判例検索β > 平成31年(行ケ)第10017号
審決取消請求事件 商標権 行政訴訟
事件番号平成31(行ケ)10017
事件名審決取消請求事件
裁判年月日令和元年7月24日
法廷名知的財産高等裁判所
裁判日:西暦2019-07-24
情報公開日2019-08-07 14:00:25
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令和元年7月24日判決言渡

平成31年(行ケ)第10017号

審決取消請求事件

口頭弁論終結日令和元年6月12日
判原決告
三谷セキサン株式会社

訴訟代理人弁護士

富岡英次同外村玲子
訴訟代理人弁理士

山本典弘同鈴木一永同三井直人被告特
指定代理人

大森友子同薩摩純一同豊田純一主許庁長官文1
原告の請求を棄却する。

2
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由

第1請求
特許庁が不服2016-16797号事件について平成30年12月26日にした審決を取り消す。
第2事案の概要
1
特許庁における手続の経緯等

原告は,平成27年11月11日,別紙の立体商標(以下本願商標という。)について,商品区分第19類(金属製でない建築材料)に属するコンクリート製杭(以下本願指定商品という。)を指定商品として,商標登録出願(商願2015-110645号)をした。
原告は,平成28年8月4日付けで拒絶査定を受けたことから,同年11月9日,不服審判を請求した(不服2016-16797号)。
特許庁は,平成30年12月26日,

本件審判の請求は,成り立たない。

との審決をし,その謄本は,平成31年1月15日,原告に送達された。
原告は,平成31年2月12日,審決の取消しを求めて,本件訴訟を提起した。
2
審決の理由の概要
本願商標は,商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるので商標法3条1項3号に該当し,使用をされた結果需要者が原告の業務に係る商品であることを認識することができるものではないので同条2項には該当しないから,商標登録を受けることができない。

第3原告主張の取消事由
1
商標法3条1項3号に該当するとの判断の誤り
審決は、原告が,本願商標の立体的形状の特徴として挙げる各点がそれぞれ格別に特異なものとは認められず,本願商標の指定商品の取り扱う業界においては,需要者をして,その商品の機能又は美感上の理由による形状又は装飾等と予想し得る範囲のものであることを理由に,本願商標の立体的形状は商品の機能又は美感に資する目的のために採用されたものと認められるとして,本願商標は商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであり,商標法第3条第1項第3号に該当すると判断した(審決4頁7行ないし31行)。

審決の上記判断は,以下のとおり、誤りである。
立体商標の形状の特徴は,その全体と,需要者・取引者の注意を惹く部分との両者を有機的に結合させて判断すべきであり,また,このような判断の結果,形状の特異性が認められる場合には,機能又は美観上の理由による形状又は装飾等と予想し得る範囲であることが明白であると容易に認定できない限り,商標法3条1項3号該当性は否定されるべきである。
本願商標の形状は,①円筒形の軸を備える杭の上端から下端の全面に等間隔に節が配置されるのではなく,下端寄りに等間隔に三箇所のみ節(上部節,中間節,下部節)を有する,②上記三箇所の節は,それぞれ形状が異なっている,③円筒形の軸の径は,杭の下端から中間節までと,中間節より上端で異なっており,前者が後者に比較して細くなっている,④杭の円筒状の軸の内径は全長にわたって同一である,⑤三つの節の外周はいずれも同じであるという特徴を有するが,全体としてみても,需要者・取引者の注意を惹く支持杭先端部付近の形状に着目しても,いずれも,同種の商品にはない特異性を有する。
本願商標の形状が選択されたのは,商品の機能上の優位性のみならず,他社商品との形状上の識別性を重視したものである。また,本願指定商品の性質上,美観上の理由によって商品の形状を選択することは考えられない。このように,本願商標の形状は,特異性を有し,機能又は美観上の理由による形状又は装飾等と予想し得る範囲であることが明白であると容易に認定できる事情も見当たらないから,商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章に当たらない。審決は,一般論として,立体商標に関する商標法3条1項3号の解釈適用に当たって,商品の形状を特定の者に独占させることが,自由競争の不当な制限に当たり公益に反する場合があることを指摘する(審決3頁9行ないし31行)。

