判例検索β > 平成30年(行ケ)第10080号
審決取消請求事件 特許権 行政訴訟
事件番号平成30(行ケ)10080
事件名審決取消請求事件
裁判年月日平成31年1月24日
法廷名知的財産高等裁判所
裁判日:西暦2019-01-24
情報公開日2019-01-25 12:00:34
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平成31年1月24日判決言渡
平成30年(行ケ)第10080号
口頭弁論終結日

審決取消請求事件

平成30年12月3日
判原決
ハネウェル・インターナショナル・インク


訴訟代理人弁護士

窪同乾同中岡起同今井優仁同本弥友子同鈴木佑被告田英一裕阿郎介代一子郎株式会社デンソーウェーブ

訴訟代理人弁護士

櫻林正己
訴訟代理人弁理士

碓氷裕彦主文1
原告の請求を棄却する。

2
訴訟費用は原告の負担とする。

3
この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由

第1

請求
特許庁が無効2017-800019号事件について平成30年1月31日にした審決を取り消す。
第2
1
事案の概要
特許庁における手続の経緯等



株式会社デンソーは,平成9年10月27日,発明の名称を光学情報読取装置とする発明について特許出願
(特願平9-294447号。本以下件出願という。)をし,平成18年7月7日,特許権の設定登録(特許番号第3823487号。請求項の数2。以下,この特許を本件特許という。甲6)を受けた。
その後,被告は,株式会社デンソーから,本件特許に係る特許権の譲渡を受け,その旨の移転登録(受付日平成24年7月2日)を受けた(乙6)。


被告は,平成24年12月7日付けで,本件特許の明細書及び特許請求の範囲を訂正する旨の訂正審判を請求(訂正2012-390156号事件)し(乙2の1,2),平成25年2月19日付けで訂正明細書及び特許請求の範囲を補正する旨の手続補正をした(以下,手続補正後の訂正請求を本件訂正という。甲8)。被告は,特許庁が同年3月19日に訂正拒絶審決をしたため,同年4月25日付けで,その取消しを求める審決取消訴訟(知的財産高等裁判所平成25年(行ケ)第10115号事件)を提起した。
知的財産高等裁判所は,平成27年2月26日,上記訂正拒絶審決を取り消す旨の判決をし,同判決は確定した。
その後,特許庁は,同年7月2日,本件訂正を認める旨の審決をした(乙1)。



原告は,平成29年2月7日,本件特許の請求項1に係る発明の特許について特許無効審判を請求した(甲9)。
特許庁は,上記請求を無効2017-800019号事件として審理を行い,平成30年1月31日,

本件審判の請求は,成り立たない。

との審決(以下本件審決という。)をし,その謄本は,同年2月8日,原告に送達された。


原告は,平成30年6月7日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。

2
特許請求の範囲の記載
本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,
次のとおりである
(以下,
請求項1に係る発明を本件発明という。甲8,乙1)。

【請求項1】
複数のレンズで構成され,読み取り対象からの反射光を所定の読取位置に結像させる結像レンズと,
前記読み取り対象の画像を受光するために前記読取位置に配置され,その受光した光の強さに応じた電気信号を出力する複数の受光素子が2次元的に配列されると共に,当該受光素子毎に集光レンズが設けられた光学的センサと,該光学的センサへの前記反射光の通過を制限する絞りと,
前記光学的センサからの出力信号を増幅して,閾値に基づいて2値化し,2値化された信号の中から所定の周波数成分比を検出し,検出結果を出力するカメラ部制御装置と,
を備える光学情報読取装置において,
前記読み取り対象からの反射光が前記絞りを通過した後で前記結像レンズに入射するよう,前記絞りを配置することによって,前記光学的センサから射出瞳位置までの距離を相対的に長く設定し,
前記光学的センサの中心部に位置する受光素子からの出力に対する前記光学的センサの周辺部に位置する受光素子からの出力の比が所定値以上となるように,前記射出瞳位置を設定して,露光時間などの調整で,中心部においても周辺部においても読取が可能となるようにしたことを特徴とする光学情報読取装置。
3
本件審決の理由の要旨
本件審決の理由は,別紙審決書(写し)のとおりである。その要旨は,以下のとおり,原告主張の無効理由1(明確性要件違反)及び無効理由2(実施可能要件違反)は,いずれも理由がないというものである。
なお,本件審決は,本件発明の構成を次のとおり分説した(以下,各構成を構成Aなどという。)。
A
複数のレンズで構成され,読み取り対象からの反射光を所定の読取位置に結像させる結像レンズと,

B
前記読み取り対象の画像を受光するために前記読取位置に配置され,その受光した光の強さに応じた電気信号を出力する複数の受光素子が2次元的に配列されると共に,当該受光素子毎に集光レンズが設けられた光学的センサと,

C
該光学的センサへの前記反射光の通過を制限する絞りと,

D
D1

前記光学的センサからの出力信号を増幅して,

D2

閾値に基づいて2値化し,

D3

2値化された信号の中から所定の周波数成分比を検出し,

D4

検出結果を出力する

カメラ部制御装置と,
Eを備える光学情報読取装置において,
F
前記読み取り対象からの反射光が前記絞りを通過した後で前記結像レンズに入射するよう,前記絞りを配置することによって,前記光学的センサから射出瞳位置までの距離を相対的に長く設定し,

G
前記光学的センサの中心部に位置する受光素子からの出力に対する前記光学的センサの周辺部に位置する受光素子からの出力の比が所定値以上となるように,前記射出瞳位置を設定して,露光時間などの調整で,中心部においても周辺部においても読取が可能となるようにしたことを特徴とするH
光学情報読取装置。



無効理由1(明確性要件違反)について
原告(請求人)は,本件発明の構成Dの所定の周波数成分比,構成Fの相対的に長く設定し及び構成Gの所定値について,特許請求の範囲の記載が明確でなく,本件特許は,特許法36条6項2号に規定する要件(明確性要件)に違反する旨主張する。
しかしながら,①2次元バーコード(いわゆるQRコード)の位置決めパターン(位置決め用シンボルの中心を横切る線における明と暗のパターン)の検出に関し,明が連続する長さと暗が連続する長さとの比が所定のものであることの検出を周波数成分比の検出と表現することは,本件出願当時の技術常識であること(甲5,18)などからすると,構成Dの所定の周波数成分比の検出とは,2値化された光学的センサからの出力信号を増幅した信号における明と暗のパターンにおける明の長さと暗の長さの比が所定のものであることを検出する意味であることは明らかである,
②構成Fの
相対的に長く設定し
とは,
前記読み取り対象からの反射光が前記絞りを通過した後で前記結像レンズに入射するよう,絞りを配置していないものを比較対象とし,相対的に長く設定することであることは,特許請求の範囲の記載から明らかである,③構成Gの所定値は,露光時間などの調整で,中心部に位置する受光素子からの出力信号を2値化するために用いられる閾値に基づいて周辺部に位置する受光素子からの出力信号を2値化することが可能であるような強さの光を周辺部に位置する受光素子が受光できるような,中心部に位置する受光素子からの出力に対する周辺部に位置する受光素子からの出力の比の値を意味することは,特許請求の範囲の記載から一義的に定まるから,原告の上記主張は理由がない。


