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接見妨害等国家賠償請求事件
事件番号平成29(受)990
事件名接見妨害等国家賠償請求事件
裁判年月日平成30年10月25日
法廷名最高裁判所第一小法廷
裁判種別判決
結果破棄差戻
原審裁判所名福岡高等裁判所
原審事件番号平成28(ネ)140
原審裁判年月日平成29年3月7日
判示事項保護室に収容されている未決拘禁者との面会の申出が弁護人等からあった場合に,その旨を未決拘禁者に告げないまま,保護室収容を理由に面会を許さない刑事施設の長の措置は,特段の事情がない限り,国家賠償法上違法となる
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平成29年(受)第990号
平成30年10月25日


接見妨害等国家賠償請求事件

第一小法廷判決


原判決中,上告人らの接見交通権の侵害を理由とする損
害賠償請求に関する部分を破棄する。
前項の部分につき,本件を福岡高等裁判所に差し戻す。
理由
上告人兼上告代理人X2及び上告代理人斎藤利幸ほかの上告受理申立て理由第3について
1
本件は,拘置所に被告人として勾留されていた上告人X1及びその弁護人で
あった上告人X2が,上告人X1が刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(以下「刑事収容施設法」という。)79条1項2号イに該当するとして保護室に収容中であることを理由に拘置所の職員が上告人X1と上告人X2との面会を許さなかったことにより,接見交通権を侵害されたなどとして,被上告人に対し,国家賠償法1条1項に基づき,慰謝料及び遅延損害金の支払を求める事案である。2
(1)

原審の確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
上告人X1は,平成20年6月,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制
等に関する法律違反被告事件で起訴され,福岡拘置所に被告人として勾留された。(2)

上告人X1は,平成21年7月23日,福岡拘置所において,「獄中者に
対する暴行を謝罪せよ。」などと大声を発し,同拘置所の職員から再三にわたり制止を受けたが,これに従わず,同様の発言を繰り返して大声を発し続けたため,刑事収容施設法79条1項2号イに該当するとして保護室に収容された。なお,上告人X1は,同拘置所に勾留されてから上記の収容までの間にも,複数回にわたり,他の被収容者と共に「死刑執行に反対するぞ。」などと大声でシュプレヒコールを行い,保護室に収容されたことがあった。(3)

上告人X1の弁護人であった上告人X2は,平成21年7月27日,福岡
拘置所を訪れ,上告人X1との面会の申出(以下「本件申出」という。)をした。上告人X1は,同月23日以降も連日大声を発し,継続して保護室に収容されており,同月27日も,本件申出の前後にわたり,「獄中者に対する暴行を謝罪しろ。」などと大声を発していた。同拘置所の職員は,上告人X1に対して本件申出があった事実を告げないまま,上告人X2に対して上告人X1が保護室に収容中であるために面会は認められない旨を告げ,上告人X1と上告人X2との面会を許さなかった。
3
原審は,被告人が保護室に収容中であることを理由として被告人と弁護人と
の面会を許さない措置の違法性について次のとおり判断して,上告人らの接見交通権の侵害を理由とする損害賠償請求をいずれも棄却すべきものとした。保護室に収容されている被告人との面会の申出が弁護人からあった場合に,刑事施設の長が保護室への収容を継続する必要性及び相当性を判断する前提として,上記申出があった事実を被告人に告げるか否かは,その合理的な裁量に委ねられており,この事実を告げないまま,保護室に収容中であることを理由として面会を許さない措置がとられたとしても,上記裁量の範囲の逸脱がなく,上記必要性及び相当性の判断に誤りがない限り,原則として,国家賠償法1条1項の適用上違法とならない。
4
しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次
のとおりである。
(1)

