判例検索β > 平成30年(行ツ)第92号
選挙無効請求事件
事件番号平成30(行ツ)92
事件名選挙無効請求事件
裁判年月日平成31年2月5日
法廷名最高裁判所第三小法廷
裁判種別判決
結果棄却
原審裁判所名東京高等裁判所
原審事件番号平成29(行ケ)24
原審裁判年月日平成29年12月26日
判示事項1 東京都議会議員の定数並びに選挙区及び各選挙区における議員の数に関する条例(昭和44年東京都条例第55号)におけるいわゆる特例選挙区の存置の適法性
2 東京都議会議員の定数並びに選挙区及び各選挙区における議員の数に関する条例(昭和44年東京都条例第55号)の議員定数配分規定の適法性
3 東京都議会議員の定数並びに選挙区及び各選挙区における議員の数に関する条例(昭和44年東京都条例第55号)におけるいわゆる特例選挙区の存置の合憲性
4 東京都議会議員の定数並びに選挙区及び各選挙区における議員の数に関する条例(昭和44年東京都条例第55号)の議員定数配分規定の合憲性
裁判日:西暦2019-02-05
情報公開日2019-02-06 08:16:49
戻る / PDF版
平成30年(行ツ)第92号,同年(行ヒ)第108号
平成31年2月5日第三小法廷判決


選挙無効請求事件


本件上告を棄却する
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告人の上告理由及び上告受理申立て理由について
1
本件は,東京都議会議員の定数並びに選挙区及び各選挙区における議員の数
に関する条例(昭和44年東京都条例第55号。以下本件条例という。)に基づいて平成29年7月2日に施行された東京都議会議員一般選挙(以下本件選挙という。)について,江東区選挙区の選挙人である上告人が,①本件条例が大島町,利島村,新島村,神津島村,三宅村,御蔵島村,八丈町,青ヶ島村及び小笠原村の区域(以下島しょ部という。)を合わせて1選挙区(島部選挙区)として存置したことが公職選挙法271条に,②本件条例のうち各選挙区において選挙すべき議員の数を定める規定(以下定数配分規定という。)が同法15条8項にそれぞれ違反するとともに,同法271条及び本件条例の定数配分規定が憲法14条1項等に違反して無効であるから,これらに基づき施行された本件選挙の江東区選挙区における選挙も無効であると主張して提起した選挙無効訴訟である。2
(1)

原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
都道府県議会の議員の定数については,地方自治法において,条例で定め
るものとされ,変更の要件が定められている(90条1項から3項まで)。また,都道府県議会の議員の選挙区については,公職選挙法において,一の市の区域,一の市の区域と隣接する町村の区域を合わせた区域又は隣接する町村の区域を合わせた区域のいずれかによることを基本とし,条例で定めるものとされ(15条1項),選挙区は,その人口が当該都道府県の人口を当該都道府県議会の議員の定数をもって除して得た数(以下議員1人当たりの人口という。)の半数以上になるようにしなければならず,一の市の区域の人口が議員1人当たりの人口の半数に達しないときは,隣接する他の市町村の区域と合わせて1選挙区を設けるものとされ(同条2項),一の市の区域の人口が議員1人当たりの人口の半数以上であっても議員1人当たりの人口に達しないときは,隣接する他の市町村の区域と合わせて1選挙区を設けることができ(同条3項),一の町村の区域の人口が議員1人当たりの人口の半数以上であるときは,当該町村の区域をもって1選挙区とすることができるものとされている(同条4項)。ただし,昭和41年1月1日当時において設けられていた選挙区については,当該区域の人口が議員1人当たりの人口の半数に達しなくなった場合においても,当分の間,当該区域をもって1選挙区を設けることができるものとされている(同法271条。以下,この規定によって存置が認められた選挙区を特例選挙区という。)。なお,特別区については,市に関する規定が適用される(同法266条1項)。
このようにして定められた各選挙区において選挙すべき議員の数について,公職選挙法15条8項は,本文において人口に比例して,条例で定めなければならないとする一方で,ただし書において特別の事情があるときは,おおむね人口を基準とし,地域間の均衡を考慮して定めることができるとしている。(2)ア

本件選挙当時,本件条例の定める選挙区及び各選挙区における議員の数
は,原判決別表都議会議員選挙区別議員1人当たりの人口及び較差の選挙区欄及び条例定数欄記載のとおりであり,42選挙区に127人の定数を配分しているところ,そのうち,特例選挙区として,昭和44年の本件条例の制定当時から島部選挙区が存置されている。

