判例検索β > 平成31年(わ)第1209号
家畜伝染病予防法違反、関税法違反
事件番号平成31(わ)1209
事件名家畜伝染病予防法違反,関税法違反
裁判年月日令和元年6月25日
法廷名大阪地方裁判所
裁判日:西暦2019-06-25
情報公開日2019-07-30 16:00:11
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主文
被告人Aを懲役2年に,被告人Bを懲役1年2月に処する
被告人Bに対し,未決勾留日数中40日をその刑に算入する。
この裁判が確定した日から,被告人両名に対し3年間,それぞれその刑の全部の執行を猶予する。
理由
【罪となるべき事実】
被告人両名は,法定の除外事由がなく,かつ,税関長の許可を受けないで,農林水産大臣が指定する偶蹄類の動物である牛の受精卵及び精液を中華人民共和国に向けて不正に輸出することを企て,共謀の上,平成30年6月29日,大阪市a区bc丁目d岸壁に停泊中の中華人民共和国船籍外国貿易船甲に被告人Bが乗船するに際し,あらかじめ家畜防疫官が行う検査及び輸出検疫証明書の交付を受けるとともに,当該貨物の品名並びに数量及び価格その他必要な事項を税関長に申告し,貨物につき必要な検査を経て,その許可を受けなければならないのに,あらかじめ家畜防疫官が行う検査及び輸出検疫証明書の交付を受けないで,かつ,税関長にその申告をせず,貨物につき必要な検査を経ず,当該許可を受けないで,牛の受精卵を注入したストロー235本及び牛の精液を注入したストロー130本を手荷物として客室に持ち込んで積み込み,本邦から不正に輸出した。
【証拠の標目】省略
【法令の適用】
1
罰条(被告人両名について)


家畜防疫官の検査等を受けないで物を輸出した点

刑法60条,家畜伝染病予防法63条2号,45条1項2号,37条1項1号,同法施行規則53条1項1号,45条4号


税関長の許可を受けないで貨物を輸出した点

刑法60条,関税法111条1項1号,67条2

科刑上一罪の処理(被告人両名について)
刑法54条1項前段,10条(1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから,1罪として重い関税法違反の罪の刑で処断)

3
刑種の選択(被告人両名について)
懲役刑を選択

4
未決勾留日数の算入(被告人Bについて)
刑法21条

5
刑の全部執行猶予(被告人両名について)
刑法25条1項

6
訴訟費用(被告人Bについて)
刑事訴訟法181条1項ただし書(不負担)

【量刑の理由】
本件で,被告人らは,中国人実業家及びその関係者からの依頼に応じて,牛の受精卵及び精液を不正に輸出したものであるが,本件で輸出した牛の受精卵等は相応に多量である上,被告人らは以前から同様の不正輸出を繰り返す中で本件犯行に及んだものであって,常習性も認められる。また,本件の不正輸出に係る牛の受精卵等が,家畜の体内への直接接種やこれによる繁殖を予定するものであることからすれば,本件犯行は輸出先国等への伝染性疾病の伝播を引き起こす危険性が高く,ひいては我が国から輸出される家畜・畜産物等に対する国際的な信用をも失墜させるものといえる。さらに,牛の受精卵等は,輸出先国との間で家畜衛生条件が締結されてなく,家畜防疫官の検査を受けても輸出検疫証明書の交付は受けられず,正規の手続では輸出が不可能なものであるところ,本件がこのような牛の受精卵等を密輸出した事案であることも考慮すると,本件は悪質な犯行であるといわなければならない。
そして,被告人Aは,中国人実業家らから報酬30万円で牛の受精卵等を依頼され,これを不正に輸出することとして,被告人Bを実行役として勧誘し,同被告人に必要な指示をするなど,本件において主導的な役割を果たしている。また,被告人Aは,中国人実業家らの依頼に応じることが本業(肉の輸出等)の商機に繋がるものと考えて本件犯行に及んだというが,そのような犯行動機に酌むべき点は見当たらず,その責任は総じて重い。他方で,被告人Aには,見るべき前科はないこと,本件犯行を認めて反省の弁を述べていること,取引先でもある友人が出廷して被告人の更生に協力する旨述べていることなど,有利な事情も認められる。また,被告人Bは,従属的な立場にあったとはいえ,実行役として本件犯行の遂行において重要かつ不可欠な役割を果たしており,その責任は決して軽視できない。また,被告人Bは,本件に及んだ理由につき,3万円の報酬目当てというよりは,友人である被告人Aの役に立ちたかったなどと述べるが,いずれにせよ本件犯行の動機として,酌むべき点があるとはいえない。他方で,被告人Bについても,これまで前科前歴がないこと,本件犯行を認め,二度と犯罪は行わない旨誓うなど反省の態度を示していることなど,有利な事情が認められる。
そこで,以上の事情を考慮し,被告人両名に対して,その役割等に応じて,それぞれ主文のとおりの懲役刑に処した上,いずれも社会内で更生する機会を与えるため,その刑の全部の執行を猶予するのが相当であると判断した。
(求刑-被告人Aに対して懲役2年6月,被告人Bに対して懲役1年6月)令和元年6月27日
大阪地方裁判所第15刑事部

裁判長裁判官

松田道別
裁判官

小畑和

裁判官

新谷真梨
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