判例検索β > 平成29年(う)第635号
わいせつ電磁的記録記録媒体陳列、公然わいせつ被告事件
事件番号平成29(う)635
事件名わいせつ電磁的記録記録媒体陳列,公然わいせつ被告事件
裁判年月日平成30年9月11日
法廷名大阪高等裁判所
結果棄却
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平成30年9月11日宣告

大阪高等裁判所第5刑事部判決

判決
被告人両名に対する各わいせつ電磁的記録記録媒体陳列,公然わいせつ被告事件について,平成29年3月24日京都地方裁判所が言い渡した判決に対し,被告人らからそれぞれ控訴の申立てがあったので,当裁判所は,検察官内田武志出席の上審理し,次のとおり判決する。

主文
本件各控訴を棄却する
理由
本件各控訴の趣意は,被告人Aの主任弁護人森直也,弁護人池田良太及び同知花鷹一朗並びに被告人Bの主任弁護人秋田真志,弁護人水谷恭史及び同田篭明共同作成の被告人A・被告人B控訴趣意書,控訴趣意補充書2通(平成30年3月1日付,同年5月8日付)に各記載のとおりであり,これに対する答弁は,検察官清水淑子作成の答弁書に記載のとおりであるから,これらを引用するが,論旨は,⑴証拠採用に関する訴訟手続の法令違反,⑵共謀共同正犯の認定をめぐる事実誤認又は法令適用の誤り,⑶犯罪地をめぐる法令適用の誤り,⑷不告不理違反の各主張である。
そこで,記録を調査し,当審における事実取調べの結果を併せて検討する。(略称等)
以下,株式会社Cを「C」と,アメリカ合衆国所在の会社D(代表者E)を「D社」と,被告人A及び被告人Bを併せて「被告人ら」という。第1

証拠採用に関する訴訟手続の法令違反をいう論旨(控訴趣意書の控
訴の趣意第1点)について
1
論旨は,次項2⑴ア①ないし④記載の各証拠(以下「本件各証拠」と
いう。)は,捜査機関が,平成26年9月30日から同年10月4日までのC事務所における強制捜査や,その後の捜査で,被告人らやその同僚,関係会社等から取得した電磁的記録に基づく証拠であるが,捜査機関によるこれらの証拠収集行為には,以下に述べる憲法違反を含む令状主義の精神を没却する数々の重大な違法があり,これらを証拠として許容することが,将来の違法捜査抑制の見地から相当でなく,いずれも違法収集証拠として証拠排除すべきものであるから,これらを証拠として採用し,被告人らを有罪とした原審の訴訟手続には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反がある,というものである。
2
争点の概要


前提

本件各証拠は,いずれも,司法警察職員作成の捜査報告書又はそ

の抄本であり,その添付資料の全部又は一部は,捜査官が,平成26年9月30日,C事務所において,捜索差押許可状(原審甲152。以下「本件捜索差押許可状」という。)及び検証許可状(原審甲153。以下「本件検証許可状」といい,本件捜索差押許可状と併せて「本件各令状」という。)をCの幹部職員数名に呈示してその執行を開始した後,次のいずれかの方法で収集した電磁的記録を印字したものや,その電磁的記録の内容を分析して整理したものであるところ,それらの電磁的記録の証拠収集手続の違法性が争われた(以下,①ないし④記載の各電磁的記録の収集手続を「手続①」ないし「手続④」という。)。


原審甲32,197及び201【原審の平成29年1月20日付決定
(以下「原決定」という。)別紙一覧表の「当裁判所の判断」「証拠物の解析結果」欄に丸印がついている証拠】
捜査官らが,本件捜索差押許可状を執行して電磁的記録が蔵置されている記録媒体(原審甲32につきパソコン,原審甲197及び同201につき
NASサーバ)を差し押さえ,これを解析して収集したもの(ただし,弁護人は,後述のとおり〔3⑵〕,原審甲32について,リモートアクセスによる収集を想定した主張もしている。)


原審甲183,208(撤回部分を除く。),210及び212【原
決定別紙一覧表の「当裁判所の判断」「承諾+PC提出」欄に丸印がついている証拠】
捜査官らが,

C事務所において,被告人らを含むCの役員や従業員らか

ら承諾を受け(メールアカウント及びパスワードの開示を含む。),その承諾に基づいて,各人が使用しているパソコンからメールサーバ等にリモートアクセスをし,アクセス先のサーバの記録領域に蔵置されているメール等の電磁的記録を当該パソコンに複写し(以下,リモートアクセスをして,アクセス先のサーバの記録領域に蔵置されている電磁的記録をアクセス元の端末機器等に複写したり,画面上に表示させたりする行為を併せて「リモートアクセス等」という。),

その後,Cの代表者である被告人Bから,上記の

とおりリモートアクセスによる複写を行って任意提出を受けたパソコンを解析して収集したもの


原審甲26,160,173及び204【原決定別紙一覧表の「当裁
判所の判断」「承諾等+検証」欄に丸印がついている証拠】
捜査官らが,

C事務所において,C関係者の承諾を得て,同所所在の

パソコンからリモートアクセスをし,アクセス先のサーバの記録領域に蔵置されていた電磁的記録【甲26については,インターネットブラウザ(甲)にブックマーク登録されていた「ジンジ・ソウムマニュアル」内のファイル,甲160については,Dライブ管理画面の「エージェント売上」ページの一部,甲173については,D動画の管理画面の「コンテンツ数」,甲204については,被告人Bのパソコンにインストールされていたコミュニケーションソフト「乙」のチャット履歴】を当該パソコンの画面に表示させた上,
その表示画面を甲160,173及び204については本件検証許可状による検証として,甲26については別の検証許可状により平成26年12月18日に実施された検証として,それぞれ写真撮影したもの
なお,原審甲160及び173には,原審甲204とは異なり,本件検証許可状による検証である旨が明記されていないが,関係証拠(原審甲231,原審証人Fの証言〔同証人速記録20頁ないし21頁〕)によれば,本件検証許可状による検証であると認められる。


原審甲30,42,68ないし70,97,157,164,171,
174,182,190,192,194,195,196(撤回部分を除く。),198,202,203,205,209,215,216,220(撤回部分を除く。),222,224ないし228及び230【原決定別紙一覧表の「当裁判所の判断」「承諾」欄に丸印がついている証拠】捜査官らが,C事務所や被告人B方等の捜索等を実施した際に被告人らを含むCの役員や従業員らから承諾(アカウント及びパスワードの開示を含む。)を得て,その承諾に基づき,C事務所外の適宜の機器からリモートアクセスをし,アクセス先のサーバの記録領域に蔵置されている電磁的記録を複写して収集したもの

手続②,③,④に伴うリモートアクセス先のサーバは,日本国外
に蔵置されていたか,その蓋然性が否定できないものである。


原審の判断及び所論の要旨

本件各証拠収集手続の違法性に関する原審の判断は,原審が原決定において説示するとおりであり(なお,原審弁護人の弁論に答えて,原判決においても原決定と同旨の判断が説示されている。),その要旨は,手続①は,適法に発付された本件捜索差押許可状を執行してパソコンやNASサーバを差し押さえ,これらを解析したものであり,記録媒体の差押えにつき違法性をうかがわせる事情は存しない,手続③のうち画面上の表示を写真撮影した部
分は,検証許可状による検証手続,手続③のその余の部分(検証に先立ち画面を表示させる行為)及び手続②,④は,いずれも被告人らを含むCの役員や従業員らから任意の承諾を得て行われたものであるから,日本国外に設置されている可能性が高いメールサーバ等にリモートアクセス等をした点を含め,各電磁的記録の収集過程に令状主義の精神を没却するような重大な違法があるとは認められない,というものである。
これに対し,所論は,ア本件各証拠収集手続は,

アクセス制限のあるア

カウント下で管理されている電子データ記録領域に対する重大なプライバシー侵害等を伴う不特定・包括的・網羅的押収である点(手続①,②,④),き,他国の主権を害し,サーバを管理するD社及びG社の承
諾を得ない違法な海外リモートアクセスが行われた点(手続②,③,④),被告人らを含むCの役員や従業員らのアカウント及びパスワードを利用して,捜索差押えの対象とは異なるコンピュータから他のコンピュータにアクセスする捜査手法(いわゆるオンライン捜索)がとられた点(手続④),不正アクセスに該当する点(手続②,③,④)において,憲法31条,35条違反を含む重大な違法がある,イ手続②,③,④についてCの役員や従業員らがした承諾は,自由意思に基づく任意の承諾とは認められず,そもそも,これらの手続は,仮に被処分者の承諾があったとしてもおよそ正当化することのできない,令状によらない強制捜査であったとみることしかできないものである,ウ捜査機関が,強制捜査である捜索差押え及び検証を開始した後,データ取得の段階で被告人らC関係者の「承諾」に基づく任意提出・領置に切り替えたのは,令状に明示され,かつ,被疑事実と関連性のある証拠しか入手できない強制捜査を敢えて回避し,強制捜査では実現不可能なデータの包括的取得,本来ならば外国司法機関との捜査共助によるべき海外サーバ上のデータの取得を一気に実現しようとしたからであり,捜査官らには,令状主義を潜脱する意図があった,エしたがって,本件各証拠の基となる各電磁
的記録の収集過程には,令状主義の精神を没却する重大な違法がある,というのである。
3
当裁判所の判断


判断の骨子

当裁判所の判断は,概ね次のとおりである。
原審が,C事務所において強制捜査が実施された際に同所で行われたリモートアクセス等(手続②,③)や,これにより電磁的記録を複写したパソコンの任意提出(手続②)について,C関係者の任意の承諾があったと認定した点は,是認することができない。しかしながら,これらの手続について任意の承諾がなかったことを前提としても,本件各証拠中,原審甲26を除く各証拠の収集手続に,少なくとも令状主義の精神を没却するような重大な違法があるとまではいえず,上記各証拠を採用して被告人らの罪証に供した原審の訴訟手続には,その結論において法令違反はない。
他方,原審甲26は違法収集証拠として証拠能力に欠けるというべきであるから,これを採用して被告人らの罪証に供した原審の訴訟手続には法令違反があるが,原審甲26を除外しても原判決が挙示する各証拠によって判示各事実を認定することができるから,この法令違反は判決に影響を及ぼすことが明らかであるとはいえない。
以下,その理由を述べる。


