判例検索β > 平成29年(わ)第700号
窃盗被告事件
事件番号平成29(わ)700
事件名窃盗被告事件
裁判年月日平成31年1月31日
法廷名福岡地方裁判所
裁判日:西暦2019-01-31
情報公開日2019-02-25 10:00:29
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主文
被告人を懲役8年に処する
未決勾留日数中390日をその刑に算入する。
訴訟費用は被告人並びに分離前の相被告人A,同B及び同Cの連帯負担とする。
理由
(犯罪事実)
第1

被告人は,分離前の相被告人D,同E,同A,同B,同C,F及び氏名不詳者らと共謀の上,平成28年7月8日午前9時27分頃,福岡市a区bc丁目d番e号Gビル(以下本件ビルという。
)1階エレベーター前エントランス
(以下
本件エントランスという。
)において,H,
I及びJ(この3名を被害者らという。
)管理の金塊合計160個(重量約160キログラム。時価合
計約7億5840万円。以下本件金塊という。
)在中のキャリーケース5個
(以下本件キャリーケースという。
)並びにI所有又は管理の現金約130
万円及び財布1個等在中のショルダーバッグ1個(時価合計約24万円相当。以下本件ショルダーバッグという。
)を持ち去り窃取した。

第2

被告人は,平成29年5月29日午後零時53分頃,普通乗用自動車を運転し,名古屋市f区gh丁目i番地先の信号機により交通整理の行われている交差点をj町方面からk町方面に向かい直進するに当たり,追尾してきた警ら用無線自動車の追跡から逃れるため,同交差点の対面信号機が既に赤色の灯火信号を表示しているのに,同信号機の赤色の灯火信号を殊更に無視し,かつ,重大な交通の危険を生じさせる速度である時速約50キロメートルに加速し,自車を運転して同交差点に進入したことにより,折から青色信号に従って交差道路を左方(l町方面)から進行してきたK運転の普通貨物自動車前部に自車左側部を衝突させ,その衝撃により脱落して飛散したK運転車両の部品を同交差点南東角の歩道上で自転車に乗って停止していたLの右上腕に衝突させ,よって,Kに通院加療約29日間を要する見込みの頭部打撲,右肩関節挫傷の傷害を,Lに加療約1週間を要する右上腕打撲症の傷害をそれぞれ負わせた。(第1の事実に係る事実認定の補足説明)
1
弁護人の主張等
関係証拠によれば,被告人から情報を得て,D,F,E,A,B及びC(以下,
この6名を実行犯らという。)が,判示日時,場所において,被害者らが運んでいた本件金塊在中の本件キャリーケース(以下,これらを併せて本件キャリーケース等という。を持ち去った事実

(以下
本件持ち去り行為
という。

が認められ,この点に争いはない。
弁護人は,本件持ち去り行為につき被告人に窃盗罪は成立せず,被告人は無罪である旨を主張し,その理由として,本件キャリーケース等については,①本件キャリーケース等は被害者らの占有する財物ではない,②仮に,被害者らの占有が認められるとしても,持ち去ることについて被害者らの同意があった合理的な疑いがある,③仮に,被害者らの同意がなかったとしても,被告人は被害者らの同意があると誤信していたから窃盗の故意がない旨を主張し,本件ショルダーバッグについては,④被告人には窃盗の共謀がない旨を主張する。2
本件キャリーケース等の占有者について(前記①)⑴

関係証拠によれば,出資者から受けた出資金等を元手として購入した金塊を売却し,売却額と購入額の差額を利益として得る事業を行っていたMらから依頼を受けた被害者らが,本件持ち去り行為の前日(平成28年7月7日),山口県下関市内のホテルの1室において,本件金塊の売主が同室内に持ち込んだ本件金塊を,東京から運んできた現金により買い付ける取引を行った後,同ホテル内の被害者らの各居室で本件金塊を保管し,翌日(同月8日)朝までに本件金塊を本件キャリーケースに入れ,本件ビル内の買取業者に売却するため,Nとともに,Oの運転する自動車(車種はトヨタアルファード。以下本件アルファードという。)に乗って,上記ホテルから本件ビルまで本件キャリーケース等を運び,同日午前9時25分頃,本件ビル前に停車した本件アルファードから本件キャリーケース等を降ろして本件ビル内に入り,本件エントランスでエレベーターを待っていたところで,本件持ち去り行為があったことが認められる。
以上の事実経過に照らせば,本件持ち去り行為時において,被害者らが本件キャリーケース等を現実に握持し支配していたことは明らかであるから,被害者らが本件キャリーケース等の占有者であると認められる。


