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入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律違反、収賄、公契約関係競売入札妨害、贈賄被告事件
事件番号平成30(わ)55
事件名入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律違反,収賄,公契約関係競売入札妨害,贈賄被告事件
裁判年月日平成30年9月13日
法廷名高知地方裁判所
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平成30年9月13日宣告
平成30年(わ)第55号

主文
被告人Aを懲役2年に,被告人Bを懲役1年に処する
この裁判が確定した日から,被告人Aに対し4年間,被告人Bに対し3年間,それぞれその刑の執行を猶予する。
被告人Aから金45万5767円を追徴する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人Aは,平成21年4月1日から平成26年3月31日までの間,高知県C市建設課長として,
同市が発注する土木工事等の設計金額の決定等の職務に従事し,
次いで,同年4月1日から平成27年3月31日までの間,同市建設課技師(再任用)として,同年4月1日から平成28年1月14日までの間,同市商工観光課技査(再任用)として,それぞれ同市が発注する土木工事等の設計金額の積算,随意契約における相見積業者の選定等の職務に従事し,次いで,同月15日から平成29年10月3日までの間,同市副市長として,C市長を補佐し,同市が発注する土木工事等の事務全般を統括し,工事の施工決定等の職務に従事していたもの,被告人Bは,土木工事の設計請負及び施工等を目的とする有限会社Dの取締役として,同社の業務全般を統括掌理していたものであるが
第1

被告人Aは,C市が平成25年10月17日に入札を執行した「●●改良工事」の制限付き一般競争入札に関し,同市建設課長の前記職務に従事する者として適正に入札等に関する職務を行う義務があるのに,その職務に反し,同月中旬頃,高知県C市ab番地所在のC市役所において,前記Bに対し,入札に関する秘密事項であり,同工事の最低制限価格を算定する基準となる設計金額を教示し,前記Bをして,同教示に係る設計金額に基づき同工事の最低制限価格を推知させ,よって,同月17日,同市役所において執行された同工事の入札において,Dをして,最低制限価格である268万円で入札させて同工事を落札させ,もって入札等の公正を害すべき行為を行った
第2

被告人Aは,C市が平成27年6月下旬頃に実施した「●●補修工事」の見積り合わせによる随意契約の締結に関し,同市商工観光課技査の前記職務に従事する者として適正に見積り合わせに関する職務等を行う義務があるのに,その職務に反し,同月24日頃,前記C市役所において,前記Bに対し,氏名欄をそれぞれ白地とし,金額欄にそれぞれ「¥1,263,600」「¥1,300,320」「¥1,317,600」などと記載した見積書3通を交付し,見積り合わせに関する秘密事項である予定価格129万4920円に近似する126万3600円を同社の見積金額とする見積書を作成するとともに,協力業者2社に同金額を上回る金額を見積金額とする見積書を作成させて提出すれば,Dが確実に契約可能である旨を教示し,同月下旬頃,同市役所において,前記Bをして,金額欄に「¥1,263,600」などと記載した同社作成の見積書1通等を提出させ,よって,その頃,同社をして,同金額で同工事の契約者に決定させ,もって入札等の公正を害すべき行為を行った

第3

被告人Aは,C市が平成28年7月28日に入札を執行した「●●農道整備工事」の制限付き一般競争入札に関し,同市副市長の前記職務に従事する者として適正に入札等に関する職務を行う義務があるのに,その職務に反し,同月下旬頃,前記C市役所において,前記Bに対し,入札に関する秘密事項であり,同工事の最低制限価格を算定する基準となる設計金額を教示し,
前記Bをして,
同教示に係る設計金額に基づき同工事の最低制限価格を推知させ,よって,同月28日,同市役所において執行された同工事の入札において,Dをして,最低制限価格である1620万円で入札させ,もって入札等の公正を害すべき行為を行った

第4

被告人Aは,C市が発注する土木工事の制限付き一般競争入札及び随意契約に関し,入札の秘密事項である設計金額等の教示及び随意契約における業者選定等についてDが有利かつ便宜な取り計らいを受けたことに対する謝礼及び今後とも同様の取り計らいを受けたいとの趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら,別表1記載のとおり,平成26年1月10日頃から平成29年7月20日頃までの間,11回にわたり,高知市cd丁目e番f号g所在のEほか11か所において,前記Bから,合計45万5767円相当の飲食の接待の供与を受け,もって自己の前記各職務に関し賄賂を収受した
第5

