判例検索β > 平成30年(行ケ)第10032号
特許取消決定取消請求事件 特許権 行政訴訟
事件番号平成30(行ケ)10032
事件名特許取消決定取消請求事件
裁判年月日平成31年3月26日
法廷名知的財産高等裁判所
裁判日:西暦2019-03-26
情報公開日2019-03-27 16:00:35
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平成31年3月26日判決言渡
平成30年(行ケ)第10032号
口頭弁論終結日

特許取消決定取消請求事件

平成31年1月24日
判原決告
ヘクセル

ランフォルセマン

訴訟代理人弁護士

浅村昌弘同松川直樹同和田研史同和田嵩
訴訟代理人弁理士

金井建同浅村皓同池田幸弘同井上洋一同亀岡幹生同下村克彦被告
特許庁長官

指定代理人

木村敏康同佐藤健史同佐木秀次同河本充雄同阿曾裕樹主文々1
特許庁が異議2016-700688号事件について平成29
年11月1日にした決定を取り消す。

2
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由

第1

請求
主文第1項と同旨

第2
1
事案の概要
特許庁における手続の経緯等


原告は,発明の名称を直接法による複合材料部品の製造のための一定の幅を有する新規の中間材とする発明について,
平成21年11月23日
(優
先日平成20年11月28日(以下本件優先日という。),優先権主張国フランス)
を国際出願日とする特許出願
(特願2011-538026号。
以下本件出願という。)をし,平成27年12月18日,特許権の設定登録(特許第5854504号。請求項の数20。以下,この特許を本件特許という。甲10)を受けた。


本件特許について,平成28年8月5日,特許業務法人朝日奈特許事務所から特許異議の申立て(異議2016-700688号事件)がされた(甲31)。
原告は,同年10月13日付けの取消理由通知(甲17)を受けた後,さらに,平成29年3月31日付けの取消理由通知(甲24)を受けたため,同年7月3日付けで,①請求項1ないし16からなる一群の請求項について,請求項1,3ないし6,8ないし11,14ないし16を訂正し,請求項11に係る発明の一部を独立形式で記載した請求項として新たに請求項21を追加し,請求項2,7,12及び13を削除する,②請求項17ないし20からなる一群の請求項について,請求項17ないし19を訂正し,請求項20を削除する旨の訂正請求(以下本件訂正という。甲26)をした。その後,
特許庁は,
同年11月1日,
本件訂正を認めないとした上で,

特許第5854504号の請求項1~20に係る特許を取り消す。

との決定(以下本件決定という。)をし,その謄本は,同月9日,原告に送達された。


原告は,平成30年3月6日,本件決定の取消しを求める本件訴訟を提起した。

2
特許請求の範囲の記載


設定登録時(本件訂正前)
本件特許の設定登録時の特許請求の範囲の請求項1ないし20の記載は,
次のとおりである
(以下,
請求項の番号に応じて,
請求項1に係る発明を
本件発明1などという。甲10)。
【請求項1】
両端部を有すると共に,
両側に面を有し,端部間にてリボンの幅を確定する二つの端部を有する前記リボンを含む,中間材を製造するための方法であって,
前記リボンは,リボンの長さに平行な方向に伸長する強化ストランド又は長繊維を含み,その全長にわたり本質的に一定な所与の幅を有し,a)リボンの幅がその全長にわたり本質的に一定であるような端部を有するリボンを提供する工程;
b)リボンの各面に不織布又は布材料を適用する工程であって,不織布又は布材料の幅はリボンの幅より広く,その結果,不織布又は布材料はリボンの端部を超えて外側に伸びて,リボンの両側にて各端部に沿って不織布又は布材料がはみ出している工程,
c)リボンの各端部に沿って位置する不織布又は布材料のはみ出し部分に沿って,リボンを封入するように不織布又は布材料を共に接着する工程,及び
d)端部に沿って位置する不織布又は布材料のはみ出し部分を切断し,リボンの端部に切断を及ぼすことなく,はみ出し部分の一部分を除去することで,リボンの幅をその全長にわたり本質的に一定であるように維持する工程であって,不織布又は布材料の総重量が中間材の総重量の15%未満であり,はみ出し部分の切断済み端部が中間材の端部を構成する工程を含む,上記方法。
【請求項2】
不織布又は布材料の適用に先立って,リボンの幅を調整する追加の工程を含む,請求項1に記載の方法。
【請求項3】
はみ出し部分の一部分が,フィードローラー又は吸引によって除去される,請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
その全長にわたるリボンの幅の標準偏差が,0.25mm未満であることを特徴とする,請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。【請求項5】
その全長にわたるリボンの幅の標準偏差が,0.22mm未満であることを特徴とする,請求項4に記載の方法。
【請求項6】
その全長にわたるリボンの幅の標準偏差が,0.20mm未満であることを特徴とする,請求項5に記載の方法。
【請求項7】
リボンが,長繊維の集合体に相当する単一のストランドから作製されることを特徴とする,請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。【請求項8】
リボンが複数のストランドから作製されることを特徴とする,請求項1に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも2つのリボンが,不織布又は布材料の適用のために同時に提供される,請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ストランド又は長繊維の材料が,次の材料,すなわち,炭素,ガラス,アラミド,シリカ,セラミック及びこれらの混合物の中から選択されることを特徴とする,請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
不織布又は布材料が熱可塑性繊維を含む,請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記はみ出し部分に沿って不織布又は布材料を共に接着する工程,及び前記の切断工程が,はみ出し部分に沿って不織布又は布材料をホットカットすることによって同時に行われる,請求項11に記載の方法。
【請求項13】
加熱によって,リボンの表面に不織布又は布材料を接着する工程を含む,請求項11に記載の方法。
【請求項14】
不織布又は布材料が,ポリアミド繊維,コポリアミド繊維,又はそれらの組み合わせを含む,請求項11から13までのいずれか1項に記載の方法。【請求項15】
不織布材料が熱可塑性繊維のベールである,請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
熱可塑性繊維のベールが,ポリアミド繊維,コポリアミド繊維,又はそれらの組み合わせを含む,請求項15に記載の方法。
【請求項17】
両端部を有すると共に,
両側に面を有し,端部間にてリボンの幅を確定する二つの端部を有する前記リボンを含む,中間材であって,
前記リボンは,ストランド又は長繊維が,リボンの長さに平行な方向に伸長する,その各面上で不織布又は布材料と結合した強化ストランド又は長繊維のリボンであって,リボンの所与の幅がその全長にわたり本質的に一定であり,標準偏差が0.25mm未満であり,不織布又は布材料の総重量が,中間材の総重量の15%未満であり,リボンの各端部に沿って位置する不織布又は布材料のはみ出し部分の切断端部が中間材の端部を構成することを特徴とする,上記中間材。
【請求項18】
リボンの所与の幅の標準偏差が0.22mm未満であることを特徴とする,請求項17に記載の中間材。
【請求項19】
リボンの所与の幅の標準偏差が0.20mm未満であることを特徴とする,請求項18に記載の中間材。
【請求項20】
その長手方向の端部に沿って切断された繊維を有しないことを特徴とする,請求項17から19までのいずれか一項に記載の中間材。


本件訂正後
本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1,3ないし6,8ないし11,14ないし19及び21の記載は,次のとおりである(下線部は本件訂正による訂正箇所である。甲26)。

【請求項1】
両端部を有すると共に,
両側に面を有し,端部間にてリボンの幅を確定する二つの端部を有する前記リボンを含む,熱硬化性マトリックスを含有する複合材料部品を直接法で製造するための材料である中間材を製造するための方法であって,前記リボンは,リボンの長さに平行な方向に伸長する強化ストランド又は長繊維を含み,その全長にわたり本質的に一定な所与の幅を有し,a)拡幅バーを有する拡幅器,次いで複数のストランド又は長繊維に寸法取りをする開口部を規定する寸法取りコームの寸法取り器に,複数のストランド又は長繊維を通過させることによって,複数のストランド又は長繊維間に間隔が存在しないようにし,リボンの幅がその全長にわたり本質的に一定であるような端部を有するリボンを提供する工程;
b)リボンの各面に,加熱により軟化して粘着性を有し,加熱後に冷却されるときリボンの均一な密着を確実にする不織布又は布材料を,予備加熱後に1超から10の圧縮比で適用する工程であって,加熱及び圧縮された不織布又は布材料の幅はリボンの幅より広く,その結果,不織布又は布材料はリボンの端部を超えて外側に伸びて,リボンの両側にて各端部に沿って不織布又は布材料がはみ出している工程,
c)リボンの各端部に沿って位置する不織布又は布材料のはみ出し部分に沿って,リボンを封入するように不織布又は布材料を共に接着する工程,及び
d)工程c)と同時に,端部に沿って位置する不織布又は布材料のはみ出し部分を加熱された切断器で切断し,リボンの端部に切断を及ぼすことなく,はみ出し部分の一部分を除去することで,リボンの幅をその全長にわたり本質的に一定であるように維持する工程であって,不織布又は布材料の総重量(1m²あたり)が中間材の総重量(1m²あたり)の(6/132)×100%未満であり,はみ出し部分の切断済み端部が中間材の端部を構成する工程を含む,上記方法。
【請求項3】
はみ出し部分の一部分が,フィードローラー又は吸引によって除去される,請求項1に記載の方法。
【請求項4】
その全長にわたるリボンの幅の標準偏差が,0.25mm未満であることを特徴とする,請求項1又は3に記載の方法。
【請求項5】
その全長にわたるリボンの幅の標準偏差が,0.22mm未満であることを特徴とする,請求項4に記載の方法。
【請求項6】
その全長にわたるリボンの幅の標準偏差が,0.20mm未満であることを特徴とする,請求項5に記載の方法。
【請求項8】
リボンが複数のストランドから作製されることを特徴とする,請求項1に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも2つのリボンが,不織布又は布材料の適用のために同時に提供される,請求項1,3,5及び6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ストランド又は長繊維の材料が,次の材料,すなわち,炭素,ガラス,アラミド,シリカ,セラミック及びこれらの混合物の中から選択されることを特徴とする,請求項1,3,4,5,6,8及び9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
不織布又は布材料が熱可塑性繊維を含む,請求項1,3,5,6及び10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
不織布又は布材料が,ポリアミド繊維,コポリアミド繊維,又はそれらの組み合わせを含む,請求項11に記載の方法。
【請求項15】
不織布材料が熱可塑性繊維のベールである,請求項1,3,4,5,6,8,9,10,11及び14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
熱可塑性繊維のベールが,ポリアミド繊維,コポリアミド繊維,又はそれらの組み合わせを含む,請求項15に記載の方法。
【請求項17】
両端部を有すると共に,
両側に面を有し,端部間にてリボンの幅を確定する二つの端部を有する前記リボンを含む,熱硬化性マトリックスを含有する複合材料部品を直接法で製造するための材料である中間材であって,
前記リボンは,ストランド又は長繊維が,リボンの長さに平行な方向に伸長する,その各面上で,加熱により軟化して粘着性を有し,加熱後に冷却されるときリボンの均一な密着を確実にする不織布又は布材料と結合した強化ストランド又は長繊維のリボンであって,複数のストランド又は長繊維間に間隔が存在しないリボンの所与の幅がその全長にわたり本質的に一定であり,標準偏差が0.25mm未満であり,1超から10の圧縮比で圧縮済みである不織布又は布材料の総重量(1m²あたり)が,中間材の総重量(1m²あたり)の(6/132)×100%未満であり,リボンの各端部に沿って位置する不織布又は布材料のはみ出し部分の切断端部が中間材の端部を構成し,中間材はその長手方向の端部に沿って切断された繊維を有しないことを特徴とする,上記中間材。
【請求項18】
リボンの所与の幅の標準偏差が0.22mm未満であることを特徴とする,請求項17に記載の中間材。
【請求項19】
リボンの所与の幅の標準偏差が0.20mm未満であることを特徴とする,請求項18に記載の中間材。
【請求項21】
両端部を有すると共に,
両側に面を有し,端部間にてリボンの幅を確定する二つの端部を有する前記リボンを含む,熱硬化性マトリックスを含有する複合材料部品を直接法で製造するための材料である中間材を製造するための方法であって,前記リボンは,リボンの長さに平行な方向に伸長する強化ストランドを含み,その全長にわたり本質的に一定であり,標準偏差が0.25mm未満である所与の幅を有し,
a)拡幅バーを有する拡幅器,次いで複数のストランドに寸法取りをする開口部を規定する寸法取りコームの寸法取り器に,複数のストランドを通過させることによって,複数のストランド間に間隔が存在しないようにし,リボンの幅がその全長にわたり本質的に一定であり,標準偏差が0.25mm未満であるような端部を有するリボンを提供する工程であって,少なくとも2つのリボンが不織布又は布材料の適用のために同時に提供される工程;b)リボンの各面に,加熱により軟化して粘着性を有し,加熱後に冷却されるときリボンの均一な密着を確実にする不織布又は布材料を,予備加熱後に1超から10の圧縮比で適用する工程であって,加熱及び圧縮された不織布又は布材料の幅はリボンの幅より広く,その結果,不織布又は布材料はリボンの端部を超えて外側に伸びて,リボンの両側にて各端部に沿って不織布又は布材料がはみ出している工程,
c)リボンの各端部に沿って位置する不織布又は布材料のはみ出し部分に沿って,リボンを封入するように不織布又は布材料を共に接着する工程,及び
d)工程c)と同時に,端部に沿って位置する不織布又は布材料のはみ出し部分を加熱された切断器で切断し,リボンの端部に切断を及ぼすことなく,はみ出し部分の一部分を除去することで,リボンの幅をその全長にわたり本質的に一定であり,標準偏差が0.25mm未満であるように維持する工程であって,不織布又は布材料の総重量(1m²あたり)が中間材の総重量(1m²あたり)の(6/132)×100%未満であり,はみ出し部分の切断済み端部が中間材の端部を構成する工程を含み,
不織布又は布材料が,熱可塑性繊維を含む,上記方法。
3
本件決定の理由の要旨
本件決定の理由は,別紙異議の決定書(写し)のとおりである。
その要旨は,下記のとおり本件訂正を認めないとした上で,平成28年10月13日付けの取消理由通知及び平成29年3月31日付けの取消理由通知で通知した取消理由1(外国語書面出願に係る原文新規事項),取消理由2(サポート要件違反),取消理由3(明確性要件違反)及び取消理由4(本件優先日前に頒布された刊行物である甲1(特開2004-256961号公報)を主引用例とする進歩性の欠如)は,いずれも理由があるから,本件発明1ないし20に係る本件特許は取り消されるべきであるというものである。記
(1)