本件捜索差押許可状の執行による記録媒体の差押え(手続①)の
違法性について
所論は,本件差押えに係るNASサーバは,アクセス制限のあるアカウント下で管理され,高度のプライバシーや企業秘密の保護が期待される領域であり,膨大なデータが保存されていた一方,被処分者であるCの役員や従業員らが電磁的記録を損壊しようとする姿勢を示していたなどの事情はなかったのに,捜査官らは,被疑事実との関連性を吟味せず,NASサーバごと包
括的に差し押さえ,また,パソコンについても,パソコンの押収と同時に,被疑事実との関連性を問わず,当該パソコン内のハードディスクに保存されていたデータを包括的に差し押さえているところ,このような包括的な差押えは許されない旨主張する。
しかしながら,電磁的記録に係る記録媒体の差押えにおける差押えの対象は,記録媒体に保存されている個々の電磁的記録ではなく,記録媒体そのものであるから,保存されている情報の中に被疑事実と関連性のある情報が含まれている以上,他に被疑事実と関連性のない情報が保存されていたとしても,当該記録媒体と被疑事実との関連性が否定されるものではない。また,電磁的記録に係る記録媒体については,差押状を執行する段階で,差し押さえるべき記録媒体の差押えに代え,記録媒体に記録された電磁的記録の全部又は一部の複製物を作成してこれを差し押さえる方法もあるが(刑訴法222条1項,110条の2),捜査の目的に照らし,この方法が常に有用,適切であるとは限らず,法文上も,上記の処分は,記録媒体自体の差押えの代替的な処分と位置付けられ,これを選択するか否かは,差押えをする者の裁量に委ねられている。本件においては,被疑事実の内容やそれから想定される要証事項に鑑み,Cの役員や従業員らが業務に関連して作成,保存していた電磁的記録のうち,投稿者の個人情報を含めて,相当広範囲のものが被疑事実との関連性を有していたと考えられる。のみならず,特に本件NASサーバについては,保存されている電磁的記録が相当多量であったとうかがわれ,捜査官らが,差押えをする場で直ちに記録媒体の内容等を把握し,保存されている電磁的記録のうち収集が必要なものの範囲や,記録媒体自体の差押えに代えて複写等の代替的方法を選択することの適否を的確に判断することは容易ではなかったと考えられるし,電磁的記録という対象の性質上,複写等の作業の過程で情報の毀損,改変が生じる可能性もある。これらの事情に鑑みれば,捜査官らが,複写等の代替的方法を選択することなく
記録媒体自体を差し押さえた点において,裁量逸脱の違法があるともいえない。
所論は,後記⑸と同じく,最高裁判所平成10年5月1日第2小法廷決定(刑集52巻4号275頁)が,情報が記録されている蓋然性及び確認前の情報損壊の危険性という事情がある場合に限って,関連性を確認する前のフロッピーディスクの差押えを許容しているのであるから,この条件を満たさない手続①における包括的差押えは許容されないと主張するが,後述のとおり,上記最高裁決定の趣旨を所論のいうように限定的に解釈することはできない上,手続①において捜査官が差し押さえたパソコン及びNASサーバは,その設置状況や使用状況等に照らして,被疑事実との関連性を有する電磁的記録が保存されているものと推認することができるのであるから,上記最高裁決定の趣旨に照らして差押えが許容されないことになる場合に該当しないことは明らかである。
なお,所論は,原審甲32の添付資料の基となった電磁的記録が,被差押えパソコンに内蔵されたハードディスク上のローカルフォルダではなく,同パソコンからアクセス可能なクラウド等のオンラインストレージに保存されていた場合,海外サーバへの違法な域外捜索差押えに該当する可能性があるとも主張するが,原審甲32には,添付資料の原証拠となる電磁的記録につき,パソコン自体を解析して収集したという趣旨に理解できる記載(当該パソコンを確認した結果,資料1ないし資料6のファイルを認めた旨の記載)があり,その信用性を疑わせる証拠は存しないから,上記主張は前提を欠き,失当というべきである。
したがって,手続①に所論の主張する違法があるとはいえない。⑶

C事務所で行われたリモートアクセス等及びパソコンの任意提出

について任意の承諾があったか否かについて(手続②,③関係)捜査官が行う捜索等の捜査について,被処分者(捜査を受ける相手方)が
した承諾が任意になされたというためには,被処分者が,当該捜査の行われる意味や,これを拒絶できる立場にあることなど,自己の権利を十分理解した上で,自らの自由な意思に基づき真意から承諾をしたことが必要である。ところで,本件において,捜査官らは,本件各令状を執行するためC事務所に赴いた際,最初に,Cの幹部職員数名に対し,本件各令状を呈示しているところ,本件捜索差押許可状は,刑訴法218条2項のリモートアクセスによる電磁的記録の複写の処分の許可を含む,いわゆるリモートアクセス令状であって,「差し押さえるべき物」としてパソコン(パーソナルコンピュータ)等が明記されるとともに,「差し押さえるべき電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であって,その電磁的記録を複写すべきものの範囲」として,「1

差し押さえるべきパーソナルコンピュータ及びスマー

トフォン,タブレット端末からの接続可能なファイル保管用のサーバの記録媒体の記録領域であって,当該パーソナルコンピュータ等の使用者に使用されているもの

2
差し押さえるべきパーソナルコンピュータ及びスマート

フォン,タブレット端末からの接続可能なメールサーバの記録媒体の記録領域であって,当該パーソナルコンピュータ等の使用者のメールアドレスに係る送受信メール,その他の電磁的記録を保管するために使用されているもの」との記載がなされている。なお,この記載は,リモートアクセスによってその電磁的記録を複写すべき記録媒体の範囲を特定するため,接続先のサーバのサービスの種類として「ファイル保管用のサーバ」及び「メールサーバ」を挙げるとともに,アクセス制限について「当該パーソナルコンピュータ等の使用者に使用されているもの」及び「当該パーソナルコンピュータ等の使用者のメールアドレスに係る」「電磁的記録を保管するために使用されているもの」と定めるものであり,令状発付の時点で捜査機関において判明していた資料から可能な限り対象の範囲を特定したものと認められるから,これがリモートアクセス令状の記載として不特定で違法なものであるとは考えら
れない。また,本件検証許可状にも,検証すべき物にパーソナルコンピュータが含まれている。
そして,本件捜索等の責任者であった警察官Fの原審証言を含む関係証拠によれば,本件強制捜査に先立ち,担当捜査官らの間では,Cでアメリカ合衆国に本社があるG社の提供するメールサービスなどが使用されている疑いがあったことから,国外に設置されたメールサーバ等にメール等が蔵置されている可能性があることが判明した場合は,令状の執行としてのリモートアクセス等は控え,リモートアクセス等を行う場合は,当該パソコンを使用している者の承諾を得て行う旨の事前協議がなされていたこと,捜査官らは,この方針に基づき,任意捜査に必要な承諾を得るという意図の下,パソコンの使用者に対してリモートアクセス等についての承諾を求め,リモートアクセスによるメール等の電磁的記録の複写を行ったパソコンについては,差押えではなく被告人Bからの任意提出の形式をとって押収したこと,他方,捜査官らの間で,上記の承諾等を求めるに当たって,被処分者に対し,どのような説明をするかについては,事前に特段の申合せはなされておらず,少なくともF自身は,一連の捜査の過程で,C関係者に対し,リモートアクセス等は本件各令状の執行による強制処分として実施するものではなく,任意の承諾を得て実施するものである旨を明示的に説明したことはなかったことが認められる。
以上の事情に照らせば,C関係者らとしては,捜査官らがC事務所で行ったリモートアクセス等やパソコンの任意提出については,本件各令状の執行としての強制捜査であり,アカウント,パスワード等の開示要請や,リモートアクセス等やパソコンの任意提出についての承諾要請は,承諾書等の提出要請を伴うものを含め,いずれも強制捜査の一環としての強制力のある協力要請であって,被処分者にはこれに応じるべき法律上の義務があると誤信し,錯誤に陥っていたということにも十分な理由があると認められる。
この点,原決定は,①本件強制捜査において,担当捜査官らの間で,前述の事前協議がなされていたこと,②C事務所では,平成26年9月30日午前8時11分に本件捜索等が開始された後,1時間ほどで,Cの顧問弁護士が到着し,同弁護士にも本件各令状が示され,以後,本件捜索等が終了した同年10月4日までの間,少なくともCの顧問弁護士1名がその場にいたもので,警察官らが,詐言や脅迫的言辞を用いて承諾等を強制したといったことは考え難く,現に承諾を拒否した従業員等もいたこと,③被告人Bは,C事務所での強制捜査と同時に自宅で捜索等を受けているところ,この際,電話で弁護士に相談をした上で,メールアカウントやパスワードを教えることにしたという経緯があること,④また,被告人Bは,上記のとおり自宅で捜索等を受けた際,警察官から,C事務所での捜査でパソコンのパスワードの開示に応じない職員がいるので説得してほしいと要請されたのに対し,「裁判所からの許可があるなら,僕の許可は要らないでしょう。」と答えていること,などの事情を指摘し,リモートアクセス等やパソコンの任意提出は任意の承諾を得て行ったものである旨をいうF証言は信用することができ,警察官らは,被告人らを含むCの役員や従業員らに対し,リモートアクセス等について任意の承諾を求め,被告人らも,本件捜索等を受けたことで多少の心理的動揺があったにせよ,これを任意に承諾したと認めるのが相当である旨説示する。
しかしながら,前記①,②については,捜査官らの側に承諾を強要する意図はなく,現に,捜査官らが,承諾を求めるに際し,強要にわたるような言動をしていないことをうかがわせる事情であるとはいえ,そのような事情があるからといって,本件捜索等が行われていた当時,被処分者側にとって,捜査官らの承諾要請が,本件各令状の執行としての強制捜査を実施するための協力要請ではなく,任意の協力を求めるものであることが,一義的に明確な状況にあったと直ちにみることはできない。

前記③についてみても,弁護士の関与に関して,被処分者の認識を認定するために重要な事情は,捜索の状況について被処分者がどのような事実を認識していたかということと,被処分者が電話で伝えた限りの前提事情を基にして,弁護士から,どのような内容の助言,知見を得られたかであって,単に,承諾が弁護士の助言を踏まえてなされたというだけで,直ちに承諾が任意になされたことが肯定できるとは限らない。被告人Bが自宅で呈示された捜索差押許可状(原審甲247)は,本件捜索差押許可状と同様に,「差し押さえるべき物」としてパソコン等が明記され,かつ,リモートアクセスによる電磁的記録の複写の処分を許可する文言が記載されている一方,被告人Bが,捜査官らから,リモートアクセスは任意の承諾に基づき任意捜査として行うことに切り替えられた旨を明示的に告げられ,これを弁護士に伝えたといった事情は認められないのであるから,弁護士に令状の内容を伝えて相談したところ,アカウントやパスワード等の開示要請には応じざるを得ないと言われたとする被告人Bの原審公判供述には,相応の裏付けがあるといえる。この点を踏まえれば,前記③の事情は,むしろ,被告人Bが,強制捜査であるとの錯誤を強めたことに沿うものであって,ひいては承諾が任意になされたことを否定する方向に働く事情であるといえる。なお,弁護士の関与が直ちに承諾が任意になされたことを肯定する根拠とならないことは,C事務所における捜査についても同様である。C事務所における捜査については,顧問弁護士らは,本件各令状の内容を認識したことが明らかであるのみならず,強制捜査の開始後,捜査官らがCの役員等からリモートアクセス等についての承諾書等を徴求していることなども,C関係者から話を聞いて認識していたものと推認されるものの,顧問弁護士らが,これらの事情を踏まえて,C関係者に対し,本件捜査に伴うリモートアクセス等が任意の承諾に基づく任意捜査として行うように切り替えられたことを前提とした助言をしたと認めるに足りる証拠はない。かえって,C側の代理人弁護士らが,平成26年
9月30日から同年10月4日までのC事務所における捜査の終了後の同年11月10日,開示したアカウント等の利用(手続④)に関して警察に送付した申入れ文書に,同事務所における捜査官らの一連の行動を強制捜査と捉える記載や,「差押対象の電子メールについては,・・・代替案を提案させていただき」(原審弁1)などの記載があることに鑑みると,本件においては,Cの幹部職員らから相談を受けていた顧問弁護士ら自身が,捜査官らがC事務所で行ったリモートアクセス等は,本件各令状の執行としての強制捜査の一環であると認識し,Cの役員らを含む幹部職員らに対し,リモートアクセス等及び承諾書作成を拒否することができないことを前提とした助言をした可能性が否定できないというべきである。
前記④の被告人Bの発言については,当該従業員には,裁判所の令状に基づく捜査官の要請に応じる法的義務がある以上,それに加えて,被告人Bが,更に当該従業員に許可を与える必要はない,という理解を示したものと解することも十分可能であり,被告人Bの前記発言は,同被告人が,アカウント等の開示要請や,リモートアクセス等やパソコンの任意提出についての承諾要請に応じる義務がないことを認識していたことを基礎付ける事情たり得るとはいえない。
以上のとおり,C関係者がリモートアクセス等やパソコンの任意提出について行った承諾は,錯誤があって任意になされたものではない疑いが少なからずある。それにもかかわらず,原決定は,捜査官らが,強制捜査の開始に当たり,リモートアクセスによる電磁的記録の複写の処分の許可を含む本件捜索差押許可状等を呈示しながら,そのリモートアクセス等は令状の執行として行うものではないとの明確な説明をしていなかったことなど,承諾が任意になされたことを肯定する上で消極方向に働く重要な事情に着目しない一方,それ自体が直ちに被処分者の承諾が任意になされたことを基礎付けるものではない事情から任意の承諾があったと認定したものであって,このよう
な事実認定は,論理則,経験則等に照らして不合理であるといわざるを得ない。
なお,原決定は,手続③の原審甲26について,同証拠は,平成26年12月18日に,C従業員Hのパソコンを検証し,インターネットブラウザを起動させてログインし,その画面を写真撮影したものであるところ,ログインには立会人の承諾を得て捜査官が操作するなどし,モニターに表示させた画面を検証したと認められるから,その検証の過程に違法な点は見当たらない,と判断している。上記検証は,本件検証許可状とは別の検証許可状により,後日実施されたものであるが,既に説示したことに照らせば,上記立会人の承諾も,本件捜索等に伴って行われたリモートアクセス等についての承諾と同様に,上記立会人がこれに応じるべき法律上の義務があるものと誤信して行ったという合理的な疑いを払拭できないから,原決定の上記判断は是認することができない。
以上の次第で,C事務所で行われたリモートアクセス等や,これにより電磁的記録を複写したパソコンの任意提出について,Cの役員や従業員らの任意の承諾があったとは認定できない。


