判例検索β > 平成29年(行コ)第350号
事件番号平成29(行コ)350
裁判年月日平成30年9月27日
法廷名東京高等裁判所
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主文1
原判決を取り消す。

2
静岡県公安委員会が控訴人に対して平成27年8月20日付けでした,控訴人の運転免許を取り消し,同日から4年間を免許を受けることができない期間として指定する処分を取り消す。

3
訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。

第1

実及び理由
控訴の趣旨
主文同旨

第2
1
事案の概要
本件は,控訴人(原告)が,平成27年3月9日,浜松市a区b町c番地のd付近の道路上において,身体に呼気1ℓにつき0.15mg以上0.25mg未満のアルコールを保有する状態で控訴人所有の普通乗用自動車(以下「控訴人車」という。)を運転し(以下「本件運転行為1」という。),また,同年5月18日,静岡市e区f町g番h号先道路上において,身体に呼気1ℓにつき0.25mg以上のアルコールを保有する状態で控訴人車を運転した(以下「本件運転行為2」という。)こと等から,控訴人の違反行為に係る累積点数が40点となったとして,静岡県公安委員会が,同年8月20日付けで,控訴人に対し,控訴人の運転免許を取り消し,同日から平成31年8月19日までの4年間を運転免許を受けることができない期間(欠格期間)として指定する旨の処分(道路交通法(以下「道交法」という。)103条1項5号,7項,同法施行令(以下「施行令」という。)38条5項1号イ,6項2号ロ,別表第三の一。以下「本件処分」という。)をしたところ,控訴人が,本件運転行為1及び2に係る各酒気帯び運転の事実はないと主張し,本件処分の取消しを求めた事案である。
原審が控訴人の請求を棄却したところ,控訴人が控訴した。
2
関連法令の定め,前提事実並びに争点及び争点に対する当事者の主張は,次の点を改めるほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第2

事案の概要」の

1ないし3に記載のとおりであるから,これを引用する。
原判決5頁3行目末尾に改行して次のとおり加える。


しかも,上記飲酒検知に用いられた北川式飲酒検知管SE型の指示値は,
被験者の不利にならないように低めに設定してあり,真のアルコール濃度の約73.3%以下~約80%を指示するところ,同検知管の指示値を控訴人に有利な0.16mg/ℓとし,それが真のアルコール濃度の80%相当であるとしても,真のアルコール濃度は0.20mg/ℓであったことになる。」
原判決5頁10行目末尾に改行して次のとおり加える。


平成30年3月15日実施の静岡地方検察庁における同様の実験につい
て,控訴人が主張する入れ歯安定剤の使用量は明らかに過大であり,被験者をAとし,入れ歯安定剤を入れ歯に塗り広げ,かみ合わせをした後,はみ出した部分をちぎり取った状態(パターン2)での実験のみが参考となり得る。したがって,入れ歯装着から26分経過後には,うがいの有無にかかわらず,検出されたアルコールは0mg/ℓであるから,飲酒検知の結果に入れ歯安定剤が影響したということはできない。」
原判決6頁11行目の「理由がないこと」の次に「,平成30年3月15日実施の静岡地方検察庁における同様の実験によっても飲酒検知の結果に入れ歯安定剤が影響したということはできないこと」を加える。
原判決8頁11行目末尾に改行して次のとおり加える。


平成30年3月15日実施の静岡地方検察庁における同様の実験によれ
ば,控訴人が,通常の使用方法で,入れ歯安定剤を使用した場合,26分経過し,うがいをした後でも,呼気から,0.15mg/ℓ程度のアルコールが検出されることが明らかになった。なお,平成27年3月9日における入れ歯安定剤使用から飲酒検知までの正確な時間は特定されていないが,26分程度であった可能性がある。」
原判決8頁25行目の「述べたとおり」の次に「(加えて,入れ歯安定剤使用から飲酒検知までの時間は20分程度であった可能性がある。)」を加える。
原判決9頁14行目の「液体」を削る。
原判決23頁16行目の「第三欄」から同18行目を「第三欄から第六欄のとおり規定しているから,過去3年以内の累積点数が15点以上に該当したときが免許取消しの基準となる。」に改める。
原判決24頁15行目から16行目にかけての「64が通行帯違反(法20条違反)である。」を「24が信号無視(法7条違反)である。」に改める。
第3
1
当裁判所の判断
当裁判所は,控訴人の請求は理由があるものと判断する。その理由は,次のとおりである。

