判例検索β > 平成29年(ワ)第898号
損害賠償請求事件
事件番号平成29(ワ)898
事件名損害賠償請求事件
裁判年月日平成31年3月13日
法廷名大阪地方裁判所
裁判日:西暦2019-03-13
情報公開日2019-04-10 18:00:15
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主文1
原告の請求をいずれも棄却する。

2
訴訟費用は原告の負担とする。

第1
1実及び理由
請求
主位的請求
被告らは,原告に対し,連帯して1584万円及びこれに対する平成29年3月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2
予備的請求


被告らは,原告に対し,連帯して792万円及びこれに対する平成29年3月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。



被告国は,原告に対し,792万円及びこれに対する平成29年3月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2
事案の概要
原告は,平成24年8月28日,傷害の被疑事実で逮捕され,平成25年10
月17日まで逮捕・勾留されていたところ,平成26年1月20日に無罪判決を受け,同判決は確定し,その後刑事補償を受けた。
本件は,無罪判決を受けた原告が,①警察官が目撃者(後記のA薬剤師)から聴取した内容と異なる内容を捜査報告書に記載したこと,検察官がこの点に関する事実確認をしなかったこと(以下本件行為①という。),②検察官が原告を起訴したこと(以下本件行為②という。),③警察官が目撃者(後記のB)をどう喝したこと(以下本件行為③という。),④検察官が目撃者(後記のB)に対して口止めをしたこと(以下本件行為④という。),⑤検察官が裁判所に対して目撃者(後記のB)には幻聴幻覚がある旨の虚偽の釈明をしたこと(以下
本件行為⑤という。),⑥検察官が無罪論告等をしなかったこと(以下本件行為⑥という。),⑦検察官が公訴を追行したこと(以下本件行為⑦とい
う。)は,いずれも違法なものであるなどと主張して,国家賠償法1条1項に基づき,主位的に,被告らに共同不法行為が成立するとして慰謝料1584万円の連帯支払を求め,予備的に,(a)被告らに対し慰謝料792万円の連帯支払を求めるとともに,(b)被告国に対し,慰謝料792万円の支払を求める事案である。
被告らは,本件行為①~⑦につきいずれも違法性がないなどと主張して争っている。
1
前提事実


当事者等

原告等
原告は,昭和25年生まれの男性であり(平成24年8月24日当時62歳)
,同年9月18日にC(同年8月24日当時57歳)を被害者とする暴行罪で起訴され,平成26年1月20日に無罪判決を受けた(以下,この刑事事件を本件刑事事件という。。D弁護士(本件訴訟の原告訴訟)
代理人でもある。以下D弁護人という。
)は,本件刑事事件における原

告の弁護人であった。

E警察官,F警察官
E警察官(昭和43年生まれの男性)及びF警察官(昭和35年生まれの男性)は,平成24年当時,大阪府a警察署の警察官であった(弁論の全趣旨)



G検察官,H検察官
G検察官(昭和36年生まれの男性で,平成8年副検事任官)及びH検察官(昭和32年生まれの男性で,平成6年副検事任官)は,平成24年当時,大阪地方検察庁a支部の検察官(副検事)であった(乙12,30,
証人G検察官,証人H検察官,弁論の全趣旨)

本件刑事事件の起訴前捜査は,主にG検察官が担当した。本件刑事事件
の公訴追行等は,平成25年3月までは主にH検察官が担当し,
(H検察官
が異動後の)同年4月からは主にG検察官が担当した(乙12,30,証人G検察官,証人H検察官)


C
Cは,本件刑事事件の起訴状で被害者とされたが,判決で虚偽の被害申
告をしたとされた者である。Cは,本件刑事事件より前,原告と複数回顔を合わせたことがあった。

B,I
B(昭和51年生まれの男性)及びIは,本件刑事事件の目撃者である。B,Iは,本件刑事事件の前からCと知人関係にあった。


A薬剤師,J薬剤師
A薬剤師及びJ薬剤師は,平成24年当時,K薬局に勤務していた薬剤師であり,本件刑事事件の目撃者である。



C,B,Iの虚偽の被害申告に関する共謀
C,B,Iは,平成24年8月24日,Cが原告に後ろから顔を殴られる
ともに,体をつかまれ揺さぶられたことで足を捻挫した旨の虚偽の申告をすることを共謀した。そして,この共謀に基づき,Cが110番通報し虚偽の被害申告をした。


原告の逮捕・勾留
原告は,平成24年8月28日に傷害被疑事件で逮捕され,同月30日に
勾留された。原告は,平成25年10月17日に勾留が取り消されるまで,416日間逮捕・勾留された。


本件刑事事件の起訴等
原告は,
平成24年9月18日,
大阪地方検察庁a支部検察官
(G検察官)

により大阪地方裁判所a支部に暴行罪で起訴された(以下,この起訴を本件起訴という。。その公訴事実の要旨は,原告は,同年8月24日午後4)

時35分頃,大阪府a市b町c先路上において,Cに対し,その左頚部付近を手で1回殴打するなどの暴行を加えたというものであった(乙3)。
原告は,本件刑事事件について,一貫して否認していた。
なお,本件刑事事件に係る現場の位置関係は,別紙1(添付省略)のとおりである(乙15)




無罪判決
大阪地方裁判所a支部は,平成26年1月20日,上記公訴事実について無罪の判決を言い渡し,同判決は控訴されることなく確定した。



刑事補償
原告は,上記無罪判決を受けた後,刑事補償として416万円を受領した。
2
争点


本件行為①(警察官の捜査報告書の記載,検察官の事実不確認)に係る警察官・検察官の行為の違法性の有無




本件行為②(検察官の起訴)に係る検察官の行為の違法性の有無本件行為③(警察官の目撃者〔B〕に対するどう喝)に係る警察官の行為の違法性の有無



本件行為④(検察官の目撃者〔B〕に対する口止め)に係る検察官の行為の違法性の有無



本件行為⑤(検察官の裁判所に対する虚偽の釈明)に係る検察官の行為の違法性の有無



本件行為⑥(検察官が無罪論告等をしなかったこと)に係る検察官の行為の違法性の有無



本件行為⑦(検察官の公訴追行)に係る検察官の行為の違法性の有無本件行為①~⑦に係る被告らの共同性の有無


因果関係及び損害額

3
争点についての当事者の主張



争点⑴~争点⑺に共通する主張

(原告の主張)
本件の担当検察官ら及び担当警察官らの各行為(本件行為①~⑦)は,いずれも原告の不当な長期身体拘束を招いており,原告の幸福追求権を侵害するものとして,憲法13条前段及び後段に違反するとともに,捜査及び公訴
追行が適正に行われておらず,原告の適正手続を受ける権利を侵害するものとして,憲法31条に違反する。
(被告らの主張)
原告の主張は否認し,又は争う。


争点⑴(本件行為①〔警察官の捜査報告書の記載,検察官の事実不確認〕に係る警察官・検察官の行為の違法性の有無)について

(原告の主張)

E警察官の注意義務違反
(ア)E警察官は,本件刑事事件の捜査において,誠実に職務を果たすべき職務上の法的義務を負っていた。

(イ)それにもかかわらず,E警察官は,平成24年9月7日付け捜査報告書において,A薬剤師の供述について,聴取した内容とは異なる内容を記載した。E警察官は,上記法的義務に違反したというべきである。イ
G検察官の注意義務違反
(ア)G検察官は,平成24年9月7日頃,適切な捜査のためにE警察官を指揮監督すべき職務上の法的義務を負っていた。
すなわち,刑訴法193条は,検察官の司法警察職員に対する指示権及び指揮権を規定している。同条は,公訴を提起するかどうかの判断が検察官の専権に属し,公訴が提起された事件の公訴維持は検察官が全責
任をもってこれに当たるところ,事件処理の適正化を図る必要があるため,検察官に司法警察職員を指示指揮する権限を認めたものである。ま
た,同条は,憲法31条を担保する趣旨のものである。そのため,一般に,検察官は,司法警察職員が不適切な捜査に至ることのないように指示指揮する権限とともに法的義務が認められる。本件において,G検察官は,E警察官がA薬剤師の供述について聴取した内容とは異なる内容の記載をするなどの不適切な捜査に至らないように指示指揮すべき法的
義務を負っていた。
(イ)それにもかかわらず,G検察官は,平成24年9月7日頃,適切な捜査のためのE警察官に対する指揮監督をせず,
上記法的義務に違反した。
すなわち,G検察官は,平成24年9月7日頃,E警察官に対し,漫然と補充捜査を指示したにとどまり,不適切な行為に及ばないように注
意を喚起するなどの監督を怠った。なお,G検察官は,後日,自らがK薬局に赴いた際に,E警察官の報告事項を優先し,現場の供述者(A薬剤師ら)の言質をE警察官の報告やCらの供述に沿うように誘導して解釈するなどしており,自らが不適切・不公正な捜査に及んでいることに照らせば,刑訴法193条の趣旨について,そもそも理解していない
と思われる。
なお,乙14号証の2の4頁以外のマスキング開示を伴う部分については,時機に後れた攻撃防御方法として却下されるべきである。

H検察官の注意義務違反
(ア)H検察官は,平成24年11月7日付けでD弁護人から送付された内
容証明郵便により,再捜査を行い,事実確認すべき職務上の法的義務を負っていた。
(イ)それにもかかわらず,H検察官は,再捜査を行わず,上記法的義務に違反した。
(被告国の主張)

G検察官の注意義務違反について

G検察官が,原告がCに対して暴行に及んだと判断して本件起訴をしたことは,
通常考えられる検察官の個人差による判断の幅を考慮に入れても,なお行き過ぎで,経験則に照らして到底その合理性を肯定することができない程度に達しているとはいえないから,国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではない(なお,前提として,一般に,公訴提起・公
訴追行の違法性の判断基準としては,判例の判断基準が用いられるべきである。)。
すなわち,E警察官はA薬剤師からの聴取結果をありのままに記載したものであって,E警察官が不適切な捜査をしたという前提自体が誤りである。また,原告の主張は,G検察官が負っていた法的義務の内容を明らか
にしておらず主張自体失当である。
なお,乙14号証の2の4頁以外のマスキング開示を伴う部分については,原告が証拠提出を求めた部分のみを証拠提出したのでは,裁判所の証拠評価を誤らせるおそれがあることから,全体として証拠提出したものであって,時機に後れた攻撃防御方法に当たらない。


H検察官の注意義務違反について
H検察官は,D弁護人作成の意見書等の送付を受け,補充捜査を行い,その結果,原告に有罪と認められる嫌疑があるものと判断した上で公訴追行をしたものであるから,国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではない(なお,前提として,一般に,公訴提起・公訴追行の違法性
の判断基準としては,判例の判断基準が用いられるべきである。)。(被告大阪府の主張)
E警察官が,A薬剤師から事情聴取したこと,平成24年9月7日付け捜査報告書を作成したことは認めるが,その余の事実は否認する。E警察官は,内容虚偽の捜査報告書を作成していない。



争点⑵(本件行為②〔検察官の起訴〕に係る検察官の行為の違法性の有無)
について
(原告の主張)
ア(ア)本件起訴時の状況(①C・B・Iの供述が,原告がCを殴ったとする点以外は整合していなかったこと,②直後に撮影された写真を見てもCの顎付近と右足首には赤色変化や内出血痕が認められないこと,③診断
書の記載がCの被害申告内容と整合しない可能性があるものであったこと)に照らせば,G検察官は,原告に対する起訴を差し控えるべき職務上の法的義務を負っていた。
(イ)それにもかかわらず,G検察官は,平成24年9月18日,原告を起訴しており(本件起訴),上記法的義務に違反した。


本件起訴は,虚偽の供述証拠及び虚偽の捜査報告書を基礎としており,違法である。

(被告国の主張)
G検察官が本件起訴をした判断は,国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではない。すなわち,G検察官は,本件犯行現場付近での聞
き込み捜査によっても,C供述の信用性に疑念を抱かせ得る結果が得られなかった一方,Cら3名の供述が相互に信用性を高め合っており,相当の信用性が認められると判断し,原告がCに対して暴行に及んだと判断して本件起訴をしたものであって,本件起訴時において,合理的な判断過程により原告を有罪と認めることができる嫌疑があったといえる。



争点⑶(本件行為③〔警察官の目撃者[B]に対するどう喝〕に係る警察官の行為の違法性の有無)について

(原告の主張)

F警察官は,平成25年1月24日頃,(別件の恐喝未遂被疑事件の被疑者として逮捕された)Bに対し,その供述の信用性を損なわせることを目的としたどう喝等を差し控えるべき職務上の法的義務を負っていた。

それにもかかわらず,F警察官は,平成25年1月24日頃,Bに対し,その供述の信用性を損なわせる目的で,
空気読め。
(空気を読んで幻覚
幻聴がある旨の虚偽の供述をするように求める趣旨の発言である。)などとどう喝し,上記法的義務に違反した。

(被告大阪府の主張)
F警察官は,平成25年1月24日頃にBに対して「空気読め。」などとどう喝しておらず,上記法的義務に違反していない。


争点⑷(本件行為④〔検察官の目撃者[B]に対する口止め〕に係る検察官の行為の違法性の有無)について

(原告の主張)

H検察官は,目撃者に対して口止め行為を控えるべき職務上の法的義務を負っていた。


それにもかかわらず,H検察官は,平成24年9月~平成25年1月,Bに対し,D弁護人と接触することを禁じ,真相告白について伝えないよう命じ,上記法的義務に違反した。

(被告国の主張)
H検察官は,原告が主張するような口止め行為をしていなかったから,原告の上記の主張は失当である。

争点⑸(本件行為⑤〔検察官の裁判所に対する虚偽の釈明〕に係る検察官の行為の違法性の有無)について

(原告の主張)

H検察官は,本件刑事事件の公訴追行において,誠実に職務を遂行すべき職務上の法的義務を負っていた。


それにもかかわらず,H検察官は,平成25年2月4日の第3回公判期日において(Bが恐喝未遂により証人尋問が延期された際),Bには幻聴幻覚の症状はなかったにもかかわらず,幻聴幻覚があり支離滅裂な状況であるとの虚偽の釈明をし,上記法的義務に違反した。(被告国の主張)
H検察官は,平成25年2月4日の第3回公判期日において,同年1月24日~25日のBの言動につき,警察官から電話で報告を受けた内容に依拠して,逮捕当時幻覚や幻聴があり,取調べにおいても支離滅裂な状況であったと釈明をしたものであって,具体的根拠に基づいて誠実に釈明をしており,国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではない。⑺

