判例検索β > 平成29年(行コ)第173号
高等学校等就学支援金支給校指定義務付等請求控訴事件
事件番号平成29(行コ)173
事件名高等学校等就学支援金支給校指定義務付等請求控訴事件
裁判年月日平成30年9月27日
法廷名大阪高等裁判所
結果その他
原審裁判所名大阪地方裁判所
原審事件番号平成25(行ウ)14
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主文1
原判決を取り消す。

2
本件訴えのうち,文部科学大臣が被控訴人に対してA高級学校について平成25年文部科学省令第3号による改正前の公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則1条1項2号ハの規定に基づく指定をすべき旨の義務付けを求める部分を却下する。

3
被控訴人のその余の請求を棄却する。

4
訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。

第1

実及び理由
控訴の趣旨
主文と同旨。

第2

事案の概要

1
事案の骨子
本件は,A高級学校を設置及び運営する被控訴人が,公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律(平成25年法律第90号による改正前のもの。同号により法律の題名が「高等学校等就学支援金の支給に関する法律」と改められた。以下「支給法」という。)2条1項5号の委任を受けて定められた同法施行規則(平成22年文部科学省令第13号。ただし,平成25年文部科学省令第3号による改正前のもの。以下「本件規則」という。)1条1項2号ハの規定(以下「本件規定」という。)に基づく文部科学大臣の指定を受けるため,当該指定に関する規程(「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則第1条第1項第2号ハの規定に基づく指定に関する規程」。以下「本件規程」という。)14条1項に基づいて申請をしたところ,文部科学大臣から,平成25年2月20日,当該指定をしない旨の処分(以下「本件不指定処分」という。)を受けたことから,本件不指定処分の取消し及び当該指定の義務付けを求める事案である。
原審は,被控訴人の請求を全部認容したため,控訴人は,これを不服として,本件控訴を提起した。
2
関係法令の概要
原判決「事実及び理由」中の「第2

事案の概要」の1(原判決3頁23行

目から同6頁21行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。3
前提となる事実
前提となる事実(当事者間に争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)は,原判決「事実及び理由」中の「第2
事案の

概要」の2(原判決6頁25行目から同9頁10行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
ただし,原判決7頁23行目の「文化啓蒙事業」を「文化啓蒙活動」に,原判決8頁20行目及び同9頁10行目の「当裁判所に顕著な事実」をいずれも「記録上明らかな事実」にそれぞれ改める。
4
争点及び争点に関する当事者の主張
争点及び争点に関する当事者の主張は,後記5及び6のとおり,当審における当事者の補充主張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」中の「第2事案の概要」の3及び4(原判決9頁11行目から同51頁21行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。

5
当審における控訴人の補充主張
本件不指定処分は,A高級学校が本件規程13条に適合するものと認めるに至らなかったことを主たる理由として行われたものであり,外交的,政治的理由に基づいて行われたものではない。
学校教育法上,A高級学校は各種学校に該当するところ,そもそも教育基本法は教育全般について基本的な理念を規定するものであり,教育の目的(同法1条)や目標(同法2条),教育の機会均等(同法4条)などに係る規定は,当然,各種学校にも適用があるから,各種学校であるA高級学校にも適用されるものである。そして,A高級学校が本件規程13条の定める「指定教育施設は,高等学校等就学支援金の授業料に係る債権の弁済への確実な充当など法令に基づく学校の運営を適正に行わなければならない」との支給要件を満たすには,学校で行われる教育の内容や支給法が前提とするような金銭の出納を含めた学校運営全般について,教育基本法の定める教育の理念や基本原則に適合するものであることが求められるものと解されるから,本件規定にいう「高等学校の課程に類する課程」を有するといえるためには,申請者において,①当該学校における教育内容が教育基本法の理念に沿ったものであること,②支給した就学支援金が授業料以外の用途に流用されるおそれがないこと,③外部団体,機関から不当な人的,物的な支配を受けていないこと,④反社会的な活動を行う組織と密接に関連していないことを全て満たしていることを要するというべきである。
朝鮮高級学校においては,北朝鮮の指導者に敬愛の念を抱き,北朝鮮の国家理念を賛美する教育が行われている。朝鮮総聯の性質(反社会的組織としての側面を有することが強く疑われる。),朝鮮総聯と朝鮮学校との関係(人事面で密接)及び教育内容(北朝鮮と国家主席を賛美礼賛,絶対的価値として崇める。)は,一般社会における健全な常識を大きく逸脱するものというほかはなく,教育基本法の理念に沿うものではない。A高級学校は同条の支給要件を満たしていない。
被控訴人は,上記の要件について主張立証しなければならない。
受益者処分の申請に対する却下処分の取消訴訟においては,被処分者(被控訴人)がその申請の根拠法規に適合する事実について主張立証責任を負うと解され,かつ,行政事件訴訟法30条は,行政庁の裁量行為については,裁量権の範囲を超え又はその濫用があった場合に限り,その処分を取り消すことができると規定しており,裁量権の範囲を超えていることないしその濫用があったことを基礎付ける事実については被処分者(被控訴人)に主張立証責任があると解される。本件にあっては,本件規程13条に適合する事実及び文部科学大臣の裁量権の範囲を超えていることないしその濫用があったことについて被処分者である被控訴人に主張立証責任がある。
この点,被控訴人は,本件規程13条の「法令」に教育基本法の理念的規定が含まれるとする場合には,申請者は文部科学大臣がいかなる理念的規定に基づいて判断するのか知りようがないから,文部科学大臣が教育基本法の理念的規定に基づいて本件規程13条の適合性を判断する場合には,申請者がこれに適合しないことの主張立証責任は控訴人にあるとするが,本件規程の趣旨や支給法2条1項5号の趣旨からして誤りである。被控訴人において上記適合性を主張立証すべきである。
本件不指定処分に当たって,本件規程13条に適合すると認めるに至らないとした判断に裁量権の逸脱,濫用はない。支給法等の規定は,「高等学校の課程に類する課程を置くもの」の判断における文部科学大臣の裁量を何ら制限しておらず,本件規程13条適合性の判断は文部科学大臣に委ねられており,同判断について同大臣に裁量がある。同条適合性の判断においては上記
のとおり教育基本法16条1項の「不当な支配」の判断をも要するとこ
ろ,同判断についても文部科学大臣に裁量がある。原判決は,本件規程13条適合性判断に当たって,文部科学大臣の裁量権が認められないとした誤りがある。
6
当審における被控訴人の補充主張
控訴人の補充主張

の①ないし④の要件は,いずれも教育基本法及び支給
法の解釈を誤り,就学支援金支給対象校を指定する基準をより一層抽象化するものであり,判断枠組みとして採ることができない。憲法26条,14条,国際人権法の社会権規約2条2項,13条及び教育基本法4条から導かれ,かつ支給法の目的ともなっている「教育の機会均等」の理念を具体化することこそが求められるべきであるから,上記のような具体化されていない抽象的理念規定を持ち込むことは,判断基準を不明確にし,教育の機会均等に反する事態を招くこととなる。
本件規程13条は,「指定教育施設は,高等学校等就学支援金の授業料に係る債権の弁済への確実な充当など法令に基づく学校の運営を適正に行わなければならない。」と定め,「確実な」「適正に」などという不確定概念が用いられているため,上記の観点から本来は基準性を欠くというべきであるが,そこに基準性を求めるとしても,支給法及び同法を受けた本件規定に基づく就学支援金の支給対象となる各種学校の指定に関する本件規程13条の解釈からすると,同条における「法令」の範囲はおのずと限定され,学校の一般的な財務会計や会計事務に係る法令と解するのが妥当である。したがって,就学支援金支給対象校を指定する基準は,①財務諸表等が作成されていること,②理事会が開催されていること,③各種学校を所轄する都道府県知事により過去5年間に法令違反を理由とする処分がされていないことで足りるというべきである。

控訴人の補充主張

①要件について

控訴人は,教育の基本原則や理念を規定する教育基本法が各種学校にも直接適用されると主張するが,同主張は,上記の抽象的理念規定を判断基準とすることはできないという理由のほか,次のとおりの理由により,採用することのできない解釈である。
教育基本法は,日本国民が日本国家を発展させるための法律という建前になっているから,外国人児童・生徒の教育や,外国人児童・生徒が主に通う外国人学校に対して全面的に直接適用されることは想定されていない。教育基本法の理念的規定を理由に,国が外国人学校の教育活動や教育内容を問題視することはできない。
私立各種学校についてはその自主性と学問の自由を尊重すべきであるから,教育基本法を含む教育関連法によれば,私立各種学校の教育内容を基本的に規制することはできない。したがって,私立各種学校であるA高級学校の教育内容が教育基本法の理念に沿ったものであることを求める解釈は採り得ない。
控訴人の主張は,憲法及び国際人権法に定められた等しく教育を受ける権利や非差別平等の理念を具現化した教育基本法4条1項が定める教育の機会均等という重要な立法原理ないし解釈原理を無視するものである。定められた審査基準の解釈において差別があってはならない。本件規則1条1項2号イ,ロに係る学校においては,「不当な支配」を含めた関係法令一般との適合性を問題とすることなく,本国政府や国際的な評価機関の認定といった客観的,制度的な基準により指定している。これとの均衡上,本件規定に基づいて申請した教育施設についても,教育活動の内容を,高等学校の課程に類する課程であるかどうかの判断基準とすべきではない。
検討会議においても,上記

のとおりの見解が採られていたし,本件

規程13条の学校の適正な「運営」を確認すべき法令として,「不当な支配」に関する教育基本法16条を考慮することは想定されていなかった。このことは,審査会においても同様であったし,具体的な教育内容については審査の基準としないことが当然の前提となっていた。
「高等学校の課程に類する課程を置くもの」か否かの基準は,客観的に判断可能なものに限られ,抽象的な判断を要するものは含まれないから,本件規程13条は上記の基準には含まれない。本件規程13条は本件規程12条に定める情報提供等の補充的な訓示規定ともいうべきものであって,本件規程1条から12条までの客観的要件を満たせば,本件規程13条適合性も認められるべきである。

控訴人の補充主張

②要件について

控訴人は,支給した就学支援金が授業料以外の用途に流用されるおそれがないことが求められると主張する。
しかし,上記ア

と同様に,定められた審査基準に差別があってはなら

ない。また,教育機関が流用のおそれがないことについて立証できないことを理由に指定を受けられなくなるのであれば,生徒個人にとってはどうにもできない事情により助成を受けられないことになるが,これは,より幅広い支援を可能にするために生徒個人に対する助成として制度設計された支給法の趣旨を没却することになるものであって,基準として不適切である。

控訴人の補充主張

③要件について

控訴人は,教育基本法16条1項に関連して,外部機関から人的,物的に不当な支配を受けていないことという枠組みを主張する。
しかし,本件規程13条に基準性を認めるとしても,支給法及び同法を受けた本件規定に基づく就学支援金の支給対象となる各種学校の指定に関する本件規程13条の解釈からすると,同条における「法令」の範囲はおのずと限定され,学校の一般的な財務会計や会計事務に係る法令と解するのが妥当である。本件規程13条の「法令」は,従来から各種学校が満たすべきとされてきた具体的な法規範をいう。そして,財務会計や会計事務に係る法令違反の有無に係る審査は,所轄庁である都道府県に法令違反による処分がないかを問い合わせることにより確認することになっていた。したがって,下位の法律による具体的な要件や効果が定められておらず,対象校や都道府県が提出した資料により確認しようがない教育基本法16条1項は,本件規程13条の「法令」に含まれない。

控訴人の補充主張

④要件について

控訴人は,反社会的な活動を行う組織と密接な関連を有していないことという基準を主張する。
しかし,当該教育施設自体ではなく,関連性がある団体の性質を問う理由が明らかではない。当該教育施設において,平和教育や他国との友好親善に関する教育等が行われていることが重要であって,それで足りるところ,A高級学校では,「朝・日の友好親善に貢献しうる有能な人材を育成する」ことや「日本の地域社会の中で豊かな共生社会を築いていく」ことを教育目標に掲げており,それに沿う教育活動が行われている。また,「反社会的」とか「密接な関連」などという抽象的文言をもって判断基準とすることは具体的法規範性を欠き許されない。
主張立証責任
仮に,控訴人の主張する教育基本法の理念的規定を本件規程13条の「法令」に含めて解釈するのでは,申請者は文部科学大臣がいかなる理念的規定に基づいて判断するのかを知りようがないから,文部科学大臣が教育基本法の理念的規定に基づいて本件規程13条の適合性を判断する場合には,申請者がこれに適合しないことの主張立証責任は控訴人が負うべきである。また,控訴人の補充主張

の①ないし④の要件を判断基準として持ち込む
としても,朝鮮総聯や北朝鮮との関係を理由に不指定処分をするのは,本来尊重されなければならない私立各種学校の自主性を侵害し,教育の機会均等の理念を損なうこととなるから,それらの要件を「特段の事情」として,その主張立証責任は控訴人が負うべきである。
文部科学大臣の裁量権
学校教育法によれば,文部科学大臣の権限は,高等学校基準や学習指導要領等の最低限度の基準を設定するにとどまり,学校認可の対象となる教育施設を選別することができない。支給法においても「高等学校の課程に類する課程」を置くものとして,「文部科学省令で定める」とされている以上,文部科学大臣には「高等学校の課程」に「類する」と言える程度の基準設定を行うことが求められているにすぎない。その基準の設定においても,本件規則における「専修学校」や本件規則1条1項2号イ及びロにおける「各種学校」のように,制度的客観的に判断できる基準であることが求められている。そうすると,「高等学校の課程」にいう「課程」とは,学校が提供し,生徒が履修すべき体系化された教育そのものであり,高等学校において置かれている「全日制」「定時制」「通信制」という制度的な課程のことであって,学校が提供している教育活動や学習内容のことを指し,学校の組織や運営体制は含まない。
また,本件規程でも,審査基準として,「高等学校の課程に類する課程」を置くかどうかを判断するための基準(2条,3条,5条)及び「高等学校」に「類する」といえる諸条件についての基準(4条,6条~11条)という客観的な基準を定めている。このことからすると,本件規程13条(指定教育施設は,高等学校等就学支援金の授業料に係る債権の弁済への確実な充当など法令に基づく学校の運営を適正に行わなければならない)は,その規程の内容からして「高等学校の課程」に「類する」か否かを判断するための基準ではなく,努力義務ないし訓示規定にとどまるものということもできる。
そして,本件規程該当性を判断する手続においては,教育制度の専門家によって構成される審査会の教育的判断を先行させなければならないとされている。
したがって,文部科学大臣が本件規程13条適合性を理由に不指定処分を行う裁量を有しないことは明らかである。
仮に,本件規程13条が就学支援金の支給対象となる学校指定を受ける基準になるとしても,文部科学大臣は,自ら当該教育施設が「法令」に適合しているかどうかは判断できず,各種学校を所轄する都道府県知事に問い合わせても重大な違反が確認できない場合は,これを理由に不指定処分を行うことができないというべきである。
本件規定(ハ規定)は,本件規則1条1項2号イ及びロを包括する不可欠な規定である。本件規定をより下位の「規程」の一部に問題があるとして削除することは不合理である。このようなことが行われたのは,上記
のとお

