判例検索β > 平成30年(行コ)第51号
公務員に対する懲戒処分取消等請求控訴事件
事件番号平成30(行コ)51
事件名公務員に対する懲戒処分取消等請求控訴事件
裁判年月日平成30年11月9日
法廷名大阪高等裁判所
結果その他
原審裁判所名神戸地方裁判所
原審事件番号平成28(行ウ)66
裁判日:西暦2018-11-09
情報公開日2019-01-08 12:00:21
戻る / PDF版
主1文
原判決を次のとおり変更する。
処分行政庁が平成28年2月23日付けで控
訴人に対してした6月間停職の懲戒処分を取り
消す。


被控訴人は,控訴人に対し,55万円及びこれ
に対する平成28年6月30日から支払済みま
で年5%の割合による金員を支払え。
控訴人のその余の請求を棄却する。

2
訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを3分し,
その2を控訴人の,その余を被控訴人の各負担とす
る。

3
この判決は,第1項⑵に限り,仮に執行すること
ができる。
事実及び理由

第1

控訴の趣旨

1
原判決を取り消す。

2
主文第1項

3
被控訴人は,控訴人に対し,1327万3045円及びこれに対する平成2
と同旨。

8年6月30日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。第2
1
事案の概要(以下,略語は特記しない限り原判決の例による。)
事案の要旨
本件は,姫路市立a中学校(以下a中学校という。
)の教諭として在職
中,処分行政庁から平成28年2月23日付けで停職6月(同月24日から6月間停職)の懲戒処分(本件停職)を受け,同停職期間中の同年4月1日に同市立b中学校へ配置換え(本件配置換え)になった後同年6月30日に被控訴人を辞職した控訴人が,処分行政庁の所属する被控訴人に対し,本件停職の取消しを求めるとともに,違法な本件停職と本件配置換えにより財産的・精神的損害を被ったとして,国家賠償法1条1項に基づき,損害賠償として1327万3045円(給与・賞与相当額207万3045円,慰謝料1000万円及び弁護士費用120万円の合計)及びこれに対する不法行為後である同日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。


原審は,本件停職及び本件配置換えをいずれも適法であるとして,控訴人の請求をいずれも棄却したところ,
控訴人がこれを不服として本件控訴を提
起した。

2
関係法令等の定め
懲戒処分に関する定め
地方公務員法(平成26年法律第34号による改正前のもの。以下地公法という。)29条1項は,職員が次の各号のいずれかに該当する場合にお
いては,これに対し懲戒処分として戒告,減給,停職又は免職の処分をすることができると規定し,懲戒事由として,
職務上の義務に違反し,又は職務を怠った場合
(2号)

全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合
(3号)を挙げている。
地方教育行政の組織及び運営に関する法律(平成26年法律第34号による改正前のもの。以下地教行法という。
)42条は,市町村立学校職員給
与負担法(平成27年法律第46号による改正前のもの)1条に規定する県費負担教職員(都道府県が給料等を負担する職員)の給与,勤務時間その他の勤務条件については,地公法24条6項の規定により条例で定めるものとされている事項は都道府県の条例で定めると規定しており,これを受けて,被控訴人が定める職員の懲戒の手続及び効果に関する条例(昭和38年兵庫県条例第31号。以下懲戒条例という。乙25)4条は,減給は6月以下の期間,給料の月額(教職調整額又は給料の調整額を支給される職員にあっては,給料の月額に教職調整額又は給料の調整額の月額を加算した額)の10分の1以下に相当する額を給与から減ずるものとすると規定し,懲戒条例5条は,停職の期間は6月以下とし,停職者はその職を保有するが職務に従事せず,停職の期間中いかなる給与も支給されないと規定する。また,地公法49条1項は,任命権者は,職員に対し,懲戒処分を行う場合においては,その際,その職員に対し処分の事由を記載した説明書を交付しなければならない旨規定し,懲戒条例3条は,戒告,減給,停職又は懲戒処分としての免職の処分は,その理由を記載した書面を当該職員に交付して行わなければならないと規定している。
なお,被控訴人及び処分行政庁は,懲戒処分についての処分基準を定めていない。
転任に関する定め
地公法17条1項は,職員の職に欠員を生じた場合においては,任命権者は,採用,昇任,降任又は転任のいずれかの方法により,職員を任命することができると規定する。同規定は,転任が任命権の行使の一態様であり,任命権者に付与された権限の行使として行われることを規定しているものと解される。
地教行法38条1項は,都道府県教育委員会は,市町村教育委員会の内申をまって,県費負担教職員の任免その他の進退を行うものとすると規定し,同条2項は,前項の規定にかかわらず,都道府県教育委員会は,同項の内申が県費負担教職員の転任に係るものであるときは,当該内申に基づき,その転任を行うものとすると規定する。なお,配置換えは同項にいう転任に含まれる。
いじめ防止のための施策(乙4,5,28から30まで)
いじめ防止対策推進法
(平成25年9月28日施行。いじめ防止法
以下
という。
)は,児童・生徒(以下児童等ともいう。
)に対して当該児童等
と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為であって,当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいじめと定義し(2条)
,文部科学大臣はいじめの防止等のための対
策を総合的かつ効果的に推進するための基本的な方針
(いじめ防止基本方針)
を定めるものとし(11条)
,地方公共団体は同方針を参酌し,その地域の実
情に応じ,当該地方公共団体におけるいじめの防止等のための対策を総合的かつ効果的に推進するための基本的な方針(地方いじめ防止基本方針)を定めるよう努めるものとし(12条)
,学校はこれらの方針を参酌し,その学校
の実情に応じ,当該学校におけるいじめの防止等のための対策に関する基本的な方針(学校いじめ防止基本方針)を定めるものとしている(13条)。
これに基づいて文部科学大臣は平成25年10月に,被控訴人は平成26年3月に,姫路市教育委員会(以下市教委という。
)は同年7月にそれぞ
れ基本方針を定め,a中学校はその後にこれを定めた。被控訴人,市教委及びa中学校が定める基本方針のうち本件に関連する部分は原判決別紙いじめ防止基本方針のとおりである。そのうち,いじめが疑われ,又はこれが発生した場合に学校がとるべき措置としては,兵庫県いじめ防止基本方針(乙30)においては,いじめが疑われる情報があった場合,

指導に当たっては校内組織で対応する。当事者双方,周囲の児童生徒から個々に事情を聴き取り,正確な実態把握を行い,指導方針,役割分担を明確にした上で,連携協力して児童生徒,保護者に対応する。

などとあり,市教委作成の姫路市いじめ防止基本方針(乙5)においては,
いじめの兆候を発見した時は,これを軽視することなく,早期に適切な対応をすることが大切である。いじめを受けている児童生徒の苦痛を取り除くことを最優先に迅速な指導を行い,問題の解決に向けて学年及び学校全体で組織的に対応することが重要である。などとあり,a中学校作成の姫路市立a中学校いじめ防止基本方針(乙4)においては

いじめの疑いに関する情報を把握した場合やいじめを認知した場合は,情報の収集と記録,情報の共有,いじめの事実確認を行い,迅速にいじめ解決に向けた組織的対応を別に定める。

