判例検索β > 平成29年(ネ)第4477号
事件番号平成29(ネ)4477
裁判年月日平成30年10月30日
法廷名東京高等裁判所
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主文1
控訴人らの控訴をいずれも棄却する。

2
控訴費用は控訴人らの負担とする。

第1

実及び理由
控訴の趣旨

1原判決を取り消す。
2被控訴人は,控訴人らに対し,各10万円及びこれに対する平成25年2月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。
第2

事案の概要

1本件は,東京朝鮮中高級学校(以下「本件朝鮮学校」という。
)を設置,運営
する学校法人東京朝鮮学園(以下「東京朝鮮学園」という。
)が,平成22年1
1月30日付けで,文部科学大臣に対し,
「公立高等学校に係る授業料の不徴収
及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律」
(平成22年3月31日法律第
18号。平成25年法律第90号による改正前のもの。以下「支給法」という。
)2条1項5号,
「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学
支援金の支給に関する法律施行規則」
(平成22年文部科学省令第13号。平成
25年文部科学省第3号による改正前のもの。以下「本件省令」という。)1条
1項2号ハ及び「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則第1条第1項第2号ハの規定に基づく指定に関する規程」
(平成22年11月5日文部科学大臣決定。以下「本件規程」という。
)14条1項(本件当時のもの。
)に基づき,本件朝鮮学校につきいわゆる
外国人学校のうち支給法に定める高等学校等就学支援金(以下「就学支援金」という。
)の支給の対象となるもの(以下「支給対象外国人学校」という。)と
して指定することを求める旨の申請(以下「本件申請」という。
)をしたとこ
ろ,同大臣から平成25年2月20日付けで,本件省令1条1項2号ハの規定(以下,単に「規定ハ」という。
)を削除したこと,本件規程13条に適合する
と認めるに至らなかったことを理由として,本件朝鮮学校につき支給対象外国人学校としての指定をしない旨の処分(以下「本件不指定処分」という。)を受
けたことに関し,本件不指定処分がされた時点において本件朝鮮学校の高級部の生徒であった控訴人らが,規定ハを削除したことは,支給法の委任の趣旨に反し違法であるから,それを理由とする本件不指定処分も違法である,同大臣は,本件朝鮮学校について,本件規程13条に違反する具体的事実は確認されていないにもかかわらず,政治的外交的理由から本件規程15条による審査会の意見を聴くことなく本件不指定処分をしたものであるから,このような同大臣の判断には裁量権の逸脱,濫用があり,本件不指定処分は違法であるなどとし,それによって控訴人らは憲法26条が保障する教育を受ける権利と結びついた重要な権利である就学支援金の受給資格を取得する権利又は法的利益を侵害され,精神的苦痛を受けたと主張して,国家賠償法1条1項に基づき,被控訴人に対し,損害賠償として,控訴人ら1人につき10万円及びこれに対する不法行為の日(本件不指定処分の日)である平成25年2月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。原審は,文部科学大臣が,本件朝鮮学校が本件規程13条に適合すると認めるに至らなかったとして本件不指定処分をしたことには,同大臣の裁量権の範囲の逸脱又は濫用があるとはいえず,審査会の意見を聴かないで本件不指定処分をしたことも違法とはいえないから,その余の控訴人らの主張について判断するまでもなく,本件不指定処分に違法はないとして,控訴人らの本件各請求をいずれも棄却した。
控訴人らは,これを不服として,本件控訴を提起した。
2関係法令の定め及び支給法に基づく就学支援金制度の概要は,次に補正するほかは,原判決の事実及び理由欄の「第2

事案の概要」の2(原判決2頁1

0行目から8頁21行目まで,原判決別紙関連法令の定めを含む。)のとおりであるからこれを引用する。なお,以下においては,各名称の略称は原判決の表記に従うものとする。
(原判決の補正)
原判決8頁21行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。


文部科学省においては,支給法による就学支援金制度に関する事項は,初等中等教育局財務課高校就学支援室(以下「支援室」という。)が所管していた。」

3前提事実(証拠を付記しない事実は,当事者間に争いがないか,弁論の全趣旨により容易に認められる。なお,以下,証拠について枝番号を全て挙げる場合には,枝番号の記載を省略する。

当事者等(以下において役職を付する場合には,当時のものを指すこととする。


控訴人らは,本件不指定処分当時,いずれも本件朝鮮学校の高級部に在籍する生徒であった(弁論の全趣旨)



東京朝鮮学園は,本件朝鮮学校を設置,運営する学校法人であるところ,本件朝鮮学校は,昭和30年(1955年)に,学校教育法による各種学校(同法134条1項)の認可(同法134条2項,4条1項前段)を受けている。
東京朝鮮学園は,文部科学大臣に対し,平成22年11月30日付けで,
本件朝鮮学校について規定ハによる支給対象外国人学校としての指定を求める本件申請を行った(甲22)

文部科学大臣は,平成22年11月23日に発生した北朝鮮による大韓民国延坪島(ヨンピョン島)の砲撃事件を契機に,本件朝鮮学校を含む朝鮮高級学校(朝鮮中高級学校の高級部を含む。以下同じ。
)について,規定ハによ
る支給対象外国人学校としての指定に関する手続を停止した(甲23)。
これに対し,東京朝鮮学園は,平23年1月17日付けで異議の申立てをしたところ,文部科学大臣は,行政不服審査法50条2項により不作為の理由を「平成22年11月23日の北朝鮮による砲撃が,我が国を含む北東アジア地域全体の平和と安全を損なうものであり,政府を挙げて情報収集に努めるとともに,不測の事態に備え,万全の態勢を整えていく必要があることに鑑み,当該指定手続を一旦停止している」と回答した(甲24から26)。
その後,本件申請に係る審査等の手続は,平成23年8月頃に再開された。平成24年12月に衆議院議員総選挙が施行された後,同月26日に開催された衆議院本会議において安倍晋三衆議院議員が内閣総理大臣に指名されるなどして,いわゆる第2次安倍内閣(以下,単に「安倍内閣」という。)が
発足し,上記衆議院議員総選挙が施行される前の民主党を中心とする政権(以下「民主党政権」という。
)から自由民主党(以下「自民党」という。

を中心とする政権(以下「自民党政権」という。
)へのいわゆる政権交代がさ
れた(公知の事実。なお,上記民主党政権下の自民党を「野党時代の自民党」ということがある。。

安倍内閣において文部科学大臣に就任した下村博文衆議院議員(以下,「下
村文部科学大臣」といい,就任前については「下村衆議院議員」という。なお,行政機関ないしその長としての文部科学大臣を指す場合には,単に「文部科学大臣」という。
)は,平成24年12月28日,規定ハを削除するとの
方針を明らかにし(甲27)
,本件省令1条1項2号の改正案を公表した(甲
28)
。そして,文部科学大臣は,平成25年2月20日,同年文部科学省令第3号により本件省令1条1項2号を改正し,規定ハを削除した(甲29。以下,この改正を「本件省令改正」という。。

上記平成25年文部科学省令第3号は,同日に公布され,公布の日である同日から施行された(附則1条)。そして,改正前の規定ハによる指定を受けている各種学校については,本件省令の規定は当分の間,なおその効力を有する旨の経過措置が定められた(附則2条)。
また,文部科学大臣は,平成25年2月20日付けで,東京朝鮮学園に対し,
「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則第1条第1項第2号ハに基づく文部科学大臣による指定について(通知)
」と題する書面(以下「本件不指定通知」という。
)によ
り,本件朝鮮学校につき支給対象外国人学校としての指定をしない旨の本件不指定処分をした。なお,本件不指定通知には,本件不指定処分の理由として,①本件省令改正により規定ハを削除したこと(以下「理由①」という。)
及び②本件朝鮮学校の本件規程13条適合性の審査において同条に適合すると認めるに至らなかったこと(以下「理由②」という。)が挙げられていた。
(甲30)
本件朝鮮学校は,平成25年4月17日付けで,文部科学大臣に対し,本件不指定処分に対する異議申立てをしたところ,同大臣は,同年10月31日,本件省令改正は,合憲・適法であり有効である,本件朝鮮学校は本件規程13条に適合するものとは認めるに至らないとして,上記異議申立てを棄却したが,決定書には,理由①と理由②の論理的関係性に関し,①指定に係る審査において,朝鮮高級学校について,本件規程13条に定める基準に適合するものとは認めるに至らないと判断した,②しかも,その審査の過程において,強制的に立入調査を実施して書類を押収するなどの権限がなく,指定の基準を満たすかどうかの審査に限界があることが明らかになったこと及び,当時指定済みの2校以外に規定ハによる指定を求める外国人学校はなく,規定ハを存続させる必要性もないことから,本件省令改正をした,そこで,理由①及び理由②を並列的に示した本件不指定処分を通知したものであるとの記載がされていた。
(乙36)

控訴人らのうち2名は,民事訴訟法132条の2第1項に基づき,被控訴人に対し,平成25年9月26日付けの書面により,本件不指定処分が違法であることを理由とする慰謝料請求に係る訴えの予告通知をした上で,同月30日,本件不指定処分の理由として本件不指定通知に①規定ハの削除及び②本件規程13条に適合すると認めるに至らなかったことが挙げられていることにつき,本件不指定処分の理由の個数(理由①と理由②の2つであるのか,これらを併せた1つであるのか。
)及び理由②の趣旨(本件朝鮮学校が本
件規程13条に「適合しない」と認めたことが本件処分の理由となるという趣旨か,本件朝鮮学校が同条に「適合する」と認めるに至らなかったことが本件処分の理由となるという趣旨か。
)を照会した(甲31,32)

被控訴人は,平成25年10月25日,前者の照会事項については,本件不指定処分の理由は理由②と理由①の2つである旨を,後者の照会事項については,文部科学大臣が,本件朝鮮学校につき,本件規程13条に定める「指定教育施設は,高等学校等就学支援金の授業料に係る債権の弁済への確実な充当など法令に基づく学校の運営を適正に行わなければならない。」との
基準に適合するものとは認めるに至らないと判断したという趣旨である旨を,それぞれ回答した(甲33)

4争点及び争点に対する当事者の主張(なお,国家賠償法6条の相互保証の有無(原判決52頁17行目から同53頁8行目まで)の主張は,当審において撤回された。)
本件不指定処分の理由について(争点1)

控訴人らの主張
本件不指定通知には,本件不指定処分の理由として,理由①及び理由②が挙げられているところ,被控訴人は,当初は,上記2つが本件不指定処分の理由であると回答した(甲33)が,本件訴訟において,主な理由は理由②であり,理由①は念のために記載したなどと主張するに至った。しかしながら,本件不指定処分の真の理由は,理由①であって,理由②は後から作出されたもので理由とはなり得るものではない。
このことは,本件不指定処分に係る文部科学省作成の「決裁・供覧」と題する文書(以下「本件不指定処分に係る決裁・供覧文書」という。乙65)の件名欄が「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校就学支援金に関する法律施行規則第1条第2号ハの規定の削除に伴う朝鮮高級学校の不指定について」とされていることからも明らかである。
安倍政権は,当初から,朝鮮高級学校を就学支給金の支給対象としないことを明らかにしており,下村文部科学大臣は,政治的外交的理由により,本件不指定処分をするために,本件省令改正をしたものである。すなわち,①自民党政務調査会の文部科学部会,拉致問題対策特別委員会が,平成22年3月11日,
「朝鮮学校は無償化の対象とすべきでない
事を強く表明する決議」をし(甲57)
,自民党政務調査会の文部科学部
会,外交部会,拉致問題対策特別委員会が,平成23年8月29日に菅直人首相(当時)が文部科学大臣に対して凍結解除を指示し,本件朝鮮学校を含む朝鮮高級学校の就学支援金支給対象の審査手続が再開されることになったのを受けて,3部会合同会議にて「指示の即時撤回を決議」したこと(甲62)などの自民党の諸部会における決議,②下村衆議院議員が,平成23年9月20日,自民党の機関紙に掲載されたインタビューの中で,いわゆる拉致問題や朝鮮高級学校が反日教育を行っていることを挙げた上で,朝鮮高級学校を就学支援金制度の対象とすべきではないとの見解を明らかにしていること(甲59)
,③義家弘介参議院議員らを中心とす
る自民党所属の議員が,平成24年11月16日,朝鮮高級学校への無償化適用を阻止することを目的として本件省令1条1項2号イ,ロ及びハを法律上の規定に格上げした上で,同号ハを削除することを内容とする「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律の一部を改正する法律案」
(甲61。以下「支給法一部改正法案」
という。
)を参議院に提出するなど,野党時代の自民党は,朝鮮高級学校
を就学支援金の対象から外すことを意図していた。
そして,
「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援
金の支給に関する法律施行規則の一部を改正する省令案の概要」と題する文書(甲28)や,
「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等
就学支援金の支給に関する法律施行令の一部を改正する政令案等に関するパブリックコメント(意見公募手続)の実施について」と題する文書(甲63)などの本件省令改正に関する文書は,安倍内閣発足後,極めて短時間のうちに作成,公表されていることからすると,下村文部科学大臣は,文部科学大臣への就任後,審査会における審査の状況や文部科学省が集約した情報に基づく総合的判断を行って本件省令改正を決定したのではなく,野党時代の自民党の方針を引き継ぎ,政治的外交的判断に基づいて上記各文書の作成,公表を行ったものといえる。実際に,下村文部科学大臣は,安倍内閣が発足した2日後である平成24年12月28日の定例記者会見において,拉致問題に進展がないことなどの政治的外交的理由により本件不指定処分を事実上決定し,そのために本件省令改正を進めたこと,審査会での検討が継続していることを認識しつつ本件省令改正が実現した後に本件不指定処分を行うことを決めていたこと,さらには,これらについては「政府全体で判断」した結果であることなどを述べている(甲27)