2
認定事実
当裁判所の認定する事実は,次の点を改めるほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第3

当裁判所の判断」(以下「原判決第3」という。)の1に記

載のとおりであるから,これを引用する。
原判決10頁22行目の「0.16」から同23行目の「以上)」までを「0.15mg以上」に改める。
原判決12頁3行目の「4パーセント」を「3パーセント」に改める。原判決13頁1行目の「受けている(甲49)。」を「受けたが,控訴人は控訴し,平成30年6月27日,控訴審である東京高等裁判所において各酒気帯び運転の点について無罪の判決(同裁判所平成29年(う)第952号)を受け(甲49,71),同判決は確定した。」に改める。
原判決13頁1行目末尾に改行して次のとおり加える。
入れ歯安定剤の飲酒検知結果に対する影響に関する実況見分結果

平成28年9月6日実施実況見分(甲37)
静岡中央警察署における消防士立会による標記実況見分において,控訴人の使用する入れ歯(上顎の総入れ歯及び下顎の部分入れ歯)に似た入れ歯を使用するAを被験者として,本件運転行為1及び2の酒気帯び運転について入れ歯安定剤に含まれるエタノールが影響するか否かを確かめる実験がされた(以下「本件実験1」という。)。
同実験では,被験者が使用する入れ歯の上顎と下顎に本件入れ歯安定剤を塗り広げ,噛み合わせをした後,入れ歯から口中にはみ出したものはちぎり取って入れ歯を装着して実験した。そして,会話をした状態と会話をしない状態の2回について,北川式飲酒検知器及び飲酒検知管SE型により入れ歯装着時点から5分おきに呼気採取し,呼気採取の最終時点(26分後)においては,うがいをせずに呼気採取をした後,直ちに水道水をいったん口に含んで吐き出させて呼気採取し,それぞれの呼気のアルコール測定を行った。
その結果,いずれも,本件入れ歯安定剤をつけた直後には0.4mg/ℓのアルコールを検知したほか,会話をした状態では,本件入れ歯安定剤をつけた15分後,20分後及び26分後並びに26分後うがいをした場合に0.01mg/ℓのアルコールを検知し,会話をしない状態では,同20分後及び26分後並びに26分後うがいをした場合に0.02mg/ℓのアルコールを検知した。
ただし,上記検知管には0.05mg/ℓより小さい目盛りはないため,上記計測値は目盛りの始点と0.05の目盛りを等分した計算値である(甲41)。