とした上,校長が重大事態と判断した場合,直ちに,教育委員会に報告するとともに,校長がリーダーシップを発揮し,学校が主体となって,いじめ対応チームを組織し,専門的知識及び経験を有する外部の専門家である関係機関と連携し,事態解決にあたる。としている。
学校の設備
地教行法21条は,教育委員会は当該地方公共団体が処理する教育に関する事務で,次に掲げるものを管理し,及び執行すると規定し,同条2号は,教育委員会の所管に属する学校その他の教育機関の用に供する財産(教育財産)の管理に関することを挙げている。
また,同法33条1項は,教育委員会は法令又は条例に違反しない限度において,その所管に属する学校の施設,設備その他学校の管理運営の基本的事項について,必要な教育委員会規則を定めるものとすると規定している。これに基づき,市教委は,姫路市立学校管理規則(乙43)を制定しているところ,同規則14条1項は,校長は,学校の施設及び設備を常に良好な状態において管理し,その目的に応じて最も効率的に運用しなければならない旨,同規則17条は,校長は,寄付の申出等があったときは,事前に市教委に協議し指示を受けなければならない旨を定めている。
3
前提事実(当事者間に争いがないか,後掲証拠(書証番号は特記しない限り全ての枝番号を含むものである。
)及び弁論の全趣旨により容易に認められる
事実)
当事者

控訴人は,昭和57年4月兵庫県公立中学校教員に採用され,平成20年4月にa中学校に赴任し,後記の本件傷害事件が発生した平成27年7月7日当時同中学校教諭として保健体育の授業を担当し,同校柔道部(以下,単に柔道部ともいう。
)の顧問を務めていた(控訴人の柔道段位は
6段である。。なお,控訴人は,いわゆる県費負担教職員(前記2(関係)
法令等の定め)

)であった。

処分行政庁は,地教行法2条に基づいて被控訴人に置かれた教育委員会であって,いわゆる県費負担教職員である控訴人の任命権者であり,市教委の内申をまって,控訴人に関する任免その他の人事に関する事務を行っている(地教行法37条1項,38条1項)

本件傷害事件の発生及び控訴人の虚偽説明指示


柔道部部員で3年生のD及び2年生のEは,平成27年7月7日午前7時頃から,a中学校の家庭科室において,こもごも,同じ柔道部で1年生のAの顔面を殴り,長さ約1mの物差しでAの頭,顔,身体を10回以上たたき,平手で顔面を数回殴打したほか,立てなくなったAに対し,Dは太ももに膝蹴りをし,DとEがみぞおちを数回蹴るなどの暴行を加え,よって,Aに全治1箇月を要する胸骨骨折を含む傷害を負わせた(以下,この傷害事件を本件傷害事件という。。



控訴人は,同日午前8時頃,AがD及びEから暴行を受けたことを確認した柔道部副顧問のF教諭からその旨の報告を受け,本件傷害事件を認知した。


控訴人は,同日午後3時頃,Aを医師に受診させるに際し,A及びAに付き添うF教諭に対し,医師には階段から転んだと説明するよう指示した(以下本件虚偽説明指示という。。

職務命令違反


G校長は,平成27年7月17日の職員会議において,同月27日に行われる兵庫県中学校総合体育大会(以下県大会という。
)で柔道の団体
競技にDが出場することを認めた。Dは,同大会の団体戦に出場し,a中学校はこの大会で準優勝して同年8月4日に行われる近畿中学校総合体育大会
(以下
近畿大会
という。団体競技

(乙11)
への出場資格を得た。
G校長は近畿大会に出場する選手としてDを登録することを了承し,その書類に押印した。なお,出場登録された選手7人のうち,実際に試合に出るのは5人であり,
当日この5人を誰にするか決めるのは控訴人であった。

ところが,市教委は,同年7月29日,本件傷害事件を理由に,近畿大会へのDの出場を辞退するようG校長に指示した。G校長は,同日午後5時30分頃,控訴人に電話をかけ,市教委から指示があったのでDを近畿大会に出場させないようにと伝えた。控訴人は,これに従わず,同年8月4日に行われた近畿大会の団体戦にDを出場させた。その結果,a中学校は同大会で優勝した。
なお,G校長は,自ら近畿大会の主催者等に対し,Dの同大会の出場選手の登録を抹消するなど,Dの出場資格を強制的に剥奪するような措置をとることはなかった。
撤去指示違反


控訴人がa中学校に赴任後,同中学校卒業生や保護者等から柔道部に対し,柔道部員等の使用に供するため,洗濯機,乾燥機,送風機,冷蔵庫,トレーニング機器等の本件物品が寄贈され,校内に設置されていた。G校長は,平成26年12月初旬,教頭を通じて本件物品の撤去を指示し,同月22日には控訴人に対して直接撤去を指示した。控訴人は,本件傷害事件発覚後の改めての指示を受け,洗濯機1台を撤去した。


平成27年10月1日に市教委によるa中学校校内の確認が行われ,教育長は,同月20日付けでG校長に対し,本件物品,トレーニングハウスなどを同年11月20日限り撤去し,原状回復するよう指示する施設管理に係る改善指示書(乙13)を交付した。控訴人は,同日までに本件物
品とトレーニングハウスを撤去した。
懲戒処分(甲1,2,乙1)
市教委は,処分行政庁に対し平成27年11月20日付けで,控訴人がいじめ事案の解決を最優先にせず柔道部の運営・勝利を優先し,近畿大会の団体競技へのDの出場を辞退させる旨の校長の命令に従わなかったこと,学校施設を私物化するような使用を続けたことなどが,地公法に違反する信用失墜行為であるとして,相応の処分を求める内申をした。
これを受けて,
処分行政庁は,
平成28年2月23日,
地公法29条1項,
懲戒条例5条により懲戒処分として控訴人を同月24日から6月間停職とした(以下本件停職という)
。控訴人に交付した処分説明書には控訴人に対
する懲戒理由として,控訴人が下記の行為をした旨の記載がある(以下,第1文の行為のうち7月7日のものを虚偽説明指示
,8月4日のものを職務命令違反
,第2文の行為を撤去指示違反という。。

処分行政庁は,本件停職を直ちに公表したため,平成28年2月24日付けの地元新聞各紙は,a中学校と控訴人の名前を匿名としながらも,本件停職及びその事由である虚偽説明指示等について具体的に報道した(乙8)。記
平成27年7月7日,顧問を務める柔道部の部員間の暴力行為を伴ういじめ事案を把握しながら,被害部員の受診時に階段から転んだことにしておけと,虚偽の説明をするよう指示し,同年8月4日,加害部員の部活動の大会への出場禁止の校長の職務命令に従わず同部員を大会に出場させた。また,部活動で使用していた校内の設置物に係る校長からの撤去の繰り返しの指示に長期間対応しなかったことは,教育公務員としてふさわしくない著しい非行である。
本件配置換え(乙23)及び控訴人の退職
市教委は,平成28年3月18日付けで,処分行政庁に対し,姫路市立学校の一般職の教職員250人を同年4月1日付けで配置換えするよう求める内申をした。これには控訴人を姫路市立b中学校に配置換えすることが含まれていた。
処分行政庁は,上記の内申に基づく配置換えをすることを決め,その意向はG校長から控訴人に内示として伝えられた。
控訴人はG校長に異議を述べ,
処分行政庁と市教委にも文書で伝えたが(甲5,6),処分行政庁は,同年4月1日,
控訴人に対し,
上記のとおりの配置換え
(本件配置換え)
をした。
控訴人は停職期間が満了する前の同年6月30日をもって被控訴人を辞職した。
審査請求と訴えの提起(甲3)
控訴人は,本件停職を不服として平成28年3月23日に兵庫県人事委員会に審査請求したが,3箇月を経過しても裁決がされなかったことから,訴えを提起する旨を上申し,同審査請求の審理は当分の間延期されることとなった(甲3)。その後,控訴人は,同年10月14日に本件訴えを提起した。4
争点及びこれに関する当事者の主張
本件停職における懲戒事由の有無
原判決の事実と理由欄の第2の2