さらに,本件不指定処分が政治的外交的理由の下で行われたことは,当時の菅義偉官房長官(以下「菅官房長官」という。
)が,上記の下村文部
科学大臣の発言につき,
「政府全体としての方針であ」る旨の発言をした
こと(甲74)や古屋圭司拉致問題担当大臣(以下「古屋拉致問題担当大臣」という。
)が菅官房長官と同趣旨の発言をしたこと(甲93)
,メディ
アの一連の報道(甲82,83)
,又は本件申請に係る審査において,下
村文部科学大臣が審査会の意見を聴かずに不指定とすることを事実上決定したことからも裏付けられる。
そして,本件省令改正により,経過措置が定められなかったことから,申請後審理中の事案は,審理の根拠を失うことになるため,本件申請は審査会の意見を聴くこともなく,十分な審査が行われることがないまま,本件朝鮮学校につき本件規程13条に適合するとは認められないとして本件不指定処分をすることが可能となったものである。このように,本件不指定処分の理由①と理由②は各別のものではなく,理由①こそが真の不指定処分の理由である(本件省令改正をしないと本件不指定処分が困難であったことは,下村文部科学大臣の発言(甲27)等から明らかである。)。また,本件省令改正と本件不指定処分は,いずれも平成25年2月20日付けでされているところ,本件省令改正による改正後の規定は,公布された日から施行されるのに対し,本件不指定処分は同日付けであるが,その効力が生じるのは,本件不指定処分にかかる本件不指定通知が東京朝鮮学園に到達し,告知された時であるから,早くて翌日の21日である。したがって,本件不指定処分が効力を生じたときには既に本件省令改正により本件規程の根拠規定が削除されていたのであるから,理由②は存在しない本件規程との適合性をいうものであって無効であり,本件不指定処分の理由とはなり得ない。
イ被控訴人の主張
本件不指定処分で挙げられた理由①と理由②は,論理的は両立するものではないが,それぞれが本件不指定処分を理由あらしめるものである。被控訴人が本件不指定通知に理由①と理由②を並記したのは,文部科学大臣が本件朝鮮学校を含む各朝鮮高級学校について,本件規程13条に適合すると認めるに至らないと判断するとともに,規定ハに基づく指定に係る審査の中で,審査会に強制的な権限がなく,審査についての限界があることが明らかになったこと,朝鮮高級学校以外に規定ハによる申請がなかったことから,本件規程の存続に疑問が生じたために本件省令改正を行うこととし,その結果,規定ハによる指定の仕組みの下では本件朝鮮学校を含む各朝鮮高級学校が就学支援金の対象校として指定を受けられなくなるからである。本件不指定処分に先立ち,本件規程13条の適合性と本件省令改正が並行して検討された経緯に照らせば,本件省令改正と本件不指定処分が同日にされ,また,理由①及び理由②が並記されているのはむしろ検討過程の忠実な反映であって何ら問題とされるものではない。なお,「民事訴訟法第132条の2第1項による回答書」(甲33)において理由が理由②,理由①の順に記載され,他文書(甲30,乙36,64,65)と異なっているのは,訴訟を担当する法務局担当者により作成されたものであり,訴訟上の主張と平仄を併せたにすぎないのであって,理由の位置付けを変更するものではない。
控訴人らは,①野党時代の自民党の見解や下村衆議院議員の発言において北朝鮮の拉致問題等を理由に朝鮮高級学校に対する就学支援金の支給に反対姿勢が示されていたこと,②下村文部科学大臣が,就任後の記者会見において,拉致問題の進展がないこと等に言及していたこと,③菅官房長官や古屋拉致問題担当大臣も同趣旨の発言をしていたこと,④文部科学大臣が審査会の意見を聴かずに本件不指定処分をしたことなどを指摘して,本件省令改正及び本件不指定処分が政治的外交的理由によりされたものであるなどと主張する。
しかしながら,上記①のうち,野党時代の自民党の姿勢は,飽くまで政権交代前の野党としての姿勢にすぎないのに対し,下村文部科学大臣がした本件省令改正や本件不指定処分は,文部科学省という行政機関としての見解に基づいてその長である文部科学大臣の立場においてされたものであり,野党時代の自民党の姿勢とは切り離して考えるべきであるから,野党時代の自民党の姿勢をもって,直ちに本件省令改正や本件不指定処分が政治的外交的理由によってされたということはできない。また,下村衆議院議員の機関紙での発言は,いずれも野党議員としての発言であり,文部科学大臣として本件省令改正や本件不指定処分をした理由について答えた発言ではなく,これをもって本件省令改正や本件不指定処分が政治的外交的理由に基づくものであるということはできない。
上記②及び③に関する控訴人らの主張は,一般論を述べているにすぎない下村文部科学大臣らの発言を,本件省令改正や本件不指定処分が政治的外交的理由によりされたものであるかのように恣意的に引用するものであって失当である。かえって,下村文部科学大臣は,本件不指定処分前日の平成25年2月19日及び本件不指定処分後の同年5月24日の記者会見において,本件不指定処分が政治的外交的理由によりされたものではなく,本件規程13条の基準に適合すると認めるに至らなかったことを理由とする趣旨の発言をしている(乙63,73)

さらに,上記④についても,審査会の意見は,文部科学大臣の判断要素の一つにすぎないこと,審査会の議論を考慮して本件不指定処分をしていることからすると,控訴人らの主張する事実をもって,本件不指定処分が政治的外交的理由によりされたものということはできない。
本件規程は,規定ハの「文部科学大臣が定めるところ」として指定の基準及び手続等を定めたものであるから,規定ハを削除する本件省令改正により,下位法令である本件規程は存立の基礎を失い,理由②が成立しなくなるのであって,理由①と理由②は両立しない関係にある。本件不指定処分の理由としてどちらが成り立ち得るかは,本件省令改正の効力発生時期と本件不指定処分の効力の発生時期により定まる。
そして,本件省令改正後の省令は,平成25年2月20日付けの官報によって公布され,同日に対外的効力が発生した。また,本件不指定処分は東京朝鮮学園に告知されることで効力が発生するところ,本件不指定処分は同日付けでされ,それ以後に本件不指定通知が東京朝鮮学園に到達したものと考えられる。他方,本件不指定処分の決裁は同月15日付けでされ,同月19日,文部科学大臣が記者会見で本件不指定処分に係る通知文書を同月20日に発出することなどを表明してそれが報道されていた。また,本件不指定通知と同内容の書面が同月19日に東京朝鮮学園にファクシミリで送信されており,同日には東京朝鮮学園は本件不指定処分を了知し,効力が生じていたとみることもできる。
したがって,理由①及び理由②のいずれが本件不指定処分の理由となるかは一概にはいえない。
しかしながら,本件において,本件省令改正と本件不指定処分の効力の時間的前後関係を確定することが不可欠なものとはいえない。本件不指定処分の効力発生が本件省令改正の効力に先行した場合,理由②が是認されれば,控訴人らの請求は理由がないことが明らかであり,本件省令改正の効力発生が先行した場合でも,本件省令改正が違法とされたときは,改正がない前提で理由②による本件不指定処分が是認されれば上記と同様であり,本件省令改正が有効であれば本件不指定処分が違法となる余地はない。本件不指定処分はいずれにせよ理由②が主たる理由であって,本件朝鮮学校が本件規程13条の基準を満たさないとの文部科学大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱や濫用が認められないのであれば,控訴人らの他の主張については判断の必要がない。
本件省令改正が支給法2条1項5号の委任の範囲を逸脱するものか否か,本件省令改正を理由(理由①)とする本件不指定処分は違法か否か(争点2)

控訴人らの主張
規定ハの削除(本件省令改正)が法の委任の趣旨に反すること
a
法の委任の趣旨及び仕組み
支給法は,
「教育の機会均等に寄与することを目的と」し(同法1
条)「全ての意志ある後期中等教育段階にある生徒の学びを保障」すべ,
く制定されたものであり,そのため,支給法は,就学支援金を生徒に代理して受領する高等学校等の中に,
「高等学校の課程に類する課程を置
くものとして文部科学省令で定める」各種学校を定めたのである(同法2条1項5号)
。このように,
「高等学校の課程に類する課程」につき,
支給法が本件省令に委任した趣旨は,教育行政についての専門技術的な知見に基づき,
「高等学校の課程に類する課程」を置くか否か(後期中
等教育を行っているか否か)について制度的・客観的な判断基準を設けることにより「高等学校の課程に類する課程」を置く学校を適切に認定し,もって「全ての意志ある後期中等教育段階にある生徒の学びを保障」することにある。また,支給対象外国人学校の指定手続において「政治的外交的配慮を行ってはならず」「教育上の観点から客観的に判,
断すべき」であることは,法案審議の段階で正式な政府統一見解として公に確認され,これを前提に法律が可決成立し,さらに法律制定後も繰り返し確認されていたのであり,このことは,法の委任の趣旨の確定に当たって当然に考慮されなければならない。
b
重要な権利利益の侵害
支給法は,社会権規約13条2項⒝の遵守(留保の撤回)を目指したものであり,支給法に基づく控訴人らの受給資格を取得する権利又は法的利益は,社会権規約の上記規定を具体化したものであるから,支給法に基づく控訴人らの権利又は法的利益は,憲法26条が保障する教育を受ける権利と分かち難く結びついており,教育の機会均等の趣旨に合致する重要な権利利益であって,この観点からも行政機関の裁量は狭いというべきである。