本件条例の定数配分規定は,その制定後数次の改正を経た後,平成13年3
月に4選挙区の定数を2増2減する改正が行われた。
東京都議会に設置された都議会のあり方検討会は,上記改正以降の社会情勢の変化等を踏まえた本件条例の定数配分規定の是正について検討を行い,平成24年6月19日,東京都議会に対し,その検討結果を報告した。その中で,島部選挙区については,その地理的特殊性等を考慮して特例選挙区とされてきたもので,これを見直す状況には至っていないことから引き続き特例選挙区として存置すべきであること,平成22年の国勢調査の結果によれば,特例選挙区以外の選挙区間の議員1人当たりの人口の最大較差が,上記改正時と比較して1対1.97から1対1.92に縮小しており,いずれも2倍未満であったこと等を踏まえ,現行の定数配分を維持すべきであること等が報告された。

平成25年6月23日に施行された東京都議会議員一般選挙(以下前回選挙という。)の当時における本件条例(平成26年東京都条例第151号による改正前のもの)によって配分される定数については,同22年の国勢調査による人口に基づく配当基数(当該選挙区の人口を議員1人当たりの人口で除して得た数)に応じて公職選挙法15条8項本文の人口比例原則を適用した場合に各選挙区に配分されることとなる定数(以下人口比定数という。)と対比すると,42選挙区中13選挙区において差異がみられた(人口比定数より1多いのが7選挙区,2少ないのが1選挙区,1少ないのが5選挙区であった。)。そして,特例選挙区以外の選挙区間における議員1人当たりの人口の最大較差は1対1.92(以下,較差及び配当基数に関する数値は全て概算である。),特例選挙区であった千代田区選挙区と他の選挙区との議員1人当たりの人口の最大較差は1対3.21であり,人口の多い選挙区の定数が人口の少ない選挙区の定数より少ないいわゆる逆転現象は12通りであった。また,島部選挙区の配当基数は0.268であった。エ
東京都議会は,平成28年6月15日,本件条例について,4選挙区の定数
を2増2減するほか,それまで特例選挙区とされていた千代田区選挙区の配当基数が0.549となったため,特例選挙区を島部選挙区のみとする改正をした(平成28年東京都条例第89号。以下平成28年条例改正という。)。オ
本件選挙当時における前記アの定数配分については,平成27年の国勢調査
による人口に基づく配当基数に応じた人口比定数と対比すると,42選挙区中8選挙区において差異がみられたが(人口比定数より1多いのが4選挙区,1少ないのが4選挙区であった。),特例選挙区(島部選挙区)を除く選挙区間の議員1人当たりの人口の最大較差は1対2.48(千代田区選挙区と武蔵野市選挙区)であり,これは特例選挙区を除く人口比定数による選挙区間の議員1人当たりの人口の最大較差と差異がなく,いわゆる逆転現象は6通りであった。また,島部選挙区の配当基数は0.249であった。
3(1)

前記2(1)の各規定に照らせば,特例選挙区を設けるかどうかについて
は,都道府県議会にこれを決定する裁量権が与えられていると解される。そして,具体的にいかなる場合に特例選挙区の設置が認められるかについては,当該都道府県の行政施策の遂行上当該地域からの代表を確保する必要性の有無・程度,隣接する他の市町村の区域との合区の困難性の有無・程度等を総合判断して決することにならざるを得ないから,特例選挙区の設置を適法なものとして是認し得るか否かは,この点に関する都道府県議会の判断が,当該都道府県の実情を考慮し,当該都道府県全体の調和ある発展を図るなどの観点からする裁量権の合理的な行使として是認されるかどうかによって決すべきものである。もっとも,都道府県議会の議員の選挙区に関して公職選挙法15条1項から4項までが規定しているところからすると,同法271条は,配当基数が0.5を著しく下回る場合には,特例選挙区の設置を認めない趣旨であると解されるから,このような場合には,特例選挙区の設置についての都道府県議会の判断は,合理的裁量の限界を超えているものと推定するのが相当である(最高裁昭和63年(行ツ)第176号平成元年12月18日第一小法廷判決・民集43巻12号2139頁,最高裁平成元年(行ツ)第15号同年12月21日第一小法廷判決・民集43巻12号2297頁,最高裁平成4年(行ツ)第172号同5年10月22日第二小法廷判決・民集47巻8号5147頁,最高裁平成6年(行ツ)第125号同7年3月24日第二小法廷判決・裁判集民事174号877頁参照)。
(2)