無効理由2(実施可能要件違反)について
原告(請求人)は,本件発明の構成Dの所定の周波数成分比,構成F
の相対的に長く設定し及び構成Gの所定値をそれぞれ含む構成D,F及びGについて,発明の詳細な説明の記載が明確かつ十分でなく,本件特許は,特許法36条4項に規定する要件(実施可能要件)に違反する旨主張する。
しかしながら,①所定の周波数成分比を含む構成Dについて,所定の周波数成分比の検出の意味は明確であり,本件訂正後の明細書(以下,図面を含めて本件明細書という。)には,カメラ部制御装置50が周波数分析器58を間接的に制御することによって所定の周波数成分比を検出し,この検出結果が反映された情報をシステム制御装置70に出力する構成が明示されている,
②本件明細書の【0008】,【0
009】,【0040】及び【0041】の記載によれば,発明の詳細な説明は,当業者が課題解決手段としての構成Fを実施できる程度に明確かつ十分に記載したものである,③本件明細書の【0041】及び【0042】の記載によれば,光学的センサの中心部と光学的センサの周辺部を区別し,両者に位置する受光素子からの出力同士の比が所定値以上
となる絞りの位置としておくことで,露光時間等の読取に際して調整可能なパラメータの調整を前提としつつも適切な読取が可能であることが示されており,発明の詳細な説明は,構成Gに対応する技術内容を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものであるから,原告の上記主張は理由がない。
第3
1
当事者の主張
取消事由1(明確性要件の判断の誤り)について


原告の主張

構成Dの所定の周波数成分比について
本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の周波数成分比との文言は一般的な用語ではなく,本件明細書(甲6,8,乙2の2)にも,周波数分析器58は,2値化された走査線信号の内から所定の周波数成分比を検出しとの記載(【0031】)があるのみで,いかなるものが所定の周波数成分比であるのか何ら説明がない。また,同一出願人が出願した発明に係る2件の公開特許公報(甲5,18)のみから,所定の周波数成分比とは,明と暗のパターン
における明の長さと暗の長さの比が所定のものであることを意味
することが,本件出願当時の技術常識であると認定することはできない。したがって,構成Dの所定の周波数成分比の記載は,明確であるとはいえない。

構成Fの相対的に長く設定しについて
本件発明の特許請求の範囲(請求項1)において,相対的にの基準が明確でないため,相対的に長く設定しの記載からは,射出瞳位置までの距離がどのように設定されていることを意味するのか,どのようなものが本件発明の技術的範囲に含まれるのかを理解することができない。したがって,構成Fの相対的に長く設定しの記載は,明確であるとはいえない。


構成Gの所定値について
構成Gの所定値については,本件発明の特許請求の範囲(請求項1)に規定がなく,本件明細書にも,それがいかなる値を意味するのかの手掛かりとなる記載がないため,本件明細書に接した当業者は,所定値がいかなる値であれば本件発明の課題が解決されるのかを理解することができない。
本件審決は,構成Gの所定値は,中心部に位置する受光素子からの出力に対する周辺部に位置する受光素子からの出力の比の値を意味することは,特許請求の範囲の記載から一義的に定まるというが,本件明細書では,中心部に位置する受光素子からの出力信号を2値化するために用いられる閾値は明らかにされておらず,この閾値をどこに設定するかによって所定値も変化することになるため,一義的に定まらないから,本件審決が示す解釈に従っても,どのようなものが本件発明の技術的範囲に含まれるのか外延が不明確である。
したがって,構成Gの所定値の記載は,明確であるとはいえない。エ
小括
以上のとおり,本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の構成Dの所定の周波数成分比,構成Fの相対的に長く設定し及び構成Gの所定値の記載はいずれも明確でなく,本件特許は明確性要件に違反するから,これと異なる本件審決の判断は,誤りである。



被告の主張

構成Dの所定の周波数成分比について
本件明細書の発明の詳細な説明には,カメラ部制御装置のAGCアンプ52による増幅の増幅率に係る制御を通じて2値化及び所定の周波数成分比の検出を制御する構成が,構成Dのカメラ部制御装置の制御に対応している旨が記載されている(【0030】~【0034】)。
そして,本件出願当時の技術水準(甲5,18)を踏まえて本件明細書を読めば,所定の周波数成分比とは,明と暗のパターンにお
ける明の長さと暗の長さの比が所定のものであることを示すこと
は明らかである。


構成Fの相対的に長く設定しについて
構成Fは,前記読み取り対象からの反射光が前記絞りを通過した後で前記結像レンズに入射するよう,前記絞りを配置することによって,前記光学的センサから射出瞳位置までの距離を相対的に長く設定しというものであり,絞りを配置することによって,射出瞳位置までの距離が相対的に長く設定されるという因果関係が明確に記載されている。
また,本件明細書の発明の詳細な説明にも,相対的に長く設定しにおける相対的の比較対象が前記読み取り対象からの反射光が前記絞りを通過した後で前記結像レンズに入射するよう,前記絞りを配置しない絞りの配置であることは,明確に説明されている(【0009】,【0010】,【0040】及び【0041】,図6)。

構成Gの所定値について
構成Fのとおり,絞りをレンズの前に配置し,構成Gのとおり,光学的センサの中心部に位置する受光素子からの出力に対する光学的センサの周辺部に位置する受光素子からの出力の比が所定値以上となるように射出瞳位置を設定すれば,光学的センサの周辺部の光量不足の課題が解決し得ることを理解することができる(本件明細書の【0004】~【0006】,【0041】,【0042】)。
このように本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載は,構成F及び構成Gにおいて規定された絞りの配置及び射出瞳位置の設定によって,光学的センサの中心部においても周辺部においても適切な読み取りが可能となるという作用効果を示すものであり,構成Gの所定値は,射出瞳位置の設定を中心部に位置する受光素子からの出力に対する光学的センサの周辺部に位置する受光素子からの出力の比を定める

であって,
所定値を特定の値に一義的に定めることを規定するものではない。

小括
以上のとおり,本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の構成Dの所定の周波数成分比,構成Fの相対的に長く設定し及び構成Gの所定値の記載はいずれも明確であり,本件特許に明確性要件違反はないとした本件審決の判断に誤りはないから,原告主張の取消事由1は理由がない。
2
取消事由2(実施可能要件の判断の誤り)について


原告の主張

所定の周波数成分比の記載を含む構成Dについて
構成Dの所定の周波数成分比の記載が明確でないことは,前記1⑴アのとおりであり,当業者は

本件明細書から,構成Dの所定の周波数成分比
の技術的意義を理解することができない。
また,
本件明細書には,
所定の周波数成分比の検出の実現方法についても何ら記載されて
いないから,当業者は,本件明細書に基づいて,本件発明を実施することができない。

相対的に長く設定しの記載を含む構成Fについて
構成Fの相対的に長く設定しとの記載が明確でないことは,前記1⑴イのとおりである。当業者は,本件明細書から,射出瞳位置をどのように設定すれば相対的に長く設定することができるのかを理解することができないから,本件明細書に基づいて,本件発明を実施することができない。


所定値の記載を含む構成Gについて
構成Gの所定値の記載が明確でないことは,前記1⑴ウのとおりである。当業者は,所定値がどのようなものであるかを理解することができない以上,構成Gの所定値以上となるように,前記射出瞳位置を設定することもできない。したがって,当業者は,本件明細書に基づいて,本件発明を実施することができない。