弁護人は,被害者らは,Mらに盲目的に従う運搬役にすぎなかったのであるから占有補助者にすぎず,窃盗罪により保護される独自の占有を有していなかった旨を主張する。しかし,被害者らが本件金塊を入手して本件ビルまで運んできた経過は上記のとおりであり,被害者らやMらの支配が及ばない者により持ち込まれた本件金塊及びそれを入れた本件キャリーケースにつき,その買付場所から本件ビルまでの移動において,それらを一切,手にしたりせず,物理的,現実的にその移動に何ら関与しなかったMらが,それらを占有していたとみる余地はない。弁護人の上記主張は採用できない。

3
被害者らの同意について(前記②)


関係証拠によれば,本件持ち去り行為及びその前後の状況として,以下の事実が認められる。

実行犯らは,
レンタカー2台
(車種はトヨタノアとスズキスイフト。
以下,
それぞれ本件ノア,本件スイフトという。)を借り,POLICEと記載されたワッペンが付けられたベストなど,警察官のように見える服装をして,Aの運転する本件ノアにF,E及びCが,Dの運転する本件スイフトにBが,それぞれ分乗して,本件持ち去り行為の1時間ほど前から,本件ビル周辺の道路を周回するなどした後,遅くとも本件持ち去り行為の30分ほど前から,本件ノアを本件ビル付近の本件ビルの出入口が面する道路上に停車させた。

同日午前9時25分頃,被害者らが本件ビル前に到着すると,同日午前9時26分頃,本件ノアからF,E及びCが,本件スイフトからBが降りて,本件ビル内に入り,E及びFが,被害者らに対し,警察だ,なんで来たか分かっているななどと声を掛けるとともに,キャリーケースを開けるよう求め,被害者らがIのキャリーケースを開けて金塊等の在中品を見せると,これは密輸品じゃないのかと言うなどした。また,他の3名に後れて本件ノアから降りたAは,本件アルファード内に残っていたO及びNに対し,警察だと名乗り,本件アルファードから降りて本件ビル内に入るよう求めた後,本件ビル内に入った。


F,A,B及びCは,被害者らから,本件キャリーケース等と本件ショルダーバッグを持ち去り,同日午前9時30分頃,本件ビルを出て,小走りで本件ノアに戻り,これらを積み込んだ。他方,Eは,本件エントランスに残り,被害者らに対し,ちょっと待っていろなどと言って,被害者らをその場に留めた後,本件ビルから出て,同日午前9時31分頃,本件ビル付近でDの運転する本件スイフトに乗車した。


実行犯らは,同日午前9時32分頃,本件スイフトにAの運転する本件ノアが追従し,対向車線を逆走するなどしながら本件ビル付近から離れ,同日午前9時40分頃,福岡市内から高速道路に乗り入れて東方面に進行した。その途中,山口県下関市内で高速道路を降り,同市内の河川敷において,本件キャリーケース及びI名義のパスポート,健康保険被保険者証,キャッシュカード等が入った本件ショルダーバッグのほか,実行犯らが警察官のように見えるために着用していた衣類を投棄した。


その後,Dは,知人に依頼するなどして,同月11日及び同月15日の2回にわたり,本件金塊のうち合計90キログラムを買取業者に売却して4億3000万円余りの現金を得た。この現金から,D,F及びEがいずれも1億円を,Aが6500万円を,Bが2500万円を,Cが1500万円を,それぞれ得た。

また,
Dは,
平成29年3月頃,
Mとの間で,
互いの代理人弁護士を介し,
本件持ち去り行為について,本件持ち去り行為の関与者が,Mの経営する会社に対し,合計1億6000万円の示談金を支払うことなどを内容とする示談を試みたが,合意には至らなかった。



