判例検索β > 平成30年(行ケ)第10053号
審決取消請求事件 商標権 行政訴訟
事件番号平成30(行ケ)10053
事件名審決取消請求事件
裁判年月日平成30年9月26日
法廷名知的財産高等裁判所
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平成30年9月26日判決言渡
平成30年(行ケ)第10053号
口頭弁論終結日

審決取消請求事件

平成30年8月22日
判原決告
ケントジャパン株式会社

同訴訟代理人弁理士

告沢則藤被藤沢昭昭太郎
スペリートップサイダーリミテッドライアビリティカンパニー

同訴訟代理人弁理士

長主谷玲子文1
原告の請求を棄却する。

2
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由

第1

請求

特許庁が取消2016-300561号事件について平成30年3月22日にした審決を取り消す。
第2

事案の概要

本件は,商標法53条1項に基づく商標登録取消審判請求において,商標登録を取り消した審決の取消訴訟であり,争点は,以下の1の商標(以下「本件商標」という。
)の通常使用権者である株式会社水甚(以下「水甚社」という。
)が,商標法
53条1項にいう「他人の業務に係る商品と混同を生ずるものをした」といえるか
どうかである。
1
本件商標(甲1,2,甲86の1・2,弁論の全趣旨)

原告は,以下の本件商標の商標権者である。
商標

登録番号

第1809362号

出願日

昭和53年3月28日

登録日

昭和60年9月27日

指定商品の書換登録

平成18年3月29日

存続期間の更新登録

平成7年10月30日,平成17年10月18日
平成27年8月11日

商品及び役務の区分並びに指定商品
第16類

紙製幼児用おしめ

第21類

家事用手袋

第24類

布製身の回り品,かや,敷布,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布

第25類

洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,足袋,ショール,スカーフ,足袋カバー,手袋,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子

なお,本件商標は,被告の前身会社である「スペリー

トップサイダー

インコ

ーポレーテッド」
(以下「旧会社」という。
)を権利者として設定登録されたもので
あるが,その後,平成12年5月25日に旧会社から原告(当時の商号は,株式会社ビイエムプランニング)に譲渡されたものである。また,本件商標の当初の指定
商品は,
「第17類

被服(運動用特殊被服を除く)
,布製見回品(他の類に属する

ものを除く)
,寝具類(寝台を除く)
」であった。
2
特許庁における手続の経緯

被告は,平成28年8月16日,商標法53条1項に基づき,本件商標について取消審判を請求し,同請求は,取消2016-300561号事件として係属した(以下「本件審判」という。。

特許庁は,
平成30年3月22日,
「登録第1809362号商標の商標登録を取
り消す。
」との審決(以下「本件審決」という。
)をし,本件審決の謄本は,同月3
0日,原告に送達された。
3
本件審決の理由の要点

(1)水甚社は,原告から本件商標の使用権を与えられた通常使用権者であると認められるところ,水甚社は,遅くとも平成25年1月28日までに,「TOP-S
IDER」の欧文字,ヨットの図形及び雲を想起させる図形からなる,以下の標章(以下「本件使用商標」という。
)を付したシャツ(以下「本件使用商品」という。

を株式会社丸井(以下「丸井社」という。
)に譲渡し又は引き渡した(以下,水甚社
による上記使用行為を「本件使用行為」という。。


(2)本件商標と本件使用商標は,
「TOP-SIDER」の欧文字の外観,
「ト
ップサイダー」の称呼及び「上層部,首脳部」の観念を同じくする,類似の商標である。
また,本件使用商品は,本件商標の指定商品中の第25類「ワイシャツ類」に含まれる。

そして,原告は,水甚社による本件使用商品への本件使用商標使用の事実を知っていたものと推認される。
(3)

混同のおそれについて
登録第5462438号商標(以下「引用商標」という。
)と本件使用商

標との類似性の程度について
引用商標は,以下のとおりの構成からなり,第25類「履物,運動用特殊靴」を指定商品として現在も有効に存在しているものであるところ,引用商標と本件使用商標とは,「SPERRY」の欧文字の有無の差異を有するものの,雲を想起させる図形と,その内側に表した「TOP-」の欧文字,ヨットの図形及び「SIDER」の欧文字の態様を同じくし,かつ,その配置も同じくするものであるから,外観において酷似する。
また,本件使用商標と引用商標とは,「トップサイダー」の称呼及び「上層部,首脳部」の観念も同じくしており,その類似性の程度は,極めて高い。