8頁11行目から14頁

12行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。


本件停職における裁量権の逸脱・濫用の有無
下記のとおり補正するほか,原判決の事実と理由欄の第2の2⑵(原判決14頁14行目から15頁23行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。

原判決14頁22行目末尾の後に行を改めて,次のとおり加える。
処分行政庁は,教職員の非違行為に対する懲戒処分について,地公法上の懲戒処分ではないもの(①~③)も含めて11段階(①説諭,②厳重注意,③訓告,④戒告,⑤減給10分の1・1月,⑥減給10分の1・3月,⑦減給10分の1・6月,⑧停職1月,⑨停職3月,⑩停職6月,⑪免職)に区分して量定を行っている。処分行政庁に限らず,被控訴人においては,懲戒処分の量定に関する書面化した目安を定めていない。処分行政庁においては,懲戒処分の量定を行うに当たり,人事院の量定の目安,処分行政庁における過去の懲戒事例及び他の都道府県の教育委員会等の処分事例を参考にして,上記11段階の中から量定を行っている。また,複数の非違行為が行われた場合や情状等により処分を加重する場合には,上記11段階の区分に従って,上位の区分に量定している。本件の3件の非違行為のうち,最も重大な非違行為は虚偽説明指示であるところ,処分行政庁においては過去にいじめに対する教職員の対応について懲戒処分を行った事例が存在しなかったことから,大津市立中学校の中学生がいじめにより自殺した事件における被害生徒の担任教諭に対する滋賀県教育委員会の平成25年5月の懲戒処分(減給10分の1・1月)を参考にした。そして,上記処分が大津市長からも軽すぎると批判されるなど社会の理解を得られなかったこと及び同年9月にいじめ防止対策推進法(いじめ防止法)が施行されたこと等,その後の社会情勢の変化を考慮すると,平成27年に発生した控訴人の虚偽説明指示の量定としては,上記処分から1段階加重した減給10分の1・3月を下回るものではないと考えられた。また,控訴人の虚偽説明指示の行為態様は,暴力行為が行われていたことを確定的に認識していたにもかかわらず,確信的な故意に基づいて積極的にいじめを隠匿しようとした点で,上記事件における担任教諭の行為よりもはるかに悪質であるから,更に1段階以上の加重を行うのが相当であり,減給10分の1・6月を下回るものではないと考えられた。次に,控訴人の職務命令違反は,単独で行われた場合の量定としては戒告に相当するが,これによって更に1段階加重して,少なくとも停職1月とするのが相当と考えられた。そして,控訴人の撤去指示違反は,従前は器具の設置が事実上黙認されていたと評価し得る余地があることを考慮しても,戒告が相当であるから,更に1段階加重する事由となるため,少なくとも停職3月とすることが相当と考えられた。最後に,撤去指示違反の結果は上記戒告相当とする量定において考慮済みであるが,虚偽説明指示及び職務命令違反の結果はここまでの量定において考慮されておらず,同結果及び控訴人の懲戒処分歴を考慮して,更に1段階加重し,最終的な量定を停職6月としたものである。なお,控訴人の虚偽説明指示は,人事院の定める懲戒処分の指針における「部下職員の非違行為を知得したにもかかわらず,その事実を隠蔽し,又は黙認した場合と同等のものと評価できるので,その量定(停職または減給)を参考とし,職務命令違反及び職務命令違反の悪質性をも考慮すると,停職6月の量定が社会観念上著しく妥当を欠くほど重すぎることにはならないから,このような判断方法によっても本件停職は適法である。」

原判決15頁9行目末尾の後に行を改めて,次のとおり加える。

被控訴人は,その当否は別としても,虚偽説明指示は減給10分の1・6月,職務命令違反及び撤去指示違反はいずれも戒告相当と主張している。ところが,処分行政庁は,それらを併合して停職6月という重い懲戒処分をしている。本件停職は,懲戒処分の加重方法を誤り,比例原則に違反する重きに失したものである。加重処分をするに当たっても,1段階重い種類の処分を選択するとき,例えば,減給にしか当たらない非違行為が複数あるという場合に停職とするときには,十分慎重でなければならない。このような場合には,同じ減給であっても,その程度及び期間により相当な幅を持たせることができるのであるから,可能な限り減給の範囲内での処分にとどめ,停職を選択するのは飽くまでも例外的な場合に限られるべきである。減給相当の非違行為が一つあるが他は戒告にしか該当しないような場合に停職とする際には,より一層慎重な判断が必要というべきであり,特段の事情がない限り,停職を選択することはできないというべきである。さらに,被控訴人が主張する最後の段階の加重では,停職3月を停職6月に加重することによって,更に停職3月分を加重したことになり,被控訴人が最も重大な非違行為とする虚偽説明指示の量定(被控訴人のいう減給10分の1・6月)に比してもはるかに重大な非違行為に相当する加重をしていることになる。以上のような量定方法は,およそ社会通念に反するものである。なお,そもそも人事院の定める懲戒処分の指針(甲8)における監督責任等は,上司も部下も公務員という関係での監督責任における非違行為やそれに対する懲戒処分例を示したものであり,部下職員を義務教育課程における中学生として想定するのは,その前提において無理がある。また,上記指針にいう隠蔽とは,当該職員の所属する組織や部署等の上司ないしは職員の非違行為を把握すべき部局等に対して知られないようにする行為をいうのであり,被害生徒に学校外の医師に対して秘匿させたからといって,隠蔽には当たらない。そうであるからこそ,被控訴人も,上記指針を根拠としては量定をしていなかったものである。本件配置換えの適否
原判決の事実と理由欄の第2の2

(原判決15頁25行目から16

頁11行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
損害額

控訴人の主張
給与・賞与相当額

207万3045円

控訴人は,本件停職後,控訴人が退職した同年6月までの4箇月間,給与を支払われなかった。また,その間の賞与を得ることもできなくなった。
控訴人の在職時の年収は621万9136円であるから,上記給与・賞与相当額はその12分の4に当たる207万3045円である。慰謝料

1000万円

控訴人は,本件停職により名誉を侵害されたほか,柔道の指導を行うこともできなくなり,本件停職がマスコミ等に流布された結果として転職等も困難になった。
また,控訴人は,本件停職中に本件配置換えを命じられた結果,退職に追い込まれた。
以上による控訴人の精神的苦痛を慰謝するための金額は,1000万円を下回らない。
弁護士費用

