判例検索β > 平成30年(行ケ)第10068号
審決取消請求事件 特許権 行政訴訟
事件番号平成30(行ケ)10068
事件名審決取消請求事件
裁判年月日平成30年12月10日
法廷名知的財産高等裁判所
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平成30年12月10日判決言渡
平成30年(行ケ)第10068号
口頭弁論終結日

審決取消請求事件

平成30年11月28日
判原決告
日本ゼオン株式会社

同訴訟代理人弁護士

杉村光嗣
同訴訟代理人弁理士

杉村憲司塚中哲雄水間章子被告特許庁
同指定代理人

宮澤尚之大橋賢一賢一玲子原板主谷長官文1
原告の請求を棄却する。

2
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由

第1

請求

特許庁が不服2017-6211号事件について平成30年3月27日にした審決を取り消す。
第2

事案の概要

本件は,原告の特許拒絶査定不服審判請求を不成立とした審決に対する取消訴訟
である。争点は,①進歩性判断の当否,②手続違背の有無である。1
特許庁における手続の経緯

原告は,発明の名称を「合わせガラス」とする発明について,平成27年7月7日を国際出願日とする特許出願(特願2015-542064号。以下「本願」という。甲5)をしたが(優先権主張:平成26年7月9日,平成27年2月26日,優先権主張国:日本国)
,平成29年1月23日付けで拒絶査定を受けた。
これに対し,原告は,平成29年4月28日付けで拒絶査定不服審判(不服2017-6211号,甲14)を請求し,同年12月11日付けの拒絶理由通知(以下「本件拒絶理由通知」という。甲17)を受けて,平成30年2月13日付け手続補正書(甲19)をもって,特許請求の範囲を変更する手続補正(以下「本件補正」という。
)を行った。
特許庁は,平成30年3月27日,
「本件審判の請求は,成り立たない。
」との審
決をし,その謄本は,同年4月10日,原告に送達された。
2
本願発明の要旨(甲19)

本件補正後の本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)の要旨は,
以下のとおりである(以下,本願の願書に添付した明細書及び図面[甲5]を「本願明細書」という。。

【請求項1】
「第1のガラス板,第1の中間膜,熱線反射膜を積層した透明フィルム,第2の中間膜,及び第2のガラス板の順に積層してなる合わせガラスであって,前記第1の中間膜及び第2の中間膜は,いずれも変性ブロック共重合体水素化物[E]から形成されたものであり(ただし,可塑剤を含むものを除く),前記変性ブロック共重合体水素化物[E]は,ブロック共重合体[C]の,全不飽和結合の90%以上を水素化したブロック共重合体水素化物[D]に,アルコキシシリル基が導入されたものであり,
前記ブロック共重合体[C]は,芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成
分とする少なくとも2つの重合体ブロック[A]と,鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする少なくとも1つの重合体ブロック[B]とからなり,全重合体ブロック[A]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし,全重合体ブロック[B]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに,
wAとwBとの比(wA:wB)が30:70~60:40であり,a.前記熱線反射膜を積層した透明フィルムが,第1及び第2のガラス板の面積より小さい面積を有し,
b.前記熱線反射膜を積層した透明フィルムが,第1及び第2の中間膜の面積より小さい面積を有し,
c.前記熱線反射膜を積層した透明フィルムの端が,第1及び第2のガラス板の端に対して全周囲に亘って2mm以上離れて配置され,
d.前記熱線反射膜を積層した透明フィルムの端が,第1及び第2の中間膜の端に対して全周囲に亘って2mm以上10mm以下,離れて配置されており,e.前記熱線反射膜を積層した透明フィルムが,第1及び第2の中間膜に包埋された状態である,
合わせガラス。」
3
審決の理由の要点

(1)引用発明の認定
国際公開第2009/087869号(以下「引用文献1」という。甲1)には,以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。「着色膜(15)を合わせ面側に形成した車外側ガラス板(10),PVBフィルム中間膜(11),PETフィルムの片面に酸化亜鉛と銀とを積層してなる赤外線反射膜が形成してなる透明なプラスチックフィルム(14),PVBフィルム中間膜(12),車内側ガラス板(13)の順に積層してなるプラスチック挿入合わせガラスであって,

プラスチック挿入合わせガラスのエッジ(2)からプラスチックフィルムのエッジ(4)までの距離をd1としたとき,
d1=19~89mmであり,
車外側ガラス板(10),および,車内側ガラス板(13)よりも小さい面積の,プラスチックフィルム(14)が挿入されている
プラスチック挿入合わせガラス。」
(2)本願発明と引用発明との対比
(一致点)
「第1のガラス板,第1の中間膜,熱線反射膜を積層した透明フィルム,第2の中間膜,及び第2のガラス板の順に積層してなる合わせガラスであって,a.前記熱線反射膜を積層した透明フィルムが,第1及び第2のガラス板の面積より小さい面積を有し,
c.前記熱線反射膜を積層した透明フィルムの端が,第1及び第2のガラス板の端に対して全周囲に亘って2mm以上離れて配置されている
合わせガラス。」である点。
(相違点1)
第1の中間膜及び第2の中間膜が,本願発明では,「いずれも変性ブロック共重合体水素化物
[E]
から形成されたものであり
(ただし,
可塑剤を含むものを除く)

前記変性ブロック共重合体水素化物[E]は,ブロック共重合体[C]の,全不飽和結合の90%以上を水素化したブロック共重合体水素化物[D]に,アルコキシシリル基が導入されたものであり,
前記ブロック共重合体[C]は,芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする少なくとも二つの重合体ブロック[A]と,鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする少なくとも一つの重合体ブロック[B]とからなり,全重合体ブロック[A]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし,全重合体ブロック[B]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたと
きに,
wAとwBとの比(wA:wB)が30:70~60:40である。」のに対し,引用発明では,「PVBフィルム」である点。
(相違点2)
本願発明は,「b.前記熱線反射膜を積層した透明フィルムが,第1及び第2の中間膜の面積より小さい面積を有し」,「d.前記熱線反射膜を積層した透明フィルムの端が,第1及び第2の中間膜の端に対して全周囲に亘って2mm以上10mm以下,離れて配置されており」,「e.前記熱線反射膜を積層した透明フィルムが,第1及び第2の中間膜に包埋された状態である」の対し,引用発明は,PVBフィルム中間膜(11)(12)と,赤外線反射膜が形成してなる透明なプラスチックフィルム(14)との関係が特定されていない点。
(3)

相違点についての判断

相違点1について

国際公開第2013/176258号(以下「引用文献2」という。甲2)には,従来,ガラス中間膜に使用されていて吸湿性が高いという欠点を有していたPVB系樹脂に代わって,低吸湿性に優れた,「芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする,少なくとも二つの重合体ブロック[A]と,鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする,少なくとも一つの重合体ブロック[B]とからなり,全重合体ブロック[A]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし,全重合体ブロック[B]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに,wAとwBとの比(wA:wB)が30:70~60:40であるブロック共重合体[1]の,全不飽和結合の90%以上が水素化されたブロック共重合体水素化物[2]に,アルコキシシリル基が導入されたブロック共重合体水素化物[3]」を,シート状に成形して合わせガラスの接着剤として中間膜に使用することが記載されている。
これらのことからすると,
引用文献2には,
本願発明の
「ブ
ロック共重合体[C]」,「ブロック共重合体[C]の,全不飽和結合の90%以
上を水素化したブロック共重合体水素化物[D]」に相当するものがそれぞれ記載されている。
また,引用文献2には,同文献に記載された上記中間膜が,可塑剤を含むことは記載されておらず,また,技術常識を踏まえても,可塑剤を含むものといえないから,上記中間膜を構成する,当該「ブロック共重合体水素化物[2]」に,「アルコキシシリル基が導入されたブロック共重合体水素化物[3]」は,本願発明の「変性ブロック共重合体水素化物[E]」に相当する。
そして,引用発明の目的の一つは,プラスチックフィルムのエッジが,ガラスのエッジと同じで水分にさらされるような形状に比べ,水分による劣化を防止することであるところ,当該水分とは,直接さらされる水分のみならず,PVBフィルム中間膜の吸湿による水分も同じであることが,当業者に明らかであるから,引用発明で使用するPVBフィルム中間膜を,より低吸湿性に優れている,引用文献2記載の中間膜へ置き換えて,水分による劣化防止を確実なものとすることは,当業者が容易に想到し得る。

相違点2について

引用発明のプラスチックフィルム挿入ガラスは,「重ねあわされた,車外側ガラス板10と車内側ガラス板とのエッジからはみ出したPVBフィルムをカッターで切り取った」ものであるから,PVBフィルム中間膜のエッジは,車外側ガラス板のエッジ,車内側ガラス板のエッジ及びプラスチック挿入合わせガラスのエッジとそれぞれ一致するものである。
そうすると,本願発明の「b.前記熱線反射膜を積層した透明フィルムが,第1及び第2の中間膜の面積より小さい面積を有し」の点は,「a.前記熱線反射膜を積層した透明フィルムが,第1及び第2のガラス板の面積より小さい面積を有し」との点と同様に,引用発明との実質的な相違点ではない。
また,引用発明の「プラスチックフィルムのエッジ(4)」は,引用文献1において,「PVBフィルム中間膜(11)」と「PVBフィルム中間膜(12)」と
で覆われていることからみて,引用発明の「赤外線反射膜が形成してなる透明なプラスチックフィルム(14)」は,「PVBフィルム中間膜(11)」と「PVBフィルム中間膜(12)」とに「包埋」された状態であるといえるから,本願発明1の「e.前記熱線反射膜を積層した透明フィルムが,第1及び第2の中間膜に包埋された状態である」の点も,引用発明との実質的な相違点ではない。そして,本願発明の「d.前記熱線反射膜を積層した透明フィルムの端が,第1及び第2の中間膜の端に対して全周囲に亘って2mm以上10mm以下,離れて配置されており」の点は,引用発明が,プラスチックフィルムのエッジ(4)を,プラスチック挿入合わせガラスのエッジ(2)に対してと同様に,PVBフィルム中間膜(11)(12)のエッジに対してd1=19~89mm離している点で相違するが,引用文献1には,このd1について5mm以上とすればよいことが記載されていて,
引用発明において,
赤外線反射膜が形成してなる透明なプラスチックフィ
ルム(14)のエッジを,PVBフィルム中間膜(11)(12)のエッジに対してd1=5mm~10mmとなるように離れて配置することは,当業者にとって適宜なし得る設計的事項の範囲内の変更といえる。また,そのような変更をした場合でも,引用発明のPETフィルムの片面に酸化亜鉛と銀とを積層してなる赤外線反射膜が形成してなる透明なプラスチックフィルム(14)の端は,着色膜のエッジ(3)よりも外側に存在することに変わりなく,引用発明の効果が損なわれない。ウ
顕著な作用効果について

本願発明は,本願明細書の【0012】に記載された「本発明によれば,優れた熱線反射機能を有し,
かつ,
耐湿性及び耐久性に優れた合わせガラスが提供される。

との効果を有するものであり,他方,引用発明も,プラスチックフィルムのエッジが,水分にさらされるような形状に比べ,水分による劣化を防止できる効果を有するものである。
そして,銀がPETフィルムの片面で酸化亜鉛と積層されている引用発明において,当該「水分による劣化」は,特開2000-86308号公報(甲4)の記載
からすると,熱線反射機能をもつ銀の劣化を含む意味であることは当業者に自明である。
そうすると,引用文献2に記載された中間膜は,PVB系樹脂よりも低吸湿性に優れたものであるといえるから,これを引用発明に採用することにより,より一層耐湿性及び耐久性に優れ,銀の劣化がなく,熱線反射機能を維持し得る合わせガラスが提供されることは,特開平6-144891号公報(以下「引用文献3」という。甲3)に記載されているように,当業者が期待し得るものであって,本願発明の奏する上記効果は,引用文献1~4の各記載から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
以上からすると,本願発明は,特許法29条2項により特許を受けることができないものである。
第3
1
原告主張の審決取消事由
取消事由1(相違点1の判断の誤り)
(1)