本件使用商品と引用商標が使用された商品との関連性の程度について
本件使用商品であるシャツと引用商標が使用された商品である靴(デッキシューズ)は,いずれも身につけて日常に用いる服飾関連の商品であって,需要者は一般消費者であるから,その用途及び品質を異にするものの,販売場所及び需要者を共通にする関連性の高い商品と認められる。

引用商標の独創性及び周知性の程度について

引用商標の構成中の,
「SPERRY」の欧文字部分,雲を想起させる図形及びヨ
ットの図形からなる全体の構成は,独創性が高い。
また,被告の靴(デッキシューズ)の売上げの一部は,平成22年から平成24
年までの3年間において約52万足であり,全世界における平成24年から平成29年までの6年間において約100万足であることなどからすると,引用商標は,長年にわたって,被告の商品「靴(デッキシューズ)
」について使用をされた結果,
本件使用商標が付されたシャツの写真が,丸井社のウェブサイトに掲載された平成25年1月28日の時点において,被告の業務に係る商品「靴(デッキシューズ)」
を表示するものとして,日本の取引者及び需要者の間で,一定程度,知られていたものということができる。

以上に加え,水甚社が,本件商標の構成にない,雲を想起させる図形及
びヨットの図形を意図的に付加して,引用商標に酷似する本件使用商標としていることからすると,本件商標の使用態様が,社会通念上,適正な使用の範囲内のものということができず,水甚社は,他人(被告)の業務に係る商品と混同を生ずる行為をしたと認められる。
(4)

まとめ

本件商標の通常使用権者である水甚社は,本件商標に類似する商標をその指定商品に含まれる商品「シャツ」に使用し,他人(被告)の業務に係る商品「靴(デッキシューズ)
」と混同を生ずる行為をしたものであり,かつ,原告がその事実を知らなかった場合において,相当の注意をしていたということもできないから,本件商標は,商標法53条1項に基づき取り消すべきである。
第3

原告主張の審決取消事由(他人の業務に係る商品と混同を生じる行為をした
との点についての認定判断の誤り)
1
引用商標の周知性等について

以下の(1)~(3)のとおり,引用商標は,広告宣伝の量,引用商標を付した商品の販売数量及び売上額のいずれも少なく,本件使用行為の時点である平成25年1月28日の時点で商標法53条1項適用の前提としての周知性を獲得しておらず,引用商標との出所の混同が生じないものである。引用商標が,我が国の靴(デッキシューズ)の取引者及び需要者の間で一定程度知られていたとしている本件審決の認
定判断は誤りである。また,本件審決のいう「一定程度」とは極めて不明確な表現であり,この様に曖昧な「一定程度」という表現を用いて,出所混同のおそれがあるとするのは妥当ではない。
(1)本件審判において被告が提出した甲4~77のうち,
「雲の枠内にヨットの
図形」を有する引用商標が明らかに表示されているといえるものは,甲7,34,42,45,49~51,65,66の9件で,他の甲号証には引用商標は表示されていない。単に「トップサイダー」等の文字が記載されているにすぎない雑誌等は引用商標の周知性を証明するものとはいえない。
また,引用商標は,昭和57年から平成18年までの25年間は,雑誌や新聞で全く表示されていない上,平成19年以降についても,年に3回掲載されたのは平成23年のみであり,その他の年は,年1,2回掲載されただけである。(2)本件審決が認定した平成22年から平成24年までの3年間の日本における被告の靴(デッキシューズ)の合計販売数量である「約52万足」は,被告の主張する「5万2572足」と一致しない上,1足当たりの価格とも整合せず,誤記であり,販売数量は正しくは「約5万2000足」である。そして,この年平均にして約1万7000足という販売数量や1年間当たりの「1億0499万9972円」
という売上額は,
ワラビ―ブーツやデザートブーツで有名なクラークス社の
「C
LARKS」ブランドの年商「22億8800万円」と比較して,約25分の1という小さなものである。
また,本件審決が認定した全世界での6年間の販売数量約100万足は,平成24年から平成29年までの数字であり,本件使用行為がされた平成25年1月時点以前のものではない。そのほとんどが,本件使用行為の時点以降の年度の販売数量であり,本件使用行為以前の平成24年における全世界の販売数量は27万8916足であり,これも小さいものといえる。
(3)

