判例検索β > 平成29年(ネ)第14号
事件番号平成29(ネ)14
裁判年月日平成31年4月16日
法廷名福岡高等裁判所  那覇支部
原審裁判所名那覇地方裁判所  沖縄支部
原審事件番号平成24(ワ)121
裁判日:西暦2019-04-16
情報公開日2019-05-28 12:00:13
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主文1
原判決を次のとおり変更する。

2
本件各訴えのうち次の部分をいずれも却下する。
別紙原告目録4記載の原告らの普天間飛行場(FAC6051)提供協定の違憲無効確認請求及び同原告らの居住地域への騒音の到達を放置していることの違憲確認請求に係る部分
原告らの平成30年9月28日以降に生ずべき損害の賠償請求に係る部分

3
被告は,別紙居住移転経過一覧表別紙1,居住移転経過一覧表別紙2及び居住移転経過一覧表別紙3の各損害額合計欄に記載のある原告らに対し,同欄記載の各金員及び同各別紙の同原告らに対応する始期欄記載の日から終期記載の日までの間の暦上の月ごとに,1
月当たり各対応する単位損害賠償額欄記載の額の割合の金員に対する当該月の翌月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4
別紙原告目録4記載の原告らの同原告らの居住地域への騒音の到達の差止請求並びに原告らの平成30年9月27日までに生じた損害の賠償請求に係る主位的請求及びその余の予備的請求をいずれも棄却する。

5
訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを6分し,その5を原告らの負担とし,その余を被告の負担とする。

6
この判決は,3項に限り,本判決が被告に送達された日から14日を経過したときは,仮に執行することができる。

第1章
第1
1実及び理由
当事者の求めた裁判
原告らの控訴の趣旨
原判決中原告ら敗訴部分(ただし,別紙原告目録4記載の原告ら(以下差止等請求原告らという。)以外の原告らにつき原判決主文2項に係る部分及
び同原告らの居住地域への騒音の到達の差止請求を棄却した部分を除く。また,
原告ら全員につき後記4から6において支払を求める金員以外の金員の支払を求める部分を除く。)を取り消す。
2
被告は,差止等請求原告らのために,
差止等請求原告らの居住地域に,毎日午後7時から翌日午前7時までの間において,普天間飛行場(FAC6051)の使用によって生じる40dBを超える一切の騒音を到達させてはならない。
差止等請求原告らの居住地域に,毎日午前7時から午後7時までの間において,普天間飛行場(FAC6051)の使用によって生じる65dBを超える一切の騒音を到達させてはならない。

3(主位的請求)
差止等請求原告らと被告との間において,被告がアメリカ合衆国との間で1972年5月15日に締結した普天間飛行場(FAC6051)提供協定は違憲無効であることを確認する。
(予備的請求)
差止等請求原告らと被告との間において,被告が,普天間飛行場(FAC6051)において,前記2

における各騒音レ

ベルを超える騒音が差止等請求原告らの居住地域に到達している状態を放置している行為が違憲であることを確認する。
4
被告は,原判決別紙居住移転経過一覧表別紙1,居住移転経過一覧表別紙2及び居住移転経過一覧表別紙3の認容原告欄に○の記載のある原告らに対し,同各別紙の同原告らに対応する始期欄記載の日から終期欄記載の日までの間,暦上の月ごとに,1か月当たり各対応する単位損害賠償額欄記載の額の1.5倍の割合による金員及びこれらに対する当該月の翌月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5
被告は,別紙原告目録1中原告番号3123から3125までの原告ら及び
別紙原告目録3記載の原告らに対し,
原判決別紙
居住移転経過一覧表別紙1
の同原告らに対応する始期欄記載の日から終期欄記載の日までの間(前記4に該当する期間を除く。),暦上の月ごとに,1か月当たり1万1550円の割合による金員及びこれらに対する当該月の翌月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
6
被告は,原告ら(ただし,原告A252(原告番号252),原告A2068-1(原告番号2068-1),原告A2068-2(原告番号2068-2)及び原告A2068-3(原告番号2068-3)並びに原判決別紙居住移転経過一覧表別紙1の死亡日欄に記載がある者を除く。)に対し,平成28年3月25日から平成31年9月27日までの間,暦上の月ごとに,1か月当たり2万1450円の割合による金員及びこれに対する当該月の翌月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2

被告の控訴の趣旨

1
原判決中被告敗訴部分を取り消す。

2
上記取消部分に係る原告らの請求をいずれも棄却する。

第2章
第1
1
事案の概要(略称は特に記載したもののほかは原判決のものを用いる。)本件訴訟の経過
請求の要旨
本件は,本件飛行場の周辺に居住し若しくは居住していた者,又はその相続
人である原告らが,本件飛行場において離着陸する合衆国軍隊の航空機の発する騒音及び低周波音等により健康被害を受けていると主張して,日米安保条約及び日米地位協定に基づいてアメリカ合衆国に本件飛行場を提供している被告に対し,①私法上の人格権に基づき,原告ら(ただし,原告A252(原告番号252),原告A2068-1(原告番号2068-1),原告A2068-2(原告番号2068-2)及び原告A2068-3(原告番号2068-3)を除く。)の居住地域に,毎日午後7時から翌日午前7時までの間におけ
る本件飛行場の使用によって生じる40dBを超える騒音到達禁止及び毎日午前7時から午後7時までの間において本件飛行場の使用によって生じる65dBを超える騒音到達禁止を求める差止請求,②被告がアメリカ合衆国との間で本件飛行場の提供協定を締結して本件飛行場を提供し,原告らを航空機騒音に曝している行為が憲法上保障される原告らの人格権としての平穏生活権(憲法13条)及び裁判を受ける権利(憲法32条)を侵害していると主張して,主位的には上記協定が違憲無効であることの確認を,予備的にはそのような騒音が原告ら(ただし,原告A252(原告番号252),原告A2068-1(原告番号2068-1),原告A2068-2(原告番号2068-2)及び原告A2068-3(原告番号2068-3)を除く。)に到達している状態を放置している不作為が違憲であることの確認を求める請求,③主位的に国賠法2条1項に基づき,予備的に民特法2条に基づき,原告らに対する原判決別紙居住移転経過一覧表別紙1,居住移転経過一覧表別紙2及び居住移転経過一覧表別紙3の各原告らに対応する始期欄記載の日から終期欄記載の日までの間の1か月当たり3万4500円の割合による金員(ただし,
原告A2068-1(原告番号2068-1),原告A2068-2(原告番号2068-2)及び原告A2068-3(原告番号2068-3)については1か月当たり1万1550円の割合による金員)による過去の分の損害賠償金及びこれに対する暦上の月ごとに翌月1日から各支払済みまでの民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払並びに原告ら
(ただし,
原告A252
(原
告番号252),原告A2068-1(原告番号2068-1),原告A2068-2(原告番号2068-2)及び原告A2068-3(原告番号2068-3)を除く。)に対する,口頭弁論終結の日から1年間,暦上の月ごとに1か月当たり3万4500円の将来の損害賠償金及びこれに対する当該月の翌月1日から各支払済みまでの民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求をそれぞれした事案である。

2
原判決の要旨
原審は,本件訴えのうち,

前記②に係る部分

前記③のうち原

審口頭弁論終結の日の翌日である平成28年3月25日以降に生ずべき損害の賠償請求に係る部分を却下し,原告らのその余の前記1の請求のうち,①の請求を棄却し,

前記

前記③のうち予備的請求に基づき同月24日までに生じ
たとする過去の損害賠償請求中,本件コンター内に居住し又は居住していた原告らについてのみ,当該期間につき,本件コンターのW値ごとに分けて,W75区域については1か月当たり7000円,W80区域については1か月当たり1万3000円を基準として慰謝料額を認定し,これを基準とした慰謝料及び弁護士費用の限度で損害賠償請求を認容し,原告らのその余の請求をいずれも棄却した。
3
原判決に対する控訴
差止等請求原告ら

した。
したがって,当審における審判の対象は次のとおりである。

差止等請求原告らにおいて,前記1①及び②の請求(第1章の第1の2及び3)


前記1③のうち,原判決別紙居住移転経過一覧表別紙1,居住移転経過一覧表別紙2及び居住移転経過一覧表別紙3の認容原告欄に

の記載のある原告らにつき,
同各別紙の同原告らに対応する
始期欄記載の日から終期欄記載の日までの間,暦上の月ごとに,1か月当たり各対応する単位損害賠償額欄記載の額の1.5倍の割合による過去(平成28年3月24日まで)の損害賠償請求(第1章の第1の4)

前記1③のうち,別紙原告目録1中原告番号3123から3125まで
の原告ら及び別紙原告目録3記載の原告らにつき,原判決別紙居住移転経過一覧表別紙1の同原告らに対応する始期欄記載の日から終期欄記載の日までの間(前記イに該当する期間を除く。),暦上の月ごとに,1か月当たり1万1550円の割合による過去(平成28年3月24日まで)の損害賠償請求(第1章の第1の5)

前記1③のうち,原告A252(原告番号252),原告A2068-1(原告番号2068-1),原告A2068-2(原告番号2068-2)及び原告A2068-3(原告番号2068-3)並びに原判決別紙居住移転経過一覧表別紙1の死亡日欄に記載がある者を除く原告
らにおいて,平成28年3月25日から平成31年9月27日(当審口頭弁論終結の日の1年後の日)の間に生ずるとする1か月当たり2万1450円の割合による過去及び将来の損害賠償請求(第1章の第1の6)
4
当裁判所の判断の要旨
当裁判所は,本件訴えのうち,差止等請求原告らの前記1②に係る部分(前及び原告らの当審口頭弁論終結の日の翌日である平成30年
9月28日以降に生ずべき損害の賠償請求に係る部分


却下し,原告らのその余の請求のうち,差止め等請求原告らの前記1①の請求を棄却し,

エにつき,民特法2条に基づ

き同月27日までに生じたとする過去の損害賠償請求中,本件コンター区域内に居住し若しくは居住していた原告ら又はその承継人である原告らについてのみ,当該期間につき,本件コンターのW値ごとに分けて,W75区域については1か月当たり4500円,W80区域については1か月当たり9000円を基準として慰謝料及び弁護士費用を認め,原告らのその余の請求をいずれも棄却すべきものと判断する。
第2

前提となる事実,原告らの主張の要旨及び被告の主張の要旨等
次のとおり訂正し,後記第3のとおり当審における当事者の追加的・補充的
主張の要旨を付加するほかは,原判決の事実及び理由第2章の第2から第4のとおり

また第3の3及び4

はいずれも差止等請求原告らの主張である。)であるから,これを引用する。なお,本判決では,原判決の別紙のうち本判決に同名で添付された別紙については,本判決のとおり改めている。
1
原判決7頁17行目の那覇地方裁判所沖縄支部を当庁と改める。

2
原判決15頁13行目から同14行目にかけての別紙「居住移転経過一覧表別紙1及び居住移転経過一覧表別紙2」を別紙「居住移転経過一覧表別紙1居住移転経過一覧表別紙2,
及び
居住移転経過一覧表別紙3

と改める。

3
原判決15頁15行目のとおりであるを

とおりである(ただし,原告番号457から460まで及び1806番から1811番までの者については,住宅防音工事の有無につき争いがある。)

