判例検索β > 平成29年(あ)第927号
危険運転致死傷、道路交通法違反被告事件
事件番号平成29(あ)927
事件名危険運転致死傷,道路交通法違反被告事件
裁判年月日平成30年10月23日
法廷名最高裁判所第二小法廷
裁判種別決定
結果棄却
原審裁判所名札幌高等裁判所
原審事件番号平成29(う)1
原審裁判年月日平成29年4月14日
判示事項自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律2条5号の危険運転致死傷罪の共同正犯が成立するとされた事例
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平成29年(あ)第927号
平成30年10月23日

危険運転致死傷,道路交通法違反被告事件

第二小法廷決定

主文
本件上告を棄却する
当審における未決勾留日数中430日を本刑に算入する。
理由
弁護人寺崎裕史の上告趣意は,判例違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。所論に鑑み,本件における危険運転致死傷罪の共同正犯の成否について,職権で判断する。
1
第1審判決が認定した本件危険運転致死傷罪の犯罪事実の要旨は,以下のと
おりである。
被告人は,平成27年6月6日午後10時34分頃,北海道砂川市内の片側2車線道路において,第1車線を進行するA運転の普通乗用自動車(以下「A車」という。)のすぐ後方の第2車線を,普通貨物自動車(以下「被告人車」という。)を運転して追走し,信号機により交通整理が行われている交差点(以下「本件交差点」という。)を2台で直進するに当たり,互いの自動車の速度を競うように高速度で走行するため,本件交差点に設置された対面信号機(以下「本件信号機」という。)の表示を意に介することなく,本件信号機が赤色を表示していたとしてもこれを無視して進行しようと考え,Aと共謀の上,本件信号機が約32秒前から赤色を表示していたのに,いずれもこれを殊更に無視し,Aが,重大な交通の危険を生じさせる速度である時速約111kmで本件交差点内にA車を進入させ,その直後に,被告人が,重大な交通の危険を生じさせる速度である時速100kmを超える速度で本件交差点内に被告人車を進入させたことにより,左方道路から信号に従い進行してきたB運転の普通貨物自動車(C,D,E及びF同乗)にAがA車を衝突させて,C及びDを車外に放出させて路上に転倒させた上,被告人が被告人車でDをれき跨し,そのまま車底部で引きずるなどし,よって,B,C,D及びEを死亡させ,Fに加療期間不明のびまん性軸索損傷及び頭蓋底骨折等の傷害を負わせた。2
原判決は,被告人及びAが,いずれも,本件信号機の赤色表示を確定的に認
識し,又はそもそも信号機による交通規制に従うつもりがなくその赤色表示を意に介することなく,自車を本件交差点に進入させたものとして,自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下「法」という。)2条5号にいう赤色信号を「殊更に無視し」たことが推認できるとした上,被告人及びAは,本件交差点に至るに先立ち,赤色信号を殊更に無視する意思で両車が本件交差点に進入することを相互に認識し合い,そのような意思を暗黙に相通じて共謀を遂げた上,各自が高速度による走行を継続して本件交差点に進入し,前記1の危険運転の実行行為に及んだことが,優に肯認できるとして,前記1のとおりA車との衝突のみによって生じたB,C,E及びFに対する死傷結果を含む危険運転致死傷罪の共同正犯の犯罪事実を認定した第1審判決を是認した。
3
これに対し,所論は,本件のような事案においては,明示的な意思の連絡が
ない限り,危険運転致死傷罪の共謀は認められないというべきであり,原判決は刑法60条の解釈を誤っているなどという。
4
そこで検討すると,原判決が是認する第1審判決の認定及び記録によれば,
被告人とAは,本件交差点の2km以上手前の交差点において,赤色信号に従い停止した第三者運転の自動車の後ろにそれぞれ自車を停止させた後,信号表示が青色に変わると,共に自車を急激に加速させ,強引な車線変更により前記先行車両を追い越し,制限時速60kmの道路を時速約130km以上の高速度で連なって走行し続けた末,本件交差点において赤色信号を殊更に無視する意思で時速100kmを上回る高速度でA車,被告人車の順に連続して本件交差点に進入させ,前記1の事故に至ったものと認められる。
上記の行為態様に照らせば,被告人とAは,互いに,相手が本件交差点において赤色信号を殊更に無視する意思であることを認識しながら,相手の運転行為にも触発され,速度を競うように高速度のまま本件交差点を通過する意図の下に赤色信号を殊更に無視する意思を強め合い,時速100kmを上回る高速度で一体となって自車を本件交差点に進入させたといえる。
以上の事実関係によれば,被告人とAは,赤色信号を殊更に無視し,かつ,重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する意思を暗黙に相通じた上,共同して危険運転行為を行ったものといえるから,被告人には,A車による死傷の結果も含め,法2条5号の危険運転致死傷罪の共同正犯が成立するというべきである。したがって,前記1の危険運転致死傷罪の共同正犯の成立を認めた第1審判決を是認した原判断は,正当である。
よって,刑訴法414条,386条1項3号,181条1項ただし書,刑法21条により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官

鬼丸かおる

裁判官
山本庸幸

裁判官

菅野博之)

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