別件の登録異議申立事件(異議2016-900201号事件)の決定
(以下「別件異議決定」という。甲101)では,本件審判でも提出されていた甲
5~72と同一の証拠に基づいて,本件使用行為より後の時点である平成27年10月や平成28年2月の時点でも引用商標が周知性を獲得していない旨の判断がされている。
2
本件使用商品と引用商標が使用される商品との関連性について

引用商標が使用される商品は,靴のうち特にデッキシューズであるが,本件使用商標はシャツに付したものである。シャツとデッキシューズについて,需要者は多少異なる。
また,シャツと靴は,同じ店舗で販売されることもあるが,シャツ売場と靴売場は,同じ店舗内でも異なった場所にある。
さらに,シャツと靴は,いずれも身に着ける商品であるが,身に着ける箇所,用途が全く異なり,生産部門,原材料及び品質,用途等が一致しない。加えて,引用商標は,靴について周知性を獲得していないし,被告は,シャツについて引用商標を付した商品を販売していない。
したがって,本件使用商品と被告の靴との関連性は低く,出所混同が生じるおそれはない。
3
その他

本件商標は,平成12年5月に旧会社から原告に譲渡されたものであるが,その際,旧会社は本件商標を「被服」に使用しても,旧会社の所有する商標「TOP-SIDER」
とは出所の混同を生じないと認識して譲渡を行ったものと推測される。4
以上のとおり,本件商標の通常使用権者である水甚社が,本件商標に類似す
る商標をその指定商品に含まれる商品「シャツ」に使用し,被告の業務に係る商品「靴(デッキシューズ)
」と混同を生じる行為をしたとはいえないから,本件審決は
取り消されるべきである。
第4
1
被告の主張
引用商標の周知性等について

以下の(1)~(3)のとおり,引用商標の周知性についての本件審決の認定判断に誤
りはない。また,引用商標の周知性は,
「他人の業務に係る商品と混同を生ずる行為
を行ったこと」という要件を満たすかどうかの判断材料の一つにすぎず,原告が主張するような前提条件ではない。引用商標の周知性以外にも,引用商標と本件使用商標との類似性の程度,引用商標の独創性,引用商標の商品と本件使用商品との関連性の程度が総合的に認定判断されるものであり,本件審決が,引用商標の周知性について「一定程度」という表現を用いたからといって,誤りではない。(1)

原告が指摘する以外に,甲59,67及び71においても引用商標と同一
の商標を視認することができ,引用商標又はこれと社会通念上同一といえる標章が表示されている雑誌や新聞は,提出されている証拠上で12件ある。また,被告は引用商標を「トップサイダー」のデッキシューズに継続して使用してきた。新聞や雑誌の紙面は限られているため,全ての記事に商品を紹介する写真を掲載できるわけではないところ,
これらの記事において文字で紹介されている
「ト
ップサイダー」
とは被告の商品を表すものであることは明らかである。
したがって,
新聞や雑誌に「トップサイダー」と文字で掲載された場合,その中に引用商標を使用したデッキシューズが含まれていることは明らかである。
そして,引用商標が25年の時を経て平成19年頃より再び雑誌等に取り上げられるようになったことは,引用商標に係る商品を求める需要者が多数存在し,当該商品が根強い人気を持つことを証明するものであるし,同年頃より特に引用商標に係る商品が注目されるようになったことを意味する。
(2)

