判例検索β > 平成29年(ワ)第6460号
損害賠償請求事件 商標権 民事訴訟
事件番号平成29(ワ)6460
事件名損害賠償請求事件
裁判年月日平成31年3月19日
法廷名大阪地方裁判所
裁判日:西暦2019-03-19
情報公開日2019-05-14 18:00:33
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平成31年3月19日判決言渡

同日原本受領

平成29年(ワ)第6460号

損害賠償請求事件

口頭弁論終結日

裁判所書記官

平成30年12月20日
判決原告
株式会社サンミーゴ

同訴訟代理人弁護士

阪田裕史同曾波重之被告
株式会社REGULUSJAPAN

(組織変更前の商号
同訴訟代理人弁護士

下田和宏同
Regulusjapan合同会社)

山村暢彦主文1
原告の請求を棄却する。

2
訴訟費用は原告の負担とする。

第1

実及び理由
請求

被告は,原告に対し,915万2000円及びこれに対する平成29年7月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2
事案の概要

本件は,原告が商標権を有している商標について,被告がこれと同一又は類似の標章を商標として使用したことが原告の商標権の侵害に当たると主張して,不法行為に基づく損害賠償及びこれに対する訴状送達の日(平成29年7月13日)の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求した事案である。

1
前提事実(当事者間に争いのない事実又は後掲の各証拠及び弁論の全趣旨に
より容易に認められる事実)



当事者

原告は,ネイルサロンの経営及びまつ毛エクステンション施術及び指導を業とする株式会社である。
被告は,まつ毛エクステンションサロン,ネイルサロン,エステティックサロン等の運営,管理に関わる美容一切の業務を目的とする株式会社である(平成30年8月11日付けで,Regulusjapan合同会社より組織変更)。⑵

原告の登録商標(甲1,2)

原告は,別紙登録商標目録記載の商標(以下,本件商標といい,本件商標に係る権利を本件商標権という。)の登録商標権者である。
本件商標の出願年月日は平成28年4月25日,
登録年月日は同年11月11日,
指定役務はまつ毛エクステンションの施術であり,その余の事項は別紙登録商標目録記載のとおりである。
同年12月13日,本件商標が掲載された商標公報が発行された。⑶

被告の標章使用等(甲8)

被告代表者P1の夫であるP2は,平成24年ころ,訴外株式会社ailes(以下訴外エールという。)を設立し,ゼフィールアイラッシュという名称を使用して,まつ毛エクステンションの施術を行う複数の店舗を経営していた。原告代表者及びP2は,平成25年以降,原告と訴外エールの業務提携について合意し,訴外エールがゼフィールアイラッシュの名称で行うまつ毛エクステン
ションの店舗と,原告が経営するネイルサロンの店舗の業務の提携を行ったが(平成27年1月以降の業務提携の内容については,後記のとおり争いがある。),平成28年6月ころ,これを解消した。
P2は,
同年7月11日,P1を代表者として被告を設立し,これに訴外エールの業務を承継させ,訴外エール及び被告は,前記業務提携解消後も,ゼフィールアイラッシュ東心斎橋店,ゼフィールアイラッシュなんば店,ゼフィールアイラッシュあべの店,ゼフィールアイラッシュ京橋店の名称で,まつ毛エク
ステンションを施術する店舗を経営した。
原告は,被告代理人に対し,平成29年2月2日付けの通知書(甲8)を送付して,平成28年12月20日付け書面により被告が本件商標を無断使用している旨を通知したが,回答がないため,法的措置を執らざるを得ない旨を通知した。2
争点



被告は,別紙被告標章目録記載1ないし5の標章(以下被告標章と総称
し,個別には被告標章1等という。)を使用したか。



原告による本件商標権の行使は権利濫用に当たるか。



原告の損害額

3
争点に関する当事者の主張



被告に商標法32条1項の先使用権が認められるか。

争点⑴(被告は,被告標章を使用したか。)

【原告の主張】
被告は,平成28年11月14日から平成29年5月18日までの間,被告標章1を使用して,ゼフィールアイラッシュ東心斎橋店,ゼフィールアイラッシュなんば店,ゼフィールアイラッシュあべの店,ゼフィールアイラッシュ京橋店を経営した。また,被告は,上記期間,上記各店舗におけるまつ毛エクステンション施術行為について,被告標章1,3又は5の標章を付したウェブサイトを作成し,公開して
いた。さらに,被告は,同年6月27日の時点でも,被告ウェブサイト上に,被告標章1,3ないし5の標章を使用して,ゼフィール心斎橋店,zephyrなんば店,ゼフィール東心斎橋店,ゼフィール京橋店と表示し,同ウェブサイト上のブログ記事にも,zephyreyelash,ゼフィールアイラッシュと表示していた。