c
規定ハの削除は朝鮮高級学校の生徒が就学支援金を受ける道を閉ざすもので支給法の趣旨に反すること
規定ハが設けられたのは,本件省令1条1項2号イ,ロには該当しないが,朝鮮高級学校のように,高等学校と同水準の普通教育を行い,卒業生の大学入学資格も認められている高等学校と同等性を有する学校が存在するという現実を直視したからである。そして,実際に,Eスクール及びF学園が規定ハによって指定されている。
規定ハが削除されれば,本件省令1条1項2号イ,ロに該当しない朝鮮高級学校は支給法に基づき指定される余地はなくなるから,同校の生徒は再申請の場合を含めて就学支援金受給の可能性を一切閉ざされることになる。
このような就学支援金受給の可能性を閉ざす省令改正は,
「高等学校
の課程に類する課程」を置く学校を適切に認定し,もって「全ての意志ある後期中等教育段階にある生徒の学びを保障」するという支給法の委任の範囲を逸脱しており,違法無効である。
d
被控訴人の主張が失当であること
被控訴人が本件朝鮮学校を含む朝鮮高級学校について,本件省令1条1項2号イ,又は同号ロによる指定可能性を主張する点については,本件省令改正による規定ハの削除により,本件朝鮮学校の生徒が就学支援金を受給することができなくなったという事実は変わらず,将来の本件朝鮮学校の学校教育法制上の位置づけの変更可能性は何ら関係がない。この点を措いても,本件省令1条1項2号イに該当するためには,日本と北朝鮮との間に国交が回復し,
「大使館を通じて日本の高
等学校の課程に相当する課程であることが確認できるもの」となる必要があり,本件朝鮮学校の生徒らの努力によって解決し得るものではなく,本件省令1条1項2号ロに該当するためには,欧米圏の言語による教育を実施して国際的に実績のある学校評価団体による認証を受ける必要があるところ,本件朝鮮学校が朝鮮語という民族語による民族教育を行う外国人学校という特質を維持することができなくなることを意味しており,いずれの主張も失当である。
また,本件規程13条適合性の審査に限界があるとの主張については,そもそも本件規程が,指定の申請にあたり提出すべき必要書類(14条)
,文部科学大臣の学識経験者等で構成される会議に対する意
見の聴取(15条)を定めるにとどまり,指定に係る審査において,強制的に立入調査を実施して書類を押収することを予定していないのであるから失当である。被控訴人の主張は,本来支給法が予定していない事項を調査・審査することを前提とするもので法の趣旨に反する。そして,本件朝鮮学校においては,申請に当たり必要書類を提出し,その後も文部科学省の指示に従って追加書類の提出を行い,担当者らの訪問を受けるなど,全て本件規程の定めに従い,担当者らの指示に従って必要な作業を行っており,書類の提出を拒んだり,訪問を拒んだりしたことはない。さらに,Eスクール及びF学園は規定ハによって指定されているところ,これらの学校については審査に支障はなく,指定の判断に至ったのに対し,本件朝鮮学校についてのみ,どのような支障があり得たのかについて被控訴人が具体的な主張立証を行っていない点からも,実際のところ審査には支障がなかったことを裏付けるものである。
なお,原審における証人Aは,文部科学省においては,本件省令改正による規定ハの削除に当たり,支給法の委任の趣旨に反するかどうか全く検討していない旨を証言しているが,中央省庁である文部科学省が国会の制定法を無視したということは到底考えられないことからも,同証言は信用できない。
本件省令改正が政治的外交的理由によりされたこと
支給法の趣旨・目的は,

aのとおり,
「全ての意志ある」
「生徒の

学びを保障」し,
「教育の機会均等に寄与する」という点にあり,規定ハ
を設けて「高等学校の課程に類する課程を置く」外国人学校であれば,広く制度の対象とする制度設計が行われた。このような法の趣旨・目的及び規定ハへの委任の趣旨からすれば,支給対象外国人学校の指定基準を定めるに当たって,あるいは具体的な指定手続において,政治的外交的理由によって特定の教育施設を排除することは,
「高等学校の課程に類する課
程」を置くかどうかという教育上の観点とは無関係の事情を考慮するものであって許されない。このことは,支給法の法案審議の過程等で「政府統一見解」として再三にわたって表明され,これを前提に法律案が審議可決された上,支給法成立後に文部科学大臣の諮問機関として設置された高等学校等就学支援金の支給に関する検討会議(以下「検討会議」という。)
が,平成22年8月30日付けで公表した「高等学校の課程に類する課程を置く外国人学校の指定に関する基準等について(報告)(甲14。以下」
「指定に関する基準等に係る報告」という。
)において改めて確認されて
いることからも明らかである。このように,支給対象外国人学校の指定手続において政治的外交的理由に基づき特定の教育施設を排除してはならないことは支給法の立法者意思であるところ,このような確定的解釈基準を変更するためには,法改正を行うことが必須であって,行政府による解釈基準の変更の見解を示すことのみでこれを変更することはできず,文部科学大臣が上記確定的解釈基準に反する省令の改正をすることは許されない。
被控訴人は,朝鮮高級学校を就学支援金の支給対象としないために,支給法の趣旨に反して,国会の審議等を要しない本件省令改正という手段を用いて本件不指定処分をしたのであり,そのことは安倍内閣の言動,支給法の趣旨及びそれに関する政府見解,本件省令改正までの経緯から認められるところである。
本件申請は,民主党政権の時代にされていたものであるが,政権交代により自民党政権になると,安倍内閣は直ちに朝鮮高級学校に就学支援金を交付しないこととして,そのために本件省令改正に着手したものである。朝鮮高級学校の支給対象外国人学校の指定に関して,民主党政権時に4回の審査会が開催されたが,本件朝鮮学校については法令違反等の事実は何ら確認されておらず,支給対象外国人学校に指定するのに障害はなかった。本件規程13条の適合性については,財務諸表等の作成,理事会等の開催実績等の外形的事項のほかは認可権者である所轄庁を通しての調査・確認が予定されているが,その結果,法令違反は認められず,朝鮮総聯等との関係についても審査会による審査の結果,教育基本法その他の法令違反の具体的事実は認められなかった。
本件省令改正が行われた時点でも,審査会の審査は継続されており,朝鮮高級学校について本件省令1条1項による文部科学大臣の指定をすることを前提に留保事項の検討がされていたのであり,上記の指定について議論が最終段階に達し,審議事項について肯定的な結論が見込まれた。しかしながら,本件省令改正により本件不指定処分がされたことによって,審査会の上記審査は結論が出されないまま強制的に打ち切られることになった。審査会が審査を継続して本件規程15条による意見を述べた場合,不指定とすることとした「政府全体の方針」と矛盾する意見が述べられることが容易に予想されたため,審査会の意見を聴かないまま審査を打ち切って本件不指定処分をするために本件省令改正がされたのである。本件省令改正により審査会の審査が打ち切られることになったため,本件規程13条に適合すると認めるに至らなかったことになったのである。自民党は,野党時代から朝鮮高級学校に無償化を適用することを阻止するために,支給法の改正案を参議院に提出するなどしていたが,自民党政権になるとそのことを国会の審議を要しない本件省令改正により実現したのである。被控訴人は,本件省令改正の理由として,本件規程に基づく審査において指定の基準を満たすかどうかの審査に限界があることが明らかになったからであり,政治的外交的理由によるものではないと主張する。しかしながら,本件省令改正に係る意見公募手続の結果の公示(甲64)において,上記の理由が本件省令改正の理由となった旨の記載はなく,「朝鮮学校については,拉致問題の進展がないこと,朝鮮総連と密接な関係にあり教育内容,人事,財政にその影響が及んでいることを踏まえると,現時点での指定には国民の理解を得られない」ことを「文部科学省の考え方」として記載している。これは,意見公募手続における「提出意見を考慮した結果」(行政手続法43条1項4号)であり,文部科学省の意見にとどまらず,同省内で,本件省令改正に当たり具体的にどのような事項を考慮したかなどの判断過程を明らかにするものである。したがって,本件省令改正の理由は,審査会の審査に限界があるということではなく,上記「文部科学省の考え方」に沿うものであり,政治的外交的理由によるものであったことが明らかである。
なお,控訴人らが,本件省令改正に関する意見公募手続についての決裁文書,結果の公示に関する決裁文書の開示を求めたのに対し,被控訴人は,同文書は存在しないと主張したが,公文書管理法上,決裁文書の作成,保管は義務であるから被控訴人の説明は虚偽であると考えざるを得ない。また,控訴人らが本件省令改正のための決裁文書及び本件不指定処分のための決裁文書の開示を求めたのに対して,被控訴人が開示した文書は「24文科初第1128号」及び「24文科初第1129号」の番号が抜けていたところ,被控訴人は,控訴人らに対し,上記は文書番号が取得されたものの文書は作成されず欠番になっているためであると説明をした。しかしながら,文部科学省内部では,起案者から文書管理班に文書記号・文書番号の付与の申出があって文書記号等が付与されるのであり,文書記号・文書番号を先に取得して文書作成が行われることはあり得ないから,文書記号・文書番号が付与された文書は,決裁手続が終了していることが明らかである。被控訴人のこの点についての説明も虚偽であると考えざるを得ない。被控訴人のこのような態度は,開示されない文書に本件省令改正が政治的外交的理由で行われたことを示す記載があるなど,被控訴人に不利な内容を含んでいる可能性を示すものである。

被控訴人の主張
本件省令改正は支給法の委任の趣旨を逸脱するものではないこと
委任命令が法の委任の趣旨を逸脱するかどうかの判断は,授権規定の文理,委任の趣旨,授権法の趣旨,目的等に照らして判断されるのであり,所管大臣の主観的判断は関係がない。
支給法2条1項5号は,就学支援金の支給対象校として指定され得る各種学校を「文部科学省令で定めるもの」としているが,これは教育行政に精通する行政機関の専門技術的知見が不可欠であることに鑑み,就学支援金の支給対象校の指定を下位法令に委任したものである。したがって,支給対象校の定め方は行政機関の広範な専門技術的裁量に委ねられたものである。
規定ハに基づく審査には限界があり,その問題性が明らかになったのであるから,それを解決することは文部科学大臣の責務であり,裁量権の範囲内のことである。各朝鮮高級学校についての審査で規程ハの問題性が明らかになったこと,また,文部科学大臣が朝鮮学園以外に規定ハに基づく申請をする学校がないと判断したことから本件省令改正を行ったものであり,本件省令改正が支給法の委任の範囲を逸脱するものでないことは明らかである。
控訴人らの本件省令改正は朝鮮高級学校を不指定とするためにされたものであるとの主張は,根拠のないものである。決裁文書の件名等から控訴人らの主張を根拠付けることはできないし,被控訴人が意見公募手続の実施,結果公示についての決裁文書を隠しているなどというのも根拠のない憶測にすぎない。
なお,本件省令改正は,東京朝鮮学園が本件申請をした後にされたものであるが,上記のような諸事情を踏まえ,文部科学大臣において,基準適合性の審査に限界があることが判明した規定ハを放置せずに削除することが裁量の範囲にあることは当然であることは上記のとおりであるし,そもそも本件省令改正は,東京朝鮮学園に新たな義務を課したり既存の権利を奪うようなものではなく,東京朝鮮学園において従来と同様の態勢の下で従来どおりの教育活動を行うことは何ら妨げられていないのであるから,本件省令改正が本件申請後にされたことは,本件省令改正の適法性を左右するものではない。
本件省令改正は政治的外交的理由によりされたものではないこと
朝鮮高級学校の審査過程に
おいて指定の基準を満たすかどうかの審査に限界があることが明らかになったこと,他方,当時,規定ハによって既に指定した一部の外国人学校以外に同規定による指定を求める外国人学校はなく,規定ハを存続させる必要性もなかったことからされたものであり,何ら政治的外交的理由によるものではない。
控訴人らは,下村文部科学大臣の「外交上の配慮などにより判断しないと,民主党政権時の政府統一見解として述べていたことについては,当然廃止」とする発言をもって本件省令改正が政治的理由により行われたものと主張するが,同発言は,政権が交代した以上,それまでの政府見解をいったん白紙に戻した上で新たな方針で運営を行うという当然のことに言及したものにすぎず,これをもって本件省令改正が政治的理由によるものであるとするのは誤りである。
規定ハを削除しても朝鮮高級学校の生徒が就学支援金を受給する可能性を一切閉ざすことにはならないこと
控訴人らは,本件省令改正により,規定ハが削除されれば,朝鮮高級学校の生徒が就学支援金支給を受ける可能性が一切閉ざされることとなるから,そのような省令改正は支給法の委任の範囲を逸脱しており違法である旨主張する。
しかしながら,そもそも,支給法は,外国人学校を含む各種学校については,
「高等学校の課程に類する課程を置くものとして文部科学省令で定めるものに限り」
(同法2条1項5号)と定め,その限りで就学支援金の
支給対象となることができる旨を規定しているにすぎず,控訴人らがいうような「全ての意志ある後期中等教育段階にある生徒」を対象としているものではない。外国人学校が「高等学校の課程に類する課程」を有するものと認められなかったために就学支援金の支給を受けられなかったとしても,そのことは,法令の定める支給要件を充足するものと認められなかった結果である。支給法は,そもそも,法令の定める支給要件を充足するものとは認められない外国人学校について支給対象外国人学校とはしていないのである。
また,本件朝鮮学校を含む朝鮮高級学校は,制度上,支給法2条1項1号ロの「高等学校」にもなり得るし,本件省令1条1項2号イによる指定,同号ロによる指定もあり得るところであり,規定ハによる指定を受けなければ就学支援金の支給対象校となることができないということはない。
本件規程13条に適合すると認めるに至らなかった(理由②)として本件不指定処分をしたことが,文部科学大臣に与えられた裁量権の範囲を逸脱し又はその濫用があったものとして違法であるか否か(争点3)

