判例検索β > 平成30年(行ケ)第10131号等
審決取消請求事件 特許権 行政訴訟
事件番号平成30(行ケ)10131等
事件名審決取消請求事件
裁判年月日令和元年7月22日
法廷名知的財産高等裁判所
裁判要旨特 判決年月日 令和元年7月22日 担
許 当 知財高裁第3部
権 事 件 番 号 平成30年(行ケ)第10131号,同第1 部
0126号
○ 発明の名称を 「医薬品相互作用チェック装置」 とする発明について, 進歩性を欠如
するとはいえないとした事例。
(事件類型)審決(無効・一部不成立)取消 (結論)審決取消
(関連条文)特許法29条1項2号,同条2項
(関連する権利番号等)特許第4537527号
判 決 要 旨
1 本件は,名称を「医薬品相互作用チェック装置」とする発明に係る特許の無効審判請
求を一部不成立とした審決の取消訴訟である。審決は,引用発明1及び2に基づく新規性,
進歩性欠如について否定し,引用発明3に基づく進歩性欠如について,本件発明1~4,
6,8記載の発明について進歩性 欠如を認めて無効とし,本件発明5,7,9の発明につ
いては進歩性が欠如するとはいえず無効審判請求は成り立たないとした。
本件の主たる争点は,引用発明3に基づく進歩性の有無等である。
2 本判決は,次のとおり,引用発明3と本件発明1の相違点の認定に誤りがあるとして,
本件発明1及びこれを直接又は間接に引用する本件発明2~4,6,8を無効とした審決
を取り消した。
(1)ア 本件発明1の「相互作用マスタ」は,「一の医薬品」及び「他の一の医薬品」
が販売名(商品名)か一般名かこれを特定するコードや,薬効,有効成分及び投与経路を
特定することができるコードのレベルの概念で統一して格納され,①A薬品から見たB薬
品の相互作用が発生する組み合わせについての情報と,②B薬品から見たA薬品の相互作
用が発生する組み合わせについての情報とは,データとして個々別々のものとして格納さ
れ,また,①A薬品から見たB薬品に関する相互作用が発生する組み合わせについての情
報と,③A薬品から見たC薬品の相互作用が発生する組み合わせについての情報とも,デ
ータとして個々別々のものとして格納されるものである。これに対し,引用発明3の相手
テーブル部の一般名コード,薬効分類コード,BOXコードの各欄には,必ずしもすべて
にコードが格納されているとは限らない。
したがって,引用発明3の「医薬品相互作用チェックテーブル105」と,本件発明1
の「相互作用マスタ」とは,「一の医薬品から見た他の医薬品の相互作用が発生する組み
合わせを個別に格納する相互作用をチェックするためのマスタ」である点で共通するが,
本件発明1が「一の医薬品から見た他の一の医薬品の場合と,前記他の一の医薬品から見
た前記一の医薬品の場合の2通りの主従関係で,相互作用が発生する組み合わせを格納す
る」のに対し,引用発明3では,「一の医薬品から見た他の医薬品の一般名コード,薬効
分類コード,BOXコードかの少なくともいずれかについて,相互作用が発生する組み合
わせを格納し,また,他の一の医薬品から見た医薬品の一般名コード,薬効分類コード,
-1-
BOXコードかの少なくともいずれかについて,相互作用が発生する組み合わせを格納す
る」点で相違する。
イ 本件発明1は「自己医薬品と相手医薬品との組み合わせ」と,「相互作用マ
スタに登録した医薬品の組み合わせ」についての合致の有無を判断するものである
の に 対 し , 引用発明3は,①医薬品相互作用チェックテーブル105において,「自己
テーブル部」に,「自己医薬品」に係る「一般名コード」,「薬効分類コード」,「BO
Xコード」が存在するかをそれぞれ検索し,②いずれかのコードが存在していれば,処方
医薬品相互作用チェックテーブルTの形態で「一時記憶テーブル110」に記憶し,③
「一時記憶テーブル110」に記憶したデータの「相手テーブル部」に,「相手医薬品」
に係る「一般名コード」,「薬効分類コード」,「BOXコード」が存在するかをそれぞ
れ検索し,④いずれかのコードが存在していれば,「自己医薬品」と「相手医薬品」とが
相互作用を有する組み合わせが存在すると判断するものである。
そうすると,引用発明3の「検索処理」と本件発明1の「相互作用チェック処
理」とは,いずれも,「入力された新規処方データの各医薬品を自己医薬品及び相
手医薬品とし,自己医薬品と相手医薬品の組み合わせについて,相互作用をチェッ
クするためのマスタに基づいて相互作用をチェックするための処理」を実行する点
で共通するものの,引用発明3の「検索処理」は,自己医薬品と相手医薬品と間
で,一般名コード,薬効分類コード,BOXコードのいずれかの組み合わせが存在
すれば相互作用を有する組み合わせであると判断するものであり,自己医薬品と相
手医薬品との組み合わせと相互作用マスタに登録した医薬品の組み合わせとの, 医
薬品の組み合わせ同士の合致を判断しているとはいえないから,本件発明1の「自
己医薬品と相手医薬品との組み合わせと相互作用マスタに登録した医薬品の組み合
わせが合致するか否かを判断することにより,相互作用チェック処理を実行する」
「相互作用チェック処理」とは相違する。
ウ 以上によれば,審決は,本件発明1と引用発明3の相違点の認定に際し,相違点を
看過したものであり,相違点の認定の誤りがあるというべきである。
(2) 相互作用をチェックするための処理について,引用発明3においては,自己医薬
品について,一般名コード,薬効分類コード,BOXコードのそれぞれについて検索を行
い,相手医薬品についても,一般名コード,薬効分類コード,BOXコードのそれぞれに
ついて検索を行うため,6回の検索が必要であり,一時記憶テーブルを必要とするのに対
し,本件発明1においては,医薬品と医薬品の組み合わせ同士の合致を判断するため,1
回の検索(双方向の検索をそれぞれ別の検索と考えても2回の検索)により行うことがで
きる。
また,得られる検索結果について,本件発明1においては,処方された医薬品の組み合
わせと相互作用をチェックするためのマスタに登録された医薬品の組み合わせとが合致し
たものを検索結果とするのに対し,引用発明3においては,医薬品相互作用チェックテー
-2-
ブル105に登録された自己医薬品と相手医薬品の一般名コードが一致するものだけでは
なく,自己医薬品と薬効分類コードやBOXコードの一致する他の医薬品の相互作用チェ
ックテーブルも一時記憶テーブルに記憶し,相手医薬品の一般名コード,薬効分類コー
ド,BOXコードが存在するかを検索するため,薬効分類コード,BOXコードのいずれ
かのみの一致するものも検索結果とし,本件発明1よりも多くの検索結果を得るものと解
され,両発明において得られる検索結果は異なる。
このように,引用発明3は,添付文書の相互作用の項目に記載された医薬品の情報をそ
のままコード化してデータベースを構築し,相互作用をチェックするための処理におい
て,データベースの各項目(一般名,薬効,BOX)それぞれについて検索を行うことに
より漏れのない相互作用チェックを行うのに対し,本件発明1は,添付文書の相互作用の
項目に記載された医薬品の情報に基づいて医薬品と医薬品との組み合わせについてデータ
ベースを構築し,相互作用チェック処理においては,医薬品と医薬品との組み合わせのみ
で単純に検索するため,1回の検索(双方向の検索をそれぞれ別の検索と考えても2回の
検索)で相互作用チェックできるというものであるから,両発明はその技術思想を異にす
るものである。
上記(2)の相違点に係る構成を開示する他の証拠も示されていないから,この構成を,
当業者が容易に想到し得たとはいえない。
-3-
裁判日:西暦2019-07-22
情報公開日2019-08-07 14:00:37
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令和元年7月22日判決言渡
平成30年(行ケ)第10131号