被告人Bは,前記第2記載の「●●補修工事」の見積り合わせによる随意契約の締結に関し,平成27年6月24日頃,前記C市役所において,前記Aから,氏名欄をそれぞれ白地とし,金額欄にそれぞれ「¥1,263,600」「¥1,300,320」「¥1,317,600」などと記載した見積書3通の交付を受け,見積り合わせに関する秘密事項である予定価格129万4920円に近似する126万3600円をDの見積金額とする見積書を作成するとともに,協力業者2社に同金額を上回る金額を見積金額とする見積書を作成させて提出すれば,Dが確実に契約可能である旨の教示を受け,同月下旬頃,同市役所において,前記Aに対し,金額欄に「¥1,263,600」などと記載した同社作成の見積書1通等を提出し,よって,その頃,同社をして,同金額で同工事の契約者に決定させ,もって偽計を用いて公の入札で契約を締結するためのものの公正を害すべき行為を行った

第6

被告人Bは,前記第3記載の「●●農道整備工事」の制限付き一般競争入札に関し,平成28年7月下旬頃,前記C市役所において,前記Aから,入札に関する秘密事項であり,同工事の最低制限価格を算定する基準となる設計金額の教示を受け,
同教示に係る設計金額に基づき同工事の最低制限価格を推知し,
よって,同月28日,同市役所において執行された同工事の入札において,Dをして,最低制限価格である1620万円で入札させ,もって偽計を用いて公の入札で契約を締結するためのものの公正を害すべき行為を行った第7

被告人Bは,前記第4記載の趣旨のもとに,別表2記載のとおり,平成27年4月10日頃から平成29年7月20日頃までの間,7回にわたり,前記Eほか6か所において,前記Aに対し,合計28万6840円相当の飲食の接待をし,もって前記Aの前記各職務に関し賄賂を供与した

ものである。
(法令の適用)
1
被告人A
罰条
判示第1ないし第3の各所為

いずれも入札談合等関与行為の排除及び防止並
びに職員による入札等の公正を害すべき行為の
処罰に関する法律8条

判示第4の各所為

別表1の各番号ごとに(番号1,同2,同4,
同7ないし11は各番号ごとに包括して)いず
れも刑法197条1項前段

刑種の選択

判示第1ないし第3につき各所定刑中いずれも
懲役刑を選択

併合罪の処理

刑法45条前段,47条本文,10条(犯情の
最も重い判示第4別表1番号10の罪の刑に
法定の加重)

執行猶予

情状により刑法25条1項

追徴

刑法197条の5後段(判示第4の各犯行によ
り収受した賄賂45万5767円の相当額)

2
被告人B
罰条
判示第5及び第6の各所為

いずれも刑法96条の6第1項

判示第7の各所為

別表2の各番号ごとに(番号3ないし7は各番
号ごとに包括して)いずれも刑法198条
刑種の選択

各所定刑中いずれも懲役刑を選択

併合罪の処理

刑法45条前段,47条本文,10条(犯情の
最も重い判示第7別表2番号6の罪の刑に法定
の加重)

執行猶予

情状により刑法25条1項

(量刑の理由)
1
本件は,C市が発注した公共工事について,同市職員ないし副市長の立場にあった被告人Aが,その受注を望む事業者の取締役であった被告人Bに対し,入札等に関する秘密事項である設計金額を教示するなどし,一方,こうした取り計らいを受けた被告人Bが,これを利用して入札を行うなどし,それぞれ請負契約に関する入札の公正を害すべき行為を行い(判示第1ないし第3,第5,第6),こうした有利な取り計らいに対する謝礼やその継続を望む趣旨で,被告人Bから被告人Aに対する飲食接待の供与という賄賂の供与,収受が繰り返された(判示第4,第7)という事案である。

