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イラク戦争検証結果報告書不開示処分取消等請求事件
事件番号平成27(行ウ)429
事件名イラク戦争検証結果報告書不開示処分取消等請求事件
裁判年月日平成30年11月20日
法廷名東京地方裁判所
裁判日:西暦2018-11-20
情報公開日2019-02-14 10:00:31
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平成30年11月20日判決言渡
平成27年(行ウ)第429号

イラク戦争検証結果報告書不開示処分取消等請求

事件
主1文
本件訴えのうち外務大臣が別紙1文書目録本目録における番号欄
記載1の行政文書の不開示部分を開示すべき旨を命ずることを求める請求に係る部分を却下する。

2
原告のその余の請求を棄却する。

3
訴訟費用は原告の負担とする。

第1
1実及び理由
請求
外務大臣が,平成27年4月17日付けで原告に対してした別紙1文書目録本目録における番号欄記載1の行政文書(以下本件文書1という。)の一部を不開示とする旨の決定(ただし,平成28年3月30日付け及び平成29年10月31日付けでそれぞれされた本件文書1の一部を開示する旨の決定による変更後のもの。以下,特に区別する必要がある場合を除き,上記の各決定による変更の前後を問わず,本件処分という。)を取り消す。
2
第2
1
外務大臣は,原告に対し,本件文書1の不開示部分を開示せよ。
事案の概要
本件は,原告が,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下情報公開法という。)に基づいて,外務大臣に対し,アメリカ合衆国(以下米国という。),英国等が,2003年(平成15年)3月,イラクに対して武力行使をしたこと(以下対イラク武力行使という。)を支持するに至った外務省内における当時の検討及び意思決定過程を改めて検証し,今後の政策立案及び実施に役立てることを目的として,外務省内において実施された検証(以下本件検証という。)に関する行政文書の開示を請求したところ,外
務大臣が,上記行政文書の一部に,情報公開法5条3号又は5号に規定するものに該当する情報が記録されていることを理由として,その一部につき開示をしない旨の処分をしたため,原告が本件処分の取消しを求めるとともに,本件文書1のうち開示をしないものとされた部分(ただし,平成28年3月30日付け及び平成29年10月31日付けでそれぞれされた本件文書1の一部を開示する旨の決定による変更後のもの。以下,特に区別する必要がある場合を除き,上記の各決定による変更の前後を問わず,総称するときは本件各不開示部分という。)を開示することの義務付けを求めた事案である。2
争いのない事実等(当事者間に争いがないか,又は各項の末尾に掲記した証拠若しくは弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実)(1)

対イラク武力行使に至った経緯
イラクが,1990年(平成2年)8月2日,クウェートに侵攻したことを受け,国際連合安全保障理事会(以下安保理という。)は,同日,イラクに対し,クウェートから即時に撤退することを求めること等を内容とする決議を採択したが,イラクがこれを受け入れることはなく,クウェートを占領し続けた。安保理は,同年11月29日,1991年(平成3年)1月15日までにイラクがクウェートから撤退しない場合には,国際連合(以下国連という。)の加盟国があらゆる措置を執ることを容認すること等を内容とする決議を採択したが,イラクは,同日までにクウェートから撤退しなかった。(以上,甲6,7,乙16)


米国を中心とするいわゆる多国籍軍は,1991年(平成3年)1月17日,イラクに対する攻撃を開始し,同年2月27日,クウェート市を解放し,同年3月3日,イラクとクウェート及び多国籍軍の構成国との間で暫定停戦協定が署名された。その後,安保理は,同年4月3日,イラクが,化学兵器,
生物兵器等の廃棄を国際的監視の下で無条件に受け入れること,
国際機関による実地査察を無条件で合意すること等を停戦の条件とする決
議を採択し,イラクもこれを受諾した。イラクは,一旦は,国際機関による査察を受け入れたものの,1997年(平成9年)頃には,これを拒否するようになり,1998年(平成10年)頃以降は,国際機関がイラクで査察を実施することが不可能となった。(以上,甲6,7,乙16)ウ
米国のブッシュ大統領(当時。以下ブッシュ大統領という。)は,2002年(平成14年)1月,いわゆる一般教書演説の中で,イラクをイラン等とともに悪の枢軸として名指しした上で,イラクによるいわゆる大量破壊兵器等の使用の危険性について言及するとともに,米国が安全を確保するために必要な行動をとる旨を述べた。これを受けて,国連事務総長は,イラクの外務大臣と査察の再開に向けた対話をしたものの,査察の再開には至らなかった。
ブッシュ大統領は,同年9月12日,いわゆる国連一般討論演説において,従前のイラクの安保理の決議の不履行を指摘し,安保理を通じた対処の必要性を強調するとともに,イラクが対応しない際には行動が不可避となるであろうなどと発言した。安保理は,同年11月8日,イラクが安保理の決議に継続的に違反していること,武装解除の義務の履行の最後の機会であること,30日以内に大量破壊兵器に係る全ての活動についての申告書を提出すること,義務の継続的違反は重大な結果を招くこと等を内容とする決議(以下安保理決議1441という。)を採択し,イラクもこれを受諾したことから,
国際機関による査察が再開されたが,
イラクは,
これに消極的な対応をするにとどまった。
(以上,甲6ないし8,乙16)


2003年(平成15年)1月以降同年3月まで,安保理を中心に,国連の加盟国がイラクへの対応をめぐって様々な動きを見せ,
同年2月5日,
米国のパウエル国務長官(当時。以下パウエル国務長官という。)が,安保理を構成する国に対し,イラクの査察に対する非協力,大量破壊兵器の隠蔽工作等を示す情報を提示するなどし,これ以上イラクに時間を与え
るべきではないなどの旨を述べるなどした。その後,米国及び英国等の米国の方針に賛同する国は,同年3月20日,対イラク武力行使をするに至った。なお,我が国は,同月18日,小泉純一郎内閣総理大臣(当時。以下小泉首相という。)が,いわゆるぶら下がりインタビューにおいて,米国の方針を支持する旨の発言をし,同月20日,対イラク武力行使が開始された後,内閣総理大臣記者会見及び内閣総理大臣談話をもって,改めて対イラク武力行使の支持を表明するとともに,緊急人道支援,周辺国支援等を含む我が国の措置を発表した。(以上,甲4の2,甲6ないし8,13,35,乙16)

対イラク武力行使により,当時のイラクの政権が崩壊した。そして,国際機関が,対イラク武力行使の後,イラクにおいて査察を実施したが,当該査察によっては,イラクが,対イラク武力行使がされた当時に,大量破壊兵器を隠匿していたとの事実を確認することはできなかった。

(2)

本件検証の経緯等
対イラク武力行使に加わった各国の一部(米国,英国,オランダ,オーストラリア)は,2003年(平成15年)3月から2009年(平成21年)6月にかけて,議会又は行政府に設置された委員会において,対イラク武力行使に関する意思決定過程,情報能力等について調査を開始し,2003年(平成15年)7月から2010年(平成22年)1月にかけて,調査報告書(英国において2009年(平成21年)に設置された委員会(いわゆるチルコット委員会)を除く。)が作成され,その全部又は一部が公開された(甲12,20ないし27(ただし,枝番のあるものは枝番を含む。),乙16)。


我が国は,平成23年2月,前原誠司外務大臣(当時)が,外務省の職員に対し,対イラク武力行使に関する我が国の対応についての検証をするよう指示し,同年9月以降,本格的な検証が開始された(本件検証)。平
成24年12月21日,本件検証に係る報告書(本件文書1)がとりまとめられて玄葉光一郎外務大臣(当時)に報告されるとともに,報告の主なポイントについては,外務省のホームページ上で,一般にも公開された。なお,外務省は,現時点においても,本件文書1を保有している。(以上,
甲4の1・2,乙16)
(3)

本件処分等
原告は,平成27年1月12日,外務大臣に対し,情報公開法に基づき,
「対イラク武力行使に関する我が国の対応(検証結果)報告書全文,検証実施のために用いられた文書,
インタビューの記録」
の開示を請求した
(甲1)


外務大臣は,平成27年4月17日,別紙1文書目録の本目録における番号欄記載1ないし6の各行政文書(以下,同目録の本目録における番号欄1ないし6に記載された文書について個別に摘示するときは,本件文書1,本件文書2などと表記する。)及びその余の13の
各行政文書について,その全部又は一部につき開示をしない旨の処分をした。
なお,本件処分を含む上記の処分に係る書面(ただし,平成27年4月17日付けのもの)において,本件処分の理由として記載されていたところは,次のとおりであった。

公にすることにより,他国との信頼関係を損なうおそれ,又は他国との交渉上不利益を被るおそれがあるとともに,当該文書は我が国政府部内の協議の内容に関する記録であって,公にすることにより政府部内の率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあるため,不開示としました。情報公開法5条3号,5号該当(以上,甲2)
(4)

本件処分に対する不服申立て等
原告は,平成27年5月14日,外務大臣に対し,前記⑶イの処分のう
ち外務省が使用する電信システムの内部の処理・管理に係る情報,公表慣行のない外務省職員の電話番号及び個人に関する情報に該当する部分を除く不開示に係る処分についての異議申立てをした(乙1)。

外務大臣は,前記アの異議申立てを受け,平成28年3月30日,前記⑶イの処分の一部を変更する旨の決定をした(乙3)。

外務大臣は,平成28年6月30日,本件文書2,3及び6の一部を開示する旨の前記⑶イの処分の一部を変更する旨の決定を,同年9月30日,
本件文書4及び5の一部を開示する旨の前記⑶イの処分の一部を変更する旨の決定を,それぞれした(乙5,9)。


外務大臣は,平成29年10月31日,本件文書1の一部を開示する旨の本件処分を変更する旨の決定をした(乙15)。

(5)

本件訴えの提起及びその後の経緯等


原告は,平成27年7月16日,本件訴えを提起した。


原告は,平成28年12月21日,本件第6回口頭弁論期日において,本件訴えのうち本件文書4に関する処分の取消し及び本件文書4の不開示部分の開示の義務付けをそれぞれ求める部分を取り下げ,被告は,同月27日,これに同意した。


原告は,平成29年3月18日,本件訴えのうち本件文書2,3,5及び6に関する各処分の取消し及び本件文書2,3,5及び6の各不開示部分の開示の義務付けをそれぞれ求める部分を取り下げ,被告は,同月31日,これに同意した。

第3
1
争点及び争点に関する当事者の主張の要点
本件各不開示部分を開示することの義務付けについて(本案前の争点及び本案の争点3)
(原告の主張の要点)
行政事件訴訟法3条6項2号は,行政庁に対し一定の処分を求める旨の法令
に基づく申請がされた場合において,当該行政庁がその処分をすべきであるにもかかわらずこれがされないときに,行政庁がその処分をすべき旨を命ずることを求めることができる旨定めている。そして,同法37条の3第1項2号及び5項は,当該法令に基づく申請を棄却する旨の処分がされた場合において,当該処分が取り消されるべきものである場合に,
請求に理由があると認められ,
行政庁が当該行政処分をすべきであることが根拠法令上明らかであると認められる場合には,当該処分の義務付けが認められる旨定めている。
本件においては,後記2以下で述べるとおり,本件各不開示部分に記録された情報はいずれも不開示情報(情報公開法5条柱書きにいう不開示情報のこと。以下同じ。)に該当しないから,本件処分は取り消されるべきものである。また,本件処分の根拠となっている情報公開法は,行政庁に対し,行政文書に記録された情報が不開示情報に該当しない場合は,原則として当該文書の開示を義務付けているところ,本件文書1に記録された情報は不開示情報に該当しないから,外務大臣は,原則どおり本件文書1を開示する義務を負う。そして,当該開示の義務の内容は一義的に明白である上,判例(最高裁平成30年1月19日第二小法廷判決・裁判集民事258号)も,情報公開法5条3号の不開示情報に該当しないとした情報に係る開示決定の義務付けを認容すべきものと判断しており,被告の主張とは異なる立場に立っていることが明らかである。
よって,外務大臣に本件各不開示部分の開示を義務付けることが認められるべきである。
(被告の主張の要点)
(1)

義務付けの訴えが不適法であること
本件訴えのうち前記第1の2の請求に係る部分は,行政事件訴訟法3条6
項2号に定めるいわゆる申請型義務付け訴訟と解されるところ,申請型義務付け訴訟のうち,当該法令に基づく申請又は審査請求を却下し又は棄却する旨の処分又は裁決がされた場合の類型については,当該処分又は裁決が取り消されるべきものであり,又は無効若しくは不存在であるときに限り,
提起することができるとされている
(同法37条の3第1項2号)
から,
併合提起した処分又は裁決の取消請求又は無効等確認請求(同条3項2号)が認容されることが訴訟要件である。しかし,後記2以下で述べるとおり,本件処分は適法であり,取り消されるべきものに当たらないから,上記義務付けの訴えは,同条1項2号の要件を欠くものであり,不適法なものとして却下されるべきである。
(2)

仮に義務付けの訴えが適法であるとしても同訴えが棄却されるべきもの
であること
本件訴えのうち前記第1の2の請求に係る部分については,行政庁がその処分若しくは裁決をしないことがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用と認められることが義務付けの訴えを認容するための本案の要件として必要となるところ,本件について,外務大臣が判断の基礎とすべきではない事情を考慮したため,又はある事実に対する評価が明白に誤っているために外務大臣が著しく妥当性を欠く判断をした旨の認定がされたとしても,当該事情又は事実に対する評価を除外して判断した場合,最終的にどのような判断をすべきかという点については,外務大臣にはなお第一次的判断権が留保されているというべきであり,このような判断については,外交関係についての権限及び責任を有する外務大臣の判断が尊重される必要がある。
このことは,
情報公開法5条3号が,国の安全又は他国との交渉に関する行政庁の長の第一次的判断権を尊重している趣旨からもうかがわれる。
2
情報公開法5条3号,5号及び6号該当性の審査方法及び立証責任の所在等(本案の争点1)

(原告の主張の要点)
(1)

情報公開法における開示の基本的枠組み

情報公開法の制定時に策定された情報公開法要綱案の考え方等においては,行政機関の保有する情報を広く公開することは,民主主義や憲法の基礎である国民主権の理念にのっとった国政運営を一層実質的なものとする上で極めて重要な公益性を有することから,その重要性に照らし,行政文書は飽くまでも開示することが原則であって,この開示は行政機関の長の義務であるとする基本的枠組みが採用されている。この点は,情報公開法1条に反映されているほか,情報公開法5条柱書きも,行政機関の長は,開示請求があったときは,開示請求に係る行政文書に次の各号に掲げる情報(中略)のいずれかが記録されている場合を除き,開示請求者に対し,当該行政文書を開示しなければならないと規定し,上記の基本的な枠組みを具体化しているのであり,同条の一部である3号,5号及び6号もその例外ではない。(2)

情報公開法5条3号,5号及び6号の解釈
情報公開法に基づく開示請求権は,法律上の重要な権利である上,同法5条3号は,濫用されやすいものである旨の指摘や,同号の規定が行政機関の恣意的な運用を許容するものではない旨の情報公開法の立法過程における政府委員(当時)の答弁もあることから,同号にいうおそれの判断に当たっては,単なる確率的な可能性ではなく,法的保護に値する蓋然性が求められるというべきであり,
同号にいう
相当の理由
についても,
行政文書を開示することによる利益又は公益性を十分考慮する必要があるほか,行政機関の長が上記のおそれがあると認めるにつき,法規の目的に従って所定の権限を適法に行使すべきものとしての限定を付する趣旨で要件を付加したものであると解するのが相当である。
そうすると,行政機関の長が同号所定の不開示情報に該当すると判断をして不開示処分をした場合において,当該処分の取消訴訟が提起されたときは,行政機関の長は,当該判断の公正妥当を担保するに足りる可能な限り具体的な事実関係に基づく合理的な根拠を示すことに加え,不開示とす
ることの利益が行政文書を開示することによる公益性を上回ることについても合理的な根拠を示すことを要するものと解するのが相当である。そして,裁判所は,上記の事実関係をしんしゃくして上記の場合に該当するかどうかを判断すべきものであり,その判断は,外務大臣の判断が全く事実の基礎を欠いているかどうか,又は事実に対する評価が明白に合理性を欠いているかどうかなどに限定されるものではないというべきである。その上で,裁判所は,不開示部分にどのような情報が記載されているかを相当具体的に特定した上で,不開示部分の情報が開示された場合の不利益を具体的に検討し,裁判所自身の立場において不利益が生ずる蓋然性の判断をし,その論理的帰結として,行政機関の長による判断の相当性も判断するという枠組みを採用すべきである。
なお,上記のような見解に沿う裁判例(東京高裁平成26年7月25日判決・裁判所HP)も存する。

情報公開法5条5号は,開示請求の対象となる行政文書の中には,行政機関等としての最終的な決定前の事項に関する情報が少なからず含まれることになるため,
これらの情報を開示することによって,
外部からの干渉,
圧力等によりその率直な意見の交換,意思決定の中立性が損なわれたり,未成熟な情報が確定的情報と誤解され国民の間に混乱を生じさせたりすることのないようにする必要がある一方,国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進という情報公開法の目的に照らせば,最終的な意思決定がされる前に情報を開示することが必要なことが少なくないため,審議,検討又は協議に関する情報の公開に際しては,政府の説明責任の観点から開示することによる利益と,開示によって適正な意思決定等にもたらされる支障とを比較衡量する必要があるとしたものである。そして,
同号の規定するそれぞれの支障について
不当に
という文言が付加され,
行政文書の情報の性質により,個別具体的な判断に基づき,行政機関の適
正な意思決定に支障を及ぼすおそれの有無及び程度と開示の利益を比較衡量し,不開示とされる情報の範囲が必要な場合を超えて広がらないように配慮している。
したがって,同号にいう不当にとは,審議,検討等途中の段階の情報を公にすることの公益性を考慮してもなお,適正な意思決定の確保等への支障が看過し得ない程度のものを意味し,同号にいうおそれも,単なる確率的な可能性ではなく,法的保護に値する蓋然性が求められるというべきである。

情報公開法5条6号は,行政機関の長に広範な裁量権を与える趣旨ではなく,各要件の該当性を客観的に判断する必要があり,また,事務又は事業がその根拠となる規定又は趣旨に照らし,公益的な開示の必要性等の種々の利益を衡量した上での適正な遂行といえるものであることが求められ,支障の程度は名目的なものでは足りず,実質的なものが要求され,おそれの程度も単なる確率的な可能性ではなく,法的保護に値する蓋然性が要求されるというべきである。なお,上記のような見解に沿う裁判例も複数存する。

(3)

被告の主張が誤っていること
被告は,判例(最高裁昭和53年10月4日大法廷判決・民集32巻7号1223頁。以下最高裁昭和53年判決という。)を引用し,情報公開法5条3号にいうおそれがあると認めることにつき相当の理由があるとの文言について,上記の判例と同様に解し,行政機関の長に広い裁量を認めるべきである旨主張する。
しかし,最高裁昭和53年判決は,当該事案で採用された基準が直ちに他の処分に適用されるわけではないことを明確にしている上,憲法を含む法令上保障されていない権利である外国人の入国の権利や在留する権利に関して判断したものであり,かつ,出入国管理及び難民認定法(以下入管法という。)上も,在留期間の更新の事由の有無に係る判断基準が特に定められていないばかりか,更新を認める場合が例外となるように規定されているのに対し,
本件で問題となる情報公開法に基づく開示請求権は,
法律上の重要な権利であり,情報公開法上も情報の公開の要否に係る判断要素が具体的に規定されているだけではなく,そもそも,開示が認められることが原則であり,同法5条3号に該当することにより開示が制限されるのが例外と位置付けられているのである。
このように,最高裁昭和53年判決の事案と本件とでは,対象となる事柄,行政機関の判断の結果制約を受ける事柄の権利性の有無,条文の規定ぶりなどが全く異なっているから,最高裁昭和53年判決の判断基準をそのまま本件に当てはめて行政機関の長に対していわゆる白紙委任に近い広範な裁量権が認められているということはできない。

被告は,情報公開法5条3号が入管法21条3項の文言を参考にして立法されたものであり,旅券法(平成17年法律第55号による改正前のもの)13条1項5号の規定ぶりとは異なっているから,同号の規定を参考にして情報公開法5条3号を解釈することはできない旨主張する。しかし,どの法令と同様に考えるべきかを検討するに当たって重要なことは,法が処分を行政庁の裁量に任せる趣旨,目的及び範囲を処分ごとに検討する視点であり,その際に重視すべきことは,行政庁の処分によって制約される権利又は事項が何かということであるところ,被告が参酌すべきとする入管法の場合に行政庁の処分により制約されるのは,憲法上ないし法律上の権利ではないとされる外国人の日本への入国の自由ないし在留の問題であるのに対し,被告が参酌すべきでないとする旅券法の場合に制約されるのは憲法が国民に保障する基本的人権の一つである外国旅行の自由であり,情報公開法に基づく開示請求権が法律上の重要な権利である以上,制約される権利の重要性が旅券法の場合と共通することに着目するこ
とは適切である。また,情報公開法と旅券法との規定の文言の違いについても,行政機関の長が裁量権を行使するに当たってどのようなおそれがあるかを判断するという判断基準を法定していることは共通しており,修飾語の有無というレベルの違いがあるにすぎない。
以上に加え,前記アに主張したところも考慮すれば,情報公開法5条3号の文言が入管法21条3項の文言を参考に立法されたという被告の主張は,失当である。

被告は,不開示情報該当性の判断に至る過程で行政機関の長が行った各段階における当該行政機関の長の裁量権の行使に逸脱又は濫用があったことを基礎付ける具体的事実について,原告がその主張立証責任を負う旨主張する。
しかし,被告の主張は,行政文書にいかなる情報が記載されているかを知らない情報開示請求者に不可能を強いるものであるし,被告自身,被告が不開示情報に該当するとの認定の概略を明らかにする必要があることを認めていることにも照らすと,被告の主張は,行政機関による恣意的な運用を許容する結果を招くだけであって,失当である。

(被告の主張の要点)
(1)

情報公開請求訴訟における審理及び判断の手法
情報公開請求訴訟は,被告の主張に係る不開示情報を公にすることにより
どのような支障が生ずるかについて,当該不開示決定に係る行政文書の具体的記載文言等が明らかにされることなく,そこにいかなる種類又は性質の情報が記載されているかという一般的又は抽象的観点から主張立証がされ,かつ,裁判所もこれを経験則に基づき判断せざるを得ないという他の取消訴訟とは大きく異なった特質がある。また,ある情報を公にすると支障が生ずるかどうか,いかなる支障が生ずるかという判断は,当該情報が不特定多数の人又は団体に取得され,利用されることを想定した一般的又は抽象的判断と
ならざるを得ず,かつ,それをもって足りるというべきである。
このように,情報公開請求訴訟において採用されるべき審理及び判断の手法は,当該行政文書に類型的にいかなる情報が記載されているかという前提となる事実関係から,当該行政文書の不開示部分にどのような情報が記載されているか,あるいは,それを公開した場合に,一般的にはどのような支障が生じ得るかについて,必ずしも具体的な証拠や事実に基づいてではなく,上記の前提事実から経験則に基づいて認定及び判断するというものであるから,情報公開請求訴訟においては,当該不開示決定に係る行政文書に記載された具体的な情報の内容が明らかにされてはならないだけではなく,それが公にされた場合に生じる支障の蓋然性は,それ自体が証拠に基づいて直接的及び具体的に証明されることまでは要求されていないと解され,被告が不開示情報に該当するとする情報の類型的な性質を明らかにすることなどにより,そのような情報が公にされた場合,経験則上,支障が生ずるおそれがあることを判断することが可能な程度の主張立証をすれば,不開示情報該当性は肯定されるというべきである。
(2)

情報公開法5条3号,5号及び6号の意義等
情報公開法5条3号は,公にすることにより,国の安全が害されるおそれ,他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報を不開示情報として定める。これは,これらの情報が,一般の行政運営に関する情報とは異なり,その性質上,開示又は不開示の判断に高度の政策的判断を伴うこと,我が国の安全保障上又は対外関係上の将来予測としての専門的及び技術的判断を要することなどの特殊性が認められることによるものであり,これらに係る司法審査においては,裁判所は,同号に規定する情報に該当するかどうかについての行政機関の長の第一次的な判断を尊重し,その判断が合理性を持つ
判断として許容される限度内のものであるかどうかを審理及び判断することが適当であることによるものである。
このように,同号は,同号該当性に関して行政機関の長がした判断について広い裁量権を認めた趣旨の規定であることから,当該行政機関の長の判断に違法があるかどうかについては,裁判所は,同号の該当性,すなわち,公にすることにより,国の安全が害されるおそれ,他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報に該当するか否かを認定するためにした前提事実の認定,
それらの認定事実に係る不開示情報の要件の当てはめ及びその充足性を判断して不開示情報に該当するとの認定をしたことに係る行政機関の長の第一次的な判断を尊重し,その判断が合理性を持つ判断として許容される限度内のものであるかどうかを審理の対象とし,これについて判断することになる。このことは,同号の認めることにつき相当の理由があるとの文言が,入管法21条3項の法務大臣は,(中略)在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り,これを許可することができるとの文言を参考にして立法されたものであることや,最高裁昭和53年判決が,在留期間の更新を認めるに足りる相当の理由があるか否かの判断が法務大臣の広い裁量に委ねられることを前提に,その判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等により上記の判断が全く事実の基礎を欠くかどうか,又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により上記の判断が社会通念に照らして著しく妥当性を欠くことが明らかであるかどうかについて審理し,それが認められる場合に限り,上記の判断が裁量権の範囲を超え又はその濫用があったものとして違法であるとすることができるものと解するのが相当であるとしていることからも裏付けられる。

そして,上記のとおり,情報公開法5条3号は同号の該当性に関して行政機関の長がした判断について広い裁量権を認めた趣旨の規定であるから,不開示情報の該当性の判断に至る過程で行政機関の長が行った各段階における当該行政機関の長の裁量権の行使に逸脱又は濫用があったことを基礎付ける具体的事実については,原告が主張立証責任を負うものと解すべきである。なお,被告は,行政機関の長が認定した前提事実の内容,当該認定事実の同号の要件への当てはめ及びその判断に基づく当該不開示情報に該当するとの認定の概略を明らかにすることになるが,これは,被告が主張立証責任を負うことに由来するのではなく,
前記(1)のような情報公開請
求訴訟の特質により,原告の立証の必要のためにその前提となるべき事項を被告が指摘するものにすぎない。

情報公開法5条5号は,国の機関(中略)の内部又は相互間における審議,検討又は協議に関する情報であって,公にすることにより,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ,不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ又は特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれがあるものを不開示情報として定める。これは,開示請求の対象となる行政文書の中には,行政機関等としての最終的な決定前の事項に関する情報が少なからず含まれることになるため,これらの情報を開示することによってその意思決定が損なわれるおそれがあるが,意思決定前の情報を全て不開示とすることは,政府がその諸活動を説明する責務を全うするという観点からは適当ではないため,
個別具体的に,
開示することによって行政機関の適正な意思決定に支障を及ぼすおそれの有無及び程度を考慮し,不開示とされる情報の範囲を画したものである。そして,同号にいう審議,検討又は協議に関する情報とは,国の機関等の事務及び事業について意思決定が行われる場合に,その決定に至るまでの過程においては,様々な審議,検討及び協議が行われており,これ
ら各段階において行われる審議,検討又は協議に関連して作成され,又は取得された情報をいい,同号にいう率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれは,適正な意思決定手続の確保を保護法益とするものであり,不当にとは,審議,検討等途中の段階の情報を公にすることの公益性を考慮してもなお,適正な意思決定の確保等への支障が看過し得ない程度のものを意味している。予想される支障が不当なものかどうかの判断は,当該情報の性質に照らし,公にすることによる利益と不開示にすることによる利益とを比較衡量した上で判断されるべきものである。

情報公開法5条6号の柱書きは,国の機関,独立行政法人等,地方公共団体又は地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって,公にすることにより,次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上,当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものを不開示情報と規定している。国の機関又は地方公共団体が行う事務又は事業は広範かつ多種多様であり,公にすることによりその適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある事務又は事業の情報を事項的に全て列挙することは技術的に困難であり,かつ,実益も乏しいことから,同号は,そのようなものを例示的に掲げた上で(同号イないしホ),これらのおそれ以外については,その他当該事務又は事業の性質上,当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものとして包括的に規定したものである。
(3)

原告の主張に対する反論
原告は,被告がその判断の公正妥当を担保するに足りる可能な限り具体的
な事実関係に基づく合理的な根拠を示すことを要すると解すべきである旨主張する。
しかし,情報公開法5条3号は,我が国の安全,他国等との信頼関係及び我が国の国際交渉上の利益を確保することは,国民全体の基本的な利益を擁
護するために政府に課された重要な責務であって,これらの利益を十分に保護する必要から設けられた規定であり,前記⑵アのとおり,同号に規定された情報は,一般の行政運営に関する情報とは異なる特殊性が認められるものであることから,行政庁の長がした判断について広く裁量権を認めた趣旨のものであって,このことは,同号の規定ぶり(…おそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報)が同条の他の号の規定ぶり(…おそれがあるもの)と異なっていることからも明らかである。原告が指摘する裁判例は,原告の上記の主張に沿うような判示をした根拠として,旅券法(平成17年法律第55号による改正前のもの)13条1項5号の解釈に関する判例(最高裁昭和44年7月11日第二小法廷判決・民集23巻8号1470頁)を挙げるが,同号の規定ぶりと情報公開法5条3号の規定ぶりは著しく直接にという限定の有無の点で異なっているから,これらの規定を同列に論ずることは適切ではなく,旅券法(平成17年法律第55号による改正前のもの)13条1項5号の規定を参考にして情報公開法5条3号の規定を解釈することはできないというべきである。
したがって,原告の主張は,失当である。
3
本件各不開示部分の不開示情報該当性について(本案の争点2)
(1)

本件各不開示部分の不開示情報該当性に関する総論的な主張

(原告の主張の要点)
次に述べるところに照らすと,本件各不開示部分が情報公開法5条各号に規定する事由に該当する旨の外務大臣の判断は,違法である。

情報公開法は,行政文書の公開を通じて政府が説明責任を果たすことにより,記録及び文書という証拠的記録に基づいた施策を行うことを通じて民主的政府を確立していくことを重視し,原則として全ての行政文書を公開すべきとの枠組みを採用したものであり,安全保障及び外交分野に関連する文書もその例外ではない。

本件文書1に記載されている情報は,対イラク武力行使に関する検証に係るものである。対イラク武力行使は,安保理決議1441がイラクに対する武力行使を容認する趣旨を含むことについて安保理においても見解が分かれる中,大量破壊兵器がないことを証明することができなかったイラクに問題があるとして,新たな安保理決議を経ることなく行われたものであるところ,日本もこれを積極的に支持するという安全保障及び外交政策上極めて重大な判断をしたものである。しかし,対イラク武力行使が終わった後も,イラク国内において大量破壊兵器は見つからず,大量破壊兵器の使用やそのテロリストへの拡散の脅威の防止という対イラク武力行使を正当化する目的がそもそも成立していなかったことが明らかとなった反面,当時のイラクの政権が崩壊したほか,戦闘が継続した期間やその後の治安が悪化した期間を含め,多数のイラク国民が死亡する結果となった。日本が対イラク武力行使を支持するに至る過程及びその後の復興支援,イラク情勢を含む国際情勢並びに対外関係の検証を行うことは,民主的かつ責任ある安全保障及び外交上の政策判断をしていくために不可欠である。また,このような検証を公表し,批判を受けることで,より建設的な安全保障及び外交上の議論が社会的に起こることが本質的な公益にも資する。しかも,日本にとっての対イラク武力行使は,安保理決議のない武力行使を支持しただけではなく,戦闘がいったん収束した後に,イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法を制定し,内戦状態が継続していたといわれているイラクに非戦闘地域という概念を用いて復興支援として自衛隊を派遣するなど,従来の安全保障及び外交政策から踏み込んだ判断をしてきたという重要な意味を持つものであり,その検証は極めて公益性が高く,検証結果及び検証の過程は,外務省が安全保障及び外交政策上の説明責任を社会に対してどの程度果たせるのかという民主的運営を行う能力を示すものでもあって,公開することの公益性
が極めて高い。そして,本件文書1の公開は,安全保障及び外交分野の政策判断が,無謬的な非公開性や機密性を前提とするのではなく,より民主的なプロセスを経るために公益性の観点から政府の説明責任及び情報公開のあり方が問われるものとなるという意味においても,公益性が高い。イ
被告の主張は,総じて事実主張が十分ではなく,開示できない理由,根拠がきわめて抽象的である。具体的には,次のような点を指摘することができる。
(ア)

被告は,関係国及び他国を具体的に述べることは不可能で

ある旨主張するが,これは,どの国であっても関係国及び他国
になり得るというきわめて抽象的なものである。また,類似の事案についても,いずれかの国が武力行使を行う場合であって,我が国としての立場及び政策を定める必要を生じさせる程度,我が国としての立場及び政策を定めるに当たっての考慮事項等について,対イラク武力行使の場合と一定程度の類似性が認められる事案とするにとどまっており,被告の指摘する指標は曖昧である上,いずれかの国が武力行使に及んでいる状況は世界のどこかでほぼ常時見られることであるし,日本として何らかの立場及び政策を定める必要がある類似の事案も多数存在するといえるから,類似の事案を広く一般化しすぎている。
(イ)

被告は,情報公開法5条5号に該当する旨の主張において,具体的
な事情を指摘することなく,公にしないことを前提とした外務省内での率直な意見交換に基づき記載されたもの,将来的に類似の事案が発生した場合という全く同じ主張を何度も繰り返しているところ,不開示部分の記載内容が異なるのに同じ理由しか挙げられないこと自体,理由が抽象的であって具体的な内実がなく,不開示を正当化する十分な根拠がないことを意味している。
(ウ)

被告は,本件文書1が非公開を前提として作成されたものである旨
主張する。
しかし,文書の作成時や入手時に非公開を前提としたからといって,情報公開請求に対する判断において,直ちに不開示が正当化されるものではない。このことは,情報公開法の立法経緯や規定の文言(情報公開法5条2号ロ,5号,6号)からも明らかである。また,公文書管理法1条,4条に照らせば,公文書の作成は,行政機関の内部的な都合や基準だけに基づいて行われるものではなく,現在及び将来の国民が行政機関の諸活動の内容を検証できるようにするという目的にかなうように行われるものであり,外務省の担当者の意図と不開示という判断を直接結び付けることが許されるわけではない。そして,被告は,非公開を前提としていたと認める具体的な根拠を何ら指摘せず,本件検証の目的を持ち出した反論しかしていないことからも,本件文書1が非公開を前提としたものであると認める根拠がないことがうかがわれる。
なお,
被告は,
将来予定されている同種の審議,検討等に係る意思決定に不当な影響を与えるおそれがある場合にはなお情報公開法5条5号の該当性を満たすものとされている,同条6号が行政機関自身が職務として行う検証の結果を記載した文書を不開示の対象とする文書から除外していないなどの旨も主張するが,本件文書1が特殊な事案を検証したものであって同種の事態を想定し難いことや,本件文書1を公にすることによって将来の別の事案に関する検証の意思決定に不当な影響を与えるおそれを具体的に想定し難いことに加え,そもそも,同条6号に関する主張は,条文の構造とは関係がなく具体的な意味を持っていない。
したがって,被告の主張は,失当である。
(エ)

外務大臣は,本件処分をした段階においては,情報公開法5条3号
にいう国の安全が害されるおそれを不開示の理由として挙げず,また,同条6号に該当するという理由も挙げていなかったが,被告は,本
件訴えにおいては,上記の理由を追加的に主張している。このことは,決定をした当時に行政機関が不開示の事由としなかった事情を後に持ち出したものであって,そのことに説得力があるはずはなく,それ自体被告の主張に合理性が乏しいことを示すものである。
(オ)

外務大臣は,平成29年10月31日付けの決定により,開示部分
を変更しているが,同決定により開示されたのは,公知の事実といってもよい客観的に知られた事実や一般的な記述のみであったところ,これらの事実について,被告は,従前,間接的で因果関係の存否も疑わしい理由を連ねていたものであるから,他の部分についても,不開示を維持すべき理由がないことをうかがわせるものといえる。被告は,少なくとも,開示部分を変更した理由やなお不開示を維持すべき部分がある理由について,具体的に説明すべきである。
ウ(ア)

対イラク武力行使について検証を行った諸外国においても,
例えば,

オランダは,調査結果として551頁にわたる報告書を公表し,その中には,政治的な意思決定の経過や与党が行った連立協議が意思決定に及ぼした影響,オランダの情報機関の役割等,政策の経緯が詳細に記録されているし,英国も,2016年(平成28年)7月6日,アルファベットで260万字にも及ぶチルコット委員会による報告書を公開している。これらの報告書と比較すると本件文書1の分量は僅か(本文の部分で17頁)であり,細部にわたった具体的で詳細な内容が記載されているとは考えられず,抽象化された内容が記載されているにとどまるといえる。
(イ)

対イラク武力行使について検証した報告書を各国が公表している事
実は,日本だけが検証結果を明らかにしないことに合理性がないことや検証結果を開示すべき公益性が高いことを示している。そして,これらの国は,いずれも対イラク武力行使を支持した立場にあり,対イラク武
力行使の原因に誤りがあったことを認めている点で共通し,大量破壊兵器の問題,情報機関による情報収集や分析といったテーマについて検証を行っている点でも共通する。報告書の具体的内容が個々の報告書によって異なるのはもちろんであるが,いずれの報告書も本件文書1よりもはるかに詳細で,その内容を公表している点では共通しているから,この点によっても,本件文書1に不開示情報該当性があるとはいえない。なお,被告は,対イラク武力行使に対する立場,関与の程度等の事情は国により様々であり,検証や報告書の内容も国によって異なる旨主張するが,原告が指摘する報告書の内容の共通点を捨象して抽象的に事情や内容が異なる旨を指摘しても意味はない。
(ウ)

被告は,一般的に情報提供者が情報を提供したことが第三者の知る
ところとなれば,当該情報提供者の信用低下や当該情報提供者に対する報復可能性が生じ得ることを考慮し,国際政治上及び各国の安全保障上機微な問題に係る情報についてはその内容や情報提供元を公にしない国際慣行があり,それは,慣行である以上,明示的な文書で規定されているものではない旨主張する。
しかし,日本に対する情報提供元は,被告自身が述べるようにそのほとんどが各国政府及び国際機関関係者であり,そういった者に対するさらなる情報源である個人の氏名が本件文書1の中に記載されているとは考えられないし,被告自身もそのようなことは主張していない。また,情報提供者に対する報復の可能性は,国際機関や各国の情報機関が情報提供元である場合には当てはまらない。さらに,被告のいう情報提供者の信用低下についても,諸外国の報告書が,情報機関の失敗を自ら指摘している以上,部外者である日本が懸念すべき事項ではない。そして,上記のように諸外国が情報機関の失敗等について公にしている以上,被告が主張するような慣行が存在しないことを端的に示している。なお,
被告は,諸外国と第三国の関係と日本と第三国との関係は異なる旨も指摘するが,一般論にとどまっており,不開示情報該当性の判断の合理的な根拠とはいえない。
したがって,被告の主張は,失当である。
エ(ア)

本件文書1の主なポイントは,
報告の主なポイント
(甲4の2)

として,公にされており,これについて詳述されている本件文書1に不開示情報に該当する事由(以下不開示事由という。)があるとはいえない。報告の主なポイントは,本件文書1の単なる抜き書きではないとしても,
それが本件文書1に基づいて作成されたものである以上,
その記載内容が具体性,詳細性又は表現において本件文書1と一定程度異なるとしても,本件文書1と内容や性質が全く別異な一線を画すものになっているはずはなく,同種の情報が記載されているはずである。このことは,外務省のホームページにおいても,報告の主なポイントが,本件文書1の主要部分を抽出したものであり,本件文書1を代替するものとして位置付けられていることからもうかがわれる。そして,被告自身,
報告の主なポイントは,本件文書1の内容を精査した結果,
他国との交渉上不利益を被らず,また,他国との信頼関係を損なわない範囲でできる限り公表すべきとの方針に基づいて作成されたものであることを自認している。そうすると,報告の主なポイントが公表されている以上,少なくともこれと重複する部分を不開示とする理由は全くないというべきである。
(イ)

本件文書1は,本件検証のために事後的に作成されたものであるか
ら,仮に,本件文書1の中に当時の日本の判断過程,情報収集能力若しくは分析能力又はそれらを推知させる情報が記載されているとしても,それらの記載は検証の目的に沿って選別されたごく一部のものに限られるはずであるし,本件文書1の本文部分の分量が17頁程度しかなく,
不開示部分の分量もそれぞれの項目ごとに数行程度にとどまるから,政策決定過程の生の事実それ自体が表現されているわけではなく,原資料や聞き取り結果をとりまとめたものが記載されているにすぎない。また,
仮に,本件文書1から対イラク武力行使の際の情報収集の具体的手法,情報収集内容,我が国が重視した視点,論点,関心事項等がある程度明らかになるとしても,それらは,国ごと又は地域ごとに異なる各種事情や外交上の課題等によって大きく異なるから,今後,イラクとは異なる他の国が武力行使に至る事態が起こったときに関係国が日本の今後の対応等を正確に予測することなど到底できないというべきであり,そういった国との交渉上日本が不利益を被るとは考えられない。
そして,対イラク武力行使は,武力行使の根拠となったはずの大量破壊兵器が結果的に発見されなかったという特殊な事案であり,日本として,同じ過ちを二度と繰り返さないように過去を検証するために作成されたのが本件文書1であるから,仮に,本件文書1の中に当時の日本の判断過程,情報収集能力若しくは分析能力又はそれらを推知させる情報が記載されており,それが公開されたとしても,当時と同じ対応を日本は将来繰り返さないであろうことを他国が想定できるようになるにすぎない。それゆえ,本件文書1を開示したからといって,他国が日本の今後の対応等を正確に予測する材料になることなどはなく,他国との交渉上不利益を被るおそれや日本の安全が害されるおそれが生じるとも考えられない。しかも,本件文書1において検証の対象となっているのは,2002年(平成14年)から2003年(平成15年)にかけての事実であって,当時から既に15年程度の時が経過しており,国際情勢,社会情勢,当該情報に係る事務の遂行の状況等の事情が当時とは大きく異なっており,情報収集の手法等も当時と異なっていて当然であるところ,被告も,手法,ノウハウ又は考慮事項の一部が当時とは異なってい
ることを自認しているから,少なくとも,本件文書1において検証されている現在においては採用されていない手法,ノウハウ又は考慮事項を開示したとしても,これにより,日本の今後の対応等を正確に予測することなどできるはずがなく,これらの情報の開示を拒否する合理的理由は存しない。
(ウ)

被告は,本件文書1が原資料等を取捨選択し,記載をまとめたもの
であることをもって記載自体が一定の価値判断や評価を伴うものと主張し,記載された分量が少ないとしても,情報公開法5条3号又は6号にいうおそれは存する旨主張する。
しかし,記載自体に一定の価値判断や評価を伴うからといって,直ちに不開示事由該当性が存するとはいえない。
基本的に全ての行政文書は,
記載自体に一定の価値判断や評価を伴うものであるし,本件文書1のように報告書の体裁でまとめられた文書が一定の価値判断や評価を伴うことは当然であるから,行政文書の公開を原則とする情報公開法が,一定の価値判断や評価を伴うことを根拠とする不開示事由該当性を認めるものとして制度設計されているとは到底考えられない。さらに,原資料を取捨選択するなどして事後的に作成した報告書に示されている価値判断や評価は,必然的に相当程度抽象化されているはずであり,一般的に考えても,
情報公開法5条各号により保護に値するものとはいえないから,
原資料等に示されている価値判断や評価よりも保護の必要性は低いはずである。

被告は,本件処分は,平成29年10月31日付けの決定により,開示部分が変更されているが,情報公開法6条1項は,複数の情報が記録されている1個の行政文書について,各情報ごとに,同法5条各号の不開示情報に該当するか否かを審査し,これに該当する情報がある場合に,当該不開示情報が記録されている部分を除いた部分の開示を義務付けているもの
の,1個の行政文書に一体的な1個の不開示情報が記録されている場合においては,その一体的な1個の不開示情報の一部を削除した残りの記述部分を開示することまで義務付けたものではなく,独立した一体的情報をどの範囲で捉えるかについては,当該情報が記録された記載部分の物理的形状,その内容,作成名義,作成目的,当該文書の取得原因等を総合考慮の上,不開示事由に関する定めの趣旨に照らし,社会通念に従って判断すべきであるところ,本件文書1は,作成者,作成目的,内容,検証の方法がいずれも共通であり,形状に関しても参考資料を含めて一体のものであるから,
本件文書1は,
全体として有機的な一体的な情報である旨主張する。
しかし,独立した一体的情報といえるのは,相互に関連性の高い細かな項目の集合であり,本件文書1のような長さの文書全体を独立した一体的情報と捉えるのは無理があるから,被告の主張は,失当である。
(被告の主張の要点)
原告の主張は,次のとおり,失当である。
ア(ア)

本件検証を行うに当たって調査及び確認された点(対イラク武力行
使を支持するに至った当時の我が国が行った情報収集及び分析の具体的手法,情報収集内容並びに我が国が当時判断を行う上で重視した視点,論点及び関心事項)について明らかになれば,情報収集に関わる他国等との信頼関係が損なわれるおそれ,今後我が国の安全を維持するための必要な情報収集に支障が出る可能性が大きいことが容易に想定される上,他国等が我が国の情報収集,情報分析能力等を推察することが可能となるだけでなく,将来的に類似の事案が発生し,我が国としての立場及び政策を定める必要が生じた場合,関係国が我が国の今後の対応等を正確に予測し,自国を利する形での効果的な外交活動を行うことが可能となるため,これらの他国との交渉上不利益を被るおそれ及び我が国の安全が害されるおそれがあることから,本件文書1は非公開を前提とした議
論に基づいて作成されている。
(イ)a

