判例検索β > 平成29年(ワ)第11667号
損害賠償請求事件
事件番号平成29(ワ)11667
事件名損害賠償請求事件
裁判年月日平成31年3月14日
法廷名大阪地方裁判所
裁判日:西暦2019-03-14
情報公開日2019-05-13 12:00:23
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主1文
被告は,原告に対し,5万5000円及びこれに対する
平成29年7月10日から支払済みまで年5分の割合によ
る金員を支払え。

2
原告のその余の請求を棄却する。

3
訴訟費用はこれを20分し,その19を原告の負担とし,
その余は被告の負担とする。
事実及び理由

第1

請求
被告は,原告に対し,111万9800円及びこれに対する平成29年7月1
0日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2

事案の概要

1
事案の要旨
原告は,平成29年5月10日付けで,近畿財務局長に対し,行政機関の保
有する情報の公開に関する法律(以下情報公開法という。)に基づき,国が学校法人森友学園(以下森友学園という。)に賃貸し,その後,売り払った大阪府豊中市所在の土地(以下本件土地という。)に関する賃貸契約時までに提出された小学校の設立趣意書等の開示請求(以下本件開示請求という。)をしたが,近畿財務局長は,同年7月10日付けで,本判決別
紙開成小学校設置趣意書(以下本件設置趣意書という。)の表題の一部(小学校名)及び本文部分(以下,併せて本件不開示部分という。)については同法5条2号イ所定の不開示情報が記録されていることを理由に一部不開示決定(以下本件不開示決定という。)をした。
本件は,原告が,近畿財務局長が本件不開示部分を不開示としたのは国家賠
償法上違法であると主張して,同法1条1項に基づき,被告に対し,損害賠償として111万9800円及びこれに対する違法行為である本件不開示決定が
された上記日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
2
前提事実(当事者間に争いがない事実,各項掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実並びに当裁判所に顕著な事実。以下,書証番号は特
に断らない限り枝番号を含む。)
(1)

森友学園等
森友学園は,私立学校法に基づき設立された学校法人であり,本件不開示決定当時,塚本幼稚園幼児教育学園(以下塚本幼稚園という。
)を設
置・管理していた。
森友学園の理事長は,平成29年3月16日まではAであったが,本件
不開示決定当時はBであった。
また,本件不開示決定当時,Aが理事長を務める学校法人C学園は,開成幼稚園幼児教育学園を設置・管理していた。
(以上につき,乙4,12)

森友学園は,国有地であった本件土地上に小学校(以下本件小学校という。
)を設置することを計画し,国(契約担当官・近畿財務局長)との
間で,
平成27年5月,
本件土地についての賃貸借契約を締結し,
さらに,
平成28年6月20日,国から同土地を買い受けた(甲15,弁論の全趣旨)


森友学園は,平成26年10月31日,大阪府知事に対し,本件小学校の設置認可を申請し,その後,その名称を開成小学校から瑞穂の國記念小學院に変更し,平成29年4月の開校を目指して,本件土地上に校舎の建設を進めていたが,同年2月,森友学園が政治家の関与により本件土地を不当に安く購入したのではないかとの疑惑が報道され,
それ以降,
この問題が国会で取り上げられるなどした。

森友学園は,同年3月10日,上記設置認可の申請を取り下げるとともに,同月13日,それまで開設していた本件小学校に関するホームページ
を閉鎖した。
(以上につき,甲15,乙7,10,11,14,15)

森友学園は,平成29年4月21日,大阪地方裁判所に対し,民事再生法に基づく再生手続開始の申立てをした。
同裁判所は,同月28日,森友学園につき,再生手続開始の決定をし,D弁護士を管財人(以下,単に管財人という。
)に選任した。
(以上に

つき,甲15,乙1,4)
(2)

本件不開示決定等
原告は,平成29年5月11日,情報公開法に基づき,近畿財務局長に対し,開示を求める行政文書を本件土地に関する賃貸契約時までに提出された小学校の設立趣意書等として,本件開示請求をした(甲1)。

近畿財務局における決裁文書の代決及び決裁の委任に関する規則(平成13年近畿財務局訓令第5号。乙20)19条,20条1項及び別表第1各課共通関係Ⅲの1により,近畿財務局長による情報公開の開示決定等に関する通知に係る決裁は近畿財務局総務部長に委任されているところ,当時近畿財務局総務部長であったEは,本件開示請求の対象となる文書を
普通財産時価貸付決議書のうち,学校法人森友学園との賃貸契約書,小学校の設立趣意書と特定した上で,賃貸契約書のうち契約相手方の印影及び署名,本件設置趣意書のうち本件不開示部分については,情報公開法5条2号イ所定の不開示情報が記録されていることを理由に一部不開示とする旨を決裁した。

近畿財務局長は,平成29年7月10日付けで,原告に対し,本件不開示決定をし,その旨通知した。(以上につき,甲2)

原告は,平成29年10月2日,本件不開示決定の取消しを求める訴え(以下別件訴訟という。)を提起した。

(3)

