判例検索β > 平成30年(わ)第1654号
建物明渡請求事件
事件番号平成30(わ)1654
事件名建物明渡請求事件
裁判年月日令和元年7月12日
法廷名神戸地方裁判所
裁判日:西暦2019-07-12
情報公開日2019-07-29 12:00:10
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令和元年7月12日判決言渡
平成30

第1654号

口頭弁論終結日

同日原本領収

裁判所書記官

建物明渡請求事件

令和元年5月8日
判主決文1
原告の請求をいずれも棄却する。

2
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由

第1

請求
被告は,原告に対し,別紙物件目録記載の各区画を明け渡せ。

第2

事案の概要等
本件は,原告が,被告に対し,別紙物件目録記載の各建物区画(以下本件各区画という。)を賃貸していたところ,その賃貸借契約は,平成30年3月31日,契約上の期間満了により終了したと主張するともに,仮に,同契約に借地借家法の適用があるとしても更新拒絶をしたことにより同日終了したと
主張して,賃貸借契約の終了による目的物返還請求権に基づき,本件各区画の明渡しを求める事案である。
1
前提事実(争いのない事実のほかは,以下の各項に掲記した証拠及び弁論の全趣旨によって認めることができる。)



当事者等
原告は,神戸市立医療センター西市民病院(以下西市民病院という。)等を運営する地方独立行政法人である。
被告は,西市民病院地下1階において売店等を運営している株式会社である。



本件区画等

一棟の建物
別紙物件目録記載の一棟の建物(以下本件建物という。)は,地下2階付き11階建の病院であり,西市民病院の病棟等として使用されている。
原告は,平成21年4月1日以降,本件建物を所有している。(弁論の全趣旨)


本件各区画の状況
本件各区画は,いずれも本件建物内に所在し,それぞれの位置,形状,区画数,面積及びその周辺の状況は,別紙物件目録記載のとおりである(甲1,2)。
本件各区画のうち,地下1階店舗部分合計8.07㎡(以下売店部分という。)の状況は,別紙1のとおりである。すなわち,売店部分は,いずれも三面を壁に囲まれ,その他の一面の開口部全面に開閉式シャッターが設置されている。
営業時間中の売店部分では,棚上に食品,書籍及び日用品等が陳列されているほか,冷蔵庫内に飲料等が陳列され,従業員による対面販売が
されている。(甲6,18)
本件各区画のうち,地下1階及び地上1階の各自動販売機設置場所部分6.4㎡(1台当たり0.8㎡の8台分。以下自販機部分とい
う。)の状況は,別紙2のとおりである(甲4)。
本件各区画のうち,公衆電話設置場所部分合計6.4㎡(1台当たり
0.64㎡の10台分。以下電話部分という。)の状況は,別紙3のとおりである(甲5)。


賃貸借契約の締結

本件賃貸借契約1
原告は,平成29年3月31日,被告に対し,本件各区画のうち売店部分及び自販機部分を,1通の同日付賃貸借契約書により,以下の条件で貸し渡した(以下その契約を便宜上本件賃貸借契約1という。ただし,これが1個の契約と評価されるべきか,上記各部分に応じた2個の契約と評価されるべきかは争いがある。甲1)。
期間
使用目的

平成29年4月1日から平成30年3月31日まで
職員及び来院者のための売店
自動販売機8台の設置

賃料
その他

月額2万9800円
原告は,公用,公共用その他必要とするときは,契約を解除
することができる(9条)。
原告は,売店部分及び自販機部分について随時立入検査を

し,資料の提出又は報告を求め,その他維持使用に関し指示
することができる(14条)。

本件賃貸借契約2
原告は,平成29年3月31日,被告に対し,本件各区画のうち電話部分を,1通の同日付賃貸借契約書により,下記条件で貸し渡した(以下,
その契約を本件賃貸借契約2といい,本件賃貸借契約1と併せて便宜上本件各賃貸借契約という。ただし,本件各賃貸借契約が1個の契約と評価されるべきか3個の契約と評価されるべきかは争いがある。甲2)。期間
使用目的