審決取消請求事件(第1事件)

平成30年(行ケ)第10126号

審決取消請求事件(第2事件)

口頭弁論終結日

平成31年4月15日
判決
第1事件原告・第2事件被告

株式会社アイシーエム
(以下原告という。)

同訴訟代理人弁護士

長笹本
辻󠄀

田朋子南山知広河
同訴訟代理人弁理士

沢幸男合摂章
第1事件被告・第2事件原告

株式会社湯山製作所

第1事件被告・第2事件原告

株式会社システムヨシイ

(以下,
上記両名を併せて
被告ら
という。


上記両名訴訟代理人弁護士

島藤田知美真鍋怜子町野静松飯歩下外村主友紀溝上武尊横
上記両名訴訟代理人弁理士

上井知理文1
原告の請求を棄却する。

2
特許庁が無効2017-800032号事件について平成30
年7月30日にした審決のうち,

特許第4537527号の請求項1ないし4,8に係る発明についての特許を無効とする。6,

との部分を取り消す。

3
訴訟費用は,原告の負担とする。
事実及び理由

第1
1
請求
第1事件
特許庁が無効2017-800032号事件について平成30年7月30日にした審決のうち,

特許第4537527号の請求項5,7,9に係る発明についての審判請求は,成り立たない。

との部分を取り消す。
2
第2事件
特許庁が無効2017-800032号事件について平成30年7月30日にした審決のうち,

特許第4537527号の請求項1ないし4,6,8に係る発明についての特許を無効とする。

との部分を取り消す。
第2
1
事案の概要
特許庁における手続の経緯等
(1)