前記(ア)の類似の事案とは,いずれかの国が武力行使を行う

場合であって,我が国としての立場及び政策を定める必要を生じさせる程度,我が国としての立場及び政策を定めるに当たっての考慮事項等について,対イラク武力行使の場合と一定程度の類似性が認められる場合を指している。武力行使が実際に行われており,これに対する我が国としての立場及び政策を実際に策定しているという現下の国際情勢及び我が国の対応に鑑みれば,将来的にいずれかの国が武力行使に及ぶ可能性は実際に存在しており,これに対する我が国の立場及び政策を策定する必要に迫られるという状況も十分に想定されるから,いずれかの国が武力行使に及ぶ事態が生じ,これに対する我が国としての立場及び政策を策定するという類似の事案が発生した場合を考慮することは当然である。そして,このような類似の事案が発生する事態を想定した場合,我が国としての立場及び政策を策定するに当たって我が国が行った情報収集の具体的手法,情報収集内容又は我が国が重視した視点,論点若しくは関心事項が関係国に対して明らかになれば,関係国との交渉上不利益を被ることは明らかである。
b
前記(ア)の関係国とは,前記aの類似の事案において武力
行使に及ぶ国及びその対象となる国に加えて,武力行使が発生した場合に,安全保障面で重大な脅威にさらされるなど,当該武力行使に関して直接的な利害関係を有する国や,当該武力行使につき直接的な関係を有しないとしても,自国を取り巻く情勢や歴史的経緯等様々な側面を理由に利害関係を有する国を指す。武力行使が実際に行われている現下の国際情勢に鑑みれば,武力行使を行う主体及び武力行使の対象について明確な予測を行うことは困難である一方,現代において,武力行使に関する問題は,国際社会にとって規範的な観点からも含め
最も重要な論点の一つであり,また,現在の国際環境や国際社会において諸国が従うべき規範が,
立場,
利害,
主義又は主張を異にする様々
な国等の間で行われる不断の外交実践の累積の上に成り立っていることに鑑みれば,いずれかの国が武力行使に及ぶ事態が生じた場合,当該武力行使に直接関わらない国であっても,その国を取り巻く情勢や歴史的経緯等様々な関係から利害関係を持ち得るし,そのために当該武力行使に関して積極的な外交活動を展開することが想定される。そのような中で,我が国が対イラク武力行使を支持するという判断を行う上で重視した視点,論点,関心事項等が明らかとなれば,それを用いて関係国が,我が国の今後の対応等を正確に予測し,自国を利する形での効果的な外交活動を行うこととなるおそれは,現実的なものとなる。
c
前記bに照らすと,我が国が交渉上不利益を被るおそれのある相手方,
自国を利する形で効果的な外交活動を行うこととなる
関係国

他国を具体的に指摘することは不可能である。

(ウ)a

原告は,本件文書1が非公開を前提として作成されたものとする

根拠が明らかではない旨主張するが,本件検証の目的が対イラク武力行使を支持するに至った外務省内における当時の検討及び意思決定過程を改めて検証し,今後の政策立案及び実施に役立てることにあったことがその根拠であり,明確である。また,非公開を前提として作成された資料がその後公開されることとなれば,それによる不利益を顧慮して資料に必要な内容の全てを記載することや資料の作成そのものをちゅうちょするおそれがあるのは当然である。
b
原告は,
文書の作成時や入手時に非公開を前提としたからといって,
情報公開請求に対する判断において,直ちに不開示が正当化されるものではないし,公文書の作成は,行政機関の内部的な都合や基準だけ
に基づいて行われるものではなく,現在及び将来の国民が行政機関の諸活動の内容を検証できるようにするという目的にかなうように行われるものであり,外務省の担当者の意図と不開示という判断を直接結び付けることが許されるわけではない旨主張する。
しかし,本件文書1は実際に公開されておらず,報告の主なポイントのみが公表されていることからして,本件文書1が非公開を前提に作成されたことは明らかである。また,情報公開法5条5号については,審議,検討等が終了し,意思決定が行われた後であっても,当該審議,検討等に関する情報を公にすることにより,国民の間に混乱を生じさせたり,将来予定されている同種の審議,検討等に係る意思決定に不当な影響を与えるおそれがある場合には,なお同号の該当性を満たすものとされているし,同条6号についても,同種の事務又は事業が反復される場合,当該情報の開示が将来の事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある場合にも適用があるものとされている。さらに,情報公開法は,その規定ぶりからみて,行政機関自身が職務として行う検証の結果を記載した文書を不開示の対象とする文書から除外しておらず,行政機関自身が職務上作成する文書についても,公にすることにより,率直な意見の交換や事務の適正な遂行等を不当に損なうことを想定しているといえる。
したがって,原告の主張は,失当である。
c
原告は,関係国や他国がきわめて抽象的である上,類似の事案も広く一般化しすぎている旨主張するが,上記の類似の事案は,飽くまで,いずれかの国が武力行使に及ぶという国際社会における特殊な事態が発生していることを前提に,その上で我が国として何らかの立場及び政策を定める必要性を生じているという限定的な状況である。また,武力行使の想定国等を具体的に特定し,当該国等
との関係でのおそれがなければ,
情報公開法5条3号にいう
おそれ
があるとはいえない旨の原告の主張は,国際政治や安全保障政策の複雑さを正解しないものにすぎない。また,仮に,
関係国や他国
を具体的に特定できるとしても,我が国が当該関係国や他国
に懸念を有していると捉えられ,新たな外交問題を引き起こしかねないから,その意味においても,関係国や他国を具体的に特定
することは適当ではない。
イ(ア)

原告は,対イラク武力行使について検証した報告書を各国が公表し
ている事実は,日本だけが検証結果を明らかにしないことに合理性がないことや検証結果を開示すべき公益性が高いことを示している上,国際政治上及び各国の安全保障上機微な問題に係る情報についてはその内容や情報提供元を公にしない国際慣行は存在しない旨主張する。
しかし,国際社会での地位,対イラク武力行使に対する立場又は関与の程度,
対イラク武力行使の影響又はそれに対する国内世論等の事情は,
国により様々であるし,対イラク武力行使に関する検証の実施及び公表についても,各国がそれぞれの目的に基づき,判断及び実施したものであって,検証や報告書の内容も国ごとに異なっているから,事情の異なる諸外国が本件文書1とは別の検証報告書等を公表しているとしても,本件文書1を開示することについて情報公開法5条3号,5号又は6号に該当する事由がないということの根拠とはならない。
また,
一般的に,
情報収集活動に際しては,情報提供者(これは,個人であっても,国又は国際機関であっても同様であり,これと異なる原告の主張は,独自の見解である。)が情報を提供したことが第三者の知るところとなれば,当該情報提供者の信用低下や当該情報提供者に対する報復可能性が生じ得ることを考慮し,
情報の内容や情報提供者の氏名等は公にされないし,
ある目的のために賛同者を得ようとして他者に働きかけを行う場合,第
三者による妨害等を避けるため,秘密裏に行われることが多いのであって,
それは機微な問題に関する国際交渉にも当然に妥当するものであり,慣行である以上,そのことが明示的な文書で規定されてはいない。したがって,原告の主張は,失当である。
(イ)

原告は,諸外国の報告書と比較すると本件文書1の分量は僅か(1
7頁)であり,細部にわたった具体的で詳細な内容が記載されているとは考えられない上,諸外国が情報機関の失敗等について公にしているから,本件文書1に不開示情報該当性があるとはいえない旨主張する。しかし,本件文書1の不開示情報該当性は,我が国にとってのおそれであり,事情の異なる諸外国が本件文書1とは別の検証報告書等の中で原告が指摘するような情報を記載してこれを公開しているとしても,諸外国と第三国との関係と日本と第三国との関係は異なるため,そのことは上記のおそれがないことの根拠とはならない。
ウ(ア)

原告は,本件文書1の主なポイントは,
報告の主なポイント
(甲

4の2)として,公にされており,これについて詳述されている本件文書1に不開示事由があるとはいえない旨主張するが,報告の主なポイントは,本件文書1の内容を精査した結果,他国との交渉上不利益を被らず,また,他国との信頼関係を損なわない範囲でできる限り公表すべきとの方針に基づいて新たに作成されたものであって,本件文書1の単なる抜き書きではなく,全く性質の異なる情報であり,本件文書1のうち,報告の主なポイントの記述内容と同一の部分とそうではない部分を区別することは容易ではないから,報告の主なポイントが公表されているからといって,直ちに,本件文書1の全部を開示すべきことにはならない。
(イ)

原告は,仮に,本件文書1の中に当時の日本の判断過程,情報収集
能力若しくは分析能力又はそれらを推知させる情報が記載されていると
しても,それらの記載は検証の目的に沿って選別されたごく一部のものに限られるはずであるし,本件文書1の本文部分の分量が17頁程度しかなく,不開示部分の分量もそれぞれの項目ごとに数行程度にとどまるから,
政策決定過程の生の事実それ自体が表現されているわけではなく,原資料や聞き取り結果をとりまとめたものが記載されているにすぎない旨主張する。
しかし,本件文書1には,対イラク武力行使を支持するに至った検討及び意思決定過程を明らかにする上で特に取捨選択された有意な情報(一連の事実関係,情報収集及び分析,検討,政策判断及びその過程並びに情報発信等及び検討)が凝縮して具体的に記載されているから,本件文書1を開示することにより,我が国が対イラク政策においていかなる情報に特に注目し,
重視していたのかが自ずから明らかとなるところ,
このような情報は,我が国がいかなる具体的な外交施策を行うのかという選択をする際の具体的な意思決定過程を左右するものであるから,当該情報の性質を分析することにより,類似の事案が発生した場合に,関係国が我が国の今後の対応等を正確に予測し,自国を利する形での効果的な外交活動を行うことが可能となるため,これら他国との交渉上不利益を被るおそれ及び我が国の安全が害されるおそれが存在することは明らかである。
したがって,本件文書1の分量の多寡という形式論に着目する原告の主張は,失当である。
(ウ)

原告は,仮に,本件文書1から対イラク武力行使の際の情報収集の
具体的手法,情報収集内容,我が国が重視した視点,論点,関心事項等がある程度明らかになるとしても,今後,イラクとは異なる他の国が武力行使に至る事態が起こったときに関係国が日本の今後の対応等を正確に予測することなど到底できない旨主張する。

しかし,類似の事案は,前記ア(イ)のとおりであるから,対イラク武力行使とは異なる事案においても,前記ア(イ)に述べた類似性が認められる場合,本件文書1の内容が明らかにされることにより,関係国が我が国の今後の対応等を正確に予測し,自国を利する形での効果的な外交活動を行うことが可能となるため,我が国の外交交渉事務に支障を及ぼし,これら他国との交渉上不利益を被るおそれ及び我が国の安全が害されるおそれがあることに変わりはない。また,ある国に関する情報収集や渉外活動は,当該国においてのみならず,世界的に行われるものであり,対イラク武力行使に関する問題と類似の問題では,情報収集や渉外活動の手法も共通する点が多い。
したがって,
原告の主張は,
外交実務を正解しない誤ったものである。
(エ)

原告は,日本として,同じ過ちを二度と繰り返さないように過去を
検証するために作成されたのが本件文書1であるから,仮に,本件文書1の中に当時の日本の判断過程,情報収集能力若しくは分析能力又はそれらを推知させる情報が記載されており,それが公開されたとしても,当時と同じ対応を日本は将来繰り返さないであろうことを他国が想定できるようになるにすぎない旨主張する。
しかし,対イラク武力行使に関する我が国の対応が過ちであり,それに関する情報が公開されたとしても問題はないとの原告の主張は,本件文書1が作成された目的(我が国が対イラク武力行使を支持するに至った検討及び意思決定過程を検証し,今後の政策立案及び実施に役立てることを目的とするものであって,対イラク武力行使を支持したことの是非の検証を目的とするものではない。を正解しておらず,

失当である。
また,本件文書1の作成により,対イラク武力行使の当時の我が国の政策決定に向けた情報収集活動,外交活動又は省内外での調整活動の手法若しくはノウハウの全てが改められるわけではなく,引き続き同様の対
応をとったり,同様の対応を改善した上で継続することもあり得るし,対応の際の視点や考慮事項のうち共通しているものもある。
したがって,我が国が対イラク武力行使の当時と同様の対応を一切とらないことを前提とするかのような原告の主張は,その前提を誤ったものである。
(オ)

原告は,基本的に全ての行政文書は,記載自体に一定の価値判断や
評価を伴うものであるし,本件文書1のように報告書の体裁でまとめられた文書が一定の価値判断や評価を伴うことは当然であるから,行政文書の公開を原則とする情報公開法が,一定の価値判断や評価を伴うことを根拠とする不開示事由該当性を認めるものとして制度設計されているとは到底考えられないし,原資料を取捨選択するなどして事後的に作成した報告書に示されている価値判断や評価は,必然的に相当程度抽象化されているはずであり,一般的に考えても,情報公開法5条各号により保護に値するものとはいえないから,原資料等に示されている価値判断や評価よりも保護の必要性は低いはずである旨主張する。
しかし,記載自体に一定の価値判断や評価を伴うことが直ちに不開示情報該当性を基礎付けるのではなく,一定の価値判断や評価を伴う本件文書1の記載は,対イラク武力行使に関する意思決定を行うに当たり,我が国として重要な考慮要素等を示すものに該当するといえる上,仮に,
その記載が抽象的なものと評価されるとしても,対イラク武力行使に関する意思決定における我が国の重要な考慮要素を示すものとなり得ることに変わりはないから,そのことによって不開示情報該当性が否定されることはない。
したがって,原告の主張は,失当である。

本件処分は,平成29年10月31日付けの決定により,開示部分が変更されているが,情報公開法6条1項は,複数の情報が記録されている1
個の行政文書について,各情報ごとに,同法5条各号の不開示情報に該当するか否かを審査し,これに該当する情報がある場合に,当該不開示情報が記録されている部分を除いた部分の開示を義務付けているものの,1個の行政文書に一体的な1個の不開示情報が記録されている場合においては,その一体的な1個の不開示情報の一部を削除した残りの記述部分を開示することまで義務付けたものではなく,独立した一体的情報をどの範囲で捉えるかについては,当該情報が記録された記載部分の物理的形状,その内容,作成名義,作成目的,当該文書の取得原因等を総合考慮の上,不開示事由に関する定めの趣旨に照らし,社会通念に従って判断すべきであるところ,本件文書1は,作成者,作成目的,内容及び検証の方法がいずれも共通であり,形状に関しても参考資料を含めて一体のものであるから,本件文書1は,全体として有機的な一体的な情報というべきである。(2)

本件各不開示部分の不開示情報該当性に関する各論的な主張
別紙2本件各不開示部分の不開示情報該当性に関する当事者の主張の要点のとおりである。なお,同別紙において定めた略称は,以下においても用いることとする。
第4
1
当裁判所の判断
本案の争点1(情報公開法5条3号,5号及び6号該当性の審査方法及び立証責任の所在等)について
(1)

一般に,
情報公開法5条各号に定める不開示情報が記録されていることを

理由として,行政文書の全部又はその一部について開示をしない旨の処分がされた場合に,その処分の取消し等を求める訴えにおいて,当該処分に係る行政文書の部分に記録されている情報が同条各号に定めるものに該当するか否かは,行政文書の開示の原則の例外に当たるか否かが問題となることや,それが当該処分の適法性を基礎付ける事項であること,行政機関が当該行政文書を保有してその内容を把握していることなどに照らすと,原則として,
当該処分をした行政庁の所属する行政主体である被告において主張立証すべきものと解される。
したがって,不開示処分のうち当該処分に係る行政文書に記録されている情報が情報公開法5条5号又は6号に定めるものに該当することを理由とするものについては,被告において,当該情報がそれらの号に定めるものに該当することを主張立証することを要するというべきである。
(2)

これに対し,情報公開法5条3号は,
公にすることにより,国の安全が害されるおそれ,他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報を不開示情報として規定しているところ,これは,我が国の安全,他国等との信頼関係及び我が国の国際交渉上の利益を確保することは,国民全体の基本的利益を擁護するために政府に課された重要な責務であり,これらの利益等を十分に保護する必要があるとの趣旨により,設けられた規定であると解される。
そうすると,
①このような同号の立法趣旨,
②同号が
おそれがある情報
(同条6号等参照)と規定せずおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報と規定していること及び③同条3号に掲げる国の安全等の確保に関する情報については,一般の行政運営に関する情報とは異なり,その性質上,開示又は不開示の判断に高度の政策的判断を伴うものであり,我が国の安全保障上又は対外関係上の将来予測等についての専門的又は技術的判断をも要するものであるとの特殊性があること等に照らすと,同号に基づく処分の適法性については,同号に規定する事由があるか否かについての行政機関の長の第一次的な判断を尊重し,その判断が合理性を持つものとして許容される限度内のものであるかどうか,すなわち,開示をしない旨の決定が裁量権の行使としてされたことを前提に,その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し,その判断が,重要な事
実の基礎を欠くか,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められるなど,当該行政機関の長に与えられた裁量権の範囲から逸脱し,又はこれを濫用したと認められるか否かを判断するという審査方法によるべきである。
もっとも,国の安全又は他国若しくは国際機関との交渉等に関する正確かつ詳細な情報は専ら行政機関の長の側に属しており,開示請求をする者及び裁判所は,処分に係る行政文書に記録されている内容等を直接に把握することができないことからすれば,まず,被告において,当該処分に係る行政文書に記録されている情報に係る事柄,当該情報の性質,当該処分をするに当たって前提とした事実関係その他の当該処分当時の状況等の,一般的又は類型的にみて,当該情報が同号に掲げる国の安全等の確保に関するものに当たることを推認するに足りる事情を主張立証する必要があると解すべきである。その上で,同号に基づき開示をしないことを争う原告が,当該処分につき行政機関の長の裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用があったことを基礎付ける具体的事実について主張立証することを要するというべきである。(3)

前記(1)及び(2)に反する原告及び被告の主張は,
いずれも採用することが

できない。
2
本案の争点2(本件各不開示部分の不開示情報該当性)について
(1)

本件文書1の1枚目21行目17文字目から22行目まで及び参考資料
3に係る不開示部分(本件不開示部分1)について

証拠(乙16)及び弁論の全趣旨によれば,本件不開示部分1には,本件検証を行うに当たって外務省が参考にした各種資料の数,作成時期及び資料の内容を示す標目(情報収集先及び収集した情報内容を示す標目を含み,関係国又は関係機関の高官の氏名を記したものも複数含まれる。)が記録されていることが認められる。
以下,これを前提に,本件不開示部分1に記録された情報が情報公開法
5条3号に該当する情報であるか否かについて検討する。

本件不開示部分1には,本件検証を行うに当たって外務省が参考にした各種資料の数,作成時期及び標目が記録されており,当該情報によって,対イラク武力行使に関する我が国の情報収集能力又は分析能力の一端をうかがい知ることが可能になると推認することができるところ,対イラク武力行使が国際政治上及び各国の安全保障政策上機微な問題であり,そのような機微な問題に係る情報収集能力又は分析能力という情報は,事柄の性質上,一般的又は類型的に見て,これを公にすることにより,国の安全が害されるおそれがあると推認することができる。また,情報収集先である関係国又は関係機関の高官の氏名についても,上記のような機微な問題に係る情報提供元であることに照らすと,事柄の性質上,一般的又は類型的に見て,これを公にすることにより,他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると推認することができる。

ウ(ア)

原告は,①情報収集先として想定される国名や機関名は,米国若し
くは欧州各国又は国連の機関である国連大量破壊兵器廃棄特別委員会,国連監視検証査察委員会等であることは合理的に予想できる上,標目に情報収集先又は収集した情報内容を示すものが含まれることを意味するにすぎず,
それらが含まれない標目もあることを意味するものでもある,
②本件不開示部分1に記録されているのは,外務省が収集した資料の全てではなく,本件検証をするに当たって外務省が参考にした資料にすぎず,入手経過や入手方法,さらにはここで挙げられているものが収集した資料の全てなのか一部なのか,一部だとしてどのように選別した一部なのかが記載されているわけではないから,資料の種類,性質及び数を明らかにすることが直ちに政府の情報収集能力を明らかにすることにはならず,本件不開示部分1に記録された情報は,情報公開法5条3号に
定める不開示情報に該当しない旨主張する。
しかし,本件文書1のうち開示された部分の記載及び本件不開示部分1の分量からは,原告が主張するような情報が本件不開示部分1に記載されているとは断定し難い上,前記イのような本件不開示部分1に記録されている情報の性質等に照らすと,外務大臣において,当該情報が国際政治上及び安全保障政策上機微な問題に係る情報であって,本件不開示部分1を公にすることにより,国の安全が害されるおそれ,他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれが生ずる蓋然性が高いものと判断したことが,重要な事実の基礎を欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとまでは認め難い。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
(イ)

原告は,諸外国の報告書は,各国の高官の氏名,特定の日時に当該
高官が会談したこと,当該会談の内容等,被告が公に知られることを懸念する内容それ自体に相当する事項を詳細に報告し,
公表しているから,
推測の材料が断片的に明らかになるという程度の事情で,国の安全が害されるおそれ又は他国との交渉上不利益を被るおそれがあるとはいえない旨主張する。
しかし,原告の主張するところによっても,諸外国の報告書に記載されている情報と本件不開示部分1に記録されている情報が同一であることまではうかがわれない上,前記イのような本件不開示部分1に記録されている情報の性質等に照らすと,外務大臣において,当該情報が国際政治上及び安全保障政策上機微な問題に係る情報であって,本件不開示部分1を公にすることにより,国の安全が害されるおそれ,他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれが生ずる蓋然性が高いものと判断したこ
とが,重要な事実の基礎を欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとまでは認め難い。
したがって,原告の主張は,採用することができない。

以上によれば,外務大臣が,本件不開示部分1に記録された情報を公にすることにより,国の安全が害されるおそれ,他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると判断したことをもって,その裁量権の範囲から逸脱し,又はこれを濫用したということはできない。
したがって,本件不開示部分1に記録された情報は,情報公開法5条3号が規定するものに該当すると認められる。

(2)

本件文書1の1枚目の脚注3行目から6行目までに係る不開示部分(本件

不開示部分2)について

証拠(乙16)及び弁論の全趣旨によれば,本件不開示部分2には,本件文書1を作成するに当たり外務省が実施したインタビューの対象者の氏名及び肩書が記録されていることが認められる。
以下,これを前提に,本件不開示部分2に記録された情報が情報公開法5条5号に該当するか否かについて検討する。

イ(ア)

本件不開示部分2には,本件検証に当たって実施されたインタビュ
ーの対象者の氏名及び肩書きが記録されており,仮に,これを公にすれば,当該対象者が本件検証の対象である対イラク武力行使に関連する公表されていない情報を有している可能性がある者であることが公となるところ,前記(1)のとおり,対イラク武力行使が国際政治上及び安全保障政策上機微な問題であることに照らすと,他国が対イラク武力行使に係る我が国が保有する公表されていない情報を得ようとする意図又は動機を有する蓋然性が高いと推認されることからすれば,
上記の者に対して,
不当な働きかけ等が行われるおそれも相当の蓋然性を有するものと推認
することができる。そして,インタビューの対象者の多くが外交活動に従事する者であるとされていることに照らすと,上記の者においても,同人の氏名及び肩書きが公になれば,不当な働きかけ等を受けるおそれがあることを容易に理解し得ることになるから,仮に,本件不開示部分2を公にすれば,上記の者,その後に上記の者と同じ立場に就いた者,将来的に上記の者と同じ立場に就く可能性のある者等が,今後,本件検証に当たって実施されたインタビューと同様のインタビューに応ずること自体を拒むなどすることになるおそれも相当の蓋然性を有するものと推認することができ,国の機関である外務省の内部における検討の際,率直な意見の交換が不当に損なわれるおそれがあるものと推認することができる。
(イ)

以上によれば,本件不開示部分2に記録された情報は,情報公開法
5条5号が規定するものに該当すると認められる。
ウ(ア)

原告は,対イラク武力行使当時の意思決定に関与していた者の肩書
きは,情報公開請求により既に開示されており(甲17,18),それらの者の氏名を特定することも容易であるから,被告の主張は,全く根拠がない旨主張する。
しかし,原告の指摘する証拠(甲17,18)は,対イラク武力行使の際に外務省がした様々な対応に関与した者を示すものではあっても,それらの者の関与の度合いの軽重等は不明であるほか,実際にインタビューを受けた者が特定されることにより当該者に対する不当な働きかけ等がされる蓋然性が高くなること自体は否定し難いことに照らすと,原告の主張するところを前提としても,
前記イの判断を覆すには足りない。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
(イ)

原告は,対イラク武力行使の後に外務省の幹部の立場にあった者に
対して脅迫がされたとか,工作活動がされたとかいう事実は存在しない
から,対イラク武力行使がされてから10年以上経過した後にインタビューの対象者になったからといって,対イラク武力行使の意思決定への関与を理由に脅迫されたり,工作活動がされたりするとは,到底考えられないし,対イラク武力行使に関する意思決定をした際に日本政府の幹部の立場にあった者に対して工作活動や脅迫の対象とするよりも,今後される意思決定に不当な圧力をかけようとしてそのような働きかけをする危険性の方がはるかに高いはずであるから,被告の主張は,誤りである旨主張する。
しかし,仮に,対イラク武力行使の後に外務省の幹部の立場にあった者に対して脅迫がされたとか,工作活動がされたとかいう事実が存在しないとしても,それが不当な働きかけ等の対象とすべき者を絞り込むことが不可能であったことに起因しているとしても何ら不合理ではない上,前記(1)のとおり,
対イラク武力行使が国際政治上及び安全保障政策上機
微な問題であることにも照らすと,時の経過によって直ちに,不当な働きかけ等がされ得ないとまでは認め難い。また,事柄の性質上,時点を比較して,不当な働きかけ等の危険性の度合いを論ずることが適切であるとも直ちには認め難い。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
(3)

項目国際社会の情勢に係る不開示部分(本件不開示部分3)について証拠(乙16)及び弁論の全趣旨によれば,本件不開示部分3には,イラク情勢に関する国際社会の動きに係る記述であって,対イラク武力行使への我が国の対応を検討する上で重要な背景となった関係国及び地域の政治情勢又は安全保障関連情勢に関する我が国の分析又は評価等が3つの項目に分けて記録されていることが認められる。
以下,これを前提に,本件不開示部分3に記録された情報が情報公開法5条3号に該当するか否かについて検討する。


前記アを前提とすると,本件不開示部分3には,イラク情勢を含む当時の国際政治情勢又は安全保障関連情勢に関する我が国の認識又は評価が記録されていることになるから,これを公にすることにより,我が国がその当時にどの程度の情報を収集することができたのか,どの程度の分析をしていたのか,どのような情報に関心を有していたのか等を他国が推察することが可能になると推認することができ,事柄の性質上,一般的又は類型的に見て,これを公にすることにより国の安全が害されるおそれがあると推認することができる。また,上記のとおり,イラク情勢に関する我が国の認識,評価等が公になれば,イラク及びその周辺国が,我が国の関心の対象,分析,評価等を推察することが可能となるから,事柄の性質上,一般的又は類型的に見て,これを公にすることによりそれらの国との間での外交交渉上不利益を被るおそれがあると推認することができる。

ウ(ア)

原告は,①国際社会の情勢という大きな主題について,僅か1
頁程度にまとめた内容から,情報収集能力,情報分析能力等を推察することなど不可能であるし,仮に推察することができたとしても,合理的な推察とはいえない,②外務省がどの国又は地域に焦点を当てていたかという事情だけで,我が国の今後の対応等を正確に予測したり,自国を利する形での効果的な外交活動を行うことが可能になったりするとも考えられない,③本件不開示部分3の各項目の分量は,それぞれ数行から十数行程度のものであり,この程度の分量の記載で,我が国が,その当時,どのような国際情勢認識の中で,どのような比較衡量及び判断を行い,イラクをめぐる政策を検討していたかを他国が正確に把握でき,しかもそれを将来の類似の事案において応用して他国に有利に利用するなどとは到底考えられないなどとして,本件不開示部分3に記載された情報は,
情報公開法5条3号に定める不開示情報に該当しない旨主張する。しかし,原告の主張するところはいずれも,本件不開示部分3の分量
が少ないこと又はこれに記録されている事項が限定的であることを前提に,それらの情報から推察することができる事項等も極めて限定的であることを主張するにとどまるものと解されるところ,情報の価値が分量のみによって左右されるものではないこと,他の情報との組み合わせなどによって様々な価値を生み出し得るものであること等の情報というものの性質等に照らすと,原告の主張するところを踏まえても,外務大臣において,当該情報が国際政治上及び安全保障政策上機微な問題に係る情報であって,本件不開示部分3を公にすることにより,国の安全が害されるおそれ又は他国との交渉上不利益を被るおそれが生ずる蓋然性が高いものと判断したことが,重要な事実の基礎を欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとまでは認め難い。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
(イ)

原告は,将来的に類似の事案が発生する蓋然性があるとの具体的な
根拠はなく,関係国や類似の事案についても具体的に特定されていないから,交渉上の不利益を被る具体的な蓋然性があるとも認められない旨主張する。
しかし,武力行使を伴う国際的又は地域的な紛争が今なお世界のどこかで生じていることは,公知の事実であるから,そのような紛争を端緒として他国がした又は国際的にされた武力行使について,我が国が関与する又は利害関係を有するに至る事態が生ずる蓋然性はあると推認することができる。また,どのような武力行使なのか,どの国が関係するのかについては,それを事前に特定することは不可能である上,それが特定されていないからといって,対イラク武力行使が国際政治上及び安全保障政策上機微な問題であること等のこれまでに説示したところを前提とすると,原告の主張するところをもっても,外務大臣において,当該情報が国際政治上及び安全保障政策上機微な問題に係る情報であって,
本件不開示部分3を公にすることにより,国の安全が害されるおそれ又は他国との交渉上不利益を被るおそれが生ずる蓋然性が高いものと判断したことが,重要な事実の基礎を欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとまでは認め難い。
したがって,原告の主張は,採用することができない。

以上によれば,外務大臣が,本件不開示部分3に記録された情報を公にすることにより,国の安全が害されるおそれ又は他国との交渉上不利益を被るおそれがあると判断したことをもって,
その裁量権の範囲から逸脱し,
又はこれを濫用したということはできない。
したがって,本件不開示部分3に記録された情報は,情報公開法5条3号が規定するものに該当すると認められる。

(4)

項目日本の状況に係る不開示部分(本件不開示部分4)について
証拠(乙16)及び弁論の全趣旨によれば,本件不開示部分4には,対イラク武力行使への我が国の対応を検討する上で重要な背景となった対イラク武力行使前後の我が国の外交的努力を中心とした我が国を取り巻く情勢(当時の我が国の政府が行った外交及び安全保障上の取組等に係る内容であって,当時我が国が安全保障上の懸念として認識していたイラク以外の特定の地域に係る情勢に関する記述を含む。)について記録されていることが認められる。
以下,これを前提に,本件不開示部分4に記録された情報が情報公開法5条3号に該当するか否かについて検討する。


本件不開示部分4には,対イラク武力行使に関連する情勢に係る情報のみならず,その他の我が国の安全保障関連情勢に関する情報も記録されていることになるから,これを公にすることにより,対イラク武力行使に関連する情勢に関する我が国の認識等が明らかとなるにとどまらず,我が国の安全保障関係における関心事項,考慮事項等も明らかとなる蓋然性が高
いものと推認することができ,事柄の性質上,一般的又は類型的に見て,これを公にすることにより国の安全が害されるおそれがあると推認することができる。また,前記アを前提とすると,本件不開示部分4には,イラク以外の特定の地域に係る情勢に関する記述が含まれているのであるから,これを公にすることにより,
当該特定の地域に関する我が国の関心の対象,
分析,評価等を当該特定の地域に存する国又は地域が推察することが可能となると推認することができるから,事柄の性質上,一般的又は類型的に見て,これを公にすることにより他国との交渉上不利益を被るおそれがあると推認することができる。
ウ(ア)

原告は,本件不開示部分4については,本件文書1を要約した報告の主なポイント(甲4の2)にも〈我が国の外交努力〉として,
1頁分以上の記述がある一方で,本件不開示部分4は数行程度の分量であって,本件不開示部分4の記述の大半は,報告の主なポイントにおいて明らかにされていると考えるのが合理的であるから,報告の主なポイントにおける記載と重複する部分については,これを不開示とする理由は全くない旨主張する。
しかし,被告は,本件不開示部分4は,報告の主なポイント中の
〈我が国の外交努力〉に対応するものではなく,報告の主なポイントには,本件不開示部分4に記録されている情報は記載されていない旨主張し,本件全証拠によっても,本件不開示部分4に被告の主張と異なる情報が記録されていることをうかがわせる事情等は見当たらないから,報告の主なポイントには,本件不開示部分4に記録されている情報は記載されていないと認めるのが相当である。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
(イ)

原告は,外務省が既に公にしている資料(甲7,9)における日本
の安全保障上の取組や安全保障に関する日本の見解に係る記載が相当程
度の分量に及ぶことからして,本件不開示部分4の記載がそれらの公にされている資料の記載と相当程度重複していることが明らかである旨主張する。
しかし,前記アにおいて認定した本件不開示部分4に記録されている情報の内容に照らすと,これと原告が指摘する資料(甲7,9)の記載が同一である又は類似しているとまでは直ちに認め難い上,本件全証拠によっても,本件不開示部分4の記載が上記の資料の記載と相当程度重複していることをうかがわせる事情等も見当たらない。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
(ウ)

原告は,①仮に,あるテーマに関するある時点における日本の関心
事項等が明らかになったとしても,そのことが情報公開法5条3号にいうおそれにつながるとする被告の主張には飛躍がある,②本件不開示部分4の分量が数行程度である以上,被告が指摘するような壮大なテーマや内容を具体的かつ詳細に書き尽くすことができるはずがないのであって,これを公にすることによって,外交及び安全保障関係における我が国の関心事項並びに政策決定において我が国が考慮している事項を推測するのは困難である,③既に開示された事項は全て公知の事実を簡潔かつ客観的に記載したにすぎないものであり,これに続けて記載された僅か4行程度の本件不開示部分4の記載から,我が国の関心事項や政策決定における考慮事項を把握できるとしても,およそ抽象的なレベルにとどまるなどと主張する。
しかし,前記(3)ウ(ア)に説示したところと同様の理由のほか,既に開示された事項が全て公知の事実であるとしても,そのことから直ちに,本件不開示部分4に記録されている情報も全て公知の事実又はこれに類する事実にとどまるとは認め難いことに照らすと,原告の主張するところを踏まえても,外務大臣において,当該情報が安全保障政策上機微な
問題に係る情報であって,本件不開示部分4を公にすることにより,国の安全が害されるおそれ又は他国との交渉上不利益を被るおそれが生ずる蓋然性が高いものと判断したことが,重要な事実の基礎を欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとまでは認め難い。
したがって,原告の主張は,採用することができない。

以上によれば,外務大臣が,本件不開示部分4に記録された情報を公にすることにより,国の安全が害されるおそれ又は他国との交渉上不利益を被るおそれがあると判断したことをもって,
その裁量権の範囲から逸脱し,
又はこれを濫用したということはできない。
したがって,本件不開示部分4に記録された情報は,情報公開法5条3号が規定するものに該当すると認められる。

(5)

項目
対イラク武力行使支持に至る我が国政府の検討過程・外交努力の概観に係る不開示部分(本件不開示部分5)についてア
証拠(乙16)及び弁論の全趣旨によれば,本件不開示部分5は,2002年(平成14年)初めから2003年(平成15年)3月に至るまでの我が国政府内での検討過程及び外交努力についての記述であり,具体的には,イラク情勢の緊張の高まりを受けて同情勢に対応するために外務省内でどのような体制が組まれ,どのような情報収集,情報分析又は検討が行われたか,政府部内でどのような協議が行われたか,我が国と関係国との間でどのようなやり取りが行われたか,我が国の動きに対する評価,いかなる判断の下で対イラク武力行使を支持する旨の政策決定が行われたか,これらについての本件検証としての分析等について,時系列で因果関係に従い,省内外での検討又は調整過程,その視点又は方針,政府高官等への報告,政府高官等からの指示の内容,関係国に対する具体的な働きかけの内容(公表を前提としない他国との個別具体的なやり取りを含む。),具体的な情報収集活動及びそれらを踏まえた上での省内外及び政府高官等の
認識又は評価等,機微に触れる事項も含め,記載自体が一定の価値判断や評価を伴う形で情報が記録されていることが認められる。
以下,これを前提に,本件不開示部分5に記録された情報が情報公開法5条3号に該当するか否かについて検討する。

本件不開示部分5には,対イラク武力行使に関連する我が国の政府内の検討の過程及び内容に係る具体的な情報が記録されていることになるところ,これを公にすることにより,我が国の政策検討又は意思決定の過程,関心事項,考慮事項等が明らかとなるものと推認することができるから,対イラク武力行使が国際政治上及び各国の安全保障政策上機微な問題であることにも照らすと,事柄の性質上,一般的又は類型的に見て,これを公にすることにより国の安全を害するおそれがあると推認することができる。また,本件不開示部分5には,我が国が対イラク武力行使に至る過程でどのような情報収集活動を行ったか及びそれをどのように分析してその後の対応に生かしたのかに係る具体的な情報が記録されていることになるところ,対イラク武力行使のような機微な問題に係る情報収集能力又は分析能力という情報は,事柄の性質上,一般的又は類型的に見て,これを公にすることにより国の安全が害されるおそれがあると推認することができる。さらに,本件不開示部分5には,他国との個別具体的なやり取りが含まれているところ,これが,上記のような機微な問題に係る個別具体的なやり取りであることに照らすと,事柄の性質上,一般的又は類型的に見て,これを公にすることにより,他国との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国との交渉上不利益を被るおそれがあると推認することができる。

ウ(ア)

原告は,本件不開示部分5については,本件文書1を要約した報告の主なポイント(甲4の2)にも,被告が主張する記載内容が全て登場しているから,報告の主なポイントにおける記載と重複する部分については,これを不開示とする理由は全くないし,本件不開示部分
5の分量からすると,報告の主なポイント(甲4の2)の記載よりも具体的かつ詳細になっていることはあり得ない旨主張する。
しかし,被告は,報告の主なポイントは,本件文書1の単なる抜
き書きではなく,公表するために新たに作成されたものであって,内容の詳細さや具体性に違いがある旨主張し,これに反する事実をうかがわせる証拠ないし事情等は見当たらない上,本件全証拠によっても,本件不開示部分5に報告の主なポイントに記載されている文章に係る情報と同一の情報がそのまま記録されていることをうかがわせる事情等も見当たらない(むしろ,証拠(甲4の2,乙16)によれば,報告の主なポイントに記載されている情報は,全て開示されているとも解し得るところである。)から,ある情報の有する意味又は価値が,当該情報に係る表現の方法,位置,文脈等によっても左右されることにも照らすと,原告の主張するところを踏まえても,外務大臣において,当該情報が国際政治上及び安全保障政策上機微な問題に係る情報であって,本件不開示部分5を公にすることにより,国の安全が害されるおそれ,他国との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国との交渉上不利益を被るおそれが生ずる蓋然性が高いものと判断したことが,重要な事実の基礎を欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとまでは認め難い。したがって,原告の主張は,採用することができない。
(イ)

原告は,①本件不開示部分5に記録されている情報は日本の外交努力(甲9)に記載されている内容と大部分が重複しているものと考えられる,②本件不開示部分5に記録されている情報が同じ事実について外務省が公にしている資料の記載と大きく異なることは考え難い,③本件不開示部分5の分量が僅かなものにすぎないことからしても,本件不開示部分5に記録されている情報から,日本の情報収集能力,情報分析能力等を推察することは不可能であり,これを公にすることによって
明らかになる内容もたかがしれている,④文字列による切り分けが困難であるとしても量的に少ないはずの未公表部分から被告が主張するようなおそれが生ずるとは考え難いなどと主張する。
しかし,被告は,日本の外交努力は,存在を公表しても差し支え
のない会談や報道発表を羅列したものである旨主張し,これに反する事実をうかがわせる証拠ないし事情等は見当たらないところ,これを前提とする限り,日本の外交努力に記載されているものは,前記アにおいて認定した本件不開示部分5に記録されている情報の内容とは,少なくとも質的に異なるものである(なお,証拠(甲9,乙16)によれば,日本の外交努力
に記載されている会談等のうち本件文書1の項目
対イラク武力行使支持に至る我が国政府の検討過程・外交努力の概観に記載されたものについては,既に開示されているとも解し得るところである。)と推認することができる。また,その余の原告の主張については,これを踏まえても,前記(3)ウ(ア)と同様の理由により,外務大臣の判断が,重要な事実の基礎を欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとまでは認め難い。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
(ウ)

原告は,将来的に類似の事案が発生する蓋然性があるとの具体的な
根拠はなく,関係国や類似の事案についても具体的に特定されていないから,交渉上の不利益を被る具体的な蓋然性があるとも認められない旨主張する。
しかし,前記(3)ウ(イ)と同様の理由により,原告の主張するところをもっても,外務大臣の判断が,重要な事実の基礎を欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとまでは認め難い。
したがって,原告の主張は,採用することができない。

以上によれば,外務大臣が,本件不開示部分5に記録された情報を公に
することにより,国の安全が害されるおそれ,他国との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国との交渉上不利益を被るおそれがあると判断したことをもって,その裁量権の範囲から逸脱し,又はこれを濫用したということはできない。
したがって,本件不開示部分5に記録された情報は,情報公開法5条3号が規定するものに該当すると認められる。
(6)

項目情報収集についての検証に係る不開示部分(本件不開示部分6)
について

証拠(乙16)及び弁論の全趣旨によれば,本件不開示部分6には,他国のイラクにおける大量破壊兵器の隠匿に関する評価又は分析に係るもののほか,特に注目すべき情報を挙げて,どういった相手方から,どの程度の回数当該情報を入手したのかという内容も含む収集した情報の種類,内容,数,収集先,収集に係る視点,収集の手法及び収集先の対応についての傾向,多く収集することができた情報の種類並びに一方で十分に収集することのできなかった情報の種類に加え,情報収集に係る在外公館を含む省内外における指示内容及び報告状況に係る経緯,政策決定を行うに当たりどのような情報を収集しようとしたか等についての検証結果が,その記載自体に評価又は分析を伴う形で記録されていることが認められる。以下,これを前提に,本件不開示部分6に記録された情報が情報公開法5条3号に該当するか否かについて検討する。


本件不開示部分6には,我が国の情報収集の対象に係る関心事項,情報収集能力又は分析能力等が明らかになる情報が記録されているものと推認することができるから,事柄の性質上,一般的又は類型的に見て,これを公にすることにより国の安全を害するおそれ又は他国との交渉上不利益を被るおそれがあると推認することができる。
また,
本件不開示部分6には,
他国が収集した対イラク武力行使に係る情報及びその分析,情報収集先,
情報源等が明らかになる情報が記録されているものと推認することもできるから,それが対イラク武力行使のような国際政治上及び安全保障政策上機微な問題に係る情報源等であることにも照らすと,事柄の性質上,一般的又は類型的に見て,これを公にすることにより他国との信頼関係が損なわれるおそれがあると推認することができる。
ウ(ア)

原告は,報告の主なポイント(甲4の2)には,当時の情報源のほとんどが各国政府及び国際機関関係者であったと見受けられることに鑑み,国内外の専門家の意見や分析を一層活用することとの記載があり,上記の各国政府についても,米国に加え,英,仏,独,イラク,イラク周辺国等との記載があり,上記の国際機関が国連であることも明らかであるから,少なくとも主要な情報収集先については,秘匿する必要性はなく,かつ,秘匿する必要性に関する被告の説明も抽象的なものにとどまっている上,例えば,オーストラリアは,情報提供先である国際機関,各国の外交ルート,情報機関等を公表しているから,被告が本件不開示部分6を開示したとしても,極めて抽象的なおそれを超えて他国との信頼関係が損なわれるおそれはない旨主張する。
しかし,被告は,本件不開示部分6には,報告の主なポイントで
既に公開されている情報と比較してより具体的な情報収集先又は情報収集の方法若しくは内容が記載されている旨主張し,これに反する事実をうかがわせる証拠ないし事情等は見当たらない上,本件全証拠によっても,本件不開示部分6に報告の主なポイントに記載されている文章に係る情報と同一の情報がそのまま記録されていることをうかがわせる事情等も見当たらないから,ある情報の有する意味又は価値が,当該情報に係る表現の方法,位置,文脈等によっても左右されることにも照らすと,原告の主張するところを踏まえても,外務大臣において,当該情報が国際政治上及び安全保障政策上機微な問題に係る情報であって,本
件不開示部分6を公にすることにより,国の安全が害されるおそれ,他国との信頼関係を損ねるおそれ又は他国との交渉上不利益を被るおそれが生ずる蓋然性が高いものと判断したことが,
重要な事実の基礎を欠き,
又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとまでは認め難い。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
(イ)

原告は,①追加的に開示された部分がいずれも抽象的又は一般的な
認識又は評価を示す記述にすぎないことからも,本件不開示部分6の全てが情報収集についての具体的方法や内容に係る記述であるとは考え難い,②本件不開示部分6の分量のうち具体的な事実,認識又は評価に係る記述は,
個々の小項目ごとに僅か数行程度ずつであることからしても,
それほど具体的な記述があるとは考えられない,③文字列で記載された報告書について公表されている部分と非公表の部分を切り分けることが容易ではないとは考えられないなどと主張する。
しかし,前記(3)ウ(ア)に説示したところと同様の理由のほか,追加的に開示された部分が全て抽象的又は一般的な認識又は評価を示す情報にすぎないとしても,そのことから直ちに,本件不開示部分6に記録されている情報も全て抽象的若しくは一般的な認識若しくは評価を示す情報又はこれに類する事実にとどまるとは認め難いこと及び文字列を機械的に区分することと当該文字列に含まれる情報を区分することとは質的に異なるものであって,文字列であるためにそれを機械的に区分することが容易であることをもって直ちに,当該文字列に含まれる情報を区分することも容易であるとまでは認め難いことに照らすと,原告の主張するところを踏まえても,外務大臣において,当該情報が国際政治上及び安全保障政策上機微な問題に係る情報であって,本件不開示部分6を公にすることにより,国の安全が害されるおそれ,他国との信頼関係を損ねるおそれ又は他国との交渉上不利益を被るおそれが生ずる蓋然性が高い
ものと判断したことが,重要な事実の基礎を欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとまでは認め難い。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
(ウ)