平成29年4月1日から平成30年3月31日まで
職員及び来院者のための公衆電話10台の設置(1台当たり
0.64㎡)

賃料
その他

月額2160円
前記アその他欄と同じ。

更新拒絶通知
原告は,平成29年9月22日頃,被告に対し,本件各賃貸借契約の更新を拒絶する旨を1通の書面により通知した(以下本件更新拒絶という。)。
同書面には,更新拒絶理由として,西市民病院の赤字解消に向けた収益改善並びに老朽化した食堂部分のリニューアル及びコンビニエンスストアの設置等による患者サービスの向上と職員の福利厚生の充実のため,北館地下1階フロアを全面改修することとした旨記載されていた。(乙3)

2
争点及び当事者の主張


本件各賃貸借契約が借地借家法26条1項等の適用を受ける建物の賃貸借であるといえるか
【被告の主張】
下記アのとおり本件各区画のうち少なくとも売店部分が借地借家法の適用
のある建物に当たり,かつ,下記イのとおり本件各賃貸借契約は1個の建物の賃貸借であるというべきであるから,本件各賃貸借契約全部について借地借家法の適用があるというべきである。

売店部分が借地借家法の適用を受ける建物と評価されるべきであること

売店部分は,三面を壁に囲まれ,残り一面にシャッターが設置されており,営業時間外ではシャッターを下ろし施錠している。売店部分の床面積は8.07㎡であり売店として利用するに十分な規模である。
被告は,売店部分の棚配置等並びに売店及び自動販売機で販売する商品と価格を自由に決定している。
よって,本件建物のうち少なくとも売店部分は,独占的排他的支配が可能な構造・規模であり,現に被告はこれを独占的排他的に支配しているから,借地借家法の適用のある建物に当たる。

本件各賃貸借契約が1個の賃貸借契約であること
以下の事情等によれば,本件各賃貸借契約は1個の賃貸借契約であるというべきである。
被告は,毎年度,原告との間で,本件各区画すべての賃貸借契約を1度に締結してきた。本件各賃貸借契約の2通の契約書は,原告が被告に2通を一度に送付し,被告が押印した上で原告へ返送したものである。本件賃貸借契約1は1通の契約書で締結された。本件賃貸借契約2は,西市民病院公衆電話運営要綱を契約書に添付する技術的必要性があ
ったために,別個の契約書を作成したにすぎない。
なお,賃料の内訳に関する合意は否認する。これは本件各賃貸借契約の契約書に記載されておらず合意内容になっていない。
本件各区画は,いずれも同一建物内にあり,その多くが地下1階に存在するなど,場所的に近接している。被告は,売店と自動販売機とで飲
料の種類を変え,売店では飲料以外を多く陳列し,公衆電話での利用を前提に売店でテレフォンカードを販売するなどしており,被告による売店,自動販売機及び公衆電話による営業は,密接に関連し,相互に補完し合うものである。すなわち,被告は本件各区画を一体のものとして利用している。

なお,原告は,平成30年3月頃,本件各区画を除く西市民病院内の売店の運営並びに自動販売機及び公衆電話の設置を行う者を公募した際,借地借家法38条に規定する定期建物賃貸借契約を締結するとしていた。
【原告の主張】
下記アのとおり本件各区画は借地借家法の適用される建物に当たらず,かつ,下記イのとおり本件各賃貸借契約は別個の契約であるから,本件各賃貸借契約は,いずれも借地借家法の適用のある建物の賃貸借に当たらないというべきである。