【被告の主張】
被告が上記各店舗を経営したことは認めるが,その余は否認する。


争点⑵(被告に商標法32条1項の先使用権が認められるか。)
【被告の主張】

P2による被告標章1(ゼフィールアイラッシュ)の考案及び使用
P2は,
平成23年ころから,
代表を務める株式会社サロンスクワッド(以下
訴外サロンスクワッドという。)が経営する,まつ毛エクステンションの施術を行う店舗の名称として,被告標章1を考案し使用していた。また,P2は,平成24年8月28日,
訴外エールを設立し,
平成25年ころから,
訴外エールの店舗でも,
被告標章1を使用してまつ毛エクステンションの施術を行った。

被告標章1の周知性

訴外サロンスクワッド及び訴外エールは,まつ毛エクステンションの需要者の多くが利用し,大阪府内のコンビニエンスストアや主要駅に配布される紙媒体のホットペッパーというフリーペーパーや,そのウェブ版であるホットペッパービューティ,及びインターネット上の複数の予約検索サイトにおいて,多額の広告費を投じ,被告標章1を名称とする店舗に関する広告を掲載した。上記ホットペッパービューティにおいて訴外エール及び被告の店舗のページが閲覧された回数は,
平成26年以降,同種のプラン,
ジャンルの平均を大幅に上回っていた。また,
訴外エール及び被告は,大阪府内の複数の店舗に加え,兵庫県においても三宮店を経営しており,平成26年から平成28年の間,各店舗につき年間5000人から9000人の顧客が来店し,来店回数が2回以上である顧客の割合も高かった。こ
れらの店舗はいずれも繁華街にあって利便性に優れ,店舗規模としては比較的大型である。
以上より,原告が本件商標を出願した同年4月25日時点において,被告標章1は,訴外エールの経営する店舗の名称として,大阪府全域,京都府,兵庫県及び奈良県を含む関西地方において需要者に周知であった。


原告の主張について

原告は,平成27年1月に原告が訴外エールを吸収合併したので,それ以降,被
告標章1の使用の主体は原告であったと主張するが,後述のとおり,訴外エールが原告に吸収合併された事実は存しない。
被告標章1は,訴外エールがその使用を継続し,訴外エールの業務を承継した被告において,これを使用したものである。

まとめ

以上によれば,訴外エールは,原告が本件商標の出願をする以前から,不正競争の目的でなく,まつ毛エクステンションの施術という役務について,本件商標又はこれに類似する標章を使用して,需要者に周知となっていたと認められるから,訴外エールの業務を承継した被告が被告標章を使用したことは,本件商標権の侵害には当たらない。
【原告の主張】

原告による訴外エールの吸収合併の経緯

原告及び訴外エールは,平成26年中,関内店及び南森町店において,同一の店舗内で原告がネイルサロンの施術を,訴外エールがまつ毛エクステンションの施術を提供し,売上をいったん原告に集約し,経費を精算した後に利益を折半するという形態の業務提携を行っていたところ,P2が,同年末,原告代表者に対し,金融事故を起こして銀行からの借入れを行えなくなったので,訴外エールの経営する上記以外の5店舗についても原告が運営し,P2には給与を支払ってほしいと申し入れたため,原告は,平成27年1月以降,訴外エールを吸収合併した。
訴外エールが原告に吸収合併されたことは,上記2店舗に加え,あべの店,西心斎橋店,東心斎橋店,三宮店及びなんば店においても,原告が売上を集約し,経費を負担して営業利益を取得したこと,原告代表者は,同月以降,毎月のミーティングに参加するなどして上記各店舗の指揮を執ったこと,原告は,上記各店舗の運営資金を金融機関から借り入れ,P2の後記P3に対する債務や,訴外エールの債権
者に対する債務も引き受けて支払ったこと,原告は,同月から平成28年5月までの間,P2に対し,毎月約65万円の給与を支払い,P2は従業員らから常務
と呼ばれたこと,原告は,訴外エールの消費税及び訴外エールの従業員の労働保険料を納付し,訴外エールの従業員の給与を支払い,原告の出向費として申告したことからも明らかである。
以上より,平成27年1月以降,被告標章1の使用の主体は訴外エールではなく原告であったというべきである。