原告は,対イラク武力行使についての情報収集活動を一定程度具体
的に明らかにしたからといって,対イラク武力行使から15年以上経過した現在又は将来において,他の外交課題について,関係国が開示された情報に基づき,自国を利し,我が国の利益を害する戦略をとることが容易になるとはとても考えられない旨主張する。
しかし,これまでに説示したところを前提とすると,我が国の対イラク武力行使についての情報収集活動が対イラク武力行使に特有のものであって,およそ他の事象に係る情報収集活動の参考とならないとまでは認め難いから,他国がこれを参考として,我が国の利益を害する戦略をとる一助とする蓋然性自体は存在するものと推認することができ,原告の主張するところをもっても,外務大臣において,当該情報が国際政治上及び安全保障政策上機微な問題に係る情報であって,本件不開示部分6を公にすることにより,国の安全が害されるおそれ,他国との信頼関係を損ねるおそれ又は他国との交渉上不利益を被るおそれが生ずる蓋然性が高いものと判断したことが,重要な事実の基礎を欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとまでは認め難い。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
(エ)

原告は,①米国が対イラク武力行使に至る米国の情報機構の活動を
検証し,情報収集先や得た情報の内容,評価の誤り,検証から得られた教訓等の記述を含む600頁以上にわたる報告書を公表している,②英国を始めとする諸外国は,当時のイラク情勢に関する評価及び分析を公にしており,英国については,他国の首脳及び高官の具体的氏名及び具体的日時を明示した上で会合又は会話の内容を詳細に含んだ検証結果報
告も公表しているから,情報提供元を公にしないとの国際慣行があるとは考えられない旨主張する。
しかし,本件全証拠によっても,本件不開示部分6に記録されている情報と原告が指摘する諸外国の報告書において公表されている事実に係る情報が同一であることをうかがわせる事情等は見当たらないから,原告の主張するところをもって直ちに,本件不開示部分6に記録されている情報を公にしても差し支えがないとか,情報提供元を公にしないとの国際慣行があるとはいえないとかいうことまでは認め難い。
したがって,原告の主張は,採用することができない。

以上によれば,外務大臣が,本件不開示部分6に記録された情報を公にすることにより,国の安全が害されるおそれ,他国との信頼関係を損ねるおそれ又は他国との交渉上不利益を被るおそれがあると判断したことをもって,その裁量権の範囲から逸脱し,又はこれを濫用したということはできない。
したがって,本件不開示部分6に記録された情報は,情報公開法5条3号が規定するものに該当すると認められる。

(7)

項目分析についての検証に係る不開示部分(本件不開示部分7)につ
いて

証拠(乙16)及び弁論の全趣旨によれば,本件不開示部分7には,対イラク武力行使に関係するいくつかの特定の問題(武力行使により生じ得る影響)ないし動向に関して収集された情報を踏まえ,それらに関する情報分析の手法や分析過程に関する評価,作成された資料の内容及びその用途並びにそれらの共有のあり方(資料の作成過程を含む。)に関する評価が4つの項目に分けて記録されていることが認められる。
以下,これを前提に,本件不開示部分7に記録された情報が情報公開法5条3号に該当するか否かについて検討する。


本件不開示部分7には,我が国の情報収集の対象に係る関心事項,情報収集能力又は分析能力等が明らかになる情報が記録されているものと推認することができるから,情報収集能力又は分析能力等に係る情報が国際政治上及び安全保障政策上これを機密にしておく必要性の高いものであるといえることに照らすと,事柄の性質上,一般的又は類型的に見て,これを公にすることにより国の安全を害するおそれ又は他国との交渉上不利益を被るおそれがあると推認することができる。
また,
本件不開示部分7には,
我が国が収集した対イラク武力行使に係る情報及びその分析,その結果として我が国が有するに至った対イラク武力行使に関する認識等が明らかになる情報が記録されているものと推認することができるから,対イラク武力行使が国際政治上及び安全保障政策上機微な問題に係る情報であることにも照らすと,事柄の性質上,一般的又は類型的に見て,これを公にすることにより他国との交渉上不利益を被るおそれがあると推認することができる。

ウ(ア)

原告は,米国は,対イラク武力行使に至る段階で,どのような情報
に基づいてイラクがどのような兵器を有していたと米国がその当時に認識していたかを振り返り,当時の判断に含まれていた誤りを,事後的に得られた情報と対照しながら指摘しているから,日本の場合のみ,同様の事項を公表したために日本の安全が害されるおそれ等が生ずるとは考えられないし,仮に,本件不開示部分7に記載された内容が,将来,いずれかの国の武力行使に係る事案についても一定程度当てはまるとすれば,それは時代や情勢の変化によって左右されないような他国も当然に把握しているごく一般的な情報収集手法又は分析手法であるから,他国がこれを知ったとしても,日本の対応等を正確に予測することなどできないといえる旨主張する。
しかし,本件全証拠によっても,本件不開示部分7に記録されている
情報と米国が公表しているとされる事実に係る情報が同一であることをうかがわせる事情,又は本件不開示部分7に記録されている情報収集手法又は分析手法がごく一般的なものにすぎないことをうかがわせる事情等は見当たらないから,原告の主張するところをもって直ちに,本件不開示部分7に記録されている情報を公にしても差し支えがないとまでは認め難い。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
(イ)

原告は,イラクを巡る情勢の経緯(甲6)には,当該不開示部

分の分量以上の分量を割いてイラクをめぐる情勢の経緯が説明され,日本の外交努力(甲9)には,対イラク武力行使の平和的解決のためにいかなる外交努力をしたのかが具体的に記載されているから,被告の主張は,抽象的なおそれを指摘するものにすぎない旨主張する。
しかし,被告は,
イラクを巡る情勢の経緯及び日本の外交努力
は,いずれも,存在を公表しても差し支えのない安保理の決議,イラクの査察妨害等の事実経過,会談,報道発表等を羅列したものである旨主張し,これに反する事実をうかがわせる証拠ないし事情等は見当たらないところ,これを前提とする限り,
イラクを巡る情勢の経緯及び日本の外交努力に記載されているものは,前記アにおいて認定した本件不開示部分7に記録されている情報の内容とは,少なくとも質的に異なるものであると推認することができ,外務大臣において,本件不開示部分7に記録されている情報が国際政治上及び安全保障政策上機微な問題に係る情報であって,本件不開示部分7を公にすることにより,国の安全が害されるおそれ又は他国との交渉上不利益を被るおそれが生ずる蓋然性が高いものと判断したことが,重要な事実の基礎を欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとまでは認め難い。
したがって,原告の主張は,採用することができない。

(ウ)

原告は,15年以上前の対イラク武力行使をめぐるイラク情勢につ
いて,1頁にも満たない概括的な報告文書を公開したことにより,国の安全が害されるおそれ及び他国との交渉上不利益を被るおそれがあるとは考えられない旨主張する。
しかし,これまでに説示したところを前提とすると,前記(6)ウ(ウ)と同様,我が国の対イラク武力行使についての情報収集活動又は分析活動が,対イラク武力行使に特有のものであって,およそ他の事象に係る情報収集活動等の参考とならないとまでは認め難いから,他国がこれを参考として,我が国の利益を害する戦略をとる一助とする蓋然性自体は存在するものと推認することができる。
そして,
その余の主張については,
前記(3)ウ(ア)と同様であるから,結局,原告の主張するところをもっても,外務大臣の判断が,重要な事実の基礎を欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとまでは認め難い。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
(エ)

原告は,①将来的に類似の事案が発生するとの蓋然性は何ら具体的
な根拠に基づくものではなく,類似の事案が何を指すのかも不明確であるし,関係国についても何ら具体的に特定されていないだけではなく,日本がどのような他国との関係でいかなる不利益を被るのか,どのような理由で日本の安全が害されるのかについての具体的な説明はなく,抽象的な主張にとどまる,②特定の文章に一定の価値判断や評価を伴うのは当然のことであって,そのことから直ちに情報公開法5条3号に該当するものと認められるわけではない,③具体的事実を挙げることなく,評価のみを書き連ねることは不可能又は困難であるから,本件不開示部分7には,イラク情勢に関する具体的事実の経過に関する記載も含まれているはずであり,少なくともそれらの事実経過については,既に公開されている情報と同一であるから,開示すべきであるなどと主張する。
しかし,ある情報の有する意味又は価値が,当該情報に係る表現の方法,位置,文脈等によっても左右されること,及び本件全証拠によっても,本件不開示部分7に記録されている情報にイラク情勢に関する具体的事実の経過に関する記載が含まれていることをうかがわせる事情等が見当たらないことに加え,前記(3)ウ(イ)と同様の理由により,原告の主張するところを踏まえたとしても,外務大臣の判断が,重要な事実の基礎を欠き,
又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとまでは認め難い。
したがって,原告の主張は,採用することができない。

以上によれば,外務大臣が,本件不開示部分7に記録された情報を公にすることにより,国の安全が害されるおそれ又は他国との交渉上不利益を被るおそれがあると判断したことをもって,
その裁量権の範囲から逸脱し,
又はこれを濫用したということはできない。
したがって,本件不開示部分7に記録された情報は,情報公開法5条3号が規定するものに該当すると認められる。



項目検討・意思決定プロセスに係る不開示部分(本件不開示部分8)について

証拠(乙16)及び弁論の全趣旨によれば,本件不開示部分8には,外務省内及び政府部内でどのような手続を経て対イラク武力行使をめぐる政策検討及び意思決定がされたのかという対イラク武力行使の問題に係る検討及び意思決定過程(特に,外務省内における関係局内の協議の具体的な開催状況,官邸との密接な協議状況並びに検討及び意思決定プロセスにおいて考慮された事項),それに対する本件検証としての評価等について,具体的な内容が記録されていることが認められる。
以下,これを前提に,本件不開示部分8に記録された情報が情報公開法5条3号に該当するか否かについて検討する。


本件不開示部分8には,我が国の具体的な政策の形成過程又は政策を形
成する際の関心事項に係る具体的な内容の情報が記録されているものと推認することができるから,これを公にすることにより,他国が我が国の政策の形成過程に応じた対応を取ったり,我が国の関心事項に応じた外交上の対処を講じたりすることが可能となるといえることに照らすと,事柄の性質上,一般的又は類型的に見て,これを公にすることにより他国との交渉上不利益を被るおそれがあると推認することができる。
ウ(ア)

原告は,新聞記事(甲10)や55人が語るイラク戦争(甲1

1)には,政府部内における政策検討又は意思決定プロセスの具体的な内容に関する記述及びその検討,意思決定プロセスにおいて考慮された事項等に係る具体的な記述が存するところ,上記の書籍は,朝日新聞のジャーナリストが内閣の構成員に対してしたインタビューに基づき,当時の政府の動きについて,インタビューの対象者の発言内容を具体的に引用して説明したものであり,当該発言等は正確であると考えられるから,当該発言と同一の内容の情報が記載された部分については,不開示とすべき理由はない旨主張する。
しかし,原告が指摘する新聞記事又は書籍(甲10及び11)はいずれも,当該記事又は書籍の発行主体又は執筆者が認識又は理解した事実等が記載されているものであり,我が国の政府が保有している情報又は認識と完全に趣旨,内容等が一致しているものとまでは認め難いから,上記の書籍に対イラク武力行使に関する我が国の政府部内における政策検討又は意思決定の過程の具体的な内容に関する記述及びその検討又は意思決定の過程において考慮された事項等に係る具体的な記述が存するとしても,そのことから直ちに,当該記述に係る情報が既に公にされているものとまでは認め難く,上記の新聞記事についても同様であって,原告の主張するところを踏まえたとしても,外務大臣において,本件不開示部分8に記録されている情報が安全保障政策上機微な問題に係る情
報であって,本件不開示部分8を公にすることにより,他国との交渉上不利益を被るおそれが生ずる蓋然性が高いものと判断したことが,重要な事実の基礎を欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとまでは認め難い。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
(イ)

原告は,オランダは,対イラク武力行使への政治的支持に至るプロ
セスについて,調査委員会を組織し,その調査結果として551頁にわたる報告書を公表し,その中では,政治的な意思決定の経過,与党が行った連立協議が意思決定に及ぼした影響,オランダの情報機関の役割等の対イラク武力行使を支持した経緯が詳細に記録されているところ,大量破壊兵器が存在することを理由として対イラク武力行使がされたにもかかわらず,後に大量破壊兵器が存在しなかったという事実について事後的に検証をしたという点で本件検証と共通点があり,かつ,オランダも,調査結果を公表することによって自国が将来外交交渉上不利益を受けること等がないよう配慮した上で詳細な検証結果報告を公表していることからすると,日本が同様の情報を開示したとしても,他国との交渉上不利益を被るおそれはない旨主張する。
しかし,本件全証拠によっても,本件不開示部分8に記録されている情報とオランダが公表しているとされる事実に係る情報が同一であることをうかがわせる事情等は見当たらないから,原告の主張するところを踏まえたとしても,外務大臣において,本件不開示部分8に記録されている情報が安全保障政策上機微な問題に係る情報であって,本件不開示部分8を公にすることにより,他国との交渉上不利益を被るおそれが生ずる蓋然性が高いものと判断したことが,重要な事実の基礎を欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとまでは認め難い。
したがって,原告の主張は,採用することができない。

(ウ)

原告は,①本件不開示部分8の分量が半頁もないことからすると,
前記(ア)の書籍や新聞記事以上に具体的で詳細な情報が記載されているのか,大いに疑問である,②オランダが公表している報告書と比較して本件文書1の分量がごく僅かであって,それほど詳細な内容が記載されているとは考えられない,③本件文書1が原資料を取捨選択,抽象化して作成されたものであって,必然的に原資料よりも相当程度抽象化された記載となり,少ない分量での記述になっていると考えられることからすると,開示しないことに値するだけの具体的な内容が含まれるためには,必然的にある程度の字数を必要とするはずであるから,本件不開示部分8の分量が少ないこととは整合しない旨主張する。
しかし,前記(3)ウ(ア)に説示したところと同様,原告の主張するところをもっても,外務大臣の判断が,重要な事実の基礎を欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとまでは認め難い。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
(エ)

原告は,①将来的に類似の事案が発生するとの蓋然性は何ら具体的
な根拠に基づくものではなく,類似の事案が何を指すのかも不明確であるし,関係国についても何ら具体的に特定されていない,②本件不開示部分8には,日本の行政組織をある程度詳細に知る者であれば容易に知り得る外務省と官邸との協議,検討,意思決定内容等の通常の政策決定プロセスそのものが書かれているにすぎない,③政府内での政策検討又は決定プロセスに関する具体的な内容が一定程度公表されたとしても,日本の対応が推測され,日本が他国との交渉上不利益を被るおそれがあるとは考えられない,④文字列で記載された報告書についてその区別が容易ではないと考えられない上,公表されている情報と同一の情報が含まれていることを被告も認めていることからすると,現状の決定は,本来であれば開示すべき情報も区別することなく不開示としていることが
明らかであって,取消しを免れない旨主張する。
しかし,本件全証拠によっても,本件不開示部分8に記録されている情報が,原告が上記②又は③に主張する内容のものであることをうかがわせる事情等は見当たらない。
また,
ある情報の有する意味又は価値が,
当該情報に係る表現の方法,
位置,
文脈等によっても左右されること
(な
お,証拠(甲4の2,乙16)によれば,既に公表されている情報と同一の情報は,
現時点では開示されているものとうかがわれる。に加え,

前記(6)ウ(イ)に説示したところと同様の理由により,
原告の主張すると
ころを踏まえたとしても,
外務大臣の判断が,
重要な事実の基礎を欠き,
又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとまでは認め難い。
したがって,原告の主張は,採用することができない。

以上によれば,外務大臣が,本件不開示部分8に記録された情報を公にすることにより,他国との交渉上不利益を被るおそれがあると判断したことをもって,その裁量権の範囲から逸脱し,又はこれを濫用したということはできない。
したがって,本件不開示部分8に記録された情報は,情報公開法5条3号が規定するものに該当すると認められる。

(9)

項目武力行使の支持に至るプロセスに係る不開示部分(本件不開示部
分9)について

証拠(乙16)及び弁論の全趣旨によれば,本件不開示部分9には,2002年(平成14年)初め以降,我が国が対イラク武力行使に対する支持を表明するに至るまでの政策決定過程について,国際社会において我が国に期待される役割,我が国が取るべき態度等について,各選択肢の問題点及びその解決方法を国内で検討し,各国と協議した過程を含め,上記の期間を通じての外務省による情勢の認識,政府部内でのやり取り,外交努力の内容や具体的やり取り(我が国政府及び関係国政府の高官の氏名を記
載するとともに,外交交渉の相手方の情勢の認識や意図を推知し得る相手方の具体的な発言内容も含む。),政策決定を行う際の判断要素(国際情勢,二国間関係等),あり得べき政策決定の内容とその留意事項等について,対イラクのみならず,国際社会,関係国,安保理等多方面にわたる関係や影響も含めた分析,評価等が記録されていることが認められる。以下,これを前提に,本件不開示部分9に記録された情報が情報公開法5条3号に該当するか否かについて検討する。

本件不開示部分9には,関係国政府の高官の氏名を記載するとともに,外交交渉の相手方の情勢の認識や意図を推知し得る相手方の具体的な発言内容も含まれているというのであるから,事柄の性質上,一般的又は類型的に見て,これを公にすることにより他国との信頼関係が損なわれるおそれがあると推認することができる。また,本件不開示部分9には,我が国の具体的な政策の形成過程又は政策を形成する際の関心事項に係る具体的な内容の情報が記録されているものと推認することができるから,これを公にすることにより,他国が我が国の政策の形成過程に応じた対応を取ったり,我が国の関心事項に応じた外交上の対処を講じたりすることが可能となるといえることに照らすと,
事柄の性質上,
一般的又は類型的に見て,
これを公にすることにより他国との交渉上不利益を被るおそれがあると推認することができる。

ウ(ア)

原告は,日本の外交努力(甲9)には,日本政府が行った外交

努力が具体的に記載され,
55人が語るイラク戦争
(甲11)には,
我が国が対イラク武力行使の支持を表明する直前の小泉首相及び福田康夫内閣官房長官(当時)とパウエル国務長官との会談の内容が具体的に記載されているほか,新聞記事(甲10)には,駐日中国大使と外務事務次官との具体的なやり取りが報道されている旨主張する。
しかし,日本の外交努力に記載された情報は,前記(7)ウ(イ)と同
様,前記アにおいて認定した本件不開示部分9に記録されている情報の内容とは,少なくとも質的に異なるものであると推認することができ,55人が語るイラク戦争及び上記の新聞記事には,前記⑻ウ(ア)と同様,当該書籍又は記事の発行主体又は執筆者が認識又は理解した事実等が記載されているものであって,我が国の政府が保有している情報又は認識と完全に趣旨,
内容等が一致しているものとまでは認め難いから,
上記の書籍又は記事に具体的な政策の形成過程又は政策を形成する際の関心事項に係る具体的な記述が存するとしても,そのことから直ちに,当該記述に係る情報が既に公にされているものとまでは認め難い。したがって,原告の主張は,採用することができない。
(イ)

原告は,①将来的に類似の事案が発生するとの蓋然性は何ら具体的
な根拠に基づくものではなく,類似の事案が何を指すのかも不明確であるし,関係国についても何ら具体的に特定されていない,②対イラク武力行使から15年以上経過している現在,対イラク武力行使の当時の国際情勢や二国間関係等とは大きく異なっているから,15年前の概括的な記載又は一般的要素若しくは視点を公開したとしても,日本に不利益が生ずるとは考えられない,③文字列で記載された報告書についてその区別が容易ではないと考えられない上,公表されている情報と同一の情報が含まれていることを被告も認めていることからすると,
本件処分は,
本来であれば開示すべき情報も区別することなく不開示としていることが明らかであって,取消しを免れない旨主張する。
しかし,
前記(6)ウ(ウ)及び前記⑻ウ(エ)に説示したところと同様の理由により,原告の主張するところを踏まえたとしても,外務大臣の判断が,重要な事実の基礎を欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとまでは認め難い。
したがって,原告の主張は,採用することができない。

(ウ)

原告は,関係国又は他国との信頼関係が損なわれるおそれがあると
いえるためには,①関係国の当時の情勢認識や意図又はそれを推察し得る発言内容が,当該関係国又は他国によって公表されたことがなく,日本だけが公表する場合であること,②第三国は,日頃,当該関係国の出方を推察しているはずであるから,日本が公開する情報が当該第三国による当該関係国の出方の推察を変更させるようなインパクトを持つこと,③第三国による当該関係国の出方の推察を変更させた原因が日本の行為にあることを当該関係国が知ったことの全てが必要であるところ,当該関係国の当時の情勢認識や意図が,原因を誤った対イラク武力行使の当時のものという特殊なもので,類似の問題が生じた場合が想定し難いことも踏まえると,第三国が,当該関係国の当時の情勢認識や意図を手がかりとして,類似の問題が生じた場合に当該関係国の出方を推察することが可能となるというような複雑な因果の流れが法的保護に値する蓋然性のあるものとは到底考えられない旨主張する。
しかし,原告の主張するところを踏まえても,本件不開示部分9に記録されている情報が,他国によって公表されているものであること,又は他国の見方を変更させるようなインパクトがないものにすぎないことをうかがわせるものとはいえず,他に,本件不開示部分9に記録されている情報が,他国によって公表されているものであること,又は他国の見方を変更させるようなインパクトがないものにすぎないことをうかがわせる事情等も見当たらないから,原告の主張するところをもっても,直ちに,外務大臣の判断が,重要な事実の基礎を欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとまでは認め難い。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
(エ)

原告は,英国の報告書には,英国と他国との協議内容が詳細に記載
されて公表され,オランダの報告書にも,オランダと他国との協議内容
が記載され,公表されている旨主張する。
しかし,本件全証拠によっても,本件不開示部分9に記録されている情報と英国又はオランダが公表しているとされる事実に係る情報が同一であることをうかがわせる事情等は見当たらないから,原告の主張するところを踏まえたとしても,外務大臣において,本件不開示部分9に記録されている情報が安全保障政策上機微な問題に係る情報であって,本件不開示部分9を公にすることにより,他国との信頼関係が損なわれるおそれ及び他国との交渉上不利益を被るおそれが生ずる蓋然性が高いものと判断したことが,重要な事実の基礎を欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとまでは認め難い。
したがって,原告の主張は,採用することができない。

以上によれば,外務大臣が,本件不開示部分9に記録された情報を公にすることにより,他国との信頼関係が損なわれるおそれ及び他国との交渉上不利益を被るおそれがあると判断したことをもって,その裁量権の範囲から逸脱し,又はこれを濫用したということはできない。
したがって,本件不開示部分9に記録された情報は,情報公開法5条3号が規定するものに該当すると認められる。

(10)

項目米側への働きかけに係る不開示部分(本件不開示部分10)に
ついて

証拠(乙16)及び弁論の全趣旨によれば,本件不開示部分10には,2002年(平成14年)8月以降,対イラク武力行使に至るまでの我が国から米国の側への様々なレベルでの働きかけの内容及びその重点,我が国の意図,我が国からの働きかけに対する米国からの反応並びに我が国が行った働きかけの評価(我が国が,米国との関係で重要と考える要素に関する記載も含む。)について,実際に会談等を行った我が国政府及び米国政府の高官の氏名を特定した上での個別具体的なやり取りの内容に関する
記載に加え,米国の情勢認識及び意図を推察し得る情報も記録されていることが認められる。
以下,これを前提に,本件不開示部分10に記録された情報が情報公開法5条3号に該当するか否かについて検討する。

本件不開示部分10には,我が国が米国に対してした働きかけに係る個別具体的なやり取りの内容及び評価,それに対する米国の反応,認識及び意図並びにこれらに対する我が国の評価が明らかになる具体的な情報が記録されているものと推認することができるから,これを公にすることにより,米国が公開することを欲していない情報を公開する状況に陥ったり,米国が認識していない我が国の評価等が公となったりする可能性があることに照らすと,事柄の性質上,一般的又は類型的に見て,これを公にすることにより他国との信頼関係が損なわれるおそれがあると推認することができる。また,本件不開示部分10には,2002年(平成14年)8月以降のイラク情勢に関する我が国の認識,関心事項等が記録されているものと推認することができ,これを公にすることにより,イラク及びその周辺国が,我が国の関心の対象,分析,評価等を推察することが可能となるから,事柄の性質上,一般的又は類型的に見て,これを公にすることにより他国との交渉上不利益を被るおそれがあると推認することができる。
ウ(ア)

原告は,報告の主なポイント(甲4の2)には,米国に対して

武力行使の前に外交的手段を尽くすべきであり,国際的連帯が必要であるとの考え方を繰り返し伝達した旨の記載があるところ,平和憲法を有する日本がこのような態度を取ることは当然であるし,米国への働きかけの内容が公表されているということができるほか,結局,このような日本の働きかけが功を奏さずに米国が開戦に踏み切ったことも公知の事実である上,日本の外交努力(甲9)及びその関連情報(甲19の1ないし6)にも,米国に働きかけをした日本側の者やこれに対応した
米国側の者の氏名が記載されるとともに,誰がどのような趣旨の発言をしたのかが日付とともに克明に記録されて公表されており,米国への働きかけの具体的内容が記載されている旨主張する。
しかし,報告の主なポイントについては,前記(5)ウ(ア)と同様,被告は,報告の主なポイントは,本件文書1の単なる抜き書きではなく,公表するために新たに作成されたものであって,内容の詳細さや具体性に違いがある旨主張し,これに反する事実をうかがわせる証拠ないし事情等は見当たらない上,本件全証拠によっても,本件不開示部分10に報告の主なポイントに記載されている文章に係る情報と同一の情報がそのまま記録されていることをうかがわせる事情等も見当たらない(なお,証拠(甲4の2,乙16)によれば,既に公表されている情報と同一の情報は,
現時点では開示されているものとうかがわれる。

から,ある情報の有する意味又は価値が,当該情報に係る表現の方法,位置,文脈等によっても左右されることにも照らすと,原告の主張するところを踏まえても,外務大臣において,本件不開示部分10に記録されている情報が国際政治上及び安全保障政策上機微な問題に係る情報であって,本件不開示部分10を公にすることにより,他国との信頼関係が損なわれるおそれ及び他国との交渉上不利益を被るおそれが生ずる蓋然性が高いものと判断したことが,重要な事実の基礎を欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとまでは認め難い。また,日本の外交努力及びその関連情報については,前記(7)ウ(イ)と同様,前記アにおいて認定した本件不開示部分10に記録されている情報の内容とは,少なくとも質的に異なるものであると推認することができ,やはり,原告の主張するところをもっても,外務大臣の判断が,重要な事実の基礎を欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとまでは認め難い。したがって,原告の主張は,採用することができない。

(イ)

原告は,①半頁程度の僅かばかりの分量に収められたやり取りの内
容に関する記載を開示することに支障があるとは考えられない,②本件文書1が検証結果をとりまとめた報告書であって,原資料を取捨選択,抽象化して作成されたものであり,必然的に原資料よりも相当程度抽象化された記載となって,少ない分量での記述になっていると考えられることからすると,非公開を前提に行った米国との個別具体的なやり取りの内容が記載できるとは考えられない,③米国は,600頁以上の詳細な検証報告書を作成して公表しており,英国も米国とのやり取りを詳細かつ具体的に,相当の分量を割いて記載し,公表しているから,日本だけが僅かな分量に記載された程度の米国のやり取りを非公開とする根拠はない,④将来的に類似の事案が発生するとの蓋然性は何ら具体的な根拠に基づくものではなく,
類似の事案が何を指すのかも不明確であるし,
関係国についても何ら具体的に特定されていない,⑤文字列で記載された報告書についてその区別が容易ではないと考えられない上,公表されている情報と同一の情報が含まれていることを被告も認めていることからすると,本件処分は,本来であれば開示すべき情報も区別することなく不開示としていることが明らかであって,取消しを免れない,⑥どの会談を抽出して本件文書1に記載したという事実を他国がどのように利用することができるのか不明である,⑦報告書をまとめる過程で主だった事実経過を記載する程度の分量に圧縮すること自体はごく普通のことであって,圧縮前は公表することができるものが,圧縮する過程で取捨選択をしたとたんに情報公開法5条3号にいうおそれが生ずるとはおよそ考えられないなどと主張する。
しかし,前記(3)ウ,前記(6)ウ(エ)及び前記⑻ウ(エ)に説示したところと同様の理由により,原告の主張するところを踏まえても,外務大臣の判断が,重要な事実の基礎を欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当
性を欠くとまでは認め難い。
したがって,原告の主張は,採用することができない。

以上によれば,外務大臣が,本件不開示部分10に記録された情報を公にすることにより,他国との信頼関係が損なわれるおそれ及び他国との交渉上不利益を被るおそれがあると判断したことをもって,その裁量権の範囲から逸脱し,又はこれを濫用したということはできない。
したがって,本件不開示部分10に記録された情報は,情報公開法5条3号が規定するものに該当すると認められる。

(11)

項目米国以外の各国への働きかけに係る不開示部分(本件不開示部
分11)について

証拠(乙16)及び弁論の全趣旨によれば,本件不開示部分11には,米国以外の関係各国に対するイラク情勢への対応についてどのような外交努力をしたかということについて,我が国の公式又は非公式レベルでの働きかけに関する具体的な調整や協議の経過,働きかけの具体的内容及び意図,当該関係各国に対して我が国が有していた外交方針,それに対する相手国又は関係国の反応及び評価等に加え,このような外交交渉の効果に対する本件検証としての評価等が,同種の出来事をまとめるなどした上で評価と事実が一体となった文章により記録されていることが認められる。以下,これを前提に,本件不開示部分11に記録された情報が情報公開法5条3号に該当するか否かについて検討する。


本件不開示部分11には,我が国が関係各国に対してした働きかけの内容の詳細,それに対する関係各国の反応に関する我が国の評価等が明らかになる具体的な情報が記録されているものと推認することができるから,これを公にすることにより,他国が公開することを欲していない情報を公開する状況に陥ったり,他国が認識していない我が国の評価等が公となったりする可能性があることに照らすと,事柄の性質上,一般的又は類型的
に見て,これを公にすることにより他国との信頼関係が損なわれるおそれがあると推認することができる。また,本件不開示部分11には,イラク情勢に関する我が国の認識,関心事項等が記録されているものと推認することができ,これを公にすることにより,イラク及びその周辺国が,我が国の関心の対象,分析,評価等を推察することが可能となるから,事柄の性質上,一般的又は類型的に見て,これを公にすることにより他国との交渉上不利益を被るおそれがあると推認することができる。
ウ(ア)

原告は,日本が,①当初から一貫して,国連を中心とした平和的解
決を目指すとともに,国際的な連帯を確保して問題解決を図ることが重要との観点から外交努力を行ったこと,②イラクの査察受入れが飽くまでも第一であること,そのためにも国際的なコンセンサスを形成する努力が必要であること等の基本的な考え方をとりまとめたこと,③米国以外の関係各国に対し,イラクによる査察の無条件受入れに向けた新たな安保理の決議の採択について累次働きかけを行ったこと,④2002年(平成14年)
11月に安保理決議1441が採択されたことを受けて,
2003年(平成15年)2月下旬から同年3月の対イラク武力行使がされる直前まで継続的に,事態の平和的解決に向けて国際協調の維持とイラクの査察受入れのための外交努力を継続して実施したこと及び⑤イラクに対しては無条件の査察受入れを粘り強く働きかけ,安保理の理事国に対してはイラクの決議履行を促すための追加の安保理の決議の採択を目指すよう累次の働きかけを実施し,イラクの周辺国に対しては総理大臣特使の派遣等を通じてイラクによる査察受入れの重要性について働きかけたことの各事実は,全て報告の主なポイント(甲4の2)に記載されており,報告の主なポイントには,働きかけの内容のみならず,働きかけを行う背景に当たる日本の働きかけの狙いなど,本件不開示部分11に記載されていると考えられる基本的な方向性も記載され
ている旨主張する。
しかし,報告の主なポイントについては,前記(5)ウ(ア)と同様,被告は,報告の主なポイントは,本件文書1の単なる抜き書きではなく,公表するために新たに作成されたものである反面,本件不開示部分11には関係各国との間における具体的な外交交渉の内容も記載されているなど,報告の主なポイントと本件不開示部分11とでは,内容の詳細さや具体性に違いがあるほか,本件不開示部分11には,関係各国に対して働きかけを行った意図,働きかけに対する相手国又は関係国の反応,働きかけに対する評価等の報告の主なポイントには記載されていない情報も記載されている旨主張し,これに反する事実をうかがわせる証拠ないし事情等は見当たらない上,本件全証拠によっても,本件不開示部分11に報告の主なポイントに記載されている文章に係る情報と同一の情報がそのまま記録されていることをうかがわせる事情等も見当たらない(むしろ,証拠(甲4の2,乙16)によれば,報告の主なポイントに記載されている情報は,現時点においては全て開示されているとも解し得るところである。)から,原告が主張するところを踏まえたとしても,外務大臣において,本件不開示部分11に記録されている情報が国際政治上及び安全保障政策上機微な問題に係る情報であって,本件不開示部分11を公にすることにより,他国との信頼関係が損なわれるおそれ及び他国との交渉上不利益を被るおそれが生ずる蓋然性が高いものと判断したことが,重要な事実の基礎を欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとまでは認め難い。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
(イ)

原告は,日本の外交努力(甲9)には,対イラク,対中東諸国及び対国連安保理常任理事国に分けて,時系列で詳細に,米国以外の関係国に行った働きかけも含めた具体的な事実が記載されて
おり,55人が語るイラク戦争(甲11)にも,具体的な説明があるほか,川口外相は,平成15年(2003年)3月の会見において,ドイツ,英国,ギニア及びカメルーンに新たな安保理の決議の採択に向けて働きかけたことや,アンゴラの当時の外務大臣,ブッシュ大統領,パキスタンの当時の大統領及びチリの当時の大統領とも会談した旨を明らかにしており,米国以外の各国への働きかけについての相手国の名前や会談相手も明らかにしている(甲34)旨主張する。
しかし,日本の外交努力については,被告は,本件不開示部分1
1には,日本の外交努力には記載のない関係各国とのやり取りや評価が具体的かつ詳細に記録されている旨主張し,これに反する事実をうかがわせる証拠ないし事情等は見当たらず,
かつ,
前記(7)ウ(イ)と同様,
前記アにおいて認定した本件不開示部分11に記録されている情報の内容とは,少なくとも質的に異なるものであると推認することができる。また,55人が語るイラク戦争については,前記⑻ウ(ア)と同様,我が国の政府が保有している情報又は認識と完全に趣旨,内容等が一致しているものとまでは認め難いから,原告が主張するところを踏まえたとしても,外務大臣において,本件不開示部分11に記録されている情報が国際政治上及び安全保障政策上機微な問題に係る情報であって,本件不開示部分11を公にすることにより,他国との信頼関係が損なわれるおそれ及び他国との交渉上不利益を被るおそれが生ずる蓋然性が高いものと判断したことが,重要な事実の基礎を欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとまでは認め難い。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
(ウ)

原告は,
①本件不開示部分11が1頁にも満たない分量である上に,
公開されている部分の記載がいずれも概括的な文章にとどまっていることに照らすと,本件不開示部分11に,既に公開されている情報以上の
外交努力の経緯や内容が記載されていることは疑わしく,概括的な記述がされているにすぎないことが合理的に推測される,②ごく限られた分量の概括的な記載から,仮に,日本が何らかの検討や比較衡量を行ったことを関係国が知ったとしても,いずれの国も行うであろう検討や比較衡量について述べた程度であれば,そのことから,日本が他国との交渉上不利益を被るおそれがあるといえるほどに関係国が日本の対応を正確に予測することなどできない,③前記(ア)①から⑤までのような働きかけをすることは,平和主義を憲法上の原則として掲げる日本政府の外交努力として当然に行うべきことであるから,それが仮に具体的に記載されていたとしても,それを開示したからといって他国との交渉で不利益を被るとは考えられないなどと主張する。
しかし,前記(3)ウ(ア)に説示したところと同様の理由に加え,本件不開示部分11に記録されている情報が,いずれの国も行うであろう検討や比較衡量について述べた程度のものである又は我が国の政府が当然に行うべきことであって開示したからといって他国との交渉で不利益を被ることがない内容のものにとどまっていることをうかがわせる証拠ないし事情等は見当たらないから,原告の主張するところを踏まえても,外務大臣の判断が,重要な事実の基礎を欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとまでは認め難い。
したがって,原告の主張は,採用することができない。

以上によれば,外務大臣が,本件不開示部分11に記録された情報を公にすることにより,他国との信頼関係が損なわれるおそれ及び他国との交渉上不利益を被るおそれがあると判断したことをもって,その裁量権の範囲から逸脱し,又はこれを濫用したということはできない。
したがって,本件不開示部分11に記録された情報は,情報公開法5条3号が規定するものに該当すると認められる。


項目武力行使の法的側面に係る不開示部分(本件不開示部分12)について

証拠(乙16)及び弁論の全趣旨によれば,本件不開示部分12には,対イラク武力行使にしかるべき法的根拠を持たせるための我が国の見解,当時我が国として連携を重視していた特定の国との調整や当該特定の国に対する我が国の評価等,当該調整及び外交努力の具体的態様及び結果が記録されていることが認められる。
以下,これを前提に,本件不開示部分12に記録された情報が情報公開法5条3号に該当するか否かについて検討する。


本件不開示部分12には,対イラク武力行使の法的根拠についての我が国と他国との外交上の具体的なやり取り,その評価等が明らかになる具体的な情報が記録されているものと推認することができるから,これを公にすることにより,他国が公開することを欲していない情報を公開する状況に陥ったり,他国が認識していない我が国の評価等が公となったりする可能性があることに照らすと,事柄の性質上,一般的又は類型的に見て,これを公にすることにより他国との信頼関係が損なわれるおそれがあると推認することができる。また,本件不開示部分12には,対イラク武力行使の法的根拠に関する我が国の態度,当該態度を取る意図,当該意図に基づく外交的努力の詳細等が具体的に記録されているものと推認することができ,
これを公にすることにより,
イラク及びその周辺国が,
我が国の意図,
それを反映した具体的な行為,当該行為に係る評価等を推察することが可能となるから,事柄の性質上,一般的又は類型的に見て,これを公にすることにより他国との交渉上不利益を被るおそれがあると推認することができる。

ウ(ア)

原告は,①武力行使についての法的根拠やこれに関する政府見解等
という一般的な論理の話を秘密にすること自体,そもそも考え難い,②
小泉首相が,記者会見で,武力行使の根拠を説明しているところ(甲13),これは,米国が国連で発表したものと同じ見解である,③川口外相も,対イラク武力行使に関する国際法上の法的側面について,大臣会見で記者の質問に応じて見解を述べている(甲34),④対イラク武力行使の法的根拠に関する検討内容や各国の外交行為は,研究ノート武力行使に関する国連の法的枠組みの有効性(甲14)で詳細に紹介されている,⑤外務省が開示した文書(甲31,32)によれば,武力行使の法的根拠は,例外なく複数の安保理の決議に照らして説明されているところ,英国法務総裁による解釈(甲30)は,対イラク武力行使がされた当時に既に公にされており,日本もこれを入手して分析していたことも明らかであるなどと主張する。
しかし,被告は,本件不開示部分12には,一般的な論理の話,米国による法的根拠に係る主張及び公開の場における議論の内容はいずれも記録されておらず,我が国が到達した対イラク武力行使の法的根拠に係る見解の検討の過程,交渉の状況等が具体的に記録されている旨主張しており,これに反する事実をうかがわせる証拠ないし事情等は見当たらない上,本件全証拠によっても,本件不開示部分12に原告が上記に指摘するような既に公開されている文書等(甲30ないし32,34)に現れている情報と全く同一の情報が記録されているにとどまることをうかがわせる事情等も見当たらないから,原告の主張するところを踏まえても,外務大臣において,本件不開示部分12に記録されている情報が国際政治上及び安全保障政策上機微な問題に係る情報であって,本件不開示部分12を公にすることにより,他国との信頼関係が損なわれるおそれ及び他国との交渉上不利益を被るおそれが生ずる蓋然性が高いものと判断したことが,重要な事実の基礎を欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとまでは認め難い。

したがって,原告の主張は,採用することができない。
(イ)

原告は,①他国との外交交渉については,日本の外交努力(甲
9)で具体的に記載されている上,その結果に対する評価も,当時の政府関係者の説明内容が55人が語るイラク戦争(甲11)に掲載されているなど,既に公にされている内容が多い,②各国の報告書等(甲23の5,甲24,30)において,各国が,複数の選択肢がある中で,武力行使を始めとする重要事項の法的根拠についてどのような視点及び方向性で解釈するかという事項を明らかにしている旨主張する。
しかし,日本の外交努力については,前記(7)ウ(イ)と同様,前記アにおいて認定した本件不開示部分12に記録されている情報の内容とは,
少なくとも質的に異なるものであると推認することができる。
また,
55人が語るイラク戦争の記述についても,前記⑻ウ(ア)と同様,我が国の政府が保有している情報又は認識と完全に趣旨,内容等が一致しているものとまでは認め難いから,当該記述に係る情報が既に公にされているものとも認め難い。
さらに,
各国の報告書等の記載についても,
前記⑻ウ(イ)と同様,本件不開示部分12に記録されている情報と各国が公表しているとされる事実に係る情報が同一であることをうかがわせる事情等は見当たらない。
そうすると,
原告の主張するところを踏まえても,
外務大臣において,
本件不開示部分12に記録されている情報が国際政治上及び安全保障政策上機微な問題に係る情報であって,本件不開示部分12を公にすることにより,他国との信頼関係が損なわれるおそれ及び他国との交渉上不利益を被るおそれが生ずる蓋然性が高いものと判断したことが,重要な事実の基礎を欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとまでは認め難い。
したがって,原告の主張は,採用することができない。

(ウ)

原告は,①被告の主張においては,
他国,関係各国及びその周辺国がいずこの国であるかが不明である,②本件不開示部分12に日本政府内での検討内容の記載が含まれているとしても,その検討結果としての武力行使についての法的根拠に関する説明や一般的な記述も記載されているはずであり,本件不開示部分12の分量が1頁にも満たない分量であることからすると,具体的で詳細な事実や見解が織り込まれていることは想定し難く,公表されている資料以上に詳細な情報が記載されているとは考えにくい,③本件不開示部分12に我が国や国際社会の見解という結論が含まれていることは被告も認めており,武力行使が国際法上合法と考えられる根拠に加え,関連する安保理の決議の概要やイラクによるその違反といった内容も含まれているはずである反面,本件不開示部分12の分量は半頁程度にすぎず,箇条書き等を用いずに文章形式で説明していると考えられるから,法的根拠を記載するだけでもかなりのスペースを必要とするはずであるし,法的根拠について一定の見解に至る過程の検討や交渉の状況をそのような限られたスペースに具体的に記載することができるとは考え難いのであり,仮に,記載があるとしても,概括的又は抽象的な記載にならざるを得ないはずである,④報告書をまとめる過程で主だった事実経過を記載する程度の分量に圧縮すること自体はごく普通のことであって,圧縮前は公表することができるものが,圧縮する過程で取捨選択をしたとたんに情報公開法5条3号にいうおそれが生ずるとはおよそ考えられないなどと主張する。しかし,前記(3)ウに説示したところと同様の理由に加え,本件全証拠によっても,本件不開示部分12に記録されている情報が,概括的又は抽象的なものにすぎないことをうかがわせる事情等が見当たらないことや,ある情報の有する意味又は価値が,当該情報に係る表現の方法,位置,文脈等によっても左右されることに照らすと,原告の主張するとこ
ろを踏まえても,外務大臣の判断が,重要な事実の基礎を欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとまでは認め難い。
したがって,原告の主張は,採用することができない。

以上によれば,外務大臣が,本件不開示部分12に記録された情報を公にすることにより,他国との信頼関係が損なわれるおそれ及び他国との交渉上不利益を被るおそれがあると判断したことをもって,その裁量権の範囲から逸脱し,又はこれを濫用したということはできない。
したがって,本件不開示部分12に記録された情報は,情報公開法5条3号が規定するものに該当すると認められる。


項目武力行使の支持の理由に係る不開示部分(本件不開示部分13)について

証拠(乙16)及び弁論の全趣旨によれば,本件不開示部分13には,当時の我が国を取り巻く安全保障環境等の情勢(イラクのみならず,我が国の安全保障に今なお深く関わる特定の国や地域の情勢及びこれらの国や地域と我が国との関係に係る我が国の評価を含む。)を含む我が国が対イラク武力行使を支持したことに関する具体的な理由及び考慮事項が記録されていることが認められる。
以下,これを前提に,本件不開示部分13に記録された情報が情報公開法5条3号に該当するか否かについて検討する。


本件不開示部分13には,対イラク武力行使を我が国が支持するという意思決定をしたことに関する具体的な理由,考慮事項等が明らかになる情報が記録されているものと推認することができ,これを公にすることにより,イラク及びその周辺国が,対イラク武力行使という国際政治上及び安全保障政策上機微な問題について,我が国がどのような事項を考慮して当該問題に対応しているのか,対イラク武力行使を支持する理由としてどのような事情があるのか等を推察することが可能となるから,
事柄の性質上,

一般的又は類型的に見て,これを公にすることにより他国との交渉上不利益を被るおそれがあると推認することができる。
ウ(ア)