と改める。
4
原判決16頁24行目のとおりであるの次に(争いのない事実,弁論の全趣旨)を加える。
5
原判決16頁24行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。
9原告らの相続関係別紙「居住移転経過一覧表別紙1記載の原告のうち,各原告氏名欄に被承継人として記載され,各死亡日欄に記載のある原告らは,各死亡日欄記載の日に死亡し,各原告氏名欄に承継人として記載の
ある原告らが,各相続分欄記載のとおり(同欄に記載のない者については全部)相続した(弁論の全趣旨)。」

6
原判決76頁5行目の3か年を5か年と改める。

7
原判決76頁26行目の25年度を27年度と改める。

8
原判決77頁1行目の74.2を72.8と改める。

9
原判決77頁7行目の平成25年度を平成27年度と改める。

第3
1
当審における当事者の追加的・補充的主張の要旨
差止請求についての差止等請求原告らの追加的・補充的主張
沖縄県の本土復帰当時,本件飛行場は,既に合衆国軍隊の東アジア地域における重要な基地として機能しており,航空機による爆音は社会問題化し,墜落事故も相次いでいた。本件飛行場の欠陥は,合衆国軍隊の運用のみにあるのではなく,その用途に比して,面積が狭隘で,住宅に近すぎる点にあるところ,被告は,かかる欠陥を十分に承知しながら,合衆国軍隊に対し,飛行場を用途として,特に爆音を防止するための取決めを行うことなく,本件飛行場を提供し,また思いやり予算を提供している。そうすると,本件飛行場の提供は合衆国軍隊による爆音被害の不可欠の前提をなすのであって,被告は,差止等請求原告らの人格権を合衆国軍隊と共同して侵害する者に該当するから,当然に爆音の差止義務を負う。
差止等請求原告らは,単に主観的な健康に関する不安という精神的な被害を被っているにとどまらず,健康被害が現に発生し又は少なくとも現状を放置すれば健康被害が発生するという状態に置かれているのであって,健康を害されずに平穏に生活する権利又は身体権に接続した平穏生活権が侵害されているといえる。したがって,生命,身体に対する被害を防ぐという予防的見地からも差止請求が認められるべきである。

2
憲法上の請求についての差止等請求原告らの追加的・補充的主張
差止等請求原告らは,①合衆国軍隊による爆音が差止等請求原告らの平穏生活権,環境権,平和的生存権を侵害しているにもかかわらず,被告が何らの被害救済措置を採らずに,これを放置,黙認する行為は,差止等請求原告らの基本権としての人格権を違法に侵害するものであること,②被告が,合衆国軍隊が違法な行為を行ったときに,日本政府がその違法行為をどのように是正させるかについて明確な定めが置かれていないという不備のある地位協定を締結したこと,及び③地位協定締結後,不備のある地位協定を黙認・
放置する被告の不作為により,差止等請求原告らの実効的権利救済請求権としての裁判を受ける権利を侵害し続けていることなどを主張している。上記主張を前提とする限り,差止等請求原告らと被告との間には,被告による差止等請求原告らの権利侵害という具体的な法的紛争が存するから,差止等請求原告らの主位的請求に係る訴えは法律上の争訟に該当する。
また,本件飛行場提供協定が違憲無効となれば,本件飛行場はその存在根拠を失い存在し得なくなるから,差止等請求原告らの人格権侵害に対する救済となるし,被告は,少なくとも差止等請求原告らの裁判を受ける権利を保障する形で日米地位協定を改定する憲法上の義務(憲法99条)を負うことから,差止等請求原告らの裁判を受ける権利の侵害に対する救済ともなる。そして,差止等請求原告らが加害者である合衆国軍隊に給付訴訟をし得ない状態にあることも踏まえると,主位的請求は,差止等請求原告らの権利救済のために最も適切なものであって,他の手段は存在しない。したがって,主位的請求に係る訴えには確認の利益がある。
差止等請求原告らの予備的請求に係る訴えは,被告が憲法の保障する基本権(人格権,裁判を受ける権利等)を侵害しない憲法上の義務及びこれを保障する憲法上の義務を負うことを前提に,被告が上記各義務を怠っていることが違憲であることの確認を求めるというものであるから,被告が憲法上の義務の不履行をしているという現在の法的関係の確認を求めるものである。また,それ以上に,被告に対し,何らかの具体的な救済措置を採るべきことを求めているものではないから,
請求として特定されていないとはいえない。
3
損害賠償請求についての当事者の追加的・補充的主張
生活妨害について
(原告らの主張)
原判決の認定した被害のほかに,航空機騒音により会話や電話聴取等が妨害され,言葉が伝わらないことによるイライラ感が人間関係を悪化させるこ
とがあるし,経済的取引の機会を喪失することもある。また,人間らしい生活を送るといった人格の中核をなす権利が侵害されている。さらに,生活の質も低下している。
沖縄県健康影響調査によれば,本件飛行場付近のW75未満の地域に居住する者についても,嘉手納飛行場周辺のW80以上地域と同程度に,うるささの回答率の上昇が見られるほか(甲D1,3-4頁,図3-2),被害感につき耐え難い被害を受けている及び非常に被害を受けているとの回答率が存する(甲D1,3-9頁,図3-8)から,これらの者もW75以上の地域に居住する者と同程度の被害を受けている。
(被告の主張)
航空機騒音が作業や学習に与える影響については,各種調査,研究によっても必ずしも明確な結果は得られておらず,その影響が体系的かつ具体的に明らかにされているものとはいい難い上に,当該作業の性質や作業者の心理状態といった個々的な要因のみならず,航空機騒音に対する慣れによっても左右される可能性があることから,その影響の有無や程度について最低限共通する範囲を認定することはできない。沖縄県健康影響調査によっても,作業妨害及び思考妨害について,いつもあると回答した者は,本件飛行場周辺のW値75地域及びW値80地域のいずれも1割未満にとどまり,しかもW値との相関関係も認められないのであって(甲D1,3-14),原告らに共通する性質のものとはいえない。したがって,作業や学習に対する妨害を共通損害ということはできない。
精神的被害について
(被告の主張)
うるささの反応は,個人に関係する種々の社会的及び心理的要因により大きく影響されることから,一般に音が騒音として感受されるきっかけについては個人差が大きく,主観的なものであるだけに,それが認められたとして
も,
直ちに法的に保護されるべき利益の侵害に該当するとはいえない。また,
航空機騒音を受容するか否か,すなわち,どの程度を受忍限度と捉えるかについては,個々人の意識に左右されるものであるから,個々人の受容意識を排除して,一律に共通損害となるとはいえない。
睡眠妨害について
(原告らの主張)
沖縄県健康影響調査の結果によれば,睡眠に関し,本件飛行場付近のW75未満の地域に居住する者につき,週に何日も妨害される又は週1,2回妨害されるとの回答をする者が多く,また,嘉手納飛行場付近のW80以上の地域と比較しても,上記内容の回答をする者の割合が高いことに加え,自覚のない睡眠妨害も存することも併せ考えると,本件飛行場付近のW75未満地域に居住する原告らについても睡眠妨害が存するというべきである。
(被告の主張)
どの程度の騒音であれば人の睡眠を妨げるものであるかを判定する確たる証拠は存在せず,特に屋外において発生した騒音が人の睡眠にいかなる影響を及ぼすかという点については,
客観的な根拠が何ら存しないこと,
一般に,
音が騒音として感受されるきっかけについては個人差が大きく,音の物量だけで説明できるものではない上,
ストレス反応も個々人によって異なること,
睡眠は,
その時間や深さにおいて,
本来的に個人差が顕著であることに加え,
客観的には眠っているにもかかわらず不眠を訴える者がいたり,騒音への慣れによる影響の緩和も生じたりする反面,人によっては,時計の音や波の音等も慣れない間は睡眠妨害の原因となり得ることからして,睡眠妨害は,その性質上共通損害となり得ない。
また,住宅防音工事が実施されている住宅については,その屋内においては,少なくとも20dB以上の遮音効果があり,少なくとも住宅防音工事が
実施されている住民の大半が夜間に始終窓を開けて就寝しているとは考え難いことからしても,睡眠妨害が共通損害となるとはいえない。
聴覚障害について
(原告らの主張)
沖縄県健康影響調査における嘉手納飛行場周辺に居住する住民を対象とする航空機騒音の曝露による聴力への影響についての調査の結果に照らすと,本件飛行場周辺においても,嘉手納基地周辺と同様に騒音性聴力損失の被害が既に発生しているか,
又は近い将来において発生する危険性が極めて高い。
また,本件コンターは線引きに誤りがあり,W値が2.5低く見積もられているため,本件飛行場付近のW80の地域は,実際にはW82.4から87.4として把握する必要があるから,本件飛行場が嘉手納飛行場に比して告示コンター上低曝露地域であることをもって,本件飛行場周辺で騒音性聴力損失は発生し得ないとの結論を導くことはできない。さらに,原告らのうち64%が耳鳴りを訴え,42%が難聴を訴えている。
これらに照らすと,聴覚障害は,原告らの共通の被害に当たるというべきである。
高血圧症の罹患率の上昇について
(被告の主張)
血圧は様々な要因で変動し,一時的な血圧上昇は,誰にでもあることから,血圧上昇のリスクのある環境に置かれることが賠償義務を負うべき損害とはいえない。また,高血圧については,原因が様々であり,一般的にみられる症状であるから,仮に,航空機騒音に曝露された者の中に高血圧の症状を示す者がいるとしても,そのことによって,航空機騒音と高血圧の因果関係を認めることはできず,航空機騒音に曝される環境が,高血圧症のリスクがあるものと評価されるわけではない。さらに,成田国際空港航空機騒音健康影響調査二次調査報告書[概要版](乙D48)によれば,身体的影響と
騒音曝露量との間に明確な関連性は認められず,高血圧症,高脂血症の治療歴・通院歴や血圧と騒音曝露量との間にも明確な関連性が認められなかったと結論付けられているし,この結論は運輸省航空局等の空港周辺住民健康調査(乙D51)からも裏付けられる。
したがって,血圧の上昇及び高血圧症状の発症のリスクが高まっているということはできないし,原告らが当該リスクに対する不安感を抱いていることを裏付ける的確な証拠も存在しないから,当該リスクに対する心理的,精神的負担が原告らの共通損害となるともいえない。
虚血性心疾患のリスクの上昇について
(原告らの主張)
WHO騒音環境ガイドライン及び欧州夜間騒音ガイドラインのいずれにおいても,騒音環境曝露と心疾患との関連性があることは認められている。また,岸川洋紀らの研究(甲D30)は,疫学的観点から,騒音曝露と虚血性心疾患の因果関係の有無を判断するものであって,これら研究結果からも,原告らに虚血性心疾患発症のリスクがあることが裏付けられる。
そして,原告らが長期間騒音曝露地域で居住生活していることからすれば,そのような地域で居住生活していない者と比較して明らかに騒音曝露量は多く,また,これによって失われている睡眠の時間も多い。実際に沖縄県健康影響調査においても睡眠妨害は週1,2回以上と答える者が相当数存在しているのであって,原告らの訴えからもその深刻な被害実態が窺えるのみならず,航空機騒音の測定結果からも裏付けられている。B証人も,騒音曝露と虚血性心疾患発症の影響経路について証言している。
以上によれば,虚血性心疾患発症のリスクは,原告らにも現実に生じ得る被害であるといえる。
精神疾患の発症の危険性について
(原告らの主張)

