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異議申し立て棄却処分取消請求控訴事件 特許権 行政訴訟
事件番号平成30(行コ)10006
事件名異議申し立て棄却処分取消請求控訴事件
裁判年月日令和元年6月17日
法廷名知的財産高等裁判所
原審裁判所名東京地方裁判所
原審事件番号平成29(行ウ)297
裁判要旨特 判決年月日 令和元年6月17日 担
許 当 知財高裁第1部
権 事 件 番 号 平成30年(行コ)第10006号 部
○ 特許法112 条の2第1項所定の「正当な理由」があるときとは, 原特許権者 とし
て,相当な注意を尽くしていたにもかかわらず,客観的にみて 追納期間内に特許料等を
納付することができなかったときをいう。
(事件類型)異議申立棄却処分取消等 (結論)控訴棄却
(関連条文)特許法112条の2第1項
判 決 要 旨
1 本件は,控訴人が,特許料等の不納付により消滅したものとみなされた本件特許権につい
て本件納付書を提出したにもかかわらず,特許庁長官から本件却下処分を受けたことを不服と
して,本件異議申立てをしたが,これを棄却する旨の本件決定を受けたため,控訴人が,本件
却下処分及び本件決定の各取消しなどを求めた事案である。
2 原判決は,①本件決定の取消しを求める訴えにおいて,本件決定の違法事由として主張し
得るのは,本件決定の固有の瑕疵に限られるところ,かかる主張はないから,本件決定の取消
請求には理由がない,②本件納付期間徒過について「正当の理由」は認められないから,本件
却下処分の取消請求には理由がないなどと判断して,控訴人の請求を全部棄却した。控訴人は,
原判決のうち,上記①②の判断を不服として本件控訴を提起した。
3 本判決は,「正当な理由」の意義につき,以下のとおり判 示した上で,本件では「正当な
理由」は認められないなどと判断して,本件控訴を棄却した。
我が国では,特許権者は,従前,特許料を追納することができる期間内に特許料及び割増特
許料を納付しなかった場合には,「その責めに帰することができない理由」がない限り,救済
されなかったところ,平成23年法律第63号による改正後の特許法112条の2第1項によ
り,特許料等を納付することができなかったことについて「正当な理由」があるときは,一定
の期間内に限り,これを救済することとされた。
これは,特許法条約(PLT)において手続期間の経過によって出願又 は特許に関する権利
の喪失を引き起こした場合の「権利の回復」に関する規定が設けられ,加盟国に対して救済を
認める要件として「Due Care(相当な注意)を払っていた」又は「Unintent
ional(故意ではない)であった」のいずれかを選択することを認めており(PLT12
条),同規定に沿った諸外国の立法例として,例えば,欧州においては,「Due Care」
基準を採用し,相当な注意を払っていたにもかかわらず期間の不遵守が生じた場合に救済が認
められる運用がされていることなどを踏まえ,当時,我が国はPLTに未加盟であったものの,
国際的調和の観点から,特許権者について,期間の徒過があった場合でも,柔軟な救済を図る
ことにしたものと解される。
も っ と も , 特 許法 1 12 条 の 2 第 1 項所 定 の「 正 当 な 理 由 」の 意 義を 解 す る に 当 たっ て は ,
-1-
①特許権者は,自己責任の下で,追納期間内に特許料等を納付することが求められること,②
追納期間経過後も,消滅後の当該特許権が回復したものとみなされたか否かについて,第三者
に過大な監視負担を負わせることになることを考慮する必要がある。
そうすると,特許法112条の2第1項所定の「正当な理由」があるときとは, 原特許権者
として,相当な注意を尽くしていたにもかかわらず,客観的にみて追納期間内に特許料等を納
付することができなかったときをいうものと解するのが相当である。
-2-
裁判日:西暦2019-06-17
情報公開日2019-06-25 03:33:15
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令和元年6月17日判決言渡
平成30年(行コ)第10006号

異議申し立て棄却処分取消請求控訴事件

原審・東京地方裁判所平成29年(行ウ)第297号
口頭弁論終結日令和元年5月29日
判決控被訴控人訴X人国
同代表者法務大臣
処分
行政


同指定代理人

特許庁長官
木佑馬加藤寛輝高橋近野智木主荒原理聡香子沙文
本件控訴を棄却する
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1
原判決を取り消す。