120万円

控訴人は,本件訴訟の追行を訴訟代理人らに依頼せざるを得なくなり,上記
合計



の合計の約1割に当たる120万円の損害を被った。
1327万3045円

被控訴人の主張
上記ア

本件停職の懲戒処分をした翌日である平成28年2月

24日から退職日までの給与・賞与が控訴人に支払われなかったこと及び控訴人の在職時の年収(平成27年における控訴人の総所得金額)が621万9136円であったことは認め,その余は否認ないし争う。
上記ア
第3
1
ないし

は否認ないし争う。

当裁判所の判断
認定事実
前記前提事実に加え,証拠(括弧内のもののほか,甲13,14,17,1
8,乙1から3まで,9,16から22まで,39,41,42,原審証人H,同F,同G,控訴人本人)及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。
a中学校柔道部の状況等

控訴人は,これまで赴任した他の学校及びa中学校で,柔道部顧問として柔道部員の指導にあたっていた。
a中学校柔道部は,
控訴人の指導の下,
多くの大会で優秀な成績を収め,全国優勝をしたこともあった。そのため同校柔道部への入部を希望する生徒は多く,わざわざa中学校の校区内に住居を移転してまで入部する者もいた。本件傷害事件後の調査によれば,同校柔道部員54人のうち8割近い42人が県外を含む校区外の出身者であったことが判明している。


Dもそのような生徒の一人である。Dは,小学1年生から柔道を始め,柔道の指導に力を入れている中学校への進学を希望し,徳島県内にある親元を離れて愛知県にある中学校に入学して柔道を続けていたところ,同中学校と合わないと感じ,Dの父においてより良い指導者がいる中学校を探していたところ,控訴人に声をかけられたことを契機に平成26年12月にa中学校に転入して柔道部に入部した(当時2年生)Dは,

控訴人の教
え子であったI宅に下宿して同宅からa中学校に通い,本件傷害事件当時は柔道部の主力選手となっていた。


他方,Aも,柔道で強くなるため控訴人の指導を受けたいと考え,平成27年4月(以下,年の表記を省略する。出来事は平成27年のことである。,群馬県内の親元を離れてa中学校に入学し,Dと同じくI宅に下宿)
するようになった。I宅ではA~Eら柔道部員が共同生活を送っていたが,A~Cは4月当初から日常的に,D,Eによる暴力行為を受けていた。本件傷害事件が発生するまでの約3箇月の間に行われていた暴力行為は次のようなものである。
D,Eが嫌いな食べ物や食べきれず残したご飯をA~Cに食べさせ,食べきれずに嘔吐したらEが暴行を加える。
Dがトレーニングハウスにおいて,A~Cの手,足,腹などに香水をかけ,気化した香水にライターで火をつける(5,6回)

DがI宅においてA~Cの二の腕などをエアガンで撃つ(10回くらい)

このほかA~Cは,それぞれ個別に,トレーニングハウス,I宅などにおいて殴る,蹴るなどの暴力を受けていたが,6月頃からAへの暴力がひどくなり,D,EがAの両手を後ろに回した状態で膝蹴りをし,痛みのため食事をとることができないAに対し,食べるのが遅いとしてさらに膝蹴りをすることが3日間続いた後,Aは食事をとっても嘔吐するようになった。
本件傷害事件の発生と控訴人の虚偽説明指示等

7月7日午前7時頃,本件傷害事件が発生した。柔道部では毎日午前7時30分頃から校内で練習をしており,本件傷害事件が発生した同日も同様であった。同事件発生後,F教諭はAの様子を不審に思い問いただしたところ,Aから階段から落ちたなどと説明されたものの,受傷状況等からその説明を嘘と見抜いてさらに問いただしたところ,D及びEから暴行を受けたことを認めた。その後,F教諭は,A,D,Eから簡単に事情を聴いた上,午前8時頃には武道場にいた控訴人に連絡し,控訴人とともにAの受傷状況を確認した。なお,学年全体の生徒指導担当のJ教諭も,G校長も,この日は出張のため不在であった。


控訴人は,Aをいったん下宿先(I宅)に帰宅させた後,加害者であるDの担任教諭で,3年生の生徒指導担当教諭であるF教諭に告げた上で,D,Eを授業に出席させずに被服室で待機させるよう指示し,その後図書室に移動させて本件傷害事件に関する事情聴取をし,その結果をノートに記録した。記録した内容は,本件傷害事件の経緯と加害行為の詳細,A~Cが受けていたD,Eによる継続的な暴力行為の内容である。控訴人は,ノートのコピー(乙39。以下聴取メモという。
)をF教諭に渡した。
A・D・Eの保護者に対する連絡と説明は,同日中に控訴人が行った。ウ
Iの妻は,Aの様子を見て整形外科医師に診てもらうべきであると考え,同日午後3時頃にAを連れてa中学校に行き,控訴人及びF教諭にそのことを伝えた。控訴人は,Aを受診させることを了解したが,F教諭及びAに対し階段から転んだことにしておけと発言し,Aに対しては分かったなと念を押した。そして自分から懇意の医師に連絡しておくとF教諭らに伝えた上,同医師に電話をかけ,階段で転んだ生徒がこれからそちらに向かうと伝えた。
Aは,
F教諭及びIの妻に伴われて整形外科に赴き,
午後5時頃に受診した。A及びF教諭は,同医師に対し,階段で転んでけがをした旨の説明をした。同医師は,Aの症状が全治1箇月を要する胸骨骨折と診断した。Iの妻は,上記診断結果を控訴人に報告した。

F教諭による学校への報告
F教諭は,整形外科から帰校した午後6時頃,出張から戻ってきていたJ教諭に聴取メモを見せて本件傷害事件を報告した。J教諭は直ちにこれを教頭に伝達し,G校長も同日午後6時過ぎには教頭から本件傷害事件の発生の報告を受けた。その後,a中学校(生活指導担当教諭)は,7月9日,市教委に対し本件傷害事件の第一報を入れ,同日,第1回校内いじめ対応会議を行った。市教委は,同月28日,本件傷害事件をいじめ重大事態としてとらえ,姫路市長に報告をした(乙1,2)

加害生徒に対する対応及び被害生徒の保護者に対する連絡・謝罪等控訴人は,本件傷害事件当日の7月7日,柔道部員を集めて本件傷害事件のことを伝え,同月8日から同月18日まで柔道部の練習を休みにした。同月19日から練習を再開したものの,D,Eについては,反省を促すため,練習には参加させず,その間校内のトイレ掃除や草むしり等の奉仕活動をさせた。
控訴人は,本件傷害事件の3,4日後に被害生徒であるA~Cの保護者に連絡を取り,本件傷害事件が発生したことを報告するとともに,このような事態を招いたことを謝罪した。
保護者等に対する説明会の実施
a中学校では,
本件傷害事件の発生を受けて,
7月11日午後7時からA,
D及びEの保護者を呼んで話合いをすることを予定した。控訴人は,これに先立つ同日午後3時から本件傷害事件の当事者であるA~C,D,Eを除く柔道部員の保護者を呼んで保護者会を開催した。控訴人は,その場で,これらの保護者に対し

(D,Eを)試合に出してやってください。

などと涙ながらに話した。控訴人は,午後7時開始の予定であった話合いを午後5時に繰り上げて実施した。
予定より早く会合が始まっていることに気づいたF教
諭,J教諭,教頭は途中から参加した。その後同日午後8時からは校長室において,A,D,Eの各保護者及びG校長を交えた話合いが行われた。その後,本件傷害事件の詳細が市教委に報告された。
Dの大会出場に関する職務命令と控訴人の対応

