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特許権に基づく損害賠償請求権不存在確認等請求控訴事件 特許権 民事訴訟
事件番号平成30(ネ)10048
事件名特許権に基づく損害賠償請求権不存在確認等請求控訴事件
裁判年月日平成31年2月19日
法廷名知的財産高等裁判所
原審裁判所名東京地方裁判所
原審事件番号平成29(ワ)5274
裁判日:西暦2019-02-19
情報公開日2019-03-06 14:00:20
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平成31年2月19日判決言渡
平成30年(ネ)第10048号

特許権に基づく損害賠償請求権不存在確認等請

求控訴事件
(原審・東京地方裁判所平成29年(ワ)第5274号)
口頭弁論終結日

平成31年1月15日

当事者の表示


別紙当事者目録記載のとおり

主文1
本件控訴をいずれも棄却する

2
控訴費用は,控訴人らの負担とする。

3
控訴人アップル

インコーポレイテッドに対し,この判決に対す

る上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1
原判決を取り消す。

2
本件を原審に差し戻す。

第2事案の概要(略称は,特に断りのない限り,原判決に従う。)1
事案の要旨
本件は,控訴人アップル

インコーポレイテッド(以下控訴人アップル

という。)及び控訴人Apple

Japan合同会社(以下控訴人アップルジャパンという。)が,被控訴人クアルコム
インコーポレイテッド(以

下被控訴人クアルコムという。),被控訴人クアルコムジャパン合同会社(組織変更前の商号・クアルコムジャパン株式会社。以下被控訴人クアルコムジャパンという。),被控訴人クアルコム
テクノロジーズ

下被控訴人QTIという。)及び被控訴人クアルコム

テクノロジーズ

アジア-パシフィック

インク(以

シーディーエムエ

ピーティーイー

エルティーデ

ィー(以下被控訴人QCTAPという。)に対し,控訴人らによる原判決別紙物件目録記載の各製品(原告製品)の生産,譲渡等の行為は,被控訴人クアルコムが有する発明の名称を無線通信システムにおける逆方向リンク送信レートを決定するための方法および装置とする特許第4685302号の特許権の侵害に当たらないなどと主張し,被控訴人らが控訴人らの上記行為に係る本件特許権侵害を理由とする損害賠償請求権及び実施料請求権を有しないことの確認を求めた事案である。
原判決は,要旨次のとおり判断して,控訴人らの本件訴えをいずれも却下した。
控訴人らは,これを不服として本件控訴を提起した。
(1)控訴人アップルの被控訴人クアルコムに対する訴えについて①控訴人アップルと被控訴人クアルコムとの間の被控訴人クアルコムが保有する携帯通信システムの通信規格(本件通信規格)に関する全世界的な必須宣言特許ポートフォリオに関する本件ライセンス交渉において,被控訴人クアルコムが控訴人アップルに対し原告製品が本件特許権を侵害していると主張した事実は認められないこと,②被控訴人らは,原審において,被控訴人クアルコムが,原告製品の製造受託業者(CM)であるCM4社に対し,本件特許権を含む特許権について原告製品の製造,譲渡等に係るライセンス(CMライセンス)を付与し,原告製品は全てCM4社から控訴人アップルへ供給されている現時点において,控訴人らに対し,本件特許権に基づく損害賠償請求権及び実施料請求権を有するものではないし,行使する意思もない旨を明確に表明していることなどの事情を総合すれば,被控訴人クアルコムとの関係において,控訴人アップルの有する権利又はその法律上の地位に危険又は不安が現に存在するとは認められないから,控訴人アップルの被控訴人クアルコムに対する訴えは,確認の利益を欠き,不適法である。(2)控訴人アップルの被控訴人クアルコムジャパン,被控訴人QTI及び被控
訴人QCTAPに対する訴え並びに控訴人アップルジャパンの被控訴人らに対する訴えについて
本件特許権を有しない者がその実施品に関する事業等を行っているからといって本件特許権自体や実施料請求権を保有又は行使しているということはできないし,被控訴人クアルコムジャパン,被控訴人QTI及び被控訴人QCTAPが,それらの権利を具体的に行使した事実を認めるに足りる証拠はないから,これらの被控訴人らが,本件特許権侵害に基づく損害賠償請求権及び本件特許権に基づく実施料請求権を行使する具体的なおそれがあるとは認められない。
したがって,控訴人アップルと被控訴人クアルコムジャパン,被控訴人QTI及び被控訴人QCTAPとの間の訴えは,確認の利益は認められず,不適法である。
また,被控訴人らが,控訴人アップルとは別に控訴人アップルジャパンに対し,本件特許権侵害に基づく損害賠償請求権及び本件特許権に基づく実施料請求権を行使する具体的なおそれがあることを基礎付ける事実の主張はないから,控訴人アップルジャパンと被控訴人らとの間の訴えも,確認の利益は認められず,不適法である。
2
前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張
次のとおり訂正し,当審における当事者の主張を付加するほか,原判決事実及び理由の第2の1ないし3記載のとおりであるから,これを引用する。(1)