しかるに,本願指定商品の取引分野においては,原告ほかの製造販売業者ごとに,独自の形状の杭とこれを使用した工法を組み合わせて国土交通大臣の認定を取得することによって,一種の棲み分けがなされている。このため,本願商標の立体的形状の商標登録により原告に独占権を与えたとしても,自由競争の不当な制限に当たり公益に反するということはない。
2
商標法3条2項に該当しないとの判断の誤り
審決は,審判手続において原告が提出した証拠によっては,本願商標の立体的形状が原告の商標として広く知られて,需要者が原告の業務に係る商品であることを認識できるに至っていると認めることはできない旨判断した。しかし,本願商標を付した基礎杭(商品名BF.Sパイル。以下,原告商品という。)を含む2種類の工法(SUPERニーディング工法及びHybridニーディング工法)は,SUPERニーディング工法が平成12年,Hybridニーディング工法が平成13年にそれぞれ国土交通大臣の認可を取得し,以後平成13年から平成30年までの間に,原告商品は,公共施設,病院,教育機関,物流施設,スポーツ施設等代表的な建造物を含む全国2769箇所の建築現場で累計15万本以上が採用され,211億円以上の売上実績を上げている。
また,原告は,①平成12年から平成30年までの間に,専門雑誌基礎工(毎月発行部数1万2000部)に11回,月刊建築技術(毎月発行部数2万部)に4回,地盤工学会誌(毎月発行部数1万部)に1回,それぞれ商品の立体的形状を大きく目立つように表示した原告商品の広告等を掲載し,②同じ期間内に,原告商品を用いた工法を紹介するカタログとしてSUPERニーディングHybridニーディングBF.Sの3種類を合計7万部以上,全国で配布し,③原告の公式ウェブサイトにおいても,原告商品の立体的形状の表示を,目立つように掲示してきた。このほか,④一般社団法人コンクリートパイル建築技術協会が発行する雑誌COPITA(発行部数は,平成19
年及び平成30年が7000部,それ以外の年が8000部)においても,遅くとも平成18年以降,本願商標を使用した原告商品に関する記事が,毎年掲載されてきた。
これらの結果,著名ないし有力な学者(甲72,73,104~108),大手ゼネコン関係者(甲26,80~98),大手設計事務所等関係者(甲27~31,99~103)から,本願商標を形成する原告商品の形状は,他の商品とは一見して区別し,原告商品であると認識することができると評価されているのである。
被告は,本願商標と実質的に同一と認められる立体的形状の他人の商品が存在すると主張するが,形状の比較を誤っており,失当である。
以上のとおり,原告商品の立体的形状は,他の同種商品にはない特徴的なものであり,かつ,顕著な販売実績を上げるとともに,継続的かつ長期間にわたり,全国的な宣伝広告が行われてきた結果,その形状のみによって自他商品識別力を有するに至っているのであるから,商標法3条2項の要件を充足するに至っているというべきである。
第4被告の反論
1
取消事由1(商標法3条1項3号に該当するとの判断の誤り)に対し
(1)

立体商標に対する商標法3条1項3号の適用について
商品等の形状は,多くの場合,商品等の機能又は美観に資することを目的として採用されるものであり,需要者からもそのように認識されるものであるから,客観的に見て,そのような目的のために採用されたと認められる形状は,特段の事情がない限り,商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として,商標法3条1項3号に該当すると解すべきである。
また,商品等の具体的形状は,当該商品の用途,性質等に基づく制約の下で,通常は,ある程度の選択の幅があるといえるが,そのような幅の中
で選択された形状が特徴を有していたとしても,それが,機能又は美観上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであれば,商標法3条1項3号に該当すると解すべきである。なぜならば,商品等の機能又は美観に資することを目的とする形状は,同種の商品等に関与する者が当該形状を使用することを欲するものであるから,先に商標登録出願したことのみを理由として当該形状を特定の者に独占させることは,公益上の観点から適切ではないからである。
さらに,商品等に,需要者において予測し得ないような斬新な形状が用いられた場合であっても,当該形状が専ら商品等の機能向上の観点から選択されたものであるときは,商標法4条1項18号の趣旨に照らし,同法3条1項3号に該当すると解すべきである。なぜならば,そのような形状が,機能の観点からは特許法又は実用新案法により,美観の観点からは意匠法により独占権が付与されることはあり得るとしても,商標法による保護の対象となり,存続期間の更新を繰り返すことにより半永久的に独占権を保有し続けることができるものとされることは,自由競争の不当な制限に当たり,公益に反するからである。
(2)