争点⑹(本件行為⑥〔検察官が無罪論告等をしなかったこと〕に係る検察官の行為の違法性の有無)について

(原告の主張)

H検察官は,平成25年1月初旬の時点で,本件刑事事件について無罪論告又は公判停止・公訴取消しを求める措置を講ずべき職務上の法的義務を負っていた。また,H検察官は,同月初旬の時点で,少なくとも原告の身体拘束を解除すべき職務上の法的義務を負っていた。

すなわち,一般に,公訴追行及びこれに伴う勾留継続の違法性の判断基準としては,判例の判断基準が用いられるべきであるが,虚偽告訴の懸念がある場合においては検察官の判断の合理性はより厳格に求められるべきである。本件においては,起訴時の状況(①C・B・Iの供述が,原告がCを殴ったとする点以外は整合していなかったこと,②直後に撮影された写
真を見てもCの顎付近と右足首には赤色変化や内出血痕が認められないこと,③診断書の記載がCの被害申告内容と整合しない可能性があるものであったこと,④原告が当初から一貫して暴行・傷害の事実について否認していたこと,⑤D弁護人がG検察官に対して虚偽告訴の疑いがあることを注意喚起していたこと,⑥原告が受傷している状況が警察官により写真撮
影されていたこと),起訴後の状況(①H検察官の証拠請求の概要,②D弁護人が検察官に対して新たな目撃情報を通知したこと,③BがE警察官及びH検察官に対して真相を告白したこと,④G検察官がA薬剤師及びJ薬剤師の供述の信用性を確認する際に,E警察官からの事情聴取のみを行い,他の警察官や上記薬剤師らに対する確認を行わなかったこと)に照らせば,H検察官は,平成25年1月初旬の時点で,本件刑事事件について無罪論告又は公判停止・公訴取消しを求める措置を講ずべき職務上の法的
義務を負っており,少なくとも原告の身体拘束を解除すべき職務上の法的義務を負っていたというべきである。

それにもかかわらず,H検察官は,平成25年1月初旬の時点で,本件刑事事件について無罪論告又は公判停止・公訴取消しをせず,また,原告
の身体拘束を解除せず,上記各法的義務に違反した。
(被告国の主張)
H検察官は,Bの申立てを受け,補充捜査を行い,その結果,原告に有罪と認められる嫌疑があるものと判断した上で公訴追行を維持したものであり,このような公訴追行及びこれに伴う勾留継続は国家賠償法1条1項の適
用上違法の評価を受けるものではない(なお,前提として,一般に,公訴提起・公訴追行の違法性の判断基準としては,判例の判断基準が用いられるべきである。)。
すなわち,①Cの供述(原告がCの顔を手で殴打する暴行を加えた旨の供述)には相応の信用性が認められたこと,②原告の供述は不自然で信用性が
乏しいものであったこと,③C・B・Iの各供述の一部に食い違いはあり,各供述に一部変遷があったものの,本件が突発的に発生した出来事であること等を考慮すると,核心部分以外の部分に食い違いや変遷が生じたとしても不自然とはいえないこと,④平成24年8月24日付け診断書(乙55)にはCの供述を前提にすると負傷理由が不明な頭部打撲の記載があったも
のの,同診断書を作成した医師の説明(顔面と頭部は一体のものであるので,念のために頭部打撲も診断書の病名に記載した旨の説明。乙61)等を考慮すると,Cの供述の信用性を否定するものではないこと等に照らせば,本件起訴が国家賠償法1条1項の適用上違法であったとはいえない。そして,本件起訴が国家賠償法1条1項の適用上違法であったとはいえない本件刑事事件において,H検察官及びG検察官による公訴追行が例外的に国家賠償法1条1項の適用上違法であったと認めるべき特段の理由が存しないから,H検
察官及びG検察官による公訴追行及びこれに伴う勾留継続が国家賠償法1条1項の適用上違法であったとはいえない。


争点⑺(本件行為⑦〔検察官の公訴追行〕に係る検察官の行為の違法性の有無)について

(原告の主張)
H検察官及びG検察官は,原告に対する公訴追行を差し控えるべき職務上の法的義務を負っていた。それにもかかわらず,H検察官及びG検察官は,原告に対する公訴追行を行っており,上記法的義務に違反した。
その具体的な主張内容は,上記争点⑹における原告の主張と同様である。
(被告国の主張)
H検察官及びG検察官が公訴追行をしたことは,国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではない。
その具体的な主張内容は,
上記争点⑹における被告国の主張と同様である。


争点⑻(本件行為①~⑦に係る被告らの共同性の有無)について
(原告の主張)
E警察官が作成した薬剤師供述に関する捜査報告書が,A薬剤師の供述内容を適切に反映していなかったため,G検察官の誤った判断を助長し,不当な起訴がされたという側面がある。また,G検察官及びH検察官が警察官に適切な捜査報告書を作成させるという監督義務を怠ったことから,E警察官
が誤った捜査報告書を作成したともいえる。
また,Bに対する取調べ担当警察官のどう喝という違法行為により,Bに幻覚幻聴があるなどという誤った捜査報告書がF警察官により作成され,これに基づきH検察官が誤った釈明を公判廷で行った。
したがって,本件について担当警察官らと担当警察官らは,共同して不法行為を行ったというべきであって,被告らは,原告に対し,共同不法行為責任を負う。

(被告らの主張)
原告の主張は否認し,又は争う。

争点⑼(因果関係及び損害額)について

(原告の主張)
原告は,上記各法的義務違反により,長期間の逮捕・勾留を余儀なくされ,
多大な精神的損害を被った。原告の被った精神的苦痛を慰謝するためには,合計2000万円が相当である。仮にこの主張が認められないとしても,本件行為①につき1000万円,本件行為④~⑥につき1000万円が相当である。もっとも,原告は,既に刑事補償として416万円を受領していることから,同額を控除した額を請求する。

(被告らの主張)
原告の主張は否認し,又は争う。
第3

争点に対する判断

1
認定事実
前記前提事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実は,
次のとおりである。


本件刑事事件に関する捜査の端緒及び被疑者勾留に至るまでの捜査内容(平成24年8月23日~同月30日)

原告を被疑者とする占有離脱物横領被疑事件
平成24年8月23日,大阪府a市b町dに所在するL病院(精神科病院)の敷地内において,占有離脱物横領被疑事件が発生した。大阪府a警察署の警察官は,同月24日午前11時26分頃,Cが

この事件の被疑者が原告である。

旨を通報・供述したこと等から,被疑者を原告として捜査を開始した。Cが通報した場所は,K薬局前路上であった。原告は,当初否認していたが,最終的に被疑事実を認める供述をした。原告は,同日午後3時55分頃,引き当たり捜査を終え帰宅した(甲18,19,6
7,乙5~7,証人B,原告本人)。

Cの被害申告
Cは,平成24年8月24日午後4時39分頃,K薬局南側路上で原告に殴られたとして110番通報をした(別紙1参照)。この通報を受けた大阪府a警察署の警察官が現場に臨場したところ,Cは,後方から顔面を
殴られ,その衝撃で右足をひねった旨供述した。警察官は,上記アを理由に原告がCを逆恨みし犯行に及んだと考え,原告を被疑者として捜査を開始した(甲19,乙7,60,証人B)。

Cの受診結果
Cは,上記イの直後にM病院で診察を受け,顔面打撲,頭部打撲,右足
関節捻挫で約7日間の安静加療を要すると診断された(乙7,9,17,55,56,60)。
Cを診察した医師は,①Cが顔を殴られて顔が痛いと説明したため,診断書に顔面打撲と記載し,②頭部を直に目で観察したり,触診したりしたわけではないが,顔面と頭部は一体のものであるので,念のために頭部打
撲も診断書病名に挙げた(乙17,61)。
大阪府a警察署の警察官は,平成24年8月24日,同警察署内でCが負傷部位と指示説明した部位(Cの左の首筋付近及び右足首)等を写真撮影した(写真からは,赤く腫れているなどの所見は認められない。)(乙5
6)。


Cの被害届の提出
Cは,平成24年8月24日,大阪府a警察署の警察官に対し,被害状況について,後ろから大きい声が聞こえてきたかと思うと,突然,顎の辺りに激しい痛みを感じた。その勢いで倒れそうになったため,倒れないように足に力を入れたところ,右足首をひねった。振り向くと原告がいた。Iは,後ろから来た原告が右拳で殴りかかっていたと言っていた。旨供
述するとともに,被害届を提出した(乙8,9)。

Bの平成24年8月24日の供述
Bは,平成24年8月24日,大阪府a警察署の警察官に対し,Cが原告から殴られたところを目撃した旨供述した。すなわち,原告は,わめき散らしながらCに走って近づき,驚いて振り返ったCの左頬を手のひらで押すようにして殴りつけた。Cは,殴られた勢いでバランスを崩しよろめいた。原告は,Cの肩の辺りを後ろから両手で持って引きずり始めた。旨供述した(甲19,乙10,証人B)。

Iの平成24年8月24日の供述
Iは,平成24年8月24日,大阪府a警察署の警察官に対し,Cが原
告から殴られたところを目撃した旨供述した。すなわち,Cは,自分とは別の方向に向かって歩いていたところ,Cが歩いていた方向から原告の叫び声が聞こえてきた。びっくりしてCがいた方向を見てみると,原告は,Cの左側後ろから近づき,右手の手のひらでCの左側の顎辺りを殴っていた。Cは,殴られた勢いでよろめき,その場にうなだれるように倒れた。さらに,原告は,Cの服を両手でつかみ,わけの分からないことを叫びながら引きずり回した。そこで,自分がCと原告を引き離した。旨供述した(乙11)。

原告の逮捕・勾留
大阪府a警察署の警察官は,平成24年8月26日,上記イの傷害被疑事件について,
Cの供述や目撃者の供述等から原告が被疑者であると考え,
原告とC,目撃者らとの関係から,原告には罪証隠滅のおそれが認められるなどとして逮捕状を請求し,同月28日,原告を逮捕した(乙1の2,7)。
原告は,平成24年8月30日,Cに対する傷害被疑事件について,罪証隠滅のおそれ及び逃亡のおそれがあるとして勾留された(乙2)。


被疑者勾留後から本件起訴に至るまでのG検察官の捜査活動等(平成24年8月30日~同年9月18日)
G検察官は,捜査当初の証拠関係(原告の供述調書,Bの調書,Iの調書,Cの調書,診断書等)を踏まえ,補充捜査として,①C,B,Iの人間関係を
警察に調べさせ(下記エ),②目撃者としてI,B以外の目撃者がいるかどうかを警察に調べさせ(下記ア),③Iの供述について再度確認するように警察に指示をする(下記カ)とともに,④自らB,Cを取り調べる(下記ウ,オ)などした(乙12,証人G検察官)。

A薬剤師,J薬剤師らに対する聞き込み捜査
E警察官は,平成24年9月7日,G検察官の要請を受け,本件刑事事件の現場付近で稼働していたA薬剤師,J薬剤師らへの聞き込み捜査を行った(乙12,13,丙1,証人G検察官,証人E警察官)。
E警察官は,A薬剤師及びJ薬剤師に対し,

K薬局近くであったCのトラブルの件で話を聴かせてほしい。

と告げて,事情聴取を行った。E
警察官は,A薬剤師の供述態度について,非協力的な印象で,なるべく関わりたくないと思っているようであると感じた(乙13,31,丙1,証人E警察官)。
E警察官は,平成24年9月7日,L病院周辺における聞き込み結果についてと題する捜査報告書を作成した(その概要は,別紙2の1のと
おりである。)。E警察官は,上記捜査報告書において,A薬剤師に対する事情聴取に関しては,A薬剤師が,①自転車泥棒(上記⑴ア)のことでたくさんの警察官がL病院に来ていた,②自転車を盗んだ犯人とCとの間で何かあったことは知っているが,それ以上は知らない,③Cは,K薬局の前で他の患者らと話をしていた旨述べたと報告し,また,J薬剤師に対する事情聴取に関しては,J薬剤師が,①Cが小さい男の人(原告)を捕まえて携帯電話でどこかに電話をしていたのは見たが,その直前の状況につ
いては分からない,②原告は,Cから離れて歩いて行った旨述べたと報告した(乙13,丙1,証人E警察官)。

Cを立会人とする実況見分
E警察官は,平成24年9月10日,Cを立会人として実況見分を行った。Cは,K薬局からL病院の方へ歩いていたところ,後ろから左肩越し
に左顎付近を殴られた,よろけたときに右肩を後ろに引っ張られた旨の指示説明をした(乙15,丙1,証人E警察官)。

Bに対する取調べ
Bは,平成24年9月11日,G検察官に対し,①Cが原告から殴られ
たところを目撃した旨供述した。すなわち,CがK薬局からL病院に向かって歩いていたとき,原告がCを追いかけていった。原告は何かぶつぶつと言いながら,Cに追いついた途端,どちらかの手でCの左顎辺りを1回殴った。警察官に対する取調べでは平手で押すようにして殴ったと供述したが,握り拳であったか平手であったかはっきりしない。その後,原告は,Cの首の辺りの服をつかんで引っ張った。それによりCはバランスを崩した。Cは,原告を殴ったり,突き飛ばしたりして転倒させるなどの暴行を振るっていない。旨供述した。また,②B自身のことについて,L病院に通っており,月に1度診療を受けている旨,③Cとの関係について,L病院で顔を合わすようになったが,Cのことを好きになれずCのグルー
プには入っていない旨,④Iとの関係について,L病院の患者かどうかもよく分からない旨,⑤原告については要注意人物と認識していた旨を供述した。なお,Bは,偽証罪について認識した上で,自分の話していることは本当のことなので裁判官の前でも証言できる旨も併せて供述した(乙12,16,証人G検察官)。

