判例検索β > 平成28年(行ウ)第37号
川内原子力発電所設置変更許可取消請求事件
事件番号平成28(行ウ)37
事件名川内原子力発電所設置変更許可取消請求事件
裁判年月日令和元年6月17日
法廷名福岡地方裁判所
結果棄却
裁判日:西暦2019-06-17
情報公開日2019-07-05 12:00:14
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主1文
原告A,原告B,原告C,原告D,原告E,原告F及び原告Gの訴えをいずれも却下する。

23
その余の原告らの請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
(目次)

請求...............................................................3事案の概要等.......................................................31事案の概要.........................................................32関係法令の定め.....................................................33前提事実...........................................................4(1)当事者等........................................................4
(2)原子力発電の概要等..............................................4(3)本件各原子炉の概要等............................................7(4)福島第一原子力発電所における事故の概要等........................7(5)火山活動に関する知見等.........................................11(6)本件各原子炉周辺に所在する火山等...............................13
(7)原子力関連法令等の改正及び制定等...............................16(8)火山影響評価ガイドの策定等.....................................21(9)本件訴訟に至る経緯.............................................304争点及びこれに関する当事者の主張..................................31(1)原告適格の有無(争点1).......................................31
(2)本件申請が設置許可基準規則6条1項の要件を満たすと判断したことの違法性の有無(争点2)..............................................32当裁判所の判断....................................................711争点1(原告適格の有無)について..................................71(1)原告適格の有無の判断基準.......................................71(2)認定事実.......................................................74ア
放射線防護における確定的影響と確率的影響.....................74

国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告.......................76
ウ低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ報告書.....81エオ
放射線被ばくによる健康への影響等.............................83

チェルノブイリ原発事故による影響等...........................87

福島第一原発事故による影響等.................................88

日常生活における放射線による影響等...........................83
本件各原子炉における事故のシミュレーション...................92
(3)検討...........................................................942争点2(本件申請が設置許可基準規則6条1項の要件を満たすと判断したことの違法性の有無)について...........................................103(1)本件処分の違法性に係る司法審査の在り方........................103(2)認定事実......................................................108アイ
SSG-21の定め等.........................................108火山ガイドの策定過程等......................................108

日本火山学会原子力問題対応検討委員会巨大噴火の予測と監視に関する提言.........................................................111エ「原子力施設における火山活動のモニタリングに関する検討チーム提とりまとめ..................................................111

原子力発電所の火山影響評価ガイド(火山ガイド)における設計対応不可能な火山事象を伴う火山活動の評価に関する基本的な考え方...115

火山影響評価に係る技術的知見の整備...........................117

本件申請及び本件適合性審査の概要............................118

火山現象に関する知見等......................................118

カルデラ噴火とマグマ溜まりの関係等に関する知見..............128
(3)設置許可基準規則6条の合理性について..........................130(4)火山ガイドの合理性について....................................131
(5)原子力関連法令等の趣旨について.................................138(6)本件適合性審査における個別評価について........................141(7)影響評価について..............................................147(8)小括..........................................................149結論.............................................................149
請求
原子力規制委員会が平成26年9月10日付けで参加人九州電力株式会社に対してした核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第43条の3の8第1項に基づく川内原子力発電所第1号炉及び第2号炉に対する設置変
更許可処分を取り消す。
事案の概要等
1
事案の概要
本件は,原告らが,参加人が設置し,運転する川内原子力発電所(以下川内原発という。)の1号発電用原子炉施設(以下1号機という。)及び
2号発電用原子炉施設(以下2号機といい,1号機と併せて本件各原子炉という。)について,処分行政庁が平成26年9月10日付けで参加人に対してした設置変更許可処分(以下本件処分という。)の取消しを求める事案である。
2
関係法令の定め
別紙2のとおりであり,略称も,以下便宜上再掲することがあるほか,これ
に従う。
3
前提事実(顕著な事実,争いがない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により認定することができる事実)

(1)当事者等

原告らは,別紙1当事者目録記載の住所地に居住する者である。


参加人は,電力事業等を目的とする会社であり,鹿児島県薩摩川内市内
に所在する川内原発において,本件各原子炉を設置している。

処分行政庁は,原子力規制委員会設置法(以下設置法という。)2
条に基づいて,環境省の外局として設置され,発電用原子炉の設置等に関する許可権限を有する機関である(以下,処分行政庁のことを原子力規制委員会ということもある。)。(2)原子力発電の概要等

原子力発電とは,
ウラン燃料が核分裂する際に放出する熱エネルギーを利

用することによって水を蒸気に変え,
その蒸気の力でタービンを回転させて
発電することを基本的な原理とする発電方法である。
原子力発電では,原子炉内部にウラン燃料を装荷し,ウラン燃料の核分裂連鎖反応を利用して,熱エネルギーを継続的に発生させる。核分裂連鎖反応とは,中性子が原子核に衝突し,これにより原子核が分裂(核分裂)し,エネルギーを発生させるとともに中性子を放出し,放出された中性子
が更に別の原子核に衝突して次の核分裂を起こす過程が繰り返され,核分裂が継続することをいう。ウランの核分裂連鎖反応では,1回の核分裂により二,三個の中性子が放出され,これらの中性子は,炉心の外に逃げ出すか,核分裂を引き起こさない物質に吸収されるか,次の核分裂を起こすことになる。
このうち,
1回の核分裂で発生した二,
三個の中性子のうち,

1個のみが次の核分裂を引き起こす状態,つまり核分裂を引き起こしたのと同数の中性子が次の核分裂を引き起こす状態では,核分裂の数が一定に
保たれる(このような状態は臨界と呼ばれる。)。他方,次の核分裂を起こす中性子の数が,核分裂を引き起こさない物質に吸収されること等により,核分裂を引き起こした数より少なくなる状態では,核分裂連鎖反応はやがて止まることになる(このような状態は未臨界と呼ばれる。)。原子力発電所(発電用原子炉)とは,ウラン燃料の核分裂連鎖反応を制
御しつつ,これを継続的に発生させることによって熱エネルギーを発生させ,発電用タービンを回転させる蒸気を作るための装置である。その中心部(炉心)は,核分裂連鎖反応を起こして発熱する核燃料,核分裂で新たに発生する高速の中性子を次の核分裂反応が起こりやすい状態にまで減速させるための減速材,発生した熱を取り出すための冷却材及び核分裂連鎖
反応を制御するための制御材等から構成される。原子炉は,原子炉圧力容器及び原子炉格納容器に入れられ,この原子炉格納容器は原子炉建屋に覆われる。
(乙C1(殊に,29頁以下,31頁以下))

発電用原子炉のうち,減速材及び冷却材の両者の役割を果たすものとし
て,水(軽水)を用いるものを軽水型原子炉という。軽水型原子炉には,沸騰水型原子炉(BWR)と加圧水型原子炉(PWR)の2種類がある。本件各原子炉は,いずれも加圧水型原子炉である。(乙C1(31頁))ウ
加圧水型原子炉の構造及び発電の仕組みは以下のとおりである。
(ア)加圧水型原子炉では,原子炉内を加圧することにより原子炉の冷却材(一次冷却材)を沸騰させることなく高温,高圧の熱水状態で維持し,この熱水を熱源として別の系統の水(二次冷却材)を蒸気に変え,主蒸気管を通じてこの蒸気をタービンに送ることにより,発電が行われる。タービンを回転させた蒸気は,復水器で冷却水(海水)によって冷却さ
れて水となり,この水(二次冷却材)は,給水管を通って蒸気発生器に戻される。放射性物質を含んだ一次冷却材とそれを冷却する二次冷却材
とは,蒸気発生器の伝熱管を通して熱交換を行っているにすぎず,これらが接触することはない。
(イ)加圧水型原子炉に用いる核燃料には,二酸化ウランを円柱状に焼き固めた燃料ペレットが使用されている。この燃料ペレットを金属管に被覆したものを燃料棒といい,
燃料棒をまとめた燃料集合体が,発電用原子

炉の炉心を構成する。また,制御材として,中性子吸収材(銀‐インジウム‐カドミウム)が詰められている制御棒が燃料集合体内部にクラスタ上に配置されており,この制御棒を出し入れすることによって,炉心に存在する中性子の数を増減させ,核分裂連鎖反応を調整し,出力を制御している。

また,加圧水型原子炉では,一次冷却材に中性子を吸収するホウ酸を混ぜ,その濃度を調整することによって出力を調整することもできる。(乙C1(34頁以下))

発電用原子炉は,
安全性確保の観点から,
異常を早期に検知し,
緊急を要

する異常を検知した場合には,
すべての制御棒を原子炉内に自動的に挿入す
ることで核分裂連鎖反応を止めて,
原子炉を緊急停止できる設計となってい
る。
また,
万一事故に発展した場合においても,その影響を緩和するため,
燃料を冷却し,
放射性物質の異常な水準の放出を防止できる設計とされてい
る。(乙C1(37頁以下))

原子炉を止めるための設備としては,制御棒及びこれを急速に挿入するスクラム機能があり,緊急を要する異常時において,制御棒を急速に挿入することで,原子炉を安全に緊急停止させる設計がされている。また,原子炉を緊急停止した場合でも,原子炉内の燃料に運転中に生成,蓄積された核分裂生成物等が存在し,崩壊熱(核分裂の結果生じた核分裂生成物が
別の原子核に変化していく際に放出されるエネルギーが周辺の物質に吸収されて,最終的に熱になったもの)が発生するため,非常用炉心冷却設備
等により,炉心を冷却できる設計がされている。さらに,非常用炉心冷却設備により除去した熱を最終的な熱の逃し場へ輸送する系統により,原子炉圧力容器内において発生した残留熱を除去する設計がされている。(乙C1,D32)
(3)本件各原子炉の概要等

本件各原子炉は,いずれも,加圧水型原子炉の構造であり,燃料として
低濃縮二酸化ウランを使用しており,その装荷量は約74トン,その電気出力は89万キロワットである。

1号機は,昭和59年7月4日に営業運転を開始し,平成23年5月に
定期点検を開始し,その後運転を停止していたが,平成27年9月10日に運転を再開した。
2号機は,昭和60年11月28日に営業運転を開始し,平成23年9月に定期点検を開始し,その後運転を停止していたが,平成27年11月17日に運転を再開した。


本件各原子炉には,原子炉内で3ないし4年使用され,使い終わった使
用済燃料が平成27年3月末日時点で合計1946本貯蔵されており,また,まだ原子炉で使用されていない燃料である新燃料が同日時点で合計88本装荷されている。
(甲B1,乙C1)
(4)福島第一原子力発電所における事故の概要等

平成23年3月11日,東北地方の三陸沖を震源とするマグニチュード
9.0の地震(東北地方太平洋沖地震)が発生した。この東北地方太平洋沖地震及びそれに伴って発生した津波により,東京電力株式会社が福島県双葉郡に設置していた福島第一原子力発電所(以下福島第一原発という。)の1号機ないし4号機では,長時間の全交流電源喪失が発生し,また,
1号機,
2号機及び4号機では,
直流電源を喪失した。これによって,

福島第一原発の1号機,2号機及び3号機の各発電用原子炉では,原子炉内の燃料が溶融し,また,同1号機,3号機及び4号機では,原子炉格納容器を覆っている原子炉建屋内で水素爆発が発生し,これらの事故によって放射性物質が大気中に拡散した
(以下,
福島第一原発における事故を
福島第一原発事故という。)。(甲A1)

放射性物質に関する知見

(ア)放射性物質について
放射性物質とは,放射線(原子核の崩壊や核分裂反応のときに放出される粒子や電磁波)を放つ物質のことをいい,放射線を浴びることを被ばくという。そして,放射線には,代表的なものとして,アルファ線,ベータ線及びガンマ線がある。
(a)このうち,アルファ線は,陽子2個と中性子2個が組み合わさってできているヘリウム原子核の粒子であり,空気中では45㎜,体内では0.04㎜しか飛ばず,透過力(放射線が物質を突き抜ける
力)が非常に弱く,紙1枚で止めることができる。もっとも,他の放射線に比べてエネルギーが高く,人体に及ぼす影響も大きい。
(b)ベータ線は,電子の粒子であり,空気中では1m,体内では1㎝しか飛ばず,透過力は,プラスチック板1枚で止めることができる程度である。エネルギーの強さ及び人体への影響の程度は,アルフ
ァ線とガンマ線の間程度である。
(c)ガンマ線は,アルファ線やベータ線のような粒子ではなく,エックス線の一種であり,空気中であれば70m飛び,透過力も非常に高い。
一方で,
エネルギーは,
アルファ線やベータ線に比べて弱い。
放射性物質には,放射線を発射しながら原子核を崩壊させ,次第に
放射線を出す能力(放射能)が弱まっていく性質がある。
放射能が弱くなっていく速度は,原子核の種類(核種)によって決
まっているところ,それぞれの原子核の種類で放射能が半分になる期間は,半減期と呼ばれている。放射線核種のうち,ヨウ素131
の半減期は8.04日,セシウム137の半減期は30.1年,プルトニウム239の半減期は2万4390年である。
(甲A73,74,乙D32)
(イ)被ばくによる人体への影響
放射線には,電離作用と呼ばれる性質がある。
地球上の物質は,原子から構成され,原子同士が結合した分子によって,物質が形作られている。原子は,原子核と電子で構成されてお
り,原子核の周りを回っている電子の軌道が,他の原子の電子の軌道と重なり合うことで発生する電子の相互作用により,原子と原子は結合している。しかしながら,放射線が電子に当たると,放射線が持つエネルギーによって,電子が軌道から弾き出され,電子の相互作用が破壊され,分子が切断される(これを電離作用という。)。

人体が被ばくし,放射線により分子が切断されると,そのこと自体による健康被害が発生するのみならず,生命体が有する修復作用により分子が再結合する際,遺伝子が組み替えられて結合し,これによって健康被害が発生することがある。殊に,放射線によりDNAが損傷した場合,突然変異が起こり,さらに多段階の変異が加わり,正常細
胞ががん化するというメカニズムがある。もっとも,生体には,DNA損傷修復機能といった防御機能が備わっており,これによって発がん性が抑制されている。
人体の被ばくには,内部被ばく(体内で発射される放射線に被ばくすること)と外部被ばく(体外からの放射線に被ばくすること)があ
る。
そして,一方で,内部被ばくも外部被ばくも健康への影響に高低は
ないという見解があるものの(乙D36(5頁)),他方で,外部被ばくによって被ばくする放射線は,ほとんどの場合,ガンマ線のみであるのに対し,内部被ばくでは,放射線を発する放射性微粒子を呼吸や飲食によって体内に入れるため,体内で発射されるすべての放射線に被ばくすることになり,
アルファ線が局所的に分子を切断する結果,
変成が何度も繰り返され,
癌に至ることがあるとして,
内部被ばくは,
外部被ばくに比べて健康への悪影響が大きいという見解もある(甲A73(35頁))。
なお,
積算量として,1シーベルトの放射線に被ばくした場合,
0.

短時間で被ばくする場合と,長期間にわたり継続的に被ばくした場合とでは,後者の方が前者に比べて健康に対する影響は小さいと推定されている(これは線量率効果と呼ばれる。(乙D36(4頁)))。(甲A73ないし75,乙D36)
(ウ)放射線の単位について

放射線の単位には,ベクレル,グレイ及びシーベルトの単位がある。ベクレルとは,放射線が放出される激しさを表す単位で,放射性物質が1秒当たりに出す放射線の数を表しており,毎秒1個の放射線を出す割合が1ベクレルである。
グレイとは,
放射線の量を図る単位で,
放射線が物質に当たった際に,

そのエネルギーがどれだけその物質に吸収されたかを表しており,吸収線量ともいわれる。そして,物質1キログラム当たり1ジュールのエネルギーを吸収したときの線量が1グレイである。
シーベルトとは,生物が被ばくした量を表す単位であり,実効線量ともいわれる。1グレイのガンマ線によって人体の組織に生じるのと同じ
生物学的影響を組織に与える放射線の量を1シーベルト(1000ミリシーベルト)というが,放射線が人体に及ぼす影響は,放射線の種類の
違いや,被ばくした臓器の箇所等によって異なるため,シーベルトは,吸収線量(グレイ)に,放射線の種類や,被ばくした臓器に応じた係数を乗じて計測される。もっとも,シーベルトという単位は,人間の肉体を直径30㎝の肉球と仮定し,体外から放射線に被ばくした場合を想定しているため,内部被ばくによる影響は考慮されていない。

(甲A73,乙D32)
(エ)自然界における放射線
自然界には,宇宙線と呼ばれる宇宙からの放射線,地殻を構成している花崗岩や石灰岩等に含まれる放射性物質から放出される放射線,人間が摂取する飲食物等の中に含まれる放射性物質から放出される放射線等
が存在するため,人類は,絶えずこれら自然界からの放射線に被ばくし続けている。このようにして自然界において受ける放射線の量は,地域によって異なるが,1人当たり平均して1年間で2.4ミリシーベルトであり,日本では1.5ミリシーベルトである。
(乙D32,37)

(5)火山活動に関する知見等

火山の噴火は,地下に形成されたマグマ溜まりから供給されたマグマが
地表に噴出することによって起きる(乙D6(78頁))。
マグマは,地下深部のマントルや地殻が溶融することによって生成される。このようにして生成されたマグマは,周囲の岩石よりも密度が小さいため浮力により上昇するが,地下の浅い場所まで到達して周囲の岩石の密度が小さくなり,マグマの密度と周囲の岩石の密度がつり合うと,上昇を停止し,マグマ溜まりを形成する。
(甲D2,3,乙D6)


マグマが冷却して固化した岩石を火成岩という。火成岩は,マグマの化
学組成と冷却速度等と関係した組織を基準として,火山岩(地表や地下の
浅いところで急速に冷えてできた火成岩)と深成岩(地下の深いところでゆっくりと冷えてできた火成岩)に大別される(乙D6(89頁))。火成岩は,さらに,苦鉄質鉱物に富む苦鉄質岩,珪長質鉱物に富む珪長質岩,両者の中間の中間質岩,さらに,ほとんど苦鉄質鉱物からなる超苦鉄質岩に分類される。火山岩のうち,苦鉄質岩に相当するのが玄武岩,中間質岩に相当するのが安山岩,珪長質岩に相当するのがデイサイト又は流紋岩である。
マグマは,マグマが固結したときに作られる火山岩の名前に基づいて分類されることがあり,例えば,地上に噴出して固化した際に玄武岩となる
マグマは,玄武岩質マグマ又は苦鉄質マグマと呼ばれ,地上に噴出して固化した際に流紋岩となるマグマは,流紋岩質マグマ又は珪長質マグマと呼ばれる。一般に,玄武岩質マグマは,噴出時には温度が高く,粘性が低い場合が多いが,流紋岩質マグマは,玄武岩質マグマと比べて,噴出時の温度は低く,粘性が高いと考えられている。
このようなマグマの物理的性質,粘性や密度は,マグマが移動する際の
速度や噴火の激しさ等と密接な関係にあり(乙D7(48頁)),通常の活火山の噴火の場合,噴出されるマグマの性質は,玄武岩質から流紋岩質まで多様であるが,カルデラを形成するような大規模噴火(以下カルデラ噴火という。
)において噴出されるマグマの性質は,
ほとんどの場合,
流紋岩質かデイサイト質である(乙9(11頁))。
(甲D3,乙D6(89,90頁),7(48ないし53頁),9(11頁))

火山の噴火の規模は,噴出した火砕物(溶岩以外の火山灰や火砕流等)
の量によって,火山爆発指数(以下VEIという。)という指標で評価される。VEIは,0から8に区分されており,噴出物の量が,0.00001㎦未満のものをVEI0,噴出量が0.00001㎦以上0.0
01㎦未満をVEI1,噴出量が0.001㎦以上0.01㎦未満をVEI2,以降噴出量が10倍増す毎にVEIの指数が1つずつ上がる。VEI6以上の噴火は,巨大噴火と呼ばれ,VEI7以上の噴火は,破局的噴火又は超巨大噴火と呼ばれることがある(甲A11(102頁))。(甲A11,甲D23,乙D5(24頁以下))

火山が噴火した場合,降下火砕物が噴出し,また,火砕物密度流や火砕
流等が生じる。
降下火砕物とは,大きさ,形状,組成若しくは形成方法に関係なく,火山から噴出されたあらゆる種類の火山砕屑物をいい,
その大きさによって,
火山岩塊,火山礫及び火山灰に分類される。
火砕物密度流とは,火山噴火で生じた火山ガス,火砕物の混合物が火山の斜面を流れ下る現象のことをいう。なお,火砕流とは,広い意味では,火砕物密度流と同じく火山ガスと火砕物の混合物が時速50ないし100㎞で斜面を流れ下る現象のことを指すが,高温の流れに限定して用いられ
ることがある。
(甲B13,甲D6)
(6)本件各原子炉周辺に所在する火山等

本件各原子炉の周辺160㎞以内には,かつて,破局的噴火を発生させ
た5つのカルデラ火山(阿蘇,加久藤・小林,姶良,阿多及び鬼界。以下本件5カルデラといい,各カルデラ火山を個別に阿蘇カルデラ等
ということがある。が存在する。

本件5カルデラは,
九州地方において,
北から阿蘇カルデラ,加久藤・小林カルデラ,姶良カルデラ,阿多カルデラ及び鬼界カルデラの順に連なっている。
カルデラとは,
輪郭が円形又はそれに近い火山性の凹陥地のことをいう。

カルデラは,火山の単純な爆発的活動によって生じたものではないと考えられていることから,火口とは区別され,また,カルデラ噴火を経験した
ことがある火山を,前記のとおりカルデラ火山ということがある。カルデラは,VEI7あるいはそれを超える規模の火災噴火では,ほぼ例外なく形成されるが,
VEI5あるいはそれよりも小さい火災噴火では,
カルデラが形成されないことが多く,VEI6の噴火の場合には,カルデラが形成される場合と形成されない場合の両方があると考えられている(甲
D23(109頁)。このことから,以下,破局的噴火という場合には,カルデラ噴火を含むものとする。)。
(甲B4,12,乙D4(271頁),9,13,14)

本件各5カルデラの概要は以下のとおりである。

(ア)阿蘇カルデラ
阿蘇カルデラは,川内原発の敷地の北東約150㎞に位置する東西約17㎞,南北約25㎞のカルデラである。阿蘇カルデラの中央部には阿蘇山(高岳及び中岳を含む東西方向に連なる成層火山群)が,その東側に根子岳が位置する(丙B83の3(4山-6-38))。

(イ)加久藤・小林カルデラ
加久藤カルデラは,川内原発の敷地の東北東約60㎞に,小林カルデラは東北東約80㎞に位置する。両カルデラは近接しており,いずれもカルデラ地形が不明瞭である。加久藤・小林カルデラ周辺の火山としては,加久藤カルデラ南縁付近に霧島山(韓国岳,新燃岳及び高千穂峰を
含む北西・南東方向に連なる成層火山及び火砕岳から成る火山群)が位置する(丙B83の3(4山-6-32))。
(ウ)姶良カルデラ
姶良カルデラは,川内原発の敷地の東南東約50㎞に位置する東西約17㎞,南北約23㎞のカルデラである。姶良カルデラの周辺には,北
東側に若尊カルデラ(直径約10㎞のカルデラ)が,南西縁に桜島(北岳等から成る成層火山)
が位置する
(丙B83の3
(4山-6-30)。


(エ)阿多カルデラ
阿多カルデラは,
北側及び南側それぞれに位置するカルデラから成り,
北部のカルデラは,川内原発の敷地の南東約70㎞に位置する東西約11㎞,南北約10㎞のカルデラであり,南部のカルデラは,川内原発の敷地の南南東約80㎞に位置する東西約20㎞,南北10㎞のカルデラ
である。阿多カルデラの周辺には,南部のカルデラの西側に指宿火山群(複数の成層火山や溶岩円頂岳から成る火山群)及び池田(直径約4㎞の池田カルデラ及びマール群等から成る)が,南西縁に開聞岳が位置する(丙B83の3(4山-6-34))。
(オ)鬼界カルデラ

鬼界カルデラは,川内原発の敷地の南方約120㎞の海域に位置する東西約23㎞,南北約16㎞のカルデラである。鬼界カルデラの周辺には,カルデラの北西縁に薩摩硫黄島(硫黄岳及び稲村岳の成層火山から成る火山島)が位置する(丙B87の3(4山-6-36))。
(丙B87の3)


鹿児島湾近郊には,
加久藤盆地(霧島北麓に所在する盆地)から鹿児島湾

の湾口まで,
屈曲しながらも,
ほぼ南北に連なっている鹿児島地溝と呼ばれ
る溝状の低地がある。鹿児島地溝には,本件5カルデラのうち,加久藤・小林カルデラ,
姶良カルデラ及び阿多カルデラ
(以下,
これらの3カルデラ火
山を本件3カルデラという。)が存在し,活火山の大半も鹿児島地溝内に分布している。
(乙D13,14,B25,28)

本件5カルデラのほか,
川内原発の敷地から160㎞以内の範囲には,

計で34の火山(距離の近いものから,川内,北薩火山群,薩摩丸山,藺牟田,米丸・住吉池,長島,招川内,雨祈岡,肥薩火山群,尾巡山,えびの火山群,輝北,財部,長尾山,横尾岳,南島原,大岳,雲仙岳,牧島,有喜,
黒島,金峰山,船野山,赤井,多良岳,大峰,虚空蔵山,弘法岳,佐世保火山群,吉ノ本,口永良部島,有田,福江火山群,荻岳)が存在する。(丙B21(4頁))
(7)原子力関連法令等の改正及び制定等

福島第一原発事故後,東京電力福島原子力発電所事故調査委員会が組織
され,
国会事故調報告書
(甲A1)がまとめられた。この報告書では,
福島第一原発事故の原因について,東京電力や規制当局が津波リスクを認識していながら対策を怠ったことや,規制当局が専門性の欠如等の理由から機能していなかったこと,福島第一原発事故は,その結果招来された人災であること,日本の原子力法規制の改定に当たっては,実際に発生した事故のみを踏まえた対症療法的,パッチワーク的対応が重ねられ,諸外国における事故や安全への取組等を真摯に受け止めて法規制を見直す姿勢に欠け,その結果,予測可能なリスクであっても過去に顕在化していなければ対策が講じられず,常に想定外のリスクにさらされることになったこと
等が指摘され,これを踏まえて,規制当局は組織の形態や位置づけを変えるだけではなく,その実態の抜本的転換を行わない限り,国民の安全は守られないこと,国民の生命・身体の安全を中核に据えた法体系の再構築や,いわゆるバックフィットにより廃炉すべき場合と次善の策が許される場合との線引きを明確にすること等の関係法令の抜本的見直しが提言さ
れた(甲A1)。

このような動きを踏まえて,原子力基本法(以下基本法という。)
及び核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下規制法という。)の改正,設置法の制定並びに関連規則,告示及び内規の作成等が行われた(以下,これらの法令等を総称して原子力関連法令等といい,
福島第一事故を踏まえて行われた改正等を
本件改正等
という。。

その概要は以下のとおりである。

(ア)本件改正等の経緯
平成24年5月29日の第180回国会衆議院本会議での原子力規制委員会設置法案の提案理由及び概要の説明において,我が国の原子力規制体制について政治が果たすべき責任は,福島第一原発事故の深い反省に立ち,原点に立ち返って真摯な議論を行い,二度とこのような事故を起こさない,確固たる規制体制を構築することにあり,国会での議論を通じ,真に安心して暮らせる日本をもたらすことが果たすべき責務である旨及び利用推進と規制とが同じ組織のもとにあるそれまでの原子力安全行政の信頼は大きく損なわれ,二度と福島第一原発
事故のような事故を起こさないためには組織と制度の抜本的な改革を行うことが必要である旨等が述べられた(甲A41)。
衆議院環境委員会における原子力規制委員会設置等に関する件
では,設置法の施行に当たり,政府は,設置法が,国民の生命,健康及び財産の保護,環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを
目的としていることに鑑み,原子力規制行政に当たっては,推進側の論理に影響されることなく,国民の安全の確保を第一として行うこと等に留意し,設置法の運用について万全を期すべきである旨決議された(甲A42)。
参議院における原子力規制委員会設置法案に対する附帯決議で

は,原子力発電所の再稼動については,事故の発生を常に想定し,その防止に最善かつ最大の努力をしなければならないことに照らし,万が一の重大事故発生時への対応策も含め,ストレステストや四大臣会合による安全性の判断基準などの妥当性に関して,原子力規制委員会において十分に検証した上で,その手続を進める旨決議された(甲A
43)。
(イ)基本法の改正

本件改正等では,基本法2条2項として,原子力利用に係る安全の確保は,確立された国際的な基準を踏まえ,国民の生命,健康及び財産の保護,環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として,これを行うものとする旨の規定が追加された。
(ウ)規制法の改正
本件改正等では,規制法1条の目的規定が,原子力施設において重大な事故が生じた場合に放射性物質が異常な水準で当該原子力施設を設置する工場又は事業所の外へ放出されることその他の核原料物質,核燃料物質及び原子炉による災害を防止し,及び核燃料物質を防護して,公共
の安全を図るために,製錬,加工,貯蔵,再処理及び廃棄の事業並びに原子炉の設置及び運転等に関し,大規模な自然災害及びテロリズムその他の犯罪行為の発生も想定した必要な規制を行う(中略),もって国民の生命,健康及び財産の保護,環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的とするものに改められた。

また,本件改正等では,規制法における発電用原子炉の設置,運転等に関する規制として,設置及び変更の許可(43条の3の5,43条の3の8),工事の計画の認可(43条の3の9),使用前検査(43条の3の11),施設定期検査(43条の3の15),保安規定の認可(43条の3の24)等の段階的な安全審査の仕組みは維持されたが,設置
許可の申請書の記載事項として,発電用原子炉の炉心の著しい損傷その他の事故が発生した場合における当該事故に対処するために必要な施設及び体制の整備に関する事項(43条の3の5第2項10号)が加えられ,設置許可の基準の一として,設置者に重大事故(発電用原子炉の炉心の著しい損傷及び核燃料物質貯蔵設備に貯蔵する燃料体又は使用済燃
料の著しい損傷(実用炉規則4条各号))の発生及び拡大の防止に必要な措置を実施するために必要な技術的能力その他の発電用原子炉の運転
を適確に遂行するに足りる技術的能力があること(43条の3の6第1項3号)が定められ,発電用原子炉設置者が発電用原子炉施設の保全等のために講じなければならない保安のために必要な措置(保安措置)に重大事故が生じた場合における措置に関する事項を含むものとされる(4
3条の3の22第1項)等,重大事故対策が強化されたほか,許可を受けた発電用原子炉施設について最新の科学的技術的知見を踏まえた新たな基準が定められた場合には当該施設を当該基準に適合させるバックフィット制度が導入され(43条の3の14,43条の3の16(基準を満たさない発電用原子炉施設に対しては運転停止や許認可の取消しを行
い得ることになる
(43条の3の23,
43条の3の20第2項)),
。)
発電用原子炉施設の運転期間を使用前検査に合格した日から起算して40年とする
(ただし,
20年を超えない期間を限度として,
一回に限り,
延長の認可をすることができる。)運転期間制限制度が導入され(43条の3の32),さらに,発電用原子炉設置者等が自ら当該発電用原子
炉施設等の安全性についての評価を行うことを義務付け,その結果等を届出させ,届出に係る評価の結果等を公表する制度が導入された(43条の3の29)。
(エ)設置法の制定
本件改正等では,原子力利用における安全の確保及び原子炉に関する
規制等を行う機関として,新たに原子力規制委員会が設置された。設置法によれば,原子力規制委員会は,東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故を契機に明らかとなった原子力利用に関する政策に係る縦割り行政の弊害を除去し,一の行政組織が原子力利用の推進及び規制の両方の機能を担うことにより生ずる問題を解消するため,原子力
利用における事故の発生を常に想定し,その防止に最善かつ最大の努力をしなければならないという認識に立って,確立された国際的な基準を
踏まえて原子力利用における安全の確保を図るため必要な施策を策定し,又は実施する事務(原子炉に関する規制に関することを含む。)を一元的につかさどるとともに,その委員長及び委員が専門的知見に基づき中立公正な立場で独立して職権を行使し,もって国民の生命,健康及び財産の保護,環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として(1条),国家行政組織法3条2項の規定に基づき,環境省の外局として設置された行政機関であり(2条),国民の生命,健康及び財産の保護,環境の保全並びに我が国の安全保障に資するため,原子力利用における安全の確保を図ること
(原子炉に関する規制に関することを含む。


を任務とし(3条),原子力利用における安全の確保に関すること,原子炉に関する規制等その他これらに関する安全の確保に関すること等に係る事務をつかさどる(4条)。
原子力規制委員会は,
委員長及び委員4人をもって組織され
(6条)

委員長及び委員は,人格が高潔であって,原子力利用における安全の確
保に関して専門的知識及び経験並びに高い識見を有する者のうちから,両議院の同意を得て,内閣総理大臣が任命し(7条),独立してその職権を行う(5条)。原子力規制委員会には,原子炉安全専門審査会等が置かれ(13条),同審査会は,原子力規制委員会の指示があった場合において,原子炉に係る安全性に関する事項を調査審議し(14条),
その審査委員は,学識経験のある者のうちから原子力規制委員会が任命する(15条)。原子力規制委員会は,その所掌事務について,法律若しくは政令を実施するため,又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて,原子力規制委員会規則を制定することができる(26条)。原子力規制委員会には,その事務を処理させるため,事務局として原子力規
制庁が置かれる(27条)。
(オ)新規制基準の作成

規制法43条の6第1項4号は,発電用原子炉の設置の要件の一つとして,発電用原子炉施設の位置,構造及び設備が核燃料物質若しくは核燃料物質によって汚染された物又は発電用原子炉による災害の防止上支障がないものとして原子力規制委員会規則で定める基準に適合するものであること(以下,同号の要件を4号要件という。)を挙げている
ことから,原子力規制委員会は,発電用軽水型原子炉の新安全基準に関する検討チーム(その後,発電用原子炉の新規制基準に関する検討チームと改称。以下,改称の前後を区別せず,新規制基準検討チーム
という。)等を設置し,上記基準について検討を行い,意見公募手続を経た上で,
上記規則として,
実用発電用原子炉及びその附属施設の位置,

構造及び設備の基準に関する規則(平成28年1月12日原子力規制委員会規則第1号による改正前のもの。設置許可基準規則
以下
という。

を制定し,
その解釈として
実用発電用原子炉及びその附属施設の位置,構造及び設備の基準に関する規則の解釈(以下設置許可基準規則解釈という。(甲C3,乙C4))を制定し,これらは平成25年7月
8日,施行された。
さらに,4号要件の適合性の審査に活用するために,基準地震動及び耐震設計方針について,基準地震動及び耐震設計方針に係る審査ガイドを,火山による影響について,原子力の火山影響評価ガイド(以下火山ガイドという。)を,津波による損傷の防止について,基準津波及
び耐津波設計方針に係る審査ガイド等の内規が策定された(以下,実用原子力発電原子炉の適合性審査に係る原子力規制委員会規則,告示及び内規等を併せて新規制基準という。)。
(8)火山ガイドの策定等

火山ガイドの策定経緯等

(ア)火山ガイドは,原子力発電所への火山の影響を適切に評価するため,
原子力発電所に影響を及ぼし得る火山の抽出,抽出された火山の火山活動に関する個別評価,原子力発電所に影響を及ぼし得る火山事象の抽出及びその影響評価のための方法と確認事項を取りまとめたものである(乙
A3(1章.総則))。
(イ)火山ガイドの策定に当たっては,国際原子力機関(IAEA)が策定したSpecificSafetyGuideNo.SSG-21(乙A4。以下SSG-21という。)及び社団法人日本電気協会原子力企画委員会が作成した原子力発電所火山影響評価技術指針(乙A6。以下JEAG4625-2009という。)等が参考とされた。

火山ガイドの原案は,独立行政法人原子力安全基盤機構(以下JNESという。)が作成し,これを基に原子力規制委員会等における議論が行われ,平成25年4月11日から同年5月10日までの間に実施された意見公募手続を経た上で,同年6月19日,火山ガイドが策定された。

(甲A123ないし125,乙A3,4,6,8の1,同10の1・2)イ
火山ガイドの定め
火山ガイドの定めは以下のとおりである(乙3)。

(ア)原子力発電所に影響を及ぼす火山影響評価の流れ(火山ガイド2章)火山ガイドが定める原子力発電所に影響を及ぼす火山影響評価は,概要以下のとおり,立地評価と影響評価の2段階で行われる。立地評価では,原子力発電所に影響を及ぼし得る火山の抽出及び設計対応不可能な火山事象(火山災害を引き起こす恐れのある,火山に関連したあらゆる事象若しくは一連の現象。以下同じ。)が原子力発電所の運用期間中に
影響を及ぼす可能性の評価が行われ,同可能性が十分小さいと評価された場合は,火山活動のモニタリングと火山活動の兆候把握時の対応を適
切に行うことを条件として,
個々の火山事象への設計対応及び運転対応
の妥当性の評価を内容とする影響評価が行われる。他方,立地評価において,設計対応不可能な火山事象が原子力発電所の運用期間中に影響を及ぼす可能性が十分小さいと評価されない場合は,原子力発電所の立地は不適とされる。
(イ)原子力発電所に影響を及ぼし得る火山の抽出(火山ガイド3章)火山ガイドが定める原子力発電所に影響を及ぼす火山影響評価においては,まず,原子力発電所に影響を及ぼし得る火山が抽出される。具体的には,原子力発電所の地理的領域(原子力発電所から半径16
0㎞の範囲の領域。以下同じ。)に対して,文献調査等で第四紀(地質時代の一つで258万年前から現在までの期間)に活動した火山を抽出した上で,文献調査,地形・地質調査及び火山学的調査を行い,火山の活動履歴,噴火規模及びその影響範囲等を把握する。
そして,原子力発電所の地理的領域内にある第四紀に活動した火山
の中から,前記調査を基に,次の2段階の評価を行い,将来活動の可能性のある火山(以下検討対象火山という。)を抽出する。すな
わち,①完新世(第4紀の区分のうちで最も新しいものであり,1万1700年前から現在までの期間)における活動の有無を確認し,完新世に活動を行った火山は,将来の活動可能性があることを示すもの
として広く受け入れられていることから,将来活動の可能性のある火山とする。
他方,②完新世に活動を行っていない火山については,前記調査結果を基に,当該火山の第四紀の噴火時期,噴火規模,活動の休止期間を示す階段ダイヤグラム(縦軸に噴出量を設定し,横軸に噴出年代を
設定し,それを分析することで将来の火山活動の規模や時期について評価するもの)を作成し,より古い時期の活動を評価する。そして,
検討対象火山の過去の活動を示す階段ダイヤグラムにおいて,火山活動が終息する傾向が顕著であり,最後の活動終了からの期間が,過去の最大休止期間より長い等,将来の活動可能性がないと判断できる場合は,火山活動に関する
の個別評価対象外とし,それ以外の火

山は,将来の火山活動可能性が否定できない火山として,

の個

別評価対象の火山とする。
(ウ)原子力発電所の運用期間における火山活動に関する個別評価(火山


イド4章)
前記
検討対象火山とされたものについては,原子力発電所の

運用期間中において設計対応が不可能な火山事象を伴う火山活動の可能性の評価を行う。この際,検討対象火山の活動を科学的に把握する観点から,過去の火山活動履歴とともに,必要に応じて実施する地球物理学的調査及び地球化学的調査を行い,現在の火山の活動の状況も併せて評価することとする。具体的には,地球物理学的観点からは,
検討対象火山に関連するマグマ溜まりの規模や位置,マグマ供給系に関連する地下構造等について,地球科学的観点からは,検討対象火山の火山噴出物等について分析することにより,火山の活動状況を把握する。また,地球物理学的調査では,地震波速度構造,重力構造,比抵抗構造,地震活動及び地殻変動に関する検討を実施し,マグマ溜ま
りの規模や位置,マグマの供給系に関係する地下構造等について調査する。地球化学的調査では,火山ガス(噴気)の化学組成分析,温度等の情報から,地理的領域に存在する火山の火山活動を調査する。ここで,設計対応不可能な火山事象とは,火山事象のうち,火砕物密度流,溶岩流,岩屑なだれ,地滑り及び斜面崩壊,新しい火口の開
口及び地殻変動の5つの事象をいう。設計対応不可能な火山事象については,検討対象火山と原子力発電所間の距離が所定の距離より大き
い場合,その火山事象を評価の対象外とすることができる。火砕物密度流については,当該距離は160㎞とされている。
そして,上記調査結果と必要に応じて実施する地球物理学的及び地球化学的調査の結果を基に,原子力発電所の運用期間中における検討対象火山の活動の可能性を総合的に評価する。評価の結果,検討対象火山の活動の可能性が十分小さい場合には,過去最大規模の噴火により設計対応不可能な火山事象が原子力発電所に到達したと考えられる火山を抽出し,

(火山ガイド5章)のとおり,火山活動のモニタ

リングを実施し,運用期間中において火山活動を継続的に評価する。これに対し,前記評価の結果,検討対象火山の活動の可能性が十分小さいと判断できない場合は,以下のとおり,火山活動の規模と設計対応不可能な火山事象の評価をする。
(a)検討対象火山の調査結果から噴火規模を推定する。調査結果から噴火の規模を推定できない場合は,検討対象火山の過去最大の噴火
規模とする。
(b)次に,設定した噴火規模における設計対応不可能な火山事象が原子力発電所に到達する可能性が十分小さいかどうかを評価する。
この評価では,検討対象火山の調査から噴火規模を設定した場合
には,類似の火山における設計対応不可能な火山事象の影響範囲を
参考に判断し,過去最大の噴火規模から設定した場合には,検討対象火山での設計対応不可能な火山事象の痕跡等から影響範囲を判断する。いずれの方法によっても影響範囲を判断できない場合には,設計対応不可能な火山事象の国内既往最大到達距離を影響範囲とする。

(c)設計対応不可能な火山事象が原子力発電所に到達する可能性が十分小さいと評価できない場合は,原子力発電所の立地は不適と考え
られる。これに対し,設計対応不可能な火山事象が原子力発電所に到達する可能性が十分小さいと評価できる場合には,過去の最大規模の噴火により設計対応不可能な火山事象が原子力発電所に到達したと考えられる火山については,
モニタリング対象とし,
(火