上記⑴の事実経過に照らせば,実行犯らの一連の行為については,被害者らが本件ビルに到着するのを待ち構え,被害者らに対し,被害者らが金塊の密輸に関与しているとの嫌疑を持った警察官による職務の執行を装い,被害者らをしてその旨を誤信させ,被害者らを本件エントランスに足止めして時間稼ぎをしながら,
本件キャリーケース等を持ち去って,
自動車で犯行現場から逃走し,
その途中,犯行現場からかなり離れた場所で,犯行に用いた物や被害品のうちの一部を投棄するといった証拠の隠滅行為に及んだ上,被害品の相当量を直接処分して高額の利益を得,その後,これによる法律上の責任を免れるため,相応に多額の負担を覚悟して示談の成立を目指したものと評価するのが自然かつ合理的であり,本件持ち去り行為が被害者らの意思に反する財物の窃取行為であったことが強く推認される。
本件キャリーケースの中には,施錠されており,在中の金塊を取り出すために,
実行犯らがその鍵部分を破壊する必要があったものが含まれていたことや,上記のとおり,Iにとって,面識のない他人から持ち去られたり,遠隔地に投棄されたりすることを容認することなど到底考えられない,重要な身分証明書等が入った本件ショルダーバッグが,本件キャリーケース等とともに持ち去られ,本件キャリーケースとともに投棄されたことは,この推認を強めるものである。
また,関係証拠によれば,実行犯らが,本件持ち去り行為によりその占有を取得した本件金塊の半分を超える量を,被害者ら及びその関係者に返還したりせずに,直接換金した上で合計4億円余りもの非常に高額の利益を得たことが認められる一方で(上記⑴オ),前記のとおり,出資者から受けた出資金等を元手として購入した金塊を売却し,売却額と購入額の差額を利益として得る事業を行っていたM,Mに依頼されて,本件ビルまで本件金塊を持ち運ぶことを担った被害者ら並びにO及びN,更にはMの経営する会社及びその代表取締役であり本件持ち去り行為につき提出された被害届の作成名義人(P)のいずれもが,本件持ち去り行為の当時,盗難被害に関する保険に加入するなどしておらず,被害者らはもとより,Mら本件金塊の買い付けや転売に関わる者が,本件持ち去り行為によって何らの利益も得ていないことが認められることも,上記の推認を更に強めるものである。
以上の事情を踏まえると,本件持ち去り行為を同意していない旨の被害者らの各公判供述には高い信用性が認められ,本件持ち去り行為は被害者らの同意なく,その意思に反して行われた窃取行為と認められる。


弁護人は,①福岡に全く土地勘のない実行犯らが,金塊の取引につき事前に
正確な情報を得て,情報どおりの現場で,概ね情報どおりの量の金塊を入手したことは,本件金塊の処分権限を有する者からの本件金塊に関する取引の情報の漏えいがあったことの証左である,②実行犯らが着用していたベストにUSAとの記載があることやCが茶髪であったことからすれば,実行犯らを警察官と信じ込んでいたため,抵抗や追跡をしなかった旨の被害者らの供述は信用できない,③被害者らが,本件持ち去り行為の直後ではなく,1時間半も経過してから警察署に行ったのは不自然である,④実行犯らが,本件持ち去り行為による利益を得た後,投資を勧誘されたことは,被害者側の人物が実行犯らから利益をかすめ取ろうとしていたことを窺わせる,
などと主張して,
本件キャリーケース等の持ち去りに被害者らの同意があった合理的な疑いがある旨を主張する。
しかし,①については,本件金塊に関する取引の情報が外部者に漏えいされていたとしても,それが直ちに被害者らの同意があったことに結び付くものではない。かえって,関係証拠によれば,D,F,E及びAが,本件持ち去り行為に先立ち,二度にわたり,名古屋から福岡を訪れ,被告人からもたらされた情報に基づき,本件ビル周辺で金塊を運んでいる者を探したが,いずれも接触することなく終わったこと,それにもかかわらず,本件持ち去り行為の際を含め,Dら実行犯らが金塊を持ち去られる側の関係者に直接連絡をとることをしなかったことが認められるが,これらの事実は,被告人を介して実行犯らにもたらされたとされる情報が,本件金塊の処分権限を有する者の意思に反して漏えいされたものであることを窺わせるものといえる。②については,本件持ち去り行為が5分も経たない短時間のうちに遂行されたことに加え,弁護人が指摘するベストのワッペンには,USAとの記載はなく,概ね水平にPOLICEと記載され,その下に,その文字よりもかなり小さな文字でUNITEDOFSTATESOFAMERICA,DEPARTMENTDEFENSEと円を描くように記載されており,それぞれの字の大
きさやその配置の違い,さらには,そのベストには,日本語で機捜と警察官のものと見られる刺しゅうも施されていたことなどに照らせば,弁護人が指摘する事情は,被害者らの上記供述に疑問を抱かせる事情とはならない。③については,本件持ち去り行為の直後に,被害者らの一人であるHが上位者であるMに連絡したことに加え,被害者らが,警察署に行くまでの間,本件ビルの周辺に防犯カメラがないかを確認したり,実行犯らに奪われたIの携帯電話機の位置情報で探索しようとしたりしたことに照らすと,弁護人が指摘する被害者らの行動は,突然,大量の金塊等を奪われるという被害に遭った者の行動として不自然なものとはいえない。④については,A,B及びCの各公判供述によれば,弁護人が指摘する投資の話はこの3名にEが持ち掛けたものであり,同人から被害者側に上記3名の出資した現金が交付されたことを窺わせる事情はないから,弁護人の主張はその前提を欠く。以上のほか,弁護人が種々主張する点を踏まえても,上記⑵の認定に疑問は生じない。4
被害者らの同意があったとの誤信について(前記③)