訂正事項
本件訂正は,訂正事項1ないし28からなり,このうち,訂正事項2ない
し4,20,23及び24の内容は,以下のとおりである(甲26)。ア
訂正事項2
請求項1のa)リボンの幅がその全長にわたり本質的に一定であるような端部を有するリボンを提供する工程本件訂正後の請求項1のを,
a)拡幅バーを有する拡幅器,次いで複数のストランド又は長繊維に寸法取りをする開口部を規定する寸法取りコームの寸法取り器に,複数のストランド又は長繊維を通過させることによって,複数のストランド又は長繊維間に間隔が存在しないようにし,リボンの幅がその全長にわたり本質的に一定であるような端部を有するリボンを提供する工程に訂正(以下,このうち,本件訂正後の請求項1の複数のストランド又は長繊維間に間隔が存在しないという事項を事項Aという場合がある。)。イ
訂正事項3
請求項1のb)リボンの各面に不織布又は布材料を適用する工程であって,不織布又は布材料の幅はリボンの幅より広く,その結果,不織布又は布材料はリボンの端部を超えて外側に伸びて,リボンの両側にて各端部に沿って不織布又は布材料がはみ出している工程を,本件訂正後の請求項1のb)リボンの各面に,加熱により軟化して粘着性を有し,加熱後に冷却されるときリボンの均一な密着を確実にする不織布又は布材料を,予備加熱後に1超から10の圧縮比で適用する工程であって,加熱及び圧縮された不織布又は布材料の幅はリボンの幅より広く,その結果,不織布又は布材料はリボンの端部を超えて外側に伸びて,リボンの両側にて各端部に沿って不織布又は布材料がはみ出している工程に訂正(以下,このうち,本件訂正後の請求項1の布材料を…1超から10の圧縮比で適用する工程という事項を事項Bという場合がある。)。

訂正事項4
請求項1のd)端部に沿って位置する不織布又は布材料のはみ出し部分を切断し,リボンの端部に切断を及ぼすことなく,はみ出し部分の一部分を除去することで,リボンの幅をその全長にわたり本質的に一定であるように維持する工程であって,不織布又は布材料の総重量が中間材の総重量の15%未満であり,はみ出し部分の切断済み端部が中間材の端部を構成する工程を,本件訂正後の請求項1のd)工程c)と同時に,端部に沿って位置する不織布又は布材料のはみ出し部分を加熱された切断器で切断し,リボンの端部に切断を及ぼすことなく,はみ出し部分の一部分を除去することで,リボンの幅をその全長にわたり本質的に一定であるように維持する工程であって,不織布又は布材料の総重量(1m²あたり)が中間材の総重量(1m²あたり)の(6/132)×100%未満であり,はみ出し部分の切断済み端部が中間材の端部を構成する工程に訂正
(以下,
このうち,本件訂正後の請求項1の不織布又は布材料の総重量(1m²あたり)が中間材の総重量(1m²あたり)の(6/132)×100%未満でありという事項を事項Cという場合がある。)。エ
訂正事項20
請求項1,4,8及び9を引用する請求項11に係る発明を独立形式で記載した請求項として,新たに本件訂正後の請求項21を追加。


訂正事項23
請求項17のリボンの所与の幅がその全長にわたり本質的に一定であり,標準偏差が0.25mm未満でありを,本件訂正後の請求項17の複数のストランド又は長繊維間に間隔が存在しないリボンの所与の幅がその全長にわたり本質的に一定であり,標準偏差が0.25mm未満でありに訂正。

訂正事項24
請求項17の不織布又は布材料の総重量が,中間材の総重量の15%未満でありを,本件訂正後の請求項17の1超から10の圧縮比で圧縮済みである不織布又は布材料の総重量(1m²あたり)が,中間材の総重量(1m²あたり)の(6/132)×100%未満でありに訂正。
(2)

訂正の適否についての判断の要旨
本件決定は,訂正事項2ないし4,20,23及び24による訂正は,本件特許の願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,これらを併せて本件特許明細書等といい,また,明細書及び図面を併せて本件明細書という。)に記載した事項の範囲内においてしたものではなく,新規事項の追加に当たり,特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条5項の規定に適合しないこと,訂正事項1~20による本件訂正は,本件訂正後の請求項1~16及び21に係る一群の請求項を訂正するものであり,訂正事項21~28による本件訂正は本件訂正後の請求項17~20に係る一群の請求項を訂正するものであることからすると,その他の訂正事項の適否にかかわらず,請求項1~16及び21に係る一群の請求項の訂正並びに請求項17~20に係る一群の請求項の訂正を認めることはできない旨判断した。
第3

当事者の主張

1
取消事由1(訂正要件の判断の誤り)について


原告の主張

訂正事項2に係る訂正の判断の誤り
(ア)

本件決定は,本件特許明細書等の記載を総合しても,訂正事項2に
係る複数のストランド又は長繊維間に間隔が存在しないという事項(事項A)を導くことができるとはいえないから,訂正事項2(請求項1)に係る訂正は,新規事項の追加に当たり,訂正要件に適合しない旨判断した。
しかしながら,本件明細書の【0027】には,複数の長繊維が
リボンの材料となる場合と複数のストランドがリボンの材料となる場合があることが記載されており,この記載は,【0012】の記載とも整合する。
そして,本件明細書の【0028】には,リボンが複数のストランドを材料とする場合に,その材料となるストランドが接近して配置されることが記載され,それに続けて,リボンの材料となる複数の長繊維及び複数のストランド中の間隔(英語でgap)を最小にしさらに回避すること,つまり,複数の長繊維及び複数のストランド中の間隔を存在しない状態とすることが開示されている。このように,本件明細書には,事項Aが明示されているから,事項Aの導入は新規事項の追加に当たるということはできない。
したがって,本件決定の上記判断は誤りである。
(イ)

被告は,本件明細書【0031】の

層の内側のストランド間に緩い空間が存在しない。

という表現によれば,複数のストランド間には緩くない空間(狭い空間)が存在
する場合を排除するものではなく,
また,図7には,複数のストランドが十分な間隔を置いて配置されていることが示されているから,本件明細書に事項Aの開示はない旨主張する。
しかしながら,本件明細書【0031】の緩い空間との表現は,
単に空間を表現したものであり,同段落が緩くない空間(狭い空間)の存在を示唆するものとはいえないし,甲7は,複数のリボンを同時に作製する様子を示した図であり,図示されているのは,複数のリボンであって,複数のストランドではない。したがって,被告の上記主張は理由がない。

訂正事項3に係る訂正の判断の誤り
本件決定は,本件特許明細書等の記載を総合しても,訂正事項3に係る布材料を…1超から10の圧縮比で適用する工程
という事項
(事項B)
を導くことができるとはいえないから,訂正事項3(請求項1)に係る訂正は,新規事項の追加に当たり,訂正要件に適合しない旨判断した。しかしながら,本件明細書の【0033】は,ポリマー接着剤が布又は不織布,特に熱可塑性材料の場合の記載から始まるから,ポリマー接着剤が熱可塑性の布又は不織布の場合について述べた段落であると理解できる。そして,その後の不織布をリボンとの結合に先立って加熱段階にかけて,ポリマーを軟化及びさらに融解させるとの記載は,軟化及びさらに融解させる対象がポリマーであることを明示している。熱可塑性のポリマー製であれば,必ずしも不織布である必要はなく,熱可塑性の布材料についても同段落の内容が妥当することは,当業者にとって自明であり,熱可塑性のポリマー製の不織布又は布材料を適宜の圧縮比で適用することは技術常識である。
また,本件明細書において,布材料という用語又は布という用
語が単独で使用されることはなく,常に不織布又は布,布若しくは不織布等の表現で使用されており,布材料が不織布と相互に適宜交換可能なものであることが本件明細書全体から読み取れる
(請求項1,
2,9,11ないし14及び17,【0007】,【0014】,【0015】,【0032】,【0033】)。
このように事項Bは,本件明細書の【0033】の段落全体から読み取ることができ,少なくとも本件明細書の全ての記載を総合するときに容易に導くことができる事項であるから,本件明細書には,事項Bが開示されている。
したがって,事項Bの導入は新規事項の追加に当たるということはできないから,本件決定の上記判断は誤りである。

訂正事項4に係る訂正の判断の誤り
本件決定は,本件特許明細書等の記載を総合しても,訂正事項4に係る不織布又は布材料の総重量(1m²あたり)が中間材の総重量(1m²あたり)の(6/132)×100%未満でありという事項(事項C)を導くことができるとはいえないから,訂正事項4(請求項1)に係る訂正は,新規事項の追加に当たり,訂正要件に適合しない旨判断した。しかしながら,本件明細書の【0062】の記載から,加工前のリボンの面密度は,126g/m²であることが分かり,不織布の面密度については,【0052】に3g/m²のコポリアミドの不織材料1R8D03との開示がある。そして,本件明細書の

この本質的に一定な幅により,本件特許に係る発明によるリボンは,面密度のばらつきも非常に小さいことを示す。(

【0019】)との記載に照らすと,本件発明1により得られるリボンの面密度のばらつきは非常に小さいことが分かる。
そうすると,リボン(一方向シート)と不織布がサンドイッチ状となった本件発明1により得られるリボンの面密度は,加工前のリボンの面密度と不織布の面密度両面分を加算した値となり,不織布の適用前後において厚みが変化しない場合(不織布を圧縮比1で適用した場合),126g/m²の一方向シートと2つの不織材料(注:3g/m²)を結合させたリボンの面密度は,126g/m²+(2面×3g/m²)=132g/m²となることが自明である。また,不織布を1超から10の圧縮比で適用するとき,適用後における不織布の厚みは圧縮されて当初よりも薄くなり,加工後のリボンにおける不織布の面密度は,
最初の面密度である3g/m²未満の値となることは明
らかであるから,不織布を1超から10の圧縮比で適用した場合に,不織布の総重量(1m²あたり)の中間材の総重量(1m²あたり)に対する百分率が(6/132)×100%未満の値となることは自明である。さらに,本件明細書の【0062】の実施例では1本のストランドが用いられているが,事項Cは,ポリマー接着剤である不織布又は布材料の1m²あたりの総重量と中間材の1m²あたりの総重量との割合に関するものであり,この割合がリボンの材料が複数の長繊維(1本のストランド)であるか,複数のストランドであるかによって影響を受けないことも自明である。
以上によれば,事項Cは,本件明細書の【0062】の実施例の記載を含む本件明細書の全ての記載を総合するときに容易に導くことができる事項であるから,本件明細書には,事項Cが開示されている。
したがって,事項Cの導入は新規事項の追加に当たるということはできないから,本件決定の上記判断は誤りである。