平成26年9月30日から同年10月4日までのC事務所における
捜査の終了後に行われたリモートアクセス等について任意の承諾があったか否かについて(手続④関係)
手続④は,上記期間のC事務所における捜索差押えや検証が終了した後,同事務所外で行われたものであるから,これが,本件各令状の執行としての強制捜査ではないこと自体は,C関係者にも明白であったといえるが,なお,手続④における承諾が,自らの自由な意思に基づき真意からなされたといえるかが問題となる。
この点について,所論は,C事務所で5日間にわたり捜査機関による捜査が続き,事実上の業務停止状態にあり,なお捜査終了の目処が立っていなか
ったことから,C役員らにおいては,延々と強制捜査を続けるとの捜査官の威嚇に屈し,これ以上業務を遂行できない状況が続くという不利益を考え,実質的な意思の制圧を受けて,やむなく上記承諾を行い,アカウント及びパスワードの開示に応じたものであり,自由な意思に基づく承諾があったとはいえない,と主張する。
手続④について任意の承諾があったか否かについては,手続②ないし手続④に共通して問題となるリモートアクセス等の違法性に関するその他の論点について検討した後,手続④の違法性についての項で,併せて論じることとする(後記⑼)。


リモートアクセス等による電磁的記録の収集が,違法な不特定・

包括的・網羅的押収であるとの所論について(手続②,④関係)所論は,憲法31条,35条に基づく令状主義の下では,被疑事実との関連性を問わず,包括的に証拠を押収することは許されないところ,本件各証拠収集手続に伴って行われたリモートアクセスによる電磁的記録の複写の処分は,アクセス制限のあるアカウント下で管理され,高度のプライバシーや企業秘密の保護が期待されるパソコンやサーバの記録領域に存在する膨大な量の電磁的記録を,被疑事実との関連性を問わず,包括的,網羅的に押収するものであり,このようなデータの押収は,たとえ任意の承諾があったとしても許されない,なお,前掲最高裁判所平成10年5月1日決定は,情報が記録されている蓋然性及び確認前の情報損壊の危険性という事情がある場合に限って,関連性を確認する前のフロッピーディスクの差押えを許容したものであり,本件においては,被処分者であるCの役員や従業員らが電磁的記録を損壊しようとする姿勢を示していたことがうかがえる事情はないから,本件は,例外的に被疑事実との関連性を確認せずに包括的押収を行うことが許容される場合にも当たらない,というのである。
そこで検討するに,なるほど,本件において,捜査官らは,リモートアク
セスによる電磁的記録の複写を行うに当たり,対象となる記録領域内に保存されている電磁的記録について,本件被疑事実との関連性の有無を個別に確認することなく一括して複写するという手法を用いていたことがうかがわれる。
しかしながら,そもそも,リモートアクセスにより複写することができる電磁的記録は,被疑事実との関連性が認められ差押対象物とされた当該電子計算機で,作成若しくは変更をした電磁的記録又は変更若しくは消去することができることとされている電磁的記録であるから,通常,被疑事実との関連性があると思料されるものと考えられる上,差押えの現場において,これらの電磁的記録について,関連性の有無を逐一確認するよう求めることは,捜査における迅速性の要請に反するばかりか,捜査機関に現実的でない過大な負担を課す結果となるから,個々の電磁的記録について,個別に関連性の有無を判断しなければならないわけではないというべきである。
本件に即して検討しても,前記⑵で手続①の違法性を検討する際に述べたとおり,Cの役員や従業員らが業務に関連して作成,保存していた電磁的記録については,相当広範囲のものが本件被疑事実との関連性を有していたと認められるところ,C事務所に所在し,現にCの役員や従業員らが使用していたパソコンから接続可能なファイル保管用のサーバやメールサーバの記録媒体の記録領域(すなわち,本件捜索差押許可状において,リモートアクセスによる電磁的記録の複写の処分が許可されている記録媒体の記録領域)については,保存されている情報の中にそのような被疑事実との関連性を有する情報が記録されている蓋然性が相当高かったといえる。かつ,C事務所の外にある記録媒体の記録領域については,保存されている情報が極めて多量に上ることも考えられ,複写に先立って被疑事実との関連性を個別に確認しようとすれば,それ自体に相当長時間を要するのみならず,本件の証拠構造上,捜査官らがその場で直ちに当該情報の収集の要否を判断することは困難
であったといえ,さらに,確認作業を行う間に情報の毀損,改変が生じるおそれは,同事務所内に所在するサーバ等の記録媒体の内容を確認する場合と比べても,格段に大きかったといえる。
所論が引用する前記最高裁決定は,令状により差し押さえようとするパソコン,フロッピーディスク等の中に被疑事実に関する情報が記録されている蓋然性が認められる場合において,そのような情報が実際に記録されているかをその場で確認していたのでは記録された情報を損壊される危険があるなどの事情の下では,内容を確認せずに上記パソコン,フロッピーディスク等を差し押さえることが許されると説示しているところ,前記最高裁決定は,必ずしも,内容を確認せずに電磁的記録媒体を差し押さえることが許される場合を,所論の主張する条件の存在する場合に限定する趣旨であるとは解されない。また,電磁的記録媒体の差押えに伴うリモートアクセスによる複写の処分においても,捜査の実効性確保の観点から,複写の対象とされている記録媒体の記録領域に保存されている電磁的記録について,被疑事実との関連性の有無を個別に確認せずに一括して収集することを許容すべき必要性があることは,既に電磁的記録が保存されている記録媒体をそのまま差し押さえる場合と同様である。
以上検討してきたところに加え,本件においては,リモートアクセス等が許容される範囲については,リモートアクセス令状の発付に当たって一定の司法審査を経ているところ,手続②,④において行われたリモートアクセス等は,いずれも,本件捜索差押許可状が許可する範囲内の記録領域を対象として行われていることも勘案すると,本件において,捜査官らが,リモートアクセス先の記録領域内の電磁的記録について,被疑事実との関連性の有無を個別に確認することなく一括して複写するという手法をとったこと自体に,取り立てて問題があったとはいえない。
よって,手続②,④は,不特定・包括的・網羅的押収である点において違
法であるということはできない。


海外リモートアクセス捜査の違法性に関する所論について(手続

②,③,④関係)

所論は,本件におけるリモートアクセス先のサーバは,いずれも

アメリカ合衆国の企業であるD社又はG社が管理・運営していたもので,前者のサーバはアメリカ合衆国内に所在していたし,Cが企業向けクラウド型グループウェアのサービスを受けていた後者の管理・運営するサーバは,所在地不明であるが日本国外であった可能性が高い,したがって,本件において捜査官らが行った海外リモートアクセスによる電磁的記録の収集は,C関係者ら被押収対象者や第三者のプライバシー等の権利侵害を伴うものであるだけではなく,リモートアクセス先のサーバの所在国の主権を侵害するものであるし,これらのサーバ管理者であるD社及びG社の権利,利益をも侵害する行為であって,このような捜査は,厳格な法的根拠に基づくものでなければならない,ところが,我が国では,海外リモートアクセス捜査を許容する具体的な要件を定めた立法はなされておらず,そうである以上,我が国の捜査機関が行う海外リモートアクセス捜査は,およそ適法な強制捜査とみる余地はなく,仮にユーザ(サーバ管理者から与えられたアカウントを用いてサーバにアクセスし,そこに蔵置された電磁的記録を利用する正当な権限を有する者)の任意の承諾を得て行ったとしても,それだけで捜査が適法となるものではない,と主張する。

我が国の捜査機関が,刑訴法218条2項のリモートアクセス令

状に基づいて,外国に存在するサーバ等の記録媒体に対し海外リモートアクセス等の処分を行うことが,当該他国の主権を侵害するか否かについては,国際的に統一された見解があるわけではなく,また,後述のサイバー犯罪に関する条約(平成24年条約7号。以下「サイバー犯罪条約」という。)32条も,どのような場合にこのような処分が許されないこととなるかを明示
的に規定しているわけではない。もっとも,電磁的記録を複写すべき記録媒体が他国の領域内にあることが判明した場合において,同条約32条によりアクセス等をすることが許されている場合に該当しないときは,当該他国の主権との関係で問題を生じる可能性もあることから,この処分を行うことは差し控え,当該他国の同意を取り付けるか,国際捜査共助を要請することが望ましいとの指摘が少なからず存在する。このように,我が国の捜査機関が,国際捜査共助の枠組み等により相手国の同意ないし承認を得ることなく,海外リモートアクセス等の処分を行った場合には,強制捜査であれ,任意捜査であれ,その対象となった記録媒体が所在する相手国の主権を侵害するという国際法上の違法を発生させると解する余地がある。そして,相手国の主権を侵害しており,国際法上の違法があるといえる場合には,この違法が当該捜査手続に刑訴法上も違法の瑕疵を帯びさせることになると考えられる。しかしながら,相手国が捜査機関の行為を認識した上,国際法上違法であるとの評価を示していればともかく,そうではない場合に,そもそも相手国の主権侵害があったといえるのか疑問がある。その点は措いて,外国の主権に対する侵害があったとしても,実質的に我が国の刑訴法に準拠した捜査が行われている限り,関係者の権利,利益が侵害されることは考えられないのであり,本件においては,後に詳論するとおり,リモートアクセス等は,実質的に司法審査を経た本件捜索差押許可状に基づいて行われていると評価することができるのであるから,被告人らに,このような違法性を主張し得る当事者適格があるかどうかも疑問である。しかも,違法収集証拠として証拠能力が否定されるのは,捜査手続に令状主義の精神を没却するような重大な違法があって,これを証拠として許容することが将来における違法な捜査の抑制の見地から相当でないと認められる場合に限られるから,上記主権侵害から生じた違法は,それだけで直ちに当該捜査手続によって得られた証拠の証拠能力を否定すべき理由とはなり得ないというべきである。