りの法の趣旨や生徒の権利よりも,拉致問題等の外交的,政治的判断を優先させた結果である。朝鮮高級学校を就学支援金の支給対象から将来にわたって排除するためだけに本件規定を削除したものであり,同号による委任の趣旨を逸脱するものとして違法,無効である。
第3

当裁判所の判断

1
認定事実
認定事実は,次のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」中の「第3
当裁判所の判断」の1(原判決51頁24行目から同76頁10行目ま
で)に記載のとおりであるから,これを引用する。
原判決52頁15行目の「制定され」の次に「,同年4月1日施行され」を加える。
原判決52頁15行目の次に,行を改めて,次のとおり加える。
「イ

支給法案に係る国会審議の状況について
平成22年3月5日の衆議院文部科学委員会における質疑(乙5の1)において,川端達夫文部科学大臣(以下「川端文科大臣」という。また,文部科学大臣のことを「文科大臣」ということがある。)は,朝鮮高校を拉致,ミサイル,核問題があるから外交的に除外するとの方針なのかという趣旨の質問(馳浩委員)に対し,「(前略)何度も申し上げますように,その学校が高等学校の課程に類する課程であるかどうかということを普遍的,客観的に判断するという立場で決めてまいりたいと思いますので,今御指摘のような問題は判断の対象ではございません。」と答弁した(乙5の1・10頁)。
また,川端文科大臣は,支給法案は「高等学校の課程に類する課程を置く」本邦内の外国人学校の全てに適用するということになるのかという趣旨の質問(宮本岳志委員)に対し,「(前略)文部科学省令において対象を定める際の客観性を保持するために,高等学校の課程に類する課程として,その位置づけが,学校教育法その他により制度的に担保されているということを規定することと予定をいたしております。そういう意味から,自動的に外国人学校の高等課程に類するものすべてが今の時点で対象になっているということではありません。」と答弁した(乙5の1・16頁)。
さらに,川端文科大臣は,支給法案で朝鮮学校を除外すべきか否かにつき現在どのような状況になっているかという趣旨の質問(松本龍委員)に対し,「(前略)専修学校でどういうものが入れるのか,各種学校でどういうものが入れるのかという,要するに,まさに高等学校の課程に類する課程というものをどういう物差しで評価するのかということにすべての議論が集約されるのではないかというふうに思っております。その基準と確認方法についていろいろ検討しているところであります。加えて,この国会の審議も踏まえながら,最終的に省令として決めたいというふうに思っております。」(乙5の1・20頁)と答弁した。平成22年3月12日の衆議院文部科学委員会における質疑(乙5の3)において,松野頼久内閣官房副長官から,「(前略)就学支援金の支給対象について,いわゆる高校実質無償化法案は,日本国内に住む高等学校等の段階の生徒が安心して教育を受けることができるようにするものであります。このために,外国人学校の取り扱いに関しましても,外交上の配慮などにより判断するべきものではなく,教育上の観点から客観的に判断するべきものであり,政府としては以下のように考えるものでございます。本法案においては,外国人学校を含む専修学校等及び各種学校に係る就学支援金の支援の対象範囲については,高等学校の課程に類する課程として位置づけられるものを文部科学省令で定めることとしております。これまでの各大臣の発言につきましては,高等学校の課程に類する課程としての位置づけを判断する基準や方法についてはさまざまな論点があることを述べたものでございます。文部科学省令については,国会における審議も踏まえつつ,文部科学大臣の責任において判断するものでございます。」との説明がされた(乙5の3・1頁)。そして,上記のような政府見解ではこれ以上質問をすることができないとする下村博文委員の発言に対して,川端文科大臣は,「先ほどの松野官房副長官の御発言は,当然ながらこの審議の経過,そして私の発言も踏まえた政府の統一見解でございます。加えて,総理及び関係閣僚が発言をしてきた経過も,政府として統一的に,これまでの各大臣の発言は,高等学校の課程に類する課程としての位置づけを判断する基準や方法については,さまざまな論点があることを述べたものであるというまさに統一見解を出したところでありまして,最終的に,政府統一見解として,文部科学省令については,国会における審議も踏まえつつ,文部科学大臣の責任において判断するものであるということを改めて政府として確認したところでございます。」と述べた(乙5の3・2頁)。平成22年3月19日の参議院文教科学委員会における質疑(乙5の4)において,川端文科大臣は,朝鮮高級学校が支給法における支援金制度の対象となるか否かを問う趣旨の質問(大島九州男委員)に対し,「(前略)各種学校はまさに任意,自由な学校でありますので,基本的には対象にならない。ただ,外国人学校だけは制度上専修学校になれない規定になっておりますので,この学校に関してだけは高校の課程に類するものとみなせるかどうかを客観的に判断できるようにして判定すべきだというふうに思っておりまして,国会でもいろんな御議論がありますが,その部分で客観性を担保する仕組みを今議論をしているところである」旨答弁した(乙5の4・4頁)。
平成22年3月25日の参議院文教科学委員会における質疑(乙5の5)において,川端文科大臣は,支給法の成立後に定められることが予定されている支給対象外国人学校の範囲についての省令の内容に関する質問(水岡俊一委員)に対し,「(前略)外国人学校については,教育内容等について法令上特段の定めがなく,本国における正規の課程と同等の教育活動や独自の教育課程に基づく自由な教育活動を行っており,我が国の学校制度をそのまま当てはめて判断することは適当ではないと考えられます。このため,外国人学校について高等学校の課程に類する課程であることを制度的に担保するための要件として,一つは,我が国の高等学校に対応する本国の学校と同等の課程であると公的に認められること,二番として,国際的に実績のある評価機関による客観的な認定を受けていることとし,これらの要件を満たすものを支給対象としたいと考えております。さらに,これらの二つの方法以外にも,客観的に我が国の高等学校の課程に類する課程であることが認められる基準や方法について,教育の専門家等による検討の場を設け,関係者の意見も聞きながら検討していきたいと考えています。(中略)いわゆる教育専門家による検討の場で基準と評価方法と判定の仕組みを御議論いただいて,それに基づいて決めるという第三の道をつくろうと考えております。」と答弁した。(乙5の5・3頁)」
原判決52頁16行目の「イ」を「ウ」に改める。
原判決54頁3行目の次に行を改めて,次のとおり加える。


検討会議は,平成22年5月26日から同年8月19日にかけて5回にわたり会議を開き,「高等学校の課程に類する課程」が満たすべき基準,「高等学校の課程に類する課程」の審査手続,審査体制,審査方法等,及び「高等学校の課程に類する課程を置く外国人学校の指定に関する基準等」の事項について検討した。
平成22年5月26日に開催された第1回の会議において,委員から「情報公開・学校運営に関して,財務諸表を毎年徴収するなど各種学校に課せられた義務に加え,上乗せして求めることが必要な事項もあるのではないか。」といった発言がされた。
平成22年6月30日に開催された第2回の会議において,委員から「判断の客観性を担保する仕組みを組み込んでおくというのであれば,大学の設置認可などからすれば,第三者の意見を聴くというのが普通のやり方だろう。」との発言がされた。
平成22年7月16日に開催された第3回の会議において,委員から,「就学支援金を代理受領する以上は,わが国の法令を遵守することはもちろんのこと,学校運営の体制がきちんとしているかどうかという観点が重要」といった発言や,「文部科学省としては,就学支援金の支給を適正に行うために必要な限りにおいて学校運営の適切さを確認する必要があるが,学校運営を全体として見る立場にあるのは所轄庁である都道府県知事である。」との発言がされた。(乙6)」
原判決54頁22行目の末尾に続けて,「そして,「就学支援金の授業料への確実な充当について」の項目において,就学支援金は,学校への助成金ではなく,法令に定める学校へ就学する生徒の学習活動を支援するため,受給権者である生徒個人に対して支給されるものであり,学校は生徒の申請に基づき,就学支援金を代理受領し,生徒が支払うべき授業料の一部に充当するものであるとした上で,各学校においては,就学支援金が確実に生徒の授業料に充てられるようにするとともに,その原資が貴重な税金であることを踏まえ,経理の透明化を図るよう求めるものとした。」を加える。原判決55頁5行目の末尾に続けて,「文部科学大臣(髙木義明)は,同月25日,参議院予算委員会において,当時,北朝鮮が韓国延坪島に砲撃を加えたという情勢を踏まえて,「朝鮮学校の指定については,外交上の配慮より(会議録ママ)判断すべきではなくて教育上の観点から判断すべきものであるという,こういう基本的な考え方は変わっておりません。ただ,今般の朝鮮半島の緊張状況,その中で,総理の指示によってストップをしたということでございます。今後,北朝鮮における情勢を十分注意をしながら見守ってまいりたいと,このように思っております。」と述べた。(乙73)」を加える。
原判決55頁7行目から8行目にかけての「B1」の次に「B2」を加える。
原判決56頁13行目の「日本の大学」の次に「・短大」を加える。原判決57頁2行目の「教科書では,教科書の改訂により」を「教科書(2006年3月25日初版,2009年3月25日再版)には,「日本当局は『拉致問題』を極大化し,反共和国・反総聯・反朝鮮人騒動を大々的にくり広げることによって,日本社会には極端な民族排他主義的な雰囲気が作り出されていった」と記載されていたが,教科書の改訂(2006年3月25日初版,2011年3月25日再版)により」に改める。
原判決58頁7行目の末尾に続けて,「なお,これについては,平成29年4月14日の朝鮮総聯の機関誌であるC新報も,「金日成主席と金正日将軍,金正恩元帥が在日同胞子弟のために送った教育援助費と奨学金は,これまでで全163回にわたり,日本円で総額480億0599万0390円に達する。」と報道した。(乙158の1,2)」を加える。
原判決59頁1行目の「対象となった場合には」の次に「学費免除者も経理上は学費を支払っている形が取られているため,」を加える。
原判決59頁5行目の「金融機関」の次に「であるD信用組合」を加える。原判決59頁13行目の「準学校法人」の次に「(学校法人朝鮮学園)」を加える。
原判決60頁5行目の「功績が含まれる」を「功績が記載され,その回数が尋常ではない」に改める。
原判決60頁20行目から21行目にかけての「進めている。」の次に「教育会は,中央,都道府県,学校単位で,父兄を中心に組織されている。教育会は同胞父兄の愛国心と教育熱意を呼び起こし,学校運営に必要な財政をまかない,学校の施設や設備,教育資材をととのえている。」を加える。原判決61頁2行目の末尾に続けて,「「朝鮮総聯は,日本の都道府県ごとに47の地方本部をおいている。地方本部は中央本部の決定と方針にしたがって管轄地域の諸般の活動を企画,組織,推進し,管下の階層別団体,事業体,学校を指導する。」,」を加える。
原判決61頁6行目の次に,行を改めて,「