被告らは,名称を医薬品相互作用チェック装置とする発明に係る特許
権(特許第4537527号。出願日

平成12年3月28日,設定登録日

平成22年6月25日。請求項の数9。以下,本件特許権といい,同特許権に係る特許を本件特許という。)の特許権者である(甲43)。被告らは,平成26年1月22日,本件特許につき訂正審判請求をし,同年3月5日付けで請求成立の審決がされた(以下,この訂正を本件訂正という。)(乙14)。
(2)

原告は,
平成29年3月9日,
本件特許につき特許庁に無効審判請求をし,

特許庁は上記請求を無効2017-800032号事件として審理した。(3)

特許庁は,平成30年7月30日,

特許第4537527号の請求項1ないし4,6,8に係る発明についての特許を無効とする。特許第4537527号の請求項5,7,9に係る発明についての審判請求は,成り立たない。

との審決(以下審決という。)をし,その謄本は,同年8月9日,原告及び被告らに送達された。
(4)

被告らは平成30年9月5日に,
原告は同月10日に,
審決の取消しを求

めてそれぞれ第2事件及び第1事件の訴えを提起した。
2
特許請求の範囲の記載
本件訂正後の本件特許の特許請求の範囲の請求項1~9の記載は,次のとおりである。以下,各請求項に係る発明を請求項の番号に従い本件発明1,本件発明2などといい,本件発明と総称する。本件訂正後の本件特許の明細書を,図面を含めて本件明細書という。また,本件明細書の図面の一部は,別紙本件明細書図面目録記載のとおりである。

【請求項1】

一の医薬品から見た他の一の医薬品の場合と,前記他の一の医薬

品から見た前記一の医薬品の場合の2通りの主従関係で,相互作用が発生する組み合わせを個別に格納する相互作用マスタを記憶する記憶手段と,入力された新規処方データの各医薬品を自己医薬品及び相手医薬品とし,自己医薬品と相手医薬品の組み合わせが,前記相互作用マスタに登録した医薬品の組み合わせと合致するか否かを判断することにより,相互作用チェック処理を実行する制御手段と,
対象となる自己医薬品の名称と,相互作用チェック処理の対象となる相手医薬品の名称とをマトリックス形式の行又は列にそれぞれ表示し,前記制御手段による自己医薬品と相手医薬品の間の相互作用チェック処理の結果を,前記マトリックス形式の該当する各セルに表示する表示手段と,
を備えたことを特徴とする医薬品相互作用チェック装置。
【請求項2】

前記記憶手段に記憶する相互作用マスタは,相互作用が発生する

組み合わせを,各医薬品の効能を定めた薬効コードの組み合わせとして格納することを特徴とする請求項1に記載の医薬品相互作用チェック装置。【請求項3】

前記記憶手段は,相互作用が発生する医薬品の各組み合わせに対

して,作用・機序を含む詳細情報を関連付けた作用マスタをさらに記憶し,前記制御手段は,前記相互作用チェック処理の結果が表示された各セルが指定されると,前記記憶手段に記憶した作用マスタに基づいて,相互作用についての詳細情報を前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項1又は2に記載の医薬品相互作用チェック装置。
【請求項4】

前記記憶手段は,患者データを含む過去の処方データを蓄積した

蓄積処方データをさらに記憶し,
前記相手医薬品は,蓄積処方データの各医薬品を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の医薬品相互作用チェック装置。【請求項5】

前記表示手段は,自己医薬品の名称と相手医薬品の名称をマトリ

ックス形式の行又は列にそれぞれ表示し,相手医薬品が新規処方データの各医薬品である場合と,相手医薬品が蓄積処方データの各医薬品である場合とで切替可能に表示することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の医薬品相互作用チェック装置。
【請求項6】

前記表示手段に表示されたマトリックス形式の各セルに表示され

る相互作用チェックの結果には,識別可能な記号で表示される併用注意と併用禁忌を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の医薬品相互作用チェック装置。
【請求項7】

前記表示手段は,表示するマトリックス形式の画面中,新規処方

データの各医薬品に加えて,新たに医薬品を追加表示可能とする薬品追加ボタンを備え,
前記制御手段は,前記薬品追加ボタンが操作されることにより,前記表示手段に表示したマトリックス形式の画面中,新規処方データの各医薬品の名称が表示された行又は列に,新たな医薬品の名称を追加し,追加表示した自己医薬品と,相手医薬品との相互作用を再チェックすることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の医薬品相互作用チェック装置。
【請求項8】