Cらの人間関係等に関する聞き込み捜査
E警察官は,平成24年9月12日,G検察官の要請を受け,L病院に
勤務する職員に対し,
Cらの人間関係等に関する聞き込み捜査を実施した。
E警察官は,①CとIの関係について,CとIがよく連絡を取り合っていること,よく会って話をしていること,IはCの舎弟といった印象であること,②CとBの関係について,それほど親しい関係ではないこと,何か機会がないと行動を共にすることはないことを聴取した(乙12,14の
1・2,証人G検察官)
(なお,乙14号証の4頁以外のマスキング開示を
伴う部分については,原告からの証拠提出の求めに対応して,被告国が裁判所の証拠評価を誤らせないという観点から全体的に開示を行った部分であり,被告国が故意又は重大な過失により時機に後れて提出した攻撃防御方法に当たらず,また,これにより訴訟の完結を遅延させることとなると
認められないから,却下しないこととする。)。
E警察官は,平成24年9月12日,傷害事件発生現場周辺における聞き込み結果についてと題する捜査報告書を作成した(その概要は,別紙2の2のとおりである。)(乙14の1・2)。

Cの取調べ
Cは,平成24年9月13日,G検察官に対し,次の①~③のとおり供述した。すなわち,①Cは,同日,原告から左顎の少し後ろ辺りから首にかけて1回殴られ,続けて右肩の後ろ辺りの服をつかまれて,後ろに引っ張られた旨供述し,具体的には,Iとともに,L病院の方に向かって歩いていたところ,突然左顎の後ろ辺りと首付近に硬い物があたるような強い衝撃を受けた。殴られたときの衝撃からすると,原告は,げんこつで殴ったと思う。原告がどちらの手で殴ったかは分からない。殴られた衝撃で右側にバランスを崩した。また,原告に,右肩の後ろ辺りの服をつかまれて引っ張られたことで余計にバランスを崩したが,右足で転倒しないように踏ん張った。警察官に対しては,後ろから大きな声が聞こえたと供述したが,それは間違いであり声は何も聞こえなかった。原告を突き飛ばすなどの暴行を加えたことはない。旨供述した。また,②Cは,同日,Iとの関係について,家族ぐるみで付き合っている旨供述した。そして,③Cは,同日,Bの下の名前は知らず,特に付き合いはない旨供述した(乙12,17,証人G検察官)。

Iの供述内容の確認
F警察官は,平成24年9月18日,G検察官の要請を受け,Iに対し,電話でその供述内容を確認した。Iは,同年8月24日付け供述調書(乙11。上記⑴カ)に記載された内容のうち,①Cがうなだれるように倒れたという点は,倒れそうになったに,②Cと原告がつかみ合いをしていたところをIが引き離したという点は,Iが離れるように言ったに,それぞれ訂正すると供述した。また,③調書を黙読したところ,事実と異なることがあると思ったが見逃した旨供述した(乙12,18,19,丙2,証人G検察官,証人F警察官)。

本件起訴時のG検察官の判断
G検察官は,以上の捜査結果を踏まえ,①Cの供述がB及びIの供述内容と整合していたこと,②Cの供述態度が自然であったこと,③Cが被害者として合理的な行動をとっていたこと,④本件刑事事件における罪体に照らし,供述の核心部分となる原告がCを後ろから突然殴ったという供述が,C,B,Iの間で一致していたこと等から,Cの供述に信用性が
認められると判断し,他方,原告の供述(後記⑶)については,自身が被害者である旨供述する一方で被害届を提出しないという行動が不自然,不合理であってその信用性が認められないなどと判断して,平成24年9月18日,本件起訴をした(乙3,12,証人G検察官)。


原告の供述状況等(平成24年8月24日~平成25年7月1日)ア
平成24年8月24日の供述
原告は,平成24年8月28日,弁解録取手続において,大阪府a警察
署の警察官に対し,

K薬局の前でCと口論にはなったが,暴行は加えていない。

旨供述した(乙20)。イ
平成24年8月28日の申出
原告は,平成24年8月28日,右肘に5㎜程度の擦過傷があると申し出て,大阪府a警察署の警察官により原告の右肘部分の写真撮影を受けた
(乙59)。

平成24年8月29日の供述
原告は,平成24年8月29日,大阪府a警察署の警察官に対し,被疑事実は全くのでたらめであり,手を出してきたのはCの方である旨供述した。すなわち,原告は,同日,
Cから,占有離脱物横領被疑事件(上記⑴ア)について,L病院の方で話をしようと言われたため,L病院の方を振り返ったところ,Cが背中を手で押してきた。原告は,その場に前のめりになって倒れ地面で肘と腰を打った。旨供述した(甲18,乙21,原告本人)。

平成24年8月30日の供述
原告は,平成24年8月30日,弁解録取手続において,G検察官に対し,

Cを殴っておらず,むしろCが後ろから突き飛ばしてきたため,右肘を地面に打ち,けがをさせられた。

旨供述した(甲18,乙22,原告本人)。


平成24年9月3日の供述
原告は,平成24年9月3日,E警察官に対し,CがK薬局の方を向いて道路上に立っていたところ,CからL病院の方へ行って話をしようと言われたと思いL病院の方を向いたが,それと同時にCから背中を押され,その拍子に前に転び,右肘を地面に打ち,皮がめくれて擦り傷を負った。自分はCの顔面を殴っていない。旨供述した(甲18,乙23,証人E警察官,原告本人)。


平成24年9月5日以降の供述
原告は,平成24年9月5日,G検察官に対し,本件刑事事件について,上記ア~オと同旨の供述をした。また,原告は,同日,本件刑事事件の発端が占有離脱物横領被疑事件(上記⑴ア)のことで原告がCに因縁を付けた点にある旨供述するとともに,Cに突き飛ばされてけがをさせられたこ
とについての被害届を出すと本件刑事事件が長引くと思ったことから,

被害届を提出せず,今後も被害届を出すつもりはない。

旨供述した(ただし,原告は,G検察官に対し,被害届を出さない理由を供述しなかった。)(甲18,乙24,証人G検察官,原告本人)。
原告は,平成24年9月5日以降の取調べにおいても,同旨の供述をし
た(甲18,乙25,26,証人E警察官,原告本人)。

平成25年7月1日の被告人質問の際の供述
原告は,
平成25年7月1日の第7回公判期日における被告人質問の際,
本件刑事事件について捜査段階と同旨の供述をするとともに,少なくともCとIに対する被害届を提出しようと思う旨供述した(甲18,67,原
告本人)。


D弁護人による弁護活動等(平成24年8月頃~平成26年1月頃)ア
起訴前の弁護活動
D弁護人は,本件起訴前,G検察官に対し,虚偽告訴のおそれがあるため十分な聞き込みをしてほしい旨を伝えていた(甲74,証人D弁護人)。

A薬剤師及びJ薬剤師に対する事情聴取
D弁護人は,平成24年10月24日,A薬剤師及びJ薬剤師の事情聴取をした。両名は,Cと原告が共にいた現場を目撃した旨を供述するとともに,そのことを既にE警察官に対して伝えた旨供述した。すなわち,A薬剤師は,D弁護人に対し,

原告を先頭にして,原告とCがL病院に向かって行こうとしているところを見た。私が見たのはその場面だけで,その前後は見ていない。

旨供述した。また,J薬剤師は,D弁護人に対し,

Cが原告を連れてくるような感じで,K薬局の方に歩いて来ていた。殴っているところは見ていない。

旨供述した(甲8,9,74,乙29の1・2,証人D弁護人)。

大阪地方検察庁a支部に対する意見書等の提出
(ア)意見書の提出
D弁護人は,平成24年11月7日,大阪地方検察庁a支部の支部長検事(以下支部長検事という。)に対し,意見書を提出した(その概要は,別紙3のとおりである。)。上記意見書には,①本件刑事事件の目
撃者がいたこと,②Cは暴力団に所属しており薬物依存の経歴があること,③Bには詐欺等の経歴があること,④事件現場周辺ではCが勢力を振るっており,Cの利益に反する供述をする者はほとんどいない状況であること,④必要に応じて証拠開示にも応じる所存であること等が記載されている(甲2,74,乙29の1・2,証人D弁護人,証人H検察
官)。
(イ)報告書兼申入書の提出
また,D弁護人は,平成24年11月8日,支部長検事に対し,A薬剤師及びJ薬剤師の供述が原告の供述の信用性を裏付けるなどと記載した報告書兼申入書を提出した(その概要は,別紙3のとおりである。)。
上記報告書兼申入書には,A薬剤師の供述として,次のような記載があった。すなわち,
事件当時,薬局内から見て,Cさんと原告と思われる人が,原告を先頭にして,Cさんを後ろにして,2人で病院側に向かって歩いているようなところを,見かけました。そのとき,原告は逃げるような感じで,Cさんが追いかけるような感じでした。そのような感じ,というか,そのような雰囲気に見えました。これらのことは,警察の方に,全てお話ししています。旨供述したとの記載があった。また,上記
報告書兼申入書には,J薬剤師の供述として,次のような記載があった。すなわち,原告が,逃げてといったらおかしいけど,病院側から薬局の方向に,Cさんと歩いてきていた。原告は逃げよう逃げようという感じで。薬局の中から見て,左から右に,Cさんが原告を連れてくるような感じで,歩いてきていた。Cさんは電話をしていて,原告は薬局側の向こうの道へ,そのまま歩いていきました。このことは全て警察に話しています。旨供述したとの記載があった(甲1の1~3)。⑸

本件起訴後のH検察官の公判活動,G検察官の補充捜査の内容等(平成24年11月頃~同年12月頃)


C及びBの証人尋問請求
H検察官は,平成24年11月1日の第1回公判期日において,C及びBの証人尋問請求をした(乙27,28)。


D弁護人からの意見書提出等
支部長検事は,平成24年11月7日頃,D弁護人から,意見書等の提出を受けた。上記意見書等の内容は,上記⑷のとおりである。

G検察官のE警察官に対する確認
G検察官は,上記意見書等を踏まえて,次のような補充捜査を行った。すなわち,G検察官は,平成24年11月13日,H検察官及び支部長検事の要請を受け,E警察官に対し,同人作成の同年9月7日付け捜査報告
書(乙13〔上記⑵ア〕)の作成経緯について確認した。E警察官は,A薬剤師,J薬剤師から聴取した内容をありのままに捜査報告書に記載したと述べた。また,E警察官は,A薬剤師の原告が前を,Cが後ろを歩く形でL病院の方に向かって歩くのを見た旨の供述(上記⑷イ)について,当時聴取しなかった旨述べた(乙12,30,31,丙1,証人G検察官,証人H検察官,証人E警察官)。

H検察官によるC及びBの証人テスト,平成24年11月時点におけるH検察官の判断
H検察官は,平成24年11月14日,C及びBの証人テストを個別に行った。両名は,偽証罪について説明を受けた上,原告がCの顔を殴ったと供述した。H検察官は,①Cの供述態度に関し,ごく普通のものであると感じるとともに,②Bの供述態度に関し,自ら積極的に目撃状況を説明
するものであって,ごく普通の対応であると感じた(乙30,証人H検察官)。
H検察官は,平成24年11月時点において,G検察官の上記補充捜査の結果等を踏まえた上で,D弁護人作成の意見書等(上記イ)に関して,A薬剤師及びJ薬剤師が本件刑事事件において供述の核心部分となる暴行
行為自体を目撃したわけではない(すなわち,A薬剤師は事前の状況,J薬剤師は事後の状況を目撃したにすぎない)以上,Cらの供述の信用性がA薬剤師及びJ薬剤師の供述により揺らぐことはないなどと判断した(乙30,証人H検察官)。

Bに対するG検察官の忠告
Bは,平成24年10月~同年12月頃,原告に対し早く罪を認めるようにという旨記載した手紙を送れば本件刑事事件の裁判が早く終わり原告が釈放されると考え,G検察官に対し,その旨記載した手紙を送りたいと話した。これに対して,G検察官は,Bに対し,既に裁判になってい
るのだから手紙を送ることは差し控えるよう忠告した(甲19,乙12,42の2,証人B,証人G検察官,弁論の全趣旨)。

Cの証言
Cは,平成24年12月4日の第2回公判期日において,①IとL病院の方へ向かって,Iが少し後方に位置する形で歩いていたところ,左後ろから人の気配がした,②そこで,左後ろを振り返ったところ,原告から左肩と下顎の中間(首筋辺り)をげんこつで殴られた,③殴られたことで右
の方によろけたところ,今度は右肩の後ろの方の服を引っ張られ,後ろへバランスを崩した,④その際,右足首をひねった,⑤Bと日頃の付き合いはなく,本件刑事事件について話したことはない,⑥本件刑事事件直後に行ったM病院には,IとBが付き添った旨証言した(乙30,32の1,2,証人H検察官)。



虚偽の目撃供述をした旨のBの上申等(平成25年1月)

E警察官,H検察官に対するBの申告
(ア)Bは,平成25年1月中旬頃,E警察官に対し,本件刑事事件を目撃した旨の供述は,Cらの依頼で述べた虚偽のものであった旨申告した。
E警察官は,その際のBの様子について,おどおどして申し訳なさそうな態度であるとの印象を持った(乙42の2,丙1,証人B,証人E警察官)。
(イ)Bは,平成25年1月23日,大阪地方検察庁a支部に赴き,H検察官に対し,同旨のことを申告した(甲19,乙12,30,42の2,丙
1,証人B,証人G検察官,証人H検察官,証人E警察官)。
すなわち,Bは,H検察官に対し,①C,Iと口裏合わせをした経緯,経過について,前記前提事実⑵記載の事実のほか,Cが病院で診察を受けている間に,
Cは,後ろから右手で左頬の辺りを殴られたことにし,それ以外に余計なことを言うのをやめることをIと確認した旨,②虚
偽の申告をしようとした理由について,原告が素行不良であるから警察に捕まればよいと思ったからである旨,③Cが原告に暴行を加えたという原告の供述(上記⑶)について,Cが足で小突く程度の暴行はあったが,蹴ってはおらず,原告が転倒した事実もけがをした事実もない旨をそれぞれ供述した。Bは,極めて早口で落ち着かない様子で,何かにおびえているような表情であった(乙12,30,33,41,証人G検察官,証人H検察官)。

