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特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟
事件番号平成30(ネ)10044
事件名特許権侵害差止等請求控訴事件
裁判年月日平成30年9月26日
法廷名知的財産高等裁判所
原審裁判所名東京地方裁判所
原審事件番号平成28(ワ)27057
裁判要旨特 判決年月日 平成30年9月26日 担
許 当 知財高裁第4部
権 部
事 件 番 号 平成30年(ネ)第10044号
○ 発明の名称を「光学情報読取装置 」とする 特許に係る特許権侵害 訴訟 事件について
,特許に公然実施発明を主引用例とする 進歩性欠如 の無効理由 があるとして,被控訴
人の無効の抗弁を認め,控訴人の請求を棄却した原判決を維持した事例
○ 控訴審における訂正の再抗弁 の主張を時機に後れた攻撃防御方法に当たる ものとし
て却下した事例
(事件類型)特許権侵害行為差止等 (結論)控訴棄却
(関連条文)特許法29条2項,民事訴訟法297条,157条1項
(関連する権利番号等)特許第3823487号
判 決 要 旨
1 本件は,発明の名称を「光学情報読取装置」とする 特許(特許第382348
7 号 。以 下「 本 件 特 許 」と い う 。 )に 係 る 特 許 権 ( 以 下 「 本 件 特 許 権 」と い う 。)
を 有 し て い た 控 訴 人 が ,被 控 訴 人 に よ る 被 告 製 品 の 販 売 等 が 本 件 特 許 権 の 侵 害 に
当たると 主張し て,被控訴人 に対し ,本 件特許権 侵害の 不法 行為に基 づく損 害賠
償を求めた事案である。
2 原判決(東京地方裁判所平成28年(ワ)第27057号・平成30年4月1
3 日 判 決 )は ,本 件 特 許 出 願 前 に 日 本 国 内 で 販 売 さ れ て い た 2 次 元 バ ー コ ー ド リ
ーダー「IT4400」により公然実施されていた発明(以下「IT4400に
係る発明 」と いう 。)及び 周知技 術に基 づいて当 業者が 特許 発明を容 易に想 到し
得たもの である から ,本件 特許は ,進 歩 性欠如の 無効理 由が あり,特許無 効審判
に よ り 無 効 に す べ き も の と 認 め ら れ る か ら( 以 下「 本 件 無 効 の 抗 弁 」と い う 。),
控訴人の 請求は 理由 がないと して ,これ を棄却し た。控訴人 は,原 判決を 不服と
して本件控訴を提起した。
3 本判 決は ,本件 無効の抗 弁は理 由が あるもの と 認め ,ま た,控 訴人が 控訴審 で
提出した 本件無 効の 抗弁に対 する訂 正の 再抗弁(以下「本 件 訂正の再 抗弁 」とい
う。)の主張は,時機に後れた攻撃防御方法に当たるとして,第1回口頭弁論期
日において,これを却下し,本件控訴を棄却した。その理由の要旨は,次のとお
りである。
⑴ 本件無効の抗弁について
IT4400に係る発明に接した当業者は,絞りが結像レンズの間に配置さ
れているIT4400に係る発明においては,受光素子ごとにマイクロレンズ
(集光レンズ)が設けられた固体撮像素子(CCDセンサ)の周辺部における
-1-
受光素子に有効に入射しなくなる結果,周辺部における受光素子の光量が光学
的センサの中心部における光量に比して不足するという周知の問題が生じ得る
ことを認識し,このような問題を解決するために,「絞り」を複数のレンズで
構成される結合レンズの全てのレンズよりも被写体側に配置するという周知の
構成を採用する動機付けがあったものと認められる。
したがって,当業者は,IT4400に係る発明及び周知技術に基づいて,
同発明において,「読み取り対象からの反射光が絞りを通過した後に結像レン
ズに入射するよう,絞りを配置することによって,光学的センサから射出瞳位
置 ま で の 距 離 を 相 対 的 に 長 く 設 定 」す る 構 成( 相 違 点 1 に 係 る 特 許 発 明 の 構 成 )
とすることを容易に想到することができたものと認められる。
また,当業者は,IT4400に係る発明において相違点2に係る特許発明
の構成を適用することを容易に想到することができたものと認められる。
したがって,本件発明はIT4400に係る発明及び周知技術に基づいて当
業者が容易に発明をすることができたものと認められる。
⑵ 本件訂正の再抗弁について
① 控訴人 は,原審にお いて ,本件 無効の抗 弁が主 張さ れ,別 件侵害 訴訟及 び
別 件 無 効 審 判 に お い て も ,本 件 無 効 の 抗 弁 と 同 じ 無 効 の 抗 弁 又 は 無 効 理 由 が 主
張 さ れ ,さ ら に ,別 件 侵 害 訴 訟 に お い て 上 記 無 効 の 抗 弁 を 容 れ た 請 求 棄 却 判 決
の 言 渡 し が さ れ た が ,原 審 口 頭 弁 論 終 結 時 ま で に 本 件 無 効 の 抗 弁 に 対 す る 訂 正
の 再 抗 弁 を 主 張 し な か っ た こ と ,② そ の 後 ,本 件 無 効 の 抗 弁 を 容 れ た 原 判 決 の
言 渡 し が さ れ た が ,控 訴 人 は ,控 訴 理 由 書 提 出 期 限 に 提 出 し た 控 訴 理 由 書 に お
い て は 本 件 無 効 の 抗 弁 に 対 す る 訂 正 の 再 抗 弁 を 主 張 せ ず ,そ の 後 に 被 控 訴 人 か
ら 控 訴 理 由 書 に 対 す る 反 論 の 準 備 書 面 が 提 出 さ れ た 後 ,当 審 第 1 回 口 頭 弁 論 期
日 の 4 日 前 に な っ て 初 め て ,本 件 訂 正 の 再 抗 弁 の 主 張 を 記 載 し た 準 備 書 面 を 提
出したこ とが認 めら れる。一方で ,控 訴 人におい て,上記時 期まで本 件訂正 の
再 抗 弁 を 主 張 し な か っ た こ と に つ い て ,や む を 得 な い と い え る だ け の 特 段 の 事
情はうかがわれない。
したがって,本件訂正の再抗弁の主張は,控訴人の少なくとも重大な過失に
より時機に後れて提出された攻撃防御方法であるものというべきであり,これ
により訴訟の完結を遅延させることとなることは明らかであるから,民事訴訟
法297条において準用する157条1項に基づき,これを却下した。
-2-
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平成30年9月26日判決言渡
平成30年(ネ)第10044号

特許権侵害差止等請求控訴事件

(原審・東京地方裁判所平成28年(ワ)第27057号)
口頭弁論終結日

平成30年8月8日
判控決訴人
株式会社デンソーウェーブ

訴訟代理人弁護士

櫻林正己
訴訟代理人弁理士

碓氷裕彦被
ゼブラ・テクノロジーズ・ジャパン株式会社

控訴人
訴訟代理人弁護士

今井浩人同柿内瑞絵同吉村充弘主文1
本件控訴を棄却する

2
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由

第1控訴の趣旨
1
原判決を取り消す。

2
被控訴人は,控訴人に対し,2億円及びこれに対する平成28年8月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2事案の概要(略称は,特に断りのない限り,原判決に従う。)1
事案の要旨
本件は,発明の名称を「光学情報読取装置」とする特許(特許第3823487号。請求項の数2。以下「本件特許」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)を有していた控訴人が,原判決別紙被告製品目録記載の各製品(以下「被告製品」という。)が本件特許の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)の技術的範囲に属し,被控訴人による被告製品の販売等が本件特許権の侵害に当たる旨主張して,被控訴人に対し,本件特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償7億2375万円の一部請求として2億円及びこれに対する不法行為の後である平成28年8月26日(訴状送達日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
原判決は,本件特許の特許出願(以下「本件特許出願」という。)前に日本国内で販売されていた2次元バーコードリーダー「IT4400」により公然実施されていた発明及び周知技術に基づいて当業者が本件発明を容易に想到し得たものであるから,本件発明に係る本件特許は,進歩性欠如の無効理由があり,特許無効審判により無効にすべきものと認められるから,その余の点について判断するまでもなく,控訴人の請求は,理由がないとして,これを棄却した。
控訴人は,原判決を不服として本件控訴を提起した。
2
前提事実
以下のとおり訂正するほか,原判決「事実及び理由」の第2の2記載のとおりであるから,これを引用する。