引用発明における中間膜であるPVBフィルムは,PVBのみならず,可
塑剤を含む組成物であって,審決もこれを認めている。
引用文献2に接した当業者は,
「ポリビニルブチラール(PVB)系樹脂」に代え
て,
「アルコキシシリル基が導入されたブロック共重合体水素化物[3]」を樹脂成
分として使用することが記載されているものと理解し,それに基づいて引用発明において,PVBフィルム中間膜を構成している接着剤組成物の樹脂成分であるPVBを,引用文献2に記載されたアルコキシシリル基が導入されたブロック共重合体水素化物[3]に代えてみることは着想し得るかもしれないが,上記のように引用発明のPVBフィルム中間膜には,樹脂成分であるPVBのみならず可塑剤も含まれているから,そのような樹脂成分であるPVBを,引用文献2に記載されたアルコキシシリル基が導入されたブロック共重合体水素化物[3]に代えたとしても,当該置き換えにより得られる中間膜は,アルコキシシリル基が導入されたブロック共重合体水素化物[3]及び可塑剤を含む組成物で構成されるものとなって,可塑
剤を含まない本願発明の中間膜とは異なるものとなり,
本願発明の構成に至らない。
PVBフィルム中間膜を構成する接着剤組成物を,より吸湿性の低いものとなるように改良しようとする当業者は,
樹脂添加剤の種類,
それらの配合量等について,
公知文献や技術常識に基づいて検討し,種々の組成物を調製して,その吸湿性を測定し,より吸湿性の低い組成物を探索しなければならない。
したがって,引用発明で使用されたPVBフィルム中間膜を,より低吸湿性に優れている引用文献2の中間膜に置き換えることを当業者は容易に想到し得るということはできない。
(2)被告の主張に対する反論
被告は,引用発明のPVBフィルム中間膜を一体的に,引用文献2に記載された中間膜に置き換えることが,むしろ,樹脂組成物の分野の技術常識や当業者の経験則に則したことといえると主張する。
しかし,引用発明で使用するPVBフィルム中間膜と引用文献2記載の中間膜とは,いずれも接着剤からなる中間膜であり,中間膜に接する二つの層を接着するものである。そして,接着剤は,接着剤ごとに,被接着層が定まっているというのがその技術常識であるところ,引用発明のPVBフィルム中間膜は,ガラス板とプラスチックフィルムを接着するための中間膜である一方,引用文献2の中間膜は,ガラス板とガラス板を接着するための中間膜である。そうすると,引用発明の中間膜と引用文献2の中間膜とでは被接着層が異なるから,接着剤ごとに被接着層が定まっているという上記技術常識を踏まえた当業者としては,引用文献2の中間膜を引用発明に適用できるとは考えないはずである。
仮に,引用文献2の中間膜を,引用発明に適用しようとするにしても,当業者であれば,引用発明の中間膜と引用文献2の中間膜とでは被接着層が異なることを勘案し,
引用文献2の樹脂に添加する樹脂添加剤の種類,
それらの配合量等について,
公知文献や技術常識に基づいて種々の接着剤組成物を調製し,その吸湿性,ガラス板及びプラスチックフィルムとの接着性を測定し,より吸湿性の低い,そして,ガ
ラス板とプラスチックフィルムとに良好に接着する接着剤組成物を探索しようとするはずであり,被告の主張するように,引用発明のPVBフィルム中間膜を一体的に引用文献2に記載された中間膜に置き換えるということはしないはずである。なお,被告が指摘する引用文献2の【0089】【0090】及び【0093】,
は,審決で何ら言及されていない上,上記各段落によって進歩性が基礎付けられるものでもない。
2
取消事由2(手続違背)
(1)

特許庁は,本件拒絶理由通知(甲17)において,本願発明と本件拒絶理
由通知に記載された引用発明1(引用発明とほぼ同じものであるから,以下,引用発明と区別することなく,単に「引用発明」という。
)の相違点1に関して,引用発
明の中間膜を「PVB」
,すなわち,可塑剤の添加されていないPVB単独であると
認定した上で拒絶理由通知をした。
これに対し,原告は,平成30年2月13日付けの意見書(以下「本件意見書」という。甲18)で,引用発明の中間膜は,PVB単独ではなく,可塑剤によって可撓性の付与された「PVBフィルム」であって,本件拒絶理由通知は,前提となる引用発明の認定を誤っていて,
その容易想到性の判断が失当である旨を主張した。
すると,
審決は,
引用発明の認定において,
「可塑剤」
を認定しなかったからといっ
て,
「可塑剤」を含まないPVBフィルムを認定したことにはならず,引用発明の中間膜は,可塑剤によって可撓性の付与された「PVBフィルム」の意味に解することができるから,
原告の主張は失当である旨説示して,
原告の上記主張を排斥した。
上記の経過からすると,原告は,引用発明の中間膜が,可塑剤によって可撓性の付与された
「PVBフィルム」
であるとの認定に基づく拒絶理由を前提とした上で,
意見書を提出して取消事由1において述べたような反論を行う機会並びに特許請求の範囲及び明細書を補正する機会を奪われたということができ,このような手続は特許法159条2項で準用する同法50条に違反する違法なもので,審決の結論に影響を及ぼすものである。
(2)被告の主張に対する反論
原告は,本件意見書において,本件拒絶理由通知が,引用発明のPVBフィルム中間膜を「可塑剤によって可撓性の付与された『PVBフィルム』の意味」で使っていると解釈した上で意見を述べることはしていない。原告は,飽くまでも,本件拒絶理由通知における引用発明の認定の誤りのみを主張しているのである。第4

被告の主張

1
取消事由1(相違点1の判断の誤り)に対して
(1)

技術常識等について


原告が主張するように,樹脂組成物の特性は,樹脂組成物を構成する樹
脂成分の種類,樹脂添加剤の種類,それらの配合量等の成分組成によって決まるものであり,実際に樹脂組成物を調製し,特性を測定することによって初めて確認し得るものであることは,樹脂組成物の分野における技術常識である。イ
上記技術常識からすると,より吸湿性の低い接着剤組成物となるように
成分組成を改良しようとする当業者は,種々の成分組成の接着剤組成物を調製し,その吸湿性を測定し,より吸湿性の低い接着剤組成物を探索するとの開発手法を採用するものと解される。

また,上記技術常識からすると,樹脂組成物の特性は,その成分組成に
よって決まるのであるから,
公知の樹脂組成物の特性を利用しようとする当業者は,
まずは,その特性が変化しないように,当該樹脂組成物の成分組成を変更することなく,そのまま用いるものと解される。
(2)

容易想到性について

引用文献2(甲2)には,従来,ガラス中間膜に使用されていた,吸湿
性が高いという欠点を有するPVBよりも,低吸湿性に優れた「アルコキシシシリル基が導入されたブロック共重合体水素化物[3]
」を,シート状に成形して合わせ
ガラスの接着剤として中間膜に使用することが記載されるとともに,「アルコキシ
シシリル基が導入されたブロック共重合体水素化物
[3]が柔軟性に優れた重合体

ブロック[B]を有しているため,当該接着剤が柔軟性を有することも記載されている(引用文献2の【0014】。そして,当該接着剤に用いることができる配合)
剤として,光安定剤,紫外線吸収剤,酸化防止剤等は記載されているものの(引用文献2の【0059】~【0073】【0112】,可塑剤は記載されていない。,

ここで,本願の優先日前,合わせガラスの技術分野において,可塑剤は,中間膜に用いられる樹脂に柔軟性が不足する場合に添加されるものであったこと(乙1)も踏まえると,引用文献2の上記記載から,柔軟性を有する「アルコキシシシリル基が導入されたブロック共重合体水素化物[3]
」から形成された中間膜は,可塑剤
を含まないものと解することができる。

そうすると,引用文献2に記載された中間膜は,前記(1)アの技術常識に
従い,前記(1)イの開発手法によって探索されたものといえるから,その低吸湿性に優れるという特性を利用しようとする当業者は,前記(1)ウのとおり,中間膜の成分組成を変更することなく(具体的には,可塑剤を含ませることなく),引用発明のP
VBフィルム中間膜を一体的に,引用文献2に記載された中間膜に置き換えるということができ,これは,樹脂組成物の分野の技術常識や当業者の経験則に則したことといえる。

したがって,原告の主張する技術常識を踏まえても,本願発明の相違点
1に係る構成は,当業者が容易に想到することができたものである。(3)

原告の主張について
引用発明と引用文献2に記載された中間膜は,単に技術分野が共通する
だけでなく,引用発明の目的の一つが,水分による劣化を防止することであるところ,引用発明におけるPVBフィルム中間膜が有する吸湿性が高いという欠点を解決したものが,引用文献2に記載された中間膜であるから,前記(2)イの置換えをする動機付けがある。

また,原告が主張するように,引用発明におけるPVBフィルム中間膜
は,可塑剤を含むと解した場合に,可塑剤はそのままで,樹脂成分のPVB化合物だけを引用文献2に記載された「アルコキシシリル基が導入されたブロック共重合体水素化物[3]
」に変更することは,
「アルコキシシリル基が導入されたブロック
共重合体水素化物[3]
」に可塑剤を添加した中間膜という,明らかに引用文献2に
記載されていない接着剤組成物となり,その特性が変化する可能性があることを意味するから,そのような変更を,前記(2)イに示した変更に先駆けて,当業者が当然に行うものということはできない。

引用発明の中間膜と引用文献2の中間膜とでは被接着層が異なる点につ
いても,引用文献2の【0089】,【0090】及び【0093】の記載からすると,引用発明の中間膜を引用文献2の「アルコキシシリル基が導入されたブロック共重合体水素化物[3]
」に置き換えることに困難があるとはいえず,原告の主張
は失当である。
(4)

以上のとおりであるから,審決の相違点1についての判断に誤りはなく,
取消事由1は理由がない。
2
取消事由2(手続違背)に対して
(1)

原告は,本件意見書において,
「したがって,当業者であれば,引用例1の

実施例2において,
『PVBフィルム』は,PVB単独ではなく,可塑剤によって可
撓性の付与された『PVBフィルム』の意味で使われていると理解します。(2頁」
46行~48行)「引用発明1,2は,中間膜として可塑剤を添加したポリビニル,
ブチラール樹脂組成物を使用しています。(4頁5行~6行)「引用発明1,2に」

おいて,
可塑剤が添加されることを必須とするポリビニルブチラール樹脂組成物を,必須成分である可塑剤を除去し,可塑剤が添加されていない他の樹脂組成物に置き換えることが当業者にとって容易に着想し得ると言える特段の事情の存在は,本件拒絶理由,そして,審査段階でも拒絶理由,拒絶査定にも一切説示されていないことを申し述べます。

(4頁17行~21行)
と記載しており,
引用発明のPVBフィ
ルム中間膜を,可塑剤によって可撓性の付与されたPVBフィルムであると理解した上で,
反論を行っているから,
引用発明のPVBフィルム中間膜を
「可塑剤によっ
て可撓性の付与された『PVBフィルム』の意味」であるとの認定に基づく拒絶の理由に対する反論の機会が与えられなかったとの主張には根拠がない。(2)

本件拒絶理由通知及び審決は,
引用発明における中間膜は,
「PVBフィル

ム中間膜」として認定しているのであって,当該中間膜が,可塑剤を含まず「PVB」の樹脂成分のみからなるとか,あるいは,可塑剤を含むものであるとかの,具体的な中間膜の組成についての認定はしていない。
本件拒絶理由通知には,
「3

本願発明1の進歩性について(その1)
」の項の相

違点1において,
「本願発明1は,
・・・に対し,引用発明1の中間膜は,
『PVB』
である点。(11頁32行~12頁9行)と記載し,同項の相違点1の検討におい」
て,
「引用発明1において,
・・・PVB(ポリビニルブチラール)に代えて,引用
例2に記載された,
・・・を,合わせガラスの接着剤として使用し,中間膜とするこ
とは,
当業者が容易になし得る。

(12頁29行~13頁3行)
と記載しているが,
これらの記載は,引用発明のPVBフィルム中間膜が,樹脂添加剤を全く含まない「PVB」の樹脂成分のみからなることを具体的に認定するものではない。また,審決は,
「5

対比」の項において,相違点1を,
「第1の中間膜及び第2

の中間膜が,本願発明1では,
・・・に対し,引用発明1では,
『PVBフィルム』
である点。(10頁18行~32行)としており,本件拒絶理由通知における相違」
点1と若干表現ぶりが異なっているものの,
これは,
本件意見書の反論を踏まえて,
誤解が生じないような表現に変更しただけであって,引用発明の中間膜の組成の解釈を変更したわけではない。そして,審決の「
(4)請求人の主張について」の項に
おける「引用発明1の『PVBフィルム』は,
・・・技術常識を考慮して,可塑剤に
よって可撓性の付与された『PVBフィルム』の意味に解することができるものであるから,(14頁9行~12行)との記載も,単に,そのように解することもで」
きることを注意的に述べるものであり,審決における相違点1についての判断において,引用発明のPVBフィルムが,可塑剤を含むものであると新たに認定し直したものではない。
(3)

以上のとおりであるから,審判手続に違法はなく,取消事由2は理由がな
い。
第5

当裁判所の判断

1
本願発明の概要
(1)

本願明細書(甲5)には,以下の記載がある。

【技術分野】
【0001】
本発明は,ガラス板,中間膜,熱線反射フィルム,中間膜,ガラス板がこの順に積層されてなる合わせガラスであって,特定の材料からなる中間膜を使用した,耐湿性及び耐久性に優れる合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
熱線反射機能を有する合わせガラスは,熱線の入射を防ぎ,夏場の冷房効果を高め,省エネルギー化にも効果があるため,自動車の窓ガラスや建築物の窓ガラス等として有用である(特許文献1~3)