小括
以上のとおり,訂正事項2ないし4に係る訂正は,新規事項の追加に当たるものではないから,訂正要件に適合し,訂正事項2ないし4を含む訂正事項20,23及び24も,これと同様に,訂正要件に適合する。したがって,本件訂正を認めなかった本件決定の判断は誤りである。


被告の主張

訂正事項2に係る訂正について
本件明細書には,拡幅器,次いで寸法取り器に,複数のストランドを通過させることで
複数のストランド又は長繊維間に間隔が存在しない
ようにすることについての直接的ないし明示的な記載は存在しない。一方,本件明細書の【0031】には,寸法取り段階は…図7に示すように,並行して複数のリボンを作製する場合における,複数のストランドに寸法取りをする開口部を規定する寸法取りコームの寸法取り器上で,層又はストランドを通過させることによって行われる。との記載があり,図7には,複数のストランド1が十分な間隔を置いて配置されていることが図示されている。
また,本件明細書の【0039】には,複数のリボンを同時に製造することも同様に可能であり,その場合,リボンを構成する各ストランド又はストランドの集合体は,必要ならば拡幅され,個々に寸法取りがなされ,切断を可能にするために各ストランド間に十分な間隔を置き,異なるリボンが互いに間隔をあけて配列される。ストランドと間隔を覆う単一の不織材料が,次に,図8に示すように,リボンの各面上で全てのリボンと結合される。との記載があり,図8には,複数のストランド1の間に間隔が存在することが図示されている。
このように,
本件明細書において
複数のストランド
を通過させる
寸法取り器に相当する構成は,【0039】及び図7に示されているものにほかならない。
もっとも,本件明細書の【0028】には,①リボンが複数のストランドの一方向層から成る場合について,各ストランドが接近して配置されること,②リボン作製の前に,幅の標準偏差が最小で,一方向層の全幅を一定にするように調整する場合,層の幅は,材料中のいかなる間隔(英語で「gap)又は重なり部分(英語でoverlap)をも最小にし,さらに回避することによって調整」されることが記載されているが,上記①は,【0038】の複数のストランド1の間に,図7に示されるような間隔が存在することについて述べたものであり,上記②は,リボンの作製前に層の幅を調整する場合の材料中の間隔を記述するものであるから,上記①及び②の記載は,複数のストランド又は長繊維について間隔が存在しないことの根拠となるものではない。
また,【0028】のいかなる間隔(英語で「gap)をも回避する」との記載は,日本語表現として隙間(すきま)を回避するということを意味するに過ぎないから,事項Aの間隔が存在しないという事項が記載されていることの根拠となるものではない。
さらに,【0031】中の緩い空間が存在しないという日本語表現の内容は,緩い空間以外の空間の存在を排除するものではなく,しかも,日本語の一般的な表現として緩い空間が間隔と同義であるともい
えないから,【0031】の記載は,事項Aの記載の根拠になるものではない。
したがって,本件特許明細書等の記載を総合しても,事項Aを導くことができるとはいえず,訂正事項2(請求項1)に係る訂正は,新規事項の追加に当たるから,訂正要件に適合しないとした本件決定の判断に誤りはない。

訂正事項3に係る訂正について
本件明細書の【0033】には,熱圧着の段階を不織材料の溶融温度の-15℃から+60℃の範囲の温度及び0.1から0.6MPaの圧力下で行う結果,不織布について圧縮比を1から10に達成できることが記載されているが,布については,そのような圧縮比が達成できることについての記載はない。
また,不織布は,大きな繊維間距離を確保した嵩高な構造を有しているため(乙2の【0015】,図3),所定の圧力で圧縮された場合に容易に広がることができ,また,容易に圧縮可能な構造を持つのに対し,布材料は,経糸と緯糸が密に織り込まれた構造を有しており(乙3の【0023】,図2),繊維間に緩い空間が存在しないため,不織布と比べて圧縮されにくい構造であることは技術常識である。かかる技術常識に鑑みると,当業者は,本件明細書の【0033】の上記記載が専ら不織布に向けられているものと認識するものといえる。
このような材質の布材料について,予備加熱後に1超から10の圧縮比で適用する工程を達成できるものであること(事項B)が本件明細書に記載されているとはいえない。
したがって,本件特許明細書等の記載を総合しても,事項Bを導くことができるとはいえず,訂正事項3(請求項1)に係る訂正は,新規事項の追加に当たるから,訂正要件に適合しないとした本件決定の判断に誤りはない。

訂正事項4に係る訂正について
(ア)

本件特許明細書等には,接着剤の総重量が得られるリボンの総重量の15%未満である(【0012】)との記載があるが,1m²当たりの総重量に基づく重量百分率を用いた数値範囲については,明示的な記載はなく,(6/132)×100%未満という数式で表現される数値範囲を明示する記載もない。
本件明細書の実施例(【0062】)の記載から,当該実施例のリボンが,
1本のストランドと2つの不織材料を結合させて構成されており,そのストランドが126g/m²であり,2つの不織材料がそれぞれ3g/m²
のものであることが読み取れるものの,
本件発明1に係る
リボンの不織布又は布材料と中間材の1m²あたりの総重量の比
が(6/132)×100%未満という数値範囲を満たすものであることまで導き出せるものではない。
また,【0062】の実施例は,1本のストランドについてのものであるから,本件訂正後の請求項1の複数のストランドにおける数値範囲の根拠となるものではない。
さらに,【0062】の記載は,圧縮後の不織布の面密度を開示するものではなく,圧縮後に切断除去されるはみ出し部分の不織布又は布材料の重量は明らかにされていないことからすると,中間材の総重量や不織布又は布材料の総重量を具体的に計算できる程度に十分に記載されているものとはいえない。
(イ)

以上のとおり,本件特許明細書等のすべての記載を精査しても,事
項Cの不織布又は布材料の総重量(1m2あたり)が中間材の総重量(1m2あたり)の(6/132)×100%未満でありという重量百分率について,その(6/132)×100%という上限値未満の連続的な数値範囲を導き出し得る根拠となる記載は見当たらない。したがって,本件特許明細書等の記載を総合しても,事項Cを導くことができるとはいえず,訂正事項4(請求項1)に係る訂正は,新規事項の追加に当たるから,訂正要件に適合しないとした本件決定の判断に誤りはない。

小括
以上によれば,訂正事項2ないし4に係る訂正は,新規事項の追加に当たり,訂正要件に適合しないとした本件決定の判断に誤りはない。訂正事項2ないし4を含む訂正事項20,23及び24も,これと同様に,訂正要件に適合しないとした本件決定の判断に誤りはない。
したがって,請求項1~16及び21に係る一群の請求項の訂正並びに請求項17~20に係る一群の請求項の訂正を認めることはできないとした本件決定の判断に誤りはないから,
原告主張の取消事由1は理由がない。

2
取消事由2-1(甲1を主引用例とする本件発明1の進歩性の判断の誤り)について



原告の主張
本件決定は,本件発明1は,甲1(本件決定・刊行物1)に記載された発明(以下引用発明という。)と甲2(米国特許第6503856号明細書,本件決定・刊行物3)及び甲4(特開平3-243309号公報,本件決定・刊行物2)に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである旨判断したが,以下のとおり誤りである。ア
相違点の看過
(ア)

本件決定認定の引用発明,本件発明1と引用発明との相違点は,以
下のとおりである。
(引用発明)
(A)引出工程:たて糸を引き出し,(B)狭幅工程:たて糸は糸条幅を3mmに狭め,(C)拡幅工程:熱可塑性樹脂をメルトブローにて不織布化した13g/m²の樹脂材料を,
引き揃えた強化繊維糸条の両面に
貼り合わせたものを離型紙に挟み,プレスロールを通過させ,糸条幅を5.2mmに拡幅すると同時に,(D)固定工程:樹脂材料を表面に接着して強化繊維糸条の幅を固定する,強化繊維糸条の目付が190g/m²で,糸条幅の変動率が5%の強化繊維基材の製造方法。
(相違点(α))
リボンに接着される不織布に関して,本件発明1においては不織布又は布材料の幅はリボンの幅より広く,その結果,不織布又は布材料はリボンの端部を超えて外側に伸びて,リボンの両側にて各端部に沿って不織布又は布材料がはみ出しておりリボンの各端部に沿って位置する不織布又は布材料のはみ出し部分に沿ってリボンが封入されるのに対して,引用発明においては,不織布(不織布化した樹脂材料)の幅とリボン(引き揃えた強化繊維糸条)の幅の関係が不明である点。(相違点(β))
リボンの端部の処理に関して,本件発明1においてはd)端部に沿って位置する不織布又は布材料のはみ出し部分を切断し,リボンの端部に切断を及ぼすことなく,はみ出し部分の一部分を除去することで,リボンの幅をその全長にわたり本質的に一定であるように維持する工程であって,…はみ出し部分の切断済み端部が中間材の端部を構成する工程という切断工程がなされているのに対して,引用発明においては当該切断工程がなされていない点。
(相違点(γ))
不織布又は布材料の総重量に関して,本件発明1においては不織布又は布材料の総重量が中間材の総重量の15%未満であるとされているのに対して,引用発明においては不織布化した13g/m²の樹脂材料を強化繊維糸条の両面に貼り合わせた著に煮
プレスロール通過
させて強化繊維糸条の目付が190g/m²の強化繊維基材となったものであるとされ,最終的な中間材(不織布化した樹脂材料を強化繊維糸条の両面に貼り合わせてプレスロール通過させた後の強化繊維基材)の総重量を基準とした重量百分率の数値が不明である点。
(イ)

しかしながら,本件発明1と引用発明との間には,相違点(α)な
いし(γ)のほかに,次のとおりの相違点があるから,本件決定は,相違点を看過した誤りがあり,その結果,本件発明1の容易想到性の判断を誤ったものである。
(相違点(ア))
本件発明1においては,a)リボンの幅がその全長にわたり本質的に一定であるような端部を有するリボンを提供する工程からd)端部に沿って位置する不織布又は布材料のはみ出し部分を切断し,リボンの端部に切断を及ぼすことなく,はみ出し部分の一部分を除去することで,リボンの幅をその全長にわたり本質的に一定であるように維持する工程…を経て得られたリボンの幅が
その全長にわたり本質的に一定
となるのに対し,引用発明には,リボンの幅がその全長にわたり本質的に一定となる工程は設けられておらず,強化繊維基材における糸条幅の変動率は5%であり,本質的に一定ではない点。
(相違点(イ))
本件発明1においては,得られたリボン(中間材)はその全長にわたり本質的に一定な所与の幅を有しており,a)リボンの幅がその全長にわたり本質的に一定であるような端部を有するリボンを提供する工程において与えられた幅が,d)端部に沿って位置する不織布又は布材料のはみ出し部分を切断し,リボンの端部に切断を及ぼすことなく,はみ出し部分の一部分を除去することで,リボンの幅をその全長にわたり本質的に一定であるように維持する工程…を経て最終的に得られたリボン(中間材)の幅と同一であるのに対し,引用発明により得られた強化繊維基材の糸条幅は狭幅工程によって与えられた3mmとは異なる点。

相違点の容易想到性の判断の誤り
本件決定は,相違点(α)ないし(γ)は,実質的な差異であるとは認められない,また,仮に実質的な差異であるとしても,これらの相違点に係る本件発明1の構成とすることは,当業者にとって通常の創作能力の発揮の範囲にあり,容易に想到することができた旨判断したが,以下のとおり誤りである。
(ア)

相違点(α)について
甲1には,引用発明における不織布化した樹脂材料が強化繊維糸条の
端部からはみ出しているか否かについての開示も示唆もない。
したがって,引用発明において,はみだし部分を封入する構
成(相違点(α)に係る本件発明1の構成)とする動機付けは存在しない。
(イ)

相違点(β)について
前記(ア)のとおり,甲1には,はみだし部分についての開示も示
唆もなく,ましてや,それを切断することに関する開示も示唆もない。したがって,引用発明において,甲2及び甲4を適用して端部を切断する構成(相違点(β)に係る本件発明1の構成)とする動機付けは存在しない。
(ウ)