科学的に信頼性が高いというべきTHI調査の結果でも,神経質の尺度で,0.1%以下の有意確率という極めて高い有意性で騒音曝露量との関連性が認められていること,THI調査の結果と符合する多くの調査研究が多数存在しているほか(甲D1,6-28頁以下,甲D62),低周波音による精神疾患の発症を裏付ける研究も存在していること(甲D60),WHOガイドライン(甲E12)は,睡眠妨害の二次影響としては,不眠感,疲労感,憂うつ,作業能率の低下といったものがあるとした上で(同4頁),精神安定剤や睡眠薬の使用状況,神経症症状,精神病院への入院率などを調査した研究結果は,環境騒音が精神的健康に影響を及ぼしている可能性を示唆していると指摘している(同5頁)ほか,欧州WHOの欧州夜間騒音ガイドライン(甲E10)では,夜間騒音曝露が不眠症の原因となることを示す十分な知見がある夜間騒音がうつ,その他精神的な疾患といった病状を引き起こすという限定的な知見があるとしていることに照らすと,航空機騒音による睡眠妨害による精神疾患の発症の危険性が原告らに共通する被害に当たるというべきである。
その他の身体的被害について
(原告らの主張)
THI調査の科学的信頼性は高いというべきであり,このことはTHI調査の結果と符合する多くの調査研究が存在することからも裏付けられる。加えて,沖縄県健康影響調査の呼吸器に関するオッズ比について,有意確率が20%台という低い水準にある以上,通常人の判断能力及び判断基準に照らして,呼吸器への悪影響の蓋然性は十分に認められるというべきである。また,心身症傾向の判別得点とW値との間に量反応関係が存在することはうかがえる。したがって,航空機騒音が呼吸器への影響や心身症傾向をもたらすというべきである。
低出生体重児の増加について

(原告らの主張)
訴訟上の因果関係の立証は,一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく,経験上の高度の蓋然性が証明されれば足り,通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることが必要であり,かつこれで足りるとされているところ,沖縄県健康影響調査の結果及び騒音曝露量と低出生体重児の出生率の増加の因果関係を肯定する文献等によれば,上記の意味での因果関係が立証されているというべきである。原判決は,因果関係の立証に当たり,自然科学的証明までを要求したことにより誤った結論を導いている。
子どもの日常生活への影響(幼児問題行動の多発・学童の長期記憶力の低下)について
(原告らの主張)

航空機騒音による幼児問題行動の多発や学童の記憶力低下といった被害は,子どもを有しない原告らや自らが子どもでない原告らにも共通に存在する被害というべきである。


沖縄県健康影響調査の結果によっても,本件飛行場付近に関し,感冒症状,食事課題及び消極的傾向について明確に有意確率を示していること,トレンド検定の結果,身体体質的関係,対騒音反応保有数の有意確率が0.05(=5%)よりも小さく,WECPNLと各問題行動保有数のオッズ比の増加との間に有意な量反応関係が認められたほか,性格関係についても,有意確率が0.09(=9%)という相当小さい数字になっており,航空機騒音の影響があると考えられること,大人を対象にしたTHI調査においても,呼吸器についてオッズ比の上昇傾向が見られ,子どもを対象にした幼児問題行動の調査において,感冒症状についてオッズ比の上昇が有意であったということと符合していること,沖縄県健康影響調査において,慎重に統計的検定を行なってデータの解析を行った結果,航空機
騒音と幼児問題行動の多発との間に有意な関連が示されたのであるから,その科学的手法について特段の疑念が存在しない以上,法的な因果関係を否定することはできないことから,幼児問題行動の多発について共通の被害というべきである。

睡眠時間の長短が海馬(記憶をつかさどる器官)の体積に影響を及ぼすという近時の調査結果(甲D71,72)や,低周波成分を多く含む騒音に曝露された子ども(7~10歳)についての横断的研究によって,騒音の中の低周波成分の最大音圧と,夜の前半にサンプリングされた尿中コルチゾールの間に有意な関連が見出されている(甲D60,3頁)ことからして,航空機騒音により学童の長期記憶力の低下が生じているといえる。低周波音による被害について

(原告らの主張)
騒音に低周波音が加わることでより影響が増大するのであり,このことはWHOのガイドライン等でも指摘されている。そうすると,低周波音による心理的影響や睡眠への影響の被害は,騒音による被害に吸収されるものではなく,むしろ増大している。また,低周波音曝露により生理的影響が生じることもWHOガイドラインで指摘されているとおりである。
(被告の主張)
低周波音については,家屋における防音効果,距離減衰,気象条件等,様々な要素によって大きく左右されるのであるから,原告らが,必ずしも測定地点と同様の低周波音の影響を受けるとはいえない。
また,低周波音による物的影響につき,G特性音圧レベルで測定した結果を用いて物的苦情に関する参照値を超えるかどうかを判断すること自体が誤っている。仮に観測された低周波音の音圧レベルがいずれかの周波数で建具のがたつき閾値を超えたとしても,必ずしも全ての建具にがたつきが生じるものではない。すなわち,建具のがたつきに関する影響は,一定の周波
数及び音圧レベルを満たした場合に,飽くまで出現する可能性があるというにすぎず,閾値を超えれば必ず影響が生じるというものではない。さらに,建具や家具の振動は客観的に証明し得る物理的現象であるが,アンケート式陳述書は実際に建具等ががたついているか否かを客観的に判定したものではなく,主観に基づいて陳述しているものにすぎないから,アンケート式陳述書によって原告らについて建具等によるがたつきが生じるというのは,立証として不十分というべきである。
オスプレイ配備による被害の拡大について
(原告らの主張)
オスプレイは,低周波音において,他の機種を10dB程度上回っている上に,騒音レベルについても他の機種を上回っている。そして,夜間のオスプレイの離発着による騒音は,睡眠妨害という健康被害に直接結び付き得る相当深刻な被害を与えるものである。
また,平成28年12月13日には,名護市の東海岸にオスプレイ1機が墜落する事故も発生しているし,オスプレイアンケートの結果によれば,原告らは,オスプレイとその他の航空機の音の違いについて明確に区別することもできていることも併せると,原告らがオスプレイの墜落の恐怖を感じないということはあり得ない。
違法性の判断について
(原告らの主張)

本件飛行場に公共性はなく,他方で,原告らが侵害されている利益は,生活妨害,睡眠妨害及び精神的被害等の身体的被害に準ずる程度の重大かつ深刻な被害であることからすれば,受忍限度論を採用すべきではない。

W75未満の区域に居住する境界線上原告らについても,そもそもW70以上の区域に居住する者について違法性が認められるべきである。仮にそうでないとしても,W75以上の区域に近接して居住しており,同区域
に居住する者らと同様の騒音に曝露され,同様の被害を被っていること,本件コンター作成の際にプロットミスが存在することに照らすと,違法性が認められるべきである。
(被告の主張)

本件飛行場には大きな騒音を出すジェット戦闘機は常駐機として配備されておらず,本件飛行場周辺の騒音は,ジェット戦闘機等の固定翼機が多数配備されている他の国内の飛行場と比較して大きなものではないし,近年になるにつれて相当程度改善傾向にある。また,原告らの中には昼間には当該指定区域外にある勤務先において勤務している者もいることから,より短時間しか本件航空機騒音に曝露していない者も相当数含まれており,昼間に本件航空機騒音に曝露していない部分を控除すべきである。そうすると,原告ら全員につき違法な権利侵害又は法益侵害があるということはできない。


窓を開けて生活するかどうかは住民の自由であって,その際に航空機騒音を受けたとしても,それは住宅防音工事の効果の問題ではなく,上記生活実態によって住宅防音工事の評価を下げる理由にはならない。また,現在の沖縄の住宅事情は,従来の伝統的家屋である木造平家建て住宅ではなく,その約8割が鉄筋コンクリート住宅(RC住宅)であり(乙H73),夏でも窓を開けて暮らすというのは単なる昔からのイメージに過ぎないし,沖縄県のルームエアコンの普及率が81.6%ということからしても(乙H54),住宅防音工事の効果を減殺する事情とはいえないから,住宅防音工事の助成は,本件飛行場の供用の違法性を否定する事情となるというべきである。
損害額について

(原告らの主張)

原審において認められたもののほかに原審において認められなかった原
告らの被害が認められるべきこと,被告の違法行為が数十年継続していること,被告が合衆国軍隊に対して法的根拠のない高額の思いやり予算を負担するのに対し,被害を与えている原告らに対し少額の金員のみを支払うことで足りるとするのは不条理であること,低額な慰謝料では違法行為の抑止につながらないこと,本件飛行場に関する歴史的経緯,沖縄本島中部地域において本件飛行場を使用する航空機騒音の影響を受けずに生活できる区域に住むことは事実上不可能であるとの地理的要因,本件コンター作成に当たってプロットミスがあることから実際の原告らの被害が大きいこと,本件においては原告らの人格権のみならず裁判を受ける権利をも侵害されるとともに,これらの基本権が包含する,基本権侵害を行った加害者に対して,その侵害行為の除去・防止を求めて裁判所に訴えを提起し得る具体的な実効的権利救済請求権を侵害していることに照らすと,原判決の慰謝料の認容額は低額にすぎる。

住宅防音工事の実施による減額の上限を30%とするのは,第一次普天間基地爆音訴訟及び第二次嘉手納基地爆音訴訟の判断や,窓を開けていれば風が通って過ごしやすいという海洋性気候の特質及び本件飛行場周辺は,ドアや窓を開け放ったままという生活習慣が根付いた地域であることを十分に考慮しないもので不当である。

(被告の主張)
原判決の認容した損害額は,別件の普天間基地騒音訴訟や横田基地及び厚木基地に係る騒音訴訟等の他の同種事案と比較しても高額にすぎる。また,住宅防音工事による慰謝料減額は,防音工事を実施した居室の数に応じて行うのではなく,住宅の総居室数に占める防音工事が実施された居室数の割合に応じて行うべきであり,また,最初の1室については10%の減額としながら,2室目以降については1室の半分である5%の減額するのは合理性を欠く。

第3章

当裁判所の判断

【差止請求に対する判断】
次のとおり訂正するほかは,原判決109頁15行目から同114頁10行目までのとおり(ただし,原告らとあるのをいずれも差止等請求原告らと改める。)であるから,これを引用する。
1
原判決110頁20行目の理由がないの次に(最高裁昭和62年(オ)第58号平成5年2月25日第一小法廷判決・民集47巻2号643頁参照)を加える。

2
原判決111頁9行目の提供しておりから同10行目から同11行目までにかけての変わらないまでを提供しているとしても,被告が上記権限を有していない以上,上記判断を左右するものではないと改める。
3
原判決111頁22行目のしかしながら,の次にそもそも,上記の賃貸借の場合において,仮に上記権限を有することを根拠に賃貸人に対して妨害排除請求をし得る余地があるとしても,その具体的事情のいかんにかかわらず当然にこれをなし得ると解することができるとするのには疑問がある上に,を加える。

4
原判決112頁3行目の規定はなく,から同4行目の踏まえるとまでを規定はない上に,原告らの上記主張に係る行為をするか否かは,我が国の安全保障全般に直接影響し,かつ,国の存立の基礎に極めて重大な関係を持つ事柄であって,被告が直ちに上記行為をなし得るということもできないことも併せ考えるとと改める。
5
原判決113頁11行目の1657頁及び同14行目から同15行目にかけての2964頁の次にいずれも参照を加える。