【0003】
熱線反射機能を有する合わせガラスとしては,熱線反射膜をガラスに積層した構造のものと,熱線反射膜を積層した透明フィルムをガラス板間に挟み込んだ構造のものがある。後者の合わせガラスは,熱線反射膜を積層した透明フィルムが連続生産できる点で量産性に優れ,工業的に有利である。
しかしながら,従来の熱線反射膜を積層した透明フィルムを挟み込んだ構造の合わせガラスは,自動車用安全ガラスに要求される,温度50℃,湿度95%RHの環境下での耐久性試験を行うと,変色や合わせガラス端部から熱線反射膜を積層した透明フィルムの白化等が生じ,耐久性に劣るものであった。
【0004】
この問題を解決するために,特許文献3には,合わせガラスの端部全体をシール材で包み込んでなる合わせガラスが提案されている。
しかし,この文献に記載の合わせガラスは,フレームに固定する窓には適用可能であるが,自動車窓のようにガラス板自体が開閉する場合は,シール材の厚さが十分でなく,防湿効果が得難い場合があった。
【0005】
また,特許文献4には,ガラスの端から熱線反射膜の端を後退させて蒸着し,ガラス端部に膜無し領域を設けたガラスを使用する熱線反射合わせガラスが,特許文献5には,熱線反射膜を積層したフィルムの端が,ガラス板の端から中央側に後退して,ガラス端部に熱線反射膜を積層したフィルムの無い領域を設けた合わせガラスが,それぞれ開示されている。
しかし,これらの文献に記載の合わせガラスは,合わせガラスの貼り合わせに,ポリビニルブチラール膜,
エチレン・酢酸ビニル共重合体膜,
ポリウレタン膜等の,
吸湿性や透湿度の高い中間膜を使用するものであるため,より厳しい高温高湿環境下やより長期間の使用において,ガラスの端部から水分が浸透し,周辺部分に白化が生じ易く,耐久性が必ずしも十分なものとは言えなかった。
【0006】
一方,特許文献6には,特定のブロック共重合体水素化物にアルコキシシリル基が導入された変性ブロック共重合体水素化物からなる中間膜を使用した合わせガラスが提案されている。そこでは,中間膜は,耐熱性,低吸湿性等に優れ,高温高湿環境に暴露された後でも,
ガラスとの強固な接着性を維持することができることや,
熱線反射ガラスを使用できることが記載されている。
しかしながら,この文献には,熱線反射膜を積層したフィルムの封入やその方法は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭56-32352号公報
【特許文献2】特開昭63-134232号公報
【特許文献3】特開平7-157344号公報
【特許文献4】特開2000-7389号公報
【特許文献5】WO2009/087869号パンフレット(US2010/0285280

A1)

【特許文献6】WO2013/176258号パンフレット(US2015/0104654A1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は,かかる従来技術の実情に鑑みてなされたものであり,従来の熱線反射機能を有する合わせガラスの問題点,即ち,耐湿性及び耐久性の問題を解決し,実用面においても優れた特性を有する合わせガラスを提供することを目的とする。【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは,上記目的を達成するために鋭意検討した結果,第1のガラス板,第1の中間膜,熱線反射膜を積層した透明フィルム,第2の中間膜,及び第2のガラス板の順に積層してなる合わせガラスであって,前記第1及び第2の中間膜として,特定のブロック共重合体水素化物[D]にアルコキシシリル基が導入された変性ブロック共重合体水素化物
[E]
から形成されたものを使用した合わせガラスは,
優れた熱線反射機能を有し,かつ,耐湿性及び耐久性に優れることを見出し,本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば,優れた熱線反射機能を有し,かつ,耐湿性及び耐久性に優れた合わせガラスが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の合わせガラスは,第1のガラス板,第1の中間膜,熱線反射膜を積層した透明フィルム,第2の中間膜,及び第2のガラス板の順に積層してなる合わせガラスであって,前記第1及び第2の中間膜が,特定の変性ブロック共重合体水素化物[E]から形成されたものであることを特徴とする。
【0014】
1.変性ブロック共重合体水素化物[E]
本発明に用いる変性ブロック共重合体水素化物[E]は,前駆体であるブロック共重合体水素化物[D]に,アルコキシリル基が導入されたものである。ブロック共重合体水素化物[D]は,その前駆体であるブロック共重合体[C]の全不飽和結合の90%以上を水素化して得られたものである。
また,ブロック共重合体[C]は,ブロック共重合体水素化物[D]の前駆体であり,少なくとも2つの重合体ブロック[A]と少なくとも1つの重合体ブロック[B]を含有する高分子である。
【0015】
(重合体ブロック[A]

重合体ブロック[A]は,芳香族ビニル化合物由来の構造単位を主成分とする重合体ブロックである。
重合体ブロック[A]中の,芳香族ビニル化合物由来の構造単位の含有量は,通常90重量%以上,好ましくは95重量%以上,より好ましくは99重量%以上である。
重合体ブロック[A]中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位の含有量が少な過ぎると,第1及び/又は第2の中間膜の耐熱性が低下するおそれがある。重合体ブロック[A]は,芳香族ビニル化合物由来の構造単位以外の成分を含有していてもよい。他の成分としては,鎖状共役ジエン由来の構造単位及び/又はその他のビニル化合物由来の構造単位が挙げられる。その含有量は,重合体ブロック[A]に対し,通常10重量%以下,好ましくは5重量%以下,より好ましくは1重量%以下である。
ブロック共重合体[C]に含まれる複数の重合体ブロック[A]同士は,上記の範囲を満足するものであれば,互いに同一であっても,相異なっていても良い。【0016】
(重合体ブロック[B]

重合体ブロック[B]は,鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位を主成分とする重合体ブロックである。
重合体ブロック[B]中の,鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位の含有量は,通常70重量%以上,好ましくは80重量%以上,より好ましくは90重量%以上である。重合体ブロック[B]中の,鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位の含有量が上記範囲にあると,第1及び/又は第2の中間膜に柔軟性が付与されるので好ましい。
【0017】
重合体ブロック[B]は,鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位以外の成分を含有していてもよい。他の成分としては,芳香族ビニル化合物由来の構造単位及び/又はその他のビニル化合物由来の構造単位が挙げられる。その含有量は,重合体ブロック[B]に対して,通常30重量%以下,好ましくは20重量%以下,より好ましくは10重量%以下である。重合体ブロック[B]中の,芳香族ビニル化合物由来の構造単位の含有量があまりに多いと,第1及び/又は第2の中間膜の低温下での柔軟性が低下するおそれがある。
ブロック共重合体[C]
が重合体ブロック[B]を複数有する場合,重合体ブロッ
ク[B]同士は,互いに同一であっても,相異なっていても良い。【0021】
(ブロック共重合体[C]

ブロック共重合体[C]は,ブロック共重合体水素化物[D]の前駆体であり,少なくとも2つの重合体ブロック[A]と少なくとも1つの重合体ブロック[B]を含有する高分子である。
ブロック共重合体[C]中の重合体ブロック[A]の数は,通常5個以下,好ましくは4個以下,より好ましくは3個以下である。
【0024】
また,ブロック共重合体[C]中の全重合体ブロック[A]が,ブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし,全重合体ブロック[B]が,ブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに,
wAとwBとの比
(wA:wB)
は,
30:70~60:40,好ましくは35:65~55:45,より好ましくは40:60~50:50である。wAが高過ぎる場合は,本発明に係る第1及び/又は第2の中間膜の耐熱性が高くなるが,柔軟性が低く,低温熱衝撃でガラスが割れ易くなる。一方,wAが低過ぎる場合は,第1及び/又は第2の中間膜の耐熱性が低下する傾向にある。
【0033】
ブロック共重合体水素化物[D]へのアルコキシシリル基の導入量は,通常,ブロック共重合体水素化物[D]100重量部に対し,0.1~10重量部,好ましくは0.2~5重量部,より好ましくは0.3~3重量部である。アルコキシシリル基の導入量が多過ぎると,得られる変性ブロック共重合体水素化物[E]を所望の形状に溶融成形する前に微量の水分等で分解されたアルコキシシリル基同士の架橋が進み,ゲル化したり,溶融時の流動性が低下して成形性が低下したりする等の問題が生じ易くなる。また,アルコキシシリル基の導入量が少な過ぎると,前記中間膜をガラス板と接着するのに十分な接着力が得られないという不具合が生じ易くなる。アルコキシシリル基が導入されたことは,IRスペクトルで確認することができる。また,その導入量は,1H-NMRスペクトルにて算出することができる。【0052】
2.

第1及び第2の中間膜

第1及び第2の中間膜は,前記の変性ブロック共重合体水素化物[E]をシート状に成形したものであり,第1のガラス板と第2のガラス板を貼り合わせるために用いられる。第1の中間膜と第2の中間膜は,前記の変性ブロック共重合体水素化物
[E]
から形成されたものであれば,
互いに同一であっても,
相異なるものであっ
てもよい。
【0053】
第1及び第2の中間膜を成形する方法としては,特に限定されず,公知の,溶融押出し成形法,インフレーション成形法,カレンダー成形法等が適用できる。【0054】
第1及び第2の中間膜は,前記の変性ブロック共重合体水素化物[E]から形成されたものであって,熱架橋性を付与するための有機過酸化物や架橋助剤の配合を必要としないため,溶融成形温度の選択領域が広い。例えば,溶融押出し成形法により,
第1及び第2の中間膜を形成する場合は,
樹脂温度は,
通常170~230℃,
好ましくは180~220℃,より好ましくは190~210℃の範囲で適宜選択される。樹脂温度が低過ぎる場合は,流動性が悪化し,第1及び第2の中間膜にゆず肌やダイライン等の不良を生じ易く,また,第1及び第2の中間膜の押出し速度が上げられず,工業的に不利となる。樹脂温度が高過ぎる場合は,第1及び第2の中間膜のガラスヘの接着性が不良となったり,第1及び第2の中間膜の貯蔵安定性が低下して,中間膜を常温常湿環境下で長期間貯蔵した後のガラスに対する接着性が低下したりする等の不具合を生じ易くなる。
【0055】
第1及び第2の中間膜の厚みは,特に制限されないが,通常0.1~5mm,好ましくは0.2~2mm,より好ましくは0.3~1mmの範囲である。第1の中間膜と第2の中間膜の厚みは,同一であっても相異なっていてもよい。第1及び第2の中間膜の厚みが0.1mmよりも小さい場合,後述するように,第1及び第2のガラス板よりも小さい面積を有する,熱線反射膜を積層した透明フィルムを挟んでガラス板の貼り合わせを行ったときに,前記熱線反射膜を積層した透明フィルムの無い合わせガラス端部で厚み差を生じ,ガラスが割れるおそれがある。また,第1及び第2の中間膜の厚みが5mmよりも大きい場合,合わせガラス全体での光線透過率が低下したり,変性ブロック共重合体水素化物[E]の使用量が多くなり経済性が低下したりするおそれがある。
【0060】
3.熱線反射膜を積層した透明フィルム
本発明に用いる熱線反射膜を積層した透明フィルムは,波長550nmの光線透過率が50%以上,好ましくは60%以上,より好ましくは70%以上のフィルムである。
【0061】
前記熱線反射膜を積層した透明フィルムは,例えば,基材となる透明な樹脂フィルム上に,金属酸化物層と金属層とを交互に積層した熱線反射膜や,金属酸化物等からなる誘電体の高屈折率層と低屈折率層を交互に多層に積層した熱線反射膜等が形成されたものである。熱線反射膜の表面,すなわち樹脂フィルムと接していない面には,例えば保護層等の別の機能を有する層が形成されていてもよい。【0062】
樹脂フィルムとしては,透明(波長550nmの光線透過率が50%以上,好ましくは60%以上,
より好ましくは70%以上)
なものであれば特に限定されない。
例えば,ポリエチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂;ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂;シクロオレフィンポリマー;ポリカーボネート;ポリエーテルスルフォン;ポリアリレート;ナイロン;等の合成樹脂からなるフィルムが使用できる。これらの中でも,透明性,強度,経済性等の観点から,ポリエステル樹脂からなるフィルムが好ましく,ポリエチレンテレフタレートからなるフィルムが特に好ましい。
樹脂フィルムの厚みは,特に限定されず,通常10~300μm,好ましくは20~200μm,より好ましくは40~100μmである。
【0063】
熱線反射膜としては,Au,Ag,Cu,Al,Pd,Pt,Sn,In,Zn,Ti,Cd,Fe,Co,Cr,Ni等の金属からなる金属膜;これらの金属の2種以上からなる合金からなる合金膜;TiO2,Nb2O5,Ta2O5,SiO2,Al2O3,ZrO2,MgF2等からなる誘電体層を多層に積層してなる多層膜;等を好適に用いることができる。
誘電体膜を多層に積層してなる多層膜
(赤外線反射膜)
は,電磁波を透過するため,自動車等の車両において,車内の通信機器の通信機能を損なうことなく使用可能であり,特に好ましい。
【0064】
また本発明においては,
熱線反射膜を積層した透明フィルムとして,
熱線反射フィ
ルム,遮熱フィルム,赤外線反射フィルム,赤外線カットフィルム等として一般的に市販されているフィルムを使用することもできる。
【0065】
4.