被告標章1には周知性がないこと

上記アのとおり,訴外エールが自己を表す商標として被告標章1を使用していたのは平成26年末までであるから,同時点における周知性を判断すべきである。被告の主張する広告の中には,被告標章1ではなくオンシジュームアイラッシュという名称を使用しているものや,
平成27年1月以降のものも含まれており,
訴外エール又は被告が業として被告標章1を使用していた時期において,被告標章1を表示する広告の閲覧数が平均を上回った月は極めて少ない。
また,被告の主張する来店顧客数には,平成27年1月以降のものが含まれている。訴外エールの各店舗がまつ毛エクステンションの施術を提供する店舗として大
型であることの根拠はなく,まつ毛エクステンションは,幅広い層に利用されるサービスであるから,被告の主張する年間5000人から9000人の来店者数は多いとはいえず,リターン率も低いことから,来店顧客数から周知性があるとはいえない。被告の主張する広告費も多額であるとはいえない。
以上より,平成28年4月時点において被告標章1に周知性があったという被告
の主張は失当であり,平成26年末時点において,被告標章1が,訴外エールの役務を表す商標として需要者に広く認識されていたと認めるに足りる主張立証はない。ウ
不正競争の目的

被告は,原告が訴外エールを吸収合併した後に,来客数が増加し業績が向上したことから,吸収合併に関する正式書面がないことを奇貨として被告標章を使用したものであり,不正競争の目的を有している。


争点⑶(原告による本件商標権の行使は権利濫用に当たるか。)
【被告の主張】

被告標章1(ゼフィールアイラッシュ)の考案及び周知性

P2がゼフィールアイラッシュの名称を考案し,平成23年ころからまつ毛エクステンションの施術を提供する店舗の名称として使用していたこと,P2の経営する訴外サロンスクワッド及び訴外エールの店舗の名称として周知性を獲得したことは,前記⑵被告の主張ア及びイで述べたとおりである。イ
原告と訴外エールとの業務提携の経緯

原告代表者とP2は,平成25年ころ,訴外エールが経営していた店舗のうち関内店及び南森町店において業務提携することについて合意し,これらの店舗において,訴外エールがまつ毛エクステンションの施術を,原告がネイルサロンの施術を提供し,両方の売上を原告名義の口座に入金して,経費を精算した後に利益を分配するという方法を採ることとしたが,さらに,原告代表者とP2は,平成27年1月ころ,上記2店舗に加え,あべの店,西心斎橋店,東心斎橋店,三宮店,なんば店においても,原告及び訴外エールが共同して事業を営み,事業の売上を全て原告
に集約し,経費を精算した後に,半期決算期に営業利益を折半する,という内容の業務提携契約を締結した。

原告と訴外エールとの業務提携の解消

原告が,前記業務提携契約に反し,訴外エールに対し営業利益の分配を行わなかったため,P2は,平成28年4月初旬,原告代表者に対し,上記業務提携契約の解消を申し入れ,同年6月末,原告と訴外エールとの業務提携関係は解消された。P2は,同年7月11日,訴外エールの業務を承継するために被告を設立し,訴外エールの代表者であったP3と被告代表者となるP1は,訴外エールのまつ毛エクステンション業務に関する一切を被告に承継する旨の合意をした。エ
本件商標の出願等

原告は,平成28年4月初旬にP2が業務提携の解消を申し入れた後である同月25日,本件商標を出願した。

原告は,本件商標の出願に際し,P2や訴外エールにその説明をせず,業務提携関係を解消した際も,原告と訴外エールとの間で,本件商標の譲渡や使用許諾についての合意はなされなかった。そのため,訴外エール及び被告は,業務提携関係解消後も,店名に,被告標章1を継続して使用していた。
また,原告は,平成27年11月ころ,サンミーゴアイラッシュという名称を用いてまつ毛エクステンションの施術を提供する店舗を開設したことはあるものの,
本件商標を自ら使用したことはなく,
平成29年2月に至るまで,
被告に対し,
本件商標の使用について異議を述べなかった。

吸収合併についての原告の主張に対する反論

原告は,平成27年1月以降,原告が訴外エールを吸収合併し,以後,被告標章1の使用の主体は原告であったと主張するが,合併契約書や被告標章1の使用又は商標を取得する権利の譲渡に関する合意書等,原告の主張を裏付ける書面はなく,合併の対価も曖昧である。原告からP2に対する毎月約70万円の送金は,業務提携の合意の際に取り決められた,P2が店頭指揮を執ることに関する業務委託料で
あって,合併の対価ではない。
また,同月以降も,訴外エールと原告の業務はあくまで独立性を有しており,それぞれの従業員は別々に業務に従事し,売上金や経費も別々に管理されていた。訴外エールの従業員に対する給与は,いったん原告から訴外エールに振り込まれ,訴外エール名義で支払われていたし,従業員の社会保険にも訴外エール名義で加入し
ていた。また,訴外エールと原告との業務提携の解消後は,訴外エールの従業員は被告に移籍し,原告においてまつ毛エクステンションの業務を継続することはなかった。
したがって,原告が訴外エールを吸収合併したという事実はない。カ
まとめ

