各発明の「サム
ネイル」という文言を充足する。
これに対し,被告らは,特許請求の範囲の「サムネイル」とはゲーム空間内のプレイヤが選択した範囲について作成されたテンプレートに対応する縮小画面を指すのに対し,本件ゲームのレイアウトエディタ画面の縮小画面は本件ゲームのゲーム空間である自分の村そのものの縮小画面で
あるから,上記縮小画面は「サムネイル」に該当しないと主張する。しかしながら,
「サムネイル」をゲーム空間内のプレイヤが選択した範囲につ
いて作成されたテンプレートに対応するものであると限定解釈する理由はないし,
そもそも本件ゲームのレイアウトエディタ画面の縮小画面はゲ
ーム空間である自分の村そのものの縮小画面であるという被告らの主張
は事実に反するから,被告らの主張は失当である。
また,被告らは,本件ゲームのレイアウトエディタ画面の縮小画面にはレイアウト内のデコレーションが表示されないから,レイアウトを縮小したものではないと主張する。しかしながら,上記のとおり,サムネイルとはコンピュータで全体像を大まかに把握するための縮小画面を意味することに照らせば,本件各発明において「サムネイル」に該当するか否かを判断するにあたってもレイアウトの全体像を大まかに把握できるものであれば足りるというべきであるから,デコレーションが表示されなかったとしても,レイアウトエディタ画面の縮小画面が「サムネイル」の文言を充足するという判断は左右されない。
(被告らの主張)

特許請求の範囲によれば「サムネイル」は「テンプレート」に対応するものであり,また,サムネイルの国語的意味はコンピュータ上に縮小して示す画像であることに照らせば,本件各発明の「サムネイル」はテンプレートを縮小して示す画像を意味する。そして,本件各発明の「テンプレート」は,ゲーム空間内のプレイヤが指定した範囲について作成されるもの
であるから,本件各発明にいう「サムネイル」も,ゲーム空間内のプレイヤが指定した範囲について作成された「テンプレート」を縮小して示す画面ということになる。本件明細書の記載(段落【0038】及び【0060】
)を参酌しても,本件各発明の「サムネイル」は,ゲーム空間内のプレイヤが選択した範囲について作成された「テンプレート」に対応する縮小
画面であると解釈されるべきである。
本件ゲームのレイアウトエディタ画面の縮小画面は,それぞれが別個のゲームデータであるゲーム空間である自分の村そのものを縮小して作成されるものであり,ゲーム空間内のプレイヤが選択した範囲(
「テンプレ
ート」の縮小画面ではなく,

また,
本件ゲームのレイアウトエディタ画面

の縮小画面にはレイアウト内のデコレーションが表示されないから,ゲーム空間に配置された施設の種類や配置位置を規定するレイアウトを縮小して示す画像であるともいえない。
したがって,本件プログラム及び本件携帯端末は,本件各発明の「サムネイル」という文言を充足しない。
「記憶部」の充足性(構成要件1A及び1D並びに2A及び2E)(原告の主張)
特許請求の範囲によれば,
「記憶部」は,
「前記ゲーム空間内に配置され
たゲーム媒体の種類及び位置と,前記テンプレートと,前記テンプレートに対応するサムネイルと,
」を記憶するものであればよく,それ以上は限
定されていない。本件明細書の記載によっても,一時的メモリである揮発
性メモリが「記憶部」に含まれることは明らかである。
本件プログラム及び本件携帯端末が自分の村に配置された施設の種類及び位置,レイアウト及びレイアウトエディタ画面の縮小画面を記憶するメモリを有していることを被告らは自認している。
したがって,本件プログラム及び本件携帯端末は,自分の村に配置され
た施設の種類及び位置,レイアウト及びレイアウトエディタ画面の縮小画面をメモリに記憶しているから,本件各発明の「記憶部」との文言を充足する。
(被告らの主張)
特許請求の範囲によれば,テンプレートはゲーム空間である自分の村そ
のものとは異なりゲームの進行に応じて変更されるような性質のものではないから,本件各発明の「記憶部」は,パーマネント領域のメモリであることが想定されている。本件明細書の記載(段落【0028】【002,
9】【0030】【0031】【0066】及び【0068】



)を参酌して
も,本件各発明にいう「記憶部」は,パーマネント領域のメモリ(メモリ
を備える端末の電源を落としたり,アプリケーションを終了したりしても,記憶されたデータが失われないようなメモリ)
を想定していることは明ら
かである。
本件ゲームにおいて,レイアウトを再現するデータ等はいずれも本件携帯端末の一時記録領域に保存されるにすぎず,
パーマネント領域のメモリ
に本件ゲームに関するデータ等が保存されることはない。
したがって,本件プログラム及び本件携帯端末は,本件各発明の「記憶部」との文言を充足しない。
「選択されたテンプレートを適用する」の充足性(構成要件1H及び2I)
(原告の主張)

被告らは,本件プログラムは,選択されたレイアウトを有効にすることはできず,選択されたレイアウトを有効にする旨のプレイヤの指示をサーバに送信し,
サーバが有効にしたレイアウトを基本画面に表示するだけで
あると主張する。
しかしながら,サーバとの通信を遮断した状態でも,本件携帯端末でレ
イアウトを有効化することが可能であり,レイアウトを有効にすることによって,ゲーム空間である自分の村において,選択されたレイアウトに含まれていた施設がレイアウトによって規定された配置位置に配置され,その状態でゲームを進行させることができる。
したがって,本件プログラム及び本件携帯端末は,本件各発明の「選択
されたテンプレートを適用する」との文言を充足する。
(被告らの主張)
特許請求の範囲及び本件明細書の記載によれば,
本件各発明のコンピュ
ータの制御プログラムやコンピュータが,
「選択されたテンプレートを適
用する」機能を有している必要がある。