7月11日にa中学校柔道部も出場予定の中播地区総合体育大会が行われることになっていたが,G校長及び教頭は,その前日の同月10日,本件傷害事件の重大性等に鑑み,D,Eの同大会への出場を自粛するよう控訴人を指導した。Dは同大会に出場しなかったが,a中学校柔道部が優勝し,県大会への出場資格を得た。同大会終了後,引き続きa中学校において,柔道部の保護者会,A・D・Eの保護者が出席しての話合い,校長室
えていたところ,G校長は,Dを試合に出さないと発言したものの,自身も柔道経験者である被害者Aの父が反対し,Dを試合に出してほしいとG校長に訴えた。

G校長は,結局,7月17日の職員会議の席上,Dの県大会への出場を認める旨発言し,Dは同月27日に行われた県大会に出場した。a中学校柔道部は,同大会では決勝戦で敗れ,全国総合体育大会への出場を逃したが,近畿大会への出場資格を得た。G校長は,同大会に出場する選手としてDを登録することを了承し,その書類に押印した。


ところが,G校長は,7月29日,市教委から,Dを近畿大会に出場させてはならないとの指示を受けた。そのため,G校長は,同日,控訴人に対し,近畿大会にDを出場させないよう電話で伝えた。控訴人は,

県大会は出場できて,近畿大会がなぜ出場できないのか。納得できない。

などと言って反発し電話を切った。B(本件傷害事件の被害者の一人)の保護者は,翌日にa中学校を訪れ,Dを近畿大会に出場させるようG校長に訴えたほか,市議会議員からも市教委に対し同趣旨の申入れがあった。また,F教諭は,近畿大会の前日である8月3日に大学の先輩にあたる人物の訪問を受け,控訴人に迷惑をかけているらしいが翌日の試合には協力するようにと指示された。
G校長は,控訴人がDの近畿大会出場を辞退させることについて強い難色を示していたことを認識しつつ,同大会の主催者等に対し,Dの出場選手登録の抹消を求めたり,Dの出場資格を強制的に剥奪したりするような措置をとることはなかった。


近畿大会翌日の8月5日,F教諭から報告を受けてDが近畿大会に出場したことを知ったG校長は,控訴人を呼び出し,Dを近畿大会に出場させたのは残念である旨を伝えたが,控訴人は,いじめであれば何でも出場辞退させるのか,処分や指導は覚悟の上だ,自分は命がけでやっているなどと言って反発し,G校長に抗議した。
本件物品の撤去指示(乙12から14まで)


控訴人がa中学校に赴任後,同中学校卒業生や保護者等から柔道部に対し,柔道部員等の使用に供するため,洗濯機,乾燥機,送風機,冷蔵庫,トレーニング機器等の本件物品が寄贈され,校内に設置されていた(実際には,
柔道部員以外の運動部員や家庭科教員等も使用することがあった。。)
また,平成24年初め頃,地元企業から柔道部員の利用に供するためトレーニングハウス(トレーニング機器を置いて練習できるようにした建築物(間口5.5m,奥行2.3m,高さ2.7m)
。乙13)の寄贈を受け
た(甲15,17)
。G校長は,a中学校に着任した平成24年4月頃,ト
レーニングハウスの存在を認識したが,当時は学校運営に支障はないと判断し,控訴人に対しその撤去を求めることはなく,本件物品の撤去を求めることもなかった。また,本件物品の取扱い等について市教委等に申し出て協議することもなかった。

G校長は,平成26年12月,控訴人に対し,教頭を通じ又は自ら本件物品の撤去を指示した。G校長は,平成27年になってからも3月,4月及び5月に指示をした。控訴人は,寄贈者に対して説明し,了解を得るため,9月頃まで待ってほしい旨及びG校長からも寄贈者に対する説明等をしてほしい旨を申し出たが,G校長はこれに応じなかった。G校長は,本件傷害事件後の7月17日及び8月31日にも撤去を指示したが,控訴人は4月以降も新たな物品を搬入し,8月31日の指示後に洗濯機1台を撤去しただけであった(乙2)ため,9月7日にも撤去を指示した(なお,上記各撤去指示の対象にはトレーニングハウスは含まれていなかった。。)
G校長は,この段階では撤去指示に従わない控訴人に対し懲戒処分をもって臨むことは考えておらず,校内で処理すべきものと考えていた。

その後,市教委(学校施設課長)は,10月1日にa中学校内の確認作業をし,その結果,柔道部の関係では,サウナ1台,洗濯機5台,乾燥機1台,送風機1台,三面鏡1台,エアコン1台,テレビ1台,冷蔵庫1台,トレーニング機器多数,建築物1棟(トレーニングハウスを指す)を学校の備品として認められない物の一覧として指摘した。そして教育長は10月20日付けで,姫路市立学校管理規則14条に基づき適正な施設管理に努めるよう改善を指示する施設管理に係る改善指示書
(乙13)を
G校長に交付した。改善すべき内容は,①学校教育に関係ないもの等の撤去,②正規の手続によらず設置・使用されているもの等の撤去,③承認を受けず改造されている電気・給排水設備等の原状復旧,④適正な室の利用である。
期限は11月20日であり,
11月21日以降に確認をすること,
撤去とは中学の敷地内からの搬出をいうことが記載されていた。控訴人は,11月20日までに本件物品及びトレーニングハウスを撤去し,11月27日に市教委による確認が行われ,撤去が完了していることが確認された。
2
争点

(本件停職における懲戒事由の有無)について

虚偽説明指示について

処分説明書(甲2)記載の処分の理由は,控訴人が,平成27年7月7日,顧問を務める柔道部の部員間の暴力行為を伴ういじめ事案を把握しながら,被害部員(A)の受診時に階段から転んだことにしておけと,虚偽の説明をするよう指示したこと(虚偽説明指示)というものである。

前提事実

アのとおり,本件傷害事件は,3年生の柔道部員であるD及

び2年生の柔道部員であるEが1年生の柔道部員であるAに対し,その顔面等を平手や物指しで殴打し,立てなくなったAのみぞおちを数回蹴るなどの暴行を加え,Aに全治1箇月を要する胸骨骨折等の傷害を負わせたものであり,いじめ防止法2条にいういじめに該当することが明らかである。したがって,かかる事態が生じた以上,G校長を初めとして,控訴人を含むa中学校教員によって構成される学校全体が,被害生徒の苦痛を取り除くことを最優先に,迅速な指導を行うとともに,本件傷害事件に係る情報の収集と記録,情報の共有,いじめの事実確認を行い,迅速にいじめ解決に向けた組織的対応をとることが何よりも求められるというべきである(兵庫県いじめ防止基本方針,姫路市立いじめ防止基本方針,姫路市a中学校いじめ防止基本方針参照)
。特に,控訴人は,A及びD,Eの属す
る柔道部の顧問を務めていたことから,
上記組織的対応に積極的に協力し,
重要な役割を果たすことが期待されていたというべきである。しかるに,前提事実