山ガイド5章)のとおり,火山活動のモニタリングを実施し,運用期間中に火山活動の継続的な評価を行う。
(エ)火山活動のモニタリング(火山ガイド5章)
前記

個別評価の結果,運用期間中の火山活動の可能性が十分小

さいと評価した火山であっても,設計対応不可能な火山事象が発電所に到達したと考えられる火山に対しては,噴火可能性が十分小さいことを継続的に確認することを目的として,運用期間中のモニタリングを行う。モニタリングの結果,噴火可能性につながるモニタリング結果が観測された場合には,必要な判断,対応をとる必要がある。
モニタリングに際して,監視対象とする火山は,過去の最大規模の
噴火により設計対応不可能な火山事象が原子力発電所に到達したと考えられる火山とする。
火山活動の監視に際しては,一般的な事項として,地震活動,地殻変動及び火山ガス状況等の項目が挙げられ,これらを適切な方法により監視する。監視は,事業者自ら実施するものとするが,公的機関が
火山活動を監視している場合においては,そのモニタリング結果を活用してもよい。
モニタリング結果は,定期的に評価し,当該火山の活動状況を把握し,状況に変化がないことを確認する(必要に応じて,地球物理学及び地球化学的調査を実施する。)。モニタリング結果の評価は,第三
者(火山専門家等)の助言を得る方針とする。
事業者が実施すべきモニタリングは,原子炉の運転停止,核燃料の
搬出等を行うための監視であり,火山専門家のみならず,原子力やその関連技術者により構成され,透明性及び公平性のあるモニタリング結果の評価を行う仕組みを構築する。また,モニタリング結果については,公的な関係機関等に情報を提供し共有することが望ましい。モニタリングにより,火山活動の兆候を把握した場合,①対処を講じるために把握すべき火山活動の兆候と,その兆候を把握した場合に対処を講じるための判断条件,②火山活動のモニタリングにより把握された兆候に基づき,火山活動の監視を実施する公的機関の火山の活動情報を参考にして対処を実施する方針及び③火山活動の兆候を把握
した場合の対処として,原子炉の停止,適切な核燃料の搬出等が実施される方針を定めることとする。
(オ)原子力発電所への火山事象の影響評価(火山ガイド6章)
原子力発電所の運用期間中に,設計対応不可能な火山事象によって原子力発電所の安全性に影響を及ぼす可能性が十分小さいと評価された火
山について,それが噴火した場合,原子力発電所の安全性に影響を与える可能性のある火山事象(具体的には,降下火砕物,火砕物密度流,溶岩流,岩屑なだれ・地滑り・斜面崩壊,火山性土石流・火山泥流・洪水,火山から発生する飛来物(噴石),火山ガス,新しい火口の開口,津波・静振,大気現象,地殻変動,火山性地震とこれに関連する現象及び熱水
系・地下水の異常である。)を抽出し,その影響評価を行う。
ただし,降下火砕物に関しては,火山抽出の結果にかかわらず,原子力発電所の敷地及びその周辺調査から求められる単位面積当たりの質量と同等の火砕物が降下するものとする。もっとも,敷地及び敷地周辺で確認された降下火砕物で,噴出源が同定でき,その噴出源が将来噴火す
る可能性が否定できる場合は考慮対象から除外する。また,降下火砕物は浸食等で厚さが低く見積もられるケースがあるため,文献等も参考に
して,第四紀火山の噴火による降下火砕物の堆積量を評価するものとされている。
抽出された火山事象に対して,
前記

及び

の調査結果等を踏まえて,

原子力発電所への影響評価を行うための,各事象の特性と規模を設定する。火山事象の影響評価のうち,降下火砕物及び火砕物密度流に関する影響評価の方法は,以下のとおりである。
降下火砕物
(a)降下火砕物の影響
降下火砕物は,最も広範囲に及ぶ火山事象で,ごくわずかな火山

灰の堆積でも,原子力発電所の通常運転を妨げる可能性がある。具体的には,降下火砕物による原子力発電所の構造物への静的負荷,粒子の衝突,水循環系の閉塞及びその内部における磨耗,換気系,電気系及び計装制御系に対する機械的及び化学的影響,並びに原子力発電所周辺の大気汚染等の影響が挙げられ,降雨・降雪などの自
然現象は,火山灰等堆積物の静的負荷を著しく増大させる可能性がある。なお,火山灰粒子には,化学的腐食や給水の汚染を引き起こす成分(塩素イオン,フッ素イオン,硫化物イオン等)が含まれている
(降下火砕物が直接及ぼす影響
(以下
直接的影響
という。)
)。
また,降下火砕物は広範囲に及ぶことから,降下火砕物が原子力

発電所周辺の社会インフラに影響を及ぼす。そのため,降下火砕物により,広範囲な送電網の損傷による長期の外部電源喪失や原子力発電所へのアクセス制限事象が発生しうることも考慮する必要がある(降下火砕物による直接的影響以外の影響(以下間接的影響
という。))。

(b)降下火砕物による原子力発電所への影響評価
降下火砕物の影響評価では,降下火砕物の堆積物量,堆積速度,

堆積期間及び火山灰等の特性などを設定し,降雨等の同時期に想定される気象条件が火山灰等特性に及ぼす影響を考慮し,それらによる原子炉施設又はその付属設備への影響を評価し,必要な場合には対策がとられ,求められている安全機能が担保されることを評価する。
(c)確認事項
降下火砕物による直接的な影響としては,①降下火砕物堆積荷重に対して,安全機能を有する構築物,系統及び機器の健全性が維持されること,②降下火砕物により,取水設備,原子炉補機冷却海水
系統,格納容器ベント設備等の安全上重要な設備が閉塞等によりその機能を喪失しないこと,
③外気取入口からの火山灰の侵入により,
換気空調系統のフィルタの目詰まり,非常用ディーゼル発電機(外部電源喪失時に安全上重要な設備等へ十分な電力を供給できる容量を蓄積した発電機)の損傷等による系統・機器の機能喪失がなく,
加えて中央制御室における居住環境を維持すること,及び,④必要に応じて,原子力発電所内の構築物,系統及び機器における降下火砕物の除去等の対応が取れることを確認する。
また,降下火砕物による間接的な影響としては,原子力発電所外
での影響(長期間の外部電源の喪失及び交通の途絶)を考慮し,燃
料油等の備蓄又は外部からの支援等により,原子炉及び使用済燃料プールの安全性を損なわないように対応が取れることを確認する。火砕物密度流
(a)直接的影響
火砕物密度流は,高速で移動し,通常は高温であるため,その流

路の建物等に及ぼす影響は深刻である。また,影響の範囲が広く地形によって抑制できる程度が低く,通常はほとんどの地形的障害物
を乗り越える。さらに,状況によっては地形的障害物を乗り越え,大きな水域を横断して流れることが分かっている(火砕物密度流による直接的影響)。このような火砕物密度流の直接的影響は設計対応が不可能であることから,原子力発電所の立地は不適と考えられる。

(b)間接的影響
火砕物密度流の影響は広範囲に及ぶことから,原子力発電所周辺
の社会インフラに影響を及ぼす。この中には,広範囲な送電網の損傷による長期の外部電源喪失や,原子力発電所へのアクセス制限が発生し得る。

(c)火砕物密度流による原子力発電所への影響評価
原子力発電所の運用期間中に活動可能性のある火山それぞれに対
する火砕物密度流の評価では,対象火山の火砕物密度流の規模,堆積物量等の観点から原子力発電所への影響を示し,設計対応の可否を評価する。

(d)間接的影響の確認事項
原子力発電所外での影響(長期間の外部電源の喪失及び交通の途
絶)を考慮し,燃料油等の備蓄又は外部からの支援等により,原子炉及び使用済燃料プールの安全性を損なわないように対応が取れることを確認する。

(カ)なお,火山ガイドは,火山ガイドに記載された方法以外の方法で,妥当性が適切に示されたものを用いることは妨げない旨定めている(火山ガイド7章)。
(9)本件訴訟に至る経緯

参加人は,平成25年7月8日付けで,処分行政庁に対して,本件各原
子炉について,
発電用原子炉設置変更許可申請
(以下
本件申請
という。


をし,処分行政庁は,本件申請に対する審査(以下本件適合性審査という。)を開始した。その後,処分行政庁は,本件申請の補正を参加人に命じるなどし,平成26年7月17日,本件適合性審査を終え,本件適合性審査に関して意見公募手続を行った上で,本件申請における火山影響評価が妥当である旨の判断をし,平成26年9月10日付けで本件処分を行
った。

原告らは,同年11月7日,処分行政庁に対して,本件処分に関して異
議申立てを行った。これに対して処分行政庁は,平成27年12月11日付けで,同異議申立てを棄却する旨の決定を行い,原告らは,同月13日に当該決定を知った。


原告らは,
平成28年6月11日,
本件訴えを提起した(顕著な事実)

(甲B2の1・2,同3の1・2)

4
争点及びこれに関する当事者の主張

(1)原告適格の有無(争点1)
(被告の主張)

原告適格を基礎づける事実は,原告らが主張立証責任を負うところ,原
告らの中には,東京都,埼玉県及び福島県等の本件各原子炉から遠方に居住する者が含まれているが,当該原告らに関し,原告適格を基礎づける具体的な事実等が立証されているとはいえない。

原告らは,線量限度告示(別紙2の6)が,実効線量に係る線量限度を
1年間1ミリシーベルトと定めていることを,原告適格を基礎づける事由として主張するが,そもそも年間100ミリシーベルトを下回る被ばく線量では健康に影響があるとはされていない。上記告示の定めは,非常に保守的な観点から線量限度を定めているのであるから,これによって,原告適格を基礎付けることはできない。
(原告らの主張)


本件改正等により制定された設置法の目的は,国民の生命,健康及び財
産の保護,
環境の保全並びに我が国の安全保障に資することにある。
また,
本件改正等によって,
規制法の目的には国民の生命,
健康及び財産の保護,
環境の保全が追加された。
このような原子力関連法令等の目的に鑑みると,
発電用原子炉の設置変更許可処分の取消訴訟の原告適格を検討するに当たっては,国民の安全の確保を重視し,当該発電用原子炉の事故によって深刻な災害が発生した場合に,生命,健康,財産及び生活環境に重大な被害が生じるものと想定される地域に居住する者には,原告適格があると解すべきである。


そして,本件各原子炉の位置,種類,構造,規模及び日本列島上空の偏
西風の影響等の諸条件を考慮に入れると,本件各原子炉において事故が発生した場合,川内原発から3000㎞の範囲内に,線量限度告示が定める公衆の線量限度を超える汚染がもたらされることになり,これによって,その地域の住民の生命,健康,財産及び生活環境に重大な被害が生じることになる。
このように,九州地方に居住する原告らのみならず,中部地方,関東地方及び東北地方に居住する原告らについても,その生命,健康,財産ないし生活環境に直接的かつ重大な被害が発生することが想定されるから,本件訴訟の原告らには,原告適格がある。

(2)本件申請が設置許可基準規則6条1項の要件を満たすと判断したことの違法性の有無(争点2)
(被告の主張)

本件処分に係る司法審査の在り方

(ア)本件処分に係る司法審査は,裁判所が白紙の状態から,本件各原子炉が安全か否かを処分行政庁と同一の立場に立って審理,判断する実体的判断代置方式によるべきではなく,
処分行政庁が,
本件各原子炉の位置,

構造及び設備が原子炉等による災害の防止上支障がないものであること等を認めた専門的技術的判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきである(最高裁判所昭和60年(行ツ)第133号平成4年10月29日第一小法廷判決(以下伊方原発最高裁判決という。なお,本件改正等により規制法の一部が改正されたが,条文の構成自体に変化はないので,本件改正等後も同判決が参照されるべきである。。,

もっとも,伊方原発最高裁判決は,原子炉施設の安全審査に関する資料をすべて被告の側が保持していることを前提として,
被告側において,
まず,その依拠した前記の具体的審査基準並びに調査審議及び判断の過
程等,処分行政庁の判断に不合理な点のないことを相当の根拠,資料に基づき主張,立証する必要があり,被告が同主張,立証を尽くさない場合には,処分行政庁がした判断に不合理な点があることが事実上推認される旨判示しているが,本件処分に係る申請書や審査書等の情報はインターネットによって公表され,
原告らにおいても容易に入手できるので,

伊方原発最高裁判決の上記判示は本件には妥当しない。したがって,本件処分に係る適合性審査に不合理な点があることに関しては,原告らが主張立証責任を果たさなければならない。
(イ)規制法43条の3の8第2項が準用する規制法43条の3の6第1項4号が,発電用原子炉の位置,構造及び設備が災害の防止上支障がない
ものであることを審査するための基準を原子力規制委員会規則で定めることとしているのは,発電用原子炉の安全性に関する審査の特質を考慮し,同号の基準の策定について,原子力利用における安全の確保に関する各専門分野の学識経験者等を擁する処分行政庁の科学的,専門技術的知見に基づく合理的な判断に委ねる趣旨と解される。

そして,一般に,科学技術を利用した装置等は,常に何らかの事故発生等の危険性を伴っているが,その危険性が社会通念上容認できる水準
以下であると考えられる場合又はその危険性の相当程度が人間によって管理できると考えられる場合には,その危険性の程度と科学技術の利用により得られる利益の大きさとの比較考量の上で,これを一応安全なものであるとして利用されている。このように,科学技術の分野においては,絶対的に災害発生の危険がないという安全性(絶対的安全性)は求
められておらず,上記のような相対的安全性という考え方が取られており,
これは,
本件各原子炉のような発電用原子炉についても当てはまる。
したがって,4号要件にいう災害の防止上支障がないものとは,
どのような異常事態が生じても,原子炉施設内の放射性物質が外部の環境に放出されることは絶対にないといった達成不可能なレベルの高度の
安全性をいうものではなく,原子炉施設の位置,構造及び設備が,前記のような相対的安全性を前提とした安全性を備えていることをいうものと解すべきである。
(ウ)なお,前記専門技術的な裁量判断に不合理な点があるか否かは,現在の科学水準に基づいて評価されることになる。そして,ここでいう現在
の科学水準とは,確立された国際的な基準となり得るだけの確実性,普遍性をもった科学的知見に限られると解すべきであって,それほどには至っていない知見を含めて判断するべきではない。

火山ガイドの合理性について
前記ア(イ)のとおり,火山ガイドの策定は,処分行政庁の専門技術的裁量
が認められており,これが不合理であると評価されるのは,火山ガイドの内容が現在の科学水準からみて,これによったのでは,原子炉施設の安全性を確保し,
原子炉事故等によって原子炉施設の従業員や周辺住民の生命,
身体に重大な危害を及ぼし,周辺の環境を放射能によって汚染する等の深刻な危害を及ぼし,周辺の環境を放射能によって汚染する等の深刻な災害を防止することが困難であると認められる点がある場合であると解される
ところ,以下のとおり,火山ガイドにはこのような点はない。
(ア)火山ガイドは,JNESが原案を作成し,これを基に,原子力規制委員会における議論,火山の専門家のヒアリング,意見公募手続等を経て策定されており,火山学者が作成に携わり,専門的な知見が反映されたものであり,その内容は,SSG-21と整合している。
(イ)原告らの主張について
原告らは,火山ガイドがSSG-21と整合しない点がある旨主張する。しかしながら,原告らの主張は,いずれも日本の火山の特徴を無視するものであり,又は火山ガイドやSSG-21の内容を正解し
ないものであり,理由がない。
原告らは,原子炉の運用期間中における噴火の可能性の大小を評価することは不可能若しくは著しく困難であるにもかかわらず,火山ガイドの立地評価に関する定めが,これができることを前提としていることが不合理である旨主張する。

しかしながら,火山ガイドは,火山が噴火する時期や規模を予知することまでを求めておらず,火山が噴火する時期や規模を的確に予測することが可能であることを前提にしているものではない。
すなわち,火山ガイドは噴出量10㎦程度を超え,大量の火砕流によって広域的な地域に重大かつ深刻な災害を起こすような噴火を巨大噴火としているところ,巨大噴火は,他の自然災害とは異なり,広域的な地域に重大かつ深刻な災害を引き起こすものである一方,その発生可能性は極めて低く,また,これを想定した法規制や防災対策は原子力安全規制以外の分野においても行われていないことに照らすと,その発生可能性を相応の根拠をもって示されない限り,安全確保
上想定しないことが社会通念上容認されているものといえる。このことからすると,立地評価において,設計対応不可能な火山事象の影響
可能性を評価するに当たっては,巨大噴火とそれ以外の火山活動を区別し,巨大噴火の可能性評価において,①火山の現在の活動状況は巨大噴火が差し迫った状態でないこと及び②運用期間中に巨大噴火が発生するという科学的に合理性のある具体的な根拠があるとはいえないことを満たした場合には,巨大噴火の可能性が十分小さいと判断される。そして,このような判断は,処分行政庁に委ねられた専門技術的裁量及び巨大噴火に係る社会通念を踏まえた合理的なものである。これに対し,
原告らは,
巨大噴火とそれ以外の噴火を区別した上で,
巨大噴火の可能性評価を行うことについて,問題点を指摘する。しか
しながら,前記のとおり巨大噴火の特性を踏まえると,巨大噴火を想定しないことは社会通念上容認されているが,安全確保に万全を期する観点から,あえて原子力規制の下においたにすぎないから,原告らの主張にはいずれも理由がない。
さらに,火山ガイドがモニタリングを行うこととしている点につい
ても,同モニタリングは,検討対象火山の将来の活動可能性が十分小さいと評価できる場合及び設計対応不可能な火山事象が影響を及ぼす可能性が十分小さいと評価できる場合に,そのような可能性が十分小さいとの評価の根拠が継続していることを審査時点以降も確認することを目的として,検討対象火山の状態の変化を検知するために行われ
るものであり,併せて火山活動の兆候を把握した場合の対処方針等の策定を求めているにすぎない。
したがって,
原告らが主張するように,
モニタリングによって噴火の時期や規模を予測することを目的としているわけではない。
(ウ)仮に,火山ガイドの中に不合理な点が存在したとしても,そのことの
みによって,直ちに本件処分が違法とされることはなく,火山ガイドを用いた本件適合性審査の内容やその結果等を総合し,その審査が不合理
であると認められない限りは,本件処分が違法とされることはない。ウ
本件適合性審査における過誤ないし欠落の有無について

(ア)前記アのとおり,本件適合性審査は,処分行政庁に専門技術的な裁量が与えられている。そして,規制法の趣旨に照らせば,そのような判断が不合理であるとされるのは,
本件適合性審査の過程に看過し難い過誤,
欠落がある場合,すなわち,処分行政庁の審査及び判断の過程に,認定評価の誤りがあったり,考慮すべき事項が考慮されていなかったりした結果,当該原子炉施設の基本設計において,前記のような深刻な災害を引き起こす事態を防止するために必要な防護措置,安全対策が講じられ
ていないにもかかわらず,これが見過ごされ,その基本設計どおりの発電用原子炉を設置し,運転させた場合には,重大な事故等が発生する可能性が高いと認定判断される場合をいうと解すべきであり,仮に,本件適合性審査の過程に,軽微な過誤,欠落があったとしても,重大な事故等の発生を防止する上で必要な防護措置,安全対策が講じられているこ
とが,
適合性審査において確認されており,
災害の防止上支障がない
(規
制法43条の3の6第1項)と認められる場合には,その判断が不合理であるということはできない。
なお,発電用原子炉施設に関する規制法の安全規制は,原子炉施設の設計から運転に至るまでの過程を段階的に区分し,それぞれの段階に応
じて規制を設けているところ,発電用原子炉の設置変更許可に係る安全審査は,このような段階的安全規制の冒頭に位置付けられており,基本設計ないし基本的設計方針の妥当性を審査,判断するものであり,これに続く原子炉施設の細部にわたる詳細設計や,原子炉施設の建設,工事の前提となる基本的事項を確定する機能を有するものである。このよう
な規制法の仕組みに照らすと,発電用原子炉の設置変更許可の段階で行われる安全審査においては,専ら当該発電用原子炉の基本設計の安全性
のみが規制の対象となると解される。したがって,本件処分の取消訴訟において,審理,判断の対象となるのは,発電用原子炉の基本設計に関する事項に限られる。
(イ)専門的知見の反映
原告らは,本件適合性審査が,専門的知見を踏まえずに行われたものであると主張する。
しかしながら,本件申請は,国際的な安全指針であるSSG-21を踏まえた最新の火山学的知見が集約された火山ガイドに沿った内容であり,
最新の火山学的知見を踏まえたものである。
また,
処分行政庁には,

火山学に関する知見を有する職員も在籍しており,原子力規制員会は,常に火山学の知見を収集分析しており,これらの点からも,本件適合性審査は,専門的知見を踏まえたものということができる。
(ウ)立地評価の合理性
本件適合性審査においては,以下のとおり,様々な地質学的・岩石
学的知見,物理学的知見に加え,噴火サイクルによって判明したマグマ溜まりの状態や噴火間隔等を総合的に検討し,本件各原子炉に影響を及ぼし得る火山活動を評価した結果,火山ガイド4.1(2)により,巨大噴火やその他の本件各原子炉に影響を及ぼし得る火山活動の可能性が十分に小さいとされたのであり,本件適合性審査の過程に,
看過し難い過誤,欠落があるということはできない。
鹿児島地溝(加久藤・小林,姶良,阿多)全体を捉えて一つの火山活動として大局的に検討すると,鹿児島地溝の最新の巨大噴火の噴火間隔は約9万年であるところ,当該地域の最後の噴火は約3万年前の姶良Tn噴火であり,このような噴火間隔からすれば,上記各カルデ
ラの現在の活動状況は巨大噴火が差し迫った状態ではないことと整合している。

姶良カルデラについて
(a)巨大噴火は概ね地下10㎞以浅に定置されているマグマ溜まりから噴火に至ると考えられているところ,各種文献や地球物理学的調査結果によれば,姶良カルデラには,地下10㎞以浅にマグマ溜まりが認められない。
(b)Druitt,T.H
onthly
nsfer

al.
Decadaltimescalesandcalderaetofreservoirmagmagrowthtomtraatavolcano(2012)(丙B38。以下
ドルイット論文という。)によれば,巨大噴火直前の100年
程度のマグマ増加率は1年当たり0.05㎦以上であるところ,姶良カルデラの現在のマグマ溜まりの供給率は概ね1年当たり0.01㎦である。
(c)姶良カルデラの巨大噴火の噴火履歴等によると,噴火間隔は少な
くとも6万年以上であるところ,姶良カルデラの最後の巨大噴火である姶良Tn噴火から3万年程度しか経過しておらず,また,鹿児島地溝の巨大噴火の噴火間隔は9万年であり,こちらも最後の巨大噴火である姶良Tn噴火から3万年程度しか経過していないことからすると,姶良カルデラの現在の活動状況は巨大噴火が差し迫った
状態ではないことと整合的である。
(d)乙D52の研究報告書(大倉敬宏測地学的手法による火山活動の観測について(平成29年11月1日))によれば,地震が発生すると,地震の揺れ(地震波)は震源から地下にある様々な物質を介して地表まで伝わるが,物質ごとに地震波の伝わる速度は異な
り,このような速度の違いを把握することにより,地下にある物質が存在する場所やその性質について推定することができる(このよ
うな地下の地震波速度構造解析技術を地震波トモグラフィーという。)
ところ,姶良カルデラの地下構造に関するその他の知見を踏まえ,地震波トモグラフィーにより姶良カルデラの地下構造を解析すると,現在,姶良カルデラの地下数㎞に大規模なマグマ溜まりが蓄積している状態ではないと考えられ,VEI7以上の破局的噴火が発生する可能性は低いと考えられ,本件適合性審査は,このような知見に照らしても,合理性を有するということができる。
加久藤・小林及び阿多カルデラについて
加久藤・小林及び阿多カルデラにおいては,地下浅部に巨大噴火を
引き起こすような大規模なマグマ溜まりを示唆する火山学的知見ないし調査結果は存在しない。
阿蘇カルデラについて
(a)現在の火山学においては,阿蘇カルデラの直下のマグマ溜まりの有無及びその溶融度を推定するに当たり,低速度領域LA,低速度
領域LB及び草千里直下のマグマ溜まりの三つに分けて議論がなされている。低速度領域LAについては,地殻変動の解析結果や地震波の解析結果からすると,マグマ溜まりの膨張傾向を示す地盤変動は検出されておらず,仮にマグマが存在するとしても,その溶融度は低いため噴火能力に乏しいと考えられている。また,低速度領域
LBについては,仮にマグマが存在するとしても,その溶融度は低いため,噴火能力が乏しく,また,その直下にマグマ等の流体の移動を示す低周波地震も発生していないことから,巨大噴火を引き起こすようなマグマ溜まりであるとは考えにくい。さらに草千里直下の6㎞付近にあるマグマ溜まりは縮小傾向にあり,珪長質でもない
ことから,巨大噴火を引き起こすようなマグマ溜まりではない。
(b)巨大噴火は,一般に珪長質マグマによって引き起こされるとする
のが火山学の分野で広く肯定されている知見であるところ,岩石学的評価結果によれば,阿蘇カルデラ内での過去1万年間におけるカルデラ中央部に存在する噴出物の岩質は主として玄武岩質であり,巨大噴火を引き起こすような巨大な珪長質マグマ溜まりは存在しない。
鬼界カルデラについて
(a)鬼界アカホヤ噴火時の流紋岩質(珪長質)マグマは硫黄岳前期の活動において出尽くしたとする見解や現在の鬼界カルデラのマグマ溜まりは,その大部分が玄武岩質マグマであると推測されるとする
見解がある一方で,これが巨大噴火を引き起こすような大量の流紋岩質(珪長質)のマグマ溜まりであることを示唆する知見は見当たらない。
(b)巨大噴火を引き起こすにはマグマの高い駆動力であるH2O等が必要であるところ,仮に鬼界カルデラの地下に相当程度の流紋岩質マ
グマが存在するとしても,このマグマは,脱ガスが進行した含水量が極めて少ないものであるから,現在は巨大噴火を引き起こすような状態ではない。
(c)鬼界カルデラにおける巨大噴火の間隔は,約5万年ないし約9万年であると考えられており,約7300年前に発生した最新の巨大
噴火である鬼界アカホヤ噴火から今日までの経過時間は上記の噴火間隔と比較して十分に短いといえる。
(d)鬼界カルデラをまたぐ四つの基線長は,マグマ溜まりの顕著な増大を示唆する変化は認められない。
(e)

乙D84によると,地球化学(地球や宇宙物質の構成・起源・進
化・移動などの化学像を描く学問分野の総称)的手法により推定された鬼界カルデラにおける火山ガスを放出したマグマ量(脱ガスマ
グマ量)や,マグマの状態変化や圧力の数値から予測される鬼界カルデラの現在のマグマ溜まりの状態等に照らすと,
鬼界カルデラは,
破局的噴火がすぐに起きる状態ではないと考えられる。
火山地質学の知見等を踏まえると,カルデラ噴火を引き起こす巨大なマグマ溜まりでは,カルデラ噴火が発生する100年から数百年以前にかけて,珪長質(デイサイト及び流紋岩)の溶岩流出主体の噴火が発生すると考えられ,巨大噴火が何の前触れもなく突然発生するとは考えにくく,少なくとも100年から数百年前には,何らかの兆候を発するものと考えられる。

そして,現在,本件5カルデラにおいて,このような前兆現象とみられるような珪長質マグマと同質の溶岩の流出を主体とする噴火は認められない。したがって,本件5カルデラにおいて,火山地質学の知見によれば,巨大噴火が差し迫った状態ではないといえる。
さらに,測地学(地球の形と大きさ及び地球の重力の状態を物理学
の手法を用いてできるだけ精密に求めるための学問)を用いた火山活動の観測によっても,阿蘇カルデラ,加久藤・小林カルデラ及び阿多カルデラについて,大規模な噴火が起こるような状態ではないと推定される。
以上によれば,本件適合性審査において,本件5カルデラの火山の
現在の活動状況は巨大噴火が差し迫った状態ではないと判断したことは合理的であり,運用期間中に巨大噴火が発生するという科学的に合理性のある具体的な根拠があるとはいえない場合であることが推認される。そして,原告らにおいて,これに反するような科学的に合理性のある具体的根拠は示されていない。よって,設計対応不可能な火山
事象が到達する可能性が十分に小さいとした本件適合性審査は,合理性を有するということができる。

原告らの主張について
(a)原告らは,SSG-21を踏まえれば,本件各原子炉の運用期間中に設計対応不可能な火山事象が影響を及ぼす可能性が十分に小さいといえるには,そのような事態の発生が,1000万年に1回以下といえなければならない旨主張する。
しかしながら,SSG-21は,類似する火山を調査して,噴火
活動の後,次の噴火活動が起こるまでの時間経過の最大期間を判別し,その活動の空白期間を閾値として使用する等の決定論的な評価方法も許容している。また,日本の火山学においては,確率論的な
評価手法が確立していないのであるから,原告らが主張するような確率論的な評価方法を採用しなかったからといって,本件適合性審査に看過し難い過誤ないし欠落があるとはいえない。
(b)原告らは,阿蘇カルデラ及び鬼界カルデラについては,過去約5万年に1回の頻度で破局的噴火が発生していると主張する。しかし
ながら,原告らの主張は,これらのカルデラの過去の噴火の発生回数及び間隔から,単純に噴火が約5万年に1回の頻度で発生することを述べているにすぎず,火山学における確率論的評価手法に基づくものではない。
(c)原告らは,本件適合性審査において,本件5カルデラにおけるV
EI6以下の噴火について,既往最大規模のみならず,想定される最大規模の噴火を想定すべきである旨主張する。
しかしながら,既往最大規模を想定して評価する方法は,調査結
果から噴火の規模を推定できない場合,検討対象火山の過去の最大の噴火規模とする旨定めた火山ガイドの内容と適合している。原告
らの主張は,既往最大よりも大きな噴火が起きるかもしれないという抽象的な危険を根拠とするものにすぎず,理由がない。

(d)原告らは,
本件申請が依拠したShinji
HE

LATE

QUATERNARY

RS

FROM

THE

N
AND

THERN

CALDERA

AROUND

NAGAOKATTEPHRALAYEVOLCANOESKAGOSHIMAIBAY,SOUKYUSHU,JAPAN(1988)(乙D16
の1,丙B29。以下ナガオカ論文という。)に記載された噴
火ステージ論が理論的な根拠を欠く旨主張する。
しかしながら,同論文は,地質学的情報について権威のある学術
的知見である上,本件適合性審査においては,同論文のみを根拠としているのではなく,マグマ溜まりの状態や噴火間隔等,地質学・岩石学的知見等を総合的に検討し,破局的噴火が発生する可能性について判断しているのであるから,原告らの主張は理由がない。
また,原告らは,本件申請が依拠したドルイット論文は,一事例
研究にすぎず,
その内容は,
一般化できる原則ではない旨主張する。

同論文は,サントリーニ火山のミノア噴火について述べたもので
あるが,火山学の分野では,地震や津波と比較して,確立した科学的知見や研究成果が少ないため,同様のカルデラ火山についての研究成果である学術論文を参照することは,評価方法として合理性があるといえる。また,本件適合性審査では,同論文のみに依拠して
いるわけではなく,地質学的,岩石学的調査結果に基づいた評価が行われており,同論文は,このような評価を裏付ける一資料として位置づけられたにすぎないのであるから,原告らの主張は理由がない。
(e)原告らは,鹿児島地溝に存在するカルデラ火山の破局的噴火の発
生に周期性ないし規則性があることが,理論的な根拠を欠く旨主張している。

しかしながら,鹿児島地溝全体を捉えて一つの火山活動と評価す
ることには合理性が認められるのみならず,本件適合性審査では,鹿児島地溝の評価の他,
個別の火山の活動可能性について,
地質学,
岩石学的知見及び地球物理学的知見に照らして評価し,それを踏まえた上で,鹿児島地溝の各カルデラについて,破局的噴火が発生する可能性が十分に小さいと評価しているのであるから,原告らの主張は理由がない。
(f)原告らは,姶良カルデラのマグマ溜まりには,極めて高いマグマ供給率が推定されているにもかかわらず,これを看過している旨主
張する。
しかしながら,原告らが主張する供給量は,ドルイット論文に記
載されたサントリーニ火山のミノア噴火直前のマグマ供給量に比べて十分に小さい。また,本件申請において,姶良カルデラのカルデラ噴火の可能性は,マグマ供給率のみから算出したのではなく,地
質学的観点や地球科学的観点を用いて総合的に評価したものであって,その評価に何ら不合理な点はない。
(g)原告らは,現在の技術では,カルデラの地下構造を精度よく推定することはできず,本件5カルデラの地下には,すでに破局的噴火を引き起こすようなマグマ溜まりが形成されている旨主張する。

しかしながら,原告らが指摘するマグマ溜まりは,地質学的,岩
石学的知見や,その他の物理学的知見及び電子基準点の基線変化を踏まえた調査の結果,巨大噴火が差し迫った状態でないことが明らかになっている。したがって,原告らの主張は,単にマグマ溜まりがあることをもって,抽象的に破局的噴火が発生する可能性を指摘
しているにすぎない。
(エ)火山活動のモニタリングについて

原告らは,火山活動のモニタリングの方法や,火山活動に対する対処方針等の不合理性を主張する。しかしながら,発電用原子炉の設置変更許可の段階における安全審査においては,当該原子炉の基本設計ないし基本的設計方針にかかわる事項のみがその対象とされるにすぎず,破局的噴火への発展可能性を判断する具体的な判断基準や火山活動の兆候を把握した場合の対処方針の具体的内容は,設置変更許可の段階ではなく,それよりも後の段階である保安規定において具体化されることが予定されている。したがって,これらの具体的な内容は,本件適合性審査における審査の対象ではなく,本件訴訟の審理及び判
断の対象にならない。
また,火山ガイドが火山活動に対する対処方針を策定することを求めるのは,破局的噴火を示唆するモニタリング結果を確認し得ることが完全には否定しきれないから,対処方針がないときに比べて適切な対処を容易にするため,できる限りの対処方針を定めることを求める
趣旨であり,設置変更許可の時点では,あらゆる場合を想定した対処方針を具体的に定めることや燃料等の搬出先を具体的に決めておくことまでは求められていない。
したがって,これらの点に関する原告らの主張には理由がない。
原告らは,
破局的噴火の予測は観測事例に乏しいため不可能であり,

また,核燃料物質を搬出するための時間的余裕が保障されていない等主張する。
しかしながら,火山ガイドがモニタリングを要求しているのは,検討対象火山の将来の活動可能性が十分小さいと評価できる場合及び設計対応不可能な火山事象が影響を及ぼす可能性が十分小さいと評価で
きる場合であることを前提として,評価の根拠が継続していることを確認するためであり,本件5カルデラの破局的噴火の兆候を判断する
ためではなく,かえって,モニタリングを行うのは,前提として検討対象火山の将来の活動可能性が十分小さいと評価できる場合であることからすると,モニタリングを行うことによって火山活動の兆候を把握するに至るような事態が実際に発生することは想定し難い。
原告らの主張は,モニタリングの上記趣旨を正解するものではないので,理由がない。
(オ)影響評価の合理性
本件適合性審査においては,参加人が桜島薩摩噴火の規模を前提とした火山事象の影響評価を行い,降下火砕物の層厚を15㎝としてお
り,降下火砕物の層厚が安全面に十分に配慮したものであり,合理的である。
原告らは,本件5カルデラが破局的噴火を起こした場合,降下火砕物の層厚は50㎝を超えると想定され,VEI6クラスの噴火であっても,桜島薩摩噴火を超える降下火砕物の層厚を想定することができ
るのであるから,本件適合性審査において,桜島薩摩噴火を基準としたことは不合理である旨主張する。
しかしながら,本件5カルデラについて破局的噴火の可能性が十分に小さいことは,巨大噴火に係る社会通念を考慮した火山ガイドの趣旨を踏まえた上で,地質学的,岩石学的知見等によって的確に判断し
ており,このことを踏まえれば,本件適合性審査において,破局的噴火が発生したことを前提に降下火砕物の層厚を想定すべきであるということはできない。原告らは,桜島薩摩噴火以上の規模の噴火が起きる抽象的な可能性を述べるにすぎず,かえって,桜島薩摩噴火と同程度の噴火を想定する評価方法について,肯定的な意見を述べる専門家
もいることからすると,原告らの主張は理由がない。
本件申請においては,降下火砕物について,解析ソフト(TEPH
RA2。以下本件ソフトという。)を用いた数値シミュレーショ
ン(以下本件シミュレーションという。)が用いられたところ,
原告らは,本件ソフトの性能や,本件シミュレーションの計算条件等が適切でない旨主張する。
しかしながら,本件申請では,まず,地質調査及び文献調査を実施して,実際に降下火砕物の堆積量を根拠としてその層厚を想定している。本件シミュレーションは,前記想定との間に大きな乖離がないかを検証するために,あくまで補助的に用いられたものである。
したがって,本件シミュレーションの計算条件や性能に問題がある
からといって,直ちに本件適合性審査に過誤ないし欠落があったといえない。
原告らは,本件シミュレーションでは,大規模噴火が発生した際に発生する巨大噴煙柱による傘型領域ができる場合やマグマ水蒸気爆発が発生した場合が再現されないという限界があることから,他の適切
なシミュレーションを用いたり,複数のシミュレーションを活用したりすべきであった旨主張する。
しかしながら,大規模噴火に関し十分な観測データを取得することはできておらず,本件シミュレーションにおいて,傘型領域や巨大噴煙柱,マグマ水蒸気爆発を想定したとしても,その信頼性を検証する
ことができないのであるから,原告らの主張は理由がない。
原告らは,本件シミュレーションにおいて,風向・風力のばらつきが適切に考慮されていない旨主張する。
しかしながら,原告らの主張は,本件シミュレーションの仕様に対する批判にすぎず,被告はこのような適用限界も十分考慮した上で,
本件シミュレーションを補助的に用いているにすぎないから,原告の主張は理由がない。

原告らは,原子力規制庁が参加人に対して,従来の10倍の濃度の降下火砕物による影響評価をするように求めたことをもって,本件適合性審査における降下火砕物の影響評価が不十分であった旨主張する。しかしながら,原子力規制庁が前記のような指示をするに当たって前提とした最新の研究成果は,いまだ確立した科学的知見であるとは
いえないから,前記原子力規制庁による指示があったことをもって,直ちに,本件適合性審査に過誤ないし欠落があったとはいえない。そして,セントへレンズ山の噴火の観測値や,その不確かさを踏まえても,降下火砕物に関する影響評価が不十分であるとはいえない。したがって,これらを前提に,ディーゼル発電機のフィルタ交換に要する
時間等を評価したことが不合理であるともいえない。
原告らは,降下火砕物が,ディーゼル発電機に侵入する可能性や侵入した降下火砕物によって,ディーゼル発電機が閉塞したり,摩耗したりする等の可能性があるが,これらの事情が適切に考慮されていない旨主張する。

しかしながら,
降下火砕物は,
砂よりも高度が低くもろいことから,
ディーゼル発電機の摩耗の影響は小さいし,また,吸気フィルタを設置することにより,降下火砕物が侵入しにくい設計となっているし,さらに,耐摩耗性のある材料を使用することで,摩耗により安全機能を損なわない設計とすることとしている。

(参加人の主張)

参加人は,本件各原子炉の火山影響評価として,文献調査,地形・地質
調査及び地球物理学的調査を行って,将来の活動可能性を否定できない火山として本件5カルデラ及びその他9つの火山を抽出した上で,各火山の火山活動に関する個別評価を行った。

本件5カルデラについては,運用期間中における破局的噴火の可能性が
十分小さいことを確認したため,現在の噴火ステージにおける既往最大規模の噴火を考慮し,また,その他9火山については,各火山の既往最大規模の噴火を考慮して評価した結果,火山事象が本件各原子炉の安全性に影響を及ぼす可能性が極めて低いことを確認した。

破局的噴火では,直径10㎞を超える大規模なマグマ溜まりが地殻内に
形成され,マグマ溜まりの圧力の上昇などにより噴火が発生し継続し,大量のマグマを噴出すると,
マグマ溜まりに空洞が生じ,
天井部が破壊され,
巨大なカルデラが生じる。仮に現時点において阿蘇カルデラで破局的噴火が起きた場合,九州の中部以北は火砕流の直撃でほぼ全滅し,死者は1000万人を超え,日本列島全体が15㎝以上の火山灰で覆われて,家屋の倒壊が相次ぎ,ライフラインが機能停止し,食糧生産も不可能となって飢餓状態になる等といわれている。このように破局的噴火はけた外れに大規模な自然現象であり,広域的な地域に重大かつ深刻な災害を引き起こすものである一方,極めて低頻度な事象であり,多くの裁判例で,その発生が
相応の根拠をもって示されない限り,原子力発電所の安全確保の上で自然災害として想定しなくても安全性に欠けるところはないとするのが,現時点にける我が国の社会通念であると判断されている。破局的噴火については資料やデータが乏しく,発生に至るまでの原理や機序について完全に解明されているものではないが,参加人は,国内に限らず海外の知見も含め
た最新の知見を可能な限り収集検討したうえで,これらを踏まえた評価を行ったものであり,参加人の評価は現在の科学技術の水準に照らして十分な合理性を有する。

参加人は,以下のとおり,破局的噴火の噴火間隔,噴火ステージ,マグ
マ溜まりの状況を総合的に考慮して評価を行った。
(ア)破局的噴火の噴火間隔について
破局的噴火が起きるためには,地下のマグマ溜まりに大量のマグマが
蓄積されることが必要である。参加人は,本件5カルデラにおける破局的噴火の噴火間隔と最新の破局的噴火からの経過時間との比較により,破局的噴火に必要なマグマが蓄積されるために必要な時間が経過しているかどうかを検討した。
参加人は,鹿児島地溝にある本件3カルデラ全体として噴火間隔を検討したところ,階段ダイヤグラムにおける過去60万年の破局的噴火の噴火間隔は約9万年の周期性を有していることが分かった。そして,本件3カルデラにおける最新の破局的噴火は,約3万年前の姶良Tnであり,それからの経過期間は上記9万年より十分に短いことから,参加人
は,このことを運用期間中に本件3カルデラで破局的噴火が発生する可能性が低いことに関する積極的な事情の一つとして考慮した。
(イ)噴火ステージについて
参加人は,ナガオカ論文の知見から,姶良カルデラ及び阿多カルデラにおいては,プリニー式噴火ステージ,破局的噴火ステージ,中規模火
砕流噴火ステージ及び後カルデラ火山噴火ステージによって構成される噴火マルチサイクルを繰り返し,鬼界カルデラにおいては,破局的噴火ステージ及び後カルデラ火山噴火ステージによって構成される噴火マルチサイクルを繰り返すことに一定の合理性があると考えた。また,参加人は,ナガオカ論文に示された噴火ステージの考え方は,他のカルデラ
火山についても一定の参考になると考え,加久藤・小林カルデラ及び阿蘇カルデラにおける過去の噴火履歴を基に噴火ステージについて評価したところ,いずれもプリニー式噴火ステージ及び中規模火砕流噴火ステージは確認できなかったことから,本件5カルデラについて,運用期間中の破局的噴火の可能性に関する考慮要素とした。