朝鮮総聯のホームページ

において,Eは朝鮮総聯の傘下団体と位置づけており(乙85),また,その機関誌において,Eは20代後半から30代の者も多数その構成員となり,その組織の活動として北朝鮮を訪問し指導者を礼賛するなどしていることが記載されている(乙160,161)。」を加える。
原判決61頁8行目の「F1」を「F2」に改める。
原判決62頁10行目冒頭から13行目末尾までを,「朝鮮総聯は,組織離脱者らの取込みによる勢力回復・拡大を目的として「同胞再発掘運動」を打ち出し…(中略)…。一方,朝鮮総聯は,組織中核層の引締めを図るため,年頭から活動家に対する思想教育強化の方針を掲げ,「我々は,敬愛する金正日将軍さえいれば必ず勝利するとの信念を抱き,将軍の望むとおりに愛国課業を遂行すべき」などとして,金正日総書記への絶対的忠誠心を求める学習の恒常的実施に努めた。また,北朝鮮建国60周年に際しては,幹部活動家,若手活動家,商工人など各階層別の代表団を総勢数百人規模で北朝鮮に派遣し,北朝鮮との一体感扶植に努めた。さらに,これら代表団の一部は,朝鮮労働党幹部から,思想教育の徹底などを図るよう指導を受けた。(乙42)」と改める。
原判決63頁1行目の「朝鮮総聯は,」の次に「後継世代育成の一環として各地で同胞青年祝典を開催し,準備活動や祝典運営などを通じて,若手活動家・会員に組織活動の経験を蓄積させるとともに,相互の連携・交流の強化を図った。また,朝鮮総聯中央に」を加える。
原判決63頁15行目の「9月までの間には,」の次に「無償化適用実現のための3か月集中戦期間に設定し,」を加える。
原判決63頁19行目の「朝鮮総聯の関係につき,」の次に「朝鮮総聯は,朝鮮高級学校などの朝鮮人学校での民族教育を愛族愛国運動の生命線と位置付け,北朝鮮,朝鮮総聯に貢献し得る人材の育成に励んでおり,」を加える。原判決63頁24行目末尾に続けて,「上記平成26年6月13日の参議院北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会では,公安調査庁次長から,「朝鮮総聯はそのような北朝鮮の強い影響下にございまして,北朝鮮の指示,指導を受けつつ,北朝鮮に対する支援活動や我が国に対する働きかけなど,様々な活動を行っているものと認識しております。」「朝鮮人学校につきましては,朝鮮総聯は朝鮮人学校での民族教育を愛族愛国運動の生命線と位置づけておりまして,北朝鮮,朝鮮総聯に貢献し得る人材の育成に取り組んでいるところでありまして,朝鮮総聯の影響は朝鮮人学校の教育内容,人事,財政等に及んでいるものと認識をしております。」との発言がされた(乙53の2)。」を加える。
原判決65頁13行目の「B1」の次に「B2」を,同頁16行目の「判明したとして,」の次に「B3」をそれぞれ加える。
原判決65頁19行目から20行目にかけての「,25」を削除し,同66頁3行目の「25」を「24」に改める。
原判決66頁21行目の「審査会は,」を「平成23年11月2日の第4回審査会では,「朝鮮高級学校の審査に当たっては,これまで審査を行ってきたケースと異なり,時間がかかる可能性がある。懸念される点が多く指摘されていることもあり,いろいろな点を明らかにしていく必要があるのではないか。」との意見が出され,法令違反について,学校に関係する法令(教育基本法,学校教育法,私立学校法,その他関係法令)に関する重大な違反とする考えの下,教育基本法等との適合性が問題とされ,」に改める。原判決67頁15行目から16行目にかけての「生徒会としての活動を行う組織である」を「学校活動と切り離して行っている。Eに参加する生徒は,居住地域などでEが催す文化,スポーツ等のイベントなどに任意で参加することがある」に改める。
原判決67頁17行目の「⑤については,」の次に「学校法人A学園の役員に朝鮮総聯や関連団体の役職員はいない,」を加える。
原判決69頁3行目の「ことが明らかとなった。」を「という審査の状況を示した。」に,同頁13行目の「審査したが(第6回審査会),この日も結論は出ず,」を「審査したが(第6回審査会),法令に基づく学校の運営が適切にされているかどうかという基準について,教育基本法2条5号の教育の目標と,16条の不当な支配の禁止に違反しないかどうかが問題とされ,この日も結論は出ず,「そもそも,この審査会において,指定の可否を議論し,結論を出すのは限界があるのではないか」という意見も出されたが,」にそれぞれ改める。
原判決69頁19行目の「肖像を教室内に」を「肖像画を」に改める。原判決70頁11行目の「出席し。」を「出席。」に,同頁12行目の「指示した」を「指示した。」にそれぞれ改める。
原判決71頁6行目から7行目にかけての「指示はしていないこと」の次に,「,朝鮮総聯から訪朝についての報告会を開くとか文書を本国に送るよう指示を受けることはなかったこと」を加える。
原判決73頁1行目の末尾に行を改めて,次のとおり加える。
「髙木文科大臣は,平成23年3月8日の参議院予算委員会において,「昨年の北朝鮮の砲撃について,(中略)まさに国家の安全にかかわる事態でありました。このため,国内において政府を挙げて情報収集に努めておりましたし,不測の事態に備えて国民の生命,財産を守ると,こういう見地から一旦手続は停止したものであります。」「なお,審査や指定に当たっては,外交上の配慮などにより判断すべきものではなくて,教育上の観点から客観的に判断すべきものとの考え方については変わっておりません。」と答弁した(乙22)。」
原判決73頁3行目の「平成24年」を「平成23年」に改める。原判決75頁4行目の「上記意見に対し,」の次に「同年2月20日付けで,」を加え,同頁9行目の「意見を述べた。」を「意見,また,「憲法14条1項は,国民に対して絶対的な平等を保障したものではなく,相対的,比例的な平等を保障するものである,つまり,合理的理由のない差別を禁止するものであって,各人に存する経済的,社会的その他種々の事実関係上の差異を理由として,その法的取扱いに区別を設けることは,その区別が合理性を有する限り,同項に違反するものではないと解されている,今回の改正は,朝鮮学校については,拉致問題の進展がないこと,朝鮮総聯と密接な関係にあり教育内容,人事,財政にその影響が及んでいることを踏まえると,現時点での指定には国民の理解が得られないとの理由には合理性があり,憲法14条には違反しない」旨の意見を述べた。また,「ハの規定だけではなくイ,ロの規定も削除するべきである。海外の日本人学校の授業料を無償としている国があれば,その国の生徒に対してのみ相互主義により支給すべきである。」との意見に対しては,「現行法では,各種学校となっている外国人学校についても,日本国籍を持つ生徒も含め多くの生徒たちが,後期中等教育段階の学びを行っていることから,高等学校等就学支援金制度の対象としています。一方,朝鮮学校については,拉致問題の進展がないこと,朝鮮総聯と密接な関係にあり教育内容,人事,財政にその影響が及んでいることを踏まえ,現時点での指定には国民の理解を得られないとの観点から,今回の改正を行うものです。」との見解を示した。」に改める。
原判決75頁22行目の「ためである」の次に「,朝鮮学校が都道府県知事の認可を受けて学校教育法第1条に定める高校になるなどすれば現行制度の対象となり,また高校や他の外国人学校に在学する在日朝鮮人等は現行制度の対象となっているということを踏まえれば,差別に当たらない」を加える。
原判決75頁26行目の「しないからであること」の次に,「,朝鮮総聯は北朝鮮の政治的な組織の一部である,その組織の一部の幹部が校長と学校の管理をしているということは,我が国の学校管理教育法上,これは我が国の法制度になじまないこと」を加える。
原判決76頁1行目の次に,行を改めて,次のとおり加える。
「平成22年にA高級学校に対する大阪府授業料支援補助金等の交付の検討を行うに当たって実施されたA高級学校の教育活動の確認ワーキングによる調査結果でも,教育内容について,社会科の教材に特定の政治指導者に対する敬称があったことから政治的中立性を考慮することが望ましい旨の指摘がされた(乙61)。」
2
争点2(文部科学大臣がA高級学校について本件規程13条の適合性が認められないと判断したことの違法性の有無)について
本件規定に基づき支給対象外国人学校としての指定がされるための要件ア
本件規定の位置付け(就学支援金制度)
支給法は,公立高等学校について授業料を徴収しないこととするとともに,私立高等学校等の生徒等が,その授業料に充てるために就学支援金の支給を受けることができるようにすることにより,高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り,もって教育の機会均等に寄与することを目的とするものであるところ(支給法1条,2条2項及び3項参照),支給法2条1項5号は,就学支援金制度の対象となる「私立高等学校等」のうち,専修学校及び各種学校については,「高等学校の課程に類する課程を置くものとして文部科学省令で定めるもの」に限るとして,就学支援金制度の対象となるものの要件を文部科学省令に委ねた。これを受けて定められたのが本件規則であり,本件規則1条1項2号ハ(本件規定)は,支給法2条1項5号にいう「高等学校の課程に類する課程を置くもの」について,「文部科学大臣が定めるところにより,高等学校の課程に類する課程を置くものと認められるものとして,文部科学大臣が指定したもの」と定めた。そして,本件規則1条1項2号ハ(本件規定)を受けて文部科学大臣により定められた本件規程は,第1章において「総則」,第2章において「指定の基準」,第3章において「指定の手続等」をそれぞれ定めているところ,上記「指定の基準」においては,修業年限,授業時数,同時に授業を行う生徒,授業科目,教員数,教員の資格,校地等,校舎等,校舎の面積,設備に関する基準が定められている(本件規程2条~11条)ほか,本件規程12条が,学校教育法等の規定による学校運営の状況に関する自己評価及びその結果の公表並びに情報の積極的な提供や,私立学校法の規定による財産目録等の備付け及び閲覧,その他の法令に基づく情報の提供等が適正に行われるべきことを定め,さらに,本件規程13条が,本件規程12条に規定するもののほか,指定教育施設は,高等学校等就学支援金の授業料に係る債権の弁済への確実な充当など法令に基づく学校の運営を適正に行わなければならない旨を定めている。

本件規程13条の趣旨
支給法が,高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り,もって教育の機会均等に寄与することを目的とし(1条),支給対象高等学校等(6条)の設置者が,受給権者に代わって就学支援金を受給し,受給権者の授業料に係る債権の弁済に充てることにしていること(8条)からすると,支給法は,公的な資金から支出される就学支援金が受給権者である生徒等に対する授業料に係る債権に確実に充当されることを要請しているものであって,設置者によって他に流用されるおそれが否定できないにもかかわらず,就学支援金を支給することを許容するものではないことが明らかである。
そして,就学支援金制度の対象とされる私立高等学校及び専修学校(高等課程)については,財務関係を含む学校運営の適正が求められ(学校教育法14条,42条,43条,62条,133条,学校教育法施行規則66条から68条,189条,私立学校法25条1項,47条参照),各種学校については,学校教育法134条2項,私立学校法64条5項の規定により,適正な学校運営を求める趣旨,内容の学校教育法の規定や私立学校法の規定が準用されているところ,支給法2条1項5号が「高等学校の課程に類する課程を置くものとして文部科学省令で定める」各種学校を就学支援金の支給対象となる学校とする旨を定めていること,支給法に基づく就学支援金が公的な資金から支給されるものであることからすると,支給法は,学校教育法や私立学校法等の法令に基づく適正な学校運営が行われていない疑いのある各種学校を就学支援金支給の対象とすることを許容するものではないと解される。
この点については,支給法の立法の過程においても,前記1において原判決を補正の上引用して認定したとおり(原判決第3の1

イ),文部科

学大臣において,支給法案は「高等学校の課程に類する課程を置く」本邦内の外国人学校の全てに適用するということになるのかという趣旨の質問に対し,「(前略)文部科学省令において対象を定める際の客観性を保持するために,高等学校の課程に類する課程として,その位置づけが,学校教育法その他により制度的に担保されているということを規定することと予定をいたしております。そういう意味から,自動的に外国人学校の高等課程に類するものすべてが今の時点で対象になっているということではありません。」と答弁するなど,支給対象外国人学校への指定に際して学校教育法その他の関係法令に基づく適正な学校運営がされていることを考慮することが念頭に置かれていたものということができる。
また,本件規程の制定に当たっての検討会議における議論等を見ても,前記1において,原判決を補正の上引用して認定したとおり,第1回の会議から「学校運営」が議題に上り,委員からは,「情報公開・学校運営に関して,財務諸表を毎年徴収するなど各種学校に課せられた義務に加え,上乗せして求めることが必要な事項もあるのではないか」との発言(第1回),「就学支援金を代理受領する以上は,わが国の法令を遵守することはもちろんのこと,学校運営の体制がきちんとしているかどうかという観点が重要」との発言(第3回),「文部科学省としては,就学支援金の支給を適正に行うために必要な限りにおいて学校運営の適切さを確認する必要がある」という趣旨の発言(第3回)などがされており,適正な学校運営がされていることの検討の必要性が指摘されていたものといえる。また,高等学校等就学支援金の支給に関する検討会議作成の「高等学校の課程に類する課程を置く外国人学校の指定に関する基準等について(報告)」と題する平成22年8月30日付け書面(甲3)においても,「Ⅰ基準について」の「2.基準のポイント」中の「⑶法令に基づく適正な学校の運営について」の項目において,就学支援金は,支給法において,生徒が在学する学校が生徒に代理して受領し,生徒の授業料に係る債権の弁済に充てることとされていること,各種学校の運営については,学校教育法,私立学校法などにおいて諸規定が設けられていることを挙げた上で,就学支援金に係る文部科学大臣の指定を受ける各種学校については,各校が就学支援金の管理を適正に行うとともに,これらの関係法令の諸規定を遵守していることは当然であり,「高等学校の課程に類する課程を置くもの」に求められる基準において,就学支援金の管理その他の法令に基づく学校の運営が適正に行われることを改めて求めることが適当であるとされている。
以上からすると,本件規程13条は,上記のような支給法の目的や仕組み,私立高等学校や専修学校(高等課程)に適用される法令の規定並びに就学支援金が公的な資金から支出されることをも踏まえ,本件規則1条1項2号ハ(本件規定)を根拠とする指定教育施設(支給対象外国人学校)の指定を受けるための要件として,就学支援金の授業料に係る債権の弁済への確実な充当が行われることや,高等学校の教育課程の履修を含む学校運営が学校教育法,私立学校法等の法令に従った適正なものであると認められることを要するとしたものと解される。そして,教育基本法が他の全ての教育関係法規の基本法たる性質を有し,全ての教育関係法規は教育基本法に定められた基本的理念を実施するための法律として解釈されるべきことなどからすれば,本件規程13条の「法令」から教育基本法を排除すべき理由はなく,本件規程13条の要件適合性の判断に当たっては,教育内容が教育基本法の理念に沿ったものであるかどうか,教育に対して教育基本法16条1項の「不当な支配」がされていないか等に係る事情についても,上記判断の要素として考慮すべきものと解される。
この点,被控訴人は,支給法及び同法を受けた本件規定に基づく就学支援金の支給対象となる各種学校の指定に関する本件規程13条の解釈からすると,同条における「法令」の範囲はおのずと限定され,学校の一般的な財務会計や会計事務に係る法令と解するのが妥当であって,教育基本法16条のような抽象的な理念規定を上記法令の一つとして基準とするのは不適切である旨主張する。しかし,上記において説示したとおりであり,同主張は採用できない。

支給法2条1項5号及び本件規定にいう高等学校の「課程」の意義以上のように解することは,本件規程13条が支給法2条1項5号及び本件規定の委任の範囲において定められたものであることに反するものではない。すなわち,支給法2条1項5号は,専修学校及び各種学校のうち「高等学校の課程に類する課程を置くものとして文部科学省令で定めるもの」を就学支援金制度の対象とし,同号を受けて定められた本件規則1条1項2号ハ(本件規定)は,「文部科学大臣が定めるところにより,高等学校の課程に類する課程を置くものと認められるものとして,文部科学大臣が指定したもの」を支給対象外国人学校に含まれるものとしているところ,これらの規定にいう高等学校の「課程」とは,高等学校学習指導要領に定める「教育課程」に限らず,広く教育内容,学校の組織及び運営体制も含むものと解される。詳論すると,①学校教育法66条は「中等教育学校の課程は,これを前期3年の前期課程及び後期3年の後期課程に区分する。」と定め,同条125条2項は「専修学校の高等課程においては,(中略)中学校における教育の基礎の上に,心身の発達に応じて前条の教育を行うものとする。」と定めており,これらの規定にいう「課程」とは,学校が提供し,生徒等が履修すべき体系化された教育そのものを指すものと解されるところ,同法においても学校運営の適正が求められていることからすれば,上記の体系化された教育は,法令に従って適正に運営されている学校が提供するものであることが前提とされているものというべきこと,②同法128条4号が「目的又は課程の種類に応じた教育課程及び編制の大綱」と定めて「課程」と「教育課程」とを使い分けており,また,高等学校に関する規定である同法52条から54条の定めを見ても,「課程」と「教育課程」とが使い分けられていること,③支給法ないし本件規則において,学校教育法におけるのと異なる意味内容のものとして「課程」の語を用いる合理的理由は見当たらないことなどを勘案すれば,支給法2条1項5号及び本件規則1条1項2号ハ(本件規定)の「高等学校の課程」とは,高等学校学習指導要領の「教育課程」に限らず,広く教育内容,学校の組織及び運営体制も含むものと解すべきである。
そうすると,本件規則1条1項2号ハ(本件規定)を根拠とする支給対象外国人学校としての指定を受けるための要件として,就学支援金の授業料に係る債権の弁済への確実な充当が行われること,高等学校の教育課程の履修を含む学校運営が法令に従った適正なものであると認められることを要するものとした本件規程13条の規定は,支給法2条1項5号及び本件規則1条1項2号ハ(本件規定)の委任の範囲内において定められたものということができる。
この点,被控訴人は,「高等学校の課程」にいう「課程」とは,学校が提供し,生徒が履修すべき体系化された教育そのものであり,高等学校において置かれている「全日制」「定時制」「通信制」という制度的な課程のことであって,学校が提供している教育活動・学習内容のことを指し,学校の組織や運営体制は含まない旨主張するが,上記のとおりであって,同主張は採用できない。

被控訴人の補充主張
被控訴人は,

アについて

教育基本法は,日本国民が日本国家を発展させるための

法律という建前になっているから,外国人児童・生徒の教育や,外国人児童・生徒が主に通う外国人学校に対して全面的に直接適用されることは想定されていない,教育基本法の理念的規定を理由に,国が外国人学校の教育活動や教育内容を問題視することはできない,

私立各種学校について

はその自主性と学問の自由を尊重すべきであるから,教育基本法を含む教育関連法によれば,私立各種学校の教育内容を基本的に規制することはできない,したがって,私立各種学校であるA高級学校の教育内容が教育基本法の理念に沿ったものであることを求める解釈は採り得ない,

憲法及

び国際人権法に定められた等しく教育を受ける権利や非差別平等の理念を具現化した教育基本法4条1項が定める教育の機会均等という重要な立法原理ないし解釈原理からすれば,定められた審査基準の解釈において差別があってはならず,控訴人は被控訴人に対し,本件規程14条によって指定を受けた各種学校たる外国人学校と同様の扱いをしなければならない,本件規則1条1項2号イ,ロに係る学校においては,「不当な支配」を含めた関係法令一般との適合性を問題とすることなく,本国政府や国際的な評価機関の認定といった客観的・制度的な基準により指定しているのであり,これとの均衡上,本件規定に基づいて申請した教育施設についても,教育活動の内容を,高等学校の課程に類する課程であるかどうかの判断基準とすべきではない,