原告は,①被告も,本件不開示部分13には,(a)平成15年3月1
8日の小泉首相による説明(甲13),(b)同月20日の小泉首相による説明(甲35)及び(c)外務省が作成した対イラク武力行使を支持した理由等に係る従前の政府見解及び国会答弁をまとめた資料(甲31)に記載されている対イラク武力行使を支持した主な理由の記載があること自体は認めている,②上記①以外の記載として想定されるものとしては,(あ)米国からされた米国のイラクに対するアプローチを支持する国のリストに日本を含めて差し支えがないかという打診に対して同意したという経緯がある(甲36)ために,即座に対イラク武力行使の支持を表明したという趣旨の記載,(い)かつて,いわゆる湾岸戦争の当時に日本が拠出した支援金について,
時期的に遅いと他国から批判されたことから,
同様の評価を受けないように即座に対イラク武力行使の支持を表明したという趣旨の記載又は(う)早期に対イラク武力行使の支持を表明した方が,その後のイラクにおける経済活動に関与する上で有利に働くために即座に対イラク武力行使の支持を表明したという趣旨の記載が考えられるから,本件不開示部分13に記載されていると思われる武力行使の支持の理由を想定することは十分に可能であるなどと主張する。
しかし,本件全証拠によっても,本件不開示部分13に記録されている情報が,原告が上記②に指摘するようなものであることをうかがわせる事情等は見当たらず,また,前記アに認定した本件不開示部分13に記録されている情報の内容に照らし,本件不開示部分13に記録されている情報は,既に公表されている情報又は原告が推測することができるとする情報とは,少なくとも質的に異なるものであると推認することができるから,原告の主張するところを踏まえても,外務大臣において,
本件不開示部分13に記録されている情報が国際政治上及び安全保障政策上機微な問題に係る情報であって,本件不開示部分13を公にすることにより,他国との交渉上不利益を被るおそれが生ずる蓋然性が高いものと判断したことが,重要な事実の基礎を欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとまでは認め難い。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
(イ)

原告は,①武力行使を支持したことの是非が国内的に問題になるこ
とはあるとしても,それを開示することが,現在の我が国の対応を予測させるとか,他国との交渉上不利益を被るおそれがあるとかいうことはおおよそ考え難い,②日本が有している情報の多寡やその内容等によって,日本の今後の対応等は異なるものであるから,関係国が今後の日本の対応等を正確に予測することは不可能又は著しく困難である,③外交上の問題において,他国の利益となることと日本の不利益となることとの間に相関関係はないから,本件不開示部分13を公にしたとしても,他国との交渉上の不利益を被る具体的な蓋然性はない,④将来的に類似の事案が発生するとの蓋然性は何ら具体的な根拠に基づくものではなく,類似の事案が何を指すのかも不明確であるし,関係国についても何ら具体的に特定されていないなどと主張する。
しかし,前記(3)ウ(イ)に説示したところと同様の理由に加え,対イラク武力行使が国際政治上及び安全保障政策上機微な問題であって,他国が対イラク武力行使に係る我が国が保有する公表されていない情報を得ることにより,自国に有利で我が国に不利な状況を作出し得る蓋然性があると推認されることにも照らすと,原告の主張するところを踏まえても,外務大臣の判断が,重要な事実の基礎を欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとまでは認め難い。
したがって,原告の主張は,採用することができない。

(ウ)

原告は,本件不開示部分13に記録されているのは,日本が対イラ
ク武力行使を支持した理由であり,飽くまでその当時の安全保障環境に関する記述が大半を占めていると推測することができ,既に15年も経過した過去の国際情勢に関する事実である上,本件文書1が検証結果をとりまとめた報告書であって,原資料を取捨選択又は抽象化して作成されたものであり,必然的に原資料よりも相当程度抽象化された記載となって,少ない分量での記述になっていると考えられることからすると,3分の1頁程度の分量しかない本件不開示部分13において,対イラク武力行使に関する日本の意思決定理由又は考慮事項の具体的かつ詳細な内容が記載されているとは到底考えられない旨主張する。
しかし,前記(3)ウ(ア)及び前記(6)ウ(ウ)に説示したところと同様の理由に加え,我が国を取り巻く地理的状況,国際政治上の状況又は安全保障環境が対イラク武力行使の当時と比較し,対イラク武力行使の当時の情報がおよそ無意味であるといえるまでに劇的に変化したとまでは認め難いことが公知の事実であることにも照らすと,原告の主張するところを踏まえても,外務大臣の判断が,重要な事実の基礎を欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとまでは認め難い。
したがって,原告の主張は,採用することができない。

以上によれば,外務大臣が,本件不開示部分13に記録された情報を公にすることにより,他国との交渉上不利益を被るおそれがあると判断したことをもって,その裁量権の範囲から逸脱し,又はこれを濫用したということはできない。
したがって,本件不開示部分13に記録された情報は,情報公開法5条3号が規定するものに該当すると認められる。


項目国民への説明責任についての検証に係る不開示部分(本件不開示部分14)について


証拠(乙16)及び弁論の全趣旨によれば,本件不開示部分14には,対イラク武力行使をめぐる我が国の対応に関し,対イラク武力行使を支持することについて国民の理解を得るとの観点から,外務省内で行われた説明責任を果たすための具体的な説明手法や目指すべき国民の理解のあり方(どのような考え方の下,どのような方法で,国内の世論形成に努めていたか)に関する検討,これを踏まえて他国に対して行っていた働きかけ等の具体的な取組について,その効果も含めた検証結果が記録されていることが認められる。
以下,これを前提に,本件不開示部分14に記録された情報が情報公開法5条3号に該当するか否かについて検討する。


本件不開示部分14には,対イラク武力行使に関する我が国の認識及び対イラク武力行使に関する広報等をした際の視点,手法,目標等に加え,それらの広報等の効果に関する評価等が明らかになる情報が記録されているものと推認することができるから,これを公にすることにより,他国がこれを参考として我が国の国民に対する世論工作,第三国への働きかけ等を行うことが可能となり得るものと推認することができることに照らすと,事柄の性質上,一般的又は類型的に見て,これを公にすることにより国の安全が害されるおそれがあると推認することができるほか,イラク及びその周辺国が,我が国の認識,世論の状況等を推察することも可能となるから,事柄の性質上,一般的又は類型的に見て,これを公にすることにより他国との交渉上不利益を被るおそれがあると推認することができる。

原告は,①本件不開示部分14は,10行程度にすぎない上,外務省や政府が行っていた説明という国民への広報の内容は既に公開されている情報である,②被告が指摘する他国に対して行っていた働きかけが何を指しているのかは不明である,③本件不開示部分14に記録されているのは,日本が対イラク武力行使を支持した理由であり,飽くまで当時の国民への
説明責任についての検証が大半を占めていることが推測できるのであり,既に15年も経過した過去の事実に対する検証結果を公表したからといって現在の外交政策に大きな影響を及ぼすはずもない,④本件検証が民主党(当時)の政権下でされて民主党に属していた外務大臣に対して報告されたものであることからすると,公にした場合に驚くべき新事実や評価が記載されているとは考え難い,⑤他国が日本で国内世論工作等を行う具体的な蓋然性がないし,仮にそのような蓋然性があるとしても,日本政府が適切に情報を公開することによって国民の理解を得て適切な世論を形成することは可能である,⑥仮に,あるテーマに関するある時点における日本の関心事項等が明らかになったとしても,そのことが情報公開法5条3号にいうおそれにつながるとする被告の主張には飛躍がある,⑦将来的に類似の事案が発生する蓋然性があるとの具体的な根拠はなく,
関係国や
類似の事案についても具体的に特定されていないなどと主張する。しかし,上記①,③,⑥及び⑦の各点については,前記(3)ウ,前記(4)ウ(ウ)及び前記(6)ウ(ウ)に説示したところと同様の理由に加え,本件不開
示部分14に記録されている情報と原告が上記で指摘する情報が同一の情報であると直ちに認め難いものであること及び対イラク武力行使が国際政治上及び安全保障政策上機微な問題であることにも照らすと,原告の主張するところを踏まえても,外務大臣において,本件不開示部分14に記録されている情報が国際政治上及び安全保障政策上機微な問題に係る情報であって,本件不開示部分14を公にすることにより,国の安全が害されるおそれ及び他国との交渉上不利益を被るおそれが生ずる蓋然性が高いものと判断したことが,重要な事実の基礎を欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとまでは認め難い。そして,原告のその余の主張は,いずれも,その前提を異にするか,単なる憶測等にとどまるものであるかにすぎず,原告の主張を踏まえても,外務大臣の判断が,重要な事実の基礎を
欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとまでは認め難い。したがって,原告の主張は,採用することができない。

以上によれば,外務大臣が,本件不開示部分14に記録された情報を公にすることにより,国の安全が害されるおそれ及び他国との交渉上不利益を被るおそれがあると判断したことをもって,その裁量権の範囲から逸脱し,又はこれを濫用したということはできない。
したがって,本件不開示部分14に記録された情報は,情報公開法5条3号が規定するものに該当すると認められる。


項目情報収集・分析に係る不開示部分(本件不開示部分15)についてア
証拠(乙16)及び弁論の全趣旨によれば,本件不開示部分15には,対イラク武力行使に際して収集を目指していた特定の情報の収集に関する具体的な態様やそれに対する改善策等の情報源,情報収集能力又は情勢分析について改善すべき点(今後に情報収集や分析を行うべき主体,活用すべき具体的な情報収集先,収集する情報の種類や分析の程度や考え方,それに伴う制約等に関する記載を含む。),収集及び分析した情報の効果的な活用のための改善策(外務省における政策担当部局と情報担当部局との具体的な連携方法に関する記載を含む。)等について,評価や今後の指針が記録されていることが認められる。
以下,これを前提に,本件不開示部分15に記録された情報が情報公開法5条3号に該当するか否かについて検討する。


本件不開示部分15には,対イラク武力行使に際して我が国が収集することを目指していた特定の情報の内容,我が国の情報源,情報収集能力,情報分析能力等が明らかになる具体的な情報が記録されているものと推認することができるから,これを公にすることにより,対イラク武力行使という国際政治上及び安全保障政策上機微な問題について,我が国がどのよ
うな情報を重視して当該問題に対応していたのか等といったことのほか,我が国に対する脅威の存否又はその程度を我が国が認識又は分析する能力の存否又はその程度も他国に明らかとなる可能性があることに照らすと,事柄の性質上,一般的又は類型的に見て,これを公にすることにより国の安全が害されるおそれ及び他国との交渉上不利益を被るおそれがあると推認することができる。
ウ(ア)

原告は,報告の主なポイント(甲4の2)には,①当時の情報源のほとんどが各国政府及び国際機関関係者であったと見受けられることに鑑み,国内外の専門家の意見や分析を一層活用することとの記載があるところ,上記の記載のうち当時の情報源のほとんどが各国政府及び国際機関関係者であったと見受けられることに鑑みの部分については,これまでに開示された部分に記載がないことから,本件不開示部分15には,これに対応した記述があると推認することができる,②政策部局からのきめ細かい情報要求等を通じて,政策担当部局と情報担当部局の一層の連携を図ることとの記載があるところ,上記の記載のうち政策部局からのきめ細かい情報要求等を通じての部分については,これまでに開示された部分に記載がないことから,本件不開示部分15には,
これに対応した記述があると推認することができる,

以③下の諸点については概ね適切な対応がなされたものと思われる。

として3点に分けて記載されている部分があり,本件文書1のうち開示された部分には,これに対応する記述も見当たらず,本件不開示部分15の分量からして長文の記載をすることが不可能であることを踏まえると,本件不開示部分15には,
上記の内容に対応した記述が,
ほぼそのまま,
又は多少表現を変更した程度で記載されていると合理的に推認することができる,④総合外交政策局の総合調整の下,中東アフリカ局を始めとする関係各局間の連携を強化し,情報収集・共有を図った,関係国政府や国際機関関係者等から幅広く収集及びイラクに大量破壊兵器が存在しないことを証明する情報を外務省が得ていたとは確認できなかったとの記載があり,日本が,どのように情報収集を行い,どのような情報を得ていたかについて明らかにされている部分もあるところ,本件不開示部分15の分量が1頁足らずのものであることに照らせば,上記の内容よりも,具体的かつ詳細な内容が本件不開示部分15に記載されていると解するのは困難である旨主張する。
しかし,前記(3)ウ(ア)及び前記(5)ウ(ア)に説示したところと同様の理由に加え,原告の主張が前提とするところは,いずれも,単なる憶測等にとどまるものであるか又は本件不開示部分15に記録されている情報と同一の情報であると直ちに認め難いものであるかのいずれかであることに照らすと,外務大臣において,本件不開示部分15に記録されている情報が国際政治上及び安全保障政策上機微な問題に係る情報であって,本件不開示部分15を公にすることにより,国の安全が害されるおそれ及び他国との交渉上不利益を被るおそれが生ずる蓋然性が高いものと判断したことが,重要な事実の基礎を欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとまでは認め難い。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
(イ)

原告は,①被告は,どのような国とのどのような交渉において,ど
のような不利益が生じ得るのかについて何ら具体的な主張をしていないから,当該不開示部分について,抽象的な支障を主張するにとどまっている,②英国が,当時のイラク情勢に関する評価及び分析を公にしている,③15年もの時の経過によって,国際情勢,社会情勢,当該情報に関する事務の進行の状況等の事情が当時とは大きく異なっているといえるほか,情報収集の手法等も当時と異なっていて当然であるなどと主張する。

しかし,前記(3)ウ(イ),前記(6)ウ(ウ)及び前記(8)ウ(イ)に説示したところと同様の理由により,原告の主張するところを踏まえても,外務大臣の判断が,重要な事実の基礎を欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとまでは認め難い。
したがって,原告の主張は,採用することができない。

以上によれば,外務大臣が,本件不開示部分15に記録された情報を公にすることにより,国の安全が害されるおそれ及び他国との交渉上不利益を被るおそれがあると判断したことをもって,その裁量権の範囲から逸脱し,又はこれを濫用したということはできない。
したがって,本件不開示部分15に記録された情報は,情報公開法5条3号が規定するものに該当すると認められる。

(16)

項目政策決定・実施に係る不開示部分(本件不開示部分16)につ
いて

証拠(乙16)及び弁論の全趣旨によれば,本件不開示部分16には,対イラク武力行使の支持という政策決定及び実施について,当時の外務省内及び外務省と官邸との調整及び検討状況,我が国と米国を初めとする関係国(英,仏,独,イラク,イラク周辺国等)との様々なレベル間での連携の在り方に対する評価及び我が国の考え方,結果としてイラクにおいて大量破壊兵器が確認できなかった事実に関する我が国の検討に対する分析,評価,教訓等が記録されていると認められる。
以下,これを前提に,本件不開示部分16に記録された情報が情報公開法5条3号に該当するか否かについて検討する。


本件不開示部分16には,対イラク武力行使に至るまでの間の我が国と他国との外交上の具体的なやり取り,その評価等が明らかになる具体的な情報が記録されているものと推認することができるから,これを公にすることにより,他国が公開することを欲していない情報を公開する状況に陥
ったり,他国が認識していない我が国の評価等が公となったりする可能性があることに照らすと,事柄の性質上,一般的又は類型的に見て,これを公にすることにより他国との信頼関係が損なわれるおそれがあると推認することができる。また,本件不開示部分16には,対イラク武力行使に至るまでの間の我が国の政府内部における検討状況,政策の決定及び実施に係る関心事項,当該検討又は関心に基づく外交的努力の詳細等が記録されているものと推認することができ,これを公にすることにより,他国が,我が国の関心事項,それを反映した具体的な行為,当該行為に係る評価等を推察することが可能となるから,事柄の性質上,一般的又は類型的に見て,これを公にすることにより他国との交渉上不利益を被るおそれがあると推認することができる。
ウ(ア)

原告は,報告の主なポイント(甲4の2)には,①米国はもちろんのこと,英,仏,独,イラク,イラク周辺国等との関係でも,電話会談を含む首脳・外相レベルでの接触や総理大臣特使の派遣を始め,要所要所で,政治レベルによる働きかけを行っている。これらの効果を一層高めるため,特に首脳レベルを始め二国間の相互信頼関係をますます強固にしていく必要があろう。と記載されているところ,上記の記載のうち

これらの効果を一層高めるため,特に首脳レベルを始め二国間の相互信頼関係をますます強固にしていく必要があろう。

の部分については,これまでに開示された部分に記載がないことから,本件不開示部分16には,これに対応した記述があると推認することができる,②大量破壊兵器の存否に関する我が国の検討に対する分析及び評価については,当時は,イラクが大量破壊兵器を隠匿している可能性があるとの認識が国際社会で広く共有されていたが,調査の結果,当時,イラクに大量破壊兵器が存在しないことを証明する情報を外務省が得ていたとは確認できなかった。,査察への全面的な協力を通じて大量破壊兵器の廃棄等を自ら証明すべき立場にあったのはイラク及び「イラクにおける大量破壊兵器の存在など,国際的に概ね認識が一致していたような情報といえども敢えて批判的な視点から分析し,政策の検討を行っていくことが重要であろう。」との記載があるが,本件文書1のうち開示された部分には,これらに対応する記述がないから,本件不開示部分16の分量に照らして長文の記載が不可能であることも踏まえると,本件不開示部分16には,
上記の記述に対応した情報が,
ほぼそのまま,
又は多少表現を変更した程度で記録されていると合理的に推測できる旨主張する。
しかし,前記(3)ウ(ア)及び前記(5)ウ(ア)に説示したところと同様の理由に加え,原告の主張が前提とするところは,いずれも,単なる憶測等にとどまるものであるか又は本件不開示部分16に記録されている情報と同一の情報であると直ちに認め難いものであるかのいずれかであることに照らすと,外務大臣において,本件不開示部分16に記録されている情報が国際政治上及び安全保障政策上機微な問題に係る情報であって,本件不開示部分16を公にすることにより,他国との信頼関係が損なわれるおそれ及び他国との交渉上不利益を被るおそれが生ずる蓋然性が高いものと判断したことが,重要な事実の基礎を欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとまでは認め難い。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
(イ)

原告は,①15年もの前の国内及び諸外国との連携の内容又は評価
並びに大量破壊兵器が結果として見つからなかったという特殊な事案に関する評価を公にしたからといって,我が国の情報収集活動及びそれに基づく政府内での政策検討プロセスが明らかとなり,我が国の政策の予見可能性が高まるというのは,杞憂にすぎない,②将来的に類似の事案が発生するとの蓋然性は何ら具体的な根拠に基づくものではなく,類似の事案が何を指すのかも不明確であるし,関係国及びイラク及びその周辺国についても何ら具体的な特定がされておらず,その国との関係で日本が交渉上の不利益を被る具体的な蓋然性が認められる余地はなく,イラクとの関係での交渉上の不利益についても,イラクの過去の実際の言動に照らし,本件不開示部分16の情報が開示された場合にイラクがどのような主張をしてくるのかについて何ら具体的な主張はない,③オランダが,対イラク武力行使への政治的支持に至るプロセスについて,調査委員会を組織し,その調査結果として551頁にわたる報告書を公表し,その中では,政治的な意思決定の経過や与党が行った連立協議が意思決定に及ぼした影響,オランダの情報機関の役割等の政策の経緯が詳細に記録されているから,日本が関係各国との連携状況等を開示したからといって,関係各国との信頼関係が損なわれる具体的な蓋然性は全くない,④事後的な検証結果として1頁に満たない分量しかない本件不開示部分16において,対イラク武力行使に関する日本政府部内での検討内容,その態様,教訓等の具体的かつ詳細な内容が記載されているとは到底考えられない,⑤本件文書1が検証結果をとりまとめた報告書であって,原資料を取捨選択又は抽象化して作成されたものであり,必然的に原資料よりも相当程度抽象化された記載となって,少ない分量での記述になっていると考えられることからすると,他国が日本の今後の対応等を正確に予測することは不可能又は著しく困難であるなどと主張する。
しかし,前記(3)ウ,前記(6)ウ(ウ)及び前記(8)ウ(イ)に説示したところと同様の理由により,原告の主張するところを踏まえても,外務大臣の判断が,重要な事実の基礎を欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとまでは認め難い。
したがって,原告の主張は,採用することができない。


以上によれば,外務大臣が,本件不開示部分16に記録された情報を公にすることにより,他国との信頼関係が損なわれるおそれ及び他国との交渉上不利益を被るおそれがあると判断したことをもって,その裁量権の範囲から逸脱し,又はこれを濫用したということはできない。
したがって,本件不開示部分16に記録された情報は,情報公開法5条3号が規定するものに該当すると認められる。


項目国民への説明責任に係る不開示部分(本件不開示部分17)について

証拠(乙16)及び弁論の全趣旨によれば,本件不開示部分17には,外務省が実施してきた対イラク武力行使を支持したことに関して広く国民の理解を得るために行った各種広報活動及び国会議員等への説明に関するその効果も含めた検証結果,当時の国内世論を踏まえた今後あるべき広報活動の具体的手法や時期を含む今後に向けた改善点等についての提言等が記録されていることが認められる。
以下,これを前提に,本件不開示部分17に記録された情報が情報公開法5条3号に該当するか否かについて検討する。


前記アを前提とすると,本件不開示部分17には,対イラク武力行使を支持したことについて国民への説明責任を果たすための手法の具体的内容,広報活動の効果として我が国が認識している状況等,当該手法又は効果についての検証の結果,我が国が国民に向けた広報活動について今後に改善すべき点として認識している状況等,改善に向けた具体的な案等が明らかになる情報が記録されているものと推認することができるから,これを公にすることにより,他国がこれを参考として我が国の国民に対する世論工作,第三国への働きかけ等を行うことが可能となるものと推認することができることに照らすと,事柄の性質上,一般的又は類型的に見て,これを公にすることにより国の安全が害されるおそれがあると推認することがで
きるほか,イラク及びその周辺国が,我が国が対イラク武力行使を支持したことに関する広報活動の効果として認識している状況等,我が国が広報活動について認識している改善すべき点等を推察することが可能となるから,事柄の性質上,一般的又は類型的に見て,これを公にすることにより他国との交渉上不利益を被るおそれがあると推認することができる。ウ(ア)

原告は,報告の主なポイント(甲4の2)には,

本件に対する国民の理解を得るための広報の重要性は早くから認識されており,また,ホームページを含め種々の努力が払われてきたが,国民への説明方法等につき,一層の改善をする余地があると思われる。

などと公表されているから,全てを不開示とする合理的な理由はない旨主張する。しかし,前記(5)ウ(ア)と同様の理由により,原告の主張するところを踏まえても,外務大臣の判断が,重要な事実の基礎を欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとまでは認め難い。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
(イ)

原告は,①本件不開示部分17の分量と報告の主なポイントに
おける記載の分量に大差がないことからして,本件不開示部分17にそれほど具体的又は踏み込んだ記載があるとは思われない,②外務省や政府が行っていた説明という国民への広報の内容は既に公開されている情報であるから,これを開示しない合理性は全く存しない,③国会議員等への説明についても,国会議員は全国民を代表している者であるから,どのような情報の提供を受け,その結果として国会で適正に議論がされたのかという点は,国民に広く公開して議論されるべき重要な事実であり,かつ,国内向けの事柄にとどまっていて対外的又は国際的に何らかの具体的な支障が生ずるものとは想定し難いから,やはりこれを開示しないことは著しく不当である,④将来的に類似の事案が発生するとの蓋然性は何ら具体的な根拠に基づくものではなく,類似の事案が何を
指すのかも不明確であるし,関係国及びイラク及びその周辺国
についても何ら具体的な特定がされておらず,その国との関係で日本が交渉上の不利益を被る具体的な蓋然性が認められる余地はなく,イラクとの関係での交渉上の不利益についても,イラクの過去の実際の言動に照らし,本件不開示部分17の情報が開示された場合にイラクがどのような主張をしてくるのかについて何ら具体的な主張はない,⑤ある外交上の問題が生じた場合,日本の今後の対応等については,日本の従前の対応,日本が世界情勢で占める地位,友好関係にある各国の動き,日本との関係性の深浅等から一定程度予測が可能であるが,日本が有している情報の多寡やその内容等によって,日本の今後の対応等は異なるものであるから,関係国が今後の日本の対応等を正確に予測することは不可能又は著しく困難である,
⑥国内世論の影響の程度は,
時の政権の姿勢,
政権の支持率等にも左右されて様々であり,時期によっても異なる上,ここで問題となっているのが,15年近く前の対イラク武力行使に関する国内における理解又は支持というものであるから,他国にとって日本の政策の予見可能性が高まるとはいえないなどと主張する。
しかし,上記①,②,④及び⑥の各主張については,前記(3)ウ及び前記(6)ウ(ウ)に説示したところと同様の理由に加え,
本件不開示部分17
に記録されている情報と原告が上記で指摘する情報が同一の情報であると直ちに認め難いものであること及び対イラク武力行使が国際政治上及び安全保障政策上機微な問題であることにも照らすと,原告の主張するところを踏まえても,外務大臣の判断が,重要な事実の基礎を欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとまでは認め難い。そして,原告のその余の主張は,いずれも,その前提を異にするか,単なる憶測等にとどまるものであるかにすぎず,原告の主張を踏まえても,外務大臣の判断が,重要な事実の基礎を欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当
性を欠くとまでは認め難い。
したがって,原告の主張は,採用することができない。

以上によれば,外務大臣が,本件不開示部分17に記録された情報を公にすることにより,国の安全が損なわれるおそれ及び他国との交渉上不利益を被るおそれがあると判断したことをもって,その裁量権の範囲から逸脱し,又はこれを濫用したということはできない。
したがって,本件不開示部分17に記録された情報は,情報公開法5条3号が規定するものに該当すると認められる。


項目参考資料2に係る不開示部分(本件不開示部分18)についてア
証拠(乙16)及び弁論の全趣旨によれば,本件不開示部分18には,検証チームの構成員のうち本件文書1が作成された当時に一定の地位に達していなかった者(幹部として外務省ホームページに氏名及び肩書が記載されていなかった者)の氏名及び当時の肩書が記録されていることが認められる。
以下,これを前提に,本件不開示部分18に記録された情報が情報公開法5条6号に該当するか否かについて検討する。

イ(ア)

本件不開示部分18には,本件検証に従事した者のうち本件文書1
が作成された当時に一定の地位に達していなかった者の氏名及び当時の肩書きが記録されており,仮に,これを公にすれば,当該対象者が本件検証の対象である対イラク武力行使に関連する公表されていない情報を有している可能性がある者であることが公となるところ,
前記(1)のとお
り,対イラク武力行使が国際政治上及び安全保障政策上機微な問題であって,他国が対イラク武力行使に係る我が国が保有する公表されていない情報を得ようとする意図又は動機を有する蓋然性が高いと推認されることからすれば,上記の者に対して,不当な働きかけ等が行われるおそれも一概に否定し難いものと推認することができる。そして,本件検証
に従事した者は外務省の職員であって,外交活動に従事する者であることに照らすと,上記の者においても,同人の氏名及び肩書きが公になれば,不当な働きかけ等を受けるおそれがあることを容易に理解し得ることになるから,仮に,本件不開示部分18を公にすれば,上記の者,その後に上記の者と同じ立場に就いた者,将来的に上記の者と同じ立場に就く可能性のある者等が,今後,本件検証と同様の職務に従事するに当たって率直かつ忌憚のない意見を述べることをちゅうちょしたり,そもそも,当該職務に従事すること自体に難色を示したりすることになるおそれも一概に否定し難いと推認することができ,国の機関である外務省の内部における協議,検討,検証等の事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるものと推認することができる。
(イ)

以上によれば,本件不開示部分18に記録された情報は,情報公開
法5条6号が規定するものに該当すると認められる。
ウ(ア)

原告は,本件検証に従事した者のうち誰がどのような意見を述べた
のかが具体的に明らかにされるのでなければ,不当な働きかけを受けたりすることはないし,氏名を公開されるのであれば職務であっても忌憚のない意見を述べられないという公務員を想定することもできない旨主張する。
しかし,実際に本件検証に従事した者が特定されることにより当該者に対する不当な働きかけ等がされる蓋然性が高くなること自体は否定し難いことに照らすと,原告の主張するところを前提としても,前記イの判断を覆すには足りない。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
(イ)

原告は,対イラク武力行使の後に外務省の幹部の立場にあった者に
対して脅迫がされたとか,工作活動がされたとかいう事実は存在しないから,対イラク武力行使がされてから10年以上経過した後にインタビ
ューの対象者になったからといって,対イラク武力行使の意思決定への関与を理由に脅迫されたり,工作活動がされたりするとは,到底考えられないし,対イラク武力行使に関する意思決定をした際に日本政府の幹部の立場にあった者に対して工作活動や脅迫の対象とするよりも,今後される意思決定に不当な圧力をかけようとしてそのような働きかけをする危険性の方がはるかに高いはずであるから,被告の主張は,誤りである旨主張する。
しかし,仮に,対イラク武力行使の後に外務省の幹部の立場にあった者に対して脅迫がされたとか,工作活動がされたとかいう事実は存在しないとしても,それが不当な働きかけ等の対象とすべき者を絞り込むことが不可能であったことに起因しているとしても何ら不合理ではない上,前記(1)のとおり,
対イラク武力行使が国際政治上及び安全保障政策上機
微な問題であることにも照らすと,時の経過によって直ちに,不当な働きかけ等がされ得ないとまでは認め難い。また,事柄の性質上,時点を比較して,不当な働きかけ等の危険性の度合いを論ずることが適切であるとも直ちには認め難い。
したがって,原告の主張は,採用することができない。

まとめ
以上によれば,本件処分は,適法である。なお,原告は,外務大臣が,平成29年10月31日付けの決定により,本件文書1に係る開示部分を変更しているが,同決定により開示されたのは,公知の事実といってもよい客観的に知られた事実や一般的な記述のみであったところ,これらの事実について,被告は,従前,間接的で因果関係の存否も疑わしい理由を連ねていたものであるから,他の部分についても,不開示を維持すべき理由がないことをうかがわせる旨主張するが,原告が上記に指摘する事情によっても直ちに,本件各不開示部分に情報公開法5条各号に該当する事由がないとまでは認め
難いから,原告の主張は,採用することができない。
3
本案前の争点(本件各不開示部分を開示することの義務付け)について本件訴えのうち外務大臣が本件文書1の不開示部分を開示すべき旨を命ずることを求める請求に係る部分は,行政事件訴訟法3条6項2号に基づく義務付けの訴えとして提起されたものと解されるところ,前記2のとおり,これと併合して提起された本件処分の取消しを求める原告の請求は理由がないから,その余の点について判断するまでもなく,本件訴えのうち上記の請求に係る部分は,同法37条の3第1項2号所定の訴訟要件を満たさない不適法なものであるといわざるを得ない。

第5

結論
以上の次第で,本件訴えのうち外務大臣が本件文書1の不開示部分を開示す
べき旨を命ずることを求める請求に係る部分は,不適法であるから,これを却下し,原告のその余の請求は,理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第38部

裁判長裁判官

朝倉佳秀

裁判官

福渡裕貴

裁判官

獅子野

裕介
(別紙1省略)
(参考資料2省略)
(参考資料3省略)

別紙2

本件各不開示部分の不開示情報該当性に関する当事者の主張の要点
(被告の主張の要点)
1
不開示情報の内容
本件文書1は,外務省が作成した文書であり,対イラク武力行使に対する我が国の対応に関する検証報告書であって,対イラク武力行使に至るまでの外務省内における検討及び意思決定過程に関する検証(本件検証)の結果が記録されている。
本件各不開示部分は,合計で18か所であり,各不開示部分の内容は,以下のとおりである。
(1)

本件文書1の1枚目21行目17文字目から22行目まで及び参考資料
3に係る不開示部分
(以下,
併せて
本件不開示部分1
ということがある。

本件検証を行うに当たって外務省が参考にした各種資料の数,作成時期及び資料の内容を示す標目(情報収集先及び収集した情報内容を示す標目を含み,関係国又は関係機関の高官の氏名を記したものも複数含まれる。)が記録されている。
(2)

本件文書1の1枚目の脚注3行目から6行目までに係る不開示部分(以下

本件不開示部分2ということがある。)
本件文書1を作成するに当たり外務省が実施したインタビューの対象者の氏名及び肩書が記録されている。
(3)

項目国際社会の情勢に係る不開示部分(以下本件不開示部分3と

いうことがある。)
イラク情勢に関する国際社会の動きに係る記述であって,対イラク武力行使への我が国の対応を検討する上で重要な背景となった関係国及び地域の政
治情勢又は安全保障関連情勢に関する我が国の率直な分析又は評価等が3つの項目に分けて記録されている。
(4)

項目日本の状況に係る不開示部分(以下本件不開示部分4という

ことがある。)
対イラク武力行使への我が国の対応を検討する上で重要な背景となった対イラク武力行使前後の我が国の外交的努力を中心とした我が国を取り巻く情勢(当時の我が国の政府が行った外交及び安全保障上の取組等に係る内容であって,当時我が国が安全保障上の懸念として認識していたイラク以外の特定の地域に係る情勢に関する記述を含む。)について記録されている。(5)

項目
対イラク武力行使支持に至る我が国政府の検討過程・外交努力の概観に係る不開示部分(以下本件不開示部分5ということがある。)2002年(平成14年)初めから2003年(平成15年)3月に至るまでの我が国政府内での検討過程及び外交努力についての記述であり,具体的には,イラク情勢の緊張の高まりを受けて同情勢に対応するために外務省内でどのような体制が組まれ,どのような情報収集,情報分析又は検討が行われたか,政府部内でどのような協議が行われたか,我が国と関係国との間でどのようなやり取りが行われたか,我が国の動きに対する評価,いかなる判断の下で対イラク武力行使を支持する旨の政策決定が行われたか,これらについての本件検証としての分析等について,時系列で因果関係に従い,省内外での検討又は調整過程,その視点又は方針,政府高官等への報告,政府高官等からの指示の内容,関係国に対する具体的な働きかけの内容(公表を前提としない他国との個別具体的なやり取りを含む。),具体的な情報収集活動及びそれらを踏まえた上での省内外及び政府高官等の認識又は評価等,機微に触れる事項も含め,記載自体が一定の価値判断や評価を伴う形で,具体的かつ詳細な内容が記載されている。
本件不開示部分5には,公になっている事実も含まれているが,これを機
械的に羅列しているわけではなく,また,公にされていない公式又は非公式の協議に関する事実に言及されている部分もあり,各事項が,具体的かつ詳細に,前後の関連性や評価を伴った一連の文章として記載されているのであり,全体として我が国の情報収集能力,情報分析能力,外交及び安全保障関係における関心事項,政策決定において考慮している事項等を示す内容となっている。
(6)

項目情報収集についての検証に係る不開示部分(以下本件不開示部分6ということがある。)他国のイラクにおける大量破壊兵器の隠匿に関する評価又は分析に係るもののほか,特に注目すべき情報を挙げて,どういった相手方から,どの程度の回数当該情報を入手したのかという内容も含む収集した情報の種類,内容,
数,
収集先,
収集に係る視点,
収集の手法及び収集先の対応についての傾向,
多く収集することができた情報の種類並びに一方で十分に収集することのできなかった情報の種類に加え,情報収集に係る在外公館を含む省内外における指示内容及び報告状況に係る経緯,政策決定を行うに当たりどのような情報を収集しようとしたか等についての詳細な検証結果が,その記載自体に評価又は分析を伴う形で記録されている。
(7)

項目
分析についての検証
に係る不開示部分
(以下
本件不開示部分7

ということがある。)
対イラク武力行使に関係するいくつかの特定の問題(武力行使により生じ得る影響)又は動向に関して収集された情報を踏まえ,それらに関する情報分析の手法及び分析過程に関する評価,作成された資料の内容及びその用途並びにそれらの共有のあり方(資料の作成過程を含む。)に関する評価が4つの項目に分けて記録されている。
(8)

項目検討・意思決定プロセスに係る不開示部分(以下本件不開示部分8ということがある。)
外務省内及び政府部内でどのような手続を経て対イラク武力行使をめぐる政策検討及び意思決定がされたのかという対イラク武力行使の問題に係る検討及び意思決定プロセス(特に,外務省内における関係局内の協議の具体的な開催状況,官邸との密接な協議状況並びに検討及び意思決定プロセスにおいて考慮された事項),それに対する本件検証としての評価等について,具体的な内容が記録されている。
(9)

項目武力行使の支持に至るプロセスに係る不開示部分(以下本件不開示部分9ということがある。)2002年(平成14年)初め以降,我が国が対イラク武力行使に対する支持を表明するに至るまでの政策決定プロセスについて,国際社会において我が国に期待される役割,我が国がとるべき態度等について,各選択肢の問題点及びその解決方法を国内で検討し,各国と協議した過程を含め,上記の期間を通じての外務省による情勢の認識,政府部内でのやり取り,外交努力の内容及び具体的やり取り(我が国政府及び関係国政府の高官の氏名を記載するとともに,外交交渉の相手方の情勢の認識や意図を推知し得る相手方の具体的な発言内容も含む。),政策決定を行う際の判断要素(国際情勢,二国間関係等),あり得べき政策決定の内容及びその留意事項等について,対イラクのみならず,国際社会,関係国,安保理等多方面にわたる関係及び影響も含めた詳細な分析,評価等が記録されている。
(10)

項目米側への働きかけに係る不開示部分(以下本件不開示部分10ということがある。)2002年(平成14年)8月以降,対イラク武力行使に至るまでの我が国から米国の側への様々なレベルでの働きかけの内容及びその重点,我が国の意図,我が国からの働きかけに対する米国からの反応並びに我が国が行った働きかけの評価(我が国が,米国との関係で重要と考える要素に関する端的な記載も含む。)について,実際に会談等を行った我が国政府及び米国政
府の高官の氏名を特定した上での個別具体的なやり取りの内容に関する記載に加え,
米国の情勢認識及び意図を推察し得る情報も詳細に記録されている。(11)

項目米国以外の各国への働きかけに係る不開示部分(以下本件不開示部分11ということがある。)米国以外の関係各国との間でイラク情勢への対応についてどのような外交努力をしたかということについて,我が国の公式又は非公式レベルでの働きかけに関する具体的な調整及び協議の経過,働きかけの具体的内容,働きかけの意図,当該関係各国に対して我が国が有していた外交方針並びにそれに対する相手国又は関係国の反応又は評価に加え,このような外交交渉の効果に対する本件検証としての評価等が,同種の出来事をまとめるなどした上で評価と事実が一体となった文章により記録されている。

項目武力行使の法的側面に係る不開示部分(以下本件不開示部分12ということがある。)対イラク武力行使にしかるべき法的根拠を持たせるための我が国の見解,当時我が国として連携を重視していた特定の国との調整,当該特定の国に対する我が国の評価等,当該調整及び外交努力の具体的態様及び結果が記録されている。


項目武力行使の支持の理由に係る不開示部分(以下本件不開示部分13ということがある。)当時の我が国を取り巻く安全保障環境等の情勢(イラクのみならず,我が国の安全保障に今なお深く関わる特定の国又は地域の情勢及びこれらの国又は地域と我が国との関係に係る我が国の評価を含む。)といった具体的かつ詳細な考慮事項を含む我が国が対イラク武力行使を支持したことに関する具体的な理由及び考慮事項が記録されている。


項目国民への説明責任についての検証に係る不開示部分(以下本件不開示部分14ということがある。)
対イラク武力行使をめぐる我が国の対応に関し,対イラク武力行使を支持することについて国民の理解を得るとの観点から,外務省内で行われた説明責任を果たすための具体的な説明手法,目指すべき国民の理解のあり方(どのような考え方の下,どのような方法で,国内の世論形成に努めていたか)に関する検討,これを踏まえて他国に対して行っていた働きかけ等の具体的な取組について,その効果も含めた詳細な検証結果が記録されている。⒂
項目情報収集・分析に係る不開示部分(以下本件不開示部分15
ということがある。)
対イラク武力行使に際して収集を目指していた特定の情報の収集に関する具体的な態様,それに対する改善策等の情報源,情報収集能力又は情勢分析について改善すべき点(今後に情報収集や分析を行うべき主体,活用すべき具体的な情報収集先,収集する情報の種類,収集した情報の分析の程度又は考え方,それに伴う制約等に関する記載を含む。),収集及び分析した情報の効果的な活用のための改善策(外務省における政策担当部局と情報担当部局との具体的な連携方法に関する記載を含む。)等について,具体的な評価及び今後の指針が記録されている。

(16)

項目政策決定・実施に係る不開示部分(以下本件不開示部分16

ということがある。)
対イラク武力行使の支持という政策決定及び実施について,当時の外務省内及び外務省と官邸との調整及び検討状況,我が国と米国を初めとする関係国(英,仏,独,イラク,イラク周辺国等)との様々なレベル間での連携の在り方に対する評価及び我が国の考え方,結果としてイラクにおいて大量破壊兵器が確認できなかった事実に関する我が国の検討に対する分析,評価,教訓等が記録されている。

項目
国民への説明責任
に係る不開示部分(以下
本件不開示部分17
ということがある。)

外務省が実施してきた対イラク武力行使を支持したことに関して広く国民の理解を得るために行った各種広報活動及び国会議員等への説明に関するその効果も含めた検証結果,当時の国内世論を踏まえた今後あるべき広報活動の具体的手法や時期を含む今後に向けた改善点等についての提言等が記録されている。

項目参考資料2に係る不開示部分(以下本件不開示部分18とい
うことがある。)
検証チームの構成員のうち本件文書1が作成された当時に一定の地位に達していなかった者(幹部として外務省ホームページに氏名及び肩書が記載されていなかった者)の氏名及び当時の肩書が記録されている。

2
本件各不開示部分に係る不開示事由について
(1)

本件文書1の1枚目21行目17文字目から22行目まで及び参考資料
3に係る不開示部分(本件不開示部分1)

本件不開示部分1は,本件検証を行うに当たって外務省が参考にした各種資料に係る記述であり,これを公にすることにより,我が国政府の対イラク武力行使の問題に係る関心事項を推察することが可能となるほか,いかなる種類又は性質の資料をいかなる数収集したかなどといったことが明らかとなって我が国政府の情報収集能力
(関係各国等の情報収集先を含む。

が明らかとなり,また,検討又は意思決定の前提となる資料が明らかになることにより対イラク武力行使の問題に係る検討又は意思決定過程の概略が明らかとなるから,将来的に類似の事案が発生した場合における我が国政府の政策検討又は意思決定の手法,政策検討上の関心事項,我が国の今後の対応等を推察することが可能となるほか,我が国の情報分析能力等を推察することも可能となることから,他国との交渉上不利益を被るおそれがある上,我が国の安全が害されるおそれがある。また,参考資料3に係る不開示部分には,関係各国等の高官に係る記載も含まれている。
よって,本件不開示部分1に記録された情報は,公にすることにより,国の安全が害されるおそれ,他国との信頼関係が損なわれるおそれ及び他国との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報(情報公開法5条3号)に該当する。

本件文書1は,非公開を前提に,外務省内で集められた当時の公電,調書等の多数の関係書類及び省内関係者へのインタビュー等により集約された情報を基礎として,一連の事実関係,政策判断過程等について検討を行った結果が記録されている文書である。
したがって,本件不開示部分1に記録された情報は,外務省の担当者らが外交政策を検討する中で,非公開を前提として作成されたものであることから,
その内容が後日公開されることが予想される事態となれば,
今後,
同種資料を作成することがちゅうちょされ,その結果として政府部内において情報の共有を図ることが困難となり,政府部内における協議又は検討をする上で多大な支障が生ずるし,前記アのとおり,我が国の今後の外交交渉事務に支障を及ぼすおそれもある。
よって,上記の情報は,国の機関である外務省が行う事務に関する情報であって,公にすることにより,当該事務の性質上,当該事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報(情報公開法5条6号柱書き)に該当する。

ウ(ア)

原告は,資料の種類,性質及び数を明らかにすることが直ちに政府
の情報収集能力を明らかにすることにはならないし,参考にした資料の数及び標目だけで,検討又は意思決定の過程の概略が明らかになるなどということも通常あり得ない旨主張する。
しかし,本件不開示部分1に含まれる資料の内容を示す標目を参照すれば,
情報収集先又は収集した情報の内容を把握することができるから,我が国政府の情報源及び情報収集能力が明らかとなる。また,本件不開
示部分1には,作成時期及び資料の内容を示す標目が記載されていることから,情報収集先又は収集した情報の内容と併せて対イラク武力行使に関する検討又は意思決定のために作成された資料の内容及び作成時期をある程度把握することができ,対イラク武力行使に係る検討又は意思決定過程の概略が明らかとなる。
そうすると,本件不開示部分1に係る情報を公にすることにより,将来的にいずれかの国が武力行使に及ぶ事案が発生し,我が国としての立場及び政策を策定する必要が生じた場合,当該武力行使について直接又は間接の利害関係を有する関係国が,我が国政府の政策検討又は意思決定の手法,政策検討上の関心事項,我が国の今後の対応等を推察することが可能となるほか,我が国の情報収集能力,情報分析能力等を推察することも可能となるから,
他国との交渉上不利益を被るおそれがある上,
我が国の安全が害されるおそれがある。また,標目のうち,関係国又は関係機関の高官の氏名を記載したものについては,当該高官から特定の時期に情報提供がされたことが判別されるのであり,公にすることにより,当該関係国や関係機関との信頼関係が損なわれるおそれが大きい。したがって,原告の主張は,失当である。
(イ)

原告は,どのような理由により情報収集先又は収集した情報の内容
が明らかになるのか,被告が個別具体的に明らかにしていない旨主張する。
しかし,本件不開示部分1に含まれる資料の内容を示す標目を参照すれば,具体的な国名,機関名及び人名を含む情報収集先又は収集した内容を把握することができるのであり,さらに,多数の標目全体を総覧及び分析することで,情報収集先がどの程度多岐にわたっているか,情報収集先となっていない国若しくは機関がどこか,又は重点的な情報収集先となっている国若しくは機関はどこかなどを読み取ることができるた
め,我が国政府の情報源及び情報収集能力が明らかとなる。また,本件不開示部分1には,資料の標目ごとにその作成時期が記載されているため,当該資料作成の前提となった外交活動の時期や,特定の時期に集中して資料が作成されている状況及びそれに対応する外交活動,国際情勢等を把握する材料となる。対イラク武力行使との関係では,対イラク武力行使をめぐる情勢が展開する中,我が国がいかなる節目においていかなる情報収集先からいかなる内容の情報を得ていたか若しくは得ようと試みていたか,又は我が国が当該情報をどの程度重視していたかを把握することができ,対イラク武力行使の問題に係る検討又は意思決定過程の方針及び概略が明らかとなる。
したがって,本件不開示部分1を開示すれば,前記アのとおりのおそれがあるといえるのであり,原告の主張は,失当である。
(ウ)