ところで,平成24年11月1日に我が国について効力を生じた

サイバー犯罪条約の32条は,締約国が,他の締約国の許可なしに行うことができることとして,a「公に利用可能な蔵置されたコンピュータ・データにアクセスすること(当該データが地理的に所在する場所のいかんを問わない。)。」,b「自国の領域内にあるコンピュータ・システムを通じて,他の締約国に所在する蔵置されたコンピュータ・データにアクセスし又はこれを受領すること。ただし,コンピュータ・システムを通じて当該データを自国に開示する正当な権限を有する者の合法的なかつ任意の同意が得られる場合に限る。」と規定している(当審検6)。
同条約の注釈書(当審検1ないし同4)によれば,国家が,どのような場合に,他国内に所在する蔵置されたコンピュータ・データに,相互援助を要請することなく,一方的にアクセスすることが認められるかという問題については,同条約の起草過程でも,包括的で,法的拘束力がある制度を整備することはまだできないと判断され,最終的に,国家による一方的な行動が認められることに起草者全員が同意した場合を同条約32条に規定するにとどめ,その他の場合については,更に経験が集積され,それらを踏まえて議論ができるときまで規定しないという方針がとられたとされている(注釈書293項)。そして,32条bただし書の「正当な権限を有する者」とは,例えば,サービスプロバイダーによりある人の電子メールが他国に蔵置されている場合や,その人の意思により他国にデータが蔵置されている場合には,それらの人は,それが合法的権限といえるのであれば,本条によりデータを取り扱い,自発的に法執行機関職員にデータを開示したり,同職員にデータへのアクセスを許可したりすることができる権限を有するものと解釈することができるとされている(注釈書294項)。
そして,原決定は,サイバー犯罪条約32条を参照した上,現代社会においては,国際的なコンピュータネットワークが発達したことにより,国外の
サーバに蔵置された電磁的記録を利用する権限のある者が,国境を越えて自由にアクセスして利用できることが当然の前提になっていることからすれば,その正当な権限のある者の合法的かつ任意の承諾が得られる場合において,その承諾に基づいて我が国の警察官が国外に設置されたサーバにリモートアクセスするなどしても,サーバ設置国の主権を侵害するものとはいえないし,必ずしもサーバ設置国の捜査共助を要請しなければならないものともいえない,と説示している。
サイバー犯罪条約32条bの文言及びこれに関する上記注釈書の内容と,原決定が挙げる論拠を併せて考えると,同条約32条bの趣旨については,捜査機関は,被処分者の適法かつ任意の同意がある場合,相手国との捜査共助によらなくとも,適法な海外リモートアクセスを実施することができるというものであるとみる余地が十分にあるというべきである。
所論は,最近一,二年のサイバー犯罪条約32条の改訂や諸外国における越境的データ取得に関する立法をめぐる動向等を指摘し,少なくとも現時点においては,同条について原審のような安易な解釈は許されない旨主張する。しかしながら,違法収集証拠が排除すべきものとされる趣旨に照らすと,その前提としての証拠収集手続の違法性判断は,当該手続が行われた時点(本件の場合には平成26年9月)における事情を基礎として判断すべきであるから,所論は採用の限りではない。
また,所論は,サイバー犯罪条約の追加注釈(当審弁23添付資料1)において,同意によるアクセスが許容される2つの事例が掲げられているとして,これを基に,被処分者の範囲が限定されなければならないと主張するが,上記追加注釈において許容例として掲げられている第1の例についての原文(前記添付資料1の4頁)は,先に引用した注釈書294項に記載されている許容例の原文(当審検1)と同一であり,この点について,追加注釈においても,当初の注釈書における解釈に基本的な変更があったことが示されて
いるとは考えられない。

次に,所論は,海外リモートアクセスによるサーバ等の記録媒体

の管理者の権利侵害も主張している。サーバ管理者は,サーバに蔵置された電磁的記録が,正当な権限のある者によって利用されることを前提として電磁的記録を管理しているにすぎない。また,サーバにアクセスすることは,サーバ管理者の権利を侵害し得るものであるとはいえ,刑訴法は,電子計算機が差押対象物である場合,リモートアクセス令状によりサーバ等の記録媒体に対しリモートアクセス等の処分を行うことを認めており,その要件として,サーバ管理者の同意やサーバ管理者に対する通知を必要とするなどの,サーバ管理者の権利保護を直接目的とした規定は存在しない。したがって,所論は,海外リモートアクセス等の処分により相手国の主権侵害が生じることを前提に,海外のサーバ管理者もそのような国際法上違法な処分を受けるという意味で,権利侵害が生じると主張するものと解される。そうすると,所論が主張するサーバ管理者の権利侵害は,上記主権侵害から生じた違法に付随するものであるから,違法収集証拠の証拠能力については,上記主権侵害から生じた違法と同様に考えることができる。
さらに,所論は,捜査機関による本件の海外リモートアクセスは,G社及びD社が米国内で保管・管理していた個人情報を違法に捜査機関に提供するという米国法(連邦取引委員会法)違反を引き起こさせたという意味で,サーバ運営者・管理者の権利侵害を招いたものであり,これは,我が国における刑訴法上の評価としての重大な違法を構成すると主張する。しかしながら,所論のいう情報提供にG社及びD社の何らかの行為が介在しているとは考え難い上,仮に何らかの行為が介在し,それが米国法上違法と評価されるとしても,そのことから直ちに本件におけるリモートアクセスが刑訴法上違法になるとは考えられない。

所論は,本件における海外リモートアクセスは,横浜地方裁判所

平成28年3月17日判決が,捜査官において,押収に係るパソコンの解析によって取得したパスワードを用い,検証許可状に基づいて海外のメールサーバにリモートアクセスしてデータを取得した手続を違法とした判断において,捜査官が必要な司法審査を経ない強制処分を行い,現行の刑訴法の基本的な枠組みに反する違法な手続によってサーバ管理者等の権利利益を侵害した上,他国の主権侵害の問題を軽視し,国際捜査共助の手続によらず,捜査の目的を優先させて法が許容しない捜査方法を断行し,令状主義の精神を没却する重大な違法行為に及んだと説示したことに照らしても,本件におけるリモートアクセス等による海外リモートアクセスを含むオンライン捜索の手続は,令状主義の精神を没却する重大な違法に該当すると主張する。しかしながら,前記横浜地裁判決の事案(その控訴審判決は東京高等裁判所平成28年12月7日判決・高裁刑集69巻2号5頁)は,捜査機関が,リモートアクセスによる複写の処分が許可された捜索差押許可状によって押収したパソコンに対し,検証許可状を取得し,これに基づいて,同パソコンの内容を複製したパソコンからインターネットに接続して,外国にある可能性のあるメールサーバにアクセスするなどして電磁的記録を収集した事案に関するものであり,そこで示された判断を,捜査機関が,実質的にリモートアクセスの許可された本件捜索差押許可状に基づいてリモートアクセス等を行い,次いで被告人らC関係者の承諾に基づきアカウントの開示を受けてリモートアクセス等を行うなどしたという,基本的に事案の異なる本件の判断の前提とすることは相当ではない。

以上に説示したことを前提に,海外リモートアクセス捜査の違法

性という観点から手続②をみると,原決定は,リモートアクセス等について被告人らを含むCの役員や従業員らの任意の承諾があったという前提で手続②の違法性を判断しているところ,本件においては,前記のとおり,手続②の段階における被処分者の承諾は錯誤によるものであると認めるのが相当で
あるから,これと前提を異にする原決定の判断をそのまま採用することはできない。また,サイバー犯罪条約32条bただし書の要件との関係でも,被処分者によるリモートアクセス等への任意の同意があったということはできないと考えられる。しかしながら,後記⑺のとおり,この段階におけるリモートアクセス等は,実質的には,我が国の刑訴法に則って発付された本件各令状に基づいて実施された強制捜査の一環として行われたとみられるのであるから,たとえサーバ所在国の主権侵害や海外のサーバ管理者の権利侵害があったとしても,そのことによる捜査機関によるリモートアクセス等の違法は,証拠能力を失わせるほどの重大な違法には当たらないというべきである。⑺

手続②の違法性について

前記⑶ないし⑹で検討してきた内容を踏まえて,まず,手続②の違法性について検討する。
前記のとおり,手続②は,

その開始に先立って,本件検証許可状及びリ

モートアクセス等を許可する内容を含む本件捜索差押許可状が被処分者に呈示された上で行われ

捜査官らは,リモートアクセス等の対象

が海外に存在するサーバ等に及ぶこととなる可能性が高いことが判明したことから,被処分者の任意の承諾を得ようとして,そのうち一部の者からは承諾書を提出させたものの,その点について,令状によることなく任意の捜査を行うとの説明をしないまま検証,捜索等を続行し,

被告人ら

及び顧問弁護士を含むC関係者は,C事務所で行われた一連の手続については,リモートアクセス等を含め,すべて強制捜査の一環であると認識したまま捜査が進められた。このようにC関係者には,リモートアクセス等や任意提出は任意の承諾に基づく捜査として行うものであるとの捜査官らの意図を正しく認識することができていないという意味で,一種の錯誤があったことになる。そうすると,手続②は,捜査官らが承諾書や任意提出書を徴求するといった任意捜査の前提となる手続がとられていることを考慮しても,被処
分者の承諾に基づく任意捜査とみる余地はないというべきである。他方で,捜査官らが,主観的には,本件捜索差押許可状の執行としてではなく任意捜査としてリモートアクセス等を行っているつもりであったことからすると,手続②を単純に本件捜索差押許可状の執行として行われた強制捜査とみることもできない。
もっとも,捜査官らは,海外リモートアクセスについての承諾を求めたことは別として,外形的にはあくまでも本件捜索差押許可状に記載されたのと同じ手続により,本件捜索差押許可状の執行としてのリモートアクセス等により収集することができる資料を収集したものであること,被告人らC関係者も,手続②が本件捜索差押許可状の執行としての強制処分であると認識していたこと,本件捜索差押許可状にはリモートアクセス等を可能とする法的根拠が明記されていたことからすると,手続②の処分の法的性質としては,実質的には本件捜索差押許可状に基づく強制捜査を行ったものとみることができる。
この点,所論は,本件強制捜査時のリモートアクセスについて,刑訴法218条2項に基づくリモートアクセス及び複写処分と解する余地はなく,およそ正当化することのできない,令状によらない強制捜査であると主張する。確かに,前記のとおり,手続②を本件捜索差押許可状の執行として行われたものとみることはできないものの,捜査官らが,リモートアクセス等を可能とする法的根拠が明記され,それを行う権限を裏打ちしている本件捜索差押許可状の発付を受けていたことは,手続②の違法性を検討する上で大きな意味があり,手続②の法的性質を上記のように考えることは可能というべきである。
手続②の法的性質についてこのように考えても,手続②は,捜査官らにおいて捜査の法的性質に関する捜査官らの主観と客観の齟齬をもたらし,その間の事情が被処分者に正しく伝わっていなかったという点で,多少なりとも
違法性を帯びる捜査であったことは否定できない。
しかしながら,違法な不特定・包括的・網羅的押収であるとの主張には理由がなく,仮に海外リモートアクセスに伴う主権侵害やサーバ管理者の権利侵害があるとしても,それらの違法性の程度や性質については,前述したとおりである。また,捜査官らにリモートアクセス等についての承諾を強要する意図があったとか,捜査官らが,承諾を求めるに際し,強要にわたるような言動をしたとは考えられない。この点,被告人Bは,原審公判廷において,令状があるので承諾する義務があると言われたと供述するが,事前協議の内容や顧問弁護士等の存在に照らすと,捜査官らが詐言を弄したとは考え難く,信用できない。さらに,捜査官らが,手続②で行ったリモートアクセス等やパソコンの領置は,本件捜索差押許可状が許可する処分の範囲を超えるものとは認められないし,その処分が,令状に基づく強制捜査として許容される範囲内のものであることは,先に検討してきたとおりである。実質的にみると,捜査官らが捜査の法的性質に関する捜査官らの主観と客観の齟齬をもたらし,その間の事情が被処分者に正しく伝わっていなかったことにより,C側に,手続②が本件捜索差押許可状の執行として行われた場合を超える権利,利益の侵害が生じているとは認められず,また,捜査官らに,被疑事実との関連性の制約上,令状によっては本来収集できない範囲の電磁的記録を取得する意図があったとも考えられない。そして,そうであるにもかかわらず,捜査官らが,リモートアクセスによる複写等を被処分者の承諾を得て実施しようとした理由は,海外リモートアクセスの問題との抵触を回避することにあったと考えられるが,この点についても,サイバー犯罪条約32条の解釈について先に述べたところも併せ考えると,捜査官らは,アクセス権限者の承諾があれば,海外リモートアクセス捜査も許容されるという理解の下,海外リモートアクセス捜査の問題を解決するための1つの正当な方策として,任意捜査を選択しようとしたものとみることができるのであり,捜査共助の
手続を不当な手段で回避しようとしたものとは考えられない。以上に加えて,a本件においては,インターネットに関する経営コンサルティングやサーバの設置管理等を目的として設立された会社であるCの経営陣である被告人らが,その顧問弁護士らの助言も得ながら強制捜査への対応に当たっていたこと,b捜査官らは,そのような状況の下,任意の承諾が得られたことを明確にする趣旨で,主立った幹部職員等からリモートアクセス等についての承諾書を徴求するなどの措置を順次講じながら手続を進めていたこと,c被告人らや顧問弁護士らも,このような経緯自体は十分認識していたと考えられる状況にあったこと,dC事務所における強制捜査は複数日にわたって行われていることから,その間,これらの者が,本件捜査に対する対応の仕方について検討,協議する時間的余裕もそれなりにあったといえること,eところが,捜査官らが,顧問弁護士らから,承諾書の差し入れについて疑義を呈されるなどした形跡はないことなど,当時,捜査機関側としては,リモートアクセス等について,被処分者から任意の承諾が得られたと考えてもやむを得ないといえる事情があった。
以上の事情に鑑みると,手続②に,令状主義の精神を没却するような重大な違法があったということはできない。