検討会議においても,上記のとおりの見解が採ら

れていたし,本件規程13条の学校の適正な「運営」を確認すべき法令として,「不当な支配」に関する教育基本法16条を考慮することは想定されていなかった,また,審査会においても,同様であって,具体的な教育内容については審査の基準としないことが当然の前提となっていた,

件規程13条は本件規程12条に定める情報提供等の補充的な訓示規定であって,本件規程1条から12条までの客観的要件を満たせば,本件規程13条適合性も認められるべきである旨主張する。
しかしながら,まず,上記

及び

の主張については,上記イ及びウ

において述べたとおり,支給法も教育関係法令である以上,教育基本法の基本原則や理念を実施するものとして解釈されなければならないから,「高等学校の課程に類する課程」を置くものとして就学支援金支給対象外国人学校として指定されるには,教育内容が教育基本法の基本原則や理念に反していてはならないのであって,被控訴人の主張は採用することができない。各種学校には,その自主性を尊重するため教育基本法6条や14条2項が適用されないが,一部適用されない規定があることをもって,本件規程13条適合性の判断に当たり,当該学校の教育内容が教育基本法の基本原則や理念に反するか否かも含めて考慮要素とすることができないと解することはできない。
次に,上記

の主張についてみると,本件規則1条1項2号イ又はロ

に係る外国人学校は,外国の大使館を通じ,又は文部科学大臣の指定する団体の認定により,高等学校の課程に類する課程を置くものであることを,制度的に確認することができるのに対し,本件規則1条1項2号ハ(本件規定)に係る外国人学校については,そのような制度的な保障が全くなく,高等学校の課程に類する課程であるか否かを個別具体的に判断せざるを得ない。このように,両者は,その前提を異にするものというべきであるから,被控訴人の主張は,教育の機会均等という原理の下においてもその前提を欠くものであって,採用することができない。
上記

の主張については,前記1において原判決を補正の上引用して

認定したとおり(原判決第3の1

イ),本件規程の制定過程におい

て,平成22年5月26日に開催された第1回検討会議において,委員から「情報公開・学校運営に関して,財務諸表を毎年徴収するなど各種学校に課せられた義務に加え,上乗せして求めることが必要な事項もあるのではないか」といった発言がされたこと,平成22年7月16日に開催された第3回検討会議において,委員から,「就学支援金を代理受領する以上は,わが国の法令を遵守することはもちろんのこと,学校運営の体制がきちんとしているかどうかという観点が重要」といった発言や,「文部科学省としては,就学支援金の支給を適正に行うために必要な限りにおいて学校運営の適切さを確認する必要がある」との発言がされていたことが認められ,このような検討会議における議論の過程からみても,また,全ての教育関係法規の基本法という教育基本法の性質からしても,本件規程13条にいう「法令」から教育基本法16条1項を含む同法の規定が殊更に排除されているものとは解し難い。
また,前記1において原判決を補正の上引用して認定したとおり(原判決第3の1

イ),第4回審査会において,法令違反について,学

校に関係する法令(教育基本法,学校教育法,私立学校法,その他関係法令)に関する重大な違反とする考えの下,教育基本法等との適合性が問題とされたこと,第6回審査会において,法令に基づく学校の運営が適切にされているかどうかという基準で問題となるのが,教育基本法2条5号の教育の目標と,16条の不当な支配の禁止に違反しないかどうかという点であったことが認められ,これらによれば,教育内容が教育基本法の基本原則や理念に反してはならないことは,審査会においても当然の前提とされていたといえるのである。
被控訴人の上記主張は採用できない。
上記

の主張については,上記イにおいて述べたような本件規程13

条の趣旨に加えて,同条が本件規程「第2章指定の基準」中の他の規定(2条~12条)とは別個独立に設けられた規定であること,本件規程13条の表題は「適正な学校運営」であり,本件規程12条の表題「情報の提供等」とは別個の表題が付されていること,本件規程13条においては「前条に規定するもののほか」と本件規程12条に定める事項とは別個の事項を付け加える趣旨の規定が置かれていることからすると,本件規程13条をもって,本件規程12条の付加的補足的規定であると解することはできない。被控訴人の主張は,採用することができない。

被控訴人の補充主張

イについて
被控訴人は,定められた審査基準に差別があってはならない旨主張するが,前記1において原判決を補正の上引用して認定したとおり(原判決第3の1

イ,

イ),本件規程の制定過程において,平成22

年5月26日に開催された第1回検討会議において,委員から「情報公開・学校運営に関して,財務諸表を毎年徴収するなど各種学校に課せられた義務に加え,上乗せして求めることが必要な事項もあるのではないか」といった発言がされていたし,また,その審査過程においても,平成23年11月2日の第4回審査会の議論において「朝鮮高級学校の審査に当たっては,これまで審査を行ってきたケースと異なり,時間がかかる可能性がある。懸念される点が多く指摘されていることもあり,いろいろな点を明らかにしていく必要があるのではないか。」との意見が出された(甲25)ように,朝鮮高級学校に法令に基づく適正な学校運営が行われていることに疑念が生じていたことからすると,審査の方法,程度が異なるのは当然のことであり,そのような疑念が生じていなかったB及びGと比して,審査が入念になったことをもって差別的取扱いとはいえない。
また,被控訴人は,就学支援金の流用のおそれがないことについて教育機関が立証できないことを理由に指定を受けられなくなるのであれば,生徒個人にとってどうにもできない事情により助成を受けられないことになるが,これは,より幅広い支援を可能にするために生徒個人に対する助成として制度設計された支給法の趣旨を没却することになるものであって,基準として不適切である旨主張する。
しかし,支給法は代理受領制度を採用しているところ(同法8条),この趣旨は,支給した就学支援金が他に流用されることなく個々の生徒の授業料債権に確実に充当されるようにすることにある。このように,支給した就学支援金が他に流用されるおそれがないことは,支給法自体から要請されるものというべきである。また,前記1において,原判決を補正の上認定したとおり(原判決第3の1

ウ),検討会議

が公表した平成22年8月30日付け「高等学校の課程に類する課程を置く外国人学校の指定に関する基準等について(報告)」においても,就学支援金は,学校への助成金ではなく,法令に定める学校へ就学する生徒の学習活動を支援するため,受給権者である生徒個人に対して支給されるものであり,学校は生徒の申請に基づき,就学支援金を代理受領し,生徒が支払うべき授業料の一部に充当するものであるとした上で,各学校においては,就学支援金が確実に生徒の授業料債権に充てられるようにするとともに,その原資が貴重な税金であることを踏まえ,経理の透明化を図るよう求めるものとしたとされており,上記の趣旨がその制定過程において考慮されていたといえる。
被控訴人の主張は採用できない。

被控訴人の補充主張

ウについて

前記イ,ウ及びエにおいて説示したとおり,本件規程13条の「法令」には教育基本法を始めとする教育関係法規が含まれると解されるのであって,被控訴人の主張は採用できない。この点,被控訴人は,財務会計や会計事務に係る法令違反の有無に係る審査は,所轄庁である都道府県に法令違反による処分がないかを問い合わせることにより確認することになっているのに,下位の法律による具体的な要件や効果が定められていない教育基本法16条1項を本件規程13条の「法令」に含ませるのでは,対象校や都道府県が提出した資料により確認しようがないことになるから,教育基本法16条1項は,本件規程13条の「法令」に含まれない旨を主張する。しかし,その主張の前提が正しいといえるか疑問であるし,仮に確認できない場合があるとしても,そのことが教育基本法16条1項を上記「法令」に含ませない理由になるものではない。

控訴人の補充主張

④の要件(被控訴人の補充主張

エ)について

控訴人は,反社会的な活動を行う組織と密接に関連する教育施設は,そのような密接な関係を有するということのみをもって,平和で民主的な国家及び社会の形成に資する者を育成するという教育基本法の理念に反するとして,外部の反社会的組織と密接な関連を有していないことという基準を挙げる。
しかし,当該教育施設において,教育基本法の理念に沿った教育等が行われているか否かが要件となるのであり,問題とされるべきは,外部の組織から,教育面において不当な支配が及んでいるかどうかということである。この点については,上記の「不当な支配」の基準で判断すれば足りると解されるのであり,この基準以外に,控訴人の主張する上記の「密接な関連性」を基準とするのであれば,不当な支配性までは認められなくとも,教育に影響を与え得るような関連性を満たせば事足りることにもなりかねず,基準として合理性を欠くというべきである。平成23年11月2日の第4回審査会から始まった朝鮮高級学校の審査においても,審査(ポイント)として,朝鮮総聯との関係について,「一般論としては,ある団体が教育に対して影響を及ぼしていることのみをもって,直ちに不当な支配(教育基本法第16条)があるとはいえないが,不当な支配に当たるかどうか引き続き検討する必要があるため,過去の報道等に基づき,以下の点を学校に確認」とされていた(甲25)のであって,ある団体が教育に対して影響を及ぼしていることをもって密接な関連性を認めたり,それを要件として考慮すべきであるとされていない。


本件規程13条適合性についての主張立証責任

前記⑴のとおり,本件規程13条は本件規定に基づく指定の要件を定め
たものであり,各種学校が同指定を受けると,その設置者は当該各種学校の生徒等の授業料に係る債権に応じた就学支援金を収受することができる地位を取得することとなる。このような同指定の性質に照らすと,本件規程13条の要件該当性の存在を基礎付ける事実については各種学校の設置者(被控訴人)が主張立証責任を負うというべきである。

この点,原判決は,被控訴人では,私立学校法に基づき財産目録,財務
諸表等が作成されるとともに理事会等も開催されていたこと,また,被控訴人及びA高級学校の所轄庁である大阪府知事が,平成19年4月から平成23年9月までの間,3年に1度を基本として必要に応じて随時,立入検査等を実施し,上記期間の直近では平成22年1月から平成23年7月に立入検査等を実施しており,大阪府知事の立入検査等では,法人・学校の運営状況並びに会計処理及び計算書類の作成や,補助金の交付要件となっている事項(日本の学習指導要綱に準じた教育活動,財務情報の一般公開,特定の政治団体と一線を画すこと,特定の政治指導者の肖像画を教室から外すこと)の有無を検査しているところ,A高級学校について,教育基本法,学校教育法等の法令に違反することを理由とする行政処分等を行わなかったことから,A高級学校については,他に本件規程13条適合性に疑念を生じさせる特段の事情がない限り,同条適合性が認められるとする。しかしながら,原判決が本件規程13条適合性を基礎付けるものとして挙げる上記各事情は,それらが持つ事実上の推定力の程度に照らすと,いかなる場合でも,それらの各事情があれば,他に同条適合性に疑念を生じさせる特段の事情がない限り同条適合性が認められるという規律を採用するのに十分なものということはできない。
確かに,本件規程13条適合性については,不指定処分を受けた申請者(被控訴人)としてはいかなる点に疑念が生じているのかを示す具体的な指摘がなければ同条適合性に係る事情について主張立証することが難しく,その必要がないこともあるといえるから,訴訟の場面においては,そのような疑念があるとする事柄について,まず不指定処分をした行政庁の属する国(控訴人)の側で主張立証をする必要があり,それから申請者である被控訴人の側で,上記の事柄について同条適合性の存在を基礎付ける事実を主張立証することになる場合があるものと考えられる。しかし,この場合,上記のような主張立証の順序ないしは構造になるとしても,原判決が挙げる上記各事情があれば,国(控訴人)側で同条適合性に疑念を生じさせる特段の事情の立証を要するとの規律を採用することは相当ではないと考えられ,本件規程13条適合性の存在を基礎付ける事実についての主張立証責任は,やはり受益処分の申請者(被控訴人)が負担すべきものと解されるのである。そうすると,国(控訴人)の主張立証により相当な根拠に基づいて上記事実の存在に疑いが生じたような場合,上記事実が高度の蓋然性をもって立証されたとはいえないということになる(なお,「不当な支配に服すること」がないことというような評価的要件とも考えられる要素については,その評価障害事実を国(控訴人)が主張立証すべきであるとしても,その評価根拠事実を申請者たる被控訴人が主張立証すべきことに変わりはない。)。

上記の観点からすると,本件においては,控訴人側が,A高級学校につ
いて本件規程13条適合性に疑念があることの事情として,①教育内容が,北朝鮮と国家主席を賛美礼賛し絶対的価値として崇めるものであり,教育基本法の理念に沿ったものでないおそれがあること,②支給された就学支援金が授業料以外の用途に流用されるおそれがあること,③朝鮮総聯から,教育内容,人事,財政の面で不当な支配(教育基本法16条1項)を受けていて,適正な学校運営が行われていないおそれがあることなどを主張し,これらの主張に係る具体的事実ないし事情を主張立証しているから,被控訴人側では,これらについて,本件規程13条適合性の存在を基礎付ける事実を主張立証すべきものと考えられる。

この点について,被控訴人は,本件不指定処分は,同じく高等学校の課程に類する課程を置く学校との間に著しい不平等をもたらし,生徒の学校選択や保護者の学費負担にも不平等をもたらすものであって,差別的な侵害処分というべきであるから,その処分要件について控訴人が主張立証責任を負う旨主張する。しかし,本件規定に基づく指定処分は,侵害処分ではなく,その要件に該当する学校(高等学校の課程に類する課程を置く学校)に対する給付処分であるから,被控訴人の上記主張は,前提を欠き採用することができない。
本件規程13条適合性の判断及びその中で考慮される教育基本法16条1項の「不当な支配」の有無の判断に文部科学大臣の裁量が認められるかについて

本件規程13条適合性の判断と文部科学大臣の裁量
まず,本件規定は,「文部科学大臣が定めるところにより,高等学校の課程に類する課程を置くものと認められるものとして,文部科学大臣が指定したもの」と定めており,これを受けて定められた本件規程13条適合性の判断については,文部科学行政に通暁するものとしてこれを所管する文部科学大臣に委ねられているということができるから,同判断について同大臣に専門的,技術的見地からする一定の裁量があるということができる。
すなわち,支給法2条1項5号が支給法の適用対象となる各種学校を「高等学校の課程に類する課程を置くもの」に限っているのは,国の財政的負担において教育を実施することが後期中等教育段階における教育の機会均等の確保の見地から妥当と認められる各種学校のみを支給法の適用対象とするためであると解されるところ,本件規則1条1項2号は,上記のような支給法2条1項5号の委任を受け,同号所定の「高等学校の課程に類する課程を置くもの」と認められる各種学校について,我が国に居住する外国人を専ら対象とする各種学校のうちイからハまでの各規定に掲げるものとした上,イ及びロの各規定において一定の類型の各種学校であって文部科学大臣が指定したものを定め,ハの規定(本件規定)において「文部科学大臣が定めるところにより,高等学校の課程に類する課程を置くものと認められるものとして,文部科学大臣が指定したもの」を定めている。このような本件規定の内容等からすると,本件規定は,我が国に居住する外国人を専ら対象とする各種学校のうち,イ及びロの各規定の定める特定の類型には当たらないものの,なお,当該各種学校の個別具体的な事情から,国の財政的負担において教育を実施することが後期中等教育段階における教育の機会均等の確保の見地から妥当と認められる各種学校を「高等学校の課程に類する課程を置くもの」として支給法の適用対象とする包括的規定であって,いかなる各種学校が上記の「課程を置くもの」に該当するかの判断には当該各種学校の個別具体的な事情を踏まえた教育上の観点からの専門的,技術的検討を要することから,その判断については上記の検討をすることができる文部科学大臣の指定に基づいて行うものとするとともに,その指定の基準を設定すること自体も専門的,技術的な領域に属するものとしてこれを文部科学大臣に委任したものと解される。
そうすると,文部科学大臣が本件規定に基づく指定の基準としていかなる基準を定めるかについては,本件規定の委任の趣旨を逸脱しない範囲内において,文部科学大臣に専門的,技術的な観点からの一定の裁量権が認められているものと解するのが相当である。