小括
以上によれば,本件明細書の発明の詳細な説明は,当業者が本件発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえないから,本件特許に実施可能要件違反はないとした本件審決の判断は誤りである。⑵

被告の主張
本件発明の構成Dの所定の周波数成分比,構成Fの相対的に長く設定し及び構成Gの所定値の意味が明確であることは,前記1⑵のとおりである。
そして,本件明細書の発明の詳細な説明は,当業者が本件発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものであり,本件特許に実施可能要件違反はないとした本件審決の判断に誤りはないから,原告主張の取消事由2は理由がない。

第4
1
当裁判所の判断
取消事由1(明確性要件の判断の誤り)について


本件明細書の記載事項等について

本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載は,前記第2の2のとおりである。
本件明細書(甲6,8,乙2の2)の発明の詳細な説明には,次のような記載がある(下記記載中に引用する図3ないし図6につい
ては別紙1を参照)。
(ア)

【0001】

【発明の属する技術分野】
本発明は,2次元コードなどの読み取り対象に光を照射し,その反射光から読み取り対象の画像を読み取る光学的読取装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来,例えば2次元コードラベルなどの読み取り対象に光を照射し,2次元コードラベルからの反射光を受光して2次元コードラベルの画像データである2次元コードデータを読み取る装置(2次元コードリーダ)が知られている。この2次元コードリーダでは,2次元コードからの反射光を結像レンズによって所定の読取位置に結像させ,その読取位置に配置された例えばCCDエリアセンサなどの光学的センサによって2次元コードデータを読み取るようにしていた。なお,結像レンズは通常複数枚のレンズが組にされた組レンズとして構成されており,その中心付近に絞りが配置されている。
【0003】
ところで,例えばCCDエリアセンサなどの光学的センサでは,受光した光の強さに応じた電気信号を出力する複数の受光素子が2次元的に配列されている。そして,感度向上のため,例えば図5に示すように,受光素子41a毎に集光用のマイクロレンズ(集光レンズと称す)41bが設けられたCCDエリアセンサ41もある。これは,図5(a)に示すように,受光素子41aに対して垂直に入射する光が集光レンズ41bによって集光されることで見かけ上の開口面積を拡大し,感度を向上させるというものである。
(イ)

【0004】

【発明が解決しようとする課題】
しかしながら,図5(b)に示すように,受光素子41aに対して光が斜めに入射した場合には,集光レンズ41bによって集光されることで逆に受光素子41aへの集光率が低下し,その結果,感度が低下する。センサ単位で見てみると,図5(a)に示すように受光素子41aに対して光が垂直に入射するのはセンサの中央部にある受光素子41aであり,
センサ周辺部にある受光素子41aに対しては光が斜めに入射する。その結果,図5(c)のグラフ中に実線で示すように,CCDエリアセンサ41からの出力は,センサ中央部の出力に比べてセンサ周辺部の出力が落ち込んだ状態となり,その周辺部において読取に必要な光量が確保できず,適切な読み取りができないという問題も生じる。
【0005】
そこで,上述したような受光素子毎に集光レンズが設けられた光学的センサを備えている場合に,光学的センサの周辺部の受光素子に対する集光レンズによる集光率の低下を極力防止し,適切な読み取りを実現する光学情報読取装置を提供することを目的とするものである。
(ウ)

【0006】

【課題を解決するための手段及び発明の効果】
上記課題を解決するためになされた本発明の光学情報読取装置は,複数のレンズで構成され,読み取り対象からの反射光を所定の読取位置に結像させる結像レンズと,
前記読み取り対象の画像を受光するために前記読取位置に配置され,その受光した光の強さに応じた電気信号を出力する複数の受光素子が2次元的に配列されると共に,当該受光素子毎に集光レンズが設けられた光学的センサと,
該光学的センサへの前記反射光の通過を制限する絞りと,
前記光学的センサからの出力信号を増幅して,閾値に基づいて2値化し,2値化された信号の中から所定の周波数成分比を検出し,検出結果を出力するカメラ部制御装置と,
を備える光学情報読取装置において,
前記読み取り対象からの反射光が前記絞りを通過した後で前記結像レンズに入射するよう,前記絞りを配置することによって,前記光学的センサから射出瞳位置までの距離を相対的に長く設定し,
前記光学的センサの中心部に位置する受光素子からの出力に対する前記光学的センサの周辺部に位置する受光素子からの出力の比が所定値以上となるように,
前記射出瞳位置を設定して,
露光時間などの調整で,
中心部においても周辺部においても読取が可能となるようにしたことを特徴とする。
【0007】
本光学情報読取装置によれば,結像レンズが読み取り対象からの反射光を所定の読取位置に結像させ,その読取位置に配置された光学的センサが読み取り対象の画像を受光する。ここで,光学的センサは,受光した光の強さに応じた電気信号を出力する複数の受光素子が2次元的に配列されていると共に,受光素子毎に集光レンズが設けられているため,結像レンズによって結像された読み取り対象からの反射光は,集光レンズによって集光されて受光素子に入射する。
【0008】
したがって,反射光が受光素子に対して垂直に入射する場合には,集光レンズによって集光されることで見かけ上の開口面積が拡大し,感度を向上させる効果があるが,反射光が受光素子に対して斜めに入射する場合には,集光レンズによって集光されることで逆に受光素子への集光率が低下して感度が低下する原因ともなる。光学的センサ単位で見ると,センサの中央部にある受光素子には反射光が垂直に入射するが,センサ周辺部にある受光素子に対しては反射光が斜めに入射する傾向にある。そのため,このセンサ周辺部にある受光素子に対して入射する反射光が極力斜めにならないようにすれば,適切な読取の点で有効である。【0009】
そこで,本光学情報読取装置においては,読み取り対象からの反射光が絞りを通過した後で結像レンズに入射するよう,絞りを配置している。つまり,結像レンズの複数のレンズ間に介装されていた場合(図6(a)参照)に比べて,複数のレンズで構成される結像レンズよりも前に配置した場合(図6(b)参照)には,光学的センサから絞りまでの光学的な距離が相対的に長くなる。絞りよりも像側(つまり光学センサ側)にある光学系によって物体空間に生じる絞りの虚像を射出瞳(exitpupil)というが,光学的センサから射出瞳までの距離(射出瞳距離)は,光学的センサから絞りまでの光学的距離が長くなれば,それに伴って長くなるため,このような絞りの配置とすることで,結果的に光学的センサから射出瞳位置までの距離を相対的に長く設定することができる。
【0010】
そして,光学的センサから射出瞳位置までの距離が長くなれば,センサ周辺部にある受光素子に対して入射する反射光が斜めになる度合も,それに伴って小さくなる。したがって,光学的センサの周辺部の受光素子に対する集光レンズによる集光率の低下を極力防止することができ,適切な読み取りの実現に寄与する。
【0011】
最終的には適切な読み取りを実現することが目的であるので,本発明の光学情報読取装置においては,光学的センサの中心部に位置する受光素子からの出力に対する光学的センサの周辺部に位置する受光素子からの出力の比が所定値以上となるように,射出瞳位置を設定している。このようにしておけば,中央部と周辺部の出力差を考慮しながら,例えば照射光の光量や露光時間などを調整することが容易となり,中心部においても周辺部においても適切に読取が可能となる。
(エ)