本件各区画が借地借家法の適用のある建物に当たらないこと
以下のとおり,売店部分,自販機部分及び電話部分は,いずれも独占的排他的支配を可能ならしめる構造があるとはいえず,それぞれ借地借家法の適用のある建物とはいえない。
売店部分
売店部分は,壁及びシャッターで区画されているものの,その売店から直接外部に出入りすることのできる通用口がなく,外部と往来するた
めには西市民病院の出入口を通る必要がある。
売店部分は,本件賃貸借契約1の定めにより,職員と来院者のための売店(院内の厚生施設)として運営しなければならず,原告において,随時立入検査等をできるほか,公共用その他原告が必要とする場合は本件賃貸借契約1を解除することができる。すなわち,本件賃貸借契約1
により,売店部分の使用について原告による管理が予定されており,被告による使用は制限的である。
後記⑵【原告の主張】ア記載のとおり,被告は,平成21年3月までは神戸市から行政財産の使用許可を得て本件各区画を使用していた経緯があり,その後の本件各賃貸借契約についても公共目的が優先する。
以上の事情によれば,売店部分は,被告に独占的排他的支配を可能ならしめる構造があるとはいえない。
自販機部分
自販機部分は,西市民病院内の通路にあり,障壁等により他の部分と区画されてはいない。

電話部分
電話部分は,西市民病院内の通路にあり,障壁等により他の部分と区画されてはいない。

本件各賃貸借契約が別個(3個)の賃貸借契約であること
本件賃貸借契約1と本件賃貸借契約2の契約書は別個に作成された。売店部分,自販機部分及び電話部分の各区画は,物理的に一体でなく,他の区画の付属施設でもなく,他の区画を利用するに当たり欠くことのできない区画でもない。
本件賃貸借契約1の賃料額は,地方独立行政法人神戸市民病院機構固定資産貸付要綱(以下貸付要綱という。)に基づいて売店部分と自販機部分とに区別して算出された上,その算出根拠を記載した書面(甲3)が
被告にも交付され共通認識となっていた。被告は,貸付要綱の規定による契約条件に従うことを条件として原告から本件各区画の使用許可を受けてきたのであるから,上記賃料額は原告と被告との間で合意されていた。したがって,本件各賃貸借契約は,売店部分,自販機部分及び電話部分の3区分に応じた3個の賃貸借契約であるというべきである。



本件更新拒絶に正当の事由(借地借家法28条)があるといえるか
【原告の主張】

本件建物はもともと神戸市が所有する行政財産であり,被告は,平成21年3月31日まで,神戸市から行政財産の使用許可を得て本件各区画を使用していた。この場合,地方自治法の規定により借地借家法は適用され
ず,公共用に供するために必要を生じたときは使用許可を取り消すことができるなど,公共の目的が常に優先していた。
西市民病院は,同年4月1日に神戸市から原告へと移管されて公立病院ではなくなったものの,神戸市が間接的に運営している。したがって,本件各区画の使用について,質の高い医療を提供するという公共の目的が常
に優先されなければならないことは従前と変わりがない。貸付要綱にもこのことに沿う規定があるし,本件各賃貸借契約の内容も,かつての行政財産の使用許可において条件とされていた内容と同じである。すなわち,本件各区画の使用については公共の目的が常に優先し,被告もこのことを前提として使用していた。


西市民病院は平成29年度において約2億6208万円の赤字であり,効率的病院運営のための取組が必要であった上,患者からコンビニエンスストア設置の要望があった。
このため,原告は,職場環境の改善及び患者の療養環境の利便性向上を目的として,西市民病院の北館地下1階にある病院利用者のための厚生施設設置場所を一体的にリニューアルし,イートインコーナーを併設した売
店を設置しようとしたのであって,そのための本件更新拒絶は,効率的病院運営に資するのみならず,質の高い医療を提供するという公共目的に沿うものである。

したがって,本件更新拒絶には正当な事由がある。
なお,立退料の支払提示はしない。

【被告の主張】
以下のとおり本件更新拒絶には正当の事由がないから,本件各賃貸借契約は平成30年3月31日以降も法定更新されたというべきである。ア
被告が本件各区画を使用する必要性
被告は本件各区画で売店等を営んでおり,その売上高は,被告の年間売
上高の8割を超える。本件各区画の使用継続ができない場合,被告は事業を継続できないおそれもある。