本件不開示決定の撤回に至る経緯等
管財人は,平成29年10月10日,大阪地方裁判所に対し,森友学園
の再生計画案を提出した(乙16)


管財人は,近畿財務局からの照会を受けて,平成29年11月14日付けで,近畿財務局長に対し,森友学園が小学校を開設することがなくなったことから,本件設置趣意書を開示することにより森友学園の正当な利益を害するおそれは存在しなくなった旨を記載した意見書を提出した(甲6)



近畿財務局長は,上記意見書の提出を受けて,平成29年11月20日付けで,本件不開示決定を撤回し,原告に対して,本件設置趣意書の全部を開示する旨の決定をした(甲4,乙2)


エ3
原告は,平成30年1月19日,別件訴訟につき訴えを取り下げた。
争点
前記前提事実によれば,本件不開示決定は近畿財務局内部の規則に基づき近畿財務局長の委任によりEが決裁をしたものであるところ,
原告の本訴請求は,
その根拠たる違法行為としてEの決裁行為を含むものと合理的に解釈することができる(以下,近畿財務局長及びEを併せて近畿財務局長等という。。)
本件における争点は,以下のとおりである。

(1)

近畿財務局長等が本件不開示部分を不開示としたことの国家賠償法上の
違法性(争点1)
(2)
(3)
4
近畿財務局長等の故意・過失の有無(争点2)
損害の有無及びその額(争点3)

当事者の主張
(1)

争点1
(近畿財務局長等が本件不開示部分を不開示としたことの国家賠償
法上の違法性)について
(原告の主張)

本件不開示部分記載の情報は情報公開法5条2号イ所定の不開示情報に該当しないこと
情報公開法5条2号イにいう,
公にすることにより,
当該法人等の権利,

競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるか否かについては,それぞれの法人等及び情報の性格に応じて的確に判断されるべきであり,単なる確率的な可能性ではなく,法的保護に値する蓋然性が求められるところ,以下のとおり,
開成小学校との小学校名(以下本件小学校名
という。及び本件設置趣意書の本文部分

(以下,本文部分
単に
という。

の内容が公にされたとしても,森友学園の信用や社会的評価が害される蓋然性は認められないから,本件不開示部分記載の情報は同号イ所定の不開示情報に該当しない。
(ア)

本文部分について
本文部分には,Aの歴史観等が列挙されているにすぎず,森友学園の
経営戦略に関する情報等の記載がないことなどからすれば,客観的に見て,経営上のノウハウとして評価し得るものは全く含まれていない。また,森友学園が設置・管理していた塚本幼稚園のホームページや本件小学校のホームページに本文部分と類似の記載が存在していたことからすれば,本文部分の内容は既に公にされていたといえるのであって,これを開示したとしても,森友学園の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあったとはいえない。
加えて,森友学園が,本件不開示決定時点において,既に本件小学校の設置認可の申請を取り下げていたこと等からすれば,本文部分記載の
情報はもはや法的保護に値する情報であったということはできない。(イ)

本件小学校名について
情報公開法5条2号イは,公にすることにより法人等の権利や競争上
の地位その他正当な利益を害するおそれのある情報を保護しようとするものであるから,既に多数の者に周知され,あるいは周知し得る状態に置かれている情報は,同号イにいう不開示情報に該当しないというべきところ,森友学園の同一系列である学校法人C学園が設置・管理し,A
が園長を務めていた幼稚園では,開成という名称が使用されていたことに加え,開成という名称は歴史上の学校名として公知のものであることからすれば,
本件小学校の名称が開成であることが公にされたとしても,
森友学園の競争上の地位その他正当な利益を害することなどあり得ない。そもそも,森友学園は,本件小学校の名称を瑞穂の國記念小學院

とすることを前提として建設工事を行い,入学者を募集していたことからすれば,現実に本件小学校名を使用する可能性はなかったというべきである。
したがって,本件小学校名は法的保護に値する情報であったということはできない。


本件不開示部分を不開示としたことが国家賠償法上違法であること公務員が処分要件の欠缺した処分となることを予見しているにもかかわらず,必要な注意を尽くさず,あえてかかる処分をすることは,漫然と職務上尽くすべき注意を尽くさずに行った規範違反行為であり,国家賠償法
上違法の評価を受けるべきものである。そして,情報公開法が公文書の公開を原則とし,不開示は例外としていることからすれば,不開示情報該当性については特に厳密に検討すべきことが要求されているということができる。
しかるに,近畿財務局長等は,本件不開示決定前の時点で第三者照会を
行っていれば,少なくとも森友学園が本件設置趣意書に事業運営上のノウハウに該当する情報を記載したと判断しているか否かについて容易に確認することができたのに,これを怠った。また,本件設置趣意書の内容や体裁等からすれば,何ら専門技術的な知識を要することなく,本件不開示部分記載の情報が不開示情報に該当しないと判断し得たにもかかわらず,本
件不開示決定を行い,意図的にこれらの情報を隠したと評価せざるを得ない。近畿財務局長等は,本件設置趣意書の内容を開示することで,本件土
地の売却に関する疑念に一層拍車が掛かるのを恐れて,本件設置趣意書の記載内容を隠ぺいしたというのが真相である。
以上からすれば,近畿財務局長等の注意義務違反は明らかであって,近畿財務局長等が本件不開示部分を不開示としたことには国家賠償法上の違法性が認められる。