【0027】
次に,2次元コード読取装置4の制御系統のブロック図である図4を参照してさらに説明を進める。
本実施例の2次元コード読取装置4は,カメラ部制御装置50とシステム制御装置70の2つの制御装置を備えており,それぞれで分担して各種制御を行っている。
【0028】
まず,カメラ部制御装置50側に関連する構成としては,CCDエリアセンサ41と,AGCアンプ52と,ローパスフィルタ(LPF)53と,基準電圧生成部54と,負帰還アンプ55と,補助アンプ56と,2値化回路57と,周波数分析器58と,A/D変換器59と,画像メモリ60と,画像メモリコントローラ61と,メモリ62と,照明発光ダイオード(照明LED)45などが挙げられる。
【0029】
CCDエリアセンサ41は,2次元的に配列された複数の受光素子であるCCDを有しており,外界を撮像してその2次元画像を水平方向の走査線信号として出力する。この走査線信号はAGCアンプ52によって増幅されて補助アンプ56及びA/D変換器59に出力される。
【0030】
AGCアンプ52は,外部から入力したゲインコントロール電圧に対応する増幅率で,CCDエリアセンサ41から出力された走査線信号を増幅するのであるが,このゲインコントロール電圧は負帰還アンプ55から出力される。この負帰還アンプ55には,AGCアンプ52から出力される走査線信号をローパスフィルタ53で積分して得た出力平均電圧Vavと,基準電圧生成部54からの基準電圧Vstとが入力されており,これらの電圧差△Vに所定ゲインを掛けたものがゲインコントロール電圧として出力される。
【0031】
補助アンプ56は,AGCアンプ52によって増幅された走査線信号を増幅して2値化回路57に出力する。この2値化回路57は,上記走査線信号を,閾値に基づいて2値化して周波数分析器58に出力する。周波数分析器58は,2値化された走査線信号の内から所定の周波数成分比を検出し,
その検出結果は画像メモリコントローラ61に出力される。
【0032】
一方,A/D変換器59は,AGCアンプ52によって増幅されたアナログの走査線信号をディジタル信号に変換して,画像メモリコントローラ61に出力する。
画像メモリコントローラ61は,アドレスバス及びデータバスによって画像メモリ60と接続されていると共に,やはりアドレスバス及びデータバスによってカメラ部制御装置50及びメモリ62と接続されている。
【0033】
カメラ部制御装置50は,ここでは32bitのRISCCPUを用いて構成されており,基準電圧生成部54,A/D変換器59及び照明発光ダイオード45を制御することができるようにされている。基準電圧生成部54に対する制御とは,基準電圧を変更設定するなどの制御である。また,照明発光ダイオード45は,読取対象の2次元コードに対して照明用の赤色光を照射するものである。
【0034】
また,カメラ部制御装置50は,システム制御装置70との間でデータのやり取りができるようにされている。
一方,システム制御装置70側に関連する構成としては,認識用LED21と,ブザー72と,液晶ディスプレイ(LCD)20と,キーパット74と,読み取り用スイッチ17と,シリアルI/F回路76と,IrDAI/F回路77と,FLASHメモリ78と,DRAM79と,リアルタイムクロック80と,メモリバックアップ用電池81などを備えている。
【0035】
認識用LED21は,読み取り対象の画像情報が適切にデコードされた場合に点灯され,所定時間後に消灯される。また,ブザー72も,読み取り対象の画像情報が適切にデコードされた場合に鳴動される。
液晶ディスプレイ20は,読み込んだ2次元コードなどを表示するためなどに用いられる。本実施例では2階調表示のLCDとして構成されている。キーパット74は,例えばテンキーや各種ファンクションキーを備えており,
情報入力のために用いられる。
読み取り用スイッチ17は,
利用者が読取処理の開始を指示するためのスイッチである。
【0038】
システム制御装置70は,ここでは16bitのCPUを用いて構成されており,上述したキーパット74や読み取り用スイッチ17の入力を受け付けたり,認識用LED21やブザー72への出力を制御したり,シリアルI/F回路76やIrDAI/F回路77を介した通信制御を行なう。そして,カメラ部制御装置50を介して入力した2次元コードの画像を液晶ディスプレイ20に表示させることもできる。
(オ)

【0039】
このような構成の本実施例の2次元コード読取装置4によれば,結像レンズ34b,34c(図3参照)によって結像された2次元コードからの反射光は,CCDエリアセンサ41において,集光レンズ41bによって集光されてから受光素子41aに入射する。したがって,図5(a)に示すように,受光素子41aに対して垂直に入射する光は,集光レンズ41bによって集光されることで見かけ上の開口面積が拡大し,感度を向上させる効果があるが,図5(b)に示すように,受光素子41aに対して斜めに入射する光は,集光レンズ41bによって集光されることで逆に受光素子41aへの集光率が低下して感度が低下する原因ともなる。特に,CCDエリアセンサ41の中央部にある受光素子41aには反射光が垂直に入射するが,センサ周辺部にある受光素子41aに対しては反射光が斜めに入射する傾向にある。
【0040】
この周辺部にある受光素子41aに対して入射する反射光が極力斜めにならないようにするため本実施例の2次元コード読取装置4では,図3に示すように,鏡筒43内において絞り34aを結像レンズ34b,34cよりも読取口25(図1,2参照)側に配置している。つまり,2次元コードにより反射された赤色光がまず絞り34aを通過し,その後,結像レンズ34b,34cに入射するよう,絞り34aが配置されている。これにより,結像レンズの複数のレンズ間に介装されていた場合(図6(a)参照)に比べて,複数のレンズで構成される結像レンズ(図3の34b,
34cが相当する)
よりも前に配置した場合
(図6
(b)
参照)には,CCDエリアセンサ41から絞り34aまでの光学的な距離が相対的に長くなる。
【0041】
CCDエリアセンサ41から射出瞳までの距離(射出瞳距離)は,CCDエリアセンサ41から絞り34aまでの光学的距離が長くなれば,それに伴って長くなるため,本実施例のように絞り34aを結像レンズ34b,34cよりも前(読取口25側)に配置することで,結果的にCCDエリアセンサ41から射出瞳位置までの距離を相対的に長く設定することができる。そして,CCDエリアセンサ41から射出瞳位置までの距離が長くなれば,センサ周辺部にある受光素子41aに対して入射する反射光が斜めになる度合も,それに伴って小さくなる。したがって,図5(c)のグラフ中に破線で示すように,CCDエリアセンサ41の周辺部の受光素子41aに対する集光レンズ41bによる集光率の低下を極力防止することができ,適切な読み取りの実現に寄与する。【0042】
なお,適切な読み取りを実現するためには,センサ周辺部にある受光素子41aからの出力レベルが所定レベル以上になる必要がある。そのため,例えば,センサ中心部に位置する受光素子41aからの出力に対するセンサ周辺部に位置する受光素子41aからの出力の比が所定値以上となるよう射出瞳位置を設定することが考えられる。つまり,このような射出瞳位置となるように絞り34aの位置を設定するのである。このようにしておけば,中央部と周辺部の出力差を考慮しながら,例えば照射光の光量や露光時間などを調整することが容易となり,中心部においても周辺部においても適切に読取が可能となる。…

前記アの記載事項によれば,本件明細書の発明の詳細な説明には,本件発明に関し,次のような開示があることが認められる。
(ア)

