判例検索β > 平成31年(わ)第28号
事件番号平成31(わ)28
裁判年月日令和元年5月14日
法廷名佐賀地方裁判所
裁判日:西暦2019-05-14
情報公開日2019-06-25 03:32:46
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令和元年5月14日宣告
平成31

28号

承諾殺人死体遺棄被告事件
主文
被告人を懲役3年に処する
未決勾留日数中30日をその刑に算入する。
この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。
佐賀地方検察庁で保管中のネクタイ1本(平成31年領第106号符号2)を没収する。
理由
(罪となるべき事実)
第1

被告人は,仕事に関し借金を重ねて将来を悲観し,平成30年7月,妻で
あるA(以下被害者という。)と心中を試みたが,失敗した。その後,弁護士に依頼して破産手続をとることにし,
仕事も見つけたが,
同年9月に貸金返還訴訟
を起こされると,再び将来を悲観して,同年10月に被害者を心中に誘った。被害者は,
長年連れ添い,
自殺をほのめかして家出を繰り返してきた被告人を見捨てる
ことができず,心中の誘いに応じた。被告人と被害者は,同月から平成31年1月にかけて,死に場所を探して主に関西地方をさまよい,その間,何度か心中を試みたがいずれも失敗した。被告人は,同月16日深夜,被害者に対し,睡眠導入剤を飲んで眠った状態の被害者を被告人が絞殺し,その後に被告人が自殺するという方法を提案し,被害者は承諾した。同月17日午前2時半頃,兵庫県たつの市a町b番地Bサービスエリア下り線駐車場に駐車した自動車において,殺意をもって,睡眠導入剤を飲んで眠っていた被害者(当時79歳)の頸部をネクタイ(佐賀地方検察庁平成31年領第106号符号2)で絞め付け,間もなく同所において,同人を窒息により死亡させて殺害した。
第2

同日,
被害者の死体を載せたまま前記自動車を運転し,
同所から佐賀県神

埼郡c町d番地道の駅C北西方約200m先まで運搬し,
同日午後1時頃,
同死体
を同所先の斜面に投棄して遺棄した。
(法令の適用)
1罰条
判示第1の行為
判示第2の行為
2
刑法202条
刑法190条

刑種の選択
判示第1の罪について所定刑中懲役刑を選択

3
併合罪の処理
刑法45条前段,47条本文,10条(重い判示第1の罪の刑に同法47条ただし書の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で処断)

4
未決勾留日数の本刑算入
刑法21条

5
刑の執行猶予
刑法25条1項

6
没収
刑法19条1項2号,2項本文(判示第1の犯罪行為の用に供した物で,被告人以外の者に属しない)

7
訴訟費用の不負担
刑訴法181条1項ただし書

(量刑の理由)
本件は,心中を目的とした承諾殺人死体遺棄の事案である。
被告人は,
弁護士に依頼して破産手続をとることになったのに,
周囲に十分な相
談もせず将来を悲観し,
被害者の気持ちを深く考えずに,
被害者に心中を迫ってお
り,犯行に至るいきさつに酌むべき事情は乏しい。もっとも,被害者は,地域包括支援センターの職員に被告人との関係や今後の生活について相談していたのに,結局は被告人と離れることなく,被告人とともに約3か月にわたって死に場所を探す旅を続け,
心中の方法や場所等も話し合って決めており,
死の承諾は被害者の
真意に基づくものであったと認められる。
検察官は,
被害者が被告人の自殺企図に
強く影響されて消極的に死を承諾したにすぎないから,同種事案の中で悪質性が高いと主張するが,そのような見方には賛同できない。
その上で,
被告人に古い交通罰金前科以外に前科がなく,
事実を認めて反省の態
度を示していること,
佐賀県地域生活定着支援センターの担当者が,
被告人の社会
復帰後の環境調整を支援する旨述べていることなどを考慮して,
被告人に対し,

文の刑を定めた上で,今回に限りその刑の執行を猶予するのが相当と判断した。(求刑・懲役5年,主文同旨の没収)
令和元年5月14日
佐賀地方裁判所刑事部

裁判長裁判官

今泉裕登
裁判官

杉原崇夫
裁判官

髙岡寛実
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