判例検索β > 平成30年(う)第285号
関税法違反、消費税法違反、地方税法違反
事件番号平成30(う)285
事件名関税法違反,消費税法違反,地方税法違反
裁判年月日平成31年2月20日
法廷名福岡高等裁判所
結果破棄自判
原審裁判所名福岡地方裁判所
原審事件番号平成30(わ)187
裁判日:西暦2019-02-20
情報公開日2019-03-06 16:00:09
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平成31年2月20日宣告

福岡高等裁判所第3刑事部判決

平成30年(う)第285号
関税法違反,消費税法違反,地方税法違反被告事件
主文
原判決を破棄する
被告人を懲役2年6月及び罰金200万円に処する
原審における未決勾留日数中90日をその懲役刑に算入する。
その罰金を完納することができないときは,金1万円を1日に
換算した期間被告人を労役場に留置する。

福岡地方検察庁で保管中の金地金36個(平成30年領第14
56号符号1,3,5,7,9,11,13,15,17,19,21,23,25,27,29,31,33,35,37,39,41,43,45,47,49,51,53,55,57,59,61,63,65,67,69,71)を没収する。
理由
本件控訴の趣意は,検察官八澤健三郎作成の控訴趣意書に,これ
に対する答弁は弁護人金敏寛作成の答弁書に各記載のとおりであるから,これらを引用する。控訴の趣意の論旨は,①原審のいう本件金地金(
金地

金36個)につき,それらが犯人以外の者に属しない物である
と認定できないとした点について,原審で取り調べられた関係各証拠を適正に評価して事実を認定すれば,本件金地金が犯人以外の者に属しない物であることを優に認定することができるから,原判決には没収の前提となる事実の認定について,判決に影響を及ぼ
すことが明らかな事実誤認がある,②本件の結果の重大性,犯行態様の悪質性,被告人の立場及び役割の不可欠性,同種事案との量刑
の均衡等に鑑みれば,本件は,被告人に実刑を言い渡し,罰金刑を併科した上,本件金地金を没収すべき事案であるのに,懲役刑の執行を猶予し,罰金刑を併科せず,本件金地金を没収しなかった原判決は著しく軽きに失して不当である,というものである。これに対する答弁は,原判決が認定した事実からすれば,①本件金地金が犯人以外の者に属しない物であるとの証明がなされているとは
いえないから,原判決には重大な事実誤認はなく,②被告人に言い渡された量刑は適正であり軽すぎるとはいえない,というものである。

第1

事実誤認の趣意について

そこで記録を検討すると,本件金地金について犯人以外の者に属しない物であると認定することができないとした原判決の事実認定は,是認することができず,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認があると認められる。以下理由を説明する。
1
原判決の内容
原判決は,

本件金地金につき,本件全証拠を見渡しても,本件金地金の入手経緯は判然としない。

とした。そして,本件各犯行について,検察官が主張した被告人の属する密輸組織が,香港で用意した金地金を韓国経由で日本に密輸入して消費税等の支払いを免れ,日本国内で消費税等の相当額を上乗せした価格で換金し,その現金で金地金を買い付けて再び金地金を用意し,これを再び密輸入に供することを繰り返すという循環構造を有している。という点につき,本件では検察官が主張するような構造を有している抽象的な可能性は否定できないが,本件金地金がいつ,どこで,どのような権利関係に基づいて本件密輸組織の支配下に移ったかを確定できる証拠は全くない上,本件金地金が日本に密輸入された後のことについても,それが日本国内の会社に売却され,特定の者がその代金を引き出したことまでは判明しているものの,その後,その売却代金が誰の手に渡り,どのように使われたかは立証されていない。として,各犯行が組織的に繰り返されていたことなどの事情を考慮しても,本件金地金について犯人以外の者に属しない物
であると認定することはできない旨説示している(なお,本件金地金は,原判示別表大番号2の一部の犯行に係るものであり,かつ,捜査機関によって押収されている。これらが日本国内の会社に売却されたということはあり得ない反面,同一機会に密輸入された別表本件売却済金地金とい