本件ゲームにおいて,選択されたレイアウトを有効にすることは,サーバが行っており,本件プログラム及び本件携帯端末は,選択されたレイアウトを有効にすることができず,
サーバによって有効にされたレイアウト
を基本画面に表示することしかできない。
したがって,本件プログラム及び本件携帯端末は,本件各発明の「選択されたテンプレートを適用する」との文言を充足しない。
間接侵害(特許権侵害行為)の成否(争点2)
(原告の主張)
本件プログラムは本件発明1の技術的範囲に含まれるから,被告らが本件プログラムを作成,配信する行為は,本件発明1に係る特許権を侵害する。本件携帯端末は本件発明2の技術的範囲に含まれるところ,
本件プログラム

は,本件携帯端末にインストールされて実行されるものであり,本件携帯端末の生産にのみ用いられる物に該当することから,
被告らが本件プログラムを作
成,配信する行為は,本件発明2に係る特許権の間接侵害を構成する(特許法101条1号)

また,本件プログラムは,本件各発明による課題の解決に不可欠なものであ
るところ,
原告は被告らに対して本件特許に基づき被告製品の差止めを求める仮処分命令の申立てを行っており,被告らは,本件各発明が特許発明であって本件プログラムが本件各発明の実施に用いられることを知っているのであるから,被告らが業として本件ゲームプログラムを作成,配信する行為は,本件発明2に係る特許権の間接侵害を構成する(特許法101条2号)。

(被告らの主張)
否認ないし争う。
本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものか(争点3)ア
ウェブサイト「SUPERCELL

Community

FORUM

S!」の記載事項に基づく新規性欠如の有無(争点3-1)
(被告らの主張)
本件特許の原出願日である平成25年9月27日より前である同月15日にインターネットアーカイブ(ウェイバック・マシン)によってキャプチャされたウェブサイトには,
本件特許出願当時の本件ゲームの構成を前提と
して,以下の発明(以下「刊行物記載発明1」という。
)が記載されている。
刊行物記載発明1を分説すると,下記のとおりになる。
1a’
:刊行物記載発明1は,一時記録領域を備える携帯端末の制御プログラムである。
1b’
:刊行物記載発明1は,
プレイヤからの指示に基づいて,
少なくとも
他プレイヤの攻撃から防御するための防衛設備を含み得る施設を自分の村内に配置することによりゲームを進行させるものである。

1c’
:刊行物記載発明1は,
施設の配置位置を規定する,
他プレイヤの攻
撃に対する防御に用いるレイアウトを作成することであって,
プレイ
ヤによって選択された自分の村の全体に配置済の施設及びその配置位置を前記レイアウトとするものである。
1d’
:刊行物記載発明1は,前記自分の村内に配置された施設の種類及
び位置と,
前記レイアウトと,
前記レイアウトに対応する縮小画面と,
を前記一時記録領域に記録するものである。
1e’
:刊行物記載発明1は,
前記自分の村と,
Base

Builder

ボタンと,を含むゲーム進行画面を表示するものである。
1f’
:刊行物記載発明1は,
前記ゲーム進行画面において,
前記Base
Builderボタンがプレイヤによって選択されたことに応答して,レイアウトに対応する縮小画面を含むレイアウト選択画面を表示するものである。
1g’
:刊行物記載発明1は,
前記レイアウト選択画面において,
プレイヤ
の指示に応答して,
特定の縮小画面に対応するレイアウトを選択する

ものである。
1h’
:刊行物記載発明1は,前記選択されたレイアウトを使用することができるものである。
1i’
:刊行物記載発明1は,上記1a’ないし1h’を実行させる,コンピュータの制御プログラムである。
刊行物記載発明1と本件発明1を対比すると,
その構成の全てにおいて一
致し,相違点は存在しない。また,刊行物記載発明1と本件発明2を対比すると,本件発明1の構成要件との間で「コンピュータの制御プログラム」であるか「コンピュータ」であるかの相違は存在するものの,本件発明2の発明の内容は実質的には本件発明1と同じであるから,
やはり相違点は存在し
ない。

(原告の主張)
インターネットアーカイブ(ウェイバック・マシン)が保存したウェブサイトの内容の正確性については疑問があるから,平成25年9月25日の時点で刊行物記載発明1が公開されていたとは認められない。したがって,刊行物記載発明1の根拠であるウェイバック・マシンによってキャプチャされ
たウェブサイトはそもそも引用発明としての適格性を欠く。
また,刊行物記載発明1と本件各発明との間には,少なくとも以下の相違点が存在するから,本件各発明は刊行物記載発明1に基づいて新規性を否定されない。
[相違点1]

ゲーム空間及び所定のボタンが含まれる画面につき,本件各発明では「ゲーム進行画面」であるのに対し,刊行物記載発明1では「ゲーム進行画面」であるか否か不明である点。
[相違点2]
所定のボタンがプレイヤによって選択されたことに応答して表示される
画面が,
本件各発明ではサムネイルを含むテンプレート選択画面であるのに対し,
刊行物記載発明1ではサムネイルを含まないしテンプレート選択画面でもない点。

被告スーパーセルオーワイがアップル社に提出したプログラムに基づく
新規性欠如の有無(争点3-2)
(被告らの主張)
被告スーパーセルオーワイは,平成25年9月19日又は20日,村の編
集モードを実装した本件ゲームのリリースノート及びアップデートプログラムをアップル社に提出している。村の編集モードは,ゲーム空間である自分の村の状態を示す基本画面においてアイコンをタップすると,村の編集モードの画面に切り替わり,レイアウト上に存在する施設を全て取り除いたり配置したりすることができるというものである。