(被告の主張)

本件不開示部分記載の情報は情報公開法5条2号イ所定の不開示情報に該当すること
情報公開法5条2号イの権利とは,憲法上の権利・自由のほか法律
上保護される権利を,
競争上の地位とは,法人等の公正な競争関係にお
ける地位を,
その他正当な利益とは,生産技術上又は事業運営上のノウ
ハウ,名誉や信用等のほか,法人の事業運営上法的保護に値する利益をいうものと解され,開示請求の都度,これらを害するおそれがあるか否かを判断しなければならないところ,以下のとおり,本件不開示決定当時,本
件不開示部分記載の情報を公にすれば,森友学園の競争上の地位や事業運営上法的保護に値する利益等を害するおそれがあったというべきであるから,
これらはいずれも情報公開法5条2号イにいう不開示情報に該当する。(ア)

設置趣意書の性質等
学校の設置趣意書は,一般的に,設置する予定の学校の教育理念,教
育目的,教育目標,教育内容及びこれらを実現する方策等の情報が記載されるものであるところ,学校法人が設置する私立学校の経営を安定的に行っていくためには,児童・生徒を一定数確保し続けることが必須の条件となること,入学を検討する児童やその保護者は,その学校の教育理念,教育方針及び教育内容といった点に最大の関心を置くものである
ことからすれば,これらの情報は学校法人における経営戦略に関する情報ということができる。そして,少子化が進み児童・生徒の獲得が困難
になった現代社会においては,学校法人の学校経営を支える根源的な情報としてより一層重要性を増しているといえるから,学校法人の経営・運営上のノウハウとして評すべきものである。
加えて,法令上,設置趣意書自体の公開は義務付けられておらず,認可申請が取り下げられれば,その全容が明らかにされることはない。それにもかかわらず,学校法人の意思によらずして,設置趣意書に記載された情報が拡散された場合,それが一因となって,他の学校法人との間における競争上の地位が不当に脅かされるおそれがあるというべきである。

(イ)

本文部分について
本文部分は,森友学園の独自の知見に基づいて作成されたものであり,
記載内容全体が一体として森友学園の教育理念,教育方針,教育目標・目的及び学校運営上の特色等を示すものとなっているから,これらの情報は森友学園の学校法人としての経営戦略に関する情報であって,森友学園の経営・運営上のノウハウと評すべきものである。
そして,森友学園は,本件不開示決定時までに,本件小学校の設置認可の申請を取り下げ,再生手続開始決定を受けていたものの,Aが

またチャレンジする。

と述べた旨の報道がされていたこと等からすれば,本件小学校を設置する可能性は消滅していなかったということができる。
しかるところ,森友学園が小学校を設置して学校経営の市場に参入する以前に本文部分記載の情報が公にされてしまえば,本文部分のキーワードを用いるなどして,これを模倣して児童の募集を行う学校法人が出現する可能性を否定し得ず,その場合,森友学園は他の小学校との差別化を図ることのできる特性を事実上失い,本文部分と同様の教育目標等
を掲げる小学校を設置して児童を募集したとしても,本来確保することができる児童数が減少し,市場における競争上の地位が不当に害される
おそれがあった。
したがって,
本文部分記載の情報を公にすることは,
森友学園の権利,
競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあったというべきであり,情報公開法5条2号イ所定の不開示情報に該当する。
原告は,森友学園が設置・管理していた塚本幼稚園のホームページや
本件小学校のホームページに本文部分と類似の内容の記載が存在していたことからすれば,本文部分記載の情報は既に公にされていたなどと主張するが,塚本幼稚園は小学校ではないから,そのホームページ上に本文部分そのもの,あるいはこれと同趣旨の内容が掲載されていたとは考え難い(なお,本件小学校のホームページは,本件開示請求及び本件不開示決定当時,既に閉鎖されており,近畿財務局長等においてその内容を知る術はなかったのであるから,原告の上記主張は,少なくとも,国家賠償法上の違法を基礎付ける事情としては,理由がない。。