原告は,訴外エールを吸収合併したことはなく,自ら本件商標を使用したこともないのに,P2との関係が悪化したことから,訴外エールに何の説明もなく,抜け
駆け的に本件商標の出願を行ったものであり,本件商標権の取得には不法な目的がある。
他方,訴外エールは,原告の本件商標出願の約5年前から本件商標を継続的に使用し,一般需要者に広く認識されていたのであるから,その事業を承継した被告が本件商標を使用することは,正当な行為である。
したがって,原告が被告に対し,本件商標権を行使することは,権利の濫用として許されないものというべきである。
【原告の主張】

前記⑵原告の主張アのとおり,実質的には原告が訴外エールを吸収合併した
のであり,平成27年1月以降,P2は原告の従業員にすぎなかった。原告代表者は,P2に対し平成26年7月に貸し付けた300万円の返済がなかったことや,平成27年11月ころにP2が逮捕されたこと,平成28年6月時点において合併交渉を解消することによるコストが,いったん合併した後に合併を解消するコストを下回ると判断したことなどから,同月ころ,原告の従業員に対しP
2を懲戒解雇する旨の通達(甲36)を示し,原告と訴外エールとの業務提携を解消した。

被告は,原告と訴外エールとの間で営業利益を分配する旨の合意があったと
主張するが,P2はどの事業の売上を集めるのか正確に理解しておらず,また,一度も分配がないとの主張にもかかわらず,訴外エールから原告に対して分配の請求または売上や経費についての問い合わせをしたとの主張はない。さらに,前記⑵原告の主張アのとおり,原告は多額の借入れをして運転資金を工面し,P2に対して毎月の給与を支払っていたところ,このように原告のみがリスクを負いながら営業利益を折半するという合意は不自然である。また,被告は,同年4月初旬に,原告とP2との関係が悪化したと主張するが,これを裏付ける証拠はない。

原告が本件商標登録後に本件商標を使用しなかったのは,被告が既に被告標
章を使用していたため顧客に混乱を与えることを避けたからにすぎない。そして,
原告は,合併解消に伴い店舗を分け終わってからわずか4か月後の同年12月20日,被告に対し,被告標章の使用について警告した。

以上より,被告は,原告による吸収合併により業績が向上した各店舗の利益
を不当に取得する目的で,被告標章を使用しているのであり,これに対し原告が本件商標権を行使することは正当な行為である。


争点⑷(原告の損害額)

【原告の主張】

侵害期間

被告による本件商標権の侵害期間は,本件商標が掲載された商標公報の発行日である平成28年12月13日から,少なくとも平成29年6月27日までの197日間である。

被告の売上高

被告の店舗における1店舗当たりの毎年の売上は,ゼフィールアイラッシュなんば店及びゼフィールアイラッシュ東心斎橋店における平成27年7月から平成28年6月までの売上合計から,約3848万円と推計することができる。よって,1店舗における197日間の売上は,約2077万円(38,480,000÷365×197≒20,768,658)となる。

寄与度及び損害額の合計

まつ毛エクステンション施術の利用者の多くは,予約サイトの情報を確認した上で店舗のウェブサイトにアクセスしたり,店舗名を検索して希望する施術の料金やアクセス方法等を確認したりすることから,インターネット上における標章の重要性が極めて高い。よって,被告標章の被告の売上への寄与度は10%を下ることはない。
したがって,被告が本件商標権を侵害したことにより原告に生じた損害は,1店
舗につき約208万円であり,被告が被告標章を4店舗に使用しているため,損害の合計は832万円となる。


弁護士費用

原告は,被告に対し,被告標章の使用対価を請求したが,被告から誠意のある対応は得られず,本件訴訟を提起せざるを得なくなった。その弁護士費用は,83万2000円を下らない。

まとめ

以上より,原告の被った損害額は,915万2000円である。
【被告の主張】
争う。
第3
1
当裁判所の判断
認定事実(前記前提事実,後掲の各証拠及び弁論の全趣旨により認められる
事実)