アップル社はデベロッパーに対して秘密保持義務を負っていないことが明らかであるから,
平成25年9月19日又は20日の時点で秘密保持義務
を負っていないアップル社が,
本件ゲームのアップデートプログラムを実行
できる状態になったことをもって,本件ゲームの構成は公然知られた発明となっていたといえる。

(原告の主張)
被告スーパーセルオーワイが提出した本件ゲームのリリースノート及びアップデートプログラムについて,アップル社が審査を開始し,その内容を確認したのは平成25年9月27日又は28日である。したがって,アップル社は,その秘密保持義務を論じるまでもなく,本件特許出願日前において
本件ゲームのリリースノート及びアップデートプログラムを知らなかったのであるから,被告主張の発明は公然知られた発明には該当しない。ウ
既存のゲーム「CIVILIZATION
t
Ⅳ」及び「StarCraf

Ⅱ」に基づく進歩性欠如の有無(争点3-3)

(被告らの主張)
平成17年10月25日に発売された対人対戦可能な戦略シミュレーションゲームである
「CivilizationⅣ」
をプレーする場合に,
W
indowsOSを動作させるコンピュータの制御プログラムとして,以下の発明(以下,
「公然実施発明1」という。
)が公然実施されていた。公然実
施発明1を分説すると,下記のとおりになる。
1a’:公然実施発明1は,記憶部を備えるコンピュータの制御プログラ’
ムである。
1b’:公然実施発明1は,プレイヤからの指示に基づいて,少なくとも’
他プレイヤの攻撃から防御するためのユニットを含み得るゲーム媒体をゲーム空間内に配置することによりゲームを進行させるもので
ある。
1c’:公然実施発明1は,ゲーム媒体の配置位置を規定する,他プレイ’
ヤの攻撃に対する防御に用いるデータを作成することであって,プレイヤによって選択されたゲーム空間の全体に配置済のゲーム媒体及びその配置位置を前記データとするものである。

1d’:公然実施発明1は,前記ゲーム空間内に配置されたゲーム媒体の’
種類及び位置と,前記データと,前記データに対応する保存日時を伴うファイル名と,を前記記憶部に記憶するものである。
1e’:公然実施発明1は,前記ゲーム空間と,所定のボタンと,を含む’
ゲーム進行画面を表示するものである。

1f’:公然実施発明1は,前記ゲーム進行画面において,前記所定のボ’
タンがプレイヤによって押されたことに応答して,データに対応する保存日時を伴うファイル名に対応するデータ選択画面を表示するものである。
1g’:公然実施発明1は,前記データ選択画面において,プレイヤの指’

示に応答して,
特定の保存日時を伴うファイル名に対応するデータを
選択するものである。
1h’:公然実施発明1は,前記選択されたデータを適用するものであ’
る。
1i’:公然実施発明1は,上記1a’

’ないし1h’
’を実行させる,コ
ンピュータの制御プログラムである。
また,対人対戦可能な戦略シミュレーションゲーム「StarCraftⅡ」
はマップを編集するためのエディタ機能によってユニット及び建造物等を配置したマップを作成し,それを保存する前にプレビュー画像としてマップ画像を設定することが可能であり,それを保存した後に公開機能を用いるとオンラインサーバがそれを受信して記憶し,誰でも自由に利用することが
できるようになる。そして,プレイヤがオンラインサーバで公開されているマップを用いてプレーしようとする際には,使用可能なマップのマップ画像のプレビュー画像がその右側に表示される(以下,この発明を「公然実施発明2」という。。

公然実施発明1と本件発明1を対比すると,公然実施発明1では保存日時
を伴うファイル名が記憶部に記憶され,保存日時を伴うファイル名選択画面が表示されることによってプレイヤがそれに対応するデータを選択するのに対し,本件発明1ではサムネイルが記憶部に記憶され,サムネイルを含むテンプレート選択画面が表示されることによってプレイヤが対応するテンプレートを選択する点で相違し,その余の構成で一致する。

しかしながら,ゲーム媒体の配置位置を規定する他プレイヤの攻撃に対する防御に用いるデータを選択する画面において,
その配置位置を示すマップ
のプレビュー画像であるサムネイルを表示することは,
公然実施発明1と同
じ技術分野に属する公然実施発明2で既に開示されていた。そして,公然実施発明1においては保存日時及びファイル名を示すことによってそのデー
タの内容をプレイヤに思い出させるための情報を提供するものであるところ,上記の保存日時及びファイル名に代えて,公然実施発明2で開示されるプレビュー画像を表示することが困難である事情は見当たらない。これに対し,原告は,公然実施発明2は,マップを選択した後にプレビュー画像を表示するものであって,マップのデータを選択する画面でサムネイルを表示するものではないと主張するが,公然実施発明2ではプレビュー画像を表示させる選択をした後に「CREATE

GAME」ボタンをクリッ

クすることにより当該マップの使用を決定するという選択をするのであるから,
マップのデータを選択する画面でサムネイルを表示する構成が開示されている。
したがって,本件発明1は,公然実施発明1及び2に基づいて当業者が容易に想到できたものであるから進歩性を欠く。同様に,本件発明2についても,
それらが属する発明のカテゴリーがプログラムとコンピュータであるという点において相違するものの,実質的な内容は同一であるから進歩性を欠く。
なお,原告は,本件各発明と公然実施発明1には被告らが主張する相違点
のほかにも相違点があると主張するが,公然実施発明1は,敵である他プレイヤからの攻撃に対して戦士や弓兵等のユニットを使用して街等を防御する対人対戦可能なゲームであるし,また,ロードゲームボタンがゲーム空間とともにゲーム進行画面に含まれているから,原告が指摘するような相違点はいずれも存在しない。