相違点(γ)について
甲1の【0034】の記載から,引用発明においては,強化繊維基材
100重量%に対して樹脂材料が20重量%を超えなければ,複合材料を得る際にマトリックス樹脂の含浸を妨げるという問題が発生しないことが理解できる。
したがって,引用発明において,不織布又は布材料の総重量が中間材の総重量の15%未満の構成(相違点(γ)に係る本件発明1の構成)とする動機付けは存在しない。

小括
以上によれば,本件発明1は,甲1,2及び4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから,これと異なる本件決定の判断は誤りである。

⑵被告の主張

相違点の看過の主張に対し
(ア)

相違点(ア)について
引用発明は,その糸条幅の変動率を正確かつ安定に制御することを目
的の一つとするものであるから(甲1の【0048】,【0049】),引用発明の糸条幅は,その幅が本質的に一定になるよう制御さ
れたものであり,相違点(ア)は存在しない。
(イ)

相違点(イ)について
本件発明1は,b)の工程(不織布又は布材料を適用する工程)の前
に,リボンの幅が「調整されて変動する工程が追加される」ものを含んでいる。
したがって,b)の工程の前段にあるa)の工程(本質的に一定であるような端部を有するリボンを提供する工程)におけるリボンの幅と,b)の工程の後段にあるd)の工程(本質的に一定であるように維持する工程)におけるリボンの幅とは,請求項2の追加の工程
によって調整されて変動し得るので,一貫して同じ幅になると解し得ないことは明らかであるから,相違点(イ)は存在しない。

相違点の容易想到性の判断の誤りの主張に対し
(ア)

相違点(α)について
当業者であれば,技術常識(甲4)に則り,引用発明において,その
樹脂材料がプレスロールの加圧により強化繊維糸条の端部を超えてはみ出し部分を形成し,封入状態になることを普通に認識するから,相違点(α)は実質的な差異とは認められない。
(イ)

相違点(β)について
本件優先日前に,複合材料の技術分野において,プリプレグの耳部を
切断・除去してその幅を一定であるように維持することは,常套手段に過ぎず,普通に知られていた(甲3,4,乙5,6)。
したがって,当業者にとって,引用発明において形成されることが明らかな耳部の切断を,常套手段といえるリボンの端部に切断を及ぼさない位置で行うこと(甲4の第3図)は,適宜なし得ることである。(ウ)

相違点(γ)について
引用発明は,熱可塑性樹脂をメルトブローにて不織布化した13g/m²の樹脂材料を用いて目付が190g/m²の強化繊維糸条を製造するものである。
そうすると,本件発明1の不織布又は布材料に相当する引用発明
の不織布化した樹脂材料の総重量は,本件発明1の中間材の総重量に相当する引用発明の強化繊維糸条の総重量に対して,13÷190=6.84%と計算され,本件発明1の不織布又は布材料の総重量が中間材の総重量の15%未満の範囲に含まれる数値である点で一致するから,相違点(γ)は実質的な差異ではない。

小括
以上によれば,本件発明1は,甲1,2及び4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件決定の判断に誤りはなく,原告主張の取消事由2-1は理由がない。
3
取消事由2-2(甲1を主引用例とする本件発明2ないし16の進歩性の判断の誤り)について


原告の主張
本件決定は,本件発明2ないし16は,甲1,2及び4に記載された発明に基づいて,又はこれらの発明と本件優先日当時の技術常識に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである旨判断した。
しかしながら,本件発明2ないし16は,請求項1を直接又は間接的に引用し,本件発明1の発明特定事項を含むところ,前記2(1)のとおり,本件発明1は,甲1,2及び4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものといえない以上,本件発明2ないし16についても,同様に,当業者が容易に発明をすることができたものといえない。したがって,本件決定の上記判断は誤りである。



被告の主張
本件発明2ないし16において,本件発明1に追加された発明特定事項は,本件優先日前に周知慣用の常套手段(甲6,8,9,乙7,8等)又は設計事項に過ぎない。
したがって,本件発明2ないし16は,甲1,2及び4に記載された発明に基づいて,又はこれらの発明と本件優先日当時の技術常識に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとした本件決定の判断に誤りはなく,原告主張の取消事由2-2は理由がない。

4
取消事由2-3(甲1を主引用例とする本件発明17の進歩性の判断の誤り)について



原告の主張
本件決定は,本件発明17は,甲1の実施例4に記載された発明(以下甲1の実施例4の発明という。),甲2及び4に記載された発明,本件優先日当時の技術常識に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである旨判断したが,以下のとおり誤りである。

相違点の看過
(ア)

本件決定認定の甲1の実施例4の発明,本件発明17と甲1の実施
例4の発明との相違点は,以下のとおりである。
(甲1の実施例4の発明)
プレスロールを通過させて糸条幅を5.2mmに固定した強化繊維基材であって,たて糸として強化繊維糸条であるPAN系炭素繊維糸条を用い,
13g/m²の不織布状の樹脂材料を強化繊維糸条の表面に接着した,
強化繊維糸条の目付が190g/m²,
糸条幅の変動率が5%の糸条
幅が長手方向および幅方向に安定した強化繊維基材。
(相違点(δ))
標準偏差が,
本件発明17は
0.25mm未満
であるのに対して,
甲1の実施例4の発明は0.26mmである点。
(相違点(ε))
中間材の端部が,本件発明17はリボンの各端部に沿って位置する不織布又は布材料のはみ出し部分の切断端部が中間材の端部を構成しているのに対して,甲1の実施例4の発明は不織布又は布材料のはみ出し部分の切断端部により構成されていない点。(イ)

しかしながら,本件発明17と甲1の実施例4の発明との間には,
相違点
(δ)
(ただし,
甲1の実施例4の発明の標準偏差は
0.51

及び相違点
(ε)
のほか,
次のとおりの相違点があるから,
本件決定は,
相違点を看過した誤りがあり,その結果,本件発明17の容易想到性の判断を誤ったものである。
(相違点(ζ))
不織布又は布材料の総重量に関して,本件発明17においては不織布又は布材料の総重量が中間材の総重量の15%未満とされているのに対して,
甲1の実施例4の発明においては
不織布化した13g/m²の樹脂材料を強化繊維糸条の両面に貼り合わせた後にプレスロール通過させて強化繊維糸条の目付が190g/m²の強化繊維基材となったものであるとされ,最終的な中間材の総重量を基準とした重量百分率の数値が不明である点。
(相違点(ウ))
本件発明17においてはリボン…幅がその全長にわたり本質的に一定であるのに対し,甲1の実施例4の発明の強化繊維基材における糸条幅の変動率は5%であり,本質的に一定ではない点。
(相違点(エ))
本件発明17においてはリボンの所与の幅がその全長にわたり本質的に一定とされ,リボンの幅は所与の幅であるのに対し,甲1の実施例4の発明の強化繊維基材における糸条幅が所与の幅であることは記載されていない点。

相違点の容易想到性の判断の誤り
本件決定は,相違点(δ)及び(ε)に係る本件発明17の構成とすることは,当業者にとって通常の創作能力の発揮の範囲にあり,容易に想到することができた旨判断した。
しかしながら,甲1には,相違点(δ)に係る本件発明17の構成の開示も示唆もない。
また,相違点(ε)及び(ζ)に係る本件発明17の構成が容易想到といえないことは,前記2⑴イと同様である。
したがって,本件決定の上記判断は誤りである。


小括
以上によれば,本件発明17は,甲1,2及び4に記載された発明と本件優先日当時の技術常識に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから,これと異なる本件決定の判断は誤りである。⑵

被告の主張

相違点の看過の主張に対し
前記2⑵アのとおり,相違点(ア)及び(イ)は存在せず,これと同様の理由により,相違点(ウ)及び(エ)も存在しない。


相違点の容易想到性の判断の誤りの主張に対し
相違点(δ)については,甲1の記載(【0049】)から,甲1の実施例4の発明の糸条幅の変動幅を0%(標準偏差0mm)程度とすることは,当業者が適宜なし得る程度のことである。
また,前記2⑵イ(イ)と同様の理由により,相違点(ε)に係る本件発明17の構成とすることは,当業者が適宜なし得る程度のことである。さらに,前記2⑵イ(ウ)と同様の理由により,甲1の実施例4の発明の不織布化した樹脂材料の総重量が強化繊維糸条の総重量の6.8
4%より少ない所定の値であることを理解できるから,本件発明17と甲1の実施例4の発明との間に相違点(ζ)は存在しない。


小括
以上によれば,本件発明17は,甲1,2及び4に記載された発明と本件優先日当時の技術常識に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件決定の判断に誤りはなく,原告主張の取消事由2-3は理由がない。

5
取消事由2-4(甲1を主引用例とする本件発明18ないし20の進歩性の判断の誤り)について



原告の主張
本件決定は,本件発明18ないし20は,甲1,2及び4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである旨判断した。
しかしながら,本件発明18ないし20は,請求項17を直接又は間接的に引用し,
本件発明17の発明特定事項を含むところ,
前記4(1)のとおり,
本件発明17は,甲1,2及び4に記載された発明と本件優先日当時の技術常識に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものといえない以上,本件発明18ないし20についても,同様に,当業者が容易に発明をすることができたものといえない。
したがって,本件決定の上記判断は誤りである。


被告の主張
本件発明18ないし20において,
本件発明17に追加された発明特定事
項は,本件優先日前に周知慣用の常套手段(甲2等)に過ぎない。したがって,本件発明18ないし20は,甲1,2及び4に記載された発明と本件優先日当時の技術常識に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件決定の判断に誤りはなく,原告主張の取消事由2-4は理由がない。

6
取消事由3(外国語書面出願に係る原文新規事項の判断の誤り)について⑴

原告の主張
本件決定は,外国語書面出願である本件出願の外国語書面(以下本件外国語書面という。原文甲36,訳文甲36の2,乙1)に記載された得られるリボン(rubanobtenu)(3頁27行)は,バインダ
ー(liant)が結合して得られたものであって,当該得られたリボンにバインダーが結合したものがはみ出し部分を切断する前の段階で得られた材料を意図していることは明らかであると認定した上で,本件発明1及び17は,はみ出し部分を切断した後の中間材の総重量を基準として接着剤(adhesif)としての不織布又は布材料の総重量の重量百分率を特定しているという点において,本件発明1及び17の特許請求の範囲(請求項1及び17)に記載した事項が本件外国語書面に記載した事項の範囲内にないから,本件発明1及び17並びに請求項1又は請求項17を直接又は間接に引用する本件発明2ないし16,18ないし20に係る本件特許は,原文新規事項(特許法113条5号)に当たる旨判断した。しかしながら,ポリマー接着剤として不織布又は布材料を使用した場合に関するrubanobtenuとの記載は,本件外国語書面中に他に
4箇所(6頁16行,21行,12頁5行,17頁3行)あるところ,その全ての箇所においてはみ出し部分の切断後のリボンを指した表現として使用されていることに照らすと,本件決定のいうrubanobtenuもはみ出し部分の切断後のリボンを意味することは明らかである。したがって,本件決定の上記判断は誤りである。


被告の主張
本件外国語書面に記載のある15%未満という重量百分率は,そのb)の工程,すなわち,リボン(ruban)の各面をバインダー(liant)に結合(association)させた段階における重量百分率(バインダー総重量/リボン総重量の重量百分率)を特定しているものであって,封入工程や切断工程を経ていないものを基準とした重量百分率で特定している。
また,本件外国語書面に記載された事項(3頁16行~27行。本件明細書の【0012】に対応)は,本件出願の出願当初の旧請求項(乙1)に記載されていたa)とb)の工程からなる方法の発明について記載するものであって,本件発明1のc)の工程(リボンの封入工程)及びd)の工程(はみ出し部分の切断除去工程)を含まないものであるから,本件外国語書面の得られるリボン(rubanobtenu)(3頁24行~27行)
は,はみ出し部分の切断後のリボンを意味するものでないことは明らかである。
したがって,本件外国語書面に本件発明1及び17の不織布又は布材料の総重量が中間材の総重量の15%未満が記載されているといえないから,本件発明1ないし20に係る本件特許は,原文新規事項に当たるとした本件決定の判断に誤りはなく,原告主張の取消事由3は理由がない。
7
取消事由4(サポート要件の判断の誤り)について


