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債務不履行に伴う契約解除により返還請求と、その契約不履行と相当因果関係にある損害の賠償請求事件 特許権 民事訴訟
事件番号平成29(ワ)27980
事件名債務不履行に伴う契約解除により返還請求と,その契約不履行と相当因果関係にある損害の賠償請求事件
裁判年月日平成30年10月25日
法廷名東京地方裁判所
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平成30年10月25日判決言渡

同日原本領収

裁判所書記官

平成29年(ワ)第27980号

債務不履行に伴う契約解除により返金請求と,

その契約不履行と相当因果関係にある損害の賠償請求事件
口頭弁論終結日

平成30年8月16日
判決原告A被告
プロパテント株式会社

被告B
被告ら訴訟代理人弁護士

石主
訴訟費用は原告の負担とする。
事1樹
原告の請求をいずれも棄却する。

2
第1

正文1川実及び理由
請求
主位的請求
被告らは,原告に対し,連帯して645万3200円及びこれに対する平成
29年8月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。2
予備的請求
被告プロパテント株式会社(以下「被告会社」という。)は,原告に対し,645万3200円及びこれに対する平成29年8月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2

事案の概要

本件は,電子ファイルの構造等に係る特許第5926470号(以下「本件特許」という。)の特許権者である原告が,本件特許に係る特許発明(以下「本件特許発明」という。)の米国特許出願をするにあたり,被告会社に本件特許の願書に添付した明細書等の英語翻訳(以下,英語翻訳を単に「翻訳」という。)を依頼したところ,
被告会社の作成した翻訳に誤訳,
改ざん等があったと主張して,
主位的に,①被告会社の債務不履行による契約解除に基づく契約代金返還請求及び損害賠償請求並びに被告会社の代表者である被告B(以下「被告B」という。)の取締役の第三者に対する責任(会社法429条1項)に基づく損害賠償請求として,被告らに対し,645万3200円及びこれに対する平成29年8月22
日(最初の訴状訂正申立書の作成日付)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を,また,②被告らの不法行為に基づく損害賠償請求として,被告らに対し,上記と同額の連帯支払を,さらに,予備的に,③被告会社の請負契約に係る担保責任による契約解除に基づく契約代金返還請求及び損害賠償請求として,被告会社に対し,645万3200円及びこれに対する平
成29年8月22日(最初の訴状訂正申立書の作成日付)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。1
前提事実(証拠(枝番を付さないものはすべての枝番を含む。以下同じ。)を掲げない事実は当事者間に争いがない。)

(1)原告は,次の特許権を有する個人である。(甲7)

特許番号

特許第5926470号(本件特許)


発明の名称

電子ファイルの構造,コンピュータ読み取り可能な記憶媒

体,電子ファイル生成装置,電子ファイル生成方法,電子ファイルウ
平成28年1月12日


出願日
優先日

平成27年5月26日


優先権主張国


登録日

世界知的所有権機関
平成28年4月28日

(2)被告会社は,特許の翻訳を業とする株式会社である。
被告Bは,被告会社の代表取締役であり,被告会社が設立される以前は,比較的大手の特許事務所に勤務していたが,弁理士ではない。
(3)原告と被告Bは,平成27年12月頃,弁理士である訴外Cを通して知り合った。
(4)原告は,本件特許発明の米国特許出願のため,平成28年1月,被告会社に本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。),図面,特許請求の範囲(以下,これらを併せて「本件明細書等」という。)の翻訳を一定の報酬支払を約して依頼し,被告会社はこれを承諾した(以下,当該
翻訳に係る契約を「本件契約」という。)。なお,原告は,後に,当該翻訳を「千九百七十年六月十九日にワシントンで作成された特許協力条約」に基づく国際出願(以下「PCT国際出願」という。)にも使用することとした。(5)なお,原告は,本件契約以前,本件明細書の翻訳を翻訳者である訴外Dにも依頼していたため,被告会社は,当初は訴外Dによる翻訳をチェックして
いたが,当該翻訳に適切でない部分が多かったため,次第に翻訳を初めから行うことになっていった。(甲36,乙50,弁論の全趣旨)
(6)原告は,
平成28年5月19日
(米国時間)
,被告会社の事務所において,
本件特許発明に係る米国特許出願(以下「本件米国出願」という。)を行った。原告は,その後,本件特許発明に係るPCT国際出願を行った。被告会
社は,本件米国出願までの間に,最終的な翻訳(甲9と同内容のもの。以下「本件翻訳」という。)を原告に対して引き渡した。
(7)原告は,同年1月から7月にかけて,被告会社に対し,本件契約の代金として合計269万2000円を支払い,
被告会社はこれを異議なく受領した。
(甲6)