(原告の主張)
被告らは,
本件各発明ではサムネイルを含むテンプレート選択画面が表示
されるのに対し,
公然実施発明1ではサムネイルを含まず保存日時を伴うフ
ァイル名選択画面が表示されるという相違点があることを認めるところ,公然実施発明2はマップを選択した後にマップのプレビュー画像が表示され
るのであって,
データを選択する画面でその配置位置を示すマップのプレビ
ュー画像であるサムネイルを表示するものではないから,上記の相違点は公然実施発明2に開示されていた事項ではなく,当業者が容易に想到できたものではない。
また,公然実施発明1と本件各発明を比較すると,被告らが主張する相違点のほかにも以下の相違点があり,これらも当業者が容易に想到できたものではないから,
本件各発明は公然実施発明1によって進歩性を否定されない。
[相違点1]
ゲーム空間に配置されるゲーム媒体が,本件各発明では「少なくとも他プレイヤの攻撃から防御するためのゲーム媒体を含み得る」のに対し,公然実施発明1ではそのようなゲーム媒体を含み得るか否か不明である点。
[相違点2]
本件各発明では,
テンプレート選択画面を表示させるための所定のボタン
がゲーム空間とともにゲーム進行画面に含まれるのに対し,
公然実施発明1
では,
データ選択画面を表示させるためのボタンがゲーム空間とともにゲーム進行画面に含まれるのか不明である点。


構成要件1C及び2Dについてのサポート要件違反の有無(争点3-4)
(被告らの主張)
原告は,レイアウトエディタ画面に表示されるレイアウトの縮小画面をタップして有効化することをもって,構成要件1C及び2Dの「選択」に相当すると主張するところ,そのような解釈が正しいとすれば,本件各発明における「選択」とは,複数個存在するゲーム空間の中から一つのゲーム空間を選択して,ゲーム空間自体をテンプレートにすることを意味する。しかしながら,本件明細書には,複数存在するゲーム空間の中からどれか一つをゲーム空間単位で選択するという態様や,常にゲーム空間全体を選択して新たなレイアウトを作成するという態様は開示されておらず,本件明細
書の開示に基づき当業者がそのような行為を実施することができたという技術常識も示されていない。仮に,本件明細書における「任意の二点のタップにより,
当該二点を対頂点とする範囲311が選択される」
(段落
【003
7】
)との記載によって,ゲーム空間の全体をテンプレートとする態様が記載されていると理解しても,結局のところ,その態様はゲーム空間のうちどの部分を選択するかの決定権をプレイヤが有していることを必須の構成要素とするものだけを開示するにとどまる。
したがって,原告の解釈を前提とすれば,構成要件1C及び2Dはサポート要件(特許法36条6項1号)に違反し,無効である。
(原告の主張)
本件明細書の「任意の二点のタップにより,当該二点を対頂点とする範囲
311が選択される」との記載(段落【0037】
)で「任意の二点」とされ
ている以上,
その二点の選択には何ら制約がなく,
「任意の二点」
をゲーム空
間の左上および右下の点とすることによって「ゲーム空間の全体」となるのであるから,構成要件1C及び2Dは,本件明細書によって明確にサポートされている。

被告Supercell株式会社の特許権侵害行為への関与の有無(争点4)(原告の主張)
本件ゲームの公式サイトでは,単に「Supercell」という表示がなされているように,日本での宣伝及び広告等は単に「Supercell」の名称によって行われているから,被告Supercell株式会社は,被告ス
ーパーセルオーワイと共同して,
又は被告スーパーセルオーワイを幇助するこ
とにより,
日本における被告製品に関する特許権侵害行為に関与しているというべきである。
(被告らの主張)
否認ないし争う。被告Supercell株式会社は,被告製品の作成及び
配信を行っておらず,それを行う正当な権限や能力も有していない。本件プログラムを作成,配信等する行為は,全て被告スーパーセルオーワイが行っている。なお,被告製品に関する宣伝及び広告等も,全て被告スーパーセルオーワイが行っているが,
そのような行為はそもそも本件特許権を侵害する行為では
ない。
損害発生の有無及びその額(争点5)
(原告の主張)
被告らは,共同して,遅くとも本件特許権の設定登録日である平成28年6月17日から平成29年11月28日までの間,
本件特許権を侵害する行為を
行ったところ,原告は,上記侵害行為によって実施料相当額の損害を被っており,その額は少なくとも1億円を下らない(特許法102条3項)。

(被告らの主張)
否認する。なお,被告スーパーセルオーワイは本件プログラムについて平成30年1月25日にレイアウトエディタ機能を撤廃する仕様変更を行ったから,仮に,仕様変更前の本件プログラムが本件各発明の技術的範囲に属したとしても,
原告の損害賠償請求権が発生する期間は当該仕様変更が行われた日ま
でに限られるべきである。
第3当裁判所の判断
1本件各発明及びその意義
本件明細書の発明の詳細な説明には,以下の記載がある(甲2)


技術分野
「本発明は,コンピュータ,その制御方法,及びその制御プログラムに関
する。(段落【0001】



背景技術
「近年,サーバから通信ネットワークを介して携帯端末にゲームプログラムをインストールしてプレイするゲームが普及している。このようなゲーム
には,
複数のプレイヤが参加可能なもの
(所謂
「ソーシャルゲーム」があり,

プレイヤ同士が,対戦,協力のみならず,相互にコミュニケーション可能なものが知られている。(段落【0002】


「また,このようなゲームには,プレイヤがゲームプログラム上で用意された仮想的な空間
(以下
「ゲーム空間」
と称する)
内で街作りを行うもの
(所
謂「街作りゲーム」
)も知られている。街作りゲームでは,プレイヤは,自分
の好きな位置に様々な施設(例えば,家,道路,港,駅,空港,城,訓練所
等)を建設し,自分好みの街を作り上げていく。(段落【0003】」


