判例検索β > 平成30年(わ)第874号
加重収賄、入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律違反、公契約関係競売入札妨害、受託収賄
事件番号平成30(わ)874
事件名加重収賄,入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律違反,公契約関係競売入札妨害,受託収賄
裁判年月日平成31年3月28日
法廷名福岡地方裁判所
裁判日:西暦2019-03-28
情報公開日2019-06-25 03:40:00
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主文
被告人Aを懲役2年6月に,被告人Bを懲役2年に処する
被告人Bに対し,未決勾留日数中30日をその刑に算入する。
被告人Bに対し,この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。
被告人Aから,福岡地方検察庁で保管中の現金1000万円(同庁平成30年領第2069号符号2及び5)を没収する。
被告人Aから金75万円を,被告人Bから金37万5000円を,それぞれ追徴する。
理由
(犯罪事実)
被告人Aは,平成25年1月27日から平成29年1月26日までの間,福岡県鞍手郡a町町長として,a町の業務を統括していたものであるが,第1

a町における高齢者福祉に関する事務を統括掌理していた被告人Aは,a町において社会福祉法人が新たに特別養護老人ホームを設置するには,当該法人が福岡県知事による老人福祉法に基づく特別養護老人ホームの設置認可を受ける必要があり,そのためには,同県が同法及び介護保険法に基づいて市町村からの意向調査等を経て策定する福岡県高齢者保健福祉計画(第7次)に,その対象年度にa町を含む高齢者保険福祉圏域において整備予定とする特別養護老人ホームの整備計画床数が定められた上で,a町が実施する公募において特別養護老人ホームの設置主体として当該法人が選定される必要があるところ,平成25年11月28日,同県直方市所在の料亭Cにおいて,自ら運営する社会福祉法人によりa町内で新たに特別養護老人ホームを設置することを目論んでいた被告人Bから,同計画に上記整備計画床数が定められるようa町として同県に施設整備の意向を表明するなどの働きかけをするとともに,上記公募において自らが運営する社会福祉法人を選定してもらいたい旨の請託を受け,平成27年2月5日,Cにおいて,被告人Bから,その請託の趣旨に従って被告人Aが同県に上記働きかけをしたことに対する謝礼及び今後上記公募が実施された際には自らが運営する社会福祉法人を選定してもらいたいとの趣旨の下に供与されるものであることを知りながら,現金1000万円の供与を受け,もって,その職務に関し請託を受けて賄賂を収受した。
第2

分離前の相被告人Dは,北九州市b区に本店を置き,設計の請負等を営むE株式会社の従業員として同社の営業等の業務に従事していたもの,分離前の相被告人Fは,同市c区に本店を置き,土木建築の設計等を営む株式会社Gの取締役として同社の営業等の業務に従事していたものであるが,a町が発注する業務委託の指名競争入札における予定価格及び最低制限価格の決定並びに業務委託契約の締結等の職務を統括掌理していた被告人Aは,
D及びFと共謀の上,
平成27年7月15日にa町が執行した平成27年度a町流域関連公共下水道事業d処理分区実施設計業務委託及び同事業e処理分区実施設計業務委託(その1)の各指名競争入札に際し,被告人Aが,上記職務に従事する者として適正に入札等に関する職務を行う義務があるのに,その職務に反し,同月9日から同月10日頃までの間に,a町の被告人Aの居所において,Dに電話をかけ,d処理分区実施設計業務委託及びe処理分区実施設計業務委託(その1)の各指名競争入札の指名業者であるEのDに対し,

1
入札に関する秘密事項であるd処理分区実施設計業務委託の入札書比較価格(2165万3000円。税抜き予定価格)及び最低制限価格(1402万円。税抜き)を教示し,よって,同月15日,a町所在のa町役場において執行されたd処理分区実施設計業務委託の指名競争入札において,Eをして,上記最低制限価格(税抜き)に近接した金額である1402万4000円(税抜き)で入札させてd処理分区実施設計業務委託を落札させ,

2
入札に関する秘密事項であるe処理分区実施設計業務委託(その1)の入札書比較価格(3065万6000円。税抜き予定価格)及び最低制限価格(1924万円。税抜き)を教示し,Dが,同月11日頃,北九州市f区所在のHにおいて,e処理分区実施設計業務委託(その1)の指名競争入札の指名業者であるGのFに対し,
上記のとおりのe処理分区実施設計業務委託
(そ
の1)の入札書比較価格(税抜き予定価格)及び最低制限価格(税抜き)を伝達し,よって,同月15日,a町役場において執行されたe処理分区実施設計業務委託(その1)の指名競争入札において,Gをして,上記最低制限価格(税抜き)に近接した金額である1945万円(税抜き)で入札させてe処理分区実施設計業務委託(その1)を落札させ,
もって,偽計を用いるとともに入札等に関する秘密を教示することにより,入札等の公正を害すべき行為をした。
第3