前記事実関係等によれば,島部選挙区は,本件条例制定当時から特例選挙区として存置されているが,これは,島しょ部は,離島として,その自然環境や社会,経済の状況が東京都の他の地域と大きく異なり,特有の行政需要を有することから,東京都の行政施策の遂行上,島しょ部から選出される代表を確保する必要性が高いものと認められる一方,その地理的状況から,他の市町村の区域との合区が,地続きの場合に比して相当に困難であることなどが考慮されてきたものということができる。そして,東京都議会は,都議会のあり方検討会での検討を経た上で,平成28年条例改正の際にも,島部選挙区の配当基数は小さいものの,島しょ部の地理的特殊性等に照らし,同選挙区を引き続き特例選挙区として存置することを決定したものと推認することができる。本件選挙当時の島部選挙区の配当基数は,東京都議会において同選挙区を特例選挙区として存置することが許されない程度にまで至っているとはいえず,他に,同議会が平成28年条例改正後の本件条例において島部選挙区を特例選挙区として存置したことが社会通念上著しく不合理であることが明らかであると認めるべき事情もうかがわれない。
以上によれば,東京都議会が,島部選挙区を特例選挙区として存置していたことは,同議会に与えられた裁量権の合理的な行使として是認することができる。したがって,本件条例が,本件選挙当時,島部選挙区を特例選挙区として存置していたことは,公職選挙法271条に違反していたものとはいえない。
4(1)

前記2(1)の各規定に照らせば,都道府県議会の議員の定数の各選挙区に
対する配分に当たり公職選挙法15条8項ただし書を適用して人口比例の原則に修正を加えるかどうか及びどの程度の修正を加えるかについては,当該都道府県議会にその決定に係る裁量権が与えられていると解される。しかるところ,都道府県議会の議員の選挙に関し,当該都道府県の住民が,その選挙権の内容,すなわち投票価値においても平等に取り扱われるべきであることは憲法の要求するところであり,また,同項は,憲法の上記要請を受け,都道府県議会の議員の定数の各選挙区に対する配分につき,人口比例を最も重要かつ基本的な基準とし,各選挙人の投票価値が平等であるべきことを強く要求しているものと解されることからすると,条例の定める定数配分が同項の規定に適合するかどうかについては,都道府県議会の具体的に定めるところが,前記のような選挙制度の下における裁量権の合理的な行使として是認されるかどうかによって決せられるべきものと解される。そして,公職選挙法15条8項ただし書を適用してされた条例の制定又はその改正により具体的に決定された定数配分の下における選挙人の投票の有する価値に較差が生じている場合において,その較差が都道府県議会において地域間の均衡を図るため通常考慮し得る諸般の要素をしんしゃくしてもなお一般的に合理性を有するものとは考えられない程度に達しており,これを正当化すべき特段の理由が示されないとき,あるいは,その較差は上記の程度に達していないが,上記の制定時若しくは改正時において同項ただし書にいう特別の事情があるとの評価が合理性を欠いており,又はその後の選挙時において上記の特別の事情があるとの評価の合理性を基礎付ける事情が失われたときは,当該定数配分は,裁量権の合理的な行使とはいえないものというべきである(最高裁平成26年(行ツ)第103号,同年(行ヒ)第108号同27年1月15日第一小法廷判決・裁判集民事249号1頁参照)。
(2)