平成28年11月10日実施実況見分(甲39)
静岡中央警察署における消防士立会による標記実況見分において,Aを被験者として,アと同目的で実験がされた(以下「本件実験2」という。)。
同実験では,被験者が使用する入れ歯の上顎と下顎に,控訴人が本件刑事事件の第1審第7回公判(平成28年8月16日。甲10)で供述する方法で本件入れ歯安定剤を塗り(上記供述は,本件入れ歯安定剤を塗った後,左右均等にかみ締め,はみ出した部分は取り除き,はみ出さなかったら取り除くことはしないというものである。)入れ歯を装着したほかは,本件実験1と同様の方法によりアルコール測定を行った。
その結果,本件入れ歯安定剤をつけた直後に会話をした状態では0.4mg/ℓ,会話をしない状態では0.2mg/ℓのアルコールを検知したほか,いずれも本件入れ歯安定剤をつけた20分後及び26分後並びに26分後うがいをした場合に0.01mg/ℓのアルコールを検知した。
ただし,上記計測値は本件実験1と同様の計算値である(甲41)。ウ
平成30年3月15日実施実況見分(甲68~70)
静岡地方検察庁における本件刑事事件の控訴審の弁護人(本件控訴人訴訟代理人)及び検察官立会による標記実況見分において,控訴人及びAを被験者として,アと同目的で実験がされた(以下「本件実験3」という。)。
同実験では,本件入れ歯安定剤の使用方法として,平成30年2月19日に本件刑事事件の控訴審の弁護人及び検察官立会により控訴人が再現した本件入れ歯安定剤の使用量の上限である上顎6.8g,下顎1.7g(甲67)を用い,両被験者は上記量を入れ歯に塗り,はみ出た部分を取り除かずに入れ歯を装着して実験(以下「パターン1」という。)をした。そして,北川式飲酒検知器及び飲酒検知管SE型により装着時点から5分おきに呼気採取し,呼気採取の最終時点(26分59秒経過後)においては,うがいをせずに呼気採取をした後,直ちにうがいをして呼気採取し,それぞれの呼気のアルコール測定を行った。また,Aは,入れ歯安定剤を入れ歯に塗り広げ,かみ合わせをした後,はみ出した部分をちぎり取った状態での同様の実験(以下「パターン2」という。)及びパターン1とパターン2の中間値の量の入れ歯安定剤を塗り,はみ出た部分をちぎり取らない状態での同様の実験(以下「パターン3」という。)を行った。
その結果は次のとおりである。
控訴人の実験(パターン1)では,入れ歯を装着した直後に0.35mg/ℓ,20分経過後に0.36mg/ℓ,26分59秒経過後のうがいをしない状態で0.26mg/ℓ,26分59秒経過後のうがいをした状態で0.15mg/ℓのアルコールを検知した。
Aのパターン1の実験では,入れ歯を装着した直後に0.9mg/ℓ又はこれを超える濃度,20分経過後に0.83mg/ℓ,26分59秒経過後のうがいをしない状態で0.77mg/ℓ,26分59秒経過後のうがいをした状態で0.42mg/ℓのアルコールを検知した。Aのパターン2の実験では,入れ歯をはめた直後に0.09mg/ℓ,20分経過後に0.01mg/ℓのアルコールを検知し,26分59秒経過後は,うがいをしない状態及びうがいをした状態ともアルコールを検知しなかった(0mg/ℓ)。
Aのパターン3の実験では,入れ歯をはめた直後に0.8mg/ℓ,20分経過後に0.44mg/ℓ,26分59秒経過後のうがいをしない状態で0.25mg/ℓ,26分59秒経過後のうがいをした状態で0.1mg/ℓのアルコールを検知した。」
3
争点1(本件運転行為1に係る酒気帯び運転の事実の有無)について本件飲酒検知1の結果
エないしカのとおり,控訴人は,平成27年3月9日の
午前6時08分頃,浜松市a区b町c番地のd付近道路上において,運転する車両が蛇行しながら対向車線にはみ出すなどした後,赤信号を無視し,これを現認した浜松東警察署の警察官らから停止を求められたこと及び同警察官らが同日午前6時20分頃控訴人に対して行った本件飲酒検知1において,控訴人の呼気から呼気1ℓにつき0.15mg以上のアルコール値(本件アルコール値1)が検出されたことが認められる。
控訴人の主張について
控訴人は,本件運転行為1当時,本件入れ歯安定剤を使用して入れ歯を装着しており,本件入れ歯安定剤に含まれているアルコール成分が本件アルコール値1に影響している可能性がある旨主張するので検討する。

原判決第3の1

ウ及びオのとおり,控訴人が本件入れ歯安定剤を使用

して入れ歯を装着したのは同日午前5時50分頃であり,呼気検査を行ったのは同日午前6時20分頃であると認められる。しかし,上記入れ歯装着時刻は,控訴人の赤信号無視の現認時刻(午前6時8分頃)から,控訴人が宿泊していたホテルから上記現認地点までの移動の所要時間を逆算してホテルのチェックアウト時刻,起床時刻を推定し,入浴などの所要時間を計算して求めた時刻であって(甲10),実際は一,二分くらい遅い時刻であった可能性を否定できない。また,上記呼気検査時刻は,鑑識カード作成時刻(午前6時40分頃)から,呼気検査及び鑑識の所要時間を逆算して求めた時刻であって(甲12,40),実際は二,三分くらい早かった可能性を否定できない。したがって,控訴人が本件入れ歯安定剤を使用して入れ歯を装着してから呼気を採取されるまでの時間は,26分以内であった可能性を否定できない。