う。)が日本国内の会社に売却されているという関係にあるから,

本件金地金が日本国内の会社に売却されて,特定の者がその代金を引き出したことまでは判明している。

という説示は,正確さを欠くものである。)。
2
当裁判所の判断
原判決は,本件金地金の入手経過が判然としないとする根拠と
上記の循環構造を有している抽象的可能性は否
本件金地金がいつ,どこで,どのような権利関係

に基づいて当該密輸組織の支配下に移ったかを確定できる証拠は全内の会社に売却され特定の者がその代金を引き出したことまでは判明しているものの,その後,その売却代金が誰の手に渡り,どのように使われたかは立証されていないことを挙げる。
本件売却済金地金に関して,その売却代金の行方が具体的には
立証されていないこと

は,原判決が説示するとおりであ

る。

しかし,原判示別表大番号1の犯行(以下10月事件とい
う。)及び同別表大番号2の犯行(以下2月事件という。)以外の本件密輸組織が敢行したと認められる事件(以下別事件とい
う。)における金地金の売却状況や売却代金の行方等に関する基本構造については,後記のとおり立証されており,これらによって認定できる事実から本件売却済金地金の売却代金の行方も合理的に推認することができる

。さらに,本件金地金がいつ,どこで,

どのような権利関係に基づいて本件密輸組織の支配下に移ったかについても,別事件における金地金の売却状況や売買代金の行方等に関する基本構造が立証されていること等から,本件犯行が検察官主張の循環構造を有している旨合理的に推認することができ(上記
,その結果,本件金地金は本件密輸組織がその出捐により取得
したものと認定することができる

。これらの認定に反す

る原判決の判断は,以下に述べるとおり不合理であって是認することができない。
まず,原審で取り調べられた証拠によると,次の事実が認めら
れる。
妻の実兄である韓国人の指示で株式会社A(以下A会社とい
う。)を設立した同社の代表者は,妻の実兄の頼みにより,貴金属買
取販売業者である株式会社B(以下B会社という。)との間で,
ペーパーカンパニーであるA会社名義で金地金を買い受ける契約を結び,さらに香港に所在するCCOMPANY
社」という。)

LIMITED(以下C会との間で,金地金の買い付けの代行契約を結び,A会社がB会社から買い付けた大量の金地金の引渡しは香港で行われることになっていた。A会社は,B会社から金地金の取引量を制限されるようになったことから,株式会社D(以下「D会社という。)を介在させてB会社から金地金を買い受けるようにもなり,D会社を介在させて買い受けた金地金についても,香港で引渡しが行われる旨の契約が結ばれていた。
10月事件及び2月事件以外にも,多数回にわたり,本件密輸組
織により大量の金地金が香港から韓国経由で運搬役によって福岡空港に持ち込まれ,運搬役から密輸入した金地金を回収する役割の回収役,回収した金地金を日本人の共犯者に渡す役割の入庫役,回収した金地金を貴金属買取販売業者に持ち込む役割の換金役を経て,
B会社福岡支店に持ち込まれて,ペーパーカンパニーである株式会社E等の名義で売却されていた。
これらの金地金の売却代金については,東京に所在するB会社の
本社において受け取られた上,A会社分とD会社分に分けられ,A会社分はその代表者に渡され,D会社分は最終的にその銀行口座に
入金され,これらA会社及びD会社に渡った売却代金を原資として,上記のとおり,A会社名義等でB会社から金地金を買い受けて,香港で引渡しを受けるということが繰り返されていた。
これらの具体的事実,とりわけ,ペーパーカンパニーであるA
会社等に本件密輸組織が密輸入した大量の金地金の売却代金が還流
する一方で,A会社名義等で大量の金地金を香港において調達していたという事実からすれば,本件密輸組織は,A会社名義等で購入されて香港で引き渡された大量の金地金を日本に密輸入し,これらを日本において売却し,その売却代金をA会社に還流させるという循環構造のもとで,犯行を繰り返していたものと推認される。

上記

事実は,原審で同意書証として取調べられた,A会社

の代表者において本件密輸組織が香港で金地金を調達する仕組みを
説明している検察官調書謄本(甲121)のほか捜査報告書(甲71,119,120,122・甲71と122は謄本)等によるものであるが,これらの各証拠に添付されている,A会社とB会社との間の売買基本契約書,A会社とD会社との間の売買基本契約書,A会社とC会社との間の販売代理店契約等の客観的証拠のほか,B会社福岡支店に密輸に係る金地金を持ち込んでいた人物及びB会社から金地金の売却代金を受け取っていた人物の各検察官調書謄本
(甲73,75,76)等により客観的かつ多角的に裏付けられている