本願商標の商標法3条1項3号該当性について
本願商標は,原告が主張するとおりの特徴を有している。
ところで,本願商標の指定商品は第19類コンクリート製杭であり,本願商標の立体形状は,プレボーリング拡大根固め工法に使用される杭の一部であるところ,プレボーリング拡大根固め工法においては,①掘削する,②掘削孔を構造する,③拡大球根部を設ける,④掘削ロッドを引き上げて杭周固定液を注入し,攪拌する,⑤杭を沈殿させる,⑥杭を所定深度に設置するという工程で施工が行われる。そして,この工法で用いられるコンクリート製杭は,地盤の摩擦力を大きくとることや,地中の根固め部との定着を図ること,杭の鉛直支持力に対応した大きな水平耐力
を得ること等を目的として,節部を設けたり,軸の太さを変えたり,異なる軸径を組み合わせる等,杭の機能に資することを目的とした様々な工夫がされている。
本願商標の立体形状の特徴も,一般的形状の節杭が有する形状と予測し得る範囲の形状又は節を設けたコンクリート製杭の機能に資する形状に止まり,需要者において,商品の機能又は美観上の理由による形状と予測し得る範囲のものにすぎない。そうすると,このような形状が特徴を有していたとしても,それは,同種の商品等に関与する者が当該形状を使用することを欲するものであるから,先に商標登録出願をしたことのみを理由として当該形状を特定の者に独占させることは公益上の観点から適切ではないとともに,自他商品識別力を欠くものといえる。
2
取消事由2(商標法3条2項に該当しないとの判断の誤り)に対し原告は,原告製品が平成13年から平成30年にかけて全国2769箇所の建設現場において累計15万本以上,合計211億円以上の売り上げを上げたと主張するが,たとえそれが事実であるとしても,原告商品自体の市場シェアは不明であるから(原告が提出しているのは,コンクリートパイルの会社別生産・出荷・在庫に係る資料に過ぎないから,原告商品のような類型のコンクリート製杭に関するシェアは依然として不明である。),原告商品に対する需要者の認知度を測ることはできない。
原告は,原告商品の紹介記事や広告を掲載した雑誌,カタログ,公式ウェブサイトに関する主張をするが,雑誌及びカタログの頒布された期間,範囲,数量等は不明である上,仮にこれが原告主張のとおりであるとしても,本願商品の指定商品の需要者及び取引者全体の数からみれば多いとはいえない。また,公式ウェブサイトについては閲覧数が不明である。
学者や大手ゼネコン関係者,大手建築事務所関係者の評価に関していうと,学者の意見書である甲72,73は,技術的観点からの原告製品の特徴を述べ
ているのに過ぎず,自他商品識別力という観点からの意見を述べたものではないし,その他の学者の証明書である甲104~108は,定型文書に各人が証明日を書き加えた上で記名押印等をしたものであって,その証明内容は信用性が高いとは言い難い上,自他商品識別力については何ら意見を述べておらず,また,ゼネコン関係者,大手建築事務所関係者の証明書も,定型文書に各人が証明日を書き加えた上で記名押印等したものである上,自他商品識別力という観点からの意見を述べたものではなく,いずれも原告の主張を裏付けるに足りるものとはいい難い。
さらに,ジャパンパイル株式会社のウェブサイト中プレストレスト高強度コンクリート節杭(拡頭中間径タイプ)に表示されているコンクリート製杭(乙7の2),及び株式会社アオモリパイルの工法カタログSUPERニーディングに記載されているコンクリート製杭(甲33の3)は,原告商品と実質的に同一といえるから,原告が,本願使用商品(その形状)を永年の間,他人に使用されることになく,独占的排他的に継続使用した実績を有するということもできない。
そうすると,原告が主張する各種事情を考慮したとしても,本願商標の立体的形状は,使用された結果,本願商標の指定商品の需要者間で,特定の者の業務に係る商品の出所を示すものとして我が国において全国的に認識されるに至ったものとはいえない。したがって,商標法3条2項該当性を否定した審決に誤りはない。
第5
1
当裁判所の判断
取消事由1(商標法3条1項3号に該当するとの判断の誤り)について立体商標に対する商標法3条1項3号の適用について