前記記憶手段は,相互作用マスタに登録された相互作用が発生す

る医薬品の組み合わせのうち,相互作用チェック処理を除外した薬効コードの組み合わせについて格納する相互作用除外マスタを記憶し,
前記制御手段は,前記相互作用マスタに基づいて相互作用チェック処理を実行した後,前記相互作用除外マスタを検索して該当する薬効コードの組み合わせを除外することを特徴とする請求項1から6のずれか1項に記載の医薬品相互作用チェック装置。
【請求項9】

前記記憶手段は,相互作用が発生する医薬品の組み合わせについ

てのデータを薬効コードの組み合わせとして格納する相互作用共通マスタとは別に,各医療施設に応じて作成した相互作用個別マスタを記憶し,前記制御手段は,前記相互作用共通マスタに優先して,前記相互作用個別マスタに基づく相互作用チェック処理を実行することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の医薬品相互作用チェック装置。
3
審決の理由の要旨
(1)

原告は,①無効理由1として,本件発明1,6及び7について,本件出願
日前に市販されていた医療用添付文書情報サービスEDIS(以下EDISという。により公然実施された発明

(以下
引用発明1
という。

に基づく新規性欠如,②無効理由2として,本件発明1~9について,引用発明1,甲4,9,13~20,22文献に記載された発明(周知技術を含む。)及び技術常識に基づく進歩性欠如,③無効理由3として,本件発明1~9について,甲7文献に記載された発明(以下引用発明2という。),甲3,4,8,9,13~20,22文献に記載された発明(周知技術を含む。)及び技術常識に基づく進歩性欠如,④無効理由4として,本件発明1~9について,
甲14文献に記載された発明
(以下
引用発明3
という。,

甲3,6~10,18,19,22文献に記載された発明(周知技術を含む)及び技術常識に基づく進歩性欠如,⑤無効理由5として,本件発明1~9について,サポート要件違反を主張した。
審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりであり,要するに,①無効理由1につき,
下記(2)アの相違点が存在するから,
特許法29条1項2号
に該当しない,②無効理由2,3につき,下記(2)ア,イの相違点に係る構成を当業者が容易に想到することができたとはいえないから,同条2項に該当しない,③無効理由4につき,本件発明1~4,6,8は下記(2)ウの相違点4-1,4-2,4-4,4-6に係る構成を当業者が容易に想到することができたといえるから同項に該当し,本件発明5,7,9は下記(2)ウのその余の相違点に係る構成を当業者が容易に想到することができたとはいえないから同項に該当しない,④無効理由5につき,同法36条6項1号に違反する点はないというものである。なお,文献中の図面の一部は,文献の番号に応じた別紙図面目録記載のとおりである。
甲3:相互作用チェック機能を有する市販ソフト(システム)の紹介薬局第49巻第1号258~270頁(1998年1月5日発行)甲4:大学病院における医薬品情報提供(2)-金沢大学医学部付属病院薬局第49巻第1号(1998)160~168頁
甲6薬物間相互作用に関する入院患者への服薬指導の問題点と解決策:
月刊薬事第38巻第3号(1997)441(861)~450(870)頁甲7:FINEDIWeekly第10巻30号EDISの広告頁(1997年8月7日発行)
甲8:1998年6月13日当時の株式会社シュペールのウェブサイト甲9開局薬局での薬物間相互作用に関する服薬指導の問題点と解決策:
月刊薬事第38巻第3号(2月臨時増刊号)(1996)451(871)~463(883)頁甲10:刊行物提出書(特許2000-089076刊行物3)
甲13:特開平9-99039号公報
甲14:特開平11-195078号公報
甲15:月刊薬事Vol.8,No.2(1996)79(289)~86(296)頁甲16:特開平4-260173号公報
甲17:病院薬学Vol.24No.5(1998),584-589頁甲18:特開平9-94287号公報
甲19:特開平11-282934号公報
甲20:特開平8-57021号公報
甲22:特開平11-308539号公報
(2)

審決が認定した引用発明,
本件発明と引用発明1~3との一致点及び相違

点は,以下のとおりである(審決が認定する相違点1-1と相違点2-1,相違点1-2と相違点2-2,相違点1-3と相違点2-3,相違点1-4と相違点2-4は同じであるので,以下においては,これらを区別せずに相違点1-1~1-4と表記する。)。

引用発明1について
(ア)