他方で,本件実験3の控訴人を被験者とする実験によれば,入れ歯装着から26分59秒経過後のうがいをした状態で0.15mg/ℓのアルコールを検知している。
もっとも,①控訴人は,本件刑事事件において,当初(平成28年8月16日第7回公判),入れ歯安定剤の使用方法については,添付文書のとおり使用していると供述し,「はみ出したら取り除いて,もう一回なぞってならす」との使用方法を否定していなかったところ(甲10),その後(平成29年1月17日第15回公判),「入れ歯安定剤はあまりはみ出ることはなく,気にならない程度である,(はみ出た部分が)多い場合は取るが,ほとんどそういうことはない,取る場合も入れ歯をいったん口の外に出すことはなく,口の中で,指で取る。」と供述を変遷させている(甲57)こと,②上記実験の際に,控訴人の入れ歯の装着状況は口腔内に入れ歯安定剤が相当程度はみ出していたこと(甲68),③上記実験の際に,控訴人が入れ歯をはめ,かみ合わせをした後,口を開けると同時に上顎の入れ歯がずれ落ち,かみ合わせを指示するも再度,上顎の入れ歯がずれ落ちる状態であったこと(甲68)からすれば,十分かみ合わせをすれば,入れ歯安定剤は②の状態より更にはみ出したものと推認されること,④②の状況は,ほとんどはみ出すことはない旨の控訴人の供述(①後段)と矛盾することからすれば,上記実験において控訴人の主張する本件入れ歯安定剤の使用量及びはみ出す量は,過大である疑いがある。しかし,控訴人が入れ歯を装着する際,入れ歯安定剤のはみ出しがなかったとまでの証拠はなく,そのはみ出しの程度を認めるに足りる証拠はないから,本件実験1及び2並びに本件実験3のパターン2が,控訴人が本件運転行為1の際に使用していた入れ歯安定剤の状況に類似するということはできず,本件入れ歯安定剤の使用により,最大で上記

(0.15mg/ℓ)程度のアルコールが検知され
る可能性があることを否定できない。
そうすると,本件運転行為1当時の真のアルコール濃度であると被控訴人が主張する0.2mg/ℓを前提としても,控訴人が当時,呼気1ℓにつき0.15mg以上のアルコールを身体に保有する状態にあったと認めることはできない。
被控訴人の主張について
被控訴人は,①平成27年3月8日の控訴人の飲酒量,②本件飲酒検知1の当時,控訴人から強い酒臭がしていたこと,③検知結果に控訴人が納得していたこと及び④控訴人の交通違反の態様にアルコールの影響が窺われることは本件アルコール値1(ただし,0.16~0.17mg/ℓ)と整合的であると主張する。しかし,被控訴人の主張する上記各事実は,控訴人が酒気を帯びていたことを推認させるものとはいえ,その濃度が呼気1ℓにつき0.15mg以上を身体に保有する状態であったと認めるには足りない。まとめ
以上によれば,本件運転行為1当時,控訴人は,酒気を帯び,呼気1ℓにつき0.15mg以上のアルコールを身体に保有する状態になかった可能性があり,施行令別表第二の一の「酒気帯び(0.25未満)速度超過(25未満)等」に該当するとは認められない。
4
争点2(本件運転行為2に係る酒気帯び運転の事実の有無)について本件飲酒検知2の結果
原判決第3の1⑵カのとおり,控訴人は,平成27年5月18日午前7時02分頃,車両を運転して同ホテルの駐車場を出発し,静岡市e区の道路上を走行中,静岡中央警察署の警察官らから停止を求められ,同日午前7時11分頃,呼気検査を受け,本件飲酒検知2の結果,控訴人の呼気から呼気1ℓにつき0.3mgのアルコール値(本件アルコール値2)が検出されたことが認められる。


控訴人の主張について
控訴人は,本件運転行為2当時,本件入れ歯安定剤を使用して入れ歯を装着しており,本件入れ歯安定剤に含まれているアルコール成分が本件アルコール値2に影響している可能性がある旨及び本件運転行為2の直前に缶酎ハイを一口だけ誤飲しており,本件飲酒検知2の前にうがいをしたとしても,口腔内に残置されたアルコールが呼気検査の際に反応した旨主張するので検討する。


原判決第3の1

カのとおり,控訴人が本件入れ歯安定剤を使用

して入れ歯を装着したのは同日午前6時45分頃であり,呼気検査を行ったのは同日午前7時11分頃であると認められる。しかし,上記入れ歯装着時刻は,控訴人のホテルのチェックアウト時刻(午前6時55分頃)から起床時刻を推定し,入浴などの所要時間を計算して求めた時刻であって(甲10),実際は一,二分くらい遅い時刻であった可能性を否定できない。また,上記呼気検査時刻は,鑑識カード作成開始時刻(午前7時13分頃)の一,二分前であるというBの証言(甲51)によるものであって,実際は二,三分くらい早かった可能性を否定できない。したがって,控訴人が本件入れ歯安定剤を使用して入れ歯を装着してから呼気を採取されるまでの時間は,20分程度であった可能性を否定できない。