2
特許庁長官が,平成28年12月2日付けでした,平成27年5月7日付け
異議申立てについて,同申立てを棄却するとの決定を取り消す。
3
特許庁長官が,特許第4527763号の特許権に係る第4年分から第5年
分特許料納付書について,平成27年3月19日付けでした手続却下処分を取り消す。
第2事案の概要(略称は,原判決に従う。)
1
本件は,控訴人が,特許料等の不納付により消滅したものとみなされた本件
特許権について本件納付書を提出したにもかかわらず,特許庁長官から本件却下処分を受けたことを不服として,本件異議申立てをしたが,これを棄却する旨の本件決定を受けたため,控訴人が,本件却下処分及び本件決定の各取消しを求めるとともに,慰謝料の支払を求めた事案である。
2
原判決は,①本件決定の取消しを求める訴えにおいて,本件決定の違法事由
として主張し得るのは,本件決定の固有の瑕疵に限られるところ(行政事件訴訟法10条2項),控訴人は,本件決定の違法事由として原処分である本件却下処分の実体的判断の誤りを主張するにとどまり,本件決定に固有の瑕疵があることを主張しないから,本件決定の取消請求には理由がない,②本件期間徒過について特許法112条の2第1項所定の正当の理由は認められないから,本件却下処分の取消請求には理由がない,③国賠法1条1項に基づく慰謝料の請求には理由がない,として,控訴人の請求をいずれも棄却した。
3
控訴人は,原判決のうち,本件却下処分及び本件決定の各取消請求を棄却し
た部分を不服として,控訴を提起した。
4
前提事実は,原判決事実及び理由の第2の2記載のとおりであるから,
これを引用する。
5
争点及び当事者の主張は,以下のとおり,当審における当事者の主張を付加
するほかは,原判決事実及び理由の第2の3,4記載のとおりであるから,これを引用する。
[控訴人の主張]
別紙平成31年1月1日付け控訴理由書及び同年4月17日付け控訴理由書記載のとおり。
特許出願書類に著作権があることは,特許庁のホームページにも書かれており,特許は著作権でもあるから,権利はく奪,没収,消滅するという法律は,憲法及び法律に違反する。
特許審査基準が年によって差があること,特許庁は,本件特許権の特許料の納付期限に請求書を送付していないが,現在は送付していることも,憲法の平等原則に違反する。
[被控訴人の主張]
控訴人が控訴審において提出した証拠によっても,本件追納期間当時の控訴人の病状と本件期間徒過との因果関係が何ら明らかとなるものではなく,控訴人の主張を前提としても,控訴人が特許権者として相当な注意を尽くしていたということはできない。
第3当裁判所の判断
1
当裁判所も,控訴人の請求は,いずれも棄却すべきものと判断する。その理
由は,以下のとおり訂正するほか,原判決の事実及び理由の第3の1ないし3記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)

(1)原判決6頁22行目冒頭から7頁7行目末尾までを次のとおり改める。特許法112条の2第1項所定の「正当の理由

の意義
我が国では,特許権者は,従前,特許料を追納することができる期間内に特許料及び割増特許料を納付しなかった場合には,その責めに帰することができない理由がない限り,救済されなかったところ,平成23年法律第63号による改正後の特許法112条の2第1項により,特許料等を納付することができなかったことについて正当な理由があるときは,一定の期間内に限り,これを救済することとされた。
これは,特許法条約(PLT)において手続期間の経過によって出願又は特許に関する権利の喪失を引き起こした場合の権利の回復に関する規定が設けられ,加盟国に対して救済を認める要件としてDueCare(相当な注意)を払っていた又はUnintentional(故意ではない)であったのいずれかを選択することを認めており(PLT12条),同規定に沿った諸外国の立法例として,例えば,欧州においては,DueCare基準を採用し,相当な注
意を払っていたにもかかわらず期間の不遵守が生じた場合に救済が認められる運用がされていることなどを踏まえ,当時,我が国はPLTに未加盟であったものの,国際的調和の観点から,特許権者について,期間の徒過があった場合でも,柔軟な救済を図ることにしたものと解される。
もっとも,特許法112条の2第1項所定の正当な理由の意義を解するに当たっては,①特許権者は,自己責任の下で,追納期間内に特許料等を納付することが求められること,②追納期間経過後も,消滅後の当該特許権が回復したものとみなされたか否かについて,第三者に過大な監視負担を負わせることになることを考慮する必要がある。
そうすると,特許法112条の2第1項所定の正当な理由があるときとは,原特許権者として,相当な注意を尽くしていたにもかかわらず,客観的にみて追納期間内に特許料等を納付することができなかったときをいうものと解するのが相当である。」
(2)

原判決7頁18行目原告についてから19行目

(甲9の1)。

まで
を次のとおり改める。
原告は,平成21年1月27日,右環指反射性交感神経ジストロフィーとの傷病名で診察を受けていること(甲25),平成22年3月12日付けで,右踵骨骨折,右中指固有神経炎,右中指化膿性爪周囲炎,右母指MP関節炎の診断を受けていること(甲20の1),平成25年10月22日付けで,右踵骨骨折,右環指固有神経炎,右化膿性中指爪周囲炎,右母趾MP関節炎の診断を受けていること(甲20の2),平成22年3月25日付けで,遷延性抑うつ反応との診断を受けていること(甲9の1),平成23年11月22日付けでうつ病の治療薬が処方されていること(甲23),平成24年3月15日にウォーキングステッキを購入していること(甲22),平成27年1月15日付けの書面訊問事項に対する回答書において,右正中神経環指枝障害,右内側足底神経障害と診断されていること(甲19),平成30年9月9日付けで,平成20年11月10日に交通事故に遭い,疼痛が後遺障害として残存したことにより,抑うつ状態が遷延している旨の診断を受けていること(甲16)が認められる。(3)

原判決7頁25行目②から8頁2行目③の前までを,次のとおり改
める。
②本件追納期間中もほぼ毎週整形外科に通院しており(甲15,乙7[平成26年5月15日付け青森県立中央病院医師作成の診断書から始まる添付資料の2,4,8,13,14枚目,2013/04/02(44)外来診療録との記載から始まる添付書類の5ないし16枚目])歩行すること自体は可能であったことがうかが,われること,(4)

原判決8頁10行目遷延性抑うつ反応の後に,,交通事故による手足の後遺障害を付加する。(5)

原判決8頁11行目ことがあったしてもをことがあったとしてもと
改める。
(6)

原判決9頁6行目末尾に行を改めて次のとおり加える。

その他控訴人は,るる主張するが,いずれも独自の見解であって,採用できない。

2
結論

以上によれば,本件却下処分及び本件決定の各取消しを求める控訴人の請求は,いずれも理由がないからこれを棄却すべきであり,これと同旨の原判決は相当である。
よって,本件控訴は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官

高部眞
裁判官

小林康彦
裁判官

関根澄子規子
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