(ウ)マグマ溜まりについて
破局的噴火を発生させるためには,
深さ10㎞よりも十分浅い位置に,

破局的噴火を発生させ得る量の珪長質マグマが蓄積されている必要がある。また,多くのカルデラ噴火の前には,マグマ溜まりの膨張があったと考えられるところ,マグマ溜まりの規模の変化は,カルデラ火山の基線長の変化から推定することができる。そこで,参加人は,基線長の変化からマグマ溜まりの増大の有無について検討し,
その結果を考慮した。
破局的噴火はけた外れに大規模な自然現象であり,他の火山噴火とは異なって,より広範囲かつ大規模な地殻変動や地震などが観測されると考えられるのであるから,火山噴火の時期,規模について的確な予測ができないとしても,破局的噴火が今後数十年の期間において発生する可
能性の大小を評価することはできる。
姶良カルデラについて
姶良カルデラの最後の破局的噴火から約3万年が経過しているが,その前の破局的噴火は約6万年以上であるから,経過期間は,破局的噴火の噴火間隔に比べて十分に短い。

現在の姶良カルデラにおける噴火活動は,桜島において多様な噴火様式の小規模噴火が発生しているのみであり,ナガオカ論文においても,後カルデラ火山噴火ステージにあるとされている。
姶良カルデラにおいて,地下深さ10㎞より十分浅い位置に大規模な珪長質マグマ溜まりは存在しない。基線長には若干の変化はみられ
るものの,既往の研究に基づくとマグマ供給率は0.01㎦/年程度であり,顕著な増大はない。したがって,姶良カルデラにおいて破局的噴火を起こしうるようなマグマ溜まりが存在する可能性は低いと考えられ,参加人は,運用期間中に破局的噴火が発生する可能性が低いことに関する積極的な事情として考慮した。

加久藤・小林カルデラについて
加久藤・小林カルデラは,最後の破局的噴火から約33万年が経過
しているが,
同噴火とその前の破局的噴火は約20万年の間隔である。
もっとも,
本件3カルデラにおける破局的噴火の噴火間隔は,
加久藤・
小林カルデラにおいて運用期間中に破局的噴火が発生する可能性が低いことに関する積極的な事情といえる。
また,加久藤・小林カルデラは,現在,後カルデラ火山噴火ステージにあると考えられ,破局的噴火を起こすような大規模な珪長質のマグマ溜まりは確認されていない。霧島火山群に関し,北西部の火山の地下深さ10㎞付近にマグマ溜まりがあると考えられているが,硫黄山や新燃岳における噴出物が安山岩質であることから,浅い位置に大
規模な珪長質のマグマ溜まりが存在する可能性は低い。基線長の変化も見られず,マグマ溜まりの顕著な増大は認められないことから,参加人は,
運用期間中に破局的噴火が発生する可能性は低いと評価した。
阿多カルデラについて
阿多カルデラは,最後の破局的噴火から約10.5万年が経過して
いるが,同噴火とその前の破局的噴火は約14万年の間隔があったことから,経過期間は,破局的噴火の噴火間隔に比べて十分に短い。現在の阿多カルデラの噴火活動については,開聞岳において多様な噴火様式の小規模噴火が発生しており,プリニー式噴火ステージである可能性は低い上,仮にプリニー式噴火ステージにあるとしても,過
去のプリニー式噴火ステージの継続期間は数万年であり,上記破局的噴火からの経過期間は十分短い。ナガオカ論文においても,阿多カルデラは後カルデラ火山噴火ステージないし初期のプリニー式噴火ステージであるとされている。阿多カルデラにおいて,地下深さ10㎞より十分浅い位置に大規模な珪長質マグマ溜まりは存在しない。大きな
基線長の変化もなく,マグマ溜まりの顕著な増大は認められず,噴火活動による地殻変動がなく,マグマが供給されていないとの知見もあ
る。
鬼界カルデラについて
鬼界カルデラは,最後の破局的噴火から約7300年が経過しているが,
それ以前の破局的噴火の間隔は約5万年ないし約9万年であり,
経過期間は,破局的噴火の噴火間隔に比べて十分に短い。

鬼界カルデラにおける噴火活動は,薩摩硫黄島において多様な噴火様式の小規模噴火が発生しているのみであり,破局的噴火ステージにない。ナガオカ論文においても,後カルデラ火山噴火ステージにあるとされている。
鬼界カルデラにおいて,地下深さ10㎞より十分に浅い位置に大規
模な珪長質マグマ溜まりは存在しない。約7300年前の破局的噴火の時に蓄積された流紋岩質マグマは出尽くしたと考えられ,その後,破局的噴火を起こしうるような大規模な珪長質マグマ溜まりが形成されるような時間は経過していない。基線長の変化もなく,マグマ溜まりの顕著な増大は認められず,新たなマグマの供給もないとの知見も
ある。
阿蘇カルデラについて
阿蘇カルデラは,破局的噴火の最短の噴火間隔が約2万年,平均発生間隔が約5.3万年であるのに対し,最後の破局的噴火からは約9万年が経過している。しかし,阿蘇カルデラは現在,後カルデラ火山
噴火ステージにあると考えらえれ,地下深さ10㎞より十分に浅い位置に大規模な珪長質マグマ溜まりは存在しない。大きな基線長の変化もなく,マグマ溜まりの顕著な増大は認められず,新たなマグマの供給もないとの知見もある。

降下火災物の影響評価について
降下火砕物について,安全上重要な建物機器等に影響を及ぼしうる火山
事象として,
抽出した噴火(本件5カルデラについては現在の噴火ステージ
における既往最大規模の噴火,その他の9火山については既往最大規模の噴火)の中で最も規模が大きく,
本件各原子炉付近に降下火砕物が最も大き
く堆積したとされる約1.3万年前の桜島薩摩噴火を選定した。
参加人は,この噴火を想定し,文献調査,地質調査及びシミュレーショ
ン調査を行って,降下火砕物の層厚を15㎝と評価した。すなわち,文献調査により,上記噴火における降下火砕物は川内原発の敷地に分布していないものの,約20㎞離れた地点での層厚が12.5㎝であることから,安全側に評価して,
川内原発の敷地での層厚を12.
5㎝以下と想定した。
また,地質調査を行って,上記文献調査の層厚分布に保存状態がよい地点の層厚データを追加し,新たな分布図を作成したところ,川内原発の敷地から半径約15㎞の範囲には堆積していないことが確認できた。そして,本件ソフトを用いてシミュレーション調査を行ったところ,
降下火砕物は,
偏西風によってほとんどが東側に分布し,桜島の西側に位置する川内原発
の敷地に影響を及ぼす可能性は低いことが確認できたが,参加人は,最も厳しい8月の集計結果である11㎝と想定した。そして,以上の調査結果を踏まえて,参加人は,降下火砕物の層厚について,さらに安全側に評価して15㎝に設定した。
参加人は,降下火砕物が本件各原子炉に係る安全上重要な建物機器等の
安全機能に対して影響を与えないか評価を行った。その結果,降下火砕物の直接的影響によって,安全上重要な建物機器等の安全が損なわれることはないことを確認し,また,間接的影響についても,非常用ディーゼル発電機の7日間の連続運転によって電源供給が可能であり,原子炉及び使用済み核燃料ピットの安全性を確保できることを確認した。

(原告らの主張)

本件処分に係る司法審査の在り方

(ア)本件処分に係る司法審査は,発電用原子炉の設置許可処分の取消訴訟における審理及び判断の方法について判示した伊方原発最高裁判決を踏まえつつも,福島第一原発事故や,その後の原子力関連法令等の改正等を考慮する必要がある。
(イ)本件処分の適法性は,処分行政庁の判断に,発電用原子炉の安全上不合理な点があるか否かという観点から行われるべきである。そして,現在の科学水準(ただし,通説的見解に限られず,広く相応の科学的合理性を有する見解を含む。)に照らし,処分行政庁が審査において用いた具体的審査基準に不合理な点があり,又は,当該発電用原子炉が前記具
体的審査基準に適合するとした処分行政庁の調査審議及び判断
(以下
適合性審査
という。
)の過程に過誤ないし欠落がある場合には,
それが,
看過し難い過誤ないし欠落といえなくても,4号要件に適合していると判断できない。したがって,それに基づく設置変更許可処分は,裁量の範囲を逸脱,濫用するものであり,違法であることになる。

この点,伊方原発最高裁判決は,看過し難い過誤,欠落がある場合にのみ,発電用原子炉の設置許可処分が違法となる旨判示している。しかしながら,処分行政庁に裁量が与えられたのは,発電用原子炉の事故による被害の甚大さが他の科学技術による場合と質的に異なることから,発電用原子炉による事故が万が一にも起こらないように,
最新の科学的,

専門技術的知見を駆使して,十分に安全性を考慮した審査を求める趣旨であると解される。このことからすると,発電用原子炉の設置変更許可処分が違法となるのを,看過し難い過誤,欠落がある場合に限定することは相当ではなく,原告らが提示した科学的知見が,一応の合理性を有し,科学的に明白な誤りを有するものでない場合には,被告は,原告ら
が提示した科学的知見が,科学的に明白な誤りであることを相当の資料を用いて説明するか又は当該知見を考慮してもなお,想定を上回る事態
が生じないことを主張立証できない限り,前記裁量の範囲を逸脱,濫用したと認められなければならない。
(ウ)仮に,前記のような判断枠組みが採用されないとしても,看過し難い過誤,欠落とは,福島第一原発事故の被害の深刻さや,福島第一原発事故後に原子力関連法令等が改正された趣旨等に鑑み,当該発電用原子炉
において,深刻な災害が万が一にも起こらないようにするという観点から判断するべきであるから,相応の合理性をもって指摘される危険性や問題点を合理的な理由なく考慮していない場合や,保守的観点からの考慮が不十分で,指摘された危険性や問題点が発生する余地が残るような場合には,看過し難い過誤,欠落があると解されなければならない。

火山ガイドの不合理性
本件処分が適法であるためには,本件各原子炉が想定される自然現象が
発生した場合においても安全機能を損なわないものでなければならない(設
置許可基準規則6条1項)。そして,この想定される自然現象には火山の影響が含まれており,原子力規制委員会は,設置許可基準規則6条1項の要件に関して,火山の影響を評価するために火山ガイドを定めており,本件適合性審査は,火山ガイドを用いて行われている。しかしながら,火山ガイドは,以下のとおり,外部専門家からの意見聴取等を十分に行うことなく作成され,また,火山に関する最新の科学的,専門技術的知見を十分
に踏まえていない。したがって,このような火山ガイドの策定手続及び内容に照らせば,火山ガイドは不合理である。
(ア)原子力規制委員会及び原子力規制庁は,火山ガイドの策定に当たって必要な火山に関する科学的,
専門技術的知見を持ち合わせていなかった。
そして,原子力規制委員会が火山ガイドを策定するに当たって公開の場
で意見を求めた火山の専門家は,
東京大学地震研究所の中田節也教授
(以
下中田教授という。)のみであり,その他の専門家や日本火山学会
等に諮問されることはなく,外部専門家からの意見聴取手続は極めて不十分であった。また,平成25年4月2日に独立行政法人原子力安全基盤機構が開催した研修会で中田教授が述べた意見や,パブリックコメントで提出された意見は,火山ガイドの策定に当たって考慮されなかったし,完成した火山ガイドは,多くの火山専門家から批判されている。特に,火山ガイドでは,発電用原子炉の運用期間中の噴火規模の設定に当たって,階段ダイヤグラムを作成することとされているが,階段ダイヤグラムが役に立たないものであることは,多くの火山専門家が指摘している。

このように,火山ガイドは,火山に関する科学的,専門技術的知見を十分に踏まえないまま策定されたので,その内容は不合理である。(イ)火山ガイドは,設計対応不可能な火山事象が,原子力発電所の運用期間中に影響を及ぼす可能性の大小を立地評価の判断基準としている。しかしながら,現在の火山学の水準では,広範囲に火砕物密度流による被
害をもたらすような大規模噴火の発生を予測できる程度に至っていないから,原子力発電所の運用期間中に,特定の火山が噴火する可能性やその時期,規模を予測できることを前提とした火山ガイドの定めは不合理である。
さらに,大規模噴火の中長期的な予測手法が確立していないという現
段階の科学技術水準を踏まえれば,あいまいな基準によって火山活動の可能性を評価するべきではなく,少なくとも過去に起きた最大規模の噴火により,設計対応不可能な火山事象を引き起こし,それが原子力発電所に到達したと考えられる火山については,原則として立地不適とするといったような厳格な基準を用いなければならないが,火山ガイドは,
過去に発生した大規模噴火による被害等を軽視しているため,そのような厳格な基準が用いられていない。

被告は,原子力規制庁が平成30年3月7日示した原子力発電所の火山影響評価ガイドにおける『設計対応不可能な火山事象の評価』に関する基本的な考え方について(以下「基本的な考え方」という。)
に基づき,立地評価の際に,巨大噴火とその他の火山活動を区別し,巨大噴火の可能性の評価に当たっては,火山の現在の活動状況は巨大噴火が差し迫った状態ではないこと及び運用期間中に巨大噴火が発生するという科学的に合理性のある具体的な根拠があるとはいえない場合は,巨大噴火の可能性が十分小さいと判断できる旨主張する。
しかしながら,火山ガイドにおいては,巨大噴火に関する特別な規定
を設けておらず,巨大噴火のみを合理的理由もなく,正当な手続もとらずに,その他の火山活動と区別して評価することは不当である。実際に本件適合性審査に当たって,基本的な考え方にあるような社会通念を考慮した事実はない。基本的な考え方は,火山ガイドの立地評価について,科学的合理性もなく,事業者のために有利に基準を緩和する
ものである一方,原子力規制委員会・原子力規制庁の本来の責務を放棄するに等しい内容であり,容認することはできない。
さらに,火山ガイドは,火山活動のモニタリングについて定めているところ,ここでは,事業者がモニタリングを実施することにより,広範囲に火砕物密度流による被害をもたらす大規模噴火の兆候を察知し,原
子炉を停止させ,当該噴火による影響が生じるより前に,核燃料を当該噴火の影響が及ばない場所へ搬出できることが前提となっている。しかしながら,核燃料をすべて搬出する等して噴火の影響に対処できるようにするためには,数十年単位の年月を要することが想定されるが,上記モニタリングによって,数十年以上の余裕をもって大規模噴火の兆候を
察知することは不可能若しくは著しく困難である。
あえてモニタリングを行うとしても,モニタリングの実施には不確定
な要素が多く含まれていることを踏まえ,あらかじめ複数の閾値を設定するなどして,その値を超えた場合には遅滞なく予定した行動に取り掛かることができるようにしておく必要がある。しかしながら,火山ガイドには,そのような閾値は設定されていない。また,被告は,破局的噴火への発展可能性を示唆する異常が少しでもある場合には,いわば空振り覚悟で本件原子炉の停止等を実施する旨主張するが,そのような文言は火山ガイドの定めにはなく,実際にそのような状況で核燃料を搬出できるだけの時間を確保して,本件原子炉を停止させることは極めて困難である。さらに,現在,気象庁や研究機関が実施している本件5カルデラに係るモニタリングは,大規模噴火を想定したものとはなってい
ないため,大規模噴火を対象としたモニタリングを実施するとすれば,新たなモニタリング体制を構築する必要があるが,そのような措置は採られていない。
(ウ)被告は,火山ガイドは,SSG-21と整合していると主張するが,SSG-21では,検討対象火山の抽出期間が1000万年間とされて
いるのに対し,火山ガイドでは258万年間に限定されている等,両者の間に重大な齟齬があり,
火山ガイドはSSG-21と整合していない。
(エ)新旧含めた外部事象についての原子力発電所の規制基準は,一般に,①既往最大以上の保守的な想定を求めるか,②統計的若しくは確率論的に妥当な水準の保守的想定を求めるかその双方を求めるものであるが,
火山ガイドは,過去において設計対応不可能な火山事象が到達した場所であっても,当該原子力発電所の運用期間中においてその影響を及ぼす可能性が十分小さいと評価された場合は,火山活動のモニタリングと兆候把握時の対応を適切に行うことを条件として立地を認めており,不自然な程緩やかであり,
他の外部事象の規制基準と整合性がとれていない。


本件適合性審査における過誤ないし欠落

処分行政庁は,本件処分を行うに当たり,火山に関する科学的専門技術的知見を踏まえて,本件申請が,設置許可基準規則が定める要件に適合しているか審査しなければならない。しかしながら,処分行政庁は,火山に関する科学的,
専門的技術的知見をほとんど有していないにもかかわらず,
外部専門家からの意見聴取等を十分に行わず,
火山に関する最新の科学的,
専門技術的知見を十分に踏まえずに,想定される火山の影響を判断し,本件申請が火山ガイドに適合しているとして本件処分を行った。
なお,被告は,本件処分の取消訴訟における司法審査の対象は,発電用原子炉の基本設計部分に限られる旨主張しているが,
改正後の規制法では,

両者の区別は,相当程度希薄化しているし,両者は密接に関係するものであって,詳細設計を検討しなければ,基本設計について十分な司法審査を行えないものもある。したがって,基本設計のみが司法審査の対象となるとはいえず,詳細設計も司法審査の対象になると解すべきである。そして,以下の各事情を踏まえれば,本件処分は,裁量の範囲を逸脱又
は濫用してなされたものということができる。
(ア)専門的知見の欠如
本件適合性審査に当たって,処分行政庁は,外部専門家からの意見聴取等を十分に行っていないことから,本件適合性審査には,過誤,欠落があったと推認できる。特に,本件申請に当たっては,参加人が階段ダ
イヤグラムを作成しているが,立地評価における運用期間中の噴火規模の設定に当たり,階段ダイヤグラムはほとんど役に立たないということは,多くの火山専門家が指摘している。
(イ)立地評価の不合理性
SSG-21を踏まえれば,本件各原子炉に核燃料物質が存在する
期間(以下本件運用期間という。)に,火砕物密度流を含む火山
事象が本件各原子炉の安全性に影響を及ぼす可能性が十分小さいと評
価できるためには,噴火の発生が1000万年に1回以下でなければならないはずであるが,川内原発の敷地は,本件5カルデラの噴火により,この60万年の間,概ね10万年に1回の頻度で火砕物密度流に襲われている。しかも,阿蘇カルデラ及び鬼界カルデラでは,過去約5万年に1回の頻度で破局的噴火が発生しており,これらのカルデラの噴火が,本件各原子炉の運用期間中に設計対応不可能な火山事象が本件各原子炉に影響を及ぼす可能性を否定できない。そして,火砕物密度流や降下火砕物が川内原発の敷地に到達していた可能性がある以上,川内原発の敷地はそもそも立地不適とされなければならなかっ
た。
本件申請では,VEI6以下の既往最大規模の噴火を前提としているが,本件5カルデラは,過去にVEI7クラスの噴火を繰り返しているのであるから,VEI6以下の噴火について考えられる最も厳しい条件を設定しなければ適切な評価ができない。その上で,本件申請
では,過去の噴火履歴を基に本件5カルデラの大規模噴火の確率を概算すべきであったが,このような検討はされていない。
これに対し,被告は,火山学において確率論的評価手法は確立していない旨主張するが,そうであれば,火山ガイドが要請するような噴火可能性の評価は不可能なはずであり,実際,本件適合性審査におい
ても,どのようにして本件5カルデラの噴火の可能性を十分に小さいと評価したのか明らかにされていない。
かえって,日本におけるカルデラ噴火の発生確率は,ポアソン分布(それぞれの事象が小さい確率で独立してランダムに起こる場合にその発生確率を示す確率評価)によって評価するよりほかに方法がない
とする見解があり,現に多くの火山専門家は,破局的噴火の確率ないし本件各原子炉に火砕流が到達する確率をポアソン分布で算出してい
るのであるから,あえて破局的噴火の可能性評価を行うのであれば,この手法によるしかないが,本件適合性審査において,このような確率評価が行われた形跡はなく,本来考慮されるべきことが考慮されていない。
本件申請は,ナガオカ論文に記載された噴火ステージ論や,ドルイット論文に記載された知見に依拠する。
しかしながら,ナガオカ論文に記載された噴火ステージ論は,テフラ層序等の地質調査結果に見られる定性的傾向を整理するための作業仮説的概念であって,普遍的法則について述べたものではない。噴火
ステージ論は,過去の事例による裏付けに乏しく,本件5カルデラにおいては,それに反するような例も確認されている。それにもかかわらず,
本件申請においては,
噴火ステージ論の普遍性や適用可能性が,
客観的手法に基づいて検討された形跡はない。
仮に,噴火ステージ論を前提とした場合,当該火山が現在どのステ
ージに当たるかどうかはカルデラ噴火の発生により更新されるのであるから,現在特定のステージにあるからといって,将来のカルデラ噴火の可能性が低いなどということはできない。
また,ドルイット論文は,ギリシャのカルデラ火山の一事例研究にすぎず,そこに記載された大規模噴火直前の急激なマグマ供給率の上
昇に関する記載
(破局的噴火の100年前から0.
05㎦/年以上)
は,
一般化できる原則ではないから,これを本件5カルデラに当てはめることはできず,かえって,破局的噴火前の急速なマグマの供給が必要な期間は,せいぜい10年程度という見解もある。仮に,同論文に記載された見解を前提として,
本件5カルデラのマグマ溜まりにおいて,

0.
05㎦/年以上という急速なマグマの供給が行われたとしても,本件5カルデラが地溝帯に存在しており,マグマ溜まりが下方に広がり
易く,体積膨脹があっても地殻変動を捉えることが困難であるという地域性や,現在実施されている観測体制によってはそのような地殻変動を捉えることが困難である等の事情に照らすと,上記地殻変動から破局的噴火を引き起こすような規模のマグマ溜まりの体積増加率を見積もる際に,過少評価されるおそれが大きい。
このように,ナガオカ論文及びドルイット論文に記載された見解を本件5カルデラに適用することは誤っている。
被告は,カルデラ火山が噴火に至るプロセス及びカルデラ火山の噴火の前には前兆現象があると考えることが合理的である旨主張し,カ
ルデラ噴火の100年から数百年前には,カルデラ噴火の前兆現象として溶岩流出主体の噴火を捉えることが可能である旨の研究報告書(小
林哲夫カルデラ噴火の前兆現象に関する地質学的研究(平成29
年8月1日)。乙D45)を提出する。
しかしながら,同研究報告書に記載された見解は確立した知見とは
いえない。カルデラ噴火の中には,先行的な溶岩流出が確認されていないものが多数存在するが,同研究報告書では,このような先行的溶岩流出が現れないカルデラ噴火の可能性が十分考慮されていない。過去のカルデラ噴火についても,同研究報告書に記載されたような100年から数百年前の特徴的な前兆現象が発生したといえるか明らかで
ない。同研究報告書で述べられている見解は,平成29年1月11日開催の第2回原子炉安全専門審査会原子炉火山部部会会合で紹介されたが,同部会においては,かかる見解を前提とした意見等は出されていない。したがって,上記研究報告書によって,立地評価の合理性が裏付けられるとはいえない。

本件申請では,鹿児島地溝に存在する本件3カルデラ火山をひとまとまりにした上で階段ダイヤグラム(以下本件階段ダイヤグラム

という。を作成し,

カルデラ火山の活動間隔に係る評価が行われた。
しかしながら,個々の火山のマグマ溜まりは独立しているのであるから,本来,階段ダイヤグラムは火山毎に作成し,それぞれの火山について活動履歴を評価すべきである。本件申請は,鹿児島地溝に存在する本件3カルデラが破局的噴火を起こすことに周期性ないし規則性があることを前提とするが,鹿児島地溝に存在するカルデラ火山の大規模噴火の発生間隔についてはばらつきが認められ,上記前提に理論的根拠はない。
仮に破局的噴火のデータが少ないことを補うために,複数の火山を
まとめるとしても,
その対象を本件3カルデラに限定する理由はなく,
立地評価の対象である本件5カルデラ全体について検討すべきである。特に,阿蘇カルデラについては,これまでに4回の破局的噴火が確認されており,破局的噴火の発生確率を計算するためのサンプル数が多い事例であるにもかかわらず,検討対象から外されている。

このように,破局的噴火の可能性がある火山の対象を本件3カルデラに限定したのは,規則的な周期性を示すものを恣意的に選択したものであり,不合理である。
なお,そもそも階段ダイヤグラムは,あくまで火山の活動傾向を理解する助けとして使うものであり,数千年から数万年の長期間の火山
活動を基に次の噴火の時期を予測することは困難である。また,階段ダイヤグラムの基となる噴出物量や噴火年代の測定には,大きな誤差が含まれる等その精度には問題があるのに,本件適合性審査においては,異なるデータベースを用いた階段ダイヤグラムを作成したり,想定される誤差を可視化したりする等の対応を検討した形跡がない。本
件階段ダイヤグラムは,この点からも,原子力発電所の立地の適否を議論する際に参考となるものではない。

本件申請では,地球物理学的調査の情報から本件5カルデラの地下構造を推定した知見を基に,マグマの供給状態を推定している。
しかしながら,そもそも現在の技術では,カルデラの地下構造を精度よく推定することはできず,破局的噴火を引き起こすようなマグマ溜まりの有無を確定することは不可能である。
仮に,上記地下構造を推定するとしても,本件申請に当たり,本件5カルデラの地下構造について,独自の調査がされていない。そのため,阿多カルデラについては,地下構造に関する資料が乏しい。また姶良カルデラ,鬼界カルデラ及び阿蘇カルデラに関する文献について
は,文献の解釈を誤っている部分や,既存の文献の中でもより破局的噴火を引き起こすマグマ溜まりの存在を示唆するものを見落としている部分がある。
本件申請においては,破局的噴火は,珪長質の大規模なマグマ溜まりが,少なくとも地下10㎞以浅にある場合に起きることを前提とし
た上で,このようなマグマ溜まりはないとされている。
しかしながら,過去に珪長質のマグマ溜まりがなくても発生したと考えられる破局的噴火は存在する。また,マグマ溜まりが10㎞よりも深い場合であっても,マグマが急激に上昇し破局的噴火に寄与する可能性を示す知見は複数存在する。

そもそも,マグマ溜まりの深さの推定については,多くの観測誤差を含むものであり,本件5カルデラの地下には,すでに破局的噴火を引き起こすようなマグマ溜まりが形成されている可能性を示す知見が複数存在する。特に鬼界カルデラにおいては,80㎦以上のマグマ溜まりが滞留しているとされるほか,姶良カルデラについては,長期間
にわたって,
0.
001㎦/年という極めて高いマグマ溜まりへの供給
率が推定されていて,100㎦以上のマグマが蓄積されているという
見解がある。
本件適合性審査では,このような事実が十分に考慮されていない。被告は,
乙D52の研究報告書に基づき,
地震波トモグラフィー
(地
震波速度から地下の構造を解析する技術)による分析によれば,現在の姶良カルデラの状況では,運用期間中にVEI7以上の破局的噴火が発生する可能性は低い旨主張する。
しかしながら,地震波トモグラフィーによって,カルデラ噴火を起こすような大規模マグマ溜まりの有無を判定することは困難であることは,多くの火山専門家の共通認識である。そもそも,同研究報告書
は,モニタリングに用いるシミュレーションモデルの検証のために行われた調査に関するものであり,
その結論も破局的噴火が発生する
可能性は低いと述べるにとどまるから,立地評価の合理性を基礎づけるものではない。
(ウ)火山活動のモニタリングについて

火山ガイドによれば,
本件適合性審査では,
モニタリングによって,
破局的噴火による影響が生じる前に原子炉を停止させ,適切に当該噴火の影響外へ核燃料物質を搬出等できるだけの時間的余裕があるように,
本件5カルデラの破局的噴火の兆候を察知できるような監視項目,監視の方法,対処方針等が参加人によって定められていることを確認
しなければならない。
しかしながら,
そもそも,
破局的噴火については観測事例が乏しく,
前兆として何が起こるかは分からず,仮に破局的噴火の予兆を判断できるとしても,それは,せいぜい数か月前というのが現在の科学技術水準である。その上,噴火の兆候が見られたとしても,それが最終的
に破局的噴火に至るのか,それとも噴火未遂に終わるのかを判断することは極めて困難である。したがって,現在の科学技術水準では,破
局的噴火の兆候を察知し,判断するようなモニタリングの方法を定めることは不可能ないし著しく困難である。
それにもかかわらず,原子力規制員会は,これが可能であると誤認して本件適合性審査を行っている。
また,本件申請においては,参加人が本件5カルデラについて大規
模噴火の兆候を察知してから,本件各原子炉内の核燃料物質を火山事象の影響範囲外へ搬出するまでに要する時間について,定量的評価が行われていない。しかしながら,このような定量的評価を実施しない限り,処分行政庁としても,本件申請に係るモニタリング体制が適切なものであるか審査できないはずである。

そもそも火山ガイドにおいては,対処を講じるために把握すべき火山活動の兆候と,その兆候を把握した場合に対処を講じるための判断基準を定めることが明記されているが,この判断基準が具体的に定まっておらず,本件申請においても,参加人が本件各原子炉の運転を停止して核燃料物質の搬出に移るための具体的基準が示されていな
い。そのようにして本件各原子炉を停止した場合に,核燃料を搬出する搬出先も未定である。
これらのことを看過してなされた本件適合性審査には,過誤,欠落がある。
(エ)

影響評価の不合理性
本件申請では,降下火砕物による影響に関して,約1万2800年前に発生した桜島における桜島薩摩噴火による影響が最も大きいと評価し,当該噴火による降下火砕物の層厚が12.5㎝であったことを踏まえ,川内原発の敷地において考慮する降下火砕物の層厚を15㎝
としている。そして,処分行政庁は,前記の点について,火山ガイドを踏まえたものであると判断し,これを是認した。

しかしながら,桜島薩摩噴火以上の噴火規模の噴火を想定しない合理的な理由は全くない。かえって,本件各原子炉周辺には,破局的噴火を起こしかねないカルデラ火山が存在し,特に姶良カルデラにおいては,その噴火の可能性が高まっており,破局的噴火が起きれば,川内原発の敷地に到来する降下火砕物の層厚は,少なくとも50㎝以上になり得る。仮にVEI7の噴火を除外するとしても,桜島薩摩噴火は,VEI6クラスの中では,噴出量が最も小さく,VEI6クラスの噴火で桜島薩摩噴火以上の噴火が起こる可能性は十分にある。このように,桜島薩摩噴火のみを想定することは過小評価である。また,
約1万2800年前のたった一度の出来事である桜島薩摩噴火のみを根拠とするのは,SSG-21から明らかに逸脱している。
本件申請においては,本件シミュレーションの結果を踏まえて,桜島薩摩噴火と同程度の噴火が発生した場合の降下火砕物の層厚を評価している。

しかしながら,本件シミュレーションにおいては,噴火が発生する場所を桜島山頂部に限定しており,他の場所において噴火が発生することや,桜島薩摩噴火以上の規模の噴火が発生し得ること等を想定していない。また,本件シミュレーションでは,噴煙が同心円状に広がる現象
(傘型領域)
等大規模噴火の特質を十分に踏まえておらず,
日々

変動する風向や風力の不確実性を保守的に考慮していない。さらに,本件ソフトが試験的なものであり,
本件シミュレーションにおいては,
そのことを踏まえた保守的な評価が求められるのに,本件申請ではそのような評価はされていない。参加人以外の原子力事業者は,調査結果とシミュレーションを併用し,保守的な評価を行った上で,噴煙柱
高度や風速風向等の不確実性も考慮しており,

これらと比較しても,
本件適合性審査には過誤・欠落があるのは明らかである。

被告は,
本来,
本件シミュレーションを実施する必要はなかったが,
文献調査の結果との間に大きなかい離がないことを検証するために,これを確認的に行った旨主張する。しかしながら,参加人の文献調査の結果と本件シミュレーションと間に大きなかい離がないと判断した過程にも,看過し難い過誤,欠落がある上,このような主張はSSG-21に反している。
仮に,桜島薩摩噴火と同程度の噴火を想定するとしても,本件申請では大気中における降下火砕物の濃度が過小に評価されている。そのため,本件申請において検討されたディーゼル発電機のフィルタ交換
の所用時間も過小となり,実際には,フィルタ交換をする余裕がなくなり,
フィルタが目詰まりを起こし,
ディーゼル発電機が機能喪失し,
発電用原子炉の冷却機能が喪失するおそれがある。
また,降下火砕物のうち浮遊性粒子は,非常用ディーゼル発電機内に侵入しやすく,
侵入すれば,
機器の閉塞や摩耗を引き起こしかねず,

ディーゼル発電機の機能に影響を及ぼしかねないが,本件申請ではこのことが十分に考慮されていない。
本件5カルデラにおいて大規模噴火が発生した場合,過去の噴火事例と同様,
火山性地震
(火山帯やその周辺の地殻浅部で発生する地震)
が発生し,降下火砕物と地震荷重の組み合わせによって,本件各原子
炉を含む原子炉施設に大きな荷重がかかることが予想される。しかしながら,本件申請において,参加人がどの程度の降下火砕物が堆積するのか,どこでどのような規模の火山性地震が起き,その結果どの程度の地震動が川内原発の敷地で観測されると想定したのかが明らかでない。

本件適合性審査では,これらの点が看過されているから,本件適合性審査に過誤,欠落がある。

当裁判所の判断
1
争点1(原告適格の有無)について

(1)原告適格の有無の判断基準

行政事件訴訟法9条1項は,処分の取消しの訴え等を提起することがで
きる者を,当該処分又は裁決の取り消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限定しているところ,法律上の利益を有する者とは,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者をいい,当該処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,
それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には,このような利益も前記の法律上保護された利益に当たるというべきである。そして,処分の相手方以外の者について法律上保護された利益の有無を判断するに当たっては,当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく,当該法令の趣旨及び目的並
びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮し,この場合において,当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たっては,当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌し,当該利益の内容及び性質を考慮するに当たっては,当該処分がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質
並びにこれが害される態様及び程度をも勘案すべきである(最高裁平成16年(行ヒ)第114号同17年12月7日大法廷判決・民集59巻10号2645頁,最高裁平成20年(行ヒ)第247号同21年10月15日第一小法廷判決・民集63巻8号1711頁)。

規制法の目的は,基本法の精神にのっとり,核原料物質,核燃料物質及
び原子炉の利用が平和の目的に限られることを確保するとともに,原子力施設において重大な事故が生じた場合に放射性物質が異常な水準で当該原
子力施設を設置する工場又は事業所の外へ放出されることその他の核原料物質,
核燃料物質及び原子炉による災害を防止し,
核燃料物質を防護して,
公共の安全を図るために,製錬,加工,貯蔵,再処理及び廃棄の事業並びに原子炉の設置及び運転等に関し,大規模な自然災害及びテロリズムその他の犯罪行為の発生も想定した必要な規制を行うほか,原子力の研究,開発及び利用に関する条約その他の国際約束を実施するために,国際規制物資の使用等に関する必要な規制を行い,もって国民の生命,健康及び財産の保護,環境の保全並びに我が国の安全保障に資することにある(同法1条)。
また,本件改正等では,規制法43条の3の5第2項10号で,発電用
原子炉の炉心の著しい損傷その他の事故が発生した場合における当該事故に対処するために必要な施設及び体制の整備に関する事項が設置許可の申請書の記載事項として定められ,同法43条の3の6第1項3号で,設置者に重大事故の発生及び拡大の防止に必要な措置を実施するために必要な技術的能力等があることが設置許可の基準の一つとされ(なお,前記の定めは,それぞれ規制法43条の3の8第1項及び第2項において,設置変更許可の場合にも準用されている。),同法43条の3の14及び同法43条の3の20第2項で,許可を受けた発電用原子炉施設について,最新の科学技術的知見を踏まえた新たな基準が定められた場合には,当該施設
を当該基準に適合させるバックフィット制度が導入された。これらは,福島第一原発事故の反省に立ち,そのような原子炉災害を再び繰り返さない趣旨であると解される。

発電用原子炉の設置許可を受けた者が所定の事項を変更しようとする場
合の許可申請(同法43条の3の8第1項)については,規制法43条の3の6第1項が準用されるところ(同法43条の3の8第2項),同項2号(技術的能力に係る部分に限る),3号及び4号が設けられた趣旨は,
発電用原子炉が,原子核分裂の過程において高エネルギーを放出するウラン等の核燃料物質を燃料として使用する装置であり,その稼働により,内部に多量の人体に有害な放射性物質を発生させるものであって,発電用原子炉を設置しようとする者が,発電用原子炉の設置,運転につき所定の技術的能力を欠くとき,又は原子炉施設の安全性が確保されないときは,当該原子炉施設の従業員やその周辺住民等の生命,身体に重大な危害を及ぼし,周辺の環境を放射能によって汚染するなど,深刻な災害を引き起こすおそれがあることに鑑み,前記災害が起こらないようにするため,発電用原子炉の設置許可の段階で,発電用原子炉を設置しようとする者の右技術
的能力の有無及び申請に係る原子炉施設の位置,構造及び設備の安全性につき十分な審査をし,申請者において所定の技術的能力があり,かつ,原子炉施設の位置,構造及び設備が前記災害の防止上支障がないものであると認められる場合でない限り,原子力規制委員会は原子炉設置(変更)許可処分をしてはならないとするものと解される。
そして,前記各号所定の事項に係る各審査に過誤,欠落があった場合に
は,重大な原子炉事故が起き,それにより住民が被害を受ける蓋然性が高く,殊に原子炉施設の近くに居住する者はその生命,身体等に直接的かつ重大な被害を受けると想定されることからすると,前記各号は,このような発電用原子炉の事故等がもたらす災害による被害の性質も考慮したものと解される。

このような前記各号が設けられた趣旨やそれらが考慮している被害の性
質等に加え,本件改正等の経緯等を踏まえると,規制法は,国民の生命,身体の安全,財産等に対する保護を要求していると解され,これらの規定は,単に公衆の生命,身体の安全,健康,財産,環境上の利益を一般的公益として保護しようとするにとどまらず,原子炉施設周辺に居住し,当該事故等がもたらす災害により直接的かつ重大な被害を受けることが想定さ
れる範囲の住民の生命,身体の安全等を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むと解される。
前記の原子炉事故等による災害により直接的かつ重大な被害を受けるものと想定される具体的な地理的範囲については,
当該原子炉の種類,
構造,
規模等の当該原子炉に関する具体的な諸条件を考慮に入れた上で,当該住民の居住する地域と原子炉の位置との距離関係を中心として,社会通念に照らし,合理的に判断すべきものであると解される(最高裁判所平成元年(行ツ)第130号同4年9月22日第三小法廷判決・民集46巻6号571頁参照)。
以上を前提として,原告らが,本件各原子炉において発生する事故等が
もたらす災害により直接的かつ重大な被害を受けることが想定される範囲の住民に含まれるか否かを検討する。
(2)認定事実
前提事実に加え,各項掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。

放射線防護における確定的影響と確率的影響

(ア)前記のとおり,人体が被ばくし,放射線により分子が切断されると,そのこと自体による健康被害が発生するのみならず,生命体が有する修復作用により分子が再結合する際,遺伝子が組み替えられて結合し,これによって健康被害が発生することがある。
(イ)このような放射線被ばくによる有害な健康への影響は,放射線防護の分野において,確定的影響と確率的影響とに分類され,放射線防護体系を作り上げるためには,確定的影響の重篤度と確率的影響の確率が線量に伴ってどのように変化するかを定量的に知ることが必要であるとされ
ている(乙D35(17頁))。
(ウ)確定的影響とは,線量が十分に大きければ,組織の機能を損なうのに
十分な細胞喪失を引き起こす放射線による細胞致死の結果から生じる健康影響(放射線被ばくによって人体の組織や臓器内の細胞が損傷されることによってそれらの機能が喪失等すること(乙D91(13頁))をいい,ある臨床的閾値以上で重篤度が線量とともに増すという特徴を持ち,主に急性的にないし一時的に閾値を超えた被ばくを受けた場合に問題となる(乙D34(9頁),35(18頁))。
ほとんどの臓器・組織は,相当な数の細胞が失われても影響を受けないが,失われた細胞の数が十分多いと組織機能が喪失され,観察し得る障害が発生することがある。これにより,組織・臓器内の細胞が壊死し
たり,正常に再生し,機能することが妨げられたりすると,臓器機能の喪失に至ることもある。こうした障害を引き起こす確率は,低線量の被ばくであれば0パーセントであるが,線量が閾値を超えると100パーセントまで急速に上昇する(乙D34(9頁),35(5頁,15ないし18頁))。そして,このように急性障害を引き起こすといわれてい
る閾値は,症状にもよるが,一般的には100ミリシーベルトから250ミリシーベルトと考えられている(甲A1(401頁))。
(エ)他方,確率的影響とは,放射線被ばくによって引き起こされた細胞の収縮の結果として起こるかもしれない健康影響(放射線被ばくによって引き起こされた細胞の修飾の結果としてがんの発症確率が放射線の影響
に比例して上昇するという影響をいう(乙D34(9頁))。
放射線被ばくで損傷した細胞は,長い潜伏期を経て悪性状態となり,その増殖が制御されなくなること(がんを意味する。)があるところ,その確率は,放射線の影響により損傷を受けた細胞の数によって左右される。遺伝的情報を持った細胞に損傷が発生すると,遺伝的影響が生じ
る場合もある。そして,確率的影響については,確定的影響におけるような閾値は想定されていない(乙D35)。


国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告

(ア)国際放射線防護委員会(ICRP)は,1928年に国際X線・ラジウム防護委員会という名称で1928年に設立され,1950年に現在の国際放射線防護委員会(ICRP)に組織及び名称が変更された機関であり,委員会及び外部の情報源からの幅広い専門的意見に基づき,放射線から人や環境を守る仕組みを専門家の立場で勧告する国際学術組織である(乙D35(1頁以下),39)。
(イ)ICRPの1990年勧告
(以下
ICRP1990年勧告
という。

ICRPの主委員会は,主として適切な放射線防護の基礎となり得る
基本原則についての指針を提供することにより,国,地域及び国際的なレベルで規制機関並びに諮問機関の役に立つことを意図して,1990年11月,概要以下のとおりの勧告を採択した(乙D35(3頁))。放射線防護の第一の目的は,放射線被ばくの原因となる有益な行為を不当に制限することなく,人を防護するための適切な標準を与える
ことであるから,放射線防護の基本的な枠組みには,必然的に,科学的な判断だけでなく社会的な判断も含めた上で,少ない放射線量でも何らかの健康に対する悪影響を起こすことがあると仮定しなければならない。確定的影響には閾値が存在するので,個人に対する線量を制限することによってこれを避けることが可能であるが,確率的影響は
閾値を求め得ないので,これを完全に避けることはできない。ICRPの基本的な枠組みは,線量を確定的影響のそれぞれに対する閾値よりも低く保つことによってその発生を防止し,また,確率的影響の誘発を減らすためにあらゆる合理的な手段を確実に取ることを目指すものである(乙D35(31頁))。

被ばくは,職業被ばく(作業時の人々の被ばく),医療被ばく(診断又は治療の一部としての人々の被ばく)及び公衆被ばく(放射線に
対する他のすべての被ばく)の3種類に分類される。それぞれについて許容される線量限度は,
以下のとおりである
(乙D35
(41頁)。