前記事実関係等によれば,本件条例の定数配分規定は,各地方公共団体の
実情等に応じた当該地域に特有の事情を考慮し,公職選挙法15条8項(平成6年法律第2号による改正前は同条7項)ただし書にいう特別の事情があるとの評価を前提として,選挙制度の安定性の要請をも勘案しつつ,数次にわたり改正されてきたものと解される。そして,本件選挙当時においては,複数の選挙区の定数に人口比定数との差異はみられるものの,特例選挙区以外の選挙区間の議員1人当たりの人口の最大較差は1対2.48(千代田区選挙区と武蔵野市選挙区)であり,人口比定数による選挙区間の議員1人当たりの人口の最大較差と差異がない。また,特例選挙区以外の選挙区間の上記最大較差は前回選挙時より拡大しているものの,これは千代田区選挙区が特例選挙区ではなくなったことによるものであり,千代田区選挙区と他の選挙区との間の議員1人当たりの人口の最大較差は前回選挙時より縮小している。さらに,いわゆる逆転現象も12通りから6通りに減少していた。そうすると,公職選挙法が定める前記のような都道府県議会の議員の選挙制度の下においては,本件選挙当時における投票価値の不平等は,東京都議会において地域間の均衡を図るために通常考慮し得る諸般の要素をしんしゃくしてもなお一般的に合理性を有するものとは考えられない程度に達していたものとはいえず,また,平成28年条例改正の当時において,同法15条8項ただし書にいう特別の事情があるとの評価がそれ自体として合理性を欠いていたとも,本件選挙当時において上記の特別の事情があるとの評価の合理性を基礎付ける事情が失われたともいい難いから,本件選挙の施行前に本件条例の定数配分規定を改正しなかったことが同議会の合理的裁量の限界を超えるものということはできない。
したがって,本件選挙当時における本件条例の定数配分規定は,公職選挙法15条8項に違反していたものとはいえず,適法というべきである。
5
所論は,さらに,公職選挙法271条及び本件条例の定数配分規定が憲法1
4条1項,15条1項,3項,92条及び93条に違反する旨をいうが,本件選挙は本件条例が定める選挙区及びこれに対する定数の配分によって施行されたものであるから,論旨は,帰するところ,公職選挙法271条を含む同法の規定に従って定められた本件条例が憲法の上記各規定に違反する旨を主張する趣旨のものというべきである。
しかしながら,原審の適法に確定した事実関係等の下において,本件選挙当時の本件条例による特例選挙区の存置や各選挙区に対する定数の配分が東京都議会の合理的裁量の限界を超えるものとはいえないことは,前記3(2)及び4(2)において説示したとおりであり,本件選挙当時,本件条例が島部選挙区を特例選挙区として存置していたことや本件条例の定数配分規定が憲法の上記各規定に違反していたものとはいえないことは,当裁判所大法廷判決(最高裁昭和54年(行ツ)第65号同58年4月27日大法廷判決・民集37巻3号345頁,最高裁平成3年(行ツ)第111号同5年1月20日大法廷判決・民集47巻1号67頁,最高裁平成11年(行ツ)第7号同年11月10日大法廷判決・民集53巻8号1441頁等)の趣旨に徴して明らかというべきである(最高裁平成4年(行ツ)第173号同5年10月22日第二小法廷判決・裁判集民事170号231頁,前掲平成27年1月15日第一小法廷判決参照)。
6
以上の次第であるから,本件請求を棄却した原審の判断は,是認することが
できる。論旨は,いずれも採用することができない。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官林景一の意見がある。
裁判官林景一の意見は,次のとおりである。
私は,他の裁判官と結論を同じくするものであるが,人口比例原則と都道府県議会議員選挙との関係という観点から,意見を述べておきたい。
1
私は,国政選挙については,人口比例原則を厳格に考えるべきであるとの立
場であるが,地方議会選挙については,同原則を重視しつつも,一定程度緩和する余地を認めることができると考えるものである。このような相違は,地方議会議員の役割の性格,すなわち,地方公共団体においては,地方自治の本旨に基づく住民自治の観点に立った行政の遂行が期待されるところであるから,地方議会議員については,国会議員が全国民(people)の代表としての行動を期待されるのとは異なり,その選挙区である地域(community)の代表という色合いが濃くてしかるべきであることをその根拠とするものである。公職選挙法は,地方自治の基礎となる市町村を補完する役割を担う都道府県の議員選挙について,①市町村(特別区を含む。以下同じ。)を基本的な単位とする(政令指定都市を除き,原則として市町村を分割しない。)こと,②人口が過少であるため市町村を超えて合区する必要がある場合には,(おそらくは,単に便宜というよりも,地理的,経済的基盤等をなるべく共有するとの観点から)隣接市町村と合区することなどを定めているが(15条1項~5項,7項,9項),このような選挙区割りに関する規定から看取することができる議員の選出地域との密接性の要求は,憲法の規定する地方自治の本旨に基づく住民自治に由来すると考えられる。したがって,都道府県議会議員選挙においては,地理的,経済的な諸側面において,隣接地域とどこまで共通基盤を有するかなどの地域の実情に応じて厳に必要な限度において,人口比例原則からの乖離が認められると考えることができる。なお,上記のとおり市町村単位の選挙区割りとした上で,総議席数を抑制した場合には,人口比例原則からの乖離が一定程度生ずることは避けられないという側面もある。
2(1)