従来の光学情報読取装置(例えば,2次元コードリーダ)には,複
数の受光素子が2次元的に配列され,受光素子ごとに集光レンズが設けられた光学的センサ(例えば,CCDエリアセンサ)を備えるものがあったが,受光素子に対して光が垂直に入射するのは光学的センサの中央部の受光素子であり,光学的センサの周辺部の受光素子に対しては光が斜めに入射する結果,その周辺部において2次元コードデータの読み取りに必要な光量を確保できず,適切な読み取りができないという問題が生じていた(【0002】~【0004】)。
(イ)

本発明は,受光素子ごとに集光レンズが設けられた光学的セン

サの周辺部の受光素子に対する集光レンズによる集光率の低下を極力防止し,適切な読み取りを実現する光学情報読取装置を提供することを目的とする(【0005】)。
本発明は,上記課題を解決するための手段として,複数のレンズ
で構成された結像レンズと,複数の受光素子が2次元的に配列されるとともに,受光素子ごとに集光レンズが設けられた光学的センサと,絞りと,カメラ部制御装置とを備える光学情報読取装置において,従来の光学情報読取装置では,複数の結像レンズ間に絞りが配置されていたものを,読取り対象からの反射光が絞りを通過した後で結像レンズに入射するよう絞りを配置する構成を採用した(【0006】~【0009】,図6(b))。
この構成により,本発明は,光学的センサから射出瞳位置までの
距離(射出瞳距離)を相対的に長く設定することにより光学的センサの周辺部の受光素子に対して入射する反射光が斜めになる度合いを小さくし,光学的センサの周辺部の受光素子に対する集光レンズによる集光率の低下を極力防止することができるとともに,光学的センサの中心部の受光素子からの出力に対する光学的センサの周辺部の受光素子からの出力の比が所定値以上となるように射出瞳位置を設定し,中央部と周辺部の出力差を考慮しながら照射光の光量や露光時間などを調整することで,中心部においても周辺部においても適切な読み取りが可能となるという効果を奏する(【0009】~【0011】)。


本件出願当時の技術常識について
本件出願前に頒布された刊行物である甲5及び甲18には,次のような記載がある(下記記載中に引用する甲5の図1,図2,図4,
図5,図14及び図15については別紙2を,甲18の図1,図2,図11,図15及び図17については別紙3を参照)。
(ア)
a
甲5(特開平8-180125号公報)
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,コンピュータ等に情報を入力するための光学的に読み取り可能なコード,特に2進コードで表されるデータをセル化して,2次元のマトリックス上にパターンとして配置した2次元コードを読み取るための2次元コード読取装置に関する。
【0009】元来,2次元コードは,バーコードなどに比べて処理するデータ量が多いために,デコード時間が非常に長くかかる。このことに加えて,上述した問題点から,取り込んだ画像データから2次元コードだけを切り出す処理に時間がかかった。
【0010】更に,それ以前に,2次元コードが一定しないあらゆる角度の回転状態で読み取り装置に入力されるので回転角度検出,座標変換処理が必要になり,デコード前処理にも時間がかかった。よって本発明は,全方向で高速読み取りができ,さらに読み取り精度が高い2次元コード読取装置を提供することを目的としている。
b
【0011】

【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は,図15に実線で例示するごとく,2進コードで表されるデータをセル化して,2次元のマトリックス上にパターンとして配置し,マトリックス内の,少なくとも2個所の所定位置に,各々中心をあらゆる角度で横切る走査線において同じ周波数成分比が得られるパターンからなる位置決め用シンボルを配置した2次元コードを読み取るための2次元コード読取装置であって,2次元画像検出手段と,上記2次元画像検出手段から出力される走査線信号中での,上記周波数成分比の信号の存在を検出する周波数成分比検出回路と,を備えたことを特徴とする2次元コード読取装置である。
c
【0021】

【作用及び発明の効果】請求項1記載の2次元コード読取装置は,少なくとも2個所の所定位置に,各々中心をあらゆる角度で横切る走査線において同じ周波数成分比が得られるパターンからなる位置決め用シンボルを配置した2次元コードを読み取るための装置であり,その周波数成分比検出回路が,上記2次元画像検出手段から出力される走査線信号中での,上記周波数成分比の信号の存在を検出している。【0022】このため,2次元画像を画像処理して,2次元コードが存在するか否かを判断しなくても,単に周波数成分比検出回路が走査線信号中から,位置決め用シンボルを表す周波数成分比の信号を検出すれば,上記2次元画像中に2次元コードが存在していることが判明する。したがって,周波数成分比検出回路から検出された後,初めてその検出された2次元画像から,2次元コードの切り出し(配置の決定)をして,解読にかかれば良いのであって,従来のごとく2次元画像内を複雑な画像処理をして,長時間2次元コードを探し回る必要がなく,処理が極めて迅速化され,高速に移動する2次元コードが取り付けられた物品の読み取りに支障を来さない。
d
【0033】

【実施例】
[実施例1]図1に一実施例としての2次元コード読取装置2のブロック図を示す。
2次元コード読取装置2は,
CCD4,
2値化回路6,
周波数成分比検出回路8,シリアル-パラレル変換回路10,アドレス発生回路12,アドレスラッチ回路14,メモリ回路16,18,フレーム検出回路20,タイミング発生回路22,およびCPU24を備えている。
【0034】CCD4は,外界を撮像してその2次元画像を水平方向の走査線信号として出力する。2値化回路6は,上記走査線信号を,閾値に基づいて2値化する。周波数成分比検出回路8は,後述する回路構成に基づいて2値化された走査線信号の内から所定の周波数成分比を検出する。…
【0036】図2にCCD4から周波数成分比検出回路8に至る走査線信号の一例を示す。図2(a)はCCD4から出力されるアナログの走査線信号を表し,図2(b)は2値化回路6から出力される2値化された走査線信号を表している。周波数成分比検出回路8では,この2値化後の走査線信号の連続する1,0の幅d0~dnの
比が,
所定の比である場合に所定の周波数成分比が検出されたとして,
検出されたことを示す信号(ラッチ信号)をアドレスラッチ回路14に出力する。
e
【0046】…ここで,2次元コード読取装置2にて検出される2次元コードの一例を図4に示す。この2次元コード52は,白色の台紙53の上に印刷されており,3個の位置決め用シンボル54,データ領域56,原点セルCstから構成されている。これら全体はセル数が縦横同数(21セル×21セル)の正方形状に配置されている。各セルは,光学的に異なった2種類のセルから選ばれており,図および説明上では白(明)・黒(暗)で区別して表す。…
【0047】位置決め用シンボル54は、2次元コード52の4つの頂点の内、3つに配置されている。そのセルの明暗配置は、黒部からなる枠状正方形54a内の中心に白部からなる縮小した枠状正方形54bが形成され、その内の中心に黒部からなる更に縮小した正方形54cが形成されているパターンである。
【0048】この位置決め用シンボル54を走査した場合の明暗検出を図5に示す。図5(A)に示すように,位置決め用シンボル54の中心を代表的な角度で横切る走査線(a),(b),(c)での明暗検出パターンは,図5(B)に示すごとく,すべて同じ周波数成分比を持つ構造になっている。即ち,位置決め用シンボル54の中心を横切るそれぞれの走査線(a),(b),(c)の周波数成分比は暗:明:暗:明:暗=1:1:3:1:1となっている。
勿論,
走査線
(a)