(a)職業被ばくに係る線量限度については,毎年ほぼ均等に被ばくしたとして,全就労期間中に受ける総実効線量が約1シーベルトを超えないように線量限度を定めるべきであり,また放射線防護体系の適用によってこの値に近づくことは稀にしかないようにするべきである。その上で,いかなる1年間にも実効線量は50ミリシーベルトを超えるべきでないが,5年間の平均値として,1年当たり20ミリシーベルト(5年間に100ミリシーベルト)を実効線量とす
るべきである(乙D35(48頁,49頁))。このような実効線量の制限により,実効線量が限度値で長期間続いたと仮定しても,ほとんどすべての組織・臓器に確定的影響を起こさないことは確実である(乙D35(50頁))。
作業者集団につき,全ての作業年に10ミリシーベルト,20ミ

リシーベルト,30ミリシーベルト,50ミリシーベルトの年実効線量を受けるという仮定の下,それぞれにつき生涯線量を計算すると(概算でそれぞれ0.5シーベルト,1.0シーベルト,1.4シーベルト,2.4シーベルトとなる。),寄与死亡の確率は,1.8パーセント,3.6パーセント,5.3パーセント,8.6パー
セントとなる(乙D35(46頁))。
(b)公衆被ばくに係る線量限度については,実効線量を1年当たり1ミリシーベルトとするべきであるが(乙D35(55頁)),特殊な状況においては,5年間にわたる平均が1年当たり1ミリシーベルトを超えなければ,単一年にこれよりも高い実効線量が許される
こともあり得る(乙D35(56頁))。このように公衆被ばくに関する実効線量の限度を1年間当たり1ミリシーベルトとしている
のは,放射線による発がんリスク等の健康影響に関する科学的知見を基礎としつつも,不必要な放射線への被ばくを避けるために,非常に変動しやすいラドンによる被ばくを除いた自然放射線源からの年実効線量が約1ミリシーベルトであることを考慮したものである(乙D35(55頁))。
(ウ)ICRP勧告82(以下ICRP1999年勧告という。)ICRPは,1999年9月,放射線による長期被ばくへの放射線防護体系の適用に関する指針を示す勧告を採択した(乙D34ⅶ)。これによれば,ここにいう長期被ばくは,公衆が偶発的にまた持続的に受け
る長期間にわたる被ばくをいい(乙D34(1頁)),一時的な公衆被ばくや,職業被ばく及び医療被ばくは含まれない。代表的な長期被ばくは,宇宙線及び原子崩壊系列中の放射線核種のような,いわゆる自然の線源によって与えられるものである(乙D34ⅷ)。
ICRP1999年勧告は,概要以下のとおり,介入がほとんど常に
正当化される一般参考レベルの現存年線量(ある与えられた場所における長期被ばくのすべての線量に起因するすべての長期年線量の総和)は100ミリシーベルト以下とし,正当化されそうにない介入に対する一般参考レベルを現存年線量で10ミリシーベルト以下とした(乙D34(53頁))。

長期被ばくの確定的影響に関して,短期間の急性被ばくによって引き起こされる確定的影響に関しては多くの経験と情報があるが,これよりも継続期間の長い一時的な被ばくによって引き起こされる確定的影響については直接の人のデータが非常に少なく,長期被ばくによって引き起こされる確定的影響についてはさらに少ない。比較的均一な
長期被ばく状況においては,確定的影響に対する閾値は,どの臓器も確定的影響に対するその閾値を上回る年吸収線量を受けなければ,年
実効線量約100ミリシーベルト以上であるはずである
(乙D34
(7
0頁,71頁))。
介入が通常期待されず,正当化されそうにないほど低い現存年線量については,世界の多くの地域で経験されている自然の現存年線量を用いることが有用であるが,自然の線量の世界平均が年当たり2.4ミリシーベルトであるのに対し,多くの人口集団が年当たりおよそ10ミリシーベルト程度にまで高められた線量を経験している世界の諸地域で何年もの間生活している(乙D34(33頁))。
なお,普通の長期被ばく状況における年線量は,通常,確定的影響
の閾値より十分低いため,関心のある放射線誘発健康影響は確率的影響だけである(乙D34(9頁))。
(エ)ICRPの2007年勧告
(以下
ICRP2007年勧告
という。

ICRPは,2007年3月に主委員会により承認された勧告において,ICRP1990年勧告を改訂し,複雑化した線量制限勧告値
を計画被ばく状況,
緊急時被ばく状況及び現存被ばく状況
という三段階の被ばく状況に基づく体系に変更した(乙D33(5枚目))。
計画被ばく状況は,被ばくが生じる前に放射線防護を前もって計画することができる状況及び被ばくの大きさと範囲を合理的に予測でき
るような状況であり,これに係る個人線量限度は,職業被ばくについては,規定された5年間の平均が1年当たり20ミリシーベルト,公衆被ばくについては,年間1ミリシーベルトとし,線量拘束値(ある行為の範囲内にある特定の線源によって与えられると予想される線量に適用される個人線量制限)は,職業被ばくについては,1年当たり
20ミリシーベルト以下,公衆被ばくについては,状況に応じて年1ミリシーベルト以下で選択されるものとされた(乙D33(59頁以
下,75頁))。
緊急時被ばく状況は,急を要する防護対策及び恐らく長期的な防護対策の履行も要求されるかもしれない不測の状況であり,これに係る参考レベルとして,公衆被ばくについては,1年間の実効線量の積算値を状況に応じ1年間当たり20ミリシーベルトから100ミリシーベルトまでとされた
(乙D33
(60頁,
63頁,
68頁,
75頁)。

さらに,ICRP2007年勧告は,計画被ばく状況における確定的影響に関する閾値について,睾丸,卵巣,水晶体,骨髄等の臓器ごとに具体的な線量を示しており,これらの閾値は,実効線量に換算す
ると,いずれも100ミリシーベルトを超え,睾丸及び卵巣の永久不妊や白内障のように2000ミリシーベルトから6000ミリシーベルトに達するものもある(乙D33(75頁,124頁))。
これらの閾値を超えない場合であっても,急性的に又は年間を通じて受ける実効線量が100ミリシーベルトを超過すると,確定的影響
とがんの有意なリスクの可能性が高くなる。
100ミリシーベルトを下回る線量においては,ある一定の線量の増加又はそれに正比例して放射線起因の発がん又は遺伝性影響の確率の増加を生じるであろうという仮定(この線量反応モデルをLNTモデルという。)に引き続き根拠を置くものの,このモデルの根拠
となっている仮説を明確に実証する生物学的,疫学的知見がすぐには得られそうにないとしことを強調するとされ,低線量における健康影響は不確実であることから,公衆の健康を計画する目的には,非常に長期間にわたり多数の人々が受けたごく小さい線量に関連するかもしれないがん又は遺伝性疾患について仮想的な症例数を計算することは
適切ではないとされた
(乙D33
(17頁,
19頁,
57頁,
75頁)。

なお,LNTモデルは,科学的に証明された真実として受け入れら
れている見解ではなく,科学的な不確かさを補う観点から,公衆衛生上の安全サイドに立った判断として採用されている考え方であるとする見解がある(乙D36(8頁))。

低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ報告書
(以下
本件報告書という。)(乙D36)
(ア)福島第一原発事故による放射性物質汚染対策において,低線量被ばくのリスク管理を今後はより一層適切に行っていくことが求められることから,国内外の科学的知見や評価の整理,現場の課題の抽出及び今後の方向性の検討を行う場として,低線量被ばくのリスク管理に関するワー
キンググループが設置された。
同ワーキンググループでは,福島第一原発事故発生後の避難指示の基準となっている年間20ミリシーベルトという低線量被ばくが健康に与える影響等について,科学的な知見を踏まえた議論が行われ,平成23年12月22日,本件報告書が完成した。なお,本件報告書には,低線
量被ばくの概念について,国際的に合意された定義はないが,最近では200ミリシーベルト以下とされることが多い旨の記載がある(乙D36(4頁))。
(イ)本件報告書には,概要以下の記載がある。
上記避難指示の基準である年間20ミリシーベルト以下の被ばくに
よる健康リスクは,他の発がん要因によるリスクと比べても十分に低い基準であって,継続的な放射線防護措置を通じて,十分にリスクを回避できる基準であると評価できる。年間20ミリシーベルトという数値は,今後より一層の線量低減を目指すに当たってのスタートラインとしては適切である(乙D36(19頁))。

国際的な合意に基づく科学的知見によれば,放射線による発がんリスクの増加は,100ミリシーベルト以下の低線量被ばくでは,他の
要因による発がんの影響によって隠れてしまうほど小さく,放射線による発がんのリスクの明らかな増加を証明することは難しく,疫学調査以外の科学的手法でも,同様に発がんリスクの解明が試みられているものの,
現時点では人のリスクを明らかにするには至っていないが,
広島及び長崎の原子力爆弾による被ばく者の疫学調査の結果からは,被ばく線量が100ミリシーベルトを超える辺りから,被ばく線量に依存して発がんのリスクが増加することが示されており,放射線防護の観点からは,
100ミリシーベルト以下の低線量被ばくであっても,
被ばく線量に対して直接的にリスクが増加するという安全サイドに立
った考え方に基づき,被ばくによるリスクを低減するための措置を採用すべきである(乙D36(19頁等))。
前記100ミリシーベルトの被ばくに関する記載は,短時間に被ばくした場合の評価であるが,低線量率の環境で長期間にわたり継続的に被ばくし,積算量として合計100ミリシーベルトを被ばくした場
合は,短時間で被ばくした場合より健康影響が小さい(線量率効果)と推定されている(乙D36(4頁))。
内部被ばくは,外部被ばくよりも人体への影響が大きいという主張があるが,放射性物質が身体の外部にあっても内部にあっても,それが発する放射線がDNAを損傷し,損傷を受けたDNAの修復過程で
の突然変異が,がん発生の原因となるため,臓器に付与される等価線量(吸収線量(単位質量当たりに吸収されたエネルギー)に,放射線の種類による生物影響の程度の違いを反映する放射線加重係数を乗じて,同程度の生物効果を与える線量。単位はシーベルト。)が同じであれば,外部被ばくと内部被ばくのリスクは同等と評価できる(乙D
36(5頁))。
本件報告書においては,低線量被ばくであっても,被ばく線量に対
して直線的にリスクが増加するという考え方(LNTモデル)を採用するが,これは,科学的に証明された真実として受け入れられているのではなく,科学的な不確かさを補う観点から,公衆衛生上の安全サイドに立った判断として採用するものである。放射線と他の発がん要因等のリスクとを比較すると,喫煙は1000ないし2000ミリシ
ーベルト,肥満は200ないし500ミリシーベルト,野菜不足や受動喫煙は100ミリシーベルトから200ミリシーベルトのリスクと同等とされ,年間20ミリシーベルトを被ばくすると仮定した場合の健康リスクは,他の発がんリスクと比べても低い。(乙D36(8,9頁))


日常生活における放射線による影響等
人間は,1年間で平均2.4ミリシーベルトの放射線を自然界から受け
ている。この内訳は,宇宙線として飛来する放射線が0.39ミリシーベルト,土壌から放出される放射線が0.48ミリシーベルト,日常摂取する食物を通じて体内で放射される放射線が0.29ミリシーベルト,空気中のラドン等の吸入による放射線が1.26ミリシーベルトである。自然界から受ける放射線の線量は場所によりその大きさが異なり,日本で最も少ない場所と多い場所とでは,年間約0.38ミリシーベルトの違いがあり,ブラジルのガラパリ地方では,自然界から年間約10ミリシー
ベルトの放射線を受けている。
(乙D32(64頁以下))

放射線被ばくによる健康への影響等

(ア)国立がん研究センター作成した
わかりやすい放射線とがんのリスク
(2014年7月改訂版)(乙D37)には,放射線被ばく及び生活習慣とがんになる相対リスクについて,以下の記載がある(ただし,下記記載の放射線被ばくは,瞬間的な被ばくを前提としたものであり,長期
にわたる被ばくの影響を前提としたものではない。)。
全部部位における発がんリスク
(a)放射線被ばくによる影響
1000ないし2000ミリシーベルトの放射線に被ばくした場
合の相対リスクは1.8倍,500ないし1000ミリシーベルトの放射線に被ばくした場合の相対リスクは1.4倍,200ないし500ミリシーベルトの放射線に被ばくした場合の相対リスクは1.19倍,100ないし200ミリシーベルトの放射線に被ばくした場合の相対リスクは1.08倍である。100ミリシーベルト未満
の場合には,相対リスクを検出することが困難である。
(b)生活習慣による影響
喫煙者の場合及び1週間に450グラム以上
(エタノール換算量。
以下同じ。)の大量飲酒の場合の相対リスクは1.6倍,1週間に300ないし449グラムの場合の相対リスクは1.4倍,BMI
1.22以上の肥満の場合の相対リスクは1.22倍,BMI19未満の痩身の場合相対リスクは1.29倍,運動不足の場合の相対リスクは1.15ないし1.19倍,高塩分食品接種の場合の相対リスクは1.11ないし1.15倍,野菜不足の場合の相対リスクは1.06倍,受動喫煙の場合の相対リスクは1.02ないし1.
03倍である。
特定の部位における発がんリスク
(a)放射線被ばくによる影響
650ないし1240ミリシーベルトの放射線に被ばくした場合,甲状腺がんの相対リスクは4倍,150ないし290ミリシーベル
トの放射線に被ばくした場合,
甲状腺がんの相対リスクは2.
1倍,
50ないし140ミリシーベルトの放射線に被ばくした場合,甲状
腺がんの相対リスクは1.4倍である。
(b)生活習慣による影響
喫煙者の場合の肺がんの相対リスクは4.2ないし4.5倍,1
週間に300グラム以上の大量飲酒の場合の食道がんの相対リスクは4.6倍,毎日高塩分食品を接種した場合の胃がんの相対リスクは2.5ないし3.5倍,運動不足(男性)の場合の結腸癌の相対リスクは1.7倍,BMI30以上の肥満の場合の大腸の相対リスクは1.5倍,受動喫煙の場合の肺がんの相対リスクは1.3倍である。

(イ)平成27年6月,
低線量の放射線被ばく
(年間平均1.
1ミリグレイ,
標準偏差2.6)に関し,白血病(慢性リンパ性白血病を除く。)による死亡の過剰相対リスクは,1グレイごとに2.96倍である旨の見解が発表された(甲A169)。
同見解に対しては,解析対象の選定や重要な交絡因子の解析上の処理
方法について疑問を呈した上で,日本における放射線作業者20万人を対象とし,平均で14.2年追跡した疫学調査からは,低線量放射線被ばくが白血病の死亡率を増加させるという結果は得られていないとする見解(乙D94)がある。
(ウ)WHOのがん専門機関である国際がん研究機関(IARC)は,平成
27年6月22日,フランス,イギリス及びアメリカの30万人を超える従事者の1943年ないし2005年の間の被ばくの評価研究によれば,白血病による死亡と電離放射線被ばくとの正の関連性があり,被ばくによって白血病のリスクは直線的に増加すること及び被ばくに関連するリスクは白血病のタイプによって異なり,慢性骨髄性白血病において
リスクは最大であり,慢性リンパ性白血病のリスクは増加しなかった旨発表した(甲A169,170,乙D94)。

(エ)平成27年9月,放射線被ばくの増加によるがんの割合は直線的増加を示していること,調査対象者の平均累積結腸被ばく量は20.9ミリシーベルト(中央値4.1ミリシーベルト)と推計され,白血病を除く全がんによる死亡推定率は,ラグを10年間として,累積被ばく量1グレイ当たり48パーセント増加し,同様の関連性は,全固形がんによる死亡率においても見られ,この結果は,長期的な低線量電離放射線被ばくと固形がん死亡率との関連性の直接的な推定を提供するものである旨の見解が発表された(甲A171,172)。
同見解に対しては,重要な交絡因子である喫煙や中性子被ばくの扱い
が日本における低線量率疫学調査とは異なるとし,また,人種に関わる違いもあることから,そのまま日本に当てはまるかどうかは疑問であるとする見解がある(乙D96(4頁))。
(オ)公益財団法人放射線影響協会が,平成27年3月に発表した低線量放射線による人体への影響に関する疫学的調査には,肺がんなどの一
部の疾患においてみられた死亡率と累積線量との関連は,喫煙などの放射線以外の要因による交絡の影響を含む可能性が高く,低線量域の放射線が悪性新生物の死亡率に影響を及ぼしていると結論付けることはできない旨の記載がある(乙D92(2頁))。
(カ)放射線審議会が,平成30年1月に発表した放射線防護の基本的考え方の整理-放射線審議会における対応―(乙D90,91)には,人体に対する影響に関する基本的事項として,確定的影響のうち,最も低い線量で生じる可能性がある男性の精子数の低下に伴う一時的不妊及び妊娠初期の被ばくによる胚死亡・奇形発生は,いずれも,しきい線量が100ミリグレイ程度と推定されること,全身症状につながる最初に
現れる影響としては白血球減少等の造血系の機能低下であり,全身被ばくによるしきい線量は短時間の被ばくで500ミリグレイであること,
確率的影響の一つであるがんについては,多くの調査において,線量とともに罹患率・死亡率が増加することが確認されているが,およそ100ミリシーベルト以下の低線量における影響の有無については,現在の科学的知見からは明確になっていない旨の記載がある
(乙D91
(3頁)。


チェルノブイリ原発事故による影響等

(ア)昭和61年4月26日,旧ソ連ウクライナ共和国の北辺に位置するチェルノブイリ原子力発電所において,保守点検のため前日より原子炉停止作業中であった4号炉(出力100万キロワット)において,急激な出力上昇をもたらす暴走事故が発生し,原子炉が爆発するに至った。チェルノブイリ原発事故によって,約10日間にわたって,1.8×1018ベクレルのヨウ素131や,8.5×1016ベクレルのセシウム137といった放射性物質が大気中に放出された。
(甲A48,114)
(イ)ソ連崩壊後,ロシア連邦は,年間の被ばく量が1ミリシーベルトを超
える可能性のある地域を汚染地域とし,汚染地域のうち,昭和61年及び同62年に住民が避難した地域を無人ゾーン,年間被ばく量が5ミリシーベルトを超える可能性のある地域を強制的かつ義務的に移住を実施する移住ゾーン(セシウム137の土壌汚染濃度が1平米当たり555キロベクレル以上の地域),年間被ばく量が1ミリシーベルト以上の地
域を希望者については移住を実施する移住権利のある居住ゾーン(セシウム137の土壌汚染濃度が1平米当たり185以上555キロベクレル未満の地域)及び年間被ばく量が1ミリシーベルトを超えない地域を社会経済的な特典のある居住ゾーン(セシウム137の土壌汚染濃度が1平米当たり37ないし185キロベクレル以上の地域)に区分した。
前記区分に従った場合,チェルノブイリ原発事故後,チェルノブイリ原子力発電所から約600㎞離れた地点においても,移住ゾーン及び移
住権利のある居住ゾーンに該当する地域が発生した。
(甲A114,115,117)
(ウ)チェルノブイリ原発事故後の対応に関して,旧ソビエト政府は,事故直後1年間の暫定線量限度は年間100ミリシーベルトとしていたが,段階的に線量限度が引き下げられ,事故後5年目以降は,年間5ミリシ
ーベルトという基準を採用するに至った。そして,ウクライナ等の国においては,地域の放射能量が年間5ミリシーベルトを超えた場合,その地域に住み続けている住民をその汚染地域からほかの地域へ移住させることを実施しており,現在もそれが継続している。もっとも,かかる措置は徹底されておらず,実際には,居住ゾーン等に住み続けている者が
いる。
また,
ロシア連邦は,
原子力発電所における事故の対応に関して,
1996年に新しい基準を採用し,長期的措置においては,1年目で50ミリシーベルト以下であれば,移転の必要はないこととした。(甲A48,114,115,乙D36)

福島第一原発事故による影響等

(ア)福島第一原発事故によって空気中に放射性物質を放出した1号機ないし4号機の炉型はいずれも沸騰水型原子炉(BWR)であり,電気出力は,1号機が46万キロワット,2号機ないし4号機が78.4万キロワットである。
福島第一原発事故発生当時,福島第一原発の1号機ないし6号機の原子炉及び使用済み燃料プール内に存在した燃料集合体は以下のとおりである。なお,かっこ内の数値は,当該燃料集合体の総放射能である。1号機
(a)原子炉

400本(2.9×1020ベクレル)

(b)使用済み燃料プール

392本(1.6×1018ベクレル)

2号機

(a)原子炉

548本(5×1020ベクレル)

(b)使用済み燃料プール

615本(5.5×1018ベクレル)

3号機
(a)原子炉
(b)使用済み燃料プール

548本(5×1020ベクレル)
566本(4.8×1018ベクレル)

4号機(定期検査中)
(a)原子炉

0本

(b)使用済み燃料プール

1535本(2.1×1019ベクレル)

5号機(定期検査中)
(a)原子炉

548本(1.6×1019ベクレル)

(b)使用済み燃料プール

994本(9.2×1018ベクレル)

6号機(定期検査中)
(a)原子炉

764本(1.0×1019ベクレル)

(b)使用済み燃料プール

940本(1.4×1019ベクレル)

(甲A1)

(イ)

東北地方太平洋沖地震及びその直後に到達した津波により,
福島第一

原発の1号機ないし3号機の各原子炉において,外部回線の断絶や,非常用ディーゼル機器の使用不能に伴う全交流電源の長時間にわたる喪失によって原子炉の冷却機能が失われた結果,原子炉炉心がいずれも損傷し,1号機及び3号機において水素ガスによるものと思われる爆発が起こって原子炉建屋が損壊し,2号機及び4号機においても水素ガスによるものと思われる爆発が起こり,これによって放射性物質が大気中に放出された。
原子力安全保安院は,平成23年6月6日,福島第一原発によって空
気中へ放出された放射性物質の推定放出量は,ヨウ素131で約1.6×1017ベクレル,セシウム137で約1.5×1016ベクレルである
と発表した。また,原子力安全委員会も,平成23年8月24日,推定放出量を,ヨウ素131で1.3×1017ベクレル,セシウム137で1.1×1016ベクレルであると発表した。
福島第一原発事故によって空気中へ放出された放射性物質の総量は,ヨウ素換算で,チェルノブイリ原発事故の際の約6分の1に相当する900ペタベクレルと考えられている。
原子力安全保安院は,同年4月12日,福島第一原発事故は,国際原子力機関(IAEA)及び経済協力開発機構の原子力機関(OECD/NEA)が作成した指標(INES)のうち,最も重い評価であるIN
ES評価のレベル7に相当する旨発表した。この評価は,チェルノブイリ原発事故と同等であった。
福島第一原発事故の結果,避難区域指定は,福島県内の12市町村に及び,平成23年8月29日時点で,警戒区域(福島第一原発から半径20㎞圏)で約7万8000人,計画的避難区域(20㎞以遠で,年間
積算線量が20ミリシーベルトに達するおそれがある地域であり,住民がおおむね1カ月以内に,別の場所への避難を完了することが望ましいとされた。)で約1万0010人,緊急時避難準備区域(半径20から30㎞圏で計画的避難区域及び屋内避難指示が解除された地域を除く。)
で約5万8510人の合計約14万6520人に達する。

(甲A1,45,113,乙D43)
(ウ)原子力委員会委員長は,
平成23年3月25日,
概要以下の内容の
福島第一原子力発電所の不測事態シナリオの素描(以下本件資料という。甲A3)を作成した。
福島第一原発において,最悪の事態として想定されるのは,作業員
が,事故が発生した原子炉や使用済燃料プールへ接近することができない状況に陥り,注水がおよそ不可能となって原子炉及び使用済燃料
プールの冷却ができなくなり,1号機ないし4号機からの放射性物質の外部放出事故が連鎖的に発生するというシナリオである。これによって主に4号機の使用済み燃料プールから1炉心分ないし2炉心分相当の放射性物質が放出されることが想定される。
水素爆発,格納容器破損及び使用済み燃料プールから1炉心分又は2炉心分の放射性物質が放出されることを想定し,各事象が起こってから7日間における放射性雲からの外部被ばく,地表沈着からの外部被ばく及び吸入による内部被ばくによる実効線量の合計が指標線量(1
0ミリシーベルト(屋内退避),50ミリシーベルト(避難)及び1
00ミリシーベルト)を超える領域の範囲を福島第一原発からの距離で示すと,①使用済み燃料プールから1炉心分の放射性物質が放出された場合,
10ミリシーベルト
(屋内退避)
となるのは50㎞の範囲,
50ミリシーベルト(避難)となるのは15㎞の範囲,100ミリシーベルトとなるのは9㎞の範囲であり,②2炉心分の放射性物質が放
出された場合には,10ミリシーベルト(屋内退避)となるのは70㎞の範囲,50ミリシーベルト(避難)となるのは18㎞の範囲,100ミリシーベルトとなるのは10㎞の範囲となる。
チェルノブイリ原発事故後に設けられた基準を参考にすると,セシウム137の地表汚染濃度(放射性物質の一種であるセシウム137
が地表にどの程度付着しているかを示すもの)の指標が,1㎡当たり1480キロベクレルを超える領域は,強制移転すべき地域であり,1㎡当たり555キロベクレルを超える領域は,任意移転すべき地域である。福島第一原発事故が最悪の事態に発展した場合で,2炉心分の放射性物質が大気中に放出されたときには,前記強制移転をするべ
き地域は,原子炉から170㎞,任意移転すべき地域は250㎞となり,1炉心分の放射性物質が大気中に放出されたときには,前記強制
移転をするべき地域は,原子炉から110㎞,任意移転すべき地域は200㎞になる。
前記cのとおり放射性物質(セシウム137に限定されている。)が大気中に放出された場合,初期濃度が1㎡当たり1480キロベクレルの場所について,初期線量率は,1年当たり約95ミリシーベル
トであるが,
1年後には1年当たり約45ミリシーベルトまで減衰し,
10年後には1年当たり約10ミリシーベルト以下まで減衰する。初期濃度が1㎡当たり555キロベクレルの場所については,初期線量率は1年当たり約37ミリシーベルトであるが,1年後には1年当たり20ミリシーベルト以下まで減衰し,10年後には1年間当たり約
1ミリシーベルトまで減衰する。
他方,前記強制移転又は任意移転の地域に留まった場合,初期濃度が1㎡当たり1480キロベクレルの場合は,積算線量が5年で約185ミリシーベルト,10年で約235ミリシーベルト,20年で約300ミリシーベルト,40ないし60年で約380ないし420ミ
リシーベルトとなる。初期濃度が1㎡当たり555キロベクレルの場合は,積算線量が5年で約70ミリシーベルト,10年で約90ミリシーベルト,20年で約110ミリシーベルト,40ないし60年で約140ないし160ミリシーベルトとなる。
なお,4号機以外の使用済み燃料プールにおいても,燃料破損に続
いて,
溶融した燃料とコンクリートの相互反応
(MFCI)
が発生し,
大量の放射性物質の放出が始まり,これによって強制移転を求めるべき地域が170㎞以遠にも生じる可能性や,年間線量が自然放射線レベルを大幅に超えることをもって移転を希望する場合認めるべき地域が250㎞以遠にも発生する可能性もある。


本件各原子炉における事故のシミュレーション

本件各原子炉のうち一基について炉心溶融が発生し,
格納容器が破裂し,
格納容器内の放射性物質が大気中に放出される事故が発生した場合の影響に関する瀬尾健京都大学原子炉実験所助手が実施し,平成7年6月に発表されたのシミュレーション(以下瀬尾シミュレーションという。甲A75)の結果は,概要以下のものである(甲A75(30頁))。(ア)鹿児島県薩摩川内市,
同県いちき串木野市及び同県日置市等において,
急性死者が出る程度の放射性物質が放出される。セシウム137による地面汚染の影響については,1㎡当たり1480キロベクレルの地表汚染濃度を基準とした場合,福岡県及び大分県の一部を除き,九州全域が長期避難を強いられる地域になり,これよりも3倍厳しい基準を用いた
場合には,九州全域に加え,島根県,広島県,愛媛県及び高知県の一部も長期避難を強いられる地域になる。
(イ)本件各原子炉と同型のPWR
(電気出力は100万ワット)
において,
前記

と同様の事故が発生し,
さらに,
概ね大気が安定し,

風速2メートルの場合を想定すると,
大気中に放出される放射線の量は,

ヨウ素131が2.18×1018ベクレル,セシウム137が1.07×1017ベクレルと試算される。
これを前提に放射性物質の拡散状況等のシミュレーションをすると,事故から5年が経過した時点において,本件各原子炉から800㎞離れた地域においては,1年当たり約7ミリシーベルト(長期線量),15
00㎞離れた地域においては,1年当たり1.5ミリシーベルト(長期線量)の放射線が検知される。

破局的噴火が発生した場合の原発事故の規模に関する見解

(ア)甲B4(小山真人原子力発電所における「新規制基準とその適合性審査における火山影響評価の問題点」(2015年)(191頁))には,大規模火砕流の灰神楽(火砕流全体を熱源として立ち上る噴煙か
ら降下する細粒火山灰)が放射性物質に汚染されて日本列島の広い範囲を覆うリスクも考慮し,厚さ数メートルから十数メートルの火砕流に埋まった原発がどうなるかを厳密にシミュレーションし,放射性物質の放出量や汚染の広がりを計算した上で,その被害規模と発生確率を掛け直したリスクを計算し,その上で,そのリスクが許容できるか否かの社会
的合意を得るべきである旨の記載がある。
(イ)甲B17(井村隆介川内原発を火砕流が襲う日(文藝春秋オピニオン2016年の論点100所収)(平成28年))には,破局
的噴火が発生しても,川内原発がなければ世界中に拡散する火山灰に放射線物質が付着していることはないとする記載がある。

(3)検討

本件各原子炉で事故等が発生した場合にもたらされる災害により,生命
や身体等に直接的かつ重大な被害を受けることが想定される範囲について検討する。

生命及び身体等に直接的かつ重大な被害を及ぼす放射線量

(ア)放射線被ばくによる人体への影響という観点から,確定的影響と確率的影響に分けて検討する。
確定的影響
(a)放射線被ばくによる確定的影響は,主に急性的ないし一時的に放射線に被ばくし,特定の臓器に関する閾値を超える被ばくをした場合に問題となるものであり,前記のとおり,ICRP2007年勧告によれば,計画被ばく状況における臓器ごとの確定的影響に関する閾値は,いずれも100ミリシーベルトを超え,6000ミリシーベルトに達するものもあることが認められる。

もっとも,同勧告には,閾値を超えない場合であっても,急性的
に又は年間を通じて受ける実効線量が100ミリシーベルトを超え
る場合には,確定的影響の可能性が高くなるとする。また,ICRP1999年勧告によれば,
比較的均一な長期被ばく状況において,
実効線量が1年当たり100ミリシーベルト以上になる場合には,確定的影響が問題になるとされている。
他方,前記(2)オのとおり,急性的ないし一時的な被ばくであっても,100ミリシーベルト未満の被ばく量の場合には,全部部位における発がんリスクを上昇させるものではなく,かえって,喫煙や大量飲酒等の生活習慣の方が,全部部位における発がんリスクを上昇させる要因である旨の見解がある。この見解は,50ないし14
0ミリシーベルトの放射線に被ばくした場合,甲状腺がんの相対リスクが1.4倍に上がるが,喫煙者の肺がんの相対リスクは4.2ないし4.5倍,1週間に300グラム以上の大量飲酒の場合の食道がんの相対リスクは4.6倍等であり,特定部位における発がんリスクについても,甲状腺がんを除けば,生活習慣が発がんリスク
を上昇させる要因であると考えられ,100ミリシーベルト未満の放射線に急性的ないし一時的に被ばくした場合に,どの程度甲状腺がんの相対リスクが上昇するかは明らかでないとする。
(b)以上を踏まえれば,急性的に又は年間を通じて受ける被ばく量が100ミリシーベルトを下回るような場合,放射線被ばくによる確
定的影響が問題となると考えることは困難である。
確率的影響
放射線被ばくによる確率的影響については健康被害等が生じ得る具体的な閾値は設定されていないが,ICRP1999年勧告は,長期放射線被ばく状況において,公衆を防護するための介入がほとんど常
に正当化される一般参考レベルを現存年数量で100ミリシーベルトとし,また,ICRP2007年勧告は,急性的に又は年間を通じて
受ける実効線量が1年当たり100ミリシーベルトを超えると,がんの発症率が有意に高くなるとしている。
そして,ICRP2007年勧告は,急性的に又は年間を通じて受ける実効線量が100ミリシーベルトを下回る場合については,公衆衛生上の安全サイドに立って,ある一定の線量の増加又はそれに正比例して放射線に起因するがんの発症率が増加するというLNTモデルを採用する。また,ICRP1990年勧告には,職業被ばく曝に関し,1年間当たりの被ばく量の上限を20ミリシーベルトとする旨の記載がある。

他方で,ICRP2007年勧告には,LNTモデルの根拠とされている仮説を明確に実証する生物学的又は疫学的知見は得られそうにない旨の記載がある。そして,放射線による発がんのリスクは,短期的な被ばくにおける100ミリシーベルト以下の被ばく線量では,他の要因による発がんの影響により隠れてしまうほど小さいため,放射
線による発がんリスクの明らかな増加を証明することは難しいとされている。さらに,平均累積線量約13.8ミリシーベルトの原子力発電施設等の放射線業務従事者について,低線量の域の放射線が死亡率に影響を及ぼしていると結論付けることはできない(乙D92)という見解や,自然界からの放射線の量が高い地域において,蓄積線量が
500ミリシーベルトを超える地域においても発がんリスクの増加は認められないとする見解がある(乙D36(4頁))。
これらのことからすれば,実効線量が1年当たり100ミリシーベルトを超える低線量被ばくの場合には,確率的影響が有意に見られると考えられるが,それ以下の場合に,確率的影響が有意に見られるか
どうか必ずしも明らかでない。
(イ)本件各原子炉の周辺で居住する住民の生活環境等に与える影響という
観点から検討する。
本件資料は,セシウム137の地表濃度の指標が,1㎡当たり1480キロベクレル(初期線量率が1年当たり約95ミリシーベルト,1年後には1年当たり約45ミリシーベルトまで減少)を超える領域を強制移転すべき地域,1㎡当たり555キロベクレル(初期線量率が1年当たり約37ミリシーベルト,1年後には1年当たり20ミリシーベルトまで減少)を超える領域を任意移転すべき地域とする。また,本件報告書には,福島第一原発事故の避難指示の基準を踏まえた年間20ミリシーベルトという低線量ばくの数値は,今後より一層の線量低減を目指す
に当たってのスタートラインとする記載がある。
これによれば,福島第一原発と同様の事故が発生した場合,年間20ミリシーベルトを超える被ばくのおそれのある地域に居住する住民については,避難指示が発令される可能性があるということができる。(ウ)以上によれば,本件各原子炉において重大な事故が発生し,放射性物
質が放出されることによって,急性的ないし一時的に100ミリシーベルト以上の放射線に被ばくし又は長期的な被ばく状況下において1年当たり20ミリシーベルトを超える線量の放射線に被ばくすることとなる範囲に居住する者は,避難指示が発令され,移住を求められる等して,それまでの生活環境が一変することになる可能性があるから,本件各原
子炉において発生する事故等がもたらす災害により直接的かつ重大な被害を受けることが想定される範囲の住民に含まれるということができる。(エ)これに対し,原告らは,線量限度告示2条1項1号が定める公衆の実効線量限度(1年間につき1ミリシーベルト)を超える被ばくのおそれがある地域に居住する者には原告適格が認められる旨主張する。

D33,
38及び弁論の全趣旨によれば,
上記線量限度告示の規定は,
ICRP1990年勧告を踏まえたものであることが認められるところ,
乙D33及び35によれば,ICRP1990年勧告は,放射線による発がんリスク等の健康影響に関する科学的知見,ラドンによる被ばくを除いた自然放射線源からの年実効線量が約1ミリシーベルトであることを考慮して,社会的,経済的要因を考慮に入れながら合理的に達成できる限り低く被ばく線量を制限することを要求する趣旨であり,上記数値が生命,身体,財産等への直接的かつ重大な被害が生じる具体的な基準として定められたものではないと考えられる。このことに照らすと,ある者が,線量限度告示の定める線量限度を超える線量を被ばくするおそれのある地域に居住していたとしても,そのことから直ちに当該住民の
生命や身体等に直接的かつ重大な被害を受けるとは直ちにいうことはできず,前記原告らの主張は採用できない。
(オ)原告らは極低線量の被ばくであっても統計的に有意ながん・白血病リスクの増大をもたらす旨主張し,甲A169(Klervi
aud
Ionisingfradiationandriskleukemiaandlymphoradiation-monitoredworkerdeathmainfroms(2015))及び甲A171(DaviddsоnRiskionalofcancerexposuretotionretrospective:fLeurworkersingdom,andinB.fromtheRicharoccupationisingcohortFrance,theUnitedoradiastudyoUnitedKStates(20
15))にはこれに沿う部分がある。
しかしながら,甲A169に記載された見解に疑問を呈する見解もあり(乙D94),これが確立した知見であるかどうか明らかでない。また,甲A169は,白血病による死亡の過剰相対リスクについて,1グ
レイごとに2.
96倍であることを明らかにするものであるが,(3
甲A
34頁)によれば,アルファ線1グレイは20シーベルト,ベータ線及びガンマ線1グレイは1シーベルトに相当することが認められ,このことに照らすと,1ミリシーベルトの低線量被ばくが人体に対し,どの程度の影響があり,その被害の程度が直接的かつ重大なものであるかは必ずしも明らかでない。
また,甲A171に記載された見解に対しては,重要な交絡因子である喫煙や中性子被ばくの扱いや,そもそも日本人に対して適用できるかについて,疑問が呈されており(乙D97),これが確立した知見かど
うか明らかでない。また,甲A171によっても,被ばく量が0から100ミリグレイの範囲においては,研究結果が,他の被ばく量の範囲よりも正確さが劣っていたとされている。
したがって,これらの文献から直ちに,原告らの前記主張を採用することはできない。

(カ)原告らは,チェルノブイリ原発事故において,年間被ばく量が5ミリシーベルト以上の地域を義務的かつ強制的に移住を実施する移住ゾーンとされたことを踏まえれば,本件各原子炉において放射性物質を放出する重大な事故が発生し,放射性物質によって土壌等が汚染される等して年間被ばく量が5ミリシーベルト以上となるような地域に居住する者に
は原告適格が認められる旨主張する。
しかしながら,チェルノブイリ原発事故ついては,1996年に,長期的措置において,1年目の被ばく量が50ミリシーベルト以下であれば移住を不要とする旨の基準が採用されており,このことと,日本の避難指示の基準が年間20ミリシーベルトであることに照らすと,年間被
ばく量が5ミリシーベルト以上となる地域に居住している者について,直ちに当該地域からの移住を強いられる状況にあるとはいえない。この
ことに加え,本件報告書においても,福島第一原発事故に伴う避難指示の基準である年間20ミリシーベルトの被ばくという基準は,他の発がん要因によるリスクと比べても十分に低い基準であって,継続的な放射線防護措置を通じて十分にリスク化を回避できる基準とされていることからすれば,原子力発電所において放射性物質を放出する重大な事故が
発生した場合に,年間被ばく量が5ミリシーベルト以上となる地域に居住している者が直接的かつ重大な影響を受けるということはできないから,前記原告らの主張は採用できない。

本件各原子炉において事故が発生した場合に,急性的ないし一時的に1
00ミリシーベルト以上の放射線に被ばくし又は長期的な被ばく状況下において,1年当たり20ミリシーベルトを超える線量の放射線に被ばくすることとなる範囲について検討する。
(ア)本件各原子炉において,放射性物質を放出する重大な事故が発生した場合に放出される放射性物質の量やそれが及ぶ範囲を端的に示す証拠は
提出されていない。
(イ)他方,
日本における最悪の原発事故である福島第一原発事故において,
想定され得るシナリオの中で最悪の事態が発生した場合の影響等を検討した本件資料には,福島第一原発事故において,1号機ないし4号機からの放射性物質が放出され,2炉心分(福島第1原発でいえば約110
0本の燃料集合体)の放射性物質が大気中に放出した場合,福島第一原発から250㎞離れた地点において,セシウム137の土壌汚染濃度が555キロベクレルを超えることになり,これによって,放射線の線量率は,
初期線量率が1年当たり約37ミリシーベルトとなり,
その後は,
1年後に1年当たり18ミリシーベルトまで減衰し,その後も線量率は
減衰していくとする旨の記載がある。
本件資料は,福島第一原発の4号機の格納容器内の放射性物質及び使
用済み燃料プールに貯蔵されていた1535本の使用済み核燃料(548本を1炉心分とした場合,2.8炉心分)を前提としているところ,本件各原子炉には,使用済み核燃料が1946本貯蔵されており,福島第一原発よりも多い。また,福島第一原発の電気出力は,1号機が46万キロワット,
2ないし4号機が78.
4万キロワットであるのに対し,
本件各原子炉の電気出力は,合計178万キロワット(各89万キロワット)である。
そして,福島第一原発と本件各原子炉の上記各規模を踏まえると,本件各原子炉において,深刻な事故が発生した場合に放射性物質が放射さ
れる範囲は,本件資料が想定するシナリオを下回ることはないと考えられる。したがって,本件各原子炉において事故が発生した場合に,急性的ないし一時的に100ミリシーベルト以上の放射線に被ばくし又は長期的な被ばく状況下において1年当たり20ミリシーベルトを超える線量の放射線に被ばくすることとなる範囲は少なくとも本件各原子炉から
250㎞以上の地域に及ぶということができ,この範囲の地域に居住する者については,本件訴訟の原告適格が認められる。
(ウ)これに対し,原告らは,瀬尾シミュレーションに基づいて,本件各原子炉が過酷事故を起こした場合,当該事故から7日間のうちは原発から3000㎞離れていても年約8ミリシーベルトもの被ばくのおそれがあ
り,当該事故から5年経過しても本件各原子炉から2000㎞圏内は年間1ミリシーベルトを超える被ばくのおそれがある区域となることなどとして,本件各原子炉から3000㎞離れた地域に居住する者についても,原告適格を認めるべきである旨主張する。
しかしながら,前記イ(ウ)で検討したところに照らすと,原告らの主
張は採用できない。
(エ)また,原告らは,本件5カルデラから発生した火災物密度流が川内原
発を襲う場合,本件各原子炉や使用済燃料プールは完全に破壊され,その放射性物質は,日本列島のほぼ全域を覆うことが想定され,原告ら全員の生命,健康,財産ないし生活環境に直接的かつ著しい被害が及ぶことは必定である旨主張し,甲A10,甲B4及び17には,川内原発を火砕流が襲った場合に,放射性物質が火山灰に付着し,日本全土に放射
能汚染が及ぶ旨の記載がある。
しかしながら,甲A75等ほかの文献には,このような事象への言及がなく,また,一般に,火砕流全体を熱源として立ち上がる噴煙から火山灰が降下することがあり得るとしても,本件各原子炉との関係で,放射能汚染の被害の機序及び範囲が具体的に明らかにされたとはいえず,
このような事象の現実に発生する具体的可能性の有無やその影響の程度も明らかでないことに照らすと,これらの記載は,前記結論を左右するに足りず,他に原告らの主張を認めるに足りる的確な証拠はない。エ
原告A,同B,同C,同D,同E,同F及び同Gは,富山県,静岡県,
神奈川県,東京都,埼玉県,福島県等,本件各原子炉から250㎞を大きく超えた地域に居住する者であることが認められるので,前記イ(ウ)で検討したところ基づいて,本件の原告適格を認めることはできない。そして,ほかに,本件各原子炉において,重大な事故が発生した場合に,これらの原告らの生命や身体等に直接的かつ重大な被害が及ぶと認めるに足り
る証拠はない。したがって,これらの原告らについては,原告適格があるということはできない。
他方,弁論の全趣旨によれば,その余の原告らは,本件各原子炉から概ね250㎞の範囲内に居住する者であり,本件各原子炉で事故等が発生した場合にもたらされる災害により,生命や身体等に直接的かつ重大な被害
を受けることが想定される範囲の住民に当たるということができる。したがって,これらの原告らについては,原告適格がある。