H検察官は,Bが落ち着いたときに再度事情聴取しようと考え,Bとの面談を終えた(証人H検察官)。

Bの現行犯逮捕
Bは,平成25年1月24日,自身が逮捕されれば原告が釈放されるとともに,Cから逆恨みされる恐怖から逃れられると考え,a市内のコンビ
ニエンスストアで恐喝行為に及んだ。Bは,同日,恐喝未遂の被疑事実で現行犯逮捕された。Bは,逮捕後の弁解録取手続において,警察官(N警察官)に対し,被疑事実を認めた上で,動機については金が欲しかったわけではない,人生がどうにでもよくなれと思った,思いつく中で一番大それたことをしたかったなどと話した。また,Bは,逮捕当初から,精神病
にり患しており現在L病院で診察を受けており,もらっている薬がないと幻覚が見えたり幻聴が聞こえたりするなどと供述した(甲19,乙12,30,34,35,丙2,証人B,証人G検察官,証人H検察官)。ウ
F警察官の報告(供述内容等について)
F警察官は,平成25年1月28日,恐喝未遂事件被疑者Bの釈放に至る経過についてと題する捜査報告書において,Bの恐喝未遂被疑事件(上記イ)に関する供述内容等について,他の警察官(N警察官)からの報告を踏まえ,次のとおり報告した。すなわち,F警察官は,①Bが犯行に及んだ動機について,金が欲しかったわけではなく,思いつく中で一番
大それたことをしたかったと供述したこと,②Bが覚せい剤等の後遺症で精神病となり,現在L病院で診察を受けているところ,精神安定剤等の薬がないと幻覚が見えたり,幻聴が聴こえる旨供述したこと,③弁解録取手続の翌日(同月25日)に担当警察官が取り調べた際,Bが支離滅裂な言動を繰り返し,喜怒哀楽がコントロールできず奇声を上げたり,沈黙して供述できない状態が続いたこと等を報告した(乙30,35,丙2,証人H検察官,証人F警察官)。


F警察官の報告(既往症等について)
F警察官は,平成25年1月28日,Bの既往症等について,恐喝未遂事件被疑者Bの釈放に至る経過についてと題する捜査報告書において,
次のとおり報告した(その概要は,別紙4のとおりである。)。すなわち,F警察官は,①Bは,平成22年頃から覚せい剤,大麻使用による後遺症
として中毒性精神病にり患していた,
②L病院で診察を受けているものの,
診察を受けなかったり,受けた投薬を飲まなかったりしたことがあったため,病状を克服できず現状維持状態であった,③Bが入院するか否かは,平成25年1月28日以降にL病院の主治医が判断する旨報告した(なお,
Bは,同月25日に精神科への入院判定のための診察を受けた際,普通に
会話ができていた。)(乙35,丙2,証人F警察官)。

Bの入院
Bは,平成25年1月28日からL病院に入院した。H検察官は,同月30日,L病院に対し,Bの病状に関する捜査照会をした(乙30,58,証人H検察官)。



上記⑹を踏まえた,
G検察官の補充捜査の内容,
H検察官の公判活動等
(平
成25年1月~同年2月頃)
虚偽の目撃供述をした旨のBの上申等(上記⑹)を踏まえて,G検察官は,補充捜査として,①Iの取調べ(下記ア),②A薬剤師及びJ薬剤師の取調
べ(下記ウ)等を行った。また,H検察官は,平成25年2月4日の公判期日において,Bの証人尋問に関する発言をした(下記イ)
(乙12,30,証人
G検察官,証人H検察官)。

Iの取調べ
G検察官は,平成25年1月下旬頃,H検察官及び支部長検事の要請を受け,Iの取調べをした。Iは,捜査段階での供述(上記⑴カ,⑵カ)と同様の供述をするとともに,①平成24年頃,L病院でCと知り合った,C
とは世間話をする仲であり,CがIの家に遊びに来ることもあった,②Bは,L病院内にある喫茶店のようなところで働いており,そこの従業員と客という程度の関係であった,③本件刑事事件の際,Cと並ぶようにして一緒にL病院の方に向かって歩いて行った,④そうしたところ,何と言っていたかは分からなかったが後ろから大きな叫び声が聞こえた,
⑤そして,

突然原告が左手でCの左肩をつかんで引っ張り,振り返らせた,原告は,右の平でCの左顎付近を殴った,Cは,原告に殴られ右方向によろけたが,転倒はしなかった,原告は再びCの服をつかみ,引っ張った。原告がCに暴力を振るっていたとき,口で止めた,⑥Cは,原告の手を払いのけた頃,原告に暴行を振るっていた旨供述した。その際,Iは,偽証罪について理
解した上で,公判廷でも証言できる旨も併せて供述した(乙12,30,38,証人G検察官,証人H検察官)。

平成25年2月4日の公判期日におけるH検察官の発言
H検察官は,平成25年2月4日の第3回公判期日において,同日予定
されていたBの証人尋問について,
①Bが恐喝未遂事件で逮捕されたこと,
②逮捕当時幻覚や幻聴があったこと等からBがL病院に入院したこと,③病状照会の回答を踏まえ,B,Iの証人尋問の可否等を検討したいことを述べた(甲3,74,乙30,37,証人D弁護人,証人H検察官)。H検察官は,平成25年1月頃,Bの供述の信用性について,①同月よ
り前のBの供述(原告がCを殴った旨の供述)の態度はごく自然であった一方で(上記⑸エ),同月当時のBの供述(Cが原告を殴った旨の供述)の態度は早口であって落ち着かない様子であったこと,②Cと何らかのトラブルがあったことも否定できないと考えられたこと等から,同月より前の供述(原告がCを殴った旨の供述)の方が,同月以後の供述(Cが原告を殴った旨の供述)よりも信用性が高いと判断した。また,H検察官は,同月頃,Bの供述が変遷した理由として,Cとの間に何らかのトラブルがあ
った可能性が最も高いと考え,
次に薬物使用の影響の可能性があると考え,
可能性としては低いが第三者の圧力の可能性があると考えた(乙30,証人H検察官)。

A薬剤師及びJ薬剤師の取調べ
G検察官は,平成25年2月15日,H検察官又は支部長検事の要請を
受け,A薬剤師及びJ薬剤師の取調べをした。A薬剤師は,原告とCがほぼ横並びで,薬局の方から病院の方に向かって歩いていた。原告は,Cの少しだけ前を歩いており,Cから逃げているように見えた。その間,Cが原告を突き飛ばしたり,原告が転倒したりした場面は見なかった。原告がCに暴行を加えたような場面は見ていない。旨供述した。J薬剤師は,
原告とCは,病院の方から薬局の方に向かって歩いていた。Cが,原告の身体のどこかを片手でつかみ,片方の手に持った携帯電話で電話をかけていた。その間,Cが原告を突き飛ばしたり,原告が転倒したりした場面は見なかった。原告がCに暴行を加えたような場面は見ていない。最終的な原告とCの位置関係は分からない。旨供述した(乙12,30,39,
証人G検察官,証人H検察官)。


Bの病状等について(平成25年1月頃~同年2月頃)

病状照会回答書
L病院の担当医師は,平成25年2月27日,H検察官宛ての同日付け
病状照会について(回答)と題する書面において,Bの病状について,抑鬱状態,中毒性精神病であると診断した上で,事実経過として,平成24年秋に当院の敷地内をはいかいし,他患者に迷惑を及ぼしていた男性(当院で入院歴がある)が何らかのトラブルで逮捕になった事件があり,そのことを最近突然に持ち出して,『あれは,他の患者たちが「アイツをはめよう・・という話になって捕まえられただけ。2月の裁判で自分は証人として出廷することになっていて,それを正直に言ったらLには通院
できない・・』とデイケアスタッフに訴えた。そういう話のやり取りの後,平成25年1月下旬,突然本人が当院外来窓口に来て,突然の反抗的態度を見せ,担当医に一方的な非難を浴びせた。」旨記載した(乙36の1・2)。
Bは,平成25年1月24日に起こした恐喝未遂事件(上記⑹イ)に及
んだ動機について,L病院の担当医師に対し,父親への当てつけであると説明するとともに,本件刑事事件について,Cらと共に原告をはめた旨述べた(乙36の1・2,57)。

入院時所見
L病院の担当医師の入院時所見は,本件刑事事件の証人として出廷する
状況が間近となり,暴力団にやられるなどと恐怖,不安を募らせ,そこからの逃避として恐喝未遂事件(上記⑹イ)に及んだものであり,入院時に明確な幻覚妄想は認められなかったが,恐怖感の亢進,言動における短絡性,衝動性の亢進が認められたというものであった(甲5,76,乙30,36の1・2,57,証人H検察官)。


Bの薬物使用歴等
Bは,覚せい剤,大麻を使用したことがあり,過去に幻聴の影響下で刃物を持ってコンビニ強盗事件を起こしたことがあった。BがL病院を受診するようになった契機は,覚せい剤,大麻乱用に伴い生じた精神病症状で
あった。治療過程において,後遺症性の精神病症状と考えらえる妄想的言動が現れることがあったが,その後の治療経過において,このような幻覚妄想といった精神病症状はほぼ消滅に至った。もっとも,この状態を維持するためには,抗精神病薬による薬物療法の継続が必要であった。近頃見られる気分変調は,中毒性精神病とは直接的に関係がなく,元来の人格像の反映によるものと考えられるとされた(甲5,76,乙36の1・2,57)。


D弁護人に対する担当医師の回答
Bの診察等をしたL病院(精神科)の担当医師は,平成25年6月25日,D弁護人に対し,上記に加え,Bの入院期間中の症状について,Bに幻視,幻聴などの幻覚症状,その他覚せい剤使用,依存を直接連想させるような症状は認められなかったと回答した(甲5,乙57)。


D弁護人に対する担当ケースワーカーの回答
L病院の担当ケースワーカーは,平成30年1月24日,D弁護人に対し,平成24年11月~平成25年2月にBが処方を受けた薬を受け取っていないなどという連絡を受けたことはなかった旨述べた(甲17)。


Iの証人尋問(平成25年3月)
H検察官は,平成25年3月1日,Iの証人尋問請求をした。Iは,証人尋問に向けた証人テストの際,偽証罪についての説明を受けた上で,G検察官に対して供述した供述内容(上記⑺ア)を維持した。Iは,同月11日の第4回公判期日において,原告がCに暴行を加えた上でCの服を両手で引っ張ったが,Cはこれを振りほどいて原告を抑えるためにヘッドロックをした
旨証言した(甲74,乙28,30,40の1・2,証人H検察官,証人D弁護人)。

平成25年4月1日以降のG検察官の公判活動等(同年5月頃)

G検察官による,Bの取調べ及び証人テスト
G検察官は,平成25年5月前半頃,Bの取調べ及び証人テストをした。Bは,原告がCに暴行を加えたところを目撃した旨の供述がCの依頼を受けたものであり,虚偽である旨供述した。そして,Bは,①真実の目撃内容について,原告がK薬局側に,CがL病院側にいたときに,原告が

(占有離脱物横領被疑事件〔上記⑴ア〕について)通報したんお前か。

などと言い,Cに向かって行った。Cが正対する原告の胸の辺りを右手で1回殴る暴行を加えたが,原告が転倒したことはなかった,Cと原告がつかみ合
うことはなかった,というものであった,②C,Iとの共謀の状況について,前記前提事実⑵のほか,Cが病院で診察を受けている間に,後ろから来た原告が,Cの振り向きざまに殴った上,Cの体のどこかを持って引っ張り,足を捻挫したことにすることをIと確認した,③虚偽の申告をした理由等について,原告は悪い人間だからどうにでもなれと思ったから
である,④G検察官及びH検察官に対し,虚偽の申告である旨供述しなかった理由について,自分の嘘で何が起きているか真剣に考えていなかったことや,Cが怖かったこと,裁判で正直な話をすればよいと思ったからである,⑤虚偽の申告である旨を正直に話そうと思った理由について,Cからの仕返しが心配であったが,人を罪に陥れてよいのかと思うと耐えられ
なくなったからである,⑥Cとの関係について,Cのことは約1年前から好きでなくなった,
Cとの関係が悪くなったのは同年1月28日頃である,
今はCのことを怖いと思っている,本件刑事事件の裁判で証言をすることも勇気がいる,⑦原告の供述内容について,原告はCに蹴られて転倒し傷ができたと供述するが,Cは足で小突いた程度であり,蹴ったり転倒させ
たりしておらず傷ができるわけがない,傷があったとしても胸の打撲程度と思うが,Cは原告が打撲するほど強く殴っておらず,原告も言い過ぎである旨を供述した(乙12,41,証人B,証人G検察官)。

Bの証言
Bは,平成25年5月20日の第6回公判期日において,原告がCに暴行を加えたのを目撃した旨の捜査段階の供述がCの依頼を受けたものであり,虚偽である旨証言した。すなわち,Bは,
①原告がK薬局側に,CがL病院側にいたときに,Cが正対する原告の胸ぐらをつかみ,原告の胸の辺りをげんこつで2,3回殴る暴行を加えた。②目撃していた間,原告が転倒したことはなかった。③Cらの発案で,原告がCに暴力を振るったと警察に嘘の申告をして,原告から民事の損害賠償金を取ることを話し合った。④Cとは約5年前に知り合って以来,仲が良かった。旨証言した(甲4,乙12,42の1,2,証人B,証人G検察官)。
そして,Bは,供述が変遷した理由等については,①虚偽の申告をしたのは,原告の日頃の行いに対して迷惑な気持ちを持っていたからであり,Cが怖かったわけではなかった。②Cは悪い人間ではないと思うが,元暴力団なので怖いという気持ちがあり,虚偽の申告をしたと言えなかった。③公判期日で虚偽の申告である旨証言することについては,Cに対する恐怖心があったことに加え,本当のことを言うとリハビリ施設での人間関係が悪化するというリスクがあると考え,言い出しづらかった。④虚偽の申告である旨言おうと思ったのは,良心のかしゃくにさいなまれたからである。旨証言した。また,Bは,平成25年1月23日にH検察官と会った際の状況について,H検察官が話を聞いてくれた旨証言し,H検察官に口止めをされたなどという証言をしていない(甲4,乙42の2)。⑾
平成25年6月以降のG検察官の補充捜査,公判活動等(平成25年6月~同年9月)