引用発明1

添付文書の情報をデータベース化した添付文書データベースを備え,A薬品とB薬品との間で,それぞれ添付文書に相互作用の記載があるかどうかを検索して,双方向でのチェックを行い,対象となる医薬品名とアルファベットを行に表示し,列にはアルファベットのみを表示したマトリックス表示において,相互作用チェック結果を該当するセルに表示する相互作用チェックのシステム(イ)

本件発明1と引用発明1の一致点

相互作用が発生する医薬品の情報を格納する相互作用マスタを記憶する記憶手段と,入力された各医薬品を自己医薬品及び相手医薬品とし,相互作用チェック処理を実行する制御手段と,対象となる自己医薬品と,相互作用チェック処理の対象となる相手医薬品とをマトリックス形式の行又は列にそれぞれ表示し,前記制御手段による自己医薬品と相手医薬品の間の相互作用チェック処理の結果を,前記マトリックス形式の該当する各セルに表示する表示手段と,を備えたことを特徴とする医薬品相互作用チェック装置(ウ)

本件発明1と引用発明1の相違点

〔相違点1-1〕

本件発明1に係る相互作用マスタは,一の医薬品から見た他の一の医薬品の場合と,前記他の一の医薬品から見た前記一の医薬品の場合の2通りの主従関係で,相互作用が発生する組み合わせを個別に格納しているのに対し,引用発明1では,本件発明1に係る相互作用マスタに対応する構成である添付文書データベース
内のデータ格納構成が明らかでない点。
〔相違点1-2〕

本件発明1では,入力された各医薬品が新規処方データであるのに対し,引用発明1では,入力された各医薬品が新規処方データであるのか否か明らかでない点。〔相違点1-3〕

本件発明1では,自己医薬品と相手医薬品の組み合わせが,前記相互作用マスタに登録した医薬品の組み合わせと合致するか否かを判断しているのに対し,引用発明1では,A薬品とB薬品との間で,それぞれ添付文書に相互作用の記載があるかどうかを検索しているものの,それが本件発明1でいう相互作用マスタと同様の構成を備えるものに対して実行されていない点。
〔相違点1-4〕

本件発明1では,マトリックス形式の行又は列のそれ

ぞれに,医薬品の名称を表示しているのに対し,引用発明1では,医薬品の名称は,行にしか表示していない点。

引用発明2について
(ア)

引用発明2

添付文書の情報をデータベース化した添付文書データベースを備え,相互作用チェックシステムは,医薬品間でそれぞれ添付文書に相互作用の記載があるかどうかを検索して,対象となる医薬品名とアルファベットを行に表示し,列にはアルファベットのみを表示したマトリックス表示において,相互作用チェック結果を該当するセルに表示する医療用医薬品添付文書情報サービスを提供する装置(イ)

本件発明1と引用発明2の一致点

相互作用が発生する医薬品の情報を格納する相互作用マスタを記憶する記憶手段と,入力された各医薬品を自己医薬品及び相手医薬品とし,相互作用チェック処理を実行する制御手段と,対象となる自己医薬品と,相互作用チェック処理の対象となる相手医薬品とをマトリックス形式の行又は列にそれぞれ表示し,前記制御手段による自己医薬品と相手医薬品の間の相互作用チェック処理の結果を,前記マトリックス形式の該当する各セルに表示する表示手段と,を備えたことを特徴とする医薬品相互作用チェック装置(ウ)

本件発明1と引用発明2の相違点

〔相違点3-1〕

本件発明1に係る相互作用マスタは,一の医薬品から見た他の一の医薬品の場合と,前記他の一の医薬品から見た前記一の医薬品の場合の2通りの主従関係で,相互作用が発生する組み合わせを個別に格納しているのに対し,引用発明2では,相互作用マスタに対応する構成である添付文書データベース内のデータ格納構成が明らかでない点。
〔相違点3-2〕

本件発明1では,入力された各医薬品が新規処方データであるのに対し,引用発明2では,入力された各医薬品が新規処方データであるのか否か明らかでない点。〔相違点3-3〕

本件発明1では,自己医薬品と相手医薬品の組み合わせが,前記相互作用マスタに登録した医薬品の組み合わせと合致するか否かを判断しているのに対し,引用発明2では,A薬品とB薬品との間で,それぞれ添付文書に相互作用の記載があるかどうかを検索しているものの,それが本件発明1でいう相互作用マスタと同様の構成を備えるものに対して実行されていない点。
〔相違点3-4〕

本件発明1では,マトリックス形式の行又は列のそれ

ぞれに,医薬品の名称を表示しているのに対し,引用発明2では,医薬品の名称は,行にしか表示していない点。

引用発明3について
(ア)