刑訴法39条1項によって被告人又は被疑者に保障される接見交通権は,
身体の拘束を受けている被告人又は被疑者が弁護人又は弁護人となろうとする者(以下「弁護人等」という。)の援助を受けることができるための刑事手続上最も重要な基本的権利に属するものであるとともに,弁護人等からいえばその固有権の最も重要なものの一つである(最高裁昭和49年(オ)第1088号同53年7月10日第一小法廷判決・民集32巻5号820頁参照)。そして,刑事収容施設法31条も,未決拘禁者の処遇に当たっては,未決の者としての地位を考慮し,その防御権の尊重に特に留意しなければならないものとし,また,刑事収容施設法115条は,刑事施設の長は,未決拘禁者(受刑者又は死刑確定者としての地位を有する者を除く。)に対し,弁護人等を含む他の者から面会の申出があったときは,同条所定の場合を除き,これを許すものとしている。これらに照らすと,刑事施設の長は,未決拘禁者の弁護人等から面会の申出があった場合には,直ちに未決拘禁者にその申出があった事実を告げ,未決拘禁者から面会に応ずる意思が示されれば,弁護人等との面会を許すのが原則となるというべきである。
(2)

もっとも,刑事施設においては,その施設の目的や性格に照らし,未決拘
禁者を含む被収容者の収容を確保し,その処遇のための適切な環境及び安全かつ平穏な共同生活を維持する必要があるため,規律及び秩序が適正に維持されなければならない(刑事収容施設法1条,73条参照)。そして,刑事収容施設法79条1項2号は,被収容者が同号イからハまでのいずれかに該当する場合において,刑事施設の規律及び秩序を維持するため特に必要があるときには,被収容者を保護室に収容することができるものとしており,同条3項及び4項は,その収容の期間を制限した上,収容の必要がなくなったときは直ちにその収容を中止させなければならないものとしている。その一方で,刑事収容施設法は,保護室に収容されている未決拘禁者と弁護人等との面会については特に定めを置いていない。これは,保護室に収容されている未決拘禁者との面会の申出が弁護人等からあったとしても,その許否を判断する時点において未決拘禁者が同条1項2号に該当する場合には,刑事施設の長が,刑事施設の規律及び秩序を維持するため,面会を許さない措置をとることができることを前提としているものと解される。上記時点において未決拘禁者が同号に該当するか否かは,未決拘禁者に係る具体的な状況を踏まえて判断されるべきものであるが,その判断に当たっては,未決拘禁者が,刑務官の制止に従わず大声又は騒音を発するなど同号に該当するとして保護室に収容されている場合であっても,面会の申出が弁護人等からあった事実を告げられれば,面会するために大声又は騒音を発することをやめるなどして同号に該当しないこととなる可能性もあることが考慮されるべきである。
(3)

上記(1)及び(2)の刑訴法及び刑事収容施設法の趣旨等に鑑みると,刑事施
設の長は,未決拘禁者が刑事収容施設法79条1項2号に該当するとして保護室に収容されている場合において面会の申出が弁護人等からあったときは,未決拘禁者が極度の興奮による錯乱状態にある場合のように,精神的に著しく不安定であることなどにより上記申出があった事実を告げられても依然として同号に該当することとなることが明らかな場合を除き,直ちに未決拘禁者に同事実を告げなければならず,これに対する未決拘禁者の反応等を確認した上で,それでもなお未決拘禁者が同号に該当するか否かを判断し,同号に該当しない場合には,同条4項により直ちに保護室への収容を中止させて刑事収容施設法115条等により未決拘禁者と弁護人等との面会を許さなければならないというべきである。
そうすると,刑事収容施設法79条1項2号に該当するとして保護室に収容されている未決拘禁者との面会の申出が弁護人等からあった場合に,その申出があった事実を未決拘禁者に告げないまま,保護室に収容中であることを理由として面会を許さない刑事施設の長の措置は,未決拘禁者が精神的に著しく不安定であることなどにより同事実を告げられても依然として同号に該当することとなることが明らかであるといえる特段の事情がない限り,未決拘禁者及び弁護人等の接見交通権を侵害するものとして,国家賠償法1条1項の適用上違法となると解するのが相当である。
(4)