他方で,本件実験3の控訴人を被験者とする実験によれば,入れ歯装着から20分経過後に0.36mg/ℓ,26分59秒経過後のうがいをしない状態で0.26mg/ℓ,26分59秒経過後のうがいをした状態で0.15mg/ℓのアルコールを検知しており,入れ歯装着から20分経過後であれば,うがいをした状態でも,0.15mg/ℓよりも相当高い濃度のアルコールが検知されることが推認される。
上記3⑵イで説示したとおり,上記実験において控訴人の主張する本件入れ歯安定剤の使用量及びはみ出す量は,過大である疑いがあるものの,本件入れ歯安定剤の使用により,0.15mg/ℓよりも相当高い濃度のアルコールが検知される可能性があることを否定できない。以上によれば,控訴人が当時,呼気1ℓにつき0.25mg以上又は0.15mg以上のアルコールを身体に保有する状態にあったと認めることはできない。
被控訴人の主張について

被控訴人は,本件飲酒検知2の当時,控訴人から強い酒臭がしており,検知結果に控訴人が納得していたところ,控訴人が平成27年5月18日の午前2時頃まで(甲15,50,56),少なくとも缶酎ハイなど2ℓ以上の酒を飲んだとすれば,これらは,本件アルコール値2と整合的であると主張する。しかし,
上に明らかでなく,上記飲酒量の大部分は5月17日午後6時半過ぎから午後11時過ぎにホテルにチェックインするまでに摂取されたものであり,チェックイン後に摂取したことが明らかなものは若干量の缶酎ハイにとどまる。したがって,控訴人の飲酒時刻及び飲酒量並びにその他の被控訴人主張事実から,控訴人が本件運転行為2の当時,呼気1ℓにつき0.25mg以上又は0.15mg以上のアルコールを身体に保有する状態であったと推認することはできない。


被控訴人は,SE型飲酒検知管の指示値は,被験者の不利にならないように低めに設定してあり,真のアルコール濃度の約73.3%以下~約80%を指示すると主張し,その旨の同検知管の製造会社からの調査嘱託回答書(乙4)を提出する。しかし,実際に行われる飲酒検知においては,種々の誤差があり得ることは容易に推察することができる(甲第5号証によれば,缶酎ハイを口に含んで5分後では,うがいをしても口腔内に残置するアルコールから0.01mg/ℓ程度の濃度が検知されることがあり得ることが認められる。)ところ,指示値が低めに設定されているのも,このような誤差により被験者の不利になることを避けるためであって,上記調査嘱託回答書も同旨を述べるものと解される。同検知管の指示値が低めに設定されているこのような趣旨からすれば,指示値から逆算して真のアルコール濃度を推計し,これを用いることは,被験者の不利になることがあり得るから,指示値自体を用いるべきである。
まとめ
以上によれば,本件運転行為2当時,控訴人は,酒気を帯び,呼気1ℓにつき0.25mg以上又は0.15mg以上のアルコールを身体に保有する状態になかった可能性があり,施行令別表第二の一の「酒気帯び運転(0.25以上)」又は「酒気帯び運転(0.25未満)」に該当するとは認められない。
5
本件処分の適法性について
控訴人の違反点数は,本件運転行為1について,「酒気帯び(0.25未満)速度超過(25未満)等」の違反点数14点ではなく「信号無視」の違反点数2点であり,本件運転行為2について,「酒気帯び運転(0.25以上)」の違反点数25点又は「酒気帯び運転(0.25未満)」の違反点数13点は付加されないから,平成27年4月20日の車両通行帯違反の違反点数1点と併せて合計3点であり,法103条1項5号及び施行令38条5項1号イの規定の運転免許を取り消す基準に該当しない。

6
よって,控訴人の請求を認容すべきところ,これを棄却した原判決は失当であって,本件控訴は理由があるから,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第2民事部

裁判長裁判官

白石史子
裁判官

浅井
裁判官

大垣憲貴靖
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