「不当な支配」の有無の判断と文部科学大臣の裁量
教育基本法16条1項の「不当な支配」の有無の判断についても文部科学大臣の裁量が認められるものと解するのが相当である。
教育は,専ら教育本来の目的に従い,国民からの信託に応えて国民全体に対して直接責任を負うように行われるべきであり,教育基本法16条は,教育の自主性尊重の見地から,そのような教育をゆがめるような支配を排除したものであるが,教育に対する不当,不要な介入は排除されるべきであるとしても,許容される目的のために必要かつ合理的と認められる介入は,たとえ教育の内容及び方法に関するものであっても必ずしも「不当な支配」に該当しない場合があるとされている(最大判昭和51年5月21日・刑集30巻5号615頁)。そうすると,行政機関以外の特定の外部機関による介入が人的,物的に「不当な支配」に該当するか否かの判断,すなわち,教育の自主性の侵害の有無及び程度,介入の必要性や合理性の有無及び程度に関する判断は,その性質上,教育上の観点からの専門的,技術的検討を要する事項といわざるを得ず,したがって,教育行政に通暁し,専門的,技術的検討をすることのできる文部科学大臣の裁量に委ねているといえる。
もっとも,①旧教育基本法及び教育基本法は,戦前の我が国の教育が国家による強い支配の下で形式的,画一的に流れ,時に軍国主義的又は極端な国家主義的傾向を帯びる面があったことに対する反省により制定されたものであり,旧教育基本法10条1項及び教育基本法16条1項は,教育に対する権力的介入,特に行政権力による介入を警戒し,これに対して抑制的態度を表明したものと解される(前記昭和51年大法廷判決参照)こと,②前記のとおり,各種学校である外国人学校では,高等学校の課程に類する課程を置くものと,それ以外のものとを区別することになるから,外国人学校の民族的徴表と結び付いた偏見等によって,不合理な差別が行われる危険性の高いことは容易に想像がつくことであったため,支給法制定当時,外国人学校の取扱いについては外交上の配慮ではなく,教育上の観点から客観的に判断すべきという趣旨の政府の統一見解が採られていたものであり,できるだけ客観的な審査基準により判断される仕組みを整えようとしていたといえること,③教育の自主性尊重の見地から,教育の自主性をゆがめるような支配を排除し,教育に対する不当,不要な介入は排除されるべきであるとする教育基本法の趣旨及び支給法が教育における機会均等の確保と全国的な一定の水準の維持を図るために,全国的に高校教育についての無償化を図ったものであることからすると,文部科学大臣の裁量権には一定の限定が課されるのであって,広大な裁量があるということはできない。

「不当な支配」の内容
次に,何をもって「不当な支配」であるというかについてであるが,朝鮮高級学校の教育が北朝鮮の国家理念や政治体制から離れた存在となることは不可能であるから,朝鮮高級学校が朝鮮語による授業を行い,北朝鮮の視座から歴史的,社会的,地理的事象を教えるとともに,北朝鮮を建国し現在まで統治してきた北朝鮮の指導者や北朝鮮の国家理念を肯定的に評価することも,朝鮮高級学校の教育目的それ自体には沿うものということができるのであって,これだけをもって,朝鮮高級学校が北朝鮮や朝鮮総聯からの不当な支配により,自主性を失い,上記のような教育を余儀なくされているとは直ちに認めることはできない。北朝鮮や朝鮮総聯による影響力の行使が上記教育目的を達するための必要性,合理性の限度を超えて,朝鮮高級学校での教育の自主性をゆがめるようなものであるときに,同項の「不当な支配」に当たるというべきであり,この判断において文部科学大臣の裁量が認められるものである。


被控訴人の主張について
支給法,本件規定及び本件規程の解釈によりその枠組みを客観的制限的にすることに基づいて裁量権がないとする被控訴人の主張については,前記ア,イにおいて検討したとおりであって,採用できない。
被控訴人は,教育基本法16条1項の「不当な支配」に関し,同項の「不当な支配」とは我が国の公権力による影響をいうものと解すべきであり,外国人学校の本国やその在日団体(北朝鮮や朝鮮総聯)はその支配の主体たり得ない旨主張する。
しかし,前記のとおり,同項は,教育が国民から信託されたものであることから,教育が不当な支配によってゆがめられることなく専ら教育本来の目的に従って行われるべきことを示したものであり,このような同項の趣旨からすると,同項は,教育が国民の信託に応えて自主的に行われることをゆがめるような支配を排斥しているものと解されるのであって,上記のような支配と認められる限り,その主体のいかんは問うところではないと解するのが相当である(前掲最大判昭和51年5月21日参照)。したがって,A高級学校の教育が北朝鮮や朝鮮総聯から影響を受けていることも,それが教育の自主性をゆがめるようなものであれば同項の「不当な支配」に当たり得るというべきであり,被控訴人の上記主張は採用することができない。
また,被控訴人は,支給法は,就学支援金を流用する抽象的な可能性があるにすぎない場合には本件規定に基づく指定を行い,流用の具体的懸念が生じた場合には事後的措置により対処することを予定しているものと解されるから,就学支援金が授業料に係る債権の弁済に充当されない具体的な可能性又は蓋然性が存在する場合に限り本件規程13条適合性が否定されるというべきであると主張する。
しかしながら,既に述べたように,本件規則1条1項2号ハ(本件規定)を根拠として支給対象外国人学校としての指定を受けるためには,本件規程13条を含む本件規程の第2章に定める各要件を全て充足しているものと認められることを要するところ,本件規程13条の要件を充足しているというためには,就学支援金の授業料に係る債権の弁済への確実な充当が行われることや,高等学校の教育課程の履修を含む学校運営が法令に従った適正なものであると認められることを要するものというべきである。そして,支給法,本件規則及び本件規程を見ても,被控訴人が主張するような場合以外は学校運営が法令に従った適正なものであると認めなければならないとの趣旨を定めた規定は存しない上,支給法が,公的な資金から支出される就学支援金が受給権者である生徒等に対する授業料に係る債権に「確実に」充当されることを要請しており,学校の設置者によって他に流用されるおそれが否定できないにもかかわらず,就学支援金を支給することを許容するものではないというべきである。これらに照らせば,そのような流用のおそれを否定することができない場合に,文部科学大臣において支給対象外国人学校に指定しないとの判断をすることは,上記のような支給法の要請に沿うものというべきである。被控訴人の上記主張は,採用することができない。
A高級学校の本件規程13条適合性について
前記1において補正の上で引用した原判決の認定事実に加え,次に述べるとおりの事情によれば,本件不指定処分がされた平成25年2月20日の時点において,A高級学校について,朝鮮総聯から教育内容及び人事面等で教育基本法16条1項にいう「不当な支配」を受けていること,及び財政面で就学支援金の管理が適正に行われないことをいずれも疑わせるに足りる相当な根拠があったものであり,適正な学校運営という観点からして,高等学校の教育課程に類する課程を置くものであることに疑問が残るから,本件規程13条に適合すると認めるに至らないということができる。

北朝鮮及び朝鮮総聯と朝鮮高級学校との関係
前記1において補正の上で引用した原判決の認定事実及び証拠(各項に掲記のもの)によれば,次の各事実が認められる。
朝鮮総聯と朝鮮学校との組織としての関係
a
朝鮮総聯中央常任委員会が平成3年に発行した書籍に,「朝鮮学校の管理運営は,朝鮮総聯の指導のもとに,教育会が責任をもって進めている。」との記載があり(乙35),平成24年4月4日付け朝鮮労働党機関誌「H新聞」においては,朝鮮総聯は北朝鮮の堂々たる海外同胞組織であり,在日朝鮮学校は朝鮮総聯の組織が運営する合法的な民族教育機関である旨が掲載されていた(乙34の1,2)。

b
朝鮮総聯のホームページ上では,平成24年3月1日の時点において,「朝鮮学校の管理運営は,朝鮮総聯の協力のもとに,教育会が責任をもって進めている。」と記載されていた(乙83。ただし,この記載は,被控訴人からの申入れにより,平成28年10月14日までに削除された(乙84))。なお,教育会については,平成24年3月1日時点の朝鮮総聯のホームページでは,上記のとおり削除された文言に続いて,「教育会は,中央,都道府県,学校単位で,専任,学父兄を中心に組織されている。教育会は同胞学父兄の愛国心と熱意を呼び起こし,学校運営に必要な財政をまかない,学校の施設や設備,環境を整えている。」と記載されていた(乙8
3)。
また,平成25年5月2日時点の朝鮮総聯のホームページ上では,「地方本部は,中央本部の決定と方針にしたがって管轄地域の諸般の活動を企画,組織,推進し,管下の階層別団体,事業体,学校を指導する。」と記載されていた(乙17)。

c
C新報には,朝鮮総聯中央責任副議長が中央教育局長と共に平成20年8月7日にI中高級学校を訪れて教員を指導した旨の記事(同月18日付けのもの)や,朝鮮総聯中央責任副議長が中央教育局長と共に平成21年11月4日にI1幼初級学校を訪れて教職員を指導した旨の記事(同月13日付けのもの)が掲載された(乙55)。d
本件不指定処分がされた後のC新報の報道(平成29年4月26日のもの)ではあるが,教育援助費と奨学金への配慮60周年記念在日本朝鮮人中央大会で行われた朝鮮総聯中央議長であるJ氏の報告(要旨)中には,「総聯の各級組織と学校は,在日朝鮮人運動の生命線である民族教育事業に刻まれた偉大なる金日成大元帥様と金正日大元帥様,敬愛する元帥様の愛の歴史を永遠に伝え,偉大なる首領様を衷情で戴き貴い伝統と大いなる業績を成し遂げた先代たちの志を継ぎ,民族教育を最後まで守り抜き発展させていくことでしょう。」「各級学校は,学校内にチュチェの思想体系と領導体系をますますしっかりと立て上げ,全教員が偉大なる金日成大元帥様と金正日大元帥様の遺訓の教示と敬愛する元帥様のお言葉を間違いなく貫徹することでしょう。」「各級学校の教員は,総聯の教育活動家を資本主義の異国の地で愛国者を育成する真の愛国者であると高く評価され,(中略)後代教育の重大な使命と任務を責任をもって果たすことでしょう。」との記載がある(乙147の1,2)。
朝鮮総聯と朝鮮学校との人事面における関係の例

a
K氏は,平成20年6月には朝鮮総聯京都府本部教育部長に,同年12月にはL中高級学校長に,平成21年5月には朝鮮総聯の傘下団体であるMの京都府本部委員長に,平成25年11月にはA高級学校長及びM大阪府本部委員長に,それぞれ就任していた(乙137の1~140)。

b
N氏は,平成22年3月にはA高級学校長であったが,同年5月に朝鮮総聯教育局長に就任した(乙141,142)。朝鮮総聯教育局は,朝鮮学校の指導・支援,教職員の派遣,教科書作成の補助,教育研究の企画等を行っている部局である(乙143)。
c
O氏は,平成13年10月にはA1中級学校長,平成18年12月には朝鮮総聯の傘下団体である大阪府教育会の会長に,それぞれ就任していたほか,平成28年5月には,朝鮮労働党第7回大会に際して朝鮮総聯大阪府本部委員長の立場で「在日本朝鮮人祝賀団」団長として北朝鮮を訪問した(乙144の1~146の2)。
E
朝鮮総聯の傘下団体として,Eが組織されており(乙55),朝鮮総
聯のホームページ(平成30年1月30日のもの)には,「Eは,在日同胞青年と高等学校以上の同胞学生を網羅した中央から本部,支部,班にいたる組織体系を備えた強力な愛族愛国の在日同胞青年学生団体である。」と記載されている(乙169)。また,Eのホームページに掲載されている「E規約」5条には,E員の義務として,E員は,共和国政府の路線と政策,それを具現した総聯の決定を深く学習し,それを先頭に立って擁護貫徹し,広く解説宣伝しなければならないこと,E員は,内外の敵の策動から総聯組織を堅固に守らなければならないことなどが規定され,同じく「E規約」38条には,朝鮮高級学校内には,E中央委員会の批准を受けて,E朝高委員会を組織する旨が規定されている(乙55)。
A高級学校においては,学生委員会により,Eの活動の学習会等が行われている(乙170~173)。
M
朝鮮総聯の傘下団体としてMが組織されており,朝鮮学校の教員が加盟している(乙55)。
朝鮮高級学校で使用されている教科書
a
朝鮮高級学校では,共通の教科書が使用されており,その編纂者は,かつては朝鮮総聯中央常任委員会内の教科書編纂委員会とされ(少なくとも,平成22年までに発行された教科書にはそのような記載がある。乙89~124の各1,2),その後,P内の教科書編纂委員会とされた。朝鮮総聯のホームページによれば,Pは朝鮮総聯の傘下事業体であるとされている(引用に係る原判決第3の1
エ)。
b
Pが発行する教科書中には,朝鮮学校での教育に対する朝鮮総聯の関わりについて,次のとおり記載するものがある。


社会(中級部)の教科書では,「総連は,初級学校から大学校に
至る民族教育体系を立派に整え,学校前教育体系と民族学級,午
後夜間学校,土曜児童教室のような準正規教育網も,体系的に整
えて来ている。」と記載されている(乙55)。



社会(高級部)の教科書(乙150の1,2。教科書本文は平成
21年3月のもの)では,「民族教育事業の柱は,総聯が運営し
ている我々の学校教育である。総聯は,幼稚班から,初級,中級,高級,大学に至る120の各級学校を設置し,同胞子女に対する
民主主義的民族教育を自主的に実施している。」と記載されてい
る。

c
Pが発行する教科書中には,確固たる意思の下に,北朝鮮の指導者(金日成氏,金正日氏)を絶対的な存在として礼賛し,朝鮮労働党の行動を褒め称え,また,朝鮮総聯の組織や活動を賞賛する記載が多く見受けられる(乙55,乙150ないし156の各1,2,乙166及び167の各1,2,乙168の1ないし3)。朝鮮高級学校で使われている教科書の例を挙げると,次のとおりである。