合わせガラス

本発明の合わせガラスは,少なくとも,第1のガラス板,第1の中間膜,熱線反射膜を積層した透明フィルム,第2の中間膜,及び第2のガラス板の順に積層してなる合わせガラスであって,前記第1及び第2の中間膜が,前記変性ブロック共重合体水素化物[E]から形成されたものである。すなわち,本発明の合わせガラスは,変性ブロック共重合体水素化物[E]を,第1のガラスと熱線反射膜を積層した透明フィルム,熱線反射膜を積層した透明フィルムと第2のガラスとを強固に接着させて一体化してなるものである。
【0066】
本発明の合わせガラスにおいて,
用いる第1のガラス板と第2のガラス板同士は,
厚みや材質等が互いに同一であっても,相異なっていてもよく,透明導電膜や赤外線反射膜等が施されたものであってもよい。
【0067】
使用するガラス板の厚みは特に限定されないが,通常0.5~10mm程度である。厚みが0.05~0.4mm程度の極薄ガラス板を使用することもできる。例えば,厚み5mmの強化ガラス板(第1のガラス板)/第1の中間膜/熱線反射膜を積層した透明フィルム/第2の中間膜/厚み0.2mmの薄膜ガラス板(第2のガラス板)のように,異なる厚みのガラス板を使用することもできる。変性ブロック共重合体水素化物[E]は,-50℃程度の低温領域から,+120℃程度の高温領域まで幅広い温度帯域で柔軟性を維持するため,熱膨張係数の異なるガラス板を貼り合わせることもでき,急激な温度変化によってもガラスの割れを低減することができる。
【0068】
使用するガラス板の材質は特に限定されず,例えば,アルミノシリケート酸ガラス,アルミノホウケイ酸ガラス,ウランガラス,カリガラス,ケイ酸ガラス,結晶化ガラス,ゲルマニウムガラス,石英ガラス,ソーダガラス,鉛ガラス,バリウム瑚珪酸ガラス,瑚珪酸ガラス等が挙げられる。
【0069】
合わせガラスを製造するには,少なくとも,第1のガラス板,第1の中間膜,熱線反射膜を積層した透明フィルム,
第2の中間膜,
第2のガラス板をこの順に重ね,
真空ラミネータを用いて加熱減圧下で接着させる方法や,減圧可能な耐熱性のゴム袋に入れて脱気後,オートクレーブを使用して,加熱加圧下で接着させる方法等が適用できる。
【0070】
本発明の合わせガラスは,
吸湿性及び透湿性が小さく,
接着性に優れた変性ブロッ
ク共重合体水素化物[E]からなる中間膜(第1及び第2の中間膜)を使用することを特徴としている。従って,高温高湿度環境下で使用した場合であっても,第1及び第2の中間膜に挟み込まれた熱線反射膜を積層した透明フィルムが白化する等の不具合が発生することが少ない。
【0071】
本発明の合わせガラスにおいては,高温高湿度環境下で使用した場合にも,より効果的に不具合の発生を低減するために,下記のa~eの方策を講じることが好ましい。
a.熱線反射膜を積層した透明フィルムとして,第1及び第2のガラス板の面積より小さい面積を有するものを用いる。本発明の合わせガラスは,通常,長方形又は正方形の形状を有する。この場合,熱線反射膜を積層した透明フィルムは,第1及び第2のガラス板の一方向及びこれ直交する方向(縦方向及び横方向)のいずれの方向においても,第1及び第2のガラス板よりも小さいものであることが好ましい。例えば,第1及び第2のガラス板として,300mm×300mmのものを使用する場合,熱線反射膜を積層した透明フィルムとして,294mm×294mmの大きさのものを使用する。第1及び第2のガラス板の面積に対する,熱線反射膜を積層した透明フィルムの面積の割合は,好ましくは90%~100%,より好ましくは95~100%,さらに好ましくは95~99%である。
【0072】
b.熱線反射膜を積層した透明フィルムとして,第1及び第2の中間膜の面積より小さい面積を有するものを用いる。本発明の合わせガラスは,通常,長方形又は正方形の形状を有する。この場合,熱線反射膜を積層した透明フィルムは,第1及び第2の中間膜の一方向及びこれ直交する方向(縦方向及び横方向)のいずれの方向においても,
第1及び第2の中間膜よりも小さいものであることが好ましい。
例えば,
第1及び第2の中間膜として,300mm×300mmのものを使用する場合,熱線反射膜を積層した透明フィルムとして,194mm×294mmの大きさのものを使用する。
第1及び第2の中間膜の面積に対する,
熱線反射膜を積層した透明フィ
ルムの面積の割合は,
好ましくは90%~100%,
より好ましくは95~100%,
さらに好ましくは95~99%である。
【0073】
c.熱線反射膜を積層した透明フィルムを,該透明フィルムの端が,第1及び第2のガラス板の端に対して全周囲に亘って2mm以上,
好ましくは2mm~10mm,
より好ましくは2mm~5mm離れるように配置する。
例えば,大きさが300mm×300mmの,第1及び第2のガラス板を用いる場合,
大きさが294mm×294mmの,
熱線反射膜を積層した透明フィルムを,
前記第1及び第2のガラス板の端からともに3mmの距離を離して,第1及び第2のガラス板の中央に配置する。
【0074】
d.熱線反射膜を積層した透明フィルムを,該透明フィルムの端が,第1及び第2の中間膜の端に対して全周囲に亘って2mm以上,好ましくは2mm~10mm,より好ましくは2mm~5mm離れるように配置する。
例えば,大きさが300mm×300mmの,第1及び第2の中間膜を用いる場合,大きさが294mm×294mmの,熱線反射膜を積層した透明フィルムを,前記第1及び第2の中間膜の端からともに3mmの距離を離して,第1及び第2の中間膜の中央に配置する。
【0075】
e.熱線反射膜を積層した透明フィルムが,第1及び第2の中間膜に包埋された状態とする。ここで,
「包埋」とは,
「熱線反射膜がガラスや外気に接することなく,
第1及び第2の中間膜に埋め込まれた状態をいう。この場合,端部の第1の中間膜と第2の中間膜の界面も接着一体化している。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明により提供される熱線反射機能を有する合わせガラスは,優れた耐湿性,耐熱性を有しており,実用面において有用性の高いものである。
本発明によれば,特定の変性ブロック共重合体水素化物[E]からなる中間膜を使用することにより,量産性に優位な熱線反射膜を積層した透明フィルムをガラス板間に挟み込んだ構造の合わせガラスが製造可能である。
(2)

本願発明の内容

前記第2の2の本願の請求項1及び上記(1)の記載からすると,本願発明は以下のような内容のものであると認められる。

技術分野

本願発明は,ガラス板,中間膜,熱線反射フィルム,中間膜,ガラス板がこの順に積層されてなる合わせガラスであって,特定の材料からなる中間膜を使用した,耐湿性及び耐久性に優れる合わせガラスに関するものである(
【0001】。


課題

熱線反射機能を有する合わせガラスは,熱線の入射を防ぎ,夏場の冷房効果を高め,省エネルギー化にも効果があるため,自動車の窓ガラスや建築物の窓ガラス等として有用なものであるところ,そのうち,熱線反射膜を積層した透明フィルムをガラス板間に挟み込んだ構造のものは,量産性に優れ,工業的に有利である(【00
02】【0003】。


しかし,従来の熱線反射膜を積層した透明フィルムを挟み込んだ構造の合わせガラスは,自動車用安全ガラスに要求される,温度50℃,湿度95%RHの環境下での耐久性試験を行うと,変色や合わせガラス端部から熱線反射膜を積層した透明フィルムの白化等が生じ,耐久性に劣るものであった(
【0003】。

この問題を解決するために,①合わせガラスの端部全体をシール材で包み込んでなる合わせガラス,②ガラスの端から熱線反射膜の端を後退させて蒸着し,ガラス端部に膜無し領域を設けたガラスを使用する熱線反射合わせガラス,③熱線反射膜を積層したフィルムの端が,ガラス板の端から中央側に後退して,ガラス端部に熱線反射膜を積層したフィルムの無い領域を設けた合わせガラスが提案されていたが,①について自動車窓のようにガラス板自体が開閉する場合は,シール材の厚さが十分でなく,防湿効果が得難い,②,③については,合わせガラスの貼り合わせに,ポリビニルブチラール膜,
エチレン・酢酸ビニル共重合体膜,
ポリウレタン膜等の,
吸湿性や透湿度の高い中間膜を使用するものであるため,より厳しい高温高湿環境下やより長期間の使用において,ガラスの端部から水分が浸透し,周辺部分に白化が生じ易く,耐久性が十分ではなかった(
【0003】~【0005】。

また,特許文献6(引用文献2)には,特定のブロック共重合体水素化物にアルコキシシリル基が導入された変性ブロック共重合体水素化物からなる中間膜を使用した合わせガラスが提案されているが,この文献には,熱線反射膜を積層したフィルムの封入やその方法は記載されていない(
【0006】。

本願発明は,このような従来技術の実情に鑑みてなされたものであり,従来の熱線反射機能を有する合わせガラスの問題点である耐湿性及び耐久性の問題を解決し,実用面においても優れた特性を有する合わせガラスを提供することを目的とする(
【0008】。


課題解決手段

本願発明は,第1のガラス板,第1の中間膜,熱線反射膜を積層した透明フィルム,第2の中間膜及び第2のガラス板の順に積層してなる合わせガラスであって,上記第1及び第2の中間膜として,変性ブロック共重合体水素化物[E]から形成されたものを使用している(
【0009】。

上記変性ブロック共重合体水素化物[E]は,ブロック共重合体[C]の,全不飽和結合の90%以上を水素化したブロック共重合体水素化物[D]に,アルコキシシリル基が導入されたものであるところ,上記ブロック共重合体[C]は,芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする少なくとも二つの重合体ブロック[A]と,鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする少なくとも一つの重合体ブロック[B]とからなり,全重合体ブロック[A]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし,全重合体ブロック[B]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに,wAとwBとの比(wA:wB)が30:70~60:40となっているものである(【請求項1】,【0014】~【0016】,【0021】,【0024】)。
また,本願発明において,第1及び第2のガラス板,第1及び第2の中間膜及び熱線反射膜は,それぞれ,①熱線反射膜を積層した透明フィルムが,第1及び第2のガラス板の面積より小さい面積を有し,
②熱線反射膜を積層した透明フィルムが,
第1及び第2の中間膜の面積より小さい面積を有し,③熱線反射膜を積層した透明フィルムの端が,第1及び第2のガラス板の端に対して全周囲に亘って2mm以上離れて配置され,④熱線反射膜を積層した透明フィルムの端が,第1及び第2の中間膜の端に対して全周囲に亘って2mm以上10mm以下,
離れて配置されており,
⑤熱線反射膜を積層した透明フィルムが,第1及び第2の中間膜に包埋された状態となっている(【請求項1】,【0071】~【0075】)。

効果

特定の変性ブロック共重合体水素化物[E]からなる中間膜を使用することにより,量産性に優れ,かつ,熱線反射機能並びに耐湿性及び耐久性にも優れた合わせガラスが提供される(
【0012】【0125】。


2
引用発明

(1)引用文献1(甲1)には,次のとおりの記載がある。
技術分野
[0001]

本発明は,ガラス板,中間膜,透明なプラスチックフィルム,中間膜,ガ
ラス板をこの順に積層して作製される合せガラスに関し,特に自動車の窓に用いられる合わせガラスに関する。
背景技術
[0002]

プラスチックフィルム,特にポリエチレンテレフタレートフィルムを挟持
した2枚の中間膜を用いて,2枚のガラス板を積層したものが,熱線反射機能を持たせた合せガラスとして,知られている。
[0003]

通常,合せガラスは,オートクレーブを用いて,高温高圧処理され,ガラ
ス板とポリエステルフィルムが,中間膜により熱融着される。
[0004]

例えば,特許文献1では,薄膜がポリエステルフィルムに形成されてなる
熱線反射プラスチックフィルムを,2枚の中間膜で挟持した可撓性積層体を,2枚のガラス板の間に挟んで積層される,合せガラスが開示されている。[0005]

また,2枚の湾曲したガラス板の間にプラスチックフィルムを積層する場
合,プラスチックフィルムにシワが発生しやすく,特許文献2には,プラスチックフィルムの周辺部に切り込み部を形成したものが開示されている。特許文献1:特開昭56-32352号公報
特許文献2:特開平6-18856号公報
発明の開示
発明が解決しようとする課題
[0006]

自動車の窓ガラス,特に前面の窓ガラスに用いられる合わせガラスは,辺
の長さが1mから2m程度の大きさであり,
特許文献2に開示されている方法では,
切込みを大きくすると見栄えが悪く,小さくするとシワの発生を防ぐことが困難となる。
[0007]

