判例検索β > 平成30年(わ)第481号
住居侵入、強盗致傷被告事件
事件番号平成30(わ)481
事件名住居侵入,強盗致傷被告事件
裁判年月日平成31年2月22日
法廷名札幌地方裁判所
裁判日:西暦2019-02-22
情報公開日2019-04-25 16:01:08
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主文
被告人を懲役7年6月に処する
未決勾留日数中110日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,A,B,C,D,E,F及びGと共謀の上,北海道a郡b町・・・甲方に侵入して金品を強奪しようと企て,平成29年11月27日午前2時8分頃,同人方玄関ドアから侵入し,その頃,同人方において,同人(当時74歳)に対し,左足等を持っていたバールで数回殴るなどの暴行を加え,同人の反抗を抑圧して金品を強奪しようとしたが,同人に抵抗されるなどしたためその目的を遂げず,その際,前記暴行により,同人に加療約2週間を要する左大腿挫創等の傷害を負わせたものである。
(争点に対する判断)
弁護人は,被告人を除く共犯者らが本件犯行を行ったことは争わないものの,被告人は,共犯者らとの間で本件犯行を行うことについて意思を通じていないから無罪であると主張する。
そこで,この点についての当裁判所の判断を示す。
1
C及びDの供述について
供述概要
C及びDは,当公判廷で,概ね以下のとおり供述している。

Aは,暴力団H組(以下H組という。)の組長であり,Cは同組若頭,D及びEは同組の密接関係者であった。被告人は,H組とは別の暴力団の組員であったが,A及びCとはかねてからの知り合いであった。Aらは,被告人とともに,平成29年10月上旬頃から,高齢者に対する特殊詐欺や民家への侵入盗を繰り返していた。


同年11月10日夜,A,C,D及び被告人は,cにある居酒屋で,被告人の父から,盗みに入れる場所の情報として,b町にあるI水産(以下被害者方という。)に現金2億円の入った金庫があること,巾着袋の中にも数百万円があること,力の強い漁師がいることなどを聞いた。被告人の父が途中で帰った後,A,C,D及び被告人で話合いを続けた結果,被害者方から金庫を奪うことが決まった。そして,Aの指示の下,DがH組以外から実行役3名を手配すること,犯行に使用するため他人名義の車を用意することになった(以下,被害者方に侵入して金品を奪う事件をb事件という。)。

その後,Dが,実行役としてBと高校生2名を手配し,車も用意できたことから,b事件の腕試しとして,被告人の発案で,同月16日,実行役3名に民家に金庫を盗みに入らせることになった。そして,民家への盗みが成功したことから,同月17日未明頃,A,C,D,E及び被告人がA方に集まって話し合い,実行役3名を使って同日夜にb事件を実行することになった。各人の役割分担としては,Cと被告人がペアになって苫小牧市付近で待機し,DとEのペアを介して,実行役へ指示すること,DとEのペアが苫小牧市とb町との中間地点で実行役から金庫を回収し,Cと被告人に金庫を渡すことなどが決まった。また,力の強い漁師に見つかった場合の対応についても話し合い,被告人がバールでたたいて縛っておけ,その間に金庫を持って来ればいいなどと言い,Aはたたくのはまずい,最悪縛るまでなどと言っていたが,結局,漁師を縛ることなどが決まった。


同月17日夜,A,C,D,E及び被告人が再びA方に集まり,b事件の最終確認をした後,Dが実行役に金庫のある場所等を説明し,漁師に見つかった場合は最悪たたくなどと指示した。実行役は車で被害者方に向かい,Cと被告人,DとEは,それぞれ苫小牧市内にあるホテルに向かい,ホテルで待機していたが,実行役から途中で事故を起こしたという報告があった。その報告を受け,被告人はDと連絡を取り合い,実行役を迎えに行ってあげて,できそうだったらやってきてなどと言い,b事件を続行するよう指示したが,被害者方に人の出入りがあったこともあり,実行は見送られた。ただ,Dは,被告人から車を用意したらすぐやろうなどと言われた。オ
数日後,高校生2名が逮捕されたことから,新たな車の用意のほか実行役2名を手配する必要が生じた。また,Bが再び実行役をやることを渋ったため,被告人がBの知人と交渉し,その結果,Bは実行役を続けることになった。被告人からは,b事件に関し,同月24日か25日の未明に漁師が不在になる時間があるという新たな情報が提供されたが,その日までに車や実行役の準備が間に合わず,同月26日頃までに,実行役として,DがGを手配し,CがFを手配し,犯行にはGの車を使うことになった。犯行の準備が整ったことから,同月26日夕方,A,C,D,E及び被告人がA方に集まり,b事件の実行に向けた話合いが行われた。この話合いでは,当初,Aが,25日のように不在になるという情報はないのかなどと実行に懸念を示したが,被告人は,月をまたぐと船の購入に金庫の金が使われてしまう,まず行ってみましょうなどと言ってAを説得し,結局,2億円に目がくらんだこともあり,Aが,その日の夜に実行することを決めた。力の強い漁師に見つかった場合の対応については,被告人がバールでたたいて,手を後ろに回して親指同士を結束バンドで縛るなどと提案し,Dが道具を準備することになった。