(ウ)

a
本件小学校名について
私立小学校の名称を示す標章は,商標登録が認められる蓋然性のある標章であるから,一般的に法的保護に値する情報であることは明らかである。そして,本件不開示決定時,開成小学校という名称が商標登録されていなかったことからすれば,
本件小学校名を公にした場合,
他の学校法人により同名称が使用されあるいは商標登録されることにより,森友学園が競争上不利な地位に立たされる可能性があった。
b
また,児童やその保護者が複数ある小学校の候補から入学する小学校を決定する上で,教育理念や教育内容の他に,その小学校の名称によってもたらされる印象も一般的に重要な考慮要素となり得るから,新設する小学校を如何なる名称にするかは学校法人の経営戦略に関す
る情報としての性質を有するものであり,少子化が進み児童の確保が一層困難になった現代社会においては,法的保護に値する情報という
ことができる。
加えて,本文部分には,森友学園の学校運営上の模範とすべき歴史上の教育機関として開成校が挙げられており,このような学校設
立の趣意を反映させた本件小学校名は,本文部分と一体となって,森友学園の経営戦略に関する情報を構成するものと評価することができ
る。
それにもかかわらず,本件小学校名を公にした場合,森友学園の事業運営上法的保護に値する利益を害するおそれがあった。
c
したがって,本件小学校名は情報公開法5条2号イにいう不開示情報に該当する。

原告は,森友学園が本件小学校の名称を瑞穂の國記念小學院と
して開学準備を行っていたことなどを理由に,今後,森友学園が開成小学校の名称を使用して小学校を設置する可能性はなかった旨主張するが,
本件小学校の名称が
瑞穂の國記念小學院
であったとしても,
それ故に,今後,森友学園が開成小学校の名称を使用して小学校を設
置する可能性がなかったことを意味することにはならないから,原告の上記主張は理由がない。

本件不開示部分を不開示としたことが国家賠償法上違法との評価を受けるものではないこと

(ア)

上記アのとおり,
本件不開示決定の時点では,
本件不開示部分記載の

情報は,情報公開法5条2号イ所定の不開示情報に該当していたといえるから,本件不開示部分を不開示としたことが国家賠償法上違法との評価を受けるものでないことは明らかである。
(イ)
仮に,本件不開示部分記載の情報が上記不開示情報に該当しないと
しても,以下のとおり,これを不開示としたことが国家賠償法上違法と評価されることにはならない。
すなわち,法人の事業運営上のノウハウに該当する情報が開示請求の対象となった文書に含まれているか否かを判断するためには,各事業分野における高度な専門技術的知識を要するものであって,直ちに明白に判断することが可能なものではないから,必ずしも各事業分野に通じているわけではない処分行政庁が情報公開法上の限られた期間内において,これを正確に判断することは極めて困難である。したがって,結果的に上記不開示情報に該当する情報と認められなかったことをもって,これに該当すると判断した処分行政庁の判断が直ちに職務上の注意義務に違反して漫然と上記判断を行ったと評価されるものではない。
本件不開示決定についてみても,
近畿財務局長等は,
上記アのとおり,

本件不開示部分記載の情報が森友学園の事業運営上のノウハウに該当する情報であり,これを公にすることにより,森友学園の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあったと判断したものであって,その判断過程には合理性が認められるから,職務上の注意義務を尽くさずに漫然と本件不開示決定を行ったと認め得るような事情がないことは明らかである。
(ウ)

原告は,近畿財務局長等が,本件不開示決定をする前に,情報公開法
13条1項に基づいて第三者照会を行うべきであった旨主張するが,同法は,開示請求に係る行政文書に不開示情報が記録されているか否かを判断する権限を行政機関の長に付与しているのであるから,開示請求に係る行政文書の作成者が第一次的に不開示情報該当性を判断すべきであることを前提とする原告の主張は誤りであるといわざるを得ない。また,
同項は,第三者の権利利益の適正な保護を図るために,必要な調査の一環として設けられた手続規定であるから,情報公開請求を行った者との
関係で,同項に基づく措置をすることが職務上義務付けられていると解することはできず,原告の上記主張は理由がない。
(2)

争点2(近畿財務局長等の故意・過失の有無)について

(原告の主張)
上記(1)(原告の主張)の事情に照らせば,近畿財務局長等には,本件不開示部分を不開示としたことにつき,故意又は過失があったと認められる。(被告の主張)
争う。
(3)

争点3(損害の有無及びその額)について

(原告の主張)
原告は,本件不開示決定により,本来開示されるべき情報の開示を受けることができず,①精神的損害(金銭に換算すると100万円),②別件訴訟を提起するための貼用印紙代相当額
(1万3000円)
及び郵券代相当額
(5
000円),③本件訴訟を提起するための弁護士費用相当額(10万1800円)の損害を被った。
(被告の主張)

争う。
近畿財務局長は,原告が別件訴訟を提起した時点から間がない平成29年11月20日には本件不開示決定を撤回した上で,原告に対する開示決定をしており,原告は,これを受けて,同月24日には本件設置趣意書の写しを取得し,その後,別件訴訟の訴えを取り下げたことを考慮すると,原告に金
銭によって慰謝すべき精神的苦痛が生じたものとは認められない。また,別件訴訟を提起するための貼用印紙代及び郵券代は,訴訟費用負担確定の裁判によらずしてこれらの給付の訴えを提起することは許されないものであるし,本件訴訟を提起するための弁護士費用についてみても,本件訴訟が国有地低額譲渡の真相解明を求める弁護士・研究者の会の活動とし
て公表されていることからすれば,原告が本件訴訟代理人弁護士らに対して本件訴訟の弁護士費用を現実に支出しているかは疑問であるといわざるを得ない。
第3
1
当裁判所の判断
争点1(本件不開示決定の国家賠償法上の違法性)について
(1)