【憲法上の請求に対する判断】
次のとおり訂正するほかは,原判決114頁12行目から同117頁19行目までのとおり(ただし,原告らとあるのをいずれも差止等請求原告らと改め
る。)であるから,これを引用する。
1
原判決114頁16行目から同21行目までを次のとおり改める。裁判所法3条1項の規定にいう「法律上の争訟として裁判所の審判の対象となるのは,当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争に限られるところ,このような具体的な紛争を離れて,裁判所に対して抽象的に法令等が憲法に適合するかしないかの判断を求めることはできないものというべきである(最高裁昭和27年(マ)第23号同年10月8日大法廷判決・民集6巻9号783頁,同昭和61年(オ)第943号平成元年9月8日第二小法廷判決・民集43巻8号889頁,同平成2年(行ツ)第192号同3年4月19日第二小法廷判決民集45巻4号518頁参照)」・


2
原判決114頁24行目のそれ自体から同行の規定するまでをその存在が直接差止等請求原告らの具体的な権利義務関係に影響を及ぼし又は差止等請求原告らの法律関係を規定すると改める。
3
原判決115頁13行目の認識の下,の次に本件飛行場協定が違憲無効であれば,本件飛行場は存在し得なくなり,加害行為が除去されることとなるため,を加える。
4
原判決115頁14行目のするものと理解できをするものでありと改める。

5
原判決115頁17行目のしかしながらから同116頁3行目末尾までをしかしながら,このような差止等請求原告らの主張は,結局のところ差止等請求原告らと被告との間の具体的な権利義務や法律関係ではなく,抽象的に本件飛行場協定の合憲性及び効力について判断を求めることを前提としたものにほかならない。と改める。
6
原判決116頁3行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。
差止等請求原告らは,合衆国軍隊による爆音が差止等請求原告らの権利を侵害しているにもかかわらず,被告が何らの被害救済措置を採らずに,これを放置,黙認する行為や,被告が不備のある日米地位協定を締結した行為,また,その不備を黙認・放置する不作為を主張していることから,主位的請求の法律上の争訟性が根拠付けられるとも主張するが,被告が不備のある日米地位協定を締結したとの点は,結局日米地位協定の内容自体を問題とするもので上記判示したところと同様であるし,その余の点は,結局のところ,日米地位協定自体又は本件飛行場提供協定ではなく,あくまで合衆国軍隊が本件飛行場を使用することにより生じる爆音によって差止等請求原告らが被る被害に対する被告の不作為を問題とするにすぎないから,主位的請求が法律上の争訟に該当することを基礎付ける主張とはいえない。7
原判決116頁16行目の曖昧ではあるが,を被告が憲法の保障する基本権(人格権,裁判を受ける権利等)を侵害しない憲法上の義務及びこれを保障する憲法上の義務を負うことを前提に,被告が同義務を怠っていることを主張して,と改める。
8
原判決116頁17行目から同18行目にかけての
状態の違憲確認状を態を被告が放置していることの違憲確認と,同行の求めていることからすると,から同頁24行目末尾までを求めてはいるものの,上記のとおり,その請求原因として,被告が憲法上の種々の義務を怠って上記のとおり航空機騒音の到達を放置していることを主張しているのであるから,結局のところ,差止等請求原告らの上記不安を除去する方法としては,被告に対して上記義務の履行を求める給付請求が有効かつ適切であるというべきであって(なお,被告に対する上記給付請求が実体上認められるかどうかは別の問題であることは当然である。),と改める。
9
原判決117頁2行目冒頭から同17行目末尾までを削除する。
原判決117頁18行目のいずれにせよ,を削除する。

【損害賠償請求に対する判断】
第1

損害賠償請求の根拠

次のとおり訂正するほかは,原判決117頁22行目から同127頁14行目までのとおりであるから,これを引用する。
1
原判決126頁2行目の相互の保証から同4行目の決すべきであるまでを相互の保証があるとは,当該外国人の本国で,日本人が被害者として当該事案と同種の損害賠償請求をした場合に,国家賠償法所定の要件と重要な点で異ならない要件の下にその請求が認められることをいうものと解するべきであると改める。
2
原判決126頁11行目の原告の次に(原告番号2242)を加える。

3
原判決126頁18行目の求めた場合から同19行目の考えられるまでを求め得るものと解されると改める。

4
原判決126頁21行目冒頭から同22行目の反するとはいえないまでを米国で,日本人が被害者として本件と同種の損害賠償請求をした場合に,規定上,我が国の国家賠償法所定の要件と重要な点で異ならない要件の下にその請求が認められることになると解されると改める。
5
原判決126頁24行目の原告らの次に(原告番号417,同912及び同2395)を加える。
6
原判決127頁5行目の求めた場合から同6行目の考えられるまでを求め得るものと解されると改める。

7
原判決127頁7行目冒頭から同8行目の
反するとはいえない
までを
そうすると,中国で日本人が被害者として本件と同種の損害賠償請求をした場合,権利侵害責任法に基づく請求としては,規定上,我が国の国家賠償法所定の要件と重要な点で異ならない要件の下にその請求が認められることになると解されると改める。
第2
1
事実関係
原告らの居住地

次のとおり訂正するほかは,原判決127頁19行目から同128頁2行目までのとおりであるから,これを引用する。
原判決127頁22行目の弁論の全趣旨を甲4214の1,弁論の全趣旨と改める。原判決127頁23行目の533の3及び4を533の3から6までと,同24行目の809の3及び4を809の3から5までと同25行目の及び3をから5までとそれぞれ改める。
2
原告らの騒音曝露状況
次のとおり訂正するほかは,原判決128頁4行目から同141頁24行目までのとおりであるから,これを引用する。
原判決131頁19行目の平成26年を平成28年に改める。
原判決131頁23行目のW79をW78と改める。
原判決131頁24行目から同25行目にかけての甲CⅢ36を乙CⅢ69と改める。原判決131頁25行目末尾に

なお,平成29年度の速報値は,野嵩局でW71.6,上大謝名局でW76.5,新城局でW68.4,真志喜局でW68.2である(甲CⅢ57)。

を加える。原判決131頁26行目の平成26年度を平成28年度と改める。原判決132頁4行目の36までの次に,乙CⅢ56,乙CⅢ69を加える。
原判決132頁15行目の6を5と改める。
原判決133頁1行目の5までを5まで,37,38,57,58,63,64と改める。原判決133頁25行目のW79をW78と改める。
原判決134頁1行目の平成26年を平成28年と,同行の推移しているを推移しており,平成29年度の速報値もこれらの範囲に含まれるとそれぞれ改める。原判決134頁9行目及び同10行目の6をいずれも5と改める。原判決134頁18行目の26年を28年と,同行の71を
70とそれぞれ改める。
原判決134頁19行目の26年を28年と改める。
原判決134頁20行目の6を5と改める。
原判決134頁26行目の平成26を平成28と改める。
原判決135頁1行目の同程度の前におおむねを加える。
原判決135頁10行目の5を8と改める。
原判決135頁12行目及び同18行目の各平成25年度をいずれも平成28年度と改める。
原判決135頁26行目の16年度の1回を16年度,平成26年度から平成28年度の4回と改める。原判決136頁1行目のとどまること,の次に,被告騒音測定によっても,平成26年度から平成28年度にかけて,W値のパワー平均値,1日当たりの70dB(A)以上の平均騒音発生回数及び1日平均の70dB(A)以上の騒音の累積時間のいずれもが増加傾向にあること,を加える。件コンター指定以
降,防衛施設庁方式に基づいて大規模かつ詳細な調査が行われた事実は認められないのであって,被告においても本件コンターのW値が実態と乖離して改訂しなければならない程度に至っていないことを自認しているとも評価し得ること」を加える。
原判決136頁4行目から同5行目にかけての被告騒音測定から同7行目のいえず,までを削除する。
原判決138頁17行目から同139頁2行目までを次のとおり改める。そもそも,本件コンターは,生活環境整備法に基づく周辺対策を行う地域を画する目的で,同法施行規則及び関連通達に定められた方式を遵守した調査に基づいて定められたものであるところ,当時の同法施行規則1条3項は,区域指定の基準となるW値を算定するに当たっては,自衛隊等の航空機の離陸,着陸等が頻繁に実施されている防衛施設ごとに,当該防衛施設を使用する自衛隊等の航空機の型式,飛行回数,飛行経路,飛行時刻等に関し,年間を通じての標準的な条件を設定し,これに基づいて行うものとしていたのである。そうすると,W値の算定は,航空機騒音に関する客観的事情に基づいてされるべきことが明らかであって,その算定に特殊空港周辺における生活環境整備法に基づく周辺対策を手厚くするといった事情を考慮する余地はないと解される。そして,防衛施設庁方式は,上記の研究成果といった客観的事情に基づいて定められたものであるということができる。原判決139頁11行目から同17行目までを次のとおり改める。この点,原告らそれぞれの生活状況に応じて,原告らそれぞれが現に航空機騒音に曝露される時間帯や態様が異なることはもとより明らかである。しかし,本件コンター外への就労,就学といった事情のみが航空機騒音に曝露される時間帯や態様を異にする要因となるものではないし,本件コンター外へ就労,就学している状況にない原告,又は1日24時間を通じて本件コンター内で生活していることが通常である原告も多数存在するものと考えられる上,本件コンター外へ就労,就学している原告についても,それが平日昼間の時間帯であるとは限らないし,休暇等により平日昼間に本件コンター内にとどまることも十分想定されるところである。そうである以上,本件コンター外への就労,就学といった抽象的事象のみを捉えて全ての原告の航空機騒音の曝露状況を把握することに合理性があるものとは解されず,むしろこの点については,本件コンター内に居住しているという観点から,最小限度等しく曝露している航空機騒音による侵害行為の程度及びこれによる被害の程度を考慮して,本件飛行場の供用の違法性及び損害の有無の判断をすれば足りるというべきである。よって,この点に関する被告の主張は採用することができない。原判決141頁16行目から同23行目までを削除する。
3
航空機騒音に関する行政上の基準
原判決141頁26行目から同143頁21行目までのとおりであるから,これを引用する。

4
騒音による身体に対する影響経路
次のとおり訂正するほかは,原判決143頁23行目から同145頁8行目までのとおりであるから,これを引用する。
原判決144頁15行目の越すと,を超すと,ストレス反応としてと改める。
原判決144頁19行目末尾に