Dは,Bとともにバールや結束バンド等を用意し,実行役に対し,

2億が入った金庫がある。巾着にも金がある。力の強い漁師がいるが,午前2時から不在になる時間がある。見つかったらバールでたたいて,結束バンドで縛れ

などと指示した上,実行役3名を被害者方に向かわせた。DとEは苫小牧に向かい,Cと被告人は,実行役が金庫を奪うのに成功してから苫小牧に向かうことにして札幌市内のホテルで待機し,DやEからの報告を受けていた。
同月27日午前1時過ぎ頃,Cは,DとEを通じ,被害者方に到着した実行役から被害者方の玄関の明かりが点いている旨の連絡を受け,被告人と相談した上,午前2時頃まで待機させることにした。午前2時頃,Cは,Eから

状況に変化はない。現場は行きたがっている

旨の連絡を受け,被告人と相談の上,現場の判断に任せるなどと言って実行を許可する旨の指示をした。その指示を受けてGとBが本件犯行に及んだが,被害者に抵抗されたため,強盗は失敗した。犯行の際,BとD,EとCとの間で携帯電話を通話状態としていたことから,Cと被告人にも,強盗が失敗したことが分かった。
信用性
C及びDの供述は,b事件が実行に移された同月17日や同月26日における共犯者らの位置情報や被告人のホテルへの入退室状況などの証拠上明らかな事実を無理なく自然に説明する内容であり,実行の場面に関しても,Bの供述や共犯者間の通話履歴とよく整合している。
そして,C及びDの供述は,重要な点でほぼ一致しており,相互にその信用性を高め合っている。さらに,その供述内容は,被告人の父から被害者方の情報がもたらされたという経緯に照らして自然であり,手を後ろに回して親指同士を結束バンドで縛るという被告人の発言や,月をまたぐと船の購入に金庫の金が使われてしまうという被告人の発言など,体験した者でなければ供述できない真実味を帯びた内容である。
この点,弁護人は,Cが被告人に対する不満等からうその供述をしている疑いがあると主張するが,Cの強盗致傷罪等の刑は確定しており,Cには被告人に罪を負わせることで自分の刑を軽くする動機はないし,その供述内容を見ても,被告人に特別不利な供述をしている様子もないから,被告人に対する不満等を考慮しても,Cがうその供述をして被告人に罪をかぶせているとは認められない。また,弁護人は,Dが自分の刑を軽くするためにうその供述をしている疑いがあるとも主張するが,本件におけるDの立場がCより下であったことなどからすると,Cより上の立場の者として被告人が関与したという話を作り上げたとしても,Dの刑が軽くなる関係にはなく,弁護人の主張は理由がない。さらに,弁護人は,CとDの供述に食い違いがあるから信用できないと主張するが,弁護人が指摘する点はいずれも些細な点に過ぎず,証言の時点で本件から1年以上が経過していることも踏まえると,そのような些細な点に食い違いが生じるのはむしろ自然であるともいえる。以上のとおり,C及びDの供述は,高い信用性を有する。
2
被告人供述について
これに対して,被告人は,同年11月10日にcの居酒屋でAらと一緒におり,父から,盗みに入れる場所の情報として,被害者方に大金があることなどは聞いたが,電話等で席を離れることが多く,Aらがb事件を実行することを決めた話は聞いていない,同月17日未明の話合いにも参加しておらず,同日夕方にAから電話でb事件を実行する旨を初めて伝えられ,その際,AからCとともに実行役が奪った金庫を回収してほしいと頼まれ,Cを自分の車に乗せて苫小牧市のホテルに行った旨供述する。しかし,同月10日について,盗みに入れる場所の情報をある程度聞いていたのに,正に実行に関する核心部分を聞いていないというのは,被告人が複数回席を離れていたとしても,不自然である。また,被告人は,当時,ほとんど毎日のようにAらとともに特殊詐欺を行い,A方にも頻繁に出入りしていたというのであるから,そのような被告人とAらとの関係に照らせば,同月10日に被告人の父から被害者方の情報を得てから同月17日に1回目の実行をするまでの間,Aらが被告人にb事件の計画を全く話さなかったというのは不自然であるし,同月17日当日になって初めて計画を知ったはずの被告人に対して,指示役であるCを車で待機場所まで送り届け,金庫を回収するという重要な役割を担わせたというのも不自然である。
さらに,被告人は,b事件の1回目の実行が失敗した同月17日から同月26日までの間,Aらからb事件の話は聞いていない,同日夜に突然Cからb事件の指示を出すための待機場所がなくて困っていると電話で言われたことから,自分が宿泊していたホテルをCの待機場所として提供した,Cがホテルに来た後,何か電話で指示している様子は見たが,指示の内容は聞いておらず,すぐに寝たのでその後のことは分からない,Cから実行役への指示内容について相談されたこともない,しばらくしてCから起こされてb事件が失敗したと言われたが,再び寝た旨供述する。しかし,被告人は,同月10日,被害者方に大金があることは聞いていたというのであり,同月17日夜には,Aに頼まれてb事件の1回目の実行にも一部関わったのであるから,b事件のその後の推移について関心を持つのが自然であるのに,その後,b事件の話を聞いていないというのは不自然であるし,本件犯行の際,すぐ隣でCがDらに対し,b事件に関する指示をしていたにもかかわらず,その指示内容等を聞いておらず,寝ていたというのも不自然である。
なお,弁護人は,同月17日未明の話合いの場にいなかったという被告人の供述について,被告人が使用していた手帳の記載がその裏付けになると主張するが,手帳の記載は,その記載内容が正しいとしても,被告人の上記供述を直接裏付けるものではなく,結局,同月26日夕方の話合いの場にいなかったという供述を含め,被告人の供述には何の裏付けもない。
このように,被告人の供述は,何の裏付けもないばかりか,被告人の父がもたらした情報に基づいてAらがb事件を計画し,実行したという事件全体の流れからすると,不自然な点が多く,通話履歴やホテルへの入退室状況等といった客観証拠とつじつまを合わせようとした不自然な供述というほかなく,到底信用することができない。
3
結論
以上のとおり,信用できるC及びDの供述によれば,被告人は,本件犯行に至るまでに,本件の共犯者らとともに,複数回にわたって犯行に関する話合いを重ね,被害者に見つかった場合には被害者をバールでたたいて縛ればいいと発言するなどb事件が強盗の計画として進展していく上で重要な役割を果たし,本件犯行の際には,犯行の指示役としての役割を担い,Cとともに,明かりの点いた被害者方への犯行の実行を最終的に指示している。このような事情からすれば,被告人が,本件の共犯者らと強盗を行う意思を通じて本件犯行を行ったことは明らかであるから,被告人は,本件犯行について,共同正犯としての責任を負うというべきである。
(法令の適用)