社会の教科書(乙152の1,2。教科書本文は平成21年3月
のもの)では,「敬愛する金正日将軍さまを,総書記として高く仰ぐ朝鮮労働党は,今日,共和国の執権党として,主体偉業の教導的力量として社会主義建設と祖国統一のための朝鮮人民の闘争を賢明に導いてきている」「我々は同胞社会と朝鮮総聯を愛し,尊さを認めなければならない」と記載されている。


国語の教科書(乙153の1,2。教科書本文は平成21年3月
のもの)では,「今日の私たちの時代,この労働党時代は,先行するどの歴史的時期とも本質的に区別される高度に成熟した幸福の時代だ。それは何よりも偉大な首領様が,人民全体が一人ひとり一緒に社会的進歩のための闘争に直接参加し,誰かがすべての幸福を自覚的・意識的に創造してそれを等しく享有することができる最も先進的な社会主義制度を私たちにくださったからではないのか。」「私たちは,抗日烈士たちから譲り受けた偉大な首領様に対する無限の忠誠心を,幸福に対する革命的な見解とともに責任をもって後代に譲り渡さなければならない。ここに私たちの時代の責務があり,幸福がある。」と記載されている。



音楽の教科書(乙154の1,2。教科書本文は平成21年3月
のもの)では,「将軍様を高く頂き歓呼の声響かせる
輝く人民の領導者

太陽の威厳

万歳万歳金正日将軍」と記載されている。

資金援助
平成22年2月11日のQ新聞において,政府筋による話として,北朝鮮が昭和30年代前半からほぼ毎年150回以上にわたり朝鮮学校に合計約460億円の資金提供をし,平成21年には約2億円の資金提供をした旨の報道がされ,平成29年4月14日のC新報では,「金日成主席と金正日将軍,金正恩元帥が在日同胞子弟のために送った教育援助費と奨学金は,これまでで全163回にわたり,日本円で総額480億0599万0390円に達する。」との報道がされており,また,平成29年4月26日のC新報でも,教育援助費と奨学金への配慮60周年記念在日本朝鮮人中央大会で行われた朝鮮総聯中央議長であるJ氏の報告内容として,上記のとおりの教育援助費と奨学金が送られたことが報道された。このように,北朝鮮は,昭和32年以降,日本にある朝鮮学校に対して多額の資金援助をしてきた(甲102,乙18の1,乙82,147の1,2,乙158の1,2,被控訴人代表者)。

公安調査庁等の調査内容
公安調査庁の調査
a
公安調査庁は,破壊活動防止法に基づいて,朝鮮総聯を調査の対象としており(乙126,128,130),また,朝鮮総聯がこれまで様々な犯罪に関わってきたと判断している(乙130)。

b
公安調査庁の資料(内外情勢の回顧と展望)には,「朝鮮総聯は,…(中略)…活動家・会員に対する思想教育を強化するとの方針を改めて打ち出した。」,「朝鮮総聯は,…(中略)…活動家1人が自己に割り当てられた在日朝鮮人5世帯に対する教育・宣伝普及の責任を負う『5戸担当宣伝員体系』の再整備に努める」,「朝鮮総聯は,朝鮮人学校での民族教育を『愛族愛国運動』生命線と位置付けており,学年に応じた授業や課外活動を通して,北朝鮮・朝鮮総聯に貢献し得る人材の育成に取り組んでいる」,「朝鮮総聯は,このほか,教職員や初級部4年生以上の生徒をそれぞれ朝鮮総聯の傘下団体であるMやEに所属させ,折に触れ金総書記の「偉大性」を紹介する課外活動を行うなどの思想教育を行っている」との各記載(乙19,41。平成22年1月発行),「朝鮮総聯は,…(中略)…年頭から活動家に対する思想教育強化の方針を掲げ,『我々は,敬愛する金正日将軍さえいれば必ず勝利するとの信念を抱き,将軍の望むとおりに愛国課業を遂行すべき』などとして,金正日総書記への絶対的忠誠心を求める学習の恒常的実施に努めた」,「朝鮮総聯は,…(中略)…北朝鮮建国60周年に際しては,幹部活動家,若手活動家,商工人など各階層別の代表団を総勢数百人規模で北朝鮮に派遣し,…(中略)…これら代表団の一部は,朝鮮労働党幹部から,思想教育の徹底などを図るよう指導を受けた」との各記載(乙42。平成21年1月発行)などがある。
c
また,公安調査庁及び警察庁は,国会(平成22年11月17日の参議院予算委員会,平成24年11月7日の衆議院文部科学委員会,平成26年6月13日の参議院北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会など)において,朝鮮学校と朝鮮総聯との関係について,朝鮮総聯の影響は,朝鮮人学校の教育内容,人事,財政に及んでいる旨の答弁をしている(乙20,53の1,2,乙131)。
東京都の調査
東京都は,地方自治法232条の2に基づいて,私立外国人学校に対
して教育運営費のために補助金を交付する制度を設けているが(ただし,東京都は,朝鮮学校の教育内容,朝鮮総聯との密接な関係性等について様々な疑義が呈されたことから,平成22年度から,朝鮮学校を補助対象から除外している。),朝鮮学校への補助金交付の当否を判断するに当たり,平成23年12月から平成25年10月まで調査を行い,学校法人I学園からの説明,回答等をも聴取した上,同年11月にその調査結果を調査報告書(乙55)としてまとめた。同調査報告書では,「Ⅲ

まとめ」の項目において,①朝鮮学校は朝鮮総聯と
密接な関係にあり,教育内容や学校運営について,強い影響を受ける状況にあること,②学校敷地内に教育目的以外に継続的に使用される施設がある,朝鮮総聯及びその関係団体等に経済的便宜を図るなど,I学園は準学校法人として不適正な財産管理・運用を行っていることが指摘された。
上記①の根拠としては,社会の教科書に朝鮮総聯が朝鮮学校を設置・運営している旨の記述があること,歴史・音楽の教科書は北朝鮮の指導者を礼賛する特有の内容であり,「現代朝鮮歴史」(高級部)の教科書には,「敬愛する金日成主席様」「敬愛する金正日将軍様」等の記述が409頁中に353回登場すること,朝鮮学校の職員室及び高級部の教室には金日成及び金正日の肖像画が掲示されていること,高級部の生徒はEに加盟しているが,Eは朝鮮総聯の傘下団体であり,その組織規約には,「Eは,自己の全ての事業を総聯の指導の下に進める」などと規定されていること,各朝鮮学校内には朝鮮総聯の傘下団体である「教育会」や「M」が存在することなどの事情が挙げられており,また,②の根拠としては,I2幼初級学校及びI1幼初級学校の敷地内に朝鮮総聯支部等の事務所が存在しており,I学園は学校施設の一部を朝鮮総聯支部等に無償で長期間貸与していること,朝鮮大学校のグラウンドを朝鮮総聯関連企業の負債のために担保提供していることなどの事情が挙げられている。
大阪府の調査
大阪府は,私立外国人学校への補助金の交付要綱において,「特定の政治団体が主催する行事に,学校の教育活動として参加していないこと」を要件として定めているが,全国の朝鮮学校から選抜された児童・生徒が平成24年1月~2月に北朝鮮を訪れ,故金正日総書記らに永遠の忠誠を誓う歌劇を披露していたとの報道を受け,朝鮮学校側に対し,状況を確認し,児童・生徒らに配布した書類の提出を求めたところ,これを拒否されたため,朝鮮学校と朝鮮総聯との関係が清算されたとの確証が得られないと判断して,A学校(初中級部)に対し平成23年度の補助金を交付しないことを決定した。また,大阪府は,A学校(高級部)から,補助金の交付要件のうち北朝鮮指導者の肖像画を教室から外すことという要件について,肖像画の掲示は引き続き検討するという返答を受けたため,平成22年度及び平成23年度の補助金をいずれも交付しなかった(甲28)。

朝鮮総聯と朝鮮学校との関係を示す他の朝鮮学校での出来事
広島地裁平成19年4月27日判決では,①学校法人R学園の実印は,朝鮮学校の日常の管理運営を行っていた教育会の金庫で保管されており,金庫の鍵は経理担当者が持っていた,②S信用組合と学校法人R学園は,朝鮮総聯広島県本部の強力な指導の下にある傘下組織のようになっていた,③学校法人R学園が学校法人の形態をとったのは日本社会において行政上の便宜等を受けるためであり,学校の日常的な管理運営は学校単位で設けられている教育会が行っていると学園関係者は認識していたなどの事実が認定された(乙54)。
また,東京都が平成25年11月にまとめた調査結果では,不適切な財産管理の例として,①I1幼初級学校の校舎附属棟の一部が「T」に無償で貸し渡されており,このTについては,平成17年5月10日付け及び同18年7月29日付けのC新報に,朝鮮総聯町田支部事務所が使用していることが記載されている事例,②東京都小平市にある朝鮮大学校のグラウンドが朝鮮総聯事業体企業のD信用組合に対する負債のために担保提供され,その後,D信用組合の経営破綻によりUが債権者となり,平成24年8月に当該グラウンドについて競売開始決定がされたが,学校法人I学園が上記企業の債務の一部を弁済したため,平成25年1月に競売申立てが取り下げられた事例などが指摘されている(乙55)。
平成22年9月26日のVニュースにおいて,朝鮮学校の生徒のうち朝鮮総聯の幹部等の子弟については朝鮮総聯が学費と同程度の額を教育手当として拠出し,学校側が会計上で学費と相殺する形で処理することにより実質的に学費が免除されていること,朝鮮高級学校が支給法の対象となった場合には免除者分も就学支援金が支給され,実質的に朝鮮総聯側の利益になる可能性があることが報道された(そして,審査会の調査では,W初中高級学校において朝鮮総聯専従者・学校教員の子弟の学費を全額免除していることが確認された。甲26)。神奈川県において,朝鮮総聯と関係が深いとされる教育会が朝鮮学校の生徒等の保護者に対し生徒等に支給された学費補助金を教育会に納付させたケースがあり,9割の保護者が応じていた旨の報道(乙75,78,79)がされた(なお,証拠(乙77)によれば,この事実が認められる。)。また,X学校では,「教育会会費」(月3000円)が学則に明記されていた(甲26)。

審査会における議論等(平成23年11月2日に開催された第4回審査会以降の検討状況)
平成23年11月2日の第4回審査会の議論において「朝鮮高級学校の審査に当たっては,これまで審査を行ってきたケースと異なり,時間がかかる可能性がある。懸念される点が多く指摘されていることもあり,いろいろな点を明らかにしていく必要があるのではないか。」との意見が出された(甲25)。同年12月16日の第5回審査会の議論において「実地調査の結果では,授業における生徒の様子など特に懸念されるところは見当たらなかったようだが,朝鮮高級学校と朝鮮総聯との関係など学校運営に不透明なことがあれば,疑念がないようクリアにしていく必要があるのではないか。」との意見が出された(甲26)。
平成24年3月26日の第6回審査会においては,仮に支給対象外国人学校として指定する場合の留意事項(素案)等について検討がされ,「総聯関連団体からの寄付等の割合がわずかであるからといって,直ちに影響力がないとはいえない。一方,外部からの支援を全て断てというのも難しい。教育的な影響力が,どの程度生徒に対して及んでいるかを把握しておく必要があるのではないか。」,「法令違反とまで判断しがたい場合でも,適正に学校運営が行われているかどうかは慎重に判断すべきではないか。」,「いくら確認しても,すっきり指定することができるようにならない。留意事項の内容について検討すること自体はよいが,学校運営などの面で適正かどうか判断し難いとも思われる。」,「そもそも,この審査会において,指定の可否を議論し,結論を出すのは限界があるのではないか。」といった意見も出された(甲27)。また,同年9月10日の第7回の審査会においても,仮に支給対象外国人学校として指定する場合の留意事項(素案)等について検討がされ,「本審査会として,結論として1つの方向性を示すことが求められているのか。場合によっては,委員の間にいろいろな意見があってまとまらない,ということもあり得るのか。」との質問に対し,事務局から「最終的に,どちらかの方向性は示していただくことになるが,その際に,少数意見を併記することも考えられる。」との回答がされたほか,「書面による学校への確認については,報道等で指摘される事実に関して,学校側が一様に否定する結果になっている。こちらも捜査権があるわけではないので,真偽の確証を得ることについては限界がある側面もあるが,審査基準に関わることについては,引き続きしっかり確認してほしい。」との意見も出された(甲28)。
東京地方裁判所平成26年

第3662号国家賠償請求事件における証

人であるY(文部科学省の職員で審査会の事務方の一人)は,審査会における審査について,公安調査庁の見解,国会質問等での答弁,朝鮮総聯のホームページ,各種団体からの意見,報道機関等からの情報が寄せられる中,朝鮮学校の運営が本件規程13条に照らして適正に行われているか確証を得ることが難しいという状況であったこと,本件規定(ハ規定)を根拠として審査を行ってきたが,審査を継続して結論を得ることが極めて難しい,審査会の委員のほうからも同様の意見が多数出ていることについて新大臣に説明する予定であったことを証言しており,そして,その難しいという点については,「書面での確認や審査というものをしたり,あるいは電話等で学校側にお聞きする事実はございましたけれども,いろいろな情報提供が報道機関等からもございまして,次から次にございまして,文部科学省のほうでは,実際に立ち入り調査権とか捜査権といった,実際にそうした具体的に確認をする手だてがない中で確認を確かなものにすると,確証を得ていくということがなかなか難しいということでございました」と証言している(乙163)。
その後,平成24年12月の衆議院総選挙で自民党が議席を増やして与党になり,下村文科大臣になって以降,審査会は開催されず,平成25年2月20日,本件規則改正,本件不指定処分が行われた。
このように,審査会の議論においても,学校運営の適正性について委員からいろいろな意見が出され,指定についての慎重論も無視できない状況であり,結局のところ,支給対象外国人学校として指定するという結論までには至らなかったものである。そして,前記のとおり,平成24年12月以降審査会が開催されていないことを考慮しても,審査会としては,被控訴人につき,就学支援金の授業料に係る債権の弁済への確実な充当が行われることや,学校運営が法令に従った適正なものであることについて,十分な確証を得ることができなかったものということができる。