イ~ウ及び認定事実



のとおり,控訴人は,同日午前

8時頃には柔道部副顧問のF教諭から本件傷害事件発生の報告を受け,これを認知していたのに,自ら生活指導担当教諭,教頭及びG校長に報告して情報の共有を図るなど組織的対応をとることがないまま,Aを医師に受診させるに際し,医師には階段からころんだと説明するように柔道部副顧問のF教諭やAに指示した(本件虚偽説明指示)というのである。上記虚偽説明指示は,いじめと評価される本件傷害事件の結果生じた傷害の原因を自招事故とする旨の虚偽の説明をすることをAに指示するものであって,いじめの被害者であるAの心情に配慮せず,また,Aは,全治1箇月を要する胸骨骨折等という重篤な傷害を負っていたのであり,速やかに医師による適切な診断・治療を受けさせて被害生徒を保護する必要があったところ,正確な情報の下で医師の診断・治療を受けるAの利益を不当に損なうものであった。控訴人の虚偽説明指示は,いじめ事案が発生した場合,被害生徒の苦痛を取り除くことを最優先に,迅速な指導を行うための組織的な対応を求めるいじめ防止法やこれを受けた各いじめ防止基本方針の趣旨に反する不適切なものというほかない。このことは,被害生徒であるAやその保護者等が加害生徒であるDを宥恕していたとしても同様である。そうすると,本件虚偽説明指示は,職員の職の信用を傷つけ,職員の職全体の不名誉となるような行為といえるから,地公法33条(信用失墜行為の禁止)に違反し,同法29条1項1号(地公法等に違反した場合)及び2号(職務上の義務に違反した場合)に該当するほか,同項3号(全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合)にも該当するものであり,控訴人については上記各懲戒事由がある。
懲戒事由の有無に関して控訴人が縷々主張する事情は,いずれも控訴人の虚偽説明指示が上記懲戒事由に該当するとの判断を妨げるものではない。⑵

職務命令違反について

処分説明書(甲2)記載の処分の理由は,控訴人が,平成27年8月4日,加害部員(D)の部活動の大会への出場禁止の校長の職務命令に従わず同部員を大会に出場させたこと(職務命令違反)としている。


前提事実

及び認定事実

のとおり,控訴人は,G校長から本件傷害事

件を理由に近畿大会へDを出場させない旨の職務命令に従わず,Dを近畿大会団体競技に出場させたものである。

控訴人の上記行為は,職員は上司の職務上の命令に忠実に従わなければならないことを義務付ける地公法32条に違反するから,同法29条1項1号
(地公法等に違反した場合)
及び2号
(職務上の義務に違反した場合)
に該当するほか,いじめ事案である本件傷害事件を起こしたばかりのDの近畿大会出場禁止という校長の職務命令に対し,不服であるからといってこれに従わなかったことは,同項3号(全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合)にも該当するものである。


これに対し,控訴人は,上記出場禁止が適法な職務命令であることを争っている。確かに,近畿大会に出場する生徒を決定する権限はG校長にあり,同校長が自らの名において出場する選手の登録申請をしたものであるが,出場登録された選手7人のうち実際に試合に出るのは5人であり,当日この5人を誰にするか決めるのは控訴人であったというのであるから(前提事実


,G校長は,上記権限に基づき,出場登録をされたDを試

合に出さないよう控訴人に対して命じたということになる。もっとも,G校長は,当初Dの近畿大会出場を認めており,市教委(教育長)の指示を受けて上記職務命令をしたものであったところ
(前提事実

)上記職務


命令は,G校長が,市教委の指示によるとはいえ,最終的には自身の判断により,校長としての上記権限に基づき,控訴人に対しDに近畿大会への出場を辞退させることを指示したものということができるから,適法な職務命令というべきである。
撤去指示違反について

処分説明書(甲2)記載の処分は,控訴人が,部活動で使用していた校内の設置物に係る校長からの撤去の繰り返しの指示に長期間対応しなかったこと(撤去指示違反)を処分理由としている。


上記設置物とは,本件物品(前提事実
るところ,前提事実

認定事実

)を指すことが明らかであ

のとおり,控訴人は,G校長から,

平成26年12月初旬,教頭を通じて本件物品の撤去を指示され,同月22日には同校長から直接撤去を指示され,その後も再三にわたり本件物件の撤去を指示されていたにもかかわらず,平成27年10月20日に市教委(教育長)から本件物品及びトレーニングハウスを同年11月20日までに撤去するよう指示を受けてこれに従うまで,本件物品を撤去しなかったものである(トレーニングハウスは指示どおり撤去した。。

処分理由とされた上記校長からの撤去の繰り返しの指示が,G校長による平成26年12月以降の度重なる本件物品の撤去指示を指すことは明らかであり,処分説明書に記載された処分の理由が不明確であるとは認められない。

前記第2の2(関係

地教行法及び姫路市立学校

管理規則の規定によれば,校長は中学の施設管理権を有しており,この施設管理権に基づいて上記撤去の指示をしていたと認められるから,この指示は控訴人に対する適法な職務命令というべきである。
したがって,上記アの撤去指示違反(校長の職務命令に長期間従わなかったこと)は,職員は上司の職務上の命令に忠実に従わなければならないことを義務付ける地公法32条に違反するから,同法29条1項1号(地公法等に違反した場合)及び2号(職務上の義務に違反した場合)に該当するほか,控訴人はG校長の施設管理権に対する侵害行為を長期間にわたり継続したものであるから,同項3号(全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合)にも該当する。
控訴人の縷々主張するところを考慮しても,控訴人の上記行為が上記懲戒事由に当たると解することの妨げとはならない。
3
争点⑵(本件停職における裁量権の逸脱・濫用の有無)について地方公務員の懲戒処分における裁量権
地方公務員につき地公法所定の懲戒事由がある場合に,懲戒処分を行うかどうか,懲戒処分を行うときにいかなる処分を選ぶかは,懲戒権者の裁量に任されている。懲戒権者は懲戒事由に該当すると認められる行為の原因,動機,性質,態様,結果,影響等のほか,当該公務員の上記行為の前後における態度,懲戒処分等の処分歴,選択する処分がほかの公務員及び社会に与える影響等,諸般の事情を総合的に考慮して,懲戒処分をすべきかどうか,また懲戒処分をする場合にいかなる処分をすべきかを,その裁量的判断によって決定することができる。
裁判所がその処分の適否を審査するにあたっては,
懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き,裁量権の範囲を逸脱しこれを濫用したと認められる場合にかぎり,違法であると判断すべきである(最高裁昭和52年12月20日第三小法廷判決・民集31巻7号1101頁,最高裁平成2年1月18日第一小法廷判決・民集44巻1号1頁)

各懲戒事由に係る処分の考慮事情

虚偽説明指示について
控訴人の虚偽説明指示は,顧問を務めるa中学校の柔道部において発生したいじめの一環であったともいえる本件傷害事件について,被害生徒であるA及び同行した副顧問のF教諭に,医師の受診時には階段から転んだことにしておけと虚偽の説明をするよう指示したというものであり,いじめ防止法及びこれを受けた各いじめ防止基本方針の趣旨に反することが明らかであり,非難されるべきもの

イに説示した

とおりである。
もっとも,A自身,当初は副顧問のF教諭に階段から落ちたと説明していたところ,Aの受傷内容からすれば同教諭にとっても一見して上記説明が虚偽であることを見抜いたというのであるから
(認定事実