控訴人の主張
本件朝鮮学校が本件規程13条に適合すること
a
本件規程13条の基準について
支給法の趣旨は,

aのとおりであり,「その在学する学校

の設置者の種類や意向に関わらず,より幅広く後期中等教育段階において学ぶ生徒に対して確実な支援を行うことを可能とする」ために,本件省令1条1項2号で「各種学校であって,我が国に居住する外国人を専ら対象とするもののうち,次に掲げるもの」として,イ,ロに続きハを設けて「高等学校の課程に類する課程を置くものと認められる」外国人学校を広く制度の対象としたのであるから,本件規程は上記指定に当たっては「高等学校の課程に類する課程を置く」かどうかの点について制度的・客観的審査に係る事項を定めた規定と解釈されるべきものである。また,都道府県知事は,各種学校の認可権限を有し,学校教育法,私立学校振興助成法に基づく,監督権,報告聴取,立入り,帳簿検査等の調査権限を有しているから,支給法の適用に当たり,重ねて文部科学大臣の審査を受けることを予定していないのであって,指定に当たって「授業料に係る債権の弁済への確実な充当」のため制度的客観的審査とは無関係に「一般的な学校運営の適正性」についての審査は予定されていない(このことは支給法成立時の川端文部科学大臣の答弁からも明らかである。)。
本件省令1条1項2号イは本国における学校と同等であると公的に認められる場合,同ロは国際的に実績のある評価機関による認定を受けた場合であり,学校の性質や教育内容に制度的な保証があるものであり,規定ハは上記イ,ロに当たらない場合をカバーする趣旨であることが明らかである。しかし,規定ハに係る外国人学校の中には,東京朝鮮学園など都道府県知事の監督に服しているものがあり,都道府県知事は報告徴収,立入り,調査帳簿検討などの調査権限を有しているから制度的な保障がないわけではない。東京朝鮮学園は学校教育法により各種学校として認可を受けていることが考慮されるべきである。
文部科学大臣は,政治的外交的理由などではなく生徒の学びを保証する観点から,規定ハによって指定するにあたって必要な事項について検討会議に検討を依頼した。平成22年8月30日,検討会議は,指定に関する基準等に係る報告により,
「修業年限,教育課程及び教育水準に
ついて」
「教員の資格について」
「適正な学校の情報の提供及び公表につ
いて」
「法令に基づく適正な学校の運営について」の4点を基準として
挙げ,最後の点については「各校が就学支援金の管理を適正に行うとともに,これらの関係法令の諸規定を遵守していることは当然」と説明されている。この報告を受けて本件規程が定められたことからも,本件規程13条の「学校の適正な運営」の認定は教育内容や運営実態等に立ち入って調査を行うことは予定されていないし,そのような調査をして就学支援金の受給を妨げる根拠規定として同規程を解釈することは許されない。
本件規程13条が要求する学校の適正な運営とは,支給法により支給された就学支援金が学校等により流用されることなく授業料に係る債権の弁済に当てられることであり,同条の審査は情報公開,会計処理等,就学支援金の授業料への充当に関連する事項についての最低限の審査に限られる。このことは,規定ハにより指定を受けたEスクール及びF学園についての審査会の報告書は「適正な学校運営」について,いずれも「財務諸表等の作成」欄に「財産目録の作成,財務諸表,事業報告書,監査報告書を作成」「理事会等の開催実績」欄には「理事会8回,評議,
会6回(H22年度)「理事会8回(H22年度)※NPO法人であっ」
たため,評議会については昨年度の開催実績はなし。,
」「所轄庁による
処分」欄には「なし」と記載されているにすぎないのであって,形式的事務的な調査,判断しかされていないことからも明らかである。
以上からすれば,支給法2条1項5号及び規定ハにいう「高等学校の課程に類する課程」は,各種学校がすべての面で高等学校と同等であることを要求するものではなく,同文言を教育課程に限らず,内容,学校の組織及び運営体制も含むものとして,授業料に係る債権の弁済への確実な充当のための審査と無関係に一般的な学校運営の適正性の審査を行う根拠とすることはできない。また,
「類する課程」とされていること
からも高等学校と同等のものが要求されているものではないから,一般的な学校運営の適正性の審査を行うべき根拠とすることはできない。したがって,本件規程13条の「学校の適正な運営」は,就学支援金の授業料に係る債権への確実な充当がされることを指すのであり,その制度的客観的審査を行うことが求められるのであって,その審査と無関係に一般的な学校運営の適正性の審査までを行うことは,制度利用について過剰な制限であり許されない。
よって,本件不指定処分に当たって,文部科学大臣が,本件規程13条の適合性の判断において教育基本法16条1項にいう「不当な支配」にかかる事情を考慮することは,その裁量権の範囲を超えるものである。
b
被控訴人が主張する4要件について
被控訴人は,本件規程13条について,申請者において,①当該学校
における教育内容が教育基本法の理念に沿ったものであること,②支給した就学支援金が授業料以外の用途に流用されるおそれがないこと,③外部団体・機関から不当な人的・物的な支配を受けていないこと,④反社会的な活動を行う組織と密接に関連していないことを,申請者において主張立証しなければならないという。
しかしながら,被控訴人の上記主張は,支給法制定時,本件規程制定時,審査会の各議論においても一度も検討されたことがなく,原審においても主張されたことがなかったものである。
上記の①,③及び④は支給法や本件規程の審理等においても主張や審議がされたことはなく,被控訴人の主張は全く根拠のないものであり,正当な解釈ではあり得ない。
被控訴人は,本件規程13条の適合性の判断は,処分当時に存在した客観的事実関係によって,事後的客観的に判断されるべきであると主張し,朝鮮総聯は反社会的組織としての側面を有すると強く疑われる,朝鮮総聯が朝鮮高級学校を含む朝鮮学校の人事,教育内容等に影響を及ぼしていることが国会答弁等で再三指摘されているなどと朝鮮総聯と朝鮮学校の関係を問題とし,本件不指定処分の理由として正当化されると主張する。
しかしながら,支給法制定当時,当時の川端文部科学大臣は,朝鮮総聯と朝鮮学校の関係については考慮しないことを明言しており,審査会の審議でも審査基準に直結する問題ではなく,留意事項との関係で調査,確認の対象となっているにすぎなかった。
また,東京朝鮮学園及び本件朝鮮学校は,①学校及び法人としての意思決定が,関係法令及び寄付行為の規定に従ってされており,②人事についても関係法令等に従って,理事会が解職採用等を判断しており,また,③会計処理及び財産管理も関係法令,学校法人会計基準に従って行われて,第三者への不当な資金流出の可能性は認められず,④教育課程は関係法令の規定に従って学校法人の判断で決定,変更されており,その内容も日本の学校教育指導要領を参考にしながら朝鮮人としての民族性を育みつつ,日本社会での定住を前提にしたものとなっており,⑤これらの管理,運営の実情を東京都知事に定期的に提出しているところ,都知事から法令違反等の指摘がされたことはない。このような東京朝鮮学園及び本件朝鮮学校の運営の実態からすれば,民族団体である朝鮮総聯との一定の関係があったとしても私立学校法その他の関係法令に違反するものではなく,これをもって本件不指定処分の根拠とすることはできない。また,被控訴人が主張するように朝鮮総聯との関係性を「高等学校の課程に類する課程」があるかどうかの判断において加味することは,政府,文部科学省との見解とも矛盾するものであって,これが許されないことは,原審においても控訴人らが主張したところである。c
朝鮮総聯の性質及び本件朝鮮学校の教育課程について
被控訴人は,朝鮮総聯が「反社会的組織」の側面を有することが強く
疑われるなどと主張するが,被控訴人の指摘する報道や公安調査庁の見解は,朝鮮総聯が反社会的組織であることを推認させるものではない。公安調査庁は,朝鮮総聯が「将来,暴力主義的破壊活動を行うおそれがあることを否定し得ない」というが,その根拠は在日朝鮮統一民主戦線が過去の暴力主義的破壊活動を行った疑いがあるというものであり,上記組織と朝鮮総聯の連続性はなく,60年以上も前のことを理由に調査,監視の対象とすることに合理的理由はない。公安調査庁は合法化かつ正当な組織も調査の対象としており,公安調査庁が朝鮮総聯を調査,監視の対象としていることから朝鮮総聯が反社会的組織であるということはできない。
また,控訴人らは本件朝鮮学校において勉学をしていた者にすぎないが,朝鮮総聯は日本の各政党から合法的かつ正当な民族団体として承認されているのであって,朝鮮総聯が反社会的組織の側面を有するという主張は失当である。
朝鮮高級学校の教育内容は,支給法制定時の政府の見解で明らかなように本件申請の審査対象とはならず,実際に審査会においても教材の記述等は審査基準とは無関係とされ,留意事項として改善を促すにとどめることとされていた。
なお,朝鮮学校で使用する教科書は,在日朝鮮社会の実情に合わせるように改訂され,日本の学習指導要領の改訂も参照しながら,日本での定住を前提としている民族教育の実情に合わせて作成されている。このように,本件不指定処分について,被控訴人が指摘する朝鮮高級学校と朝鮮総聯の関係,教育内容について主張はすべて根拠がなく失当である。
d
本件朝鮮学校には,審査の過程においても本件規程13条に違反する具体的事実は確認されなかった。平成24年3月26日に開催された第6回審査会では,本件朝鮮学校について,本件規程13条に違反する具体的事実が何ら発見されなかったことが確認されるとともに,朝鮮高級学校を制度の対象として指定することを前提とした留意事項の素案が示され(甲72)
,平成24年9月10日に開催された第7回審査会にお
いては,第6回審査会で示された留意事項の素案を整理した留意事項の素案が示され,今後の予定として,
「今回の議論を踏まえながら,今後
も審査作業を進めていく」「次回の審査会については,決まり次第,連,
絡する」ものとされた(甲73)