訴外サロンスクワッド及び訴外エールによる被告標章1(ゼフィールアイラッシュ)の使用及び広告の形態についてア
平成23年ころ

P2は,そよ風を意味するゼフィールと,まつ毛を意味するアイラッシュとを組み合わせてゼフィールアイラッシュという造語を考案し,平成23年11月ころ,訴外サロンスクワッドの代表者として,大阪市(中略)等に,被告標章1の名称で,まつ毛エクステンションの施術を行う店舗を開設した。また,同年8月及び12月ころ,雑誌ホットペッパービューティに,まつ毛専用サロンとしてzephyreeyelash~ゼフィールアイラッシュ~という名称を使
用した広告を掲載した(乙2,3,7,8,37,証人P2)。

平成24年から平成25年7月ころまで

P2は,まつ毛エクステンションの施術に注力するため,また,訴外サロンスクワッドが土地建物の差押えを受けるなどしたことから,平成24年8月28日,訴外サロンスクワッドの従業員であったP4を代表者として訴外エールを設立し,P4は,同年12月,被告標章1の名称で,大阪市(中略)における美容所の開設の
届出を行い,
まつ毛エクステンションの施術を行った
(乙4~6,
37,
証人P2)

訴外エールは,平成25年ころ,西心斎橋店,東心斎橋店,なんば店,南森町店及び三宮店については被告標章1を掲げて,あべの店及び横浜市の関内店については,P1が考案したオンシジュームアイラッシュの標章を掲げて宣伝広告を行い,
平成24年12月及び平成25年7月ころ,ホットペッパービューティ雑誌
において,まつ毛専用サロンとしてzephyreeyelash~ゼフィールアイラッシュ~という名称の広告を掲載した。その他にも,訴外サロンスクワッド及び訴外エールは,平成23年以降,ホットペッパービューティ等の雑誌(インターネット版及び紙媒体)に,zephyr,ゼフィールアイラッシュ,ゼフィール等の名称を使用した店舗に関する多数の広告を掲載した(乙9~11,19~24,被告代表者)。


訴外エールと原告との業務提携について


南森町店及び関内店における業務提携について

P3は,知己であるP2からの誘いに応じ,平成25年8月31日,訴外エールの代表取締役に就任した。P3は,実際の経営にはほとんど関与しなかったが,訴外エールに対し,あべの店の出店費用等として合計500万円から600万円程度の貸付けを行い,その返済を役員報酬(毎月30万円)という形で受け取るようになった。
P2は,美容業の開業支援をする過程で,ネイルサロン,ネイルスクールの事業
を営む原告代表者と知り合い,訴外エールと原告は,平成25年から平成26年にかけて業務提携の合意を行い,訴外エールの店舗のうち南森町店と関内店の2店舗につき,フロアをシェアする形で,訴外エールの従業員がゼフィールアイラッシュ(南森町店)又はオンシジュームアイラッシュ(関内店)の名称でまつ毛エクステンションの施術を,原告の従業員がシャーナネイルの名称でネイルの
施術を行うようになった。
上記南森町店及び関内店における業務提携は,クレジットカードによる売上につ
いては原告の口座に入金され,店舗入口や受付は共通であり,レジスター機も一台しかないが,現金売上についてはまつ毛エクステンションとネイルとで別々に管理した上で,売上金をすべて原告の口座に振り込み,両店舗の経費については原告が負担して,
毎月,
残余の利益を原告と訴外エールで折半するというものであった
(甲
31,乙17,37,証人P2,原告代表者,被告代表者)。

平成27年1月以降の業務提携について
業務提携の経緯等

P2と原告代表者は,平成26年夏頃から,売上を一方に統合して事業の規模を大きく見せることで,資金の調達,求人,仕入等がやりやすくなるとして,業務提携の範囲の拡大について協議し,
同年末頃までに合意をして,
平成27年1月以降,
原告と訴外エールにおける新たな業務提携を実施した。
上記業務提携の基本内容は,前記アの関内店及び南森町店に加え,訴外エールが経営するあべの店,西心斎橋店,東心斎橋店,三宮店,なんば店についても,その売上金をすべて原告に集約し,
そこから各店舗の賃料,
人件費等の経費を支出して,

6か月ごとに,残余の利益を原告と訴外エールで折半するという経理面での統合を中心とするものであり,上記関内店及び南森町店以外には,訴外エールの店舗で原告の従業員がネイルの施術をしたり,原告の店舗で訴外エールの従業員がまつ毛エクステンションの施術をしたりすることは,予定されていなかった。上記業務提携に際し,原告と訴外エールとの間において,合併契約書等の書面は
一切作成されず,それぞれの会社の登記事項も変更されなかった。また,ゼフィールアイラッシュの標章をどちらが使用するかということについての話し合いも行われなかったが,上記5店舗の店名としては,従前通り,あべの店以外においては被告標章1が名称として使用され,あべの店においてはオンシジュームアイラッシュという名称が使用された。また,訴外エールは,同年7月ころ,被告標章
1による広告の掲載を申し込んだ(甲31,乙13,37,38,証人P2,原告代表者,被告代表者)。