本件審決は,靴の売上げを数量のみでなく売上額3億1499万9165
円にも基づいて認定判断したと考えられる。
また,引用商標を付した靴(デッキシューズ)の販売数量は,取引者及び需要者を考慮して判断されるべきであるところ,我が国の靴(デッキシューズ)の取引者及び需要者は,全人口に比べて少ないから,販売数量は決して少なくないものである。
原告は,クラークス社の「CLARKS」ブランド全体の年商を被告の売上額と
比較しているが,
「CLARKS」
ブランドにどのような商標が含まれているかは明
らかではなく,通常,ブーツの単価はデッキシューズの単価より高いため,単純に売上額のみを比較しても被告の売上額が低いことの根拠とはならず,原告の主張は失当である。
(3)

別件異議申立事件と本件審判では,
出されている証拠や商標が違い,
事案

を異にするから,周知性の認定判断が異なるのは当然である。また,別件異議申立事件における判断と本件審判における判断が同じでなければならないという理由はない。さらに,商標法53条1項における出所の混同の認定判断と同法4条1項7号,15号,19号における周知性の認定判断とが同じでなければならないという理由もない。
2
本件使用商品と引用商標が使用される商品との関連性について

靴とシャツは,いずれも身に着ける商品であり,同じブランドで統一したファッションを求める消費者の要望に応じて,同じ店舗で販売するといったことも通常行われている。実際にデパートでは服の売場で靴やバッグを販売している(乙1)。ま
た,被告は,アメリカにおいて靴とシャツの双方を販売しているため,日本の取引者及び需要者においても,被告の靴と水甚社のシャツとの間に出所の混同が生じる可能性は高いといえるし,靴とシャツはいずれも商標分類の第25類に属する商品である。
加えて,本件使用行為がされた平成25年1月28日の時点ではインターネットによる商取引が発達していたところ,ウェブショップで買い物をする場合,需要者は関心のあるブランドをキーワードで検索することが多い。例えば,楽天市場において,
「topsider」をキーワード検索したところ,引用商標を付したデッキシューズと水甚社が運営するウェブショップで販売されているシャツが並んで表示された(乙2)
。したがって,インターネットによる商取引が発達した現在,デッキシューズとシャツとの関連性は高く,需要者において出所の混同を生じさせる可能性は高いといえる。

さらに,不正使用による取消しが認められた過去の裁判例では,主たる需要者層が同様に強い関心を持つ商品に関しては,
「当然生ずる出所の混同のおそれを超え
て,その商品が原告又は原告と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品ではないかとその出所について誤認混同されるおそれがあるものと認められる。
」と判断されている(乙3)
。引用商標を使用した商品であるデッキシュ
ーズの主たる需要者層は,1970年代のトラッドファッションに関心がある需要者であり,そのような需要者は,デッキシューズと同様にシャツにも強い関心を持つと考えられるため,デッキシューズとシャツとの関連性は高く,需要者において出所の混同を生じさせる可能性は高い。
以上のとおり,本件審決の認定判断は正しいものである。
3
その他

旧会社が被告へ本件商標を譲渡する際,本件商標が「被服」に使用されても,旧会社の所有する商標とは出所の混同を生じないと認識していたとの事実はない上,その後,原告がその使用権者に不当な使用をさせることは知り得なかった。また,商標法53条は,商標権の使用権者が商標を不当に使用して需要者に商品の品質の誤認や商品の出所の混同を生じさせた場合における制裁規定であるから,旧会社の認識は本件における判断に影響しないものである。
第5
1
当裁判所の判断
審決の理由中,本件商標と本件使用商標が類似していること,本件使用商品
が本件商標の指定商品に含まれること,水甚社が本件商標の通常使用権者であり,本件使用商品を丸井社に譲渡し又は引き渡したこと,水甚社が本件使用商標を本件使用商品に使用していたことを原告が知っていたことについては,いずれも証拠
(甲
1,2,79,81~83)及び弁論の全趣旨により認められる。2
取消事由について

(1)