身体的被害は,騒音以外での感覚でも起こる非特異的な間接的な影響である。

を加える。
5
生活妨害
次のとおり訂正するほかは,原判決145頁10行目から同155頁7行目までのとおりであるから,これを引用する。
原判決145頁12行目の原告A1674の次に,原告A4010(当審)を加える。原判決147頁23行目の精神的被害の次に及び作業,学習への影響を加え,同行のa及びbをaからcと改める。原判決148頁8行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。
c作業,学習への影響主に労働者や小児に対して,騒音が認知作業の成績に悪影響を及ぼし得ることが明らかにされている。騒音によって集中力が賦活され,単純作業の能率を短期間上昇させることもあるが,複雑な作業の場合,認知作業の成績は大幅に低下する。読解力,集中力,問題を解く力,記憶力等が騒音によって特に影響を受ける認知能力である。騒音は集中を妨げる刺激にもなり,衝撃音は驚愕反応によって破壊的な影響を及ぼす可能性がある。騒音に曝露することにより,曝露終了後の成績にも悪影響が生ずると考えられる。慢性的に航空機騒音に曝露されている空港周辺の学校の生徒は,詳細な読解力,難問に取り組む際の持続力,読解試験の成績,学習意欲が標準よりも低い。航空機騒音に順応しようと試みたり,作業成績を維持するのに必要な努力をするなど,相当の代償を払っていることを認識しなければならない。騒音は作業中の障害やミスを増加させると考えられ,ある種の事故は作業能率の低下を示す指標になり得る。原判決153頁3行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。
エ原告らの供述原告A4072,原告A24,原告A1及び原告A1674のいずれもが,テレビの音等が聞こえなくなるなど騒音によるテレビ等の視聴妨害が生じる旨を供述するほか,原告A24,原告A1及び原告A1674が,騒音により会話が中断されるなどの会話妨害の存在を,原告A4072及び原告A1674が,騒音により電話が聞き取れなくなるなどの電話聴取妨害の存在をそれぞれ供述している。
原判決153頁13行目の旨を示していることを旨や,騒音が主に労働者や小児の認知作業の成績に悪影響を及ぼし得ること,作業中の障害やミスを増加させると考えられる旨を示していることと改める。原判決153頁20行目のいることをいること,原告A4072,原告A24,原告A1,原告A1674及び原告A4010(当審)も同趣旨の供述をしていることと改める。原判決154頁1頁末尾になお,原告らは,そのほか,航空機騒音による会話や電話聴取等が妨害され,言葉が伝わらないことによるイライラ感が人間関係を悪化させることがあり,また,経済的取引の機会を喪失することがあるとも主張するが,これらが原告らに共通して等しく生じていることを認めるに足りる証拠はない。その余の,人間らしい生活を送るといった人格の中核をなす権利が侵害されているとか,生活の質も低下しているとの点も,その主張内容からして,既に認定した被害に含まれるものというべきである。を加える。原判決154頁7行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。
これに対し,原告らは,本件飛行場付近のW75未満の地域の者もW75以上の地域の者と同程度の被害を受けている旨主張するが,その根拠として原告らが指摘する調査結果はいずれも直接生活妨害の有無を示すものではないから,これらの存在をもって上記判断が左右されるものではない。原判決155頁7行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。
被告は,航空機騒音が作業や学習に与える影響については,各種調査,研究によっても必ずしも明確な結果は得られておらず,その影響が体系的かつ具体的に明らかにされているものとはいい難いこと,当該作業の性質や作業者の心理状態といった個々的な要因のみならず,航空機騒音に対する慣れによっても左右される可能性があること,沖縄県健康影響調査によっても,作業妨害及び思考妨害について,いつもあると回答した者は,本件飛行場周辺のW値75地域及びW値80地域のいずれも1割未満にとどまり,しかもW値との相関関係も認められないのであって(甲D1,3-14頁),原告らに共通する性質のものとはいえないことから,作業や学習に対する妨害を共通損害ということはできない旨主張する。
確かに,航空機騒音が作業や学習に与える影響について,明確な結果
が得られ,その影響が体系的かつ具体的に明らかにされていることを認めるに足りる証拠の提出はないが,そのことから直ちに航空機騒音が作業や学習に与える影響が共通損害と認定できないということはできず,かえって,共通損害と認めることができることは前記判示のとおりである。また,作業等が妨害されるか否かが当該作業の性質や作業者の心理状態といった個々的な要因のみならず,航空機騒音に対する慣れによっても左右される面があるとしても,そのことから直ちに航空機騒音による作業妨害,思考妨害の被害を受けているといえないこととなるものでもない。さらに,被告の指摘する上記の沖縄県健康影響調査の結果についても,甲D1号証の3-14頁の記載は,いつもあると答えた者を記載したにすぎない。上記調査結果は,W値と作業妨害,思考妨害の訴え率との間に量的反応があることを示しているとは必ずしもいい難いが,このような結果については,作業効率等の低下の常態化によって,作業効率等の低下を自覚していないにすぎず,その結果,訴えが乏しいにすぎないとも考え得ることに照らすと,上記結果が直ちに前記判断を左右するものとはいえない。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。」
6
精神的被害
次のとおり訂正するほかは,原判決155頁9行目から同161頁7行目までのとおりであるから,これを引用する。
原判決155頁11行目の原告A1674の次に,原告A4010(当審)を加える。原判決156頁24行目のそれ以外から同25行目末尾までをまた,飛行機からの落下物の不安及び燃料タンク等,基地内の危険物の爆発事故の不安については,いずれもW75-80の群では30%台の,W80-85の群では40%台の反応率が示されているほか,戦争に巻き込まれる不安についてはW75-80の群及びW80-85の群とも30%台の反応率が示されている。と改める。原判決157頁14行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。
さらに,平成29年12月7日には,本件飛行場周辺に所在するa保育園の園舎上のトタン屋根に普天間基地所属のCH-53E型ヘリの部品が発見され(これに対し,合衆国軍隊は,飛行中の機体から落下した可能性は低いとしている。),同月13日には,本件飛行場付近に所在するb小学校の校庭に同型ヘリの窓枠が落下する事故がそれぞれ発生した(甲CⅢ48,50)。原判決157頁22行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。

オ原告らの供述原告A24及び原告A1674は,騒音によりイライラする旨を供述している。また,原告A24,原告A1,原告A1674及び原告A4010(当審)は,航空機が墜落するのではないかとの不安や恐怖を抱いている旨を供述している。
原判決158頁17行目から同18行目にかけての同ア及びエを同ア,エ及びオと改める。原判決159頁11行目の

述べる者がいる。

述べる者がおり,原告A4072も同内容の供述をする。

と改める。原判決161頁7行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。
被告は,うるささの反応に個人差が大きく,主観的なものであることや,
航空機騒音についてどの程度を受忍限度と捉えるかについては,
個々
の意識に左右されるものであることなどから,被害の発生や共通被害に該当することを争うが,本件飛行場付近における航空機騒音の状態や上記認定判断したところに照らすと,上記の被告の指摘する点を考慮したとしても,なお原告らが共通してイライラ感等の精神的苦痛を受けてい
ることを認めることができる。」
7
睡眠妨害
次のとおり訂正するほかは,原判決161頁9行目から同166頁22行目までのとおりであるから,これを引用する。
原判決161頁12行目の原告A1674の次に,原告A4010(当審)を加える。原判決161頁20行目10%程度から同21行目末尾までを

20から30%程度となっており,W75未満の群では10%程度となっており低率である。

と改める。原判決164頁1行目の35を30と改める。
原判決165頁7行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。

カ原告らの供述原告A4072,原告A24,原告A1,原告A1674及び原告A4010(当審)は,騒音により睡眠が妨げられている旨を供述している。


原判決165頁19行目の35を30と改める。
原判決166頁6行目の回答しているから同7行目末尾までを

回答しており,原告A4072,原告A24,原告A1,原告A1674及び原告A4010(当審)も同内容の供述を改める。原判決166頁18行目の「睡眠妨害

を睡眠障害と改め,同行のまた,の次に沖縄県健康影響調査の結果によっても,同区域において「睡眠がさまたげられるかとの質問に対して1.いつもある又は2.ときどきあると回答した者の割合の合計は10%程度となっており低率であるし,」を加える。
原判決166頁22行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。

被告の主張について
確かに,被告の主張するように,どの程度の騒音であれば人の睡眠を妨げるものであるかを判定する明確な資料はないし,音が騒音として感受されるか否かについても,実際の睡眠に及ぼす影響の程度についても個人差があるであろうことは否定し難いが,前記認定判断したところに照らすと,上記の点は,本件飛行場付近のW75以上の地域に居住する原告らにおいて睡眠妨害の被害が共通して等しく生じていること自体を認定することの妨げとなるということはできない。
また,住宅防音工事が実施されている住宅がある点についても,後記第3の1

住宅防音工事の防音効果を得る

ために常時窓や戸などの開口部を締め切った状態で生活することは現実的ではなく,また,沖縄県においては比較的窓を開けたまま生活することが多いのであって,これは住宅防音工事が実施されている住宅に居住する原告らにおいても同様であると推認できることからすれば,住宅防音工事が実施されていることをもって,睡眠妨害が原告らに共通する被害に当たらないということはできない。」
8
聴覚障害
次のとおり訂正するほかは,原判決166頁24行目から同172頁18行目までのとおりであるから,これを引用する。
原判決168頁18行目の示しておりから同20行目の期待されることまでを示していることと改める。原判決172頁1行目の当審におけるを原告らのアンケート式陳述書並びに原審及び当審におけると改める。
9
高血圧症の罹患率の上昇
次のとおり訂正するほかは,原判決172頁20行目から同175頁13行目までのとおりであるから,これを引用する。

原判決174頁8行目の騒音曝露によってを騒音曝露それ自体又は騒音曝露による睡眠妨害をそれぞれ原因とするストレス反応によってと改める。
B」を加える。
原判決174頁15行目の原告らにつきから同23行目末尾までを次のとおり改める。
原告らは,本件飛行場の航空機騒音による騒音曝露それ自体又は騒音曝露による睡眠妨害をそれぞれ原因とするストレス反応により,血圧が上昇することがあり,ひいてはこれによる高血圧症状の発生をもたらす危険性がある状況で生活しなければならない状況にあるということができる。そして,そのような状況に置かれた者が血圧上昇等の発生に対する不安感等を抱くことは優に推認することができ,そうすると,血圧上昇等の発生に対する不安感等の精神的苦痛は,原告ら全員が最小限度等しく受けているということができる。もっとも,原告らが共通して高血圧症に罹患していることを認めるに足りる証拠はない上に,航空機騒音に曝露等すれば血圧の上昇等が発生するというストレス反応による身体的被害は,騒音以外での感覚でも起こる非特異的な間接的な影響であるとされるなど,血圧の上昇をもたらすストレス反応の原因は各個人ごとに種々考えられるのであって,航空機騒音のみが原因となっているとは認め難いから,原告らの抱いている上記不安感等を大きく評価することはできない。また,血圧上昇や高血圧症といった健康状態に関わることは,個人の年齢,体質,生活習慣,生活環境等によって大きく左右され,個人差も大きいものであって,健康状態の悪化やその原因についても同様であるし,そのような健康状態の悪化に対する不安感の有無や程度については,個人の性格や心理状態といった内面的な要因も加わることから,更に個人差が著しくなるものということができる。さらに,本件飛行場付近における航空機騒音がストレス反応として身体に対し及ぼす影響は,生活妨害や睡眠妨害に伴う精神的苦痛等の被害とは異なり,間接的な影響とみるべきものにすぎない。そうすると,血圧上昇等の発生への不安感等の精神的苦痛による被害の程度は,上記の生活妨害に伴う被害等に若干加味する程度のものにとどまるとみるのが相当である。原判決175頁13行目の沖縄県の前にそれだけでは直ちにを加
える。
虚血性心疾患のリスクの上昇
次のとおり訂正するほかは,原判決175頁15行目から同180頁21行目までのとおりであるから,これを引用する。
原判決176頁18行目の過程を仮定と改める。
原判決179頁11行目仮説を仮定と改める。
原判決179頁11行目の具体的にから同12行目の示すことま
でを騒音曝露が原因と考えられる虚血性心疾患のリスクを計算することと改める。
原判決179頁13行目の仮説が正しいかどうかを仮定が正しいかどうかやどの程度の騒音の曝露によりどの程度の影響があるかと改める。原判決180頁18行目のされていることをされていることや,睡眠妨害に関しても,沖縄県健康影響調査(甲D1)の生活質・環境質調査において,「睡眠がさまたげられるかという睡眠妨害に関する質問について1.いつもある又は2.ときどきあると回答した人員の割合は,W80-85及びW75-80の2群では20から30%程度,W75未満の群では10%程度にとどまること」と改める。
原判決180頁21行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。