業務提携中の事業形態
平成27年7月から平成28年6月の期間で,訴外エールのなんば店には,毎月300万円前後の売上があり,同じく東心斎橋店には,毎月概ね280万円ないし380万円の売上があって,
平成27年1月から平成28年6月の業務提携期間中,
原告の銀行口座には,訴外エールからの現金売上分に係る送金として,毎月概ね1000万円前後の入金があった
(甲5,
6,
11。
書証は枝番を含む。
以下同じ。。

原告と訴外エールとの業務提携中,各店舗に関する資金調達や消費税の申告及び支払,採用人事及び会計処理はすべて原告代表者が行い,各店舗の賃料等も原告が負担した。また,原告は,P3に対して毎月30万円を支払うほか,関内店を開業
する際に出資したとされるP5に対しても毎月10万円を支払った。P2は,業務委託料又は報酬として原告から毎月原則として65万円を受領し,原告の常務の肩書で営業等を行ったが,役員の選任手続や登記簿上の記載はなく,P2が店舗の会計資料等を見ることもなかった。なお,P2に対する上記支払は,原告の税務会計上は広告費として処理された(甲11~13,23~31,33,証人P2,原告
代表者)。
P1は,
従前より訴外エールの従業員として広報を担当していたが,
業務提携後,
原告及び訴外エールが経営する双方の店舗の広報部長となり,広告の掲載内容や広告費の額など広報活動全般について決定し,スタッフの教育にも携わった。また,P1は,南森町店を約2か月に1回,関内店を毎月1回ほど訪問しており,まつ毛
エクステンションの業務を担当する従業員をまとめる立場にあった。P1以外に,まつ毛エクステンション業務とネイル業務の両方に携わる立場の従業員はいなかった(乙37,38,被告代表者)。
原告代表者,P2,P1は,2か月に1回,原告の経営するネイルスクールで行われる,全店舗の店長等が参加する幹部ミーティングや,各店舗において行われる
店舗ミーティングに参加していた(甲16,17,乙37,38,原告代表者,被告代表者)。

従業員の待遇及び意識
原告と訴外エールとの業務提携後に雇い入れられた従業員は,原告の社会保険に加入した。また,従前の訴外エールの従業員のうち少数の者は,業務提携後に原告の社会保険に加入したため,原告が直接給与を支払い,保険料を納付した。一方,訴外エールの従業員のうちの大多数は,国民健康保険に加入したままであり,原告が訴外エールの口座に人件費分を送金して,訴外エールが個々の従業員に支払い,原告の税務会計上は出向費として処理した。従前から訴外エールに勤務していた従業員は,業務提携後も店舗の経営等が変わらなかったことなどから,これまでと変わらず訴外エールの従業員であると認識していた(甲14,原告代表者,被告代表
者)。


訴外エールと原告との業務提携の解消について


P2による業務提携関係解消の申入れ

原告代表者は,平成27年10月ころから11月ころ,P2が特殊詐欺に関連して逮捕されたことや,P2の業績に不満があったことから,P2を解雇することを考え始めた。また,P2は,原告代表者に対し,利益の分配がないことを問い質すなどしていたが,平成28年3月ころ,原告代表者との間で,売上金の分配,従業員の給与申告等について争いが生じ,同年4月初旬,原告代表者に対し,訴外エールと原告との業務提携関係を解消したい旨伝えた(甲31,乙37,証人P2,原告代表者)。


原告による本件商標の出願

原告は,業務提携の開始後,平成27年11月に設立した横浜店において,サンミーゴアイラッシュの名義でまつ毛エクステンションの施術を行い,平成28年4月に(中略)に新たに設立した原告の店舗において,アイラッシュプラザの名称でまつ毛エクステンションの施術を行うにとどまり,原告のみが関与する店舗で本件商標を使用した事実は存しなかったにもかかわらず,訴外エール又はP2に特段の説明をすることもなく,同月25日,本件商標の出願を行った。