2
争点2(本件申請が設置許可基準規則6条1項の要件を満たすと判断したことの違法性の有無)について

(1)本件処分の違法性に係る司法審査の在り方

本件処分は,原子力規制委員会によって行われたものである。原子力規
制委員会は,原子力利用における事故の発生を常に想定し,その防止に最善かつ最大の努力をしなければならないという認識に立って,確立された国際的な基準を踏まえて原子力利用における安全の確保を図るため必要な施策を策定し,または,実施する事務を一元的につかさどるとともに,その委員長及び委員が専門的知見に基づき中立公正な立場で独立して職権を
行使するものとして設置法に基づいて設置された機関であり,原子力利用における安全の確保に関することや,原子炉に関する規制及びその安全の確保に関すること等をその所掌事務とし(同法1条,4条1項各号及び6条1項),その委員長及び委員は,人格が高潔であって,原子力利用における安全の確保に関して専門的知識及び経験並びに高い識見を有する者の
うちから,両議院の同意を得て内閣総理大臣が任命するものとされている(同法7条1項)。

原子力規制委員会は,発電用原子炉設置(変更)の許可申請が,同法4
3条の3の6第1項各号に適合していると認めるときでなければ許可してはならないとされている(同法43条の3の8第2項)。このうち,規制法43条の3の6第1項2号及び3号は,発電用原子炉を設置しようとする者が,発電用原子炉を設置するために必要な技術的能力並びに重大事故(発電用原子炉の炉心の著しい損傷等)の発生及び拡大の防止に必要な措置を実施するために必要な技術的能力その他の発電用原子炉の運転を的確に遂行するに足りる技術的能力を有するか否かにつき,同項4号は,当該
申請に係る発電用原子炉施設の位置,構造及び設備が核燃料物質若しくは核燃料物質によって汚染された物又は原子炉による災害の防止上支障がな
いものとして,原子力規制委員会規則(設置許可基準規則)で定める基準に適合するものであるか否かにつき,原子力規制委員会において審査を行うべきものと定めている。
このような規定が設けられたのは,発電用原子炉が原子核分裂の過程において高エネルギーを放出する核燃料物質を燃料として使用する装置であり,その稼働により,内部に多量の人体に有害な放射性物質を発生させるものであり,発電用原子炉を設置(変更)しようとする者が発電用原子炉の設置,運転につき所定の技術的能力を欠くとき又は発電用原子炉施設の安全性が確保されないときは,当該発電用原子炉施設の従業員やその周辺
住民等の生命,身体に重大な危害を及ぼし,周辺の環境を放射能によって汚染するなど,深刻な災害を引き起こすおそれがあることに鑑み,このような災害の発生を防止するため,原子炉設置許可の段階で,発電用原子炉を設置しようとする者の技術的能力並びに申請に係る原子炉施設の位置,構造及び設備の安全性につき,科学的,専門技術的見地から,十分な審査
を行わせる趣旨であると解される。

このような審査は,当該原子炉施設そのものの工学的安全性,平常運転
時における従業員,周辺住民及び周辺環境への放射線の影響,事故時における周辺地域への影響等を,発電用原子炉設置予定地の地形,地質,気象等の自然的条件及び当該発電用原子炉設置者の技術的能力との関連において,多角的,総合的見地から検討するものであり,しかも,審査の対象には将来の予測に係る事項も含まれ,原子力工学はもとより,多方面にわたる極めて高度な最新の科学的,専門技術的知見に基づく総合的判断が必要とするものであると考えられる。そして,規制法は,このような原子炉施設の安全性に関する審査の特質を考慮し,同法43条の3の6第1項各号
所定の基準の適合性について,原子力利用における安全の確保に関して専門的知識及び経験並びに識見を有する原子力規制委員会の合理的な判断に
委ねていると解される。
したがって,原子炉施設の安全性に関する判断の適否が争われる原子炉設置(変更)許可処分の取消訴訟における裁判所の審理判断は,本件処分の根拠法令又は関連法令である原子力関連法令等の趣旨から見た場合,処分行政庁の専門技術的な調査審議及び判断を経てなされた判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきであって,原子力関連法令等の趣旨又は現在の科学技術水準に照らし,前記調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり,あるいは当該原子炉施設が前記具体的審査基準に適合するとした処分行政庁の調査審議及び判断の過程に看
過し難い過誤,欠落がある場合には,処分行政庁の前記判断に不合理な点があるものとして,それに基づく原子炉設置(変更)許可処分は違法と解すべきである。

なお,発電用原子炉設置(変更)許可処分の前記性質に鑑みると,その
取消訴訟においては,処分行政庁の判断に不合理な点があることの主張立証責任は,本来,原告らが負うべきものと解されるが,当該原子炉施設の安全審査に関する資料を全て被告側が保持していること等の点を考慮すると,被告側において,まず,その依拠した前記の具体的審査基準並びに調査審議及び判断の過程等,処分行政庁の判断に不合理な点のないことを相当の根拠,資料に基づき主張立証する必要があり,被告がそのような主張
立証を尽くさない場合には,処分行政庁の判断に不合理な点があることが事実上推認されるものというべきである。
これに対し,被告は,本件処分に係る申請書や審査書等の情報は公表され,原告らにおいても容易に入手できるとして,本件処分に係る適合性審査に不合理な点があることに関しては,原告らが主張立証責任を果たさな
ければならない旨主張し,弁論の全趣旨によれば,原子力規制委員会の関連会合の議事録や資料が多く公開され,原告らから書証として提出された
ことが認められる。しかしながら,甲A254(31頁)等に鑑みると,原子力規制庁の職員等が議題の審議後,関係者に説明することなどがなかったといえず,このようなやりとりの有無,内容又は資料等が明らかにされていると認められるだけの証拠はないので,上記のとおり,会合の議事録や資料が多く公開されているとしても,前記の結論を覆すに足りない。オ
もとより,科学技術を利用した各種機械及び装置等は,常に一定程度の
事故発生等の危険性を伴っており,科学技術の分野においては,絶対的に災害発生の危険がないという絶対的安全性を要求することはできない。現代社会においては,その危険性が社会通念上容認できる水準以下であると考えられる場合又はその危険性の相当程度が人間によって管理できると考えられる場合に,その危険性の程度と科学技術の利用により得られる利益の大きさとの比較衡量の上で,これを一応安全なものであるとする相対的安全性の考え方が受け入れられているといえる。そして,このような危険性を含む科学技術の利用は,自動車,航空機等の交通機関,医療技術及び
医薬品の製品利用等,人の生命身体に影響する可能性のある分野にも及んでおり,発電用原子炉に限って,絶対的な安全性が要求されていると解することは困難であるから,上記相対的安全性の考え方は,原子力関連法令等においても,前提とされていると考えられる。処分行政庁の判断に不合理な点のないことについて相当の根拠,資料があったかどうかも,このよ
うな観点から判断されることになる。

これに対し,原告らは,発電用原子炉設置(変更)許可処分の取消訴訟
においては,通説的見解に限られず,広く相応の科学的合理性を有する見解を前提に,原告らが提示した科学的知見が,一応の合理性を有する場合には,被告において,原告らが提示した科学的知見に明白な誤りがある事を相当の資料を用いて説明するか,または,当該知見を考慮してもなお,想定を上回る事態が生じないことを主張立証できない限り,本件処分は,
処分行政庁が,その有する裁量の範囲を逸脱又は濫用して行ったものと認められなければならない旨主張する。
しかし,自然科学の分野では,ある見解が通説ではないものの合理性のある知見であるのか,合理性を有しないとされる見解なのかの区別は容易でないと考えられ,訴訟において,原告らが提示したすべての見解について検証が必要であるとすることは,前記絶対的安全性を求めることになりかねない。また,規制法43条の3の6第1項各号所定の基準の適合性について,原子力利用における安全の確保に関して専門的知識及び経験並びに識見を有する原子力規制委員会の合理的な判断に委ねた趣旨を没却する
おそれがある。したがって,どの程度の知見について検証をすべきかについては,当該知見の内容等を踏まえて検討されるべきものと解され,原告らの上記主張は採用できない。

なお,規制法は,発電用原子炉の設置,運転等に関する安全規制の体系
に関して,原子炉の設計から運転に至る過程を段階的に区分し,各段階に対応して,発電用原子炉の設置及び変更(規制法43条の3の5ないし同条の3の8),工事計画の認可(同条の3の9及び同条の3の10),使用前検査(同条の3の11),燃料体検査(同条の3の12),溶接安全管理検査(同条の3の13),施設定期検査(同条の3の15),運転計画の届出(同条の3の17)並びに保安規定の認可(同条の3の24)等
の段階的手続を介在させ,これら一連の規制手続を通じて安全の確保を図るという手法をとっており,原子炉の設置変更許可に係る安全審査は,その冒頭に位置付けられており,基本設計ないし基本的設計方針の妥当性を判断するものであり,工事計画の認可以降の段階における規制の対象とされる当該発電用原子炉の具体的な詳細設計及び工事の方法等は,設置変更
許可の段階の安全審査の対象とされていないものと解される。
したがって,
本件処分の取消訴訟において審理判断の対象となるのは,本件各原子炉の
基本設計ないし基本的設計方針に係る事項に限られると解される。これに対し,原告らは,本件各原子炉の詳細設計等についても司法審査の対象となる旨主張するが,前記のとおり,詳細設計等は,原子炉の設置変更許可に係る安全審査の対象とされていないことに照らすと,採用できない。
(2)認定事実
前記前提事実,掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる(主要な文献の書証番号は,別紙8のとおりである。ただし,網羅的ではない。)。


SSG-21の定め等
別紙3のとおり。


火山ガイドの策定過程等

(ア)平成25年3月28日,新規制基準検討チーム第20回会合が開催され,原子力規制庁から,JNESによって作成された火山ガイド案の概要が説明された。原子力規制庁が示した資料(甲A123)には,①立地評価においては,将来の火山活動可能性があると評価された火山について,原子力発電所の運用期間中において,火砕物密度流等設計対応不可能な火山活動が発生する可能性が十分小さいか評価を行う
(同8頁)

②立地不適と評価されない場合においても,現在の知見では,火山活動
可能性及びその噴火規模については,その評価に不確実性を伴うため,モニタリングによる地理的領域内の火山監視及び噴火の兆候が認められた場合の対応を明確化する旨記載され(同9頁),③上記対応の明確化の内容として,火山活動のモニタリングによる休止期間中の火山の活動が再開又は再開される兆候が見られた場合に,当該火山の活動段階に応
じた原子力発電所内外の活動(運転中の原子炉の停止,原子力発電所内にある核燃料の火山活動の影響が直接的に及ぶ範囲外への搬出等)が示
されていることや原子炉内にある核燃料の取出し及び原子力発電所の外への搬送には十分な冷却期間が必要であることから,これらを考慮した対応が示されていること等が挙げられていた(同10頁)。このとき,原子力規制庁から,カルデラ噴火であっても,鹿児島地溝全体等広域に見ると,統計的に扱うことができ,また,マグマが急速に蓄積されるという研究結果からすると,噴火の前兆現象は,地球物理学的にとらえられるだろうから,モニタリングが可能であるとの説明があった(甲A6(乙A9)8頁)。
なお,同説明に先立ち,外部有識者(中田教授)の講演があった。同
講演においては,①火砕流が発生してから対応することは不可能であるから,過去に火砕流が到達した場所に原子力発電所を建設することは不可能である旨,②超巨大噴火についての観測例はなく,そういうものを果たして予測できるかは大きな問題である旨,③階段ダイヤグラムが,噴火の確率に言及するための一つの材料になり得る旨,④マグマ溜まり
にどの程度のマグマが存在するかを確認することは,現在の火山学では非常に困難であり,どの程度の変化があったかとか,どの程度の割合でマグマ溜まりが膨らんでいるかを確認することしかできない旨等が述べられた。
(甲A6,7,123,乙A9)

(イ)平成25年4月4日,新規制基準チーム第21回会合が開催された。同会合においては,(a)前記第20回会合では,大規模噴火の場合,予兆がある程度の期間以前につかめるだろうということを前提としていたが,JNESでの検討の結果等によれば,必ずしも明確にこの状況であれば大丈夫ということはいえず,
慎重に評価をする必要があり,
また,

大規模噴火でない噴火についても影響が及ぶ範囲が明確に言い切れるものではないとした上で,(b)立地評価の基準として,①原子力発電所
の運用期間中の火山活動可能性が十分小さいといえるかどうかを評価し,十分小さいということができる場合には,モニタリングをし,②十分小さいといえない場合には,火山活動の規模を推定し,影響可能性が十分小さいといえるかどうかを評価した上で立地不適かどうかを判断し,影響可能性が十分小さいということができる場合には,モニタリングをす
ることとする旨の修正された火山ガイド案が説明された(乙A18(3頁))。もっとも,同会合においては,原子力規制庁から,大規模噴火も含めて,前兆がある程度把握できるだろうということが火山ガイドの根底となっており,モニタリングをしっかりやるというのが,一番の前提と考えている旨の説明があり,JNESから,同様に,予兆が把握で
きるということを前提として議論している旨の説明があった(甲A124(4頁,7頁))。
(ウ)平成25年5月27日,JNESにおいて,火山に関する規制基準検討会(第1回)が開催され,JNESから,火山ガイドの策定に当たり検討が必要となる技術的事項について説明があった。なお,出席者から
は,火山噴火の既往最大規模,一定の火山をモニタリング対象外とすることの当否,モニタリングの方法及び降下火砕物の影響について今後,十分検討する必要がある旨の発言があった。(乙A8の1・2)
(エ)平成25年6月3日,新規制基準検討チームの第23回会合が開催された。同会合では,同年4月11日ないし同年5月10日に行われた意
見公募手続の際に提出された意見を踏まえて,火山ガイドに関する議論が行われた(甲A8,125ないし127,乙A10の2)。
(オ)平成25年6月19日,火山ガイドが策定された。

日本火山学会原子力問題対応委員会巨大噴火の予測と監視に関する提言(甲A11)日本火山学会は,平成25年9月,巨大噴火の予測可能性に関する火山
ガイドの内容と火山研究者の認識との間に大きなギャップがあるとの問題意識から,この問題について学術的な視点から意見交換・情報共有を行う場として,原子力問題対応委員会を設けた(甲A11)。
同委員会は,平成26年11月2日,噴火警報を有効に機能させるためには,噴火予測の可能性,限界,曖昧さの理解が不可欠であり,火山影響評価ガイド等の規格・基準類においては,このような噴火予測の特性を十分に考慮し,慎重に検討すべきであること等を内容とした巨大噴火の予測と監視に関する提言を公表した。原子力問題対応委員会委員長は,報道機関に対し,同提言は,火山ガイドの見直しを求める趣旨である旨説明
した(甲B66)。
(甲A11,甲B65,66)

原子力施設における火山活動のモニタリングに関する検討チーム提言とりまとめ(甲A29)(ア)原子力規制委員会は,平成26年8月20日,火山活動に対する原子力施設の安全を確保するという観点から,巨大噴火につながるような火山活動に対して適切に対応するための火山学上の知見や考え方を整理するための原子力施設における火山活動のモニタリングに関する検討チーム
(以下
モニタリング検討チーム
という。を設置した

(甲A36)

(イ)平成26年8月25日,モニタリング検討チーム第1回会合が開催さ
れ,同チームにおける論点等について審議された他,外部専門家から資料に基づく説明があった。なお,同会合においては,以下の要旨の発言がされた(甲A15,乙B24の1・2)。
現在の火山学や観測技術(GPS,地震観測,監視カメラ等)で大噴火の時期や規模を予測することはできない。

現在の科学技術では,マグマ溜まりの増減はモニタリングできるかもしれないが,貯蓄量は判断できない。

火山ガイドでは,異常を見つけ,現状と変わらないかどうかを確認するとされているが,その異常がバックグラウンドのゆらぎの範
囲ではないかどうかの判断に必要な知識はなく,異常を過剰評価するおそれがある。
巨大噴火は何らかの前駆現象が数か月あるいは数年前に発生する可能性が高いが,前駆現象が出たからといって,巨大噴火になるとは限らない。
燃料の搬出等に間に合うだけのリードタイムで,前駆現象は見えない。

(ウ)平成26年9月2日,
モニタリング検討チーム第2回会合が開催され,
モニタリングに関する基本的な考え方について審議がされた。なお,同会合においては,以下の要旨の発言がされた(甲A21)。
モニタリングを行うとしても,アラートが出たときのアクションプランを作らないと,機能しないと思われる。閾値を超えたら原子炉を
停止することを想定しても,それまでに,どのようなプロセスで評価をするか,どういうアラートを誰の責任でどのように出して,それを施設以外の人にもどう理解してもらうかという点を検討する必要がある。また,巨大噴火の場合,前兆が見つかる場合もあるし,見つからない場合もある。リードタイムがないまま噴火する場合もあれば,逆
に,異常が見つかってもすぐに噴火に至らない場合もある等,様々なシナリオが考えられるので,モニタリングと関連させてアクションプランを作成する必要がある。(甲A21(18頁))
事前に閾値を定めておかず,異常が観測されてから,検討し始めるのであれば,適切に判断することはできない(同(29頁))。

火山ガイドに沿ったモニタリングは,既存の観測体制では不十分であり,電気事業者だけでもできないものであり,これを適切に行うた
めの体制は現在できていない(同(27頁))。
原子力規制庁から,当初は,巨大噴火には大きな予兆ないし変動があると考えていたが,それは必ずしも起こるとは限らないということなので,現在は,何がしかの変化が捉えられると考えているが,その変化の大きさと長さについては,具体的な指標がない状況である旨の発言をしたことに対して(同(31頁)),有識者からVEI7以上の噴火は経験をしておらず,どのような噴火現象が起きるのかは分からないので,
モデルを作り,
それに基づき予想するしかないが
(同
(3
2頁)),
そのようなモデルに基づく予想も難しいと思われる(同(3

3頁))。
(エ)平成26年12月16日,モニタリング検討チーム第3回会合が開催され,火山観測の事例等が紹介された。なお,同会合においては,以下の要旨の発言がなされた(甲A22)。
火山ガイドは,火山学あるいは火山噴火史のレベルを過大評価して
いる。噴火警報を有効に機能させるためには,噴火予測の特性,あるいは現在の水準を考慮する必要があることを,火山学会の巨大噴火の予測と監視に関する提言にまとめた(同10頁)。噴火予知をするためには,かなり長いことバックグラウンドのレベルから研究をする必要があり,それを行ったとしても最終的な予知と
いうのは非常に難しいのであり,モニタリング体制を整えればよいというものではない。現在の科学技術水準では限界があることを認識すべきである(同24頁,36頁)。
(オ)原子力規制庁は,平成27年8月26日付けで,モニタリング検討チームにおける検討結果を取りまとめ,『原子力施設における火山活動のモニタリングに関する検討チーム提言とりまとめ』について(甲A29)を作成した。

これには,①国内の通常の火山活動については,気象庁が防災の観点から110の活火山について噴火警報・予報を発表することになっているが,噴火がいつ・どのような規模で起きるかといった的確な予測は困難な状況にある,②未知の巨大噴火に対応した監視・観測体制は設けられていない,③VEI6以上の巨大噴火に関しては発生が低頻度で
あり,モニタリング観測例がほとんど無く,中・長期的な噴火予測の手法は確立していない,④しかしながら,巨大噴火には何らかの短期的前駆現象が発生することが予想され,モニタリングによって異常現象として捉えられる可能性は高い,⑤ただし,モニタリングで異常が認められたとしても,いつ,どの程度の規模の噴火にいたるのか,或いは定常状
態からのゆらぎの範囲なのかを識別できないおそれがある,⑥このような状況を受け,また原子力施設における対応には時間を要するものもあることも踏まえれば,原子力規制委員会の対応としては,予測の困難性や前駆現象を広めにとらえる必要性があることから,何らかの異常が検知された場合には,モニタリングによる検知の限界も考慮して,空
振りも覚悟のうえで巨大噴火に発展する可能性を考慮した処置を講ずることも必要である,⑦また,その判断は,原子力規制委員会・原子力規制庁が責任を持って行うべきである,⑧なお,国として巨大噴火の可能性を考慮した処置を講ずるためには,国は関係行政機関や防災組織及び関連研究者等と連携して,住民の避難・移住計画や経済損失の取り扱い
等に係る対応策などを策定するべく,調査・研究を推進していくべきであると考える旨記載されている。

原子力発電所の火山影響評価ガイド(火山ガイド)における設計対応不可能な火山事象を伴う火山活動の評価に関する基本的な考え方について(基本的な考え方)
(ア)原子力規制委員会の委員長は,平成30年2月21日に開催された第
67回原子力規制委員会において,原子力規制庁に対し,火山の巨大噴火に関する基本的な考え方について分かりやすくまとめるよう指示した。これを受けて,原子力規制庁は,同年3月7日,基本的な考え方
(乙A29)をまとめ,これは,同日開催された第69回原子力規制委員会に提出された。
これについては,
各委員から,
原子力規制委員会は,
従来も,基本的な考え方でまとめられた考え方で規制を行ってきたし,これからもこの考え方で行っていく旨(乙28(19頁)),巨大噴火の可能性評価に関しては,いつそれが起きるかという予知をするものではなくて,
火山の状態,
つまり,
マグマがどれくらいたまっている,

どういう状況であるのか,状態を見るという理解になる旨(同20頁)等の意見が述べられた上で,基本的な考え方にまとめられた考え方が確認された。
(イ)基本的な考え方の内容は,以下のとおりである。
設計対応不可能な火山事象を伴う火山活動の評価について

このうち,設計対応不可能な火山事象については,当該事象が原子力発電所の運用期間中に影響を及ぼす可能性が十分小さいかどうかを評価する。ここでいう巨大噴火とは,地下のマグマが一気に地上に噴出し,大量の火砕流によって広域的な地域に重大かつ深刻な災害を引き起こすような噴火であり,噴火規模としては,数10㎦程度を超えるような噴火を指す。過去に巨大噴火が発生した火山については,巨大噴火の可能性評価を行った上で,巨大噴火以外の火山活動の評価を行う。
巨大噴火の可能性評価に当たっては,火山学上の各種の知見を参照
しつつ,巨大噴火の活動間隔,最後の巨大噴火からの経過時間,現在のマグマ溜まりの状況,地殻変動の観測データ等から総合的な評価を
行い,火山の現在の活動状況は巨大噴火が差し迫った状態にあるかどうか,及び運用期間中に巨大噴火が発生するという科学的に合理性のある具体的な根拠があるかどうかを確認する。
巨大噴火は,広域的な地域に巨大かつ深刻な災害を引き起こすものである一方,その発生の可能性は低頻度な事象である。現在の火山学の知見に照らし合わせて考えた場合には運用期間中に巨大噴火が発生する可能性が全くないとは言い切れないものの,これを想定した法規制や防災対策が原子力安全規制以外の分野においては行われていない。したがって,巨大噴火によるリスクは社会通念上容認される水準であ
ると判断できる。
したがって,上記を考慮すれば,巨大噴火の可能性の評価については,
現在の火山学の知見に照らした火山学的調査を十分に行って上で,火山の現在の活動状況は巨大噴火が差し迫った状態でないことが確認でき,かつ,運用期間中に巨大噴火が発生するという科学的に合理性
のある具体的な根拠があるとはいえない場合は,少なくとも運用期間中は,巨大噴火の可能性が十分に小さいと判断できる。
巨大噴火以外の火山活動の評価の考え方について
巨大噴火以外の火山活動について,その活動の可能性が十分小さいと判断できない場合には,火山活動の規模と設計対応不可能な火山事
象の評価を行うこととなる。噴火の規模を特定することは,一般に困難であるため,火山ガイドに従い,検討対象火山の過去最大の噴火規模について火山事象の評価を行うこととなる。ここで検討対象火山の過去最大の噴火規模には,当該検討対象火山の最後の巨大噴火以降の最大の噴火規模を用いる。

(参考)火山ガイドのモニタリング
火山活動のモニタリングは,運用期間中の巨大噴火の可能性が十分
小さいと評価して許可を行った場合にあっても,この評価とは別に,評価の根拠が継続していることを確認するため,評価時からの状態の変化を検知しようとするものである。また,火山ガイドでは,モニタリングにより火山活動の兆候を把握した場合には,
当然のこととして,
原子炉の停止を含めた対処方針を事業者が事前に定めておくこととさ
れている。事業者の火山活動のモニタリング評価結果については,原子炉安全審査委員会に設置されている原子炉火山部会において少なくとも年1回評価することとしている。
また,原子力規制委員会が策定する原子炉の停止等に係る判断の目安についても原子炉火山部会において検討中である。

(乙A28,29)

火山影響評価に係る技術的知見の整備
原子力規制委員会は,平成25年度から平成30年度にわたって,原子
力施設の安全規制の継続的な改善のため,火山影響評価にかかる技術的知見の整備を行った。
この知見の整備は,過去の火山活動の詳細履歴や噴火開始から終息までの噴火進展プロセス,
噴火に至るまでのマグマ活動等を知見として把握し,
それを基に噴火の準備段階の評価に関する指標,観測調査すべき地価の深さ,マグマ活動と地殻変動の関係について精度の向上を図り,長期評価あ
るいはモニタリング評価に関する指標を整備していくことを目的とし(23頁),その前提として,火山が噴火する可能性が十分小さいといえるかどうかに関する具体的なクライテリアが非常に少ないこと(34頁),破局的噴火ないし巨大噴火が切迫している状況かどうかを判断するための材料が圧倒的に不足していること(34頁)があり,個別の火山に関し情報
を収集することによってこれを補うことが期待されていること(34頁)があるとされている(甲A140)。


本件申請及び本件適合性審査の概要
別紙4のとおり。


火山現象に関する知見等

(ア)日本列島における火山活動の仕組みと巨大噴火
日本列島周辺では,海洋プレートである太平洋プレート及びフィリピン海プレートがそれぞれ日本海溝,南海トラフにおいて陸側のプレートとぶつかり,地下に沈み込んでいる。水分を含んだ海洋プレートが海溝やトラフから沈み込んで約110㎞程度の深さに達すると高い圧力によってプレートから水分が放出される。プレートから放出され
た水分は,密度の関係で上昇を始めマントルに入り込む。固体の状態で存在するマントルは,水によって分子同士の結合を断ち切られて溶解し液体の状態のマグマになる。液体になったマグマは密度が低下するため浮力により上昇を始め,マントルの上部でダイアピルという巨大な液滴を形成するようになる。この高温のダイアピルにより陸側の
プレート(地殻)底部が加熱されて溶解し,新たにマグマを生じ,そのマグマが上昇して地殻浅部でマグマ溜まりを形成し,これが火山噴火の直接的な淵源となる(何らかのきっかけでマグマが地殻内の亀裂を通って地表に達した場合に噴火となる。)。ダイアピルによる加熱が停止するまで数十万年といわれ,その間,地殻内部でマグマが発生
し,マグマ溜まりにマグマを供給し続けることになる。このような仕組みから,日本列島には,海洋プレートの沈み込みに沿う形で帯状に火山が存在しており,火山フロントなどと呼ばれている。
(甲D2,3,乙D45)
地殻内で生じたマグマの供給が続くと,地殻浅部のマグマ溜まりが
円盤状に巨大化し,マグマ自身の浮力によって,やがて地殻に亀裂が生じる。すると,高温高圧のマグマや火山ガスが地表の亀裂から爆発
的に噴出し,巨大な噴煙柱が形成されるプリニー式噴火が始まる。その噴火口は,円盤状のマグマ溜まりの円周上に沿って次々に形成されるが,それに連れて円周内の地盤は徐々に支えを失うとともに,マグマ溜まりの圧力を失い,円周内の地盤はある時点で一気に陥没し,それがマグマ溜まりに残されたマグマを外に押し出して,円周上に形成された火口から大量のマグマが噴出して大火砕流が発生する。噴火は数時間から数日続き,噴火の後には円盤状の陥没の跡としてカルデラが形成される。カルデラの直下には半ば潰された形でマグマ溜まりが残っており,そこに新たなマグマが供給されてドームが形成される。
なお,このような巨大噴火の原因となる巨大なマグマ溜まりの形成に関し,地盤の歪みの速度との関連が指摘されることもある。
(甲D2,3,乙D45)
九州南部において過去に発生した破局的噴火は次のようなものといわれている。

(a)姶良カルデラにおいては,約2.8~3万年前に噴出量約500㎦の破局的噴火(姶良Tn噴火)が起きた。それ以前のVEI7以上の破局的噴火の様相は明らかではないが,姶良Tn噴火に先行して,VEI6クラスの噴火が約10万年前(福山噴火。噴出量約40㎦超)及び約5万年前(岩戸噴火。噴出量約18~23㎦)に起
きた。また,約1万3000年前に,噴出量約11㎦(VEI6クラス)の桜島薩摩噴火が起きた(甲D8,丙B43(274頁),85(40頁))。
姶良Tn噴火では,大規模なプリニー噴火にはじまり,多量の大
隅降下軽石がもたらされ,ついで火砕流(妻屋火砕流)が噴出し,
さらに,高度30㎞を超える噴煙柱が形成され,その噴煙柱の崩壊に伴って大規模な火砕流が発生した(入戸火砕流)。同火砕流は,
400ないし500度の高温,時速100㎞の高速の粉体流として90㎞以上流送し,南九州にシラス台地を形成した。同火砕流は,北方の九州山地を超え,人吉盆地にも流れ込み,その分布域は3万㎦に及んだ。入戸火砕流による堆積物は,川内原発の敷地を中心とする半径5㎞の範囲にも認められ,川内原発の敷地まで到達したとする見解もある(甲B53(19頁),丙B18(64頁以下),21(17頁),30(271頁))。
姶良Tn噴火による火山灰(姶良Tn火山灰)の本件各原子炉敷
地付近における層厚は50㎝を超えるものとされている(丙B18
(66頁))。桜島薩摩噴火における降下火砕物は,桜島から同心円状に広がり,川内原発から約20㎞離れた地点で,層厚が12.5㎝とされている(丙B18(116頁))。
(甲B53,D8,丙18,21,30,43,45)
(b)加久藤・小林カルデラでは,約53万年前(小林笠森噴火。噴出
量100㎦以上)及び約33万年前(加久藤噴火。噴出量100㎦以上)にそれぞれVEI7クラスの破局的噴火が起きており,それぞれの噴火の際に噴出した火山灰は,中部地方を含む広い範囲に及び,火砕流堆積物は,鹿児島県北部及び中部,宮崎県中部及び南部並びに熊本県南部の広い範囲に及んだとされ,また,同破局的噴火
のものとみられる火砕流の痕跡が川内原発から5㎞内の地点で確認されている(丙B21(23頁,25頁))。また,過去10万年の間でみると,同カルデラでは,VEI4又は5クラスの大規模噴火(綾スコリア噴火,イワオコシ軽石噴火及びアワオコシスコリア噴火)が複数回発生した(丙B51(123頁以下))。

(丙B21,51)
(c)阿多カルデラでは,約24万年前(阿多鳥浜噴火。噴出量100
㎦以上)及び約10.5万年前(阿多噴火。噴出量400㎦以上)にそれぞれVEI7クラスの破局的噴火が起きており(甲D16の6)阿多噴火による火砕流堆積物(阿多火砕流堆積物)は,南は屋久島,種子島,北は人吉盆地,宮崎平野北部まで見られ,同噴火のものとみられる火砕流の痕跡が川内原発から5㎞以内の地点で確認されている。また,過去15万年の間でみると,同カルデラでは,VEI5クラスの大規模噴火(今泉噴火,田代噴火及び花之木噴火等)がおおむね数万年間隔(直近のものは約6000年前の池田噴火)で発生している(丙B21(31頁))。

(甲D16の6,丙B21)
(d)鬼界カルデラでは,約14万年前(小アビ山噴火。噴出量100㎦以上),約9万年前(鬼界葛原噴火。噴出量100㎦以上)及び約7300年前(鬼界アカホヤ噴火。噴出量200㎦以上)にそれぞれVEI7クラスの破局的噴火が発生しているが,同破局的噴火
のものとみられる火砕流の痕跡は,川内原発の敷地又はその周辺地域(半径30㎞の範囲)では確認されていない(丙B21(35頁以下)B61)。
鬼界アカホヤ噴火は,完新世(約1万1700年前以降)におけ
る地球上で最大の噴火であって,その火山灰層は東日本まで広く分
布している(丙B62)。
鬼界アカホヤ噴火によって発生した巨大火砕流
(幸屋火砕流)
は,
薩摩・大隅半島,種子島,屋久島を覆い,火山灰(鬼界アカホヤ火山灰)は,偏西風により東日本まで運ばれて,南九州の縄文文化と自然環境に壊滅的なダメージを与えるとともに,西日本から東日本
にかけても降灰による甚大な影響を及ぼしたと考えられ(川内原発の敷地付近の火山灰層厚は約30㎝程度とされる。),また,海底
での大規模な陥没や火砕流の海への流入により,巨大な津波が発生したと推定され,津波は薩摩半島沿岸で波高30メートルの規模に達したと考えられるとされている(丙B23)。
(乙D45,丙B21,23,62)
(e)阿蘇カルデラでは,約25万年前(阿蘇1噴火。噴出量100㎦以上),約14万年前(阿蘇2噴火。噴出量100㎦以上),約12万年前(阿蘇3噴火。噴出量200㎦以上)及び約9万年前(阿蘇4噴火。噴出量600㎦以上)にそれぞれVEI7クラスの破局的噴火が起きた(火砕流の種類については,阿蘇1噴火が流紋岩,
阿蘇2噴火及び阿蘇3噴火が安山岩,阿蘇4噴火が玄武岩ないしデイサイトとされる(甲D16の3)。)が(甲D16の3,丙B21(43頁)),阿蘇1噴火,阿蘇2噴火,阿蘇3噴火及び阿蘇4噴火のものとみられる火砕流の痕跡は,川内原発の敷地又はその周辺地域(半径30㎞の範囲)では確認されていない(丙B21(4
1頁),B64,84の3)。しかしながら,阿蘇4噴火は,日本最大級の破局的噴火といわれており,全噴出量は600㎦以上と見積もられ,現在のカルデラは,この阿蘇4噴火で形成されたものであって,同噴火で発生した火砕流は,阿蘇カルデラを中心に半径150㎞以上も離れたところまで到達しており(乙D2p2),南九
州の一部を除きほぼ九州一帯に及んだほか,山口県や愛媛県の一部にも達したといわれており,その降下火山灰は,北海道でも約15㎝の厚さで地層に残されている。
また,
過去15万年の間でみると,
阿蘇カルデラでは,VEI5クラスの大規模噴火(草千里ヶ浜軽石噴火等)がおおむね数万年間隔(直近のものは約3万年前)で発生
している(丙B66ないし70)。
(乙D2,16の3,丙B21,64,66ないし70,84の3)
前記破局的噴火による火砕流のほかには,川内原発の敷地及びその周辺地域で火砕流の痕跡は確認されていない。また,前記破局的噴火以外の噴火に係る降下火砕物も川内原発の敷地においては確認されていないが,その周辺地域において確認されたものは,前記桜島薩摩噴火に係るものが最大(層厚約12・5㎝)である。(甲D2,3,丙B23,24)
(イ)火山現象の観測手法
計器による方法を用いて,対象とする領域内の火山でデータを収集することによって,全体的なハザード評価を改善することが可能であ
る。このような火山を調査する理由は,①特定の火山現象の理解における不確実性のレベルの低減に役立つ,②特定の火山の活動レベルの変化及び将来の噴火減少の可能性を検知するための客観的根拠を得る,③特定の火山に関する入手可能な情報を強化するために新しく出現したか若しくは改良された技術や手法を活用する,④監視に対する安全
要件に準拠する等である(乙A4の2)。観測には,以下の手法がある(乙A4の2,乙D5,52)。
地球物理学的観測
(a)地殻変動観測
マグマが地下に蓄積し,浅部に上昇することに伴って火山帯が膨

脹,隆起し,噴火発生後,逆に火山体が収縮,沈降するといった変化が観測される場合がある。
地殻変動観測は,このような地盤の隆起,伸び縮みや傾斜等を観
測する観測手法であり,GPS観測が主流となっている。これは,GPS衛星の信号を複数の観測点で捉え,その差を解析する干渉測
位によって,1㎝未満の誤差精度で観測点の変動を捉える手法である。現在は,国土地理院によって,日本全土を覆う全国的なGPS
観測網が展開され,基盤的な観測体制が設けられている上,気象庁や大学等の研究機関が火山観測を目的とした独自の観測ネットを展開している。
SSG-21には,地盤変動及び火山地形の変化は,地表の不安
定性やマグマ,地下水及びガスの地下の動きを反映している場合がある旨の記載がある(乙A4の2(22頁))。
(b)地震観測
火山では,断層を震源とする構造性地震とは異なる起源の火山性
地震という火山特有の地震が発生する。

地震観測は,これらの火山性地震や微動を観測し,その活動の推
移をモニターする観測手法であり,
火山の近傍に地震計を設置して,
そのデータをテレメータして集中監視する手法がとられる。また,火山では周期の長い地震や微動が発生するため,近年は,周期の長い地震波を観測することができる地震計(広帯域地震計)が使用さ
れている。
SSG-21には,①火山性地震信号に対する計器による監視は一般的に,火山活動や火山の状態変化を検知する最善の方法の一つと認識されている,②噴火活動の可能性のある火山の活性化は,火山の内部若しくは付近で発生する火山性地震信号の一定のパターン
やタイプによって識別することができる,③地震波トモグラフィー技術や深層微動検知における最近の開発は,火山系を調査するうえでその有用性を実証している等の記載がある
(乙4の2
(21頁)。

(c)電磁気観測
地殻を構成する岩石は,磁性を持っているが,磁性は一般的に,

温度の上昇に伴って減少し,ある温度(キュリー温度)を超えると失われる。火山活動の変化に伴い,地表で観測する地磁気には変化
が現れるところ,例えば,マグマが地下浅部に上昇してくると,温度の上昇によって,岩石がキュリー温度を超え,磁性が失われる熱消磁が発生し,地殻の電気伝導度が変化する電磁気現象が観測されている。そして,これらの現象を観測するため,磁力計による観測が行われている。
SSG-21には,地磁気及び地球電気パラメーターの測定は,
地下構造及びマグマ体や地下水系の位置を理解し,それらの変化を検知する上で有用な場合がある,これらの測定の結果により,火山構造並びに火山体系の広域的な地球物理学的及び地質学的特性(熱
水変質地帯など)の理解を高めることができる旨の記載がある(乙A4の2(22頁))。
(d)地熱活動観測
火山は,噴火の際に短時間に大量のエネルギーを放出するが,そ
の大部分は高温の噴出物による熱エネルギーであり,これは,非噴
出時でも,噴火口や噴気地帯から地表に放出される。これらの現象を観測するために,赤外線を用いた熱映像観測装置等によって観測が行われる。
SSG-21には,噴気孔,火口,温泉及び冷泉,土壌及び雪原
並びに氷原に関連する温度,組成及び熱異常の位置の変化は,火山
活動の変動を示す適切な指標となることが多い旨の記載がある(乙A4の2(23頁))。
地球化学的観測
(a)火山ガスの観測
火山ガスは火山活動を通じて地下から供給されている気体成分で

あり,溶岩のような固体噴出物と同様に地表に現れる。地表で見られる火山ガスの変化は,地下の火山活動の変化を推定することに役
立つため,火山ガスの化学組成の分析が行われる。
(b)また,マグマ中揮発性成分の濃度測定に用いられるメルト包有物と火山ガス観測から深部マグマのH2O及びCO2濃度を決定し,マグマの発泡度と密度を計算することで,マグマ上昇・噴火過程を定量的に把握する方法も提唱されている(乙D84)。
測地学的観測
(a)測地学とは,地球の形と大きさ及び地球の重力の状態を,物理学の手法を使ってできるだけ精密に求める学問分野であり,その手法を用いて,マグマ溜まりの状態の変化によって引き起こされる地殻
変動を地表で観測し,マグマ溜まりにおいてどのような変化が発生しているかを推測する以下の観測方法が提唱されている
(乙D52)

(b)すなわち,火山の地下にある体積と質量を持ったマグマ等の物質が地中を移動したり地表に流出したりすることによって起こされる現象には,ときには,マグマ溜まりの圧力あるいは体積が増大する
と火山体が膨脹し,火口からマグマや火山ガスが噴出すると火山体が収縮する等し,それに伴い,地殻変動や地盤変動等の地表面の変形等の現象が引き起こされる。
また,地下でマグマが移動すると,地下に存在する物体の密度変
化が生じることから,地殻変動だけでなく地表での重力変化が引き
起こされる。そして,この重力変化を精密に観測することにより,移動した物質の密度を推定することができ,移動した物質がマグマであるのか地下水であるのかを判定できる場合がある。このような地殻変動及び重力変化を観測し,両者を組み合わせて火山活動に伴うマグマの体積と質量の地下での変化をとらえるのが,測地学的観
測である。
地殻変動の観測には,三角測量(三角形の一辺とその両端の角の