原告の主張
本件決定は,
請求項1及び17に記載された
不織布又は布材料の総重量
が中間材の総重量の15%未満であるという事項は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載されているとは認められないから,請求項1及び17並びにその従属項である請求項2ないし16,18ないし20の記載は,特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものとはいえず,特許法36条6項1号に規定する要件
(サポート要件)
に適合しない旨判断した。
しかしながら,請求項1及び17に記載された不織布又は布材料の総重量が中間材の総重量の15%未満であるという事項は,本件明細書の【0012】,【0038】,図4及び8等に記載されている。
したがって,本件決定の上記判断は誤りである。



被告の主張
前記6(2)のとおり,本件明細書の【0012】は,本件発明1のc)の工程(リボンの封入工程)及びd)の工程(はみ出し部分の切断除去工程)を含まない発明について述べたものであり,【0012】中の得られるリボンが,加熱バーで不織布又は布材料と結合後にはみ出し部分を切断する連続した一連の工程を経たリボン(中間材)を意味しないことは明らかである。
したがって,本件特許がサポート要件に適合しないとした本件決定の判断に誤りはないから,原告主張の取消事由4は理由がない。

8
取消事由5(明確性要件の判断の誤り)について


原告の主張
本件決定は,本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び本件優先日当時の技術常識を参酌しても,請求項1及び17の不織布又は布材料の総重量が中間材の総重量の15%未満という重量百分率の算出方法を明確に把握することができないので,不織布又は布材料の総重量が中間材の総重量の15%未満という発明特定事項は明確ではないから,請求項1及び17並びにその従属項である請求項2ないし16,18ないし20の記載に係る本件特許は,特許法36条6項2号に規定する要件(明確性要件)に適合しない旨判断した。
しかしながら,中間材の重量,適用前の不織布又は布材料の総重量,及び切断により取り除かれた不織布又は布材料の総重量を秤などで測定することにより,不織布又は布材料の総重量及び中間材の総重量を把握し,中間材の総重量に対する不織布又は布材料の総重量の割合を算出することができるから,不織布又は布材料の総重量が,中間材の総重量の15%未満という発明特定事項は明確である。したがって,本件決定の上記判断は誤りである。



被告の主張
請求項1及び17並びにその従属項である請求項2ないし16,18ないし20には,不織布又は布材料の総重量は不織布又は布材料のはみ出し部分を切断するd)のステップ後の総重量を意味すると断定的に解釈できる記載は存在しない。
また,本件明細書の【0012】の記載を参酌して,当該記載中の接着剤の総重量が本件発明1の不織布又は布材料の総重量を意味すると解した場合には,【0012】の接着剤は切断されるものではないから,本件発明1の不織布又は布材料の総重量を切断前の総重量を意味するものと解さざるを得なくなる。
このように,請求項1及び17の不織布又は布材料の総重量は,製造に供された総重量を意味するのか,あるいははみ出し部分の切断後の総重量を意味するのかを,一義的に把握することができない。したがって,本件特許が明確性要件に適合しないとした本件決定の判断に誤りはなく,原告主張の取消事由5は理由がない。
第4
1
当裁判所の判断
取消事由1(訂正要件の判断の誤り)について

⑴本件明細書の記載事項等について

本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)の記載は,前記第2の2⑴のとおりである。
本件明細書(甲10)の発明の詳細な説明には,次のような記載がある(下記記載中に引用する図1,2及び5ないし8及び表1ないし3については別紙を参照。)。

(ア)

【技術分野】

【0001】
本発明は,複合材料部品の作製に適合する強化材の技術分野に関する。より具体的には,本発明は,熱硬化性樹脂の後続の射出又は注入による複合材料部品の作製のための新規の中間材,そのような材料の積層から複合材料部品を作製する方法,並びに得られる複合材料部品に関する。【背景技術】
【0002】
複合材料部品又は物品,すなわち一方では1つ又は複数の強化材又は繊維層を含有し,他方で,熱可塑性樹脂を含めることができる主として熱硬化性マトリックス(樹脂)を含有するこれらの部品又は物品の作製は,例えば,直接的又はLCM(英語ではLiquidCompositeMoulding(液体複合材成形))と呼ばれる方法により達成することができる。直接法は,1つ又は複数の繊維強化材が乾燥状態(すなわち最終マトリックスが無い状態)で調製され,樹脂又はマトリックスが,別に調製されるという事実によって規定され,例えば,繊維強化材を含有する金型に射出すること(RTM法,
英語では
ResinTransferMoulding
(樹

脂トランスファ成形))による,繊維強化材の厚さを通して注入すること(LRI法,英語ではLiquidResinInfusion(液体樹脂注入)若しくはRFI,英語ではResinFilmInfusion(樹脂フィルム注入))による,又は別
法として金型上に連続して塗布された繊維強化材の各単位層上に,ローラー若しくはブラシにより手作業で交互に被覆/含浸することによる方法である。
【0004】
RTM,LRI又はRFI法では,一般に,所望の完成品の金型の繊維プリフォームを作ることが最初に必要であり,次に,このプリフォームに樹脂を含浸させる必要がある。樹脂を温度による差圧により射出又は注入し,次いで必要な樹脂の量の全てをプリフォーム中に含めると直ちに,この集合体をより高温とし,重合/網状化サイクルを完了して,これにより集合体を硬化させる。
【0005】
自動車,航空又は造船産業で使用される複合材料部品は,非常に厳密な要件,とりわけそれらの機械的特性に関して特に制約される。したがって,一方で一貫性が高く,他方で取扱い及び加工が容易な材料を使用することが特に重要である。
【0006】
これらの分野では,多数のプリフォームが,補強材,主に炭素繊維,とりわけ一方向のものから作製される。とりわけ航空分野で要求される品質及び生産性の高い基準に対処するためには,オートメーションプロセスを実施することがますます必要である。したがって,ドレープ成形若しくは自動蒸着においては,2つの隣接する強化材の材料間隔(英語でgap)又は重なり部分(英語でoverlap)をできる
限り回避するために,規則的な構造を有し特に幅のばらつきの少ない一方向材料に対する需要がある。
【0007】
従来技術は,ストランド間の密着が,強化ストランドに対して横断して伸びる熱可塑性の接着ストランド又はガラス/熱可塑性織布若しくは不織布によって確実なものにされる,強化ストランドの一方向層を提示している。そのような層は,例えばPW-BUDとして,SIGMATEX
A7

UK

Limited,Runcom

Cheshire

W
1TE,英国から販売されている。

【0008】
これらのリボンに関しては,ストランド間の接着は接着点だけに限定され,強化繊維は,接着ストランド間で緩くなっている。結果として,大きな幅のばらつきが特に接着ストランド間に存在し,40から1.0.
00mmの範囲にある標準偏差が幅に生じてしまう。
【0009】
その上,所望の幅を得るために,そのような一方向層を強化ストランドの方向
(従来より,
0°軸と呼ばれる)
に対して平行に切断した場合,
切断した端部がきれいに揃っておらず,長繊維の断片でほつれている。これらの切断繊維は,一般に,束の作製,コイル(リングと呼ばれる)上での材料の巻き取りなどの後続のプロセスに非常に不便である。(イ)

【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって,本発明は,材料の損失を限定しながら,1つ又は複数のストランドから複合材料部品を製造する直接法に適合し,一貫性の高い所与の幅を有する一方向層を達成する方法を提供することを目的とする。
【0011】
本発明の別の目的は,主要な方向に沿って切断された繊維のない一方向層を製造する方法を提供することである。
(ウ)

【課題を解決するための手段】

【0012】
この態様において,本発明は,その各面上で,ポリマー接着剤と結合した強化ストランド又は長繊維のリボンを調製する方法であって,前記リボンは,その全長にわたり実質的に一定な所与の幅を有し,ストランド又は長繊維はリボンの長さに平行な方向に伸長する方法において,次の
a)寸法取り器により,リボンの幅を所望の幅に調整するステップb)その各面上で,リボンをポリマー接着剤と結合して,リボンの均一な密着を確実にし,その結果,接着剤の総重量が得られるリボンの総重量の15%未満となるステップ
を含むことを特徴とする方法を提供することを目的とする。
【0013】
ポリマー接着剤は,例えば,1つ又は複数の熱可塑性及び/又は熱硬化性ポリマーの粉体,又は1つ又は複数の熱可塑性及び/又は熱硬化性ポリマーの不織布である。リボンの両側に不織布を使用することが特に好ましい。
【0014】
ポリマー接着剤が,ポリマー接着剤としての熱硬化性若しくは好ましくは熱可塑性繊維の不織布又は布である場合,調整後に得られる幅を維持するために,これをリボンの幅の調整後にリボンと結合することが有利である。したがって,リボンをこの全長にわたり本質的に一定な所望の幅の寸法に合わせて作り,繊維のリボンがポリマー接着剤と粘着により結合することによって得られる寸法を一定に固定することができ,そのため幅のばらつきが最小にされる。
【0015】
実施変形形態の1つによると,繊維のリボンを,その各面上で,リボンの幅より大きい幅の不織材料又は布に結合させ,不織材料又は布をリボンの各端部でホットカットする。そのような方法により,切断がストランド上でなされずにストランドの端部及びストランド外部に沿って行われるので,特に,ほつれていないきれいに揃った端部を得ることが可能になる。さらに,不織材料は,ポリマー接着剤の少なくとも部分的な溶融が達成されるまで,切断中に加熱される。冷却されるとすぐに,ポリマーによりさらにリボンの寸法取りを維持することが可能になる。とりわけ不織材料又は布がリボンの端部を超えて切断のために十分はみ出る場合,及び切断がリボンの端部にあまり近づいて行われない場合,ストランド又は長繊維のリボンを接着剤の膜内に本質的に封入するように,リボンの各面上の2つの接着剤が接着されるのが理想的である。【0016】
この最後の変形形態の一部として,きれいに揃った端部及びリボン幅の良好な制御の達成をさらに促進するために,一方でリボンを,他方でその各端部から切断される部分を,フィードローラー又は吸引などの手段で取り出す。
【0017】
本発明による方法により,材料の長さに平行な方向に沿って伸長する単一の強化ストランド又は複数の強化ストランドから材料の所与の幅を作製することが可能になる。
【0018】
本発明の文脈において,
本質的に一定の幅を有するリボン,
すなわち,
この全長にわたり幅のばらつきが非常に小さいリボンが得られる。長さは,最低でもおよそ数百メートルの意味と理解される。リボン又はストリップは,この幅よりはるかに大きい長さを有する材料の層の意味と理解される。概して,本発明の方法によって調製されるリボンは,非常に大きい長さを有し,特に市場で利用可能な長さのストランドに合わせることができる。本発明による方法によれば,その全長にわたるリボンの幅は,特に0.25mm未満,好ましくは0.22mm未満,及び優先的には0.20mm以下の標準偏差を有する。リボンの幅及び標準偏差は,表3の結果の例に記載した方法に従って決定することができる。…【0019】
この本質的に一定な幅により,本発明によるリボンは,面密度のばらつきも非常に小さいことを示す。
【0020】
本発明による方法を,それぞれ単一のストランド(長繊維の集合体に相当する)からリボンを作製するために,並びにそれぞれ複数のストランドからリボンを作製するために,実行することができる。
【0021】
複数のリボンを同時に作製するために,本発明による方法を実行することが同様に可能である。
【0022】
本発明は,ストランド又は長繊維がリボンの長さに平行な方向に伸長する,その各面上でポリマー接着剤と結合した強化ストランド又は長繊維のリボンであって,前記リボンがその全長にわたり本質的に一定の所与の幅を有し,特に0.25mm未満,好ましくは0.22mm未満,及び優先的に0.20mm以下の標準偏差を有することを特徴とするリボンもまた目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図7】単一のストランドをベースにして複数のリボンを同時に作製する場合の,ポリマー接着剤との結合前の寸法取り要素に対応する図3のアイテムDを表す図である。
(エ)