東京都は,我が国の首都であって政治・経済の中心地であるが故に著し
く人口が集中しており,中心部において常住人口と昼間人口との間に極端に大きな差があるなどの特殊事情が指摘されているほか,特に,島嶼部については,そのような東京都の中で,地理的,経済的に際立った差異があるため,自らの地域代表が,そうした実情に基づく特有のニーズ(インフラ整備,交通アクセス,産業振興等)を踏まえた施策を議会の内外において追求する必要性が高いといえ,かつ,共通の基盤を有するといえる隣接選挙区が見当たらないことから,合区の困難性の程度もかなり高いといえよう。よって,東京都議会がそのような観点からの判断を踏まえて,島部選挙区を他の選挙区と合区することなく特例選挙区として存置すること自体が,およそ認められないとまではいえない。たしかに,本件選挙当時,島部選挙区の配当基数は0.25を切っており,最大較差に引き直せば5.46倍にも達している(しかも前回選挙より数値は悪化しているようである。)。これは,その配当基数の数値自体をみる限り,判例上特例選挙区の設置が認められない趣旨であるとされる0.5を著しく下回る場合に当たると受け止められかねないものである。ただ,上記のように,特例選挙区の設置に関して生ずる乖離を許容し得るか否かの限界は,独自の地域代表選出の必要性と合区の困難性という定性的な要因によってある程度緩和し得ると考えられるため,配当基数が特定の数値を下回ったら直ちに特例選挙区の設置が認められないとする定量的基準を設けることに理論的根拠があるとは思われない。東京都における島嶼部とそれ以外の市町村との間の様々な意味における大きな差異を考えると,現状においても,独自代表選出の必要性があり,かつ適切な合区が困難であるとすることが,もはや不合理となったとまで断ずることにはためらいがあり,私は,このような意味で,結論において多数意見に辛うじて同調し得ると判断したものである。
(2)

さはさりながら,本来,ある選挙区について,配当基数が0.5を下回り
ながら強制合区を免れるということは,投票価値の平等原則の観点からは,あくまで例外中の例外であって,自ずと限界がある。投票価値の平等原則というものが数値的な問題である以上,配当基数や較差等の数値は重視されなければならない(そうであるからこそ,公職選挙法も強制合区とすべき基準に0.5という定量的基準のみを用いているのであろう。)。既に,配当基数は基準値の半分以下となり,5倍を優に超えるという最大較差の大きさを考えると,今後,上記の必要性と困難性の程度に関して特段の変化でも生じれば格別,人口減少が進んで較差だけが拡大し続けていくこととなるのであれば,もはや合区を検討すべきこととなるのもやむを得ないと考える。
3(1)

本件選挙は,上記のような東京都特有の特殊事情を有する選挙区の問題
はあるが,全体としてみると,前回選挙に比して,島部選挙区を除く選挙区間の最大較差,人口比定数と条例定数の不一致及び逆転現象がそれぞれ縮小している等の改善傾向がみられること,また,市町村を分割しないとの原則の下で総議席数を127という水準に設定しているため,仮に全面的に人口比定数に拠ったとしても,一定の較差が生ずることは数学的に避けられないと思われることもあり,直ちに本件選挙を違法,違憲とするまでもないと考えるものである。
(2)

ただし,上記のとおり,地域の実情に応じて厳に必要な限度でのみ人口比
例原則からの乖離が認められるのであって,憲法上の要求である投票価値の平等原則を受けた人口比例原則の重要性に照らせば,漫然と大きな較差を許容し続けてよいというものではない。地域の代表の必要性という側面の故をもってどこまで人口比例原則を緩和することができるのか,また,その緩和の程度について,十分かつ合理的な理由があり,それが明確に説明可能であるのか,常に意識して検証が続けられるべきである。そのような観点からは,本件選挙において,人口比定数と条例定数の不一致,特に,6通り残る逆転現象がなぜ起きているのかについては,明確な説明が欠けているようにみえるところ,合理的理由が説明できない限り,早急に是正が検討されるべきであって,取り分け定数差2人の逆転現象は不可解であるとの感を拭えず,その継続は許容できないと考えるものである。
(裁判長裁判官

景一

戸倉三郎

裁判官

裁判官

岡部喜代子

宮崎裕子)
裁判官

山崎敏充

裁判官

トップに戻る

saiban.in