大きさを測定することにより,三角形の形を決める測量法)や水準測量(水準点間の高さの差を図る測量法)等の測量結果が用いられてきたが,三角測量は,人工衛星から送られてくる電波を受信している地点の位置を図る測量方法であるGNSS測量に置き換えられており,それにより,
条件が良ければ数㎜以下の変動も捉えることが
可能であるとされる。現在,日本では,国土地理院によって,測量網の構築と広域の地殻変動の監視を目的としたGNSS連続観測システムであるGEONETが運用されている。GNSSの連続観測点は電子基準点と呼ばれ,これは阿蘇カルデラ内を含む全国約13
00か所に設置されている。
上記のような手法で得られたデータを基に,その地殻変動をもた
らすマグマ溜まりが,どのような形でどのような深さに存在しているか数値解析を行うことでモデル化することができる。また,マグマ溜まりがモデル化され,その位置に変化がなければ,地殻変動の
データからマグマ溜まりにおける体積の変化量を推定することができる。噴火の火山で同心円状の隆起や沈降が観測されることから,このモデルとして,隆起や沈降の変動源が球状のマグマ溜まりであると仮定する球状圧力源モデル(茂木モデル)が多くの火山に適用されており,桜島などのいくつかの火山についての圧力源(マグマ
溜まり)の位置,マグマの体積変化量及びマグマ供給量を推定するのに用いられている(乙D52(18頁))。
ただし,茂木モデルを用いた計算でわかるのは,マグマ溜まりの
体積変化量又は体積と圧力変化量の積のいずれかであり,マグマ溜まりの総体積を求めることはできない(甲D152,乙D52)。
(甲D152,乙D5,52)
地震波トモグラフィーによる地下の地震波速度構造の調査

地震波トモグラフィーとは,
地下の地震波速度構造解析技術をいう。
地震が発生すると,地震の揺れ(地震波)が震源から地表まで伝わり,地震波が地表まで伝わる途中には,岩盤やマグマ溜まり等の様々な物質が存在するが,これらの物質の性質によって地震波の伝わる構造は異なるため,その速度の違いを把握することによって,地下のどの辺
りにどのような性質の物質が存在するか推定することが可能となる。温度が比較的低い岩盤等を通るときは地震波の速度が速く,温度が比較的高い岩盤や,熱水やマグマ等の液体が多く含まれている岩盤等を通るときは地震波の速度が遅い。複数の観測点で観測された複数の地震による地震波到達時間を解析することにより,地下のどのあたりに
地震波が低速度となる等速度異常の領域があるかを推定することができる。(乙D53)
これに対し,地震波トモグラフィーによって,マグマ溜まりのように見えるものが解析できても,その体積を推定することは困難である旨の見解や,低速度領域が検知できなかったとしても,マグマ溜まり
がないことの証明にはならない(甲A6(6頁),甲D89,甲D152)等の見解もある。また,甲D157には,地震波トモグラフィーによっても,上部地殻の5㎦以下の速度異常を検出するのは容易ではなく,平均的な観測点間隔5から20㎞の観測網でも,差し渡し10㎞を大きく下回る異常を検出するのは困難であり,さらに,地下速
度の低下からマグマの割合を求めるには,複雑な問題がある等の記載がある。

カルデラ噴火とマグマ溜まりの関係等に関する知見

(ア)カルデラ噴火の特徴は,地下数㎞にあるマグマ溜まりに存在していた大量の珪長質マグマが発泡し,急激な体積の膨張に伴ってマグマの一部が地表に噴出するというメカニズムにある。1000㎦を超えるような
マグマが短時間に噴出するためには,その何倍もの量の液体のマグマがその時点で地下のマグマ溜まりに蓄えられていなければならない(甲D23,丙B31)。
(イ)マグマ溜まりは,沈み込み帯に沿って形成される島弧,陸弧の中軸部(いわゆる造山帯中軸部に相当)で,上部マントルで発生した玄武岩質マグマが大量に地殻下部に付加され,その熱により地殻下部が部分融解して珪長質マグマが発生し,その珪長質マグマが上昇し,地殻上部に達することによって形成される(丙B31,120)。このとき,地殻を構成する岩石の密度は浅部ほど小さいことから,地殻中を上昇するマグ
マは,ある浅さでマグマは浮力を失って上昇をやめ,マグマ溜まりに蓄積されることになる(丙B32,33(722頁以下),119)。このように,マグマ溜まりは浮力中立点,すなわち,マグマの密度が地殻の密度と釣り合う深さよりも浅部には形成されない(丙B33)。蓄積される深さは,通常,10㎞から3㎞程度とされる(甲D23,丙B3
1,32)。
この点に関し,乙D85には,大規模な珪長質マグマ溜まりが安定に定置できるのは,少なくとも珪長質岩からなる上部地殻内(当該上部地殻の下限をコンラッド面という。)であるおよそ15㎞以浅に限られると考えられ,大規模噴火では,空洞となったマグマ溜まりが陥没して陥
没カルデラが形成されるところ,このような陥没カルデラの形成メカニズムから,そのようなマグマ溜まりは,地殻浅部(地下4,5㎞)にその天井が存在したと推測される旨の記載がある
(乙D85
(1頁,
8頁,
9頁,16頁,20頁))。
これに対し,地下10㎞より深いところのマグマ溜まりが存在し,噴
火の原因となる可能性があるとする文献もある(甲A21(23頁),205(203頁以下),B23(10頁),D140)。

(ウ)なお,マグマに含まれる結晶量の割合が50パーセント程度以上で,溶融した部分(メルト)の割合が50パーセント程度以下の部分は,マッシュと呼ばれ,そのままでは噴火できないとされる(乙D11(284頁))。もっとも,丙B36には,いったん,深さ6~12㎞の場所にあった結晶マッシュからなるマグマ溜まりから斑晶に乏しい流紋岩質マグマが絞り出されて,
深さ3.
5~6㎞にあるマグマ溜まりに移動し,
その後に噴火した例(2万6000年前のOrauanui噴火)が記されている。
(エ)火山ごとに見ると,姶良カルデラ噴火(姶良Ito噴火)のマグマ溜
まりの深さは,7ないし10㎞(乙D17の1,丙B34),8ないし10㎞程度(甲D92(245頁))とする文献,姶良Tn噴火のマグマ溜まりの天井の深さは約4から5㎞と推定される旨の文献(甲D162(382頁))がある。他方,姶良カルデラ噴火(姶良Tn噴火)を引き起こしたマグマ溜まりは,その上部はこれまで提案されているマグ
マ溜まり深度7ないし10㎞よりもかなり浅い部分
(100MPa以下)
にまで広がっていたと考えられるとする文献もある(乙D10,丙B37)。
鬼界カルデラについて,
カルデラ噴火の直前に,
深さ3ないし7㎞
(丙
B35)又は約4ないし10.2㎞(甲A141)にかけて,マグマ溜
まりが存在していたとする文献がある。
阿蘇カルデラについて,約27年前の阿蘇1噴火直前のマグマの深度は,約8ないし28㎞と推定される旨の文献(甲A141)や3万年前の草千里ヶ浜火山のマグマ溜まりを深さ4.8ないし8.0㎞とする文献(甲D172)がある。

(3)設置許可基準規則6条の合理性について
前記のとおり,設置許可基準規則6条1項は,安全施設は想定される自然
現象(地震及び津波を除く。)が発生した場合においても安全機能が損なわれないものでなければならないとし,同条2項は,重要安全施設は,当該重要安全施設に大きな影響を及ぼすおそれがあると想定される自然現象により当該重要安全施設に作用する衝撃及び設計基準事故時に生ずる応力を適切に考慮しなければならないとしており,設置許可基準規則解釈は,想定される自然現象には火山による影響を含むものとし,大きな影響を及ぼすおそれがあると想定される自然現象とは,対象となる自然現象に対応して,最新の科学的技術的知見を踏まえて適切に予想されるものをいうとしている。この内容は,合理的なものということができる。(甲C3,乙C4)
(4)火山ガイドの合理性について

前記のとおり,火山ガイドは,①原子力発電所に影響を及ぼし得る火山
の抽出,②抽出された火山の火山活動に関する個別評価,③原子力発電所に影響を及ぼし得る火山事象の抽出及びその影響評価を行うこととしている。
そのうち,上記①については,原子力発電所の地理的領域において,文献調査等で第四紀に活動した火山を抽出し,将来活動の可能性のある火山(検討対象火山)を抽出する。このとき,完新世に活動を行った火山は,検討対象火山とされ,完新世に活動を行っていない火山については,階段ダイヤグラムを作成し,最後の活動終了からの期間,過去の最大休止期間
等に基づき,将来の活動可能性を判断する。
また,上記②については,(a)原子力発電所の運用期間中において設計対応が不可能な火山事象を伴う火山活動の可能性の評価と,(b)火山活動の規模と設計対応不可能な火山事象の評価を行う。
(a)の評価に当たっては,過去の火山活動履歴とともに,必要に応じ
て地球物理学的及び地球化学的調査を行い,現在の火山の活動状況も併せて評価する。ここにいう地球物理学的調査は,検討対象火山に関連するマ
グマだまりの規模や位置,マグマの供給系に関連する地下構造等についての分析等をいい,地球化学的調査は検討対象火山の火山噴出物等についての分析等をいう(火山ガイド4章)。

前記認定事実(知見等を含む。),乙D25(15枚目),45,後記
の証拠及び弁論の全趣旨によれば,火山ガイドの定めは,以下のような見解を前提としていると考えられる(なお,甲B73ないし75,丙B38参照)。
(ア)カルデラ噴火は,マグマの中でも低温で粘り気があり,一気に地殻中を上昇し噴火することはできない流紋岩質やデイサイト質のマグマが数
十万年から数万年という長期間を経て巨大なマグマ溜まりを形成し,これに従って広域的な地盤の上昇が発生し,その後,地殻応力のバランスが崩れて地表に割れ目などができ,一部のマグマが強制的に地表に絞り出され,マグマ溜まり全体が減圧されることにより,マグマ溜まり内のマグマが発泡し,
100年から数百年程度をかけて急速に地盤が上昇し,

最終的に噴火へと発展して生ずる。
(イ)地球の内部構造は,基本的に密度の大きな物質が深い場所に存在し,密度の小さい物質がより表面付近に存在する。深さ約100㎞よりも浅い地球内部は,超苦鉄質岩からなるマントルと,それよりも密度が小さい岩石からなる地殻に区分され,さらに地殻の内部は,比較的密度の大
きな苦鉄質岩からなる下部地殻と,比較的密度の小さな珪長質岩からなる上部地殻に区分できる。地下で生産されたマグマは,浮力によって,上部地殻へと上昇,移動するが,周囲の地殻が密度的に釣り合う浮力中立点に達すると上昇が止まり,マグマ溜まりが生ずる。カルデラ噴火をもたらすような大規模な珪長質マグマ溜まりが安定に定置できるのは少
なくとも珪長質岩からなる上部地殻内であるおよそ15㎞以浅に限られると考えられる。

大規模噴火では,空洞となったマグマ溜まりが陥没して陥没カルデラが形成されるところ,このような陥没カルデラの形成メカニズムから,そのようなマグマ溜まりは,地殻浅部(地下四,五㎞)にその天井が存在したと推測される(甲D23,乙D85)。
(ウ)このようなプロセスに合致するような現象が認められない場合には,今後数百年以内にカルデラ噴火が発生するような状況にはないと考えられる(乙D84,丙B36,119,120)。

火山ガイドは,このような考え方の下で,噴火サイクルによって判明し
たマグマ溜まりの状態や噴火間隔等を基づいて上記火山活動の可能性の評価を行った上で(被告の主張ウ(ウ)a,参加人の主張エ(ア)ないし(ウ)参照),必要あれば,地殻変動観測値震観測,電磁気観測値熱活動観測,火山ガスの観測,測地学的観測等の地球物理学的及び地球化学的調査により現在の火山の活動状況をも把握し,これらに基づいて上記火山活動の可能性を評価する趣旨であると考えられる。
このような評価が十分な科学的根拠をもって行えるのならば,火山ガイ
ドが定める上記検討の枠組みは,合理性があると考えられる。

もっとも,このような評価は,その性質上,火山の現在の状況の把握の
みならず,原子炉の運用期間中にそれが変化する可能性の有無,程度に関する判断を伴い,
その判断のためには,
火山活動のメカニズムが解明され,
どのような兆候がどのような変化に基づくものか(何らかの変化が見られた場合,その変化がバックグラウンドのゆらぎの範囲に含まれるのか火山活動の予兆であるかどうか,予兆である場合には,どのような火山活動になるか等を含む。)等が明らかにされる必要があると考えられる。しかしながら,前記認定事実,掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,
①カルデラ噴火に先行する噴火の存在が指摘されていないカルデラ噴火も存在し(甲D43),噴火の前兆とされる現象は,それぞれの大規模噴火
によって異なり,②長期的あるいは短期的な直前現象がどのようなマグマシステムの発達過程を反映しており,それがどのように大規模噴火やカルデラ陥没に帰結するのかについて定量的に説明できるモデルは提唱されておらず(甲D23。甲B4,10,甲D187参照),③今は基礎的な観測研究が必要な状況にあり(甲B71),④火山ハザードの影響範囲の定量的予測に不可欠な規模,様式及び活動の推移の予測は困難である(甲A11,20,甲B71,甲D125(25頁)等)等の見解があり,また,⑤マグマ溜まりの蓄積量を推定する手法はなく,必要な観測体制も整備される見込みがない(甲A6(11頁),15(34頁),甲B9(577
頁))旨の見解があることが認められる。これらの見解は,火山活動のメカニズムについて,火山ガイドの前提とされた前記イの考え方と異なる面がある。

また,火山ガイドの定めからすると,検討対象となった火山に一定規模
以上のマグマ溜まりの存在が推定された場合,地球物理学的調査又は地球化学的調査に基づいて,火山活動の可能性を評価することになるところ,測地学的観測方法について見ると,一方で,乙D52には,一方で,同じ地点について,複数の時点における標高差を比較し,地震波トモグラフィーの結果等も参考することにより,マグマ供給量の大小を推測し,予想される火山活動の規模を推測できる旨の記載があるが,他方で,測地学的観
測で多く用いられる茂木モデルではマグマ溜まりの総体積を求めることはできず,また,地形の効果等も考慮する必要があり,同モデルは複雑な地殻変動を説明するには不十分であるとする見解がある(乙D53)。この点については,回線楕円体の圧力源を仮定して解析する方法等,茂木モデルに代わるモデルも提案されている(乙D52,54の1・2)が,そも
そも,①マグマ溜まりの大部分はマッシュでほとんど流動できない状態にあり,その外縁は周辺の母岩と明瞭な区別ができないと考えられており,
②マッシュ状のマグマへの新たな高温のマグマの注入がトリガーとなり,又はマグマ溜まりのオーバーターンがされることによりこれが急速に再流動化して噴火に至るモデル等,噴火のトリガーについて,これまでと異なるモデルも示されており,③地殻動からマグマ溜まりの膨張収縮ないしマグマ供給率を推定するにも,マグマ溜まり内の状況把握(弾性変形,流動変形等)が必要であり(甲D89),上部地殻におけるマグマの挙動だけではなく,より深部の中部,下部地殻における挙動も視野に入れる必要があり(甲A204(83頁),D101(3頁)),④どのような隆起現象が超巨大噴火の前兆であるのかを判断するのは非常に困難である旨(甲
B15)の見解もあり,これらの見解に照らすと,測地学的観測方法の結果に基づいて,上記のような評価及び判断が適切に行えるかどうか明らかといえない。

地震波トモグラフィーについても,一方で,乙D53には,複数の観測
点で観測された複数の地震による地震波到達時間を解析することにより地下のどのあたりに地震波が低速度となる領域があるかを推定することができる旨の記載があり,同調査方法により,マグマ溜まりの規模や状態が検討されていることが認められるが,他方で,マグマ溜まりの実態が明らかでないこともあり,低速度領域が検知されたとしても,マグマ溜まりの体積を推定することは困難であり,逆に,低速度領域が検知できなかったと
しても,マグマ溜まりがないことの証明にはならない(甲A6(6頁),甲D89,152,157)とする見解や,地震波トモグラフィーによっても上部地殻の5㎦以下の速度異常を検出するのは容易ではなく,また,平均的な観測点間隔5から20㎞の観測網でも,差渡し10㎞を大きく下回る異常を検出するのは困難である旨の見解もあり(甲D157),これ
らの見解に照らすと,地震波トモグラフィーによって,上記のような評価及び判断が適切に行えるかどうか明らかでない。


さらに,掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,これまでのデータの蓄
積が十分でないことから,巨大噴火の時期や規模を予測することは,現在の火山学では極めて困難である旨の見解(甲A8,11,15,20,22,40,125ないし127,236,甲B10,62,71,甲D59ないし61,118,乙A10の2,乙D11)があることが認められる。

このように,火山ガイドが定める評価における地球物理学的調査及び地
球化学的調査の結果を評価する前提となる噴火のトリガーやマグマ溜まりの実態等について火山ガイドと異なると思われる見解があり,火山ガイドとの関係で,これらの調査方法の有用性に消極的な見解が多数あることからすると,上記判断の前提として,火山活動のメカニズムを解明し,その変化の可能性の有無等を正確に評価するのに必要な知見が現時点において,専門家の間で確立していない疑いが残る。
そして,このような疑いが残る以上,規制法43条の3の6第1項各号
所定の基準の適合性の有無が原子力規制委員会の合理的な判断に委ねられていることや,火山影響評価に係る技術的知見の整備が進められていること(甲A140)を考慮してもなお,上記調査に基づいて適切な評価ができることを前提とする火山ガイドの定めに不合理な点のないことが相当の根拠,資料に基づき立証されたといえるかどうか疑いが残る(もっとも,
上記知見の整備により,必要な知見が確立され,規制法43条の3の14の趣旨に従い,それを踏まえた運用が行われるようになった場合には,火山ガイドの定めが合理性のあるものとされるようになることは考え得る。。)

モニタリングについて

(ア)なお,火山ガイドでは,原子力発電所の運用期間中の火山活動可能性が十分小さいということができる場合等には,同可能性が十分小さいことを継続的に確認することを目的として,運用期間中のモニタリングを
行い,噴火可能性につながるモニタリング結果が観測された場合には,必要な判断,対応を取る必要があることとされている。そして,その監視項目としては,地震活動,地殻変動及び火山ガス状況等が挙げられ,これを定期的に評価する他,モニタリングにより火山活動の兆候を把握した場合の対処方針を定めるものとされ,その対処方法として,原子炉の停止,
適切な核燃料の搬出等が実施される方針等も挙げられている
(火
山ガイド5)。
(イ)しかしながら,
丙B82,
128,
154及び弁論の全趣旨によれば,
参加人の平成27年6月5日から平成29年3月31日までのモニタリ
ング結果の際に提示された参加人作成の資料においては,監視レベルの移行判断基準と監視体制の概念図が示されているものの,対処を講じるために把握すべき火山活動の具体的な兆候や,その兆候を把握した場合に対処を講じるための具体的な判断条件が必ずしも明らかでなく,平成29年4月1日から平成30年3月31日までのモニタリング結果にお
いて,対処を講じるために把握すべき火山活動の兆候として,地殻変動等の程度が挙げられたが,対処方針としては,専門家の意見を求めることが挙げられたにとどまり,具体的な判断条件や対処方法は定められていないことが認められる。
(ウ)また,甲A203,229ないし232,256,乙A24の1及び
弁論の全趣旨によれば,原子炉安全審査会原子炉火山部会の会合で,原子力規制委員会による原子炉の停止等に係る判断の目安について議論されたところ,平成30年8月10日の第4回会合では(甲A256),原子力規制庁から,原子炉の停止等の判断の目安を,①早期警戒のための目安と,②巨大噴火が差し迫った状態と考えられるモニタリングデー
タを得られた段階の目安に分けた上で,①は,複数の監視項目における観測データにおいて,平常時の火山活動と異なる兆候を継続的に示して
いる場合であり,②は,設計対応不可能な火山事象が,原子力発電所運用期間中に影響を及ぼす可能性が十分小さいとする前提条件が失われたと判断される場合等又は火山の現在の火山活動が,巨大噴火が差し迫った状態と考えられる観測データが得られたと判断される場合をいうが,②は中長期的課題である旨の説明がされた。これに対しては,どのよう
な火山事象が①に当たるのか(前駆現象とみられる噴火があった後に対応を検討すればよく,噴火が生じる前に検討するのは,噴火予知である旨の意見を含む。),①の状態からカルデラ噴火に至るかどうかは議論できない(現段階ではコンセンサスを得られていない。)等の意見が出され,目安の具体的な内容は検討されなかったことが認められる。
(エ)このように,参加人作成の基準においては,破局的噴火への発展可能性を判断する具体的な判断基準や火山活動の兆候を把握した場合の対処方針の具体的内容がまだ確定されていないという状況や原子力規制委員会の関連会合においても,原子炉の停止等の判断の目安の検討枠組みについて議論がまとまらなかったことに加え,そもそも前記のとおり,新
規制基準検討チーム第21回会合において,噴火の前兆現象が地球物理学的にとらえられるとする同第20回会合で説明された立場が修正された経緯からすると,モニタリングを一内容とする火山ガイドの体系が破局的噴火に関する火山学の科学的水準に即するものかどうか疑いが残り(前記(2)エ(ウ),(エ),甲A11参照),この点からも,火山
ガイドの定めに不合理な点のないことが相当の根拠,資料に基づき立証されたといえるかどうか疑いが残る。
(5)原子力関連法令等の趣旨について
しかしながら,前記のとおり,本件処分の適法性は,根拠法令及び関連法令の趣旨に照らし判断されるべきものである。

規制法は,大規模な自然災害の発生を想定した必要な規制を行うことを
目的とするものの(同法1条),想定すべき自然災害の内容や規模については,具体的な定めをしていないが,設置許可基準規則6条1項,2項及び設置許可基準規則解釈(甲C3,乙C4)は,最新の科学的技術的知見を踏まえて適切に予想される自然現象を考慮することを求める。
これは,福島第一原発事故の反省に立ち,そのような事故の発生を防止
するとともに,我が国の原子力の安全に関する行政に対する損なわれた信頼を回復し,当該行政の機能の強化を図るため,最新の科学的技術的知見を規制に反映し,これを踏まえた基準に許可等済みの発電用原子炉施設等を適合させ(バックフィット),かつ,重大事故対策を強化する等発電用原子炉施設等の安全規制体制を強化するという本件改正等の趣旨を踏まえたものであると解される。
他方,原子力関係法令等は,確立された国際的な基準を踏まえた原子力の研究,開発及び利用について許容しており,発電用原子炉の設置自体を否定するものではない。そして,前記のとおり,現代社会においては,相
対的安全性の考え方が受け入れられており,少しでも発生の可能性のある自然災害を,安全確保の上で想定すべきであるとの社会通念が確立していると解すべき根拠は見出だせない。したがって,原子力利用に関する現行法制度の下においても,少しでも発生の可能性のある自然災害を,安全確保の上で想定すべきであるとする立法政策が取られていると解することは
できない。

他の法令を見ても,災害対策基本法は,災害が発生し,又はまさに発生
しようとしている場合において,人の生命又は身体に対する危険を防止するために特に必要と認めるときは,市町村長は,警戒特別区域を設定し,災害応急対策に従事する者以外の者に対して,当該区域への立入りを制限し,若しくは禁止し,又は当該区域からの退去を命ずることができるとする(同法63条)。また,建築基準法は,地方公共団体が,条例で,津波,
高潮,出水等による危険の著しい区域を災害危険区域として指定することができるとし,条例で,災害危険区域以内における住居の用に供する建築物の建築の禁止その他建築物の建築に関する制限で災害防止条必要なものを定める旨定めるとする(同法39条)。これらの法令の定めが最新の科学的技術的知見から合理的に予測される範囲を超える危険性を想定して,広域的に上記の警戒区域や災害危険区域を設定する趣旨はうかがわれない。ウ
以上によれば,規制法は,最新の科学的技術的知見を踏まえて合理的に
予測される最大規模の自然災害を想定した発電用原子炉施設の安全性の確保を求めるものであるが,最新の科学的技術的知見から合理的に予測される範囲を超える危険性を想定した対策を講じることまでを求めていると解することはできない。

これを破局的噴火についてみると,
前記事実及び弁論の全趣旨によれば,

破局的噴火は必ず発生するものであるとされているが,その頻度は鬼界アカホヤ噴火が起きたのは約7300年前であり,阿蘇4噴火が起きたのは約9万年前であり,低頻度であり,現在の科学的技術的知見から予知することはできないとされている。また,破局的噴火がもたらす影響は,火砕流が南九州の一部を除きほぼ九州一帯のほか,山口県や愛媛県の一部にも達したことがあり(阿蘇4噴火,姶良Tn噴火)といわれ,その降下火山灰による被害は,東日本まで及び,北海道でも約15㎝の厚さで地層に残
されているとされ,生活基盤や社会の諸機能に深刻な被害を与えるものということができる。九州地方における人口分布やカルデラの位置等に鑑みると,このように,影響が著しく重大かつ深刻なものではあるが極めて低頻度で,少なくとも歴史時代において経験したことがないような規模及び態様の自然災害の危険性については,その発生の可能性が相応の根拠をも
って示されるようになれば格別,そうでなければ,社会生活上,安全性確保の上で考慮されていないと考えられる。

関連法令を参照しても,活動火山対策特別措置法には,破局的噴火が発生することを想定した建築規制に関する規定は見当たらない。土砂災害計画区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律には,土砂災害特別警戒区域における一定の開発行為の制限の居室を有する建造物の構造の規制に関する規定はあるものの(同法9条1項),九州地方における人口分布等やカルデラの位置に鑑みると,これが,破局的噴火の発生に備えて広範囲で規制を行うことを想定した規定であるとは考え難い。
そして,原子力関連法令等において,これと異なる立法政策が取られていると解すべき根拠は見出せない(乙D83(6頁),丙B141(15
頁)における破局的噴火に関する部分や基本的考え方は,これに沿うといえる。)。

そうすると,破局的噴火の発生の可能性が相応の根拠をもって示されて
いるといえない以上,原子力関連法令等の下で,破局的噴火が最新の科学的技術的知見を踏まえて合理的に予測される危険性として想定されていると解することはできず,また,それが,発電用原子炉施設の安全性確保の上で自然災害として想定されていなくても,処分行政庁による調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり,あるいは当該原子炉施設が前記具体的審査基準に適合するとした処分行政庁の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるということはできない。
したがって,前記のとおり,火山ガイドの定めに不合理な点のないことが相当の根拠,資料に基づき立証されたといえるかどうか疑いが残るが,原子力関連法令等が破局的噴火による影響を考慮することまで要求しているとは解されないので,結論として,火山ガイド若しくはこれに基づく本件適合性審査が不合理であり又は本件処分が違法であるということはでき
ない。
(6)本件適合性審査における個別評価について


前記認定事実及び弁論の全趣旨によれば,本件各原子炉に影響を及ぼし
得る火山の抽出について,本件申請及び本件適合性審査は合理性があるということができる。

本件各原子炉の運用期間における火山活動に関する個別評価

(ア)参加人は,鹿児島地溝全体としてのVEI7以上の噴火の平均発生間隔等,噴火ステージ論(ナガオカ論文),マグマ溜まりの浮力中立点に関する検討(丙B32,33)及びメルト包有物・鉱物組成等に関する分析結果(丙B34,35)等,VEI7以上の噴火の場合,噴火直前の100年程度の間に急激にマグマが供給されたと推定する知見(ドルイ
ット論文)等を踏まえ,
階段ダイヤグラムに基づく噴火ステージの評価を
行った。これは,火山ガイドに沿うものということができる。
(イ)原告らは,SSG-21を踏まえれば,本件運用期間に,火砕物密度流を含む火山事象が本件各原子炉の安全性に影響を及ぼす可能性が十分小さいと評価できるためには,噴火の発生が1000万年に1回以下で
なければならない旨及び過去の噴火履歴を基に本件5カルデラの大規模噴火の確率を概算すべきであった旨主張する。
しかしながら,前記認定事実及び弁論の全趣旨によれば,SSG-21は,決定論的な評価方法,確率論的な評価方法又はその併用を認めているのであり,必ずしも原告らが主張するような確率論的な評価方法を
採用しなければならないとしていないので,原告らの主張は採用できない。
(ウ)原告らは,本件適合性審査に当たっては,本件各原子炉の運用期間における本件5カルデラの噴火規模を,
VEI6以下の既往最大でなく,
VEI6以下の噴火について考えられる最も厳しい条件を設定すべきで
ある旨主張する。
しかしながら,火山ガイドは,調査結果から噴火の規模を推定できな
い場合,検討対象火山の過去の最大の噴火規模とする旨を定めているところ,
前記のとおり,
火山及び噴火には個別の特徴があること
(甲B5)
に照らすと,本件適合性審査において,当該火山の噴火履歴を踏まえ,既往最大の噴火規模を設定することが不合理といえない。
(エ)原告らは,本件申請は,ナガオカ論文やドルイット論文に記載された知見に依拠する点が不合理である旨主張する。そして,掲記の証拠によれば,これらの論文については,別紙5のとおり,原告らの主張に沿う見解があることが認められる。
しかしながら,同別紙のとおり,これらの論文の有用性を認める見解
もあり,これらの論文の意義及び評価について,専門家の間に共通の認識が確立されていると認めることはできない(前記原子力施設における火山活動のモニタリングに関する検討チーム提言とりまとめには,ドルイット論文に依拠することに否定的な見解が記載されているが,これを踏まえて何らかの対応がとられた形跡がうかがわれず,同論文の評
価について定見があるかどうか明らかでない。。
)このことに照らすと,
これらの論文の内容や射程範囲の評価は,処分行政庁の合理的判断に委ねられていると考えざるを得ず,前記見解をもって,直ちに,この点に関する本件適合性審査が不合理であったと認めることはできない。(オ)原告らは,火山ガイドが,カルデラ火山の噴火に前兆現象があること
を前提としていることは不合理である旨主張する。しかしながら,本件適合性審査においては,火山活動の前兆の有無を検討しているのではなく,文献調査等の結果をも踏まえて,運用期間中の火山活動の可能性が十分小さいことを判断しているのであるから,原告らの上記主張は,前記認定判断を覆すに足りない。

(カ)原告らは,本件階段ダイヤグラムにおいて,本件3カルデラに係る情報をまとめたことが不合理である旨主張する。そして,甲B4(187
頁以下),甲B9(577頁)にはこれに沿う部分がある。
しかしながら,丙B23及び28には,鹿児島地溝を全体として活動的な火山構造性地溝とみなすことができる旨の記載がある。また,丙B27には,広範囲でも,噴火頻度と噴火規模に相関関係が認められる場合には階段図の検討に意味がある旨の記載があり,甲B9(577頁)
にも同旨と考えられる記載がある。これらの見解は,本件申請を根拠づけるものということができ,これらの見解に照らすと,本件申請において本件階段ダイヤグラムが使用されたことが直ちに不合理であるということはできず,かつ,本件階段ダイヤグラムの評価に関し,本件適合性審査に不合理な点があったということもできない。

(キ)原告らは,地震波トモグラフィー等の方法によって,マグマ溜まりの有無は確定できない旨主張する。そして,前記のとおり,地球物理学的調査及び地球化学的調査によっても,前記火山活動の可能性を評価するために必要なだけの情報が得られない疑いが残る。
しかしながら,前記のとおり,本件適合性審査においては,文献学的
調査,地球物理学的調査,地球化学的調査等の結果を総合して本件運用期間中の破局的噴火の可能性について個別評価をしたのであり,本件申請において上記調査結果が使用されたことが直ちに不合理であるということはできず,かつ,本件適合性審査における個別の調査結果の評価又はそこからの推論の過程に係る処分行政庁の専門的な判断において,不
合理な点があったと認めるに足りる証拠はない。

本件5カルデラのマグマ溜まりの状況等に関する知見等は,別紙6記載
のとおりであるところ,これらを踏まえて,本件適合性審査の合理性の有無を個別に検討する。
(ア)姶良カルデラ
姶良カルデラは,鹿児島地溝に存在するところ,鹿児島地溝全体とし
て見た場合,破局的VEI7以上の噴火は平均発生間隔を約9万年とする周期性を有しており,最新のVEI7以上の噴火は約3万年前ないし約2.8万年前であるので,鹿児島地溝におけるVEI7以上の噴火の活動間隔は,最新のVEI7以上の噴火からの経過時間に比べて十分長いということができ,本件運用期間中におけるVEI7以上の噴火の活動可能性は十分低いと考えられ,このことに照らすと,姶良カルデラについても,本件運用期間中における破局的噴火の可能性は十分小さいと考えられている。
姶良カルデラを個別に見ても,
破局的噴火の活動間隔
(約6万年以上)

は最新の破局的噴火(姶良Tn噴火)からの経過時間(約3万年)に比べて十分長いということができ,破局的噴火までには十分な時間的余裕があると考えられている。さらに,姶良カルデラ周辺には,桜島の地下浅部にマグマ溜まりが確認されているものの,珪長質の大規模マグマ溜まりはないと考えられている。なお,国土地理院の電子基準点間基線距
離の変化率からするとマグマ溜まりの増大を示唆する基線の伸長傾向が認められるものの,それは,大正3年の噴火後の沈降量の100%に相当するものと考えられている。これらの説明の確度については,前記のとおり,疑問がないわけではないが,原子力関連法令等の趣旨等をも踏まえると,姶良カルデラにおいて設計対応不可能な火山事象が原子力発
電所の運用期間中に影響を及ぼす可能性が十分小さいとした本件適合性審査に不合理な点があったということはできず,これを覆すに足りる証拠はない。
(イ)加久藤・小林カルデラ
鹿児島地溝における破局的噴火の活動間隔に関する検討から,
加久藤


小林カルデラにおける運用期間中の破局的噴火の可能性は十分小さいと考えられている。加久藤・小林カルデラを個別に見ても,その活動間隔
間隔(約20万年)は,最新の破局的噴火(加久藤噴火)からの経過時間(約33万年)に比べて短いため,破局的噴火のマグマ溜まりを形成している可能性や,破局的噴火を発生させる供給系ではなくなっている可能性等が考えられるとされている。これらの説明を踏まえると,霧島山周辺の地下において噴火に関わるマグマ溜まりであるとされる低速度異常があることを考慮しても,加久藤・小林カルデラについて,本件適合性審査に不合理な点があったということはできない
(ウ)阿多カルデラ
鹿児島地溝における破局的噴火の活動間隔に関する検討から,阿多カ
ルデラにおける運用期間中の破局的噴火の可能性は十分小さいと考えられている。
阿多カルデラを個別に見ても,
その破局的噴火の活動間隔
(約
14万年)は,最新の破局的噴火(阿多噴火)からの経過時間(約11万年)に比べて長いことから,破局的噴火までには,十分な時間的余裕があると考えられる。阿多カルデラ地域の地震波速度構造において,深
さ5㎞に,低速度異常が認められ,また,姶良カルデラや霧島火山下のマグマ溜まりの圧力変化に伴う地殻変動と広域応力場による基線長変化は認められるものの,それ以外のマグマ溜まりに起因する地殻変動は認められず,地下浅部に大規模なマグマ溜まりはないと考えられている。これらの説明の確度については,前記のとおり,疑問がないわけではな
いが,原子力関連法令等の趣旨等をも踏まえると,阿多カルデラにおいて設計対応不可能な火山事象が原子力発電所の運用期間中に影響を及ぼす可能性が十分小さいとした本件適合性審査に不合理な点があったということはできず,これを覆すに足りる証拠はない。
(エ)鬼界カルデラ

鬼界カルデラの破局的噴火の最短の活動間隔(約5万年)は,最新の破局的噴火(鬼界アカホヤ噴火)からの経過時間(約0.7万年)に比
べて長いことから,破局的噴火までには十分な時間的余裕があると考えられている。岩石学的情報により,最新の破局的噴火時のマグマは全て出尽くしており,現在の活動は,その後の新たな活動であるとされていること及び測地学的情報からマグマの供給に伴う膨張等の地殻変動は認められないことから,浅部に大規模なマグマ溜まりを形成していないと考えられている。なお,地球化学的情報からは,80㎦以上の大規模なマグマ溜まりが推定されるものの,破局的噴火を発生させるものではないと考えられている。これらの説明の確度については,前記のとおり,疑問がないわけではないが,
原子力関連法令等の趣旨等をも踏まえると,

鬼界カルデラにおいて設計対応不可能な火山事象が原子力発電所の運用期間中に影響を及ぼす可能性が十分小さいとした本件適合性審査に不合理な点があったということはできず,これを覆すに足りる証拠はない。(オ)阿蘇カルデラ
阿蘇カルデラの破局的噴火の最新の活動間隔(約2万年)は,最新の
破局的噴火(阿蘇4噴火)からの経過時間(約9万年)に比べて短いため,大規模なマグマ溜まりは存在しなくなり又は破局的噴火を発生させる供給系ではなくなっている可能性等が考えられている。そして,岩石学的情報及び地球物理学的情報から,地下約10㎞以浅に大規模な珪長質マグマ溜まりはないと考えられている。これらの説明の確度について
は,前記のとおり,疑問がないわけではないが,原子力関連法令等の趣旨等をも踏まえると,阿蘇カルデラにおいて設計対応不可能な火山事象が原子力発電所の運用期間中に影響を及ぼす可能性が十分小さいとした本件適合性審査に不合理な点があったということはできず,これを覆すに足りる証拠はない。

(7)影響評価について
原告らは,
本件適合性審査に係る主張を補強する事情として,
影響評価
(降

下火砕物への対応)
に関する判断が不合理であった旨主張するので検討する。

降下火砕物に関する火山ガイドの定め及びこれに対する参加人の対応は,
別紙7のとおりである。

原告らは,本件申請では,想定される噴火が過小評価されている旨主張
する。しかしながら,本件申請で想定されている噴火は,火山ガイドに従ったものであり,この点に関する火山ガイドの定めが不合理であるということはできないので,原告らの上記主張は採用できない。

原告らは,本件シミュレーションにおいては,噴火が想定された場所で
発生すること,噴煙が同心円状に広がる現象(傘型領域)等大規模噴火の特質を十分に踏まえておらず,風向や風力の不確実性を保守的に考慮していないこと,本件ソフトが試験的なものであること等から,調査結果とシミュレーションを併用すべきであった旨主張する。しかしながら,噴火が複数の場所で発生することや傘型領域を踏まえていないこと等及び本件ソフトが試験的なものであることは,本件ソフトの仕様の問題であり,本件
適合性審査も,このような仕様を前提として行われていると考えられるから,上記事情から直ちに本件適合性審査が不合理であったと推認することはできない。

原告らは,本件申請では,降下火砕物の大気中濃度が過小に評価されて
いる旨主張する。そして,前記(別紙7の4(2))のとおり,処分行政庁は,当初,ヘイマランド観測値を設計基準として審査を行ったが,その後,平成28年電中研報告やパブリックコメントの内容(甲A174(10頁))等を踏まえて,より保守的なセントヘレンズ観測値を設計基準とし,その後,さらに,設計基準をより保守的な数値に修正することを内容とする規則等の改正をしたことが認められる。このように,処分行政庁及
び参加人は,第三者の見解を踏まえて設計基準をより保守的なものとしたことが認められる。しかしながら,もともとヘイマランド観測値も観測記
録の最大値であったといえること及び上記修正は安全性確保の観点から行われたことに照らすと,原告らの主張事実から直ちに,本件適合性審査が不合理であったと推認することはできない。

原告らは,大気中濃度が想定されたものより上がり,フィルタ交換をす
る余裕がなくなり,フィルタが目詰まりを起こすおそれ,降下火砕物のうち浮遊性粒子が非常用ディーゼル発電機内に侵入し,ディーゼル発電機の機能に影響を及ぼすおそれ,火山性地震が発生し,降下火砕物と地震荷重の組み合わせによって原子炉施設に大きな荷重がかかるおそれ等が考慮されていない旨主張する。しかしながら,前記のとおり,参加人は,川内原
発の敷地で想定される33.4g/㎥の降下火砕物の大気中濃度に対しても,非常用ディーゼル発電機2系統を同時に機能維持できるよう対策を完了したこと等に照らすと,原告らの上記主張は採用できない。
(8)小括
以上の検討によれば,原子力関連法令等の趣旨及び現在の科学技術水準に
照らし,本件適合性審査において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり,又は本件各原子炉が前記具体的審査基準に適合するとした処分行政庁の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるということはできない。そして,他に,本件処分が違法であると認めるに足りる的確な証拠はない。

結論
以上によれば,原告A,原告B,原告C,原告D,原告E,原告F及び原告Gの訴えはいずれも不適法なので却下を免れず,その余の原告らの請求はいずれも理由がないので棄却することとし,主文のとおり判決する。
福岡地方裁判所第1民事部

裁判長裁判官

倉澤守春
裁判官

山下隼人
裁判官

野上幸久
別紙2
関係法令の定め
1
原子力基本法(以下基本法という。)
(目的)
第1条
この法律は,原子力の研究,開発及び利用(以下原子力利用という。)を推進することによって,将来におけるエネルギー資源を確保し,学術の進歩と産業の振興とを図り,もつて人類社会の福祉と国民生活の水準向上とに寄与
することを目的とする。
(基本方針)
第2条
1
原子力利用は,平和の目的に限り,安全の確保を旨として,民主的な運営の下に,自主的にこれを行うものとし,その成果を公開し,進んで国際協力に資するものとする。

2
前項の安全の確保については,確立された国際的な基準を踏まえ,国民の生命,健康及び財産の保護,環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として,行うものとする。

(定義)
第3条
この法律において次に掲げる用語は,次の定義に従うものとする。(1)ないし(3)

(略)

(4)原子炉
とは,
核燃料物質を燃料として使用する装置をいう。
ただし,
政令で定めるものを除く。
(5)放射線とは,電磁波又は粒子線のうち,直接または間接に空気を電離する能力をもつもので,政令で定めるものをいう。

2
原子力規制委員会設置法(平成27年9月30日号外法律第76号による改正前のもの。以下設置法という。)
(目的)

第1条
この法律は,平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故を契機に明らかとなった原子力の研究,開発及び利用(以下原子力利用という。)に関する政策に係る縦割り行政の弊害を除去し,並びに一の行政組織が原子力利用の推進及び規制の両方の機能を担うことによ
り生ずる問題を解消するため,原子力利用における事故の発生を常に想定し,その防止に最善かつ最大の努力をしなければならないという認識に立って,確立された国際的な基準を踏まえて原子力利用における安全の確保を図るため必要な施策を策定し,又は実施する事務(原子力に係る製錬,加工,貯蔵,再処理及び廃棄の事業並びに原子炉に関する規制に関すること並びに国際約束に基
づく保障措置の実施のための規制その他の原子力の平和的利用の確保のための規制に関することを含む。)を一元的につかさどるとともに,その委員長及び委員が専門的知見に基づき中立公正な立場で独立して職権を行使する原子力規制委員会を設置し,もって国民の生命,健康及び財産の保護,環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的とする。

(設置)
第2条
国家行政組織法(昭和23年法律第120号)第3条第2項の規定に基づいて,環境省の外局として,原子力規制委員会を設置する。
(任務)

第3条
原子力規制委員会は,国民の生命,健康及び財産の保護,環境の保全並びに
我が国の安全保障に資するため,
原子力利用における安全の確保を図ること
(原
子力に係る製錬,加工,貯蔵,再処理及び廃棄の事業並びに原子炉に関する規制に関すること並びに国際約束に基づく保障措置の実施のための規制その他の原子力の平和的利用の確保のための規制に関することを含む。を任務とする。)
(組織)