(8)米国特許商標庁は,平成29年2月7日(米国時間),本件米国出願に対する拒絶理由通知(以下「本件拒絶理由通知」という。)を発出した。(甲
9,11)
(9)原告は,同年4月3日,被告会社に対し,内容証明郵便により,本件翻訳についての報告を求めた。
また,原告は,同年5月18日,被告会社に対し,
内容証明郵便により,被告会社に債務不履行があるとして,本件契約の解除の意思表示をし,契約代金の返還を求めた。(甲33,34)

2
争点

(1)主位的請求について
アイ
被告Bの会社法429条1項所定の責任の有無(争点2)


被告会社の債務不履行の成否(争点1)

被告らの不法行為の成否(争点3)

(2)予備的請求について
被告会社の請負契約に係る担保責任の有無(争点4)
(3)主位的請求及び予備的請求について
原告の損害の有無及び額(争点5)
3
争点に関する当事者の主張

(1)争点1(被告会社の債務不履行の成否)
(原告の主張)

被告会社の債務不履行(誤訳・改ざんと不報告)
被告会社は,翻訳会社として翻訳する際に重要な部分について誤訳した
こと,依頼者である発明者が特許権を日本で取得できていることを知っていたにもかかわらず,自らの判断で積極的に改変したことを報告しなかったこと,その後も依頼者から報告を求められても改変の事実自体を報告しなかったこと,その結果として誤訳を放置させ,損害を拡大させたこと,以上の理由から,不完全な債務の履行しかしていない。なお,被告会社と
の契約内容は,翻訳と出願の2つに分かれる。【平成30年6月21日付け請求原因の変更の申立て】


誤訳・改ざんについて
被告会社は,訴外Dの翻訳よりも出来栄えの良い翻訳を作成することが
本件契約の内容であるところ,この点について被告会社による債務不履行が生じた。例えば,全訳の英文がありながら一部を削除した。また,基本請求項の全てにおいて「一巡」を「roundrobin」と翻訳した。これらは発明の根本たる技術的事項であったが,被告会社は全て隠していた。【平成29年8月31日付け訴状における主張の追加申立書その1】
具体的な誤訳・改ざんは,以下のとおりである。
(ア)「一巡」を「roundrobin」と翻訳したこと

訴外Dは,本件明細書にある「一巡」を「one-round」と翻訳していたが,被告がこれを削除して,「roundrobin」に改ざんした。この箇所は22か所に及ぶ。この「一巡」の記述は,本件特許発明においてとても大切な文言であった。主張の詳細は別紙平成30年4月18日付け原告準備書面1頁ないし13頁(「3.定義の誤訳について」の前まで)記
載のとおり。
(イ)本件明細書の段落【0342】(12.22.04図6(E)から6(K)で見るハイパーリンクの復元)から段落【0350】(12.40最終結合方式のメリット)までを削除したこと
(ウ)本件明細書の段落【0049】(0.00定義と前提;名前)につい
て「本明細書では,ハイパーリンクは名前を持たない」と誤訳したこと主張の詳細は別紙平成30年4月18日付け原告準備書面13頁「3.(
定義の誤訳について」から)及び14頁記載のとおり。
(エ)明細書のその他の誤り
主張の詳細は別紙平成30年4月18日付け原告準備書面15頁ない
し21頁(「5.請求項が英語の文法違反に満ち溢󠄀れていたこと」の前まで)記載のとおり。

(オ)請求項の翻訳の文法違反
主張の詳細は別紙平成30年4月18日付け原告準備書面21頁「5.(
請求項が英語の文法違反に満ち溢󠄀れていたこと」
から)
及び22頁「6.

報告義務の不履行について」の前まで)記載のとおり。
(カ)ASCII128に翻訳しなかったこと
主張の詳細は別紙平成30年4月18日付け原告準備書面23頁「7.(
ASCII128に英訳をする義務の不履行について」の項)記載のとおり。

報告義務の不履行について
被告らには,翻訳事務終了に際して報告の責任があるから,置き換えの
元と置き換えの先の対応関係を報告する義務がある。特に本件は,翻訳と米国出願のいずれにも被告らが関係している。そこで,原告は被告らに報告を求めたが,被告らはその報告をしなかったので,どこを置き換えたのかを遡って原告に報告することが不可能になった。そして,米国における拒絶査定を受けて,原告が被告らの改ざんを見つけるまで報告をしなかった。原告は,米国出願に際して被告会社の事務所に度々赴いたが,被告Bは何らの釈明をするどころか,嫌なら仕事から降りると一方的であり,どのように明細を変更したかの回答を求めても変更の事実すら回答しなかった。被告らは請負の履行責任を果たしていないから,原告は,その契約の
解除と損害賠償を求める。【平成30年4月18日付け原告準備書面】(被告らの主張)