発明が解決しようとする課題
「従来の街作りゲームでは,自分好みの街を作ることが目的であり,一度作った街を大きく作り直す必要はなかった。
一方,
近年の街作りゲームでは,
プレイヤが作った街並みに他のプレイヤが攻撃を加えるが,
その勝敗や優劣

においては,その街並み(防御の壁,攻撃対象となる建物,防御する兵士,武器等のアイテムの配置)が要素の一つとなっている。しかしながら,プレイヤにとっては,その街が発展するほど自分の街のアイテム(ゲーム媒体)が増えてしまうため,そのアイテムを個別にその配置,種類,レベル等を変更するのは非常に煩雑であった。また,その街並みを変更することが他のプ
レイヤからの攻撃に対してどのような効果があるかわかりづらかった。したがって,兵士や武器のように,配置,種類,レベル等の変更が容易な一部のアイテムのみを変更するにとどまってしまうプレイヤも少なくなかった。結果として,ゲームが進行するにつれてマンネリ化し,プレイヤに飽きられてしまうおそれがあった。(段落【0005】



「本発明は,このような課題を解決すべくなされたものであり,街作りゲームのユーザビリティを向上させ,
プレイヤをゲームに惹きつけ続けること
を可能とするコンピュータ,その制御方法,及びその制御プログラムを提供することを目的とする。(段落【0006】



課題を解決するための手段
「本発明に係るコンピュータの制御方法は,
ゲーム空間内に配置されたゲ
ーム媒体及びゲーム媒体の配置位置,
並びに一又は複数のゲーム媒体の配置
位置を規定するテンプレートを記憶する記憶部を備え,
プレイヤからの指示
に基づいてゲーム空間内にゲーム媒体を配置することによりゲームを進行させるコンピュータの制御方法であって,
プレイヤからの指示に基づいてテ
ンプレートがゲーム空間内の所定の範囲に適用された場合に,
コンピュータ
が,ゲーム空間内に配置されたゲーム媒体を,テンプレートにより規定されたゲーム媒体の配置位置に移動させることを含む。なお,コンピュータは,上記の手順を実行可能であればよく,例えば,携帯端末,据置端末,サーバ等である。(段落【0007】



「本発明に係るコンピュータの制御プログラムは,ゲーム空間内に配置されたゲーム媒体及びゲーム媒体の配置位置,
並びに一又は複数のゲーム媒体
の配置位置を規定するテンプレートを記憶する記憶部を備え,
プレイヤから
の指示に基づいてゲーム空間内にゲーム媒体を配置することによりゲームを進行させるコンピュータの制御プログラムであって,
プレイヤからの指示

に基づいてテンプレートがゲーム空間内の所定の範囲に適用された場合に,コンピュータに,
ゲーム空間内に配置されたゲーム媒体をテンプレートによ
り規定されたゲーム媒体の配置位置に移動させることを実行させる。(段落」
【0016】

「本発明に係るコンピュータは,プレイヤからの指示に基づいてゲーム空
間内にゲーム媒体を配置することによりゲームを進行させるコンピュータであって,ゲーム空間内に配置されたゲーム媒体及びゲーム媒体の配置位置,並びに一又は複数のゲーム媒体の配置位置を規定するテンプレートを記憶する記憶部と,
プレイヤからの指示に基づいてテンプレートをゲーム空間内
の所定の範囲に適用するテンプレート適用部とを備え,
テンプレートが適用

された場合に,テンプレート適用部は,ゲーム空間内に配置されたゲーム媒体をテンプレートにより規定されたゲーム媒体の配置位置に移動させる。」
(段落【0017】


発明の効果
「本発明に係るコンピュータ,
その制御方法,
及びその制御プログラムは,
テンプレートを用いてゲーム媒体の変更やゲーム媒体の配置を変更可能に
することにより,街作りゲームのユーザビリティを向上させ,プレイヤをゲームに惹きつけ続けることを可能とする。(段落【0018】


本件各発明の意義
前記

によれば,本件各発明の意義は,以下のとおりであると認められる。
近年,
サーバから通信ネットワークを介して携帯端末にゲームプログラムをインストールしてプレーするゲームが普及しているところ,そのようなゲームの中には複数のプレイヤが参加可能ないわゆるソーシャルゲームが存在し,その一類型としてプレイヤがゲームプログラム上で用意された仮想的な空間であるゲーム空間で街作りを行う街作りゲームがある。街作りゲームでは,プレイヤがゲーム空間内で自分の好きな位置に様々な施設を建設して自分好みの街
を作り上げたり,
その街に他のプレイヤが攻撃を加えたりするなどといった動
作が予定されていて,その街並み(防御の壁,攻撃対象となる建物,防御する兵士,武器等といったアイテムであるゲーム媒体の配置)がゲームの勝敗や優劣を決めるための要素の一つとなっている。しかしながら,街が発展するにつれて自分の街のゲーム媒体が増えると,それらのゲーム媒体を個別に配置し直
したり種類やレベル等を変更したりするのは煩雑になってくるなどして,配置等の変更が容易な一部のアイテムだけを変更するにとどまってしまうプレイヤも少なくなく,結果として,ゲームが進行するにつれてマンネリ化し,プレイヤに飽きられてしまうという課題があった。本件各発明は,ゲーム空間内の所定の範囲に配置された施設の種類や配置位置に基づいてその種類や配置位
置を規定するテンプレートを作成し,作成したテンプレートをゲーム空間内の所定の範囲に適用することによって,
ゲーム空間内の施設の配置をテンプレー
トに従って変更することなどによって街作りゲームの利便性を向上させてプレイヤをゲームに惹きつけ続けることを可能にする発明である。
2
ーム媒体及びその配置位置を前記テンプレートとする」との文言の充足性(構成要件1C及び2D)
)について
証拠
(甲4,
乙29)
及び弁論の全趣旨によれば,
以下の事実が認められる。