本発明は,プラスチックフィルムを合わせガラスの中間膜の間に挿入して
なるプラスチックフィルム挿入合せガラスにおいて,プラスチックフィルムにシワの発生がなく,外観不良のないプラスチックフィルム挿入合せガラスの提供を課題とする。
課題を解決するための手段
[0008]

本発明の第1の見地は,
室外側ガラス板,
中間膜,
プラスチックフィルム,

中間膜,室内側ガラス板の順に積層してなるプラスチックフィルム挿入合せガラスであって,ガラス板が曲げ加工によって湾曲した形状であり,プラスチックフィルムに赤外線反射膜が形成されてなり,少なくとも一つの辺で,プラスチックフィルムのエッジが,ガラス板のエッジから5mm以上200mm以下の範囲で,ガラス板の中央側に離れていることである。
発明の効果
[0015]

2枚の中間膜で,プラスチックフィルムを挟持し,作製される合せガラス
において,プラスチックフィルムにシワのない,実用が可能な,プラスチックフィルム挿入合せガラスの提供を可能にする。
発明を実施するための最良の形態
[0016]

本発明のプラスチック挿入合せガラスは,図1,2に示すように,挿入す
るプラスチックフィルムのエッジ4が,プラスチック挿入合わせガラスのエッジ2と着色膜のエッジ3との間に位置するものである。
[0017]

車外側ガラス板10,
車内側ガラス板13には,
低コストで得られるフロー

ト法によるソーダライムガラスを曲げ加工して得られる湾曲したガラス板を用いるのが簡便である。
[0018]

湾曲したガラス板の形状は,フロート法で作成されたガラス板を軟化点以
上に加熱して,自重法やプレス法などで所定の湾曲形状に加工して得られる。[0019]

中間膜11,12には,ポリビニルブチラール(PVB)やエチレンビニ
ルアセテート
(EVA)
などのホットメルトタイプの接着剤が,
好適に用いられる。
[0020]

プラスチックフィルム14には,延伸法で作製されているものが好適であ
り,
ポリエチレンテレフタレート,
ポリエチレンナフタレート,
ポリカーボネート,
ポリメチルメタクリレート,
ポリエーテルスルフォン,
ナイロン,
ポリアリレート,
シクロオレフィンポリマーなどでなるプラスチックフィルムの中から選んで使用できる。
[0021]

特に2軸延伸法で製膜される結晶性のポリエチレンテレフタレートフィル
ム(PETフィルム)は,耐熱性にも優れていて広範囲の温度環境に使用することができ,また,透明性が高く,大量に生産されているために品質も安定しており,好適である。
[0023]

プラスチックフィルム14は,高温になると柔軟性が増大するため,中間膜11と中間膜12とで挟持して,合せガラスの製造過程において,オートクレーブにより高温高圧にして,中間膜11,12によって熱融着するとき,プラスチックフィルム14は伸縮して,車外側ガラス板10の湾曲形状とほとんど同じ形状となるが,車外側ガラス板10の曲率半径が小さいとシワが発生しやすくなり,シワがプラスチック挿入合わせガラスの周辺部に生じてしまう。
[0024]

従って,図1,2に示すように,プラスチックフィルムのエッジ4とプラ
スチック挿入合わせガラスのエッジ2とを一致させず,プラスチックフィルムのエッジ4がガラス面に位置するようにして,プラスチックフィルム14の面積をプラスチック挿入合わせガラス1よりも小さくし,
シワの発生を防ぐことが好ましい。
[0025]

このため,図3のプラスチックフィルム挿入ガラスのエッジ2からプラス
チックフィルムのエッジ4までの距離d1を5mm以上とする,ガラス板の面積よりも小さい面積のプラスチックフィルムを挿入することが望ましい。[0026]

さらに,
プラスチックフィルムのエッジ4に太陽光が当たると,
プラスチッ

クフィルムのエッジ4で光が散乱し,プラスチックフィルムのエッジ4が目立つだけでなく,運転に支障をきたす恐れがあるので,車外側に位置する車外側ガラス板10の合せ面に着色膜15を設けて,プラスチックフィルムのエッジ4に太陽光が当たらないようにすることが好ましい。
[0027]

すなわち,図3に示すように,プラスチックフィルム挿入ガラスのエッジ
2からプラスチックフィルムのエッジ4までの距離d1は,プラスチックフィルム挿入ガラスのエッジ2から着色膜のエッジ3までの距離d2よりも小さくすることが好ましい。
[0028]

また,プラスチックフィルムのエッジが中間膜11と中間膜12とで覆わ
れているため,プラスチックフィルムのエッジが,プラスチックフィルム挿入合わせガラスのエッジと同じで水分に晒されるような形状に比べ,水分による劣化を防止できる効果もある。
実施例
[0037]

実施例1

自動車用の前面窓に用いられるプラスチック挿入合わせガラスを,次のように作製した。
[0038]

車外側ガラス板10と車内側ガラス板13とを作製するため,窓のサイズ
よりも大きい面積のガラス板から,2枚のガラス板を,窓のサイズに合せて所定の形・サイズにガラスカッターで切り出し,端面を研磨処理した。この2枚のガラス板を洗浄,乾燥した後,車外側に位置するガラス板の合わせ面側(中間膜で接着される面側)に,黒色のセラミックペーストをスクリーン印刷し,乾燥した。[0039]

セラミックペーストをスクリーン印刷したガラス板ともう1枚のガラス板
とを重ね,2枚同時に曲げ加工炉中で加熱し,曲面形状のガラスに成型して,車外側ガラス板10,車内側ガラス板13に用いた。また,曲げ加工炉中での加熱で,スクリーン印刷されたセラミックペーストも焼成されて,着色膜15を,車外側ガラス板10に形成した。
[0040]

着色膜15の幅d2は,最小となる所では30mm,最大となる所では1
00mmとした。
[0041]

窓のサイズよりも大きい面積の,両面にアモルファスポリエステルによる
易接着層とシランカップリング層が施してある,厚さが100μmのPETフィルムから,曲げ加工前の車外側ガラス板10の平板形状(車外側ガラス板10を作製するために切り出したガラス板)とほとんど相似形なPETフィルムを,中央側に1cm縮小させたサイズに,NCカッターで切り出し,プラスチックフィルム14とした。
[0042]

プラスチックフィルム14を切り出す時には,プラスチックフィルム面に
対して,切断面が垂直方向ではなく,垂直方向から30°の傾斜角となるようにして切り出した。
[0043]

厚さ0.
36mmのPVBフィルムを2枚用い,
前記切り出したプラスチッ

クフィルム14を,この2枚のPVBフィルムで挟みこんだ。
[0044]

車外側ガラス板10と車内側ガラス板13との間に,前記PETフィルム
を挟持した2枚のPVBフィルムを挿入した。
[0045]

このPVBフィルムの挿入は,プラスチックフィルムのエッジ4が車外側
ガラス板10のエッジから10mmとなるようにした。
[0046]

重ねあわされた,車外側ガラス板10と車内側ガラス板とのエッジからは
み出したPVBフィルムをカッターで切り取った後,車外側ガラス板10と車内側ガラス板13との間を脱気し,さらに,オートクレーブによる加圧・加熱処理を行い,プラスチック挿入合わせガラス1を作製した。
[0047]

作製したプラスチック挿入合わせガラスは,挟みこんだPETフィルムの
シワもなく,またPETフィルムのエッジ4は黒色の着色膜に隠れて車外から見えず,自動車用の前面ガラスとして良好に使用できるものであった。[0048]

実施例2

厚さが50μmのPETフィルムの片面に,酸化亜鉛と銀を積層してなる赤外線反射膜が形成してなるPETフィルムから,車外側ガラス板10に形成された着色膜のエッジ3よりも11mm大きくなるような形で,すなわち,d2-d1=11mmとなるように,車外側ガラス板10の透視部(プラスチックフィルム挿入合わせガラスの透視部5)の形とほぼ相似形で,プラスチックフィルム14を切り出した他は,実施例1と同様にして,プラスチックフィルム挿入合わせガラス1を作製した。
[0049]

作製したプラスチック挿入合わせガラスは,近赤外線を反射する遮熱性機
能を持ち,挟みこんだPETフィルムのシワもなく,またPETフィルムのエッジ4は黒枠部に隠れて車外から見えず,自動車用の前面ガラスとして良好に使用できるものであった。
[0050]

実施例3

厚さが188μmのPETフィルムの片面に,シリカとチタニアによる誘電体9層膜からなる赤外線反射膜が形成してなるPETフィルムから,車外側ガラス板10に形成された着色膜のエッジ3よりも5mm大きくなるような形で,すなわち,d2-d1=5mmとなるように,
車外側ガラス板10の透視部
(プラスチックフィ
ルム挿入合わせガラスの透視部5)の形とほぼ相似形で,プラスチックフィルム14を切り出した他は,実施例1と同様にして,プラスチックフィルム挿入合わせガラス1を作製した。
[0051]

作製したプラスチック挿入合わせガラス1は,近赤外線を反射する遮熱性
機能を持ち,挟みこんだPETフィルムのシワもなく,またPETフィルムのエッジ4は黒枠部に隠れて車外から見えず,自動車用の前面ガラスとして良好に使用できるものであった。
図面の簡単な説明
[0054]

[図1]本発明のプラスチックフィルム挿入合わせガラスの概略平面図。[図2]図1のa-a´断面図。
[図3]本発明のプラスチックフィルム挿入合わせガラスの端部の概略断面図。
[図4]プラスチックフィルムの切断面の概略図。
[図5]プラスチックフィルムのエッジの位置合わせ用マークを設けた,車内側ガラスの平面図。
[図6]プラスチックフィルムのエッジとプラスチック挿入合わせガラスのエッジとを,コーナー部で一致させたときの,プラスチックフィルム挿入合わせガラスの平面図。

符号の説明
[0055]

1
プラスチックフィルム挿入合わせガラス

2
プラスチックフィルム挿入合わせガラスのエッジ

3
着色膜のエッジ

4
プラスチックフィルムのエッジ

5
プラスチックフィルム挿入合わせガラス透視部
10

車外側ガラス板

11,12

中間膜

13

車内側ガラス

14

プラスチックフィルム

15

着色膜

20

位置合わせ用マーク

21

プラスチックフィルムのエッジの所定位置

[図1]

[図2]
[図3]