引用発明3

医薬品相互作用チェック装置であって,医薬品相互作用チェック装置は医薬品相互作用チェック結果を表示するための表示装置10と,チェックする医薬品を入力するための入力装置11と,CPU及びメモリ等の処理部12と,あらかじめ用意された全ての医薬品に関するデータが作成記憶されているディスク13と出力装置16とから構成され,自己医薬品テーブル102には,予め医薬品入力101の過程により入力された処方される医薬品(自己医薬品)の医薬品マスターコードが記憶され,相手医薬品テーブル103には,処方履歴を基に抽出した患者が服用している医薬品(相手医薬品)及び処方される医薬品の医薬品マスターコードが記憶され,各医薬品に付される添付文書から抽出された医薬品に関する情報はコード化されており,医薬品相互作用チェックマスタ104には,予め医薬品固有の情報が全て記憶され,医薬品相互作用チェックテーブル105には,医薬品間の相互作用の有無をチェックする情報が記憶されており,自己医薬品に対する自己テーブル部401と相手医薬品に対する相手テーブル部402(図4を参照)とを含み,医薬品相互作用コメントファイル106には,医薬品の相互作用の結果をコメントとして提供するための文字情報がコメントコードと共に記憶され,医薬品相互作用機序ファイル107には,医薬品相互作用の機序が文字情報として相互作用機序コードと共に記憶され,検索前処理801では,処方される医薬品として入力装置11に入力された自己医薬品の医薬品マスターコードを基に,一般名コード,薬効分類コード,BOXコードを医薬品相互作用チェックマスタ104から検索して自己医薬品のそれぞれのコードを確定し,処方履歴等を基に抽出された相手医薬品の医薬品マスターコードを基に一般名コード,薬効分類コード,BOXコードを医薬品相互作用チェックマスタ104から検索して相手医薬品のそれぞれのコードを確定し,相互作用チェックテーブルの検索処理802では,医薬品相互作用チェックテーブル105から自己テーブル部401の検索が行われ,検索前処理801で検索した自己医薬品の一般名コードが,医薬品相互作用チェックテーブル105の自己テーブル部401に存在するか否かの検索が行われ,同様にして,薬効分類コードとBOXコードについても検索が行われ,それぞれの検索で存在したコードに関するデータは処方医薬品相互作用チェックテーブルTの形態で一時記憶テーブル110に記憶され,一時記憶テーブル110に記憶したデータから相手テーブル部402の検索が行われ,検索前処理801で検索した相手医薬品の一般名コードが前記一時記憶テーブル110の相手テーブル部402に存在しているかの検索が行われ,同様にして薬効分類コードとBOXコードについても検索が行われ,それぞれの検索でコードが存在する場合には,処方する自己医薬品には患者が服用している医薬品あるいは処方する医薬品(相手医薬品)との間に相互作用を有する組み合わせが存在することになり,検索後処理803では,前記相互作用チェックテーブルの検索処理802で相互作用を有する医薬品の組み合わせが存在した場合のコメントテーブル部403の作成が行われ,検索された医薬品相互作用チェック結果は,表示装置10に画面表示され,表示欄には,入力された自己医薬品名と,患者の処方履歴に記載された調剤日と医療機関名,及び,相手医薬品名と,相互作用コメントファイルから抽出された相互作用コメントと,医薬品相互作用機序ファイルから抽出された相互作用機序が表示される医薬品相互作用チェック装置(イ)

本件発明1と引用発明3の一致点

一の医薬品から見た他の一の医薬品の場合と,前記他の一の医薬品から見た前記一の医薬品の場合の2通りの主従関係で,相互作用が発生する組み合わせを個別に格納する相互作用マスタを記憶する記憶手段と,入力された新規処方データの各医薬品を自己医薬品及び相手医薬品とし,自己医薬品と相手医薬品の組み合わせが,前記相互作用マスタに登録した医薬品の組み合わせと合致するか否かを判断することにより,相互作用チェック処理を実行する制御手段と,前記制御手段による自己医薬品と相手医薬品の間の相互作用チェック処理の結果を,表示する表示手段と,を備えたことを特徴とする医薬品相互作用チェック装置(ウ)

相違点
本件発明1~9との相違点は次の相違点4-1であり,これに加え,
本件発明3との相違点は次の相違点4-2,本件発明5との相違点は次の相違点4-3,本件発明6との相違点は次の相違点4-4,本件発明7との相違点は次の相違点4-5,本件発明8との相違点は次の相違点4-6,本件発明9との相違点は次の相違点4-7である。
〔相違点4-1〕

本件発明1では,対象となる自己医薬品の名称と,相互作用チェック処理の対象となる相手医薬品の名称とをマトリックス形式の行又は列にそれぞれ表示し,相互作用チェック処理の結果を,前記マトリックス形式の該当する各セルに表示しているのに対し,引用発明3では,マトリックス形式で表示していない点。
〔相違点4-2〕