その他,原告らは,前掲の各文献等によれば,原告らにおいて虚血性心疾患の発症リスクが高いことが認められる旨種々主張するが,前記認定判断したとおりであって,採用の限りではない。

精神疾患の発症の危険性
原告らは,航空機騒音による睡眠妨害による精神疾患の発症の危険性が原告らに共通する被害に当たるというべきである旨主張する。
しかし,原告らがその根拠として指摘するTHI調査の証拠価値が限定されたものにすぎないことは訂正後の原判決185頁9行目から同186頁11行目のとおりである上に,これに基づく沖縄県健康影響調査においても,本件飛行場周辺において,神経症傾向の判別得点とW値との間に統計学的に有意な量反応関係は得られていない(甲D1,6-15頁,6-16頁)。また,原告らの指摘するとおり,沖縄県健康影響調査(甲D1)の6-28頁以下には,航空機騒音曝露の増加に応じて精神安定剤と睡眠薬の上昇が認められることを示した研究があることや,精神神経科の高い受診率と騒音曝露にポジティブな関係を認める研究があることの記載がある。しかし,後者については,年齢構成や社会経済的条件についての調整が行われていないことが問題点として指摘されているとも記載されている上に,これらの研究において被験者がどの程度の騒音に曝露したのかは判然としないし,これらの研究結果がどのような手法を用いてされ,かつその結果がどのように分析されて導き出されたのかも明らかではない以上,
これらの研究を直ちには採用することはできない。
さらに,WHO環境騒音ガイドライン(甲E12)において,確かに,環境騒音が精神的健康に悪影響を及ぼしている可能性を示唆する研究結果が存在する旨の記載はあるものの,他方で,環境騒音が,精神的疾患を直接的に引き起こすとは考えられてないとか,環境騒音の曝露とメンタルヘルスとの関連について明確な結論は得られていないとされているほか,欧州夜間騒音ガイドライン(甲E10)においても,夜間騒音がうつ,その他精神的な疾患といった病状を引き起こすという限定的な知見がある,それに関する研究は少なく決定的
ではないなどとされているにとどまるのであって,これらに照らしても,騒音により精神疾患が引き起こされるとの知見が確立しているとは認め難い。以上によれば,航空機騒音による睡眠妨害による精神疾患の発症の危険性が原告らに共通する被害に当たるということはできない。
その他の身体的被害
次のとおり訂正するほかは,原判決180頁23行目から同188頁25行目までのとおりであるから,これを引用する。
原判決184頁22行目の足りず,の次に原告らの陳述書及び供述のみならず客観的な裏付けをもって,を加える。原判決187頁8行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。
また,原告らは,沖縄県健康影響調査には,14万5000件もの診断記録を解析した大規模調査では,空港から6km未満と6km以上の地域に住むグループを比較した結果,耳鼻咽喉科領域の疾患,心臓血管系疾患,神経系疾患,消化器系疾患の罹患率に2~4倍の差が見られた(甲D1,6-29頁)とか,睡眠障害,心理学的・心身医学的疾患,高血圧の治療薬等の指標が,騒音曝露量の増大とともに上昇し,曝露量の低下とともに減少した(同6-28頁)といったTHI調査と符合する調査結果が記載されており,これらと相まってTHI調査の信頼性が確保されているなどとも主張する。しかし,これらの調査において被験者がどの程度の騒音に曝露したのかも判然としない上に,これらの調査結果がどのような手法を用いてされ,かつその結果がどのように分析されて導き出されたのかは明らかではなく(なお,後者の調査について統計学的検定はされてないとされている。),これらの調査結果がTHI調査の信頼性を高め,ひいては原告に共通する損害が発生したことを根拠付けるとは直ちにはいえない。原判決188頁16行目末尾に

原告らが当審において追加的・補充的に主張する点も,前記認定判断したとおり理由がないか,これらの認定判断を左右するものではない。

を加える。低出生体重児の増加
次のとおり訂正するほかは,原判決189頁1行目から同202頁11行目までのとおりであるから,これを引用する。
原判決189頁9行目の3の次に,原告A24を加える。
原判決198頁20行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。

カ原告A24の供述原告A24は,二女の妊娠・出産の際,騒音等によるストレスにより,おなかの張りの頻度が多く,早産のきっかけになったのではないかと思う旨供述している。


原判決198頁21行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。
そもそも,低出生体重児の増加を被害として捉えた場合,これが生じることによって法律上保護の対象とすべき精神的苦痛を被ると解し得るのは,その性質に照らし,これらの乳幼児自身か又はこのような乳幼児を持つ親であると考えられるところ(仮にこれらの者以外が低出生体重児の増加につき何らかの感情を抱いたとしても,これが法律上損害賠償の対象となる利益の侵害に当たるとはいい難い。),本件飛行場周辺に居住する原告ら全てがそのような者らに当たると認めるに足りる証拠はないのであるから(なお,本件全証拠によっても原告らのうちどの者が上記の者に該当するのかも明らかではない。),上記損害に関する主張は,それが仮に原告らの重大な関心事になっているとしても,原告らに共通する精神的苦痛を基礎付ける事実と主張する限りにおいては理由がないものというほかはない。その点を措くとしても,以下のとおり,本件飛行場の航空機騒音と低出生体重児の増加との間に因果関係を認めるには足りない。原告らは,当審における追加的・補充的主張を含め,上記被害が共通の被害足り得るとか沖縄県健康影響調査の結果等から上記因果関係が認められるべきである旨種々主張するが,いずれも採用の限りではない。原判決199頁26行目の騒音曝露量から同200頁1行目の特にまでを削除する。
子どもの日常生活等への影響(幼児問題行動の多発・学童の長期記憶力の低下)
次のとおり訂正するほかは,原判決202頁14行目から同212頁21行目までのとおりであるから,これを引用する。
原判決202頁16行目の
原告A1
の次に
,原告A4010(当審)
を加え,同203頁6行目の被を非と改める。
原判決209頁4行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。
カ原告らの供述原告A24は,自らの子が,航空機騒音があると同原告にしがみついてくるなどしており,恐怖を感じていると思うとか,勉強をしていても航空機騒音でやめてしまい集中力が途切れるなどと供述するほか,証人C及び原告A4010(当審)は,授業の際に航空機騒音により支障が生じている旨供述する。
原判決209頁5行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。
そもそも,原告らの主張する被害が生じることによって法律上保護の対象とすべき精神的苦痛を被ると解し得るのは,その性質に照らし,これらの子ども自身か又はこのような子どもの親であると考えられるところ(仮にこれらの者以外が原告らの主張する被害が子どもに生じることによって何らかの感情を抱いたとしても,これが法律上損害賠償の対象となる利益の侵害に当たるとはいい難い。),本件飛行場周辺に居住する原告ら全てがそのような者らに当たると認めるに足りる証拠はないのであるから,上記損害に関する主張は,それが仮に原告らの重大な関心事になっているとしても,原告らに共通する精神的苦痛を基礎付ける事実と主張する限りにおいては理由がないものというほかないものである。その点を措くとしても,以下のとおり,原告らの主張は採用することができない。原告らは,当審における追加的・補充的主張を含め,上記被害が共通の被害足り得るとか,沖縄県健康影響調査の結果等から航空機騒音と原告らの主張する被害との因果関係が認められるべきである旨種々主張するが,いずれも採用の限りではない。低周波音による被害
次のとおり訂正するほかは,原判決212頁23行目から同237頁22行目までのとおりであるから,これを引用する。
原判決213頁1行目の原告A1674の次に,原告A4010(当審)を加える。原判決213頁26行目及び同214頁14行目の各試験音にの次に各20秒間ずつを加える。
原判決214頁25行目の添付の参考資料を削除し,同行の甲E10を甲E9,乙E1と改める。原判決215頁1行目の公表したから同3行目末尾までを次のとおり改める。
公表した。そこでは,低周波音の問題が発生する可能性のある主なものとして,送風機(送風機を用いる集塵機,乾燥機等),ディーゼル機関(ディーゼル機関を用いる船舶,バス,トラック,非常用発電装置等),燃焼装置(ボイラー等),ジェットエンジン(ジェットエンジンを用いる航空機,非常用発電装置等),ヘリコプター,橋梁,鉄道トンネル,治水施設(ダム等),発破,ガスエンジン,変圧器等が挙げられており,低周波音は生活に身近な場所でも発生しているものといえる。そして,低周波の心理的影響に関する苦情につき,苦情の発生は低周波音が原因である場合と低周波音以外の原因による場合とが考えられ,そのいずれであるかは苦情者の反応と物理量の対応関係によって判定すること,低周波音が原因である場合は,20Hz以下の超低周波音による可能性と,20Hz以上の可聴域の低周波音による可能性が考えられるが,前者の場合は物的影響に関する苦情も併発していることが多く,建具等の振動によって二次的に発生する騒音に悩まされている場合もあること,低周波音の物的影響に関する苦情については,苦情の発生は20Hz以下の超低周波音が原因である可能性が高いが,苦情は低周波音だけでなく地面振動によっても発生する場合があるので,低周波音と地面振動の両方の可能性を考えておく必要があることが指摘されている。また,低周波音は,他の騒音に比べて波長が長いことから,建物から数m離れても反射,遮へい,回折等によって局所的に音圧レベルが変化する場合があり,発生源から数km以上離れると,気温,風向き,風速等の影響を大きく受け,風向きや風速の違いで20ないし30dBも音圧レベルが異なる場合があることが指摘されている。その参考資料内において,低周波音の基礎知識として,以下の事項を記載している。原判決217頁19行目の対応するためのものとされ,の次にある時間連続的に低周波音を発生する固定された音源に適用し,を加える。原判決217頁20行目末尾にまた,同参照値は低周波音によると思われる苦情に対処するためのものであって,対策目標値,環境アセスメントの環境保全目標値,作業環境ガイドライン等として策定したものではないとされている。さらに,環境省手引書中の「評価指針の解説では,近年地方公共団体に寄せられる低周波音苦情の発生源は,工場,事業場,店舗,近隣の住居などに設置された施設等で,音圧レベルの変動幅が比較的小さい固定発生源が多く,低周波音の実験室における実験はほぼ定常的な連続音を用いて
行われ,データが蓄積されているが,低周波音の発生が単発的又は短時間のみの場合には,研究データの蓄積が十分ではないとして,本評価指針では,道路交通のような大幅かつ不規則に変動する発生源や,航空機,鉄道といった一過性・間欠性の発生源及び発破・爆発,高速列車のトンネル突入といった衝撃性の発生源からの低周波音は適用対象外とする,とされている。環境省手引書に先立ち公表された低周波音対策検討調査(中間とりまとめ)においては,低周波音評価の考え方と今後の課題として,音源の状態によって苦情となるレベルは異なってくるところ,一般に固定音源は苦情発生時の音圧レベルが低く,音源のレベル変動も少ないものが多く,今後ガイドラインを作成する場合には,まず固定音源についてのガイドラインを作成することが必要である(実験データも,純音成分による固定音源データに相当するものが得られている。)。これに対し,移動物体等による低周波音は,そのレベルが変動し,継続時間も短いので,その評価は固定音源の場合と比べてより複雑となるであろうことから,次の段階の課題としたいなどともされている。」を加える。
原判決217頁26行目の採用されたを