情報公開法5条2号イ所定の不開示情報について
情報公開法5条2号イは,法人等に関する情報又は事業を営む個人の当該
事業に関する情報のうち,公にすることにより,当該法人等又は当該個人の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものを不開示情報とする旨定めている。
そして,
これに該当すると認められるためには,
単に当該情報が通常他人に知られたくないというだけでは足りず,当該情報が開示されることによって,当該法人等の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれが客観的に認められることを要するというべきであり,上記おそれは,単なる確率的な可能性では足りず,法的保護に値する蓋然性が必要であると解するのが相当である。
(2)


不開示情報該当性について
本文部分について
(ア)

本文部分の記載内容を見ると,
冒頭で,
日本人の一番大好きな景色

又はなつかしい風景として,日本古来の原風景ともいうべき景色を描写した上で(第1段落),日本人が自然と結び付いた宗教観を有してきたことなどを日本人の感性であるとして素晴らしいと評価し(第2段落),各時代の教育機関において人間教育が行われ,明治期の開成校
等が偉人を輩出した歴史等について記述している
(第3段落)

次に,全体を見て動く律儀さ,礼節を守り,人のことを自らのことのごとく思い,ルールにのっとって動くことを原日本人の特質として挙げ,極楽浄土的死生観,武士道,侘び,寂び的な道,

していいこととしてはならぬ事を律する道
等から
日本人的考え方,生き方が生まれてきたなどと記述している(第4,第5段落)。続いて,太平洋戦争後について,明治維新時の日本人に対する好意的評価と対峙させる形で,経済一辺倒,拝金主義的,利己的な下賤な人たちを増殖せしめたなどと否定的に評価し(第6段落),太平洋戦争の敗戦が健やかに成長してきた日本人気質をゆがめ(第7段落),同敗戦により西欧化・アングロサクソン的文化共産主義文化にまみれてきたなどと記述し(第8段落),その上で,

ここで重要なのは,原日本人を復活させ,日本文化の再生であり,教育の再興である。

と結論付けている(第9段落)。さらに,我が国の現状について,国家としての品格を落とし,国民の道徳的退廃,国民としての自覚の欠如など,日本人のすばらしき精神性がもろくもくずれさり,政党政治の堕落,政治家としての資質の悪化,他民族に囲まれた国としての危機管理の欠落などと問題を指摘し,現在の大人達は(中略)将来の担い手である子供達の育成に心血をそそがねばならないとしている
(第10段落)

以上の記述を前提として,本文部分の後半では,学校法人森友学園は創立60年の歴史の中で(中略)学校法人としての幼児教育に他の幼稚園に先駆けて邁進してまいりました。(中略)幼稚園の中で唯一の歴史と伝統教育カリキュラムを実践するうちに,幼児の成長した受け皿が必要で,その受け皿の中でさらにひと際の人間的成長(中略)に誘う真の初等教育機関を自らの学園として開設する運びとなった。(第11
段落),この開設により足下の地域社会への貢献とともに,日本人を意識しつつ,アジア人として世界貢献できる人材育成期間ができたことになる。学力・人格とも優れた人材育成には都会の中にありながら郊外を思わせる広いロケーションの中で校舎やグランド,本校の特色である生活環境の場としての諸施設が想像力を豊かにする自然をめいっぱい配置し,地域の公園や地域の文教施設と一体化した(空白)としての立ち位置となる。(第12段落),教師は溢れんばかりの情熱を以て子どもたち一人ひとりと向き合い長所を見開き,個性を伸長するのが使命である。算数力・国語力・歴史・道徳・自然・これも結果を知るのではなく,なぜ,こうなったのかという,プロセスとこういう方法であれば,どうなったのであろうと考えることが,これからの日本にとって最重要となります。(第13段落),

我らは日本国の存在さらには発展とともにそのためには一人一人の日本国民としての自覚を持ち,大いなる志をもって青少年の教育に邁進することを決意した。(第14段落)


孝行・忠節・和順・友愛・信義・勤学・立志・誠実・仁慈・礼譲・倹素・忍耐・廉潔・敏智・剛勇・公平・度量・識断・勉職を教育の基本におき,国家国民の為になる国民としての人材開発に主力をおき国際貢献をも視野に入れながら幅広い活躍ができる日本国民をそだてあげていきたい。(第15段落)などと記述している。(イ)