原判決の訂正


原判決2頁12行目から14行目までを次のとおり改める。

(イ)被控訴人クアルコムジャパンは,情報通信機器及び情報通信サービスについての情報の収集と提供等を目的とする合同会社である。なお,被控訴人クアルコムジャパンは,平成30年9月18日,株式会社から合同会社へ組織変更して設立された(組織変更前の商号・クアルコムジャパン株式会社)。イ
原判決2頁22行目の特許権から23行目までの「という。)」ま
でを本件特許権と改める。

原判決3頁4行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
特許請求の範囲本件特許の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件発明と
いう。)を構成要件に分説すると,次のとおりである(甲2)。
【請求項1】
A
逆方向リンクキャパシティが使い尽くされたか否かを示す逆方向リン
クビジービットを,遠隔局と通信する各基地局が送信する通信システムにおいて,下記の工程を具備する前記遠隔局の逆方向リンク送信レートを決定する方法:
B
前記基地局の各々により送信される逆方向リンクビジービットに従っ
て発生された結合された逆方向リンクビジー信号に従って逆方向リンク送信レートを決定する;および
C
前記逆方向リンク送信レートに従って前記逆方向リンクデータを送信する。」


原判決11頁10行目末尾に次のとおり加える。
また,携帯電話等の端末に組み込まれるチップセットの販売をもって,基地局との無線通信に用いられる方法に関する特許権の黙示のライセンスが存在するとの法理も存在しない。控訴人らは,控訴人らがCMから原告製品の供給を受けていることを前提とした上で,被控訴人らがCMに対し,原告製品の部品であるチップセットを販売したことによって本件特許権が消尽し,仮に消尽していないとしても,被控訴人らは,CMに対し,チップセットを販売することにより,チップセットに組み込まれる特許に係る実施料を含む販売代金の支払を受けるとともに,CMから,原告製品の最終製品価格に基づいて算定した上記特許に係るライセンス料を徴収し,CMは,被控訴人らに支払った上記ライセンス料を原告製品の最終製品価格に全額転嫁して請求していること,控訴人らは,CMに対して,その最終製品価格を支払っていることからすると,被控訴人らは,控訴人らに対し,本件特許権について黙示のライセンスを行い,控訴人らは,被控訴人らに対し,CMを通じて,そのライセンス料を支払っていると評価できるとして,被控訴人らが,控訴人らによる原告製品の生産,譲渡等の行為について,本件特許権侵害を理由とする損害賠償請求権及び実施料請求権を有しない旨主張する。これに対し,被控訴人らは,控訴人らがCMから原告製品の供給を受けていることを前提とした上で,被控訴人らは,CMに対し,本件特許権のライセンスを付与していることを理由に,控訴人らによる原告製品の生産,譲渡等の行為について,上記損害賠償請求権及び実施料請求権を有するものではないし,当該請求権を行使する意思もない旨主張するものであって,控訴人らによる原告製品の生産,譲渡等の行為について,被控訴人らが上記損害賠償請求権及び実施料請求権を有しない理由は,控訴人らの上記主張とは異なる。オ
原判決11頁13行目の本件から記載までを本件発明と,
同頁16行目の構成を構成(構成要件B)とそれぞれ改める。


原判決11頁20行目の仮にから同頁23行目の

評価できる。

までを次のとおり改める。
仮に被控訴人らがCMに対しチップセットを販売したことによっては本件特許権が消尽しないとしても,被控訴人らは,CMに対し,チップセットを販売することにより,チップセットに組み込まれる特許に係る実施料を含む販売代金の支払を受けるとともに,CMから,原告製品の最終製品価格に基づいて算定した上記特許に係るライセンス料を徴収することによって,ライセンス料の二重取りをしていること,CMは,被控訴人らに支払った上記ライセンス料を原告製品の最終製品価格に全額転嫁して請求し,控訴人らは,CMに対して,その最終製品価格を支払っていることからすると,CMによる被控訴人らに対する上記ライセンス料の支払は,控訴人らから被控訴人らに対する本件特許権についての間接的なライセンス料の支払と異なるものではないから,被控訴人らは,控訴人らに対し,本件特許権について黙示のライセンスを行い,控訴人らは,被控訴人らに対し,CMを通じて,そのライセンス料を支払っていると評価できる。(2)

当審における当事者の主張

(控訴人らの主張)
原判決には,以下のとおり,①被控訴人クアルコムが,2016年(平成28年),控訴人アップルと被控訴人クアルコム間の本件ライセンス交渉の中で,控訴人アップルに対し,原告製品が本件特許権を含む被控訴人クアルコムの保有する数多くの特許権を侵害していると主張したとは認められないと判断した点,②被控訴人クアルコムの米国訴訟における本件訴訟と矛盾した主張が本件訴えの確認の利益を基礎付けるものではないと判断した点,③被控訴人クアルコムの子会社である被控訴人クアルコムジャパン,被控訴人QTI及び被控訴人QCTAPによって,控訴人らの法律上の地位にいかなる危険又は不安が生じるかについて十分な検討を行わずに,被控訴人クアルコムの子会社に対する訴えについての確認の利益は認められないと判断した点において誤りがあり,その結果,控訴人らの本件訴えは,確認の利益が存しないとして,いずれも却下した誤りがある。

①の点について

(ア)本件特許権が被控訴人クアルコムと原告製品の製造受託業者(CM)間のCMライセンス契約の対象となっていることについて,被控訴人らからこれを裏付ける証拠は提出されていない上,
被控訴人クアルコムは,