被告会社に債務不履行はないこと

(ア)原告は,
米国に特許出願する予定の書類を訴外Dに翻訳させていたが,
同人は原告の発明の技術分野に詳しくなく,被告会社にその翻訳をチェックするよう要請してきた。被告会社は,この要請を受けて訴外Dの翻訳をチェックしていたが,その翻訳は適切であるとは言い難く,被告会
社が一部を翻訳して原告に送付したところ,原告は被告会社の翻訳を高く評価し,遅くとも平成28年4月初め頃,原告が米国特許出願する発明に関する原告作成の日本語の文章を一から被告会社が翻訳することとなった。
(イ)原告は,米国で特許出願する予定の発明について日本で平成28年1月12日に特許出願しているが,その出願前後も原告が予定している米国出願の内容は固まらずにいた。その後も,原告による修正,変更,削除などは収束することなく続いた。被告会社が行った翻訳の対象は,原告から渡された原告作成の日本文(乙1),原告が日本において出願した書類(特許公報につき甲7)などをベースにしながら,原告による修
正,変更,削除などが本件米国出願がされた同年5月19日の直前まで及んだ。原告による変更等は本件米国出願の日の直前に及んだため,被告会社はその頃翻訳を完了し,
PDFデータとして原告に納めた
(甲9)

(ウ)以上のような原告による変更指示により,被告会社が翻訳する対象はその都度変更されていったが,被告会社は原告にその都度翻訳した文書
を送り,原告は被告会社から送られてきた翻訳を訴外Dや,原告が別件でインドに商標登録出願する際にネイティブチェックをさせていたインド人弁理士E(以下「訴外インド人弁理士」という。)にチェックさせていた。訴外D及び訴外インド人弁理士は被告会社の翻訳を適切であると評価し,原告自身も被告会社の翻訳を高く評価していた。そして,原
告は,本件米国出願をする際,被告Bに対し,被告会社の翻訳の内容を確認し,何かあった場合には原告が責任を負う旨述べている。
(エ)以上のように,被告会社が完成し原告に納めた翻訳が本件契約の債務の本旨に従ったものであることは明らかであり,被告会社に債務不履行はない。


原告が指摘する誤訳,改ざんについて

原告が誤訳,改ざんとして指摘する点は,以下のとおり,いずれも失当である。なお,本件拒絶理由通知については,米国審査官が「grammaticalandidiomaticerrors」と指摘したのは,被告会社の翻訳の対象となった原告作成の日本文に文法的又は語彙的な誤りがあったからである。「バーベイタムなジャンプ」(請求項1),「成長点」(請求項2),「ハイパーリンクの名前」(請求項3)など,原告の発明において何を意味するのか不明なために,定義する必要があるが,それがされていない用語が数多くある。そのような意味不明なイメージ言語をできる限り意味が伝わるように翻訳した被告らが責められるべきいわれはない。

(ア)「一巡」を「roundrobin」と翻訳したことについて本件明細書(甲7)に添付されている図17Aにあるように,第3プロセスの言語の第1の置き換えは1F→2E,2E→1Fとなり,図17Bにあるように,
第3プロセスの言語の第2の置き換えは2E→3C,
3C→2Eとなり,図17Cにあるように,第3プロセスの言語の第3
の置き換えは3C→4J,4J→3Cとなり,これは隣接2言語間の総当たり入れ替えになるところ,「roundrobin」は総当たりを意味するため,「一巡」の翻訳としてふさわしい。
米国審査官は,「roundrobin」がわからないとか,文法的な誤り(grammaticalerror)があるとか,語彙の誤り(idiomaticerror)がある
などとは指摘していない(甲11)。
(イ)定義の誤訳について
争う
(平成30年6月21日付け被告準備書面
(4)
記載第三を参照)

(ウ)明細書のその他の誤りについて
争う
(平成30年6月21日付け被告準備書面
(4)
記載第四を参照)


(エ)請求項の翻訳の文法違反について
争う
(平成30年6月21日付け被告準備書面
(4)
記載第五を参照)


(オ)ASCII128に翻訳しなかったことについて
被告会社は原告から渡された和文の翻訳を依頼されただけであり,ASCII128対応の翻訳まで依頼されていない。そもそも原告の原文には,ASCII128でも対応できない文字が多数存在する。

報告義務を尽くしていること
被告らは,
おびただしい原告からの変更指示があるたびに誠実に対応し,

翻訳を行い,その都度,原告にメール,電話,打合せの席などで報告してきた。原告の米国への特許出願文書の翻訳に関する報告だけではなく,翻訳以外の質問(例えば,米国への電子出願の手続,米国へのアンチテロを根拠とする特許出願,
原告の発明の販売等)
にもそのたびに回答してきた。
そして,被告Bは原告に最終的な報告書も提出している(乙50)。よって,被告らは報告義務を尽くしている。
(2)争点2(被告Bの会社法429条1項所定の責任の有無)
(原告の主張)