以上のような本文部分の記載によれば,本件設置趣意書においては,
従前より,塚本幼稚園において日本の歴史や伝統を重んじる保守主義的な政治思想・政治信条に根差した幼児教育を実施してきた森友学園が,更に同様の教育理念に基づく初等教育を実践するための機関として,本件小学校を開設しようと決意したという,本件小学校設置の経緯・目的が明らかにされるとともに,本件小学校において如何なる人材を育成しようとするのかという教育方針・教育目標が明らかにされていると評価
することができる。その点において,本文部分には,本件小学校の経営に関する森友学園独自の知見や考え方が示されているということができ,学校法人としての経営戦略に関する情報との側面が全くないとはいえない。
もっとも,これらの記載は,全体として,概括的かつ抽象的なものに
とどまっており,教育理念や教育目標を実現するための具体的な教職員の態勢や教育設備が記載されているものでも,独自のカリキュラムや指導方法が記載されているものでもなく,小学校の運営・経営上のノウハウと評価すべきものは含まれていない。
また,上記のとおり,森友学園は従前より塚本幼稚園において幼児教育を行ってきており,本件小学校ではそれと同様の教育理念に基づく初等教育を実践しようとしていたといえることに加え,証拠(甲14,乙7,11,14,15)によれば,森友学園は,平成29年4月に本件小学校の開設を予定し,同小学校のホームページを開設するなどして,児童の募集等を実施していたことが認められ,
これらの事情からすれば,
森友学園は,本件設置趣意書の記載と同様の内容ないし程度には,その
教育理念や教育方針等を公表し,本件小学校の特色として宣伝していたものと考えられる(なお,この点に関し,被告は,森友学園が本件処分時までに本件設置趣意書の本文をホームページに表記したり,小学校の児童募集において使用したりした形跡はうかがわれない旨主張するが,本文部分全体がそのまま公表されていなかったとしても,その要素であ
る教育方針等は,児童募集等に当たって当然に公表されていたと考えるのが自然である。)。
以上によれば,本文部分の内容は,そもそも,学校法人としての経営戦略に関する情報としては概括的かつ抽象的なものにとどまり,小学校の運営・経営上のノウハウというべきものではない上,その程度の情報
は,既に,実質的に公にされていたと認められるから,これが公にされた場合に,森友学園の権利,競争上の地位その他正当な利益が害される蓋然性があったなどとは到底いえない。
(ウ)

以上に対し,
被告は,
本文部分に記載された情報を明らかにすれば,

森友学園が小学校経営の市場に参入する以前に,そこに記載されたところを模倣して児童の募集を行う学校法人が出現する可能性が否定できないなどと主張する。しかし,そもそも,
及びエによれ

ば,森友学園は,本件処分当時,既に本件小学校の設置認可の申請を取り下げていたほか,再生手続開始の決定もされていたというのであるから,森友学園が,将来的に本件小学校と教育理念や教育方針等を同じくする小学校を設置しようと試みる現実的な可能性自体が,相当に低くなっていたと考えられる。また,我が国においては,公立の小学校におけ
る教育は無償で行われること等を背景に私立の小学校数が少ないことは公知の事実というべきであり,そうであれば,新たに小学校を設置しようとする学校法人もおのずから限られてくるものと考えられ,本件においても,本件小学校設置予定地周辺ないし塚本幼稚園周辺で私立小学校の設置を計画していた者が存在していたことをうかがわせる事情は見当
たらない。加えて,本文部分の記載内容からすれば,本件小学校における教育理念や教育方針等は,森友学園ないしA個人の保守主義的な政治思想・政治信条に根差した教育を実施することを中核とするものと評価することができ,このような教育理念や教育方針等の内容に照らせば,これを模倣して新たに小学校を設置しようとする他の学校法人が現れる
とはにわかに考え難く,仮にその可能性があり得るとしても,抽象的な可能性にとどまるというべきであり,そのような可能性があることをもって,法的保護に値する蓋然性があると評価する余地はないといわざるを得ない。したがって,被告の上記主張は採用することができない。(エ)

以上によれば,本文部分記載の情報は情報公開法5条2号イ所定の
不開示情報に該当しないことが明らかというべきである。

本件小学校名について
(ア)

小学校名は,
小学校を設置しようとする学校法人が,
他校との識別化

等を図るために慎重に選択するものであり,学校法人としての経営戦略に関する情報に該当することは否定し得ない。しかし,一般に,あえて私立の小学校に入学しようと希望する児童やその保護者は,学校の名称より教育理念や教育環境等を重視するものと考えられ,学校名が学校選択に当たっての重要な判断要素になるとまでは考え難い(既存の学校がその実績等によって高く評価され,そのことに伴い,学校名自体が一定の価値を有するに至っているといった特段の事情があればともかく,少なくとも,本件において,そのような事情は認められない。)。また,に加え,証拠(甲4,10,乙13)によれば,本件
小学校名は東京大学の前身たる明治期の開成学校に由来し,Aが理事長を務める学校法人C学園が設置していた幼稚園も開成との名称を使用していたことが認められるほか,
開成
との名称を使用した学校が他