これを本件についてみると,前記事実関係によれば,福岡拘置所において
刑事収容施設法79条1項2号イに該当するとして保護室に収容されていた被告人である上告人X1との面会を求める本件申出が,その弁護人である上告人X2からあったのに対し,同拘置所の職員は,本件申出があった事実を上告人X1に告げないまま,保護室に収容中であることを理由として面会を許さなかったものである。上告人X1は,本件申出の前後にわたり保護室において大声を発していたが,当時精神的にどの程度不安定な状態にあったかは明らかではなく,意図的に抗議行動として大声を発していたとみる余地もあるところ,本件申出があった事実を告げられれば,上告人X2と面会するために大声を発するのをやめる可能性があったことを直ちに否定することはできず,前記2(2),(3)の上告人X1の言動に係る事情のみをもって,前記特段の事情があったものということはできない。
5
以上によれば,原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の
違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原判決中,上告人らの接見交通権の侵害を理由とする損害賠償請求に関する部分は破棄を免れない。そして,前記特段の事情の有無等について更に審理を尽くさせるため,上記部分につき本件を原審に差し戻すこととする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官池上政幸の補足意見がある。
裁判官池上政幸の補足意見は,次のとおりである。
私は,法廷意見に補足して次のとおりの意見を述べておきたい。
1
刑事収容施設法73条2項は,刑事施設の規律及び秩序の維持という目的を
達成するために執られる措置は必要な限度を超えてはならないとする比例原則を規定したものと解され,刑事収容施設法における刑事施設の規律及び秩序を維持するための措置についての他の規定も,必要な限度を超える措置が許されないものであることを踏まえて設けられたものと考えられる。
保護室への収容(刑事収容施設法79条)は,こうした措置の一つであり,同条1項2号は,被収容者が同号イからハまでのいずれかに該当する場合において,刑事施設の規律及び秩序を維持するため特に必要があるときに,被収容者を保護室に収容することができる旨を規定している。この「特に必要があるとき」という要件は,保護室への収容が,特殊な収容形態であり,被収容者の心身に重大な影響を与えるおそれもあることから,それに見合った高度の必要性がある場合に限る趣旨で規定されたものと解される。このような規定の文理や趣旨等に照らすと,「特に必要があるとき」とは,被収容者が著しく不安定な精神状態にある場合に限られるものではなく,被収容者が意図的に抗議行動として大声等を発するなどしており,状況に応じてその行動を自制することができる場合であっても,現に同号イからハまでのいずれかに該当し,刑事施設の規律及び秩序を維持するため上記高度の必要性があるときは,保護室に収容する措置を執ることができるものと解するのが相当である。
2
他方,未決拘禁者が刑事収容施設法79条1項2号に該当するとして保護室
に収容されている場合であっても,面会の申出が弁護人等からあったときは,刑事施設の長は,保護室収容中の未決拘禁者の中には,上記1のように弁護人等と面会するためであれば大声等を発するなどの行動を自制することが可能な状態にある者も含まれることをも考慮に入れて面会の許否を判断しなければならない。そのため,刑事施設の長は,未決拘禁者が,上記申出があった事実を告げられても依然として同号に該当することとなることが明らかであるといえる特段の事情がある場合を除き,直ちに未決拘禁者に上記申出があった事実を告げなければならないと考えられる(なお,付言すると,「特段の事情」は,精神状態に起因するものに限らないが,法廷意見が例示する「未決拘禁者が極度の興奮による錯乱状態にある場合」のように,未決拘禁者が,上記申出があった事実を告げられても,その告知内容を理解すること又はこれに的確な対応をすることが著しく困難な状況にあるために,上記告知をすることが実質的に意味を持たないような場合をいうものと解される。そこで,刑事施設の長としては,上記申出を受けた後,直ちに,室内監視カメラのモニターで未決拘禁者の動静を確認するにとどまらず保護室に赴いてその状況を現認し,上記特段の事情がない限り,まずは未決拘禁者に上記告知をし,これに対する未決拘禁者の反応等を確認することが求められ,その上で,確認した未決拘禁者に係る具体的な状況を踏まえて,当該時点において未決拘禁者が依然として同号に該当するか否かを判断し,面会の許否を決する必要があるといえよう。)。(裁判長裁判官

池上政幸

裁判官

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裁判官

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裁判官

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裁判官

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