プレイヤが本件ゲームのインストールされた携帯電話端末等で本件ゲー
ムを立ち上げると,基本画面が表示される。基本画面には,当該プレイヤに固有の仮想空間である自分の村のほかレイアウトエディタのアイコンなどが表示される。

プレイヤは,本件ゲームにおいて,基本画面が表示されている状態で,壁や大砲等の防衛設備や,金山,エリクサーポンプ等の資源に関わる施設等を調達し,
これを基本画面に表示されている自分の村の中のプレイヤが定めた場所に配置したり,配置した施設を適宜移動したりすることができる。本件ゲームは,上記の調達等を行い,自分の村を攻撃してきた他のプレイヤを防
御設備で防御したり,他のプレイヤの村を攻撃したりしながら進展する。イ
プレイヤが基本画面のレイアウトエディタのアイコンをタップするとレイアウトエディタ画面が表示される。レイアウトエディタ画面には,3つのレイアウトに対応する3つの縮小画面と,
「レイアウトを編集」「レイアウ

トをコピー」及び「有効にする」というアイコンが表示される。また,「自分

の村」「クラン対戦の拠点」というタブがある。


プレイヤは,本件ゲームのレイアウトエディタ機能を利用することによって,施設の種類と配置位置を定めるレイアウトを作成して,これを保存し,保存したレイアウトを編集して更に保存することができる。プレイヤが,保
存したレイアウトから,特定の一つのレイアウトを有効化することによって,自分の村において,
当該レイアウトに従った施設の配置がされることになる。
すなわち,レイアウトエディタ画面において「自分の村」のタブが選択されている状態において,三つの縮小画面が表示される。そのうち一つは,プレイヤの現在の自分の村全体の施設の配置が示されているもので,使用中と表示されている。プレイヤは,その縮小画面を選択して「レイアウトをコピー」とのアイコンをタップし,コピー先として他の縮小画面のうちの一つを
選び,他の縮小画面にレイアウトが保存されている場合,
「レイアウトを上
書きしますか?」
というポップアップで
「OK」
をタップすることによって,
そこに,現在,プレイヤが自分の村で使用しているレイアウトを保存することができる。なお,プレイヤは,
「なし」と表示されている縮小画面がある場
合,それを選択して,施設が除去された状態から自分の村に設置可能な施設
を配置し,そのレイアウトを保存することもできる。
プレイヤは,保存されたレイアウトについて,当該縮小画面を選択して,「レイアウトを編集」
のアイコンをタップし,
「村の編集モード」
とすること
によって,レイアウトにおける施設の配置を変更することができる。レイアウトの編集の際には,
新たな施設を調達するなどの本件ゲームの進行に影響

を与える行為をすることはできない。
プレイヤが,レイアウトエディタ画面において,縮小画面の一つを選択して「有効にする」というアイコンをタップすることによって,自分の村において,当該レイアウトに従った施設の配置がされる。その際,プレイヤのレベル,
金山等から取得した資源の保有量といったゲームの進行状況に変化は
生じない。

構成要件1C及び2Dは「ゲーム媒体の配置位置を規定する,他プレイヤの攻撃に対する防御に用いるテンプレートを作成することであって,プレイヤによって選択されたゲーム空間の全体に配置済のゲーム媒体及びその配
置位置を前記テンプレートとする」というものである。
これらの構成要件においては,
「プレイヤによって選択されたゲーム空間
の全体」
に配置済みのゲーム媒体及びその配置位置をテンプレートとすることが定められていて,プレイヤが「ゲーム空間の全体」を選択することとされているが,
「ゲーム空間の全体」
に関して,
プレイヤによってどのような選
択がされるかについては,特許請求の範囲には記載がない。

本件明細書には,
前記1

の記載のほか,
【発明を実施するための形態】

して,以下の記載がある。
「本実施形態では,プレイヤは,ゲーム空間内で街作りを行う。プレイヤは,
ゲーム空間内にゲーム媒体の一例である様々な施設を配置することができる。また,プレイヤは,ゲーム空間内の所定の範囲について,その範囲内に配置された施設の種類や施設の配置位置に基づいて,
施設の種類
や施設の配置位置を規定するテンプレートを作成することもできる。さらに,プレイヤは,作成したテンプレートを,ゲーム空間内の所定の範囲に適用することもできる。テンプレートが適用されると,ゲーム空間内に配置された施設は,
テンプレートにより規定された当該施設に自動的に変更

されたり,
規定された配置位置に自動的に移動される。段落


【0021】

「図3(b)には,図3(a)に示されるゲーム進行画面300でテンプレートの作成を指示したときに表示される範囲選択画面310が示されている。範囲選択画面310にはゲーム空間301が表示されており,例えば,任意の二点のタップにより,当該二点を対頂点とする範囲311
が選択される。また,範囲選択画面310下部には「決定」ボタン312が表示されており,当該ボタンの押下により,選択された範囲311についてテンプレート作成の実行が指示される。(段落【0037】


「図3(d)には,図3(c)に示されるテンプレート選択画面320でテンプレートを選択したときに表示されるテンプレート表示画面33
0が示されている。テンプレート表示画面330左部には,テンプレートをゲーム空間内の所定の範囲(例えば,中央周辺)に適用したプレビュー画像331が表示されている。また,テンプレート表示画面330右部には,
テンプレートにより配置位置が規定された各施設の名称及び数332が一覧表示されている。
さらに,
テンプレート表示画面330下部には
「決
定」ボタン333が表示されており,当該ボタンの押下により,テンプレートが決定される。(段落【0039】