したがって,朝鮮高級学校の法令違反の有無は,所轄庁が判断すべき
であるとの基本的立場の下,本件朝鮮学校については,所轄庁である東京都を通して,法令違反の有無やその運営実態を調査した結果,審査の過程で法令違反の具体的事実は何ら確認されなかったものといえる。そして,本件朝鮮学校は,人事,財政及び教育内容のいずれの側面においても,教育機関としての独立性をもって,自身の判断で教育活動を行っており,財務関係書類が整備され,地方自治体から受給した補助金についても適正に管理してきたのであって,代理受領した就学支援金が授業料に係る債権の弁済に充当されない事態が発生するおそれは一切ない。また,異国の地で教育を行う外国人学校に対して,本国又は関連する民族団体がその教育活動等を支援することは,一般的な事象であり,東京韓国学校の例でも,大韓民国及び同国を支持する団体である在日大韓民国民団と密接な関係を持ち,多様な支援を受けている。さらに,朝鮮高級学校の教育が不当な支配に当たらないことについては,別件判決(神戸地方裁判所平成26年4月22日,大阪高等裁判所平成27年2月3日。甲99,100)において明確に認定されているところであり,本件朝鮮学校を始めとする朝鮮高級学校において「不当な支配」に該当するような関係が存在しなかったことは明白である。
なお,証人Bは,本件不指定処分当時,文部科学省内には朝鮮高級学校は,本件規程13条に適合すると認めるに至っていないとの認識,朝鮮高級学校の審査に具体的支障があるとの認識及び規定ハ自体に問題があるとの認識があった旨証言する。しかしながら,既に述べたとおり,審査会においては法令違反等の事実等は何ら確認されておらず,指定に向けた障害が存しなかったこと,本件朝鮮学校は,本件規程に従い,文部科学省の指示に従った情報提供に協力し,審査会の審査の継続にも困難はなかったこと,文部科学省において審査会の結論についての督促や質問をしたことがなく,審査会自身も判断できないという結論を出したことがないこと,第7回の審査会において,最終的な結論提示の必要性や今後の作業継続について言及がされていたことなどに照らすと,B証人の上記証言は信用できない。
本件不指定処分は本件規程15条による審査会の意見を聴かずにされたものであること
a
審査会は,本件設置決定(原判決別紙「関係法令の定め」5項)の定めに基づいて設置されたものであるところ,本件設置決定は本件規程15条,17条に定める「教育制度に関する専門家その他の学識経験者で構成される会議」の具体的内容を定めるものであり,本件設置決定の根拠は本件規程にあるとともに,本件規程の制定根拠は,支給法2条5号に由来することからすると,審査会が支給法に由来する制度上の正規の合議制審査機関であるものといえる。
b
審査会は,本件運営決定(原判決別紙「関係法令の定め」6項)にのっとって運営されるものであるところ,①本件規程に定める指定の基準に基づき審査を行うなど,専門技術的見地から客観的に判断するよう制度設計され,②また,単に文部科学大臣から提供された情報のみならず,実地調査の権能を有し,自ら情報収集し,具体的な審査をすることが予定されており,③さらに,審査会の定足数が過半数とされ,議事は出席した委員の過半数で決することとされ,
「可否同数のときは,座長
の決するところによる」として合議体としての意思決定手続が詳細に規定される(本件運営決定の1項)など,客観的な基準に基づき,実地調査という情報収集についての権能も行使でき,個々の委員の意見ではなく会議体としての意見を示すことが求められる点で,指定の可否について具体的根拠を持った結論を示すことが制度上要請されていたというべきである。

c
本件規程15条が,文部科学大臣が規定ハの「指定を行おうとするとき」は「あらかじめ」
,審査会の意見を「聴くものとする」と定めてい
るところ,一般に,法令において「…ものとする」という用語は,行政官庁等に対して一定の行為を義務付ける場合に用いられていることからすると,本件規程15条に定める審査会の意見聴取手続が,支給法に由来する制度上の義務であることは明らかである。
したがって,文部科学大臣は,自らが選任した教育制度に関する専門家等によって組織された審査会の意見を聴いた上で指定の可否を判断すべきであり,さらに,審査会が客観的な基準に基づき十分な調査審議を経た上で形成した結論に対しては,これを最大限尊重すべきであって(甲108)
,特段の事情のない限りこれに反する判断を行うことは許
されないというべきである。
d
文部科学大臣が,審査会の意見を聴かないで本件不指定処分をしたことが違法で規定ハの「高等学校の課程に類する課程」に該当し,支給対象外国人学校に該当するか否かの判断をするに当たって審査会の意見を聴くべきであること,本件不指定処分に当たり文部科学大臣が審査会の意見を聴かずに判断したことは,既に述べたとおりであるが,一般に,行政庁が行政処分をするに当たって,諮問機関に諮問し,その決定を尊重して処分をしなければならない旨を法が定めているのは,処分行政庁が,諮問機関の決定(答申)を慎重に検討し,これに十分な考慮を払い,特段の合理的な理由のない限りこれに反する処分をしないように要求することにより,当該行政処分の客観的な適正妥当と公正を担保することを法が企図しているためであると考えられるから,かかる場合における諮問機関に対する諮問の経由は,極めて重大な意義を有するものというべきである。したがって,行政処分が諮問を経ないでされた場合は勿論,これを経た場合においても,当該諮問機関の審理,決定(答申)の過程に重大な法規違反があること等により,その決定(答申)自体に法が諮問機関に対する諮問を経ることを要求した趣旨に反すると認められるような瑕疵があるときは,これを経てされた処分も違法として取消しを免れないというべきである(最高裁昭和42年(行ツ)第84号同50年5月29日第一小法廷判決・民集29巻5号662頁参照)。
そして,本件不指定処分をするに当たって,文部科学大臣は,審査会
の意見を聴いておらず,少なくとも審査会の結論が示される前に本件不指定処分がされているのであるから,本件不指定処分は,その過程に重大な違法が存するというべきであって,違法な処分というべきである。本件不指定処分は政治的外交的理由からされたものであること
前記

とおり,支給対象外国人学校の指定手続において,政

治的外交的理由によって指定又は不指定の判断をしてはならないことは,支給法及び本件省令の立法者意思を構成しており,支給法及び本件省令の解釈に当たって何より重要な解釈基準となるものである。
したがって,下村文部科学大臣が,平成24年12月28日の定例記者会見において「外交上の配慮などにより判断しないと,民主党政権時の政府統一見解として述べていたことについては,当然廃止をいたします」と述べ(甲27)
,支援室も従前の政府統一見解を廃止して規定ハを削除し
た旨を公表したこと(甲64)をもってしても,上記確定的解釈基準を変更することはできず,政治的外交的理由から規定ハを削除し,本件不指定処分を行ったことを正当化できるものではない。なお,自民党の所属議員が野党時代に参議院に提出した支給法一部改正法案の内容からも,下村文部科学大臣を含む野党時代の自民党関係者がこのことを理解していたことは明らかである。
しかるに,前記


自民党は,野党時代から朝鮮高級学校

への無償化適用を阻止することを意図し,安倍内閣が発足すると直ちに本件省令改正等に着手し,政治的外交的理由により本件不指定処分を行ったのである。
国際的な観点からも本件不指定処分の違法が宣言されなければならないこと
いわゆる高校無償化法案の審議以降本件不指定処分に至るまでの過程で,人種差別撤廃委員会をはじめとする国際連合の3つの委員会が,朝鮮高級学校の生徒を高校無償化の対象から除外することについて懸念を示し,あるいは,差別であると指摘しており(甲117,118)
,国際的
な観点からも,本件不指定処分の違法が宣言され,控訴人らの救済がされなければならない。