まとめ
ところで,教育基本法16条1項は「教育は,不当な支配に服することなく,この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり,」と規定するが,これは,教育が人間の成長と社会の発展において極めて重要な地位を占めることに照らし,教育の自主性を保持するため,一部の勢力が教育機関やその教育内容に不当に介入することを排除する趣旨で定められたものと考えられる。そして,教育は,本来人間の内面的価値に関する文化的な営みとして,党派的な利害に支配されるべきではないことからすると,子供が自由かつ独立の人格として成長することを妨げるような介入,例えば,一方的な観念を子供に植え付けるような内容の教育を施すことを強制するようなことは,「不当な支配」として教育基本法16条1項に反するものというべきである(前掲最大判昭和51年5月21日参照)。
本件において,前記アないしウで述べた事情に基づいて朝鮮総聯と朝鮮高級学校との関係をみると,①朝鮮総聯が組織的に朝鮮学校を指導するという関係が成立していること,②朝鮮総聯と朝鮮学校との間では幹部レベルでの人事交流があり,人事面における関係性が強いこと,③朝鮮学校の教員が朝鮮総聯の傘下団体であるMに加盟しており,その生徒も朝鮮総聯の傘下団体であるEに加盟していること,④朝鮮総聯は,その傘下事業体であるPが発行する教科書(北朝鮮の指導者(金日成氏,金正日氏)を絶対的な存在として礼賛し,また,朝鮮労働党や朝鮮総聯を褒め称えている記載が多数見受けられるもの)を朝鮮学校で使用させるなど,特に,教育内容に対してもかなり強い影響力を行使していること,⑤朝鮮総聯は朝鮮学校に対して財政的な支援をしてきていることなどの事情を認めることができる。これらの事情に照らして考えれば,朝鮮高級学校の教育において北朝鮮の指導者や国家理念を肯定的に評価することはその教育目的に沿うものであり,朝鮮総聯がその教育に一定の援助をすること自体は自然な行為であるといえること,被控訴人では,私立学校法に基づき,財産目録,財務諸表等が作成されるとともに理事会等も開催されていたこと,被控訴人及びその所轄庁である大阪府知事が3年に1度を基本として必要に応じて随時,立入検査等を実施したが,A高級学校について教育基本法,学校教育法等の法令に違反することを理由とする行政処分は行われていないことなど,被控訴人の主張に有益な事情を考慮しても,A高級学校は,朝鮮総聯から,教育の目的を達するための必要性,合理性の限度を超えて介入を受け,教育の自主性をゆがめるような支配を受けている合理的な疑いがあるというべきである。
また,前記ア及びウで認められる事情は,朝鮮総聯が朝鮮学校に対して財政面において強力な支配権を行使していることを疑わせるのに十分な根拠となるものであるが,前記ア及びイのとおり認められる朝鮮総聯と朝鮮高級学校との関係等にも照らして考えれば,上記ウで対象とされていない他の朝鮮学校においても,朝鮮総聯が財政面における同様の支配を及ぼしていることを疑わせる根拠となるものであって,これによれば,A高級学校において就学支援金の管理が適正に行われないことを疑わせる相当な根拠があるということができる。
このように,本件不指定処分がされた平成25年2月20日の時点で,A高級学校について,朝鮮総聯から教育基本法16条1項にいう「不当な支配」を受けていること,及び財政面で就学支援金の管理が適正に行われないことを疑わせるに足りる相当な根拠があったものと認められるのであり,これによれば,法令に基づく適正な学校運営という観点からして,本件規程13条適合性があるということはできない。


本件不指定処分について

下村文科大臣は,被控訴人に対し,平成25年2月20日付けで,①本件規定を削除したこと,及び②A高級学校の本件規程に定める指定の基準への適合性を審査したが本件規程13条に適合すると認めるに至らなかったことを理由に本件不指定処分をしたものである。そして,文部科学省が本件規定の削除に際して述べた平成25年2月20日付けの意見(パブリックコメントへの応答)では,朝鮮学校については,拉致問題の進展がないこと,朝鮮総聯と密接な関係にあり教育内容,人事,財政にその影響が及んでいることを踏まえると,本件規定に基づく指定には国民の理解が得られないとの観点から本件規定を削除するとされていることからすると,本件不指定処分がされた理由として挙げられた「本件規程13条に適合すると認めるに至らなかったこと」という点は,下村文科大臣において,A高級学校が朝鮮総聯と密接な関係にあり,教育内容,人事,財政にその影響が及んでいることなどから法令に基づく適正な運営が行われているとの確証が得られなかったことを意味するものと認めることができる(なお,本件不指定処分を受けた被控訴人においては,それまでに審査会が被控訴人の設置するA高級学校を含めて朝鮮学校に対して調査,照会を行ってきた経緯(補正の上で引用した原判決第3の1

イ)があるため,本件不指

定処分の通知書の記載によって,朝鮮総聯との関係により適正な学校運営に疑いがあることがその処分の根拠であると認識することができたといえることは,後記8

のとおりである。)。

そして,前記⑷で述べたとおり,A高級学校について,朝鮮総聯から教育基本法16条1項にいう「不当な支配」を受けていること,及び財政面で就学支援金の管理が適正に行われないことを疑わせるに足りる相当な根拠があったものと認められる以上,下村文科大臣が上記の理由(朝鮮総聯と密接な関係にあり,法令に基づく適正な運営が行われているとの確証が得られなかったため,本件規程13条に適合すると認めるに至らなかったこと)に基づいて行った本件不指定処分は,不合理なものということはできない。また,本件不指定処分について,文部科学大臣の裁量権の逸脱又は濫用があるということもできない。

これに対し,被控訴人は,下村文科大臣がA高級学校につき本件規程13条適合性を否定したのは,外交的又は政治的理由に基づくものであるから,下村文科大臣の上記判断には裁量権の逸脱濫用があると主張する。しかし,上記のとおり,「不当な支配」があるか否かについて検討した結果の結論であったものと認められるのであって,上記主張は採用できない。なお,前記1において原判決を引用して認定したとおり,下村議員(当時の自民党のシャドウキャビネットの文部科学大臣)は,平成23年9月13日頃,朝鮮高級学校の高校授業料無償化についてのインタビューにおいて,朝鮮高級学校に対する本件規定に基づく指定の可否の審査手続を再開することは,北朝鮮の拉致問題について我が国が軟化したとの誤ったメッセージとなるばかりか,外交問題に発展しかねないなどと述べていたことは認められるが(原判決第3の1

ク),同発言は野党議員としての発

言であり,その後の文部科学大臣としての定例記者会見では,朝鮮学校を朝鮮総聯との密接な関係や朝鮮学校が政治的にも教育的にも朝鮮総聯の影響下に入っていることを理由に本件不指定処分をした旨の発言をしていること等(補正の上引用した原判決第3の1

ス,セ)にも鑑みると,前記

の発言をもって,本件不指定処分が外交的又は政治的理由に基づくものであったということはできない。

この点,被控訴人は,文部科学大臣は本件規定に基づく指定の申請がされた学校やその学校の所在する都道府県から提供された資料により本件規定に基づく指定の可否を判断すべきであり,支援室からの質問に対する被控訴人の回答,朝鮮総聯のホームページ,新聞記事,公安調査庁からの情報に基づいて本件規程13条適合性を判断することはできない,特に公安調査庁からの情報は,対立する国家や団体を規制する観点からのものであり,教育的観点からの客観的判断をゆがめるものであって,参考にすることは絶対に許されない旨主張する。
しかし,本件規程13条適合性に係る審査について,所轄庁を通じた調査・確認のみに限定するとの定めはなく,それのみが予定されているものとは認め難い上,前記説示のとおり,本件規程13条適合性の判断は,単に教育内容などの教育的観点から行われるだけでなく,財務管理や学校の管理運営といった観点からも行われるものであるから,支援室からの質問に対する被控訴人の回答,朝鮮総聯のホームページ,新聞記事,公安調査庁等からの情報にも基づいて本件規程13条適合性を正しく判断する必要があるものというべきである。取り分け,朝鮮高級学校にあっては,本国政府や国際的な評価機関の認定といった客観的,制度的な基準への適合性が求められる他の外国人学校とは異なり,信頼するに足りる客観的資料が決定的に不足しており,指定の申請がされた学校の所在する都道府県から提供される資料では不十分であること,それゆえに,審査会においても,「朝鮮高級学校の審査に当たっては,これまで審査を行ってきたケースと異なり,時間がかかる可能性がある,懸念される点が多く指摘されていることもあり,いろいろな点を明らかにしていく必要がある」などとの意見が出され(補正の上引用した原判決第3の1


),さらには,「そも

そも,この審査会において,指定の可否を議論し,結論を出すのは限界があるのではないか」との意見まで出され(甲27),審査会としての結論に至ることがなかったことも認められるのである。これらの事情からしても,文部科学大臣において,およそ収集し得る資料は全て俎上に挙げ,その上でその客観性や信用性を十分に考慮して本件規程13条適合性の判断をすることは何ら差支えないものというべきである(なお,公安調査庁及び警察庁は,いずれも法によって設置された国家機関であり(法務省設置法29条及び公安調査庁設置法,内閣府設置法64条,警察法4条及び15条参照),一定の調査,分析能力を備えた組織であると考えられることに照らせば,文部科学大臣において,これらの資料や国会答弁の内容に一定の信を置くことが不合理とはいえないというべきである。)。
被控訴人の主張は採用できない。
3
争点1(本件規定の削除の違法性の有無)について
被控訴人は,本件省令により本件規定を削除することは,支給法2条1項5号の委任の範囲を逸脱して無効である旨主張する。
しかし,上記認定,説示のとおり,A高級学校が本件規程13条に適合するものとは認められないと文部科学大臣が判断したことにおいて,文部科学大臣に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるものとは認められない。本件不指定処分と同時に本件省令により本件規定が削除されており,そのことも不指定処分の根拠の一つとされてはいるが,基本的には,上記のとおり本件規定該当性がないものと判断された結果であるから,本件規定の削除が支給法2条1項5号の委任の範囲を逸脱して違法であるか否かは,本件規定に基づいてされた本件不指定処分についての上記の判断を左右するものではない。
4
争点3(本件規程15条違反の有無)について
被控訴人は,文部科学大臣が本件規定に基づく指定をするか否かの判断に当たって,教育の専門家等で構成された審査会が取りまとめた意見を聴くものとする本件規程15条の趣旨からすれば,文部科学大臣は審査会の意見を尊重すべきであり,文部科学大臣の判断は,審査会の意見と同じであることが想定されていると主張する。
しかし,支給法は審査会を設けることについて規定しておらず,審査会は法律の根拠を有するものではなく,また,文部科学大臣が審査会の意見を聴くことが法令上要請されているものでもなく,文部科学大臣は審査会の意見が自らの判断に資すると考えたため本件規程15条を設けた(本件規程15条は,「文部科学大臣は,規則第1条第1項第2号ハの規定による指定を行おうとするときは,あらかじめ,教育制度に関する専門家その他の学識経験者で構成される会議で文部科学大臣が別に定めるものの意見を聴くものとする。」と規定するだけで,文部科学大臣が審査会の議により判断するとは規定していない。)のであるから,審査会の意見は文部科学大臣が判断する際の考慮要素の一つにすぎないというべきである。このことは,本件規定に基づく指定を受けた学校について指定を取り消す場合に審査会の意見聴取を必須のものとしていないこと(本件規程17条2項は「意見を聴くことができる」とする。),本件規程15条を設ける時に参考にした,大学認可の際に文部科学大臣が大学設置・学校法人審議会に諮問する制度(学校教育法95条,同法施行令43条)においても,審議会の意見が文部科学大臣の判断を拘束するものではないとされていることからも明らかである。
また,前記1において原判決を補正の上引用して認定(原判決第3の1ア,

イ)したとおり,A高級学校を含む朝鮮高級学校について審査した第
7回までの審査会においては,教育基本法16条1項の「不当な支配」がされていることや,適正な学校運営がされていないことが疑われる事情について議論がされたが,結論を出すに至らず,この審査会において指定の可否を議論し結論を出すのは限界があるのではないかという意見まで出されていた状況にあり,審査会の最終的な意見の取りまとめがされたとはいえないし,また,審査会での議論がそのような状況にあったことからすると,審査会の意見としては,種々の意見が併記されることとなる可能性も高かったものと考えられる。そうすると,それまでの審査会で出された委員の種々の意見を考慮することとした上で,更なる審査を継続しないとした文部科学大臣の判断が不合理なものとまではいえない。
この点,被控訴人は,本件規程15条は,文部科学大臣が本件規定に基づく指定をするに当たっては審査会の「意見を聴くものとする。」として審査会の意見を聴くことを義務付けているのに,下村文科大臣は,本件不指定処分をするに当たり,審査会の最終的な意見の取りまとめをさせないまま本件不指定処分をした違法があると主張する。
しかし,上記のとおり,本件規程15条は「意見を聴くものとする。」と規定するのみであって,文部科学大臣が審査会の「議により」判断するというような規定になっていないこと,また,前記2
において説示したとおり,

本件規程13条に定める要件の判断は,その性質及び内容からして専門的,技術的検討を伴うことから,教育行政に通暁する文部科学大臣の専門的,技術的判断に委ねられているものと解されることからすると,本件規程15条は,審査会の意見を聴くことを義務付けているとは解されない。被控訴人の上記主張は採用できない。
よって,文部科学大臣が審査会の最終的な意見を聴かないで本件不指定処分をしたことが,本件規程15条に違反し,これにより本件不指定処分が違法となると解することはできない。
5
争点4(民族教育に関する権利を侵害した違法の有無)について
被控訴人は,民族教育を受ける権利は個人がアイデンティティを形成する前提として必要不可欠の重要な権利であるのに,本件不指定処分がされることにより,就学支援金の支給を受けられないという経済的不利益を被り,民族教育を受ける権利の実現に重大な支障が生じるなどと主張する。
しかし,本件不指定処分は,A高級学校が在学する生徒に対し民族教育を行うことや生徒が同学校に進学,通学することを何ら制限するものではない。なお,本件不指定処分がされたことにより,A高級学校に在学する生徒を含む世帯は,当該生徒が支給法2条1項1号ないし4号又は本件規則1条1項2号イ,ロに該当する学校に在学する場合と比較すると,就学費用の負担が重くなるといえるが,本件規定に基づく指定を受けるための被控訴人の申請が法律上の要件を満たすものとはいえないのであるから,この負担があることをもって民族教育を受ける権利を侵害する違法な処分であるとはいえない。同主張は採用できない。