採用され,参照値以上であれば低周波音による苦情の可能性が考えられるとされている。他方で,「低周波音対策検討調査(中間とりまとめ)

においては,個々の建具は,建具の種類,大きさ,設置条件,建具背後の部屋の構成,戸や扉の開閉状況等によって決定される固有の共振特性を持っており,建具のがたつき始める最低音圧レベルは個々の家具により大きく異なること(上記調査では,個々の建具によるばらつきが非常に大きく,各周波数における最大と最小の差は30から40dBであった。),観測された低周波音の音圧レベルがいずれかの周波数で
建具のがたつき閾値
を超えても必ずがたつくとは限らないので,
注意が必要であるとされている」と改める。
原判決218頁10行目の踏まえ,の次にほとんどの苦情が室内で起こること,低周波音に関する感覚については個人差が大きいことを考慮し,を加える。原判決218頁26行目末尾にすなわち,脳波を指標として,低周波音の曝露が睡眠状態にどのような変化を及ぼすかを,睡眠深度Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ,REMの状態について調べた結果,睡眠深度Ⅰ(浅い眠りの状態で,20Hz-110dB,40Hz-90dBにおいて全例が覚醒した。睡眠深度が深くなるとその傾向は少なくなり,超低周波音の場合,覚醒傾向(覚醒や睡眠深度の浅度化)が見られるのは,10Hz-100dB(G特性音圧レベル100dB),20Hz-95dB(同104dB)となるとされている。を加える。
原判決219頁1行目の5までの次に,甲E16加える。
原判決219頁3行目の嘉手納飛行場周辺の次に及び伊江島補助飛行場近隣を加える。原判決222頁4行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。
平成24年度及び平成25年度
上記c公民館(平成24年度)及びb小学校(平成25年度)で測定が行われた。
低周波音レベルの最大値は,c公民館では,MV-22の110.6dB(G)であり,b小学校では,MV-22の106.8dB(G)であった。
そして,機種別に1/3オクターブバンド中心周波数の分布状況を求め,
環境省手引書の心身及び物的苦情に関する参照値と比較したところ,いずれの機種についても,これら参照値の超過が認められた。」
原判決222頁5行目の現地進行協議を原審の現地進行協議と,
同7行目の当裁判所を原審裁判所とそれぞれ改める。
原判決222頁20行目末尾に

なお,各地点で低周波音の最大値を示したのは,UH-1Y,CH-53E又はAH-1Wであった。

を加える。原判決224頁7行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。
キ当審の現地進行協議における測定(甲CⅢ51,乙CⅢ70,弁論の全趣旨)当裁判所は,平成30年5月18日,本件飛行場周辺において現地進行協議を実施したところ,その際,原告らにおいて騒音及び低周波音の測定を,被告において騒音の測定をそれぞれ行った(以下,この測定を「当審現地進行協議測定と総称する。)。原告らによる測定の結果は以下のとおりである。
測定結果
各測定点における騒音及び低周波音の各最大値は以下のとおりである(航空機の飛行が確認されなかった宜野湾市(以下省略)の個人宅及びa保育園を除く。)。なお,飛行した航空機の機種としては,オスプレイMV-22B,ヘリコプター機であるUH-1Y及びAH-1W並びに機種不明機であった。


d公園(宜野湾市(以下省略))
騒音及び低周波音のピークが合計2回観測され,騒音レベルの最
大値は82.4dB(A),低周波音レベルの最大値が99.6dB(G)(いずれもUH-1Y)であった。



e公園(宜野湾市(以下省略))
騒音及び低周波音のピークが1回観測され,騒音レベルの最大値
は78.4dB(A),低周波音レベルの最大値が106.2dB(G)(いずれもMV-22B)であった。



原告A1674宅(宜野湾市(以下省略))
騒音及び低周波音のピークが合計3回観測され,騒音レベルの最
大値は89dB(A),低周波音レベルの最大値が109.3dB
(G)(いずれもMV-22B)であった。


b小学校(宜野湾市(以下省略))
騒音及び低周波音のピークが合計2回観測され,騒音レベルの最
大値は89.2dB(A),低周波音レベルの最大値が106.2dB(G)(いずれもMV-22B)であった。



原告A3126宅(宜野湾市(以下省略))
騒音及び低周波音のピークが合計3回観測され,騒音レベルの最
大値は61.3dB(A)(機種不明の飛行機),低周波音レベルの最大値が80.8dB(G)(機種不明のヘリコプター)であった。
各測定点における低周波音の評価
各測定点で観測された低周波音を1/3オクターブバンドレベルで
分析し,環境省手引書における物的苦情に関する参照値及び心身に係る苦情に関する参照値と比較したところ,①から④の各地点では,物的苦情に関する参照値を超える低周波音が観測され,①から⑤までの全地点において心身に係る苦情に関する参照値を超える低周波音が観測された。」
原判決224頁8行目のキをクと,同225頁16行目のク
をケと同23行目のケをコとそれぞれ改める。
原判決226頁3行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。
サ原告らの供述原告A24は,ヘリコプターやオスプレイが飛行するとドアや食器棚がガタガタ揺れる旨供述するほか,原告A1674は,航空機や通常のヘリコプターの飛行の際にガラス戸がバリバリという音がし,オスプレイの飛行の際には入口のドアがガタガタ震える旨供述する。
測定結果に加え,」を加える。
原判決227頁16行目の本件訴訟における現地進行協議を原審の現地進行協議,当審の現地進行協議と改める。原判決

原判決227頁19行目の原告らは,の次に個々の原告が曝露する程度はともかくとして,原判決227頁21行目冒頭から同229頁17行目までを次のとおり改める。
しかし,原告らの低周波音の曝露量については,コンター作成時騒音調査のような大規模な測定調査は行われておらず,原告らの騒音の暴露量を示している本件コンターのように,包括的に原告らの低周波音の曝露量を的に行われたものではなく,かつ局所的に実施されたものである(なお,個々の測定箇所も,本件飛行場に隣接した本件コンターW80区域内の地点が多い。)上に,低周波音は,他の騒音に比べて波長が長いことから,建物から数m離れても反射,遮へい,回折等によって局所的に音圧レベルが変化する場合があり,発生源から数km以上離れると,気温,風向き,風速等の影響を大きく受け,風向きや風速の違いで20ないし30dBも音圧レベルが異なる場合がある(上記ことにも照らすと,上記の測定結果からは,原告らが共通して等しく日常的に上記測定結果と同程度の低周波音に曝露しているとまでは直ちには断じ難い。仮にD准教授による各種の測定結果(甲CⅢ26から28まで,甲D56)の内容を前提としたとしても,これらの測定が本件飛行場付近では1か所でのみされた局所的なものにとどまる以上,上記の判断を左右するものとはいえない。仮に,本件飛行場周辺に居住する原告らが,本件飛行場を離発着するヘリコプター機の飛行によって日常的に上記各測定結果程度の低周波音に曝露されることがあるとしても,下記のとおり,原告らの主張する被害を原告らに等しく共通するものとして認定することは困難である。原判決229頁
原判決229頁22行目から同231頁26行目までを次のとおり改める。
しかし,「建具のがたつき閾値は,実験室において建具に低周波音を照射して次第に音圧レベルを上昇させ,建具のがたつき始める音圧レベルを調査したものであるところ

その調査手法は,一見する

と固定発生源以外による低周波音にも適用し得るとも考えられるものであり,かつ,これを踏まえ環境省手引書における物的苦情に関する参照値が
生源からの低周波音にのみ適用し,航空機,鉄道といった一過性・間欠性の発生源をあえて適用の対象外としているのであるから,本件において上記参照値をそのまま適用し得るかについては疑問が残るものといわざるを得ない。
この点を措くとしても,

建具の種類,

大きさ,設置条件,建具背後の部屋の構成,戸や扉の開閉状況等によって決定される固有の共振特性を持っており,建具のがたつき始める最低音圧レベルは個々の家具により大きく異なり,観測された低周波音の音圧レベルがいずれかの周波数で建具のがたつき閾値を超えても必ずがたつくとは限らないので,建具の共振特性により,低周波音による物的影響の発現形態には大きなばらつきがみられ,建具のがたつき閾値を超えたからといって,必ずしも全ての建具にがたつきが生じるものではないとされている上に,

アンケート式陳述書でも,低周波音に係る被害に関連

する項目として,ア.家屋そのものあるいは窓や戸の振動があるイ.タンス等家財道具の振動があるという選択肢が設けられた設問に対し,アの選択肢を選択した者が全体の約87%,イの選択肢を選択した者に至っては全体の約46%にそれぞれとどまっているのみならず,上記陳述書の各記載にはそれのみからは低周波音と上記振動との関係が必ずしも判然としないものも含まれていることに照らすと,低周波音による建具や家具等のがたつきという物的影響が生じ得るとしても,それによる被害を原告ら全員が共通して等しく受けているものとまでは認め難い。」
原判決232頁13行目の

疑問がある。

の次にこのことは,環境省手引書において,心身の苦情に係る参照値は,移動発生源とそれに伴い発生上に,低周波音に対する苦情の発生は,音源の状態により音圧レベルが異なり,一般に固定音源はそれが低く,音源のレベル変動も少ないものが多いのに対し,移動物体等による低周波音は,そのレベルが変動し,継続時間も短いので,その評価は固定音源の場合と比べてより複雑になろうとの指摘があるらすと,低周波音が1日当たり,数分から数十分累積し,ほぼ毎日継続しているものと考えられるとする点も推測の域を出ない。を加える。原判決232頁26行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。
しかし,上記曲線も,特定の条件の下での実験結果に基づく分析結果として考慮すべき内容を含むとはいえるが,低周波音による人体等への影響の機序や被害との因果関係を解明して一般的基準を示したものとして確立,定着した内容であるといえるかには疑問が残る。しかも,上記実験は固定音源を用いてされたものと解される上に,被験者の50%が気になると感じ始める音圧レベルを示したものであるし,低周波音に関する感覚については個人差が大きいことも踏まえると,これをもって原告ら全員の共通の被害を認定するための基礎とするのは困難である。原判決233頁1行目冒頭にさらに,を加える。
原判決234頁4行目から同235頁25行目までを次のとおり改める。しかし,上記曲線も,特定の条件の下での実験結果に基づく分析結果として考慮すべき内容を含むとはいえるが,低周波音による人体等への影響の機序や被害との因果関係を解明して一般的基準を示したものとして確立,定着した内容であるといえるかには疑問が残る。しかも,上記実験は固定音源を用いてされたものと解される上に,低周波音に関する感覚については個人差が大きいことに照らすと,これをもって原告ら全員の共通の被害を認定するための基礎とするのは困難である。また,上記の環境影響評価についても,低周波の心理的影響を評価するための環境基準がないことから,そのことを前提に,環境保全のための目標値(目安)として採用されたにすぎないと解されるから(乙CⅢ36),上記各環境影響評価やその他の国の行った環境影響評価(乙H66の1,2)において,「圧迫感・振動感の閾値曲線が用いられたとしても,そのことをもって直ちに心理的影響があることの根拠とすることはできない。
よって,原告らの主張を採用することはできない。」
原判決236頁6行目末尾にまた,原告らの指摘するWHOガイドラインも,騒音に低周波音が多く含まれると,健康影響が増悪する可能性があることに注意すべきであるとするにとどまり(甲E10,9頁),健康への影響の可能性を指摘するにとどまる。を加える。原判決236頁25行目から同237頁10行目までを次のとおり改める。
前記のとおり,原告らが上記測定結果程度の低周波音に曝露されることが日常的にあるとしたとしても,低周波音の睡眠への影響については,G特性音圧レベル100dB程度から影響が出始める目安とされている(上にすぎないし,上記の知見は,あくまで覚醒傾向が見られ始める音圧レベルを示すにすぎないから,上記知見をもって原告ら全員に共通して等しく低周波音による睡眠への影響の被害があることが根拠付けられるとはいえない。また,WHO環境騒音ガイドラインにおいても,低周波音を含む場合には,騒音よりもより低いガイドライン値を定めウ)ものの,その具体的な程度は明らかではない以上,これを上記共通の被害の存在の根拠とすることもできない。B証人は,知覚できないレベルの超低周波音(12Hz,110dB)であっても,MRIの画像によれば脳の一次聴覚野が賦活するという研究結果がある旨供述するが,この供述も,上記同様に,原告ら全員に共通して等しく低周波音による睡眠への影響の被害があることを根拠付けるほどのものとはいえない。原判決237頁11行目のもっとも,をさらに,仮に低周波音による睡眠への影響の被害を認めたとしても,と改める。オスプレイ配備による被害の拡大
次のとおり訂正するほかは,原判決237頁24行目から同244頁14行目までのとおりであるから,これを引用する。
原判決238頁19行目のいえないから,これによってをいえないし,また,前記2のとおり,オスプレイによる騒音も含めた測定結果を踏まえて原告らの騒音曝露状況を認定した上で,原告らに共通する被害の有無を認定判断しているのであるから,これに加えて更に独立してオスプレイによる騒音を評価するのは相当でないから,オスプレイによる騒音によってと改める。
原判決238頁20行目の上記14のとおりから同22行目の踏まの結果も踏まえると,と改める。原判決238頁25行目から同242頁8行目末尾までを次のとおり改める。