「図3(e)には,図3(d)に示されるテンプレート表示画面330でテンプレートを決定したときに表示される範囲選択画面340が示されている。範囲選択画面340にはゲーム空間301が表示されており,例えば,任意の二点のタップにより,当該二点を対頂点とする範囲341
が選択される。また,範囲選択画面340下部には「決定」ボタン342が表示されており,当該ボタンの押下により,選択された範囲341についてテンプレート適用の実行が指示される。(段落【0040】


「図4は,テンプレートの作成及び適用の概念を示す図である。400は,ゲーム空間を示している。ゲーム空間400内には,九つの施設が配
置されている。
即ち,
施設
「●」
が四つ,
施設
「▲」
が三つ,
及び施設
「■」
が二つ配置されている。ゲーム空間400内の範囲401について,テンプレートを作成したとする。410は,作成したテンプレートを示している。テンプレート410により,種類「○」の施設「●」が(1,1)及び(1,2)に,種類「△」の施設「▲」が(1,3)(2,1),
,及び(2,

2)に,種類「□」の施設「■」が(2,3)に配置されることが規定されている。(段落【0041】【0042】【0043】




「ゲーム空間420内の範囲421について,テンプレート410を適用したとする。ゲーム空間420内に配置された施設の各種類の数は,テンプレート410により配置位置が規定された施設の各種類の数と同じ
である。したがって,ゲーム空間420内に配置されたすべての施設が,テンプレート410により規定された当該施設の配置位置に移動される。実際には,範囲421外に配置された施設422~425が,範囲421内の当該施設の配置位置に移動される。420’は,施設422~425が移動された後のゲーム空間420を示している。(段落【0045】」

「プレイヤにより操作部23を介して,範囲が選択され,テンプレート作成の実行が指示された場合に,テンプレート作成部252は,テンプレートを作成する。即ち,テンプレート作成部252は,選択された範囲を示す座標をキーとして,
端末記憶部22に記憶されている施設管理テーブ
ルを参照し,
選択された範囲内に配置された各施設の種類ID及びゲーム
空間内での配置位置を抽出する。また,テンプレート作成部252は,抽
出したゲーム空間内での配置位置を,
テンプレート内での配置位置に変換
する。さらに,テンプレート作成部252は,選択された範囲について,サムネイル画像データを作成し,端末記憶部22に格納する。そして,テンプレート作成部252は,
格納したサムネイル画像データのファイル名,
抽出した各施設の種類ID及びテンプレート内での配置位置等を,新たに

採番したテンプレートIDを付与した上で,
端末記憶部22に記憶されて
いるテンプレート管理テーブルに格納する。(段落【0060】


「プレイヤにより操作部23を介して,範囲が選択され,テンプレート適用の実行が指示された場合に,テンプレート適用部253は,テンプレートを適用する。即ち,テンプレート適用部253は,端末記憶部22に
記憶されている施設管理テーブルを参照し,各施設のID,種類ID,及びゲーム空間内での配置位置を抽出する。また,テンプレート適用部253は,抽出した施設の各種類の数を計数する。同様に,テンプレート適用部253は,選択されたテンプレートのIDをキーとして,端末記憶部22に記憶されているテンプレート管理テーブルを参照し,
対応するテンプ

レートの各施設の種類ID及びテンプレート内での配置位置を抽出する。また,テンプレート適用部253は,抽出した施設の各種類の数を計数する。さらに,テンプレート適用部253は,抽出したテンプレート内での配置位置を,選択された範囲を示す座標に基づいて,ゲーム空間内での配置位置に変換する。そして,テンプレート適用部253は,施設の各種類について,ゲーム空間内の当該種類の施設の数と,テンプレート内の当該種類の施設の数とを比較する。両者が同じである場合に,テンプレート適用部253は,ゲーム空間内の当該種類の施設を,テンプレート内の当該種類の施設の配置位置に移動させる。
即ち,
テンプレート適用部253は,
ゲーム空間内の当該種類の施設のIDをキーとして,
端末記憶部22に記
憶されている施設管理テーブルを参照し,
対応する施設のゲーム空間内で

の配置位置として,
テンプレート内の当該種類の施設の配置位置を格納す
る。一方,
前者が後者よりも多い場合に,
テンプレート適用部253は,
ゲーム空間内の当該種類の施設のうちのテンプレート内の当該種類の施設の配置位置への移動距離が最小となる施設を,
当該施設の配置位置に移
動させる。即ち,テンプレート適用部253は,テンプレート内の当該種
類の施設の各配置位置について,
ゲーム空間内の当該種類の施設のうちの
当該配置位置への移動距離が最小となる施設を特定する。そして,テンプレート適用部253は,特定した施設のIDをキーとして,端末記憶部22に記憶されている施設管理テーブルを参照し,
対応する施設のゲーム空
間内での配置位置として,当該配置位置を格納する。一方,前者が後者よ
りも少ない場合に,テンプレート適用部253は,ゲーム空間内の当該種類の施設を,
テンプレート内の当該種類の施設の配置位置のうちの移動距
離が最小となる配置位置に移動させる。即ち,テンプレート適用部253は,ゲーム空間内の当該種類の各施設について,テンプレート内の当該種類の施設の配置位置のうちの移動距離が最小となる配置位置を特定する。
そして,テンプレート適用部253は,当該施設のIDをキーとして,端末記憶部22に記憶されている施設管理テーブルを参照し,
対応する施設
のゲーム空間内での配置位置として,
特定した配置位置を格納する。
なお,
移動距離が最小となる施設に限らず,
移動対象となる施設や移動対象とな
る施設を含む範囲をプレイヤが指定してもよい。また,予め移動させない施設や移動させない施設を含む範囲をプレイヤが指定してもよい。(段落」
【0068】