原判決2頁25行目から26行目にかけての
「本件特許の特許公報
(甲2)
記載の明細書及び図面を併せて「本件明細書」という。」を「本件特許出願の願書に添付した明細書を,図面も含めて「本件明細書」(甲2,4の2,5)という。」と改める。



原判決3頁8行目及び4頁4行目の各「周波数分析比」を「周波数成分比」とそれぞれ改める。
3
争点
原判決「事実及び理由」の第2の3記載のとおりであるから,これを引用する。

第3争点に関する当事者の主張
以下のとおり訂正し,
当審における当事者の主張を付加するほか,
原判決
「事
実及び理由」の第3記載のとおりであるから,これを引用する。
1
原判決の訂正


原判決6頁26行目の「周波数分析比」を「周波数成分比」と改める。


原判決11頁4行目の「構成要件F」を「構成要件D」と改める。
2
当審における当事者の主張(争点2-2(2次元コードリーダー(IT4400)を主引用例とする進歩性欠如の有無)に関するもの)


控訴人の主張

公然実施の判断の誤り
原判決は,本件特許出願前に,アイニックス社がウェルチアレン社から
輸入し,日本国内で販売していた「IT4400」の構造は,被控訴人が平成29年3月に購入し,分解・調査した被告購入製品(1997年7月製造の「IT4400HD-13」)の構造と同一であるとして,受光素子ごとにオンチップマイクロレンズ(集光レンズ)を設置したソニー社製のCCDイメージセンサ「ICX084AL」が組み込まれた「IT4400」により実施された発明(以下「IT4400に係る発明」という。)は,本件特許出願前に公然実施されていた旨判断した。
しかしながら,被告購入製品は,米国から輸入されたものであり,そもそも米国でいつ販売されたのか不明である上,アイニックス社が本件特許出願前に日本国内で実際に販売していたIT4400は現存していないため,本件特許出願前に日本国内で販売されていたIT4400と被告購入製品との同一性を検証することができない。
したがって,IT4400に係る発明が本件特許出願前に公然実施されていたものと認めることはできないから,原判決の上記判断は誤りである。イ
相違点の容易想到性の判断の誤り
原判決は,本件発明とIT4400に係る発明との間には,下記のとおりの一致点,相違点1及び2があると認定した上で,相違点1及び2は,当業者がIT4400に係る発明に本件特許出願当時の周知技術を組み合わせることにより容易に想到し得た旨判断したが,以下のとおり誤りである。

(一致点)
複数のレンズで構成され,読み取り対象からの反射光を所定の読取装置に結像させる結像レンズと,前記読み取り対象の画像を受光するために前記読取位置に配置され,その受光した光の強さに応じた電気信号を出力する複数の受光素子が2次元的に配列されるとともに,当該受光素子ごとに集光レンズが設けられた光学的センサと,当該光学的センサへの前記反射光の通過を制限する絞りとを備える光学情報読取装置である点
(相違点1)
本件発明は,「読み取り対象からの反射光が絞りを通過した後に結像レンズに入射するよう,絞りを配置することによって,光学的センサから射出瞳位置までの距離を相対的に長く設定」しているのに対し,IT4400では,絞りは,結像レンズの間に配置されている点
(相違点2)
本件発明は,「光学的センサの中心部に位置する受光素子からの出力に対する光学的センサの周辺部に位置する受光素子からの出力の比が所定値以上となるように,射出瞳位置を設定して,露光時間などの調整で,中心部においても周辺部においても読取が可能となるようにしたことを特徴とする」のに対し,IT4400は,上記出力の比が所定値以上となるよう射出瞳位置を設定し,露光時間などの調整で中心部においても周辺部においても読取を可能にするものの,本件発明のような絞りの配置(相違点1)手段により,上記を実現しているものではない点
(ア)相違点1について
原判決は,①光学的センサの周辺部に位置する受光素子に入射する光束の光量が減少するのを防止するため,「読み取り対象からの反射光が絞りを通過した後に結像レンズに入射するよう,絞りを配置することによって,光学的センサから射出瞳位置までの距離を相対的に長く設定」する構成とすることは,本件特許出願当時,ビデオカメラ等の分野において周知であったこと(乙9ないし12),②ビデオカメラ等と2次元バーコードリーダーは,集光レンズ付きCCDエリアセンサを通常の目的で使用する限りは,光学的センサの周辺部に位置する受光素子に入射する光束の光量が減少することにより光学素子に入射する光束の光量が低下して検出感度が低下するという課題は共通しており,当業者であれば,2次元バーコードリーダーにおける同課題の解決のため,光学系の近接した技術分野であるスチルカメラ,デジタルカメラ,ビデオカメラ等の技術を適用することについての動機付けを得ることは容易であることからすると,当業者が,IT4400に係る発明にデジタルカメラ等の光学系に関する上記①の周知技術を組み合わせることにより,相違点1に係る構成を想到することは容易であった旨判断した。
しかしながら,上記①の技術は,スチルビデオカメラ装置ないしビデオカメラ装置に関するものであって,2次元コードリーダに関するものではないし,また,本件特許出願当時,マイクロレンズ付きCCDを2次元コードリーダに用いたときに,光学系の軸の長さの影響を受けて周辺部の集光率が低下し,周辺部の読取性能が落ち,コードの読取りに影響が生じるという2次元コードリーダにおける課題は,当業者に認識されていない「新規な課題」であったものである。原判決が挙げる乙9ないし12は,いずれも2次元コードリーダでの採用を念頭に置いていないビデオカメラでの技術を開示しているにすぎない。
そして,ビデオカメラ等の技術と2次元コードリーダの技術分野とでは,画像認識の仕組み,光学系の設計思想が相違し,CCDが画像認識をした後の画像データの処理も全く異なるから,両者が共に同じCCDを用いて構成されていたとしても,技術分野の共通性に直結するものではない。すなわち,画像認識の仕組みの点では,ビデオカメラ装置等では,全体の像がはっきりと映ることが必須事項として求められるのに対し,2次元コードリーダでは,必ずしもシャープな像は必要ではなく,しかも,2次元コードは,明るいか暗いかの「0」,「1」で判断するバイナリーコードであるという特性から,「0」,「1」の区別が必要であり,その意味での像の明るさがセンサ中心部とセンサ周辺部とで大きく変わらないことが求められる。光学系の設計思想の点では,ビデオカメラ装置では,像がはっきり映るということは,「過焦点距離」の半分より遠くに位置する像を撮像すること,「錯乱円直径」が小さいことを意味するのに対し,2次元コードリーダでは,レンズや絞りの設計は過焦点距離の半分以内に2次元コードが存在することを前提に行い,必ずしもシャープな像は必要ではなく,それ相当にピンボケの像でも構わないため,「錯乱円直径」をビデオカメラ装置よりも大きく設定することができる。画像データの処理の点では,2次元コードリーダでは,タイミングパターンを認識して得られる座標の中における明るさで2次元コードが「0」か「1」か識別するのに対し,ビデオカメラ装置では,2次元コードのような座標は存在しない。
そうすると,「IT4400」に接した当業者において,2次元コードリーダにおける上記課題を認識することはできなかったのみならず,異なる技術分野のビデオカメラ装置についての上記①の技術を適用すれば上記課題を解決できるものと認識することもできなかったから,IT4400に係る発明に上記①の技術を組み合わせる動機付けはない。したがって,原判決の上記判断は誤りである。
(イ)相違点2について
原判決は,相違点2に係る本件発明の構成の「所定値」とは,中心部と周辺部の出力比のほか,照射光の光量,露光時間などの調整等の結果として光学センサの中心部と周辺部のいずれでも適切な読取りができるようになることを意味するにすぎないと解されること,露光時間などの調整は本件特許出願時の周知技術であったこと(乙5,13,23)からすると,相違点1に係る本件発明の構成を想到することが容易である以上,「光学的センサの中心部に位置する受光素子からの出力に対する光学的センサの周辺部に位置する受光素子からの出力の比が所定値以上となるように,射出瞳位置を設定して,露光時間などの調整で,中心部においても周辺部においても読取が可能となるようにすること」(相違点2に係る本件発明の構成)
は当業者にとって容易であった旨判断した。
しかしながら,本件発明の射出瞳位置の設定(相違点2に係る本件発明の構成)は,相違点1に係る本件発明の絞りの配置の構成を採用したからといって,当然得られるものではなく,同構成を前提とした上で,更に2次元コードリーダとして適切に機能できるよう,同構成とは別に採用する構成である。
前記(ア)のとおり,マイクロレンズ付きCCDを2次元コードリーダに用いたときに,光学系の軸の長さの影響を受けて周辺部の集光率が低下し,周辺部の読取性能が落ち,コードの読取りに影響が生じるという2次元コードリーダにおける課題は,当業者に認識されていない「新規な課題」であり,また,本件発明の「所定値」の構成については,公知文献に開示はない。
そうすると,IT4400に接した当業者においては,露光時間の調整が周知であるとしても,相違点2に係る本件発明の構成を導出し,これをIT4400に係る発明に適用することを容易に推考できるものではないから,原判決の上記判断は誤りである。