ろに照らすと,オスプレイを含め航空機による低周波音により,原告らに等しく共通の被害が存在することを認めることはできない。D准教授による各種の測定結果(甲CⅢ26から28まで,甲D56)の内容を前提としたとしても,これらの測定につき本件飛行場付近では1か所でのみされた局所的なものにとどまる以上,これらの測定結果は,上記判断を左右するものとはいえない。」
原判決242頁11行目の増大したを増大したことにより,原告らに等しく共通する被害が新たに生じたと改める。原判決242頁16行目の甲C29を甲CⅢ29と,同行の甲C30を甲CⅢ30とそれぞれ改める。原判決244頁3行目末尾に

また,平成28年12月13日には,沖縄県名護市沖において,オスプレイの墜落事故が発生したことが認められる(乙H76,77,弁論の全趣旨)。

を加える。原判決244頁5行目のこれに加え,から同13行目末尾までをまた,上記墜落事故についても機体の構造上の欠陥そのものが原因となったと認めるに足りる証拠もない。これに加え,オスプレイアンケートの回答者の中には,航空機騒音を聞いた際にオスプレイとそれ以外の機種との違いが分かるという趣旨の回答をする者がいることは認められるものの,オスプレイアンケートの回答者は原告らの一部にとどまり,原告らの全てがそのような識別をし得るのかどうかは明らかではないし,回答者の中には,オスプレイの墜落への不安を記載していない者もいるなど,オスプレイの墜落に対する不安については個人差も大きいことがうかがえることに照らすと,オスプレイという新たな機種が加わったことのみによって,既に認定した航空機の墜落への不安に加えて,さらに原告らの感じる不安感が全体として大きくなったと認めることはできない。と改める。被告による周辺対策
次のとおり訂正するほかは,原判決244頁16行目から同252頁23行目までのとおりであるから,これを引用する。
原判決245頁15行目,同246頁14行目,同21行目,同247頁9行目,同16行目,同250頁6行目,同15行目,同20行目及び同24行目の各乙H1の次にいずれも,78を加える。
原判決246頁12行目,同19行目,同25行目,同247頁14行目,同22行目,同250頁12行目,同19行目,同23行目及び同251頁2行目の各26年をいずれも28年と改める。
原判決246頁13行目の約375億2625万円を約380億0原判決246頁19行目から同20行目にかけての「約22億6313万円を約24億4236万円と改める。原判決246頁26行目の約560万円を約618万円と改める。原判決247頁15行目の約28億8640万円を約39億0123万円と改める。原判決247頁22行目の約1926万円を約2827万円と改
める。
原判決249頁24行目から同25行目にかけての別紙「居住移転経過一覧表別紙1及び居住移転経過一覧表別紙2」を別紙「居住移転経過一覧表別紙1,居住移転経過一覧表別紙2及び居住移転経過一覧表別紙3」と改める。
原判決250頁1行目の争いのない事実を原告番号457から460まで及び1806から1811までの者を除き争いのない事実及び弁論の全趣旨。原告番号457から460までの者については乙H82から87の1まで及び乙H98並びに弁論の全趣旨,原告番号1806から1811までの者については乙H88から97まで及び弁論の全趣旨と改める。原判決250頁13行目の約390億9300万円を約420億5898万円と改める。原判決250頁19行目の95億2840万円を約99億3918万円と改める。第3

違法性
次のとおり訂正するほかは,原判決252頁25行目から同264頁6行目までのとおりであるから,これを引用する。

1
原判決253頁8行目の及び低周波音を削除し,同16行目の平成26年度を平成28年度と改める。
2
原判決254頁2行目から同5行目までを削除する。

3
原判決254頁7行目の及び低周波音を削除する。

4
原判決254頁10行目の睡眠妨害から同11行目の生じておりまでを睡眠妨害及び血圧上昇等の発生への不安感等が生じておりと改める。
5
原判決254頁13行目の14までを7及び9と改める。

6
原判決254頁14行目の健康上から同行の踏まえれば,までを削除する。

7
原判決254頁18行目の原告らから同19行目末尾までを削除する。
8
原判決254頁23行目の13を14と改める。

9
原判決257頁5行目末尾に

原告らは,本件飛行場に公共性又は公益上の必要性が認められない旨主張するが,上記のとおり採用することはできない。

を加える。

原判決258頁11行目の16を17と改め,同13行目,同259頁7行目及び同9行目の各及び低周波音をいずれも削除する。
原判決259頁17行目の求めるの次に実効的なを加える。
原判決260頁4行目のなっていたにもかかわらずから同6行目までの採られずに,
までを
なっていたほか(乙CⅢ52,53,弁論の全趣旨),平成23年10月には,本件飛行場における航空機の運航等から生じる騒音によって周辺住民らに受忍限度を超える違法な被害が生じていることを認定し,被告に損害賠償を命じた第一次普天間基地爆音訴訟の判決が確定しているにもかかわらずと改める。原判決260頁9行目から同22行目までを削除する。
原判決260頁25行目の及び低周波音を削除する。
原判決261頁7行目冒頭から同8行目の評価し得ることまでを本件コンター上W75以上の地域に居住する原告らの利益を侵害する状況が継続していることと改める。原判決262頁1行目末尾に
なお,原告A3127及び原告A1986(当審)の各本人尋問の結果並びに上記各原告らの陳述書のみでは,境界線上原告らがその余の原告らと同程度の被害を受けているかどうかは客観的に明らかではないというほかなく,これらをもって上記判断が左右されるものではない。を加える。
第4

損害賠償額
次のとおり訂正するほかは,原判決267頁9行目から同271頁3行目までのとおりであるから,これを引用する。

1
原判決267頁11行目の及び低周波音を削除し,同12行目から同13行目にかけての,さらには,高血圧症発症のリスク増大を及び血圧上昇等の発生への不安感等と改める。
2
原判決268頁1行目の及び低周波を削除する。

3
原判決268頁3行目のアメリカ合衆国から同4行目の状況などまでを原告らの利益の侵害が継続している状況などと改める。

4
原判決268頁5行目の7000円を4500円と,同6行目の1万3000円を9000円とそれぞれ改める。
5
原判決268頁9行目末尾に原告ら及び被告は,当審における主張も含め上記基本となる慰謝料額の多寡について種々主張するが,いずれも上記認定において既に考慮済みのものか,又は採用の限りでないものであって,上記認定判断を左右するものとはいえない。を加える。
6
原判決268頁10行目冒頭から同14行目末尾までを次のとおり改める。

なお,死亡した者の損害賠償請求権を分割相続した原告らについては,上記慰謝料額を各原告の相続分に従って分割(1円未満切り捨て)して,基本となる慰謝料額とする。


7
原判決268頁20行目末尾に

そして,防音工事を施工した室数が増加すれば,それだけ防音効果も高まる以上,施工した室数に応じて減額割合を増加させるべきである。

を加える。
8
原判決269頁6行目末尾に

上記減額の上限を30%とするのは不当であるとの原告らの主張は,上記判示したとおり,採用の限りではない。

を加える。

9
原判決269頁7行目から同20行目までを削除

」を

原判決270頁25行目の各原告から同271頁3行目末尾までをこれを前提に各原告らの損害額を算定すると,同表の「損害額合計欄に記載のとおり(請求の認められない境界線上原告らについては記載をしていない。)となる。したがって,被告は,各原告に対し,同欄記載の各金員及びこれらに対する損害発生月の翌月1日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払う義務を負うこととなる。」と改める。

第5

将来の損害賠償請求の可否
次のとおり訂正するほかは,原判決271頁5行目から同274頁10行目までのとおりであるから,これを引用する。

1
原判決271頁22行目の1369頁の次に,同昭和62年(オ)第58号平成5年2月25日第一小法廷判決・民集47巻2号643頁,同昭和63年(オ)第611号平成5年2月25日第一小法廷判決・裁判集民事167号359頁,同平成18年(受)第882号同19年5月29日第三小法廷判決・裁判集民事224号391頁,同平成27年(受)第2309号同28年12月8日第一小法廷判決・裁判集民事254号35頁を加える。
2
原判決273頁18行目の本件でから同24行目のさらに,までを削除する。

3
原判決274頁10行目末尾に

その他,原告らが当審において種々主張する点も含め,いずれも上記判断を左右するものとはいえない。

を加える。
【結論】
第1

差止請求について
差止等請求原告らの差止請求(第1章第1の2の各請求)はいずれも理由がないからこれを棄却すべきである。

第2

憲法上の請求について
差止等請求原告らの憲法上の請求
(第1章第1の3の各請求)
に係る訴えは,
いずれも不適法であるからこれを却下すべきである。

第3
1
損害賠償請求について
原告らの過去の損害賠償請求(第1章第1の4の請求及び同5の請求のうち平成30年9月27日までのもの)のうち,国賠法2条1項に基づく主位的請求は理由がないからいずれも棄却すべきであり,民特法2条に基づく予備的請求は,主文3項の限度で理由があるからこの限りで認容し,その余は理由がないからいずれも棄却すべきである。

2
原告ら(ただし,原告A252(原告番号252),原告A2068-1(原告番号2068-1),原告A2068-2(原告番号2068-2)及び原告A2068-3(原告番号2068-3)並びに原判決別紙居住移転経過一覧表別紙1の死亡日欄に記載がある者を除く。)の将来の損害賠償請求(第1章第1の6の請求のうち平成30年9月28日以降のもの)に係る訴えはいずれも不適法であるから却下すべきである。

第4

結論
よって,
上記と異なる原判決を変更することとして,
主文のとおり判決する。

福岡高等裁判所那覇支部民事部

裁判長裁判官


裁判官

裁判官

保正道本多智子神久谷厚毅
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