本件発明3では,前記制御手段は,前記相互作用チェック処理の結果が表示された各セルが指定されると,前記記憶手段に記憶した作用マスタに基づいて,相互作用についての詳細情報を前記表示手段に表示させるのに対し,
引用発明3では,
セルの指定なしに
検索された医薬品相互作用チェック結果として医薬品相互作用機序ファイルから抽出された相互作用機序が表示している点。〔相違点4-3〕

本件発明5では,前記表示手段は,自己医薬品の名称と相手医薬品の名称をマトリックス形式の行又は列にそれぞれ表示し,相手医薬品が新規処方データの各医薬品である場合と,相手医薬品が蓄積処方データの各医薬品である場合とで切替可能に表示するのに対し,
引用発明3では,相互作用のある医薬品の組み合わせについてその相互作用機序を文章で表示している点。
〔相違点4-4〕

本件発明6では,表示手段に表示されたマトリックス形式の各セルに表示される相互作用チェックの結果には,識別可能な記号で表示される併用注意と併用禁忌を含むのに対し,引用発明3では,相互作用のある医薬品の組み合わせについてその相互作用機序を文章で表示している点。
〔相違点4-5〕

本件発明7では,前記表示手段は,表示するマトリックス形式の画面中,新規処方データの各医薬品に加えて,新たに医薬品を追加表示可能とする薬品追加ボタンを備え,前記制御手段は,前記薬品追加ボタンが操作されることにより,前記表示手段に表示したマトリックス形式の画面中,新規処方データの各医薬品の名称が表示された行又は列に,新たな医薬品の名称を追加し,追加表示した自己医薬品と,相手医薬品との相互作用を再チェックするのに対し,
引用発明3では,
相互作用のある医薬品の組み合わせについてその相互作用機序を文章で表示している点。
〔相違点4-6〕

本件発明8では,前記記憶手段は,相互作用マスタに登録された相互作用が発生する医薬品の組み合わせのうち,相互作用チェック処理を除外した薬効コードの組み合わせについて格納する相互作用除外マスタを記憶し,前記制御手段は,前記相互作用マスタに基づいて相互作用チェック処理を実行した後,前記相互作用除外マスタを検索して該当する薬効コードの組み合わせを除外するのに対し,引用発明3では,相互作用が発生する医薬品の組み合わせを除外する処理を行っていない点。
〔相違点4-7〕

本件発明9では,前記記憶手段は,相互作用が発生する医薬品の組み合わせについてのデータを薬効コードの組み合わせとして格納する相互作用共通マスタとは別に,各医療施設に応じて作成した相互作用個別マスタを記憶し,前記制御手段は,前記相互作用共通マスタに優先して,前記相互作用個別マスタに基づく相互作用チェック処理を実行するのに対し,引用発明3では,相互作用共通マスタとは別の各医療施設に応じて作成した相互作用個別マスタを備えていない点。4
取消事由

(第2事件)
被告取消事由1:本件発明1に関する進歩性判断の誤り(無効理由4)被告取消事由2:本件発明2に関する進歩性判断の誤り(無効理由4)被告取消事由3:本件発明3に関する進歩性判断の誤り(無効理由4)被告取消事由4:本件発明4に関する進歩性判断の誤り(無効理由4)被告取消事由5:本件発明6に関する進歩性判断の誤り(無効理由4)被告取消事由6:本件発明8に関する進歩性判断の誤り(無効理由4)(第1事件)
原告取消事由1:本件発明5,7,9に関する引用発明1に基づく新規性,進歩性判断の誤り(無効理由1,2)
原告取消事由2:本件発明5,7,9に関する引用発明2に基づく進歩性判断の誤り(無効理由3)
原告取消事由3:本件発明5,7,9に関する引用発明3に基づく進歩性判断の誤り(無効理由4)
第3
1
被告ら主張の取消事由
被告取消事由1(本件発明1に関する進歩性判断の誤り)について(1)

相違点の認定について
本件発明1について
(ア)

相互作用マスタの構成

a
本件発明1の相互作用マスタの一の医薬品は,商品名で特
定される場合や一般名で特定される場合もあり,また,本件発明2のように薬効コードで特定される場合もあるため,ある程度の幅を許容する概念であるが,
一の医薬品は,クレーム上他の一の医薬品
を相手医薬品として個別に,すなわち,1対1の関係で格納
される以上,自己医薬品と相手医薬品とは,同じ基準ないし粒度で特定されるものであることが必要である。
さらに,
2通りの主従関係
が成立するためには,
その前提として,