原告は,情報収集先の国又は機関は,米国を初めとする欧州各国又
は国連の機関である国連大量破壊兵器廃棄特別委員会,国連監視検証査察委員会等であることは合理的に予測できる旨や,被告の主張するところは推測の材料が断片的に明らかになるという程度の事情にすぎない旨主張するが,原告の憶測や独自の見解にすぎず,失当である。
(エ)

原告は,外交を任務とする者が,その職にある期間に諸外国と連絡
を取り合うのは当たり前のことであろうし,高官であれば少なくとも当事国においては氏名が公表されているのが通常であろうから,被告の主張は,具体的な根拠がない旨主張する。
しかし,対イラク武力行使をめぐる情勢という国際政治上及び各国の安全保障政策上機微な問題に係る情報提供は,情報提供先との信頼関係の下,情報内容又は情報提供元を公にしないことが当然の国際慣行であり,かかる前提があるために機微な情報を収集することができる反面,情報内容又は情報源の秘密保持を適切に行うことも当然に求められるか
ら,原告の主張は,失当である。
(2)

本件文書1の1枚目の脚注3行目から6行目までに係る不開示部分(本件

不開示部分2)

本件不開示部分2は,本件文書1を作成するに当たり外務省が実施したインタビューの対象者の氏名及び肩書が記録されているところ,前記⑴イのとおり,本件文書1自体が非公開を前提として集約された情報を基礎とする文書であって,対イラク武力行使の発生時から10年余りしか経過しておらず,我が国を含む関係国において,当時の意思決定に関与していた者の多くが引き続き外交活動に従事している中で,非公開を前提に実施されたインタビューの対象者(これらの者も,現在も様々な形で外交活動に関わっているものである。)に関する情報を公にすれば,本件検証に関する情報を得ようとする者等からインタビューの対象者に対して不当な働きかけが行われる(工作活動や脅迫の対象となる事態が生ずる)おそれがあるほか,今後,何らかの検証等を行う場合において,インタビュー対象者等の関係者が,いずれは自己に関する情報が公にされることを恐れ,その結果,関係者から忌憚のない意見を得ることが困難となるおそれもあり,今後の政府部内での協議,検討,検証等において率直な意見交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある。
よって,本件不開示部分2に記録された情報は,国の機関である外務省の内部における検討に関する情報であって,公にすることにより,率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある情報(情報公開法5条5号)に該当する。


本件不開示部分2に記録された情報は,外務省の担当者らが外交政策を検討する中で,非公開を前提として実施されたインタビューの対象者に関するものであることから,その内容が後日公開されることが予想される事態となれば,関係者等から機微な内容を含む事項を聴取することや,関係
者等との間で外交交渉に関する率直かつ忌憚のない意見を交換することができないこととなり,政府部内における協議,検討,検証等の事務を行う上で多大な支障が生ずるおそれがある。
よって,上記の情報は,国の機関である外務省が行う事務に関する情報であって,公にすることにより,当該事務の性質上,当該事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報(情報公開法5条6号柱書き)に該当する。
ウ(ア)

原告は,外務省は,対イラク武力行使の当時の意思決定に関与して
いた者の肩書きは,情報公開請求により既に開示されており(甲17,18),それらの者の氏名を特定することも容易である旨主張する。しかし,対イラク武力行使から約10年後に,我が国の対イラク武力行使に係る対応を検証するためのインタビューの対象者として選定されることは,対イラク武力行使に関する意思決定において実体的な関与があったことを推測させるものであり,これが明らかになることは,原告が指摘する資料の記載とは全く性質を異にするのであって,工作活動や脅迫の対象となる蓋然性がより高いということができる。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
(イ)

原告は,対イラク武力行使に関する意思決定をした際に日本政府の
幹部の立場にあった者に対して工作活動や脅迫の対象とするよりも,今後される意思決定に不当な圧力をかけようとしてそのような働きかけをする危険性の方がはるかに高いはずである旨主張する。
しかし,被告の主張は,当時の資料に肩書きが記載されることとインタビューの対象者として選定されることを比較しているのであり,過去の意思決定に不当な圧力をかけようと働きかけが行われる当該過去の時点での危険性と,インタビュー対象者が公表されることでインタビューの後に不当な働きかけが行われる今後の危険性を比較しているのではな
いから,原告の主張は,失当である。
(3)

項目国際社会の情勢に係る不開示部分(本件不開示部分3)
本件不開示部分3は,イラク情勢に関する国際社会の動きに係る記述であって,対イラク武力行使への我が国の対応を検討する上で重要な背景となった関係国及び地域の政治情勢又は安全保障関連情勢に関する我が国の率直な分析,評価等が3つの項目に分けて記録されており,その記載自体に,我が国が,その当時,どのような国際情勢認識の中で,どのような比較衡量又は判断を行い,イラクをめぐる政策を検討していたかが如実に表れているため,これを公にすることにより,我が国の情報収集能力,情報分析能力等を推察することが可能となる。また,外務省が当時のイラク情勢をめぐる諸事情の中から,どの国,地域又は側面に焦点を当てていたかが明らかになるため,大量破壊兵器の問題等のイラク情勢をめぐる当時の我が国の検討の視点又は関心の対象及びこれらの国又は地域の情勢が我が国の政策決定に与えた影響等を推察することができるから,これが公にされることにより,将来的に類似の事案が発生し,我が国としての立場又は政策を策定する必要が生じた場合,関係国が,我が国政府の政策検討又は意思決定の手法,政策検討上の関心事項,我が国の今後の対応等を正確に予測し,自国を利する形での効果的な外交活動をすることが可能となるほか,イラク情勢をめぐる動きについての我が国の認識が明らかになることにより,イラク及びその周辺国との間での外交交渉において,当該関係国に対し,自国を利するための参考となり得る情報を与えることになる。外交活動において,自己の認識や検討内容が明らかになることは,自らの懸念や行動の予見可能性を関係国にさらすことを意味し,これが将来の交渉戦略上好ましくないことは明らかである。さらに,上記の不開示部分に係る情報には,関係国の対外政策に関する我が国の政府の率直な分析又は評価についての言及も含まれており,対イラク武力行使がされてから10年
余りしか経過しておらず,我が国を含む関係国において,当時の意思決定に関与していた者の多くが引き続き外交活動に従事している中で当該情報を公にすれば,関係国との信頼関係が損なわれるおそれがある。
よって,本件不開示部分3に記録された情報は,公にすることにより,国の安全が害されるおそれ,他国との信頼関係が損なわれるおそれ及び他国との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報(情報公開法5条3号)に該当する。

本件不開示部分3に記録された情報は,公にしないことを前提とした外務省内での率直な意見交換に基づいて記載されたものである。
よって,上記の情報は,国の機関である外務省の内部における検討に関する情報であって,公にすることにより,率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある情報(情報公開法5条5号)に該当する。


本件不開示部分3に記録された情報は,これを公にすることにより,イラク情勢をめぐる我が国の検討の視点,関心の対象等が明らかになることから,将来的に類似の事案が発生し,我が国としての立場又は政策を策定する必要が生じた場合,関係国が,これらの情報を我が国の今後の対応を予測するために用いるなど,我が国の今後の外交交渉事務に支障を及ぼすおそれがある。
よって,上記の情報は,国の機関である外務省が行う事務に関する情報であって,公にすることにより,当該事務の性質上,当該事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報(情報公開法5条6号柱書き)に該当する。

エ(ア)

原告は,外務省がどの国又は地域に焦点を当てていたかという事情
だけで,我が国の今後の対応等を正確に予測することなど到底考えられないし,自国を利する形での効果的な外交活動を行うことが可能とも考
えられない旨主張する。
しかし,対イラク武力行使と同様,いずれかの国が武力行使を行う事態が生じた場合には,当該武力行使に直接の利害関係を有する国々のみならず,当該武力行使に直接的に関わらない国々であっても,その国を取り巻く情勢,歴史的経緯等様々な側面から利害関係を持ち得るため,直接又は間接の利害関係を有する国々が当該武力行使に関して積極的な外交活動を展開することが想定される。このような中で,我が国が対イラク武力行使を支持するという判断を行うに当たり,当時のイラク情勢をめぐる諸事情のうち,どの国,地域又は側面(我が国が着目した特定の国又は地域における内外の政治情勢及びそれに関連する事情)に焦点を当てていたかが明らかになれば,我が国が大量破壊兵器の問題等のイラク情勢をめぐる当時の我が国の検討の視点又は関心の対象,これらの国又は地域の情勢が我が国の政策決定に与えた影響等を推察することができることとなる。さらに,イラクを含む中東情勢が,多様な要因が相互に影響し合う中で非常に激しい変動を見せており,域内外の諸国が様々な利害関係を有する形で関与してきているところ,今後域内外の諸国がどのような形でイラクを含む中東情勢に関与することとなるか明確に予測することは困難であるから,イラク情勢をめぐる動きについての我が国の認識が明らかになることによって自国を利するための参考となり得る情報を得る関係国を列挙して特定することは困難であるし,仮に,
特定することができるとしても,我が国がどの国を上記のような関係国と見なしているかをつまびらかにすること自体が,当該特定された国のみならずその他の関係国に対して,我が国がイラクを含む中東情勢についていかなる見方をしているかを明らかにすることになり,他国との交渉上不利益を被るおそれが生ずるということができる。
したがって,原告の主張は,昨今の中東情勢を踏まえないものにすぎ
ず,失当である。
(イ)

原告は,本件不開示部分3の分量に触れ,この程度の内容で示され
る日本の検討又は関心対象によって,我が国の今後の対応等を正確に予測することなどおよそ不可能である旨主張する。
しかし,本件不開示部分3は,対イラク武力行使に関する非常に多岐にわたるイラクを除く各国の政治情勢や安保理関連の情勢のうち我が国の対応を検討する上で重要であった考慮要素を項目分けを行いながら,要点を絞って記載した部分であるから,対イラク武力行使という国際政治上及び各国の安全保障政策上機微な問題に関する意思決定を行うに当たり,我が国として重要な考慮要素としていた点が鮮明に現れている部分といえ,項目分けの仕方及びその記述内容を含め,記載自体が一定の価値判断又は評価を伴うものとなっている。そして,将来的にいずれかの国が武力行使に至るという事態が生じ,我が国としての立場又は政策を策定する必要が生じた場合,それがイラクではない国であったとしても,我が国が重要な考慮要素とする点の多くは,本件検証の内容と共通するから,関係国が我が国政府の政策検討又は意思決定の手法,政策検討上の関心事項,我が国の今後の対応等を正確に予測し,自国を利する形での効果的な外交活動を行うことが可能となる。
したがって,原告の主張は,理由がない。
(ウ)

原告は,将来的に類似の事案が発生するとの蓋然性は何ら具体的な
根拠に基づくものではなく,そもそも,類似の事案及び関係国についても具体的に特定されていないから,交渉上の不利益を被る具体的な蓋然性が認められる余地はない旨主張するが,第3の3(1)
(被告の主張の要
点)アのとおりであって,原告の主張は,失当である。
(4)

項目日本の状況に係る不開示部分(本件不開示部分4)
本件不開示部分4は,対イラク武力行使への我が国の対応を検討する上
で重要な背景となった対イラク武力行使前後の我が国の外交的努力を中心とした我が国を取り巻く情勢(当時の我が国の政府が行った外交及び安全保障上の取組等に係る内容であって,当時我が国が安全保障上の懸念として認識していたイラク以外の特定の地域に係る情勢に関する記述を含む。)
について記録されており,これを公にすることにより,外交及び安全保障関係における我が国の関心事項及び政策決定において我が国が考慮している事項等が明らかとなるから,我が国の安全保障及びそれに関係する関係国との交渉において,関係国が本件不開示部分4に係る情報を参考として用いることが可能となる。
よって,本件不開示部分4に記録された情報は,公にすることにより,国の安全が害されるおそれ及び他国との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報(情報公開法5条3号)に該当する。

本件不開示部分4に記録された情報は,公にしないことを前提とした外務省内での率直な意見交換に基づいて記載されたものである。
よって,上記の情報は,国の機関である外務省の内部における検討に関する情報であって,公にすることにより,率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある情報(情報公開法5条5号)に該当する。


本件不開示部分4に記録された情報は,これを公にすることにより,外交及び安全保障関係における我が国の関心事項及び政策決定において我が国が考慮している事項等が明らかとなるから,我が国の安全保障及びそれに関係する関係国との交渉において,関係国が,本件不開示部分4に係る情報を参考として用いることが可能となり,我が国の今後の対応を推察することも可能となるなど,我が国の今後の外交交渉事務に支障を及ぼすおそれがある。

よって,上記の情報は,国の機関である外務省が行う事務に関する情報であって,公にすることにより,当該事務の性質上,当該事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報(情報公開法5条6号柱書き)に該当する。
エ(ア)

原告は,本件不開示部分4については,本件文書1を要約した報告の主なポイント(甲4の2)にも〈我が国の外交努力〉として,
1頁分以上の記述がある一方で,本件不開示部分4は数行程度の分量であって,本件不開示部分4の記述の大半は,報告の主なポイントにおいて明らかにされていると考えるのが合理的であるから,報告の主なポイントにおける記載と重複する部分については,これを不開示とする理由は全くない旨主張するが,本件不開示部分4は,報告の主なポイント中の〈我が国の外交努力〉に対応するものではなく,報告の主なポイントには,本件不開示部分4に記録されている情報は記載されていないから,原告の主張は,失当である。
(イ)

原告は,本件不開示部分4の分量が数行程度である以上,外交及び
安全保障関係における我が国の関心事項並びに政策決定において我が国が考慮している事項を推測するのは困難である,仮に,これらを推測することができたとしても,それによって生ずるおそれは極めて抽象的なものにとどまる旨主張する。
しかし,本件不開示部分4には,対イラク武力行使についての我が国の対応を検討する上で重要な背景事情となった我が国の外交的努力を中心とした我が国を取り巻く情勢が取捨選択の上で記載されており,その中には,我が国が行った安全保障上の取組及び安全保障に関する我が国の見解も含まれているのであって,これを公にすることにより,外交及び安全保障関係における我が国の関心事項,政策決定において我が国が考慮している事項等が明らかとなるから,分量が少ないとしても,それ
は取捨選択の上で,我が国が重要と考える事項又は見解が凝縮されていることによるものであり,項目分けの仕方及びその記述内容を含め,記載自体が一定の価値判断や評価を伴うものとなっている。そして,将来的にいずれかの国が武力行使に至るという事態が生じ,我が国としての立場又は政策を策定する必要が生じた場合,それがイラクではない国であったとしても,我が国が重要な考慮要素とする点の多くは,本件検証の内容と共通するから,関係国が,我が国政府の政策検討,意思決定の手法,政策検討上の関心事項,我が国の今後の対応等を正確に予測し,自国を利する形での効果的な外交活動を行うことが可能となる。
しかも,
前記アのとおり,本件不開示部分4には,イラクではない特定の地域に係る情勢に関する記述が含まれているが,当該記載は,我が国が対イラク武力行使への対応を検討する過程において特に重要であった内容であり,これが公にされた場合,我が国の関心事項や政策決定における考慮事項が明らかになるものである。
したがって,原告の主張は,失当である。
(5)

項目
対イラク武力行使支持に至る我が国政府の検討過程・外交努力の概観に係る不開示部分(本件不開示部分5)ア
本件不開示部分5は,イラク問題に対する我が国の対応を検討していく上で考慮に入れた事項,検討過程においてとられていた方針又は立場,政策決定に関与した部署等の体制,
関係国とのやり取り等が記録されており,
これを公にすることにより,我が国の情報収集能力,情報分析能力等を推察することが可能となるほか,外交及び安全保障関係における我が国の関心事項,政策決定において我が国が考慮している事項等が明らかとなるから,将来的に類似の事案が発生し,我が国としての立場又は政策を策定する必要が生じた場合,
関係国が我が国政府の政策検討又は意思決定の手法,
政策検討上の関心事項,我が国の今後の対応等を正確に予測し,自国を利
する形での効果的な外交活動を行うことが可能となる上,イラク情勢をめぐる動きについての我が国の認識が明らかになることにより,イラク及びその周辺国との間での外交交渉において,当該関係国に対し,自国を利するための参考となり得る情報を与えることになる。また,関係国との必ずしも公になることを前提としない個別具体的なやり取りを公にすることにより,関係国との信頼関係が損なわれるおそれがある。
よって,本件不開示部分5に記録された情報は,公にすることにより,国の安全が害されるおそれ,他国との信頼関係が損なわれるおそれ及び他国との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報(情報公開法5条3号)に該当する。

本件不開示部分5に記録された情報は,公にしないことを前提とした外務省内での率直な意見交換に基づいて記載されたものである。
よって,上記の情報は,国の機関である外務省の内部における検討に関する情報であって,公にすることにより,率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある情報(情報公開法5条5号)に該当する。


本件不開示部分5に記録された情報は,これを公にすることにより,外交及び安全保障関係における我が国の関心事項及び政策決定において我が国が考慮している事項等が明らかとなるから,将来的に類似の事案が発生した場合において,関係国が,これらの情報を我が国の今後の対応を予測するために用いるなど,我が国の今後の外交交渉事務に支障を及ぼすおそれがある。
よって,上記の情報は,国の機関である外務省が行う事務に関する情報であって,公にすることにより,当該事務の性質上,当該事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報(情報公開法5条6号柱書き)に該当する。

エ(ア)

原告は,報告の主なポイント(甲4の2)において,2002

年(平成14年)初めから2003年(平成15年)3月に至るまでの我が国政府内での検討の過程及び外交努力に関する記載がされているとして,報告の主なポイントによる要約と重複する部分を不開示にする理由は全くない旨主張する。
しかし,報告の主なポイントは,本件文書1の単なる抜き書きで
はなく,本件文書1の内容を精査した上で新たに作成されて公表されたものであり,本件文書1の記述内容と同一の部分とそうではない部分を区別することは容易ではないし,内容の詳細さや具体性にも違いがあるから,原告の主張は,失当である。
(イ)

原告は,
日本の外交努力
(甲9)の記述と本件文書1の記述は,

その大部分が重複するものと考えられるほか,同じ事実について外務省が公にしている資料の記載と大きく異なることは考え難いから,本件不開示部分5を不開示とする理由はないし,文字列で記載された報告書であるから,切り分けが困難ということ自体考え難い旨主張する。
しかし,日本の外交努力は,存在を公表しても差し支えのない会
談や報道発表が機械的に羅列されたものであるのに対し,本件不開示部分5には,検証を行うに際して特に注目すべき我が国と関係国との間のやり取りを取り上げて,それに対する評価も交えつつ具体的かつ詳細な内容が記載されているから,両者は,その内容及び性質を異にする文書であって,これらを同列に扱うことはできない。また,外務省が公表している事項が含まれるとしても,その記載は,当該事項を示すことのみにその趣旨があるのではなく,
本件検証の結果として,
多数の出来事
(各
出来事や我が国の動きに対する評価,各事実の背景事情及び原因,時系列の中で各事実が後の事実にどのような影響を及ぼしたか,省内外での検討,調整過程,政府高官等への報告や指示,他国との折衝及び具体的
な情報収集活動やそれらを踏まえた上での省内外や政府高官等の認識,評価等)の中で我が国が特に重視した事項又は我が国の意思決定に影響を与えた事項を取捨選択の上で抽出し,その事項に対する評価やその影響等とともに一体として示すことにその趣旨があるから,文字列による切り分けは困難であり,仮に切り分けたとしても,当該記載自体が価値判断や評価を伴うことから,被告が主張するような支障が生ずることに変わりはない。
したがって,原告の主張は,失当である。
(ウ)

原告は,本件不開示部分5程度の分量の記載で,我が国の情報収集
能力,
情報分析能力等を推測するとしても,
精度の高い推測とはいえず,
同じく,関心事項や考慮している事項として明らかになる内容もたかがしれている旨主張する。
しかし,本件不開示部分5に記録されている情報は,前記アのとおりであり,前記アのようなおそれがあることは明らかであるから,原告の主張は,失当である。
(エ)

原告は,将来的に類似の事案が発生するとの蓋然性は何ら具体的な
根拠に基づくものではなく,そもそも,類似の事案及び関係国についても具体的に特定されていないから,交渉上の不利益を被る具体的な蓋然性が認められる余地はない旨主張するが,前記(3)エ(ウ)と同様,原告の主張は,失当である。
(6)

項目情報収集についての検証に係る不開示部分(本件不開示部分6)本件不開示部分6は,我が国政府による情報収集についての具体的方法及び内容について記録された部分であり,これを公にすることにより,我が国の情報収集の対象に係る関心事項,情報収集能力,情報収集先,情報源等が明らかとなり(一般的に,情報収集活動によって得られた情報の種類からは情報収集を行う主体が重視する事項が,情報収集先からはその主
体が行う情報収集の方法や当該事項を判断する際に重視する関係主体が,それぞれ具体的に明らかになる。),これによって,我が国政府の政策検討又は意思決定の手法,政策検討上重視する国際情勢及び関係諸国が表れるのであって,関係国に対して我が国の政策上の懸念や行動の予見可能性を明らかにすることを意味し,関係国が自国を利して我が国の利益を害する戦略をとることを容易にするから,安全保障に関する問題はもとより,我が国と何らかの関係で緊張関係に立つ関係国との交渉上不利益を被るおそれがある上,国の安全が害されるおそれも,情報収集先である他国との信頼関係が損なわれるおそれもある。
よって,本件不開示部分6に記録された情報は,公にすることにより,国の安全が害されるおそれ,他国との信頼関係が損なわれるおそれ及び他国との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報(情報公開法5条3号)に該当する。

本件不開示部分6に記録された情報は,公にしないことを前提とした外務省内での率直な意見交換に基づいて記載されたものである。
よって,上記の情報は,国の機関である外務省の内部における検討に関する情報であって,公にすることにより,率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある情報(情報公開法5条5号)に該当する。


本件不開示部分6に記録された情報は,前記アのとおり,これを公にすることにより,我が国の情報収集の対象に係る関心事項,情報収集能力,情報収集先,情報源等が明らかとなるから,安全保障に関する問題はもとより,我が国と何らかの関係で緊張関係に立つ関係国との交渉上不利益を被るおそれがあるなど,我が国の今後の外交交渉事務に支障を及ぼすおそれがある。また,上記の情報を公にすると,今後,情報提供者からの協力を得ることが困難となり,我が国政府の情報収集事務の適正な遂行に支障
を及ぼすおそれがある。
よって,上記の情報は,国の機関である外務省が行う事務に関する情報であって,公にすることにより,当該事務の性質上,当該事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報(情報公開法5条6号柱書き)に該当する。
エ(ア)

原告は,
報告の主なポイント
(甲4の2)の記載を挙げた上で,

主要な情報収集先並びに具体的な情報収集の方法及び内容が公開されており,
少なくとも主要な情報収集先については非公開とする必要がなく,また,外交交渉事務への支障も生じていない旨主張するが,本件不開示部分6には,報告の主なポイントにおいて既に公開されている情報と比較して,より具体的な情報収集先又は情報収集の方法若しくは内容が記載されているから,原告の主張は,失当である。
(イ)

原告は,本件不開示部分6を開示することにより具体的にどのよう
なおそれが生ずるのか説明がなく,公にされた事項と文字列で切り分けることも可能である旨主張する。
しかし,本件不開示部分6には,他国の情報収集能力等に関わる内容も含まれる上,国際政治上及び各国の安全保障上機微な性質の情報提供は,相手先との信頼関係の下,情報内容のみならず情報提供元も公にしないことが当然の国際慣行であるから,これを公にすることにより,他国との信頼関係が損なわれるおそれがある。また,本件不開示部分6には,情報収集のための在外公館を含む省内外に対する指示内容及びその報告状況や我が国内での情報共有状況についての分析も含むものとなっており,対イラク武力行使をめぐる情勢が展開する中,我が国がいかなる節目においていかなる情報収集先からいかなる内容の情報を得ていたか,又は得ようと試みていたか,また我が国が当該情報をどの程度重視していたかを把握することができ,対イラク武力行使に関する検討又は
意思決定過程における方針及び概略も明らかとなる。また,前記(5)エ(イ)と同様,外務省が公表している事項が含まれるとしても,その記載は,当該事項を示すことのみにその趣旨があるのではなく,本件検証の結果として,多数の出来事の中で我が国が特に重視した事項又は我が国の意思決定に影響を与えた事項を抽出し,その事項に対する評価やその影響等とともに一体として示すことにその趣旨があるから,文字列による切り分けは困難であり,仮に切り分けたとしても,当該記載自体が価値判断や評価を伴うことから,被告が主張するような支障が生ずることに変わりはない。
したがって,本件不開示部分6を公にすることにより,将来的にいずれかの国が武力行使に至るという事態が生じ,我が国としての立場,政策を策定する必要が生じた場合,それがイラクではない国であったとしても,我が国が重要な考慮要素とする点の多くは,本件検証の内容と共通するから,当該武力行使について直接又は間接の利害関係を有する関係国が,我が国政府の政策検討,意思決定の手法,政策検討上の関心事項,さらには我が国の今後の対応等を推察することが可能となるほか,我が国の情報収集能力,情報分析能力等を推察することも可能となるから,原告の主張は,失当である。
(ウ)

原告は,尖閣諸島に関する問題についてされた新聞報道を挙げてそ
のことにより外交交渉事務等への支障が生じたことはない旨主張するが,原告が指摘するような事実に関する報道がされたとしても,それは飽くまでも報道機関等によるものであって政府が公表したものではないから,当該報道をもって我が国政府の外交交渉事務に支障が生じないということはできない上,仮に,報道の内容に真実の情報が含まれているとしても,それは私人である報道機関の意見や見解が反映されたものであり,それを政府が政府の見解として公表するのとでは外交交渉事務に及ぼす
影響が全く異なる。
したがって,原告の主張は,失当である。
(エ)

原告は,新聞報道は,政府機関の動きや官房長官の記者会見での発
言内容等,政府が公表した発言や行動に関する事実を詳細に記載したものであって,政府が公表した場合と実質的に変わりがない旨主張する。しかし,報道内容が政府が公表した事実を含むとしても,報道機関の意見や見解が反映されたものであり,政府が公表した場合と実質的に変わりがないとはいえないし,本件不開示部分6には,公表された事実も多数含まれているものの,多数の事実の中から取捨選択を経た事実が記載されており,記載自体が一定の価値判断や評価を伴うものになっているのである。
したがって,原告の主張は,失当である。
(7)

項目分析についての検証に係る不開示部分(本件不開示部分7)
本件不開示部分7は,対イラク武力行使に関係するいくつかの特定の問題(武力行使により生じ得る影響)又は動向に関する情報分析の手法,分析過程に関する評価,作成された資料の内容及びその用途並びにそれらの共有のあり方(資料の作成過程を含む。)に関する評価が4つの項目に分けて記録された部分であり,これを公にすることにより,我が国による国際情勢の分析の方途及び能力が明らかになるとともに,その分析結果が我が国政府の政策決定にどのように活用されるかという点がつまびらかになり,将来的に類似の事案が発生し,我が国としての立場又は政策を策定する必要が生じた場合,関係国が,我が国政府の政策検討又は意思決定の手法,政策検討上の関心事項,我が国の今後の対応等を正確に予測し,自国を利する形での効果的な外交活動を行うことが可能となるほか,イラク情勢をめぐる我が国の認識が明らかになることにより,イラク及びその周辺国との間での外交交渉において,当該関係国に対し,自国を利するための
参考となり得る情報を与えることになる。
よって,本件不開示部分7に記録された情報は,公にすることにより,国の安全が害されるおそれ及び他国との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報(情報公開法5条3号)に該当する。

本件不開示部分7に記録された情報は,公にしないことを前提とした外務省内での率直な意見交換に基づいて記載されたものである。
よって,上記の情報は,国の機関である外務省の内部における検討に関する情報であって,公にすることにより,率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある情報(情報公開法5条5号)に該当する。


本件不開示部分7に記録された情報は,これを公にすることにより,外交及び安全保障関係における我が国の関心事項,政策決定において我が国が考慮している事項,我が国の分析検討の視点等が明らかとなるから,将来的に類似の事案が発生した場合において,関係国が,これらの情報を我が国の今後の対応を予測するために用いるなど,我が国の今後の外交交渉事務に支障を及ぼすおそれがある。
よって,上記の情報は,国の機関である外務省が行う事務に関する情報であって,公にすることにより,当該事務の性質上,当該事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報(情報公開法5条6号柱書き)に該当する。

エ(ア)

原告は,イラクを巡る情勢の経緯(甲6)には,前記アの不開

示部分の分量以上にイラクをめぐる情勢の経緯が説明されている上,日本の外交努力(甲9)には,対イラク武力行使の平和的解決のためにいかなる外交努力を行ったかが具体的に記載されている旨主張する。しかし,上記のイラクを巡る情勢の経緯及び日本の外交努力

には,存在を公表しても差し支えのない安保理の決議,イラクの査察妨害等の事実経過,
会談,
報道発表等が羅列されているにとどまっており,
イラク問題に関する我が国の情勢分析等の評価を含まず,専ら情報の分析,分析結果の共有等についての詳細な検証結果が記録されている本件不開示部分7とは共通性のない記載にとどまっているから,原告の主張は,失当である。
(イ)

原告は,具体的事実を挙げることなく,評価のみを書き連ねること
は不可能又は困難であるから,本件不開示部分7には,イラク情勢に関する具体的事実の経過に関する記載も含まれているはずであって,当該部分は開示することができるはずである旨主張する。
しかし,これは,原告による推測にすぎず,実際には,収集された情報を踏まえた上での分析の手法,過程又は結果の共有過程を指摘するものであって,その内容から,我が国が対イラク武力行使に係る検討又は意思決定の方針を策定する上でどのような点を重視していたかを容易に把握することが可能となる上,仮に,当該情報の中に,外務省が公にしている対イラク武力行使に関する情勢等の具体的事実が含まれているとしても,公になっている部分のみを切り分けることは困難であるし,仮に,切り分けることが可能であるとしても,当該事実が記載されること自体が一定の価値判断や評価を含み,我が国の情報分析能力又は考慮事項を示すことにつながることに変わりはない。
したがって,原告の主張は,失当である。
(ウ)

原告は,将来的に類似の事案が発生するとの蓋然性は何ら具体的な
根拠に基づくものではなく,そもそも,類似の事案が何を指すのかも不明確であるし,関係国についても何ら具体的に特定されていないから,日本が交渉上の不利益を被る具体的な蓋然性が認められる余地はない旨主張するが,前記(3)エ(ウ)と同様,原告の主張は,失当である。
(エ)

原告は,尖閣諸島に関する問題についてされた新聞報道を挙げてそ
のことにより外交交渉事務等への支障が生じたことはない旨主張するが,前記⑹エ(ウ)に述べたとおりであって,原告の主張は,失当である。(オ)

原告は,新聞報道は,政府機関の動きや官房長官の記者会見での発
言内容等,政府が公表した発言や行動に関する事実を詳細に記載したものであって,政府が公表した場合と実質的に変わりがない旨主張する。しかし,前記⑹エ(エ)と同様の理由により,原告の主張は,失当である。
(8)

項目検討・意思決定プロセスに係る不開示部分(本件不開示部分8)本件不開示部分8は,外務省内及び政府部内でどのような手続を経て対イラク武力行使をめぐる政策検討及び意思決定がされたのかという対イラク武力行使の問題に係る検討又は意思決定プロセス(特に,外務省内における関係局内の協議の具体的な開催状況,官邸との密接な協議状況,検討及び意思決定プロセスにおいて考慮された事項),それに対する本件検証としての評価等について,具体的な内容が記録された部分であり,これを公にすることにより,我が国の政策検討の具体的な手続及び政策検討上の関心事項が明らかになるから,将来的に類似の事案が発生し,我が国としての立場又は政策を策定する必要が生じた場合,関係国が,我が国政府の政策検討又は意思決定の手法,政策検討上の関心事項,我が国の今後の対応等を正確に予測し,自国を利する形での効果的な外交活動を行うことが可能となるほか,我が国と何らかの問題で緊張関係に立つ関係国が,我が国政府の意思形成過程及び政策検討上の関心事項等を基に,我が国の今後の対応を推察することが可能となるなど,他国との交渉上不利益を被るおそれがある。
よって,本件不開示部分8に記録された情報は,公にすることにより,他国との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることに
つき相当の理由がある情報(情報公開法5条3号)に該当する。

本件不開示部分8に記録された情報は,公にしないことを前提とした外務省内での率直な意見交換に基づいて記載されたものである。
よって,上記の情報は,国の機関である外務省の内部における検討に関する情報であって,公にすることにより,率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある情報(情報公開法5条5号)に該当する。


本件不開示部分8に記録された情報は,これを公にすることにより,我が国の政策検討の具体的な手続及び政策検討上の関心事項が明らかになるから,将来的に類似の事案が発生した場合において,関係国が,これらの情報を我が国の今後の対応を推察するための参考とするなど,我が国の今後の外交交渉事務に支障を及ぼすおそれがある。
よって,上記の情報は,国の機関である外務省が行う事務に関する情報であって,公にすることにより,当該事務の性質上,当該事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報(情報公開法5条6号柱書き)に該当する。

エ(ア)

原告は,55人が語るイラク戦争(甲11)やオランダが公表

している報告書を挙げた上で,本件不開示部分8の分量が半頁もないことからすると,本件不開示部分8に上記の書籍で具体的に記載された情報以上に詳細な情報が記録されているか,大いに疑問があるし,上記の書籍の内容は正確であるから,これと同一の内容の情報が記載されている部分には不開示情報該当性がない旨主張する。
しかし,本件不開示部分8は,前記⑶エ(イ)と同様,対イラク武力行使という国際政治上及び各国の安全保障政策上機微な問題に関する意思決定を行うに当たり,我が国として重要な考慮要素としていた点が鮮明に現れている部分といえ,項目分けの仕方及びその記述内容を含め,記
載自体が一定の価値判断又は評価を伴うものとなっている。そして,原告が指摘する書籍は,政府が作成した文書ではなく,著者又は編集者の意見又は見解が反映されたものであって,それが正確であるとの前提がなく,本件文書1とは性格が異なるし,仮に,同一の事実が記載されているとしても,本件不開示部分8は,対イラク武力行使の問題に係る我が国の政策決定プロセスの検証という観点からの記述であり,政府が政府の見解として公表するのと私人が著作等で出版するのとでは外交交渉に及ぼす影響が全く異なる。また,前記⑺エ(イ)と同様,公になっている情報を含むとしても,公になっている部分のみを切り分けることは困難であるし,仮に,切り分けることが可能であるとしても,当該事実が記載されること自体が一定の価値判断又は評価を含み,我が国の情報分析能力又は考慮事項を示すことにつながることに変わりはない。
そして,
対イラク武力行使について行われた他国の調査は,他国の立場で,他国特有の視点に基づいて行われたものであって,我が国が行った本件検証とは別個のものであるから,我が国が行った本件検証と同列に論ずることはできず,本件文書1の内容を公にした場合に生ずる影響を検討するに当たって,他国の調査結果及びその内容をもって直ちに,本件検証の内容も同様に公表すべきとの結論が導き出されるものではない。
したがって,原告の主張は,失当である。
(イ)

原告は,将来的に類似の事案が発生するとの蓋然性は何ら具体的な
根拠に基づくものではなく,そもそも,類似の事案が何を指すのかも不明確であるし,関係国についても何ら具体的に特定されていないから,日本が交渉上の不利益を被る具体的な蓋然性が認められる余地はない旨主張するが,前記(3)エ(ウ)と同様,原告の主張は,失当である。(ウ)

原告は,尖閣諸島に関する問題についてされた新聞報道を挙げてそ
のことにより外交交渉事務等への支障が生じたことはない旨主張するが,
前記⑹エ(ウ)に述べたとおりであって,原告の主張は,失当である。(9)

項目武力行使の支持に至るプロセスに係る不開示部分(本件不開示部
分9)

本件不開示部分9は,これを公にすることにより,我が国政府における対イラク武力行使の支持に至る具体的な政策決定過程,考慮事項等が明らかになり,我が国が具体的にいかなる要素を重視して政策決定を行ったのかが如実に表れるから,将来的に類似の事案が発生し,我が国としての立場又は政策を策定する必要が生じた場合,関係国が,我が国政府の政策検討,意思決定の手法,政策検討上の関心事項,我が国の今後の対応等を正確に予測し,自国を利する形での効果的な外交活動を行うことが可能となるほか,イラク情勢をめぐる我が国の認識が明らかになることにより,イラク及びその周辺国との間での外交交渉において,当該関係国に対し,自国を利するための参考となり得る情報を与えることになる。また,上記の不開示部分には,関係国高官と我が国政府との間で交わされた具体的やり取り,
例えば,
関係国の情勢認識又は意図を推察し得る発言内容も含まれ,
これを公にした場合,関係国との信頼関係が損なわれるおそれがある。よって,本件不開示部分9に記録された情報は,公にすることにより,他国との信頼関係が損なわれるおそれ及び他国との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報(情報公開法5条3号)に該当する。


本件不開示部分9に記録された情報は,公にしないことを前提とした外務省内での率直な意見交換に基づいて記載されたものである。
よって,上記の情報は,国の機関である外務省の内部における検討に関する情報であって,公にすることにより,率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある情報(情報公開法5条5号)に該当する。


本件不開示部分9に記録された情報は,これを公にすることにより,我が国の政策決定過程のほか,政策決定過程における検討の視点,関心の対象等が明らかになり,関係国との交渉において,関係国が,本件不開示部分9に係る情報を参考として用いることにより,我が国の対応を推察することが可能となるなど,我が国の今後の外交交渉事務に支障を及ぼすおそれがある。
よって,上記の情報は,国の機関である外務省が行う事務に関する情報であって,公にすることにより,当該事務の性質上,当該事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報(情報公開法5条6号柱書き)に該当する。

エ(ア)

原告は,将来的に類似の事案が発生するとの蓋然性は何ら具体的な
根拠に基づくものではなく,そもそも,類似の事案が何を指すのかも不明確であるし,関係国についても何ら具体的に特定されていないから,日本が交渉上の不利益を被る具体的な蓋然性が認められる余地はない旨主張するが,前記(3)エ(ウ)と同様,原告の主張は,失当である。(イ)

原告は,日本の外交努力(甲9)には,日本政府が行った外交

努力が具体的に記載されているし,55人が語るイラク戦争(甲11)には,我が国が対イラク武力行使の支持を表明する直前の小泉首相及び福田康夫内閣官房長官(当時)とパウエル国務長官との会談の内容が具体的に記載されている旨主張する。
しかし,本件不開示部分9と日本の外交努力との関係は,前記⑺エ(ア)のとおりであり,日本の外交努力の記載と本件不開示部分9の記録とはその性格が全く異なる。また,55人が語るイラク戦争については,前記⑻エ(ア)のとおり,本件文書1と性格が異なり,外交交渉に及ぼす影響も異なるだけではなく,本件不開示部分9には,原告が指摘するような内容が記録されているわけでもない。また,原告が指
摘するものと同一の内容が含まれているとしても,
前記⑺エ(イ)と同様,
公になっている部分のみを切り分けることは困難であるし,仮に,切り分けることが可能であるとしても,当該事実が記載されること自体が一定の価値判断又は評価を含み,我が国の情報分析能力又は考慮事項を示すことにつながることに変わりはない。
したがって,原告の主張は,失当である。
(ウ)

原告は,外務省事務次官と駐日中国大使との会談の具体的やり取り
が新聞で報道されることもあるとして,本件不開示部分9には,関係国高官と我が国政府との間で交わされた具体的なやり取りも含まれており,これを公にした場合,関係国との信頼関係が損なわれるおそれがある旨の被告の主張に合理的な根拠がない旨主張する。
しかし,本件不開示部分9には,当該関係国の情勢認識や意図を推察し得る発言内容が含まれており,第三国が,当該関係国の当時の情勢認識や意図を手がかりとして,類似の問題が生じた場合に当該関係国の出方を推察することが可能となるから,
原告の主張は,
失当である。
なお,
本件不開示部分9には,外務省がその実施を公開した会談や協議についても記載されているが,非公表の内容やその評価と一体のものとして記載されているために,公開した情報と切り分けることは困難である。(エ)

原告は,被告が前記(ウ)において主張するような複雑な因果の流れ
が単なる確率的可能性ではなく,法的保護に値する蓋然性のあるものとは到底考えられない旨主張する。
しかし,国家間の協議においては,両国が率直に自国の事実認識や利害状況を述べ合うことにより,初めて双方の利害を踏まえた誠実な協議が成り立つのであり,このような協議の内容は,それが当初から公表を予定して行われる場合でない限り,一方的な公開は相手方との信頼関係を損なうものであってそれを開示しないのが当然の国際慣行であるから,
蓋然性の程度を問題とする原告の主張は,失当である。
(10)

項目米側への働きかけに係る不開示部分(本件不開示部分10)
本件不開示部分10は,我が国と米国との外交交渉の内容及びその効果に対する評価に係る記録がされた部分であって,我が国が米国との関係で重要と考える要素が端的に記載されており,これを公にすることにより,我が国政府の米国への働きかけの詳細及びそれに対する米国の反応に係る我が国の評価が明らかになることから,米国との信頼関係が損なわれるおそれがある。
また,
米国は我が国にとって最も重要な同盟国の1つであり,
米国との関係で我が国が考慮する事項は日本の外交政策全般に影響を与えているから,イラク問題について我が国政府が米国に対していかなる働きかけを行っていたかを公にすれば,将来的に類似の事案が発生し,我が国としての立場又は政策を策定する必要が生じた場合,関係国が,我が国政府の政策検討,意思決定の手法,政策検討上の関心事項,我が国の今後の対応等を正確に予測し,自国を利する形での効果的な外交活動を行うことが可能となるほか,イラク情勢をめぐる我が国の認識が明らかになることにより,イラク及びその周辺国との間での外交交渉において,当該関係国に対し,自国を利するための参考となり得る情報を与えることになる。よって,
本件不開示部分10に記録された情報は,
公にすることにより,
他国との信頼関係が損なわれるおそれ及び他国との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報(情報公開法5条3号)に該当する。


本件不開示部分10に記録された情報は,公にしないことを前提とした外務省内での率直な意見交換に基づいて記載されたものである。
よって,上記の情報は,国の機関である外務省の内部における検討に関する情報であって,公にすることにより,率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある情報(情報公開法5条5号)に
該当する。

本件不開示部分10に記録された情報は,これを公にすることにより,我が国政府が米国に働きかけを行うに当たって重視した点や対イラク武力行使に係る関心の対象等が明らかになり,将来的に類似の事案が発生した場合において,関係国が,本件不開示部分10に係る情報を我が国の今後の対応を推察するための参考とするなど,我が国の今後の外交交渉事務に支障を及ぼすおそれがある。
よって,上記の情報は,国の機関である外務省が行う事務に関する情報であって,公にすることにより,当該事務の性質上,当該事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報(情報公開法5条6号柱書き)に該当する。

エ(ア)

原告は,報告の主なポイント(甲4の2)において,武力行使

の前に外交的手段を尽くすべきであり,国際的連帯が必要であるとの考え方を繰り返し伝達した旨の米国への働きかけの内容が公表されている上,日本の外交努力(甲9)にも,米国への働きかけの具体的内容が記載されているとして,本件不開示部分10には,情報公開法5条3号及び6号に該当する事由はない旨主張する。
しかし,報告の主なポイントについては,前記⑸エ(ア)と同様であり,米国への働きかけの内容が一部抽象的に記載されているからといって,本件不開示部分10の全部を直ちに開示すべきことにはならないし,本件不開示部分10には,報告の主なポイントには記載のない内容が含まれている。また,日本の外交努力についても,前記⑺エ(ア)と同様であるほか,本件不開示部分10には,日本の外交努力には記載のない我が国の米国に対する働きかけについての評価及び我が国の働きかけに対する米国からの反応に係る記録が含まれる。また,原告が指摘する文書等の記載と同一の内容が含まれていたとしても,前記
⑺エ(イ)と同様,公になっている部分のみを切り分けることは困難であるし,仮に,切り分けることが可能であるとしても,当該事実が記載されること自体が一定の価値判断や評価を含み,我が国の情報分析能力又は考慮事項を示すことにつながることに変わりはない。
したがって,原告の主張は,失当である。
(イ)

原告は,本件不開示部分10が半頁程度の記載しかなく,本件文書
1が検証結果をとりまとめた報告書であるという位置付けからしても,被告が主張するようなおそれがあるとはとても考えられない旨主張する。しかし,本件不開示部分10の分量が半頁程度であるとしても,対イラク武力行使に至るまでの我が国の米国側に対する働きかけについて,特に重要視した両国政府高官の会談等の内容が取捨選択の上で記載されているのであるから,原告の主張は,失当である。
(ウ)

原告は,将来的に類似の事案が発生するとの蓋然性は何ら具体的な
根拠に基づくものではなく,そもそも,類似の事案が何を指すのかも不明確であるし,関係国についても何ら具体的に特定されていないから,日本が交渉上の不利益を被る具体的な蓋然性が認められる余地はない旨主張するが,前記(3)エ(ウ)と同様,原告の主張は,失当である。(11)

項目米国以外の各国への働きかけに係る不開示部分(本件不開示部
分11)

本件不開示部分11は,我が国と米国以外の関係各国との外交交渉の内容及びその効果に対する評価に係る記録がされた部分であり,これを公にすることにより,我が国政府の関係各国への働きかけの詳細(どのような政策的意図の下に働きかけたかとの点を含む。)及びそれに対する関係各国の反応に係る我が国の評価が明らかになることから,関係各国との信頼関係が損なわれるおそれがある。また,イラク問題について我が国政府が関係各国といかなる調整を行ったかは,将来的に類似の事案が発生し,我
が国としての立場又は政策を策定する必要が生じた場合,関係国が,我が国政府の対応等を正確に予測し,自国を利する形での効果的な外交活動を行うことが可能となるほか,イラク情勢をめぐる我が国の認識が明らかになることにより,イラク及びその周辺国との間での外交交渉において,当該関係国に対し,自国を利するための参考となり得る情報を与えることになる。
よって,
本件不開示部分11に記録された情報は,
公にすることにより,
他国との信頼関係が損なわれるおそれ及び他国との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報(情報公開法5条3号)に該当する。