被告Bは,翻訳会社として翻訳する際に極めて重要な部分の翻訳につい
て,訳語を間違えると重大な結果になる部分にもかかわらず,当該箇所を一存で改変したこと,依頼者である発明者が特許権を日本で取得できていることを知っていたにもかかわらず,自らの判断で積極的に改変を報告しなかったこと,その後も依頼者から報告を求められても改変の事実自体を報告しないことに取締役として直接関与し(結果として誤訳を放置させ損害を拡大させ)たこと,以上の理由から,翻訳会社の取締役としての善管注意義務を懈怠したことについて重大な過失がある。【平成30年6月21日付け請求原因の変更の申立て】

原告は,本件契約を被告会社と締結したが,被告会社は,社員が一人し
かいない会社で,
被告B個人がその契約の内容をすべて知る立場にあった。
被告Bは,原告が行った本件特許発明に本件特許が成立していること,原
告が米国特許を得たいと考えていることを知った上で,英文の翻訳を再作成した。しかし,その英文は原告には理解できないであろうことから,重要事項を削除し,翻訳をせず,基本請求項の全てを勝手に改ざんした。重要事項を削除し,翻訳をしないことについて,被告Bは,他に記載しているから重ねて明細書に記載しないと説明するだけで,どこに記載しているかをいまだに原告に報告していない。被告Bは,英文であることを利用して,原告に重要事項の事前相談をせず,また事後報告を求めてもこれを行わない。そのため,原告は,価値のない翻訳を受け取っても契約の趣旨を実現できていないから,本件契約を解除した。【平成29年8月31日付
け訴状における主張の追加申立書その1】
(被告らの主張)
争う。
(3)争点3(被告らの不法行為の成否)
(原告の主張)

被告らは,
翻訳会社として翻訳する際に重要な部分について誤訳したこと,
依頼者である原告が特許権を日本で取得できていることを知っていたにもかかわらず,自らの判断で積極的に改変したことを報告しなかったこと,その後も依頼者から報告を求められても改変の事実自体を報告しなかったこと,その結果として誤訳を放置させ,損害を拡大させたこと,以上の理由から,
被告らには不法行為が成立する。【平成30年6月21日付け請求原因の変更の申立て】
(被告らの主張)
争う。
(4)争点4(被告会社の請負契約に係る担保責任の有無)

(原告の主張)
原告は,本件契約の目的を達せられなかったため,被告会社は請負契約の
担保責任を理由として授受した金銭の返還及び相当因果関係のある損害賠償義務を負う。
(被告らの主張)
争う。
(5)争点5(原告の損害の有無及び額)
(原告の主張)
原告は,以下の損害を被った。各損害の主張の詳細は別紙平成30年4月29日付け原告準備書面記載3のとおり。

PCT出願関係費用
米国出願費用


公証人役場関係費用


貸事務所関係支出費用


交通費


弁理士を同席させた費用


事務費

9万5604円


慰謝料

200万円


IDS等作成のための翻訳費用

エイウ
契約代金

206万2000円

合計

40万2900円

66万3400円

8万円
1万3900円
3万円

2万8800円
107万6596円

645万3200円

(被告らの主張)
争う。
原告主張の損害アについては,被告会社に債務不履行はないから,契約代金の返還義務はない。
原告主張の損害イ,ウ,オないしケについては,原告は証拠を提出せず,
損害の発生,内容,額を立証していない。
同イないしケについては,因果関係がない。すなわち,同イ,ウについて
は,被告らは関与していない。同エについては,原告が自ら米国出願を行った以上,費用がかかるのは当然である。同オについては,米国出願の出願人であれば誰でも負担するものである。同カないしクについては,打合せのために自ら利用した貸事務所の費用や打合せのための交通費,自ら依頼した弁理士費用を原告が負担するのは当然であるし,原告が出した食事代は贈与で
ある。同ケについては,原告が自分で判断して支出したものである。同コについては,被告らは,原告の要望に逐一誠実に対応したのであり,原告に精神的な苦痛は生じていない。また,原告は,発明命名権が奪われたと主張するが,そのような権利は認められていないし,本件特許発明に関して被告らが発明者であると主張したことはないから失当である。

第3
1
争点に対する判断
認定事実
前記前提事実,各項末尾に記載の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。

(1)被告Bは,特許の翻訳を業とする被告会社の代表取締役であり,被告会社が設立される以前は,比較的大手の特許事務所に勤務していたが,弁理士ではない。原告も,そのことを認識していた。
(2)原告は,本件特許発明の米国特許出願のため,平成28年1月,被告会社に本件明細書等の翻訳を一定の報酬支払を約して依頼し,被告会社はこれを
承諾した(本件契約)。
(3)なお,原告は,本件契約以前,本件明細書の翻訳を翻訳者である訴外Dにも依頼していたため,被告会社は,当初は訴外Dによる翻訳をチェックしていたが,当該翻訳に適切でない部分が多かったため,次第に翻訳を初めから行うことになっていった。(甲36,乙50,弁論の全趣旨)