小括
以上によれば,本件特許は進歩性欠如の無効理由があるとの原判決の判断は誤りである。



被控訴人の主張
原判決の判断に誤りはなく,控訴人の主張はいずれも理由がない。
第4当裁判所の判断
当裁判所も,本件発明は本件特許出願前に公然実施されていたIT4400に係る発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められ,本件発明に係る本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものであるから,
控訴人の請求は理由がないものと判断する。
その理由は,
以下のとおりである。
1
本件発明の内容
以下のとおり訂正するほか,原判決「事実及び理由」の第4の1記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)原判決29頁3行目から22行目までを次のとおり改める。「(1)本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載は,次のとおりである(甲3,4の2,5)。
【請求項1】
複数のレンズで構成され,読み取り対象からの反射光を所定の読取位置に結像させる結像レンズと,
前記読み取り対象の画像を受光するために前記読取位置に配置され,その受光した光の強さに応じた電気信号を出力する複数の受光素子が2次元的に配列されると共に,当該受光素子毎に集光レンズが設けられた光学的センサと,
該光学的センサへの前記反射光の通過を制限する絞りと,
前記光学的センサからの出力信号を増幅して,閾値に基づいて2値化し,2値化された信号の中から所定の周波数成分比を検出し,検出結果を出力するカメラ部制御装置と,
を備える光学情報読取装置において,
前記読み取り対象からの反射光が前記絞りを通過した後で前記結像レンズに入射するよう,前記絞りを配置することによって,前記光学的センサから射出瞳位置までの距離を相対的に長く設定し,
前記光学的センサの中心部に位置する受光素子からの出力に対する前記光学的センサの周辺部に位置する受光素子からの出力の比が所定値以上となるように,
前記射出瞳位置を設定して,
露光時間などの調整で,
中心部においても周辺部においても読取が可能となるようにしたことを特徴とする光学情報読取装置。
(2)本件明細書(甲2,4の2,5)の「発明の詳細な説明」には,次のような記載がある(下記記載中に引用する「図3,図5及び図6」については別紙1を参照)。

発明の属する技術分野
「本発明は,2次元コードなどの読み取り対象に光を照射し,その
反射光から読み取り対象の画像を読み取る光学的読取装置に関する。」(段落【0001】)

従来の技術
「従来,例えば2次元コードラベルなどの読み取り対象に光を照射し,2次元コードラベルからの反射光を受光して2次元コードラベルの画像データである2次元コードデータを読み取る装置(2次元コードリーダ)が知られている。この2次元コードリーダでは,2次元コードからの反射光を結像レンズによって所定の読取位置に結像させ,その読取位置に配置された例えばCCDエリアセンサなどの光学的センサによって2次元コードデータを読み取るようにしていた。なお,結像レンズは通常複数枚のレンズが組にされた組レンズとして構成されており,その中心付近に絞りが配置されている。」(段落【0002】)
「ところで,例えばCCDエリアセンサなどの光学的センサでは,受光した光の強さに応じた電気信号を出力する複数の受光素子が2次元的に配列されている。そして,感度向上のため,例えば図5に示すように,受光素子41a毎に集光用のマイクロレンズ(集光レンズと称す)41bが設けられたCCDエリアセンサ41もある。これは,図5(a)に示すように,受光素子41aに対して垂直に入射する光が集光レンズ41bによって集光されることで見かけ上の開口面積を拡大し,感度を向上させるというものである。」(段落【0003】)ウ
発明が解決しようとする課題
「しかしながら,図5(b)に示すように,受光素子41aに対して光が斜めに入射した場合には,集光レンズ41bによって集光されることで逆に受光素子41aへの集光率が低下し,その結果,感度が低下する。センサ単位で見てみると,図5(a)に示すように受光素子41aに対して光が垂直に入射するのはセンサの中央部にある受光素子41aであり,センサ周辺部にある受光素子41aに対しては光が斜めに入射する。その結果,図5(c)のグラフ中に実線で示すように,CCDエリアセンサ41からの出力は,センサ中央部の出力に比べてセンサ周辺部の出力が落ち込んだ状態となり,その周辺部において読取に必要な光量が確保できず,適切な読み取りができないという問題も生じる。」(段落【0004】)
「そこで,上述したような受光素子毎に集光レンズが設けられた光学的センサを備えている場合に,光学的センサの周辺部の受光素子に対する集光レンズによる集光率の低下を極力防止し,適切な読み取りを実現する光学情報読取装置を提供することを目的とするものである。」(段落【0005】)

課題を解決するための手段及び発明の効果
「上記課題を解決するためになされた本発明の光学情報読取装置は,複数のレンズで構成され,読み取り対象からの反射光を所定の読取位置に結像させる結像レンズと,前記読み取り対象の画像を受光するために前記読取位置に配置され,その受光した光の強さに応じた電気信号を出力する複数の受光素子が2次元的に配列されると共に,当該受光素子毎に集光レンズが設けられた光学的センサと,
該光学的センサへの前記反射光の通過を制限する絞りと,
前記光学的センサからの出力信号を増幅して,閾値に基づいて2値化し,2値化された信号の中から所定の周波数成分比を検出し,検出結果を出力するカメラ部制御装置と,
を備える光学情報読取装置において,
前記読み取り対象からの反射光が前記絞りを通過した後で前記結像レンズに入射するよう,前記絞りを配置することによって,前記光学的センサから射出瞳位置までの距離を相対的に長く設定し,
前記光学的センサの中心部に位置する受光素子からの出力に対する前記光学的センサの周辺部に位置する受光素子からの出力の比が所定値以上となるように,前記射出瞳位置を設定して,露光時間などの調整で,中心部においても周辺部においても読取が可能となるようにしたことを特徴とする。」(段落【0006】)」
(2)原判決30頁20行目から31頁3行目までを次のとおり改める。「オ