(2)引用発明の内容
上記(1)の記載からすると,引用文献1には,前記第2の3(1)のとおりの引用発明が記載されていると認められる。
そして,本願発明と引用発明を対比すると,審決が認定したとおりの前記第2の3(2)記載の一致点及び相違点が認められる。
3
引用文献2
(1)引用文献2(甲2)には次のとおりの記載がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも1つの重合体ブロック[B]とからなり、全重合体ブロック[A]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、
全重合体ブロック
[B]
のブロッ
ク共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比(wA:wB)が30:70~60:40であるブロック共重合体[1]の、全不飽和結合の90%以上が水素化されたブロック共重合体水素化物[2]に、アルコキシシリル基が導入されたブロック共重合体水素化物[3]を含有する接着剤をガラス板間に介在させ、当該ガラス板を接着させて一体化してなることを特徴とする合わせガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,アルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物を含有する接着剤を,複数のガラスの間に介在させ,接着させて一体化してなる合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来,複数のガラスの間に樹脂などの中間膜を挟み,接着して得られる合わせガラスが知られている。このような合わせガラスは耐貫通性や耐熱衝撃性に優れるため,自動車ガラスや防犯ガラスなどとして広く用いられている。
これまで,このような合わせガラスの中間層の形成材料としては,ポリビニルブチラール系樹脂が最も一般的に用いられてきた。しかし,ポリビニルブチラール系樹脂は,(i)軟化点が比較的低いために,貼合わせた後に熱によりガラス板がずれたり,気泡が発生したりする場合がある,(ii)吸湿性が高いために,高湿度雰囲気下に長期間放置しておくと,周辺部から次第に白色化すると共にガラスとの接着力が低下する,という問題があった。また,(iii)ガラスとの接着力を制御するために,ガラス板を貼り合わせる前において,厳密な含水率管理が必要であるという問題もあった(非特許文献1)。
【0003】
これらの問題を解決するために,エチレン-酢酸ビニル共重合体に有機過酸化物を配合した熱硬化性樹脂を,2枚のガラス板間に介在させて一体化し,熱硬化性樹脂層を熱硬化させてなる合わせガラスや(特許文献1),酸変性ケン化エチレン-酢酸ビニル共重合体で貼り合わせてなる合わせガラス(特許文献2)が提案されている。
しかしながら,エチレン-酢酸ビニル共重合体を用いる合わせガラスは,耐衝撃性や耐貫通性が十分に満足するものではなかった。
【0004】
そこで,芳香族ビニル化合物の重合体からなる両端ブロックと共役ジエン系重合体からなる中間ブロックとから構成される三元ブロック共重合体に,有機過酸化物及びシランカップリング剤を配合した熱硬化性樹脂を用いる合わせガラスが提案されている(特許文献3)。
【0005】
本発明に関連して,少なくとも2つの重合体ブロック[A]と,鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする,少なくとも1つの重合体ブロック[B]とからなり,全重合体ブロック[A]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし,全重合体ブロック[B]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに,wAとwBとの比(wA:wB)が30:70~60:40であるブロック共重合体の,全不飽和結合の90%以上を水素化した,ブロック共重合体水素化物は,太陽電池素子用封止材として用いることができることが知られている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭57-196747号公報
【特許文献2】特開平4-198046号公報
【特許文献3】特開平9-030847号公報
【特許文献4】WO2011/096389号(US2013/0008506A1)
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】藤崎靖之,日化協月報,35(10),28(1982)【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は,取扱いの容易性,ガラスとの接着性,耐光性,耐熱性,透明性および低複屈折性に優れ,特に高温高湿下でも強固な接着力を維持する接着剤を使用した合わせガラス,及び,該接着剤を,合わせガラスの接着剤として使用する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らはさらに鋭意検討した結果,特定のブロック共重合体[1]の炭素-炭素不飽和結合を水素化して得られるブロック共重合体水素化物[2]と,エチレン性不飽和シラン化合物とを,過酸化物の存在下で反応させて得られるアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[3]を含有する接着剤が,ガラス同士の接着性,耐光性,耐熱性および光学特性に優れ,ガラス同士の接着力を制御するための特別な含水率管理等を要せず,取扱いが容易で,安定した接着性が得られることを見出した。そして,この接着剤を使用することにより,有機過酸化物を用いて硬化する工程を経なくても,良質な合わせガラスが得られることを見いだし,本発明を完成するに至った。
【0011】
かくして本発明によれば、下記(1)~(3)の合わせガラス、及び、(4)の合
わせガラスの接着剤として使用する方法、が提供される。
(1)芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも1つの重合体ブロック[B]とからなり、全重合体ブロック[A]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、全重合体ブロック[B]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに、
wAとwBとの比
(w
A:wB)が30:70~60:40であるブロック共重合体[1]の、全不飽和結合の90%以上が水素化されたブロック共重合体水素化物[2]に、アルコキシシリル基が導入されたブロック共重合体水素化物[3]を含有する接着剤をガラス板間に介在させ、当該ガラス板を接着させて一体化してなることを特徴とする合わせガラス。
【0012】
(2)
前記接着剤が、
前記ブロック共重合体水素化物
[3]
100重量部に対して、
ヒンダードアミン系光安定剤0.02~2.5重量部をさらに含有することを特徴とする、
(1)に記載の合わせガラス。
(3)
前記接着剤が、
前記ブロック共重合体水素化物
[3]
100重量部に対して、
紫外線吸収剤0.02~1重量部をさらに含有することを特徴とする、(1)に記載
の合わせガラス。
【0013】
(4)芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも1つの重合体ブロック[B]とからなり、全重合体ブロック[A]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、全重合体ブロック[B]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに、
wAとwBとの比
(w
A:wB)が30:70~60:40であるブロック共重合体[1]の、全不飽和結合の90%以上が水素化されたブロック共重合体水素化物[2]に、アルコキシシリル基が導入されたブロック共重合体水素化物[3]を、合わせガラスの接着剤として使用する方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明に用いるブロック共重合体水素化物[3]は,ガラス転移温度が高く耐熱性に優れた重合体ブロック[A]と,ガラス転移温度が低く柔軟性に優れた重合体ブロック[B]を有しているため,このものを含有する接着剤は,耐熱性,低温柔軟性,低吸湿性,透明性,低複屈折性,耐候性,および,ガラスや金属等との接着性に優れる。特に高温高湿環境に暴露された後でも,ガラスや金属等との強固な接着性を維持することができる。そのため,本発明の合わせガラスは耐久性に優れる。また,本発明に用いる接着剤は,ガラスとの貼り合せ前に含有水分量の調整等の特別な処理は必要とせず,長期間,常温常湿の環境下に保管しておいたものをそのまま使用することができ,保管や取り扱いが容易である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下,本発明を詳細に説明する。
1)合わせガラス
本発明の合わせガラスは,前記ブロック共重合体水素化物[3]を含有する接着剤を,ガラス板間に介在させ,当該ガラス板を接着させて一体化してなることを特徴とする。
【0016】
本発明に用いる接着剤は,少なくともブロック共重合体水素化物[3]を含有するものであれば,
ブロック共重合体水素化物[3]のみからなるものであっても,
ブロッ
ク共重合体水素化物[3]に後述する配合剤が添加されたものであってもよい(以下,
これらをまとめて「接着剤」ということがある。。接着剤中のブロック共重合体水)
素化物[3]の含有量は,接着剤全体に対して,通常60重量%以上,好ましくは80重量%以上,より好ましくは90重量%以上である。ブロック共重合体水素化物[3]の含有量が60重量%以上であることで,耐熱性,低温柔軟性,低吸湿性,透明性,低複屈折性,耐候性,および,ガラスや金属等との接着性に優れる接着剤となる。
【0017】
ブロック共重合体水素化物[3]は,芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする,少なくとも2つの重合体ブロック[A]と,鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする,少なくとも1つの重合体ブロック[B]とからなり,全重合体ブロック[A]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし,全重合体ブロック[B]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに,wAとwBとの比(wA:wB)が30:70~60:40であるブロック共重合体[1]の,全炭素-炭素不飽和結合の90%以上を水素化して得られるブロック共重合体水素化物[2]を,アルコキシシリル化することにより得られる。
【0018】
(1)ブロック共重合体[1]
前記ブロック共重合体水素化物[3]の前駆体であるブロック共重合体[1]は,少なくとも2つの重合体ブロック[A]と少なくとも1つの重合体ブロック[B]を含有する。
【0019】
ブロック共重合体[1]中の重合体ブロック[A]の数は,通常5個以下,好ましくは4個以下,より好ましくは3個以下である。
【0021】
重合体ブロック[A]は,芳香族ビニル化合物由来の構造単位を主成分とするものであり,重合体ブロック[A]中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位の含有量は,通常90重量%以上,好ましくは95重量%以上,より好ましくは99重量%以上である。重合体ブロック[A]中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位が少なすぎると,合わせガラスの耐熱性が低下するおそれがある。
複数の重合体ブロック
[A]上記の範囲を満足すれば互いに同一であっても,
は,
相異なっていても良い。
【0024】
重合体ブロック[B]は,鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位を主成分とするものであり,重合体ブロック[B]中の鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位の含有量は,通常90重量%以上,好ましくは95重量%以上,より好ましくは99重量%以上である。鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位が上記範囲にあると,本発明の合わせガラスの耐熱衝撃性,低温での接着性に優れる。また,重合体ブロック[B]中の鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位以外の成分としては,芳香族ビニル化合物由来の構造単位及び/又はその他のビニル化合物由来の構造単位を含むことができる。その含有量は,通常10重量%以下,好ましくは5重量%以下,より好ましくは1重量%以下である。重合体ブロック[B]中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位の含有量が増加すると,接着樹脂層の低温での柔軟性が低下し,合わせガラスの耐熱衝撃性が低下するおそれがある。
重合体ブロック[B]が複数有る場合には,重合体ブロック[B]は,上記の範囲を満足すれば互いに同一であっても,相異なっていても良い。
【0027】
ブロック共重合体中[1]の,全重合体ブロック[A]がブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし,全重合体ブロック[B]がブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに,wAとwBとの比(wA:wB)は,30:70~60:40,好ましくは35:65~55:45,より好ましくは40:60~50:50である。wAが高過ぎる場合は,本発明で使用するブロック共重合体水素化物[3]の耐熱性は高くなるが,柔軟性が低く,合わせガラスの耐熱衝撃性が低下するおそれがある。一方,wAが低過ぎる場合は,ブロック共重合体水素化物[3]の耐熱性が劣るおそれがある。
【0036】
(2)ブロック共重合体水素化物[2]
ブロック共重合体水素化物[2]は,上記のブロック共重合体[1]の主鎖及び側鎖の炭素-炭素不飽和結合,並びに芳香環の炭素-炭素不飽和結合を水素化して得られる高分子である。その水素化率は通常90%以上,好ましくは97%以上,より好ましくは99%以上である。水素化率が高いほど,透明性,耐候性,耐熱性が良好である。
特に,主鎖及び側鎖の炭素-炭素不飽和結合の水素化率を高めることにより,耐光性,耐酸化性が高くなるという効果が得られる。主鎖及び側鎖の炭素-炭素不飽和結合の水素化率は,好ましくは95%以上,より好ましくは99%以上である。【0048】
(3)ブロック共重合体水素化物[3]
本発明に用いるブロック共重合体水素化物[3]は,上記ブロック共重合体水素化物[2]に,アルコキシシリル基が導入されたものである。アルコキシシリル基は,上記ブロック共重合体水素化物[2]に直接結合していても,アルキレン基等の2価の有機基を介して結合していても良い。
【0049】
ブロック共重合体水素化物
[2]
にアルコキシシリル基を導入する方法としては,
特に限定されないが,例えば,ブロック共重合体水素化物[2]とエチレン性不飽和シラン化合物とを過酸化物の存在下で反応させる方法が挙げられる。【0051】
エチレン性不飽和シラン化合物の使用量は,ブロック共重合体水素化物[2]100重量部に対して,通常0.1~10重量部,好ましくは0.2~5重量部,より好ましくは0.3~3重量部である。
【0058】
上記のようにして得られたブロック共重合体水素化物[3]は,ガラスや金属との接着性が改善されたものである。従って,このものを合わせガラスの接着材として使用した場合,ガラス板,複数の接着剤層の間に封入する強化用金網や金属線等との接着性が高くなる。
それゆえ,
合わせガラスの信頼性評価で通常行われる85℃,
85%RHの高温高湿環境に2000時間暴露された後も,十分な接着力を維持することができる。
【0059】
(4)配合剤
ガラス板間に接着成分を介在させて,複数のガラス板を接着させて一体化させて合わせガラスを製造する際においては,接着剤の性能を向上させるために,ブロック共重合体水素化物[3]に加えて配合剤をさらに含有させることができる。【0060】
用いる配合剤としては,樹脂特性を向上させるためのブロック共重合体水素化物[3]以外の重合体,耐候性や耐熱性等を向上させるための光安定剤,紫外線吸収剤及び酸化防止剤,ペレットのブロッキングを防止して,成形加工時の取扱い作業性を良くするための滑剤滑剤等が挙げられる。これらの配合剤は1種単独でも,2種以上併用してもよい。
【0061】
[ブロック共重合体水素化物[3]以外の重合体]
ブロック共重合体水素化物[3]以外の重合体は、接着剤の樹脂特性を向上させるために配合される。ブロック共重合体水素化物[3]以外の重合体としては、ブロック共重合体水素化物[3]の前駆体であるブロック共重合体水素化物;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体等のオレフィン系重合体;ポリイソブチレン、イソブチレン・イソプレン共重合体水素化物等のイソブチレン系重合体;1,3-ペンタジエン系石油樹脂、シクロペンタジエン系石油樹脂、スチレン・インデン系石油樹脂等の石油樹脂及びその水素化物;等が挙げられる。
これらの重合体の配合量は、ブロック共重合体水素化物[3]100重量部に対して、通常40重量部以下で、樹脂特性を向上させる目的に合わせ、配合量は適宜選択される。
【0062】
[光安定剤]
光安定剤は、接着剤の耐光性を向上させるために配合される。用いる光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤が好ましく、そのような化合物としては、構造中に3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル基、2,2,6,6-テトラメチルピペリジル基、あるいは、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル基等を有する化合物が挙げられる。
【0063】
これらの中でも、耐候性に優れる点で、ホルムアルデヒド重縮合物と、{2,4,
6-トリクロロ-1,3,5-トリアジン・
[N,N’-ビス(2,2,6,6-テ
トラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジイルジアミン]・モルフォ
リン重合物}と、ギ酸との反応生成物、
N,
N’-ビス
(2,
2,
6,
6-テトラメチル-4-N-メチルピペリジル)
-N,
N’-ジホルミル-アルキレンジアミン類、
N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-N,N’-ジホルミルアルキレンジアミン類、
N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-N,N’-ビスアルキレン脂肪酸アミド類、
ポリ[
{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミ{
ノ}
ヘキサメチレン(2,