手続③の違法性について

手続③の違法性について検討すると,本件検証許可状には,検証すべき物としてパソコン等の電磁的記録媒体のみが記載されており,原審甲26に係る検証許可状についても同様であったと推認されるところ,電磁的記録媒体自体を対象とする検証については,その前提としてリモートアクセス等を行うことを許容する規定はないし,また,前述のとおり,被処分者の任意の承諾があったとも認められない以上,手続③については,全体として,これを適法な検証とみることは困難であるといわざるを得ない。
もっとも,本件検証許可状による検証についてみると,現場に所在した多
数のパソコンが,いずれも捜索差押え及び検証の共通の対象となっており,特定のパソコンについてどのような処分を行うかは,捜査官らが,当該パソコンを使用している者の協力が得られる場合は,適宜その協力を得ながら,電気通信回線の接続状況や,パソコン本体ないしリモートアクセス可能な記録領域に蔵置されている電磁的記録の種類,量等を可能な範囲で確認した上,その状況を踏まえて適宜その場で判断していたものとうかがわれる。そして,当該パソコンから接続可能なサーバに蔵置された電磁的記録をパソコンの画面に表示させて閲覧すること自体は,リモートアクセス令状による電磁的記録の複写の要否,当否を判断する上で必要な行為として,本件検証許可状と同時に発付されていた本件捜索差押許可状に法的根拠が示されていたと解される。本件においては,パソコンの押収に先立つリモートアクセス自体,捜査官らが捜査の法的性質に関する捜査官らの主観と客観の齟齬をもたらし,その間の事情が被処分者に正しく伝わっていなかった点で,多少なりとも問題があったといわざるを得ないものの,海外リモートアクセスに伴う主権侵害やサーバ管理者の権利侵害の点を考慮してもなお,リモートアクセス等の瑕疵が重大であるとまではいえないことは,前項で述べたとおりである。また,手続③に伴う画面の表示は,顧問弁護士らが居合わせるC事務所内で,錯誤に基づく疑いがあることから任意の承諾があったとはいえないものの,捜査官らが当該パソコンを使用しているC関係者自身の承諾を得て,当該使用者自身にパスワードを入力してもらうなどし,その立ち会いの下で行われていて,表示する画面の範囲が被処分者側に明確であったということを指摘することができ,捜査官らに,殊更令状主義を潜脱する意図があったとも認められない。
以上の事情に鑑みると,手続③のうち原審甲160,173及び204については,令状主義の精神を没却するような重大な違法があるとまでいうことはできない。

しかしながら,手続③のうち原審甲26については,後日,別の検証許可状によって検証が行われたものであり,本件検証許可状による検証とは異なり,検証の対象とされたパソコンを差押対象物とするリモートアクセス令状が同時に発付されていたという事情は見当たらない。この相違点を看過することはできず,捜査官らに令状主義を潜脱する意図があったとは認められないことを考慮しても,違法性の程度は重大であり,令状主義の精神を没却するものというべきである。


手続④の違法性について

手続④の違法性について検討すると,所論は,前記⑷のとおり,同手続については,そもそもC側の任意の承諾があったとはいえないことに加え,捜査官らが,強制捜査の終了後,C関係者に供出させたアカウント及びパスワードを,最長で1か月半以上にわたって排他的に利用してG社提供サーバにアクセスし,多様なデータを大量に複写・保存したもので,押収したパソコンに複写するのではなく,捜査機関が別に準備した捜査用パソコンでアクセスし,他の記録媒体にデータを保存している(いわゆるオンライン捜索)点からも,およそ,これをパソコンの差押えに付随する必要な処分とみる余地はなく,また,具体的にどのデータをどのような範囲で複写するかについて,データ作成者ないし保有者の個別的承諾を得ておらず,任意提出及び領置と解する余地もない,などと主張する。
しかしながら,手続④については,C事務所で5日間にわたって捜査が続き,メール等を使用者のパソコンにダウンロードする作業等が行われていたが,なお相当の時間が必要であると見込まれ,終了の見通しが明らかでない状況下で,C側が,このままC事務所での捜査が続行される場合との利害得失を検討した上で,より業務に支障が少ない方法として,捜査機関側に提案し,手続②の終了を条件に,手続④の方法がとられることになったものである。その具体的な範囲や方法については,事前に,Cの幹部職員らと捜査機
関との間で,C側の顧問弁護士も交えて方法等が協議され,その後の作業中にも,C側の顧問弁護士(被告人B個人の代理人弁護士を含む。)と捜査機関との間で,進捗状況や複写の方法についてやり取りがなされており,C側は,捜査官が複写する電磁的記録の範囲は,認識していた。なお,C側が上記提案をする経緯として,捜査機関側が殊更作業を遅らせたり,作業に必要な期間を過大に告げたりして,C側を威嚇したという証跡はない。また,実質的な処分内容についてみても,手続④は,基本的に,C事務所で手続②が続行されていた場合に行われる予定であった処分内容を超えるものではなかったし(一部,強制捜査終了後に受送信されたメールのデータが複写されたのは,単純な作業ミスによるものと認められる。),手続②が実質的には本件捜索差押許可状に基づく強制捜査であることは,前記⑺で述べたとおりである。
そして,被告人らC関係者は,手続②について現に強制捜査が行われていると認識した上で,C側に有利になるよう上記提案をし,捜査機関との合意により,C側の希望に沿う形で手続④が行われることになったのである。したがって,被告人らC関係者は,捜査機関と同様に,手続④を承諾に基づく任意捜査と認識していたとみられる。
以上の諸事情によれば,手続②においてC関係者がリモートアクセス等やパソコンの任意提出について行った承諾に元々錯誤があり,その錯誤の内容に鑑み,任意捜査の根拠となる任意の承諾とはいえなかったこと,その結果,手続②は,捜査官らにおいて捜査の法的性質に関する捜査官らの主観と客観の齟齬をもたらし,その間の事情が被処分者に正しく伝わっていないという意味で,多少なりとも違法性を帯びる捜査となったのであり,手続②を前提とする手続④においても,その点を全く無視することはできないことを考慮しても,手続②が進行する過程において,C側が上記提案をして,手続④を行うことの承諾をした際,手続を任意捜査に切り替えることの当否の判断に
影響を及ぼすような重要な点における錯誤はなかったと認められ,承諾の効力を否定すべき理由はないというべきである。そうすると,実質的に本件捜索差押許可状に基づく強制捜査であった手続②を任意捜査に切り替えた手続④において,捜査機関がリモートアクセス等に使用したパソコン等が捜査機関のものであって,差押えの対象となったものではなく,いわゆるオンライン捜索が行われたことについても,上記のとおり,C側が承諾して捜査機関に新規のアカウント等を提供した経緯や,現に行われたリモートアクセス等が本件捜索差押許可状において許可された範囲を出るものでなかったことに照らして,手続④に違法があることの理由にはならないというべきである。さらに,手続④を選択するに当たり,捜査官らに令状主義を潜脱する意図があったとは認められない。
そして,手続④において,その前提となる手続②が帯びている前記のような違法性が完全に払拭されたとはいえないにしても,違法な不特定・包括的・網羅的押収であるとの主張に理由がないことは,前述したとおりである。海外リモートアクセスによる相手国の主権侵害や海外のサーバ管理者の権利侵害との関係についてみても,前記⑹で説示したとおりであるし,C側が手続④についてした承諾は,重要な点における錯誤によるものではないから,サイバー犯罪条約32条bの趣旨に照らすと,仮に主権侵害等の違法が生じるとしても,それが証拠能力に関わる重大な違法をもたらすと評価することはできない。
したがって,手続④についても,少なくとも証拠能力が否定される理由となる令状主義の精神を没却するような重大な違法はないというべきである。⑽
不正アクセスの疑いがあるとの所論について(手続②,③,④関
係)
所論は,手続②,③,④について,いずれのリモートアクセスも,捜査官らが各サーバ管理者に無断で,C関係者のアカウントを利用して行ったもの
であるから,G社ないしD社の側から見れば,アカウント利用権限のあるC関係者になりすました捜査官によって,その管理するサーバに侵入されたのと変わらないし,捜査官らは,アカウント利用権者の真意に基づく承諾なしにC関係者に供出させたアカウントの大半のパスワードを変更しているのであり,これらの行為は,不正アクセス禁止法3条,2条4項1号所定の不正アクセスに該当する疑いがあるとも主張する。
しかしながら,本件捜査に伴うリモートアクセスは,いずれも,アクセス権限者の承諾を得て行われたもので,手続②,③の承諾には,前述のとおり瑕疵があった疑いがあるにしても,いわゆる「なりすまし」というべきものではないし,少なくとも捜査機関側としては,当時,適法なアクセスに必要な承諾が得られたものと認識していたものと考えられ,かつ,そのように認識することについて相応の根拠があったことも,既に述べたとおりである。そして,手続②,③においては,リモートアクセス等を可能とする本件捜索差押許可状が発付されていた。また,手続④の承諾は,そもそも有効というべきである。
そうすると,捜査官らが行ったリモートアクセス等について,アクセス権限の点からも問題があるとする所論は,本件各証拠中,手続②ないし手続④に由来する各証拠の証拠能力を考える上で,既にみてきた各手続の瑕疵とは別途,独自の問題として考慮しなければならないような事情であるとはいえない。

まとめ

以上のとおり,本件各証拠中,原審甲26を除く各証拠の収集手続には,いずれも,令状主義の精神を没却するような重大な違法があるとは認められないから,上記各証拠を採用した原審の訴訟手続には,その結論において違法があるとはいえない。他方,原審甲26を証拠として採用した原審の訴訟手続は違法であるが,前記のとおり,この法令違反は判決に影響を及ぼすこと
が明らかであるとはいえない。
証拠採用に関する訴訟手続の法令違反をいう論旨は,理由がない。第2