引用商標の独創性,本件使用商標と引用商標の類似性の程度
引用商標は,雲を想起させる図形の内側に,
「SPERRY」の欧文字を
小さく表し,その下により大きく表記された「TOP-SIDER」の欧文字とヨットの図形を配した構成からなり,欧文字部分,雲を想起させる図形及びヨットの図形からなる全体の構成は,独創性が高いものといえる。
そして,引用商標について,
「SPERRY」と「TOP-SIDER」が2段に
分けて記載されていること,
「TOP-SIDER」が「SPERRY」に比して明
らかに大きく,かつヨットの図形をまたいで目を引くように表示されていること,「SPERRY」「TOP-SIDER」及び各図形部分との間に称呼や観念上の,
結びつきがないことからすると,引用商標について,
「TOP-SIDER」を要部
として抽出することができ,そこから「トップサイダー」の称呼及び「上層部,首脳部」の観念を生じるものといえる(甲75)


他方,本件使用商標の全体の外観は,
「SPERRY」の文字の有無以外

は,引用商標と同一である。すなわち,雲を想起させる図形及びヨットの図形の形状,各文字の大きさ,字体及びその配置等のいずれの点でも本件使用商標は引用商標と同一であり,全体の外観において,本件使用商標は引用商標に酷似している。また,上記アと同様に,
「TOP-SIDER」及び各図形部分との間に称呼や観
念上の結びつきがないことなどからすると,本件使用商標についても「TOP-SIDER」を要部として抽出することができ,その場合には,引用商標と同じ「トップサイダー」の称呼及び「上層部,首脳部」の観念を生じる(甲75)。

上記のとおり,
本件使用商標は,
独創性の高い引用商標と類似しており,

かつその類似性の程度は極めて高いものといえる。
(2)引用商標の周知性について

前提事実

以下の各証拠及び弁論の全趣旨によると,次の事実が認められる。(ア)

被告は,アメリカのマサチューセッツ州でAによって創業された会
社に端を発している(以下,特に断らない限り,被告の前身である旧会社等も含めて単に「被告」といい,被告又はそのライセンシーによって製造販売された靴を総称して「被告の靴」という。。創業者であるAは,愛犬の足の裏から着想を得て,)
ヨット等の船舶のデッキ上でも滑りにくい形状をしたラバー製の靴底を持つデッキシューズを開発し,1935年(昭和10年)に「トップサイダー(TOP-SIDER)
」としてこれを発売したところ,被告の靴は,アメリカ海軍のオフィシャルシューズとして採用されたりするなどアメリカにおいて人気を博した。(甲4,7,
26~28,37,42,45,47,48,57,65,67)(イ)

日本国内において,
被告の靴は,
昭和46年には銀座のメンズショッ

プで販売されていた。被告の靴は,昭和49年から国内流通が始まり,昭和57年には当時300店舗を展開していたチヨダ靴店においても販売されていた。また,昭和63年から平成4年までは株式会社アシックス
(以下
「アシックス社」
という。

が,平成5年からはアキレス株式会社(以下「アキレス社」という。)が,それぞれ
被告と独占販売契約を締結して被告の靴を販売していた上,
平成23年9月からは,
靴の大手小売店であるABCマートが,日本における販売代理店となって,被告の靴を販売するようになった。
これらの靴は,
いずれも
「スペリー・トップサイダー」

「スペリートップサイダー」あるいは「トップサイダー」というブランド名で販売されていた(甲8~18,28~31,48,65)
なお,
平成22年3月から平成25年2月までの3年間における被告の靴のうち,引用商標が付されたものの日本における販売数量は,以下のとおりである(甲109)



平成22年3月から平成23年2月まで

9781足



平成23年3月から平成24年2月まで

1万2075足



平成24年3月から平成25年2月まで

3万0716足



合計

5万2572足

(ウ)

以下のとおり,
昭和52年から平成25年までの間に,
被告の靴に関

する記載が,
雑誌や新聞に数多く掲載され,
さらに,
小説や辞書にも掲載された
(甲
5~72,74,75)

a
雑誌「The

KAZI」の昭和56年4月号(甲7)
,雑誌「2n

d」の平成19年7月号,平成21年7月号,平成22年7月号,平成23年8月号,同年9月号及び平成24年7月号(甲34,42,45,49~51),平成2
4年6月1日に発行された雑誌
「GRIND」
(甲59)雑誌
,「Free&Easy」
の平成22年6月号(甲65)
,雑誌「MEN’S