業務提携関係の終了

訴外エールと原告とは,同年6月ころ,業務提携関係を解消することとし,原告代表者は,同月25日付けで,原告の従業員宛ての通達【重要】という文書(甲36)を発出し,その中にP2を懲戒解雇したことを記載した。
従前から訴外エールに勤務していた従業員の多くが,P4やP1と共に訴外エールに残る姿勢を示したことから,P2は,同年7月11日,被告を設立して従業員の信頼の厚いP1を代表者とし,訴外エールの店舗,営業,従業員を承継した。業務提携関係の解消に伴い,関内店については原告が,南森町店については訴外エールが退去することとなったが,協議の結果,被告は,なお2か月間南森町店で
の営業を続けることとなり,同年8月まで,被告標章1の名称で,同店でまつ毛エクステンションの施術を行った。業務提携の解消後は,訴外エールの売上を原告の口座に送金することはなくなり,同年9月以降,訴外エール又は被告の従業員が,原告の従業員と同一の店舗で業務することはなくなった。
業務提携を解消する際,訴外エールと原告との間において,被告標章1又は本件
商標を,
今後どちらが使用するかについての協議や合意はなされなかった
(甲31,
乙37,証人P2,原告代表者)。


原告及び被告の標章の使用


被告による使用

訴外エール及び被告は,業務提携の解消後も,従前と同様,被告標章1を使用して,まつ毛エクステンションの業務を続けた。
被告は,平成29年10月ころ,まつ毛エクステンションの情報サイトにおいてゼフィールアイラッシュという名称を使用し,平成30年ころには,被告のウェブサイトのブログに,
zephyreyelash<ゼフィールアイラッシュ>あべの店(旧oncidiumeyelashあべの店)等の記載をした(甲22,乙12,14,15,
37,証人P2,原告代表者)。

原告による使用

原告が,業務提携解消以前より,サンミーゴアイラッシュあるいはアイラッシュプラザの名称を使用してまつ毛エクステンションの施術を行っていたことは前述のとおりであるが,原告が,訴外エールと無関係に,まつ毛エクステンションの業務に,本件商標を使用したことはない(証人P2,原告代表者)。⑸

原告の被告に対する警告

原告は,平成28年12月20日付け書面で,被告が本件商標を無断で使用していることを指摘し,平成29年2月2日付けの通知書(甲8)において,被告に対し,法的措置をとる旨を通知した。
2
争点⑴(被告は,被告標章を使用したか。)について


店舗名としての使用

被告が,平成28年7月に訴外エールの事業を承継した後,被告標章1(ゼフィールアイラッシュ)を,まつ毛エクステンション施術を目的とする店舗の名称として使用したことは前記1で述べたとおりである。

ウェブサイトにおける使用

被告は,平成28年11月4日から平成29年5月18日までの間,被告のウェブサイト上において,被告標章3(zephyreeyelash)を,被告の経営する店の名称の一部として使用したこと,同年6月27日の時点で,被告のウェブサイト上において,被告標章1,4(ゼフィール),5(zephyre)を,被告の経営する店の名称の一部として使用したことが認められる(甲3,4)。



上記⑴及び⑵の各標章が,いずれも,本件商標と同一又は類似であることに
ついて,被告は明らかに争わない。


したがって,被告は,本件商標と同一又は類似である,被告標章1,3ない
し5を使用したものと認められる。
3
争点⑶(原告による本件商標権の行使は権利濫用に当たるか。)について


事案に鑑み,権利濫用の抗弁についてまず判断することとする。



業務提携の性質について


原告が訴外エールを吸収合併したとの主張について

前記前提事実及び認定事実によれば,原告と訴外エールは,平成26年4月ころから訴外エールが経営していた南森町店及び関内店において,平成27年1月以降は訴外エールが経営していた他の5店舗においても,業務提携を行ったことが認められる。
原告は,
後段の業務提携について,
原告が訴外エールを吸収合併したと主張する。
しかし,原告と訴外エールとの間において,これを裏付ける吸収合併契約書等の文書は作成されておらず,登記上も両会社の組織に変更は生じていない。また,前記1で認定した通り,本件においては,業務提携中も,訴外エールの従
業員が原告の業務であるネイルの施術に関与することはなく,原告の従業員が訴外エールの店舗におけるまつ毛エクステンションの施術に関与することはなかったこと,フロアを共有する南森町店及び関内店を含め,訴外エールの店舗の現金売上は別途管理され,訴外エールの名義で原告の口座に振り込まれていたこと,従前からの訴外エールの従業員は,業務提携後も,社会保険の適用で原告の従業員とは異な
る扱いを受け,給与も,原告が訴外エールにまとめて交付した金員の中から,訴外エールより支給されていたこと,P2は,原告から,同月以降,毎月約65万円を受領していたが,これは,税務会計上,原告の広告費として処理されており,訴外エールの吸収合併の対価と解し得るものではないこと,以上の事実が認められるのであり,これらの事実及び冒頭で指摘した手続不存在の点を総合すると,同月以降
の業務提携により,原告が訴外エールを吸収合併したと解することはできず,あくまでも訴外エールと原告は,企業としての独立性を保ったまま,営業上の連携や経済面での統合を図ったに過ぎないと解するのが相当である。