)AやF


教諭が控訴人の上記指示に従って医師に対し虚偽の説明をしたとはいうものの,Aを診察した医師がそのような説明をたやすく信用したとは考え難く,これにより現にAが適切な治療を受けられなかったなどという事情も認められない。そして,本件傷害事件を含むA,D及びEからの事情聴取の内容は,控訴人から聴取メモを交付されたF教諭により,生徒指導担当教諭や教頭を通じて当日のうちにG校長まで情報が伝えられたというのであり

,控訴人がF教諭に対し,G校長等への報告を妨げるよ

うな何らかの行動をとったという事情も認められない(F教諭は,聴取メモを渡される際,控訴人から同メモをG校長等に渡すことを禁じられたことはない旨明確に証言している。。また,控訴人が,AやF教諭に対して)
医師への虚偽説明を指示したといっても,医師は正当な理由がないのに,その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしてはならないとの厳格な守秘義務を負っていることからして
(刑法134条1項)医

師に対する本件傷害事件の秘匿を直ちにa中学校内での秘匿と同視することはできず,かえって,本件傷害事件については当日中にG校長等まで報告されたのであり,医師に対する虚偽説明指示がその後のa中学校としての組織的対応に支障を来す結果をもたらすものではなかったことが明らかである。その意味で,控訴人の虚偽説明指示が,本件傷害事件の隠蔽ないし隠匿とまで評価することは困難であり,その悪質性の程度がそれほど高いとはいい難い。
また,被控訴人は,大津市立中学校の中学生がいじめにより自殺した事案における被害生徒の担任教諭に対する滋賀県教育委員会の平成25年5月の懲戒処分(減給10分の1・1月)を参考にし,本件傷害事件に係る控訴人の対応はこれよりもはるかに悪質である旨主張する。しかし,上記事案における担当教諭の対応やこれにより被害生徒の自殺という極めて重大な結果を招いたことに鑑みると,上記懲戒処分後にいじめ防止法が施行されたことを考慮しても,控訴人の上記限度での虚偽説明指示が,上記事件において被害生徒が平成23年10月に自殺した直前の上記教諭の対応(甲11)と比較して,はるかに悪質であるなどとは断じ難い。なお,被控訴人は,控訴人の虚偽説明指示は,人事院の定める懲戒処分の指針
(甲8)
における
部下職員の非違行為を知得したにもかかわらず,その事実を隠蔽し,又は黙認した場合と同等のものと評価できると主張する。しかし,加害生徒は公務員でも部下職員でもないのであるから,そのような評価をする余地はなく,処分行政庁もそのような見解に立って懲戒処分の量定をしていたものではないから,上記主張は採用できない。イ
職務命令違反について
控訴人は,Dを近畿大会に出場させないという校長の職務命令に対して当初から同大会後に至るまで不服ないし抗議の意思を表明しており(認定事実

)上司の指示を軽視する態度が顕著であったというべきであ


り,また,控訴人がこのような態度をとった原因が,近畿大会での勝利の獲得を教育的配慮に優先させたこと,すなわち,被控訴人のいう勝利至上主義に基づく側面があったことは否定できない。これらのことに鑑みると,上記職務命令違反の非違行為としての程度は決して軽いとはいえない。
もっとも,G校長は,いったんはDの近畿大会出場を認めていたのであり,その旨の出場選手登録の書面にも押印していたのに,同大会直前の市教委からの指示を受けるや,これを撤回し,一方的にDを出場させないよう控訴人に指示したものであり,このようなG校長の一貫性を欠く指示に容易に納得できなかった控訴人の心情にも理解し得る側面がないではない(G校長は,Dの近畿大会出場を認めたのは,条件付のものであり,状況の変化があれば出場禁止もあり得る旨を職員会議で表明していた旨証言するが,本件での状況の変化とは市教委からG校長への出場禁止の指示があったことに尽きるのであり,同校長において事前に市教委等とDの近畿大会への出場の可否等について協議していたこともうかがわれない。。)
また,G校長は,校長としてDの近畿大会への出場資格を取り消す権限を有していたのに,自らその権限を行使せず,控訴人の責任においてDを出場禁止にするよう指示したともいい得ること,控訴人としては,中学3年生のDにとっては最後の大きな大会となる近畿大会には出場させてやりたいとの思いもあって職務命令違反に及んだという側面があることも否定できないこと,被害生徒であるAの保護者も含む複数の保護者らがDの出場を支持していたこと(認定事実

)等の控訴人に酌むべき事情も認め

られる。

撤去指示違反について
控訴人は,校舎内に柔道部員等の便宜のため設置していた本件物品の撤去を指示するG校長の職務命令に長期間応じていなかったものであり,上記職務命令違反と同様に上司の指示を軽視する態度が顕著であったこと等からして,過去の撤去指示違反についても懲戒処分の対象に加えた処分行政庁の判断が不当とまではいえない。
他方,控訴人は,姫路市教育長の平成27年10月20日付け施設管理に係る改善指示書の交付を受けたG校長から改めて同年11月20日を期限とする本件物品及びトレーニングハウスの撤去の指示を受け,同期限までにこれらの撤去を完了したこと,トレーニングハウスについては,同指示に至るまで撤去を指示されたことはなかったというのであるから,撤去指示違反に関する懲戒事由は,本件物品の撤去を再三にわたり指示されながら,
約1年近くにわたり,
これに従わなかったという点に限られる。
しかし,G校長は,a中学校に着任した平成24年4月頃には本件物品の存在を認識していながら,寄付の申出があった場合の所定の手続を行おうともせず,控訴人にその撤去を求めることもなく放置していたものであるから
(認定事実

)少なくとも平成26年12月頃まではその設置を事実


上黙認していたと認めるほかはない。また,本件物品は,柔道部卒業生や保護者等から寄贈されたものであり,これを撤去するとなれば,これらの寄贈者らに対する説明等が必要であり,直ちにG校長の指示に応じて撤去することが困難であったという事情も理解できなくはない。そして,G校長は,控訴人から寄贈者に対する説明等を同校長自ら行うことを求められながら(G校長は,a中学校内にある施設,設備等について管理義務を負うのであり
(乙43)同校長に対し寄贈者に対する説明を求めること自体

は正当というべきである。,これに応じようとしなかったのであり,同校)
長のかかる対応にも問題があるなど,控訴人にも酌むべき事情がある。処分の相当性

処分行政庁は,各非違行為単独では,虚偽説明指示については減給10分の1・6月相当,職務命令違反及び撤去指示違反についてはそれぞれ戒告相当と考えられるところ,これらを総合して本件停職(停職6月)の量定をしたと主張するので,この点について以下検討する。


によれば,控訴人の虚偽説明指示がそれ自体としては減
給の懲戒処分に相当するとの処分行政庁の判断自体は社会通念上是認し得る(ただし,減給10分の1・1月から2段階も加重して減給10分の1・6月相当としたという量定(これは減給処分の中で最も重い処分に当たる。については,