発明の実施の形態
「このような構成の本実施例の2次元コード読取装置4によれば,結
像レンズ34b,34c(図3参照)によって結像された2次元コードからの反射光は,CCDエリアセンサ41において,集光レンズ41bによって集光されてから受光素子41aに入射する。したがって,図5(a)に示すように,受光素子41aに対して垂直に入射する光は,集光レンズ41bによって集光されることで見かけ上の開口面積が拡大し,感度を向上させる効果があるが,図5⒝に示すように,受光素子41aに対して斜めに入射する光は,集光レンズ41bによって集光されることで逆に受光素子41aへの集光率が低下して感度が低下する原因ともなる。特に,CCDエリアセンサ41の中央部にある受光素子41aには反射光が垂直に入射するが,センサ周辺部にある受光素子41aに対しては反射光が斜めに入射する傾向にある。」(段落【0039】)「この周辺部にある受光素子41aに対して入射する反射光が極力斜めにならないようにするため本実施例の2次元コード読取装置4では,図3に示すように,
鏡筒43内において絞り34aを結像レンズ34b,
34cよりも読取口25(図1,2参照)側に配置している。つまり,2次元コードにより反射された赤色光がまず絞り34aを通過し,その後,結像レンズ34b,34cに入射するよう,絞り34aが配置されている。これにより,結像レンズの複数のレンズ間に介装されていた場合(図6(a)参照)に比べて,複数のレンズで構成される結像レンズ(図3の34b,34cが相当する)よりも前に配置した場合(図6⒝参照)には,CCDエリアセンサ41から絞り34aまでの光学的な距離が相対的に長くなる。」(段落【0040】)
「CCDエリアセンサ41から射出瞳までの距離(射出瞳距離)は,CCDエリアセンサ41から絞り34aまでの光学的距離が長くなれば,それに伴って長くなるため,本実施例のように絞り34aを結像レンズ34b,34cよりも前(読取口25側)に配置することで,結果的にCCDエリアセンサ41から射出瞳位置までの距離を相対的に長く設定することができる。そして,CCDエリアセンサ41から射出瞳位置までの距離が長くなれば,センサ周辺部にある受光素子41aに対して入射する反射光が斜めになる度合も,それに伴って小さくなる。したがって,図5⒞のグラフ中に破線で示すように,CCDエリアセンサ41の周辺部の受光素子41aに対する集光レンズ41bによる集光率の低下を極力防止することができ,適切な読み取りの実現に寄与する。」(段落【0041】)
「なお,適切な読み取りを実現するためには,センサ周辺部にある受光素子41aからの出力レベルが所定レベル以上になる必要がある。そのため,例えば,センサ中心部に位置する受光素子41aからの出力に対するセンサ周辺部に位置する受光素子41aからの出力の比が所定値以上となるよう射出瞳位置を設定することが考えられる。つまり,このような射出瞳位置となるように絞り34aの位置を設定するのである。このようにしておけば,中央部と周辺部の出力差を考慮しながら,例えば照射光の光量や露光時間などを調整することが容易となり,中心部においても周辺部においても適切に読取が可能となる。…」(段落【0042】)」

2
原判決31頁4行目の「(2)」を「(3)」と改める。

争点2-2(2次元コードリーダー(IT4400)を主引用例とする進歩性欠如の有無)について
本件の事案に鑑み,まず,争点2-2から判断する。


認定事実
原判決32頁8行目の末尾に行を改めて次のとおり加えるほか,原判決「事実及び理由」の第4の2⑴記載のとおりであるから,これを引用する。「

また,平成9年7月13日付け日経産業新聞(乙57)に,IT440
0がデジタルカメラの技術を応用した2次元バーコードリーダである旨を紹介する記事が掲載された。」
(2)IT4400に係る発明の公然実施の有無
以下のとおり訂正するほか,原判決「事実及び理由」の第4の2(2)記載のとおりであるから,これを引用する。

原判決33頁20行目から21行目にかけての「これによれば」から同頁25行目末尾までを次のとおり改める。

「これによれば,IT4400(IT4400HD)は,本件特許出願前(出願日平成9年10月27日)に日本国内で販売されていたものと認められる。そして,被控訴人がIT4400(IT4400HD)と同一構造の被告購入製品(1997年7月製造の「IT4400HD-13」)を分解・調査した結果,被告購入製品に3枚の結像レンズと,これらのレンズ間にある絞りと,オンチップマイクロレンズが設置されたソニー社製のICX084ALが組み込まれていることが判明したことに照らすと,本件特許出願前に日本国内で販売されていたIT4400の購入者が通常利用可能な分析技術を用いて同製品を分解して分析することにより,IT4400の上記内部構造(光学情報読取装置)を知り得る状況にあったものと認められる。
そうすると,IT4400は,本件特許出願前に日本国内においてその内部構造(光学情報読取装置)を公然知られるおそれのある状況で販売されていたものといえるから,IT4400により実施された発明(IT4400に係る発明)は,本件特許出願前に公然実施されていたものと認められる。」

原判決35頁1行目末尾に行を改めて次のとおり加える。


加えて,
控訴人は,
被告購入製品は,
米国から輸入されたものであり,

そもそも米国でいつ販売されたのか不明である上,アイニックス社が本件特許出願前に日本国内で実際に販売していたIT4400は現存していないため,本件特許出願前に日本国内で販売されていたIT4400と被告購入製品との同一性を検証することができないから,IT4400に係る発明が本件特許出願前に公然実施されていたものと認めることはできない旨主張する。
しかしながら,アイニックス社が本件特許出願前に日本国内で実際に販売していたIT4400が現存していないことは,被告購入製品が本件特許出願前に日本国内で販売されていたIT4400と同一構造の製品であるとの上記認定を左右するものではないから,控訴人の上記主張は採用することができない。」

原判決35頁2行目の
「IT4400により実施された発明
(公知発明)

を「IT4400に係る発明」と改める。



本件発明とIT4400に係る発明との一致点及び相違点
以下のとおり訂正するほか,原判決「事実及び理由」の第4の2(3)記載のとおりであるから,これを引用する。


原判決35頁5行目及び6行目の各「公知発明」を「IT4400に係る発明」と,同頁18行目の「IT4400」を「IT4400に係る発明」とそれぞれ改める。


原判決35頁25行目の「IT4400は」から同36頁2行目末尾までを「IT4400に係る発明が,このような構成を備えるものであるのか不明である点」と改める。


相違点1の容易想到性について

本件特許出願当時の周知技術について
(ア)