A薬剤師及びJ薬剤師の取調べ等(平成25年6月19日)
G検察官は,平成25年6月19日,A薬剤師及びJ薬剤師の取調べと実況見分(乙44)を行った。両名は,同年2月15日と同様の供述(上記⑺ウ)をした。その上で,A薬剤師は,

①目撃した時間は午後2時過ぎであった。②警察官に話を聞かれたが,『この日に何かありませんでしたか。』という質問であったので,本件刑事事件のことなど考えもしなかった。

旨供述した。J薬剤師は,①目撃した時間は午後3時30分頃~午後4時前後頃であった。②警察官に話を聞かれたが,『この日に何かありませんでしたか。』という質問であったので,本件刑事事件のことなど考えもしなかった。旨供述した(乙12,43,証人G検察官)。イ
A薬剤師及びJ薬剤師の取調べ(平成25年7月22日)
G検察官は,平成25年7月22日,A薬剤師及びJ薬剤師を取り調べた。A薬剤師は,①平成24年8月頃の午後2時頃,原告がL病院側にいて,原告とCがくっつくようにして2~3mほどL病院に向かって歩いていたところを目撃した。②原告がCから逃げている感じを受けた。③この間Cが原告に暴行を加えたことはなく,原告がCに暴行加えたこともなかった。④自分がカウンターを離れた後,直ちにJ薬剤師がカウンターに来た記憶はなく,いつJ薬剤師がカウンターのところに行ったのかは分からない。旨供述した。J薬剤師は,①平成24年8月頃の午後3時30分頃~午後4時頃,原告とCがL病院側からK薬局の方へ歩いて行くのを見た。②Cは,どちらかの手で原告の服か体をつかみ,もう片方の手に持った携帯電話で電話をしていた。③この時,原告とCは,L病院を背にして西方向を向き,約5m歩いた。④原告は,Cの腕を振り払おうとして,腕を振り回していた。⑤この間Cが原告に暴行を加えたことはなく,原告がCに暴行を加えたこともなかった。⑥これらを目撃する約5分前の時点では,誰もカウンターにいなかった。旨供述した(乙12,46,47,
証人G検察官)。

A薬剤師の証言
A薬剤師は,平成25年9月5日の第8回公判期日において,証人として出廷した。A薬剤師は,①本件刑事事件について,警察官(E警察官)から,そのときの様子はどうであったかと当時聞かれたので,そのときに見たこと,すなわち原告とCが歩いている姿が見えた旨答えた。その際,仲良く歩いていたようには見えなかったという印象は伝えたと思うが,当時の原告とCの位置関係について言ったかは覚えていない。②原告とCがくっつくくらいの間隔で,L病院の方に向かって2,3m歩くのを見た。③原告が少し病院側(前の方)で,Cが少し後ろに見えたが,斜め方向から見ていたので,本当は横並びであったかもしれない。④原告が病院方向に行きたがっており,Cがそれに付いて行くという感じであった。⑤これらは午後2時頃~午後3時半頃の出来事であったと思う。⑥この間Cが原告に対して暴行を加えたことはなく,原告がCに暴行を加えたこともなかったし,原告が転倒したり,転倒しかけたりしたこともなかった。⑦J薬剤師よりも先に原告らを目撃した。J薬剤師と入れ違いでカウンターに来たのではない。自らが原告らを目撃した後,少し時間をおいてJ薬剤師が原告らを目撃したのだと思う。旨証言した(乙12,48の1,2,証人G検察官)。

J薬剤師の証言
J薬剤師は,平成25年9月26日の第9回公判期日において,証人と
して出廷した。J薬剤師は,①原告とCが,L病院の方からK薬局の方に向けて約5m移動するのを見た。②この間,Cはどちらかの手で原告の腕か肩辺りをつかみ,もう一方の手に持った携帯電話で話をしていた。③原告は,Cの手を振り払おうとしていた。④この間にCが原告に暴行を加えたことはなく,原告がCに暴行を加えたこともなかった。⑤この間に原告が転倒したことはなかった。⑥A薬剤師と入れ替わりでカウンターに行ったのではない。原告らの行動を目撃する前5~10分の間,目撃場所のカウンター前には誰もいなかった。旨証言した(乙12,49の1,2,証人G検察官)。

その後の公判活動等(平成25年10月~平成26年1月)

原告の釈放
G検察官は,平成25年10月16日,原告について勾留更新の理由がないため勾留状を失効させる旨の通知を本件刑事事件の担当書記官から受けたため,勾留取消請求を行った(乙12,50,51,証人G検察官)。原告は,平成25年10月17日,勾留取消決定の上,釈放された(乙12,50~52,証人G検察官)。


論告・求刑
G検察官は,平成25年12月12日の第11回公判期日において,Cの証言は信用性が認められる一方,原告の供述は信用性が乏しい旨の論告を行い,原告について罰金20万円を求刑した(乙12,54の1,2,証
人G検察官)。
G検察官が平成25年12月12日当時,Cの証言に信用性が認められる一方,原告の供述は信用性が乏しいと判断した根拠は,次のとおりであった。すなわち,①Cの証言が当初から一貫しており,その証言内容も自然かつ合理的なものであること,Cの証言は,J薬剤師及びIの証言と合
致する部分があり,Cが原告を捕まえて警察に電話をしたと評価できること等からすると,Cの証言の信用性は高い。他方,②B及びA薬剤師の証言について,Bの同年1月以降の証言は,その内容自体不自然,不合理であるだけでなく,原告の供述内容とも整合しないこと,A薬剤師の証言は,原告の供述内容とも整合せず,目撃した時間帯にも疑義があること等から
すると,Bの変遷後の証言及びA薬剤師の証言に信用性は認められない。そして,③原告の供述は,J薬剤師及びA薬剤師の証言と整合せず,Bの変遷後の証言とも整合しないこと,その供述内容自体不自然,不合理な点があること等からすると,信用性が認められない。これらのことを総合考慮し,Cの証言に信用性が認められる一方,原告の供述は信用性が乏しい
と判断した(乙12,54の1,2,証人G検察官)。
G検察官及びH検察官は,支部長検事に対し,本件刑事事件の公判経過等を適時報告し,指示を仰ぐなどしていた(乙30,証人G検察官,証人H検察官)。

無罪判決
大阪地方裁判所a支部は,平成26年1月20日,本件刑事事件について無罪の判決を言い渡した(甲6)。


原告の被った不利益

精神的・肉体的苦痛
原告は,逮捕・勾留に伴い,精神的・肉体的苦痛を被った(甲18,原告本人)。


自宅の競売等
原告は,逮捕・勾留中に,競売手続により自宅等を失った。そこで,原告は,釈放後,生活保護を受給している(甲18,69,70,原告本人)。
2
事実認定の補足説明


E警察官が内容虚偽の捜査報告書を作成したか否かについて(上記認定事実⑵の関係)

E警察官が平成24年9月7日に作成した捜査報告書(乙13)には,J薬剤師がCが小さい男の人(原告)を捕まえて携帯電話でどこかに電話をしていたのは見たと供述した旨の記載が認められる(上記認定事実⑵ア)ところ,E警察官が上記捜査報告書を作成した当時,C,B,IのいずれもCが原告を捕まえていたという,Cに不利益であるとも評価で
きる旨の供述をしていなかったこと(上記認定事実⑴エ~カ)からすると,E警察官が本件起訴のためにあえて虚偽の記載をしたと考えるのは不合理であり,むしろE警察官がA薬剤師らから聴取した事項を報告したことが推認される。

他方,A薬剤師の一連の供述内容及び供述経過等(上記認定事実⑵ア,⑷,⑸イ,⑺ウ,⑾ア~ウ)からすると,E警察官が,A薬剤師に対して事情聴取を行った際,A薬剤師がJ薬剤師だけでなく自身も本件刑事事件の現場を目撃した旨述べたと感じていたことは否定し難い。しかし,E警察官が事情聴取を行った際のA薬剤師の態度が非協力的であり,本件刑事事件に余り関わり合いたくないような様子であったことがうかがわれること(上記認定事実⑵ア)に鑑みると,A薬剤師がE警察官に対して自らも本
件刑事事件を目撃したことをはっきりと伝えなかった可能性も十分に認められるところである。

以上のことからすると,E警察官が,A薬剤師らに対して事情聴取を行った際の内容について,自己の認識と異なる虚偽の報告をした事実は認められない。



F警察官が平成25年1月24日頃にBをどう喝したか否かについて(上記認定事実⑹の関係)

関係者の証言内容
F警察官が平成25年1月24日頃にBをどう喝したか否かに関する関
係者の証言内容は,次のとおりである。
(ア)Bの証言要旨
F警察官は,Bの恐喝未遂被疑事件の取調べをした際,Bに対し,

幻聴聞こえるやろ。


空気読めや。

などと言った。何のことか分からなかったが,何度も押し問答が続いたため,最終的に

幻聴が聞こえます。

と述べた。しかし,実際に幻聴幻覚はなかったし,奇声を上げたこともなかった。
処方された薬も欠かさず服用していた
(甲19,
証人B)

(イ)F警察官の証言要旨
Bに対する取調べを行ったことはなく,他の警察官から報告を受けた事項については,ありのままに報告書(乙35)に記載した。F警察官
を含め,大阪府a警察署の警察官がBをどう喝したことはなかった(丙2,証人F警察官)。

B及びF警察官の証言の信用性について
そこで検討すると,Bは,逮捕後の弁解録取手続において,警察官(N警察官)に対し,被疑事実を認めた上で,動機については金が欲しかったわけではない,人生がどうにでもよくなれと思った,思いつく中で一番大それたことをしたかったなどと話していたこと,Bは,逮捕当初から,精
神病にり患しており現在L病院で診察を受けており,もらっている薬がないと幻覚が見えたり幻聴が聞こえたりするなどと供述していたこと(上記認定事実⑹)等に照らせば,F警察官の上記証言部分は十分に信用することができる。他方,F警察官がBを恐喝未遂被疑事件の被疑者として取調べをした事実は認められないこと(上記認定事実⑹),Bは,恐喝未遂被
疑事件を起こした当時,明確な幻覚妄想は認められなかったものの,本件刑事事件の証人として出廷することが予定されていたことから,恐怖感の亢進や衝動性の亢進が認められたこと(上記認定事実⑻イ,エ)に照らせば,Bの上記証言部分は採用することはできない。
したがって,BがF警察官を含む大阪府a警察署警察官からどう喝され
た事実は認められない。


H検察官がBに対して口止め行為をしたか否かについて(上記認定事実⑹の関係)

関係者の証言内容
H検察官がBに対して口止め行為をしたか否かに関する関係者の証言内容は,次のとおりである。
(ア)Bの証言要旨
H検察官は,平成25年1月23日頃,本件刑事事件が虚偽の申告に基づくものであったと知り,Bに対し,D弁護人には虚偽の申告であっ
たことを言わないようにと口止めした。G検察官及びH検察官とは取調べ,証人テスト,本件刑事事件の傍聴の際に会ったが,会う度に同様の口止めをされた(甲19,証人B)。
(イ)H検察官の証言要旨
平成25年1月23日のBとの面談の際,Bに対してD弁護人と接触することを禁止したことや,原告がCに暴行を加えた旨の供述が虚偽であった旨をD弁護人に対し伝えないよう言ったことはない。Bが捜査段
階の話は虚偽であった旨供述した同日以降,Bとは会っていない。なお,D弁護人に対し,Bらに連絡しないよう伝えたのは,Bらの個人情報をマスキングしないまま証拠開示をしてしまったからであった(乙30,証人H検察官)。

B及びH検察官の証言の信用性について
そこで検討すると,Bは,本件刑事事件の公判期日において,H検察官に口止めをされたなどという証言をしていない(上記認定事実⑽イ)。また,B自身,現在記憶が曖昧になっていると証言している上,H検察官と会っていないと認められる時期であるにもかかわらず,H検察官と会う度
に口止めをされたなどと証言するなど,その証言内容自体からも信用性に疑問を抱かせる事情が存在する。
他方,H検察官は,本件刑事事件の経過(H検察官が平成25年1月23日以降,Bと会っていないこと等)
(上記認定事実⑹,⑺,⑼~⑾)に沿った供述をしている。また,Bが,同日にH検察官と会った際の状況につ
いて,H検察官が話を聞いてくれた旨の証言をしていること(上記認定事実⑽イ)をも併せ考慮すると,H検察官の上記証言部分の信用性に疑問を差し挟む余地はない。これらのことからすると,H検察官の上記証言部分は十分に信用することができ,これに反するBの上記証言部分は採用することができない。

したがって,H検察官がBに対して口止め行為をした事実は認められない(なお,本件刑事事件の経過に照らせば,G検察官がBに対して口止め行為をした事実も認められない〔上記認定事実⑸オの発言も,一般的なものであって,口止め行為とは認められない。〕。)。


平成25年1月24日,25日頃のBの精神状態(上記認定事実⑹,⑻)原告は,平成25年1月24日,25日頃のBの精神状態についてそれほど悪いものではなく,乙35号証の捜査報告書(別紙4)の記載内容の信用
性には疑問がある旨主張し,証人Bも同旨の証言をする。しかし,同月24日の恐喝未遂事件の態様や同日におけるBの動機の説明内容,担当医師・市役所生活福祉課担当者・保健所地域保健課担当者の聴き取り結果,Bが当時精神科病院を受診しており同月当時の病状は日によって異なっていたこと,Bは同月25日に釈放されて同月28日に精神科病院に入院したこと等に照
らせば,乙35号証の捜査報告書の記載内容の信用性は認められるというべきである。
3
違法性の判断基準について


原告は,告訴の内容が虚偽であると疑われるような事案においては,検察官の公訴提起,
公訴追行等に関する国家賠償法の違法性の判断基準について,

単に検察官の判断過程に合理性が認められるだけでは足りず,事案の解明の困難性,身体拘束という不利益の重大性等に照らし,より厳格に判断すべきである旨主張し,
虚偽告訴の事案がこれまでにも多数存在する旨指摘する
(甲
7,20~59)。