原告に本件各区画を使用する必要性がないこと
本件建物内の地下1階部分の売店等は,西市民病院の付帯的設備にすぎず,これを全面改修しても西市民病院の収益改善にはつながらない。そも
そも,原告の前記主張は,原告自身が本件各区画の使用を必要とする事情には該当しない。

交渉経緯
被告は,平成10年頃から本件各区画において売店等を営んでおり,そ
の使用期間は20年の長期にわたる。しかるに,原告は,平成29年7月,被告に対して何ら説明を行うことなく,本件各賃貸借契約を同年9月末で終了させることを前提としたテナント募集手続を開始しており,その対応は不誠実である。
第3

当裁判所の判断

1
認定事実
争いのない事実のほか,前記前提事実,以下に掲記する証拠及び弁論の全趣
旨によれば,以下の事実を認めることができる。


貸付要綱の規定等

貸付要綱には,要旨,次の定めがある(甲14)。

固定資産は,その用途又は目的を妨げない限度において,当該固定資産
を利用する者のため,当該固定資産の一部に食堂,売店その他の厚生施設を設けるとき(その他の列挙事由省略)に限り,貸し付けることができる(2条)。
固定資産の貸付料の算出方法は,不動産の価額,面積割合及び係数(1000分の5)並びに償却費等を基礎とした算式により計算した額を月額
の基準とし,かつ収益性及び立地条件等を考慮して決定する(6条2項)。イ
昭和55年3月15日付の神戸市理財局長名義の書面には,建物内に自動販売機を設置するために行政財産の目的外使用許可をする場合におけるその使用料を,販売機1台当たり月額2200円とする旨記載されている(甲21)。



本件各賃貸借契約の賃料額に関する資料
本件賃貸借契約1の月額賃料額の算出過程を記載した書面には,前記⑴記載の基準ないし計算過程に沿って,売店部分の月額使用料につき,土地相当額を1843円とし,建物相当額を1万1284円とした旨,自販機部分に
つき,単価2200円と設置台数等を考慮して1万6632円とした旨,以上の合計額に端数処理をした結果が2万9800円である旨の記載がある(甲3)。


本件各賃貸借契約の締結方法
原告と被告は,本件賃貸借契約1及び本件賃貸借契約2の締結手続を一度の機会に行った(甲1,2,乙12,弁論の全趣旨)。



西市民病院の概要及び運営経過等

西市民病院は,20の診療科及び約350床を備え,救急医療を含む地域医療を提供する中核病院である。同院には,平成30年当時約700人余りの職員(委託業務職員を除く)が勤務し,平成29年度は,延べ約20万人の外来患者及び延べ約11万人の入院患者を受け入れていた。

神戸市は,平成21年3月31日まで,本件建物を所有し,西市民病院を運営していた。
被告は,平成10年頃以降,神戸市から売店部分を賃借して売店を営業していた。
原告は,平成21年4月1日,本件建物の所有権及び西市民病院の運営等を神戸市から承継した。

(争いのない事実のほか,甲8,15[枝番を含む。以下同じ。],22,乙1,12)


原告による西市民病院北館地下1階のリニューアル計画等
平成29年度における西市民病院の経常損益は,約2億6208万円の赤
字であった(甲13の3)。
原告は,平成29年頃,西市民病院の食堂事業者の事業撤退を契機に,イートインコーナーを併設した売店を設置すること等を内容とする北館地下1階の一体的リニューアル計画を立案した。
原告は,平成30年初め頃,本件各区画以外の建物部分に係る西市民病院
内の売店(北館地下1階)運営並びに自動販売機及び公衆電話の設置を基本業務内容として,その運営事業者を公募した。原告は,同公募において,院内既設の公衆電話10台の運営を継続すること等を契約の条件とするなど,上記各基本業務内容を同一事業者が営業することを前提とし,運営事業者と締結する契約種別として借地借家法38条に規定する定期建物賃貸借契約を予定していた。
また,その公募事業の営業に当たり,当面の間既存店(自動販売機を含
む。)と営業が競合する可能性があることが仕様書に記載されていた。同公募当時の原告の予定では,平成30年4月頃にその解体撤去工事を行い,同年9月頃までにリニューアル工事を完成するスケジュールであった。(甲19,22,乙1,2)