【発明を実施するための形態】

【0026】
本発明による方法により,一方向繊維のリボンの幅を寸法取り制御すること,及び一方向の強化繊維にポリマー接着剤を結合することによりリボンのサイズを設定することが可能になり,均一な接着が確実にされる。
そのようなリボンは,
特に3から600mmの幅を示すことができ,
したがって,長繊維の集合体から成る1つ又は複数のストランドから得ることができる。1つ又は複数の非常に微細な1K又は3Kのストランドを使用する場合,より細いリボンでさえ得ることができる。
【0027】
図1に示すように,本発明の文脈で作製されるリボンIは,長さIと幅Lを有している。これらのリボンは,リボンの幅に平行に伸長する長繊維の集合体(単一のストランド1の場合)又はストランド1の集合体(各々が長繊維の集合体から成る)から成る。図2に示すように,リボンは概して長方形の形状であり,この広い面1a及び1bの各々にポリマー接着剤が結合する。図1及び図2は,ポリマー接着剤が2つの不織材料2a及び2bである場合を示し,図3は,ポリマー接着剤が,リボンIの2つの面にわたって分布する粉体3である場合を示している。【0028】
強化長繊維又は繊維は,リボンの全面にわたり準完全被覆を確実にするように配置される。特に,リボンが複数のストランドの一方向層から成る場合,ストランドは,接近して配置される。リボン作製の前に,幅の標準偏差が最小で,一方向層の全幅を一定にするように調整する場合,層の幅は,材料中のいかなる間隔(英語でgap)又は重なり部分(英語でoverlap)をも最小にし,さらに回避することによって調整する。
【0029】
ストランドは,概してストランド又は長繊維の集合体から成り,一般に,炭素ストランドの場合,1,000から80,000本の長繊維を含み,
12,
000から24,
000本の長繊維を含むのが有利である。

【0030】
リボンは,1つ又は複数のストランドから作製される。リボンが複数のストランドから成る場合,これは,所与の幅の層を製造するために寸法取りされるストランド(それぞれが個別のストランドではない)の集合体である。ストランド(単数又は複数)は,スプールから紡ぎ取ることができ,寸法合わせの段階の前に拡幅することができる。この目的を達成するために,ストランド(単数又は複数)は,例えば,図6に示すように1つ又は複数の拡幅バー12を備える拡幅器に入れることができる。この拡幅ステップは,単位面積当たりの所望の重量に依存して,寸法取りの後に所望される幅より広い層若しくはストランドの幅を寸法取りの前に得るためにも,また必要となり得る。この寸法取りシステムは,図6に示すように,寸法取り器13のすぐ前方にあるバー10及び11の出口に位置し,その長さに沿って振動するバー12によって補完され得る。…
【0031】
寸法取り段階は,所与の幅の開口部,特に,ローラーに切れ込む平底の溝の形状にある開口部とすることができる寸法取り器,又は1つ又は複数のストランドをベースにした単一のリボンの場合における,2個の歯の間の開口部の寸法取り器,又は図7に示すように,並行して複数のリボンを作製する場合における,複数のストランドに寸法取りをする開口部を規定する寸法取りコームの寸法取り器上で,層又はストランドを通過させることによって行われる。複数のストランドからなる層を作製する場合,実際,厳密に言えば,層の幅の寸法取りは外側の2本のストランド上においてのみ行われ,他のストランドは拡幅ユニットの前方に配置されたコームにより案内され,その結果,層の内側のストランド間に緩い空間が存在しない。
【0032】
寸法取り器の出口では,寸法取りされた一方向層は,この全長にわたり準一定の幅を有し,この幅は最終リボンが得られるまでプロセスの間中保持されることになる。…
【0033】
また,ポリマー接着剤が布又は不織布,特に熱可塑性材料の場合,寸法取り器の出口において得られた寸法取りされた一方向層は,例えばローラーで駆動するコンベヤーベルト上で,この各面上で熱可塑性布又は不織布と結合する。寸法取り器の出口と,層をポリマー接着剤に結合する機器(図示した例におけるコンベヤーベルト)の間の距離は,得られた寸法取りを保持するために,およそ数ミリメートルの非常に短い距離となることが好ましい。冷却後にストランド又は長繊維とのこれらの接着を可能にするためには,不織布をリボンとの結合に先立って加熱段階にかけて,ポリマーを軟化及びさらに融解させる。不織布の幅は,一方向層の両側を超えて広がるように選択される。加熱及び圧力条件を,不織布を構成する材料及びこの厚さに適合させる。ほとんどの場合,熱圧着の段階は,Tf
囲の温度(Tf

nonwoven

nonwoven

-15℃からTf

nonwoven

+60℃の範

は,不織材料の融解温度を表す)及び0.1

から0.6MPaの圧力下で行われる。したがって,結合の前後で,不織布に関して圧縮比を1から10に達成することができる。炭素の一方向材料上への不織材料のラミネート加工段階は,中間製品の最終的な厚さを正確に制御するために,同様に決定的に重要である。実際,温度及び圧力,特にラミネート加工中の温度及び圧力条件に依存して,中間製品の各側の不織材料の厚さを変更し,それゆえ調整することが可能である。
【0034】
一方向層と結合する前の不織材料の厚さは,これが一方向繊維の層と結合する様式に依存して選択される。ほとんどの場合,この厚さはリボンの所望される厚さに非常に近いものになる。所望する厚さに到達するように,結合段階中の温度下でラミネート加工されるより厚い不織材料の使用を選択することもまた可能である。好ましい様式では,完全に対称形の中間製品を得るために,一方向繊維の層は,この広い面の各々上で2つの本質的に同等な不織材料に結合される。一方向層と結合する前の不織材料の厚さは,0.5から200μmの間,好ましくは10から170μmの間で変化する。本発明による中間製品において,各不織材料の厚さは,0.5から50ミクロンの範囲,及び好ましくは3から35ミクロンの範囲にある。結合前の異なる不織材料の厚さは,方法Aを用い,2827mm²の試験範囲(60mm直径のディスク)及び0.5kPaの付加圧力で,標準規格NF

EN

ISO9073-2により

決定される。
【0035】
次に,リボンはフィードローラー(3つの延伸ローラー)を用いてコンベヤーベルトから引き出され,ホットカット器及び特に加熱したナイフを用いて,この長手方向の端部の各々に沿って切断される。ほつれを避けるために,切断はストランド内では行われず,ストランドの端部のすぐ隣で行われる。リボンの各端部における不織材料のホットカットは,後で特定の収縮を引き起こす。2つの不織材料は一方向層の幅より広いので,これらは互いにスポット付着することを示し,優先的には炭素の端部において一方向層を捕捉する。したがって,得られたリボンは,図4に示すように,切断された長繊維の断片のない非常にきれいな端部4を有している。
【0037】
図5は,その広い面の各々上で不織材料,特に熱可塑性材料に結合した,ストランドの一方向層,特に炭素の一方向層を使用して,本発明によるリボンの作製を可能にする装置の簡易概略図である。
【0038】
炭素ストランド又は複数のストランド1は,クリール101に装着された炭素スプール100から巻き戻され,コーム102を通過し,ガイドローラー103によって機械の軸中に誘導される。炭素ストランドは,次に,加熱バー11及び拡幅バー12により拡幅され,次に,寸法取り器で寸法取りをされ,所望の幅を有する一方向層が得られる。不織材料104a及び104bのロールは,伸張されずに巻き戻され,自由回転ローラー106a,
106b,
106c,
106dと加熱バー107a,
107bの間に装着されたコンベヤーベルト105a及び105bにより移送される。不織材料2a及び2bは,炭素ストランド1と接触する前に区域108a及び108b内で予備加熱され,空隙が制御された2つの加熱バー107a及び107bの各側でラミネート加工される。次に,冷却可能な艶出し機108が,両側に不織材料を有する一方向層に圧力を加え,この層は,次に切断器109へ誘導される。リターンローラー110により,
リボンIは,
巻き取りローラー112が後に続く,
3つの延伸ローラー111から成るけん引システムへ向きを変えることができ,リボンIから成るロールを形成する。
【0039】
複数のリボンを同時に製造することも同様に可能であり,その場合,リボンを構成する各ストランド又はストランドの集合体は,必要ならば拡幅され,個々に寸法取りがなされ,切断を可能にするために各ストランド間に十分な間隔を置き,異なるリボンが互いに間隔をあけて配列される。ストランドと間隔を覆う単一の不織材料が,次に,図8に示すように,リボンの各面上で全てのリボンと結合される。次に,図8に示したような機器,及び平行で,リボンの幅ごとに間隔をあけられ片寄らされた切断器120の複数(図示した例では2つ)のラインを用いて,切断間に不織材料の屑を生じることなく各リボンの間で切断を優先的に行うことができる。
【0044】
本発明による方法は,寸法取りされたストランド又は乾燥繊維の一方向シートの作製,すなわち,直接的と呼ばれる方法を目的とする作製に関する。また,ポリマー接着剤の重量は,リボンの総重量の15%未満であり,好ましくは,0.1から10%であり,リボンの総重量の3から10%が有利である。
【0045】
本発明の文脈では,不規則及び等方性の被覆を与える粉体接着剤又は不織接着剤の使用が好ましいものとなり,そのため,間隔を置いたストランドの作製とは違い,全ての方向で均一な密着を確実にすることが可能になる。ポリマー接着剤と一方向リボンの間の接着は,ポリマー接着剤の高温で粘着性である性質を利用して加熱し,その後冷却することにより達成される。取扱いの容易さと繊維との結合前に密着性を提供するので,不織接着剤の使用が特に好ましい。
(オ)

【0050】
以下の実施例により本発明が説明されるが,制限性はない。

【0051】
炭素ストランド,AS7
Kは,企業,HEXCEL

J,GS

12K及びIMA

GS

12

Corporation,Stamfor

d,CT,米国により販売されている。
【0052】
3g/m²のコポリアミドの不織材料1R8D03は,企業,Protechnicにより販売されている。
【0053】
参照として,寸法取りをせず,50mmごとの横断性のホットメルトストランド以外はポリマー接着剤が結合していない,一方向層(面密度321g/m²には208本のストランド,面密度250g/m²には158本のストランド,及び面密度125g/m²には78本のストランド)
の幅を,
5mごとに手動測定で500mの長さにわたって測定した。
得られた結果を以下の表1に示す。
【0055】
本発明による方法を,次に実施した[訳者注:原本では不完全文]。図5に示すような機械を使用した。加熱される切断器のカタログ番号は,企業,LOEPFE

BROTHER,LIMITED,Wetzik

on,スイスのThermocut

TC-1である。

【0056】
運転条件は,表2に示す。
【0057】
得られたリボンの特性を,表3に提示する。
【0058】
幅の平均及び標準偏差は,以下の機器で測定した。リボンは,200から400cNの一定の張力で,この支持具から1分当たり1.2mの一定速度で巻き戻し,
次に,
支持の無いその位置で,
焦点距離20mm,
1624×1236ピクセルで,モデルBaumer
c
タイプFWX20のカメラ(Baumer

Optroni

Optronic

G
mbh,ドイツ)の前の265mmの距離に運んだ。カメラの設定は,1ピクセルが0.05mmに等しくし,これは1640ピクセル×0.05=82mmのフォトサイズに相当する。最低で1315個の幅の測定値に対応する50mの最小長さにわたり,38mmごとに写真を撮った。
【0059】
次に,プログラム,NEUROCHECK

5.1(Neuroch

eck,Gmbh,ドイツ)により画像を分析し,幅の値をファイルに保存し,プログラム,MINITAB(Minitab,Inc,米国)で統計処理する。
【0060】
標準偏差は,0.12から0.21mmの間で変動し,リボンの幅には依存しないと思われる。
【0061】
図9A,9B及び10では,(幅64.7mmの,446テックス,IMA

GS

12

Kの28本のストランドで得られた)本発明によ

る193g/m²のリボンの平均幅と標準偏差を,同じであるが寸法取りを行わないストランドと同じ不織材料で製造されたリボンと比較する。本発明によるリボンの場合,得られた標準偏差は0.12mmであり,
一方,
寸法取りを行わないリボンの標準偏差は0.
57mmである。
【0062】
図11,12A及び12Bでは,(6.21mmの平均幅にわたり785テックス,AS7JK

12Kの1本のストランドで作製された)

126g/m²の一方向シートと2つの不織材料を結合させた本発明によるリボンを,同じであるが寸法取りを行わないストランドと同じ2つの不織材料で作製されたリボンと比較する。本発明によるリボンの場合,得られた標準偏差は0.18mmであり,一方,寸法取りを行わないリボンの標準偏差は0.44mmである。

前記アの記載事項によれば,本件明細書の発明の詳細な説明には,本件発明1に関し,次のような開示があることが認められる。
(ア)