そこで検討すると,検察官による公訴の提起は,無罪の判決が確定したというだけで直ちに違法となるということはなく,検察官が現に収集した証拠資料及び通常要求される捜査を遂行すれば収集し得た証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により被告人を有罪と認めることができる嫌疑があれば,違法性を欠くものと解するのが相当である(最高裁昭和49年(オ)第
419号同53年10月20日第二小法廷判決・民集32巻7号1367頁,最高裁昭和59年(オ)第103号平成元年6月29日第一小法廷判決・民集43巻6号664頁,最高裁平成24年(受)第133号同26年3月6日第一小法廷判決・判例時報2259号54頁参照)。そして,この理は,当該犯罪の嫌疑の端緒が被害者の被害申告である場合においても異なるところはない。なぜなら,当該犯罪の嫌疑の端緒が被害者の被害申告であるか否か,その被害申告が虚偽の内容であるか否かによって,検察官の負う職務上の注
意義務は異ならないからである(被害申告の内容が虚偽であるか否かは,最終的には,
その後の刑事裁判において事後的に明らかになることでもある。。)


そこで,本件においては,上記判断基準を前提に,本件起訴時及び公訴追行時に,検察官が現に収集した証拠資料及び通常要求される捜査を遂行すれば収集し得た証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により有罪と認めら
れる嫌疑があるか否かを検討することとする。
4
争点⑴(本件行為①〔警察官の捜査報告書の記載,検察官の事実不確認〕に係る警察官・検察官の行為の違法性の有無)について


原告は,前記争点⑴の原告の主張欄のとおり,①E警察官が虚偽の捜査報告書を作成し,G検察官がその確認を怠ったこと,②H検察官が平成24年
11月7日頃に再捜査をしなかったことが,
それぞれ違法である旨主張する。


上記①(E警察官が虚偽の捜査報告書を作成し,G検察官がその確認を怠ったこと)について
E警察官が虚偽の捜査報告書を作成した事実が認められないことは,上記2⑴のとおりである。そして,E警察官が虚偽の捜査報告書を作成した事実
が認められない以上,G検察官に関する主張はその前提を欠き,G検察官の行為に違法性は認められない。


上記②(H検察官が平成24年11月7日頃に再捜査をしなかったこと)について

平成24年11月7日付けのD弁護人作成の意見書,報告書兼申入書にはA薬剤師及びJ薬剤師が本件刑事事件の目撃者に当たる旨の記載があったものの,C又は原告の暴行行為自体を目撃した旨の記載は認められなかったこと(同月の補充捜査によっても同様の結果であったこと)(上記認定事実⑸イ,ウ),同月にH検察官が行ったC及びBの証人テストにおいても捜査段階と同様の供述がされ,C及びBの供述態度にも特段の問題は認められなかったこと(上記認定事実⑸エ)等に照らせば,同月頃の段階で,D弁護人の指摘を考慮しても,原告が有罪か否かを判断するに当たり重要な部分である暴行行為自体をA薬剤師及びJ薬剤師が目撃したとはいえなかった以上,少なくとも暴行行為に関して一致した供述をしていたC,B,Iの供述(上記認定事実⑴エ~カ,⑵イ,ウ,オ,カ)の信用性が,A薬剤師及びJ薬剤師の
供述により揺らぐことはない(すなわち,原告の供述は,A薬剤師及びJ薬剤師の供述を踏まえても,信用性が認められない)などとしたH検察官の判断が,合理性を欠くものということはできない。なお,J薬剤師の供述のうち,

Cさんは電話をしていて,原告は薬局側の向こうの道へ,そのまま歩いていきました。

という部分(上記認定事実⑸イ)については,Cが110
番通報をした事実
(上記認定事実⑴イ)
と合致しており
(上記認定事実⑸ウ)

むしろCの供述と整合的であるとみる余地もある。
そして,H検察官は,D弁護人の上記意見書等を踏まえて,G検察官を介して,A薬剤師らからの事情聴取の状況に関し捜査報告書を作成したE警察官に対し,同報告書の作成経緯についての確認を行ったこと(上記認定事実
⑸ウ),これに対しE警察官が聴取内容をありのままに記載した旨述べたこと(上記認定事実⑸ウ)に照らすと,H検察官が,D弁護人の上記意見書等の指摘を殊更に無視・軽視したといった事情は認められず,必要な補充捜査を怠ったともいえない。
以上のことからすると,H検察官は,平成24年11月頃,必要な補充捜
査を行ったというべきである。


したがって,E警察官,G検察官の行為(上記①),H検察官の行為(上記②)は,いずれも国家賠償法1条1項の適用上違法性を欠くものというべきであり,争点⑴についての原告の主張は理由がない。5
争点⑵(本件行為②〔検察官の起訴〕に係る検察官の行為の違法性の有無)について



原告は,前記争点⑵の原告の主張欄のとおり,G検察官による本件起訴が違法である旨主張する。



本件起訴時に原告を有罪と認める嫌疑があったか否かについて判断するに当たっては,本件刑事事件における証拠構造に照らし,Cの供述の信用性及び原告の供述の信用性を検討する必要があるため,以下では,これらの点に
ついて検討する。

Cの供述の信用性
(ア)Cの供述経過等
Cは,110番通報をした後から本件起訴に至るまで,一貫して原告に暴行を加えられた旨供述していた(上記認定事実⑴イ,エ,⑵オ)と
ともに,110番通報の後に病院を受診し,被害届を提出するなど(上記認定事実⑴ウ,エ),暴行事件の被害者であれば通常とるであろうと考えられる行動に及んでいたことが認められる。
(イ)Cの供述とB,Iの供述の整合性
BとIは,Cの110番通報後から本件起訴に至るまで,一貫して原
告がCの顔付近を手で殴打する暴行を加えた旨供述しており(上記認定事実⑴オ,カ,⑵ウ,カ),この限度においては,Cの供述内容と一致していたことが認められる。
ところで,C,I,Bは,本件刑事事件の前から知人関係にあった(前記前提事実⑴オ)ところ,CとIの従前の関係(上記認定事実⑵エ)か
らすると,Iの供述の信用性については,慎重に検討する必要があることは否定し難い。もっとも,CとB,IとBの関係(上記認定事実⑵ウ~オ)を踏まえると,Bが虚偽の供述をする動機が見当たらない以上,G検察官がBの供述を信用性の高いものと評価したとしても不合理ではない。
以上を踏まえると,C,I,Bが,本件刑事事件の内容に照らし供述の核心部分となる原告がCの顔付近を手で殴打する暴行を加えた点に関し,当初から一致した供述をしていたことは,三者の供述の信用性を高め合う関係にあったといえる。
(ウ)C,B,Iの各供述の変遷等
C,B,Iの供述は,本件起訴前の段階において,本件被害前後の状
況や被害態様について食い違いや変遷が認められる(上記認定事実⑴エ~カ,⑵イ,ウ,オ,カ)ものの,本件刑事事件が突発的に生じた暴行事件であったことを踏まえると,被害態様の細部を認識しておらず,又は細部の記憶が曖昧となり,その結果として供述に食い違いや変遷が生じることもあり得ることからすると,Cらの供述に食い違いや変遷が認め
られたことから直ちに,Cらの供述の信用性が認められないとG検察官が評価しなかったことが,合理性を欠くものということはできない。(エ)他の証拠との整合性
本件起訴(なお,本件起訴前の被疑事実は傷害であったが,公訴事実は暴行に変更された。)時において,Cの供述の裏付けとなり得る証拠
として診断書が存在していたところ,この診断書には,Cの供述する被害態様から直ちに生じるとは認め難い頭部打撲という記載が認められる。もっとも,この診断書を作成した担当医師の供述に不合理な点は特段認められないこと(上記認定事実⑴ウ)からすると,この診断書の記載から直ちに,Cの供述が不自然,不合理であり信用性が認められな
いなどとしたG検察官の判断は,相応の合理性を有するというべきである。
また,Cが供述する被害態様からすると,顔付近や右足首が赤く腫れるなど,Cが負傷したことが分かるような外部的所見が認められなかったとしても,不自然ではない(上記認定事実⑴ウ)以上,Cの供述が負傷部位の写真と整合しないものではない(ひいてはCの供述に信用性を否定するものではない)とG検察官が評価したことも,相応の合理性を
有するというべきである。

原告の供述の信用性
原告は,Cに暴行を加える動機があったことが認められる(上記認定事実⑴ア,⑶ウ)。また,原告の供述内容からすると,Cに対する被害届を提出しても何ら不思議ではなく,むしろ提出するのが自然と考えられるにも
かかわらず,原告はこれをしなかった(上記認定事実⑶カ)。原告は,本件刑事事件を一貫して否認しており,原告が負傷したと供述する右肘部分の写真撮影報告書が存在した。しかし,この写真は原告が負傷したと供述する日(平成24年8月24日)の4日後(同月28日)に撮影されたものであり(上記認定事実⑴キ,⑶イ),原告の右肘部分の負
傷が本件刑事事件とは別の機会に生じた可能性も否定できず,その他原告の供述に沿う第三者の供述等も認められなかった。
以上のことを総合考慮すると,本件起訴時において,原告の供述に信用性が認められないなどとしたG検察官の判断が,合理性を欠くものということはできない。


G検察官の捜査活動等
G検察官は,本件起訴に先立ち,Cらの供述の信用性を検討する資料とするため,E警察官らに対し,本件刑事事件の犯行現場付近における聴き取りを指示して目撃者の有無を捜査させ(上記認定事実⑵ア,エ),L病
院の職員に聞き込みを指示する(上記認定事実⑵エ)とともに,自らCらを取り調べた(上記認定事実⑵ウ,オ,カ)こと等からすると,G検察官は,Cらの供述の信用性を判断するに当たって通常要求される捜査を遂行したといえる。

小括
以上のとおり,G検察官は本件起訴時において,通常要求される捜査を遂行したといえる。その上で,本件起訴時の資料に照らせば,Cの供述に
は信用性が認められる一方,原告の供述内容の不自然性,不合理性をもってその供述に信用性が認められないなどとしたG検察官の判断が,合理性を欠くものということはできない(なお,原告は,本件刑事事件で無罪判決を受けており,また,逮捕・勾留に伴い不利益を被ったことが認められるが,これらの事実は,上記認定・判断を左右するものではない。)。


したがって,本件起訴時において,G検察官が現に収集した証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により原告に有罪と認められる嫌疑があったというべきであり,本件起訴は,国家賠償法1条1項の適用上違法性を欠くものというべきであり,争点⑵についての原告の主張は理由がない。
6
争点⑶(本件行為③〔警察官の目撃者[B]に対するどう喝〕に係る警察官の行為の違法性の有無)について


原告は,前記争点⑶の原告の主張欄のとおり,F警察官がBをどう喝した旨主張する。



しかし,F警察官を含む大阪府a警察署の警察官が,Bを恐喝未遂被疑事件の被疑者として取り調べた際,Bに対し原告主張の発言をしたなどの事実
が認められないことは,上記2⑵で説示したとおりである。⑶

したがって,F警察官が,Bに対してどう喝したなどという事実は認められず,争点⑶についての原告の主張は理由がない。
7
争点⑷(本件行為④〔検察官の目撃者[B]に対する口止め〕に係る検察官の行為の違法性の有無)について


原告は,前記争点⑷の原告の主張欄のとおり,H検察官がBに対して口止め行為をした旨主張する。


しかし,H検察官(及びG検察官)が,Bに対して口止め行為をした事実が認められないことは,上記2⑶で説示したとおりである。


したがって,H検察官(及びG検察官)が,Bに対して口止め行為をした事実は認められず,争点⑷についての原告の主張は理由がない。
8
争点⑸(本件行為⑤〔検察官の裁判所に対する虚偽の釈明〕に係る検察官の行為の違法性の有無)について


原告は,前記争点⑸の原告の主張欄のとおり,H検察官が平成25年2月4日の第3回公判期日において,虚偽の釈明をした旨主張する。



しかし,H検察官が釈明した当時の捜査資料に照らせば,H検察官が本件刑事事件の裁判所に対して釈明した内容と同内容の捜査報告書が存在することが認められ(上記認定事実⑹ウ,エ,⑺イ),この捜査報告書を作成したF警察官も,当時の事実をありのままに報告したことが認められる(上記認定事実⑹エ,上記2⑷)。これらのことからすると,H検察官の釈明が虚偽であるとはいえない。



したがって,H検察官が虚偽の釈明をしたとはいえず,H検察官の釈明行為は,国家賠償法1条1項の適用上違法性を欠くものというべきであり,争点⑸についての原告の主張は理由がない。

9
争点⑹(本件行為⑥〔検察官が無罪論告等をしなかったこと〕に係る検察官の行為の違法性の有無)について


原告は,前記争点⑹の原告の主張欄のとおり,H検察官が平成25年1月の時点で,本件刑事事件について無罪論告又は公判停止・公訴取消しを求める措置を講ずべき職務上の法的義務ないし原告の身体拘束を解除すべき職務上の法的義務を負っていたにもかかわらず,これを怠った旨主張する。


しかし,G検察官による本件起訴が国家賠償法1条1項の適用上違法性を欠くことは,上記5で説示したとおりである。そこで,以下では,平成24年9月18日(本件起訴時)~平成25年1月頃のH検察官の公訴追行について検討する。

平成24年11月7日付けD弁護人作成の意見書等後の対応について平成24年11月7日付けD弁護人作成の意見書等を踏まえた補充捜査等の結果,C,B,Iの供述の信用性が,平成24年11月7日頃の時点
において,A薬剤師及びJ薬剤師の供述により揺らぐことはないなどとしたH検察官の判断が合理性を欠くものということができないことは,上記4で説示したとおりである。