EX」の平成23年8月号(甲

66)
,雑誌
「Safari」
(発行部数約14万部)の平成24年6月号(甲67,
73)雑誌

「ファインボーイズ」
の平成25年6月号
(甲71)
には,
引用商標が,
靴(デッキシューズ)の内底や後部や上部に付されたり,靴とともに掲げられたりして表示されている。
b
上記a以外の多くの雑誌や新聞において,
「SPERERY

P-SIDER」SPERERY



TOP

SIDER」TOP



TO

SIDER」


「スペリートップサイダー」「トップ・サイダー」「トップサイダー」といったよ,

うに,引用商標の要部である「TOP-SIDER」を含む欧文字や「TOP
S
IDER」及びそれを含む欧文字並びにそれらを片仮名読みした文字が,被告の靴の紹介(その多くが,デッキシューズであることを明示するか,写真とともにデッキシューズであることが分かるような形で記載されている。
)などとともに掲載さ
れている。
平成3年6月29日付けの日本流通新聞(甲13)には,デッキシューズが,もともとはヨット競技に使用される靴であったが,タウンシューズに取り入れられてその概念が広がったものであって,被告の靴がトップブランドであること,アシックス社が,同年において前年比50パーセント増の7,8億円の小売の売上げを計画していることが記載されている。また,平成9年10月15日付けの日経産業新聞(甲18)には,アキレス社が平成10年度に被告の靴の販売数量を年間20万足と平成9年度の見込みより倍増させる意向であることが記載されている。(甲5,8~28,30,33,35~41,43,44,47,48,52~58,60~62,64,68~70,72)
c
株式会社小学館から平成6年1月に出版されたランダムハウス英和
大辞典(第2版)には,
「top-sider」の意味として,
「商標

トップサイダ

ー:柔らかい皮,布製でかかとが低いゴム製のカジュアルシューズ」と記載されている。
また,
平成17年3月に文庫版が出版された村上春樹の小説
「海辺のカフカ」
にも「トップサイダーのスニーカー」という記載がある。
(甲74,75)
(エ)
イダー

水甚社と取引していた丸井社は,本件使用商標に関して,
「トップサ

1935年にアメリカで誕生して以来,
「デッキシューズ」
といえばこのブ

ランド。
」との紹介文を付して,自社のウェブサイト上で表示していた(甲81,乙4,5)


判断

上記認定事実からすると,①被告の靴は,昭和46年頃から本件使用行為がされた平成25年1月28日までの間に,日本において「スペリー・トップサイダー」,
「スペリートップサイダー」あるいは「トップサイダー」というブランド名で継続的に販売されており,大手のメーカーや靴の小売店などによって全国的に相当数が販売されてきたものと推認されること,②本件使用行為がされた時期に近接した3年間に,
引用商標を付した被告の靴が約5万足販売されていること,
③引用商標は,
被告の靴(デッキシューズ)とともに,本件使用行為に近接する時期である平成19年から平成25年までの間に,合計で10回程度,雑誌で取り上げられたほか,引用商標の要部である「TOP-SIDER」を含んだ欧文字や「TOP
SID

ER」及びそれを含む欧文字並びにそれらを片仮名読みした文字が多くの雑誌や新聞で被告の靴(デッキシューズ)とともに紹介されるなどしたこと,④辞書や小説にも取り上げられていることが認められる。これらの事実に,引用商標は独創性が高いものであることや丸井社が本件使用商標について上記認定のような紹介文を付していたことも考え併せると,引用商標は,平成25年1月28日頃には,被告の靴(デッキシューズ)を表示するものとして,靴(デッキシューズ)の取引者及びその需要者である一般消費者の間で,広く知られていたものと認められる。この点について,原告は,引用商標が表示されていた雑誌の記事は限られたものである上,
「トップサイダー」
等の文字が掲載されただけでは引用商標の周知性は基
礎づけられないと主張する。確かに引用商標が表示された雑誌の記載は,上記認定のとおり限られた数にとどまるが,被告の靴は長年にわたって相当数が販売されてきたと推認されるところ,
引用商標は商品である被告の靴にも付されており,
また,
「TOP-SIDER」「TOP