業務提携解消の経緯について

被告は,同月以降の業務提携について,売上を原告に統合し,原告が経費を負担した後に利益が残れば,それを訴外エール又はP2に分配する合意があったのに,原告がこれを実行しないことに不満を持ったP2が,平成28年4月に業務提携の
解消を言い出したと主張するのに,原告は,利益を分配する合意自体の存在を否定し,
同年6月に原告がP2を解雇したことによって業務提携は解消したと主張する。しかしながら,前記アで述べたとおり,平成27年1月以降の業務提携は,訴外エールと原告が,企業としての独立を保ったまま経理の統合等を図るものであるから,経費等を控除して利益が残存する場合に,これを原告のみが取得して,P2が毎月支給されていた金員以外には,訴外エール側に一切分配しないとすることが予定されていたと解することは不合理であり,この点についての原告代表者の陳述書(甲31)及び供述は採用できない。
そうすると,前記1⑶の通り,売上金の分配等に不満を持ったP2が,平成28
年4月初旬に,業務提携の解消を申し入れたと認定するのが相当である。ウ
標章の使用について

前記アで述べたとおり,平成27年1月以降業務提携が行われた後も,訴外エールは企業としての独立を保っていたと認められるから,店舗の名称として被告標章1を使用した主体は,訴外エールであったと認めるのが相当であり,その使用の主体は原告であったとする原告の主張は採用できない。
他方,原告の主たる事業はネイルサロン,ネイルスクールの経営であり,業務提携開始後にまつげエクステンションの施術を行った際も,サンミーゴアイラッシュ,アイラッシュプラザを店名として使用しており,本件商標を使用したことがないことは,前記認定の通りである。


検討

原告が,本件商標出願の際に,訴外エールにこれを説明した等の事実のないことは前記1の認定のとおりであり,前記イで述べたところによれば,原告は,P2が訴外エールと原告との業務提携の解消を申し出た後に,本件商標の出願を行ったことになるが,その時点で業務提携の解消が確定していたわけではなく,仮に経営又は企業としての統合が進めば,原告の商標として保護すべき状況が生じた可能性もあったといえるから,本件商標の出願について,直ちに不法の目的をもってしたと
断定することはできない。
しかしながら,これまで述べた通り,訴外エールと原告は,それぞれが独立した企業として事業を営み,訴外エールは自らの店舗の名称として被告標章1を使用する一方で,本件商標を使用したことのない原告がこれを出願することが許容されるとすれば,原告と訴外エールとの業務提携関係の存続に根拠を求めざるを得ず,逆に,業務提携が解消された場合には,それぞれが従前の状態に復するだけであり,特段の協議も合意もないのに,原告が自らの名で出願したとの一事をもって,原告が本件商標の使用を独占し,訴外エールが,それまで使用していた被告標章を使用できなくなるといったことはおよそ予定されていなかったというべきであり,訴外
エールの業務を承継した被告についても同様である。
以上検討したことに加え,前記1で認定したところによれば,本件においては,業務提携の解消時に,原告が,訴外エール,P2又はP1に対し,本件商標出願の事実を指摘して,被告標章の扱いについて協議した等の事実が存しないこと,被告は,訴外エールの事業を承継した後,原告の従業員のいる南森町店で,平成28年
8月まで被告標章1を使用し,その後も他の店舗の名称としてこれを使用したが,同年12月あるいは平成29年2月以前に,原告がこれに異議を述べた事実が存しないこと,以上の点を指摘することができるのであり,これらを総合すると,原告が被告に対し,被告標章の使用について,本件商標権に基づく権利行使をすることは,権利の濫用に当たり許されないというべきである。

4
結論

以上によれば,その余の点について検討するまでもなく,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。

大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官
谷有恒
裁判官
野上誠一島村陽子
裁判官

(別紙)
登録商標目録
登録番号
出願年月日

平成28年4月25日

登録日

平成28年11月11日

商標

5896514号

ゼフィールアイラッシュ
(標準文字)

商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務

第44類
まつ毛エクステンションの施術
以上

(別紙)
被告標章目録

1
ゼフィールアイラッシュ

2
アイラッシュゼフィール

3
zephyr

4
ゼフィール

5
zephyr

eyelash

以上

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