共謀共同正犯の認定をめぐる事実誤認又は法令適用の誤りをいう論旨
(控訴趣意書の控訴の趣意第2点)について
1
論旨は,原判示の各罪につき,被告人らとわいせつな動画・映像の投
稿・配信を行った者らとの間に共謀共同正犯は成立せず,これを認めた原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認又は法令適用の誤りがある,というのである。
2
原判決が認定した本件罪となるべき事実の概要は,以下のとおりであ
る。すなわち,大阪市内に本店を置き,インターネット・ホームページの企画,立案,制作並びにインターネットでのサーバの設置及びその管理業務等を目的とし,アメリカ合衆国所在の会社D社(代表者E)と共にインターネットサイト「D」を管理・運営するCの実質的相談役である被告人Aと,Cの代表取締役である被告人Bが,第1に,E及びIらと共謀の上,平成25年6月19日,被告人らがC従業員らをしてD社と共に管理するD内の投稿サイト「D動画アダルト」のサーバコンピュータに,Iが大阪市内の同人方からインターネットに接続した携帯電話機を使用して送信した男女の性器を露骨に撮影したわいせつな動画データを記録・保存させるなどし,インターネットを利用する不特定多数の者が前記わいせつな動画を閲覧することができる状態を設定し,同月28日ないし平成26年12月8日,前記動画データにアクセスしてきた不特定の者に対してこれを閲覧再生させ,もってわいせつな電磁的記録に係る記録媒体を公然と陳列し,第2に,E,Dに事業者としてエージェント登録していたJ及びパフォーマー登録していたKと共謀の上,平成25年12月25日,京都市内の同女方において,同女がウェブカメラで露骨に撮影した同女の性器の映像を,D内の配信サイト「Dライブアダルト」の映像配信システムを利用して,同市内の某所等へ電気通信回線
を通じて無修正で即時配信し,不特定の視聴者らに観覧させ,もって公然とわいせつな行為をし,第3に,E及び前同様にエージェント登録していたLらと共謀の上,平成26年6月3日,大阪市内の同人方において,同人らがウェブカメラで露骨に撮影した同人らの性器や性交場面等の映像を,前記「Dライブアダルト」の映像配信システムを利用して,前記京都市内の某所等へ電気通信回線を通じて無修正で即時配信し,不特定の視聴者らに観覧させ,もって公然とわいせつな行為をした,というものである(以下,I,J,K及びLらを併せて「本件各投稿者ら」という。)。
原判決は,要旨,次のとおり説示して,被告人らには少なくとも本件各罪の共謀共同正犯が成立すると認めた。


D社は,インターネットサイトであるDを管理・運営し,D内に

おいて,平成19年11月以降,投稿サイト「D動画」のサービスを,平成22年8月以降,配信サイト「Dライブ」のサービスをそれぞれ提供している。
D動画では,インターネットを通じて,D社が契約するサーバに動画データを投稿することができ,投稿された動画データは,無料会員用や有料会員用などの用途に合わせて変換された後,D社が管理する配信サーバに送られ,不特定多数の視聴者が,そのサーバにアクセスすることで,その動画の内容を視聴できるが,有料会員については,無料会員では視聴できない動画についても視聴でき,1日当たりの視聴制限が無制限となり,高画質に変換された動画データの配信を受けられ,日本にあるキャッシュサーバを利用した通信の高速化が図られるなどの特典があり,視聴者に有料会員登録を促す措置が講じられている。また,D動画では,視聴者が投稿動画を介して新規に有料会員登録をした場合には,投稿者は登録料の一定割合に相当するポイントを報酬として受け取ることができ,それを現金化できるなどの仕組み(動画アフィリエイト制度)や,投稿された動画を視聴者に評価させる仕組
み(動画評価システム)など,投稿者により多くの動画を配信するよう促す措置が講じられている。
D動画アダルトへの投稿動画には,本件各犯行以前から,相当数の男女の性器等を露骨に表した無修正のわいせつ動画(以下「無修正わいせつ動画」という。)が含まれており,D動画アダルトのサイト上には,「注目ワード」内に「無修正」(無修正わいせつ動画の意味)とのキーワードが表示されたり,「おすすめ動画」内に無修正わいせつ動画のサムネイルが多数表示されたりしていた。
次に,Dライブでは,ウェブカメラ等で撮影した動画データを生中継でインターネットを通じてD社管理のサーバ等に配信することができ,不特定多数の視聴者が,当該サーバにアクセスすることで,その動画データをリアルタイムで視聴できる仕組みになっている。
Dライブでは,無料配信形態と有料配信形態とがあり,視聴者が視聴料を支払って有料配信形態の動画を視聴した場合には,その動画の配信者は,視聴料の一定割合に相当するポイントを報酬として受け取ることができ,それを現金化できるなどの仕組み,Dライブの出演者(パフォーマー)を管理する会社又は個人(エージェント)が,出演者等を管理して,需要に応じた視聴料を設定することができ,それにより多くの視聴料を獲得できれば,その視聴料の一定割合に相当するポイントを報酬として受け取ることができる仕組み,Dライブの画面上に売上上位者の名前や金額を表示する仕組み,及び,配信された動画に視聴者のコメントを表示するチャット機能など,配信者により多くの動画を配信するよう促す措置が講じられている。
Dライブには,「一般」と「アダルト」があるところ,Dライブアダルトで配信された動画には,無修正わいせつ動画が含まれており,Dライブアダルトのサイトには,無修正わいせつ動画が配信されていることが容易にわかるサムネイルが多数あり,平成23年頃から利用者から無修正わいせつ動画
が配信されていることに対する苦情が数多く寄せられている。
JやLは,本件までにも多数の無修正わいせつ動画を配信しており,Jは平成25年1月頃から平成26年6月頃までの間に約1285万円を超える利益を得て,D社には約550万円の利益が入り,Lは平成26年1月頃から同年6月頃までの間に約3037万円を超える利益を得て,D社には約530万円の利益が入っていた計算になる。
これらの事情からすれば,Dライブアダルトについても本件各犯行以前から相当数の無修正わいせつ動画が配信されており,Dライブの取引高に寄与していたと推認できる。


Dの業務の大半は,Cで行っていたものであり,Cは,D社と共

にD動画やDライブを含むDの業務全般を管理・運営していた。


E及び被告人らは,C従業員らを介して,Dの業務全般を管理・

運営していた。


D動画アダルトは,被告人AとEの方針で設けられ,利用規約に

ついても被告人Aの指示で作成・手直しがされた。Dライブ開発時にも同様にアダルトカテゴリが設けられ,Eの方針で,ユーザーが稼げる仕組みを強調し,ブログ・動画に続く収益の柱に据えるように開発され,従量課金制度等が導入された。また,Eの指示で,売上上位者のランキングを表示させ,ライブ配信により収益が得られることを配信者に動機付ける仕組みを作り,これらの過程は被告人らへ報告されていた。また,売上上位者の名前や金額等のランキング,配信者数等は月次ミーティングでE及び被告人らにも報告されており,Dライブの売上の90パーセント以上をアダルトカテゴリが占めるようになった。
そして,被告人らは,本件以前から,アメリカ合衆国の法律では問題がないことからDで投稿を許可してきた無修正のアダルト動画について,複数の弁護士から,日本国内では刑事上違法と評価される可能性があると指摘され
ていたにもかかわらず,ⅰ)平成24年1月,D動画のアップロード画面の警告文から「無修正ポルノ」の文言を削除し,ⅱ)その後の同年2月,以前公然わいせつで捜査照会を受けていたDライブアダルトの動画投稿者が逮捕されたことを受け,被告人らの間で,警告文を表示するか否かなどを協議したものの,他の動画投稿サイトでは削除等がされている無修正わいせつ動画を放置し,無修正わいせつ動画を監視する担当者すら置かず,ⅲ)Dライブの利用規約には「アダルトコンテンツ以外で,性器の露出及び性器の露出を強制する行為」は禁止されているが,Dライブアダルトでそのような規制はなく,利用者からの問合せに対する対応マニュアルにも「無修正の配信内容であってもアダルトカテゴリで配信している限り,弊社では現状ペナルティは取っておりません」などと記載し,無修正わいせつ動画の配信を許容する方針を変更することなく,徹底していたといえる。
以上のとおり,E及び被告人らは,D動画アダルトやDライブアダルトにおいて相当数の無修正わいせつ動画が配信されることを認識した上で,D社やサーバが米国にあるとの理由から無修正わいせつ動画の投稿・配信を許容し,それらを利用してサイト利用者や有料会員を維持・増加させようとして,D動画アダルトやDライブアダルトを管理・運営していた。


原判示第1の動画投稿者のIは,合計約110件の無修正わいせ

つ動画を投稿しており,過去に何度も投稿した動画が削除されることはなく,視聴者の反応を楽しむ等の欲求を満たすために無修正わいせつ動画の投稿を行っていた。また,原判示第2の動画配信者のJは,Dライブアダルトにおいて,視聴者がコンスタントに入り稼ぎやすいこと,無料視聴か有料視聴か,その料金設定をエージェント等が設定できることなどを理由にエージェント登録し,Kとの間で報酬の割合を決めた上,利益獲得のため互いに共謀の上,有料設定で無修正わいせつ動画を繰り返し配信していたものであり,原判示第3の動画配信者のLも,他のサイトでは縛りがある無修正わいせつ動画を
配信しているDライブアダルトの存在を知ってエージェント登録し,利益獲得のためパフォーマーと共謀の上,有料設定をして,パフォーマーと性交等する無修正わいせつ動画を配信していた。
このように,D動画アダルトやDライブアダルトにおいては,その仕組みに動機づけられて,他のサイトで削除された動画も含め,無修正わいせつ動画が許容されるものとして相当数投稿・配信されており,Iも同様に動機づけられてD動画アダルトへ無修正わいせつ動画の投稿に及び,さらにDライブアダルトではエージェント登録により高額な利益を上げる仕組みであることに動機づけられて,J及びK並びにLらもDライブアダルトへ無修正わいせつ動画の配信に及んだ。
そして,E及び被告人らは,Dが不特定多数の者により,無修正わいせつ動画が相当の割合で投稿・配信されることを認識し,許容するだけでなく,これを利用して利益を上げる目的でD動画アダルト,Dライブアダルトを管理・運営していたのであり,具体的な投稿・配信行為を認識しなくても,概括的にこれを認識・認容していたといえる。
そうすると,E及び被告人らと,本件各投稿者らとの間には,無修正わいせつ動画の投稿・配信の各行為の時点で,それぞれわいせつ電磁的記録記録媒体陳列ないし公然わいせつを共同して行う旨の黙示の意思連絡及び相互利用補充関係があったものと認めるのが相当である。
被告人らがIらの無修正わいせつ動画の投稿・配信行為を具体的に認識しておらず,また,同人らの存在を具体的に認識していなかったとしても,共謀の成立には,必ずしも具体的な投稿者・配信者や個別具体的な実行行為まで認識することを要するものではないから,前記判断を左右しない。⑹

なお,本件では,原判示第1の犯行につき,被告人らがEととも

にD動画アダルトのサーバを管理・運営し,動画をサーバに記憶・保存させた行為がわいせつ電磁的記録記録媒体陳列の実行行為の一部に該当するか否
かも争われているが,仮にこれが実行行為に該当しないとしても,被告人らがサーバを管理・運営しなければ,投稿された無修正わいせつ動画を不特定多数の者が閲覧できる状態に置くことはできないから,被告人らがサーバを管理・運営した行為は,Iらによる実行行為の不可欠の前提を成すものであり,被告人らは正犯者といえる程度に重要な役割を果たしたといえるので,少なくとも共謀共同正犯が成立する。


よって,いずれの犯行についても,被告人らには少なくとも共謀

共同正犯が成立する。
3
以上に対し,所論は,要旨,次のとおり主張する。


被告人らは,Dの運営に関与し,サイト管理者としての当然の企

業努力として,投稿数・配信数を伸ばすために様々なサービスを行ったから,その意味でサイト利用者に対して映像の投稿・配信を動機づけたと評価することは可能であるにせよ,被告人らが投稿・配信を動機づけたのは,あくまでも一般映像及びアダルト映像であって,違法な無修正わいせつ映像の投稿・配信を促したことはなく,被告人らが無修正わいせつ動画の投稿・配信を動機づけたというのは,事実誤認である。


仮に原判決がいうように,本件各投稿者らが,被告人らが管理・

運用していた動画配信システムという仕組みに動機づけられて本件各犯行に及び,また,被告人らがこれを認識・認容していたとしても,動機や認識・認容それ自体は,各人が単独で内心に持つ意思にすぎず,被告人らと本件各投稿者らとの間で内心の意思のやり取りがない以上,およそ両者間に意思連絡があるとはいえない。被告人らは,本件投稿等の行為の全ての要素,すなわち,誰が,いつ,どこで,何をするのか(どのように行われるのか)という点について認識が欠けていたのであり,その行為についての意思連絡は,およそ観念することはできない。最高裁判所平成15年5月1日第1小法廷決定(刑集57巻5号507頁。スワット事件)の事案においては,実行犯
との間に黙示の意思連絡を認めることが可能な前提事実が存在したのに対し,本件では,そのような前提事実は存在しないのであり,原判決のように,全く特定されない不特定多数の者との間で,確定的認識もないままに概括的な認識・認容だけで意思連絡を認めることはできないというべきである。⑶