本件特許出願前に頒布された刊行物である乙10ないし12には,
次のような記載がある(下記記載中に引用する各「図1」については別紙2を参照)。
a
乙10(特開平7-168093号公報)
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は3枚玉による結像レンズに関し,特にTV電話用,ドアホーン用,監視用等のビデオカメラやスチルビデオカメラ等の撮影レンズとして好適な3枚玉による結像レンズに関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年,各種ビデオカメラやスチルビデオカメラの結像面に固定撮像素子を配するものが多い。この固体撮像素子は技術の進歩により年々小型化しており,それに伴ない撮像レンズの小型化さらにはローコスト化も要求されている。
【0004】また,最近固体撮像素子の各受光素子の受光面に各々凸レンズからなるマイクロレンズを配設し,受光素子の不感帯に向う光束も受光素子に集めて感度を向上せしめるようにした固体撮像素子が実用化されている。このような固体撮像素子に入射する光束が上記マイクロレンズの光軸に対して大きく傾くとマイクロレンズの開口でいわゆるケラレが生じ入射光束が受光素子に有効に入射しなくなる。その結果,画面の周辺部の明るさが画面の中心部の明るさに比較して不足し,画面の周辺部が暗くなる現像を生じる。このような現像を回避するためには固体撮像素子への入射光束の入射角をなるべく小さくすることが必要で,撮影レンズの射出瞳を結像面からなるべく離して配することが必要となる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら,上記技術によっては固体撮像素子への入射光束の入射角が大きく,例えばマイクロレンズ付きの撮像素子においていわゆるケラレを防止するためには,レンズ系の射出瞳を結像面から遠くに離す必要がある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の3枚玉による結像レンズは,被写体側に凹面を向けた負の屈折力を有するメニスカスレンズからなる第1のレンズと,正の屈折力を有する第2のレンズと,負の屈折力を有する第3のレンズが被写体側からこの順に配列されるとともに絞りまたは仮想絞りがレンズ系全体の被写体側端部近傍もしくはレンズ系よりも被写体側に配されてなり,前記第3のレンズのアッベ数をν3
としたとき,ν3≦40なる条件式を満足することを特徴とするもの
である。
【0011】
【作用】上述した構成によれば,絞りまたは仮想絞りをレンズ系全体の被写体側端部の近傍もしくはレンズ系よりも被写体側に配することによりレンズ系の射出瞳を結像面から遠くに離すことができ,これにより固体撮像素子に入射する光束の入射角を小さくすることができるのでマイクロレンズ付きの受光素子におけるいわゆるケラレを防止でき,画面周辺部において光量不足となる事態を防止し得る。
【0015】
【実施例】以下,本発明の実施例について図面を用いて説明する。【0016】ここで,図1は実施例1~3のレンズ基本構成を示すものである。図1に示すように,これらの実施例に係る3枚玉による結像レンズは,3枚のレンズL₁~L₃により構成され,絞りiが第1のレンズL₁の被写体側端部もしくはこの第1のレンズL₁よりも被写体側に配設されてなるもので,物体側から光軸Xに沿って入射した光束は固体撮像素子1の結像位置Pに結像される。
b
乙11(特開平5-188284号公報)
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は撮影用トリプレットレンズに関する。
この発明は,ビデオカメラやスチールビデオカメラに好適に利用できる。
【0002】
【従来の技術】ビデオカメラやスチールビデオカメラでは,撮影レンズによる結像面は固体撮像素子であり,その受光面の寸法は銀塩写真カメラにおける銀塩フィルムの受光面に比して小さく,撮影レンズの焦点距離も短いものとなる。
【0004】また近来,各受光素子の受光面に凸のマイクロレンズを形成し,各受光素子への入射光量の増加を意図した固体撮像素子も実用化されている。このような固体撮像素子では,受光素子に入射する光線がマイクロレンズ光軸に対して大きく傾くと,マイクロレンズの開口により「ケラレ」て受光素子に入射しなくなる事態が生じる。この傾向は撮影レンズの光軸から離れるに従って生じ易く,かかる事態が生ずると画像中心部に比して画像周辺部の光量不足を助長する結果を招く。このような問題を避けるためには,固体撮像素子への入射光線を,なるべく受光面法線に近い角度で入射させる必要がある。このために撮影レンズの射出瞳は像面からなるべく離れていることが望ましい。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明の撮影用トリプレットレンズは,請求項1~4のレンズとも,図1に示すように「物体側に前置された絞り0の像側に,絞り0側から像側に向かって順次,第1群1ないし第3群3を配して」なる。…
【0013】
【作用】上記のように,この発明の撮影用トリプレットレンズでは,第1に絞りが物体側に前置された所謂「前絞り型」であり,このように絞りを前置することにより射出瞳を像面から離している。
c
乙12(特開平8-278443号公報)
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,ビデオカメラや電子スティルカメラに使用される固定焦点型の撮影レンズ装置に関し,特に,レンズ群より物体側に絞りが設けられた撮影レンズ装置に関するものである。【0002】
【従来の技術】ビデオカメラや電子スティルカメラにおいては,撮影レンズ装置を介して結像された被写体像を固体撮像素子によって撮像する構成を有し,この固体撮像素子の撮像面に微小のレンズが形成されることによって,受光量を増大させる工夫が成されている。
【0003】このため,撮影レンズ装置より固体撮像素子の撮像面に入射する光束の入射角を可能な限り小さくすることが必要である。言い換えれば撮影レンズ装置の射出瞳位置ができるだけ遠いことが望ましい。
【0007】
【課題を解決するための手段】このような目的を達成するために本発明は,物体側より順に配設された,絞り,両凸の第1レンズ,両凹の第2レンズ,像側に凸面を向けた正の屈折力を持つメニスカス形状の第3レンズ,負の屈折力を持つレンズと正の屈折力を持つレンズとが接合することにより全体で正の屈折力を持つ第4レンズ群,とを備える4群5枚で構成されると共に,前記第1レンズの屈折率n1,第1レンズのアッベ数ν1,前記第2レンズのアッベ数ν₂,前記第3レンズの前記物体側の面の曲率半径r7,第3レンズの前記像側の面の曲率半径r8,前記第4レンズ群の前記負の屈折力を持つレンズのアッベ数ν4及び前記正の屈折力を持つレンズのアッベ数ν5,前記第4レンズ群の合焦点距離f45,前記4群5枚構成のレンズ系全体の合焦点距離fについて,
下記条件(1)~条件(6)を満足する構成とした。
【0009】
【作用】レンズ群の前方,即ち物体側に最も近い位置に絞りを配置することで,結像面からの射出瞳位置を十分遠ざける機能を発揮し,更に,全体で強い屈折力を持つ第4レンズ群を像側に最も近い位置に配置することにより,射出瞳位置を像面から更に遠ざけて,撮像素子への入射角を十分に小さくする。
【0014】
【実施例】以下,本発明による撮影レンズ装置の実施例を説明する。まず,図1に基づいて基本構成を説明すると,物体側より順に光軸Lに沿って,絞り2,中間の画角の光束を限定する遮光板4,両凸の第1のレンズ6,両凹の第2のレンズ8,像側に凸面を向けた正の屈折力を有するメニスカス形状の第3のレンズ10,負の屈折力を持つレンズ12と正の屈折力を持つレンズ14との接合によって全体として正の屈折力を有する第4のレンズ群16,とを備えた4群5枚の基本構成となっており,更にこの実施例では,フィルター18を介してCCD固体撮像素子等の撮像面(結像面)20に物体像を結像するようになっている。
(イ)前記(ア)の記載事項を総合すると,本件特許出願当時,①複数の受光素子の受光面に凸レンズからなるマイクロレンズ(集光レンズ)がそれぞれ設けられた固体撮像素子(光学的センサ)においては,光学的センサの周辺部にある集光レンズに入射する光束の入射角が集光レンズの光軸に対して大きく傾くことにより,「ケラレ」が生じ,周辺部における受光素子に有効に入射しなくなる結果,周辺部における受光素子の光量が光学的センサの中心部における光量に比して不足するという問題があること,②この周辺部における受光素子の光量不足の問題を解決するための一つの手段として,「絞り」を複数のレンズで構成される結合レンズの全てのレンズよりも被写体側に配置することによって,射出瞳位置を像面から遠い位置とし,光学的センサの周辺部にある集光レンズに入射する光束の入射角の集光レンズの光軸に対する傾きを小さくする技術があることは,周知であったものと認められる。
(ウ)