まず,前記3⑴で認定した本件持ち去り行為及びその前後の一連の状況に照
らすと,当該行為の客観的な態様,すなわち,被害者らが金塊の密輸に関与しているとの嫌疑を持った警察官の職務の執行を装い,被害者らをしてその旨を誤信させ,本件キャリーケース等を持ち去って,自動車で犯行現場から逃走したといった態様自体から,このような行為を実行した実行犯らにおいて,本件持ち去り行為が被害者らの意思に反する財物の窃取行為と認識していたこと,すなわち,本件キャリーケース等を持ち去ることにつき被害者らの同意があると誤信していなかったことが強く推認される。
そして,関係証拠によれば,被告人は,Dに,本件持ち去り行為に関する話を最初に持ち掛けたものであるが,本件持ち去り行為に先立ち,実行犯らが警察官のように装って本件金塊を持ち去るといった上記のとおりの犯行の態様について,Dから聞いていたこと,それにもかかわらず,その具体的な理由について,Dに問い質したりしていないこと,D,F,E及びAは,前記3⑶のとおり,本件持ち去り行為に先立ち,二度にわたり,名古屋から福岡を訪れ,本件ビル周辺で金塊を運んでいる者を探したものの,いずれも接触することなく終わったが,被告人は,Dからその旨の連絡を受けてこれを認識していたことが認められ,これらの事情に照らせば,被告人は,実行犯らと同様,本件持ち去り行為が被害者らの意思に反することを認識していたものと強く推認される。⑵

