判例検索β > 平成29年(あ)第605号
わいせつ誘拐、殺人、死体損壊、死体遺棄被告事件
事件番号平成29(あ)605
事件名わいせつ誘拐,殺人,死体損壊,死体遺棄被告事件
裁判年月日令和元年7月1日
法廷名最高裁判所第一小法廷
裁判種別決定
結果棄却
原審裁判所名大阪高等裁判所
原審事件番号平成28(う)425
原審裁判年月日平成29年3月10日
判示事項被告人を死刑に処した裁判員裁判による第1審判決を量刑不当として破棄し無期懲役に処した原判決の量刑が維持された事例
裁判日:西暦2019-07-01
情報公開日2019-07-04 12:00:05
戻る / PDF版
平成29年(あ)第605号

わいせつ誘拐,殺人死体損壊死体遺棄被告

事件
令和元年7月1日

第一小法廷決定

主文
本件上告を棄却する
理由
検察官の上告趣意は,判例違反をいう点を含め,実質は量刑不当の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
所論に鑑み,記録を調査しても,刑訴法411条を適用すべきものとは認められない。
本件は,被告人が,わいせつ目的で当時6歳の被害者を自宅に誘い入れて誘拐した上,被害者の頸部にビニールロープを巻き付けて締め付け,意識を失った被害者の後頸部を包丁で複数回突き刺して殺害し,遺体を切断するなどして損壊し遺棄したという事案である。殺人の犯行は,誘拐の犯行の発覚を免れるとともに遺体にわいせつな行為をしたいと考えて,突発的に強固な殺意が生じたもので,その動機,経緯は余りにも身勝手であり,複数の凶器を使用して確実に被害者を殺害した態様は冷酷かつ残忍である。鋭利な包丁で遺体を切り刻むなどした死体損壊死体遺棄の態様は凄惨である。被害者の遺族の処罰感情が極めて厳しいのも十分理解できる。被告人の刑事責任は誠に重い。
原判決は,上記の諸事情を踏まえつつも,本件において,殺害の計画性が認められないことは相応に重くみるべき要素であり,また,殺害の動機の身勝手さ及び犯行態様の残虐性に関する第1審判決の評価は過大で是認できず,これを前提とした被告人の刑事責任の重大性に関する第1審判決の総合評価も過大であり,犯行全体からうかがわれる生命軽視の姿勢が甚だしく顕著であるとまではいえないとした。そして,原判決は,性的な目的や動機により1名の被害者が殺害された同種事案において,殺害の計画性が認められず,性的被害も伴わない場合には,同種の重大な前科のない者に対し死刑が選択されてはいないという近時の裁判例の傾向に照らし,本件で公平の観点から死刑の選択が許容されるとはいえないとしている。これに対し,所論は,本件の罪質,動機,殺害及び死体損壊死体遺棄の犯行態様,結果の重大性等を考慮すれば,殺害の計画性の有無にかかわらず,犯行全体として被告人の生命軽視の姿勢が甚だしく顕著であり,死刑の選択が許されるべき事情が認められるという。しかしながら,これらの諸事情を踏まえても,殺害の計画性が認められず,被告人による生命侵害は前科を含めても本件の1回のみにとどまることなどを考え合わせると,犯行全体からうかがわれる被告人の生命軽視の姿勢は明らかではあるが,甚だしく顕著であるとまでいうことはできない。そうすると,本件においては,死刑が究極の刑罰であり,その適用は慎重に行われなければならないという観点及び公平性の確保の観点を踏まえ,上記量刑要素を総合的に評価すると,被告人の刑事責任は誠に重大であるものの,死刑を選択することが真にやむを得ないとまではいい難い。したがって,第1審の死刑判決を破棄し,被告人を無期懲役に処した原判決が,刑の量定において甚だしく不当であってこれを破棄しなければ著しく正義に反するものということはできない。
よって,刑訴法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官
木澤克之

山口

裁判官


裁判官

池上政幸

深山卓也)
裁判官

小池


裁判官

トップに戻る

saiban.in