控訴人アップルとのライセンス交渉の過程において,CMライセンス契約の対象特許に本件特許権が含まれることを明らかにしておらず,むしろ,過去の言を翻して,その対象特許は限定的である旨主張するに至った。
また,被控訴人クアルコムは,CMライセンス契約において,ライセンスの有効期間を延長し,新たな技術をライセンス対象として契約に取り込むための再交渉が義務付けられているにもかかわらず,控訴人アップルと被控訴人クアルコム間のドイツのマンハイム地方裁判所に係属中の訴訟(事件番号2O128/17。以下ドイツ訴訟という。)において,2016年(平成28年)第4四半期以降,新たな特許や訴訟の対象特許を取り込むための交渉を一切行っていないことを自認しているから(甲35),CMライセンス契約の有効性やその許諾対象特許の範囲について疑義がある。
したがって,CMライセンス契約が有効に存続し,本件特許権がそのライセンス対象となっているとはいえない。
さらに,台湾の公平交易委員会(TFTC)は,2017年(平成29年)10月20日,被控訴人クアルコムが台湾の競争法(公平交易法)に違反したと認定し,被控訴人クアルコムに対し,課徴金納付命令と併せて,是正措置として,競合するチップセット製造販売業者や,CMを含む携帯通信端末の製造販売業者との間で締結しているライセンス契約について,ライセンス条件の再交渉を行うよう命じ(甲36,37),この是正命令を受けて,被控訴人クアルコムとCMとの間でCMライセンス契約の再交渉が開始されているから,CMライセンス契約の条件は今後変更される可能性がある。
(イ)

控訴人アップルと被控訴人クアルコム間のライセンス交渉において
控訴人アップルが作成したレター(甲9)記載の(absentalicense)
の語は,
レターの文面,
ライセンス交渉の経緯及び目的に照らせば,(控
訴人アップルと被控訴人クアルコムとの間の)直接ライセンスなしでは(absentadirectlicense)という意味であることが明らかである。そして,被控訴人クアルコムは,控訴人アップルの上記レターにおける要請に対し,自社が保有する必須宣言特許をほぼ完全に網羅する特許の一覧表(本件特許を含む。)(甲7)及び自社の保有する必須宣言特許のクレームチャート(甲14)を提示し,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●との文言を含むレター(甲6)を送付した。
このような被控訴人クアルコムの行為は,
直接ライセンスなしでは(absentadirectlicense)被控訴人クアルコムの必須宣言特許(本件特許を含む。)が控訴人アップルによって侵害されているとの認識を示したものである。
以上によれば,被控訴人クアルコムが控訴人アップルに対し,本件特許権について侵害主張を行ったことは明らかである。
(ウ)

以上のとおり,本件特許権はCMライセンス契約の対象特許となっ
ているとはいえず,また,控訴人アップルと被控訴人クアルコム間のライセンス交渉の中で,被控訴人クアルコムが控訴人アップルに対し原告製品が本件特許権を含む被控訴人クアルコムの保有する数多くの特許権を侵害していると主張したことは明らかであるから,被控訴人クアルコムが,控訴人アップルに対し,原告製品が本件特許権を侵害していると主張したとは認められないとの原判決の判断(①の点)は誤りである。イ
②の点について
被控訴人クアルコムは,本件訴訟では,CMライセンス契約の存在を理由として,本件特許権に基づく損害賠償請求権及び実施料請求権を有しない又は行使できない旨主張しているが,控訴人アップルと被控訴人クアルコム間の本件特許の米国対応特許に関するカリフォルニア南部地区連邦
地方裁判所における債務不存在確認訴訟(米国訴訟)では,控訴人アップルに提示した被控訴人クアルコムの保有する携帯通信SEPポートフォリオのライセンス提案(ロイヤルティを含む。)がFRAND条件に適合していたこと及び仮に適合していないとする場合のFRAND条件によるロイヤルティの確認を求める申立てを行い(甲33),さらには,控訴人アップルが本件特許の米国対応特許を侵害している旨の専門家意見書(甲38)を提出するなど,控訴人アップルによる被控訴人クアルコムの保有する特許権の侵害を前提とする主張を行っており,被控訴人クアルコムの両訴訟における主張が矛盾することは明らかである。
以上のような被控訴人クアルコムの米国訴訟における本件訴訟と矛盾した主張は,本件訴えの確認の利益を基礎付けるものといえるから,これを否定した原判決の判断(②の点)は誤りである。なお,被控訴人クアルコムは,2018年(平成30年)4月10日,米国訴訟において,被控訴人クアルコムの保有する全世界的な携帯通信SEPポートフォリオに含まれる特許についてFRAND条件によるロイヤルティの確認を求める申立てを取り下げたが,未だに,控訴人アップルが真摯にライセンスを受ける意思を有しない者であるとの確認判決を求める申立てを維持し,その主張書面において,繰り返し,控訴人らが被控訴人クアルコムのFRAND宣言による利益を享受する地位をもはや有しない旨主張している(甲34)。このような主張は,被控訴人クアルコムが,本件特許を含む自社の必須宣言特許に基づき,控訴人らに対して,差止請求又はFRAND料率を超える料率でのライセンス料相当額の損害賠償請求を行う意思を有していることを示す事情であるし,被控訴人クアルコムが米国訴訟において主張を変遷させたことは,日本においても容易に主張を変更するであろうことを強く示す事実である。