この点について控訴人は,乙10ないし12は,いずれも2次元コ
ードリーダでの採用を念頭に置いていないビデオカメラでの技術を開示しているにすぎないから,前記(イ)①及び②に係る技術は,2次元コードリーダに関するものではない旨主張する。
しかしながら,乙10は,ビデオカメラやスチルビデオカメラ等の撮影レンズとして好適な3枚玉による結像レンズに関する文献,
乙11は,
ビデオカメラやスチールビデオカメラに好適に利用できる,撮影用トリプレットレンズに関する文献,乙12は,ビデオカメラや電子スティルカメラに使用される,レンズ群より物体側に絞りが設けられた撮影レンズ装置に関する文献であり,これらの文献には2次元コードリーダに関する直接の記載はないが,これらの文献から,受光素子ごとにマイクロレンズ(集光レンズ)が設けられた固体撮像素子(光学的センサ)の周辺部における受光素子の相対的な光量不足は,光学的センサの構成に起因して必然的に生じる事象であって,光学的センサの撮像対象の相違によって異なるものではないことを理解することができる。
したがって,このような周辺部における受光素子の相対的な光量不足は,ビデオカメラやスチルビデオカメラに用いた場合のみに生じる特有の事象ではなく,受光素子ごとにマイクロレンズ(集光レンズ)が設けられた固体撮像素子(光学的センサ)を備えた2次元コードリーダにおいても生じ得る事象であるといえるから,控訴人の上記主張は採用することができない。

相違点1の容易想到性の有無について
(ア)

前記⑴の認定事実によれば,①ソニー社が開発したICX084A
Lは,本件特許出願前の平成7年7月以前から販売されていた製品であって,オンチップレンズ(マイクロレンズ)を備えたCCDセンサ(光学的センサ)であること,その適切な用途として,PCインプットカメラや電子スチルカメラのほか,2次元バーコードリーダにも用い得ることが,本件特許出願当時に広く知られていたこと,②ウェルチアレン社は,本件特許出願前の1997年(平成9年)6月に,そのウェブサイト上において,IT4400がソニー社製のICX084ALを備えている旨を公表していたこと,
③平成9年7月13日付け日経産業新聞
(乙
57)に,IT4400がデジタルカメラの技術を応用した2次元バーコードリーダである旨を紹介する記事が掲載されていることが認められる。上記認定事実によれば,IT4400が,受光素子ごとにマイクロレンズ(集光レンズ)が設けられた固体撮像素子(CCDセンサ)を備えた2次元コードリーダであることは,本件特許出願当時に広く知られていたものと認められる。
そして,本件特許出願前に,IT4400に係る発明が公然実施されていたことは,前記⑵認定のとおりである。
(イ)

加えて,本件特許出願当時,①受光素子ごとにマイクロレンズ(集
光レンズ)が設けられた固体撮像素子(光学的センサ)においては,光学的センサの周辺部にある集光レンズに入射する光束の入射角が集光レンズの光軸に対して大きく傾くことにより,「ケラレ」が生じ,周辺部における受光素子に有効に入射しなくなる結果,周辺部における受光素子の光量が光学的センサの中心部における光量に比して不足するという問題があること,②この周辺部における受光素子の光量不足の問題を解決するための一つの手段として,「絞り」を複数のレンズで構成される結合レンズの全てのレンズよりも被写体側に配置することによって,射出瞳位置を像面から遠い位置とし,光学的センサの周辺部にある集光レンズに入射する光束の入射角の集光レンズの光軸に対する傾きを小さくする技術があることが,周知であったことは,前記ア(イ)認定のとおりである。
(ウ)前記(ア)及び(イ)によれば,IT4400に係る発明に接した当業者は,絞りが結像レンズの間に配置されているIT4400に係る発明においては,受光素子ごとにマイクロレンズ(集光レンズ)が設けられた固体撮像素子(CCDセンサ)の周辺部における受光素子に有効に入射しなくなる結果,周辺部における受光素子の光量が光学的センサの中心部における光量に比して不足するという問題が生じ得ること(前記(イ)①)を認識し,このような問題を解決するために,「絞り」を複数のレンズで構成される結合レンズの全てのレンズよりも被写体側に配置する構成(前記(イ)②)とする動機付けがあったものと認められる。したがって,当業者は,IT4400に係る発明及び前記(イ)①及び②の周知事項又は周知技術に基づいて,IT4400に係る発明において,「読み取り対象からの反射光が絞りを通過した後に結像レンズに入射するよう,絞りを配置することによって,光学的センサから射出瞳位置までの距離を相対的に長く設定」する構成(相違点1に係る本件発明の構成)とすることを容易に想到することができたものと認められる。(エ)

これに対し,控訴人は,本件特許出願当時,マイクロレンズ付きC
CDを2次元コードリーダに用いたときに,光学系の軸の長さの影響を受けて周辺部の集光率が低下し,周辺部の読取性能が落ち,コードの読取りに影響が生じるという2次元コードリーダにおける課題は当業者に認識されていない「新規な課題」であったこと,ビデオカメラ等の技術と2次元コードリーダの技術分野とでは,画像認識の仕組み,光学系の設計思想が相違し,CCDが画像認識をした後の画像データの処理も全く異なるから,
両者が共に同じCCDを用いて構成されていたとしても,
技術分野の共通性に直結するものではないことからすると,IT4400に接した当業者において,2次元コードリーダにおける上記課題を認識することはできなかったのみならず,異なる技術分野のビデオカメラ装置についての前記(イ)②の技術を適用すれば上記課題を解決できるものと認識することもできなかったから,IT4400に係る発明に上記技術を組み合わせる動機付けはない旨主張する。
しかしながら,控訴人がいう2次元コードリーダにおける課題は,受光素子ごとにマイクロレンズ(集光レンズ)が設けられた固体撮像素子(光学的センサ)
の周辺部における受光素子の相対的な光量不足により,
周辺部の読取性能が落ち,コードの読取りに影響が生じることをいうものであるが,このような周辺部における受光素子の相対的な光量不足の問題は,本件特許出願当時周知であったことは前記(イ)①のとおりであるから,「新規な課題」であるということはできない。
また,控訴人がいうようにビデオカメラ等の技術と2次元コードリーダの技術分野とでは,画像認識の仕組み,光学系の設計思想,CCDが画像認識をした後の画像データの処理の点で異なるとしても,そのことは,ビデオカメラ等で生じる上記周辺部における受光素子の相対的な光量不足の問題が2次元コードリーダでは問題とならないことを裏付けるものではない。
したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。