第6条
1
原子力規制委員会は,委員長及び委員4人をもって組織する。

2
(以下略)

(委員長及び委員の任命)
第7条

1
委員長及び委員は,人格が高潔であって,原子力利用における安全の確保に関して専門的知識及び経験並びに高い識見を有する者のうちから,両議院の同意を得て,内閣総理大臣が任命する。

(原子力規制庁)
第27条

1
原子力規制委員会の事務を処理させるため,原子力規制委員会に事務局を置く。

2
前項の事務局は,原子力規制庁と称する。

3
(以下略)

3
核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(平成26年6月13日号外法律第69号による改正前のもの。以下規制法という。)(目的)
第1条

この法律は,
原子力基本法
(昭和30年法律第186号)
の精神にのっとり,
核原料物質,核燃料物質及び原子炉の利用が平和の目的に限られることを確保
するとともに,原子力施設において重大な事故が生じた場合に放射性物質が異常な水準で当該原子力施設を設置する工場又は事業所の外へ放出されることその他の核原料物質,核燃料物質及び原子炉による災害を防止し,及び核燃料物質を防護して,公共の安全を図るために,製錬,加工,貯蔵,再処理及び廃棄の事業並びに原子炉の設置及び運転等に関し,大規模な自然災害及びテロリズムその他の犯罪行為の発生も想定した必要な規制を行うほか,原子力の研究,開発及び利用に関する条約その他の国際約束を実施するために,国際規制物資の使用等に関する必要な規制を行い,
もつて国民の生命,
健康及び財産の保護,
環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的とする。

(定義)
第2条
1
この法律において原子力とは,原子力基本法第3条第1号に規定する原子力をいう。

2
この法律において核燃料物質とは,原子力基本法第3条第2号に規定する核燃料物質をいう。

3
この法律において核原料物質とは,原子力基本法第3条第3号に規定する核原料物質をいう。

4
この法律において原子炉とは,原子力基本法第3条第4号に規定する原子炉をいう。

5
この法律において発電用原子炉とは,発電の用に供する原子炉であって研究開発段階にあるものとして政令で定める原子炉以外の試験研究の用に供する原子炉及び船舶に設置する原子炉を除くものをいう。

6
(以下略)

(設置の許可)
第43条の3の5
1
発電用原子炉を設置しようとする者は,政令で定めるところにより,原
子力規制委員会の許可を受けなければならない。
2
前項の許可を受けようとする者は,次の事項を記載した申請書を原子力規制委員会に提出しなければならない。
(1)
(2)

使用の目的

(3)

発電用原子炉の型式,熱出力及び基数

(4)

発電用原子炉を設置する工場又は事業所の名称及び所在地

(5)

氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては,その代表者の氏名

発電用原子炉及びその附属施設
(以下
発電用原子炉施設
という。


の位置,構造及び設備
(6)

発電用原子炉施設の工事計画

(7)

発電用原子炉に燃料として使用する核燃料物質の種類及びその年間予定使用量

(8)

使用済燃料の処分の方法

(9)

発電用原子炉施設における放射線の管理に関する事項

(10)

発電用原子炉の炉心の著しい損傷その他の事故が発生した場合における当該事故に対処するために必要な施設及び体制の整備に関する事項
(許可の基準)
第43条の3の6
1
原子力規制委員会は,
前条第1項の許可の申請があつた場合においては,
その申請が次の各号のいずれにも適合していると認めるときでなければ,同項の許可をしてはならない。
(1)

発電用原子炉が平和の目的以外に利用されるおそれがないこと。

(2)

その者に発電用原子炉を設置するために必要な技術的能力及び経理的基礎があること。

(3)

その者に重大事故
(発電用原子炉の炉心の著しい損傷その他の原子力

規制委員会規則で定める重大な事故をいう。第43条の3の22第1項及び第43条の3の29第2項第2号において同じ。)の発生及び拡大の防止に必要な措置を実施するために必要な技術的能力その他の発電用原子炉の運転を適確に遂行するに足りる技術的能力があること。(4)

発電用原子炉施設の位置,
構造及び設備が核燃料物質若しくは核燃料
物質によって汚染された物又は発電用原子炉による災害の防止上支障がないものとして原子力規制委員会規則で定める基準に適合するものであること。

2
前項の場合において,第43条の3の30第1項の規定により型式証明を受けた同項に規定する特定機器の型式の設計は,前項第4号の基準(技
術上の基準に係る部分に限る。)に適合しているものとみなす。
3
原子力規制委員会は,前条第1項の許可をする場合においては,あらかじめ,第1項第1号に規定する基準の適用について,原子力委員会の意見を聴かなければならない。

(変更の許可及び届出等)
第43条の3の8
1
第43条の3の5第1項の許可を受けた者
(以下
発電用原子炉設置者
という。)は,同条第2項第2号から第5号まで又は第8号から第10号までに掲げる事項を変更しようとするときは,
政令で定めるところにより,
原子力規制委員会の許可を受けなければならない。ただし,同項第4号に
掲げる事項のうち工場若しくは事業所の名称のみを変更しようとするとき,又は同項第5号に掲げる事項の変更のうち第4項の原子力規制委員会規則で定める変更のみをしようとするときは,この限りでない。
2
第43条の3の6の規定は,前項本文の許可に準用する。

3
(以下略)

(発電用原子炉施設の維持)

第43条の3の14
発電用原子炉設置者は,発電用原子炉施設を原子力規制委員会規則で定める技術上の基準に適合するように維持しなければならない。ただし,第43条の3の33第2項の認可を受けた発電用原子炉については,原子力規制委員会規則で定める場合を除き,この限りでない。

(許可の取消し等)
第43条の3の20
2
原子力規制委員会は,発電用原子炉設置者が次の各号のいずれかに該当するときは,第43条の3の5第1項の許可を取り消し,又は一年以内の期間を定めて発電用原子炉の運転の停止を命ずることができる。



第43条の3の23の規定による命令に違反したとき。

(施設の使用の停止等)
第43条の3の23
1
原子力規制委員会は,発電用原子炉施設の位置,構造若しくは設備が第43条の3の6第1項第4号の基準に適合していないと認めるとき,発電
用原子炉施設が第43条の3の14の技術上の基準に適合していないと認めるとき,又は発電用原子炉施設の保全,発電用原子炉の運転若しくは核燃料物質若しくは核燃料物質によって汚染された物の運搬,貯蔵若しくは廃棄に関する措置が前条第1項の規定に基づく原子力規制委員会規則の規定に違反していると認めるときは,その発電用原子炉設置者に対し,当該
発電用原子炉施設の使用の停止,改造,修理又は移転,発電用原子炉の運転の方法の指定その他保安のために必要な措置を命ずることができる。
4
実用発電用原子炉及びその附属施設の位置,構造及び設備の基準に関する規則(平成25年6月28日号外原子力規制委員会規則第5号。平成28年1月12日原子力規制委員会規則第1号による改正前のもの。以下設置許可基準規則という。)(定義)
第2条
1
この規則において使用する用語は,核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下法という。)において使用する用語の例に
よる。
2
この規則において,次に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。
(1)ないし(4)(略)

(5)安全機能とは,発電用原子炉施設の安全性を確保するために必要な機能であって,次に掲げるものをいう。

その機能の喪失により発電用原子炉施設に運転時の異常な過渡変化又は設計基準事故が発生し,これにより公衆又は従事者に放射線障害を及ぼすおそれがある機能


発電用原子炉施設の運転時の異常な過渡変化又は設計基準事故の拡大を防止し,又は速やかにその事故を収束させることにより,公衆又は従事者に及ぼすおそれがある放射線障害を防止し,及び放射性物質が発電用原子炉を設置する工場又は事業所
(以下
工場等
という。

外へ放出されることを抑制し,又は防止する機能

(8)安全施設とは,設計基準対象施設のうち,安全機能を有するものをいう。
(9)(以下略)
(外部からの衝撃による損傷の防止)
第6条

安全施設は,
想定される自然現象
(地震及び津波を除く。
次項において同じ。

が発生した場合においても安全機能を損なわないものでなければならない。
5
実用発電用原子炉の設置,運転等に関する規則(昭和53年12月28日号外通商産業省令第77号。平成26年12月10日号外原子力規制委員会規則第7号による改正前のもの。以下,実用炉規則という。)
(定義)

第2条
1(略)
2
この規則において,次の各号に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。
(1)放射線とは,原子力基本法(昭和30年法律第186号)第3条第
5号に規定する放射線又は1メガ電子ボルト未満のエネルギーを有する電子線若しくはエックス線であって,自然に存在するもの以外のものをいう。
(2)ないし(5)(略)
(6)周辺監視区域とは,管理区域の周辺の区域であって,当該区域の外
側のいかなる場所においてもその場所における線量が原子力規制委員会の定める線量限度を超えるおそれのないものをいう。
(7)(略)

6
核原料物質又は核燃料物質の精錬の事業に関する規則等の規定に基づく線量限度等を定める告示
(平成27年8月31日号外原子力規制委員会告示第8号。
以下線量限度告示という。)
(周辺監視区域外の線量限度)
第2条

1
実用炉規則第2条第2項6号の原子力規制委員会の定める線量限度は,次のとおりとする。

(1)実効線量については,
1年間
(4月1日を始期とする1年間をいう。

につき1ミリシーベルト
(2)(以下略)
2(以下略)
以上
別紙3
SSG-21の定め等
1
SSG-21は,段階1ないし4に分けて,火山活動による影響評価を要旨以下のとおり行うこととしている。

(1)

段階1(初期評価)
このステージでは,過去1000万年の間に発生した可能性のある全ての
火山源を包含するサイト周辺の地理的領域を定義する。
(2)

段階2(将来の火山活動の潜在的発生源の特性評価)
初期評価の結果,1000万年までの火山源がその地理的領域に存在する
ことが明らかになった場合には,段階2で実施する追加的調査によって,これらの火山源の特性評価を行う。
特性評価によって,現在火山活動が行われていることが明らかになった場合は,将来の噴火可能性があるといえるため,段階3に進むことになる。現在の火山活動が確認できなかった場合でも,次に完新世(過去1万年)
の火山活動が発生した場合には,将来の噴火可能性があるといえ,段階3に進むことになる。また,安全性の観点から,完新世における噴火の記録が不確かな場合であっても,完新世の火山活動があるとして,段階3に進むことになる。
現在の火山活動が否定され,完新世の火山活動も否定された場合には,完
新世よりも古い活動の火山活動を評価する。過去200万年までの噴火の記録は,一般的に将来の火山活動の可能性を示しており,また,分散火山域やまれにしか活動しないカルデラでは,およそ過去500万年の間の火山活動も,将来の火山活動に対する可能性を示すものとみなされる。十分な評価を確実なものとするために,地質データを評価して,1000万年程度古いそ
の領域の火山源が将来の噴火の可能性を持っているかどうかを検討する。段階2における評価に当たっては,確率論的評価及び決定論的評価を用い
ることができる。確率論的評価手法は,サイトにおけるハザードシナリオを全て考慮し,各シナリオに関連する不確実性を最終的なハザード評価に組み込む手法である。確率論的評価手法において,特定の危険な火山事象の許容な可能な限界値として年間発生確率を1000万年に1回と設定することは,妥当な基準である。一方,決定論的評価手法は,一つあるいは数個の最悪ケースのシナリオを仮定して火山ハザードを評価する手法である。
(3)段階3(火山ハザードのスクリーニング)
サイト周辺における将来の火山活動の可能性を排除できない場合には,段階3に進む。段階3では,原子力サイトに悪影響を及ぼす可能性のある火山
事象の影響を評価する。この評価は,表1(甲C19・9頁)に示す特定の火山事象それぞれに対して実施する。
段階3におけるハザードを評価するための決定論的評価手法は,特定の火山事象に対するスクリーニング距離値に基づいて実施することができる。スクリーニング距離とは,ある火山事象がこれ以上は延長しないと合理的に予
想される距離である。スクリーニング距離は,火山源の特性とサイトと火山間の地形の特徴を考慮して,特定の火山生成物の既往の最大到達距離で定義される。そして,サイトが特定の火山現象に対するスクリーニング距離を超えた場所にある場合,その現象に対する更なる解析は不要となる。しかしながら,将来の活動可能性があると考えられる場合及び特定の火山現象に対す
るスクリーニング距離の範囲内にサイトがある場合には,その火山もしくは火山域については噴火の可能性があると考え,特定サイトのハザード評価を実施する。
段階3の評価に当たっては,確率論的評価手法を用いることもできる。その場合,重大な放射線漏れにつながる事象の年間発生確率の許容上限値とし
て,1000万分の1の指標を用いることができる。
なお,火山源火砕物密度流,溶岩流,岩屑なだれ等,火山土石流等,新し
い火口の開口,火山から発生する飛来物,津波・静振等,地盤変動,熱水系・地下水の異常は,サイト選定段階で候補サイトの選定を排除するためにその特性を考慮すべき事項である。これらの現象が,原子力発電所の安全性に影響を及ぼし,実現性のある工学的対応ができない場合,そのサイトは立地不適当とみなされる必要がある。もっとも,これらのうち,火山土石流等,火山から発生する飛来物,津波・静振等,熱水系・地下水の異常については,適切な設計,防護手段及び運転手段によって対処できる場合もあり,その場合にはサイトを不適合とするまでの必要性はない。
(4)

段階4(サイトのハザードを評価する)
段階4としては,可能性のある火山源がある場合には,特定サイトの火山
ハザードを評価する。すなわち,段階1ないし3においてスクリーニングされなかった火山現象については,段階4において,特定のサイトの火山ハザード評価の検討を進め,潜在的ハザードに対する設計基準若しくは他の現実的な解決策を確立できるかどうかを判断するための十分な情報を確保すべきであり,当該火山ハザードに対する設計基準若しくは他の現実的な解決策を確立できない場合には,当該サイトは不適合とみなされるべきである(甲C19(37頁))。
段階4で火山ハザードを評価するためには,決定論的評価手法と確率論的評価手法の組み合わせが必要となる可能性がある。決定論的評価手法におい
ては,過去の火山活動の経験的な観察,他の火山からの類似情報,または火山プロセスの数値シミュレーションに基づき閾値を定義する。サイトの適合性及び設計基準上の判断は,これらの閾値が許容限界を超えるか否かに基づく。また,確率論的評価手法においても,ハザード現象が規定の規模を超える可能性の確率分布を作成するために,
経験的な観察,
他の火山の類似情報,

又は火山プロセスの数値シミュレーションを用いることができる。SSG-21は,その上で,各火山事象に対しての考慮事項,決定論的評
価手法,確率論的評価手法を示している。
2
SSG-21での推奨事項に対応して原子力発電所の立地評価における火山ハザードアセスメントに適用される詳細な手法と適用例について述べたIAEA―TECDOC―1795(甲D193)において,火山ハザードアセスメ
ントの基本的枠組みを以下のように定める。
(1)火山ハザードアセスメントの初期段階では評価対象領域内に想定される火山ハザード源の特性について既知の情報を使用する。この初期段階情報はスクリーニング解析を行って特定の火山現象が予定サイトに到達するかを判定するために使われる。通常,このようなスクリーニング解析は火山現象が想
定される発生源から移動しうる距離について,サイトの周辺領域の情報と類似の火山系の情報を両方使用して,保守的な推定を行う。
(2)ハザード解析の次の段階では計画される原子力発電所のサイト決定,設計,
運用に関して影響する可能性がある現象だけが検討対象となる。このハザード解析では過去の事象の活動頻度の決定と,それを将来の事象の発生頻度推
定へ投影する作業が重点となる。過去事象の回数やその性質についての不確かさを決定することが活動頻度アセスメントでは重要な検討事項である。(3)将来の火山ハザードが想定されるサイトでは,発生し得る火山活動の兆候を見出すために活動可能性のある火山を観測することが必要であろう。当該観測の目的は,火山の活性化に対して発せられる5個の重要な疑問,すなわ
ち,いつ,どこで,なにが/どのように,規模と強度,そしていかなる影響かに関する情報を提供し,
不確かさを定量化し,
また低減させることである。
以上
別紙4
本件申請及び本件適合性審査の概要等
1
本件申請の概要等

(1)本件各原子炉に影響を及ぼし得る火山の抽出
参加人は,川内原発の敷地に影響を及ぼす可能性がある火山について,その活動性及び影響範囲を把握するため,文献調査,地形・地質調査(火山噴出物を対象とする地表調査等)及び地球物理学的調査(地震活動,地殻変動等に関する検討を行い,マグマ溜まりの規模及び位置等を把握するもの)を実施した。

その結果,参加人は,川内原発の敷地から160㎞の範囲内にある火山のうち,完新世(第四紀(地質時代の一つであり,258万年前から現在までの期間)の区分のうち最も新しいものであり,1万1700年前から現在までの期間)に活動を行った姶良カルデラ,加久藤・小林カルデラ,阿多カルデラ,阿蘇カルデラ,鬼界カルデラ,米丸・住吉池,雲仙岳,口永良部島及
び福江火山群と,完新世に活動を行っていないが活動履歴において最後の活動終了からの期間が過去の最大休止期間より長いなどと認められない,えびの火山群,南島原,金峰山,船野山及び多良岳の合計14火山について,将来の活動が否定できない火山として抽出した。
(乙B1,丙B21)

(2)本件各原子炉の運用期間における火山活動に関する個別評価参加人は,本件各原子炉周辺の火山のうち,過去に破局的噴火を発生させたカルデラ火山について,鹿児島地溝全体としてのVEI7以上の噴火の平均発生間隔は約9万年であり,当該地域における最新のVEI7以上の噴火は約3万年前ないし約2.8万年前であること,噴火ステージ論(ナガオカ
論文),マグマ溜まりの浮力中立点に関する検討(丙B32,33)及びメルト包有物・鉱物組成等に関する分析結果(丙B34,35)等,VEI7
以上の噴火の場合,噴火直前の100年程度の間に急激にマグマが供給されたと推定する知見(ドルイット論文)及び地球物理学的調査結果等を踏まえ,また,階段ダイアグラムに基づく噴火ステージの評価を行い,噴火履歴の特徴及びマグマ溜まりの状況等に基づき,本件運用期間中の破局的噴火の可能性について,以下のとおり,個別評価をした。

姶良カルデラ
姶良カルデラは,鹿児島地溝に存在するところ,鹿児島地溝全体として
の破局的VEI7以上の噴火の平均発生間隔は約9万年の周期性を有しており,当該地域における最新のVEI7以上の噴火は約3万年前ないし約2.8万年前であることから,鹿児島地溝におけるVEI7以上の噴火の活動間隔は,
最新のVEI7以上の噴火からの経過時間に比べて十分長く,
運用期間中におけるVEI7以上の噴火の活動可能性は十分低いと考えられ,姶良カルデラについても,運用期間中における破局的噴火の可能性は十分小さいと考えられる。姶良カルデラを個別に見ても,破局的噴火の活
動間隔(約6万年以上)は最新の破局的噴火(姶良Tn噴火)からの経過時間(約3万年)に比べて十分長く噴火ステージ論(ナガオカ論文)を踏まえて検討しても,現在,破局的噴火に先行して発生するプリニー式噴火ステージの兆候が認められず,桜島における噴火も後カルデラ火山噴火ステージと考えられることから,破局的噴火までには十分な時間的余裕があ
ると考えられる。さらに,マグマ溜まりの浮力中立点に関する検討(丙B32,33)やメルト包有物・鉱物組成等に関する分析結果(丙B34,35)等に基づくと,VEI7以上の噴火時のマグマ溜まりは少なくとも地下10㎞以浅にあると考えられるところ,姶良カルデラ周辺には,桜島の地下浅部にマグマ溜まりが確認されているものの,珪長質の大規模マグ
マ溜まりはないと考えられる。そして,VEI7以上の噴火の場合,噴火直前の100年程度の間に急激にマグマが供給されたと推定される(ドル
イット論文)ところ,国土地理院の電子基準点間基線距離の変化率からするとマグマ溜まりの増大を示唆する基線の伸長傾向が認められるものの,マグマ供給量は,ドルイット論文に示される破局的噴火直前でのマグマ供給量に比べ十分小さい。
以上より,姶良カルデラについては,現在のマグマ溜まりは破局的噴火
直前の状態ではなく,今後も,現在の噴火ステージが継続するものと考えられる。そこで,運用期間中の噴火規模については,後カルデラ火山噴火ステージである桜島での既往最大噴火規模(桜島薩摩噴火:噴出物量約11㎦)を考慮する。

加久藤・小林カルデラ
鹿児島地溝における破局的噴火の活動間隔に関する検討から,加久藤・
小林カルデラにおける運用期間中の破局的噴火の可能性は十分小さいと考えられる。加久藤・小林カルデラを個別に見ても,その活動間隔(約20万年)は,最新の破局的噴火(加久藤噴火)からの経過時間(約33万年)に比べて短いため,破局的噴火のマグマ溜まりを形成している可能性や,破局的噴火を発生させる供給系ではなくなっている可能性等が考えられる。霧島山における噴火活動も,後カルデラ火山噴火ステージと考えられる。さらに,加久藤・小林カルデラ周辺における電気比抵抗構造調査の結果から,低比抵抗領域は認められないため,地下約10㎞以浅に,大規模なマ
グマ溜まりはなく,小林カルデラについては,加久藤噴火(34万年前以降)以降,火山活動が霧島山に限られることから,大規模なマグマ溜まりはないと考えられる。
以上より,加久藤・小林カルデラについては,現在のマグマ溜まりは破局的噴火直前の状態ではなく,今後も,現在の噴火ステージが継続するも
のと判断される。そこで,運用期間中の噴火規模については,後カルデラ火山噴火ステージである霧島山での既往最大噴火規模(霧島イワオコシ噴
火:噴出物量約1㎦)を考慮する。

阿多カルデラ
鹿児島地溝での検討から,阿多カルデラにおける運用期間中の破局的噴
火の可能性は十分小さいと考えられる。阿多カルデラを個別に見ても,その破局的噴火の活動間隔
(約14万年)は,
最新の破局的噴火
(阿多噴火)
からの経過時間(約11万年)に比べて長いことから,破局的噴火までには,十分な時間的余裕があると考えられる。開聞岳における噴火活動は,後カルデラ火山噴火ステージにあり,池田における噴火活動は,プリニー式噴火ステージの初期段階と考えられる。そして,阿多カルデラ地域の地
震波速度構造において,深さ5㎞に,低速度異常が認められるものの,地下浅部に大規模なマグマ溜まりはないと考えられる。
以上より,阿多カルデラについては,現在のマグマ溜まりは破局的噴火直前の状態ではなく,今後も現在の噴火ステージが継続するものと判断される。そこで,運用期間中の噴火規模については,後カルデラ火山噴火ス
テージである開聞岳等,プリニー式噴火ステージである池田での既往最大噴火規模(池田噴火:噴出物量約5㎦)を考慮する。

鬼界カルデラ
鬼界カルデラの破局的噴火の最短の活動間隔(約5万年)は,最新の破
局的噴火(鬼界アカホヤ噴火)からの経過時間(約0.7万年)に比べて長いことから,
破局的噴火までには十分な時間的余裕があると考えられる。
薩摩硫黄島における噴火活動は,後カルデラ火山噴火ステージと考えられる。そして,岩石学的情報により,最新の破局的噴火時のマグマは全て出尽くしており,現在の活動は,その後の新たな活動であるとされていること及び測地学的情報からマグマの供給に伴う膨張等の地殻変動は認められ
ないことから,浅部に大規模なマグマ溜まりを形成していないと考えられる。なお,地球化学的情報からは,80㎦以上の大規模なマグマ溜まりが
推定されるものの,マグマ溜まりのほとんどは,玄武岩マグマであり,破局的噴火を発生させるものではないと考えられる。
以上により,鬼界カルデラについては,現在のマグマ溜まりは破局的噴火直前の状態ではなく,今後も現在の噴火ステージが継続するものと判断される。そこで,運用期間中の噴火規模については,後カルデラ火山噴火ステージである薩摩硫黄噴火での既往最大噴火規模(VEI4:噴出物量1㎦以下)を考慮する。

阿蘇カルデラ
阿蘇カルデラの破局的噴火の最新の活動間隔(約2万年)は,最新の破
局的噴火(阿蘇4噴火)からの経過時間(約9万年)に比べて短いため,破局的噴火のマグマ溜まりを形成している可能性や,破局的噴火を発生させる供給系ではなくなっている可能性等が考えられる。阿蘇カルデラにおける噴火活動は,後カルデラ火山噴火ステージの活動が継続しているものと考えられる。そして,岩石学的情報及び地球物理学的情報から,地下約
10㎞以浅に,大規模な珪長質マグマ溜まりはないと考えられる。以上によれば,阿蘇カルデラについては,現在のマグマ溜まりは破局的噴火直前の状態ではなく,今後も,現在の噴火ステージが継続するものと判断される。そこで,運用期間中の噴火規模については,後カルデラ火山噴火ステージである阿蘇山での既往最大規模(阿蘇草千里ヶ浜噴火:約2
㎦)を考慮する。

運用期間中の噴火規模について,上記のとおり阿蘇カルデラ,鹿児島地
溝の本件3カルデラ及び鬼界カルデラにおける噴火はVEI6以下の既往最大を,その他の9火山については各火山の既往最大規模をそれぞれ考慮した上で,設計対応不可能な火山事象(火砕物密度流,溶岩流,岩屑なだれ,地滑り及び斜面崩壊,新しい火口の開口,地殻変動)の敷地への影響はないといえる。

(3)火山活動のモニタリング
参加人は,川内原発の敷地から半径5㎞の範囲に火砕流堆積物が認められていることから,設計対応不可能な火山事象が過去に敷地に到達したことが否定できない加久藤小林カルデラ,

姶良カルデラ及び阿多カルデラを含め,
阿蘇カルデラ,加久藤・小林カルデラ,姶良カルデラ,阿多カルデラ及び鬼界カルデラを対象に,運用期間中のモニタリングについて以下のとおり計画等を作成した。

VEI7以上の噴火の早期の段階であるマグマの供給時に変化が現れる
地殻変動及び地震活動について,既存観測網等による地殻変動及び地震活動の観測データ,公的機関による発表情報等の収集・分析を行い,第三者の火山専門家の助言を得た評価を定期的にかつ警戒時には臨時で行うことで火山活動状況に変化がないことを定期的に確認する計画とした。イ
対象火山の状態に変化が生じた場合は,設計対処不可能な火山事象を伴
うVEI7以上の噴火への発展の可能性を評価し,その可能性がある場合には,原子炉の運転の停止,燃料体等の搬出等を実施する方針とした。(4)火山事象の影響評価
参加人は,設計対応不可能な火山事象以外の火山事象の影響について,以下のとおり評価した。

設計対応不可能な火山事象以外の火山事象については,運用期間中に考
慮する噴火規模と本件各原子炉との位置関係を踏まえ,降下火砕物については,桜島における桜島薩摩噴火(約1万2800年前,噴火規模は約11㎦)によるものが敷地において最も影響が大きいと評価し,文献調査によって,層厚が12.5㎝以下であること及び地質調査によって,川内原発の敷地付近に降下火砕物が認められないことを踏まえ,川内原発の敷地
において考慮する降下火砕物の層厚を15㎝と判断した。

降下火砕物以外の火山事象である火山性土石流,火山泥流及び洪水,火
山から発生する飛来物(噴石),火山ガス,津波及び静振,大気現象,火山性地震,熱水及び地下水の異常の影響については,いずれも敷地に影響を及ぼさないと判断した。

桜島薩摩噴火による火山灰の堆積量の推定について,シミュレーション
による検討を行い,シミュレーション結果による層厚を12㎝以下,シミュレーションの前提条件として得られた諸元として密度を1.
3ないし1.
5g/㎤(飽和),0.6ないし0.8g/㎤(乾燥),粒径を4㎜以下が95%以上と判断した。
(5)火山活動に関する防護に関して,降下火砕物によって安全施設の安全機能
が損なわれないようにするために必要な設備を設計上対処すべき施設(以下設計対象施設という。)を抽出するための方針
参加人は,降下火砕物の影響を設計に考慮する施設として,安全重要度分類指針で規定されているクラス1及びクラス2に属する構築物,系統及び機器を抽出する方針とした。このうち,建屋内に内包される構築物,系統及び
機器については,
これらの施設を内包する建屋,
屋外に設置されている施設,
屋外に開口している施設並びに外気から取り入れた屋内の空気を機器内に取り込む機構を有する施設を設計対象施設とした。さらに,参加人は,降下火砕物の影響によりクラス1及びクラス2に属する施設に影響を及ぼし得るクラス3に属する施設を設計対象施設として抽出する方針とし,それ以外のク
ラス3に属する施設にあっては,
降下火砕物により損傷した場合であっても,
代替手段があること等により安全機能が損なわれないことから抽出しない方針とした。
(6)降下火砕物による影響の選定

直接的影響
参加人は,降下火砕物の特徴から,荷重,閉塞,摩耗,閉塞,大気汚染,
水質汚染及び絶縁低下を設定した上で,
外気吸入の有無等の特徴を踏まえ,

直接的影響の主な因子として,
構造物への静的負荷及び化学的影響
(腐食)

水循環系の閉塞,内部における摩耗及び化学的影響(腐食),換気系,電気系及び計装制御系に対する機械的影響(摩耗,
閉塞)
及び化学的影響
(腐
食)を選定した。

間接的影響
参加人は,降下火砕物が本件各原子炉に間接的に与える影響について,
外部電源の喪失及び交通の途絶といった,本件各原子炉の外部で生じる影響を選定した。
(7)設計荷重の設定
参加人は,降下火砕物に対する防護設計を行うために,個々の設計対象施設ごとに応じて常時作用する荷重,運転時荷重(自重,死荷重及び活荷重)を適切に組み合わせるとし,火山事象以外の自然事象による荷重との組合せについては,同時発生の可能性のある風(台風)及び積雪を対象とした。さらに,設計基準事故時の荷重との組合せを適切に考慮する設計とした。
(8)降下火砕物の直接的影響に対する設計方針
参加人は,降下火砕物の直接的影響によって安全機能が損なわれない設計方針として,以下の設計方針を示した。

安全機能を有する構築物等の健全性の維持(荷重)に対する設計方針
参加人は,設計対象施設のうち,降下火砕物が堆積する建屋及び屋外施設について,設計荷重が許容荷重に対して構造健全性を失わず,安全機能を損なわない設計方針とした。

安全上重要な設備の機能の維持に対する設計方針
参加人は,降下火砕物による構造物への化学的影響(腐食),水循環系
の閉塞,内部における摩耗及び化学的影響(腐食),電気系及び計装制御系に対する機械的影響(摩耗,閉塞)及び化学的影響(腐食)等によって,以下の通り安全機能が損なわれないように設計することとした。

(ア)構造物への化学的影響(腐食)
設計対象施設である建屋及び屋外施設は,外装塗装等を実施し,降下火砕物に付着した腐食性ガスによる化学的影響(腐食)に対して,安全機能が損なわれないように設計するとした。
(イ)水循環系の閉塞,内部における摩耗及び化学的影響(腐食)設計対象施設である水循環系を有する施設は,降下火砕物の粒径に対して,その施設の狭隘部に十分な幅を設け,閉塞しないように設計するとした。降下火砕物の性状の変化による閉塞については,降下火砕物が粘土質でないため考慮する必要はないとした。また,降下火砕物から海水に溶出した腐食性成分による腐食に対しては,塗装又は耐食性を有す
る材料の仕様等により影響を及ぼさないように設計するとし,摩耗については,降下火砕物の高度が砂より低くもろいことから,点検及び補修により対応が可能とした。
(ウ)電気系及び計測制御系に対する機械的影響(摩耗,閉塞)及び化学的影響(腐食)

電気系及び計測制御系の設計対象施設は,外気と遮断された全閉構造等により機械的影響(摩耗,閉塞)を受けず,また,塗装等により化学的影響を受けないように設計するとした。
(エ)その他の影響
参加人は,
設計対象施設への直接的影響としては,
前記のものの他に,

降下火砕物の粒子の衝突,水質汚染の影響が考えられるとしつつ,設計対象施設の構造上,有意な影響を受ける可能性がないとした。また,電気系及び計装制御系の計装盤は,絶縁低下しないように外気取り入れ口にフィルタを設置する等の空調管理された場所に設置するとした。ウ
外気取入口からの降下火砕物の侵入に対する設計方針
参加人は,屋外に連通する開口部を有する設計対象施設については,降
下火砕物が侵入し難い設計方針とするとともに,塗装を行うとした。降下火砕物により大気汚染が本件各原子炉内で発生した場合,当該汚染が外気取入口から中央制御室に侵入しないように換気空調系の閉回路循環運転を実施することとし,この場合であっても,酸素濃度の低下又は炭酸ガス濃度の上昇により制限値に達するまでの間の中央制御室の居住性が確保され
る設計方針とした。

降下火砕物の除去等の対策
参加人は,設計対象施設に,長期にわたり静的荷重がかかることや化学
的影響が発生することを避け,安全機能を維持するために,除灰作業や点検等を実施する方針とした。

(9)降下火砕物の間接的影響に対する設計方針
参加人は,原子炉及び使用済み燃料プールの安全性を損なわないように,ディーゼル発電機,燃料油貯油槽及び燃料油貯蔵タンクを備えるとし,タンクローリーによる燃料の運搬も含めて7日間の連続運転が可能な設計方針とした。燃料貯蔵タンクから燃料油貯油槽への燃料運搬については,降灰時の
道路条件を想定しても除灰作業によるアクセス性を確保するとした。(乙B1,丙B1,21)
2
本件適合性審査の概要

(1)処分行政庁による本件各原子炉に係る新規制基準への適合性審査においては,原子力規制員会の委員のほか,原子力規制庁の職員によって,参加人からのヒアリング及び審査会合が多数回行われ,また,本件適合性審査に関する意見公募手続を経た上で,下記のとおり,処分行政庁は,本件申請が火山ガイドを踏まえたものであることを確認した上で,本件処分をした。(2)本件各原子炉に影響を及ぼし得る火山の抽出

処分行政庁は,参加人が実施した本件各原子炉に影響を及ぼし得る火山の抽出は,地理的領域の設定や階段ダイアグラムの作成等に基づいて行われて
いること等から,火山ガイドを踏まえたものであることを確認した。(3)本件各原子炉の運用期間における火山活動に関する個別評価処分行政庁は,参加人が実施した本件各原子炉の運用期間中の検討対象火山の活動の評価は,過去の活動履歴の把握や地球物理学的調査に基づいており,これらの手法が火山ガイドを踏まえていることを確認した。また,参加人がその結果に基づき,本件運用期間に設計対応不可能な火山事象によって本件各原子炉の安全性に影響を及ぼす可能性について十分小さいとしていることは妥当であると判断した。
(4)火山活動のモニタリング

処分行政庁は,参加人に対し,火砕物密度流による影響に関する審査の過程において,地球物理学的な調査項目を考慮したモニタリング計画の検討,噴火の可能性につながるモニタリング結果が観測された場合の対応方針の検討等を求め,参加人はこれらを反映したモニタリング計画を再検討した。処分行政庁は,参加人が計画している運用期間中のモニタリングが,設計対応
不可能な火山事象が過去に敷地に到達したことが否定できない火山を監視対象として抽出し,その監視項目及び監視の方法,定期的評価の方針及び火山活動の兆候を把握した場合の対処方針を示していること等から,火山ガイドを踏まえていることを確認した。
(5)火山事象の影響評価

原子力制委員会は,参加人が実施した設計対応不可能な火山事象以外の火山事象の影響評価については,降下火砕物の数値シミュレーションを行うことにより算出していること等から,火山ガイドを踏まえていることを確認した。
(6)火山活動に関する防護に関して,設計対象施設を抽出するための方針
原子力規制員会は,参加人による設計対象施設を抽出するための方針が,安全重要度分類指針に従って,降下火砕物によって安全機能が損なわれる恐
れがある構築物,系統及び機器並びに上位クラスへ影響を及ぼし得る施設について,火山ガイドを踏まえて降下火砕物の特徴を考慮した上で,適切に抽出していることを確認した。
(7)降下火砕物による影響の選定
処分行政庁は,参加人による降下火砕物の直接的影響及び間接的影響の選定が,火山ガイドを踏まえたものであり,降下火砕物の特徴及び設計対象施設の特徴を考慮していることを確認した。
(8)設計荷重の設定
処分行政庁は,参加人による設計荷重の設定が,設計対象施設ごとに常時
作用する荷重,運転時荷重等を考慮するものとしていることを確認した。(9)降下火砕物の直接的影響に対する設計方針

安全機能を有する構築物等の健全性の維持(荷重)に対する設計方針処分行政庁は,参加人の設計について,設計荷重が許容荷重に対して安
全裕度を有することにより構造健全性を失わず安全機能が損なわれない方針としていることを確認した。

安全上重要な設備の機能の維持に対する設計方針
処分行政庁は,参加人の設計が降下火砕物の特徴を踏まえ,設計対象施
設に与える化学的影響,機械的影響その他の影響に対して,安全機能が損なわれない方針としていることを確認した。

外気取入口からの降下火砕物の侵入に対する設計方針
処分行政庁は,参加人の設計が,降下火砕物や設計対象施設の特徴を踏
まえており,降下火砕物の侵入防止対策として,平型フィルタなどの設置や換気空調系の停止により安全施設の安全機能が損なわれないようにするとともに,原子炉制御室にあっては,閉回路循環運転法により居住性を確保する方針としていることを確認した。

降下火砕物の除去等の対策

処分行政庁は,参加人が,降下火砕物の除去等について,除灰作業等に必要な敷材を確保するとともに,手順等を整備する方針としていることを確認した。
(10)降下火砕物の間接的影響に対する設計方針
原子力規制庁は,参加人の設計が,降下火砕物の間接的影響として,外部電源喪失及び交通の途絶を想定し,ディーゼル発電機,燃料油貯油槽及び燃料貯蔵タンクを備え,7日間連続運転を可能とするために,燃料の運搬のためのアクセスルートの除灰作業を行う運用とするとする旨の方針が,火山ガイドを踏まえたものであることを確認した。

(乙B1)
以上
別紙5
ナガオカ論文及びドルイット論文に関する知見等
1
ナガオカ論文(噴火サイクル論)に関する知見

(1)ナガオカ論文には,以下の記載がある。
鹿児島地溝における噴火サイクルは,噴火フェーズの考えに基づくと,プリニー式噴火サイクル,大規模火砕流噴火サイクル,中規模火砕流噴火サイクル及び小規模噴火サイクルに分類される。
プリニー式噴火サイクルは,単一のプリニー式噴火(準プリニー式噴火を含む。)から構成され,中規模火砕流噴火フェーズに引き継ぐことがあり,
火砕流はプリニー式噴火の噴煙柱が重力的に崩壊することにより発生し,このサイクルでの総噴出物量は50㎦未満である。大規模火砕流噴火サイクルは,噴出物量が100㎦にも及ぶ大規模火砕流のフェーズとして特徴づけられ,このフェーズの前には,プリニー式噴火,小規模-中規模火砕流噴火,水蒸気マグマ噴火,水蒸気プリニー式噴火といったような様々な噴火フェー
ズが先行する。中規模火砕流噴火サイクルは,中規模な火砕流噴火(噴出物量1~50㎦)
からなる。
小規模噴火サイクルは,
小規模のブルカノ式噴火,
ストロンボリ式噴火,水蒸気マグマ噴火からなる。
姶良カルデラ及び阿多カルデラでは,10万年間に複数回のプリニー式サイクルが,それぞれ大規模火砕流噴火サイクルの前に断続的に発生し,大規
模火砕流噴火サイクルに続いて,若干の中規模火砕流噴火サイクルが一万年の間続き,次いで,後カルデラ火山で小規模噴火サイクルが発生し,これらのサイクルは,5~8万年続く噴火マルチサイクルを構成する。
深海に沈む鬼界カルデラはこの一般的パターンの例外であり,噴火口にかかる高い水圧のため,プリニー式噴火サイクルと中規模火砕流噴火サイクル
が存在しない。
鹿児島地溝のカルデラはただ一回の大規模火砕流噴火サイクルで生じたの
ではなく,複数の噴火サイクル及びマルチサイクルで形成された。(乙D16の1・2,丙B29)
(2)これに対し,以下の見解がある。
小林哲夫ほか大規模カルデラ噴火の前兆現象‐鬼界カルデラと姶良カルデラ‐(2010)(乙D27)鬼界カルデラの約7300年前の破局的噴火(アカホヤ噴火)の前兆現象として,
少なくとも8000年間にわたる断続的なブルカノ式噴火が発生し,また,数百年前に山体崩壊が発生し,約100年前に脱ガス化した流紋岩質溶岩が噴出し,噴火中から噴火後にかけて2回の巨大地震が発生しており,
これらの地学現象は,カルデラを取り巻く地殻応力と密接に関連していたようである。アカホヤ噴火からまだ一万年も経っていないが,カルデラ中央には再生ドームが形成されており,次のカルデラ噴火が差し迫りつつあるものかどうか,多面的な研究が望まれる。また,姶良火砕流噴火は,まずプリニー式噴火で始まり,最後に大規模な入戸火砕流を噴出した,シラス台地が広
大な地域を厚く覆っているため,先駆的現象の顕著な事例は見つかっていないが,十万年間という長い時間スケールでみると,姶良カルデラの内部ないし周辺で,7500年に一度の割合で噴火が発生し,姶良火砕噴火の直前の3000年間は1000年に一度の割合に急増している,直前の前兆現象ではないが,大規模なカルデラ噴火に向かって徐々にマグマの噴出頻度が増し
ているのは注目すべき現象である。
(3)前野深カルデラとは何か:鬼界大噴火を例に
(2014)
(丙B23)
鬼界カルデラは,アカホヤ噴火以前にも同規模の巨大噴火を繰り返し,9万5000年前には鬼界葛原噴火,13万年前には鬼界小アビ噴火を起こしており,現在の海底地形はこれらの噴火が繰り返したことにより生じたもの
である。鬼界アカホヤ噴火の主要な推移は,プリニー式噴火によるステージ1と大規模火砕流及びカルデラ陥没を生じたクライマックスのステージ2に
分けられる。プリニー式噴火が先行するという特徴は多くのカルデラ噴火で報告されている。アカホヤ噴火は,少なくとも2回のプリニー式噴火で始まり,その進行に伴ってマグマ溜まりの減圧が進むと,マグマ溜まりの圧力だけでは天井が支えきれなくなり,崩壊が開始し,地表での大規模な陥没が始まり,残存していた大量の流紋岩質マグマが陥没により生じた割れ目を拡大
しながら一気に地表に噴出し,巨大な火砕流となって周囲に広がったと考えられる。
薩摩・大隅半島を含む南九州地域は,
少なくとも200万年前以降,
九州中部付近を頂点とする反時計回りの回転運動を続けており,引張的な応力場に置かれることにより鹿児島地溝が形成されてきたのであり,鬼界カルデラを始め阿多,姶良等の大型カルデラの配置が鹿児島地溝と重なるのは,
熱源とともにマグマが蓄積しやすい地殻の応力状態と温度構造が継続しているためと考えられる。
(4)さらに,ナガオカ論文で述べられている噴火ステージに関して,以下のとおり,これは普遍的な法則を述べたものではないという見解がある。噴火ステージ論は,噴火史上のパターン認識に基づいて,テフラ層序など
の地質調査結果にみられる定性的傾向を整理するための仮説であり,実際のマグマ溜まり内で生じる物理・化学過程に基づいた立証がなされているわけではなく,これに基づいて将来の噴火規模を予測することはできない(甲A139,B4,23(5頁),25(10頁),53(49頁),89,)。プリニー式噴火ステージや中規模火砕流噴火ステージの存在がはっきりし
ない場合,プリニー式噴火が先行しない場合,プリニー式噴火が1日で終わった後に破局的噴火が起きる場合等も考えられ,噴火ステージ論が普遍的な法則について述べたものではない(甲B4,25,53,89)。2
ドルイット論文に関する知見