被控訴人の主張
本件朝鮮学校は本件規程13条の要件に適合しないこと
a
本件規程13条の要件
教育基本法は,「教育の基本を確立し,その振興を図るため」に制定
され,教育の理念と基本原則を示したものであり,同法が標榜する理念と基本原則を実現するために教育関係法令が制定される必要があり,それらの解釈も教育基本法の理念に沿うようにされなければならない。そして,支給法が前提とするような金銭の出納を含めた学校運営全般について,教育基本法の定める教育の理念や基本原則に適合するものであることが求められる。
教育基本法は,前文において日本国憲法の精神にのっとった教育の基本を確立することについて,また,前文及び1条において,教育の目的として,人格の完成に並んで「平和で民主的な国家及び社会の形成者」の育成を期すべきことを明記し,教育の目標として,個人の価値の尊重(2条2号),男女の平等(同条3号),他国を尊重し,国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと(同条5号)を規定する。これらは民主主義,個人の尊厳,平等原則,国際平和主義といった,日本国憲法の依拠する基本原則を教育の基本理念として位置づけたものである。したがって,我が国の教育体系の下で,日本国憲法の基本理念を含む教育基本法の理念ないし基本原則に矛盾抵触するような教育が行われたり,学校運営が行われることは想定されていないし,そのような学校に対して教育関係法令に基づき国費が支出されることが許されないのは当然である。
規定ハは,支給法が各種学校のうち「高等学校の課程に類する課程を置くものとして文部科学省令で定めるもの」と規定することを受けて定められたものであるが,前記の観点に照らせば「高等学校の課程に類する課程」とは,当該学校の教育内容や運営が教育基本法の理念及び基本原則に沿ったものであることを含意するものである。本件規程13条が「高等学校の課程に類する課程」を有するかどうかの基準として,「指
定教育施設は,高等学校等就学支援金の授業料にかかる債権の弁済への確実な充当など法令に基づく学校の運営を適正に行わなければならない」と規定するのも上記の理解に基づくものである。
前記の「高等学校の課程」とは,高等学校指導要領の「教育課程」と同義ではなく,教育内容,学校の組織及び運営を含む「教育そのもの」として「教育課程」よりも広い概念とされている。したがって,支給法2条1項5号及び規定ハの「高等学校の課程」は,広く教育内容,学校の組織及び運営を含むのであるから,本件規程13条は上記法令の委任の範囲において定められたものであって有効である。
本件規程13条について,委任の範囲を上記とは別に解する余地があっても,執行命令(実施命令)の規定として,支給法の趣旨を体現し,細則的事項を定めるものとして有効である。支給法の趣旨及び規定に照らせば,支給法は法令に基づく学校の運営が適正に行われ,就学支援金の授業料に係る債権の弁済への確実な充当が行われることを当然の前提として,当該支給対象学校等に就学支援金を支給するのであって,確実な弁済や法令に基づく学校の適正な運営が確実に行われていることを確認できない教育施設に対して就学支援金を交付するような事態をおよそ想定していないことが明らかである。
b
文部科学大臣の裁量
そもそも,支給法は,国会での法案審議の過程,同法の仕組み並びに
同法や本件省令並びに本件規程の文言,趣旨及び目的から明らかなとおり,同法2条1項5号に定める「高等学校の課程に類する課程を置く」ということの内容を含めて,どのような各種学校について当該課程を置くものとして就学支援金支給の対象校とするのかの判断を文部科学大臣に委ねている。
そして,支給法は,就学支援金が受給権者である生徒等の授業料に係る債権に確実に充当されることを要請し,法令に基づく学校運営を適正に行うことができない学校を就学支援金支給の対象校とすることを許容しておらず,これを受けた本件規程13条は,支給対象外国人学校の指定の要件として,就学支援金が授業料に係る債権に確実に充当される学校であること,法令に基づく適正な学校運営が行われている学校であることを定めているところ,この点に関する検討は,その性質及び内容からして専門的,技術的検討を伴うものであり,文部科学行政に通暁する文部科学大臣の専門的,技術的判断に委ねられているものというべきである。
また,教育基本法16条1項が禁止する「不当な支配」の有無についても,本件規程13条の適合性判断と同様に,その性質及び内容からして専門的,技術的検討を伴うものであるため,教育基本法16条1項の「不当な支配」の判断は,文部科学大臣の専門的,技術的判断に委ねられているというべきであり,同大臣に裁量がある。
したがって,本件規程13条適合性の判断は文部科学大臣に委ねられており,同判断について同大臣に裁量がある。
c
本件規程13条適合性の主張立証責任
高等学校等の教育内容や運営が教育基本法の理念及び基本原則に沿っ
たものといえるかどうかという意味での本件規程13条の適合性については,指定処分が受益的処分であることを踏まえても,申請者がその立証責任を負うことになる。
すなわち,①教育内容が教育基本法の理念に沿っていること(この理念と相容れない内容の教育が行われていないこと),②支給した就学支援金が生徒等の授業料に係る債権に確実に充当され,これが外部機関に流出するおそれがないこと,③外部機関から人的,物的に不当な支配を受けていないこと,④反社会的な活動を行う組織と密接な関連を有していないことの各要件が認められることが必要であり,申請者において立証しなければならない。
d
朝鮮総聯との関係
朝鮮総聯は,破壊活動防止法に基づく調査対象団体であり,公安調査
庁は,朝鮮総聯の前身的組織が暴力主義的破壊活動を行った疑いがあり,北朝鮮とも密接な関係を有しているから,将来,暴力主義的破壊活動を行うおそれを否定し得ないとしている。朝鮮総聯は北朝鮮と密接な関係があり,北朝鮮工作員の密出入国や安全保障関連の不正輸出,拉致事件についても朝鮮総聯関係者の関与が確認されているのであり,関係者が刑事事件で有罪判決を受けるなど反社会的組織としての側面を有することを否定できない。
上記のような朝鮮総聯が朝鮮高級学校を設置,運営する学校法人である朝鮮学園と人事の上で密接な関係を有することは公安調査庁等により指摘されており,また,教育内容も,教科書が「総聯中央常任委員会教科書編纂委員会」で編纂され,朝鮮総聯の事業体から出版されていること,朝鮮総聯の思想教育を強化する方針や金正日総書記の業績を称賛する内容等が含まれていることなどが公安調査庁等から指摘がされている。民族教育体系を整えることなどの目標の下で各教科においても北朝鮮の指導者を賛美礼賛し,絶対的な価値として崇める記載がある。e
文部科学大臣の不指定の判断
文部科学大臣は,本件申請を受け,本件規程15条に基づき,審査会の意見を聴くとともに,支援室をして,審査会の審査と並行して,高等学校の課程に類する課程を置く外国人学校の審査の参考とするため,本件朝鮮学校を含む朝鮮高級学校につき,各種の文書照会等の調査をした。この調査は,就学支援金が授業料に係る債権の弁済として確実に充当される学校であること,教育基本法等の関係法令に即した適正な学校運営をしている学校であることなどを審査する観点から行われたものである。
そして,国内外の新聞報道,朝鮮総聯のホームページ,公安調査庁の報告等の種々の資料(乙22から33,49,52)からは,朝鮮高級学校が朝鮮総聯等と密接な関係にあり,同校において適正な学校運営がされていないと疑われたばかりか,朝鮮総聯が朝鮮高級学校を利用して資金を集めていることも疑われた。また,支援室は,上記調査の中で,朝鮮高級学校に対し,朝鮮総聯等との関係について回答を求めたところ,朝鮮高級学校側からの回答は,朝鮮総聯等による影響を否定するような記載ではあったものの,朝鮮総聯のホームページには朝鮮総聯が朝鮮高級学校の運営等に関わっている旨の記載があり(乙22)
,また,
本件朝鮮学校の回答の中にも,朝鮮高級学校の教職員や生徒が,客観的には,朝鮮総聯の傘下団体に加入し,活動していることがうかがわれる内容のものがあった(乙7)ため,結局,上記のような疑いを払拭するには至らなかったものである。
文部科学大臣は,このような状況を踏まえ,本件朝鮮学校を含む朝鮮高級学校に対する朝鮮総聯等の影響力は否定できず,その関係性が教育基本法16条1項で禁じる「不当な支配」に当たらないことや適正な学校運営がされていることについて十分な確証を得ることができず,就学支援金を支給したとしても,授業料に係る債権に充当されないことが懸念されため,本件朝鮮学校について,本件規程13条に適合するものと認めるに至らないと判断したものであって,その判断は何ら不合理ではない。文部科学大臣のかかる判断に誤りがなかったことは,東京都による東京朝鮮学園についての報告書やアンケート等(乙51,67)からも事後的に裏付けられている。
本件規程15条による審査会の意見聴取について
a
本件規程13条に定める指定要件を充足するか否かの検討は,その性質及び内容からして自ずと専門的,技術的検討を伴うものであり,国会での議論や本件規程の制定経緯からみても,まずは教育行政に通暁する文部科学大臣の専門的,技術的判断に委ねられているのであって,審査会の意見についても,同大臣の上記裁量判断の考慮要素の一つにすぎない。
すなわち,支給法は,そもそも審査会を設置すること自体何ら規定しておらず,審査会は法令の根拠を有するものではなく,文部科学大臣が審査会の意見を聴くことが法令上要請されているものでもない。本来は,あくまで文部科学大臣の権限と責任においてされるべき処分につき,規定ハによる指定の際に,教育上の観点から客観的に判断するという点に鑑み,その判断の際の考慮要素の一つとして,専門家等から構成された会議で同大臣が定めるものの意見を聴くことが判断に資するとされ,文部科学大臣決定により本件規程が設けられたのである。そのことは,本件規程15条が「文部科学大臣は,規則第1条第1項第2号ハの規定による指定を行おうとするときは,あらかじめ,教育制度に関する専門家その他の学識経験者で構成される会議で文部科学大臣が別に定めるものの意見を聴くものとする」と定めるのみで,
「議により」などの
文言により規定されていないことからも裏付けられる。
また,本件規程15条は,平成22年6月30日に行われた第2回検討会議における意見(乙4)を踏まえ,大学認可の際に文部科学大臣が大学設置・学校法人審議会に諮問する制度(学校教育法95条,同法施行令43条)を参考として制定された規定である。そして,大学設置学校法人審議会の答申において,審議会への諮問に対する答申が出た場合に,答申どおりに認可しなければならないということまで法律が規定しておらず,文部科学大臣が,一定の要件を満たせば当然に認可しなければならないという拘束を受けているわけではないことなどと指摘されているところ,本件規程15条についても別異に解する理由はないことから,本件規程15条も文部科学大臣の判断を拘束するものとはいえない。
b
本件朝鮮学校を含む朝鮮高級学校の指定の可否については,審査会での審査の過程で,朝鮮総聯との関係など適正な学校運営が行われるかどうかにつき懸念が示され,これらの点についての真偽の確証を得ることには限界があるなどの指摘もなされていたところ,こうした審査状況に照らせば,本件朝鮮学校を含む朝鮮高級学校の指定の可否について,審査会で明確な結論を出すことは困難であったものといえる。
そして,文部科学大臣は,第4回から第7回まで計4回にわたって開
催された審査会において,朝鮮高級学校の本件規程13条適合性について明確な結論を出すことは困難である旨の意見が出されていたこと(甲70から73)
,B証人ら文部科学省職員からも,朝鮮高級学校に対す
る審査に限界がある旨の報告を受けたことから,これらの意見も考慮した上で,本件朝鮮学校が同条に定める基準に適合するものとは認めるに至らないと判断し,本件不指定処分をしたものであり,審査会の意見を踏まえて本件不指定処分を行ったものといえる。
本件不指定処分が政治的外交的理由でされたものでないこと
本件不指定処分が政治的外交的理由でされたものでないことは,前記のとおりであり,そのような主観的事情は本件規程13条の適合
性とは関係がなく,控訴人らの主張はその前提において失当である。国際的な観点からも本件不指定処分の違法が宣言されるべきと主張する控訴人らの主張に理由がないこと
本件不指定処分は,本件朝鮮学校を含む朝鮮高級学校について,支給対象外国人学校の指定要件である本件規程13条の基準に適合していると認めるに至らないことからされたものであり,人種差別に基づいてされたものではない。人種差別撤廃委員会等の所見は,我が国の就学支援金制度の仕組みや,支給法,本件省令,本件規程,本件規程13条の基準を踏まえたものでも,朝鮮高級学校や朝鮮総聯等に対する具体的な事実調査を行った上でされたものでもないし,適正な学校運営がされていないと疑われるような事情等があったことを踏まえてされたものでもない。人種差別撤廃委員会に対しては,文部科学省から,人種差別撤廃条約に係る審査において,差別ではない旨回答しているところである。
本件不指定処分が控訴人らの権利,利益を不当に侵害するものであるか(争点4)
これについての当事者の主張は,原判決52頁15行目から16行目までを削るほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第2

事案の概要

(同51頁20行目から52頁14行目まで)に記載するとおりであるからこれを引用する。
第3

当裁判所の判断

1当裁判所も,原審と同様,本件不指定処分は違法なものとは認められないから,国家賠償法1条1項に基づく控訴人らの本件各請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は,以下のとおりである。
2認定事実
認定事実は,次のとおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第3

争点に対する判断」の1(原判決53頁10行目から83頁4行目まで)に記載のとおりであるからこれを引用する。
原判決53頁11行目の「後掲各証拠」を「後掲各証拠(枝番号をすべて挙げる場合には枝番号の記載を省略する。)」に改める。
同68頁19行目末尾に改行して次のとおり加える。


支援室による調査

支援室は,平成23年11月9日,本件朝鮮学校を含む朝鮮高級学校
に対し,文書により,①「教科書内容の変更には,北朝鮮本国の決裁が必要」との新聞報道の真偽,②教育内容について朝鮮総聯の指導を受けることの有無,③朝鮮総聯の傘下と指摘される団体への生徒・教員の自動的加入の有無,同団体の活動への参加の有無,④朝鮮総聯幹部の役員就任の有無,人事に関する北朝鮮(金正日総書記)ないし朝鮮総聯の関与の有無,⑤朝鮮総聯のホームページに記載された教育会の構成,管理運営等などの事項について照会した(乙6)

これに対し,本件朝鮮学校は,①上記①については,教科書内容の変更には北朝鮮本国の決裁が必要であるとの報道は事実ではない旨回答し,②同②については,教育内容について朝鮮総聯からの指導はない旨回答し,③同③については,

朝鮮総聯の傘下団体である在日本朝鮮人

教職員同盟(教職同)や在日本朝鮮青年同盟(朝青)への教職員や生徒の加入については,自動的に加入することはなく,本人たちの申請を受けて加入することになっている旨,

教職同は,教員たちの質の向上や

新入生の募集を行う一方,日本を始め世界各国の教員たちと交流活動を行っており,生徒たちは,日本の学校の生徒会と同じ活動をしており,自発的に学校生活の充実,クラブ活動,課外活動,ボランティア活動,各学年,学級間の連携を通して,学校行事に積極的に参加するなどの活動を行っている旨,それぞれ回答し,④同④については,
役員につい

ては,寄付行為にのっとり,教職員,保護者,卒業生,同胞学識経験者などから選出しているが,朝鮮高級学校に子供を送る保護者,卒業生,学識経験者等は総聯系の者も多く,関係団体の者が役員に選出される場合もあり,その場合には,必ず寄付行為に掲げている学園の理念を遵守し,理事会の意思決定に従うことを条件にしている旨,

人事に関する

北朝鮮(金正日総書記)ないし朝鮮総聯の関与はない旨,それぞれ回答し,⑤同⑤については,朝鮮総聯ホームページの「朝鮮学校の管理運営は,朝鮮総聯の協力のもとに,教育会が責任をもって進めている」との記述は正確ではないため,記述の変更を朝鮮総聯に要請しているとした上で,

教育会には,教職員や保護者,卒業生等が任意で参加してお

り,任意のため総聯の関係団体の者が参加する場合もある,
意思決定機関は学園の理事会とは異なる,

教育会の

教育会は,日本のPTAに

当たる教育支援活動を行っており,学校の予算,決算,人事,教育内容等に関与していない旨,回答した(乙7)


支援室は,平成23年12月2日,朝鮮高級学校に対し,文書により,過去5年間における都道府県及び市町村からの補助金等の交付の有無等を照会した(乙8)

これに対し,本件朝鮮学校は,補助金の交付を受けていることに加え
て,過去5年間に都道府県又は市町村から交付されている補助金について問題を指摘されたことは特にない旨回答した(乙9)


支援室は,平成24年1月19日,朝鮮高級学校に対し,文書により,理事会・評議員会の開催が確認できる書類(出席者への旅費・謝金,飲食代等の領収書や委任状等)の提出を求めるとともに,法人内での理事等の印鑑の管理の有無,長期借入れの有無を照会した(乙10)

これに対し,本件朝鮮学校は,理事会等の出席者への旅費,謝金等は支払ったことがないこと,出欠の連絡はほとんど電話で行われており,文章により行った場合も保管していないこと,定数に満たない場合を除き委任状の提出を特段求めていなかったので,委任状は数件しかないこと,議事録の署名・押印については出席理事本人が署名押印を行っていること(一部理事より学園事務局で認め印を預かっているものもあるが,その場合も必ず理事本人が署名押印していること)などを回答した(乙11)


支援室は,平成24年2月6日,本件朝鮮学校に対し,会計書類の記載に関して補足的な説明を求めた(乙12)

これに対し,東京朝鮮学園は,収益事業に関して,貸借対照表の流動
負債における「部門勘定」について,本来,学校法人の資産は全て本会計に計上されているが,そのうちの一部は「税法上の収益事業」の用途に使われており(売店,食堂,寄宿舎等)
,主に収益事業の減価償却資
産の相手勘定として「部門勘定」を使っていることなどを回答した(乙13)