住居侵入の点

刑法60条,130条前段

強盗致傷の点

刑法60条,240条前段

科刑上一罪の処理

刑法54条1項後段,10条(一罪として重い強
盗致傷罪の刑で処断)

刑種の選択
有期懲役刑を選択

未決勾留日数の算入

刑法21条

訴訟費用の不負担

刑事訴訟法181条1項ただし書

(量刑の理由)
本件犯行は,暴力団組織を背景とする犯行であり,Aを中心に話合いを重ねる中,事前に,暴力団組員以外の者を実行役として手配し,各人の役割分担や家人に見つかった場合の対処方法等を決めた上,バール等の犯行道具を準備し,犯行に及んだもので,組織的かつ計画的な犯行である。そして,実行役2名は,未明に,玄関ガラスドアを叩き割るという手荒な方法で被害者方に侵入し,バールで被害者の足等を複数回殴ったもので,その犯行態様は危険かつ悪質である。被害者は,金品を奪われることはなかったものの,軽くない傷害を負った上,強い恐怖感を抱いたものであり,本件の結果は重い。
被告人は,当初の計画段階から本件犯行に積極的に関与し,Aにも異を唱えることができる立場で,被害者をバールでたたいて縛るなどの重要な提案をし,犯行当日の話合いの場では,実行をためらうAを説得して実行を決意させるなど,重要な局面で犯行を推し進める役割を果たした。また,実行の場面では,指示役として,Cとともに,実行役に犯行を決行させる最終決断を下している。このように,被告人は,主導的な立場で本件犯行に関与したものであり,その果たした役割は,Aより軽いものの,Cより重い。
以上によれば,被告人の刑事責任は重い。
そのうえで,被告人が本件犯行を否認して不合理な弁解に終始しており,その態度は狡猾で,反省の態度が認められないこと,他方で,被告人に前科がないことなどの事情を考慮し,さらに,共犯者らとの刑の均衡を踏まえると,主文の刑が相当である。
(求刑

懲役8年)

平成31年2月22日
札幌地方裁判所刑事第2部

裁判長裁判官

中桐圭一
裁判官

向井志穂
裁判官

川口寧
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