本件不開示部分11に記録された情報は,公にしないことを前提とした外務省内での率直な意見交換に基づいて記載されたものである。
よって,上記の情報は,国の機関である外務省の内部における検討に関する情報であって,公にすることにより,率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある情報(情報公開法5条5号)に該当する。


本件不開示部分11に記録された情報は,これを公にすることにより,我が国政府が関係各国に働きかけを行うに当たって重視した点や対イラク武力行使に係る関心の対象等が明らかになり,将来的に類似の事案が発生した場合において,関係国が,本件不開示部分11に係る情報を我が国の今後の対応を推察するための参考とするなど,我が国の今後の外交交渉事務に支障を及ぼすおそれがある。
よって,上記の情報は,国の機関である外務省が行う事務に関する情報であって,公にすることにより,当該事務の性質上,当該事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報(情報公開法5条6号柱書き)に該当する。

エ(ア)

原告は,報告の主なポイント(甲4の2)には,日本が米国以

外の関係各国に対し,イラクによる査察無条件受入れに向けた新たな安保理決議の採択について累次働きかけを行ったことが,日本の外交努力(甲9)には,日本が米国以外の関係国に行った働きかけを含めた具体的事実が,それぞれ記載されている上,川口順子外務大臣(当時。以下川口外相という。)が新たな安保理決議の採択に向けて我が国が行った働きかけについて会見で説明し,外務省もこれを公表している旨主張する。
しかし,本件不開示部分11には,イラクによる査察無条件受入れに向けた新たな安保理決議の採択に関する記録以外のものも記録されている上,関係各国との間における具体的な外交交渉の内容(米国以外の関係各国に対し,どのような実際の働きかけに向けた事前の調整がされたか又は実際に協議が行われ,様々なレベル間での働きかけが行われてきたか等)も記載されており,我が国が対イラク武力行使に係る検討又は意思決定の方針を策定する上で,関係各国をどの国と捉え,関係各国との調整又は協議においてどのような点を重視していたかを容易に把握することができるから,原告が指摘するものの記載よりもその具体性の差が大きい。
そして,我が国政府が関係各国に対して働きかけを行った意図,働きかけに対する相手国又は関係国の反応及び働きかけに対する評価は,報告の主なポイントには記載されていないし,日本の外交努力につ
いては,
前記⑺エ(ア)と同様であるほか,本件不開示部分11には,日本の外交努力には記載のない本件検証を行うに際して特に注目すべき我が国と米国以外の関係各国との間でのやり取りや評価が,具体的かつ詳細に記録されている。
また,原告が指摘する文書等の記載と同一の内容が含まれていたとし
ても,前記⑺エ(イ)と同様,公になっている部分のみを切り分けることは困難であるし,仮に,切り分けることが可能であるとしても,当該事実が記載されること自体が一定の価値判断や評価を含み,我が国の情報分析能力や考慮事項を示すことにつながることに変わりはない。
さらに,
外務大臣の会見と本件不開示部分11とは,その内容が一致しているわけではない。
したがって,原告の主張は,失当である。
(イ)

原告は,55人が語るイラク戦争(甲11)にも日本がした関

係各国への働きかけ等が具体的に記載されている旨主張するが,前記⑻エ(ア)のとおり,上記の書籍は,本件文書1と性格が異なり,外交交渉に及ぼす影響も異なるから,原告の主張は,失当である。

項目武力行使の法的側面に係る不開示部分(本件不開示部分12)ア
本件不開示部分12は,対イラク武力行使の法的根拠についての我が国と他国との外交交渉の内容(我が国が特定の意図を持って関係各国との間で調整や外交努力を行ったこと及びその具体的態様)並びにその効果に対する評価に係る記録がされた部分であり,これを公にすることにより,他国との外交交渉の詳細が明らかになることから,他国との信頼関係が損なわれるおそれがある。また,我が国が対イラク武力行使を支持するという政策決定をするに至る上でした法的側面についての検討の方途(武力行使の法的根拠の解釈及び武力行使までの対応について複数の選択肢がある中で,我が国が武力行使を初めとする重要事項の法的根拠についてどのような視点及び方向性で解釈するか,その調整のために重要と考えている関係国及びその理由)が明らかとなるから,将来的に類似の事案が発生し,我が国としての立場又は政策を策定する必要が生じた場合,関係国が,我が国政府の政策検討,意思決定の手法,政策検討上の関心事項,我が国の今後の対応等を正確に予測し,自国を利する形での効果的な外交活動を行う
ことが可能となるほか,イラク情勢をめぐる我が国の認識が明らかになることにより,イラク及びその周辺国との間での外交交渉において,当該関係国に対し,
自国を利するための参考となり得る情報を与えることになる。
よって,
本件不開示部分12に記録された情報は,
公にすることにより,
他国との信頼関係が損なわれるおそれ及び他国との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報(情報公開法5条3号)に該当する。なお,諸外国の報告書は,各国がそれぞれの目的に基づき,判断及び実施したものであって,情報公開法上の不開示事由は,我が国にとってのおそれであるから,事情の異なる諸外国が本件文書1とは別の検証報告書等を公表しているとしても,そのことから直ちに,上記のおそれがないということにはならない。

本件不開示部分12に記録された情報は,公にしないことを前提とした外務省内での率直な意見交換に基づいて記載されたものである。
よって,上記の情報は,国の機関である外務省の内部における検討に関する情報であって,公にすることにより,率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある情報(情報公開法5条5号)に該当する。


本件不開示部分12に記録された情報は,これを公にすることにより,対イラク武力行使の合法性に係る我が国の検討の視点,関心の対象,外交上の具体的対応等が明らかになり,関係国が,将来的に類似の事案が発生した場合における我が国政府の対応を推察するための参考とするなど,我が国の今後の外交交渉事務に支障を及ぼすおそれがある。
よって,上記の情報は,国の機関である外務省が行う事務に関する情報であって,公にすることにより,当該事務の性質上,当該事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報(情報公開法5条6号柱書き)に該当する。

エ(ア)

原告は,武力行使の国際法上の合法性は国連等で公に議論されてい
る内容であり,小泉首相も記者会見でそれを説明しているから,法的側面に関する見解等は開示しないとすべき事柄ではないし,本件不開示部分12が1頁に満たない程度の分量であって,検討結果としての武力行使についての法的根拠に関する説明や一般的な記述も含まれる以上,ここに具体的で詳細な事実又は見解が織り込まれていることは想定し難い旨主張する。
しかし,本件不開示部分12には,武力行使についての法的根拠に係る一般的な記述,米国による法的根拠に係る主張又は公開の場における議論の内容が記載されているのではなく,前記アのとおりの内容が記録されているから,原告の主張は,その前提を誤るものである。また,前記⑶エ(イ)と同様,対イラク武力行使という国際政治上及び各国の安全保障政策上機微な問題に関する意思決定を行うに当たり,我が国として重要な考慮要素としていた点が鮮明に現れている部分といえ,項目分けの仕方やその記述内容を含め,記載自体が一定の価値判断や評価を伴うものとなっているのである。
したがって,原告の主張は,失当である。
(イ)

原告は,他国との外交交渉については,
日本の外交努力
(甲9)

で具体的に記載されている旨主張するが,前記(5)エ(イ)と同様,原告の主張は,失当である。
(ウ)

原告は,55人が語るイラク戦争(甲11)及び研究ノート武力行使に関する国連の法的枠組みの有効性(甲14)を挙げ,本件不開示部分12には,情報公開法5条3号及び6号に該当する事由はない旨主張するが,
55人が語るイラク戦争については,前記⑻エ(ア)のとおり,本件文書1と性格が異なり,外交交渉に及ぼす影響も異なるし,研究ノート武力行使に関する国連の法的枠組みの有効性につ

いては,それが公開の場における議論の内容,公開されている米国等の政策及び武力行使に係る学説を紹介又は検討し,武力行使に関する国連の法的枠組みの有効性を検討しているものであって,前記アのような本件不開示部分12に記録されている情報とは内容又は性質が異なるから,原告の主張は,失当である。
(エ)

原告は,①外務省が開示した文書(甲31,32)によれば,武力
行使の法的根拠は,例外なく複数の安保理決議に照らして説明されているほか,英国法務総裁による解釈(甲30)は,対イラク武力行使がされた当時に既に公にされており,日本もこれを入手して分析していたことも明らかであるから,本件不開示部分12においても,これに言及していることが想定できる,②川口外相が対イラク武力行使に関する国際法上の法的側面に係る見解を記者会見の中で述べている
(甲34)
から,
本件不開示部分12を不開示とする理由がない旨主張する。
しかし,前記アのとおり,本件不開示部分12には,武力行使の法的根拠についての我が国又は国際社会の見解という結論だけではなく,そこに至る検討の過程又は交渉の状況が具体的に記載されており,原告が指摘する文書等(甲30ないし32,34)とは異なる内容のものであるから,原告の主張は,失当である。

項目武力行使の支持の理由に係る不開示部分(本件不開示部分13)ア
本件不開示部分13は,当時の我が国を取り巻く安全保障環境等の情勢(イラクのみならず,我が国の安全保障に今なお深く関わる特定の国又は地域の情勢及びこれらの国又は地域と我が国との関係に係る我が国の評価を含む。)といった具体的かつ詳細な考慮事項を含む我が国が対イラク武力行使を支持したことに関する具体的な理由及び考慮事項が記録された部分であり,これを公にすることにより,我が国政府の対イラク武力行使の支持という政策決定を行う上で考慮した諸事項が明らかとなるところ,一
国の外交政策を予測するに際しては,国際情勢や従前の対応のみを見ても正確な予測を行い得るものではなく,いかなる事項に着目し,いかなる理由から政策決定を行ったのかという点に着目することが重要であるから,上記のような諸事項(上記のとおり,当時の我が国を取り巻く安全保障環境等の情勢も含まれている。)が明らかとなれば,将来的に類似の事案が発生し,我が国としての立場又は政策を策定する必要が生じた場合,関係国が,
我が国政府の政策検討又は意思決定の手法,
政策検討上の関心事項,
我が国の今後の対応等を,国際情勢や従前の対応のみを根拠とするよりも正確に予測し,自国を利する形での効果的な外交活動を行うことが可能となるほか,イラク情勢をめぐる我が国の認識が明らかになることにより,イラク及びその周辺国との間での外交交渉において,当該関係国に対し,自国を利するための参考となり得る情報を与えることになる。
よって,
本件不開示部分13に記録された情報は,
公にすることにより,
他国との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報(情報公開法5条3号)に該当する。

本件不開示部分13に記録された情報は,公にしないことを前提とした外務省内での率直な意見交換に基づいて記載されたものである。
よって,上記の情報は,国の機関である外務省の内部における検討に関する情報であって,公にすることにより,率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある情報(情報公開法5条5号)に該当する。


本件不開示部分13に記録された情報は,これを公にすることにより,我が国政府が対イラク武力行使を支持するという政策決定を行う上で考慮した諸事項が明らかとなるから,将来的に類似の事案が発生した場合において,関係国が,本件不開示部分13に係る情報を我が国の今後の対応を推察するための参考とするなど,我が国の今後の外交交渉事務に支障を及
ぼすおそれがある。
よって,上記の情報は,国の機関である外務省が行う事務に関する情報であって,公にすることにより,当該事務の性質上,当該事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報(情報公開法5条6号柱書き)に該当する。
エ(ア)

原告は,本件不開示部分13に記載されているのは,既に15年も
経過した過去の国際情勢等に関する事実にすぎない旨主張する。
しかし,我が国や関係国の地理的又は経済的位置付けは,15年という時間が経過しても多分に変化せず,これらの要因は我が国の安全保障環境を大きく規定しているところ,本件不開示部分13には,我が国の安全保障環境に今なお深く関係する国又は地域の情勢,これらと我が国の関係に係る我が国の評価等を踏まえて更に踏み込んだ実際的な理由が記載されているから,それが過去の時点の情勢及び評価であったとしても,これを開示することは,現在の我が国の対応を予測することにつながるものである。
したがって,原告の主張は,失当である。
(イ)

原告は,3分の1頁程度の分量しかない本件不開示部分13におい
て,対イラク武力行使に関する日本の意思決定理由及び考慮事項の具体的かつ詳細な内容が記載されているとは到底考えられない旨主張するが,前記⑶エ(イ)と同様,対イラク武力行使という国際政治上及び各国の安全保障政策上機微な問題に関する意思決定を行うに当たり,我が国として重要な考慮要素としていた点が鮮明に現れている部分といえ,項目分けの仕方やその記述内容を含め,記載自体が一定の価値判断や評価を伴うものとなっているから,原告の主張は,失当である。
(ウ)

原告は,将来的に類似の事案が発生するとの蓋然性は何ら具体的な
根拠に基づくものではなく,そもそも,類似の事案が何を指すのかも不
明確であるし,関係国についても何ら具体的に特定されていないから,日本が交渉上の不利益を被る具体的な蓋然性が認められる余地はない旨主張するが,前記(3)エ(ウ)と同様,原告の主張は,失当である。(エ)

原告は,報告の主なポイント(甲4の2)として,本件文書1

の主なポイントを外務省のウェブサイト上で公開しているから,本件文書1には公にしないことを前提としていなかった部分が存在することは明白であるとして,本件文書1が公にしないことを前提としていた旨の被告の主張が成り立ち得ない旨主張する。
しかし,報告の主なポイントについては,前記⑸エ(ア)と同様であるほか,本件不開示部分13には,報告の主なポイントには記載のない我が国が対イラク武力行使を支持した具体的な理由及び考慮事項に係る内容も含まれているから,原告の主張は,失当である。

項目国民への説明責任についての検証に係る不開示部分(本件不開示部分14)

本件不開示部分14は,
対イラク武力行使をめぐる我が国の対応に関し,
対イラク武力行使を支持することについて国民の理解を得るとの観点から,外務省内で行われた説明責任を果たすための具体的な説明手法(どのような考え方の下,どのような方法で,国内の世論形成に努めるか)に関する検討,これを踏まえて他国に対して行っていた働きかけ等の具体的な取組について,その効果も含めた詳細な検証結果が記録された部分であり,これを公にすることにより,対イラク武力行使に係る広報を行うに当たって外務省が重視していた事項等が明らかとなり,将来的に類似の事案が発生し,
我が国としての立場又は政策を策定する必要が生じた場合,
関係国が,
我が国政府の対応を推察する手がかりとしたり,イラク情勢をめぐる我が国の認識が明らかになることにより,イラク及びその周辺国との間での外交交渉において,当該関係国に対し,自国を利するための参考となり得る
情報を与えることになる。また,安全保障その他の問題で緊張関係に立つ国が,我が国の対応を妨害すべく,我が国の国内世論工作等を行う上での参考として用いることも可能となる。
よって,
本件不開示部分14に記録された情報は,
公にすることにより,
国の安全が害されるおそれ及び他国との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報(情報公開法5条3号)に該当する。

本件不開示部分14に記録された情報は,公にしないことを前提とした外務省内での率直な意見交換に基づいて記載されたものである。
よって,上記の情報は,国の機関である外務省の内部における検討に関する情報であって,公にすることにより,率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある情報(情報公開法5条5号)に該当する。なお,報告の主なポイント(甲4の2)には,本件に対する国民の理解を得るための広報の重要性は早くから認識されており,また,ホームページを含め種々の努力が払われてきたとの記載があるが,前記⑸エ(ア)と同様,そのことをもって直ちに,上記の不開示部分の全てを開示すべきことになるわけではない。


本件不開示部分14に記録された情報は,これを公にすることにより,イラク問題をめぐる我が国の検討の視点や関心の対象等が明らかになり,将来的に類似の事案が発生した場合において,関係国が,我が国の対応を推察する手がかりとなるなど,我が国の今後の外交交渉事務に支障を及ぼすおそれがある。
よって,上記の情報は,国の機関である外務省が行う事務に関する情報であって,公にすることにより,当該事務の性質上,当該事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報(情報公開法5条6号柱書き)に該当する。

エ(ア)

原告は,
国民への広報の内容はすでに公開されている旨主張するが,

本件不開示部分14に記録されている情報は公開されていない上,その一部に公開されている情報が含まれるとしても,その記載内容が取捨選択を経たものであることに留意する必要があるから,原告の主張は,失当である。
(イ)

原告は,本件不開示部分14に記録された情報は,国内向けの事柄
にとどまり,対外的又は国際的に何らかの具体的な支障が生ずるものとは到底想定できない旨主張する。
しかし,ある外交政策が国内において理解又は支持を得られているかは,当該政策の持続可能性,国際社会における説得力等に関わってくるものであり,ひいては当該政策の効果に多分に影響するものである。また,外交政策の立案及び実施過程において,国内世論及びそれを踏まえた国内への説明責任をいかなる手法を用いながら果たすかとの点は,外交政策に大きな影響を及ぼすものである。
したがって,原告の主張は,失当である。
(ウ)

原告は,将来的に類似の事案が発生するとの蓋然性は何ら具体的な
根拠に基づくものではなく,そもそも,類似の事案が何を指すのかも不明確であるし,関係国についても何ら具体的に特定されていないから,日本が交渉上の不利益を被る具体的な蓋然性が認められる余地はない旨主張するが,前記(3)エ(ウ)と同様,原告の主張は,失当である。⒂
項目情報収集・分析に係る不開示部分(本件不開示部分15)

本件不開示部分15は,情報の収集又は分析の手法及びその活用について,対イラク武力行使に係る情報収集又は分析についての改善点及び今後の改善策も含めた具体的内容(これには,対イラク武力行使に際して収集を目指していた特定の情報の収集に関する具体的態様及びそれに対する改善策を含む評価も含まれる。)が記録された部分であって,これを公にす
ることにより,我が国の情報収集能力,情報分析能力等が明らかとなり,情報収集及び分析に関する我が国の今後の指針も明らかとなるところ,情報収集は,あらゆる外交交渉の基礎となるものであって外交政策に多大な影響を与えるものである上,我が国の情報収集能力及び分析能力に関心を有する国は多く存在し,それが明らかとなれば,我が国が現に有する我が国に対する脅威の存在やその度合いを測る能力も明らかとなって我が国の安全保障にとって深刻な問題が生ずるから,安全保障に関する問題はもとより,我が国と何らかの問題で緊張関係に立つ関係国との交渉上不利益を被るおそれがあるだけではなく,我が国の安全が害されるおそれがある。よって,
本件不開示部分15に記録された情報は,
公にすることにより,
国の安全が害されるおそれ及び他国との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報(情報公開法5条3号)に該当する。

本件不開示部分15に記録された情報は,公にしないことを前提とした外務省内での率直な意見交換に基づいて記載されたものである。
よって,上記の情報は,国の機関である外務省の内部における検討に関する情報であって,公にすることにより,率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある情報(情報公開法5条5号)に該当する。


本件不開示部分15に記録された情報は,これを公にすることにより,外務省の情報収集源及び今後情報源として活用すべき関係先が明らかとなるから,安全保障に関する問題はもとより,我が国と何らかの問題で緊張関係に立つ関係国との交渉上不利益を被るおそれもあるなど,我が国の今後の外交交渉事務に支障を及ぼすおそれがある。
よって,上記の情報は,国の機関である外務省が行う事務に関する情報であって,公にすることにより,当該事務の性質上,当該事務の適正な遂
行に支障を及ぼすおそれがある情報(情報公開法5条6号柱書き)に該当する。
エ(ア)

原告は,①どのような国との,どのような交渉において,どのよう
な不利益が生じ得るのかについて何ら具体的な主張をするものではなく,交渉上不利益を被るおそれ又は外交交渉事務の適正な遂行に支障が生じるおそれの具体的な蓋然性が認められる余地はない,②情報源そのものを明らかにすることと当該情報源から得た情報の内容を明らかにすることは,全く別問題であり,これらを峻別することなく,一律に不開示とする決定は明らかに合理性を欠くなどと主張するが前記ア及びウに述べたところに加え,情報収集源又は情報の内容のいずれを公にした場合であっても,信頼関係が損なわれて,情報収集源等からの協力を得られなくなるおそれがあることにも照らすと,原告の主張は,失当である。(イ)

原告は,情報収集源及び情報の内容を公開した場合に信頼関係が損
なわれるのは,当該情報収集源が収集源であること及び提供した情報の内容のいずれの公開をも拒否している場合である旨主張するが,国際政治上及び各国の安全保障政策上機微な問題に係る情報提供は,情報内容や情報提供元を公にしないことが当然の国際慣行であり,情報提供元が公にすることを拒否している場合に限って秘密保持が要請されるわけではないから,原告の主張は,失当である。
(ウ)

原告は,
本件不開示部分15の分量は1枚足らずのものであり,
報告の主なポイント(甲4の2)において,半頁程度の分量にわたって情報収集源又は今後情報源として活用すべき関係先を含む具体的なポイントが公表されていることからすると,本件不開示部分15に記録されている情報のおおよその内容は報告の主なポイントにおいて既に公表されていると解するのが自然であり,当該部分を全て不開示とする合理的理由がなく,情報収集事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれの具
体的な蓋然性もない旨主張するが,前記⑶エ(イ)と同様,対イラク武力行使という国際政治上及び各国の安全保障政策上機微な問題に関する意思決定を行うに当たり,我が国として重要な考慮要素としていた点が鮮明に現れている部分といえ,項目分けの仕方やその記述内容を含め,記載自体が一定の価値判断や評価を伴うものとなっている上,前記⑸エ(ア)と同様,報告の主なポイントに一定の記載が存することをもって直ちに,上記の不開示部分の全てを開示すべきことになるわけでもないから,原告の主張は,失当である。
(エ)

原告は,15年の時の経過を理由に,本件不開示部分15を不開示
とする理由がない旨主張するが,前記⒀エ(ア)と同様,我が国や関係国の地理的及び経済的位置付けは時の経過により変化しないし,本件不開示部分15のうち我が国の課題に関する記載は,まさに現在の我が国の政策に関わる内容であるから,原告の主張は,失当である。
(16)

項目政策決定・実施に係る不開示部分(本件不開示部分16)
本件不開示部分16は,外務省内及び政府部内における対イラク武力行使に係る政策検討又は意思決定過程の具体的な内容及びそれに対する積極又は消極両面の評価,イラク問題に関する関係各国との間で行われたやり取り及びその外交的効果等に加え,大量破壊兵器の存否に関する我が国の検討に対する分析及び評価が記録された部分であり,これを公にすることにより,我が国の政策検討の手法及び政策検討上の関心事項が明らかとなる上,対イラク武力行使の問題に係る政策検討又は意思決定における問題点及びそれに対する改善策についても明らかとなるところ,一国の外交政策を予測するに際しては,国際情勢又は従前の対応のみを見ても正確な予測を行い得るものではなく,いかなる事項に着目し,いかなる理由から政策決定を行ったのかという点に着目することが重要であるから,我が国政府自身が行った検証の結果として,
上記のような諸事項が明らかとなれば,

将来的に類似の事案が発生し,我が国としての立場又は政策を策定する必要が生じた場合,関係国が,我が国政府の政策検討又は意思決定の手法,政策検討上の関心事項,我が国の今後の対応等を,国際情勢又は従前の対応のみを根拠とするよりも正確に予測し,自国を利する形での効果的な外交活動を行うことが可能となるほか,イラク情勢をめぐる我が国の認識が明らかになることにより,イラク及びその周辺国との間での外交交渉において,当該関係国に対し,自国を利するための参考となり得る情報を与えることになる。また,本件不開示部分16には,対イラク武力行使をめぐって実際に行われた関係各国との連携状況及びそれに対する外交的効果(他国の対応への言及も含む。)も記載されているから,関係各国との信頼関係が損なわれるおそれがある。
よって,
本件不開示部分16に記録された情報は,
公にすることにより,
他国との信頼関係が損なわれるおそれ及び他国との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報(情報公開法5条3号)に該当する。

本件不開示部分16に記録された情報は,公にしないことを前提とした外務省内での率直な意見交換に基づいて記載されたものである。
よって,上記の情報は,国の機関である外務省の内部における検討に関する情報であって,公にすることにより,率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある情報(情報公開法5条5号)に該当する。


本件不開示部分16に記録された情報は,これを公にすることにより,我が国の政策検討の手法及び政策検討上の関心事項が明らかになる上,対イラク武力行使の問題に係る政策検討又は意思決定における問題点及びそれに対する改善策についても明らかとなることから,将来的に類似の事案が発生した場合,他国が,我が国政府の政策検討又は意思決定の手法,政
策検討上の関心事項等を具体的に推察することが可能となり,これらを我が国の今後の対応の対応を推察するための参考材料として用いるなど,我が国の今後の外交交渉事務に支障を及ぼすおそれがある。
よって,上記の情報は,国の機関である外務省が行う事務に関する情報であって,公にすることにより,当該事務の性質上,当該事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報(情報公開法5条6号柱書き)に該当する。
エ(ア)

原告は,将来的に類似の事案が発生するとの蓋然性は何ら具体的な
根拠に基づくものではなく,そもそも,類似の事案が何を指すのかも不明確であるし,関係国並びにイラク及びその周辺国についても何ら具体的に特定されていないから,日本が交渉上の不利益を被る具体的な蓋然性が認められる余地はない旨主張するが,前記(3)エ(ウ)と同様,原告の主張は,失当である。
(イ)

原告は,報告の主なポイント(甲4の2)において,関係各国

との連携状況等が公表されているほか,オランダが公表している検証報告書においても,政策の経緯が詳細に公表されている旨のほか,本件不開示部分16の分量が1頁もないことからすると,本件不開示部分16に対イラク武力行使に関する日本政府部内での検討の内容,その態様,教訓等の具体的かつ詳細な内容が記録されているとは到底考えられず,我が国がこれを開示したからといって関係各国との信頼関係が損なわれる具体的な蓋然性はない旨主張する。
しかし,報告の主なポイントについては,前記⑸エ(ア)と同様であって,そのことをもって直ちに,上記の不開示部分の全てを開示すべきことになるわけではないし,また,対イラク武力行使について行われた他国の調査は,他国の立場で,他国特有の視点に基づいて行われたものであって,我が国が行った本件検証とは別個のものであるから,我が
国が行った本件検証と同列に論ずることはできず,本件文書1の内容を公にした場合に生ずる影響を検討するに当たって,
前記⑻エ(ア)と同様,
他国の調査結果及びその内容をもって直ちに,本件検証の内容も同様に公表すべきとの結論が導き出されるものではない。さらに,分量が少ない点については,本件不開示部分16は,前記⑶エ(イ)と同様,対イラク武力行使という国際政治上及び各国の安全保障政策上機微な問題に関する意思決定を行うに当たり,我が国として重要な考慮要素としていた点が鮮明に現れている部分といえ,項目分けの仕方やその記述内容を含め,
記載自体が一定の価値判断や評価を伴うものとなっているのである。したがって,原告の主張は,失当である。
(ウ)

原告は,15年の時の経過を理由に,本件不開示部分16を不開示
とする理由がない旨主張するが,前記⒀エ(ア)と同様,我が国や関係国の地理的及び経済的位置付けは時の経過により変化しないこと等に照らし,原告の主張は,失当である。

項目国民への説明責任に係る不開示部分(本件不開示部分17)

本件不開示部分17は,イラク問題に関する国民への広報,国会議員への説明等,外務省が行った各種取組の効果についての評価等が記録された部分であり,これを公にすることにより,外務省内で行われた説明責任を果たすための具体的手法,目指すべき理解のあり方に関する検討,イラク問題に関する広報活動の具体的な取組,国会議員等への説明を行うに当たって外務省が重視していた事項及び今後の改善に向けた提言が明らかとなる。そうすると,将来的に類似の事案が発生し,我が国としての立場又は政策を策定する必要が生じた場合,当該武力行使について直接又は間接の利害関係を有する関係国が我が国の対応を推察するに際しては,国際情勢又は既に公開されている従前の我が国の対応を見ても正確な予測を行い得るものではなく,我が国がいかなる事項等を重視していたかが重要である
から,我が国政府自身が行った検証の結果として,上記の事項が明らかとなれば,関係国が対イラク武力行使に関して我が国政府が重視していた事項を参考として用いることによって,我が国が執る対応等を正確に予測し(なお,
本件不開示部分17には,
今後に向けた提言も含まれているから,
今後の我が国の対応を予測することが一層可能となる。),自国を利する形での効果的な外交活動を行うことが可能となるほか,イラク情勢をめぐる我が国の認識が明らかになることにより,イラク及びその周辺国との間での外交交渉において,当該関係国に対し,自国を利するための参考となり得る情報を与えることになる。また,安全保障その他の問題で緊張関係に立つ国が我が国の対応を妨害すべく我が国の国内世論工作等を行う上での参考として用いることも可能となる。
よって,
本件不開示部分17に記録された情報は,
公にすることにより,
国の安全が害されるおそれ及び他国との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報(情報公開法5条3号)に該当する。

本件不開示部分17に記録された情報は,公にしないことを前提とした外務省内での率直な意見交換に基づいて記載されたものである。
よって,上記の情報は,国の機関である外務省の内部における検討に関する情報であって,公にすることにより,率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある情報(情報公開法5条5号)に該当する。


本件不開示部分17に記録された情報は,これを公にすることにより,イラク問題をめぐる我が国の関心の対象,政策決定に当たり重視していた事項等が明らかになることから,他国が,将来的に類似の事案が発生した場合における我が国政府の対応を推察する手がかりとしたり,安全保障その他の問題で緊張関係に立つ国が,我が国の対応を妨害すべく我が国の国
内世論工作等を行う上での参考として用いたりするなど,我が国の今後の外交交渉事務に支障を及ぼすおそれがある。
よって,上記の情報は,国の機関である外務省が行う事務に関する情報であって,公にすることにより,当該事務の性質上,当該事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報(情報公開法5条6号柱書き)に該当する。
エ(ア)

原告は,将来的に類似の事案が発生するとの蓋然性は何ら具体的な
根拠に基づくものではなく,そもそも,類似の事案が何を指すのかも不明確であるし,関係国並びにイラク及びその周辺国についても何ら具体的に特定されていないから,日本が交渉上の不利益を被る具体的な蓋然性が認められる余地はない旨主張するが,
前記(3)エ(ア)及び(ウ)と同様,
原告の主張は,失当である。
(イ)

原告は,国民への広報の内容は既に公開されている,本件不開示部
分17にも,報告の主なポイント(甲4の2)において公表されている情報に対応する記載がされているはずであるなどと主張するが,本件不開示部分17には,イラク問題に関する各種広報活動及び国会議員等への説明に関するその効果も含めた検証結果,今後に向けた改善点等についての具体的な提言等が記録されており,これらがそのまま公開されているわけではないし,報告の主なポイント(甲4の2)においても,前記⑸エ(ア)と同様であるだけでなく,その記載の内容も

国民への説明方法等につき,一層の改善をする余地があると思われる。

との抽象的な記述にとどまっているから,原告の主張は,失当である。(ウ)

原告は,本件不開示部分17は,日本の国民に対する説明責任のあ
り方という国内向けの事柄にとどまり,対イラク武力行使に対する国民の理解を得るとの観点から関係国に対して行った働きかけについては記載がなく,対外的又は国際的に何らかの具体的な支障が生ずるものとは
到底想定できない旨主張するが,前記⒁エ(イ)と同様,ある外交政策が国内において理解又は支持を得られているかは,
当該政策の持続可能性,
国際社会における説得力等に関わってくるものであり,ひいては当該政策の効果に多分に影響するものである。また,外交政策の立案又は実施過程において,国内世論及びそれを踏まえた国内への説明責任をいかなる手法を用いながら果たすかとの点は,外交政策に大きな影響を及ぼすものである。そして,外交政策と国民に向けての説明は表裏一体を成すものであって,関係国への働きかけに関する記述がないことをもって直ちに外交政策又は対外的若しくは国際的影響がないともいえない。したがって,原告の主張は,失当である。

項目参考資料2に係る不開示部分(本件不開示部分18)

本件文書1自体が非公開を前提として集約された情報を基礎とする文書であって,
対イラク武力行使の発生時から10年余りしか経過しておらず,
我が国を含む関係国において,当時の意思決定に関与していた者の多くが引き続き外交活動に従事している中で,非公開を前提としている検証チームの構成員の氏名等に関する情報を公にすれば,本件検証に関する情報を得ようとする者等から,本件検証の際に行われた議論の全体を把握している構成員に対して不当な働きかけ(工作活動)が行われたり,この種の作業が行われる際に関与する人員の所属部署が推定されて将来同種の作業が行われる際に外交工作の対象とすべき人員が推測されたり,上記の構成員から引継ぎを受けたことを前提に本件検証に関する情報を得ようとする者等から現在その地位に就く者に対する不当な働きかけが行われたりするおそれは,元々氏名を公表されている者と比較してより大きいほか,今後,何らかの検証等を行う場合において,構成員が,いずれは自己に関する情報が公にされることをおそれ,その結果,構成員から忌憚のない意見を得ることが困難となるおそれもあり,今後の政府部内での協議,検討,検証
等において率直な意見交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある。
よって,本件不開示部分18に記録された情報は,国の機関である外務省の内部における検討に関する情報であって,公にすることにより,率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある情報(情報公開法5条5号)に該当する。

検証チームの構成員が特定される情報内容が後日に公開されることが予想される事態となれば,この種の作業が行われる際に関与する人員の所属部署が推定されて将来同種の作業が行われる際に外交工作の対象とすべき人員が推測されたり,上記の構成員から引き継ぎを受けたことを前提に本件検証に関する情報を得ようとする者等から現在その地位に就く者に対する不当な働きかけが行われたりするおそれがあることから,構成員から外交交渉に関する率直かつ忌憚のない意見を得ることが困難となるおそれがあり,今後の政府部内における協議,検討,検証等の事務を行う上で多大な支障が生ずるおそれがある。
よって,上記の情報は,国の機関である外務省が行う事務に関する情報であって,公にすることにより,当該事務の性質上,当該事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報(情報公開法5条6号柱書き)に該当する。


原告は,職員に対して不当な働きかけ(工作活動)を行うのであれば,全体を統括していることで情報が集中している者や現在その地位に就いている者に行うことが直截的かつ効率的であるから,その余の構成員について氏名を公表しない被告の主張は合理的ではない旨主張する。
しかし,在アメリカ合衆国大使館(以下在米大使館という。)特命全権公使に不当な働きかけを行うことが効率的であるなどというのは原告の独自の見解であるし,検証チームの構成員は,本件文書1に記載されて
いる以上の詳細な内容を知る者であるから,検証チームの構成員に不当な働きかけをする動機は十分にあるといえる。
したがって,原告の主張は,失当である。
(原告らの主張の要点)
1
本件文書1の1枚目21行目17文字目から22行目まで及び参考資料3に係る不開示部分(本件不開示部分1)に不開示事由がないこと
次のとおり,被告は,本件不開示部分1について,抽象的に支障を挙げるだけで,外務大臣の判断の公正妥当を担保するに足りる可能な限り具体的な事実関係を主張立証した上で,開示しないことの利益が開示することの公益性を上回ることにつき,合理的根拠を示したものとは,到底いえない。
(1)

3号該当性について

ア(ア)

被告は,本件不開示部分1を公にすることにより,我が国政府の対
イラク武力行使の問題に係る関心事項を推察することが可能となる旨主張するが,あるテーマに関するある時点における国の関心事項を推察することができたとしても,そのことが,情報公開法5条3号にいうおそれにつながる旨の被告の主張には飛躍がある。その点をおくとしても,報告書本文や資料の具体的名称,内容を離れて資料の数と標目だけから関心事項を把握することはできない。
(イ)

被告は,本件不開示部分1に含まれる作成時期及び資料の内容を示
す標目を参照すれば,情報収集先又は収集した情報の内容を把握することができる旨主張するが,どのような理由により情報収集先又は収集した内容が明らかになるのかは個別具体的に明らかにしていないだけではなく,情報収集先として想定される国名又は機関名は,米国若しくは欧州各国又は国連の機関である国連大量破壊兵器廃棄特別委員会,国連監視検証査察委員会等であることは合理的に予想できる上,標目に情報収集先又は収集した情報内容を示すものが含まれることを意味するにすぎ
ず,それらが含まれない標目もあることを意味するものでもあるから,被告の主張は,失当である。
(ウ)

被告は,本件不開示部分1を公にすることにより,いかなる種類,
性質の資料をいかなる数収集したかなどといったことが明らかとなって我が国政府の情報収集能力(関係各国等の情報収集先を含む。)が明らかとなる旨主張するが,本件不開示部分1に記載されているのは,外務省が収集した資料の全てではなく,本件検証をするに当たって外務省が参考にした資料にすぎず,入手経過や入手方法,さらにここで挙げられているものが収集した資料の全てなのか,一部なのか,一部だとしてどのように選別した一部なのかが記載されているわけではないから,資料の種類,性質及び数を明らかにすることが直ちに政府の情報収集能力を明らかにすることにはならない。仮に,政府の情報収集能力を推測し得る資料等があるならば,それを特定した上で不開示事由を主張すべきであり,参考にした資料の数や標目により情報収集能力が推察することができたとしても,極めて抽象的なものにとどまり,不開示事由を基礎付ける事情にはならない。
(エ)

被告は,本件不開示部分1を公にした場合には,検討又は意思決定
の前提となる資料(作成時期と資料の内容を示す標目)が明らかになることにより対イラク武力行使の問題に係る検討,意思決定過程の概略が明らかとなる旨主張するが,前記(ア)から(ウ)までと同様,参考にした資料の数及び標目だけで,検討又は意思決定の過程の概略が明らかになるなどということは通常あり得ず,論理にも飛躍があり,失当である。(オ)

被告は,多数の標目全体を総覧及び分析することで,情報収集先が
どの程度多岐にわたっているか,情報収集先となっていない国若しくは機関がどこか,又は重点的な情報収集先となっている国若しくは機関はどこかなどを読み取ることができるため,我が国政府の情報源及び情報
収集能力が明らかとなるほか,本件不開示部分1には,資料の標目ごとにその作成時期が記載されているため,当該資料作成の前提となった外交活動の時期や,特定の時期に集中して資料が作成されている状況及びそれに対応する外交活動や国際情勢などを把握する材料となるところ,対イラク武力行使との関係では,対イラク武力行使をめぐる情勢が展開する中,我が国がいかなる節目においていかなる情報収集先からいかなる内容の情報を得ていたか若しくは得ようと試みていたか,又は我が国が当該情報をどの程度重視していたかを把握することができ,対イラク武力行使の問題に係る検討又は意思決定過程の方針及び概略が明らかとなる旨主張する。
しかし,被告の主張するところは,公に知られることが懸念される情報を推測する手がかりが本件不開示部分1に記録されているということと解されるが,諸外国の報告書は,被告が公に知られることを懸念する内容それ自体に相当する事項を詳細に報告し公表しているから,推測の材料が断片的に明らかになるという程度の事情で,将来起こるかどうかも分からない事態を念頭に他国との交渉上不利益を被るおそれや我が国の安全が害されるおそれがあるとはいえない。
イ(ア)

被告は,本件文書1添付参考資料3に係る不開示部分について,関
係各国の高官の氏名を記載したものについては,特定の時期に当該高官から情報提供がされたことが判明し,これを公にすることにより,他国等との信頼関係が損なわれるおそれがある旨主張するが,外交を任務とする者が,その職にある期間に諸外国と連絡を取り合うのは当たり前のことであるし,高官であれば少なくとも当事国においてその氏名が公表されているのが通常であろうから,
被告の主張には具体的な根拠がない。
(イ)

被告は,対イラク武力行使をめぐる情勢という国際政治上及び各国
の安全保障政策上機微な問題に係る情報提供は,情報提供先との信頼関
係の下,情報内容や情報提供元を公にしないことが当然の国際慣行である旨主張するが,諸外国の報告書では,各国の高官の氏名を特定した上で,特定の日時に会談したことやその内容が明らかにされている(甲23の1・3)から,被告が主張するような国際慣行は存在しない。(2)

6号該当性について
被告は,本件文書1が非公開を前提として作成されたものであり,その内
容が後日公開されることが予想される事態となれば,今後,同種資料を作成することがちゅうちょされ,その結果として政府部内において情報の共有を図ることが困難となり,政府部内における協議,検討をする上で多大な支障が生ずる旨主張するが,本件文書1が非公開を前提として作成されたものとする根拠が明らかではない。また,非公開を前提としていたとしても,それを理由として直ちに文書の不開示が正当化することができるわけではない。また,外務省の担当者らが資料の標目を開示することによって同種資料を作成することをちゅうちょするという事態は,現実問題として考え難い。2
本件文書1の1枚目の脚注3行目から6行目までに係る不開示部分(本件不開示部分2)に不開示事由がないこと
次のとおり,被告は,本件不開示部分2について,抽象的に開示することの支障を挙げるだけで,外務大臣の判断の公正妥当を担保するに足りる可能な限り具体的な事実関係を主張立証した上で,開示しないことの利益が開示することの公益性を上回ることにつき,
合理的根拠を示したものとは,
到底いえない。
(1)

5号該当性について
被告は,非公開を前提に実施されたインタビューの対象者に関する情報を公にすれば,本件検証に関する情報を得ようとする者等からインタビューの対象者に対して不当な働きかけが行われるおそれがある,今後何らかの検証等を行う場合において,インタビュー対象者等の関係者がいずれは自己に関する情報が公にされることをおそれ,関係者から忌憚のない意見
を得ることが困難となるおそれがある旨主張するが,不当な働きかけがいかなる事態を想定しているのか不明であって,極めて抽象的な想像にすぎないから,被告の主張は,杞憂である。また,仮に,インタビューの対象者が工作活動の対象になるとすると,それは,その者が対イラク武力行使当時の意思決定に関与していた事実があるからであると考えられるところ,そのような者の肩書きは,情報公開請求により既に開示されており(甲17,18),それらの者の氏名を特定することも容易であるから,被告の主張は,全く根拠がない。

被告は,対イラク武力行使から約10年後に,我が国の対イラク武力行使に係る対応を検証するためのインタビューの対象者として選定されることは,対イラク武力行使に関する意思決定において実体的な関与があったことを推測させるものであり,これが明らかになることは,原告が指摘する資料の記載とは全く性質を異にするのであって,工作活動や脅迫の対象となる蓋然性がより高いということができる旨主張する。
しかし,対イラク武力行使に関する意思決定を政府が現に検討している時点で幹部だった立場の者の氏名は,肩書きとともに当該決定があった後直ちに明らかになっていたところ,その後にこれらの幹部の立場にあった者に対して脅迫がされたとか,工作活動がされたとかいう事実は存在しないから,対イラク武力行使がされてから10年以上経過した後にインタビューの対象者になったからといって,対イラク武力行使の意思決定への関与を理由に脅迫されたり,工作活動がされたりするとは,到底考えられない。また,対イラク武力行使に関する意思決定をした際に日本政府の幹部の立場にあった者に対して工作活動や脅迫の対象とするよりも,今後される意思決定に不当な圧力をかけようとしてそのような働きかけをする危険性の方がはるかに高いはずであるから,被告の主張は,誤りである。
(2)

6号該当性について

被告は,本件不開示部分2が非公開を前提として実施されたインタビューの対象者に関するものである旨主張するが,前記1(2)と同様,非公開を前提として実施されたものとする根拠が明らかではない上,インタビューの対象者に関するものも,氏名及び肩書きにすぎないのであり,インタビューされたこと自体を秘密にしないと率直な意見が述べられないというのが希有な事態であるといえることからすると,被告が主張するようなおそれは,極めて抽象的なものにすぎない。
3
項目国際社会の情勢に係る不開示部分(本件不開示部分3)に不開示事由がないこと
次のとおり,被告は,本件不開示部分3について,抽象的に支障を挙げるだけで,外務大臣の判断の公正妥当を担保するに足りる可能な限り具体的な事実関係を主張立証した上で,開示しないことの利益が開示することの公益性を上回ることにつき,合理的根拠を示したものとは,到底いえない。
(1)

3号該当性
被告は,本件不開示部分3を公にすることにより,我が国の情報収集能力,情報分析能力等を推察することが可能となる旨主張するが,前記1(1)と同様である上,国際社会の情勢という大きな主題について,僅か1頁程度にまとめた内容から,情報収集能力,情報分析能力等を推察することなど不可能であるし,仮に推察することができたとしても,合理的な推察とはいえず,不開示事由の存否の判断に際して考慮することができる事項ではない。


被告は,①本件不開示部分3が,我が国の対応を検討する上で重要であった考慮要素を項目分けを行いながら,
要点を絞って記載した部分であり,
対イラク武力行使という国際政治上及び各国の安全保障政策上機微な問題に関する意思決定を行うに当たり,我が国として重要な考慮要素としていた点が鮮明に現れている部分といえ,項目分けの仕方やその記述内容を含
め,記載自体が一定の価値判断や評価を伴っている,②3つの項目に分かれている本件不開示部分3自体に,我が国が,その当時,どのような国際情勢認識の中で,どのような比較衡量,判断を行い,イラクをめぐる政策を検討していたかが如実に表れている,③外交活動において,自己の認識や検討内容が明らかになることは,自らの懸念や行動の予見可能性を関係国にさらすことを意味し,これが将来の交渉戦略上好ましくないことは明らかであるなどとして,本件不開示部分3を公にすることにより,外務省が当時のイラク情勢をめぐる諸事情の中でどの国,地域及び側面に焦点を当てていたかが明らかになり,将来的に類似の事案が発生した場合,関係国が我が国政府の政策検討,意思決定の手法,政策検討上の関心事項,さらには我が国の今後の対応等を正確に予測し,自国を利する形での効果的な外交活動を行うことが可能になる旨主張する。
しかし,国又は外務省が,どの国又は地域に焦点を当てていたかという事情だけで,我が国の今後の対応等を正確に予測したり,自国を利する形での効果的な外交活動を行うことが可能になったりするとは考えられない上,本件不開示部分3の各項目の分量は,それぞれ数行から十数行程度のものであり,この程度の分量の記載で,我が国が,その当時,どのような国際情勢認識の中で,どのような比較衡量及び判断を行い,イラクをめぐる政策を検討していたかを他国が正確に把握でき,しかもそれを将来の類似の事案において応用して他国に有利に利用するとも到底考えられないから,本件不開示部分3の内容を関係国に把握されたからといって,外交交渉戦略等の場面において,日本に不利益が生ずる具体的な危険を推認することはできない。また,将来的に類似の事案が発生する蓋然性があるとの具体的な根拠はなく,類似の事案についても具体的に特定されていないから,交渉上の不利益を被る具体的な蓋然性があるとも認められない。ウ
被告は,本件不開示部分3に係る情報には,関係国又は地域の政治情勢
及び安全保障関連情勢に関する我が国政府の率直な分析,評価等が記載されていることから,これを公にすることにより,関係国との信頼関係が損なわれるおそれがある旨主張するが,関係国の対外政策に関する分析又は評価に言及するだけで,
当該国との信頼関係が損なわれるとは考え難いし,
仮に,そのような事態が生ずるとすれば,それは,関係国の対外政策に言及した内容が,一般には想定し難い特異な評価等を含む場合であろうが,そうであればその事情を具体的に主張すべきである。
(2)