③の点について

前記ア及びイによれば,控訴人アップルの被控訴人クアルコムに対する訴えについて確認の利益が存在することは明らかである。
また,控訴人らは,被控訴人クアルコムと一体となって,ライセンス料請求及びチップセット販売を行う,被控訴人クアルコムの子会社である被控訴人クアルコムジャパン,被控訴人QTI及び被控訴人QCTAPからも権利行使を受ける危険に直面している。
しかるところ,被控訴人クアルコムジャパン,被控訴人QTI及び被控訴人QCTAPによって,控訴人らの法律上の地位にいかなる危険又は不安が生じるかについて十分な検討を行わずに,これらの被控訴人らに対する訴えについての確認の利益が存しないとした原判決の判断(③の点)は誤りである。
(被控訴人らの主張)
控訴人ら主張の①ないし③の点に係る原判決の認定及び判断に誤りはなく,控訴人らの本件訴えは,確認の利益を欠くとした原判決の判断にも誤りはない。

①の点に係る主張に対し
(ア)

被控訴人クアルコムは,CMに対し,本件特許権のライセンスを付
与し,原告製品は,全てCMから控訴人らに供給されているのであるから,被控訴人らは,控訴人らに対し,原告製品の生産,譲渡等につき,本件特許権に基づく損害賠償請求権及び実施料請求権を有するものではないし,当該請求権を行使する意思もない。
したがって,本件口頭弁論終結時において,現に控訴人らの有する権利又は法律上の地位に危険又は不安は生じていない。
(イ)

控訴人らは,被控訴人クアルコムは,控訴人アップルとの本件ライ
センス交渉の過程において,CMライセンス契約の対象特許に本件特許権が含まれることを明らかにしておらず,むしろ,過去の言を翻して,
CMライセンス契約の対象特許は限定的である旨主張するに至ったと述べるが,これを裏付ける客観的な証拠は何ら示されていない。このことは,
被控訴人らが,
本件訴訟において,
控訴人らに対し,
反訴の提起も,
その予告も行っておらず,米国訴訟においても,本件特許又はその対応特許の侵害に基づく損害賠償等の請求を行っていないことからも裏付けられる。
また,被控訴人クアルコムは,ドイツ訴訟において,CMとのライセンス契約における取込み期間(captureperiod)の再交渉を行っていない旨を主張したが,再交渉が行われていないのは,現行のCMライセンス契約が引き続き有効に存在し,再交渉を行う理由がないからであり,このことは,CMライセンス契約が有効に存続することを示すものである。
さらに,現時点において,控訴人ら主張のTFTCの是正命令を受けたことによる被控訴人クアルコムとCM間の再交渉は開始されておらず,ましてやライセンス契約の条件が変更されたという事実もない。控訴人ら主張のCMライセンス契約の条件は今後変更される可能性があるとの点は,本件口頭弁論終結後の事情に過ぎず,現に控訴人らの有する権利又は法律上の地位に危険又は不安が生じていないから,確認の利益を基礎付けるものではない。
(ウ)控訴人アップル作成のレター(甲9)記載の(absentalicense)の語は,ライセンスがないと仮定した場合の意味である。控訴人アップルと被控訴人クアルコム間のライセンス交渉は,CMへの既存のライセンスに依拠することに代えて,控訴人アップルに直接ライセンスを提供することを目的としていたものであるから,CMに対するライセンスは存在し,一方で直接ライセンスが存在しないことは,自明の前提である。そして,CMへのライセンスも直接ライセンスもなければ,特許
権侵害となり得るのであるから,absentalicenseは(CMへのライセンスも含めた)何らかのライセンスがなければの意味でありCM(licenses
ではなく,
単数形の
alicense
が用いられており,
direct(直接の)という修飾語も付されていない。),控訴人らの主張するように直接ライセンスに限定した意味に解されるものではない。
また,控訴人アップルと被控訴人クアルコム間のレター等によるやり取りは,CMへのライセンスに依拠することに代えて,被控訴人クアルコムと控訴人アップルとの間の直接のライセンスの成立を目指す交渉の中で,
そのライセンスの範囲の説明,
検討のために行われたものである。