上記各証拠により優に認定できるものであ

り,特段の反対証拠が存しない本件証拠関係に照らせば,これらの事実を認定しないことは不合理というべきであるし,これらの事実における推認も優に可能というべきである。
そして,上記

で認定・推認した事実に加えて,2月事件の犯

行は,運搬役,運搬役に同行して引率する役割の引率役,回収役,入庫役,換金役等の多数の共犯者によって分担されるという犯行の実行形態において,他事件の密輸形態と基本的に同一であるから,本件売却済金地金の売却代金は,本件密輸組織に還流したものと推認できるし,同時に密輸入された本件金地金も,上記循環構造に従って,本件密輸組織において,香港における金地金の調達を担って
いたA会社等に還流することが予定されていたと推認することができる。そうすると,本件金地金は,上記循環構造に従って,本件密輸組織において,金地金の調達を担っていたA会社等が調達した,すなわち本件密輸組織の出捐において調達したものであり,犯人
(本件密輸組織の最上位者又はその他の密輸組織構成員)以外の者
には属しないものと認定することができる。
なお,このような密輸入の循環構造からすれば,あえて情を知ら

ない第三者を関与させて金地金そのものの提供を受けたりする等の必要性は認められない。むしろ,組織以外の者を関与させることによる犯罪発覚のリスクが高まることになるのであるから,これらの点からいっても,その循環の一環として密輸入された本件金地金は,犯人(本件密輸組織の最上位者又はその他の密輸組織構成員)以外の者には属しないものと認められる。また,本件密輸組織に対して金地金の調達のための資金提供をしている人物が存在し,仮にその人物において本件密輸組織が金地金の密輸をしていることの認識を欠くとしても,上記循環構造に照らせば,出資をした人物が密輸に
係る金地金に対して所有権を含めた物権的権利を有することにはならないと解されるから,やはり本件金地金は犯人(本件密輸組織の最上位者又はその他の密輸組織構成員)以外の者には属しないものと認められる。
以上のとおりであり,原判決が本件金地金がいつ,どこで,どのような権利関係に基づいて当該密輸組織の支配下に移ったかを確定できる証拠は全くない上,本件売却済金地金が日本国内の会社に売却され,特定の者がその代金を引き出したことまでは判明しているものの,その後,その売却代金が誰の手に渡り,どのように使われたかは立証されていない。としている点は,前提となる循環
構造等の認定について単に抽象的可能性にとどまるとする根拠について証拠がないとか,立証されていないと説示しているだけで,合理的な説明を欠いたもので,事実認定の前提となる関係証拠の評価を誤った結果,論理則・経験則に反する判断をしたものといわざるを得ず,是認することができない。

没収の必要性,相当性について
被告人らの属する本件密輸組織は,上記のとおり,本件に至るま

で金地金の密輸入を繰り返し,密輸入した金地金の売却代金を新たに密輸入する金地金の調達資金に充当していた。押収された本件金地金は,引き続き密輸入のための原資として利用されることが予定されていたということができるから,同種再犯を防止すべき必要性が高く,これを没収するのが相当である。
このように,原判決には没収要件の前提事実の認定に誤認があり,その誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであると認められるから,事実誤認の論旨には理由があり,破棄を免れない。
第2

破棄自判

よって,量刑不当の論旨に対する判断を省略し,刑事訴訟法39

7条1項,382条により原判決を破棄し,同法400条ただし書により,被告事件について更に次のとおり判決する。
1
罪となるべき事実及び証拠の標目
原判決記載のとおりであるからこれらを引用する。

2
法令の適用
罰条
無許可輸入の点
原判決別表大番号ごとに包括して刑法60条,平成30年法律第
8号附則2条,同法律による改正前の関税法111条1項1号,関税法67条
消費税を免れた点
別表大番号ごとに包括して刑法60条,消費税法64条1項1号
地方消費税を免れた点
別表大番号ごとに包括して刑法60条,平成30年法律第3号附