(4)翻訳の対象となる本件明細書等は,それが記載された特許公報が本文だけで69頁,図も合わせると81頁にも及ぶ非常に大部なものである上,その
内容は,
原告自身も自認するように,
相当に複雑で難解なものであった。
(甲
7,乙17,23,46,47)
(5)本件契約が締結された同年1月当時,米国特許出願における特許請求の範囲の記載(日本語)は確定していなかった。原告は,少なくとも同年2月15日,
翻訳の対象となる特許請求の範囲の記載に修正を加えた。
(乙3,
4,
弁論の全趣旨)
(6)同年2月22日には,原告は被告Bに対し,自らが翻訳ソフトを購入し,翻訳者が抜けのない翻訳をしているかを自分で確認する旨記載したメールを送信した。(乙6)

(7)同年3月3日には,原告は被告Bに対し,被告会社が修正を加えた翻訳を訴外インド人弁理士に送付し,同人が1か月程度で校正を行い,被告会社が最終版を作成するとの手順を示すメールを送信した。(乙7)
(8)同日以降も,原告は,翻訳の対象となる本件明細書等について,断続的に修正等を行い,
その修正等についての翻訳を,
被告会社に指示した。
その際,

まず訴外Dに翻訳をさせ,当該翻訳を被告会社に送付し,それを参考にして翻訳するよう指示していた。同年4月11日,原告は,被告会社に対して,「収束に向かってください。
拡散した自分が,
どんどんと文章を広げました。
D様もその為に,意味不明になりました。自分にも責任があります。」とメールした。しかし,同月16日には,「基本請求項を早朝作成します。出来
た後に,再度,B様とC様で打合せをしてください。結果が大丈夫なら,その他の従属項を3人で作成します。」
などとメールし,
同日の後刻には,「大
変迷走させまして,無駄な時間をお掛けしました。」などとメールした。(乙
8ないし21,50)
(9)同年4月17日,被告会社は,「ご確認いただき,修正すべき点がありま
したらご連絡ください。特に問題がないようであればインド代理人への送付をお願い致します。」,「エンドレスな作業となっておりますので,ここで
一度区切りとさせてください。」などとメールに記載して,翻訳を一旦終了し,原告に当該翻訳をメールにて送付した。この時点で,本件明細書等の大部分について翻訳が終了していた。(甲47,弁論の全趣旨(平成30年8月16日付け原告準備書面23,26頁))
(10)同日以降も,原告は,累次にわたって,特許請求の範囲の記載の修正等,それに伴う明細書等の修正等を行い,その都度,被告会社にその修正等についての翻訳を指示し,このような指示は少なくとも同年5月17日まで続いた。その間,原告は,被告会社が原告に送付した翻訳について修正や変更を求めたり,翻訳の内容について質問をしたりすることはなかった。(乙23ないし41,50)

(11)原告は,同年5月19日(米国時間),被告会社の事務所において,本件米国出願を行った。被告会社は,本件米国出願までの間に,本件翻訳を原告に対して引き渡した。
(12)原告は,同年1月から7月にかけて,被告会社に対し,本件契約の代金として合計269万2000円を支払い,
被告会社はこれを異議なく受領した。

(甲6)
(13)米国特許商標庁は,平成29年2月7日(米国時間),本件拒絶理由通知を発出した。本件米国出願から本件拒絶理由通知までの間に,原告から被告らに対して,本件翻訳の内容について批判が述べられたり,質問等がされたりしたことはなかった。(甲11,弁論の全趣旨)

(14)原告は,同年4月3日,被告会社に対し,内容証明郵便により,本件翻訳についての報告を求めた。
また,原告は,同年5月18日,被告会社に対し,
内容証明郵便により,被告会社に債務不履行があるとして,本件契約の解除の意思表示をし,契約代金の返還を求めた。(甲33,34)
2
争点1(被告会社の債務不履行の成否)について

(1)本件契約の性質

前記認定事実のとおり,本件契約は,原告が被告会社に対し,本件明細書等の翻訳を一定の報酬支払を約して依頼し,被告会社がこれを承諾したものであること,その後,原告は,本件契約の対価として,被告会社に対して合計269万2000円を支払い,被告会社はこれを異議なく受領したことが認められる。そうすると,本件契約は,被告会社が仕事の完成を約し,原告がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約したものであるから,その法的性質は請負契約(民法632条)であると解するのが相当である。なお,原告は,本件契約における被告の業務内容には米国特許出願事務やPCT国際出願事務も含まれているかのような主張をしており,被告はこれ
を争っているところ,本件の全証拠を検討しても,本件契約に米国特許出願事務及びPCT国際出願事務の委任が含まれているものと認めるに足りる証拠はない。原告は,被告会社が原告に対してPCT国際出願に関する助言を行っているメール(甲39)を証拠として提出するが,これは被告会社が原告の問い合わせに応じて返答しているものにすぎず,このようなやり取りを
もって本件契約にPCT国際出願事務の委託が含まれていたものと認めることはできない。また,原告は被告事務所において本件米国出願を行っているが,そのことから本件契約に米国特許出願事務の委任が含まれていたものと認めることもできない。
(2)誤訳・改ざんに係る債務不履行の成否