そのやり取りにおいて,被控訴人クアルコムが本件特許権に基づく損害賠償請求権及び実施料請求権を行使したと評価できる発言は一切なく,行使する旨の予告と解される発言もない。被控訴人クアルコムは,CMに対するライセンスの存在を否定する発言も行っていないし,
ましてや,
CMに対するライセンスが存在するにもかかわらず,本件特許権を行使するとの発言を行ったこともない。
(エ)以上によれば,控訴人らの①の点に係る主張は失当である。イ
②の点に係る主張に対し
本件訴訟における確認の対象は,本件特許権に基づく損害賠償請求権及び実施料請求権の存否であるのに対し,米国訴訟における確認の対象は,当該訴訟の対象特許が控訴人アップルが使用している規格に必須のものではないため特許の侵害がないこと,当該特許が無効であること,チップセットの販売により特許権が消尽したため執行不能であること等の事実であって,両訴訟における確認の対象が異なる。
したがって,被控訴人クアルコムが,本件訴訟において本件特許権に基づく損害賠償請求権及び実施料請求権を有するものではないし,それを行使する意思もないと表明していることと,米国訴訟において係争性を争っ
ていないことは,矛盾するものではない。
また,被控訴人クアルコムが,米国訴訟において,反訴として,被控訴人クアルコムのライセンス提案がFRAND宣言に適合していること及び仮にFRAND宣言に適合しない場合はFRAND条件によるロイヤルティの確認を求める申立てを行ったことは,特定の特許権の行使あるいは行使の意思の表明となるものではない。被控訴人クアルコムは,控訴人アップルとのライセンス交渉において,2016年(平成28年)6月及び7月に,自らがFRANDと考える条件でライセンスの申入れをしたところ,控訴人アップルがFRAND宣言に適合していないとして拒絶したことから,上記申立てを行ったものである。このような経緯と,控訴人アップルと被控訴人クアルコム間のライセンス交渉がCMへの既存のライセンスに依拠することに代えて,直接ライセンスを提供することを目的としていたことに照らせば,上記申立てが,CMに対するライセンスの存在を否定するものでも,控訴人らに対する本件特許権の行使又は行使の予告と評価されるべきものでもないことは明らかである。
さらに,被控訴人クアルコムは,米国において,本件特許の米国対応特許を含む米国訴訟対象特許に基づき訴訟を提起しないことを内容とする,全世界的かつ撤回不可能な誓約を行っているから,被控訴人クアルコムが本件特許の米国対応特許の侵害を主張していることを前提とする控訴人らの主張は失当である。
そして,被控訴人クアルコムが,米国訴訟において,控訴人アップルが真摯にライセンスを受ける意思を有しない者であるとの確認を求める請求を維持し,主張書面でも控訴人アップルがFRAND宣言による利益を享受する地位を有しないと主張しているのは,控訴人アップルが非合理的かつ不誠実な交渉戦術をとったことを理由とするものであって,被控訴人クアルコムが,CMに対するライセンスの存在にもかかわらず,控訴人
らに対して本件特許権を行使する意思を示したものではない。
したがって,控訴人らの②の点に係る主張は失当である。ウ
③の点に係る主張に対し
控訴人アップルの被控訴人クアルコムに対する訴えが確認の利益を欠き,また,被控訴人クアルコムジャパン,被控訴人QTI及び被控訴人QCTAPは本件特許権を有していない以上,控訴人アップルの被控訴人クアルコムジャパン,被控訴人QTI及び被控訴人QCTAPに対する訴えについて,確認の利益はない。
さらに,控訴人アップルの訴えが確認の利益を欠く以上,原告製品の譲渡等を行うにとどまる控訴人アップルジャパンの被控訴人らに対する訴えについて,確認の利益が認められる余地はない。
したがって,控訴人らの③の点に係る主張は失当である。
第3当裁判所の判断
当裁判所も,控訴人らの本件訴えは,確認の利益を欠き,不適法であると判断する。その理由は,以下のとおりである。
1
認定事実
以下のとおり訂正するほか,原判決の事実及び理由の第3の1記載のと
おりであるから,これを引用する。
(1)原判決12頁14行目から15行目にかけての