SIDER」「トップサイダー」等の表示は,


引用商標の要部又はそれを想起させる表示であって,これらの表示が数多く雑誌や新聞に掲載されたことは,
引用商標の周知性を基礎づけるものということができる。
なお,原告は,被告の靴の売上額をクラークス社の「CLARKS」ブランドの売上額との比較で主張しているが,商標の周知性の有無は必ずしも売上額のみで決まるものではなく,上記の引用商標の周知性についての判断が左右されることはない。
(3)

本件使用商品と引用商標が付された商品との関連性

本件使用商品であるシャツと引用商標が使用されていた靴
(デッキシューズ)
は,
いずれも身に着けて使用するアパレル製品であって,同じブランドで統一されてコーディネイトの対象となったり,同一の店舗内で販売されたりすることがあるものということができ,現に証拠(甲11,36,44,70)によると,被告の靴が,衣料品店でシャツなどの衣料品と一緒に販売されている事例があることが認められる。また,シャツと靴(デッキシューズ)について,同一の営業主によって製造されることもあり得るものである。
加えて,本件使用商品は,一般消費者向けのシャツであって,引用商標が付されていた靴(デッキシューズ)も,一般消費者向けの商品であると認められるものである。
したがって,本件使用商品と引用商標が付された靴とは,販売場所や需要者を共通にするなど高い関連性を有するものということができる。
(4)

本件商標の使用態様等について
本件使用商標には,本件商標にはない,雲を想起させる図形とヨットの図形が付加されており,
本件使用商標は引用商標と外観上極めて類似したものとなっている。また,本件使用商標は,本件使用商品の襟の部分に付されていたほか,本件使用商品には本件使用商標を記載した下げ札が二つ付されており
(甲79)本件使用商標

は,取引者や需要者が容易に認識できるような形で使用されていた。(5)「他人の業務に係る商品と混同を生ずるものをした」
かどうかについての
判断
以上のとおり,引用商標は,被告の靴(デッキシューズ)を表示するものとして取引者及び需要者の間で,広く知られているところ,本件使用商品であるシャツと引用商標が使用されている靴
(デッキシューズ)
が関連性の高いものであることや,
本件使用商標は,
本件商標に雲を想起させる図形とヨットの図形が付加されていて,引用商標と極めて類似するものであることからすると,本件使用商品に接した取引者や需要者たる一般消費者にとって,本件使用商品が被告の業務に係る商品であるとの混同を生じるおそれが十分にあるというべきである。
(6)

原告のその他の主張について

原告は,別件異議決定(甲101)では,本件使用行為より後の時点でも引用商標が周知性を獲得していない旨の判断がされていると主張するが,別件異議決定は,
本件とは異なる事件についての特許庁の決定であって,本件についての前記(5)の判断を左右するものではない。
また,原告は,旧会社は,原告が本件商標を被服に使用しても,出所混同は生じないと認識していたと推測されることから,本件において出所混同のおそれはないと主張する。確かに旧会社が,指定商品を「第17類

被服(運動用特殊被服を除

く)
,布製見回品(他の類に属するものを除く)
,寝具類(寝台を除く)
」とする本件
商標を原告に譲渡したという過去の経緯からすると,旧会社としては,原告が「TOP-SIDER」の欧文字からなる本件商標を,被服等の上記指定商品に使用しても出所混同は生じないとして容認していたものと推認できる。しかし,そうであるからといって,
そのことから直ちに,
旧会社が,
水甚社が本件でしていたように,
本件商標に雲を想起させる図形とヨットの図形を付加し,引用商標に極めて類似する構成で使用することについても出所混同が生じないとして容認していたとはいえないのであるから,前記(5)の判断を左右するものではない。
第6

結論

以上のとおり,商標法53条1項に基づいて,本件商標を取り消すべきとした本件審決の認定判断に誤りはなく,原告の請求には理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第2部

裁判長裁判官
森義之
裁判官
佐野熊谷信
裁判官
大輔
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