5号該当性
被告は,本件不開示部分3が公にしないことを前提とした外務省内での率
直な意見交換に基づき記載されたものであり,これを公にすることにより,外務省内での率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある旨主張する。
しかし,いかなる事実をもって公にしないことを前提としたのか,いかなる事実をもって公にしないことを前提とした意見交換をしたのか,全く具体的な説明がないところ,単に,外務省内での検討過程を経たことをもって上記のような主張をするのであれば,行政庁の内部で作成された文書のほとんどが情報公開法5条5号により不開示とすることができることになるから,同号を不当に拡大する解釈である。
(3)

6号該当性
被告は,本件不開示部分3を公にすることにより,イラク情勢をめぐる我
が国の検討の視点や関心の対象等が明らかになり,将来的に類似の事案が発生した場合,関係国がこれらの情報を我が国の今後の対応を正確に予測するために用いるなど,我が国の今後の外交交渉事務に支障を及ぼすおそれがある旨主張するが,本件不開示部分3は,前記(1)アのとおり,国際社会の情勢という大きな主題について,僅か1頁程度にまとめた内容であるから,仮に,これを公にすることにより,イラク情勢をめぐる我が国の検討の視点
や関心の対象等が明らかになったとしても,極めて限定的,かつ,抽象的なものであって,今後の外交交渉事務に支障を及ぼすということは想定困難である。また,前記(1)イと同様,類似の事案や関係国が具体的に特定されておらず,外交交渉上の不利益を被る具体的な蓋然性が認められる余地はない。
4
項目日本の状況に係る不開示部分(本件不開示部分4)に不開示事由がないこと
本件不開示部分4については,
本件文書1を要約した
報告の主なポイント
(甲4の2)にも〈我が国の外交努力〉として,1頁分以上の記述がある一方で,本件不開示部分4は数行程度の分量であって,本件不開示部分4の記述の大半は,報告の主なポイントにおいて明らかにされていると考えるのが合理的であるから,報告の主なポイントにおける記載と重複する部分については,これを不開示とする理由は全くない。
そして,次のとおり,被告は,本件不開示部分4について,抽象的に支障を挙げるだけで,外務大臣の判断の公正妥当を担保するに足りる可能な限り具体的な事実関係を主張立証した上で,開示しないことの利益が開示することの公益性を上回ることにつき,合理的根拠を示したものとは,到底いえない。(1)

3号該当性について
被告は,本件不開示部分4には,対イラク武力行使への我が国の対応を検討する上で重要な背景となった対イラク武力行使前後の我が国の外交的努力を中心とした我が国を取り巻く情勢(当時の我が国の政府が行った外交及び安全保障上の取組等に係る内容であって,当時我が国が安全保障上の懸念として認識していたイラク以外の特定の地域に係る情勢に関する記述を含む。)についての記述であり,公にすることにより,外交及び安全保障関係における我が国の関心事項及び政策決定において我が国が考慮している事項が明らかとなるから,我が国の安全保障及びそれに関係する関
係国との交渉において,関係国が,本件不開示部分4に係る情報を参考として用いることが可能となって,他国との交渉上不利益を被るおそれがある上,我が国の安全が害されるおそれもある旨主張する。
しかし,仮にあるテーマに関するある時点における日本の関心事項等が明らかになったとしても,そのことが,情報公開法5条3号にいうおそれにつながるとする被告の主張には飛躍があり,不開示を正当化する合理的根拠があるとはいえない。そして,本件不開示部分4の分量が数行程度である以上,被告が指摘するような壮大なテーマや内容を具体的かつ詳細に書き尽くすことができるはずがないのであって,これを公にすることによって,外交及び安全保障関係における我が国の関心事項並びに政策決定において我が国が考慮している事項を推測するのは困難である。仮に,これを推測することができたとしても,上記の程度の分量の記載から推測することができる事項を関係国が参考として用いることは考え難く,他国との交渉上不利益を被るおそれや,我が国の安全が害されるおそれも,極めて抽象的なものにとどまる。
外務省が既に公にしている資料
(甲7,
9)
における日本の安全保障上の取組や安全保障に関する日本の見解に係る記載が相当程度の分量に及ぶことからして,本件不開示部分4がそれらの公にされている資料の記載と相当程度重複していることが明らかである。イ
被告は,本件不開示部分4には,イラクではない特定の地域に係る情勢に関する記述が含まれているが,当該記載は,我が国が対イラク武力行使への対応を検討する過程において特に重要であった内容であり,これが公にされた場合,我が国の関心事項や政策決定における考慮事項が明らかになる旨主張するが,既に開示された事項は全て公知の事実を簡潔かつ客観的に記載したにすぎないものであり,これに続けて記載された僅か4行程度の本件不開示部分4から,我が国の関心事項や政策決定における考慮事項を把握できるとしても,およそ抽象的なレベルにとどまるから,被告が
主張するようなおそれが生ずるとは到底考えられない。
(2)

5号該当性について
被告は,本件不開示部分4が公にしないことを前提とした外務省内での率
直な意見交換に基づき記載されたものであり,これを公にすることにより,外務省内での率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある旨主張する。
しかし,前記3(2)と同様,いかなる事実をもって公にしないことを前提としたのか,いかなる事実をもって公にしないことを前提とした意見交換をしたのか,全く具体的な説明がないところ,単に,外務省内での検討過程を経たことをもって上記のような主張をするのであれば,行政庁の内部で作成された文書のほとんどが情報公開法5条5号により不開示とすることができることになるから,同号を不当に拡大する解釈である。
(3)

6号該当性について
被告は,本件不開示部分4を公にすることにより,外交及び安全保障関係における我が国の関心事項及び政策決定において我が国が考慮している事項が明らかとなるから,我が国の安全保障及びそれに関連する関係国との交渉において,関係国が,本件不開示部分4に係る情報を参考として用いることによって我が国の今後の対応を推察することが可能となり,我が国の今後の外交交渉事務に支障を及ぼすおそれがある旨主張する。しかし,前記(1)アと同様,極めて抽象的な支障を主張するものにすぎないから,不開示事由に該当するとはいえない。


被告は,僅か数行程度の記載であっても,対イラク武力行使についての我が国の対応を検討する上で重要な背景事情となった我が国の外交的努力を中心とした我が国を取り巻く状況が,取捨選択の上で記載されている旨主張するが,この程度の分量の記載であれば,前記(1)アのとおり,既に公にされている資料の中に重複する記載がないことの方が不自然であるから,
被告の主張は,失当である。
5
項目
対イラク武力行使支持に至る我が国政府の検討過程・外交努力の概観に係る不開示部分(本件不開示部分5)に不開示事由がないこと
本件不開示部分5については,
本件文書1を要約した
報告の主なポイント
(甲4の2)にも,被告が主張する記載内容が登場しているから,報告の主なポイントにおける記載と重複する部分を不開示とする理由は全くない。また,外務省は,対イラク武力行使に至る時期に外務省の関係者が,どの国とどのような会談をしたのかという事実の詳細を公表しており日本の外交努力(

甲9),本件不開示部分5に記載されている客観的な事情は,これと大部分が重複しているものと考えられる。また,本件不開示部分5の分量からすると,報告の主なポイントの記載よりも具体的かつ詳細になっていることはあり得ない。
そして,次のとおり,被告は,本件不開示部分5について,抽象的に支障を挙げるだけで,外務大臣の判断の公正妥当を担保するに足りる可能な限り具体的な事実関係を主張立証した上で,開示しないことの利益が開示することの公益性を上回ることにつき,合理的根拠を示したものとは,到底いえない。(1)

3号該当性について

ア(ア)

被告は,本件不開示部分5を公にすることにより,我が国の情報収
集能力,情報分析能力等を推察することが可能となるだけではなく,外交及び安全保障関係における我が国の関心事項及び政策決定において我が国が考慮している事項が明らかとなるから,関係国が,自国を利する形での効果的な外交活動を行うことが可能となるほか,我が国の安全保障及びそれに関連する関係国との交渉において,関係国が,本件不開示部分5に係る情報を参考として用いることが可能となって,他国との交渉上不利益を被るおそれがある上,我が国の安全が害されるおそれもある旨主張するが,前記1(1)と同様である上,本件不開示部分5に係る分
量が2頁半程度であることを踏まえると,これを公にすることによって明らかになる内容もたかが知れているのであり,日本の情報収集能力,情報分析能力等を推察することなど不可能であるし,仮に推測することができたとしても,精度の高い推測とはいえず,極めて抽象的なおそれや可能性を指摘するものにすぎないというべきであるから,不開示事由の存否の判断に際して考慮することができる事項ではない。
(イ)

被告は,本件不開示部分5を公にすることにより,将来的に類似の
事案が発生した場合,
関係国が,
我が国の今後の対応等を正確に予測し,
関係国が,本件不開示部分5に係る情報を参考として用いることが可能となって,関係国との交渉上不利益を被るおそれがある旨主張するが,将来的に類似の事案が発生する蓋然性があるとの具体的な根拠はなく,関係国や類似の事案についても具体的に特定されていないから,交渉上の不利益を被る具体的な蓋然性があるとも認められない。

被告は,本件不開示部分5は,当該事項を示すことのみにその趣旨があるのではなく,本件検証の結果として,多数の出来事等(各出来事や我が国の動きに対する評価,各事実の背景事情及び原因,時系列の中で各事実が後の事実にどのような影響を及ぼしたか,省内外での検討,調整過程,政府高官等への報告や指示,他国との折衝及び具体的な情報収集活動やそれらを踏まえた上での省内外や政府高官等の認識,評価等)の中で我が国が特に重視した事項又は我が国の意思決定に影響を与えた事項を取捨選択の上で抽出し,その事項に対する評価やその影響等とともに一体として示すことにその趣旨があるから,文字列による切り分けは困難であり,仮に切り分けたとしても,当該記載自体が価値判断や評価を伴うものである旨主張する。
しかし,被告は,公表されている資料に含まれている情報と同一の情報が本件不開示部分5に含まれていることを認めているから,本来であれば
開示すべき情報を区別することなく不開示としていることが明らかであって,不開示部分が広汎にすぎて取消しを免れないものである。また,特定の文章に一定の価値判断や評価を伴うのは当然のことであって,そのことから直ちに情報公開法5条3号に該当するものと認められるわけではない。そして,本件不開示部分5は,対イラク武力行使の支持に至る我が国政府の検討過程及び外交努力の概観という事実を対象とした記載である以上,同じ事実について外務省が公にしている資料の記載と大きく異なることは考え難いから,仮に,文字列による切り分けが困難であるとしても,量的に少ないはずの本件不開示部分5から,被告が懸念するような支障のおそれが生ずることは考え難い。さらに,英国が公表している報告書が560頁にわたって対イラク武力行使の支持に至る英国政府の検討過程,外交努力の概観を詳細にまとめているのに対し,本件不開示部分5は,上記の報告書と比較すれば僅かな分量にすぎず,かつ,その多くは公表されている情報と同じと考えられるから,被告が主張するような不開示事由があるとは考え難い。
(2)

5号該当性について
被告は,本件不開示部分5が公にしないことを前提とした外務省内での率
直な意見交換に基づき記載されたものであり,これを公にすることにより,外務省内での率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある旨主張する。
しかし,前記3(2)と同様,いかなる事実をもって公にしないことを前提としたのか,いかなる事実をもって公にしないことを前提とした意見交換をしたのか,全く具体的な説明がないところ,単に,外務省内での検討過程を経たことをもって上記のような主張をするのであれば,行政庁の内部で作成された文書のほとんどが情報公開法5条5号により不開示とすることができることになるから,同号を不当に拡大する解釈である。

(3)

6号該当性について
被告は,本件不開示部分5を公にすることにより,外交及び安全保障関係
における我が国の関心事項及び政策決定において我が国が考慮している事項が明らかとなるから,将来的に類似の事案が発生した場合,関係国が,これらの情報を我が国の今後の対応を正確に予測するために用いるなど,我が国の今後の外交交渉事務に支障を及ぼすおそれがある旨主張する。
しかし,前記(1)ア(ア)と同様,極めて抽象的な支障を主張するものにすぎないから,不開示事由に該当するとはいえない。
6
項目情報収集についての検証に係る不開示部分(本件不開示部分6)に不開示事由がないこと
(1)

3号該当性について
本件不開示部分6は,原資料を基礎に調査及び分析し,検討した結果を数頁程度の文書にまとめたものであり,個別の書類に記載された具体的な情報ではなく,抽象化されて全体的に包括した記載がされている上,公表された事項も多数含んでいるから,このような記述の全てが情報収集についての具体的方法や内容に係る記述であるとは考えられない。追加的に開示された部分が,いずれも抽象的又は一般的な認識又は評価を示す記述にすぎないことからも,上記のことがうかがわれる。

イ(ア)

報告の主なポイント(甲4の2)には,当時の情報源のほとんどが各国政府及び国際機関関係者であったと見受けられることに鑑み,国内外の専門家の意見や分析を一層活用することとの記載があり,上記の各国政府についても,米国に加え,英,仏,独,イラク,イラク周辺国等との記載があり,上記の国際機関が国連であることも明らかであるから,少なくとも主要な情報収集先については,秘匿する必要性はない。
また,
例えば,オーストラリアは,情報提供先である国際機関,
各国の外交ルート,情報機関等を公表しているから,被告がこれを開示
したとしても,信頼関係が損なわれるおそれはない。
(イ)

被告は,本件不開示部分6には,報告の主なポイント(甲4の

2)で公開されている情報よりも具体的な情報収集先又は情報収集方法若しくは内容が記載されている旨主張するが,少なくとも公開されている情報に係る部分を開示すべきであることに変わりはなく,公にされた事項と文字列で切り分けることも可能である上,被告の主張するところをもっても,担当部局や担当者まで記載されているのか,国際的に非公然の機関の名称が記載されているのかなどの説明がなく,抽象的な説明にとどまっていることに変わりはないから,
被告の主張は,
失当である。
(ウ)

被告は,本件不開示部分6に外務省が公表している事項が含まれる
としても,その記載は,当該事項を示すことのみにその趣旨があるのではなく,本件検証の結果として,多数の出来事の中で我が国が特に重視した事項又は我が国の意思決定に影響を与えた事項を抽出し,その事項に対する評価やその影響等とともに一体として示すことにその趣旨があるから,
文字列による切り分けは困難であり,
仮に切り分けたとしても,
当該記載自体が価値判断や評価を伴うことから,被告が主張するような支障が生ずることに変わりはない旨主張するが,文字列で記載された報告書についてその区別が容易ではないと考えられない上,公表されている情報と同一の情報が含まれていることを被告も認めていることからすると,本件処分は,本来であれば開示すべき情報も区別することなく不開示としていることが明らかであって,取消しを免れないものである。ウ(ア)

被告は,本件文書1のうち情報収集についての具体的方法や内容に
係る記述を公にすることにより,我が国の情報収集の対象に係る関心事項,情報収集能力,情報収集先,情報源等が明らかになり,安全保障に関する問題はもとより,我が国と何らかの問題で緊張関係に立つ関係国との交渉上不利益を被るおそれがある上,国の安全が害されるおそれが
ある旨主張するが,対イラク武力行使を対象に情報を収集していたこと自体は,公開して差し支えない事項であり,主要な情報収集先や情報源は,
前記イのとおり,
既に明らかにされていることからすれば,
被告は,
極めて抽象的なおそれを主張するにすぎない。
(イ)

被告は,本件不開示部分6は,情報収集のための在外公館を含む省
内外に対する指示内容及びその報告状況や我が国内での情報共有状況についての分析も含むものとなっており,我が国政府の政策検討,意思決定の手法,政策検討上の関心事項,さらには我が国の今後の対応等を推察することが可能となるほか,我が国の情報収集能力,情報分析能力等を推察することも可能となり,関係国に対して我が国の政策上の懸念や行動の予見可能性を明らかにすることを意味し,関係国が自国を利して我が国の利益を害する戦略をとることを容易にするため,国の安全が害されるおそれ及び他国との交渉上不利益を被るおそれがある旨主張する。しかし,具体的な事実,認識又は評価に係る記述は,個々の小項目ごとに僅か数行程度ずつであるから,それほど具体的な記述があるとは考えられず,関係国が自国を利して日本の利益を害する戦略をとることを容易にすることにつながるという因果関係の存在すら疑わしい結果を招くおそれが生ずるとは考えられない。また,外交課題の内容や日本と相手国との地理的関係,歴史的経緯,相手国の情勢,国際機関又は他国との関係等の多種多様な事情によって,具体的な外交課題ごとに情報収集すべき情報内容,収集先若しくは収集手段,政策検討上重視する要素又は関係諸国の範囲及び重視すべき関係国は異なるから,対イラク武力行使についての情報収集活動を一定程度具体的に明らかにしたからといって,対イラク武力行使から15年以上経過した現在又は将来において,他の外交課題について,
関係国が開示された情報に基づき,
自国を利し,
我が国の利益を害する戦略をとることが容易になるとはとても考えられ
ない。このことは,米国が対イラク武力行使に至る米国の情報機構の活動を検証し,情報収集先や得た情報の内容,評価の誤り,検証から得られた教訓等の記述を含む600頁以上にわたる報告書を公表しているが,これによって他の外交課題について関係国が米国の利益を害する戦略をとることができるわけではないことが前提となっていることからもうかがわれる。
このように,被告が主張するおそれの具体的な説明はないから,被告の主張は,失当である。

被告は,本件不開示部分6には,他国の情報収集能力等に関わる内容も含まれる上,国際政治上及び各国の安全保障上機微な性質の情報提供は,相手先との信頼関係の下,情報内容のみならず情報提供元も公にしないことが当然の国際慣行である旨主張するが,英国を始めとする諸外国が,情報提供先である国際機関,各国の外交ルート又は情報機関等の名称だけでなく,他国の首脳及び高官の具体的氏名並びに具体的日時を明示した上で会合及び会話の内容を詳細に含んだ検証結果の報告書を公表している上,当時のイラク情勢に関する評価及び分析も公にしているから,本件不開示部分6を開示したとしても,他国との信頼関係を損なうことにはならないし,
また,
被告が上記に主張するような国際慣行があるとも考えられない。

(2)

5号該当性について
被告は,本件不開示部分6が公にしないことを前提とした外務省内での率
直な意見交換に基づき記載されたものであり,これを公にすることにより,外務省内での率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある旨主張する。
しかし,前記3(2)と同様,いかなる事実をもって公にしないことを前提としたのか,いかなる事実をもって公にしないことを前提とした意見交換をしたのか,全く具体的な説明がないところ,単に,外務省内での検討過程を経
たことをもって上記のような主張をするのであれば,行政庁の内部で作成された文書のほとんどが情報公開法5条5号により不開示とすることができることになるから,同号を不当に拡大する解釈である。
(3)

6号該当性について
被告は,本件不開示部分6を公にすることにより,我が国と何らかの問題
で緊張関係に立つ関係国との交渉上不利益を被るおそれがあるという我が国の外交事務及び情報収集事務に支障を及ぼすおそれがある旨主張するが,前記(1)イ(ア)のとおり,
情報収集についての具体的な方法や内容が公開されて
いるものの,外交事務等への支障は生じていない。また,外交及び安全保障に関する問題という点で共通し,領土問題という意味で極めてセンシティブな問題でもある尖閣諸島の問題については,政府が国家安全保障会議で協議した議題,方針及び情報交換の相手方が具体的に新聞で報道されているが,これにより外交事務等に特に支障が生じたこともない。このようなことからすれば,被告の説明は,抽象的なおそれを指摘するものにすぎない。なお,被告は,政府が公表したものと報道機関によるものとでは外交事務に及ぼす影響が全く異なる旨主張するが,新聞報道は,政府機関の動きや官房長官の記者会見での発言内容等,政府が公表した発言や行動に関する事実を詳細に記載したものであって,政府が公表した場合と実質的に変わりがないから,合理的な理由のない詭弁にすぎない。
7
項目分析についての検証に係る不開示部分(本件不開示部分7)に不開示事由がないこと
(1)

3号該当性について

ア(ア)

被告は,本件不開示部分7を公にすることにより,我が国による国
際情勢の分析の方途及び能力が明らかになり,他国との交渉上不利益を被るおそれがある上,我が国の安全が害されるおそれがある旨主張するが,イラクを巡る情勢の経緯(甲6)には,本件不開示部分7の分
量以上の分量を割いてイラクをめぐる情勢の経緯が説明され,日本の外交努力(甲9)には,対イラク武力行使の平和的解決のためにいかなる外交努力をしたのかが具体的に記載されているから,
被告の主張は,
抽象的なおそれを指摘するものにすぎないといえる。
(イ)

被告は,原告が指摘した公にされた情報(甲6,9)は,イラク問
題に関する我が国の情勢分析等の評価を含まず,本件不開示部分7の記述と共通しない性格の異なる別種の資料である旨主張するが,具体的事実を挙げることなく,評価のみを書き連ねることは不可能又は困難であるから,本件不開示部分7には,イラク情勢に関する具体的事実の経過に関する記載も含まれているはずであり,少なくともそれらの事実経過については,既に公開されている情報と同一のものであるから,開示すべきである。仮に,公にされた情報(甲6,9)には含まれない評価が本件不開示部分7に記載されているとしても,被告が,それを開示しないことを正当化する根拠を主張すべきであるにもかかわらず,抽象的な主張しかしないことからすると,上記の評価が情報公開法5条3号に該当するものとはいえないというべきである。
(ウ)

被告は,仮に,外務省が公にしている対イラク武力行使に関する情
勢等の具体的事実が含まれているとしても,公になっている部分のみを切り分けることは困難であるし,仮に,切り分けることが可能であるとしても,
当該事実が記載されること自体が一定の価値判断や評価を含み,
我が国の情報分析能力や考慮事項を示すことにつながることに変わりはない旨主張するが,前記5(1)イと同様,特定の文章に一定の価値判断や評価を伴うのは当然のことであって,そのことから直ちに情報公開法5条3号に該当するものと認められるわけではない。
(エ)

被告は,本件不開示部分7を公にすることにより,将来的に類似の
事案が発生し,我が国としての立場,政策を策定する必要が生じた場
合,国の安全が害されるおそれ及び他国との交渉上不利益を被るおそれがある旨主張するが,前記6(1)ウ(イ)のとおり,外交課題ごとに情報収集すべき情報内容,収集先若しくは収集手段,政策検討上重視する要素又は関係諸国の範囲及び重視すべき関係国が異なるのであり,特定の時代の特定の国に対する武力行使の影響も,武力行使に関係する特定の国と日本との地理的若しくは政治的関係又は当該時代の国際関係によって大きく異なるから,15年以上前の対イラク武力行使をめぐるイラク情勢について,1頁にも満たない概括的な報告文書を公開したことにより被告が主張するような事態が生ずるとは考えられない。また,将来的に類似の事案が発生するとの蓋然性は何ら具体的な根拠に基づくものではなく,類似の事案が何を指すのかも不明確であるし,関係国についても何ら具体的に特定されていないだけではなく,日本がどのような他国との関係でいかなる不利益を被るのか,どのような理由で日本の安全が害されるのかについての具体的な説明はなく,抽象的な主張にとどまる。

米国は,対イラク武力行使に至る段階で,どのような情報に基づいてイラクがどのような兵器を有していたと米国がその当時に認識していたかを振り返り,当時の判断に含まれていた誤りを,事後的に得られた情報と対照しながら指摘しているから,日本の場合のみ,同様の事項を公表したために日本の安全が害されるおそれが生ずるとは考えられない。仮に,本件不開示部分7に記載された内容が,将来,いずれかの国の武力行使に係る事案についても一定程度当てはまるとすれば,それは時代や情勢の変化によって左右されないような他国も当然に把握しているごく一般的な情報収集手法又は分析手法であるから,他国がこれを知ったとしても,日本の対応等を正確に予測することなどできないといえる。

(2)

5号該当性について

被告は,本件不開示部分7が公にしないことを前提とした外務省内での率直な意見交換に基づき記載されたものであり,これを公にすることにより,外務省内での率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある旨主張する。
しかし,前記3(2)と同様,いかなる事実をもって公にしないことを前提としたのか,いかなる事実をもって公にしないことを前提とした意見交換をしたのか,全く具体的な説明がないところ,単に,外務省内での検討過程を経たことをもって上記のような主張をするのであれば,行政庁の内部で作成された文書のほとんどが情報公開法5条5号により不開示とすることができることになるから,同号を不当に拡大する解釈である。
(3)

6号該当性について
被告は,本件不開示部分7を公にすることにより,将来的に類似の事案が
発生した場合において,他国が我が国の今後の対応を推察するための参考とするなどの我が国の今後の外交交渉事務に支障を及ぼすおそれがある旨主張するが,これを前提とすると,少なくとも外交及び安全保障関係における関心事項,考慮事項等を一切公開しないことになるが,実際にはそうではないことは,前記6(3)のとおりである。その余の主張も,前記5(1)ア(イ)と同様,極めて抽象的な支障を主張するものにすぎないから,不開示事由に該当するとはいえない。
8
項目検討・意思決定プロセスに係る不開示部分(本件不開示部分8)に不開示事由がないこと
(1)

3号該当性について
被告は,対イラク武力行使の問題に係る検討及び意思決定プロセス(外務省内における関係局内の協議の具体的な開催状況,
官邸との協議状況)

それに対する評価,検討及び意思決定プロセスにおいて考慮された事項等に係る具体的な記述を公にすると,我が国による国際情勢の分析の方途,
能力が明らかになるから,他国との交渉上不利益を被るおそれがある上,我が国の安全が害されるおそれもある旨主張する。
しかし,新聞記事(甲10)や55人が語るイラク戦争(甲11)には,政府部内における政策検討又は意思決定プロセスの具体的な内容に関する記述及びその検討又は意思決定プロセスにおいて考慮された事項等に係る具体的な記述が存するのであり,本件不開示部分8の分量が半頁もないことからすると,上記の書籍や新聞記事以上に具体的で詳細な情報が記載されているのか,大いに疑問であるから,被告の主張は,抽象的なおそれを主張するものにすぎない。そして,将来的に類似の事案が発生するとの蓋然性は何ら具体的な根拠に基づくものではなく,類似の事案が何を指すのかも不明確であるし,関係国についても何ら具体的に特定されていない。また,オランダは,対イラク武力行使への政治的支持に至るプロセスについて,調査委員会を組織し,その調査結果として551頁にわたる報告書を公表し,その中では,政治的な意思決定の経過や与党が行った連立協議が意思決定に及ぼした影響,オランダの情報機関の役割などの政策の経緯が詳細に記録されているところ,これと比較して本件文書1の分量がごく僅かであって,それほど詳細な内容が記載されているとは考えられないことからしても,
被告の主張は,
情報公開法5条3号にいう
おそれ
を誇張しているとしか考えられない。
イ(ア)

被告は,本件不開示部分8に公になっている情報が含まれていると
しても,公になっている部分のみを切り分けることは困難であるし,仮に,切り分けることが可能であるとしても,当該事実が記載されること自体が一定の価値判断や評価を含み,我が国の情報分析能力や考慮事項を示すことにつながることに変わりはない旨主張するが,前記6(1)イ(ウ)と同様,理由がない。
(イ)

被告は,本件不開示部分8の分量が半頁もないものであったとして
も,政府内での政策検討及び決定プロセスに関する具体的な内容が,取捨選択の上で我が国が重要と考える事項又は我が国の見解が,要点を絞り凝縮されて記載されている旨主張する。
しかし,本件不開示部分8に係る被告の説明が極めて抽象的なものであることからすると,被告の主張が正しいと判断することは不可能である。仮に,被告の主張するところを前提としても,本件不開示部分8には,日本の行政組織をある程度詳細に知る者であれば容易に知り得る外務省と官邸との協議,検討,意思決定内容等の通常の政策決定プロセスそのものが書かれているにすぎない。また,検討又は意思決定の具体的内容が記載されているとしても,前記6(1)ウ(イ)と同様,外交課題ごとに情報収集すべき情報内容,収集先若しくは収集手段,政策検討上重視する要素又は関係諸国の範囲及び重視すべき関係国が異なるのであり,政府内での政策検討,決定プロセスに関する具体的な内容が一定程度公表されたとしても,日本の対応が推測され,日本が他国との交渉上不利益を被るおそれがあるとは考えられない。そして,本件文書1が原資料を取捨選択,抽象化して作成されたものであって,必然的に原資料よりも相当程度抽象化された記載となり,少ない分量での記述になっていると考えられることからすると,開示しないことに値するだけの具体的な内容が含まれるためには,必然的にある程度の字数を必要とするはずであるから,本件不開示部分8の分量が少ないこととは整合しない。(ウ)

被告は,仮に,原告が指摘した書籍(甲11)と本件文書1に同一
の事実が記載されているとしても,本件不開示部分8は,対イラク武力行使の問題に係る我が国の政策決定プロセスの検証という観点からの記述であり,政府が政府の見解として公表するのと私人が著作等で出版するのとでは,その性格も,外交交渉に及ぼす影響も全く異なる旨主張するが,観点の違いが直ちに不開示事由への該当性を導くものとはいえな
い上,上記の書籍は,朝日新聞のジャーナリストが内閣の構成員に対してしたインタビューに基づき,当時の政府の動きについて,インタビューの対象者の発言内容を具体的に引用して説明したものであり,当該発言等は正確であると考えられるから,当該発言と同一の内容の情報が記載された部分については,不開示とすべき理由はないというべきである。
(エ)

被告は,オランダが対イラク武力行使への政治的支持に至るプロセ
スについての調査結果を公表したこととの比較について,他国の調査結果及びその内容をもって直ちに,本件検証の内容も同様に公表すべきとの結論が導き出されるものではない旨主張するが,大量破壊兵器が存在することを理由として対イラク武力行使がされたにもかかわらず,後に大量破壊兵器が存在しなかったという事実について事後的に検証をしたという共通点があり,かつ,他国も調査結果を公表することによって自国が将来外交交渉上不利益を受けること等がないよう配慮した上で詳細な検証結果報告を公表していることからすると,日本が同様の情報を開示したとしても,他国との信頼関係が損なわれるおそれや他国との交渉上不利益を被るおそれはないというべきである。
(2)

5号該当性について
被告は,本件不開示部分8が公にしないことを前提とした外務省内での率
直な意見交換に基づき記載されたものであり,これを公にすることにより,外務省内での率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある旨主張する。
しかし,前記3(2)と同様,いかなる事実をもって公にしないことを前提としたのか,いかなる事実をもって公にしないことを前提とした意見交換をしたのか,全く具体的な説明がないところ,単に,外務省内での検討過程を経たことをもって上記のような主張をするのであれば,行政庁の内部で作成さ
れた文書のほとんどが情報公開法5条5号により不開示とすることができることになるから,同号を不当に拡大する解釈である。
(3)

6号該当性について
被告は,本件不開示部分8を公にすることにより,将来的に類似の事案が
発生した場合において,他国が我が国の今後の対応を推察するための参考とするなどの我が国の今後の外交交渉事務に支障を及ぼすおそれがある旨主張するが,これを前提とすると,少なくとも外交及び安全保障関係における関心事項,考慮事項等を一切公開しないことになるが,実際にはそうではないことは,前記6(3)のとおりである。その余の主張も,前記5(1)ア(イ)と同様,極めて抽象的な支障を主張するものにすぎないから,不開示事由に該当するとはいえない。
9
項目武力行使の支持に至るプロセスに係る不開示部分(本件不開示部分9)に不開示事由がないこと
(1)

3号該当性について

ア(ア)

被告が主張する将来的に類似の事案が発生するとの蓋然性は何ら具
体的な根拠に基づくものではなく,そもそも,類似の事案が何を指すのかも不明確であるし,関係国についても何ら具体的に特定されていないから,日本が交渉上の不利益を被る具体的な蓋然性が認められる余地はないというべきである。
(イ)

被告は,本件不開示部分9には,2002年(平成14年)初め以
降,我が国が対イラク武力行使の支持を表明するに至るまでの外務省の対応,情勢認識,政府内での議論,外交努力等についての具体的な記述があり,これを公にすれば,関係国が我が国政府の政策決定又は意思決定の手法,政策検討上の関心事項,我が国の今後の対応等を正確に予測し,自国を利する形での効果的な外交活動を行うことが可能となる旨主張する。

しかし,日本の外交努力(甲9)には,日本政府が行った外交努
力が具体的に記載され,55人が語るイラク戦争(甲11)にも,我が国が対イラク武力行使の支持を表明する直前の小泉首相及び福田康夫官房長官(当時)とパウエル国務長官との会談の内容が具体的に記載されている。また,新聞記事(甲10)には,駐日中国大使と外務事務次官との具体的なやり取りが報道されている。このようなことからすれば,本件不開示部分9が情報公開法5条3号に該当する旨の被告の主張には,全く合理的な根拠がなく,抽象的なおそれを主張するにすぎないということができる。
(ウ)

被告は,本件不開示部分9には,我が国政府における対イラク武力
行使の支持に至る具体的な政策決定過程,
考慮事項等が記録されており,
我が国が具体的にいかなる要素を重視して政策決定を行ったのかが如実に表れている旨主張するが,前記7(1)ア(エ)と同様,特定の時代の特定の国に対する武力行使の影響も,武力行使に関係する特定の国と日本との地理的若しくは政治的関係又は当該時代の国際関係によって大きく異なるのであり,日本が具体的にいかなる要素を重視して政策決定を行うかもこれらの事情によって必然的に異なるはずであって,変わらないのは,ごく一般的な要素や視点程度と推認される。対イラク武力行使から15年以上の期間が経過している現在,その当時の国際情勢や二国間関係等とは大きく異なっているから,15年前の概括的な記載又は一般的要素若しくは視点を公開したとしても,日本に不利益が生ずるとは考えられない。
イ(ア)

被告は,本件不開示部分9に公になっている情報が含まれていると
しても,公になっている部分のみを切り分けることは困難である旨主張するが,前記6(1)イ(ウ)と同様,理由がない。
(イ)

被告は,日本の外交努力(甲9)は,公表しても差し支えのな

い会談及び報道発表が羅列されたものであって,本件不開示部分9とは性格が全く異なる旨主張するが,性格が異なる点について具体的な説明をしない上,本件不開示部分9にも事実経過が記載されているはずであって,
既に公表されている情報と同一の情報も含まれているはずであり,情報公開法5条3号に該当する情報のみが記載されているということはあり得ないから,被告の主張は,失当である。
(ウ)

被告は,55人が語るイラク戦争(甲11)と本件文書1とは

性格が異なるほか,政府の見解として発表するのと私人が出版するのとでは外交交渉に及ぼす影響が全く異なる旨主張するが,
前記8(1)イ(ウ)
のとおり,当該書籍に記載されたインタビュー対象者の発言は正確であると考えられるから,当該発言と同一の内容の情報が記載された部分については,不開示とすべき理由はないというべきである。
ウ(ア)

被告は,本件不開示部分9には,関係国の情勢認識や意図を推察し
得る発言内容が含まれており,第三国が,当該関係国の当時の情勢認識や意図を手がかりとして,類似の問題が生じた場合に当該関係国の出方を推察することが可能となるから,本件不開示部分9を公にすることにより,当該関係国に交渉上の不利益が生ずるおそれがある情報を我が国が公開したとして,当該関係国との信頼関係が損なわれるおそれがある旨主張する。
しかし,被告の立論が成り立つためには,①関係国の当時の情勢認識や意図又はそれを推察し得る発言内容が,当該関係国又は他国によって公表されたことがなく,日本だけが公表する場合であること,②第三国は,日頃,当該関係国の出方を推察しているはずであるから,日本が公開する情報が当該第三国による当該関係国の出方の推察を変更させるようなインパクトを持つこと,③第三国による当該関係国の出方の推察を変更させた原因が日本の行為にあることを当該関係国が知ったことの全
てが必要であるところ,当該関係国の当時の情勢認識や意図が,原因を誤った対イラク武力行使の当時のものという特殊なもので,類似の問題が生じた場合が想定し難いことも踏まえると,被告が主張するような複雑な因果の流れが法的保護に値する蓋然性のあるものとは到底考えられないから,被告の主張は,失当である。
(イ)

被告は,協議の内容は,それが当初から公表を予定して行われる場
合でない限り,一方的な公開は相手方との信頼関係を損なうものであってそれを開示しないのが当然の国際慣行である旨主張する。
しかし,英国の報告書には,英国と他国との協議内容が詳細に記載されて公表され,オランダの報告書にも,オランダと他国との協議内容が記載され,公表されているから,被告が主張するような当然の国際慣行がないことは明らかである。
(2)

5号該当性について
被告は,本件不開示部分9が公にしないことを前提とした外務省内での率
直な意見交換に基づき記載されたものであり,これを公にすることにより,外務省内での率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある旨主張する。
しかし,前記3(2)と同様,いかなる事実をもって公にしないことを前提としたのか,いかなる事実をもって公にしないことを前提とした意見交換をしたのか,全く具体的な説明がないところ,単に,外務省内での検討過程を経たことをもって上記のような主張をするのであれば,行政庁の内部で作成された文書のほとんどが情報公開法5条5号により不開示とすることができることになるから,同号を不当に拡大する解釈である。
(3)

6号該当性について
被告は,本件不開示部分9を公にすることにより,我が国の今後の外交交
渉事務に支障を及ぼすおそれがある旨主張するが,前記(1)ア(イ)のとおり,
日本の外交努力
(甲9)や55人が語るイラク戦争
(甲11)には,
我が国が対イラク武力行使の支持を表明するに至るまでの外務省の対応,情勢認識,政府内での議論,外交努力等についての具体的な記述があるし,前記6(3)のとおり,外交及び安全保障における関心事項,考慮事項等を公開していることもあるから,武力行使の支持に至るプロセスに関する情報や,外交及び安全保障問題に関する政府の対応,情勢認識,外交努力等についての具体的情報であるというのみでは,情報公開法5条6号の該当性を認めることはできないというべきである。
10

項目米側への働きかけに係る不開示部分(本件不開示部分10)に不開示事由がないこと
(1)

3号該当性について
被告は,本件不開示部分10を公にすることにより,非公開を前提に行った米国との個別具体的なやり取りの内容に加え,武力行使についての我が国の考えがつまびらかになるとともに,対イラク武力行使に至るまでに我が国政府の米国への働きかけの内容の詳細やそれに対する米国の反応に係る我が国の評価が明らかになることから,
将来的に類似の事案が発生し,
我が国としての立場及び政策を策定する必要が生じた場合,関係国が我が国政府の政策検討又は意思決定の手法,政策検討上の関心事項,我が国の今後の対応等を正確に予測し,自国を利する形での効果的な外交活動を行うことが可能となるだけでなく,イラク及びその周辺国その他の関係国との間での外交交渉において,当該関係国に対し,自国を利するための参考となり得る情報を与えることとなり,他国との交渉上不利益を被るおそれもあるほか,米国との信頼関係も損なわれる旨主張する。
しかし,報告の主なポイント(甲4の2)には,米国に対して武力行使の前に外交的手段を尽くすべきであり,国際的連帯が必要であるとの考え方を繰り返し伝達した旨の記載があるところ,平和憲法を有する日本
がこのような態度を取ることは当然であるし,米国への働きかけの内容が公表されているということができるほか,結局,このような日本の働きかけが功を奏さずに米国が開戦に踏み切ったことも公知の事実であるから,それに対応する僅かばかりの分量に収められたやり取りの内容に関する記載を開示することに支障があるとは考えられない。そして,日本の外交努力(甲9)及びその関連情報(甲19の1ないし6)にも,米国に働きかけをした日本側の者やこれに対応した米国側の者の氏名が記載されるとともに,誰がどのような趣旨の発言をしたのかが日付とともに克明に記録されて公表されており,米国への働きかけの具体的内容が記載されている。また,本件不開示部分10の分量は半頁程度であり,本件文書1が検証結果をとりまとめた報告書であって,原資料を取捨選択,抽象化して作成されたものであり,必然的に原資料よりも相当程度抽象化された記載となって,少ない分量での記述になっていると考えられることからすると,非公開を前提に行った米国との個別具体的なやり取りの内容が記載できるとは考えられないし,
被告が主張するようなおそれがあるとも考えられず,
これを開示しないことに何らの合理性もない。さらに,米国は,600頁以上の詳細な検証報告書を作成して公表しており,英国も米国とのやり取りを詳細かつ具体的に,相当の分量を割いて記載し,公表しているから,日本だけが僅かな分量に記載された程度の米国のやり取りを非公開とする根拠はない。その余の主張も,前記9(1)ア(ア)と同様,極めて抽象的な支障を主張するものにすぎない。
したがって,被告の主張は,失当である。

被告は,本件不開示部分10に公になっている情報が含まれているとしても,公になっている部分のみを切り分けることは困難である旨主張するが,前記6(1)イ(ウ)と同様,理由がない。


被告は,本件不開示部分10は,行われた会談のうち,特に重要視した
ものが取捨選択の上で記載されており,いかなる会談等が抽出されたのかということ自体,我が国の関心事項等を推察するための貴重な情報となり得る旨主張するが,どの会談を抽出して本件文書1に記載したという事実を他国がどのように利用することができるのか不明である上,報告書をまとめる過程で主だった事実経過を記載する程度の分量に圧縮すること自体はごく普通のことであって,圧縮前は公表することができるものが,圧縮する過程で取捨選択をしたとたんに情報公開法5条3号にいうおそれが生ずるとはおよそ考えられない。
(2)

5号該当性について
被告は,本件不開示部分10が公にしないことを前提とした外務省内での
率直な意見交換に基づき記載されたものであり,
これを公にすることにより,
外務省内での率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある旨主張する。
しかし,前記3(2)と同様,いかなる事実をもって公にしないことを前提としたのか,いかなる事実をもって公にしないことを前提とした意見交換をしたのか,全く具体的な説明がないところ,単に,外務省内での検討過程を経たことをもって上記のような主張をするのであれば,行政庁の内部で作成された文書のほとんどが情報公開法5条5号により不開示とすることができることになるから,同号を不当に拡大する解釈である。
(3)

6号該当性について
被告は,本件不開示部分10を公にすることにより,我が国の今後の外交交渉事務に支障を及ぼすおそれがある旨主張するが,日本の外交努力」(甲9)には,我が国と米国との外交交渉に係る記述が具体的に記載されているにもかかわらず,これによって我が国の外交交渉事務に支障が生じてはいないから,被告の主張は,抽象的かつ名目的な支障を及ぼすおそれを主張するものにすぎない。イ被告は,「日本の外交努力(甲9)に記載された内容と本件不開示部分10に記載された内容とは性格が異なる旨主張するが,
前記(1)ウのとお
り,公表することができる情報を圧縮して取捨選択をしたとたんに公表することができなくなるという主張自体が失当である。

11

項目米国以外の各国への働きかけに係る不開示部分(本件不開示部分11)に不開示事由がないこと
(1)

3号該当性について
被告は,
本件不開示部分11は,
我が国が米国以外の関係各国との間で,
どのような外交努力を行ってきたのかに関する経緯,内容の詳細が記載されており,我が国政府が関係各国に対して働きかけを行った意図,働きかけに対する相手国又は関係国の反応,働きかけに対する評価等の他国との関係で公表されていない内容も含む我が国と米国以外の関係各国との外交交渉に係る記述及びその効果に対する本件検証としての評価等に係る記述であって,公にすることにより,関係各国との信頼関係が損なわれるおそれがあるほか,関係国に対し,自国を利するための参考となり得る情報を与えることになり,これら他国との交渉上不利益を被るおそれがある旨主張する。
しかし,日本が,①当初から一貫して,国連を中心とした平和的解決を目指すとともに,国際的な連帯を確保して問題解決を図ることが重要との観点から外交努力を行ったこと,②イラクの査察受入れが飽くまでも第一であること,そのためにも国際的なコンセンサスを形成する努力が必要であること等の基本的な考え方をとりまとめたこと,③米国以外の関係各国に対し,イラクによる査察の無条件受入れに向けた新たな安保理の決議の採択について累次働きかけを行ったこと,④2002年(平成14年)11月に安保理決議1441が採択されたことを受けて,2003年(平成15年)2月下旬から同年3月の対イラク武力行使がされる直前まで継続
的に,事態の平和的解決に向けて国際協調の維持とイラクの査察受入れのための外交努力を継続して実施したこと及び⑤イラクに対しては無条件の査察受入れを粘り強く働きかけ,安保理の理事国に対してはイラクの決議履行を促すための追加の安保理決議の採択を目指すよう累次の働きかけを実施し,イラクの周辺国に対しては総理大臣特使の派遣等を通じてイラクによる査察受入れの重要性について働きかけたことの各事実は,全て報告の主なポイント(甲4の2)に記載されており,報告の主なポイントには,働きかけの内容のみならず,働きかけを行う背景に当たる日本の働きかけの狙いなど,本件不開示部分11に記載されていると考えられる基本的な方向性も記載されている。また,日本の外交努力(甲9)にも,対イラク,対中東諸国及び対国連安保理常任理事国に
分けて,時系列で詳細に,米国以外の関係国に行った働きかけも含めた具体的な事実が記載されているほか,
55人が語るイラク戦争
(甲11)
にも,具体的な説明がある。さらに,川口外相は,平成15年(2003年)3月の会見において,ドイツ,英国,ギニア及びカメルーンに新たな安保理決議の採択に向けて働きかけたこと,アンゴラの当時の外務大臣,ブッシュ大統領,パキスタンの当時の大統領及びチリの当時の大統領とも会談した旨を明らかにしており,米国以外の各国への働きかけについての相手国の名前や会談相手も明らかにしている(甲34)。
これらに加え,
本件不開示部分11が1頁にも満たない分量である上に,
公開されている部分の記載がいずれも概括的な文章にとどまっていることにも照らすと,本件不開示部分11に,上記の公開されている情報以上の外交努力の経緯や内容が記載されていることは疑わしく,概括的な記述がされているにすぎないことが合理的に推測される。また,ごく限られた分量の概括的な記載から,仮に,日本が何らかの検討や比較衡量を行ったことを関係国が知ったとしても,いずれの国も行うであろう検討や比較衡量
について述べた程度であれば,そのことから,日本が他国との交渉上不利益を被るおそれがあるといえるほどに関係国が日本の対応を正確に予測することなどできないはずである。そして,上記のような働きかけをすることは,平和主義を憲法上の原則として掲げる日本政府の外交努力として当然に行うべきことであるから,それが仮に具体的に記載されていたとしても,それを開示したからといって他国との交渉で不利益を被るとは考えられない。
イ(ア)