自動車,航空又は造船産業で使用される複合材料部品は,1つ

又は複数の強化材又は繊維層と,熱可塑性樹脂を含めることができる主として熱硬化性マトリックス(樹脂)とを含有し,機械的特性に関して非常に厳密な要件が求められており,2つの隣接する強化材の材料間隔又は重なり部分をできる限り回避するため,規則的な構造を有し,特に幅のばらつきの少ない一方向材料に対する需要がある【0001】(
~【0006】)。
しかるところ,1つ又は複数の繊維強化材が乾燥状態(すなわち
最終マトリックスが無い状態)で調製され,樹脂又はマトリックスが,別に調製されて,複合材料部品を作製する直接法の技術分野で
は,従来,強化材として,一方向の強化ストランドに対して横断して伸びる熱可塑性の接着ストランド又はガラス/熱可塑性織布若しくは不織布によってストランド間の密着を確実なものにするリボンが提案されているが,これらのリボンに関しては,ストランド間の接着は接着点だけに限定され,強化繊維間で緩くなる結果として,接着ストランド間に大きな幅のばらつきが存在し,また,所望の幅を得るために,そのような一方向層を強化ストランドの方向に対して平行に切断した場合,切断した端部がきれいに揃っておらず,長繊維の断片でほつれており,束の作製などの後続のプロセスに非常に不便であるという問題があった(【0002】,【0007】~【0009】)。
(イ)

本発明は,材料の損失を限定しながら,1つ又は複数のストラ

ンドから複合材料部品を製造する直接法に適合し,一貫性の高い所与の幅を有する一方向層を達成する方法を提供すること及び主要な方向に沿って切断された繊維のない一方向層を製造する方法を提供することを目的とし,上記課題を解決するための手段として,a)寸法取り器により,リボンの幅を所望の幅に調整するステップ及びb)その各面上で,リボンをポリマー接着剤と結合して,リボンの均一な密着を確実にし,その結果,接着剤の総重量が得られるリボンの総重量の15%未満となるステップを含むことを特徴とする方法を採用した(【0010】~【0012】)。
これにより,本発明は,材料の長さに平行な方向に沿って伸長す
る単一の強化ストランド又は複数の強化ストランドから材料の所与の幅を作製することが可能になり,全長にわたり幅のばらつきが非常に小さく,面密度のばらつきも非常に小さいリボンが得られるという効果を奏する(【0017】~【0019】)。


訂正の適否について
訂正事項2に係る訂正について
(ア)

訂正事項2は,請求項1のa)リボンの幅がその全長にわたり本質的に一定であるような端部を有するリボンを提供する工程を,本件訂正後の請求項1のa)拡幅バーを有する拡幅器,次いで複数のストランド又は長繊維に寸法取りをする開口部を規定する寸法取りコームの寸法取り器に,複数のストランド又は長繊維を通過させることによって,複数のストランド又は長繊維間に間隔が存在しないようにし,リボンの幅がその全長にわたり本質的に一定であるような端部を有するリボンを提供する工程に訂正するものである。本件決定は,本件特許明細書等には,本件訂正後の請求項1の複数のストランド又は長繊維間に間隔が存在しないという事項(事項A)についての直接的ないし明示的な記載がなく,この事項が具体的にどのような技術的事項を意図しているのかを明確に把握するために必要な記載も見当たらないため,本件特許明細書等の記載を総合しても,事項Aを導くことができるとはいえないから,訂正事項2に係る訂正は,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとは認められず,新規事項の追加に当たり,訂正要件に適合しない旨判断した。
(イ)

そこで検討するに,本件明細書には,①本発明のリボンは,
1つ又は複数のストランドから成り,
1つのストランドから成る場合は,
リボンの幅に平行に伸長する長繊維の集合体から成り,複数のストランドから成る場合は,所与の幅の層を製造するために寸法取りされるストランドの集合体
(各々が長繊維の集合体から成る)
から成ること【0

027】,【0028】,【0030】,図1及び2),②一般に,炭素ストランドの場合,000から80,1,000本の長繊維を含み,12,000から24,000本の長繊維を含むのが有利であること(【0029】),③特に,リボンが複数のストランドの一方向層から成る場合,ストランドは,接近して配置され,
リボン作製の前に,幅の標準偏差が最小で,一方向層の全幅を一定にするように調整する場合,層の幅は,材料中のいかなる間隔(英語で「gap)又は重なり部分(英語でoverlap)をも最小にし,さらに回避することによって調整する」こと(【0028】),④ストランド(単数又は複数)は,寸法合わせの段階の前に拡幅器によって幅が拡幅され(【0030】,図6),寸法取り段階(寸法合わせの段階)では,所与の幅の開口部,特に,ローラーに切れ込む平底の溝の形状にある開口部とすることができる寸法取り器,又は1つ又は複数のストランドをベースにした単一のリボンの場合における,2個の歯の間の開口部の寸法取り器,又は図7に示すように,並行して複数のリボンを作製する場合における,複数のストランドに寸法取りをする開口部を規定する寸法取りコームの寸法取り器上で,層又はストランドを通過させることによって行われること(【0031】,図7),⑤複数のストランドからなる層を作製する場合,実際,厳密に言えば,層の幅の寸法取りは外側の2本のストランド上においてのみ行われ,他のストランドは拡幅ユニットの前方に配置されたコームにより案内され,その結果,層の内側のストランド間に緩い空間が存在しないこと(【0031】),⑥炭素ストランド又は複数のストランド1は,クリール101に装着された炭素スプール100から巻き戻され,コーム102を通過し,ガイドローラー103によって機械の軸中に誘導され,炭素ストランドは,次に,加熱バー11及び拡幅バー12により拡幅され,次に,寸法取り器で寸法取りをされ,所望の幅を有する一方向層が得られること(【0038】,図5)の記載がある。これらの記載事項によれば,本件明細書には,本発明の実施の形
態として,1つのストランド(長繊維の集合体)又は複数のストランド(各々が長繊維の集合体)から成るリボンを作製するに当たり,1つ又は複数のストランドを,拡幅バーにより幅を拡幅し,次いで,拡幅したストランドを所与の幅の開口部を規定する寸法取り器(ローラーに切れ込む平底の溝を有する寸法取り器,寸法取りコーム,又は2個の歯を有する寸法取り器)上を通過させることによって,所望の幅を有する一方向層が得られること,これにより一方向層の層の幅は,材料中のいかなる間隔又は重なり部分をも最小にし,さらに回避することによって調整することができ,その結果,層の内側のストランド間に緩い空間が存在しないことの開示があることが認められる。
そして,
複数のストランドの集合体
(各々が長繊維の集合体)
が,
接近して配置され,間隔又は重なり部分をも最小にし,さらに回避するとは,間隔が存在しないことと同義であると解されるから,複数のストランド又は長繊維間に間隔が存在しないようにして,複数のストランド又は長繊維を所望の幅に作製しているものと理解することができる。
そうすると,訂正事項2に係る訂正は,本件明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものではないものと認められるから,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものというべきである。
したがって,これと異なる本件決定の判断は誤りである。
(ウ)

これに対し被告は,①本件明細書には,拡幅器,次いで寸法取り器に,複数のストランドを通過させることで複数のストランド又は長繊維間に間隔が存在しないようにするという事項についての直接的ないし明示的な記載は存在しない,②本件明細書において複数のストランドを通過させる寸法取り器に相当する構成は,【0039】及び図7に示されているものにほかならず,これら複数のストランドの間には間隔が存在する,③本件明細書の【0028】の記載は,複数のストランド又は長繊維について間隔が存在しないことを記載するものではないため,本件特許明細書等の記載を総合しても,事項Aを導くことができるとはいえず,訂正事項2(請求項1)に係る訂正は,新規事項の追加に当たる旨主張する。
しかしながら,上記①の点については,本件明細書に直接的な記載はないが,前記(イ)のとおり,複数のストランドの集合体(各々が長繊維の集合体)接近して配置され,が,間隔又は重なり部分をも最小にし,さらに回避するとは,間隔が存在しないことと同義であると解されるから,複数のストランド又は長繊維間に間隔が存在しないことについての開示があるものと認められる。
次に,上記②の点についてみると,図7は,単一のストランドをベースにして複数のリボンを同時に作製する場合(【0025】)を示した図であり,図示されているのは,単一のストランドから成る複数のリボンであって,複数のストランドではないから,複数のストランドの間に間隔が存在することを示すものではない。
また,本件明細書の【0039】の複数のリボンを同時に製造することも同様に可能であり,その場合,リボンを構成する各ストランド又はストランドの集合体は,必要ならば拡幅され,個々に寸法取りがなされ,切断を可能にするために各ストランド間に十分な間隔を置き,異なるリボンが互いに間隔をあけて配列される。ストランドと間隔を覆う単一の不織材料が,次に,図8に示すように,リボンの各面上で全てのリボンと結合される。次に,図8に示したような機器,及び平行で,リボンの幅ごとに間隔をあけられ片寄らされた切断器120の複数(図示した例では2つ)のラインを用いて,切断間に不織材料の屑を生じることなく各リボンの間で切断を優先的に行うことができる。との記載中の各ストランド間に十分な間隔を置きとは,複数のリボンを同時に製造する場合に,複数のラインを用いて各リボンと結合した不織材料の切断を可能にするために,各リボンが互いに間隔をあけて配列されることを意味するものであり,リボンを構成するストランドそのものについて述べたものではない。
さらに,
上記③の点については,
前記(イ)のとおり,
本件明細書の
【0
028】の記載は,リボンが複数のストランドの一方向層から成る場合に,当該ストランドが接近して配置され,リボン作製の前に,ストランド間の間隔が存在しないように調整することが記載されているものと認められる。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。

訂正事項3に係る訂正について
(ア)

訂正事項3は,請求項1のb)リボンの各面に不織布又は布材料を適用する工程であって,不織布又は布材料の幅はリボンの幅より広く,その結果,不織布又は布材料はリボンの端部を超えて外側に伸びて,リボンの両側にて各端部に沿って不織布又は布材料がはみ出している工程を,本件訂正後の請求項1のb)リボンの各面に,加熱により軟化して粘着性を有し,加熱後に冷却されるときリボンの均一な密着を確実にする不織布又は布材料を,予備加熱後に1超から10の圧縮比で適用する工程であって,加熱及び圧縮された不織布又は布材料の幅はリボンの幅より広く,その結果,不織布又は布材料はリボンの端部を超えて外側に伸びて,リボンの両側にて各端部に沿って不織布又は布材料がはみ出している工程に訂正するものである。本件決定は,本件訂正後の請求項1に導入された予備加熱後に1超から10の圧縮比で適用する工程は,
本件明細書の記載【0033】


にあるとおり,不織布に関してのみ達成することができる工程として認識されるものであり,本件訂正後の請求項1に記載された不織布又は布材料のうち布材料(特に熱可塑性材料でないもの)については,予備加熱後に1超から10の圧縮比という圧縮比で適用する工程を達成できるものとして本件特許明細書等に記載されていないことは明らかであり,また,不織布に関する圧縮比を布材料にも適用することが明らかであるとする技術常識もないから,本件特許明細書等の記載を総合しても,布材料を…1超から10の圧縮比で適用する工程という事項(事項B)を導くことができるとはいえないから,訂正事項3に係る訂正は,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとは認められず,新規事項の追加に当たり,訂正要件に適合しない旨判断した。
(イ)

そこで検討するに,本件明細書には,①

ポリマー接着剤と一方向リボンの間の接着は,ポリマー接着剤の高温で粘着性である性質を利用して加熱し,その後冷却することにより達成される。(

【0045】,)
②ポリマー接着剤が布又は不織布,特に熱可塑性材料の場合,寸法取り器の出口において得られた寸法取りされた一方向層は,例えばローラーで駆動するコンベヤーベルト上で,この各面上で熱可塑性布又は不織布と結合する。寸法取り器の出口と,層をポリマー接着剤に結合する機器(図示した例におけるコンベヤーベルト)の間の距離は,得られた寸法取りを保持するために,およそ数ミリメートルの非常に短い距離となることが好ましい。冷却後にストランド又は長繊維とのこれらの接着を可能にするためには,不織布をリボンとの結合に先立って加熱段階にかけて,ポリマーを軟化及びさらに融解させる。不織布の幅は,一方向層の両側を超えて広がるように選択される。加熱及び圧力条件を,不織布を構成する材料及びこの厚さに適合させる。ほとんどの場合,熱圧着の段階は,Tf温度(Tfnonwovennonwoven-15℃からTfnonwoven+60℃の範囲のは,不織材料の融解温度を表す)及び0.1から0.6MPaの圧力下で行われる。したがって,結合の前後で,不織布に関して圧縮比を1から10に達成することができる(【0033】)との記載がある。
これらの記載事項から,ポリマー接着剤と一方向リボン(一方向
層)の間の接着は,ポリマー接着剤の高温で粘着性である性質を利用して加熱し,その後冷却することにより達成されるものであり,ポリマー接着剤としては,布又は不織布,特に熱可塑性材料の場合があること,寸法取りされた一方向層は,例えばローラーで駆動するコンベヤーベルト上で,熱可塑性布又は不織布と結合すること,冷却後にストランド又は長繊維とのこれらの接着を可能にするためには,不織布をリボンとの結合に先立って加熱段階にかけて,ポリマーを軟化及びさらに融解させること,
熱圧着の段階で,
加熱及び圧力条件を,
不織布を構成する材料及び厚さに適合させることにより,結合の前後で,不織布に関して圧縮比を1から10に達成することができることの開示があることが認められる。
上記開示事項によれば,不織布に関して,結合の前後で,圧縮比を1から10に達成することができるのは,熱可塑性材料のポリマー接着剤である不織布における加熱段階にかけてのポリマーの軟化及び融解という性質に基づくものと理解できるから,ポリマー接着剤が熱可塑性布である場合においても,これと同様に,加熱段階にかけて,ポリマーを軟化及び融解させ,圧縮比を1から10に達成することができるものと理解できる。
そうすると,訂正事項3に係る訂正は,本件明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものではないものと認められるから,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものというべきである。
したがって,これと異なる本件決定の判断は誤りである。
(ウ)