(b),(c)の中間の角度の走査線においても比率は1:1:3:1:1である。…
【0049】尚,図5(B)は,2値化回路6からの2値化された走査線信号に該当する。…
f
【0071】本実施例は、上述のごとく、周波数成分比検出回路8によりハード的に位置決め用シンボル54の存在を示す周波数成分比の有無を検出しているので、ソフト的に画像処理しなくても2次元コード52が画像中に存在するか否かが判明する。…
【0079】
…[その他]上記各実施例では,位置決め用シンボル54を二重の正方形で,中心を横切る周波数成分比が黒:白:黒:白:黒=1:1:3:1:1の図形で示したが,図14(a)のように円形でもよく,図14(b)のように六角形でもよく,また他の正多角形でも良い。即ち,同心状に相似形の図形が重なり合う形に形成したものであればよい。さらに,中心を横切る周波数成分比があらゆる角度で同じならば,図14(c)に示すごとく,上記図形を何重にしても良い。さらに,
上記各実施例では,
2次元コード52の外形を正方形で示したが,
長方形でも良い。

(イ)

甲18(特開平7-254037号公報)

a
【0001】

【産業上の利用分野】本発明は,コンピュータ等に情報を入力するための光学的に読み取り可能なコード,特に二進コードで表されるデータをセル化して,二次元のマトリックス上にパターンとして配置した二次元コードに関する。
【0008】元来,二次元コードは,バーコードなどに比べて処理するデータ量が多いために,デコード時間が非常にかかる。このことに加えて,上述した問題点から,取り込んだ画像データから二次元コードだけを切り出す処理に時間がかかった。更に,それ以前に,二次元コードが一定しないあらゆる角度の回転状態で読み取り装置に入力されるので回転角度検出,座標変換処理が必要になり,デコード前処理にも時間がかかった。更に,二次元コードは二次的に情報を持つため小さい面積に多くの情報が集積されているので,コード自体汚れに対して弱い。
【0009】よって本発明は,全方向で高速読み取りができ,さらに読み取り精度が高くデータ比率
(コード内に占めるデータ領域の比率)
の高い二次元コードを提供することを目的としている。
b
【0010】

【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は,二進コードで表されるデータをセル化して,二次元のマトリックス上にパターンとして配置した二次元コードにおいて,マトリックス内の,少なくとも2個所の所定位置に,各々中心をあらゆる角度で横切る走査線において同じ周波数成分比が得られるパターンの位置決め用シンボルを配置したことを特徴とする二次元コードにある。
【0016】
【作用】請求項1記載の発明は,マトリックス内の,少なくとも2個所の所定位置に,各々中心をあらゆる角度で横切る走査線において同じ周波数成分比が得られるパターンの位置決め用シンボルが配置されている。したがってこの位置決め用シンボルについてはいかなる方向から読み取っても,同じ特徴的な周波数成分比が得られるため,角度を変えてスキャンし直すことがなく,早期にかつ容易にマトリックス内の少なくとも所定位置2個所が判明する。マトリックスの所定個所2個所が判明すれば,その間の距離や角度からマトリックス全体の位置や回転角度の算出は容易である。
c
【0025】

【実施例】図1に一実施例としての二次元コード1の構成を示す。本二次元コード1は,3個の位置決め用シンボル2,データ領域3,タイミングセル4,頂点検出用セル5から構成されている。これら全体はセル数が縦横同数(21セル×21セル)の正方形状に配置されている。各セルは,光学的に異なった2種類のセルから選ばれており,図および説明上では白(明)・黒(暗)で区別して表す。…
【0026】位置決め用シンボル2は,二次元コード1の4つの頂点の内,3つに配置されている。そのセルの明暗配置は,黒部からなる正方形2a内の中心に白部からなる縮小した正方形2bが形成され,その内の中心に黒部からなる更に縮小した正方形2cが形成されているパターンである。
【0027】この位置決め用シンボル2をスキャンした場合の明暗検出を図2に示す。図2(A)に示すように,位置決め用シンボル2の中心を代表的な角度で横切る走査線(a),(b),(c)での明暗検出パターンは,図2(B)に示すごとく,すべて同じ周波数成分比を持つ構造になっている。即ち,位置決め用シンボル2の中心を横切るそれぞれの走査線(a),(b),(c)の周波数成分比は暗:明:暗:明:暗=1:1:3:1:1となっている。勿論,走査線(a),(b),(c)の中間の角度の走査線においても比率は1:1:3:1:1である。
【0028】このことにより,二次元コードがいかなる方向に回転していても,一定方向の走査処理のみで位置決め用シンボル2の持つ特定周波数成分比を検出することができる。このため走査方向を繰り返し何度も変更して基準となる所定のパターンを検出する必要がない。したがって,位置決め用シンボル2の中心位置が容易に早期に判明するので,二次元コード1の位置が迅速に特定でき,その後の処理も早期に開始できる。
d
【0058】上記実施例では,位置決め用シンボル2を二重の正方形で,中心を横切る周波数成分比が黒:白:黒:白:黒=1:1:3:1:1の図形で示したが,図11(a)のように円形でもよく,図11
(b)
のように六角形でもよく,
また他の正多角形でも良い。
即ち,
同心状に相似形の図形が重なり合う形に形成したものであればよい。さらに,中心を横切る周波数成分比があらゆる角度で同じならば,図11(c)に示すごとく,上記図形を何重にしても良い。
【0062】次に,図15,16のフローチャートにより読み取り処理について説明する。この処理は図17に示すデコーダ500により二次元コード81をCCD500aにて読み取ることにより開始される。まず,CCD500a側から読み込まれた画像信号の2値化がなされる(ステップ300)。この2値化された画像がハード処理にて順次メモリに格納される(ステップ310)。これと並列のハード処理にてこの2値画像から,位置決め用シンボル2の位置座標が検出される(ステップ320)。
【0063】次に位置決め用シンボル2が3個以上見つけられたか否かが判定される(ステップ330)。この場合は図1と同じ位置決め用シンボル2が3個の二次元コード81の検出であることから,3個存在しなければ次の処理に移れない。したがってステップ300の処理に戻り,再度画像の読み直しをすることになる。尚,検出される位置決め用シンボル2は3個でなく4個以上の場合もある。これは二次元コード81内の他の領域,あるいは二次元コード81外の領域に位置決め用シンボル2と同じ周波数成分比のパターンが存在することを示している。

前記アの記載事項を総合すると,2次元コード読取装置の技術分野においては,本件出願当時(出願日平成9年10月27日),①周波数成分比とは,2次元コードマトリックスに配置された位置決め用シンボル(パターン)の中心を横切る(通る)走査線における白(明)が連続する長さと黒(暗)が連続する長さの比を意味すること,②位置決め用シンボルは,同心状に相似形の図形が重なり合う形に形成されており,その中心をあらゆる角度で通る走査線において同じ比率が得られるため,周波数成分比は所定の比率であること,③所定の周波数成分比の検出とは,2次元コード読取装置の2次元画像検出手段から出力される画像信号(走査線信号)を2値化した後の走査線信号中から,周波数成分比検出回路によって所定の周波数成分比の信号の存在の有無を検出する処理を意味することは,技術常識であったものと認められる。

これに対し原告は,同一出願人が出願した発明に係る2件の公開特許公報(甲5,18)のみから,本件出願当時の技術常識を認定することはできない旨主張する。
しかしながら,甲5(公開日平成8年7月12日)及び甲18(公開日平成7年10月3日)は,マトリックス型2次元コード(いわゆるQRコード)の構成及び読取装置の基本的技術に係る技術文献であるものと認められるから,甲5及び18から,前記イの本件出願当時の技術常識を認定することは妥当である。
したがって,原告の上記主張は理由がない。