上記のとおり,本件契約の法的性質は請負契約と解すべきところ,請負契約における請負人の担保責任(民法634条,635条)は不完全履行による債務不履行責任の特則と解されており,請負契約においては,請負人が仕事を完成して引渡しを行った場合には,その仕事の内容に不備等がある場合には,仕事の目的物に瑕疵があるとして,請負人の担保責任が生じることは
あり得ても,これとは別に債務不履行責任が生じることはないと解される。これを本件についてみるに,原告は,本件翻訳に誤訳・改ざんがあったと
して,被告会社の不完全履行による債務不履行を主張するが,前記認定事実のとおり,被告会社は,本件米国出願までの間に本件翻訳を完成させ,これを原告に引き渡したことが認められる。そうすると,請負人たる被告会社はその引渡しをもって債務の履行を完了しており,その内容に不備等がある場合には,請負人としての担保責任が生じることはあり得ても,これとは別に債務不履行責任は生じないというべきである。
したがって,被告会社に誤訳・改ざんに係る債務不履行責任が生じるとの原告の主張は理由がない。なお,請負人の担保責任の成否については,後記5のとおりである。

(3)報告義務の不履行について
原告は,本件翻訳における誤訳や改ざんとは別に,被告には,翻訳事務終了に際して報告の責任があるから,置き換えの元と置き換えの先の対応関係を報告する義務があるなどとして,報告義務の不履行を主張する。そこで検討するに,そもそも,被告会社は,膨大な量の本件明細書等を全
般にわたって翻訳していたものであるから,訴外Dの翻訳との相違点等の全てについて事細かに報告することは現実的ではないところ,
前記認定事実(9)
のとおり,平成28年4月17日,被告会社は,翻訳の大部分を一旦終了して,原告に当該翻訳をメールで送付したことが認められるから,原告は少なくともその時点で,当該翻訳を訴外Dの翻訳と比較することができた。被告
会社は,その際のメールにおいて,「ご確認いただき,修正すべき点がありましたらご連絡ください。」と記載し,原告に内容の確認を求めている。一方で,前記認定事実(10)及び証拠(乙50)のとおり,原告は,被告会社から送付された翻訳について修正や変更を求めたり,翻訳の内容について質問をしたりすることはなかったものであり,被告会社が行った翻訳を確認する
ことよりも,特許請求の範囲の変更・修正やそれに伴う明細書等の変更・修正に熱心であったものと認められる。

以上の事実に照らせば,被告会社に請負契約に付随する報告義務があり得るとしても,その不履行は認められない。
なお,
原告は,
平成29年2月に本件米国出願の拒絶理由通知がされた後,
被告会社に対して本件翻訳について,訴外Dの翻訳との対応関係や変更箇所に関する問い合わせを行っているようであり(甲33,34),これに対す
る返答がされないことをも報告義務の不履行であると主張するようである。しかしながら,請負人が仕事を引き渡した後,相当期間経過後もなお付随義務として仕事についての報告義務を負うものとは当然には解されないし,原告が被告会社の翻訳の確認を自ら怠っていたという上記の事実関係を踏まえれば,本件翻訳の引渡し(遅くとも平成28年5月)から8か月以上経過
した後に,被告会社において詳細な報告の求めに応じる契約上の義務はないものというべきである。また,仮にその点をおくとしても,原告が誤訳として最も問題としている「一巡」を「roundrobin」と翻訳したことについて,被告会社は,原告の求めに応じて,「RoundRobinについて」と題する書面により,「一巡」を「roundrobin」と翻訳したことについて説明をしているこ
とが認められる(甲5-2)。その時期については,弁論の全趣旨(原告の提出する平成30年4月29日付け証拠説明書によれば,同書面の作成日付が平成29年4月7日とされていること,及び,別紙平成30年4月18日付け原告準備書面3頁及び10頁の記載内容)によれば,平成29年4月18日頃に原告が被告Bに直接会って「一巡」を「roundrobin」と翻訳した理
由についての説明を求めてから約1か月後(同年5月頃)であったと認められる。
そうすると,
被告会社は,
報告義務を尽くしているものと認められる。
したがって,いずれにしても,被告会社に報告義務の不履行があるとの原告主張は理由がない。
3
争点2(被告Bの会社法429条1項所定の責任の有無)について原告は,被告Bが被告会社の取締役としての善管注意義務を懈怠したことに
ついて重大な過失があると主張するところ,その内容は,被告会社の債務不履行ないし請負契約の担保責任に係る主張と実質的に同じである。そして,後記5のとおり,被告会社が本件翻訳を引き渡した時点において,当該翻訳が,本件特許発明の技術的意義や内容を正確に反映したものであることや,およそ文法や語彙の誤りがないものであることまでが予定されていたものと認めること
はできず,
原告が改ざん誤訳と主張する点はいずれも瑕疵には当たらないし,・
前記2(3)のとおり,被告会社に報告義務の不履行があるとの原告主張は採用できない。そうすると,被告Bには被告会社における取締役としての善管注意義務違反も,それについての重大な過失も認められない。
したがって,被告Bが会社法429条1項所定の責任を負うとの原告の主張
は理由がない。
4
争点3(被告らの不法行為の成否)について
原告は,被告らにおいて,翻訳会社として翻訳する際に重要な部分について誤訳したこと,依頼者である原告が特許権を日本で取得できていることを知っていたにもかかわらず,自らの判断で積極的に改変したことを報告しなかった
こと,その後も依頼者から報告を求められても改変の事実自体を報告しなかったこと,その結果として誤訳を放置させ,損害を拡大させたこと,以上の理由から,被告らには不法行為が成立すると主張している。
原告の上記不法行為に関する主張の内容は,被告会社の債務不履行ないし請負契約の担保責任に係る主張と実質的に同じであるところ,本件翻訳に瑕疵が
ないこと,報告義務が尽くされていることは,それぞれ後記5,前記2(3)のとおりである。そうすると,上記各点を理由とした不法行為の成立も認めることはできない。
したがって,被告らに不法行為が成立するとの原告の主張は理由がない。5
争点4(被告会社の請負契約に係る担保責任の有無)について