則39条,同法律による改正前の地方税法72条の109第1項
科刑上一罪の処理

刑法54条1項前段,10条(原判示別表小番号の各行為は,い
ずれも1個の行為で3つの罪名に当たるので,それぞれ1罪として刑及び犯情の最も重い消費税法違反の罪の刑で処断する。なお,無許可輸入の点,消費税を免れた点,地方消費税を免れた点はいずれも別表大番号ごとに包括一罪となるので,結局,同番号ごとに1罪として消費税法違反の刑で処断する。)
刑種の選択
情状により懲役刑及び罰金刑を選択
併合罪加重

刑法45条前段
懲役刑について刑法47条本文,10条(犯情の重い原判示別表
大番号2の罪の刑に法定の加重)
罰金刑について刑法48条2項
未決勾留日数の算入

刑法21条(懲役刑に算入)
労役場留置
刑法18条(金1万円を1日に換算)
没収
刑法19条1項1号,2項本文(福岡地方検察庁で保管中の金地

金36個(平成30年領第1456号符号1,3,5,7,9,11,13,15,17,19,21,23,25,27,29,31,33,35,37,39,41,43,45,47,49,51,53,55,57,59,61,63,65,67,69,71)は原判示別表大番号2に係る関税法違反の罪を組成)

原審の訴訟費用の不負担
刑訴法181条1項ただし書

3
量刑の理由
本件各犯行は,日本国内と海外の多数の共犯者が細かく役割を分

担して大量の金地金を継続的に日本に密輸入することを繰り返す組織的犯行の一環であることは明らかである。密輸入に係る金地金は合計120個(重量合計約120㎏)と大量で,免れた税金は4500万円近くに上る。のみならず,本件各犯行は,被告人らの属する本件密輸組織が,消費税等相当額の利益を継続的に得る目的で,香港で用意して韓国に運ばれた金地金を運搬役が日本に飛行機で渡航して本邦に密輸入し,その際に消費税等の支払いを免れた上,日
本国内で回収し,消費税等相当額を上乗せした金額で換金し,さらにこれを元手に新たに金地金を買い付けて香港で引渡しを受けて再度密輸入することが繰り返し可能となるような態勢を構築した上,これを頻回に繰り返すなかで組織的に敢行されたものと認められる。本件各犯行の態様の悪質性の高さと本件密輸組織が消費税等相当額
の利益を継続的に得る目的で,上記のような態勢を構築して本件各犯行を敢行したことを総合すると,本件の犯情は,原判決のいう犯情評価よりも一層強い悪質性を有するものというべきである。
被告人の果たした役割について見ると,被告人は,平成29年8
月末頃から金地金の密輸入に関与するようになり,10月事件にお
いては,回収役と入庫役の役割を果たしていた。そして,2月事件においては,運搬役,回収役,引率役,入庫役(以下これら金地金の密輸入の実行行為に直接関わった韓国人グループの者らをまとめて実行役という。)から密輸入の進捗状況の報告を受けて,そ
の行動に関する指示を与えたほか,運搬役や引率役の人選,変更,
日本での滞在期間や担当させる役割の決定,各実行役の報酬額の決定,航空券等の経費の支払等に関する決定にも関与し,本件密輸組織の資産状況や資金の出納管理に関する報告を受けるなどしていたもので,実行役の実務全般を統括する立場にあった。
被告人の本件密輸組織における果たした役割の大きさの程度に関
して,弁護人は,①密輸入の計画や資金の出納等,重要な事柄に関して決定権を有していないこと,②月額報酬50万円を得ていただけで,他の共犯者らの月額報酬(月額30万円ないし40万円)との違いは10万円程度に過ぎないこと,③摘発の危険の大きい日本国内での任務を担当していたこと,④貴金属買取販売業者に持ち込まれた金地金の売却代金について,どこで,誰の手にわたり,その
後どのように使われたのか知らないことなどを指摘し,これらの事情は被告人が本件密輸組織の最上位の幹部ではないことを裏付けている旨主張する。