6
争点5(憲法14条違反の有無)について
前記2において説示したとおり,本件不指定処分の理由は,A高級学校が本件規程13条に適合すると認めるに至らなかったことにある。
そして,本件不指定処分がされた時点において,A高級学校について,朝鮮総聯から「不当な支配」を受けていること等を疑わせるに足りる相当な根拠があったため,適正な学校運営という観点からして,高等学校の教育課程に類する課程を置くものであることに疑問が残るのであるから,生徒の思想信条や社会的身分を理由に差別をしたとする被控訴人の主張は当たらない。また,本件規程13条に適合するかどうかの審査につき,A高級学校と本件規定に基づく指定を受けた他の外国人学校(B,G)との間において審査内容に差異はないものの,A高級学校の審査の方法,程度が特に入念なものになったのは,前記2において認定,説示したとおり,同校が法令に基づく適正な学校運営を行っているかについて疑義が生じ,調査検討が必要となったためである。したがって,上記の疑義が生じていなかった他の外国人学校との間で審査の方法・程度に差異が生ずるのは,やむを得ないし,それは合理的な理由に基づくものというべきである。
本件不指定処分が憲法14条に違反するものということはできない。7
争点6(国際人権法違反の有無)について
社会権規約2条2項及び自由権規約26条について
我が国において,ある条約を独立の裁判基準として用いるためには,条約の基本的性格,我が国における司法と行政・立法との権力分立及び法的安定性等の観点から,①私人の権利義務を定め直接に我が国裁判所で執行可能な内容のものとするという条約締結国の意思が確認でき,②条約の規定において私人の権利義務が明白,確定的,完全かつ詳細に定められていて,その内容を補完し,具体化する法令を待つまでもなく国内的に執行可能であることが必要であるところ,社会権規約2条2項及び自由権規約26条は,それぞれ「この規約の締約国は,この規約に規定する権利が人種,皮膚の色,性,言語,宗教,政治的意見その他の意見,国民的若しくは社会的出身,財産,出生又は他の地位によるいかなる差別もなしに行使されることを保障することを約束する。」,「すべての者は,法律の前に平等であり,いかなる差別もなしに法律による平等の保護を受ける権利を有する。このため,法律は,あらゆる差別を禁止し及び人種,皮膚の色,性,言語,宗教,政治的意見その他の意見,国民的若しくは社会的出身,財産,出生又は他の地位等のいかなる理由による差別に対しても平等のかつ効果的な保護をすべての者に保障する。」と規定するものであり,この文理からすると,上記②の要件を満たすものとはいえない。
また,社会権規約2条1項は「この規約の各締約国は,立法措置その他のすべての適当な方法によりこの規約において認められる権利の完全な実現を漸進的に達成するため,自国における利用可能な手段を最大限に用いることにより,個々に又は国際的な援助及び協力,特に,経済上及び技術上の援助及び協力を通じて,行動をとることを約束する。」と規定し,また,「この規約の締約国は,社会保険その他の社会保障についてのすべての者の権利を認める。」とする同規約9条については,締約国において,社会保障についての権利の実現に向けて積極的に社会保障政策を推進すべき政治的責任を負うことを宣明したものであり,個人に対し即時に具体的権利を付与すべきことを定めたものではないと解されること(最一小判平成元年3月2日・集民156号271頁)に照らせば,社会権規約2条2項は,締約国において,積極的に社会保障政策を推進する施策をとる際,同項に係る要素につき政治的,社会的,経済的理由により現実には種々の対応をとらざるを得ない面があり得ることを当然の前提として,上記権利の平等な実現を積極的に実現すべき政治的責任を負うことを宣明したものというべきである。
そして,社会権規約2条2項と同趣旨である自由権規約26条も,社会権との関係では,締約国における政治的責任を示したものと解される。したがって,社会権規約2条2項及び自由権規約26条は,いずれも自動執行力はなく,裁判規範性を有するものではないから,本件不指定処分が上記各規定に違反したものということはできない。
社会権規約13条について
社会権規約13条1項は「この規約の締約国は,教育についてのすべての者の権利を認める。締約国は,教育が人格の完成及び人格の尊厳についての意識の十分な発達を指向し並びに人権及び基本的自由の尊重を強化すべきことに同意する。更に,締約国は,教育が,すべての者に対し,自由な社会に効果的に参加すること,諸国民の間及び人種的,種族的又は宗教的集団の間の理解,寛容及び友好を促進すること並びに平和の維持のための国際連合の活動を助長することを可能にすべきことに同意する。」と定め,同条2項が「この規約の締約国は,1項の権利の完全な実現を達成するため,次のことを認める。」とし,その(b)で「種々の形態の中等教育(技術的及び職業的中等教育を含む。)は,すべての適当な方法により,特に,無償教育の漸進的な導入により,一般的に利用可能であり,かつ,すべての者に対して機会が与えれるものとすること。」,その(c)で「高等教育は,すべての適当な方法により,特に,無償教育の漸進的な導入により,能力に応じ,すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること。」とする。上記のような社会権規約13条2項(b)の規定に加え,支給法の内容をみても,支給法が同規定の効力を日本国内において直接発生させるために制定された法律であるとはいえないし,また,社会権規約13条2項(b)の文理からすれば,同項(b)が,前記

で述べた条約が自動執行力を有する

ための要件を満たしているとはいえない。また,社会権規約2条1項が締約国において立法措置その他の全ての適当な方法によりこの規約において認められる権利の完全な実現を漸進的に達成することを求めていることからすれば,社会権規約13条2項(b)も,締約国においてその定める権利の実現に向けて社会保障政策を推進すべき政治的責任を負うことを宣明したにすぎないものというべきである。そうすると,本件不指定処分が上記規定に違反するということはできない。
人種差別撤廃条約2条及び5条について
人種差別撤廃条約2条1項は,「締約国は,人種差別を非難し,また,あらゆる形態の人種差別を撤廃する政策及びあらゆる人種間の理解を促進する政策をすべての適当な方法により遅滞なくとることを約束する。このため,(a)各締約国は,個人,集団又は団体に対する人種差別の行為又は慣行に従事しないこと並びに国及び地方のすべての公の当局及び機関がこの義務に従って行動するよう確保することを約束する。(b)各締約国は,いかなる個人又は団体による人種差別も後援せず,擁護せず又は支持しないことを約束する。(c)各締約国は,政府(国及び地方)の政策を再検討し及び人種差別を生じさせ又は永続化させる効果を有するいかなる法令も改正し,廃止し又は無効にするために効果的な措置をとる。(d)各締約国は,すべての適当な方法(状況により必要とされるときは,立法を含む。)により,いかなる個人,集団又は団体による人種差別も禁止し,終了させる。(e)各締約国は,適当なときは,人種間の融和を目的とし,かつ,複数の人種で構成される団体及び運動を支援し並びに人種間の障壁を撤廃する他の方法を奨励すること並びに人種間の分断を強化するようないかなる動きも抑制することを約束する。」と,同条2項は,「締約国は,状況により正当とされる場合には,特定の人種の集団又はこれに属する個人に対し人権及び基本的自由の十分かつ平等な享有を保障するため,社会的,経済的,文化的その他の分野において,当該人種の集団又は個人の適切な発展及び保護を確保するための特別かつ具体的な措置をとる。この措置は,いかなる場合においても,その目的が達成された後,その結果として,異なる人種の集団に対して不平等な又は別個の権利を維持することとなってはならない。」と定め,同条約5条は,「第2条に定める基本的義務に従い,締約国は,特に次の権利の享有に当たり,あらゆる形態の人種差別を禁止し及び撤廃すること並びに人種,皮膚の色又は民族的若しくは種族的出身による差別なしに,すべての者が法律の前に平等であるという権利を保障することを約束する。(a)裁判所その他のすべての裁判及び審判を行う機関の前での平等な取扱いについての権利,(b)暴力又は傷害(公務員によって加えられるものであるかいかなる個人,集団又は団体によって加えられるものであるかを問わない。)に対する身体の安全及び国家による保護についての権利,(c)政治的権利,特に普通かつ平等の選挙権に基づく選挙に投票及び立候補によって参加し,国政及びすべての段階における政治に参与し並びに公務に平等に携わる権利,(d)他の市民的権利(特に,以下略),(e)経済的,社会的及び文化的権利(特に,(v)教育及び訓練についての権利,その他の記載((ⅰ)ないし(ⅳ)及び(ⅵ))略),(f)輸送機関,ホテル,飲食店,喫茶店,劇場,公園等一般公衆の使用を目的とするあらゆる場所又はサービスを利用する権利」と定める。
このような人種差別撤廃条約の規定も,その文理からして,条約締結国が当該権利の実現に向けた積極的施策を推進すべき政治的責任を負うことを定めたにすぎないものであって,裁判規範性は認められない。その上,本件不指定処分は,A高級学校には教育基本法16条1項にいう「不当な支配」があること等の疑いがあり,本件規程13条適合性を認めることができないことを理由としてされたものであって,国籍や人種に基づいてされたものではないから,上記各規定に違反するとはいえない。
国連人権関連委員会からの懸念及び勧告の無視による社会権規約等違反について
被控訴人は,社会権規約委員会,人種差別撤廃委員会及び子どもの権利委員会は,朝鮮高級学校が支給法の対象とされないこと等について懸念を表明し,控訴人に対してその是正を勧告しているところ,上記各委員会は,日本が批准するそれぞれの条約に規定された国家報告審査制度(社会権規約16条及び17条,人種差別撤廃条約9条,児童の権利に関する条約44条)によるものであり,控訴人が留保なくこれらの条約を批准している以上,控訴人が上記の懸念及び勧告を無視することは上記各条約違反となるとともに日本国憲法98条及び前文に違反するものであり,本件不指定処分も,違法である旨主張する。
しかし,被控訴人が指摘する人種差別撤廃委員会等の所見等は,懸念や勧告を示すものにすぎない上,支給法の仕組み等を踏まえたものではないし,朝鮮高級学校,北朝鮮及び朝鮮総聯に対する具体的な事実調査を行った上でされたものでもないことからすれば,上記の所見等をもって本件不指定処分が社会権規約等に違反する違憲,違法なものということはできない。8
争点7(行政手続法違反の有無)について
行政手続法6条及び7条について

行政手続法7条は,申請に対する処分につき,いわゆる「受理」の概念を排斥し,申請が到達したときは,行政庁には,遅滞なく審査を開始する義務があることを定めるとともに,申請が形式上の要件に適合しないときは,速やかに補正を求めるか,申請の拒否をしなければならない旨を定めたもので,申請に対する審査の開始時期と,形式上の要件に適合しない申請に対する応答時期について規定したものであって,申請の処理期間については規定していない。したがって,同条が本件規定に基づく指定に関する処分までの期間を可及的に迅速にすることを法的に義務付けているということはできない。


前記1において原判決を補正の上引用して認定したとおり,被控訴人は,平成22年11月27日付けでA高級学校につき本件規定に基づく指定の申請をしたが,その直前である同月23日に北朝鮮による韓国延坪島砲撃事件が起きていたため,控訴人は,A高級学校を含む朝鮮高級学校に対する本件規定に基づく指定の可否の審査手続を開始しなかったものであり,その後,菅首相は,北朝鮮が上記事件の砲撃に匹敵するような軍事力を用いた行動をとっていないことから,平成23年7月には南北間及び米朝間の対話が行われるなど北朝鮮と各国との対話の動きが生じていることを踏まえ,事態は上記の砲撃以前の状況に戻ったと総合的に判断できるとして,平成23年8月29日,髙木文科大臣に対し審査手続を再開するよう指示した(原判決第3の1

エ,カ)。審査手続が再開されてからは,審査会

において,平成23年11月,同年12月,平成24年3月及び同年9月の4回にわたって審査を行ったほか,支援室において書面による質問や朝鮮高級学校の授業風景の視察等の実地調査を行った(原判決第3の1イ)。また,朝鮮高級学校については,法令に基づく適正な学校運営がされているかについて疑義が生じたため,その調査検討が必要となり,他の学校に比して入念に審査が行われることになったものである(前同)。このような経過からすると,上記の審査に時間を要したことはやむを得ないものであったということができる。
また,審査を停止していた理由について,髙木文科大臣は,平成23年3月8日の参議院予算委員会において,「昨年の北朝鮮の砲撃について,(中略)まさに国家の安全にかかわる事態でありました。このため,国内において政府を挙げて情報収集に努めておりましたし,不測の事態に備えて国民の生命,財産を守ると,こういう見地から一旦手続は停止したものであります。」「なお,審査や指定に当たっては,外交上の配慮などにより判断すべきものではなくて,教育上の観点から客観的に判断すべきものとの考え方については変わっておりません。」と答弁した(補正の上引用した原判決第3の1

オ)。不測の事態に備え万全の態勢を整える必要が

あった当時の情勢を踏まえれば,控訴人が指定の可否の審査手続を開始しなかったことが,殊更に審査を引き延ばすものであったとは認め難い。以上のことからすれば,本件不指定処分について行政手続法6条及び7条の違反があるとはいえないというべきである。

また,被控訴人は,行政庁が相当期間内に処理すれば旧法を適用して許可すべきところを不作為のまま放置し,その間に法令が改廃され,これを理由に不許可処分とすることは許されないと主張する。しかし,前記2において説示したとおり,A高級学校は本件規程13条に適合するとは認められないのであるから,控訴人が相当期間内に処理すれば旧法を適用して許可すべき事情が存在したものということはできず,被控訴人の主張は前提を欠くというべきである。また,本件では,前記イのとおり,A高級学校については審査会の審査に時間を要したことはやむを得ないのであって,申請から相当期間内に処分がされていないということはできない。行政手続法8条について
処分において示すべき理由の程度は,処分の性質と理由付記を命じた法律
の規定の趣旨,目的に照らして決すべきであるところ,本件不指定処分の通知書には本件規定が削除されたこと及び本件規程13条適合性が認められないことが明示されている。
本件規程13条は,「前条に規定するもののほか,指定教育施設は,就学支援金の授業料に係る債権の弁済への確実な充当など法令に基づく学校の運営を適正に行わなければならない。」と規定しており,就学支援金の授業料に係る債権の弁済への確実な充当という例示をした上で,法令に基づく学校の運営が適正に行われていることを要件としているのであるから,本件不指定処分においては,処分を受けた申請者がその根拠を理解し,これに対する不服申立てをするために必要な理由は示されているものというべきである。この点について,被控訴人は,本件不指定処分の実質的理由は,本件規程13条の「法令」に教育基本法が含まれることを前提とし,同法16条1項違反に基づくというものであるのに,その旨は示されていない上,同項違反に当たる具体的事実も示されていないと主張する。しかし,文部科学大臣が本件不指定処分をするに際し,審査会が被控訴人の設置するA高級学校を含めて朝鮮学校に対して調査,照会を行ってきた経緯(補正の上で引用した原判決第3の1

イ)によれば,本件不指定処分に関する限り,被控訴人にお

いては,前記通知書の記載によって,朝鮮総聯との関係により適正な学校運営に疑念が生じていることがその処分の根拠であると認識し得るものというべきであり,理由の付記を求める行政手続法8条の違反があるということはできない。
行政手続法違反の取消事由の該当性について
仮に,本件不指定処分が行政手続法6条及び7条に違反するものであるとしても,本件不指定処分における文部科学大臣の判断は不合理なものではなく,A高級学校は実体的に本件規定に基づく指定を受けることができない外国人学校であるから,上記事由は本件不指定処分の違法を根拠付ける事由になるものではない。
9
当審における当事者らの補充主張について
当審における当事者らの補充主張については,前記2において検討したとおりである。

10

義務付けの訴えの適法性について
本件訴えのうち,文部科学大臣が被控訴人に対してA高級学校について本件
規則1条1項2号ハの規定(本件規定)に基づく指定をすべき旨の義務付けを求める部分は,行政事件訴訟法3条6項2号所定のいわゆる申請型の処分の義務付けの訴えであるところ,同訴えは,法令に基づく申請を却下し又は棄却する旨の処分又は裁決がされた場合において,当該処分又は裁決が取り消されるべきものであり,又は無効若しくは不存在であるときに限り,提起することができるとされている(同法37条の3第1項2号)。
しかし,既述のとおり,本件不指定処分は違法とはいえないから,本件訴えのうち上記義務付けを求める部分は,同法37条の3第1項2号の要件を欠き,不適法である。
第4

結論
以上によれば,本件訴えのうち,本件規定に基づく指定処分の義務付けを求
める部分については却下すべきであり,その余の請求は理由がないから棄却すべきであって,これをいずれも認容した原判決は不当であるから,本件控訴は理由がある。
よって,本件控訴に基づき,原判決を取り消して,主文のとおり判決する。
大阪高等裁判所第13民事部

裁判長裁判官

髙橋譲山本善安田大
裁判官


裁判官
二郎
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