相違点2の容易想到性について

本件発明の特許請求の範囲(請求項1)には,相違点2に係る本件発明の構成である「前記光学的センサの中心部に位置する受光素子からの出力に対する前記光学的センサの周辺部に位置する受光素子からの出力の比が所定値以上となるように,前記射出瞳位置を設定して,露光時間などの調整で,中心部においても周辺部においても読取が可能となるようにしたこと」における「所定値」について,具体的に規定した記載はない。また,本件明細書の発明の詳細な説明には,本件発明の「所定値」に関し,「最終的には適切な読み取りを実現することが目的であるので,本発明の光学情報読取装置においては,光学的センサの中心部に位置する受光素子からの出力に対する光学的センサの周辺部に位置する受光素子からの出力の比が所定値以上となるように,射出瞳位置を設定している。このようにしておけば,中央部と周辺部の出力差を考慮しながら,例えば照射光の光量や露光時間などを調整することが容易となり,中心部においても周辺部においても適切に読取が可能となる。」(段落【0011】),「適切な読み取りを実現するためには,センサ周辺部にある受光素子41aからの出力レベルが所定レベル以上になる必要がある。そのため,例えば,センサ中心部に位置する受光素子41aからの出力に対するセンサ周辺部に位置する受光素子41aからの出力の比が所定値以上となるよう射出瞳位置を設定することが考えられる。つまり,このような射出瞳位置となるように絞り34aの位置を設定するのである。このようにしておけば,中央部と周辺部の出力差を考慮しながら,例えば照射光の光量や露光時間などを調整することが容易となり,中心部においても周辺部においても適切に読取が可能となる。」(段落【0042】)との記載がある。請求項1の文言及び本件明細書の上記記載に鑑みると,相違点2に係る本件発明の構成は,「露光時間の調整など」,読取りに際して所与の調整を行うことを前提とした上で,「光学的センサの中心部においても周辺部においても読取が可能となるように」すること,すなわち,光学的センサの中心部に位置する受光素子から得られた信号を2値化するために用いられる閾値に基づいて,光学的センサの周辺部に位置する受光素子から得られた信号を2値化することが可能であるような強さの光を,周辺部に位置する受光素子が受光できるように,射出瞳位置を設定することを特定したにすぎないものと認められる。
加えて,乙13(国際公開第96/13798号),乙23(特開平7-282178号)の記載事項によれば,光学的センサを用いたコードリーダにおいて,適切な読み取りを実現するために露光時間などの調整を行うことは,本件特許出願当時,周知であったものと認められる。
そうすると,IT4400に係る発明において,相違点1に係る本件発明の構成を採用して絞りの具体的な位置を決定する際に,「光学的センサの中心部に位置する受光素子からの出力に対する前記光学的センサの周辺部に位置する受光素子からの出力の比が所定値以上となるように」射出瞳位置を設定し,「露光時間などの調整で,中心部においても周辺部においても読取が可能となるように」することは,周辺部においても適切に読み取りが可能な2次元バーコードリーダを構成する上で,当業者が適宜考慮して定める設計的事項であるというべきであるから,当業者は,IT4400に係る発明において相違点2に係る本件発明の構成を適用することを容易に想到することができたものと認められる。

これに対し控訴人は,マイクロレンズ付きCCDを2次元コードリーダに用いたときに,光学系の軸の長さの影響を受けて周辺部の集光率が低下し,周辺部の読取性能が落ち,コードの読取りに影響が生じるという2次元コードリーダにおける課題は当業者に認識されていない「新規な課題」であり,また,本件発明の「所定値」の構成については,公知文献に開示がないなどとして,IT4400に接した当業者においては,露光時間の調整が周知であるとしても,相違点2に係る本件発明の構成を導出し,これをIT4400に係る発明に適用することを容易に推考できるものではない旨主張する。
しかしながら,控訴人がいう2次元コードリーダにおける課題が「新規な課題」であるということはできないことは,前記⑷イ(エ)で説示したとおりである。また,本件発明の「所定値」の構成については,公知文献に開示がないとしても,前記ア認定のとおり,IT4400に係る発明において,相違点1に係る本件発明の構成を採用して絞りの具体的な位置を決定する際に,当業者が適宜考慮して定める設計的事項であるから,当業者が容易に想到することができたものと認められる。
したがって,控訴人の上記主張は理由がない。

(6)小括
以上によれば,本件発明は本件特許出願前に公然実施されていたIT4400に係る発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから,本件発明に係る本件特許には,進歩性欠如の無効理由(特許法29条2項,123条1項2号)が存在し,特許無効審判により無効にされるべきものと認められる。
したがって,控訴人は,被控訴人に対し,特許法104条の3第1項の規定により,本件特許権を行使することができないから,その余の点について判断するまでもなく,控訴人の請求は,理由がない。
(7)控訴人による訂正の再抗弁の主張について
当裁判所は,平成30年8月8日の当審の第1回口頭弁論期日において,控訴人が同月3日付け準備書面⑴に基づいて提出した,特許請求の範囲の訂正により無効理由が解消されることを理由とする訂正の再抗弁の主張について,被控訴人の申立てにより,時機に後れた攻撃防御方法に当たるものとして却下したが,その理由は,以下のとおりである。

一件記録により認められる本件訴訟の経緯等は,次のとおりである。(ア)本件特許に係る侵害訴訟と特許無効審判
控訴人は,平成28年8月12日,被控訴人に対し,本件特許権に基づき,被告製品の販売の差止め等及び損害賠償を求める本件訴訟を提起した後,カシオ計算機株式会社(以下「カシオ計算機」という。)に対し,本件特許権に基づき,2次元コードリーダの販売の差止め等及び損害賠償を求める訴訟
(東京地方裁判所平成28年
(ワ)
第32038号。
以下「別件侵害訴訟」という。)を提起した。
その後,米国法人のハネウェル・インターナショナル・インク(以下「ハネウェル社」という。)は,平成29年8月3日,本件特許について,「IT4400(公然実施コードリーダ)」の発明などを主引用例とする進歩性欠如の無効理由(特許法29条2項,123条1項2号)が存在することを理由として,特許無効審判(無効2017-800103号。以下「別件無効審判」という。)を請求した。
(イ)本件訴訟の経緯
a
原審における経緯
被控訴人は,平成28年12月26日の原審第2回弁論準備手続期
日において,同月20日付け準備書面⑶に基づいて,乙5を主引用例とする進歩性欠如,サポート要件違反,明確性要件違反及び実施可能要件違反の無効理由が存在するとして,特許法104条の3第1項の規定に基づく無効の抗弁(以下「無効の抗弁」という。)を主張した。その後,被控訴人は,平成29年7月25日の原審第6回弁論準備手続期日において,同月7日付け準備書面⑻に基づいて,IT4400に係る発明を主引用例とする進歩性欠如の無効理由が存在するとして,新たな無効の抗弁(以下「本件無効の抗弁」という。)を主張した。
原審は,合計11回の弁論準備手続期日を経て,平成30年2月14日の第2回口頭弁論期日において口頭弁論を終結した。控訴人は,原審の口頭弁論終結時までに,本件無効の抗弁に対し,訂正の再抗弁を主張しなかった。なお,控訴人は,原審の口頭弁論終結前に,本件訴訟のうち,被告製品の販売の差止め等請求に係る部分について訴えの取下げをし,被控訴人は,これに同意した。
原審は,平成30年4月13日,本件無効の抗弁は理由があるものと認め,控訴人の請求を棄却する旨の原判決を言い渡した。
b
当審における経緯
控訴人は,平成30年4月19日,本件控訴を提起した。当審の第
1回口頭弁論期日は同年8月8日と指定され,控訴理由書の提出期限は同年6月8日(控訴提起日から50日後の応当日)と定められた。控訴状等の送達後,控訴理由書に対する被控訴人の準備書面の提出期限は同年7月26日と定められた。
控訴人は,同年6月8日,控訴理由書を提出し,被控訴人は,同年7月26日,控訴答弁書及び同日付け準備書面⑴を提出した。なお,控訴人は,控訴理由書において,本件無効の抗弁に対する訂正の再抗弁を主張しなかった。
その後,控訴人は,同年8月4日,同月3日付け準備書面(1)を提出した。上記準備書面(1)には,被控訴人作成の上記準備書面⑴に対する反論のほか,
①控訴人が,
別件無効審判において,
「IT4400
(公
然実施コードリーダ)」の発明を主引用例とする進歩性欠如の無効理由は理由があるから,本件発明についての本件特許を無効とする旨の同年7月9日付けの審決の予告(以下「別件審決の予告」という。)を受けた旨,
②控訴人が,
別件無効審判において,
同月31日付けで,
本件特許の特許請求の範囲(請求項1及び2)の訂正を求める訂正請求(以下「別件訂正請求」という。訂正後の請求項1は,別紙3のとおり。)をした旨,③当審において,別件訂正請求と同内容の訂正による本件無効の抗弁に対する訂正の再抗弁(以下「本件訂正の再抗弁」という。)を主張する旨の記載がある。
同年8月8日の当審第1回口頭弁論期日において,控訴人は,上記の同月3日付け準備書面(1)に基づいて,本件訂正の再抗弁を主張し,これに対し被控訴人は,同月7日付け準備書面(2)に基づいて,控訴人の本件訂正の再抗弁の主張は,時機に後れた攻撃防御方法に当たるものであるから,却下を求める旨の申立てをするとともに,本件訂正の再抗弁の主張が却下されない場合には,追って追加反論する予定である旨を述べた。
(ウ)別件侵害訴訟における経緯
東京地方裁判所は,平成29年11月9日,別件侵害訴訟の口頭弁論を終結し,平成30年1月30日,控訴人のカシオ計算機に対する請求をいずれも棄却する旨の判決(乙80)を言い渡した。
上記判決の理由は,カシオ計算機が主張したIT4400により実施(公然実施)された発明を主引用例とする進歩性欠如の無効の抗弁(本件無効の抗弁と同じ抗弁)は理由があると判断したものである。なお,控訴人は,別件侵害訴訟の口頭弁論終結時までに,上記無効の抗弁に対し,訂正の再抗弁を主張しなかった。
その後,控訴人は,別件侵害訴訟の上記判決を不服として,控訴を提起した。
(エ)別件無効審判における経緯
控訴人は,平成29年11月3日,別件無効審判において,ハネウェル社主張の無効理由に対する答弁書を提出した。
その後,特許庁は,平成30年4月23日に口頭審理を行った後,同年7月9日付けで,「IT4400(公然実施コードリーダ)」の発明を主引用例とする進歩性欠如の無効理由は理由があるから,本件発明についての本件特許を無効とする旨の別件審決の予告(甲24)をした。これに対し控訴人は,同月31日付けで,別件訂正請求(甲25の1及び2)をした。