明確性要件の適合性について

構成Dの所定の周波数成分比について
(ア)

本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の文言によれば,構成Dの
所定の周波数成分比は,カメラ部制御装置において,読み取り対象の画像を受光する光学的センサからの出力信号を増幅して,閾値に基づいて2値化し,2値化された信号の中から検出され,その検出結果が出力されるものであるが,請求項1には,所定の周波数成分比の値を具体的に規定した記載はない。
次に,本件明細書(甲6,8,乙2の2)には,所定の周波数成分比の語を定義した記載はない。一方で,本件明細書の記載事項(【0029】ないし【0031】,図4)によれば,本件明細書には,実施例として,2次元コード読取装置のCCDエリアセンサ41が撮像した2次元画像を水平方向の走査線信号として出力し,カメラ部制御装置50において,これをAGCアンプ52及び補助アンプ56によって増幅し,増幅された走査線信号は2値化回路57によって閾値に基づいて2値化され,周波数分析器58は2値化された走査線信号の内から所定の周波数成分比を検出し,その検出結果を画像メモリコントローラ61に出力することの開示があることが認められる。
以上の本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の文言,本件明細書の開示事項及び2次元コード読取装置の技術分野における本件出願当時の技術常識(前記(2)イ)に鑑みると,本件発明の構成Dの所定の周波数成分比は,上記技術常識における用語と同義であるものと認められるから,読み取り対象の画像(2次元コードマトリックス)に配置された位置決め用シンボル(パターン)の中心を横切る(通る)走査線における白(明)が連続する長さと黒(暗)が連続する長さの比
(位置決め用シンボルの中心を通るあらゆる走査線における同一の比率)を意味するものと解される。
したがって,本件発明の構成Dの所定の周波数成分比の内容は明
確である。
(イ)

これに対し原告は,構成Dの周波数成分比との文言は一般的な

用語ではなく,本件明細書にも,周波数分析器58は,2値化された走査線信号の内から所定の周波数成分比を検出しとの記載(【0031】)があるのみで,いかなるものが所定の周波数成分比であるのか何ら説明がないから,構成Dの所定の周波数成分比の記載は,明確であるとはいえない旨主張する。
しかしながら,前記(ア)認定のとおり,本件出願当時の技術常識を踏まえると,構成Dの所定の周波数成分比の内容は明確であるといえるから,原告の上記主張は理由がない。

構成Fの相対的に長く設定しについて
(ア)

本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の構成Fの記載は,前記読み取り対象からの反射光が前記絞りを通過した後で前記結像レンズに入射するよう,前記絞りを配置することによって,前記光学的センサから射出瞳位置までの距離を相対的に長く設定しというものである。上記記載から,光学的センサから射出瞳位置までの距離を相対的に長く設定することは,読み取り対象からの反射光が絞りを通過した後で結像レンズに入射するよう,絞りを配置することの結果として得られるものであることを理解することができる。
また,本件明細書には,光学的センサから射出瞳までの距離(射出瞳距離)は,光学的センサから絞りまでの光学的距離が長くなれば,それに伴って長くなるところ,従来の光学情報読取装置では,複数の結像レンズ間に絞りが配置されていたものを,本発明では,読取り対象からの反射光が絞りを通過した後で結像レンズに入射するよう絞りを配置する構成を採用したことにより,光学的センサから射出瞳位置までの距離(射出瞳距離)を相対的に長く設定することができること(【0009】,【0040】,【0041】,図6)の開示があることが認められる。
以上の本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の文言及び本件明細書の開示事項に鑑みると,本件発明の構成Fの相対的に長く設定しとは,絞りの配置が前記読み取り対象からの反射光が前記絞りを通過した後で前記結像レンズに入射するよう配置されたものではないものと比較して,光学的センサから射出瞳位置までの距離を長く設定
することを意味するものと解される。
したがって,本件発明の構成Fの相対的に長く設定しの内容は明
確である。
(イ)

これに対し原告は,本件発明の特許請求の範囲(請求項1)におい
て,相対的にの基準が明確でないため,相対的に長く設定しの
記載からは,射出瞳位置までの距離がどのように設定されていることを意味するのか,どのようなものが本件発明の技術的範囲に含まれるのかを理解することができないから,構成Fの相対的に長く設定しの記載は,明確であるとはいえない旨主張する。
しかしながら,前記(ア)の認定事実によれば,相対的にの基準となる比較の対象は,絞りの配置が前記読み取り対象からの反射光が前記絞りを通過した後で前記結像レンズに入射するよう配置されたものではない構成のものにおける射出瞳距離を意味することは明らかであるから,原告の上記主張は,その前提を欠くものであって,理由がない。ウ
構成Gの所定値について
(ア)

本件発明の特許請求の範囲(請求項1)には,構成Gの前記光学的センサの中心部に位置する受光素子からの出力に対する前記光学的センサの周辺部に位置する受光素子からの出力の比が所定値以上における所定値の値について具体的に規定した記載はない。
一方で,請求項1における前記読み取り対象からの反射光が前記絞りを通過した後で前記結像レンズに入射するよう,前記絞りを配置することによって,前記光学的センサから射出瞳位置までの距離を相対的に長く設定し,(構成F),前記光学的センサの中心部に位置する受光素子からの出力に対する前記光学的センサの周辺部に位置する受光素子からの出力の比が所定値以上となるように,前記射出瞳位置を設定して,露光時間などの調整で,中心部においても周辺部においても読取が可能となるようにしたこと(構成G)の記載によれば,本件発明においては,前記読み取り対象からの反射光が前記絞りを通過した後で前記結像レンズに入射するよう,前記絞りを配置することによって射出瞳位置を設定することが前提とされていることを理解することができる。
また,本件明細書には,構成Gの所定値に関し,最終的には適切な読み取りを実現することが目的であるので,本発明の光学情報読取装置においては,光学的センサの中心部に位置する受光素子からの出力に対する光学的センサの周辺部に位置する受光素子からの出力の比が所定値以上となるように,射出瞳位置を設定している。このようにしておけば,中央部と周辺部の出力差を考慮しながら,例えば照射光の光量や露光時間などを調整することが容易となり,中心部においても周辺部においても適切に読取が可能となる。(【0011】),適切な読み取りを実現するためには,センサ周辺部にある受光素子41aからの出力レベルが所定レベル以上になる必要がある。そのため,例えば,センサ中心部に位置する受光素子41aからの出力に対するセンサ周辺部に位置する受光素子41aからの出力の比が所定値以上となるよう射出瞳位置を設定することが考えられる。つまり,このような射出瞳位置となるように絞り34aの位置を設定するのである。このようにしておけば,中央部と周辺部の出力差を考慮しながら,例えば照射光の光量や露光時間などを調整することが容易となり,中心部においても周辺部においても適切に読取が可能となる。(【0042】)との記載がある。以上の本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の文言及び本件明細書の記載に鑑みると,構成Gは,前記読み取り対象からの反射光が前記絞りを通過した後で前記結像レンズに入射するよう,前記絞りを配置することによって
射出瞳位置を設定
することを前提とした上で,
露光時間などの調整により,光学的センサの中心部においても周辺部においても読取が可能となるようにすること,すなわち,光学的センサの中心部に位置する受光素子から得られた信号を2値化するために用いられる閾値に基づいて,光学的センサの周辺部に位置する受光素子から得られた信号を2値化することが可能であるような強さの光を,周辺部に位置する受光素子が受光できるように,射出瞳位置を設定することを特定したものであることが認められる。
そうすると,構成Gの所定値とは,露光時間の調整など
読取りに際して所与の調整を行うことにより,光学的センサの中心部においても周辺部においても適切に読取が可能となる位置に射出瞳位置を設定することによって特定される前記光学的センサの中心部に位置する受光素子からの出力に対する前記光学的センサの周辺部に位置する受光素子からの出力の比の値を意味するものと解される。したがって,本件発明の構成Gの所定値の内容は明確である。
(イ)