含まれており,CMライセンス契約は現時点でも有効に存続している。

含まれている。

と改める。
(2)原判決12頁26行目の●●●●●●●●●●の後に,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●を付加する。

(3)

原判決13頁6行目の●●●●●●●●●●●から10行目の●●●●
●●●●●●までを次のとおり改める。
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●(4)

原判決14頁21行目から23行目にかけての●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●を●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●と改める。(5)原判決16頁3行目のこれに対し,から6行目末尾までを削除する。(6)原判決16頁7行目の本件訴訟においてを原審第1回口頭弁論期日においてと改める。(7)原判決16頁12行目末尾に行を改めて次のとおり改める。(6)ア被控訴人クアルコムは,米国訴訟において,2017年(平成29年)5月24日付け第一修正反訴状(甲33)で,控訴人アップルに対し,①被控訴人クアルコムが控訴人アップルに対して申し入れた,携帯通信SEPライセンス条件に関する2016年(平成28年)6月及び同年7月の両申入れ(ロイヤルティ条件を含む。)を含むライセンスの申入れが,被控訴人クアルコムがETSI(欧州電気通信標準化機構)に確約したFRAND条件を充足し,控訴人アップルは,その非合理的かつ不誠実な交渉戦術により,ライセンシーとなる意思がない交渉者となるため,被控訴人クアルコムは,控訴人アップルに関して,自らがETSIに誓約したFRAND条件を充足かつ履行していると確認すること,②もし裁判所が控訴人アップルに関して被控訴人クアルコムが履行すべきFRAND条件の誓約が未だ充足されず履行されていないと判断し,控訴人アップルには,依然として,被控訴人クアルコムからFRAND条件による申入れを受ける権利があると判断する場合は,携帯通信SEPのポートフォリオ・ライセンスのためのFRAND条件によるロイヤルティが,控訴人アップルに対して既に申し入れられている旨を確認する判決を求めた。その後,被控訴人クアルコムは,2018年(平成30年)4月10日,米国訴訟において,自社の保有する全世界的な携帯通信SEPポートフォリオに含まれる特許についてFRAND条件でのロイヤルティの確認を求める申立てを取り下げたが,同月11日付け第二修正反訴状(甲34)で,上記①と同様の判決を求めた。また,被控訴人クアルコムは,米国訴訟において,同年6月29日,控訴人アップルが本件特許の米国対応特許を侵害している旨の電子工学及びコンピューターサイエンスの教授による専門家意見書を提出した(甲38)。被控訴人クアルコムは,米国訴訟において,同年9月14日,本件特許の米国対応特許(米国特許6,556,549号)を含む9つの米国訴訟対象特許について,控訴人アップルを提訴しないとの無条件かつ撤回不能な誓約をしたことを理由に,控訴人アップルの第1修正訴状等の一部却下を求める申立てをした(乙7,8)。カリフォルニア南部地区連邦地方裁判所は,同年11月20日,被控訴人クアルコムが控訴人アップルに対してした上記誓約を踏まえ,被控訴人クアルコムの上記申立てを認容した(乙8)。イ台湾の公平交易委員会(TFTC)は,2017年(平成29年)10月20日,被控訴人クアルコムが,CDMA,WCDMA及びLTEの移動体通信規格に適合するベースバンドチップ市場における支配的地位を濫用し,競合チップ業者へのライセンスを拒絶するとともに,制限的な条項を規定することを要求し,ライセンス契約を締結しなければチップを提供しないという手段を講じ,特定の事業者と排他的取引に係るリベート条項を含む契約を締結する等したことが,ベースバンドプロセッサ市場の競争を損ない,不公正な方法で直接又は間接的に他の事業者が競争に参加することを妨げる行為であり,台湾の競争法である公平交易法9条1項に違反するとして,被控訴人クアルコムに対し,234億台湾元の制裁金を課すこと,是正措置として,競合チップ業者及び携帯電話業者にライセンス契約の改訂又は新しいライセンス契約を提案できることを通知し,協議を行うことを命じる処分をした(甲36,37)。ウ被控訴人クアルコムは,ドイツ訴訟において,2018年(平成30年)3月14日付け「法的紛争における答弁書(甲35)を提出した。同書面には,これらのライセンス契約は,この点において,常に,特定の期間における[クアルコムの]全ての特許がライセンスされるよう構築されてきた。この特定の制限された期間は,『取込み期間(captureperiod)』とも呼ばれている。これらのライセンス契約の条件は,これまで一定の期間ごとに再交渉されており,それによって,ライセンスの取込み期間を延長し,新たな技術をライセンスに取り込んできた。,したがって,2016年第4四半期から現在に至るまで,CM(製造受託業者)は,アップル以外の機器の製造と販売について合意されたロイヤルティは支払っているものの,アップルがクアルコムの特許(標準必須特許であれ,非必須特許についてであれ)を使用した対価として支払われるべき何らのロイヤルティも,支払っていない。この背景を理由として,当然のこととして,取込み期間を将来に延長することや,例えば,訴訟において問題となっている特許をライセンスに取り込むための交渉は一切行われていない。実際,アップルは,CMに対して,交渉を行うよう説得しようとは試みていない。との記載がある。(7)被控訴人らは,平成31年1月15日の当審第1回口頭弁論期日において,被控訴人クアルコムは,CMに対し,本件特許を含む特許について,原告製品の生産,譲渡等に係るライセンスを付与しており,控訴人らは,
CMから全ての原告製品の供給を受けているから,
被控訴人らは,
控訴人らに対し,現在,本件特許権に基づく損害賠償請求権及び実施料請求権を行使する意思はないし,
日本法上行使できるものとも考えてい
ない旨を述べ,同日,本件弁論は終結した。」
2
争点2(確認の利益の有無)について
以下のとおり訂正するほか,原判決の事実及び理由の第3の2記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)原判決20頁7行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
カこれに対し控訴人らは,①本件特許権がCMライセンス契約の対象特許となっていることについて,被控訴人らからこれを裏付ける証拠は提出されていないこと,②被控訴人クアルコムは,控訴人アップルと被控訴人クアルコム間のドイツ訴訟において,2016年(平成28年)第4四半期以降,CMとの間で,新たな特許や訴訟の対象特許を取り込むための交渉を一切行っていないことを自認しており,CMライセンス契約の有効性やその許諾対象特許の範囲について疑義があること,③被控訴人クアルコムは,台湾の公平交易委員会(TFTC)が2017年(平成29年)10月20日にCMを含む携帯通信端末の製造販売業者との間で締結しているライセンス契約について,ライセンス条件の再交渉を行うことを命じる旨の是正命令を受けて,被控訴人クアルコムとCMとの間でCMライセンス契約の再交渉が開始されており,CMライセンス契約の条件は今後変更される可能性があること,④被控訴人クアルコムは,控訴人アップルに対し,自社が保有する必須宣言特許をほぼ完全に網羅する特許の一覧表(本件特許を含む。)(甲7)及び自社の保有する必須宣言特許のクレームチャート(甲14)を提示し,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●との文言を含むレター(甲6)を送付することにより,「直接ライセンスなしでは(absentadirectlicense)被控訴人クアルコムの必須宣言特許(本件特許を含む。)が控訴人アップルによって侵害されているとの認識を示したこと,⑤被控訴人クアルコムが,控訴人アップルの求めに応じて提供した一覧表に本件特許が含まれていたことなどに照らせば,本件特許権はCMライセンス契約の対象特許となっているとはいえず,また,控訴人アップルと被控訴人クアルコム間のライセンス交渉の中で,被控訴人クアルコムが控訴人アップルに対し原告製品が本件特許権を含む被控訴人クアルコムの保有する数多くの特許権を侵害していると主張したことは明らかである旨主張する。
(ア)