2,
6,
6-テトラメチル-4-ピペリジル)
イミノ}、

N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-1,6-ヘキサンジアミンと、2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジンとの重合体と、N-ブチル-1-ブタンアミンと、N-ブチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジンアミンとの反応生成物が好ましく、
N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-N,N’-ジホルミルアルキレンジアミン類、
N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-1,6-ヘキサンジアミンと、2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジンとの重合体と、N-ブチル-1-ブタンアミンと、N-ブチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジンアミンとの反応生成物が特に好ましい。
【0064】
ヒンダードアミン系耐光安定剤の配合量は、ブロック共重合体水素化物[3]100重量部に対して、通常0.01~5重量部、好ましくは0.02~2.5重量部、より好ましくは0.04~1.0重量部である。ヒンダードアミン系耐光安定剤の量がこれより少ない場合は、合わせガラスの接着層の耐候性が不十分な場合があり、これより多い場合は、ブロック共重合体水素化物[3]をシート状に成形する溶融成形加工時に、押出し機のTダイや冷却ロールの汚れが酷かったりして加工性に劣る場合がある。
【0065】
[紫外線吸収剤]
紫外線吸収剤は、接着剤の耐光性を更に向上させるために配合される。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0066】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,
2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸3水和物、2-ヒドロキシ-4-オクチロキシベンゾフェノン、4-ドデカロキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンジルオキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン等;サリチル酸系紫外線吸収剤としては、フェニルサルチレート、4-t-ブチルフェニル-2-ヒドロキシベンゾエート、フェニル-2-ヒドロキシベンゾエート、2,4-ジ-t-ブチルフェニル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、
ヘキサデシル-3,
5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート等;
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、
2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)2H-ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、
2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、
2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、
2-
(3,
5-ジクミル-2-ヒドロキシフェニル)
-2H-ベンゾトリアゾール、
5-クロロ-2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、
2-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、
2-
(2-ヒドロキシ-5-t-オクチルフェニル)
-2H-ベンゾトリアゾール、
2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-6-(3,4,5,6-テトラヒドロフタリミジルメチル)フェノール、
2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-[(2
H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]
]等が挙げられる。
【0067】
紫外線吸収剤の配合量は、ブロック共重合体水素化物[3]100重量部に対して、
通常0.01~2重量部、好ましくは0.02~1重量部、より好ましくは0.04~0.5重量部である。
【0068】
[酸化防止剤]
酸化防止剤は、接着剤の熱安定性をより向上させるために配合される。用いる酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、フェノ-ル系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等が挙げられ、着色がより少ないリン系酸化防止剤が好ましい。【0069】
酸化防止剤の具体例として、リン系酸化防止剤としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、10-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド等のモノホスファイト系化合物;
4,
4’-ブチリデン-ビス
(3-メチル-6-t-ブチルフェニル-ジ-トリデシ
ルホスファイト)4,

4’-イソプロピリデン-ビス
(フェニル-ジ-アルキル
(C
12~C15)ホスファイト)等のジホスファイト系化合物;
6-
[3-
(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)
プロポキシ]
-2,4,8,10-テトラキス-t-ブチルジベンゾ[d,f][1.3.2]ジ
オキサフォスフェピン、
6-
[3-
(3,
5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェ
ニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラキス-t-ブチルジベンゾ[d,f]
[1.3.2]ジオキサフォスフェピン等の化合物;等が挙げられる。【0070】
フェノ-ル系酸化防止剤としては、
ペンタエリスリチル・テトラキス
[3-
(3,
5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオ-
ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9-ビス{2-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)
プロオニルオキシ]
-1,
1-ジメチルエチル}
-2,
4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン等が挙げられる。
【0071】
硫黄系酸化防止剤としては、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’-チオジプロピピオネート、ジステアリル-3,3’-チオジプロピオネート、ラウリルステアリル-3,3’-チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール-テトラキス-(β-ラウリル-チオプロピオネート)
、3,9-ビス(2
-ドデシルチオエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。
【0072】
酸化防止剤の配合量は、
ブロック共重合体水素化物
[3]
100重量部に対して、
通常0.01~2重量部、好ましくは0.05~1重量部、より好ましくは0.1~0.5重量部である。酸化防止剤は、ヒンダードアミン系耐光安定剤と併用することにより、更に耐光性を改善することもできるが、上記範囲を超えて過剰に添加しても、更なる改善は認められない。
【0085】
(6)合わせガラス
本発明の合わせガラスは,接着剤をガラス板間に介在させ,該ブロック共重合体水素化物[3]を接着させて一体化してなるものである。
【0089】
また,合わせガラスに装飾性をもたせたり,電磁波や放射線を遮蔽したり,赤外線や熱線を遮蔽する機能を持たせて,付加価値を高めることができる。例えば,ブロック共重合体水素化物[3]からなる複数のシートを2枚のガラス板間に介在させ,その複数のシートの間に,装飾のために着色されたり,特定形状に加工された樹脂フィルム,布,繊維,和紙,彩色紙,カラーフィルム,皮,木薄片,金属箔,金属板,金網,パンチングメタル,色素,染料,顔料,多層薄膜等を挟むこともできる。
【0090】
赤外線を遮蔽するために使用する赤外線吸収剤としては,
アジン系赤外線吸収剤,
アズレニウム系赤外線吸収剤,アゾ系赤外線吸収剤,アミニウム系赤外線吸収剤,アントラキノン系赤外線吸収剤,イソインドリノン系赤外線吸収剤,インドアニリン金属錯体系赤外線吸収剤,インドフェノール系赤外線吸収剤,カルボニウム系赤外線吸収剤,キナクリドン系赤外線吸収剤,キノフタロン系赤外線吸収剤,キノンイミン系赤外線吸収剤,金属錯塩系アゾ系赤外線吸収剤,クロコニウム系赤外線吸収剤,シアニン系赤外線吸収剤,ジイモニウム系赤外線吸収剤,ジオキサジン系赤外線吸収剤,
ジチオール金属錯体系赤外線吸収剤,
スクワリリウム系赤外線吸収剤,
チオ尿素化合物,チオピリリウム系赤外線吸収剤,ナフタロシアニン系赤外線吸収剤,ナフトキノン系赤外線吸収剤,ニグロシン系赤外線吸収剤,ビスアゾスチルベン系赤外線吸収剤,ピラゾロンアゾ系赤外線吸収剤,ピリリウム系赤外線吸収剤,フタロシアニン系赤外線吸収剤,
ペリレンテトラカルボキシイミド系赤外線吸収剤,
ベンゾチオピラン系スピロピラン赤外線吸収剤,ポリメチン系赤外線吸収剤,メチン系赤外線吸収剤,酸化インジウムスズ粒子,酸化アンチモンスズ粒子,周期表4A,5Aもしくは6A族に属する金属の酸化物・炭化物・ホウ化物等の粒子等の赤外線吸収剤,セシウム含有酸化タングステン粒子,ナノメートルサイズの金属微粒子等が挙げられる。これらの赤外線吸収剤はブロック共重合体水素化物[3]からなる複数のシートの間に介在させることも,シート内部に添加することも可能である。
【0093】
また,ブロック共重合体水素化物[3]は,ガラス,金属,プラスチック等との優れた接着性を活かして,液晶セルの封止,有機EL素子・有機発光ダイオードの封止,LED素子の封止等に用いる封止材;マンガン電池・ニッケル水素電池・ニカド電池・アルカリ電池・リチウムイオン電池・空気亜鉛電池等のガスケット・シール材;ガラス板と金属板との貼り合わせ,ガラス板と樹脂板との貼り合わせ,金属板と金属板との貼り合わせ等の貼り合わせ用材;ガラスエポキシプリント配線板の保護コート材;フレキシブルプリント回路基板用バインダー,導電ペースト用バインダー等のバインダー;ガラス板・金属板・プラスチック板等の被着体の表面保護フィルムあるいはシート材;等にも適用できる。
【0112】
ステップ4(シート[4]-1の成形)
得られたブロック共重合体水素化物[3]-1のペレットを,空気を流通させた熱風乾燥器を用いて50℃で4時間加熱して,溶存空気を除去した後,ペレット100重量部に対して,光安定剤として,ホルムアルデヒド重縮合物と{2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジン・
[N,N’-ビス(2,2,6,6-テト
ラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジイルジアミン]・モルフォリ
ン重合物}とギ酸との反応生成物(サイアソーブ(登録商標)3529,日本サイテック・インダストリーズ社製)0.05部,及び,紫外線吸収剤である2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(Tinuvin(登録商標)329,BASFジャパン社製)0.05部を添加して,均等に攪拌混合した。
この混合物を,40mmφのスクリューを備えた樹脂溶融押出し機を有するTダイ式フィルム成形機(Tダイ幅600mm)を使用し,溶融樹脂温度200℃,Tダイ温度200℃,ロール温度50℃の成形条件にて,厚さ600μm,幅500mmのシート[4]-1を押出し成形した。シート片面はタッチロールでエンボス形状を付与した。得られたシート[4]-1はロールに巻き取り回収した。【0165】
実施例及び比較例の結果から以下のことがわかる。
ブロック共重合体水素化物[3]を用いて得られる合わせガラスは,取り扱いが容易で,接着性,耐光性,耐熱性,及び透明性に優れ,特に高温高湿下でも強固な接着力を維持することができる(実施例1~3)(以下


略)

【産業上の利用可能性】
【0166】
本発明の合わせガラスは,装飾ガラス,意匠性ガラス,建築物の窓ガラス,遮蔽用ガラス,屋根用ガラス,自動車のフロントガラスやサンルーフ用ガラス等として有用である。
(2)引用文献2の記載事項

引用文献2の発明は,合わせガラスに関するものである(
【0001】。



従来,合わせガラスの中間膜の形成材料としては,引用発明で用いられ
ているPVB系樹脂が最も一般的に用いられてきたものの,PVB系樹脂は,①軟化点が比較的低く,貼り合わせた後に熱によりガラス板がずれたり,気泡が発生したりする場合がある,②吸湿性が高く,高湿度雰囲気下に長期間放置しておくと,周辺部から次第に白色化するとともに,ガラスとの接着力が低下するという問題点があり,③ガラスとの接着力を制御するために,厳密な含水率管理が必要であるという問題点もあったため,これらの問題点を解決する中間膜が必要とされていたところ,
引用文献2の発明は,
取扱いの容易性,ガラスとの接着性,
耐光性,
耐熱性,
透明性及び低複屈折性に優れ,特に高温高湿下でも強固な接着力を維持する中間膜を使用した合わせガラスを提供することを目的とする(
【0002】【0006】~

【0008】。


引用文献2の発明では,アルコキシシリル基を有するブロック共重合体
水素化物
[3]
を含有する物質を合わせガラスの中間膜として用いることとした【0(
013】。

上記のブロック共重合体水素化物[3]は,芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする,少なくとも二つの重合体ブロック[A]と,鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする,
少なくとも一つの重合体ブロック
[B]
とからなり,全重合体ブロック[A]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし,全重合体ブロック[B]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに,wAとwBとの比(wA:wB)が30:70~60:40であるブロック共重合体[1]の,全不飽和結合の90%以上が水素化されたブロック共重合体水素化物[2]に,アルコキシシリル基が導入されたものである(【請求項1】,
【0017】~【0019】,
【0021】,
【0024】,
【0027】,
【0036】,【0048】)。

アルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[3]は,可撓
性,低吸湿性に優れるとともに,ガラスや金属,プラスチック等との接着性にも優れていて,高温高湿環境に暴露された後でも,ガラスや金属等との強固な接着性を維持することができる。これにより,耐久性に優れる合わせガラスが提供されるとともに,含有水分量の調整等の特別な処理は必要なくなり,保管や取扱いも容易となる(
【0014】【0058】【0093】。



なお,引用文献2の発明では,アルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[3]からなる複数のシートを2枚のガラス板間に介在させ,その複数のシートの間に,赤外線や熱線を遮蔽する機能を持つ樹脂フィルム等を挟むことで,付加価値を高めることができる(
【0089】【0090】【0093】。



また,引用文献2の発明は,自動車のフロントガラスやサンルーフ用ガラス等として有用である(
【0166】。

4
引用文献3

引用文献3(甲3)には以下のとおりの記載があり,合わせガラスの中間膜の吸湿性が高いと,熱線反射膜が腐食して,可視光線透過性能が低下することが記載されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】ガラス板と,アセタール化度80~95モル%のポリビニルブチラール樹脂及び可塑剤からなる樹脂膜との間に,酸化タングステン薄膜が銀薄膜の両面に積層されてなる熱線反射膜が挾着されていることを特徴とする熱線反射ガラス。【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,熱線反射ガラスに関し,詳しくは,優れた耐腐食性能を有する熱線反射ガラスに関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラス窓等があり,
外部と仕切られ,
密閉されている空間,
例えば,
自動車の車内,建造物の室内等に太陽光線が差し込む時,可視光線はもとより,熱線である赤外線も窓ガラスを透過するので空間内の温度が上昇する。このような密閉空間の温度上昇を防ぐため,熱線の透過を防止する膜が中間膜に積層されてなる熱線反射合わせガラスが従来より用いられている。
【0003】上記熱線反射合わせガラスとしては,例えば,特開昭55-67547号公報及び特開昭56-32352号公報には,銀薄膜の両面に酸化タングステン薄膜が積層されてなる熱線反射膜が中間膜と共に2枚のガラス板にて挾着されてなるものが提案されている。
【0004】上記熱線反射合わせガラスの中間膜には,従来より,アセタール化度の低いポリビニルブチラール樹脂膜が使用されている。アセタール化度の低いポリビニルブチラール樹脂の分子内には水酸基が多数含まれているため,吸湿性が高くなり,これが原因で熱線反射膜が腐食して合わせガラスの可視光線透過性能が低下するという問題が生じていた。
5
取消事由1(相違点1についての判断の誤り)について
(1)ア