社会通念に照らし合理的な裁量権の範囲を逸脱すると
の疑いが払拭できない。。次に,上記


イによれば,職務命令違反につい

て,単独では戒告相当とした処分行政庁の判断は,社会通念上是認できなくはない。そして,上記

によれば,撤去指示違反について,単独では戒

告相当とした処分行政庁の判断は,社会通念に照らし是認し得なくもなく,少なくともこれを超える懲戒処分相当とはいえない。

複数の非違行為が行われた場合や情状等により処分を加重する場合においても,自ずと合理的な限度がある上,個別の懲戒事由等も事案により極めて多様であるから,減給については期間(6月以下)及び減額(給料の月額の10分の1以下)
につき上限以下の範囲で妥当性を図ることができ,
停職についても期間6月以下の範囲で選択することができる(関係法令等の定め

)したがって,

処分行政庁において処分基準を定めることさえし

ないまま(前


,被控訴人が主張するように処分を11段階(うち減給

については10分の1の1月・3月・6月,停職については1月・3月・6月の各3段階のみ)に画一的に区分して,何らかの加重をする場合には直ちに上位の区分とするという方法が合理的であるとはいい難い。そして,本件においては,3件の非違行為のうち,処分行政庁が最も重大な非違行為であるとする虚偽説明指示についても減給相当とされる(ただし,これが10分の1・6月に相当するとの被控訴人の主張がにわかに是認できないことは,前記のとおりである。
)から,これに戒告相当の2件
の非違行為を併合し,かつ控訴人には平成10年に生徒への体罰により減給10分の1・1月の懲戒処分を受けた前歴があること(乙15)を勘案したとしても,減給よりはるかに重い処分と考えられる停職を選択すること自体(処分行政庁において,同様の加重方法により停職とした前例があることはうかがえない。,社会通念上裁量権の範囲を逸脱するものという)
ほかない。ましてや,停職の中でも最長期間であり,懲戒免職に次ぐ極めて重い処分といえる停職6月と量定することが,処分行政庁の合理的な裁量の範囲内にあるものとは到底考えられない。
処分取消請求等の当否
以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,本件停職は,処分行政庁が懲戒処分の種別の選択において社会観念上著しく妥当を欠き,処分行政庁に委ねられた合理的な裁量権の範囲を逸脱したものであって,違法な懲戒処分というべきものであるから,取消しを免れない(なお,控訴人は既に被控訴人を退職しているが,本件停職後の給与等の支払を受けていないほか,退職金の金額等にも影響し得るので,本件停職の取消しによって回復すべき法律上の利益がある。。

また,本件停職は,違法な公権力の行使に該当し,かつ上記懲戒処分の種別の選択について過失があったと認められるから,処分行政庁の属する被控訴人は,国家賠償法1条1項に基づき,控訴人に生じた損害を賠償すべき義務を負う。
4
争点

(本件配置換えの適否)について

控訴人は,本件配置換えが違法であると主張し,その理由として,新所属校への悪影響があること,控訴人の意思に反すること,退職を強要するに等しいことを挙げるので検討する。
転任(配置換えを含む。
)は任命権の行使の一態様であり,任命権者に付与さ
れた権限の行使として行われるものである
(関係法令等の定め

)この権限の


行使について地公法は要件を定めておらず,
職員の同意も要求していないから,
どのような配置換えをするかは任命権者の合理的な裁量に委ねられていると解される。もっとも,地方公共団体における教育行政は,教育の機会均等,教育水準の維持向上,地域の実情に応じた教育の振興が図られるよう,公正かつ適正に行われなければならず
(地教行法1条の2)配置換えはこのような地方教

育行政の基本理念が実現されるよう適切な人事配置をするために行われるべきである。したがって,配置換えが地方教育行政の趣旨,目的に反する意図,態様のものであるとか,通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を職員に負わせるものである場合には,裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用するものであって違法な公権力の行使に当たると解される。
本件配置換えは,平成20年4月にa中学校に赴任してから,既に8年になる控訴人を,同じ姫路市内にある別の中学校に配置換えする処分であり,勤務条件等において控訴人に不利益を及ぼすとは認められない。これによる不利益として控訴人が主張する内容は,
a中学校の柔道部の指導ができなくなること,
停職期間満了後の年度途中から新所属先の中学校で職務を開始しても職場での信頼を得られないこと等であり,控訴人は,本件停職の懲戒処分を受けた後,しばらくの間,利害得失を十分検討した上で,本件配置換えの3箇月後に退職することを決断したものと認められる。しかし,以上の点を総合しても,本件配置換えが退職を強要するに等しいものであったとまで認めることはできず,処分行政庁に委ねられた合理的な裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したとまでは認められない。したがって,本件配置換えが違法であるとの控訴人の主張は採用できない(なお,前記判断のとおり本件停職は重きに失する違法な処分であるところ,仮に控訴人に対する懲戒処分が減給以下にとどめられていれば,本件配置換えを受けても控訴人が退職を決断することはなかった可能性があるものの,この点は後記慰謝料額の算定において考慮すれば足りる。。)
5
争点

(損害額)について

給与・賞与相当額

0円

被控訴人においては,停職者は停職の期間中いかなる給与も支給されないとされているところ(


,控訴人について,本件停職の期

間初日である平成28年2月24日から控訴人が退職した同年6月30日まで4箇月余の期間の給与・賞与が控訴人に支払われなかったこと及び平成27年の給与・賞与(総所得金額)が621万9136円であったことは争いがない。
控訴人は,
上記給与・賞与相当額の損害賠償を求めるところ,
当裁判所は,
本件停職が違法であって取り消すべきものと判断するから,控訴人は,被控訴人に対し,その後になされる懲戒処分の程度に応じて,所定の給与・賞与の支払請求権を取得することになる。したがって,控訴人は,未だ上記給与・賞与相当額の損害を被ったものとはいえない。
慰謝料

50万円

前記のとおり,控訴人は,非違行為に比して不当に重く,懲戒免職に次ぐ重さでもある停職6月という懲戒処分を受け,匿名とされながらもa中学校の関係者等には容易に控訴人のことであると分かる形で具体的に報道された(前提事実


。また,控訴人は,本件停職により,控訴人が公立中学校教諭

として生徒の教育指導に従事することができないまま,退職の途を選ぶに至ったものであり,控訴人の退職の決断が違法な本件停職に起因するとも考えられる。しかし,他方,控訴人は,本判決により本件停職が取り消されることにより上記精神的苦痛の相当部分が慰謝されることになることその他一切の事情を考慮すると,控訴人の精神的苦痛に対する慰謝料は50万円とするのが相当である。
弁護士費用

5万円

本件停職と相当因果関係がある本件訴訟の弁護士費用は,5万円とするのが相当である。
合計
被控訴人は,控訴人に対し,上記
を負うことになる。
第4

結論
合計55万円の損害賠償義務

以上によると,控訴人の請求は,本件停職の取消し並びに国家賠償法1条1項に基づく損害賠償55万円及びこれに対する不法行為後の日
(控訴人の退職の日)
である平成28年6月30日から支払済みまで民法所定年5%の割合による遅延損害金を請求する限度で理由があるから認容し,その余の請求は理由がないから棄却すべきところ,これと異なる原判決を本判決主文第1項のとおり変更することとして,主文のとおり判決する。
大阪高等裁判所第14民事部

裁判長裁判官

田中俊次
裁判官

竹内浩史
裁判官冨上智子は,差し支えのため署名押印することができない。
裁判長裁判官

田中俊次
トップに戻る

saiban.in