弁護人は,被告人の供述を踏まえ,被告人は,本件持ち去り行為につき,知
人のQから,金塊の所有者からの依頼で,金塊を持ち去ってもらいたいとの話がある,金塊を運ぶ者も同意している,警察沙汰にはならないなどと聞き,金塊の取引の当事者にしか分からない情報をQから伝えられたことなどから,被告人が本件持ち去り行為について被害者らの同意があると誤信したことは合理的である旨を主張する。
しかし,被告人は,Qからの説明として,密輸された金塊120キログラムを持ち去り,それを所有者側に全て返却すれば,換金して得られた金額の半分を報酬として得られると聞いていた旨を供述するが,そもそも,単に持ち去りに同意している者から金塊を持ち去るといった単純な行為によって,120キログラムの金塊の半分の価額に相当する極めて多額の報酬を得られるなどといった話自体,およそ考え難い荒唐無稽なものである。また,実行犯らは,二度にわたって,金塊を運んでいる者を探したが,いずれも接触することなく終わっており,被告人がQから入手したとする情報が不十分ないし不正確なものであり,その旨の報告を受けた被告人がそれを認識していたことは明らかであることに照らしても,弁護人が種々主張する点を踏まえてみても,被告人が,本件持ち去り行為につき被害者らの同意があると誤信していたとみる余地はない。
5
本件ショルダーバッグの持ち去りについて(前記④)関係証拠によれば,実行犯らのうちの1人が,本件エントランスにおいて,Iに対し,所携の携帯電話機を出すよう求め,Iがこれに従うと,本件ショルダーバッグとともに持ち去ったことが認められる。
このことに,本件持ち去り行為時の状況(前記3⑴アないしウ)や,本件ショルダーバッグがその在中品ごと投棄されたこと(前記3⑴エ)を併せ考えると,Iからの本件ショルダーバッグ等の持ち去りは,具体的な行動によって警察官であると装い,また,通報等のための連絡手段を奪って,本件キャリーケース等の持ち去りという本件犯行の中核的な行為を迅速かつ容易に遂行する目的でされたことが強く推認される。
そうすると,本件キャリーケース等の窃取について共謀を遂げていた被告人においては,上記の目的で遂行される被害者らの私物の窃取行為についても事前に包括的な共謀があったと推認でき,このことは,仮に,被告人が本件ショルダーバッグの持ち去りを逮捕後に認識したとしても,左右されるものでない。
(量刑の理由)
第1の窃盗についてみると,被告人が氏名不詳者らから入手した金塊の取引に関する情報に基づき,D,F及びEが中心となって,警察官のように見える衣類を事前に調達するなど,金塊の窃取の実行に向けた準備を行い,本件当日,実行犯らが2台の自動車に分乗して被害者らの到着を待ち構えた上で,警察官による職務の執行を装うなどして被害者らの不意を突き,ごく短時間で被害者らから本件金塊等を奪い取るという巧妙な手口により,計画的かつ組織的に敢行された犯行である。その被害額は,時価合計7億円以上と類例を見ないほど極めて高額であるが,被告人らは,本件金塊の転売により莫大な利益を得ていながら,被害弁償を一切していない。本件は窃盗事案の中でも相当に悪質性が強く,相当長期の実刑をもって臨むべき事案である(なお,本件金塊が正規に日本国内に持ち込まれたものではない疑いがあるとしても,被告人らが利欲的な動機によりこれを奪い取ることを正当化する理由にはなり得ず,責任非難の程度が低いとする弁護人の主張は採用できない。。)
被告人は,本件金塊の持ち去りには直接携わっていないが,実行犯らに金塊の持ち去りに関する話を持ち掛け,金塊の取引の日時や場所等の本件金塊等の窃取を遂行する上で不可欠の情報を,その提供元から実行犯らにもたらしたのであるから,その果たした役割は相応に大きい。現場に赴いた実行犯らと比べれば低額ではあるが,500万円という相応に高額の報酬を得たこと,同種の服役前科4犯を有しながら,直近の服役から社会復帰して2年余りで犯行に及んだことを併せ考えても,厳しい非難を免れない。
第2の危険運転致傷についてみても,被告人は,交通量の多い時間帯及び場所において,赤色の灯火信号を意に介さず,高速度で交差点内に進入し,その結果,被害者らにそれぞれ判示の傷害を負わせたものである。被害者のうち1名の負傷は相応に重い上,より重大な人身被害を生じさせていた可能性も十分にあった危険な犯行である。被告人は,第1の窃盗により手配されていたため,警察官からの追跡を免れようとして犯行に及んだものであり,身勝手な動機や経緯に,酌むべき点は全くない。
以上の事情に加え,被告人が,第1の犯行については,虚偽の弁解に終始し反省の態度がみられない一方で,第2の犯行については,公判廷でこれを認め,被害者らに対して謝罪文を送付し,また,同人らに対し,一部保険による支払いがなされており,今後も相応の賠償が見込まれることなどの一般情状事実も考慮に容れ,被告人を主文のとおりの刑に処するのが相当と判断した。
(求刑-懲役10年)
平成31年1月31日
福岡地方裁判所第2刑事部

裁判長裁判官

平塚浩司
裁判官

蜷川省吾
裁判官

平岩彩夏
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