分離前の相被告人Iは,北九州市b区に本店を置き,設計業務等を営む株式会社Jの代表取締役として同社の業務全般を統括掌理していたもの,分離前の相被告人Kは,従前から被告人Aと親交を結んでいたものであるが,a町が発注する業務委託の指名競争入札における予定価格及び最低制限価格の決定並びに業務委託契約の締結等の職務を統括掌理していた被告人A及び被告人Bは,K及びIと共謀の上,平成27年7月15日にa町が執行した平成27年度a町流域関連公共下水道事業e処理分区実施設計業務委託(その2)の指名競争入札に際し,被告人Aが,上記職務に従事する者として適正に入札等に関する職務を行う義務があるのに,その職務に反し,同月10日頃,同県田川市所在のLにおいて,被告人Bに対し,入札に関する秘密事項であるe処理分区実施設計業務委託(その2)の最低制限価格(1485万円。税抜き)を伝達し,同月11日頃,被告人Bが,同市所在の株式会社M事業本部事務所において,e処理分区実施設計業務委託(その2)の指名競争入札の指名業者であるJのIに対し,上記のとおりのe処理分区実施設計業務委託(その2)の最低制限価格(税抜き)を教示し,よって,同月15日,a町役場において執行されたe処理分区実施設計業務委託(その2)の指名競争入札において,Jをして,上記最低制限価格(税抜き)に近接した金額である1488万円(税抜き)で入札させてe処理分区実施設計業務委託(その2)を落札させ,もって,偽計を用いるとともに入札等に関する秘密を教示することにより,入札等の公正を害すべき行為をした。
第4

a町が発注する業務委託の指名競争入札における予定価格及び最低制限価格の決定並びに業務委託契約の締結等の職務を統括掌理していた被告人A及び被告人Bは,Kと共謀の上,前記第3のとおり,e処理分区実施設計業務委託(その2)の指名競争入札に際し,被告人Aが,平成27年7月11日頃,M事業本部事務所において,被告人Bを介し,上記指名競争入札の指名業者であるJのIに対し,入札に関する秘密事項であるe処理分区実施設計業務委託(その2)の最低制限価格(税抜き)を教示して,被告人Aの職務上不正な行為をし,これに対する謝礼の趣旨で供与されるものであることを知りながら,被告人Bにおいて,Iから,同月16日頃,北九州市b区所在のNにおいて,現金150万円の供与を受け,もって,被告人Aの職務上不正な行為をしたことに関し,賄賂を収受した。

(量刑の理由)
1
被告人Aについて
被告人Aは,a町の町長という立場にありながら,第1のとおり,特別養護老人ホームの設置に関し,被告人Bから請託を受けた上で,現金1000万円の賄賂を収受し,また,a町で行われる3件の実施設計業務委託の指名競争入札に際し,第2,第3のとおり,その指名業者である3社の業者に最低制限価格等を教示し,さらに,第4のとおり,うち1社の代表者であるIから,その謝礼の趣旨で,現金150万円の賄賂を収受したものである。
いずれの犯行も,a町の業務の公正やこれに対する社会一般の信頼を大きく損なう悪質なものである。被告人Aは,第1の犯行においては,町長に就任して1年と経たないうちに,被告人Bから具体的な請託を受けると,それを実現させるべく,自ら福岡県のヒアリングに出席するなど,被告人Bに便宜な取り計らいを行い,賄賂については,自ら金額を伝えるなどしている。また,第2ないし第4の犯行においては,指名競争入札に参加する業者が知ることで,それと近接した価格で入札して落札することが容易となる,秘匿性の高い情報である最低制限価格等を,特定の業者のみに教示しており,いずれの業者も実際に落札できているから,現に指名競争入札の公正を大きく害している。さらに,第1,第4の犯行において被告人Aが収受した賄賂の金額は,合計1150万円と高額である。被告人Aは,地方公共団体であるa町の首長として,その職責の重さや町民からの負託に思いを致し,同町のために公正に職務を行うべき立場にありながら,私利を優先してその権限を悪用し,社会一般の信頼を大きく害する行為を繰り返したものであるから,その刑事責任は重く,実刑に処するのが相当である。その上で,被告人Aは,いずれの事実も認め,当公判廷においても反省の弁を述べていること,被告人Aに前科はないこと,被告人Aが日本ユニセフ協会に10万円を寄付したほか,a町に150万円等の寄付を申し出ていることなどの事情も併せて考慮し,主文の刑を量定した。
2
被告人Bについて
被告人Bは,知人で,指名競争入札の指名業者の代表者であるIから依頼を受けると,自ら被告人Aから最低制限価格を聞き出すことを申し出たり,遠戚で,共同で事業を行うなど親密な関係にあったKに補佐役を依頼したりするなどした上で,
被告人Aに対し,
最低制限価格をIに教示するよう働きかけたものである。
被告人AとIとの間には希薄な関係しかなかったことに照らせば,被告人B及びKからの働きかけがなければ被告人AがIの依頼に応じることはなかったと考えられる。また,被告人Bは,自らIから賄賂を受け取り,その後,収受した賄賂の4分の1である現金37万5000円を報酬として得ている。労せずして報酬を得られるなどと考え,a町の業務の公正やこれに対する社会一般の信頼を大きく損なう第3,第4の犯行に積極的に関与し,重要な役割を担ったものであり,被告人Bについても,その刑事責任を軽視することはできない。
しかしながら,他方で,被告人Bは,いずれの事実も認め,当公判廷においても反省の弁を述べていること,被告人Bに前科はないこと,被告人Bが150万円の贖罪寄付をしたこと,被告人Bの妻が当公判廷に出廷し,今後の監督を誓約したことなど,酌むべき一般情状事実をも併せて考慮すると,被告人Bについては,主文のとおりの刑に処した上で,今回に限り,その刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。
(求刑

被告人Aにつき懲役4年並びに主文同旨の没収及び追徴,被告人Bにつき
懲役2年及び主文同旨の追徴)
平成31年3月28日
福岡地方裁判所第2刑事部

裁判長裁判官

平塚浩司
裁判官

蜷川省吾
裁判官

平岩彩

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