(1)仕事の目的物の瑕疵について


原告は,本件契約の目的を達せられなかったため,被告会社は請負契約
の担保責任を理由として授受した金銭の返還及び相当因果関係のある損害賠償義務を負うと主張している。これは,被告会社の本件翻訳に瑕疵があり,そのために米国特許が取得できず,本件契約をした目的を達することができなかったとして,請負人の担保責任による請負契約の解除(民法635条)
と損害賠償
(民法634条)
を主張する趣旨と解される。
そして,
原告は,本件翻訳の瑕疵として,具体的には,前記第2の3(1)(原告の主張)のとおり,被告会社の翻訳における誤訳,改ざんを主張するものと解される。


仕事の目的物の瑕疵とは,一般に,仕事の目的物が契約において予定さ
れた性状を有しないことをいう。そこで,本件契約における被告会社の仕事として,どの程度の翻訳が予定されていたかを検討する。前記前提事実及び前記認定事実によれば,①翻訳の対象となる本件明細書等は,それが記載された特許公報が本文だけで69頁,図も合わせると81頁にも及ぶ非常に大部なものである上,その内容は原告自身も自認するように,相当に複雑で難解なものであったこと,②本件契約の締結当時,米国特許出願における特許請求の範囲の記載(日本語)は未確定であり,特許請求の範囲及び明細書の記載について原告による修正指示が予定されていたこと,③被告会社は特許の翻訳を業とするものの,被告Bは弁理士ではなく,原
告もそのことを認識していたこと,④原告は訴外インド人弁理士に被告会社の翻訳をチェックさせることとしていたほか,自らも翻訳ソフトを購入して翻訳者が抜けのない翻訳をしているか確認する旨述べていること,以上の事実が認められる。
これらの事実からすれば,
被告会社のみにおいて,
本件特許発明の技術的意義や内容を正確に反映した翻訳を作成することは
困難であり,翻訳に際しては原告が適切な指示を行うことが当然の前提とされていたと理解でき,
原告もそのことをよく認識していたものといえる。

この点に加えて,本件契約の業務量と代金額とのバランスも考慮すると,本件契約における翻訳は,英語として意味が通用するものであれば契約において予定された性状を一応有するものといえ,それ以上に,本件特許発明の技術的意義や内容を正確に理解し,反映したものであることまでは当然には求められていなかったものと認めるのが相当であり,翻訳における最終的な文章や語句の選択は,原告において決定するか,あるいは少なくとも原告が被告会社と相談しつつ決定することが予定されていたものと認めるのが相当である。