香港で用意された金地金を韓国経由で日本に密輸入して,日本国内を収益として得た上で,再度金地金を買い付けて香港で調達するという側面に大別することができる。そのような本件各犯行の全体像
の重要な事項を決定したり,収益を管理して分配したりするなどの権限を有していなかったこと等を示しており,本件密輸組織の最上位の幹部の立場でなかったことを否定することはできない。しかし,被告人は,上記のとおり実行役に関する役割全般に関わり,実行役らの報酬額や経費に関する一定の決定権限を有していたほか,韓国内における実行役のリーダ的立場であったFから引率役や運搬役の
人選等について相談を受けてこれを指示するなどしていた。被告人は,本件密輸組織の相当上位の地位にあったことは明らかであり,弁護人が指摘する点が実行役グループの実務全般を統括する立場であったとの上記の評価に影響を及ぼすものではない。また,弁護人の指摘する②の報酬額の点については,月額50万円の報酬と経費を入れて月100万円を受け取っていた旨の被告人供述以外に証拠はなく,また被告人がどのくらい経費を使用していたかの詳細は不明である。しかし,上記のFは月額70万円の報酬を得ており,被告人は同人より上位の立場にいたことからすれば,実質上月額70万円以上の報酬を得ていたことは優に認められる。このように,被告人が他の共犯者の約2倍の報酬を得ていたことは,被告人の本件
密輸組織における立場の高さを示している。
これに対して,検察官は,被告人について,本件密輸組織の首謀
者であるGと同等又はそれに次ぐ最上位の幹部の地位にあったなどと主張するが,関係証拠からはそのような地位にあったとまで認められないことは既に説示したとおりである(検察官は,原判決後に
捜査共助要請により入手したGの釜山地方検察庁検察官に対する供述調書等を根拠として,Gが本件密輸組織の首謀者であり,被告人がGと同等の地位にあったことが裏付けられているとして,上記の供述調書等の取調べを求めている。しかし,その疎明資料によると,Gの供述は,密輸した金地金の売却代金は,日本の空港で申告した
上,現金で香港又は韓国に持ち出しており,純利益分は韓国に持ち込まれていたなどとする点において,本件で認定される循環構造と大きく異なっているし,Gや被告人等が同等の割合で金地金の購入代金を出資していたという点も含めて,客観的な裏付けを欠くものである。さらに,同供述は,被告人側の反対尋問を経ていない。G
の供述をそのまま採用することは困難とみられる。そうすると,上記供述調書を取り調べたとしても,Gが香港で調達された金地金を韓国を経由して日本に密輸するという実行場面に深く関与していたという以上に,本件犯行の最大の目的と考えられる消費税相当額を収益として得る部分に深く関与していたこと,すなわちGが最上位の幹部であると認めることには疑問が残ることになるから,上記供述調書を取り調べる必要性は認められない。)。
以上によれば,本件の犯情評価は,原判決のいう犯情評価よりも
一層強い悪質性を有するものというべきであることに加えて,2月事件において被告人の果たした役割の大きさ等に照らすと,本件が懲役刑の執行を猶予するのが相当な事案とは認められず,相当期間
の実刑を選択するのはやむを得ない。もっとも,被告人の本件密輸組織における立場は,上記のとおり検察官が主張するような首謀者と同等又はそれに次ぐ最上位の幹部の立場にあったとまでは認められず,原審求刑の懲役刑の刑期(懲役6年)は重きに過ぎると言わざるを得ない。そして,事実を認めて反省の態度を示していること
など被告人のために酌むべき一般情状事実も考慮して主文の懲役刑の刑期を量定した。
次に罰金刑の併科について検討すると,上記のとおり,被告人は
本件密輸組織に深く関わり相当上記の地位にあり,他の共犯者に比して相当高額の報酬を得ていた。本件のような行為が経済的に割に
合わないことを感銘させるという罰金刑併科の趣旨からすると,被告人に対して罰金刑を併科するのが相当である。なお,罰金額については,被告人の得ていた報酬は,組織全体において得ていた利得との比較においては大きなものではなく,定額報酬を得ていたにとどまっていることや,その実質的な報酬額も考慮して判示の限度に
とどめるのが相当である。
よって,主文のとおり判決する。
(求刑・懲役6年及び罰金1000万円,主文同旨の没収)
平成31年2月20日
福岡高等裁判所第3刑事部

裁判長裁判官

野島秀夫
裁判官

今泉裕登
裁判官

潮海二

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