被告は,日本の外交努力(甲9)に記載のある事実のみを開示

することができない旨主張するが,日本の外交努力において公表されている情報と同一の内容が本件不開示部分11に含まれていることを認めるものであるから,内容的に同一の部分を選択して部分開示をすることは可能なはずであるし,それができないのであれば,その事情を具体的に説明すべきである。
(イ)

被告は,55人が語るイラク戦争(甲11)と本件文書1とは

性格が異なるから,同じ事実であっても,政府見解として公表するのと私人が出版するのとでは,外交交渉に及ぼす影響が全く異なる旨主張するが,前記8(1)イ(ウ)のとおり,当該書籍に記載されたインタビュー対象者の発言は正確であると考えられるから,当該発言と同一の内容の情報が記載された部分については,不開示とすべき理由はないというべきである。
(2)

5号該当性について
被告は,本件不開示部分11が公にしないことを前提とした外務省内での
率直な意見交換に基づき記載されたものであり,
これを公にすることにより,
外務省内での率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある旨主張する。
しかし,前記3(2)と同様,いかなる事実をもって公にしないことを前提と
したのか,いかなる事実をもって公にしないことを前提とした意見交換をしたのか,全く具体的な説明がないところ,単に,外務省内での検討過程を経たことをもって上記のような主張をするのであれば,行政庁の内部で作成された文書のほとんどが情報公開法5条5号により不開示とすることができることになるから,同号を不当に拡大する解釈である。
(3)

6号該当性について
被告は,本件不開示部分11を公にすることにより,我が国の今後の外交
交渉事務に支障を及ぼすおそれがある旨主張するが,
日本の外交努力
(甲
9)には,関係各国への働きかけに係る記述が具体的に記載されているにもかかわらず,これによって我が国の外交交渉事務に支障が生じてはいないから,被告の主張は,抽象的かつ名目的な支障を及ぼすおそれを主張するものにすぎない。
12

項目武力行使の法的側面に係る不開示部分(本件不開示部分12)に不開示事由がないこと
(1)

3号該当性について
被告は,本件不開示部分12は,対イラク武力行使にしかるべき法的根拠を持たせるための我が国の見解,米国等による対イラク武力行使についての法的根拠についての我が国と他国との外交交渉の内容(我が国が特定の意図を持って関係各国との間で調整や外交努力を行ったこと及びその具体的態様)及びその効果に対する評価に係る記録がされた部分であり,これを公にすることにより,他国との外交交渉の詳細が明らかになることから,他国との信頼関係が損なわれるおそれがあるほか,イラク及びその周辺国との間の外交交渉において,関係国に対し,自国を利するための参考となり得る情報を与えることとなり,他国との交渉上不利益を被るおそれがある旨主張する。
しかし,法規範が公表情報であり,対外的に公表することができない法
的根拠では国内のみならず国際社会においても正当性を説明することができないから,武力行使についての法的根拠やこれに関する政府見解等という一般的な論理の話を秘密にすること自体,そもそも考え難い。武力行使の国際法上の合法性は,国連等で公に議論されている内容であり,小泉首相が,平成15年3月18日の記者会見で,今までの一連の国連決議,昨年11月の1441を初め,678,687,こういう決議において,武力行使の根拠と成り得ると理解しておりますと説明している
(甲13)
ほか,川口外相も,対イラク武力行使に関する国際法上の法的側面について,大臣会見で記者の質問に応じて見解を述べており(甲34),法的側面に関する見解等は開示しないとすべき事柄ではないものといえる。これは,米国が国連で発表したものと同じ見解であり,この点についての検討内容や各国の外交行為も,研究ノート武力行使に関する国連の法的枠組みの有効性(甲14)で詳細に紹介されている。また,被告の主張においては,他国,関係各国及びその周辺国がいずこの国であ
るかが不明であって,情報公開法5条3号にいうおそれがあることを検討する前提が欠けている。そして,他国との外交交渉については,日本の外交努力(甲9)で具体的に記載されている上,その結果に対する評価も,当時の政府関係者の説明内容が55人が語るイラク戦争(甲11)に掲載されているなど,既に公にされている内容が多い。これに加え,本件不開示部分12の分量が1頁にも満たず,上記の公表資料以上に詳細な情報が記載されているとは考えにくいことからすると,被告の主張するおそれは,抽象的なものにすぎない。

被告は,本件不開示部分12に記載された情報は,武力行使についての法的根拠に関係する一般的な記述ではなく,我が国が対イラク武力行使を支持するという政策決定をするに至る上でした法的側面についての検討の方途が明らかとなる旨主張するが,本件不開示部分12に日本政府内での
検討内容の記載が含まれているとしても,その検討結果としての武力行使についての法的根拠に関する説明や一般的な記述も記載されているはずであり,本件不開示部分12の分量が1頁にも満たない分量であることからすると,
具体的で詳細な事実や見解が織り込まれていることは想定し難い。ウ
被告は,本件不開示部分12を公にすることにより,武力行使の法的根拠の解釈や,武力行使までの対応について複数の選択肢がある中で,我が国が武力行使を初めとする重要事項の法的根拠についてどのような視点及び方向性で解釈するか,その調整のために重要と考えている関係国やその理由が明らかとなる旨主張するが,
各国の報告書等
(甲23の5,
甲24,
30)や外務省が開示した他の文書(甲31,32)によれば,武力行使の法的根拠は,例外なく複数の安保理決議に照らして説明されており,英国法務総裁による解釈(甲30)は,対イラク武力行使がされた当時に既に公にされており,日本もこれを入手して分析していたことも明らかであるから,本件不開示部分12においても,これに言及していることが想定できるのであって,上記のとおり,各国が,複数の選択肢がある中で,武力行使を始めとする重要事項の法的根拠についてどのような視点及び方向性で解釈するかという事項を明らかにしている以上,日本のみがこれを明らかにできないとする合理性はない。

エ(ア)

被告は,日本の外交努力(甲9)と本件文書1とでは,文書と

しての趣旨,性質が異なる旨主張するが,前記10(1)ウと同様,公表することができる情報を圧縮して取捨選択をしたとたんに公表することができなくなるという主張自体が失当である。
(イ)

被告は,研究ノート武力行使に関する国連の法的枠組みの有効性(甲14)と本件不開示部分12とでは,内容及び性質が異なる旨主張するが,少なくとも武力行使の法的根拠に関する記述が不開示事由に該当しないことは明らかであって,少なくとも,当該部分について不
開示を維持する根拠とはなり得ない。
(ウ)

被告は,本件不開示部分12には,法的根拠についての我が国や国
際社会の見解という結論だけではなく,そこに至る検討の過程や交渉の状況が具体的に記載されており,原告が指摘する文書等(甲30ないし32,34)とは異なる内容のものである旨主張するが,本件不開示部分12に我が国や国際社会の見解という結論が含まれていることは認めており,武力行使が国際法上合法と考えられる根拠についても記載されているはずであって,関連する安保理決議の概要やイラクによるその違反といった内容も含まれているはずである。本件不開示部分12の分量は半頁程度にすぎず,箇条書き等を用いずに文章形式で説明していると考えられるから,法的根拠を記載するだけでもかなりのスペースを必要とするはずであるし,法的根拠について一定の見解に至る過程の検討や交渉の状況をそのような限られたスペースに具体的に記載することができるとは考え難いのであり,仮に,記載があるとしても,概括的又は抽象的な記載にならざるを得ないはずである。
(エ)

被告は,
諸外国の報告書は,
各国がそれぞれの目的に基づき,
判断,

実施したものであって,情報公開法上の不開示事由は,我が国にとってのおそれであるから,事情の異なる諸外国が本件文書1とは別の検証報告書等を公表しているとしても,そのことから直ちに,上記のおそれがないということにはならない旨主張するが,その具体的理由はなく,他国が公表している種類の情報(甲23の5,甲24)を日本が公表しても,国の安全が害されるおそれがないことはもちろん,他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれもなく,他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれもないというべきである。(2)

5号該当性について
被告は,本件不開示部分12が公にしないことを前提とした外務省内での
率直な意見交換に基づき記載されたものであり,
これを公にすることにより,
外務省内での率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある旨主張する。
しかし,前記3(2)と同様,いかなる事実をもって公にしないことを前提としたのか,いかなる事実をもって公にしないことを前提とした意見交換をしたのか,全く具体的な説明がないところ,単に,外務省内での検討過程を経たことをもって上記のような主張をするのであれば,行政庁の内部で作成された文書のほとんどが情報公開法5条5号により不開示とすることができることになるから,同号を不当に拡大する解釈である。
(3)

6号該当性について
被告は,本件不開示部分12を公にすることにより,我が国の今後の外交交渉事務に支障を及ぼすおそれがある旨主張するが,
前記(1)アのとおり,
国際法上の合法性は国連等で公に議論されている内容であり,関係各国の見解や外交行為も研究ノート武力行使に関する国連の法的枠組みの有効性(甲14)で詳細に紹介されているが,これによって我が国の外交交渉事務に支障が生じておらず,むしろ,公にしても全く問題がない性質の情報であるから,被告の主張は,抽象的かつ名目的な支障を及ぼすおそれを主張するものにすぎない。

被告は,本件不開示部分12に係る記述が公開の場における議論の内容というものではない旨主張するが,そのことのみをもって直ちに情報公開法5条6号の該当性が基礎付けられるわけではないし,国連等で公に議論される類いの武力行使の国際法上の合法性に関する検討内容であって一般的には公開されてしかるべき種類の情報でもあるから,被告の主張は,失当である。

13

項目武力行使の支持の理由に係る不開示部分(本件不開示部分13)に不開示事由がないこと

(1)

3号該当性について
対イラク武力行使を支持した理由については,これまでの公表資料として,①平成15年3月18日の小泉首相による説明(甲13),②同月20日の小泉首相による説明(甲35),③外務省が作成した対イラク武力行使を支持した理由等に係る従前の政府見解及び国会答弁をまとめた資料(甲31)があるところ,被告も,本件不開示部分13に,これらの公表された資料に記載されている対イラク武力行使を支持した主な理由の記載があること自体は認めている。それ以外の記載として想定されるものとしては,(あ)米国からされた米国のイラクに対するアプローチを支持する国のリストに日本を含めて差し支えがないかという打診に対して同意したという経緯がある(甲36)ために,即座に対イラク武力行使の支持を表明したという趣旨の記載,(い)かつていわゆる湾岸戦争の当時に日本が拠出した支援金について,時期的に遅いと他国から批判されたことから,同様の評価を受けないように即座に対イラク武力行使の支持を表明したという趣旨の記載又は(う)早期に対イラク武力行使の支持を表明した方が,その後のイラクにおける経済活動に関与する上で有利に働くために即座に対イラク武力行使の支持を表明したという趣旨の記載が考えられるが,本件不開示部分13に,これらのもの又はそれ以外のものが記載されているとしても,本件不開示部分13が開示されるか否かにかかわらず,このような武力行使の支持の理由を想定することは可能である。このような理由に基づいて武力行使を支持したことの是非が国内的に問題になることはあるとしても,それを開示することが,現在の我が国の対応を予測させるとか,他国との交渉上不利益を被るおそれがあるとかいうことはおおよそ考え難い。


被告は,本件不開示部分13には,当時の我が国を取り巻く安全保障環境等の情勢といった具体的かつ詳細な考慮事項を含む我が国が対イラク武
力行使を支持したことに関する具体的な理由が記載されており,本件不開示部分13を公にすることにより,我が国政府が対イラク武力行使の支持という政策決定を行う上で考慮した諸事項が明らかとなるから,将来的に類似の事案が発生し,我が国としての立場,政策を策定する必要が生じた場合,関係国が我が国政府の政策検討,意思決定の手法,政策検討上の関心事項,さらには我が国の今後の対応等を正確に予測し,自国を利する形での効果的な外交活動を行うことが可能となるほか,イラク情勢をめぐる我が国の認識が明らかになることにより,当該関係国に対し,上記のとおり,自国を利するための参考となり得る情報を与えることとなり,これら他国との交渉上不利益を被るおそれがある旨主張する。
しかし,ある外交上の問題が生じた場合,日本の今後の対応等については,日本の従前の対応,日本が世界情勢で占める地位,友好関係にある各国の動き,日本との関係性の深浅等から一定程度予測が可能であるが,日本が有している情報の多寡やその内容等によって,日本の今後の対応等は異なるものであるから,関係国が今後の日本の対応等を正確に予測することは不可能又は著しく困難である。また,外交上の問題において,他国の利益となることと日本の不利益となることとの間に相関関係はなく,自国を利する望ましい結果を得ることを目的として交渉することは外交交渉上の当然の前提であって,日本もこれを前提として外交交渉に臨み,意思決定を行うのであるから,本件不開示部分13を公にしたとしても,他国との交渉上の不利益を被る具体的な蓋然性は何ら存しない。さらに,その余の主張も,前記5(1)ア(イ)と同様,極めて抽象的な支障を主張するものにすぎない。
このように,被告の主張は,情報公開法5条3号に該当するおそれがないか,又は極めて抽象的なおそれを主張するにすぎないかのいずれかであるにすぎない。


被告は,一国の外交政策を予測するに際しては,国際情勢や従前の対応のみを見ても正確な予測を行い得るものではなく,
いかなる事項に着目し,
いかなる理由から政策決定を行ったのかという点に着目することが重要であるから,我が国政府が対イラク武力行使の支持という政策決定を行う上で考慮した諸事項が明らかとなれば,将来的に類似の事案が発生し,我が国としての立場及び政策を策定する必要が生じた場合,関係国が我が国政府の政策検討又は意思決定の手法,政策検討上の関心事項,我が国の今後の対応等を,国際情勢や従前の対応のみを根拠とするよりも正確に予測することが可能となる旨主張する。
しかし,本件不開示部分13に記録されているのは,日本が対イラク武力行使を支持した理由であり,飽くまでその当時の安全保障環境に関する記述が大半を占めていると推測することができ,既に15年も経過した過去の国際情勢に関する事実である上,本件文書1が検証結果をとりまとめた報告書であって,原資料を取捨選択又は抽象化して作成されたものであり,必然的に原資料よりも相当程度抽象化された記載となって,少ない分量での記述になっていると考えられることからすると,3分の1頁程度の分量しかない本件不開示部分13において,対イラク武力行使に関する日本の意思決定理由又は考慮事項の具体的かつ詳細な内容が記載されているとは到底考えられず,被告の主張は,机上の空論にすぎない。

(2)

5号該当性について
被告は,本件不開示部分13が公にしないことを前提とした外務省内での
率直な意見交換に基づき記載されたものであり,
これを公にすることにより,
外務省内での率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある旨主張する。
しかし,被告が報告の主なポイント(甲4の2)において本件文書1の主なポイントを公開しており,本件文書1には公にしないことを前提とし
ていなかった部分が存することが明白である上,前記3(2)と同様,いかなる事実をもって公にしないことを前提としたのか,いかなる事実をもって公にしないことを前提とした意見交換をしたのか及びいかなる事実をもって不当と評価すべきなのかについて,
いずれも全く具体的な説明がないところ,
単に,外務省内での検討過程を経たことをもって上記のような主張をするのであれば,行政庁の内部で作成された文書のほとんどが情報公開法5条5号により不開示とすることができることになるから,同号を不当に拡大する解釈である。
(3)

6号該当性について
被告は,本件不開示部分13を公にすることにより,我が国政府が対イラ
ク武力行使の支持という政策決定を行う上で考慮した諸事項が明らかとなるから,将来的に類似の事案が発生した場合において,これらの情報を我が国の今後の対応を推察するための参考として用いるなど,我が国の今後の外交交渉事務に支障を及ぼすおそれがある旨主張するが,情報を我が国の今後の対応を推察するための参考として用いる主体が明らかではなく,外交交渉事務に支障を及ぼす具体的な蓋然性については,何らの主張立証もないから,被告の主張は,およそ失当である。
14

項目国民への説明責任についての検証に係る不開示部分(本件不開示部分14)に不開示事由がないこと
次のとおり,被告は,本件不開示部分14について,抽象的に支障を挙げるだけで,外務大臣の判断の公正妥当を担保するに足りる可能な限り具体的な事実関係を主張立証した上で,開示しないことの利益が開示することの公益性を上回ることにつき,合理的根拠を示したものとは,到底いえない。(1)

3号該当性について
被告は,本件不開示部分14には,対イラク武力行使をめぐる我が国の対
応に関し,対イラク武力行使を支持することについて国民の理解を得るとの
観点から,
外務省内で行われた説明責任を果たすための具体的な説明手法
(ど
のような考え方の下,どのような方法で,国内の世論形成に努めるか)に関する検討,これを踏まえて他国に対して行っていた働きかけ等の具体的な取組について,その効果も含めた詳細な検証結果が記録されており,これを公にすることにより,対イラク武力行使に係る広報を行うに当たって外務省が重視していた事項等が明らかとなり,将来的に類似の事案が発生し,我が国としての立場又は政策を策定する必要が生じた場合,関係国が,我が国政府の対応を推察する手がかりとしたり,イラク及びその周辺国との間での外交交渉において,当該関係国に対し,自国を利するための参考となり得る情報を与えることになるのであって,安全保障その他の問題で緊張関係に立つ国が我が国の対応を妨害すべく我が国国内世論工作等を行う上での参考として用いることも可能となるから,我が国の安全が害されるおそれ及び他国との交渉上不利益を被るおそれがある旨主張する。
しかし,本件不開示部分14は,10行程度にすぎない上,被告が指摘する他国に対して行っていた働きかけが何を指しているのかは不明であるから,これを開示しないことは著しく不当である。また,しかも,本件不開示部分14に記録されているのは,
日本が対イラク武力行使を支持した理由であり,
飽くまで当時の国民への説明責任についての検証が大半を占めていることが推測できるのであり,既に15年も経過した過去の事実に対する検証結果を公表したからといって現在の外交政策に大きな影響を及ぼすはずもない。さらに,本件検証が民主党(当時)の政権下でされて民主党に属していた外務大臣に対して報告されたものであることからすると,公にした場合に驚くべき新事実や評価が記載されているとは考え難い。そして,安全保障その他の問題で緊張関係に立つ国が具体的に特定されておらず,当該国が日本で国内世論工作等を行う具体的な蓋然性もないし,仮にそのような蓋然性があるとしても,日本政府が適切に情報を公開することによって国民の理解を得
て適切な世論を形成することは可能であるから,国の安全が害される具体的な蓋然性があるとはいえない。その余の主張については,前記1(1)ア(ア)及び前記5(1)ア(イ)と同様,情報公開法5条3号に該当するおそれがないか,又は極めて抽象的なおそれを主張するにすぎないかのいずれかにすぎない。(2)

5号該当性について
被告は,本件不開示部分14が公にしないことを前提とした外務省内での
率直な意見交換に基づき記載されたものであり,
これを公にすることにより,
外務省内での率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある旨主張する。
しかし,前記3(2)と同様,いかなる事実をもって公にしないことを前提としたのか,いかなる事実をもって公にしないことを前提とした意見交換をしたのか及びいかなる事実をもって不当と評価すべきなのかについて,いずれも全く具体的な説明がないところ,単に,外務省内での検討過程を経たことをもって上記のような主張をするのであれば,行政庁の内部で作成された文書のほとんどが情報公開法5条5号により不開示とすることができることになるから,同号を不当に拡大する解釈である。
(3)

6号該当性について
被告は,本件不開示部分14が公にされることにより,イラク情勢をめぐ
る我が国の検討の視点,関心の対象等が明らかになり,将来的に類似の事案が発生した場合における我が国政府の対応を推察する手がかりとするなど,我が国の今後の外交交渉事務に支障を及ぼすおそれがある旨主張するが,我が国政府の対応を推察する手がかりとする主体が明らかではなく,外交交渉事務に支障を及ぼす具体的な蓋然性については,何らの主張立証もないし,その余の主張も,前記5(1)ア(イ)と同様,極めて抽象的な支障を主張するものにすぎない。
15

項目情報収集・分析に係る不開示部分(本件不開示部分15)に不開示
事由がないこと
被告は,本件不開示部分15には,対イラク武力行使に際して収集を目指していた特定の情報の収集に関する具体的な態様,それに対する改善策等の情報源,情報収集能力又は情勢分析について改善すべき点(今後に情報収集や分析を行うべき主体,活用すべき具体的な情報収集先,収集する情報の種類,収集した情報の分析の程度又は考え方,
それに伴う制約等に関する記載を含む。,

収集及び分析した情報の効果的な活用のための改善策(外務省における政策担当部局と情報担当部局との具体的な連携方法に関する記載を含む。)等について,具体的な評価及び今後の指針が記録されている旨主張するが,記載内容の説明として不十分であり,不開示とする理由としても不十分である。(1)

3号該当性について
被告は,情報収集は,あらゆる外交交渉の基礎となるものである上,我が国の情報収集能力,情報分析能力等が明らかとなれば,我が国が現に有する我が国に対する脅威の存在やその度合いを測る能力も明らかとなる旨を主張する。
しかし,報告の主なポイント(甲4の2)には,当時の情報源のほとんどが各国政府及び国際機関関係者であったと見受けられることに鑑み,国内外の専門家の意見や分析を一層活用することとの記載があるところ,上記の記載のうち当時の情報源のほとんどが各国政府及び国際機関関係者であったと見受けられることに鑑みの部分については,本件文書1のうち開示された部分に記載がないことから,本件不開示部分15には,これに対応した記述があると推認することができる。そして,報告の主なポイントには,
政策部局からのきめ細かい情報要求等を通じて,政策担当部局と情報担当部局の一層の連携を図ることとの記載があるところ,
上記の記載のうち
政策部局からのきめ細かい情報要求等を通じて
の部分については,本件文書1のうち開示された部分に記載がないことか
ら,本件不開示部分15には,これに対応した記述があると推認することができる。また,報告の主なポイントには,

以下の諸点については概ね適切な対応がなされたものと思われる。

として3点に分けて記載されている部分があるが,本件文書1のうち開示された部分には,これに対応する記述も見当たらない。これに加え,本件不開示部分15の分量からして長文の記載をすることが不可能であることを踏まえると,本件不開示部分15には,上記の内容に対応した記述が,ほぼそのまま,又は多少表現を変更した程度で記載されていると合理的に推認することができる。さらに,報告の主なポイントには,総合外交政策局の総合調整の下,中東アフリカ局を始めとする関係各局間の連携を強化し,情報収集・共有を図った,関係国政府や国際機関関係者等から幅広く収集及びイラクに大量破壊兵器が存在しないことを証明する情報を外務省が得ていたとは確認できなかったとの記載があり,日本が,どのように情報収集を行い,どのような情報を得ていたかについて明らかにされている部分もあるところ,本件不開示部分15の分量が1頁足らずのものであることに照らせば,
本件不開示部分15のおおよその内容は,
報告の主なポイント
において既に公表されていると解するのが自然であり,報告の主なポイントにおいて公表されている内容よりも,具体的かつ詳細な内容が,本件不開示部分15に記載されていると解するのは困難である
そうすると,活用すべき情報収集先,外務省における政策担当部局と情報担当部局の具体的な連携方法が特異なものであるとはいえず,我が国の情報収集活動及びそれに基づく政府内での政策検討プロセスが明らかとなり,我が国の政策の予見可能性が高まるというのも,杞憂にすぎない。イ
被告は,本件不開示部分15を公にすることにより,我が国の情報収集能力,情報分析能力等が明らかとなるから,安全保障に関する問題はもとより,我が国と何らかの問題で緊張関係に立つ関係国との交渉上不利益を
被るおそれがある上,
我が国の安全が害されるおそれがある旨主張するが,
何らかの問題で緊張関係に立つ関係国と極めて抽象的な主張にとどまっているとおり,どのような国とのどのような交渉において,どのような不利益が生じ得るのかについて何ら具体的な主張をしていないから,本件不開示部分15について,抽象的に支障を挙げるだけで,外務大臣の判断の公正妥当を担保するに足りる可能な限り具体的な事実関係を主張立証した上で,開示しないことの利益が開示することの公益性を上回ることにつき,合理的根拠を示したものとは,到底いえない。

被告は,国際政治上及び各国の安全保障政策上機微な問題に係る情報提供は,情報内容や情報提供元を公にしないことが当然の国際慣行である旨主張するが,このような国際慣行の存在を被告は全く立証しないほか,前記6(1)エと同様,英国が,当時のイラク情勢に関する評価,分析を公にしていることからしても,被告が主張するような国際慣行があるとはいえない。また,15年もの時の経過によって,国際情勢,社会情勢,当該情報に関する事務の進行の状況等の事情が当時とは大きく異なっているといえるほか,情報収集の手法等も当時と異なっていて当然であるから,被告の主張は,失当である。

(2)

5号該当性について
被告は,本件不開示部分15が公にしないことを前提とした外務省内での
率直な意見交換に基づき記載されたものであり,
これを公にすることにより,
外務省内での率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある旨主張する。
しかし,前記13(2)と同様,被告が報告の主なポイント(甲4の2)において本件文書1の主なポイントを公開している上,いかなる事実をもって公にしないことを前提としたのか,いかなる事実をもって公にしないことを前提とした意見交換をしたのか及びいかなる事実をもって不当と評価
すべきなのかについて,いずれも全く具体的な説明がないところ,単に,外務省内での検討過程を経たことをもって上記のような主張をするのであれば,行政庁の内部で作成された文書のほとんどが情報公開法5条5号により不開示とすることができることになるから,同号を不当に拡大する解釈である。(3)

6号該当性について
被告は,本件不開示部分15を公にすることにより,外務省の情報収集源及び今後情報源として活用すべき関係先が明らかになるから,安全保障に関する問題はもとより,我が国と何らかの問題で緊張関係に立つ関係国との交渉上不利益を被るおそれがあり,我が国の外交事務の適正な遂行に支障が生ずることの根拠となるほか,情報収集源等からの協力が得られなくなるおそれもあり,我が国政府の情報収集事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれもある旨主張する。
しかし,被告は,何らかの問題で緊張関係に立つ関係国と極めて抽象的な主張をするにとどまっているとおり,どのような国とのどのような交渉において,どのような不利益が生じ得るのかについて何ら具体的な主張をしていないから,交渉上不利益を被るおそれ及び外交事務の適正な遂行に支障が生ずることの具体的な蓋然性は認められない。また,報告の主なポイント(甲4の2)において,当時の情報源のほとんどが各国政府及び国際機関関係者であったと見受けられることに鑑み,国内外の専門家の意見や分析を一層活用すると,情報収集源や今後情報源として活用すべき関係先を明らかにしているから,本件不開示部分15を公にしたとしても,情報収集事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとはいえない。そして,情報源そのものを明らかにすることと,当該情報源から得た情報の内容を明らかにすることは,全く別問題であって,これらを開示したことによって生じ得る不利益又は支障も異なるところ,被告は,
これらを峻別することなく不開示としており,
その意味においても,

合理性を欠いている。

被告は,
情報収集源又は情報の内容のいずれを公にした場合であっても,
信頼関係が損なわれる旨主張するが,それは,当該情報収集源が,収集源であること及び提供した情報の内容のいずれの公開をも拒否している場合であり,被告はそれぞれの情報収集源の公開の可否に関する意向も明らかにすることなく抽象的な主張をするにとどまっているから,
被告の主張は,
失当である。

16

項目政策決定・実施に係る不開示部分に不開示事由(本件不開示部分16)がないこと
(1)

3号該当性について
被告は,本件不開示部分16には,外務省内及び政府部内における対イラク武力行使に係る政策検討又は意思決定過程の具体的な内容及びそれに対する積極又は消極両面の評価,イラク問題に関する関係各国との間で行われたやり取り及びその外交的効果等に加え,大量破壊兵器の存否に関する我が国の検討に対する分析及び評価が記録されている旨主張する。しかし,関係各国との間で行われたやり取り及びその外交的効果等については,報告の主なポイント(甲4の2)に,米国はもちろんのこと,英,仏,独,イラク,イラク周辺国等との関係でも,電話会談を含む首脳・外相レベルでの接触や総理大臣特使の派遣を始め,要所要所で,政治レベルによる働きかけを行っている。これらの効果を一層高めるため,特に首脳レベルを始め二国間の相互信頼関係をますます強固にしていく必要があろう。と記載されているところ,上記の記載のうちこれらの効果を一層高めるため,特に首脳レベルを始め二国間の相互信頼関係をますます強固にしていく必要があろうの部分については,これまでに開示された部分に記載がないことから,本件不開示部分16には,これに対応した記述があると推認することができる。また,大量破壊兵器の存否に関す
る我が国の検討に対する分析及び評価については,報告の主なポイント」には,「当時は,イラクが大量破壊兵器を隠匿している可能性があるとの認識が国際社会で広く共有されていたが,調査の結果,当時,イラクに大量破壊兵器が存在しないことを証明する情報を外務省が得ていたとは確認できなかった。,査察への全面的な協力を通じて大量破壊兵器の廃棄等を自ら証明すべき立場にあったのはイラク及び「イラクにおける大量破壊兵器の存在など,国際的に概ね認識が一致していたような情報といえども敢えて批判的な視点から分析し,政策の検討を行っていくことが重要であろう。」との記載があるが,本件文書1のうち開示された部分には,これらに対応する記述がない。これに加え,本件不開示部分16の分量に照らして長文の記載が不可能であることも踏まえると,本件不開示部分16には,上記の報告の主なポイントに対応した記述が,ほぼそのまま,又は多少表現を変更した程度で記載されていると合理的に推測できる。
そうすると,15年もの前の国内及び諸外国との連携の内容又は評価及び大量破壊兵器が結果として見つからなかったという特殊な事案に関する評価を公にしたからといって,我が国の情報収集活動及びそれに基づく政府内での政策検討プロセスが明らかとなり,我が国の政策の予見可能性が高まるというのは,杞憂にすぎない。

被告は,本件不開示部分16を公にすることにより,我が国の政策検討の手法及び政策検討上の関心事項が明らかとなる上,対イラク武力行使の問題に係る政策検討,意思決定における問題点及びそれに対する改善策についても明らかとなれば,将来的に類似の事案が発生し,我が国としての立場,
政策を策定する必要が生じた場合,
関係国が我が国政府の政策検討,
意思決定の手法,政策検討上の関心事項,さらには我が国の今後の対応等を正確に予測し,自国を利する形での効果的な外交活動を行うことが可能
となるほか,
イラク情勢をめぐる我が国の認識が明らかになることにより,
イラク及びその周辺国との間での外交交渉において,当該関係国に対し,自国を利するための参考となり得る情報を与えることになるし,上記の不開示部分には,対イラク武力行使をめぐって実際に行われた関係各国との連携状況及びそれに対する外交的効果(他国の対応への言及も含む。)も記載されているから,関係各国との信頼関係が損なわれるおそれがある旨主張する。
しかし,将来的に類似の事案が発生するとの蓋然性は何ら具体的な根拠に基づくものではなく,
類似の事案
が何を指すのかも不明確であるし,
関係国及びイラク及びその周辺国についても何ら具体的な特定が
されておらず,その国との関係で日本が交渉上の不利益を被る具体的な蓋然性が認められる余地はなく,イラクとの関係での交渉上の不利益についても,イラクの過去の実際の言動に照らし,本件不開示部分16の情報が開示された場合にイラクがどのような主張をしてくるのかについて何ら具体的な主張はない。また,前記8(1)アのとおり,オランダが政策の経緯を詳細に公表している(甲12)から,日本が関係各国との連携状況等を開示したからといって,関係各国との信頼関係が損なわれる具体的な蓋然性は全くない。
このように,被告の主張は,情報公開法5条3号に該当するおそれがないか,又は極めて抽象的なおそれを主張するにすぎないかのいずれかであるにすぎない。

被告は,一国の外交政策を予測するに際しては,国際情勢や従前の対応のみを見ても正確な予測を行い得るものではなく,
いかなる事項に着目し,
いかなる理由から政策決定を行ったのかという点に着目することが重要であるから,我が国政府自身が行った検証の結果として,対イラク武力行使に関する我が国政府部内での検討の内容,その態様,教訓等の具体的かつ
詳細な内容が明らかとなれば,将来的に類似の事案が発生し,我が国としての立場,政策を策定する必要が生じた場合,関係国が我が国政府の政策検討,意思決定の手法,政策検討上の関心事項,さらには我が国の今後の対応等を,国際情勢や従前の対応のみを根拠とするよりも正確に予測することが可能となる旨主張する。
しかし,事後的な検証結果として1頁に満たない分量しかない本件不開示部分16において,対イラク武力行使に関する日本政府部内での検討内容,その態様,教訓等の具体的かつ詳細な内容が記載されているとは到底考えられず,被告の主張は,机上の空論にすぎない。

被告は,本件不開示部分16の分量が少ないとしても,対イラク武力行使という国際政治上及び各国の安全保障政策上機微な問題に関する意思決定を行うに当たり,我が国として重要な考慮要素としていた点が鮮明に現れている部分といえ,項目分けの仕方やその記述内容を含め,記載自体が一定の価値判断や評価を伴うものとなっているから,これを開示すべきものとはいえない旨主張するが,前記13(1)ウと同様,既に15年も経過した過去の国際情勢に関する事実である上,本件文書1が検証結果をとりまとめた報告書であって,原資料を取捨選択又は抽象化して作成されたものであり,必然的に原資料よりも相当程度抽象化された記載となって,少ない分量での記述になっていると考えられることからすると,他国が日本の今後の対応等を正確に予測することは不可能又は著しく困難であって,被告が主張するようなおそれがあるとはとても考えられない。

(2)

5号該当性について
被告は,本件不開示部分16が公にしないことを前提とした外務省内での
率直な意見交換に基づき記載されたものであり,
これを公にすることにより,
外務省内での率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある旨主張する。

しかし,前記13(2)と同様,被告が報告の主なポイント(甲4の2)において本件文書1の主なポイントを公開しており,本件文書1には公にしないことを前提としていなかった部分が存することが明白である上,いかなる事実をもって公にしないことを前提としたのか,いかなる事実をもって公にしないことを前提とした意見交換をしたのか及びいかなる事実をもって不当と評価すべきなのかについて,いずれも全く具体的な説明がないところ,単に,外務省内での検討過程を経たことをもって上記のような主張をするのであれば,行政庁の内部で作成された文書のほとんどが情報公開法5条5号により不開示とすることができることになるから,同号を不当に拡大する解釈である。
(3)

6号該当性について
被告は,本件不開示部分16を公にすることにより,我が国の政策検討の
手法及び政策検討上の関心事項が明らかになる上,対イラク武力行使の問題に係る政策検討,意思決定における問題点及びそれに対する改善策についても明らかとなることから,将来的に類似の事案が発生した場合における我が国政府の政策検討,意思決定の手法,政策検討上の関心事項等を具体的に推察することが可能となり,他国がこれらを我が国の今後の対応の対応を推察するための参考材料として用いるなど,我が国の今後の外交交渉事務に支障を及ぼすおそれがある旨主張するが,他国について何ら特定されておらず,当該国との関係で日本の今後の外交交渉事務に支障を来す具体的な蓋然性は認められないし,その余の主張も,前記5(1)ア(イ)と同様,極めて抽象的な支障を主張するものにすぎないから,被告の主張するところが,不開示事由に該当するとはいえない。
17

項目国民への説明責任に係る不開示部分(本件不開示部分17)に不開示事由がないこと
被告は,本件不開示部分17には,外務省が実施してきた対イラク武力行使
を支持したことに関して広く国民の理解を得るために行った各種広報活動及び国会議員等への説明に関するその効果も含めた検証結果,当時の国内世論を踏まえた今後あるべき広報活動の具体的手法や時期を含む今後に向けた改善点等についての提言等が記録されている旨主張するが,
報告の主なポイント
(甲
4の2)には,

本件に対する国民の理解を得るための広報の重要性は早くから認識されており,また,ホームページを含め種々の努力が払われてきたが,国民への説明方法等につき,一層の改善をする余地があると思われる。

などと公表されており,本件不開示部分17にも,これに対応する記載がされているはずであるところ,本件不開示部分17の分量と上記の記載の分量に大差がないことからして,それほど具体的又は踏み込んだ記載があるとは思われないから,全てを不開示とする合理的な理由はない。
(1)

3号該当性について
被告は,本件不開示部分17を公にすることにより,イラク問題に関する国民への広報及び国会議員等への説明を行うに当たって外務省が重視していた事項が明らかとなるため,将来的に類似の事案が発生し,我が国としての立場,政策を策定する必要が生じた場合,当該武力行使について直接又は間接の利害関係を有する関係国が我が国の対応を推察するに際しては,国際情勢又は既に公開されている従前の我が国の対応を見ても正確な予測を行い得るものではなく,我が国がいかなる事項等を重視していたかが重要であるから,我が国政府自身が行った検証の結果として,外務省内で行われた説明責任を果たすための具体的手法,目指すべき理解のあり方に関する検討,イラク問題に関する広報活動の具体的な取組,国会議員等への説明を行うに当たって外務省が重視していた事項,今後の改善に向けた提言等の事項が明らかとなれば,関係国が対イラク武力行使に関して我が国政府が重視していた事項を参考として用いることによって,我が国が執る対応等を正確に予測することが可能となるところ,関係国が対イラク
武力行使に関して我が国政府が重視していた事項を参考として用いることによって,我が国が執る対応等を正確に予測し,自国を利する形での効果的な外交活動を行うことが可能となるほか,イラク情勢をめぐる我が国の認識が明らかになることにより,イラク及びその周辺国との間での外交交渉において,当該関係国に対し,自国を利するための参考となり得る情報を与えることになるだけでなく,安全保障その他の問題で緊張関係に立つ国が我が国の対応を妨害すべく我が国の国内世論工作等を行う上での参考として用いることも可能となる旨主張する。
しかし,外務省や政府が行っていた説明という国民への広報の内容は,国内向けの事柄にとどまっていて対外的又は国際的に何らかの具体的な支障が生ずるものとは想定し難く,関係国が日本の対応を正確に予測できるという主張も牽強付会のものにすぎないのであって,やはりこれを開示しないことは著しく不当である上,当該国が日本で国内世論工作等を行う具体的な蓋然性もないし,国の安全が害される具体的な蓋然性があるともいえない。また,前記16(1)イと同様,何ら具体的な主張も蓋然性もなく,主張が不明確である上,前記13(1)イと同様,日本の今後の対応等を正確に予測することは不可能又は著しく困難であって,他国との交渉上の不利益を被る具体的な蓋然性もない。

被告は,外交政策が国内において理解又は支持を得られているかは当該政策の効果に多分に影響する,国内世論及びそれを踏まえた国内への説明責任をいかなる手法を用いながら果たすのかとの点は外交政策に影響を及ぼす,関係国への働きかけに関する記述がないことをもって直ちに外交政策又は対外的若しくは国際的影響がないとはいえない旨主張するが,影響の程度は,時の政権の姿勢,政権の支持率等にも左右されて様々であり,時期によっても異なる上,ここで問題となっているのが,15年近く前の対イラク武力行使に関する国内における理解又は支持というものであるか
ら,他国にとって日本の政策の予見可能性が高まるとはいえない。また,本件不開示部分17には,対イラク武力行使に対する国民の理解を得るとの観点から関係国に対して行った働きかけについては記述されておらず,本件不開示部分17は,国内向けの事柄にとどまり,外交政策又は対外的若しくは国際的に影響を与えるものではないから,被告の主張は,失当である。
(2)

5号該当性について
被告は,本件不開示部分17が公にしないことを前提とした外務省内での
率直な意見交換に基づき記載されたものであり,
これを公にすることにより,
外務省内での率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある旨主張する。
しかし,前記13(2)と同様,被告が報告の主なポイント(甲4の2)において本件文書1の主なポイントを公開しており,本件文書1には公にしないことを前提としていなかった部分が存することが明白である上,いかなる事実をもって公にしないことを前提としたのか,いかなる事実をもって公にしないことを前提とした意見交換をしたのか及びいかなる事実をもって不当と評価すべきなのかについて,いずれも全く具体的な説明がないところ,単に,外務省内での検討過程を経たことをもって上記のような主張をするのであれば,行政庁の内部で作成された文書のほとんどが情報公開法5条5号により不開示とすることができることになるから,同号を不当に拡大する解釈である。
(3)

6号該当性について
被告は,本件不開示部分17が公にされることにより,イラク情勢をめぐ
る我が国の検討の視点,関心の対象等が明らかになり,将来的に類似の事案が発生した場合における我が国政府の対応を推察する手がかりとしたり,安全保障その他の問題で緊張関係に立つ関係国が我が国の対応を推察するため
の参考として用いるなど,我が国の今後の外交交渉事務に支障を及ぼすおそれがある旨主張するが,我が国政府の対応を推察する手がかりとする主体及び
安全保障その他の問題で緊張関係に立つ関係国
が明らかではなく,
外交交渉事務に支障を及ぼす具体的な蓋然性についても,何らの主張立証もないし,その余の主張も,前記5(1)ア(イ)と同様,極めて抽象的な支障を主張するものにすぎない。
18

項目参考資料2に係る不開示部分(本件不開示部分18)に不開示事由がないこと
(1)

5号該当性について
被告は,本件文書1自体が非公開を前提として集約された情報を基礎とする文書であって,対イラク武力行使の発生時から10年余りしか経過しておらず,我が国を含む関係国において,当時の意思決定に関与していた者の多くが引き続き外交活動に従事している中で,非公開を前提としている検証チームの構成員の氏名等に関する情報を公にすれば,本件検証に関する情報を得ようとする者等から,本件検証の際に行われた議論の全体を把握している構成員に対して不当な働きかけ(工作活動)が行われたり,この種の作業が行われる際に関与する人員の所属部署が推定されて将来同種の作業が行われる際に外交工作の対象とすべき人員が推測されたり,上記の構成員から引き継ぎを受けたことを前提に本件検証に関する情報を得ようとする者等から現在その地位に就く者に対する不当な働きかけが行われたりするおそれがあるほか,
今後,
何らかの検証等を行う場合において,
構成員が,いずれは自己に関する情報が公にされることをおそれ,その結果,構成員から忌憚のない意見を得ることが困難となるおそれもあり,今後の政府部内での協議,検討,検証等において率直な意見交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある旨主張する。
しかし,
前記13(2)と同様,
被告が
報告の主なポイント
(甲4の2)

において本件文書1の主なポイントを公開しており,本件文書1には公にしないことを前提としていなかった部分が存することが明白である上,いかなる事実をもって公にしないことを前提としたのか,いかなる事実をもって公にしないことを前提とした意見交換をしたのか及びいかなる事実をもって不当と評価すべきなのかについて,いずれも全く具体的な説明がないところ,単に,外務省内での検討過程を経たことをもって上記のような主張をするのであれば,行政庁の内部で作成された文書のほとんどが情報公開法5条5号により不開示とすることができることになるから,同号を不当に拡大する解釈である。また,構成員のうち誰がどのような意見を述べたのかが具体的に明らかにされるのでなければ,被告の主張するような弊害は生じないし,氏名を公開されるのであれば職務であっても忌憚のない意見を述べられないという公務員を想定することもできないから,その意味においても,被告の主張は杞憂にすぎない。

被告は,検証チームの構成員のうち一定の地位に達しない地位にある者の氏名及び当時の肩書が記録されており,不当な働きかけが行われたりするおそれは,元々氏名を公表されている者と比較してより大きい旨主張するが,職員に対して不当な働きかけをするのであれば,全体を統括することで情報が集中している在米大使館特命全権公使の職にあった者に対してするのが直截的かつ効率的であるから,全体を統括する者の氏名は公表することができるのにその他の構成員の氏名を公表することができないというのは,合理的ではない。また,氏名を公表されていない者の方が氏名を公表されていた幹部よりも不当な働きかけを受ける蓋然性が高まるとはいえない。


被告は,在米大使館特命全権公使の職にあった者に不当な働きかけを行うことが効率的であるなどというのは原告の独自の見解である旨主張するが,具体的な反論はない上,検証チームの構成員は,既に別の部署にいる
蓋然性が高く,かつ,過去の事案の検証のための構成員として特定されているにすぎず,対イラク武力行使当時の意思決定をしていた構成員として特定されているわけではないから,一定の構成員のみ氏名及び肩書きを公表できるとすることの合理的な説明になっていない。
(2)

6号該当性について
被告は,検証チームの構成員が特定される情報内容が後日に公開されるこ
とが予想される事態となれば,構成員から外交交渉に関する率直かつ忌憚のない意見を得ることが困難となるおそれがあり,今後の政府部内における協議,検討,検証等の事務を行う上で多大な支障が生ずるおそれがある旨主張するが,前記(1)アと同様,構成員のうち誰がどのような意見を述べたのかが具体的に明らかにされるのでなければ,被告の主張するような弊害は生じないし,氏名を公開されるのであれば職務であっても忌憚のない意見を述べられないという公務員を想定することもできないから,その意味においても,被告の主張は杞憂にすぎないから,情報公開法5条6号に該当する事由があるとはいえない。

以上
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