しかしながら,前記1(7)認定のとおり,被控訴人らは,本件弁論
を終結した当審第1回口頭弁論期日において,
被控訴人クアルコムは,
CMに対し,本件特許を含む特許について,原告製品の生産,譲渡等に係るライセンスを付与しており,控訴人らは,CMから全ての原告製品の供給を受けているから,
被控訴人らは,
控訴人らに対し,
現在,
本件特許権に基づく損害賠償請求権及び実施料請求権を行使する意思はないし,日本法上行使できるものとも考えていない旨を表明していることに照らすと,本件の口頭弁論終結時点において,本件特許が被控訴人クアルコムとCM間のCMライセンス契約におけるライセンス対象とされていることが認められる。
次に,控訴人らが述べるように2016年(平成28年)第4四半期以降,被控訴人クアルコムとCMとの間で,新たな特許や訴訟の対
象特許を取り込むための交渉を行っていないとしても,そのことは,CMライセンス契約の内容が変更されたり,又は契約自体の効力が喪失したことを直ちに意味するものではない。また,被控訴人クアルコムがTFTCの是正命令(処分)を受けてCMとの間でCMライセンス契約の再交渉を開始したことを認めるに足りる証拠はない。
したがって,控訴人らが挙げる①ないし③の点は,控訴人アップルと被控訴人クアルコム間の本件ライセンス交渉の中で,被控訴人クアルコムが控訴人アップルに対し原告製品が本件特許権を侵害していることを主張したことをうかがわせる事情に当たらない。
(イ)前記1(2)認定のとおり,控訴人アップルと被控訴人クアルコムの本件ライセンス交渉は,CMへの既存のライセンスに依拠することに代えて,控訴人アップルに直接ライセンスを提供することを目的としていたことに照らすと,控訴人アップルが送付した甲9のレター記載の●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●との文中の●●●●●●●●●●の語は,ライセンスがない場合にを意味するものであり,CM
に対するライセンスを含め,およそライセンスが存在しない場合を想定したものと認められる。
そして,前記1(2)の認定事実によれば,被控訴人クアルコムは,控訴人アップルから被控訴人クアルコムに対してライセンスがない場合に原告製品が侵害していると被控訴人クアルコムが考えている特許権の特定を求められたことを受けて,控訴人アップルに対し,被控訴人クアルコムがETSI(欧州電気通信標準化機構)に開示した特許の一覧表(甲7)及び被控訴人クアルコムが保有する特許権の一部についてサンプルクレームチャート(甲14)を提供したことが認められ
ること,上記サンプルクレームチャートには本件特許又はその米国対応特許若しくは中国対応特許は記載されていないことに照らすと,上記一覧表に本件特許が含まれているからといって,控訴人アップルと被控訴人クアルコム間の本件ライセンス交渉の中で,被控訴人クアルコムが控訴人アップルに対し原告製品が本件特許権を侵害していることを主張したものと認めることはできない。
したがって,控訴人らが挙げる④及び⑤の点は,その前提において誤りがある。
(ウ)以上によれば,控訴人らの前記主張は理由がない。

控訴人らは,被控訴人クアルコムは,本件訴訟では,CMライセンス契約の存在を理由として,本件特許権に基づく損害賠償請求権及び実施料請求権を有しない又は行使できない旨主張しているが,
米国訴訟においては,
CMライセンス契約の存在にかかわらず,携帯通信SEPポートフォリオに含まれる特許につき,FRAND条件の適合性やFRAND条件でのロイヤルティの確認を求める申立てをするなど,控訴人アップルによる被控訴人クアルコムの保有する特許権の侵害を前提とする主張を行っており,被控訴人クアルコムの両主張が矛盾することは明らかであり,このような被控訴人クアルコムの米国訴訟における本件訴訟と矛盾した主張は本件訴えの確認の利益を基礎付けるものといえる旨主張する。
しかしながら,前記1(6)認定のとおり,被控訴人クアルコムが,米国訴訟において,反訴として,被控訴人クアルコムのライセンス提案がFRAND宣言に適合していること及び仮にFRAND宣言に適合しない場合はFRAND宣言によるロイヤルティの確認の申立てを行っていること,被控訴人クアルコムが,同訴訟において,2018年(平成30年)6月29日,控訴人アップルが本件特許の米国対応特許を侵害している旨の専門家意見書を提出したことは,被控訴人クアルコムが,本件訴訟において,
被控訴人クアルコムからライセンスを受けたCMから原告製品の供給を受けている控訴人らに対し,本件特許権に基づく損害賠償請求権及び実施料請求権を行使する意思はないし,日本法上行使できるものとも考えていない旨主張していることと何ら矛盾するものではない。
かえって,前記1(6)認定のとおり,被控訴人クアルコムは,米国訴訟において,
本件特許の米国対応特許を含む9つの米国訴訟対象特許について,控訴人アップルを提訴しないとの無条件かつ撤回不能な誓約を行っているのであるから,米国訴訟においても,控訴人アップルによる被控訴人クアルコムの保有する本件特許権の侵害を前提とする主張をしているものとは認められない。
したがって,控訴人らの上記主張は理由がない。」
(2)原判決20頁8行目のこれらを総合すれば,をクこれらを総合すれば,と改める。3
控訴人らによる当審における訴えの追加的変更の申立てについて
当裁判所は,平成31年1月15日の当審第1回口頭弁論期日において,控
訴人らが当審でした平成30年11月15日付け訴えの変更申立書及び同月30日付けの訴えの変更申立補充書に基づく訴えの追加的変更(以下本件訴えの変更という。)の申立てを許さない旨の決定をしたが,その理由は,以下のとおりである。
(1)控訴人らの本件訴えの変更の申立ては,
原判決別紙物件目録記載の原告製
品(合計39製品)のほかに,本件控訴提起後の平成30年9月21日以降に日本国内で販売が開始されたiPhoneXS64GB等の9製
品(以下控訴人新製品という。)を同目録に追加し,被控訴人らが控訴人らによる控訴人新製品の生産,譲渡等の行為について本件特許権侵害を理由とする損害賠償請求権及び実施料請求権を有しないことの確認を追加的に求めたものである。