BのH検察官に対する申告後の対応について
(ア)Bの平成25年1月23日より前の供述
平成25年1月23日より前のBの供述
(原告がCを殴った旨の供述)
の信用性について,①Bが当初から一貫して原告がCの顔付近を手で殴打する暴行を加えたという趣旨の供述をしていたこと(上記認定事実⑴オ,⑵ウ,⑸エ),②Bと原告らとの関係(上記認定事実⑵ウ~オ,
⑸カ)に照らせば,Bがあえて虚偽の事実を述べる動機が見当たらないこと,③C及びIの供述内容と比較すると,本件刑事事件の内容に照らし供述の核心部分となる原告がCの顔付近を手で殴打する暴行を加えたという限度においては,三者の供述内容が一致していた上(上記認定事実⑴オ,カ,⑵ウ,カ,⑸エ),Cが本件刑事事件の公判廷(平成2
4年12月4日)においてこれと同旨の証言をしたこと(上記認定事実⑸カ),④Bの供述態度が,ごく自然なものであったとうかがわれること(上記認定事実⑵ウ,⑸エ)に照らせば,平成25年1月23日より前において,Bの供述に信用性が認められ,ひいてはCの供述・証言にも信用性が認められるなどとしたH検察官の判断が,合理性を欠くもの
ということはできない。
(イ)Bの平成25年1月23日頃の供述
Bは,平成25年1月23日,H検察官に対し,捜査段階(及び証人テスト時)における原告がCを殴った旨の供述が虚偽であった旨申告したところ(上記認定事実⑹ア),このようなBの申告は,①本件刑事事件から約5箇月後に突如されたものであった上,同日のBは落ち着かない様子であったとうかがわれること(上記認定事実⑹ア),②同月24日以降のBの言動に関し,Bは恐喝未遂事件を起こした動機を

金が欲しかったわけではなく,思いつく中で一番大それたことをしたかった。

などと供述したが(上記認定事実⑹ウ),この動機がその罪質に照らしおよそ合理的な供述内容とはいえないこと,③Bの新たな供述を前
提にしても,
原告の供述内容と整合しないこと
(上記認定事実⑶,
⑹ア)

④Bは,同日当時,抑鬱状態・中毒性精神病と診断されるような状態にあったと推認されること(上記認定事実⑻ア),⑤G検察官による,同月下旬頃のIの取調べにおいて,Iは捜査段階と同様の供述をしたこと(上記認定事実⑺ア),⑥G検察官による,同年2月のA薬剤師及びJ
薬剤師の取調べにおいて,A薬剤師及びJ薬剤師はC又は原告の暴行行為自体は目撃していない旨供述したこと(上記認定事実⑺ウ)等に照らせば,同年1月頃の段階で,Bの変遷後の供述の信用性に疑義があると評価した上で,当初から本件刑事事件の核心部分となる供述部分に関し一貫した供述内容を維持していたIの供述の存在(上記認定事実⑴カ,
⑵カ,⑺ア)を考慮し,従前のBの供述の方に信用性が認められ,ひいてはCの供述ないし証言に信用性が認められるなどとしたH検察官の判断が,合理性を欠くとまでいうことは困難である(なお,L病院の担当医師作成に係る,同年2月27日,H検察官宛ての同日付け病状照会について(回答)と題する書面には,同年1月の捜査機関に対する申
告前からBが同旨の話をしていたことはうかがわれるものの〔上記認定事実⑻ア〕,上記の各事情に照らせば,上記の認定判断を左右するものではない。)。
また,H検察官は,平成25年1月23日以降,Bの申告等を踏まえて,
Bの関係の捜査
(恐喝未遂事件の関係,
その後の入院の関係を含む。

を指示し,G検察官にIやA薬剤師及びJ薬剤師の取調べをさせるなどしており(上記認定事実⑹~⑻),H検察官が,Bの申告等を殊更に無視・軽視したといった事情は認められず,必要な補充捜査を怠ったなどとはいえない。
(ウ)小括
以上の検討を踏まえると,平成25年1月頃の段階で,Bの同月23
日の供述等を踏まえた補充捜査等の結果,同月頃当時の各種の証拠資料に照らし,なお原告に有罪と認められる嫌疑があるとしたH検察官の判断が,合理性を欠くとまでいうことは困難である。
ところで,本件刑事事件の罪質,犯行態様に照らすと,原告の身体拘束が長きにわたったことは否定し難い(このことは,G検察官の求刑が
罰金20万円であったことからも認められるところである〔上記認定事実⑿イ〕。)。しかし,本件刑事事件が,複数の関係者の供述の信用性を慎重に検討する必要のある事案であったこと,H検察官が適時支部長検事の指示を受けるなどして慎重に公訴追行をしていたこと(上記認定事実⑿イ)に照らせば,平成25年1月頃当時の各種の証拠資料を総合勘
案した上で有罪と認められる嫌疑が原告になお認められるとしたH検察官の判断が,合理性を欠くとまでいうことは困難である。この判断を踏まえると,平成25年1月頃時点において原告の身体拘束がなお必要であるとしたH検察官の判断についても,合理性を欠くとまでいうことは困難である(なお,原告は,本件刑事事件で無罪判決を受けており,ま
た,逮捕・勾留に伴い不利益を被ったことが認められるが,これらの事実は,上記認定・判断を左右するものではない。)。


したがって,平成25年1月頃当時,H検察官が現に収集した証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により原告を有罪と認めることができる嫌疑があったというべきであり,H検察官が同月当時,本件刑事事件について無罪論告又は公判停止・公訴取消しを求める措置を講ずべき職務上の法的義務ないし原告の身体拘束を解除すべき職務上の法的義務を負っていたとまでは
いえないから,H検察官の各行為は,国家賠償法1条1項の適用上違法性を欠くものというべきであり,争点⑹についての原告の主張は理由がない。10

争点⑺(本件行為⑦〔検察官の公訴追行〕に係る検察官の行為の違法性の
有無)について


原告は,前記争点⑺の原告の主張欄のとおり,H検察官及びG検察官が原告に対する公訴追行を差し控えるべき職務上の法的義務を負っていたにもかかわらず,同義務に違反した旨主張する。



しかし,平成25年1月頃時点におけるH検察官の公訴追行が国家賠償法1条1項の適用上違法性を欠くことは,上記9で説示したとおりである。そ
こで,以下では,同月より後のH検察官(同年2月~3月)及びG検察官(同年4月~)の公訴追行について検討する。

Bの一連の供述等を踏まえたC及び原告の供述の信用性
Bは,平成25年5月にG検察官による証人テストを受け,同月20日の第6回公判期日において,捜査段階の供述が虚偽である旨供述・証言し
た(上記認定事実⑽ア,イ)ところ,①同年1月時点におけるBの供述の信用性判断の状況(上記9⑵イ(ウ)),②Bの変遷後の供述等の内容に照らしても,
原告の供述内容と整合的でないこと
(上記認定事実⑶,
⑽ア,
イ)

③Bが供述等を変遷させた理由に関し,BとCとの間に何らかのトラブルがあった可能性等も否定できなかったこと(上記認定事実⑺イ)に照らせ
ば,Bの変遷後の供述の信用性に疑義があり,仮に,変遷後の供述に信用性が認められるとしても,原告の供述の裏付けにはならないなどとしたH検察官及びG検察官の判断が,
合理性を欠くとまでいうことは困難である。
他方,Cの供述・証言の信用性に関し,Cの供述内容が当初から一貫していたこと,Cの供述態度が自然であったこと,供述内容が自然かつ合理的であったこと(上記5),当初から本件刑事事件の核心部分となる供述部分に関し一貫した供述内容を維持していたIの供述等が存在したこと
(上記認定事実⑴カ,⑵カ,⑺ア,⑼)等に照らせば,Cの供述・証言に信用性が認められるなどとしたH検察官及びG検察官の判断が,合理性を欠くとまでいうことは困難である。

A薬剤師及びJ薬剤師の証言等を踏まえたC及び原告の供述の信用性A薬剤師及びJ薬剤師は,本件刑事事件の前後のC及び原告の行動を目
撃した旨の証言等をしたことは認められるものの,C又は原告の暴行行為自体を直接目撃した旨の証言等をしていない(上記認定事実⑾)。したがって,A薬剤師らの証言等が,原告の供述の裏付けになるとまではいえないと評価する余地はある(上記認定事実⑶,⑾)。その他,J薬剤師の供述のうち,

Cが電話をしており,その間に原告をつかんでいた。

という部
分(上記認定事実⑾イ,エ)については,Cが110番通報をした事実(上記認定事実⑴イ)と合致しており,Cの供述と整合的であるとみる余地もあることを併せ考慮すると,A薬剤師らの証言等をもってしても,C及びIの供述になお信用性が認められ,原告の供述は信用性が認められないなどとしたH検察官及びG検察官の判断が,合理性を欠くとまでいうことは
困難である。

小括
以上の検討を踏まえると,平成25年1月以降の公訴追行時の各種の証拠資料に照らし,Cの証言に信用性が認められる一方,原告の供述に信用
性が認められないとした上で,なお原告に有罪と認められる嫌疑があるとしたH検察官及びG検察官の判断が,合理性を欠くとまでいうことは困難である。
ところで,本件刑事事件の罪質,犯行態様に照らすと,原告の身体拘束が長きにわたったといえることは,上記のとおりである。しかし,本件刑事事件の証拠関係及び本件刑事事件の証拠構造,H検察官及びG検察官が適時支部長検事の指示を仰ぐなどし,慎重に公訴追行をしていたことがう
かがわれること(上記認定事実⑿イ)に照らせば,H検察官及びG検察官の公訴追行時における各種の証拠資料を総合勘案した上で有罪と認められる嫌疑が原告になお認められるとしたH検察官及びG検察官の判断が,合理性を欠くとまでいうことは困難である(なお,原告は,本件刑事事件で無罪判決を受けており,また,逮捕・勾留に伴い不利益を被ったことが認
められるが,
これらの事実は,
上記認定・判断を左右するものではない。。



したがって,H検察官及びG検察官が原告に対する公訴追行を差し控えるべき職務上の法的義務を負っていたとはいえず,H検察官及びG検察官の公訴追行は,
国家賠償法1条1項の適用上違法性を欠くものというべきであり,争点⑺についての原告の主張は理由がない。

11

憲法違反の主張について
原告は,本件の担当検察官ら及び担当警察官らの各行為(本件行為①~⑦)
が,いずれも原告の不当な長期身体拘束を招いており原告の幸福追求権を侵害するものとして憲法13条前段及び後段に違反するとともに,捜査及び公訴追行が適正に行われておらず原告の適正手続を受ける権利を侵害するものとして憲法31条に違反する旨主張する。しかし,これまでに説示したところに照らせば,本件行為①~⑦が憲法13条,31条に違反するものであるとはいえないことは明らかである。
12

まとめ
以上によれば,被告らは,原告に対し,国家賠償法1条1項に基づく損害賠
償責任を負わないというべきである。
第4

結論
したがって,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも
理由がないからこれを棄却し,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第19民事部
裁判長裁判官

山地修
裁判官

藪田貴史
裁判官

野上恵

(別紙2の1)平成24年9月7日付けL病院周辺における聞き込み結果についてと題する捜査報告書の概要(乙13)1
聞き込みの実施日時
平成24年9月7日午後1時08分~午後3時08分

2
実施先



近隣住人(O氏)



某建設会社の事務員(P氏)


K薬局

L病院

3
A薬剤師,J薬剤師

庶務課のQ氏・R氏,運転手のS氏

実施経過
Cは,

あご辺りにガンと何か固い物で殴られたような衝撃があった。知人らから当時の状況を聞いたところ,後ろから来た原告が右こぶしで殴りかかっていた。

旨供述しているが,原告は,

全然自分には関係のない身に覚えのないことで,絶対にCの顔面を殴っていない。Cの顔面以外の身体についても,一切触れていない。Cとは口げんかをしただけである。

旨供述し,一貫して否認して
いる。そこで,事件当時にL病院周辺にある薬局の薬剤師,近隣住人,建設会社の事務員,L病院の送迎バスの運転手等に聞き込みを実施した。
4
実施結果
次のとおり,事件当時の状況を目撃した者を発見することはできなかった。


K薬局からの聴取結果

A薬剤師
Cは,うちの薬局に薬をもらいに来ていたので,よく知っている人である。自転車を盗んだ犯人とCとの間で何かあったことは,薬局の事務職員らから聞いて知っていたが,それ以上は知らない。Cが薬局の前で他の患者らと何か話をしていた。


J薬剤師
店舗内の窓から,Cが小さい男の人(原告)を捕まえて携帯電話でどこかに電話をしながらこちらの方に歩いて来るのを見た。その直前の状況については分からない。小さい男の人(原告)は,Cから離れて歩いて行った。⑵

近隣住人(O氏)からの聴取結果
事件は目撃しておらず,何があったかについては知らない。



某建設会社事務員(P氏)からの聴取結果
事件は目撃しておらず,何があったかについては知らない。



L病院関係者からの聴取結果

庶務課職員
事件があった時間帯は,まだ職員が病院内で仕事をしている時間帯で,聞
いた範囲では事件を目撃した職員はいない。

送迎バス運転手
事件があった時間帯が午後4時~午後4時40分頃であると聞いたが,職員を送迎するためにバスを出すのは,午後3時15分頃であるので,事件が
あったとする時間帯にはここにはいなかった。
(別紙2の2)平成24年9月12日付け傷害事件発生現場周辺における聞き込み結果についてと題する捜査報告書の概要(乙14の1・2)1
聴取日
平成24年9月12日

2
聴取先


L病院施設内社会復帰施設援護寮T



デイケア施設

3
主任

施設管理者

UV
聴取に至る経過
本件は,原告(被疑者)とC(被害者)が,共に現場直近にあるL病院に過去に入院歴を有する者と,現在もL病院に通院をしている者同士の傷害事件である。
原告は,平成11年12月~平成17年5月に統合失調症で入院し,症状が固定したことから退院した。原告は,直近までL病院の通院患者や家族用の送迎バスを足代わりに利用したり,L病院施設内に入り込んで入院患者らからたばこをもらったり金銭を借りたりして,職員間では要注意人物として申合せがされている。

Cは,10年くらい前からL病院を受診するようになり,平成24年9月9日,今まで入寮していたL病院内にある社会復帰施設援護寮Tを出て生活を始めた。Cは,L病院の寮で生活をしていたことから,寮に居住する他の患者との関係も親密であると思慮される。
以上のことから,原告とCの双方の目撃者らとの人間関係について,聴取する
必要性が認められるので,病院施設内の職員に対して聞き込みを実施した。4
聴取結果


社会復帰施設援護寮TUからの聴取結果
(原告について)

・原告は,用事もないのに,病院の施設内をうろうろとはいかいしています。・以前,精神病で通院している患者のカバンがなくなったときにその場所には原告しかいなかったので問い詰めたところ,