商品の立体的形状は,多くの場合,商品等に期待される機能をより効果的に発揮させたり,商品等の美観をより優れたものとしたりする等の目的で選択されるものであって,直ちに商品の出所を表示し,自他商品を識別
する標識として用いられるものではない。このように,商品等の製造者・供給者の観点からすれば,商品等の立体的形状は,多くの場合,それ自体において出所表示機能ないし自他商品識別機能を有するもの,すなわち,商標としての機能を果たすものとして採用するものとはいえない。また,商品等の立体的形状を見る需要者・取引者の観点からしても,その立体的形状は,文字,図形,記号等により平面的に表示される標章とは異なり,商品の機能や美観を際立たせるために選択されたものと認識されるのであって,商品等の出所を表示し,自他商品を識別するために選択されたものと認識される場合は多くない。
そうすると,客観的に見て,商品等の機能又は美観に資することを目的として採用されると認められる商品等の形状は,特段の事情のない限り,商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として,商標法3条1項3号に該当する。

また,商品の具体的形状は,当該商品の用途,性質等に基づく制約の下で,ある程度の選択の幅があるといえるが,そのような幅の中で選択された形状が特徴を有していたとしても,それが,機能又は美観上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであれば,商標法3条1項3号に該当すると解すべきである。なぜならば,商品等の機能又は美観に資することを目的とする形状は,同種の商品等に関与する者が当該形状を使用することを欲するものであるから,先に商標出願したことのみを理由として当該形状を特定人に独占使用を認めることは,公益上適当でないからである。本願商標の形状及び同種の杭の形状について


本願商標は,別紙のとおり,下部に3箇所の節部を設け,上から2番目の節部より下部は,上から2番目の節部より上部よりも若干細くした円柱状であって,各節部はそれぞれ若干形状が異なる立体的形状からなる立体商標である。

本願商標の立体的形状には,次のとおりの特徴がある。


3箇所の節は,それぞれ形状が異なっている。



杭の下端から2個目の節までの軸径と,それより上部の軸径が異なり,前者が後者に比較して細くなっている。すなわち,主に下杭として使用される先端の軸径が細くなったものである。



3箇所の節の位置が,軸径が変化する境界部分に1か所,その上部と下部にそれぞれ1か所ずつである。



3つの節の外周は,いずれも同じである。



杭の上端から下端の全面に等間隔に節が配置されるのではなく,下端寄りに等間隔に3箇所のみ節を有する(ただし,等間隔というのは節の上端と下端との間の厚みの中間を基準にして測った場合である。節の厚みが異なっているため,上側の節の下端と下側の節の上端とで挟まれた長さは等しくなく,視覚上は,必ずしも等間隔とはいえない。)。

証拠(甲11,13ないし17,38の2,38の3,乙3ないし11
(各枝番含む))によれば,同種のコンクリート製杭の特徴等について,次の事実を認定できる。
(ア)原告及び同業者が製造販売するコンクリート製杭には,軸径を箇所によって変えた杭と変えない杭,節を設けた杭と設けない杭など,様々な形状の杭が存在し,それらの形状は,各製造販売者が提案する工法に最適な杭として,所望の支持力の発現及び施工性の向上などの目的による設計の結果として選択されている。
(イ)これらの杭の組み合わせによっては,原告商品の立体的形状の特徴のうち,杭の下端に行くに従って軸径が小さくなる点(上記アの②)及び節の配置が視覚上は等間隔でない点(同⑤のかっこ書き)に類似するものも実現し得る(甲13,乙11)。
検討