(1)ドルイット論文(丙B38)には,以下の記載がある。
紀元前1600年代後半のミノア期に起きたギリシア・サントリーニ火山
の大規模噴火(ミノア噴火。マグマ噴出量40~60㎦とされる。)の際に生じた化学的(組成)累帯構造を示す結晶を用いた分析により,大規模噴火直前の100年程度の期間に急激にマグマが供給され,その際のマグマの増加率が,1年当たり0.05㎦を超えていたと推定され,このことは,別の火山においても,カルデラ噴火前の同様の時間スケールで(休止期間)末期段階での膨大な量のマグマの再充填が起きたという事実(証拠)とも矛盾しない。
(2)これに対し,藤井教授は,モニタリング検討チーム第1回会合において,ドルイット論文は3500年前のサントリーニ火山のミノア噴火では準備過
程の最終段階の100年間に数~10㎦のマグマ供給があったということを述べただけで,カルデラ一般について述べたものではなく,本人に確認したところ,
本人も一般則を述べたつもりはないと言っていたと述べ
(甲A15。
甲B11同旨),『原子力施設における火山活動のモニタリングに関する検討チーム提言とりまとめ』について(甲A29)にも,ドルイット論文
で述べられたのはミノア噴火での事例であって,世界のカルデラ火山一般についてではなく,普遍性のある事象として用いるには他の火山での検証が必要である旨の記載がある。そして,甲B23には,ドルイット論文で示唆された現象は,火山周辺の基線長の変化などの地球物理学的観測データで実証できていない等の記載がある。

(3)他方,平成26年7月16日開催の平成26年度原子力規制委員会第17回会議において,委員長代理から,現時点において,ドルイット論文に反する結果が実証的な研究としてはない旨述べた(乙B10(27頁))。これに対しては,ただし,公表された論文に対し,反論が出るまで何十年もかかるケースもあるとする見解もある(甲B62)。
以上
別紙6
本件5カルデラのマグマ溜まりの状況等に関する知見等
1
姶良カルデラ

(1)桜島の主たるマグマ溜まりは姶良カルデラ下にあるが,桜島の中央火口丘を構成する北岳及び南岳の下にそれぞれマグマ溜まりが推定される(甲D26,甲D159の1・2,丙B75)。
(2)主なマグマ溜まりは地下深さ10㎞に存在し,副マグマ溜まりは桜島の直下の約4㎞に存在すると推定される(甲D26及び丙B75。なお,甲B27(252頁),甲D95,96,)甲D158,乙D10,54の1・2,
丙B30,45,49参照)。
(3)姶良カルデラ中央部には大きな珪長質マグマ溜まりが存在し,安山岩質マグマはそこよりやや深い周辺部に別個のマグマ溜まりとして存在していると考えられる(甲D163。丙B30参照)。
(4)姶良カルデラでは,マグマの蓄積や上昇に伴い,その西側中央付近を中心
した曲隆(甲D164)等,火山性地震や地盤変動が観測されている(丙B75)。姶良カルデラ一帯の着実な地盤の上昇傾向(1年当たり1.3㎜)は,地下深部で珪長質マグマが蓄積され続けていることを示唆しており,もし珪長質マグマが過去3万年の間この割合で蓄積されてきたと仮定すると,現在の姶良カルデラには数十㎦程度と推測されるマグマが蓄積されているこ
とになる(丙B30)。
姶良カルデラ内にある桜島火山のマグマ溜まりには,10年あたりおよそ0.1㎦のマグマが供給されていると推定され,過去2.6万年の間に260㎦近いマグマ溜まりが形成された可能性もあり,この半分の量が桜島火山として噴出したとしても,100㎦以上のマグマが蓄積されていることにな
る(甲B14。なお,丙B49には,姶良カルデラ地下のマグマ溜まりへのマグマ供給率が年間約970立方メートルとなると推定される旨の記載があ
る。)。そして,丙B75には,姶良カルデラの隆起量は,大正3年の噴火後の沈降量(約80㎝)の90パーセントに達しており,2020年代から2030年代にはほぼ100パーセントに達する見込みであるとして,今後,
大正3年の噴火級の大規模噴火の可能性がある旨の記載がある。さらに,甲B8(571頁)には,姶良カルデラにたまっているマグマの蓄積率は,カ
ルデラ噴火の蓄積率と考えてもいいような高い値である旨の記載がある(甲B23,乙D118参照)。
(5)もっとも,丙B123には,2万9000年前までに,苦鉄質マグマの噴出のあとに珪長質マグマが噴出し,最後に珪長質マグマの大規模な噴火が起きるというサイクルが二つ見られ,二つのサイクルの活動を比較すると,現
在の桜島の活動はまだマグマ混合過程であり,珪長質マグマの巨大マグマ溜まりが成長する過程には移行していないと解釈できる旨の記載がある。(6)また,乙D53には,地下のマグマ溜まりの形状を回転楕円体(ラグビーボールのような形状)の圧力源であると仮定し,GPSにより観測した地殻変動を解析すると,圧力源は,姶良カルデラの北東部の深さ13㎞にあり,
回転楕円形の半径は垂直方向に2.4㎞,水平方向に7.2㎞の扁平な形状であると考えられるが,地震波トモグラフィーによる3次元地震波速度構造の調査結果によれば,
地下10㎞付近では速度構造の異常は見られないため,
この深さでは,マグマは大きな広がりとはなっていないと考えられ,現在,姶良カルデラ下では,地下数㎞に大規模なマグマ溜まりが蓄積している状態
ではないから,VEI7以上の破局的な噴火が発生する可能性は低いとする旨の記載がある。
2
加久藤・小林カルデラ

(1)丙B53には,霧島火山群の北西部の火山では,深さ10㎞以浅にマグマが滞留し,そこから火山ガスが帯水層に供給されていると考えられるのに対し,南東部の火山では,マグマが滞留しておらず,これは,霧島地域の基盤
構造や鹿児島地溝形成等のテクトニクスを背景とした本質的な違いである可能性があるとされた旨の記載がある。
(2)丙B53には,霧島火山群の北西部の火山では,深さ10㎞以浅にマグマが滞留していると考えられるのに対し,南東部の火山では,マグマが滞留していないと考えられる旨の記載がある(丙B54,124参照)。
(3)霧島火山地質図(丙B113)には,霧島火山群の北西部の火山(硫黄山・新燃岳・中岳)から噴出しているのは,安山岩質のマグマである旨の記載がある。
(4)乙D52には,加久藤・小林カルデラでは,過去20年間,姶良カルデラや霧島火山下のマグマ溜まりの圧力変化に伴う地殻変動と広域応力場による
基線長変化は認められるものの,それ以外のマグマ溜まりに起因する地殻変動は認められず,地下深部からのマグマの供給によるマグマ溜まりの圧力変化が生じていないと判断されるから,加久藤・小林カルデラにはマグマが供給されておらず,大規模な噴火に至る状態にはないと推定される旨の記載がある。

(5)ただし,甲D148には,霧島山周辺の地下において,地震波トモグラフィーを用いて得られたS波速度構造を解析したところ,海抜下5㎞で霧島山の約5㎞北西に強い低速度異常が現れ,海抜下10㎞にかけて深くなるにつれ,山体北西から山体直下にかけて広く低速度異常がみられ,これらの低速度異常は噴火に関わるマグマ溜まりである旨の記載がある。

3
阿多カルデラ

(1)丙B58(576頁)には,薩摩半島南東端には阿多カルデラ,指宿地域の熱水活動に関連した低速度異常域が認められる旨の記載がある。また,甲B15及び甲D19には,阿多カルデラでは,超巨大噴火が24万年前と11万年前に生じており,噴火間隔が約13万年であることから,阿多カルデラにはまだ相当量のマグマが地下のマグマ溜まりに残っている可能性があり,
阿多カルデラは,超巨大噴火や破局噴火の圏内に入っていると考えてよい旨の記載がある。
(2)他方,乙D52には,阿多カルデラにおいては,過去20年間,姶良カルデラや霧島火山下のマグマ溜まりの圧力変化に伴う地殻変動と広域応力場による基線長変化は認められるものの,それ以外のマグマ溜まりに起因する地
殻変動は認められず,地下深部からのマグマの供給によるマグマ溜まりの圧力変化が生じていないと判断されるから,阿多カルデラにはマグマが供給されておらず,
大規模な噴火に至る状態にはないと推定される旨の記載がある。
4
鬼界カルデラ

(1)乙D84には,火山ガス観測とメルト包有物分析から脱ガスマグマ量及びマグマの圧力(深さ)を推定し,これを鬼界カルデラに適用した結果,少なくとも80㎦の大きさのマグマ溜まりが地下に存在しており,マグマ溜まりの上面が3㎞程度であると推定される旨の記載がある(甲D29,30,丙B35参照)。

(2)参加人が実施したモニタリング評価結果によれば,鬼界カルデラにおける基線長変化等を確認した結果,平成28年度の基線長の変動率に有意な変化は認められないとされる(丙B125)。また,丙B63(31頁)には,GPS観測により,平成17年から平成23年までの地盤変動の変位量を測定した結果,鬼界カルデラ周辺では,地盤変動のような顕著な膨張は見られ
ず,少なくとも最近数年間には鬼界カルデラには深部からの新たなマグマの供給はないと判断できる旨の記載がある。
(3)これに対し,丙B62には,地質学的及び岩石学的特徴からすると,稲村岳の活動以降,マグマ溜まりに新しい苦鉄質マグマが供給され,新たな流紋岩質マグマを生み出す熱源となった可能性が示唆され,新たなマグマを生産
する活動期に入った旨の記載がある。さらに,
甲A236
(703頁)
には,
7300年前の巨大噴火後,
海底に形成された32㎦を超える溶岩ドームは,

新たなマグマ供給システムで生成した可能性が高く,鬼界カルデラ火山は,次の巨大噴火の準備期と考えるべきである旨の記載がある。
さらに,甲B23には,鬼界カルデラの火山ガスの放出量のデータを根拠に既に多量のマグマが蓄積されている可能性が否定できない旨の記載がある。(4)これに対し,甲D29,30,丙B35には,鬼界カルデラのマグマ溜まりは,その上面が深さ3㎞程度にあり,下部に玄武岩マグマ,上部に流紋岩マグマがあり,中間に両者の混合によって生じた安山岩マグマが存在しており,大量の火山ガス放出は,この上部の流紋岩マグマが火道を上昇し,地表近くで脱ガスしているためと考えられるが,脱ガスした流紋岩マグマは,火道及び流紋岩マグマ溜まりを沈降し,下部の玄武岩マグマから安山岩マグマ
を通してガス成分が供給されることから,現在地表で放出されている火山ガスのほとんどは,地下深くに潜在している玄武岩マグマを起源としていると考えられる旨の記載がある。また,乙D84には,7300年前の噴火マグマに比べ,マグマを発泡させる揮発性成分の濃度が低下していること,7300年前の噴火からの時間間隔も短く,マグマ蓄積の時間も少ないこと,深
部からの大量のマグマ上昇やマグマ溜まりの膨張を示唆する地震や地殻変動も現在起きていないことを考え合わせると,鬼界アカホヤ噴火のような破局的噴火がすぐに起きる状況にはないと推論できる旨の記載がある。5
阿蘇カルデラ

(1)日本活火山総覧(第4版)(丙B2(1208頁))には,阿蘇山の地下10ないし24㎞に地震波の低速度層が認められ,マグマの存在を示唆している旨の記載がある(甲B151,丙B71参照)。
(2)本件運用期間中に破局的噴火が起きる可能性については,以下の見解がある。


丙B127には,阿蘇カルデラに関して,最近1万年間はほとんど玄武
岩マグマのみが活動したことが読み取られ,上部地殻内から現在活動中の
中岳へとマグマを供給しているマグマ溜まりに蓄積されているのは玄武岩マグマと考えられるため,
少なくとも現在のカルデラ直下の地殻浅部には,
カルデラ形成噴火時のような大規模珪長質マグマは蓄積されていないと考えられる旨の記載がある。

乙D105には,阿蘇カルデラにおける火山噴出物について調査した結
果,後カルデラ期の阿蘇火山直下にはカルデラ形成期のような巨大なマグマ溜まりは存在しなくなり,複数の小規模マグマ溜まりが形成されていたと考えられ,また,カルデラ中央部における玄武岩質火山活動で特徴付けられる後カルデラ期の最近1万年間には,阿蘇カルデラ形成期のような巨大な珪長質マグマ溜まりは存在しなかったと考えられる旨の記載がある(丙
B70,103同旨)。

丙B141には,現在の阿蘇火山の噴火活動は,過去の破局的噴火直前
の状況と大きく異なり,苦鉄質マグマの活動を主体とした静穏な状況であり,破局的噴火を起こすような珪長質で大規模なマグマ溜まりが存在している可能性は低く,破局的噴火が発生するには数千年から数万年の期間を要すると考えられる旨の記載がある。

丙B142には,200㎦を超えるような大規模なマグマ溜まりを示唆
するような兆候は何ら検出されていないことからすれば,現在の阿蘇火山の地下には大規模なマグマ溜まりは存在せず,現在のマグマシステムは,過去にカルデラ噴火を発生した際のマグマシステムとは大きく異なっており,現在の阿蘇火山におけるマグマシステムから200㎦を超えるマグマ溜まりを形成するためには,40年よりもはるかに長い期間が必要である旨の記載がある。

乙D56の2には,カルデラの内部及び周囲に密集して配置した観測点
によって得られた遠地地震波データに基づき地殻S波速度構造を予測したところ,阿蘇カルデラの中央火口丘の東側側面の下8ないし15㎞にS波
低速度領域(LA),低速度領域の東側面を除く阿蘇カルデラの中及び周辺の領域の下15ないし23㎞に第二の低速度領域(LB)が観測され,これらの低速度領域は15パーセントの溶融したマグマまたは30パーセントの水を含んでおり,LBでは,熱源が存在せず,溶融したマグマは新しく発生していない可能性がある旨の記載がある。

乙D52には,
阿蘇カルデラの地下約6㎞付近にマグマ溜まりが存在し,

また,地下約15㎞にもマグマ溜まりと考えられる変動源が存在するということができ,地下約15㎞に存在する変動源は,水または溶融したマグマの存在する領域の底部に当たるものであり,最大45㎦のマグマ(当該領域の全体積の15パーセント)
の一部分のみが存在していると考えられ,
地下約6㎞付近のマグマ溜まりは継続的な火山ガスの放出により全体として縮小傾向にあり,これらのことからすれば,今後の阿蘇の火山活動は大規模なカルデラ噴火が起こるような状態ではないと推定される旨の記載がある。

(3)これに対し,以下の見解もある。

甲D89には,乙D52に,阿蘇カルデラ地下に最大45㎦のマグマが
あるという点について,この数値自体不確実なものである上,仮にそのとおりであるとしても,溶融していない部分が流動化して近い将来に噴出する可能性が否定できない旨の記載がある。また,甲D152には,現在得られている阿蘇カルデラの地下の低速度領域がさらに拡がる可能性もあり,乙D52が大雑把に直方体を仮定して各低速度領域の体積を推定しているが,その精度は相当低いものとなっている旨の記載がある。

甲B38には,阿蘇カルデラの階段ダイアグラムを前提とすると,阿蘇
カルデラにおける破局的噴火の平均発生間隔は約5.
3万年であるところ,
阿蘇カルデラの最後の破局的噴火から約9万年経過し,平均発生間隔の約5.3万年を大きく徒過している旨の記載がある。甲B25には,阿蘇2
と阿蘇3との間は2万年ほどしか経っていないことからすると,2万年経てば破局的噴火を引き起こすレベルのマグマが蓄積する旨の記載がある(甲
D20参照)。

甲D33(300頁以下)には,草千里南部付近直下にマグマ溜まりが
存在し,中央火口の火山活動の供給源となっており,減圧力源はマグマ溜まりの収縮を意味すると考えられ,草千里南部のマグマ溜まりから中岳火口まで火山ガスの上昇経路が定常的に確保されていると考えられる旨の記載がある。甲B25には,深さ15㎞から20㎞にマグマ溜まりが存在する可能性があり,このマグマ溜まりが流紋岩マグマなのかデイサイトマグ
マなのか判断はつかず,もし草千里の下にあるマグマ溜まりが噴出するような事態になれば,地下10㎞より深いところのマグマが急激に上昇するようなことも否定できない旨の記載がある。
以上
別紙7
降下火砕物が原子力発電所に及ぼす影響等に関する知見及び参加人の対応等1
降下火砕物の層厚に関する知見

(1)

乙D104によれば,等層厚線図は,噴火により拡散された噴出物の分布
を把握するために各地点における降下噴出物の厚さを測定して作成されるもの
であり,等層厚線は,火口から同心円状ないし風下に伸びた軸をもつ長円状の形状となるのが一般的であり,
層厚や粒径は,
火口から離れるにしたがって減
少する。
なお,乙D29によれば,日本列島を含む中緯度地帯の上空には,地球規模の大気循環により,西風である偏西風が吹いており,日本上空付近は,気圧の
谷となっており,偏西風の速度が強いことが認められる。
(2)

甲B4(189頁)には,姶良岩戸噴火で放出された降下火砕物の等層厚線図を見ると,
火口から60㎞離れた宮崎市内で約1メートルの厚さがあり,

向きによってはほぼ同距離を隔てた川内原発周辺に同程度の厚さで積もり得る旨の記載がある。

甲D189,
191
(83頁)
によれば,
桜島薩摩噴火の際には,
テフラが,
西へは150㎞余り,
北側では80㎞も拡がったと考えられる旨の記載がある。
丙B18には,
桜島薩摩噴火におけるテフラは,
本件各原子炉から10㎞以
上離れた場所に12.5㎝まで及んだ旨の記載がある(丙B42同旨)。2
(1)

降下火砕物等のシミュレーションに関する知見
TEPHRA2は,
移流拡散モデルを元にした降下火山灰シミュレーシ
ョンコードである。移流拡散モデルとは,風による移動(移流)と,空中で勝手に拡がる現象(拡散)から降灰範囲及び降灰量を計算するモデルである。TEPHRA2では,
適当な初期パラメーター噴煙柱高さ噴出量




標高毎の風速・風向等のデータ)を与えることにより,堆積物や噴出物の分布を計算できる。
TEPHRA2は,火口上に仮定した均質な噴煙柱から全

ての噴出物量を放出し,
各高度から放出された噴出物量を落下地点ごとに積算
して,地表の降灰量を算出するものである。TEPHRA2の噴煙モデルは,噴煙の形状を三角錐と仮定するものであり,
傘型領域ができるモデルとは異な
る。なお,TEPHRA2は,風について単純なモデルしか仮定できないが,火山周辺100㎞のオーダーで風向きが大きく変わるというのは考えにくいか
ら,100㎞のオーダー以下で考える場合,TEPHRA2は,一定の実用性があると考えるべきである。
(丙B83)
(2)これに対し,①TEPHRA2においては,噴煙中の太さを無視し,上下方向に一様な密度で分布した状態を初期条件としていると読み取れる等,噴
火経過の多様性について考慮されていない(甲B49),②使用されている風ベクトルの平均値は,気象学における気候値として気象の物理量を見るためのものであり,火山噴煙が原発に到達する典型的な時間スケール(数時間程度)
とは完全に異なるから,
これを使用すべきでない,
③火山灰の飛散は,
風向に左右されることはあるが,爆発的噴火の噴出率によっては,風上にも
同心円状に拡がることがあり,降灰量を予測するためには,噴火の規模や風向以外に噴出率を支配する多くのパラメーターを変動させて,その想定範囲を考えなければならない(甲B23(14頁))等の意見もある。(3)参加人は,平成30年8月16日開催の鹿児島県原子力安全・避難計画等防災専門委員会第7回委員会において,TEPHRA2を用いて,噴出物量
0.33㎦,川内原発の敷地方向に風が吹いた場合の,桜島対象噴火の火山灰シミュレーションを行った結果,敷地に到達した降下火砕物の層厚は2.4㎝になる旨述べた(甲D192)。
3
参加人の降下火砕物の影響に対する防護設計の概要

(1)

降下火砕物による堆積及び衝突に伴う荷重,狭あい部における機械的な閉
塞,
動的機器の摺動部及び流路における機械的な摩耗,
大気汚染,
水質汚染,

電気系又は計装制御系の絶縁低下,腐食の影響モードを想定する。(2)

設計対象施設を発電用軽水型原子炉施設の安全機能の重要度分類に関する審査指針に規定されているクラス一,
クラス二及びクラス三に該当する構築
物,系統及び機器とし,直接的影響(荷重,閉塞,摩耗,腐食,大気汚染,水質汚染,絶縁低下)及び間接的影響(湿った降下火砕物が送電線の碍子及
び特高開閉所施設の充電露出部等に付着し絶縁低下を生じさせることによる広範囲における外部電源喪失並びに降下火砕物が道路に堆積することによる発電所外の交通の途絶及び発電所内の交通の途絶)を評価する。
なお,評価対象施設の主なものは,屋外に設置されている施設(復水タンク,燃料取替用水タンク,海水ポンプ),屋外に開口しており降下火砕物を
含む海水の流路となる施設(海水ポンプ,海水ストレーナ),屋外に開口しており降下火砕物を含む空気の流路となる施設
(非常用ディーゼル発電機
(機
関,吸気消音器),主蒸気逃がし弁消音器,主蒸気安全弁排気管,タービン動補助給水ポンプ蒸気大気放出管,格納容器排気筒,換気空調設備(外気取入口)),屋外に開口しており屋内の空気を機器内に取り込む機構を有する
施設(制御用空気圧縮機,安全保護系計装盤),安全上重要な設備等(クラス一,クラス二に属する施設)を内包し降下火砕物から防護する施設(原子炉建屋,
原子炉補助建屋,
燃料取扱建屋,
ディーゼル建屋,
主蒸気管室建屋)

降下火砕物の影響を受ける可能性がある施設で安全上重要な設備等(クラス
一,クラス二に属する施設)の運転に影響を及ぼす施設(取水設備,補助建
屋排気筒,換気空調設備(外気取入口),タンクローリー)である。(3)

荷重による影響については,火山以外の自然現象として風及び積雪を組み合わせる。建屋については,建築基準法における一般地域の降雪の荷重の考え方に準拠し,
降下火砕物の降下から三〇日以内を目処に適切に除去を行う
設計とし,短期許容応力を許容限界とする。

(4)

広範囲にわたる送電網の損傷による長期(七日間)の外部電源喪失,発電
所外における交通の途絶及び発電所内における交通の途絶に対し,原子炉及
び使用済燃料ピットの安全性を損なわないよう,
外部電源喪失が発生した場
合に対して,ディーゼル発電機により電源供給ができる設計とし,外部からの支援なしでディーゼル発電機により七日間の電源供給を継続できるよう燃料油貯蔵タンク及びディーゼル発電機燃料油貯油槽に燃料を貯蔵できる設計
とする。また,タンクローリーによる燃料供給に必要な発電所内のアクセスルートの降下火砕物を除去できる設計とする。
(5)

降灰時には,外気取入口に設置している平型フィルタ,外気取入ダンパの閉止,換気空調系の停止又は閉回路循環運転により,建屋内への降下火砕物の侵入を防止するよう手順等を整備し,必要時には的確に実施する。降灰時
又は降灰後における換気空調設備のフィルタの取替・清掃作業,水循環系のストレーナ清掃作業(捕獲した降下火砕物の除去),碍子及びガス絶縁開閉装置の絶縁部の洗浄作業,
建屋及び構築物等における降下火砕物の除去作業
を,あらかじめ手順等を整備し,必要時に的確に実施する。
4
非常用ディーゼル発電機

(1)

参加人の本件原子炉設置変更許可申請時における降下火砕物の影響評価の
概要は,次のとおりであった。
非常用ディーゼル発電機の吸気系統については,吸気消音器が設置されており,
吸気消音機に付属するフィルタ
(粒径120μm以上において約90%
捕獲)で比較的大粒径の降下火砕物は捕獲される。また,吸入空気は,吸入消音器下部から吸い込まれる流れとなっており,降下火砕物が吸気フィルタ部分まで到達し難い構造になっている。
万が一,
吸気フィルタが降下火砕物で閉
塞した場合には,
フィルタ交換と清掃を行うことになる。
この吸気フィルタの
閉塞までに要する時間を,降下火砕物の大気中濃度につきアイスランド共和
国南部のエイヤヒャトラ氷河で2010年
(平成22年)
4月に発生した火山
噴火(以下エイヤヒャトラ氷河噴火という。)の地点から約40㎞離れた
ヘイマランド地区における観測値
(24時間観測ピーク値)
である3241μ
g/㎥を用いて試算した結果,
約19.
8時間となった。
このカートリッジ式
吸気フィルタ14枚の交換と清掃は,
複雑な作業が必要ではないことから,

加人は,要員3~5名で約1時間程度の作業を見込んでいる上,非常用ディーゼル発電機は2系統設置しているから,必要に応じて片方の系統を停止してフィルタ交換を行うことが可能である。
また,吸気フィルタに補集されなかった粒径の小さな降下火砕物が非常用ディーゼル発電機の機関内に進入する可能性があるため,参加人は,その侵入等による影響を評価し,
次のとおり,
機器の機能を損なわないことを確認し

た。すなわち,吸気フィルタを通過した降下火砕物は,過給機,空気冷却器に侵入するものの,機器の間隙は非常用ディーゼル発電機の機関内に侵入する降下火砕物の粒度
(十数μm程度)に比べて十分大きい(過給機の狭隘部は2
360μm)ことから,これらの機器が閉塞する可能性はない。また,吸入された降下火砕物は,
空気とともにシリンダ内へ送られ,
大半は排気ガスととも

に外気に放出される。
シリンダライナとピストンリングと間隙
(数μm~十数
μm)
は非常に狭いため,
ここに降下火砕物が入り込むことはほとんどなく,
仮にこの間隙に入り込んでもピストンシリングとシリンダライナとの接触により破砕され,
ピストンリングとシリンダライナとの間に常に流されている潤
滑油とともにクランクケース内へ降下する。降下火砕物は破砕し易く,硬度
が小さい
(モース硬度で5程度)
のに対し,
シリンダライナ及びピストンリン
グはブリネル硬さ230程度の耐摩耗性を有する鋳鉄材であることなどから,降下火砕物による摩耗が生じる可能性は小さく,容易に運転へ影響を及ぼすことはない。
なお,
シリンダ内の圧縮温度は500~600度程度であり,

点が約1000度である降下火砕物は溶融しない。

(2)原子力規制委員会は,降下火砕物の大気中濃度について,従来は観測記録の最大値を用いるという考え方に基づき,ヘイマランド観測値(0.0032
41g/㎥)を設計基準として審査を行った。
しかし,原子力規制委員会は,平成28年電中研報告(富士宝永噴火における横浜(降灰実績16㎝程度)での火山灰濃度のシミュレーション結果が最大100㎎~1000㎎/㎥になるというものである。等を踏まえ,)
同年
10月26日観測記録の最大値を用いるという考え方は維持しつつ,ヘイマランド観測値に代えて,
より保守的な観測値であるセントヘレンズ観測値
(0.
0334g/㎥)
を設計基準とすることとし,
原子力規制庁に対し,
既に設置
変更許可を行った発電用原子炉施設についても,セントヘレンズ観測値を用いて施設の機能に対する影響評価を行うことを事業者に求める相手方を含む
事業者に求めることを指示し,
原子力規制庁は,
同月31日,
参加人設置の川
内原発1,2号炉,関西電力株式会社設置の高浜発電所1~4号炉,四国電力株式会社設置の本件3号機について,セントヘレンズ観測値を用いた影響評価を行うことを各事業者に求め,同年11月,同観測値を基準とした場合の参加人を含む事業者の影響評価を是認した。(甲A118,119)
原子力規制委員会は,降下火砕物の影響評価に関する検討チームなどを設置してさらに検討を重ねた結果,
平成29年9月20日の委員会において,

往最大に基づき策定されたセントヘレンズ観測値に代え,降灰継続時間を24時間と仮定(設計上考慮することとしている降下火砕物の最大層厚が24時間で堆積すると仮定)して平均濃度を算定する手法,又は噴火継続時間を
24時間とした場合の最大濃度を算定する手法,又は噴火継続時間を24時間とした場合の最大濃度を数値シミュレーションにより算定する手法により算定した気中降下火砕物(運用期間中に想定される火山事象により原子力発電所に降下する気中降下火砕物の単位体積当たりの質量で,粒径ごとの気中濃度の総和)を設計及び運用等による安全施設の機能維持が可能か否か
を評価するための基準として用いること等を内容とする規則等の改正がされた。
なお,
同改正においては,既に新規制基準適合性に係る保安規定の変更の
許可を受けている者は,平成30年12月31日までの間はなお従前の例によるとの経過措置が定められた。
参加人は,上記の原子力規制委員会による規則等の改正に対応するための対策を検討実施した結果,平成29年12月,非常用ディーゼル発電機の吸気フィルタについて,
新たに火山灰フィルタを準備した。
火山灰フィルタは,

降灰開始前に非常用ディーゼル発電機の吸気消音器に設置して使用するもので,
火山灰フィルタ本体の内部に複数枚のカートリッジ式フィルタを装着し,塞ぎ板を利用してフィルタ交換中の降下火砕物の流入を防ぎながら,非常用ディーゼル発電機の運転継続中にフィルタを順次交換する仕組みになっている。
また,
高性能フィルタが開発されたことから,これを採用した改良型のカ
ートリッジ式フィルタに変更することとした。
新たな高性能フィルタは,
フィ
ルタの形状を従来の平面型からひだ状に折り込んだブリーツ形状に変更してフィルタの有効面積を増大させるとともに,フィルタの目合いを小さくして捕集能力を向上させたもので,3.1g/㎥の大気中濃度に対して閉塞時間は257分程度に向上することになった。
フィルタの捕集率は,
従前のフィル

タでは,粒径120μm以上の降下火砕物に対して90%以上であったところ,新たな高性能フィルタでは性能把握試験において,川内原発の敷地で想定する堆積厚さ15㎝の降灰に対応する粒径分布(粒径120μmの降灰に対応する粒径分布(粒径120μm以下を含む。))の火山灰に対して99.9%との結果が得られた。
これにより,
1系統については平成30年3月に変

更を完了し,
残る1系統についても同年7月に変更を完了したことにより,

加人は,川内原発の敷地で想定される33.4g/㎥の降下火砕物の大気中濃度に対しても,非常用ディーゼル発電機2系統を同時に機能維持できるよう対策を完了した。
(3)

参加人が作成した
実用発電用原子炉に係る発電用原子炉設置者の重大事故の発生及び拡大の防止に必要な措置を実施するために必要な技術的能力に係る審査基準に係る適合状況説明資料(甲B51)には,粒径の小さい浮遊性粒子については吸い込む可能性があるが,その大気中の濃度は想定が困難である。なお,浮遊性粒子の吸い込みを考慮した場合,浮遊性粒子は降下速度が比較的遅いことや,粒径が小さいことで目詰まりし難いことから,フィルタは容易には閉塞しないと考えられる。とする記載がある。以上
別紙8
主要文献一覧表(ただし,網羅的ではない。)
書証番号

著者

題名

発行年月日

甲A11

石原和弘

原発と火山噴火予知

平成27年

甲A123

原子力規制庁,原子

原子力発電所の火山影響評価

平成25年

力安全基盤機構

ガイド(案)の概要

甲A139

町田洋

陳述書

平成28年

甲A141

原子力規制庁

火山影響評価に係る技術的知

平成28年

安全

技術管理官
甲A204
(D10

独立行政法人

見の整備
産業

技術総合研究所

平成26年度火山影響評価に
係る知見の整備

平成27年

成果報告書

1)
甲A205

国立研究開発法人産

平成27年度原子力施設等防

(D14

業技術総合研究所

災対策等委託費(火山影響評

0)

平成28年

価に係る技術的知見の整備)
成果報告書

甲A236

巽好幸

巨大噴火と原子力発電所:原

平成30年

子力規制庁の見解を検証する
甲B4

小山真人

原子力発電所の新規制基平成27年準とその適合性審査におけ
る火山影響評価の問題点
甲B5

小山真人

原子力発電所の新規制基平成27年準とその適合性審査におけ
る火山影響評価の問題点
甲B8

岩波書店

中田節也氏に聞く:川内原発

平成27年

差止仮処分決定をめぐって
甲B9

小山真人,藤井敏嗣

火山学者緊急アンケート-川

ほか

平成27年

内原発差止仮処分決定の記載
に関連して

甲B11

藤井敏嗣

東洋経済ONLINE規制平成26年委の火山リスク認識には誤りがある川内原発審査の問題④
甲B13

中田節也

大噴火の溶岩流・火砕流はど

平成26年

れほど広まるか
甲B14

高橋正樹

東洋経済ONLINE火山平成26年影響評価は科学的とはいえない川内原発審査の問題②甲B15

高橋正樹

超巨大噴火は予知できるか

平成26年

甲B23

小屋口剛博

陳述書

平成28年

甲B25

須藤靖明

陳述書

平成27年

甲B27

町田洋

陳述書

平成28年

甲B38

須藤靖明・甫守一樹

火山影響評価の問

平成28年

川内原発

題点
甲B49

木下紀正

陳述書

平成28年

甲B53

小山真人

原子力規制―火山影響評価ガ

平成27年

イドの問題点から考える(講
演の文字起こし)
甲D20

金子克哉

阿蘇4巨大噴火のマグマ発生
と噴火推移

平成26年

甲D23

下司信夫

大規模火砕流噴火と陥没カル

平成28年

デラ:その噴火準備と噴火過

甲D26

京都大学防災研究所

平成25年度年次報告

平成25年

(担当:井口正人)
甲B29

篠原宏志ほか

火山研究解説集:薩摩硫黄島

平成20年

甲D33

須藤靖明ほか

阿蘇火山の地盤変動とマグマ

平成18年

溜まり-長期間の変動と圧力
源の位置-
甲D43

中山光弘ほか

支笏カルデラ形成噴火に先行

平成27年

する噴火は存在するか
甲D59

小屋口剛博

小林名誉教授の報告書につい

平成29年


甲D60

町田洋

陳述書(巨大噴火の前兆に関

平成29年

する小林報告書への私見)
甲D61

匿名

小林哲夫氏カルデラ噴火の平成29年前兆現象に関する地質学的研究に関するコメント甲D89

須藤靖明

陳述書

平成30年

甲D92

津久井雅志・荒牧重

姶良火砕噴火のマグマ溜り

平成2年


甲D118

藤井敏嗣

季刊

消防防災の科学

平成22年

3.火山噴火予知について
甲D125

藤田英輔

火山噴火予知研究の現状と今

平成21年

後の課題
甲D148

長岡優ほか

地震波干渉法による霧島山の

平成30年

VSV,VSH構造
甲D152
甲D157

三ケ田均
Jacob

B.L

owenstern
et

al.

意見書
Probing

井口正人ほか

Magma

Reservoirs
Improve
no

甲D158

平成30年
平成30年

To

Volca

Forecasts

桜島昭和火口噴火開始以降の

平成25年

GPS観測-2012~20
13年-
甲D159

火山噴火予知連絡会

中長期的な噴火の可能性の評

の1・2

火山活動評価検討会

平成21年

価について-監視・観測体制
の充実等の必要な火山選定-

甲D162

国立研究開発法人
産業技術総合研究所

平成28年度原子力規制庁委
託成果報告書

平成29年

火山影響評価

に係る技術知見の整備
甲D163

中山光弘ほか

桜島火山の噴火活動様式とマ

平成23年

グマ供給系の20世紀からの
変化とその意義
甲D164

森脇広

テフラと古環境の編年に基づ

平成24年

く巨大カルデラの第四紀地殻
変動の解明
甲D172

永石良太ほか

阿蘇・草千里ヶ浜火山のマグ
マだまりの温度圧力条件:鉱

平成29年

物・メルト包有物組成による
推定
甲D191

Hiroshi

M
The

oriwaki

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al.

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dev

a
平成28年

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and

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Japan,
30,000

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ca

l.
甲D193

IAEA

IAEA―TECDOC-1

平成28年

795
乙D5

火山工学入門

土木学会地盤工学委員会火山

平成21年

工学研究小委員会編集
乙D10

安田敦ほか

姶良火砕噴火のマグマ溜まり

(丙B3

平成27年

深度

7)
乙D11

東宮昭彦

マグマ溜まり:噴火準備過程
と噴火開始条件

平成28年

乙D16の

長岡信治

THE

LATE

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1・2

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(丙B2

LAYERS

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昭和63年

9)

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CALDERA

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KYUSHU,

JAPAN
乙D25

小林哲夫

桜島No.20(鹿児島大学

平成28年

文理学部・理学部地学科・地
球コース
乙D27

小林哲夫ほか

同窓会誌)

大規模カルデラ噴火の前兆現

(丙B3

象-鬼界カルデラと姶良カル

0)

平成22年

デラ

乙D29

山崎孝治

天気の科学(5)ジェット気

平成26年


乙D45

小林哲夫

カルデラ噴火の前兆現象に関

平成29年

する地質学的研究
乙D52

大倉敬宏

測地学的手法による火山活動

平成29年

の観測について
乙D53

井口正人

地震波トモグラフィーによる
姶良カルデラ周辺の地震波速
度構造調査結果及び姶良カル
デラの状態について

平成30年

乙D54の
1・2

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安部祐希

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乙D56の

平成28年

cal

Japan

レシーバーファンクション解

平成29年

析による日本の九州にある阿
蘇カルデラ下の地殻内の低速
度領域

乙D84

斎藤元治

火山ガスと噴火メカニズムに

平成30年

ついて
乙D85

下司信夫

カルデラを形成するマグマ溜

平成30年

まりの定置条件
乙D101

山﨑晴雄

意見書

平成30年

乙D104

及川輝樹

降下火砕物と等層厚線図の書

平成30年

き方
乙D105

三好雅也

中部九州阿蘇火山におけるマ
グマ供給系の変遷:岩石・地
球科学的研究による制約

平成30年

乙D118

Keigo

Yam

amoto

et

al.

Vertical
nd

Grou

平成24年

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Associated

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Activity

of

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1996

during

-2010
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by

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Precise

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L
Surve

ys
丙B18

町田洋,新井房夫

新編火山灰アトラス〔日本列

平成23年

島とその周辺〕
丙B23

前野深

カルデラとは何か:鬼界大噴

平成26年

火を例に
丙B27

中田節也

火山噴火の規則性とその意味

平成26年

丙B28

小林哲夫・矢野徹

南九州の地質・地質構造と温

平成19年


丙B29

乙D16と同じ

丙B30

小林哲夫

ほか

大規模カルデラ噴火の前兆現

平成22年

象-鬼界カルデラと姶良カル
デラ-
丙B31

荒牧重雄

カルデラ噴火の地学的意味

平成15年

丙B32

鍵山恒臣編

地球科学の新展開3

マグマ

平成15年

ダイナミクスと火山噴火
丙B33

東宮昭彦

実験岩石学的手法で求めるマ

平成9年

グマ溜まりの深さ
丙B34
(乙D17
の1)

Oliver

Ro

che,Timot
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Dru

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Onset
era

of

cald

平成13年

collapse

during
rite

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eruption
s
丙B35

篠原宏志ほか

火山研究解説集:薩摩硫黄島

平成20年

丙B36

高橋正樹

超巨大噴火のマグマ溜りに関

平成26年

する最近の研究活動
丙B37

安田敦,藤井敏嗣

姶良カルデラ噴火のマグマ溜

平成26年

まり深度
丙B38

Druitt,T.
H
et

al.

Decadal
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to

of

magma

reservoir

era

平成24年

timesca

transfer

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and
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cald

volcano

丙B42

小林哲夫ほか

桜島火山地質図(第2版)

平成25年

丙B43

小林哲夫,溜池俊彦

桜島火山の噴火史と火山災害

平成14年

の歴史
丙B45

井口正人ほか

桜島昭和火口噴火開始以降の

平成23年

GPS観測

2010~20
11年

丙B49

山本圭吾ほか

水準測量によって測定された

平成25年

桜島火山周辺域の地盤上下変
動-2012年11月および
12月測量の結果-
丙B53

鍵山恒臣ほか

霧島火山群の構造とマグマ供

平成9年

給系
丙B54

Goto,T.et

The

al.

ty

resistivi
structure

around

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are

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earthquake

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hu

平成9年

in

Kyus

district,J
apan

丙B58

西潔ほか

南九州の3次元地震波速度構

平成13年


丙B62

前野深ほか

鬼界カルデラにおけるアカホ

平成13年

ヤ噴火以降の火山活動史
丙B63

井口正人ほか

鬼界カルデラの地番変動

平成14年

丙B70

三好雅也ほか

阿蘇カルデラ形成後に活動し

平成17年

た多様なマグマとそれらの成
因関係について

丙B71

Sudo,
ong

Y.K

L.

S.

L
Three-dimensi
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seismic

velocity
cture
Aso

平成13年

stru

beneath

Volcano,K

yushu,Japan
丙B75

井口正人

九州の火山における火山噴火

平成26年

予知と災害予測-インドネシ
アの火山噴火からのフィード
バック
丙B119

吉田武義ほか

現代地球科学入門シリーズ7

平成29年

火山学
丙B120

荒牧重雄

カルデラ噴火の地学的意味

平成15年

丙B123

関口悠子ほか

姶良カルデラ火山に見られる

平成26年

3階のマグマ活動サイクル
丙B124

鍵山恒臣

火山観測から見た霧島火山群

平成15年

と加久藤カルデラ
丙B127

三好雅也

研究報告6カルデラ火山地域

平成24年

における大規模噴火再発の可
能性評価
丙B141

榊原正幸

意見書

平成30年

丙B142

Brittain

伊方発電所3号機の運転期間

平成30年

E.Hill

中における阿蘇4タイプの超
巨大噴火の可能性に関する意
見書

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