立退料の不提示
原告は,本件訴訟上,被告に対して立退料の提示をしておらず,相当額を支払う意向もない(弁論の全趣旨)。

2
争点⑴(本件各賃貸借契約が建物の賃貸借といえるか)について⑴

本件各区画が借地借家法上の建物といえるか
建物の一部であっても,障壁その他によって他の部分と区画され,独占的
排他的支配が可能な構造・規模を有するものは,借地借家法26条1項にいう建物であると解すべきである(最高裁判所昭和42年6月2日第二小法廷判決・民集21巻6号1433頁参照)。

前提事実によれば,自販機部分及び電話部分は,いずれも西市民病院内の通路にあり,障壁等により他の部分と区画されていないから,独占的支
配が可能な構造・規模を有するとはいえず,建物には該当しない。イ
前提事実によれば,売店部分は,いずれもその三面を壁で区画され,残り一面に開閉式シャッターが設置されており,同シャッターを閉めることにより他の部分と明確に区画される構造である。加えて,売店部分の床面
積は合計8.07㎡であることからすれば,売店部分は,独占的排他的支配が可能な構造・規模を備えている。
したがって,売店部分は建物に当たるというべきである。
これに対し,原告は,売店部分は直接外部に出入りすることのできる通用口がないため建物に当たらない旨主張するが,前提事実によれば,売店部分は,西市民病院の関係者及び患者等多数人が通行する通路により外部と通じていることが認められるから,前記判断を覆さない。

原告は,売店部分は,本件賃貸借契約1の定め等により,使用目的が売店として特定されていること,原告に立入検査権があること,原告の公共目的が優先されるべきこと等を指摘する。しかしながら,建物に該当するか否かは,前記のとおり,独占的排他的支配が可能な構造・規模を備えているか否かという客観的事情を中心として判断されるべきであるか
ら,原告の主張は前記判断を左右しない。


本件各賃貸借契約が一体の契約として建物の賃貸借であるといえるかア
前提事実によれば,本件各区画はいずれも本件建物内にあり,そのうち売店部分は,本件各区画の中にあって相対的にまとまった面積を占めてい
るほか,その至近に5台分の自販機部分が存在する。このような事情等に照らすと,本件各区画相互の関係は,一般にみられるような,店舗とその店舗外の自動販売機設置場所及び公衆電話機設置場所との関係に類似するということができる。
前提事実のとおり,売店部分及び自販機部分についての本件賃貸借契約
1は1通の賃貸借契約書に記載されている。前提事実,前記認定事実⑶及び証拠(甲2)によれば,電話部分に係る本件賃貸借契約2は,本件賃貸借契約1に係る契約書とは別の契約書により締結されているものの,その条項は,公衆電話の運営に特有のものを除き本件賃貸借契約1と基本的に同一である上,本件各賃貸借契約の締結手続は1度の機会に行われてい
る。
一般的に,同一建物内の売店と自動販売機とでは,提供商品の構成を調整するなどの営業内容の関連性があり得るほか,売店,自動販売機及び公衆電話相互間についても,売店の従業員が自動販売機や電話機の保守管理を行うといった管理上の関連性等があることが想定される。本件各賃貸借契約が同一機会に締結されたことなどからすると,原告と被告との間においても,本件各区画間のこのような関連性を念頭において本件各賃貸借契
約が締結されたとみるのが合理的である。
さらに,前記認定事実⑸によれば,原告は,平成30年初め頃,本件各区画以外の建物部分に係る西市民病院内の売店運営並びに自動販売機及び公衆電話の設置を基本業務内容とする運営事業者を公募した際,院内既設の公衆電話10台の運営を継続すること等を契約の条件とするなど,上記
各基本業務内容を同一事業者が営業することを前提としていたほか,運営事業者と締結する契約種別として借地借家法38条に規定する定期建物賃貸借契約を予定していた。