相互利用補充関係は,相互の意思の連絡を前提とするから,意思

の連絡がない以上,相互利用補充関係も認められない。
また,相互利用補充関係は,「特定の犯罪を行うため」のそれでなければならないところ,原判決が強調する「動機づけ」及び「概括的」な「認識・認容」と,わいせつ動画の投稿や公然わいせつ動画の配信によって,投稿者や配信者とともに被告人ら又はその経営している会社にも金銭的利益が得られるという要素は,どこかの誰かが違法動画を投稿・配信しているかもしれないという程度の抽象的なレベルのものでしかあり得ず,特定の犯罪と結びついているわけではないから,特定の犯罪を行うための相互利用補充関係を根拠付けるものではない。
原判決のように,違法行為に及んだ行為者にその動機を与えたとされる者が,不特定多数の者が違法行為に及ぶことを概括的に認識・認容していたというだけで共謀共同正犯が成立するという解釈を採用すれば,違法行為を惹起する相応の危険を伴う社会経済活動(自動車の製造・販売,護身用ナイフやスタンガン等の製造・販売等)はおよそ不可能になり,著しく不合理である。


共犯関係を認めるためには,誰が何をするかわからない状況で一

般的な条件の設定を行っただけでは足りず,最終的に実現する「特定の犯罪」に対して因果性を与えた事実が認められることが必要である。本件において,被告人らは,本件各投稿者らが行った犯罪について,単に条件を設定したと評価する余地があるにすぎず,因果性を肯定することはできない。⑸

共犯関係を認めるためには,主観面においても,共犯者各人が

「特定された犯罪」を認識対象としていることを要する。犯罪の認識・認容は,ある程度概括的であることはあり得るにしても,「誰が何をするかわからない状況での不特定の者との間での共謀」や,「誰が何をするかわからない状況での不特定の者の行為についての故意」というものはあり得ない。最高裁判所平成23年12月19日第3小法廷決定(刑集65巻9号1380頁。Winny事件)は,著作権侵害に利用されたソフトを提供した被告人が著作権法違反の幇助罪に問われた事案における幇助犯の故意について,「例外的とはいえない範囲の者が同ソフトを著作権侵害に利用していることを認識,認容していたこと」が必要であるとし,同事件では,客観的には同ソフトの利用の4割が著作権侵害に利用されていたと認定され,したがって,被告人の主観についても,相当多数の侵害事例があることを認識していたことになるのに,なお被告人に幇助の故意がなかったと認定しているのであって,「例外的とはいえない範囲」を相当高い割合であると想定している。ところが,原判決は,Dを利用して違法なわいせつ動画が配信されていた客観的な割合をそもそも認定していない。
証拠上合理的に推測できるD動画アダルトの投稿動画に占める違法なわいせつ動画の割合は,1割弱であり,原判決が指摘する,タイトルに「無」ないし「無修正」という文字が入っている動画(これらが当然に無修正わいせつ動画であると認定できるわけではない。)の割合でさえ2割程度にすぎず,一般動画も含めた投稿動画全体に占める割合は,さらに上記数値より小さくなるから,被告人らには,前記Winny事件最高裁決定が想定する「例外的とはいえない範囲」の幇助の認識すら認められず,まして,共謀共同正犯の故意を認めることはできない。


以上のとおり,本件においては,被告人らには相手方の存在につ

いてさえ認識がなく,このような場合にも共謀を認めることは,相互の意思連絡を必要とする従来の共謀概念ではあり得ない。

4
当裁判所の判断


原判決は,前記2のとおり,原審で取り調べた関係証拠から諸事

情を認定し,これらによると,被告人ら及びEと本件各投稿者らとの間に,本件各投稿・配信行為がなされた時点で,わいせつ電磁的記録記録媒体陳列ないし公然わいせつを共同して行う旨の黙示の意思連絡及び相互利用補充関係があったと認められるから,被告人らに共謀共同正犯が成立する,と判断したものである。
当裁判所の判断の骨子は,次のとおりである。
すなわち,原判決が,共謀共同正犯の成立を認めるための一つの間接事実と位置づけた前記2⑵の事実を推認する上で,再間接事実として認定した「C従業員が,D社への入社に応募してきた者に対し,D社の従業員として対応していた」という事実については,前述したとおり,違法収集証拠として証拠能力に欠ける原審甲26の外に,この事実を認定し得る的確な証拠がないから,原判決にはこの点で事実誤認がある。しかしながら,この事実を除外しても前記2⑵の間接事実を推認することができるし,前記2のその余の認定に何ら事実誤認はないから,上記事実誤認は判決に影響を及ぼすものでないことが明らかである。そして,これらの事実認定に基づき,被告人らに本件各犯行の共謀共同正犯が成立するとした点について,原判決に法令の解釈,適用の誤りはない。
以下,所論に即して補足して説明する。


所論は,まず,被告人らは,動画の投稿数・配信数を伸ばすため

の当然の企業努力として種々のサービスを行ったにすぎず,被告人らが投稿・配信を動機づけたのは,あくまでも一般映像及びアダルト映像であって,違法な無修正わいせつ映像の投稿・配信を促したことはないと主張する(前記3⑴)。
しかしながら,原判決が的確に認定した事実によれば,D動画アダルト及
びDライブアダルトにおいては,無修正わいせつ動画を含め,アメリカ合衆国の法律上問題がない動画の表示は許可するという被告人らの基本方針の下,児童ポルノ,獣姦,グロテスク(死体写真等),ひどい暴力のコンテンツについては,一定の基準で凍結等の措置がとられ,特に,児童ポルノと獣姦については,監視体制をとって積極的に削除するなどの措置が講じられていた一方,無修正わいせつ動画については,一般カテゴリーでの投稿・配信は規制されていたものの,アダルトカテゴリーでは放置する方針がとられ,現に,D動画アダルト及びDライブアダルトには多数の無修正わいせつ動画が投稿・配信され,D動画アダルトに投稿された動画については,削除されることなく長期間閲覧ができる状態となっていた。これらのサイトにおいては,被告人ら及びEの方針に基づいて,前記2⑴のとおり,有料会員登録を促す仕組みや,より多くの投稿・配信を促す数々の仕組みが作られ,有料会員を多数獲得するとともに,投稿・配信が多数に及ぶことを促進していたといえる。そして,これらの方針やサイトの仕組み等は,サイトを利用する一般の視聴者にも認識できる状態にあった。また,無修正わいせつ動画は,Dサイト内で人気が高いコンテンツであったことがうかがわれ,Dライブアダルトについては,無修正わいせつ動画を繰り返し配信して高額の利益を得る者らもいたのであるが,これらの事情も,Dサイト内にサービスの一環として表示される視聴者らのコメントや評価,売上上位者のランキング等により,Dの利用者らが容易に認識できる状態であった。以上によれば,Dの利用者は,Dにおいては,サイトの管理・運営上,無修正わいせつ動画の投稿・配信が許容されており,他の動画サイトでは規制がかかる無修正わいせつ動画であっても,Dの各アダルトサイトに投稿・配信すれば,当該サイトの仕組みに従って,一般映像や,刑法の解釈,適用上わいせつとは評価されない種類のアダルト映像と同様に,凍結されたり削除されたりすることなく確実にサイトに掲載されて,不特定多数の者の閲覧又は観覧に供され,多くの閲覧者等を
得ることが可能であること,そして,投稿方法の選択によっては多額の経済的利益を得ることも可能であることを容易に認識できたといえる。本件各投稿者らを含め,Dに無修正わいせつ動画を投稿等する者らの多くは,このような事情を認識していたからこそ,特にDを選んで無修正わいせつ動画の投稿・配信を行っていたものと認められる。
原判決は,このような事情を踏まえて,被告人らは,Eと共に,D動画アダルトやDライブアダルトにおいて相当数の無修正わいせつ動画が投稿・配信されることを認識した上で,これを許容し,それらを利用してサイト利用者や有料会員を維持・増加させて利益を上げる目的で,D動画アダルトやDライブアダルトを管理・運営していたものであり,他方,本件各投稿者らを含むサイト利用者らは,その仕組みに動機づけられて無修正わいせつ動画の投稿・配信に及んだと認定したのである。この事実認定が論理則,経験則等に照らして不合理であるとはいえない。