支援室は,平成24年3月30日,朝鮮高級学校に対し,文書により,①「全国の朝鮮初中級学校から選抜された生徒約100人が1~2月に北朝鮮を訪問し,故金正日氏,金正恩氏への忠誠を誓う歌劇を披露していた」との報道の真偽等,②金正恩氏の肖像を教室内に掲示しているか,③「故金正日氏の葬儀について,朝鮮学校の施設が使用され,生徒の動員が行われた」との報道の真偽などを照会した(乙14)

これに対し,本件朝鮮学校は,上記①については,中級部生徒,教職
員が参加したが,高級部の生徒は含まれていない旨,上記②については,金正恩氏の肖像を掲示しておらず,また,検討もしていない旨,上記③については,学校行事ではなく,追悼行事の委員会から通常の使用申請があり,一般貸出しとして貸したこと,生徒に出席の指示はしておらず,保護者とともに参加した生徒はいた旨などを回答した(乙15)


支援室は,平成24年8月24日,朝鮮高級学校に対し,文書により,同年6月18日付けの新聞記事における「今月5~7日に全国の朝鮮学校長を対象に開かれた講習には,校長69人が出席。C議長が『金正恩指導体系が確立されるよう確実に教育せよ』と指示した。
」との報
道に関して,同月5日から7日までの間に朝鮮総聯又は他の団体による講習会に高級部の校長その他の教員が参加した事実の有無,教育内容に関して特定の示唆を受けた事実の有無などを照会した(乙16)

これに対し,本件朝鮮学校は,校長が全国朝鮮高級学校校長会の主催
する全国朝鮮学校校長講習会に参加したが,教育内容に関し特定の示唆を受けることはなかった旨回答した(乙17)


支援室は,平成24年10月5日,朝鮮高級学校に対し,文書により,
「朝鮮高級学校から2~3人ずつ選ばれた生徒が在日本朝鮮青年同盟代表団として,教員や朝鮮大学校生らと8月23日~9月1日に平壌を訪問し,金正恩第1書記に忠誠を示す行事に参加した」との報道に関して,上記行事(青年節慶祝大会)への生徒,教員の参加の有無,参加した生徒による決議文読み上げの有無,朝鮮総聯の関与の有無などを照会した(乙18)

これに対し,本件朝鮮学校は,
「青年節慶祝大会」に生徒1名及び教

員1名が参加したこと,同行事について,金第1書記名による参加指示はなかったこと,夏休み中の在日本朝鮮青年同盟の呼びかけにより,希望者が個人的に参加しているもので,学校の関与はなかったことなどを回答した(乙19)


支援室は,平成24年10月19日,朝鮮高級学校に対し,文書により,
「朝鮮総聯が故・金日成主席,金正日総書記の肖像画を新しい肖像画「太陽像」に10月中に交換するように指示した」との新聞報道に関して,朝鮮総聯等からの新たな肖像画の購入に関する案内又は指示の有無等について照会した(乙20)

これに対し,本件朝鮮学校は,
「指示はなく,購入の予定はありませ
ん。
」と回答した(乙21)


支援室内部においては,審査会における審議の経過や上記の照会に対する回答結果等を踏まえると,規定ハに基づく審査には限界があり,審査会を継続しても朝鮮高級学校について本件規程13条に適合するとの意見の一致を見ることは困難であるという見方が強くなっていた(乙75,証人B)

文部科学大臣への説明等
文部科学省初等中等教育局内には,支援室を含む「高校教育改革プロ
ジェクトチーム」があり,高校教育改革を担当していたが,同チーム内においても,前記

と同様に,審査会において7回の審議を重ね

たものの,結論を得るに至らず,朝鮮高級学校について,本件規程13条に適合すると認めるに至らないこと,一方,既に規定ハにより指定を受けたEスクール及びF学園のほかには,規定ハに基づく申請をしているのは朝鮮高級学校のみであり,他に規定ハの対象となり得る外国人学校はないことから,審査に限界がある規定ハを廃止することもあり得るとして,同チームのリーダーであるB証人ら文部科学省の事務方幹部は,文部科学事務次官にも相談の上,検討を進めていた。
文部科学省の事務方の幹部らは,平成24年12月下旬,就任した下村文部科学大臣に対し,規定ハによる朝鮮高級学校の指定問題について,審査会における審議の状況や議論の内容等を説明するなどし,同大臣から,朝鮮高級学校を不指定とし,併せて,規定ハを削除する省令改正をすることについて承認を得た(乙75,証人B)」

同頁20行目の「

」を「

」に改め,21行目の「被告(国)は,
」の次
に「この間の」を加える。
同頁24行目の「

」を「

に,同71頁7行目の「
同頁25行目の「

」に,同69頁24行目の「

」を「

」を「

」を「

」にそれぞれ改める。

」に,26行目冒頭から72頁3行目の「文

書」という。)」までを「本件不指定処分に係る決裁・供覧文書(文書番号・24文科初第1130号)」にそれぞれ改め,11行目の「2通」の後に「。なお,G高級学校を設置,運営する学校法人G学園については,不指定処分の理由として,理由①及び理由②に加えて,本件規程16条に定める必要な教員数に満たないことも記載されている。」を加え,12行目の「されている。」を「され,備考欄に「※施行日は官報掲載日に合わせるため,平成25年2月20日とした」との鉛筆書きの記載がある。」に改める。同72頁13行目の「

」を「

」に改め,17行目末尾に改行して,次

のとおり加える。


本件省令改正の官報公告と本件不指定通知の送付等
下村文部科学大臣は,平成25年2月19日,本件不指定処分に係る通知文書を翌20日に発出することを記者会見で明らかにした。
支援室の担当者は,同月19日夜,東京朝鮮学園に対し,「明日発送予定の通知文の事前送付について」と題する連絡文書をファクシミリで送信したが,同文書には,「文部科学大臣」の印が押された翌20日付けの本件不指定通知の写しが添付されていた。また,支援室担当者は,翌20日,東京朝鮮学園に対し,電話で本件不指定処分を伝えるとともに,本件不指定通知を東京朝鮮学園宛に送付した。本件不指定通知は,遅くとも同月21日までに,東京朝鮮学園に到達した。なお,同月20日,東京朝鮮学園の代表らが,文部科学省を訪れ,支援室関係者に対し,抗議と要請をした上,記者会見をし,本件省令改正は差別的な措置であり,これを撤回し,朝鮮高級学校の生徒への無償化を実現することを要求する旨述べた(甲44,188,乙106,108)。
一方,本件省令改正は,同日,官報に掲載され,公告された。」
同頁18行目の「

」を「

」に改める。

同78頁7行目から82頁4行目までを削る。
同頁5行目の「

」を「

」に改める。

3本件不指定処分の理由について(争点1)
前記前提事実のとおり,本件省令改正と本件不指定処分は,平成25年2月20日付けでされたこと,本件不指定通知には,本件不指定処分の理由として理由①と理由②が並記されていることが認められる。そして,規定ハの削除を理由とする理由①と規定ハを前提とする理由②が論理上両立し得ないものであることは,被控訴人においてもこれを自認するところである。控訴人らは,東京朝鮮学園が本件不指定通知を受領したのは,本件省令改正が官報に公告された後であって,既に規定ハが削除されることによって下位規範である本件規程が根拠を失っていたのであるから,理由②は本件不指定処分の理由にはなり得ないと主張する。
しかしながら,一般に行政処分は告知により処分の相手方に対して効力を有するものであるとしても,行政処分の成立は,行政処分の相手方に対する効力の発生時期と必ずしも一致するものではない。本件においては,前記認定事実のとおり,本件不指定処分は,平成25年2月15日付けで決裁がされたものの,本件省令改正に係る官報公告に合わせてすることとされ,本件省令改正に係る官報公告の前日である同月19日には,文部科学大臣が記者会見で本件不指定処分に係る通知文書を翌20日に発出する旨を明らかにし,支援室から東京朝鮮学園に対し,本件不指定通知の写しが添付された文書がファクシミリで送信されたことなどからすると,本件不指定処分は,遅くとも上記官報公告がされるまでには,行政処分として成立していたものと認められるから,理由②は本件不指定処分の理由となり得るものというべきである。
控訴人らは,本件省令改正により,申請後審理中の事案は,審理の根拠を失うことになるため,本件申請は審査会の意見を聴くこともなく,十分な審査が行われることがないまま,本件規程13条に適合するとは認められないとして本件不指定処分をすることが可能となったものであるから,理由①が本件不指定処分の真の理由であると主張する。
しかしながら,規定ハを削除する理由①と規定ハの存在を前提とする理由②は論理的に両立し得ないが,理由①がなければ理由②が成り立ち得ないという関係にはない。控訴人らは,下村文部科学大臣の発言(甲27)を捉えて,本件省令改正をしなければ,本件不指定処分ができなかったとも主張するが,同大臣の発言は,本件省令改正と本件不指定処分との順序を述べたものにすぎず,本件省令改正をしなくとも,本件規程13条に適合しなければ不指定処分をすることは可能であり,13条に適合しないとの判断をするために本件省令改正が必要であったとも認められないから,本件省令改正がなければ不指定処分ができなかったものではない。
次に,控訴人らは,安倍政権は当初から,朝鮮高級学校を就学支給金の支給対象としないことを明らかにしており,下村文部科学大臣は,政治的外交的理由により,本件不指定処分をするために,本件省令改正をしたものであるから,本件不指定処分の真の理由は理由①であると主張する。しかしながら,上記のとおり,本件省令改正をしなくとも,本件規程13条に適合しなければ不指定処分をすることは可能であるから,本件省令改正がなければ不指定処分ができないという関係にはない上,前記認定事実によれば,下村文部科学大臣は,審査会における審議の状況等を踏まえ,本件不指定処分をしたものであり,平成25年2月19日及び同年5月24日の記者会見においても,朝鮮高級学校を含む朝鮮学校は朝鮮総聯と密接な関係があり,教育内容,人事,財政にその影響が及んでいることなどから,法令に基づく学校の適正な運営が行われているとの確証が得られなかったために不指定処分となった旨説明しているのであるから,本件不指定処分をするために本件省令改正がされたものとは認められない。
また,控訴人らは,本件不指定処分に係る決裁・供覧文書(乙65)の件名欄が「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校就学支援金に関する法律施行規則第1条第1項第2号ハの規定の削除に伴う朝鮮高級学校の不指定について」とされていることを指摘するが,これは,飽くまでその記載の欄が限定された件名の表記にすぎず,決裁に添付されている朝鮮学園宛ての不指定処分の通知案には,理由②も記載されている(なお,G学園については,本件規程16条に定める必要な教員数に満たないとの理由も付加されている。)のであるから,単なる件名の形式的な表記をもって,本件不指定処分の真の理由が理由①であるとはいえない。
かえって,前記認定事実によれば,文部科学省は,審査会を開催したものの7回の審議を経ても,結論を得ることができなかったこと,同省内部においても,本件規程のもとでは審査に限界があり,審査会を継続しても,朝鮮高級学校について規程13条に適合するとの結論を得ることは困難であるとの見方が固まっていたこと,異議申立てに対する決定書には,朝鮮高級学校が基準に適合しないと判断したとする一方で,規定ハは存続させる必要がなくなったため,本件省令改正をしたと記載されており,文部科学省としては,朝鮮高級学校を不指定とした場合には規定ハを存在させる必要がなくなるとの認識をしていたことなどが認められる。
このような審査会の審査,文部科学省内における検討状況,異議申立てにおける決定書の説明等を踏まえると,被控訴人の説明にはやや一貫性を欠く点がなくはないものの,合理的にみれば,本件不指定処分の理由は,理由②であると認めるのが相当である。
そこで,以下においては,理由②を理由として本件不指定処分をしたことが,文部科学大臣に与えられた裁量権の範囲を逸脱し又は濫用したものとして違法であるか否か(争点3)を検討する。
4本件規程13条に適合すると認めるに至らなかった(理由②)として本件不指定処分をしたことが,文部科学大臣に与えられた裁量権の範囲を逸脱し又は濫用したものとして違法であるか否か(争点3)
当裁判所は,文部科学大臣が,理由②を理由として本件不指定処分をしたことは,その裁量権の範囲を逸脱し又はそれを濫用したとして違法とはいえないものと判断する。
その理由は,次に補正するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第3争点に対する判断」の2(原判決83頁7行目から102頁24行目まで)に記載するとおりであるからこれを引用する。
原判決83頁7行目,19行目,23行目,84頁10行目,87頁5行目から6行目,17行目,21行目,88頁13行目から14行目,17行目,21行目から22行目,89頁14行目から15行目,90頁10行目から11行目,24行目,99頁26行目から100頁1行目,102頁7行目から8行目の「本件省令1条1項2号ハ」をいずれも「規定ハ」に改める。
同83頁18行目の「委ねた」を「委ねている」に,22行目の「定めた」を「定めている」にそれぞれ改める。
同90頁15行目末尾に改行の上,次のとおり加える。