これに対し被控訴人らは,平成31年1月8日付けの訴えの変更申立てに対する意見書に基づいて,控訴人新製品については原審における争点整理の対象とされていなかったため,被控訴人らにおいて,確認の利益の存否に関する前提となる基本的事実関係(特に控訴人らがCMから全ての控訴人新製品の供給を受けていること)の調査・確認が必要不可欠であり,原告製品と基本的事実関係が異なる場合には新たな主張立証が必要となるおそれが高いことからすれば,本件訴えの変更を認めた場合には,被控訴人らの審級の利益を害することになるとともに,本件訴訟の訴訟手続を著しく遅延させることになるとして,本件訴えの変更の申立てに対して異議を述べた。(2)

ところで,第一審が訴え却下判決の場合における控訴審の審判の対象は,
原則として訴え却下の当否に限られ,控訴審が第一審判決を相当と認めるときは控訴を棄却し,その判断を不当として第一審判決を取り消す場合は,事件につき更に弁論をする必要がないときを除き,原則として自ら請求の当否の審理に入ることなく事件を第一審に差し戻さなければならないこと(民事訴訟法307条)に鑑みると,第一審が訴えの変更後の新請求に係る本案について十分な審理を遂げており,相手方が訴えの変更の申立てに対して異議を述べていないなど特段の事情のない限り,控訴審における訴えの変更の申立ては,相手方の審級の利益を害し,許されないと解するのが相当である。これを本件についてみると,①控訴人新製品は,いずれも本件控訴提起後(控訴提起日控訴人アップルジャパンにつき平成30年5月10日,控訴人アップルにつき同年6月11日)の同年9月21日以降に日本国内で販売が開始された製品であり,原審では,控訴人新製品について,訴えの利益に関する審理はもとより,本案に関する審理が全く行われていないこと,②被控訴人らは,前記(1)のとおり,本件訴えの変更の申立てに対して明示的に異議を述べていることに照らすと,控訴人新製品に関する新請求を当審において追加する本件訴えの変更の申立てについては,特段の事情は認められず,か
えって,本件訴えの変更を許すことは,被控訴人らの新請求に関する審級の利益を害し,本件訴訟の訴訟手続を著しく遅延させるおそれがあるものと認められる。
したがって,控訴人らによる本件訴えの変更の申立ては,民事訴訟法297条,143条4項により,許さないのが相当である。
4
結論
以上のとおり,控訴人らの本件訴えは,いずれも確認の利益を欠き,不適法であるから,本件訴えをいずれも却下した原判決は相当である。
したがって,
本件控訴をいずれも棄却することとし,
主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第4部

裁判長裁判官

大鷹一郎
裁判官

古河謙一
裁判官

関根澄子
(別紙)

当事者目録

控訴人
アップル

インコーポレイテッド

控訴人
Apple

Japan合同会社

控訴人ら訴訟代理人弁護士

長沢幸男同矢倉千栄同稲瀬雄一同石原尚子同雲居寛隆
同訴訟代理人弁理士

大塚康徳
同補佐人弁理士

大塚康弘同江嶋清仁同前田浩次同吉田晴人同西守有人被控訴人
クアルコム

インコーポレイテッド

被控訴人
クアルコム

テクノロジーズ

被控訴人
クアルコム

インク

シーディーエムエー

テクノロジーズアジア-パシフィック
ピーティーイー

エルティーディー

組織変更前の商号・クアルコムジャパン株式会社
被控訴人
クアルコムジャパン合同会社

被控訴人ら訴訟代理人弁護士

城山康文同早田尚貴同岩瀬吉和同柴田義人同高橋同小島諒万同宗川帆南同訴訟代理人弁理士

市川祐輔
同補佐人弁理士

市川英彦綾
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