判例検索β > 平成30年(わ)第684号
殺人未遂被告事件
事件番号平成30(わ)684
事件名殺人未遂被告事件
裁判年月日平成31年3月19日
法廷名札幌地方裁判所
裁判日:西暦2019-03-19
情報公開日2019-04-25 16:00:20
戻る / PDF版
主文
被告人を懲役3年に処する
この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,アスペルガー症候群を抱えながら,実母であるA(以下被害者という。)及び実父であるBと同居して生活していたが,被害者から生活態度等について叱責を受け続け,ストレスを感じていた。被告人は,平成30年6月23日,被害者から部屋の片づけができていないことについて叱責を受け,さらに被害者と前記Bが被告人に関して口論を始めたことなどから,被害者に対する怒りを増大させて被害者を殺そうと決意し,同日午後4時頃,札幌市a区・・・・・当時の被告人方において,被害者(当時61歳)に対し,殺意をもって,左背部を包丁(刃体の長さ約12.9センチメートル。平成30年領第878号符号1)で1回突き刺したが,被害者に,全治約4週間を要する背部刺創,左肺裂傷等の傷害を負わせたにとどまり,殺害の目的を遂げなかったものである。
(法令の適用)
罰刑条種の選
刑法203条,199条


有期懲役刑を選択

法律上の減軽

刑法43条本文,68条3号

刑の執行猶予

刑法25条1項

訴訟費用の不負担

刑事訴訟法181条1項ただし書

(量刑の理由)
被告人は,かなり強い力で被害者の背中を包丁で突き刺し,包丁の刃が刃体の長さよりも深く突き刺さり,左肩甲骨を骨折させて肺を傷つけるなど,被害者に重傷を負わせた。幸い被害者の怪我は現在ほぼ回復しているが,刺した部位や深さからすると,被害者が即死する可能性もあった。このように被告人の行為は,被害者の生命を奪う危険が高かったといえ,相当強い殺意に基づく悪質な犯行である。一方,被告人が被害者に対するストレスを蓄積させ,本件当日に被害者を殺すしかないと考えたことには被告人の抱える精神障害の影響があったと認められる。また,被害者が被告人の障害に適切な配慮をせずに叱責を続けたことが本件犯行の引き金になったといえる。これらの点は,被告人の刑を定めるに当たって相当程度考慮する必要がある。
以上によれば,被告人の責任は同種事案の中で重いものとまではいえず,これまでの量刑傾向を踏まえると,社会内で更生を図ることも考えられる。そこで,さらに検討すると,被告人は事実関係を認めて本件を深く反省している。また,被告人の実父が,被告人の障害を理解しようと努め,被告人と被害者が直接関わらないように適切に監督する旨約束している。さらに,被告人に前科前歴はなく,本件に至るまで,被害者との関係を除いては概ね適切に社会生活を送っていたことなどを考慮すると,被告人については,社会内で更生することが十分に期待できるものと判断した。
そこで,被告人に対し,主文の刑を科した上,その執行を猶予することとした。(求刑

懲役4年)

平成31年3月19日
札幌地方裁判所刑事第2部

裁判長裁判官

中桐圭
裁判官

結城
真一郎

裁判官

川口寧一
トップに戻る

saiban.in