次に,被告人ら及びEと本件各投稿者らとの間に本件各犯行について
の意思連絡及び相互利用補充関係があったとして共謀共同正犯の成立を認めた原判決の判断について,所論は,前記3⑵ないし同⑹のとおり,種々の観点から論難するので,さらに検討する。
まず,原判決が前記2⑴ないし同⑹のとおり,的確に認定,説示したところに照らすと,本件においては,Dのサイトを利用して無修正わいせつ動画を投稿・配信し,不特定多数の者の閲覧及び観覧に供することについて,被告人ら及びEの意思と本件各投稿者らの意思が,それぞれの内心に止まっていたにすぎないものではない。すなわち,被告人ら及びEは,無修正わいせつ動画を除外することなくアダルト動画の投稿・配信を募り,たとえ投稿・配信された動画が無修正わいせつ動画であっても,他の適法な動画と同様に,各サイト(D動画アダルト,Dライブアダルト)のコンテンツとして投稿者・配信者が既定の方法の中から選択した方法で不特定多数の者の閲覧又は観
覧に供するとともに,その投稿者・配信者に対し,所定の特典を与えることによって投稿・配信を勧誘し,促進するという意図を有していたのであり,このような意図は,各サイトの画像上,当該サイトの利用者に対し,事前に黙示的とはいえ明確に示されていた。また,本件各投稿者らも,これらのサイトのシステムに従って,自らが投稿・配信した無修正わいせつ動画を不特定多数のサイト利用者の閲覧又は観覧に供するとともに,所定の特典を受けることを希望するという意思を有していたものであり,このような意思も,本件各投稿者らが本件投稿等を行った時点において,Dの管理・運営を行う被告人ら及びEに対し,明確に示されていたということができる。原判決は,以上の事実関係を捉えて,本件投稿等がなされた時点における被告人ら及びEと本件各投稿者らとの間の黙示の意思連絡の存在を肯定しているのであるから,被告人ら及びEと本件各投稿者らとの間に,およそ意思連絡といえるものはないとする所論(前記3⑵)の批判は当たらない。そして,Dサイトの利用者が,D動画アダルト及びDライブアダルトの各サイトを,そのシステム(動画のアップロード時になされる警告を含む。)に従って利用することによって惹起することが想定される犯罪行為は,ほぼ無修正わいせつ動画の投稿・配信に尽きるのであって,その犯罪行為の概要や法的性格は明確であり,当該犯罪についてDの管理・運営者である被告人ら及びEと動画の投稿・配信者とが担う役割も固定された明確なものであったといえるし,これらの点は,本件各投稿者らと被告人ら及びEが共に事前に認識できたと認められる。
以上の事実関係によれば,たとえ被告人ら及びEが,個々の無修正わいせつ動画の投稿又は配信の時点では投稿者等の存在や投稿等の内容を認識していなかったとしても,被告人ら及びEは,その方針に従って構築したDサイトにおいて,投稿・配信された無修正わいせつ動画をサイト利用者の閲覧又は観覧に供する方針で各サイト(D動画アダルト,Dライブアダルト)を管
理・運営していたのであるから,対外的に明らかになっている上記方針に沿って,現実に実行犯である特定の投稿者等の投稿・配信行為があった場合には,当該投稿者等と被告人ら及びEとの間で,共同して,このようなサイトのシステムにおいて予定されていた方法により,その投稿等に係る特定の無修正わいせつ動画をサイト利用者の閲覧又は観覧に供する旨の意思が実質的に合致したものといえるのであり,その旨の黙示の意思連絡が行われたと認めることができる。そして,無修正わいせつ動画の投稿・配信を利用して利益を上げる目的で各サイトを管理・運営していた被告人ら及びEと,各サイトにおいて無修正わいせつ動画を投稿又は配信しサイト利用者の閲覧又は観覧に供するという実行行為に及んだ本件各投稿者らとの間には,互いに他方の行為を利用し,各自の意思を実行に移したとみることができる相互利用補充関係も存在するというべきである。したがって,原判決の事実認定は正当である。
前記3⑵ないし同⑷の所論は,結局,被告人ら及びEが,個々の無修正わいせつ動画の投稿又は配信の時点では投稿者等の存在や投稿等の内容を認識していなかったことを理由に,被告人ら及びEと本件各投稿者らとの間の当該投稿・配信についての意思連絡の存在を否定し,ひいては,相互利用補充関係の存在や,被告人ら及びEの行為が当該投稿・配信に因果性を与えたことを否定するものであるが,前述したとおり,本件では意思連絡の存在を肯定すべきであるから,上記所論は採用できない。
この点,上記所論は,共謀を構成する実行犯との意思連絡は,特定の犯罪について,かつ,特定の実行犯との間でなされたものであることが必要であるが,本件の場合にはこれに該当しないと主張して,原判決の認定を論難する。しかしながら,共謀が成立するには,実行犯が行う犯罪行為の具体的内容について逐一認識することを要するものではないし,組織的犯罪等のように,主犯格の者において末端の実行犯が誰であるかを知らなくても,共謀の
成立を認めるべき場合もある。そして,何よりも本件各犯行については,いずれの犯行も,被告人ら及びEの管理・運営するウェブサイトへ,個々の実行犯が無修正わいせつ動画の電磁的記録の送信により投稿・配信するという形態によって実行されたものであること,被告人ら及びEと実行犯らは共に,このような形態によって違法な行為がなされることについて確定的に認識していたこと,被告人ら及びEにとって,個々の実行犯が誰であるかは特段問題ではなかったこと,特定の実行犯が特定の無修正わいせつ動画を投稿又は配信することにより,共謀の対象となる犯罪行為及び共謀の相手となる共犯者が具体的に特定されること,といった特質がある。このような本件各犯行の特質に照らすと,被告人ら及びEが,個々の実行犯や投稿等された無修正わいせつ動画を,投稿等の時点において,いずれも特定して認識していないからといって,そのことが実行犯との意思連絡ひいては共謀の認定の妨げになるとは考えられない。所論指摘の前記スワット事件最高裁決定の事案は,実行犯がその所属する暴力団組織の組長を警護するという限られた人間関係の存在が,それ自体として黙示の共謀の間接事実を構成する事案であって,本件とは事案を異にするものであるところ,同最高裁決定は,事前に何らかの人間関係の存在しない者の間における概括的な認識・認容に基づく共謀の成立を否定する趣旨を述べたものとは解されない。
また,以上のように解したからといって,前記3⑶の所論のいうように,違法行為を惹起する相応の危険を伴う社会経済活動(製品やサービスを提供する活動)を行う者が,そのような危険性を概括的に認識・認容していたというだけで,当該製品やサービスを利用して行われた他人の犯罪行為について当然に共犯者として刑事責任を負うことになるわけではなく,共謀共同正犯の概念が不当に広がることにはならない。さらに,前記3⑷の所論は,因果性を問題としているが,被告人ら及びEによる各サイトの管理・運営が本件各投稿者らの実行行為の大前提であって,本件各犯行に対する物理的因果
性は明白であるし,被告人ら及びEが,不特定多数の者にこの種の投稿等を積極的に行わせるようなシステムを構築し,本件各投稿者らがこれに応じて本件各犯行に及んだものであるから,本件各犯行に対する心理的因果性も明らかに認められ,所論は採用できない。
次いで,前記3⑸の所論が問題とする被告人ら及びEの故意の点についてみても,原判決が的確に認定した事実によると,本件投稿等がなされた当時,Dには,被告人ら及びEの運営方針に従って,多数の無修正わいせつ動画が順次投稿・配信され,サイトの利用者による閲覧及び観覧が可能となっている常況にあったものであり,被告人ら及びEは,Dの管理・運営を行うに当たり,このような無修正わいせつ動画の投稿・配信を事前に個別に認識していたわけではないにせよ,サイトの利用者の中には,被告人ら及びEの管理・運営するD動画アダルトやDライブアダルトのサイトに無修正わいせつ動画を投稿・配信してくる者が多くいること,そのような投稿・配信がなされれば,当該動画が不特定多数人によって閲覧及び観覧が可能な状態に置かれると確実に見込まれること自体は,事前に確定的に認識し,むしろ,それらを予定していたといえ,かつ,その投稿・配信がいつ,誰によってなされるかにかかわらず,犯罪行為に該当するこれらの投稿・配信行為を当然に許容していたとみられるのである。このような事実関係によれば,本件各投稿・配信がなされた時点において,被告人ら及びEによる本件各投稿・配信行為についての概括的な認識・認容,すなわち故意の存在を認めた原判決の認定は正当というべきである。原判決は,所論のいうような「誰が何をするかわからない状況」における不特定の者との間での共謀や,不特定の者の行為についての故意を認定したものではない。
所論指摘の前記Winny事件最高裁決定は,開発途上のファイル共有ソフト(Winny)をインターネットを通じて不特定多数の者に対して無償で公開,提供し,利用者の意見を聴取しながら当該ソフトの開発を進めてい
た被告人が,同ソフトを入手した正犯者がこれを利用して行った著作権法違反の幇助罪に問われたという事案において,同ソフトの提供行為に幇助犯が成立するための要件の一環として,同ソフトを入手する者のうち例外的とはいえない範囲の者が同ソフトを著作権侵害に利用する蓋然性が高いと認められる場合で,提供者もそのことを認識,認容していたことが必要であるとの一般論を示した上で,ネットワーク上に認められた同ソフトを利用しての著作権侵害のファイル数の割合も参考にしつつ,事案に即した具体的判断を示したものにとどまる。当該被告人は,ソフトの公開,提供に当たって,当該ソフトがどのように利用されるかについて関知できる立場にあったわけではないし,利用者に対し,著作権侵害のためにソフトを利用することがないよう警告を発していたなどという事情があるのに対し,被告人ら及びEにおいては,現にその管理・運営するウェブサイトに多数の無修正わいせつ動画が投稿・配信されていることを認識し,しかも,管理者としてこれを制限することができるにもかかわらず,その投稿・配信を許容し,これを利用して利益を上げる目的で管理・運営していたのであるから,本件は,Winny事件とは事案が異なり,投稿等の全体のうちで違法なものが例外的とはいえない範囲を占めていたかどうかといった,同事件におけるのと同様の事情を特に問題とするまでもなく,被告人ら及びEの故意を認定することができるというべきである。前記Winny事件最高裁決定を基にして原判決の判断を論難する所論は,失当といわざるを得ない。
所論は,その主張全体を通じ,従前の裁判例が認めてきた共謀概念を前提とする限り,本件について被告人ら及びEに共謀共同正犯の成立を認めることはあり得ないことであるとし,そうであるにもかかわらず,原判決は,共謀共同正犯の成立要件を明らかにしないまま共謀共同正犯の成立を認めていると批判する(主に前記3⑹)。しかしながら,共謀共同正犯の成立を肯定した過去の裁判例は,いずれも,当該事件における具体的な事実関係の下で,
実行行為を行った者との明示ないし黙示の意思連絡の存在を基礎としつつ,当該被告人が当該犯罪の実現について果たした具体的な役割等に着目して,相互利用補充関係があると評価できる場合に,当該被告人に正犯としての責任を負わせるのが相当であると判断したものである。原判決は,共謀共同正犯者である被告人ら及びEと実行犯との間で,インターネット上のウェブサイトを介して意思連絡が行われるといった,本件の具体的な事実関係を踏まえて,共謀共同正犯の成立を肯定したものであって,このような原判決の判断が,一概に従前の裁判例の判断から乖離するものであるとはいえず,上記の批判も当を得たものとはいえない。
所論はいずれも採用することができず,共謀共同正犯の認定をめぐる事実誤認又は法令適用の誤りをいう論旨は,理由がない。
第3

犯罪地をめぐる法令適用の誤りをいう論旨(控訴趣意書の控訴の趣
意第3点)について
論旨は,原判示第1の事実につき,被告人らは,海外に設置されたサーバの保守・管理をしていたにすぎず,被告人らが日本国内で行ったわいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪の実行行為は存在しないし,被告人らは,日本国内でアップロードを行った実行行為者及びその者の行為を予め具体的に認識しておらず,国内実行行為者との共同正犯も成立しないから,被告人らをわいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪の国内犯として処罰することはできないのに,被告人らを同罪の国内犯として処罰した原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
しかしながら,原判示第1の事実につき,被告人らとわいせつ動画の投稿者との間で共謀共同正犯が成立するとした原判決の認定,判断が是認できることは,第2で説示したとおりであるから,所論は前提を欠く。
犯罪地をめぐる法令適用の誤りをいう論旨は理由がない。
第4

不告不理違反をいう論旨(控訴趣意書の控訴の趣意第4点)について
論旨は,原判決が,被告人両名について,各罪の所定刑中最も重い刑種を選択した上,併合罪加重後の処断刑の上限に近く,処断罪(原判示第1)の実行犯であるIに対する科刑(罰金刑のみ)よりはるかに重い,懲役2年6月及び罰金250万円(懲役刑につき4年間執行猶予)に処したのは,起訴されていない余罪を処罰したからにほかならず,現に,原判決は,【量刑の理由】の項において,被告人らが,起訴された件以外にも多数回にわたり同種犯罪を繰り返してきたことを殊更に摘示した上で,我が国の健全な性的秩序を害した程度は大きいため,被告人らの刑事責任は重いというべきであり,経済的に引き合わないことを実感させる必要があるなどと,余罪を同列に評価して処罰する趣旨で取り上げることを明言する説示をしているところ,このような余罪処罰は,不告不理の原則に反し,憲法31条に違反するものであり(最高裁判所昭和41年7月13日大法廷判決・刑集20巻6号609頁,同昭和42年7月5日大法廷判決・刑集21巻6号748頁),刑訴法378条3号の絶対的控訴理由に当たる,というのである。
しかしながら,原判決は,もっぱら本件各犯行の犯情評価を基礎付ける事情として,

被告人らは,共犯者らと共謀して,多数の者が閲覧・観覧する

インターネット上の投稿サイトや配信サイトに本件各犯行に係るわいせつ動画を投稿・配信し,これらを社会に拡散させており,本件各犯行により我が国の健全な性的秩序を害した程度は大きいこと,

被告人らは,これらの投

稿サイトや配信サイトにおいて無修正わいせつ動画が相当数投稿・配信されていることを認識しながら,これに対する措置を講じることなく許容し,むしろサイト利用者を増加させ,一部は増収の手段として無修正わいせつ動画を利用し,本件各犯行に及んだのであるから,その動機に酌量の余地はないこと,

本件各犯行は,投稿サイトや配信サイトを不可欠の前提とするもの
であり,それを管理・運営していたCの実質的相談役ないし代表取締役である被告人らが果たした役割は大きく,強い非難に値することを指摘し,これ
らの点から,被告人らの刑事責任は重いといえ,また,上記

のとおり,本

件各犯行の動機に利欲的な面があることから,相当額の罰金を併科することが相当である旨説示しているにすぎず,そこに,所論が指摘するような余罪処罰の趣旨を見て取ることはできない。また,原判決の量刑は,その説示する本件各犯行についての犯情評価に見合うものといえ,起訴されていない余罪を実質上処罰したものとは見受けられない。
不告不理違反をいう論旨は理由がない。
第5

結論

よって,刑訴法396条により本件各控訴を棄却することとし,主文のとおり判決する。
平成30年9月11日
大阪高等裁判所第5刑事部(裁判長裁判官
嵐常之

裁判官

福島恵子)

西田眞基,裁判官

五十

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