まず,引用文献2に記載されたアルコキシシリル基を有するブロック
共重合体水素化物[3]と本願発明の変性ブロック共重合体水素化物[E](ただし,可塑剤を含むものを除く)との同一性について検討すると,以下のとおり,当業者は,
引用文献2のアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[3]
には可塑剤は含まれていないと認識するものと認められる。
また,
引用文献2の
【請
求項1】,【0017】~【0019】,【0021】,【0024】,【0027】,【0036】,【0048】並びに本願の【請求項1】及び本願明細書の【0006】,【0014】~【0016】,【0021】,【0024】からすれば,引用文献2のアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[3]と本願発明にいう変性ブロック共重合体水素化物[E]とは,同じものを指しているといえるから,引用文献2のアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[3]と本願発明にいう変性ブロック共重合体水素化物[E](ただし,可塑剤を含むものを除く)とは同じものであると認められる。
(ア)証拠(乙1)によると,合わせガラスの技術分野でPVBを用いた中間膜に可塑剤が添加されるのは,PVBについて,単独では剛性が大きく,合わせガラス用中間膜としては柔軟性が不足するという欠点があるからであると認められる。
(イ)これに対し,引用文献2によっても,アルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[3]について,PVBと同様の欠点があるとは認められない。むしろ,引用文献2の【0014】の「本発明に用いるブロック共重合体水素化物[3]は,・・・ガラス転移温度が低く柔軟性に優れた重合体ブロック[B]を有しているため,このものを含有する接着剤は,耐熱性,低温柔軟性,低吸湿性,透明性,低複屈折性,耐候性,および,ガラスや金属等との接着性に優れる。」との記載や【0027】の「ブロック共重合体中[1]の,全重合体ブロック[A]がブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし,全重合体ブロック[B]がブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに,
wAとwBとの比
(w
A:wB)は,30:70~60:40,好ましくは35:65~55:45,より好ましくは40:60~50:50である。wAが高過ぎる場合は,本発明で使用するブロック共重合体水素化物[3]の耐熱性は高くなるが,柔軟性が低く,合わせガラスの耐熱衝撃性が低下するおそれがある。との記載,

引用文献2において,
アルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[3]からなる中間膜の性能を向上させる配合剤として可塑剤は挙げられていないこと(
【0059】~【00
72】

【0112】からすると,引用文献2に接した当業者は,柔軟性に優れた全)
重合体ブロック[B]の重量分率が正しく調整されさえすれば,アルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[3]は,特に可塑剤を添加することなく,合わせガラス用の中間膜として相応しい柔軟性を発揮するものであると認識すると認められる。
(ウ)以上からすると,当業者は,引用文献2に記載されたアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[3]には可塑剤は含まれていないと認識するものと認められる。

次に,引用発明に引用文献2を組み合わせることが容易想到であるかど
うかについて検討する。
(ア)前記2,3のとおり,引用発明は自動車の窓用の合わせガラスに関する発明であり,引用文献2に記載された合わせガラスも自動車の窓に用いることが可能なものであるから,引用発明と引用文献2の発明は,同一の技術分野に属するものということができる。
(イ)前記2(2)のとおり,引用発明は2枚のPVBフィルム中間膜の間に赤外線反射機能を有するプラスチックフィルムを挟み込んだ合わせガラスに関する発明である。一方,前記3(1)の引用文献2の記載(【0089】【0090】及び,
【0093】)からすると,当業者は,引用文献2のアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[3]は,ガラス板とガラス板を接着するという用途だけではなく,ガラス板と樹脂板等との接着にも適用できるものであり,かつ,引用文献2の発明では,引用発明と同様に,アルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[3]からなる複数のシートの間に,赤外線や熱線の遮蔽機能を持つ樹脂フィルム等を挟むことができるものと理解するから,引用発明と引用文献2の発明には共通した機能,構造が見られるということができる。
(ウ)さらに,引用発明は,赤外線反射膜を形成してなるプラスチックフィルムのエッジをプラスチック挿入合わせガラスのエッジより内側に位置させることにより,プラスチックフィルムが水分にさらされて劣化するのを防ぐという効果があるから,引用発明には,水分によって合わせガラスが劣化するのを防止するという課題があることが分かる。他方,引用文献2は,中間膜を低吸湿性のものへと変更することで,合わせガラスの劣化防止を図るというものである。そして,引用文献1,引用文献2の各記載に前記4の引用文献3の記載及び弁論の全趣旨を総合すると,合わせガラスを劣化させる水分としては,プラスチックフィルムや中間膜が外部から直接さらされる水分の他に,中間膜が吸湿する水分もあることが当業者に知られていたことが認められる。そうすると,引用文献2の発明と引用発明との間には,水分によって合わせガラスが劣化するのを防止するという共通する課題が存在していたということができる。
(エ)そして,前記3の引用文献2に接した当業者は,引用発明で用いられているPVBについて,吸湿性が高く,PVBを用いた合わせガラスは耐久性が十分ではなく,PVBの取扱い自体にも難がある一方,引用文献2のアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[3]は,低吸湿性に優れたもので,取扱いも容易なものであって,合わせガラスの耐久性を向上させるものであると認識するということができる。
そうすると,当業者は,上記のような技術分野の同一性,構造及び機能並びに課題の共通性を踏まえ,引用発明で中間膜として用いられている(可塑剤が添加された)PVBフィルムを引用文献2の(可塑剤が添加されていない)アルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[3]中間膜に一体として置き換えることを容易に想到するということができる。

以上からすると,相違点1は,当業者に容易に想到することができたも
のである。そして,相違点2は,審決が判断しているとおり,実質的な相違点ではないから,本願発明は,引用文献1,2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものといえる。
(2)この点,原告は,①引用発明のPVBフィルムは,PVBに可塑剤が添加されたものであるところ,引用文献2を引用発明に適用するに当たり,当業者は,引用発明のPVBフィルムのうちの樹脂成分たるPVBのみを引用文献2のアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物
[3]
に置き換えようとするから,
引用文献2を引用発明に組み合わせて得られるのは,アルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物
[3]
及び可塑剤を含む組成物からなる中間膜であって,
本願発明の構成に至らない,PVBフィルム中間膜を構成する接着剤組成物を,より吸湿性の低いものとなるよう改良しようとする当業者は,樹脂添加剤の種類,それらの配合量等について,種々の組成物を調製して,その吸湿性を測定し,より吸湿性の低い組成物を探索しなければならない,②引用文献2の中間膜であるアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[3]は,ガラスとガラスを接着するためのものであるところ,プラスチックフィルムを接着する引用発明のPVBフィルムとは被接着層が異なるから,当業者は,接着剤ごとに被接着層が定まっているという技術常識を踏まえ,引用文献2のアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[3]を引用発明のPVBフィルムに置き換えようとすることはない,仮に置き換えるにしても,当業者は,被接着層が異なることを勘案し,接着性や吸湿性を向上させるため,引用文献2のアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[3]に添加する樹脂添加剤の種類等について,公知文献や技術常識に基づいて検討し,種々の接着剤組成物を調製しようとするはずであるから,被告の主張するように,引用発明のPVBフィルム中間膜を単純に一体的に引用文献2に記載されたアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[3]中間膜に置き換えるということはしないと主張する。

前記(1)のとおり,当業者は,引用発明の(可塑剤が添加された)PVB
フィルム中間膜を一体的に,
引用文献2に記載された
(可塑剤が添加されていない)
アルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[3]中間膜に置き換えることを容易に想到すると認められ,敢えて引用発明のPVBフィルムの可塑剤はそのままで,樹脂成分であるPVBのみをアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物
[3]
に置き換えるとは考え難く,また,
このようなことからすると,
当業者が,樹脂添加剤の種類,それらの配合量等について,種々の組成物を調整して,その吸湿性を測定し,より吸湿性の低い組成物を探索するとも考えられない。したがって,原告の上記①の主張は採用することができない。イ
次に,上記②については,前記(1)イ(イ)のとおり,当業者は,引用文献
2のアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[3]は,ガラス板と樹脂板との接着にも適用できるものと理解するということができる。また,引用文献2には,アルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[3]が,ガラス板と樹脂板との接着に用いられる際に,接着性や吸湿性に問題が生じ,何らかの添加剤が配合されるべきことを示唆する記載はなく,当業者がそのような試みをすることが通常であるともいえない。
したがって,当業者は,引用発明のPVBフィルム中間膜を一体的に,引用文献2に記載されたアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[3]中間膜にそのまま置き換えることを容易に想到するということができる。なお,原告は,引用文献2の【0089】【0090】及び【0093】は審決,
では指摘されていなかったとも主張するが,被接着層が異なるとの原告の主張は,審判段階ではされておらず,審決が上記各段落に言及していないからといって,本件で進歩性の判断に当たって,それらを考慮することが許されないものではない。以上からすると,原告の上記②の主張も採用することができない。6
取消事由2(手続違背)について

(1)本件拒絶理由通知(甲17)の12頁には,本願発明と引用発明との相違点として,「引用発明1の中間膜は,『PVB』である点」と記載されている。しかし,本件拒絶理由通知は,その前の10頁において,引用発明を「車外側ガラス板(10),PVBフィルム中間膜(11),PETフィルムの片面に酸化亜鉛と銀とを積層してなる赤外線反射膜が形成してなる透明なプラスチックフィルム(14),PVBフィルム中間膜(12),車内側ガラス板(13)の順に積層してなるプラスチック挿入合わせガラス(1)。」と認定しているから,上記「引用発明1の中間膜は,『PVB』である点」という記載は,引用発明の中間膜を原告の主張するようにPVB単独と認定する趣旨のものではなく,「PVBフィルム」と認定する趣旨のものであると認められる。
そして,本件拒絶理由通知は,上記「PVBフィルム」の組成については何ら具体的に認定していないが,前記5(1)ア(ア)のとおり,合わせガラスの技術分野において,PVBが合わせガラス用中間膜としては剛性が高すぎることが知られていたことを踏まえると,当業者は,「PVBフィルム」が,合わせガラスの中間膜として用いられている場合には,そこに可塑剤が含まれ得ることを十分認識できたということができるから,
原告は,
本件拒絶理由通知に対して,
引用発明の
「PVBフィ
ルム」が可塑剤を含むとの理解の下に,それに対する主張立証をすることができたものと認められる。したがって,原告の手続保障に欠ける点はないというべきである。
(2)また,
原告は,
本件拒絶理由通知に対して提出した本件意見書の4頁で
「4.
予備的な主張」として,
「引用発明1,2は,中間膜として可塑剤を添加したポリビ
ニルブチラール樹脂組成物を使用しています。として,

引用発明が中間膜として可
塑剤が添加されたPVB組成物(PVBフィルム)を使用していることを前提としつつ,「ポリビニルブチラール樹脂組成物は,可塑剤を添加せずに使用されることも想定される樹脂であり(・・・),ポリビニルブチラール樹脂と可塑剤は,一体不可分の関係にはありません。したがって,引用発明1,2において,中間膜についての特性の向上を検討するに際して,樹脂の種類の選択と,引用発明1,2において必須成分である可塑剤を中間膜から除去するか否かは,別異の検討事項であると考えるのが自然です。また,通常,引用発明において必須とされる構成を除去することは,当業者が想定しないことです。そこで,容易想到性に関する判断において,必須とされる構成を除去することが当業者にとって容易に着想し得ると言えるためには,そのようにいえる特段の事情を立証することが不可欠です。しかしながら,引用発明1,2において,可塑剤が添加されることを必須とするポリビニルブチラール樹脂組成物を,必須成分である可塑剤を除去し,可塑剤が添加されていない他の樹脂組成物に置き換えることが当業者にとって容易に着想し得ると言える特段の事情の存在は,本件拒絶理由,そして,審査段階での拒絶理由,拒絶査定にも一切説示されていないことを申し述べます。」と主張している。
以上の記載からすると,原告は,本件拒絶理由通知を受けた後,引用発明の中間膜が,可塑剤を添加したPVB組成物(PVBフィルム)であることを前提にした反論を本件意見書上で現に行っていたと認められるのであり,
このことからしても,
原告の手続保障に欠ける点がなかったことは明らかである。
(3)

この点,原告は,本件意見書の中では,本件拒絶理由通知における引用発
明の認定の誤りのみを主張しているとするが,上記(2)で検討した本件意見書の記載からすると,原告が,引用発明の中間膜が可塑剤を含むPVBフィルムであることを前提にしても進歩性がある旨の主張を本件意見書上で行っていたことは明らかであり,原告の上記主張は採用することができない。
第6

結論

よって,原告の請求には理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第2部

裁判長裁判官
森義之
裁判官
佐野信
裁判官
熊谷大輔
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