これに対し被告は,①本件明細書の【0033】には,熱圧着の段階を不織材料の溶融温度の-15℃から+60℃の範囲の温度及び0.1から0.6MPaの圧力下で行われる結果,不織布に関しては圧縮比を1から10に達成することができることが記載されているのであり,布について上記の圧縮比が達成できることについては記載されていない,②不織布は,大きな繊維間距離を確保した嵩高な構造を有しているため,所定の圧力で圧縮された場合に容易に広がることができ,
また,
容易に圧縮可能な構造を持つ(乙2)
のに対し,布材料は,
経糸と緯糸が密に織り込まれた構造を有しているため,圧縮されにくい構造であること(乙3)は技術常識であることに鑑みれば,当業者は,【0033】の記載が専ら不織布に向けられているものと認識するから,本件特許明細書等の記載を総合しても,事項Bを導くことができるとはいえず,訂正事項3(請求項1)に係る訂正は,新規事項の追加に当たる旨主張する。
しかしながら,上記①の点については,本件明細書に直接的な記載はないが,前記(イ)のとおり,本件明細書の記載から,布(熱可塑性布についても,)
加熱段階にかけて,
ポリマーを軟化及び融解させ,
圧縮比を1から10に達成することができるものと理解できる。
次に,上記②の点については,乙2(特開2003-204993号公報)は,使い捨ておむつや生理用ナプキンなどの吸収性物品として用いるために,意図的に繊維をランダムに三次元配向させて嵩高とした場合の不織布について述べるものであり【0001】【0015】,(


不織布の構造は,用途,製法等に影響を受けると考えられるから,乙2から直ちに不織布が常に嵩高で容易に圧縮可能な構造であるとはいえない。また,乙3(特開2006-265805号公報)は,衣類の形状保持用又は体型補正用として使用する衣類仕立用テープの発明に関するものであり(【0001】),製品の性質上嵩高としない場合の織物に関するものであって,布材料の構造も,用途,編織法等に影響を受けると考えられるから,乙3から直ちに布材料が常に嵩高ではなく,圧縮されにくい構造であるとはいえない。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。

訂正事項4に係る訂正について
(ア)

訂正事項4は,請求項1のd)端部に沿って位置する不織布又は布材料のはみ出し部分を切断し,リボンの端部に切断を及ぼすことなく,はみ出し部分の一部分を除去することで,リボンの幅をその全長にわたり本質的に一定であるように維持する工程であって,不織布又は布材料の総重量が中間材の総重量の15%未満であり,はみ出し部分の切断済み端部が中間材の端部を構成する工程を,本件訂正後の請求項1のd)工程c)と同時に,端部に沿って位置する不織布又は布材料のはみ出し部分を加熱された切断器で切断し,リボンの端部に切断を及ぼすことなく,はみ出し部分の一部分を除去することで,リボンの幅をその全長にわたり本質的に一定であるように維持する工程であって,不織布又は布材料の総重量(1m²あたり)が中間材の総重量(1m²あたり)の(6/132)×100%未満であり,はみ出し部分の切断済み端部が中間材の端部を構成する工程に訂正するものである。本件決定は,本件特許明細書等の一般記載及び実施例の記載からは,不織布又は布材料の総重量(1m²あたり)が中間材の総重量(1m²あたり)の(6/132)×100%未満でありという数値範囲を把握することはできないから,本件特許明細書等の全ての記載を総合しても,不織布又は布材料の総重量(1m²あたり)が中間材の総重量(1m²あたり)の(6/132)×100%未満でありという事項(事項C)を導くことができるとはいえず,訂正事項4に係る訂正は,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとは認められず,新規事項の追加に当たり,訂正要件に適合しない旨判断した。
(イ)

そこで検討するに,本件明細書には,①本発明による方法の実
施例として,炭素面密度(g/m²)(表2)が126g/m²

平均幅6.21mm785テックスAS7J12K1の本の炭素ストランドを素材として,
図5に示すような機械を使用して,
一方向シートとその両側に不織材料を結合させたリボンが
得られたこと(【0055】ないし【0057】,【0062】,表2,表3),②実施例に使用される不織材料の素材は,面密度が3g/m²のコアポリアミドの不織材料1R8D03であること(【0052】),③図5の機械(装置)を使用してリボンを作製する場合,不織材料は,炭素ストランドと接触する前に予備加熱され,空隙が制御された二つの加熱バーで炭素ストランドにラミネート加工され,次に,冷却可能な艶出し機が,両側に不織材料を有する炭素ストランドの一方向層に圧力を加え,この層が,次に切断機へ誘導されること(【0037】,【0038】),④ホットカット器及び特に加熱したナイフを用いて,長手方向の端部に沿って位置する不織材料が切断されることにより得られたリボンは,切断された長繊維の断片のない非常にきれいな端部を有していること(【0035】,【0039】),⑤一方向層と不織布との結合の前後で,不織布に関して圧縮比を1から10に達成することができること(【0033】)が記載されている。
上記記載から,1本の炭素ストランドで作製される一方向シートの両側に結合される不織材料の面密度の和は3g/m²×2=6g/m²となること,
この面密度の和と
1本の炭素ストランドA(S7J12Kの面密度(

126g/m²
)とを加算すると,
132g/m²となること,圧縮比1で(圧力を加えずに)不織材料を1本の炭素ストランド(AS7J12K)に結合させてリボン
(中間材)
を作製した場合には,
不織布の総重量(1m²あたり)
の中間材の総重量(1m²あたり)に対する百分率は(6/132)×100%となることを理解できる。そして,①炭素ストランドと結合される前に,加熱によりポリマーが軟化及び融解され,艶出し機により圧縮された不織材料は,面方向へと拡張され,不織材料の総重量(1m²あたり)は,圧縮比1の場合よりも減少し,
6g/m²
よりも小さくなることは自明であること,
②一方,
炭素ストランドは,不織材料と異なり,軟化及び融解される工程を経るものではなく,得られたリボン(中間材)の平均幅(6.21mm。表3のAS7J12K)は,素材である炭素ストランドの
平均幅(6.21mm。表2のAS7J12K)と同じであ

って,一方向層と不織布との結合の前後を通じて,炭素ストランドの面密度に変動はないことから,図5に示すような機械を使用して得られた平均幅6.21mm785テックスAS7J12Kの1本の炭素ストランドで作製された一方向シートとその両側に不織材料を結合させたリボン(中間材)においては,不織布の総重量(1m²あたり)の中間材の総重量(1m²あたり)に対する百分率は(6/132)×100%未満になることを理解できる。もっとも,切断機により,リボンの端部に沿って位置する不織材料の一部が切断されるが,これは,不織材料のはみ出し部分を切断するものであるから(【0035】),これによって,1本の炭素ストランドで作製された一方向シートの両面に圧縮適用された不織材料の面密度(1m²あたり)が影響を受けるものではないことを理解できる。また,【0062】の実施例は,炭素面密度が126g/m²の1本の炭素ストランドから中間材を作製する方法に関するものであるが,炭素面密度が
126g/m²
の複数の炭素ストランドから1本の中間
材を作製する場合にも,複数の炭素ストランドの炭素面密度が126g/m²となることは自明であるから,
図5に示すような機械を使用し
て,炭素面密度(g/m²)が126g/m²の平均幅21mm785テックスAS7J6.12Kの複数の炭素ストランドを素材として作製された一方向シートとその両側に不織材料を結合させたリボン(中間材)においては,不織布の総重量(1m²あたり)の中間材の総重量(1m²あたり)に対する百分率は(6/132)×100%未満になることを理解できる。
そうすると,訂正事項4に係る訂正は,本件明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものではないものと認められるから,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものというべきである。
したがって,これと異なる本件決定の判断は誤りである。
(ウ)

これに対し被告は,①本件明細書の実施例の記載(【0062】)
からは,当該実施例のリボンが,1本のストランドと2つの不織材料を結合させて構成されており,そのストランドが126g/m²であり,2つの不織材料がそれぞれ3g/m²のものであることが読み取れるのみであって,
当該記載からは,
本件特許発明に係るリボンの
不織布又は布材料と中間材の1m²あたりの総重量の比が(6/132)×100%未満という数値範囲を満たすものであることまで導き出せるものではない,②【0062】の実施例は,1本のストランドについてのものであるから,本件訂正後の請求項1の複数のストランドにおける数値範囲の根拠となるものではない,③【0062】の記載は,圧縮後の不織布の面密度を開示するものではなく,圧縮後に切断除去されるはみ出し部分の不織布又は布材料の重量が明らかにされていないから,本件特許明細書等の記載を総合しても,事項Cを導くことができるとはいえず,訂正事項4(請求項1)に係る訂正は,新規事項の追加に当たる旨主張する。
しかしながら,上記①の点については,本件明細書に直接的な記載はないが,前記(イ)のとおり,本件明細書の記載から,不織布の総重量(1m²あたり)の中間材の総重量(1m²あたり)に対する百分率が(6/132)×100%未満となることを理解できる。
次に,上記②の点については,本件明細書の実施例(【0062】)は,1本の炭素ストランドから中間材を作製する方法に関するものであるが,前記(イ)のとおり,上記実施例と同一の炭素面密度の複数の炭素ストランドを素材として作製された一方向シートとその両側に不織材料を結合させたリボン(中間材)においても,不織布の総重量(1m²あたり)の中間材の総重量(1m²あたり)に対する百分率は(6/132)×100%未満になることを理解できる。さらに,上記③の点については,前記(イ)のとおり,【0062】の実施例である中間材を作製するに当たり,圧縮後の不織布の面密度は,圧縮比1の場合よりも減少することになるのは明らかであり,また,加熱された切断機により切断されるのは,不織材料のはみ出し部分に過ぎず,これによって,リボンの両面に圧縮適用された不織材料の面密度が影響されることはないから,【0062】において,圧縮後の不織布の面密度が開示されておらず,圧縮後に切断除去されるはみ出し部分の不織布又は布材料の重量が明らかにされていないからといって,前記(イ)の認定を左右するものではない。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。

訂正事項20,23及び24に係る訂正について
前記アないしウのとおり,訂正事項2ないし4に係る訂正は,本件明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものとはいえない。
そして,訂正事項20,23及び24に係る訂正は,訂正事項2,3又は4と重複するものであるから,本件明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものとは認められない。


小括
以上のとおり,訂正事項2ないし4に係る訂正は本件明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものとはいえない。また,訂正事項20,23及び24は,訂正事項2,3又は4と重複するものであるところ,訂正事項2ないし4と同様の理由(前記アないしウ)により,本件明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものとはいえない。
したがって,訂正事項2,3,4,20,23及び24に係る訂正は,いずれも新規事項の追加に当たらないから,特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合する。

⑶まとめ
以上によれば,本件訂正を認めなかった本件決定の判断は誤りであり,この判断の誤りは,発明の要旨認定の誤りに帰することになるから,本件決定の結論に影響を及ぼすことは明らかである。
したがって,原告主張の取消事由1は理由がある。
2
結論
以上のとおり,原告主張の取消事由1は理由があるから,その余の取消事由について判断するまでもなく,本件決定は取り消されるべきである。
知的財産高等裁判所第4部

裁判長裁判官

大鷹
裁判官

山門
裁判官

筈井一郎優卓矢
(別紙)

【図1】

【図2】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

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