控訴人らは,東京朝鮮学園は各種学校であり,学校教育法による認可を受
けており,一定の制度的な保障がある旨を主張するが,同法は学校の設置等について組織や編成その他に関する設置基準に関する規制であり,他方,支給法,本件省令及び本件規程は,就学支援金の制度の観点から審査に必要な制度を定めているのであり,その審査に当たり,学校教育法による認可を受けていることは審査を不要とする理由とはならない。」
同91頁13行目の「そのような流用」を「法令に従った適正な学校運営がされていると認めることができず,そのような流用」に改める。同92頁22行目末尾に改行の上,次のとおり加える。


もっとも,文部科学大臣の上記の判断は,政策的なものではなく,専門
的,技術的な観点から本件規程13条の適合性を認定,評価するものであるから,同大臣の裁量にはこのような観点からの一定の限定があり,広範なものではないと解される。」
同頁25行目の「文部科学大臣の」の次に「上記のような一定の」を加える。
同93頁2行目の「本件不指定通知には,」から4行目の「この点について,」までを削除し,5行目の「本件規程15条に基づき,審査会の意見を聴くとともに」を「本件規程15条に基づき,審査会の審議おける議論の状況等を聴くとともに」にそれぞれ改める。
同94頁1行目から96頁2行目までを次のとおり改める。
「イ

①公安調査庁及び警察庁が,いずれも法によって設置された国家機関であり(法務省設置法29条及び公安調査庁設置法,内閣府設置法64条,警察法4条及び15条参照)
,一定の調査,分析能力を備えた組織で
あると考えられることに照らせば,文部科学大臣において,これらの資料や国会答弁の内容を判断の際の考慮に入れることが不合理とはいえないというべきところ,公安調査庁がその調査,収集した資料の分析に基づいて作成した資料や,公安調査庁長官及び警察庁長官官房審議官の国会における答弁の内容によれば,朝鮮総聯が朝鮮高級学校を含む朝鮮学校と密接な関係にあり,その教育内容,人事,財政に影響を及ぼしているとされていたこと,②朝鮮総聯自身のホームページにも,朝鮮総聯が朝鮮高級学校を含む朝鮮学校の教育内容及びその実施,管理運営等に影響を及ぼしていることをうかがわせる記載が見られること,③広島地裁平成19年判決においては,朝鮮学校を設置する学校法人が朝鮮総聯の地方本部の強力な指導の下にある傘下組織のようになっており,適正な学校運営がされていないことを疑わせる事情や,朝鮮総聯の地方本部が朝鮮学校を利用して資金を集めていることを疑わせる事情が指摘されていること,④朝鮮総聯等の朝鮮高級学校に対する支配関係を指摘し,あるいは,朝鮮高級学校の資産や補助金が朝鮮総聯の資金に流用されている疑いを指摘する報道等が繰り返しされていたことなどが認められ,朝鮮高級学校につき,就学支援金の授業料に係る債権の弁済への確実な充当が行われることや,学校運営が法令に従った適正なものであることについて合理的な疑いが生じる状況にあったが,他方,支援室が朝鮮高級学校に対して朝鮮総聯等との関係について回答を求めたことに対する本件朝鮮学校側からの回答は,朝鮮総聯等による影響を否定するようなものとはなっていたものの,その回答の内容は,朝鮮総聯が朝鮮高級学校の運営等に関わっている旨の朝鮮総聯のホームページの記載等とも整合しないものであったり,教職員や生徒らが朝鮮総聯傘下の団体に加入している事実を認める内容とも見られるものであったりし,上記の疑念を払拭するに足りるものとは言い難く,審査会も,7回の審議を経ても結論を得るに至らず,その議論の内容を見ても,本件規程13条適合性が認められるとの積極的意見が述べられたものとはうかがわれず,むしろ,本件規程13条適合性についていくら確認をしてもすっきり指定をすることができるようにならないという趣旨の意見や,審査会における審査の限界を指摘する意見が述べられていたのであるから,文部科学大臣において,これらの状況等を踏まえ,本件朝鮮学校につき,就学支援金の授業料に係る債権の弁済への確実な充当が行われることや,学校運営が法令に従った適正なものであることについて,十分な確証を得ることができず,本件規程13条に適合するものと認めるに至らないと判断したことは,不合理なものということはできない。
したがって,文部科学大臣が,理由②を理由として本件不指定処分をしたことは,同大臣に与えられた一定の裁量権の範囲を逸脱し又はそれを濫用したものとは認められないというべきである。

同96頁8行目の「と推認できる」を削り,17行目の「示していること」を「公示していること(甲64)」に改める。
同97頁13行目の「その内容を素直に見れば」を「前政権時の見解を見直すべきであるとの同大臣の当時の見解であるが,朝鮮学校には教育内容,人事,財政等に朝鮮総聯の影響が及んでいることなど「適正な学校運営」の問題があることにも言及しており,」に改める。
同頁19行目の「(」を「。」に,20行目の「10日」を「19日」にそれぞれ改める。
同98頁5行目の「ところである。)」を「ところであり,本件規程13条の適合性(特に適正な学校運営)の問題があることを述べている」に改める。
同頁14行目の「対象となっているものは」から16行目の「文書であり」までを「対象として,上記決裁・供覧文書に添付されている朝鮮学園宛ての不指定処分の通知案には,本件省令改正(規定ハの削除,理由①)及び本件規程13条に適合すると認めるに足らなかったこと(理由②)が記載されている(なお,G学園については,本件規程16条に定める必要な教員数に満たないとの理由も付加されている。)のであり」に改める。
同99頁2行目の「上記ア④について」から12行目の「認められる」までを「上記ア④については,前記認定事実によれば,下村文部科学大臣は,文部科学省の事務方の幹部らから,審査会において,7回の審議を重ねたものの,結論を得るに至らず,朝鮮高級学校について,本件規程13条に適合すると判断するには困難である旨の説明を受け,審査会の審議の状況,議論の内容等を踏まえ,本件不指定処分をしたものと認められる」に改める。同99頁23行目の「供覧文書の」から24行目から25行目にかけての「をもって」までを「供覧文書の件名欄及び伺い文欄には,いずれも本件省令1条1項2号「ハの規定の削除に伴」い,本件不指定処分をすることとされており,本件規程13条の適合性についての記載はないものの,前記のとおり添付の通知案には本件規程13条に適合すると認めるに至らなかった旨が記載されており,記載欄が限られた件名欄等の形式的な表記によって」に改め,25行目の「できない。」の次に「また,控訴人らが当審において提出したDの陳述書(甲103)は,同人は,検討会議における検討段階までは関与していたものの,その後の審査会における審議の段階には関与していないことなどから,採用できない。」を加える。
同100頁5行目から7行目までを次のとおり改める。


したがって,本件不指定処分が政治的外交的理由によってされたものと認めることはできない。」
同101頁10行目の「を」を「をも」に改め,19行目から102頁1
4行目の「採用することができない。」までを削除する。
同頁14行目末尾に改行して次のとおり加える。
「オ

控訴人らは,①本件運営決定によれば,審査会においては指定の可否について具体的根拠を持った結論を示すことが制度上要請されていた,②本件規程15条に用いられている「…ものとする」との用語は,一般に,行政官庁等に対して一定の行為を義務付ける場合に用いられていることからすると,本件規程15条に定める意見聴取手続が支給法に由来する制度上の義務であるなどとした上で,文部科学大臣が審査会の最終的な意見を聴かないでした本件不指定処分は違法であるなどと主張する。
しかしながら,支給法は,審査会を設置すること自体何ら規定していな
いのであって,文部科学大臣がその判断に当たって審査会の意見を聴くことが支給法上の要請でないことは,明らかである。そして,①検討会議における議論の経緯,指定に関する基準等に係る報告の内容(
「審査は,教育
制度の専門家をはじめとする第三者が,専門的な見地から客観的に行い,対象とするかどうかについて意見を取りまとめ,最終的には,文部科学大臣の権限と責任において,外国人学校の指定がなされることが適当である」とされている。,②本件規程15条が,

「文部科学大臣は,規則第1条
第1項第2号ハの規定による指定を行おうとするときは,あらかじめ,教育制度に関する専門家その他の学識経験者で構成される会議で文部科学大臣が別に定めるものの意見を聴くものとする。
」と規定するのみであって,
文部科学大臣が審査会の「議により」判断するというような規定ぶりとなっていないこと,③本件規程13条に定める要件を充足するか否かの検討は,その性質及び内容からして自ずと専門的,技術的検討を伴うものであり,まずは教育行政に通暁する文部科学大臣の専門的,技術的判断に委ねられているものと解されることを勘案すると,審査会の意見聴取について定めた本件規程15条は,文部科学大臣において規定ハによる指定を行おうとするに際し,その判断の際の考慮要素の1つとして,教育制度に関する専門家その他の学識経験者で構成される会議で同大臣が定めるものの意見を聞くことが判断に資すると考えられたことから設けられた規定であるものと解され,本件規程15条に定める審査会の意見は,同大臣の上記裁量判断の際の考慮要素の1つにとどまるものというべきである。
前記認定事実のとおり,審査会においては,7回の審議を重ねたが,結論を出すに至らず,審査会を継続しても,朝鮮高級学校について本件規程13条に適合するとの意見の一致を見るのが困難な状況にあり,文部科学大臣は,このような審査会の審査の状況等も踏まえ,本件不指定処分をしたものと認められるから,文部科学大臣において審査会の最終的な意見を聴かないで本件不指定処分をしたことは,文部科学大臣に与えられた一定の裁量権の範囲を逸脱し又はそれを濫用したものとはいえない。

控訴人らは,国際連合の人種差別撤廃委員会等が,朝鮮高級学校の生徒を高校無償化の対象から除外することについて懸念を示し,差別であると指摘していることから,国際的な観点からも,控訴人らの救済が図られるべきであると主張する。
しかしながら,本件不指定処分は,前記のとおり,本件朝鮮学校が支給対象外国人学校の指定要件である本件規程13条の基準に適合していると認めるに至らないことからされたものであり,もとより人種差別に基づいてされたものではない上,人種差別撤廃委員会等の所見も,我が国の就学支援金制度の仕組みや,支給法等の関係法令に基づく指定基準を,踏まえたものでも,具体的な事実調査を行った上でされたものでもないから,これらをもって,文部科学大臣による本件不指定処分が違法となるものとはいえない。


以上のとおり,文部科学大臣が,理由②を理由として本件不指定処分をしたことは,同大臣に与えられた一定の裁量権の範囲を逸脱し又はそれを濫用したものとは認められない。
したがって,本件不指定処分は違法とはいえず,本件不指定処分の違法を
理由とする控訴人らの国家賠償法1条1項に基づく本件各請求は,その余の点(争点2及び4)について判断するまでもなく,いずれも理由がない。」同頁15行目から24行目までを削除する。
5結論
以上によれば,控訴人らの本件各請求はいずれも理由がないからこれを棄却すべきところ,これと同旨の原判決は相当であり,控訴人らの控訴はいずれも理由がない。
よって,控訴人らの控訴をいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第8民事部
裁判長裁判官

阿部潤
裁判官

上田哲
裁判官岡野典章は差支えのため書名押印できない。

裁判長裁判官

阿部潤
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