原告は,本件特許の出願に際し,特許庁審査官から本件各発明は特許法29条2項の規定により特許を受けることができず,当該出願は同法36条6項2号に規定する要件を満たしていないなどとされたことを受け,「プレイ
ヤによって選択されたゲーム空間の全体に配置済のゲーム媒体及びその配
置位置を前記テンプレートとすること」という文言を含む請求項2を新たに追加等する特許請求の範囲の補正をした上で,平成27年12月7日,特許庁審査官に対して意見書(以下「本件意見書」という。
)を提出した。
(甲2
2)
本件意見書には,「プレイヤによって選択されたゲーム空間の全体に」と「

の文言は,例えば段落0037の「任意の二点のタップにより,当該二点を対頂点とする範囲311が選択される」
との記載において,
「任意の二点」

ゲーム空間の左上の点および右下の点とすれば「ゲーム空間の全体」となることから,
当初明細書の記載から自明な事項と言えます。との記載がある。

前記

のとおり,
本件各発明は,
街作りゲームの利便性を向上させること

を目的として,
ゲーム空間内の所定の範囲に配置された施設の配置を規定する
テンプレートを作成し,
これをゲーム空間内の所定の範囲に適用することによ
って,
ゲーム空間内の施設の配置をテンプレートに従って変更するというものである。
そして,前記

のとおり,本件明細書には,課題を解決するための手段と

して,
プレイヤからの指示に基づいてゲーム空間内の所定の範囲についてテンプレートが作成されることがあることや,
プレイヤからの指示に基づいてテン
プレートがゲーム空間内の所定の範囲に適用されることがあることが記載され
して,プレイヤがテンプレートの作成を指示したとき,
「範囲選択画面」が表
示され,そこにおいては,ゲーム空間の一部について,テンプレートが作成される範囲が表示されていること,
テンプレートが作成される範囲について,

として,
プレイヤが任意の2点をタップして,
当該2点を対頂点とすることで
定められることがあること,
ゲーム空間の一部に対して,
そのテンプレートが
適用されることが記載されている。他方,本件明細書には,
「ゲーム空間」の
選択に関して,上記内容とは異なる内容の記載はない。

さらに,

原告は,本件意見書において,補正により加え

られた「プレイヤによって選択されたゲーム空間の全体」との記載について,プレイヤがゲーム空間のうちのテンプレートが作成される範囲を指定するという段落【0037】の記載を挙げた上で,プレイヤがゲーム空間の左上の点および右下の点をタップすることで,
ゲーム空間の全部の範囲を選択すること
ができることを意味する旨述べて,
その記載が当初明細書から自明であると述
べている。
以上によれば,
本件明細書には,
本件各発明のテンプレートはゲーム空間内
の所定の範囲について作成,
適用されるもので,
その範囲についてプレイヤが
定めることが記載されており,
原告もそのことを前提として,
プレイヤがゲー

ム空間内の全部の範囲をテンプレートの範囲とすると定めることによりゲーム空間の全体が選択されることになるという意見を述べたといえる。上記の本件明細書及び本件意見書の記載を参酌すれば,
構成要件1C及び2
Dの
「プレイヤによって選択されたゲーム空間の全体」
における
「選択」
とは,
テンプレートの作成について,
プレイヤがテンプレートとするゲーム空間内の

一定の範囲を選択することを前提として,
テンプレートを作成する際に,
プレ
イヤがゲーム空間内の全部の範囲を選択することを意味するものと解釈するのが相当である。
これに対し,原告は,構成要件1C及び2Dにおける「ゲーム空間の全体」とは文字通りゲーム空間全体を意味するのであってゲーム空間のうちどの部分を選択するかの決定権をプレイヤが有していることを必須の構成要素とはするものではないと主張し,また,本件明細書の第1及び第2実施形態は,テンプレートの作成,適用の具体例を示したにすぎないなどと主張する。しかし,
「ゲーム空間の全体」
がプレイヤによって選択されるとしても,
プレ
イヤによってどのような態様による選択がされるかについては,特許請求の範囲の記載からは明らかではない。本件明細書には,テンプレートの作成に当た
って,
プレイヤがゲーム空間内の一定の範囲を選択することは記載されているが,それ以外の選択に関する構成については何ら記載も示唆もないから,前記と異なる態様でのプレイヤによる選択について,本件明細書に記載や示唆があるとはいえないし,原出願日の当業者の技術常識に照らして明らかであるともいえない。また,原告は,本件特許の出願経過(甲22)において,プレイ
ヤがタップする任意の2点をゲーム空間の左上及び右下の点とすれば「ゲーム空間の全体」になるなどと説明しており,この説明はプレイヤにおいてゲーム空間内の一定の範囲を選択することを前提としているものといえ,前記
の解

釈に沿うものといえる。原告の主張は採用することができない。
で認定のとおり,本件ゲームは,プレイヤが基本画面においてレイアウトエディタのアイコンをタップしてレイアウトエディタ画面を表示させ,レイアウトに対応する縮小画面を選択,
保存することによって新たなレイアウト
を作成するというものである。そうすると,そこにはプレイヤがゲーム空間内の一定の範囲を選択するという機能や動作は全く存在していない。したがって,本件プログラム及び本件携帯端末は,いずれも構成要件1C及
び2Dを充足しない。
3以上によれば,本件プログラム及び本件携帯端末については,他の構成要件の充足性を判断するまでもなく,
本件各発明の技術的範囲に属すると認めることは
できない。
第4結論
よって,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第46部

裁判長裁判官

柴田義
裁判官

安岡美
裁判官

佐藤雅明香子浩
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