にも存在することは公知の事実ということができ,これらの事情からすれば,
開成
という名称を学校の名称として使用することに特段の独自
性や目新しさはないということができる。そうすると,本件設置趣意書における本件小学校の名称が
開成小学校
とされているとの情報自体,
森友学園にとって殊更に秘密にすべき情報であったとは考え難い。
さらに,上記のとおり,新たに小学校を設置しようとする学校法人自体が限られ,本件においても本件小学校設置予定地周辺ないし塚本幼稚園周辺で小学校の設置を計画していた者がいたことをうかがわせる事情も見当たらない。
以上に述べたところからすれば,本件小学校名を公にした場合に,こ
れを知った他の学校法人等が先んじてそれを使用し,又は商標登録をするなどして,森友学園による上記名称の使用が妨げられるといった事態に至る可能性自体が抽象的なものにとどまっていたといえる上,仮にそのような事態に至ったとしても,そのことによって,森友学園の競争上の地位が害されることになるとは到底考えられなかったといわざるを得
ない。
したがって,本件小学校名は,情報公開法5条2号イ所定の不開示情報に該当しないことが明らかというべきである。
(イ)

なお,被告は,今後,森友学園が開成小学校の名称で小学校の設

置を再び計画する蓋然性があったことを前提に,本件小学校名は不開示情報に該当する旨主張し,Eも,Aの発言や人物像を理由に,森友学園が既に本件小学校の設置認可の申請を取り下げ,再生手続開始の決定を
受けていたことからすれば,今後瑞穂の國記念小學院との名称で小学校を開設することは難しくなり,開成小学校の名称を使用する一定程度の蓋然性があったなどと証言するが(E証人23,24,39,40頁),Aが既に理事長の地位から退任している森友学園が,再生手続を経た後にも,本件小学校の仮の名称であった開成小学校の名称
を使用して,再び小学校の設置を計画するというのはあくまでも抽象的な可能性にすぎないのであって,この点においても,被告の主張は採用することができない。
また,被告は,本件小学校名は本文部分と一体となって森友学園の経営戦略に関する情報を構成するなどと主張するが,本文部分記載の情報
が情報公開法5条2号イ所定の不開示情報に該当しないことは,上記アにおいて説示したとおりであるから,被告の上記主張はその前提を欠くものとして採用する余地がない。

小括
以上によれば,本件不開示部分記載の情報は,情報公開法5条2号イ所
定の不開示情報に該当しない。
(3)

近畿財務局長等が本件不開示部分を不開示としたことの国家賠償法上の
違法性について

情報公開法に基づく公文書の不開示決定に取り消し得べき瑕疵があるとしても,そのことから直ちに国家賠償法1条1項にいう違法があったとの評価を受けるものではなく,公務員が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と上記決定をしたと認め得るような事情がある場合に限り,上記評価を受けるものと解するのが相当である(最高裁判所平成18年4月20日第一小法廷判決・集民220号165頁参照)


上記

で認定・説示したところによれば,近畿財務局長等において,本

文部分の記載内容につき,小学校をめぐる一般的な社会の状況や,新聞報道等によって知り得る森友学園に関する諸事情を踏まえ,健全な社会通念に照らして合理的に判断しさえすれば,本文部分を開示したとしても森友学園の権利,競争上の地位その他正当な利益が害される蓋然性がないとの判断に至ることができたということができる。また,本件小学校名につい
ても,公知の事実や容易に知り得る事情等に照らし,健全な社会通念に照らして合理的に判断しさえすれば,本件小学校名を公にしたとしても森友学園の権利,競争上の地位その他正当な利益が害される蓋然性がないとの判断に至ることができたということができる。
この点は,確かに,被告が主張するように,学校の設置趣意書は,一般
的に,学校法人の運営・経営上のノウハウが記載されることがあり得るという性質を有するものといえるところ,情報公開法5条2号イ所定の不開示情報該当性を判断するに当たって,文書としての一般的な性質を考慮に入れることも一定の合理性を有するものと考えられるから,事案によっては,本来は上記蓋然性がないにもかかわらず,文書としての一般的な性質
を重視するあまり上記蓋然性があるものと誤って判断したとしてもやむを得ないというべき場合があり得るものと解される。しかし,本件設置趣意書については,本件小学校の教育理念等が概括的かつ抽象的に記載されているにすぎず,小学校の運営・経営上のノウハウというべきものは含まれておらず,その程度の情報は,児童の募集等に当たって当然に公表され
ていたと考えるのが自然である上,そもそも,森友学園が将来的に本件小学校と教育理念や教育方針等を同じくする小学校を設置しようと試みる可能性自体が低く,また,その教育理念等も森友学園ないしA個人の保守主義的な政治思想・政治信条に根差した教育を実施するという独特なものであり,これを模倣する学校法人との間で競争が生じる蓋然性はなかったのであり,これらの事情からすれば,近畿財務局長等において,上記不開示情報に該当しないとの判断に至ることは容易であったものということができる。したがって,設置趣意書が上記のような一般的な性質を有するからといって,本件設置趣意書につき上記判断をしたことがやむを得ないということはできない。
被告は,情報公開法5条2号イ所定の不開示情報該当性を的確に判断す
るためには,各事業分野における高度な専門技術的知識を要するとも主張するが,本件不開示部分記載の情報が上記不開示情報に該当しないとの判断に至るために教育分野の専門技術的知識を要しないことは,既に述べたところから明らかである。
その他,被告は,本件不開示部分記載の情報が上記不開示情報に該当す
ると判断した根拠として,森友学園が他校との競争関係にあったことなどを指摘し,Eもこれに沿う証言をする。しかし,本件において,本件小学校設置予定地周辺や塚本幼稚園周辺に,私立の小学校が複数設置されていたとか,新たに私立小学校を設置しようとする学校法人があったとかいった事情は認められず,被告の指摘する他校とは公立の小学校を想定してい
るものと解されるところ,上記のような独特の教育理念等を有する私立の本件小学校と公立の小学校とが競争関係にあるなどとすること自体に疑問があり得るし,少なくとも,公立の小学校を設置する地方自治体が,本件設置趣意書の内容を模倣したり,森友学園による小学校設置の妨げになるような行動をしたりするとはおよそ考えられないのであって,被告の指
摘する事情が本件不開示部分を不開示とする根拠とならないことは,社会通念に照らして,明らかといわざるを得ない。
以上によれば,近畿財務局長等は,何ら合理的な根拠がないにもかかわらず,本件不開示部分記載の情報が不開示情報に該当するとの誤った判断をしたものといわざるを得ず,職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と本件不開示決定をしたと認めるほかない。
したがって,近畿財務局長等が本件不開示部分を不開示としたことにつ
いて,国家賠償法1条1項の違法があったものと認められる。
2
争点2(近畿財務局長等の故意・過失の有無)について
上記1で認定・説示したところによれば,近畿財務局長等が本件不開示部分を不開示としたことにつき過失があると認められ,これを覆すに足りる事情は見当たらない。