これに対し原告は,構成Gの所定値については,本件発明の特

許請求の範囲(請求項1)に規定がなく,本件明細書にも,それがいかなる値を意味するのかの手掛かりとなる記載がないため,本件明細書に接した当業者は,所定値がいかなる値であれば本件発明の課題が解決されるのかを理解することができないし,また,中心部に位置する受光素子からの出力信号を2値化するために用いられる閾値は明らかにされておらず,所定値の値は,特許請求の範囲の記載から一義的に定まるものではないから,構成Gの所定値の記載は,明確であるとはいえない旨主張する。
しかしながら,構成Gの所定値とは,あらかじめ一律に定められ
た特定の数値をいうものではなく,露光時間の調整など読取り
に際して所与の調整を行うことにより,光学的センサの中心部においても周辺部においても適切に読取が可能となる位置に射出瞳位置を設定することによって特定される前記光学的センサの中心部に位置する受光素子からの出力に対する前記光学的センサの周辺部に位置する受光素子からの出力の比の値を意味するものであることは,前記(ア)認定のとおりである。
また,前記読み取り対象からの反射光が前記絞りを通過した後で前記結像レンズに入射するよう絞りの配置をする際に,露光時間の調整など読取りに際して所与の調整を行うことにより,光学的センサの中心部においても周辺部においても適切に読取が可能となる位置に射出瞳位置を設定することは,当業者が適宜考慮して定める設計的事項であるというべきであるから,請求項1に所定値の具体的な値が記載されていないからといって,構成Gの所定値の内容が明確でないとはいえない。
したがって,原告の上記主張は理由がない。

小括
以上のとおり,構成Dの所定の周波数成分比,構成Fの相対的に長く設定し及び構成Gの所定値の内容はいずれも明確であり,本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載は,特許を受けようとする発明が明確であるものと認められるから,本件特許は明確性要件に適合する。(4)

まとめ
したがって,本件特許に明確性要件違反は認められないとした本件審決の
判断に誤りはないから,原告主張の取消事由1は理由がない。
2
取消事由2(実施可能要件の判断の誤り)について
(1)

実施可能要件の適合性について
所定の周波数成分比の記載を含む構成Dについて
原告は,構成Dの所定の周波数成分比の記載が明確でなく,また,本件明細書には,所定の周波数成分比の検出の実現方法について
も何ら記載されていないから,当業者は,本件明細書に基づいて,本件発明を実施することができない旨主張する。
しかしながら,構成Dの所定の周波数成分比の内容が明確であること,本件明細書には,実施例として,2次元コード読取装置のCCDエリアセンサ41が撮像した2次元画像を水平方向の走査線信号として出力し,カメラ部制御装置50において,これをAGCアンプ52及び補助アンプ56によって増幅し,増幅された走査線信号は2値化回路57によって閾値に基づいて2値化され,周波数分析器58は2値化された走査線信号の内から所定の周波数成分比を検出し,その検出結果を画像メモリコントローラ61に出力することの開示があることは,前記1(3)ア(ア)認定のとおりである。
また,2次元コード読取装置の技術分野において,所定の周波数成分比の検出とは,2次元コード読取装置の2次元画像検出手段から出力される画像信号(走査線信号)を2値化した後の走査線信号中から,周波数成分比検出回路によって所定の周波数成分比の信号の存在の有無を検出する処理を意味することが,本件出願当時,技術常識であったことは,前記1(2)イ認定のとおりである。
そうすると,当業者は,本件明細書の記載及び本件出願当時の技術常識に基づいて,所定の周波数成分比の記載を含む構成Dを実施できたものと認められるから,原告の上記主張は理由がない。

相対的に長く設定しの記載を含む構成Fについて
原告は,
構成Fの
相対的に長く設定し
との記載が明確でなく,
また,
当業者は,本件明細書から,射出瞳位置をどのように設定すれば相対的に長く設定することができるのかを理解することができないから,本件明細書に基づいて,本件発明を実施することができない旨主張する。しかしながら,構成Fの相対的に長く設定しの内容が明確であること,本件明細書には,光学的センサから射出瞳までの距離(射出瞳距離)は,光学的センサから絞りまでの光学的距離が長くなれば,それに伴って長くなるところ,従来の光学情報読取装置では,複数の結像レンズ間に絞りが配置されていたものを,本発明では,読取り対象からの反射光が絞りを通過した後で結像レンズに入射するよう絞りを配置する構成を採用したことにより,光学的センサから射出瞳位置までの距離(射出瞳距離)を相対的に長く設定することができることの開示があることは,
前記1(3)
イ(ア)認定のとおりである。
そうすると,当業者は,本件明細書の記載に基づいて,相対的に長く設定しの記載を含む構成Fを実施できたものと認められるから,原告の上記主張は理由がない。


所定値の記載を含む構成Gについて
原告は,構成Gの所定値の記載が明確でなく,また,当業者は,所定値がどのようなものであるかを理解することができない以上,構成Gの所定値以上となるように,前記射出瞳位置を設定することもできないから,本件明細書に基づいて,本件発明を実施することができない旨主張する。
しかしながら,構成Gの所定値の内容が明確であることは,前記1(3)ウ(ア)認定のとおりである。
そして,本件明細書の【0011】及び【0042】の記載に加えて,前記読み取り対象からの反射光が前記絞りを通過した後で前記結像レンズに入射するよう絞りの配置をする際に,露光時間の調整など読取りに際して所与の調整を行うことにより,光学的センサの中心部においても周辺部においても適切に読取が可能となる位置に射出瞳位置を設定することは,当業者が適宜考慮して定める設計的事項であること(前記1(3)ウ(イ))
からすると,
当業者は,
本件明細書の記載に基づいて,
所定値の記載を含む構成Gを実施できたものと認められるから,原告の上記主張は理由がない。

小括
以上によれば,本件明細書の発明の詳細な説明は,当業者が本件発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものと認められるから,本件特許は実施可能要件に適合する。

(2)

まとめ
したがって,本件特許に実施可能要件違反は認められないとした本件審決
の判断に誤りはないから,原告主張の取消事由2は理由がない。
3
結論
以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,本件審決にこれを取り消すべき違法は認められない。
したがって,原告の請求は棄却されるべきものである。

知的財産高等裁判所第4部

裁判長裁判官

大鷹
裁判官

山門
裁判官

筈井一郎優卓矢
(別紙1)
【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

(別紙2)
【図15】

【図2】

【図4】

【図1】

【図5】

【図14】

(別紙3)
【図1】

【図2】

【図15】

【図17】

【図11】

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