2
被告人Aは,被告人Bに対し,判示第1及び第3の各入札に際しては,設計金額を教示して一般競争入札における秘密事項である最低制限価格を推知させてその価格での入札をさせ,判示第1の入札では被告人Bの経営する会社に落札させるに至り,また,判示第2の見積り合わせによる随意契約に際しては,一般競争入札の対象となることを回避すべく,随意契約の上限額以内となる設計図を作成して随意契約の対象とし,C市において競争性確保のため,複数の業者による見積り合わせを行い,最も低額の見積書を提出した業者を選定することとされていたにもかかわらず,被告人A自身が業者が作成すべき見積書を金額を変えて3通作成し,
これを被告人Bに交付してその経営に係る会社に受注させたものである。被告人Bにおいても,こうした被告人Aからの有利な取り計らいを利用して,判示第5の見積り合わせによる随意契約(判示第2の随意契約と同じ)では現に工事を受注し,判示第6の入札(判示第3の入札と同じ)に際しては,自己が経営する会社をして最低制限価格での入札をさせたのであり,いずれも公の入札制度をないがしろにする悪質な犯行であるとともに,現に受注に至った事案があることに鑑みれば,公の入札についての公正を害した程度も重い。なお,C市においては,随意契約締結に際して行われる複数事業者の見積り合わせが相当程度形骸化していたという事情は窺われるが,こうした事情が被告人らの刑事責任を軽くするものとは考えられない。
3
そして,被告人Bは,前述したような有利な取り計らいを受けたことへの謝礼やその継続を望む趣旨で,被告人Aに対する飲食接待を繰り返し,中には1日で6万円を超える費用を要した接待も含まれ,平成27年4月から平成29年7月までの間,7回にわたり合計28万円を超える飲食接待を行い,被告人Aは,こうした趣旨を十分に承知しつつ,平成26年1月から平成29年7月までの間,11回にわたり合計45万円を超える飲食接待を受けたものである。これらは,
賄賂の合計金額としては殊更に高額であるとまではいえないものの,被告人らの供述によれば,飲食接待は平成21年頃から継続的に行われてきたというのであり,その常習性は顕著であって,強い非難を免れない。そして,こうした贈収賄が繰り返される中で,上述のとおり,公の入札の公正を害すべき行為が繰り返され,被告人Bが経営する会社に対し,公共工事の受注等の多大な利益がもたらされていたというのであるから,公務の公正さに対する社会の信頼は著しく害されたものといわねばならない。
以上によれば,本件各犯行の犯情は,いずれも悪質である。

4
被告人Aは,被告人Bからの高額の飲食接待という賄賂を繰り返し収受し,これに対する見返りとして,また,更なる賄賂が供与されることを期待して,その職務に反し,入札に関する秘密事項を教示するなどの入札の公正を害すべき行為を繰り返していたものであり,その利欲的な犯行の動機に酌量の余地はない。また,上述のとおり,C市において随意契約締結に際して競争性確保のための見積り合わせが形骸化していたという事情があるにせよ,そうした中で,公務や公の入札の公正を保持しなければならないとの規範意識が著しく鈍麻していたものと認められ,その刑事責任は重いといわざるを得ない。もっとも,被告人Aには,事実を率直に認め,
副市長を辞職した際の退職金の自主返納の申入れを行うなど,
本件に対する反省を深めていることが窺われること,これまで前科前歴がないことなどの有利な事情があり,公判廷で証言をした妻など,被告人の更生を支える家族がいることをも考慮すると,同被告人には,主文掲記の懲役刑を科した上,その刑の執行を猶予し,社会内での更生の機会を与えるのが相当である。そして,被告人Bは,利益率が高く,支払が確実に受けられる公共工事を数多く受注するため,
被告人Aに対する高額の飲食接待という賄賂の供与を繰り返し,
これにより入札に関する秘密事項の教示等の有利な取り計らいを得られたことを利用して,最低制限価格での入札をするなど,公の入札の公正を害すべき行為を繰り返したもので,これまた利欲的な動機に基づく犯行というほかなく,酌量の余地はない。被告人Bは,C市における随意契約では,不正な見積り合わせが常態化していたというが,そうした状況の中で同被告人自身,入札の公正を害すべき行為への罪の意識が著しく希薄化していたことも事実なのであり,これにより同被告人への非難の程度が軽くなるとは考えられない。その刑事責任は,決して軽視できるものではない。もっとも,同被告人には,事実を素直に認めて反省していること,本件が広く報道されるとともに,本件の発覚によりその経営に係る会社は高知県及びC市の公共工事につき12か月間指名停止となり,高知県知事に対して建設業の廃止を届け出るに至ったことなど,一定の社会的制裁を受けたといえること,前科前歴がないことなどの有利な事情もあることを考慮すると,主文掲記の懲役刑を科した上,その刑の執行を猶予し,社会内での更生の機会を与えるのが相当である。
5
以上の次第で,主文のとおりの量刑とした。

(求刑―被告人A:懲役2年,45万5767円追徴,被告人B:懲役1年)平成30年9月13日
高知地方裁判所刑事部
裁判長裁判官

山田
裁判官

髙田卓
裁判官

渡辺正
別表省略

裕文
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