判例検索β > 平成30年(わ)第592号
殺人被告事件
事件番号平成30(わ)592
事件名殺人被告事件
裁判年月日平成30年12月19日
法廷名福岡地方裁判所
裁判日:西暦2018-12-19
情報公開日2019-01-15 16:00:11
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平成30年12月19日宣告

平成3

殺人被告事件(裁判員裁判)
主文
被告人を懲役15年に処する
未決勾留日数中110日をその刑に算入する。
福岡地方検察庁で保管中の包丁1本(同庁平成30年領第1639号符号1)を没収する。
理由
(犯行に至る経緯)
被告人は,かねてより単身で家族とも疎遠な暮らしを送っていたが,平成29年8月,デリバリーヘルス店を利用した際,従業員であったA(以下被害者という。
)と知り合い,その後繰り返し被害者を指名する中で,被害者に好意を抱くと共に被害者も被告人に好意を持っていると感じ,平成30年3月以降は店を通さずに被害者と会うようになった。
その後も,
被害者と会うときには金銭を支払っており,
被害者からはあくまでも客として被告人と会っている旨告げられていたが,被告人は互いに好意を抱き合っていると思い続け,将来は一緒に飲食店を営めるかもしれないなどとの期待も募らせた。しかし,同年4月末,泊りがけで被害者の勤務先まで出掛けた際に被害者とけんか別れし,その後被害者から会うことを断られるなどしたため,
被害者との関係が続けられないなら被害者を殺して自分も死のうと思い,同年5月3日,包丁を携えて被害者方まで赴いたが,被害者から謝罪を受けたため心中を翻意し,不安や不満を抱えつつも,これまでの関係が続くことを期待した。同月6日夜,被告人は被害者と会い,複数の飲食店を訪れて食事や飲酒を楽しんだ後,被害者を伴って被告人方に入ったが,その後まもなく被害者が「帰りたい。」などと言い出した。被告人はこれに立腹し,被害者を殴る蹴るなどしたが,その際,被害者から

あんたなんか嫌いよ。

と告げられたため,被害者に対する怒りを爆発
させ,とっさに被害者の殺害を決意した。
(罪となるべき事実)
被告人は,平成30年5月6日午後10時28分頃から同日午後11時34分頃までの間に,福岡市(以下略)の当時の被告人方において,被害者(当時40歳)に対し,殺意をもって,手に持った包丁(刃体の長さ約15.3cm。福岡地方検察庁平成30年領第1639号符号1)をその胸部に2回突き刺し,よって,その頃,同所において,同人を心臓刺創による出血性ショックのため死亡させて殺害した。
(量刑の理由)
本件は,一人の尊い生命が奪われた重大な事案であり,このことは,本件の量刑を検討する上で前提とされるべきである。
その上で犯行の態様についてみると,胸を包丁で2回突き刺すという行為はもとより危険かつ残忍なものであるものの,殺人事件の中で特に悪質性が高い方であるとはいえない。ただ,被害者の身体に生じた傷が約13ないし15cmと深い上にいずれも心臓を貫通し,2回目の攻撃では被害者の身体に包丁の柄までが入り込んでいたことから,殺意は大変強かったと認められ,この点は見過ごすことができない。動機等についてみると,被告人がデリバリーヘルス店従業員であった被害者にのめり込んで金銭を費やした経緯には理解できる面もある。しかし,そのような経緯があったとしても,被害者の殺害を決意したことは,被害者の気持ちを顧みることなく一方的に自己の感情を満たそうとした身勝手なものというほかなく,動機や経緯の点で大きく酌むべき事情があるとまではいえない。また,被告人が犯行直前に相当量の飲酒をしたこともうかがわれるが,被告人の犯行後の合理的な行動からしてアルコールが被告人の判断や行動に大きな影響を与えていたとは考えられない。さらに,20年以上前のことではあるが,被告人は,本件同様包丁を使用した殺人未遂等により懲役3年の実刑判決を受けて服役した経験があったことも無視できず,
被告人に対する非難を幾分か強める事情である。
このような犯情にかんがみると,本件は,同種事案(量刑検索システムの検索条件を,処断罪:殺人,共犯関係等:単独犯,組織的以外,動機:男女関係(DVを除く)
,凶器等:あり,刃物類,処断罪と同一又は同種の罪の件数:1件として抽出した結果検索できる事案群)の中では,中間的な部類に属すると考えられる。その上で,刑を調整する要素として,被告人が事実を認め,被害者の遺族に被害弁償の申出をするなど反省の態度を示していること等の被告人のために酌むべき事情を考慮し,
被告人に対しては,
主文のとおりの刑に処することが相当と判断した。
(求刑・懲役16年,主文同旨の没収,弁護人の科刑意見:懲役12年)平成30年12月20日
福岡地方裁判所第1刑事部

裁判長裁判官

丸田
裁判官

岩田淳
裁判官

中山
さほ子

顕之
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