ところで,上記⑵アに認定した原告商品の立体的形状は,原告が製造販売するBF.Sパイルという名称のコンクリート製杭(原告商品)の形状を表したものであるところ(甲5),原告商品は,原告の提供する杭打ち工法であって国土交通大臣の認定を受けたSUPERニーディング工法及びHybridニーディング工法のgradeBに用いられるものである(甲9,11)。そして,gradeBは,他の形状の杭を用いたgradeAよりも更に大きな支持力を発現する工法であるとされている(甲8の4)。
このことと,上記⑵イに認定したとおり,同種のコンクリート製杭においても,所望の支持力の発現や施工性の向上など機能上の理由から様々な形状の杭が考案されており,原告商品に類似するものも実現可能であることを考慮すると,上記⑵アに記載したとおり原告商品の立体的形状に一定程度の特徴があるとしても,それは,所望の支持力の発現などという機能上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであると認められる。

原告は,原告商品の立体的形状は,自他商品識別力を有するほどに特異な特徴を有していると主張するものと考えられる。
しかしながら,上記⑵で検討したとおり,原告商品の立体的形状には,他のコンクリート製杭と明らかに区別できるほどの顕著な形状的特徴があるとはいえないこと(原告商品の形状には顕著な特徴がみられる旨をいうインダストリアルデザイナーの意見書(甲79)も,かかる評価を左右しない。)や,原告商品の需要者・取引者は一般消費者ではなく,建築基礎工事に携わる設計者及び工事業者等の限られた範囲の者であるため,購入すべき杭の決定を,上記(2)イ(ア)のとおり杭と結び付けられた工法の採用と独立して行うことは想定し難いし,同(イ)のとおり類似の形状の杭も存在する中で,原告商品の形状の特徴が杭の購入の決定に対して与える影響はわずかであると考えられることなどを考慮すると,原告商品の立体的形状が,需要者・取引者が指定商品を購入するか否かを決定する上での標識
とするに足りる程に特徴的であると認めるべき事情があるともいえない。したがって,原告の上記主張は採用することができない。

原告は,本願指定商品の取引分野においては,各製造販売業者が独自の形状の杭とこれを使用した工法を組み合わせて国土交通大臣の認定を取得することによって一種の棲み分けがなされているから,本願商標の立体的形状の商標登録により原告に独占権を与えたとしても自由競争を不当に制限し,公益に反することはない旨主張する。
しかしながら,原告のいう棲み分けは,杭基礎の形状及び工法に関して各事業者が有する技術に裏付けられたものであるから,知的財産権による保護の対象とする場合には,存続期間の定めのある特許権によるべきものである。更新登録によって半永久的に存続し得る商標権によってこれが保護されることになれば,自由競争の不当な制限として公益に反する結果をもたらしかねない。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
以上によれば,本願商標は商標法3条1項3号に該当する。審決の同旨の
判断に誤りはなく,原告の主張は採用することができない。
3
取消事由2(商標法3条2項に該当しないとの判断の誤り)について商標法3条2項は,商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみから成る商標として同条1項3号に該当する商標であっても,使用により自他商品識別力を獲得するに至った場合には商標登録を受けることができる旨を規定している。そして,立体的形状から成る商標が使用により自他商品識別力を獲得したかどうかは,①当該商標の形状の特異性及び当該形状に類似した他の商品等の存否,②当該商標が使用された期間,商品の販売数量,広告宣伝がされた期間及び規模等の使用の実情を総合考慮して判断すべきである。
本願商標の形状の特異性及び当該形状に類似した他の商品等の存否
上記1⑵イ(イ)のとおり,原告及び同業者が製造販売するコンクリート杭には様々な形状のものが存在し,これらの杭の組み合わせによっては,原告商品の形状の特徴のうち,杭の先端に行くに従って軸径が小さくなる(上記1⑵アの②④)とともに,視覚上は節と節との間隔が狭くなる(同⑤のかっこ書)という点に類似するものも実現し得る。
そうすると,本願商標の形状の特異性はさしたるものとはいえず,当該形状に類似した他の商品も存在するといえる。
使用の実情