前記アの事実関係によれば,①控訴人は,原審において,平成29年7月25日の原審弁論準備手続期日において被控訴人から本件無効の抗弁が主張され,別件侵害訴訟及び別件無効審判においても,本件無効の抗弁と同じ無効の抗弁又は無効理由が主張され,さらに,平成30年1月30日に別件侵害訴訟において上記無効の抗弁を容れた請求棄却判決の言渡しがされたが,同年2月14日の原審口頭弁論終結時までに本件無効の抗弁に対する訂正の再抗弁を主張しなかったこと,②その後,同年4月13日に本件無効の抗弁を容れた原判決がされたが,控訴人は,控訴理由書提出期限の同年6月8日に提出した控訴理由書においては本件無効の抗弁に対する訂正の再抗弁を主張せず,その後同年7月26日に被控訴人から控訴理由書に対する反論の準備書面が提出された後,当審第1回口頭弁論期日(同年8月8日)の4日前の同月4日になって初めて,本件訂正の再抗弁の主張を記載した準備書面(準備書面(1))を提出したことが認められる。
一方で,
控訴人において,
当審第1回口頭弁論期日の4日前になるまで,
本件無効の抗弁に対する訂正の再抗弁を主張しなかったことについて,やむを得ないといえるだけの特段の事情はうかがわれない。
もっとも,控訴人は,別件無効審判において,平成29年11月3日に本件無効の抗弁と同じ無効理由を含むハネウェル社主張の無効理由に対する答弁書を提出した後,平成30年7月9日付けの別件審決の予告を受けるまでは,特許法126条2項,134条の2第1項の規定により,本件無効の抗弁と同じ無効理由を解消するための訂正審判の請求又は別件無効審判における訂正の請求をすることが法律上できなかったものである。しかしながら,このような事情の下では,本件無効の抗弁に対する訂正の再抗弁を主張するために,現にこれらの請求をしている必要はないというべきであるから(最高裁平成28年(受)第632号平成29年7月10日第二小法廷判決・民集71巻6号861頁参照),当該事情は,特段の事情に該当しないというべきである。
そして,無効の抗弁に対する訂正の再抗弁の主張は,本来,原審において適時に行うべきものであり,しかも,控訴人は,当審において,遅くとも控訴理由書の提出期限までに訂正の再抗弁の主張をすることができたにもかかわらず,これを行わず,第1回口頭弁論期日の4日前になって初めて,
本件訂正の再抗弁の主張を記載した準備書面を提出したのであるから,本件訂正の再抗弁の主張は,控訴人の少なくとも重大な過失により時機に後れて提出された攻撃防御方法であるものというべきである。
また,当審において,控訴人に本件訂正の再抗弁を主張することを許すことは,被控訴人に対し,訂正の再抗弁に対する更なる反論の機会を与える必要が生じ,これに対する控訴人の再反論等も想定し得ることから,これにより訴訟の完結を遅延させることとなることは明らかである。そこで,控訴人の本件訂正の再抗弁の主張は,民事訴訟法297条において準用する157条1項に基づき,これを却下したものである。3
結論
以上のとおり,控訴人の請求は理由がないから,控訴人の請求を棄却した原判決は相当である。
したがって,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第4部

裁判長裁判官

大鷹
裁判官

山門
裁判官

筈井一郎優卓矢
(別紙1)
【図3】

【図5】

【図6】

(別紙2)
【図1】
(乙10)

【図1】
(乙11)

【図1】
(乙12)

(別紙3)

【訂正後の請求項1】(下線部は,訂正箇所を示す。)
操作者が手で握るための把持部として機能するケースと,
このケースの上面に設けられ,情報を入力するためのキーパットと,前記ケースの上面に設けられる表示液晶ディスプレイと,
前記ケースの側面に設けられ,読み取り対象の読取りのスイッチとなる読み取り用スイッチと,
前記ケース内に配置され,
前記読み取り対象に対して赤色光を照射する発光手段と,
前記ケース内に配置され,複数のレンズで構成され,前記読み取り対象からの反射光を所定の読取位置に結像させる結像レンズと,
前記読み取り対象の画像を受光するために前記読取位置に配置され,その受光した光の強さに応じた電気信号を出力する複数の受光素子が2次元的に配列されると共に,当該受光素子毎に集光レンズが設けられた光学的センサと,
該光学的センサへの前記反射光の通過を制限する絞りと,
前記ケース内に配置され,前記光学的センサからの出力信号を増幅して,閾値に基づいて2値化し,2値化された信号の中から所定の周波数成分比を検出し,検出結果を出力するカメラ部制御装置と,
を備える光学情報読取装置において,
前記読み取り対象からの反射光が前記絞りを通過した後で前記結像レンズに入射するよう,前記絞りを配置することによって,前記光学的センサから射出瞳位置までの距離を相対的に長く設定し,前記光学的センサの周辺部に位置する受光素子に対して入射する前記読み取り対象からの反射光が斜めになる度合いを小さくして,適切な読取りを実現し,
前記光学的センサの中心部に位置する受光素子からの出力に対する前記光学的センサの周辺部に位置する受光素子からの出力の比が所定値以上となるように,前記射出瞳位置を設定して,露光時間などの調整で,中心部においても周辺部においても読取が可能となるようにした
ことを特徴とする光学情報読取装置。
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