他方で,本件において,近畿財務局長等が,本件不開示部分記載の情報が不開示情報に該当しないものと認識しながら,故意に上記判断をしたと認めるに足りる証拠はない。
3
争点3(損害の有無及びその額)について
(1)

精神的損害(請求額100万円)について
被告は,近畿財務局長が原告の別件訴訟提起から間もなく本件不開示決定
を撤回した上で,開示決定をしていること等を考慮すると,原告に金銭によって慰謝すべき精神的苦痛が生じたものとは認められない旨主張するが,原告は,本件不開示決定を受けたことにより,別件訴訟を提起することを余儀なくされたのであって,後に開示決定を受けたからといって,原告に精神的損害が生じたことは否定し難い。
そして,本件事案の性質に加え,本件不開示決定から同決定を撤回するまでの期間が約4か月であること,被告が,森友学園の再生計画案が提出された後,比較的速やかに本件不開示決定を維持し得るか否かを精査するため,
管財人に対し,小学校設置予定の有無等を確認するなどしており,近畿財務局長等に原告の知る権利を蔑ろにする意図があったとは認められないこと等を総合考慮すると,本件不開示決定により原告が被った精神的苦痛を慰謝するための金員としては5万円が相当である。
(2)

別件訴訟に係る貼用印紙代及び郵券代相当額の損害(請求額1万8000
円)について
別件訴訟に係る貼用印紙代及び郵券代については,別件訴訟に係る訴訟費
用に含まれるところ(民事訴訟費用等に関する法律2条1号,3条,別表第1・1項),別件訴訟は原告による訴えの取下げで終了しているから,民事訴訟法73条1項の手続によってその負担者及び負担の額を確定すべきである。以上のような訴訟費用に関する民事訴訟法等の定めに照らせば,上記貼用印紙代及び郵券代をもって,違法な本件不開示決定によって生じた損害に
該当するとして国家賠償請求をすることはできないと解すべきである。したがって,原告の上記損害に係る主張は,採用することができない。(3)

本件訴訟に係る弁護士費用相当額の損害(請求額10万1800円)につ
いて
本件事案の内容,審理の経過及び上記

認容額等を総合考慮すると,5

000円をもって,本件訴訟に係る弁護士費用相当額の損害と認めるのが相当である。
被告は,本件訴訟が国有地低額譲渡の真相解明を求める弁護士・研究者の会の活動として公表されていることからすれば,原告が本件訴訟代理人弁護士らに対して本件訴訟の弁護士費用を現実に支出しているかは疑問であ
る旨主張するが,本件訴訟が上記活動の一環であるとしても,そうであるからといって,
本件訴訟代理人弁護士らによる訴訟追行がボランティアであり,
原告がその弁護士費用の負担を免れているということはできない。4
結論
以上によれば,原告の請求は,5万5000円及びこれに対する本件不開示決定の日である平成29年7月10日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,その限度で認容し,その余の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。大阪地方裁判所第7民事部

裁判長裁判官

松永
裁判官

森田
裁判官

石川栄治亮舞子
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