以上のような本件各区画の位置,規模及び関連性,本件各賃貸借契約の内容及び契約締結状況並びに本件各賃貸借契約と類似する契約の内容等を
総合すると,原告と被告との間では,被告が本件各賃貸借契約を一括して締結することが前提条件となっており,しかも,売店部分は,本件各賃貸借契約における重要部分であったということができるから,本件各賃貸借契約は,一体の契約として建物の賃貸借に当たるというべきである。ウ
これに対し,前記認定事実⑵によれば,本件賃貸借契約1の賃料額を定めるに当たり,売店部分と自販機部分の内訳を算出したことが記載された書面が契約書とは別に作成されていたことが認められ,原告は,このことを論拠として売店部分と自販機部分の賃貸借契約が別個のものであると主張する。

しかしながら,前提事実のとおり,本件賃貸借契約1に係る契約書にはその合計賃料額のみが記載されており,上記内訳は貸付要綱等の原告の内規による算出過程を記載したにすぎないというべきであるから,上記事情をもって直ちに上記各部分の契約が別個であったということはできない。原告は,本件各区画は,互いに他の区画の付属施設でもなく,欠くことのできない区画でもないと主張するが,前記アのとおり本件各区画には様々な面での関連性がうかがわれる。

原告のその余の主張を考慮しても,上記イの判断を左右しない。
3
争点⑵(正当事由)について


原告が本件各区画の使用を必要とする事情
前記認定事実⑸のとおり,原告は,西市民病院の赤字経営や食堂事業者の事業撤退を踏まえ,平成29年頃,イートインコーナーを併設した売店を設
置すること等を内容とする北館地下1階の一体的リニューアル計画を立案し,そのリニューアルのために本件更新拒絶をしたものである。
しかしながら,そのリニューアル計画は,本件各区画を医療用設備等へ転換するような西市民病院の中核的業務に関わるものではなく,イートインコーナーを備えた売店への転換等を内容とするものにすぎない上,そのリニュ
ーアルが直ちに医療機関である西市民病院の有意な収益改善につながることは想定しにくい。また,原告の本件各区画における営業継続に配意したリニューアルが不可能であるような事情も認めることができない。
原告が本件各区画を使用する必要性が高いとはいい難い。


被告が本件各区画の使用を必要とする事情等
他方,前記認定事実⑷イによれば,被告は,平成10年頃から本件各区画で売店等を営み,本件各賃貸借契約の期間満了時である平成30年3月31日当時,その使用期間は約20年間の長期にわたっていたから,本件各区画で売店等の営業を継続する必要性は相応に高いというべきである。


正当事由の判断
原告は,かつて神戸市が西市民病院を運営してきた経緯や,その後も神戸市がその運営に間接的に関与していること等を様々に指摘して,本件各区画の使用について公共目的が優先されるべき旨主張する。
しかしながら,地方自治法上の目的外使用許可に基づく法律関係と,本件各賃貸借契約による法律関係とは当然異なるものである。本件各賃貸借契約が目的外使用許可当時の条件と同様の内容を合意したものであることを考慮
しても,借地借家法上の正当事由の判断に当たり,原告側の使用の必要性が常に優先するということはできない。原告の主張する公共目的の内実は,前記のとおり西市民病院内の付随的設備である売店等のリニューアルにすぎないのであって,その必要性を殊更に重視して正当事由の有無を判断することは相当でないというべきである。

そして,原告が本件各区画を使用する必要性が高いとはいえない一方,被告がこれを使用する必要性は相応に高いことのほか,本件各区画が改修を必要とするほど老朽化していたと認めることはできないこと(前提事実⑵イ参照),原告が本件訴訟上被告に対して立退料の支払提示をしていないことなどからすると,本件更新拒絶には,正当の事由があると認めることはできな
い。
よって,本件更新拒絶は,その効力を生じない。
4
結論
以上によれば,原告の請求は理由がないから棄却することとして,主文のと
おり判決する。
神戸地方裁判所第2民事部

裁判官

武村重樹
(別紙の添付省略)

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