俺は知らん。

と言って,それ
から2,3週間ほど姿を見せなかったことがありました。
・他の患者からたばこをもらいに来たり,回線のつながっていない携帯電話をうちの寮の人に買わせたりして,いろいろとトラブルを起こす人で,出入禁止にしたいのですが,なにぶんL病院は表や裏が開けっ放しなので,自由に
入り込んでくることができるので,困っています。
(Cについて)
・何かと他人のトラブルの間に入って,謝礼金や物を受け取っているようです。・平成24年9月9日に寮を出ていきましたが,これから示談屋でもするんじゃないですか。

・病院や寮内では,物分かりはよく,頼んだ仕事は責任をもってやってくれますが,一旦気に入らないことがあると,ごねることがありました。・他の人は,Cには反抗することはできないと思います。
(Iについて)
・Iは,外来で通院している患者です。

・Iは,Cとよく連絡を取り合って,病院内やK薬局前で会ってはよく話をしています。
・Iは,Cに,自身のトラブルの相談に乗ってもらっているようです。・Iは,Cの舎弟といった印象です。
(Bについて)

・Bについては,寮に住んでいないので,余り印象はないです。
・デイケアのVがよく知っているので,Vに聞いてください。


デイケア施設主任Vからの聴取結果
(原告について)

・余り関わらないので詳しいことは知りませんが,平成24年8月頃にうちに入院したときの入院費が未納であると聞いています。
・トラブルを起こす人物であると聞いています。
(Cについて)
・外来のIをデイケアに入れてやってほしいと相談されたことがありました。しかし,デイケアには主治医の指示がなければ入ることができないので断りました。
・他の患者のことで直接私たち職員に苦情を言ってくることがありました。病院内ではよく苦情を言ってくる人でした。
(Iについて)
・Iは,Cとよく連絡をとっていました。

・本当にIとCはよく一緒にいました。ですから,Iが,Cが有利になるようなことを言うことは十分考えられます。
(Bについて)
・Bは,Cとは全く別のグループに属しています。
・デイケアの中では,3つのグループに分かれており,1つのグループのリー
ダーがCで,Bはそれとは別のグループに属していますので,それほど親しい関係ではありません。
・何か機会がないことには一緒に行動を共にすることはないです。・Iと比較して,Cの都合のよい話をする可能性は低いと思います。(別紙3)意見書,報告書兼申入書の概要(甲1の1,2,乙29の1・2)1
意見書(甲2,乙29の1・2)


はじめに
弁護人は,平成24年10月下旬から,任意開示を受けた証拠を基に,独自に現場周辺の聞き込み調査を行ったところ,以下の事実が浮上した。
よって,御庁において,直ちに事案の調査に当たり,真相解明に尽力いただきたい。


C及びBについて

W氏らの供述
W氏(K薬局前喫煙所で喫煙をしていた者)は,平成24年10月29日,
弁護人に対し,

B?おるおる,デイケアに。あの人,何回も,結構事件起こしてるで。話を聞くところによると,商売で詐欺みたいなことをして捕まったって言ってましたよ。Cのことは知らない。

旨供述した。イ
援護寮U寮長らの供述
援護寮U寮長は,平成24年10月29日,弁護人に対し,
Cは,裏の道をずっと歩いてきた人。ヤクザの事務所にもいてたし。薬物依存か何かで治療に来はった。退院しても,うちのところのような援護寮に来て,社会に出るまでに1つステップを踏んでから外に出ていくんです。一つ間違えるとうるさいですよ,あの人は。筋は通っているねんけど,その筋っていうのが・・・。横にいろんな連携網作ってるんと違う?一日中携帯で電話しているからな。地域で幅きかすんと違うかな。面倒あったら,顔突っ込む方やと思う。CさんとBさんは,顔見知りは顔見知り。どこまで仲ええのかは知らないけど。めちゃめちゃ仲がいいというわけではないけど,話すことは話す。そら,あの喫煙所でたばこ吸っていたら,話はするし,同じデイケアやし。旨供
述した。
また,援護寮の女性スタッフは,平成24年10月29日,弁護人に対し,Cは,面倒見がいいし,頼りにされているところがあるし・・・。逆に,怒ったらワーッと言われるから,恐れられている。上下関係みたいなところをすごく気にされるから,裏切った裏切らないみたいな感じのところは,すごく敏感だと思います。誰がチクったんや,とかなって。ケガもそんなにはひどくなかったですよ。歩いていましたし。旨供述した。

小括
Cの利益に反する供述をする人間は,現場周辺にはおおよそ存在しないものと推察される。Bは,Cが大きな力を振るうL病院周辺において,あえてCの利益に反して真実を供述する可能性は低い。



警察の報告書について
平成24年9月7日付けL病院周辺における聞き込み結果についてと題する捜査報告書3頁において,K薬局勤務のA薬剤師及びJ薬剤師の供述が記載されている。その中で,A薬剤師は,

・・・自転車を盗んだ犯人とCさんとの間で何かあったのは薬局の事務職員らから聞いて知っていましたが,それ以上は知りません。

と供述したとされている。しかし,それは,誤りである。


J薬剤師及びA薬剤師の証言について

J薬剤師及びA薬剤師の証言
J薬剤師は,平成24年10月24日,弁護人に対し,

逃げてというたらおかしいけど,2人でこちら(薬局)の方に歩いてきていた。原告は,逃げよう逃げようという感じで。薬局内から見て,左から右に,Cが原告を連れてくるような感じで歩いてきていた。

旨供述した。A薬剤師は,平成24年10月24日,弁護人に対し,

Cと原告が,原告を先頭にして,病院側に向かって行こうとしているところを見た。そのとき,何となくだけど,原告が逃げるような感じで,Cが追いかけるような感じみたいに見えたけどね・・・。

旨供述した。

薬剤師らの証言とCらの証言の矛盾点
薬剤師らの証言とCらの証言は,その立ち位置,Cと原告の接触状況,2人の様子について,全く相反する内容である。

薬剤師らが証言を拒んでいること
薬剤師らは,Cの影響力を危ぐし,公判廷での供述を拒んでいる。


薬剤師勤務薬局の社長からの意見聴取について
K薬局を経営する会社のX社長は,平成24年10月29日,弁護人に対し,薬剤師らの公判廷での供述について協力することはできない旨供述した。


結語
以上の点を踏まえて,C,B,I,薬剤師らについて調査していただきたい。


補足
これらについては,一部,H検察官にも交渉を試みているところであるが,早急に事案解決の必要性があると認められるため,本意見書提出に至った。


添付書類1(A薬剤師の供述調書案〔署名・押印なし〕)

平成24年8月24日にあったとされる事件のことについて,覚えていることをお話しします。


私は,事件があったとされる当時,薬局のカウンター内で仕事をしていました。そこには,病院側の通りを眺められる大きな窓があり,ブラインドがかかっていますが,いつも下から_㎝ほどはブラインドが開いており,そこから通りを眺めることができます。


私は,詳しいことはよく思い出せませんが,事件があったとされる日の時間頃に,小さい男の人とCさんが,病院の方へ向かって歩いていくのを見かけました。並んで歩いているように見えましたが,小さい男の人は,逃げるようにしていたのを覚えています。


ですので,病院に向かって,先に小さい男の人が,後にCさんが歩いているような状況でした。薬局内から見ると,左手に小さい男の人が,右手にCさんが,いたような形です。

私が見たのはその場面だけで,その前や,その後のことについては,見ておらず,何も分かりません。


今,お話したことは,全て警察の方にもお話したことです。小さい男の人が原告であることは,先ほど国選弁護人の方に聞いて,知りました。この事件が刑事事件となっていることを弁護士の方からうかがい,大変驚いていま
す。Cさんはこの薬局のお客さんなので,裁判所でCさんに不利になるような証言などはしたくないと思っています。
2
報告書兼申入書(甲1の1)
平成24年11月7日付け意見書(上記1)に記した薬剤師2名の目撃証言に
ついて報告する。


当職は,平成24年10月24日午後4時頃,K薬局内で,A薬剤師から,事件当時,薬局内から見て,Cさんと原告と思われる人が,原告を先頭にして,Cさんを後にして,2人で病院側に向かって歩いているようなところを,見かけました。そのとき,原告は逃げるような感じで,Cさんが追いかけるような感じでした。そのような感じ,というか,そのような雰囲気に見えました。これらのことは,警察の方に,全てお話ししています。旨の供述を得た。⑵

当職は,平成24年10月24日午後4時頃,K薬局内で,J薬剤師から,原告が,逃げてと言ったらおかしいけど,病院側から薬局の方向に,Cさんと歩いてきていた。原告は逃げよう逃げようという感じで。薬局の中から見て,左から右に,Cさんが原告を連れてくるような感じで,歩いてきていた。Cさんは電話をしていて,原告は薬局側の向こうの道へ,そのまま歩いていきました。このことは,全て警察に話しています。旨の供述を得た。⑶

これらの供述は,原告とCの事件当時の立ち位置,様子について,原告の逮捕時からの一貫した供述を裏付ける内容といえる。
他方,
C,
Bら
(Iを含む。


の供述とは,全く異なる立ち位置,接触状況,様子を示すものであり,Cらの供述の信用性の欠如を裏付ける内容といえる。


A薬剤師,J薬剤師は,これらの供述内容は全て警察に話していると述べるものの,平成24年9月7日付けL病院周辺における聞き込み結果についてと題する捜査報告書(別紙2の1参照)には記載がないほか,重要部分について誤った記載がある(上記1で指摘したとおりである。)。



なぜ,このような誤った記載がされたかについて直ちに調査していただき,当職宛てに報告いただきたい。
また,A薬剤師,J薬剤師の証言を独自に確認の上,C,Bら(Iを含む。)の供述を調査していただき,真相解明に尽力いただきたい。また,その調査結果について,当職宛てに連絡いただきたい。
(別紙4)恐喝未遂事件被疑者Bの釈放に至る経過についてと題する捜査報告書の概要(乙35)
1
恐喝未遂被疑者(翌日釈放済み)
アルバイト勤務(生活保護受給者)

2B
恐喝事件内容
・末尾添付の現行犯逮捕手続書謄本のとおり
・末尾添付の弁解録取書謄本のとおり

3
確認先


生活福祉課

Y係員



a保健所

地域保健課

Z技師



a市役所

L病院

4
AAケースワーカー

逮捕留置中の被疑者を釈放した経緯


逮捕後留置に至るまでの経緯
恐喝未遂事件は,発生後現場急行した警察官が現行犯逮捕したが,被疑者Bについては単身生活者(生活保護受給者)であり,逮捕後留置施設工事中の当
署は,近隣の大阪府泉南警察署に留置委託し入場するつもりであったが,入場前に被疑者本人から,

私は,昔の覚せい剤等の後遺症で精神病になり,L病院に通院している。毎朝,睡眠剤と精神安定剤を飲まないと幻聴や幻覚が見える。

と言うことから,被疑者の処遇と入場前の身体状況確認のために,指定医の診察を受けたところ,所定の投薬を受けて留置場に入場した。


翌日(平成25年1月25日)の取調べ状況
翌日,恐喝未遂事件の取調べをするために捜査員が大阪府泉南警察署に赴き取調べを実施した結果,Bは,事件の事実行為は認めるも,詳細については記憶にないと述べ,取調べ中にも支離滅裂な言動を繰り返して奇声を発したこと
から,関係署であるa市役所福祉課,a保健所地域保健課,L病院等に連絡した。


市役所生活福祉課での聴取
本件恐喝未遂事件の被疑者Bは,平成22年春頃から,覚せい剤・大麻使用による後遺症で中毒性精神病との診療内容で,健常者としての生活ができず,無職・無収入であることから,生活困窮を市役所に相談し,生活保護受給状態である。Bの担当である市職員Y係員は,3~4箇月に1回自宅マンションを
訪問し,面談の上で,健康状態や就労事実(就労意欲)確認をして,生活保護費の継続支給を決定している。この際,病院のケースワーカーと緊密に連絡を取り,病状について聞くことがあり,病状は徐々には改善方向ではあるが,受診・投薬を自分で行かず病状が後退することもある,体調が良いときはL病院の喫茶店で働き,1箇月1万5000円の給料をもらい保護費を減らす時もある
などと回答が得られた。


保健所からの電話聴取内容
個人のプライバシーがあるので詳細は回答できないが,精神病に関しては,自傷・他害のおそれがあるときは関係各所の依頼で,通称24条通報をすべく指定医2名で診察し,強制入院,家族同意入院等が考えられるが,恐喝未
遂被疑者Bについては,自傷・他害のおそれが少なく,家族の入院同意がなく,入院させるほど病状がひどくないことが理由で,
逮捕当日の入院は見送られた。


L病院での聴取内容
B本人は,現在,日によって病状も異なり,L病院の主治医とも口論になることが多く,診察を受けなかったり,受けた投薬を飲まなかったりすることが
あり,病状は克服できず現状維持状態であるが,a警察署からの依頼で指定医判断するも,平成25年1月25日現在では詳細なデータもなく,問診・診察段階では緊急入院は了承できず,本人の同意がないと入院許可が出せず,同月28日以降主治医が入院判断をするとの回答であった。


総合判断での釈放
逮捕翌日の取調べにおいても犯行状況については事実を認めていることから,罪証隠滅・逃亡のおそれ等がなくなれば,留置の必要がなくなり,釈放と精神科への入院について関係各所に連絡すると,病状の判断できる病院での受診には,釈放後,市役所・保健所・警察署の立会いで入院判定を下す必要があると要求されたことから,入院判定のために,平成25年1月24日午後6時36分に現状犯逮捕したBを,同月25日午前10時43分に釈放した。入院に関しては,指定されて精神科での問診を受けるものであるが,入院判定の診察時には,被疑者は,普通に会話し,自傷・他害のおそれがないことから入院の必要なしとの結果判断であった。
以上のことから,逮捕後精神科医による入院判定を試みたが,判定時に自傷
・他害のおそれがなく,市役所生活福祉課の職員による身柄引受けで釈放したものであるが,本書作成時(平成25年1月28日正午)には,恐喝未遂被疑者Bは,自らL病院の主治医の診察を受けて,当分の間(数箇月間)の入院承諾が得られたので,本日入院に至った。
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