後掲各証拠によれば,次の事実を認定することができる。
(ア)原告商品を使用するSUPERニーディング工法及びHybridニーディング工法は,いずれも国土交通大臣の認可を取得しており,平成13年から平成30年までの間に,原告商品は,公共施設,病院,教育機関,物流施設,スポーツ施設等代表的な建造物を含む全国2769箇所の建築現場で累計15万本以上が採用され,211億円以上の売上を記録した(甲69)。
(イ)原告は,①平成12年から平成30年までの間に,専門雑誌基礎工(毎月発行部数1万2000部)に11回,月刊建築技術(毎月発行部数2万部)に4回,地盤工学会誌(毎月発行部数1万部)に1回,それぞれ商品の立体的形状を大きく目立つように表示した原告商品の広告等を掲載し(甲43ないし53,甲71),②同じ期間内に,原告商品を用いた工法を紹介するカタログとしてSUPERニーディングHybridKneadingBF.Sの3種類を合計7万部以上,全国で配布し(甲9ないし11,70),③一般社団法人コンクリートパイル建築技術協会が発行する雑誌COPITA(発行部数は,平成19年及び平成30年が7000部,それ以外の年が8000部)においても,遅くとも平成18年以降,本願商標を使用した原告商品に関する記事が,
毎年掲載されてきた(甲8の4,71)。
(ウ)建築基礎工学の分野を専攻する複数名の大学教授(准教授又は元教授を含む。)(甲72,73,104~108),大手ゼネコン関係者(甲26,80~98),大手設計事務所等関係者(甲27~31,99~103)からは,本願商標を形成する原告商品の形状は,他の商品とは一見して区別し,原告商品であると認識することができる旨の書面が提出されている。これら書面の作成者の住所又は所在地は全国にわたり,事業規模の大小にも幅がある。

しかしながら,原告が指摘する各パンフレットのうち,SUPERニーディングHybridKneadingのパンフレット(甲9,10)は,いずれも工法に関するパンフレットであって,原告商品の形状は,工法を構成する技術要素の1つとして記載されているのにすぎず,自他商品を識別するために記載されているものとは到底いい難い。杭のパンフレットであるBF.Sパイルのパンフレット(甲11)も,その内容は,杭の技術的特徴を詳細に説明するものであって,自他商品を識別するものとしての商品の形状を記載したものとはいい難い。さらに,各種雑誌に掲載された広告や紹介記事(甲8の4,43~49,51,53)も,あくまでも工法の広告や紹介記事であって,杭の形状は,工法を構成する技術要素として記載されているのにすぎないし,形状の特徴が明瞭に特記されているわけでもない。
また,大学教授の意見書である甲72,73は,僅か2名の意見にすぎない上に,その内容を見ても,工法の技術的特徴から離れて,杭の形状そのものが自他商品識別力を備えていると判断するに足りるものであるのかについては疑問が残る。そして,他の学者,ゼネコン関係者,設計事務所関係者の証明書(甲26~31,80~108)は,定型の書式に記名押印がされているのにすぎず,その信用性はもともと低いものといわざるを
得ない上に,やはり,工法の技術的特徴から離れて,杭の形状そのものが自他商品識別力を備えていると判断するに足りるものであるかどうかには疑問が残るものである。
これらの点を踏まえると,当該業界において技術力・販売力ともに優れた有力事業者である原告(このこと自体は原告自身が主張しており,証拠上も認められる。)ののれんや,原告提案に係る上記SUPERニーディング工法及びHybridニーディング工法の技術的優位性から独立して,本願商標の立体的形状自体が自他商品識別力を獲得していると認定するには至らない。なぜなら,本願商標の需要者・取引者は一般消費者ではなく,建設業界において基礎工事に携わる限られた範囲の者であるため,需要者・取引者が本願商標の立体的形状に接したとき,原告商品を想起するとしても,それは原告の提案する各工法との関連においてであると考えられるからである。
上記⑵及び⑶に認定したところによれば,上記⑴の説示に照らして,本願商標は商標法3条2項に該当しない。審決の同旨の判断に誤りはなく,原告の主張は採用することができない。
4
結論
よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部

裁判長裁判官
鶴岡稔彦
裁判官
上田卓哉洋輝
裁判官

(別紙)
本願商標

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