以上を前提に,本件翻訳の瑕疵の有無について検討する。
本件契約後の具体的な事実経過をみると,前記認定事実(8)ないし(10)
のとおり,平成28年3月以降,原告は,翻訳の対象となる本件明細書等について断続的に修正等を行い,被告会社が同年4月17日に作業の大部分を一旦終えて,原告に翻訳を送付した後も,累次にわたって本件米国出願の直前まで,特許請求の範囲の記載や明細書等の修正等を行い,その都度,被告会社にその修正等についての翻訳を指示し,被告会社はその対応に追われ続けた一方,その間,原告は,被告会社が上記送付に際して「ご確認いただき,修正すべき点がありましたらご連絡ください。」と連絡したこと等にもかかわらず,被告会社から送付された翻訳について修正や変更を求めたり翻訳の内容について質問したりすることはなかったものであ
り,原告は被告会社がした翻訳を確認する作業を一切行わなかったものと認められる。このように,原告自身が,被告会社の翻訳が本件特許発明の技術的意義や内容を正確に反映したものであるかどうかを確認する作業を怠り,さらに日本語の特許請求の範囲の記載や明細書の修正等に夢中となり,その修正等の翻訳を被告会社に求め続けた結果,被告会社はそれまで
行った翻訳の確認作業ではなく,新たな翻訳をすることに時間や労力を費やさざるを得なかったものと認められる。

前記イのとおりの本件契約における目的物の予定された性状を前提として,このような契約後の事実経過(翻訳における最終的な文章や語句の決定は,原告自身が行うか,少なくとも原告が被告会社と相談しながら行うべきものであったにもかかわらず,原告はそれを怠ったものであるばかりか,かえって,原告が業務量を不合理に増加させるような対応を続けたこと)を踏まえれば,被告会社が引き渡した本件翻訳が,本件特許発明の技術的意義や内容を正確に反映したものであることや,およそ文法や語彙の誤りがないものでなかったとしても,契約において予定された性状を備えておらず瑕疵に当たるということはできないというべきである。
そして,原告が瑕疵であると主張する点は,いずれも本件特許発明の技
術的意義や内容を正確に反映しているかどうかにかかわる事項や,全体の理解にとって重要ではない細かな文法や語彙の誤り等を指摘するものであるところ,上記説示を踏まえれば,それが結果として不適切なものであったとしても,そのことをもって瑕疵に当たるものとは認められない。なお,ASCII128コードを使用して翻訳しなかったことについて
は,そもそも本件特許発明の実施例には同コードに対応していない文字が用いられており,本件契約において同コードを使用して翻訳することは予定されていなかったと認められる(弁論の全趣旨)から,瑕疵とは認められない。

原告が主張する点がいずれも瑕疵に当たらないことは上記のとおりであ
るが,以下では,念のため,原告が主として誤訳,改ざんであると指摘する,「一巡」を「roundrobin」と翻訳した点について,補足説明する。証拠(甲7,9)によれば,本件明細書の「一巡」は本件翻訳において「roundrobin」と翻訳され,その箇所は少なくとも22か所であることが認められる。本件特許発明においては,「一巡」は一つずつ置き換えていくという意味合いで用いられており,総当たり的な意味合いでは用いられ
ていないことからすれば,被告会社において,総当たりとしての意味を持たせようとして「roundrobin」を用いたことは適切とは言い難い。しかしながら,それはまさに本件特許発明の技術的意義や内容に関わるものであって,前記のとおり,原告が自ら確認し,また被告会社と相談すべき点であったにもかかわらず,原告は何らその点を確認することはなかったものである。そもそも「一巡」の意味内容は請求項のみからは明らかとはいえず,明細書の記載を参照して一応理解できるものであるし,その処理の内容も,一つずつ置き換えて順次新しいものを生成するというもので,「一巡」の一般的な意味である「ひとめぐりすること」(広辞苑第7版)とは
異なっている。したがって,発明者でない者にとって,その意味内容を正確に理解して翻訳することは困難であるから,翻訳を本件特許発明の技術的意義や内容を正確に反映したものとするためには発明者である原告の協力が不可欠であるところ,
原告は,
その確認を自ら怠っていたものである。
よって,「一巡」を「roundrobin」と翻訳したことは瑕疵には当たらな
い。

以上から,
原告が指摘する点はいずれも瑕疵とは認められない。
よって,

被告会社に請負人の担保責任を認めることはできないから,原告は,本件契約を解除することはできないし,被告会社に対して損害賠償を求めることはできない。
(2)契約目的の不達成について
なお,原告は本件翻訳により契約目的が達成できなかったと主張するが,米国特許を取得することができるかどうかは米国特許の要件を満たすかどうかなど様々な要因に影響されるものであるところ,そもそも,原告が米国特許商標庁からの本件拒絶理由通知に対して応答期間内に適切な対応を行った
ことを認めるに足りる証拠はないから,本件翻訳と原告が米国特許を取得できなかったこととの間に因果関係があるとは認められない。よって,本件翻
訳により,本件契約をした目的を達することができなかったものとは認められないから,この点においても,原告は請負人の担保責任により契約を解除することはできず,被告会社に請負代金の返還を求めることはできない。第4
結論
以上によれば,その余の争点について判断するまでもなく,原告の請求はいず
れも理由がないからこれらを棄却することとして,主文のとおり判決する。東京地方裁判所民事第47部

裁判長裁判官


裁判官


裁判官

髙中康人俊彦慎平
(別紙省略)


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