一の医薬品他の一の医薬品

の対応関係がデータ構造上維持さ
れていることが必要になる。相互作用が発生する組み合わせが1対1であることが明記されているのだから,個別に格納とは,やは
り,
相互作用が発生する医薬品の
1対1
の組み合わせを格納するデ
ータ格納構成を意味する。
以上によれば,本件発明1の個別に格納は,①一の医薬品と他の一の医薬品を1対1の組み合わせ,すなわち,同一の基準又は粒度で格納し(以下同一粒度という。),かつ,②他の組み合わせと分離して格納すること
(以下
分離格納
という。を意味し,

1対多
となる場合を含まない。
b
医薬品の添付文書の記載には統一されたフォーマットがあるわけではなく,相互作用を生じる可能性のある医薬品の特定方法として,医薬品の商品名,一般名(主成分),効能など区々に分かれており,相互作用を生じる医薬品として,例えば,降圧剤等薬効に着目した
記載や,化合物の名称のみを記載することは少なくない。そのため,相互作用の有無を判断するに当たっては,必然的に添付文書等の薬学的な解釈が求められ,相互作用マスタには,相互作用に関する情
報として,薬学的判断を経た相互作用の有無や内容に関する情報(以下,二重括弧で『相互作用情報』という。)が保有される。つまり,相互作用マスタ
は,
単なる添付文書情報ではなく,
一の医薬品
と他の一の医薬品との間で,薬学的判断を経た相互作用が発生する組み合わせを,その『相互作用情報』と共に記録するものである。
例えば,
医薬品Aが降圧剤との併用禁忌であって,
降圧剤が,
医薬品
B,
C及びDと3種類存在する場合,
上記のテーブルには,
自己医薬品
に医薬品Aが記憶され,
相互作用に
併用禁忌
と記載されたレコード
が,医薬品B,医薬品C,医薬品Dとの間で個別に作成される。
自己医薬品
医薬品A

医薬品B(降圧剤)併用禁忌

医薬品A

医薬品C(降圧剤)併用禁忌
c
相手医薬品

相互作用

医薬品A

医薬品D(降圧剤)併用禁忌

原告の主張について
(a)

原告は,
被告らが主張する同一粒度及び分離格納について,
審判

手続で審理の俎上に上っておらず,審決取消訴訟において審理の対象とされるべきではないと主張するが,同一粒度及び分離格納は,本件発明1の個別に格納の解釈論に他ならず,審判手続におい
て審理されている。
(b)

原告は,本件発明1は,
個別に格納という構成によってデー
タ格納方式まで特定していると解することはできず,リレーショナルデータベースの形式による格納方式もツリー構造での格納方式も取り得ると主張するが,本件発明1においては,相互作用が発生する組み合わせが単数対単数,つまり1対1である必要があるの
であるから,
個別に格納とは,相互作用が発生する医薬品の1対1
の組み合わせを格納するデータ格納構成を意味するのであり,
相互作用マスタにおいてデータ格納構成が特定されておらず,
ツリー構造の格納方式も採用し得ると解することはできない。
(c)

原告は,平成21年12月25日付意見書(甲24)の記載を根

拠に個別に格納とは,医薬品を区別する意味にすぎないと主張
するが,原告が指摘する記載は,2通りの主従関係に関するも
のであり,個別に格納の解釈に影響を与えない。原告の指摘す
る平成22年1月20日付け拒絶理由通知書(甲34)の記載は,検索過程に関するものであるから相互作用マスタの構成が問題
とされたものではない。また,被告らは,拒絶理由通知書の認定を争っている。
(イ)

相互作用チェック処理の構成
本件発明1の相互作用チェック処理は,入力された新規処方データの各医薬品を自己医薬品及び相手医薬品とし,自己医薬品と相手医薬品の組み合わせが,前記相互作用マスタに登録した医薬品の組み合わせと合致するか否かを判断するものであるから,相互作用を確認する2つの医薬品をそれぞれ自己医薬品及び相手医薬品として,つまり,主従を入れ替えた2つの検索条件で,相互作用マスタの検索を行うものである。前記(ア)のとおり,相互作用マスタには,一の医薬品と他の一の医薬品に関する『相互作用情報』が2通りの主従関係
で,個別に格納されているから,実際の検索は,(自己医薬品=医薬品Aかつ相手医薬品=医薬品B)又は(「自己医薬品=医薬品Bかつ相手医薬品=医薬品A)」というひとつの検索条件で簡易,迅速に行うことができる。

引用発明3について
(ア)

医薬品相互作用チェックテーブル105の構成

a
医薬品相互作用チェックテーブル105には,添付文書から抽
出された医薬品に関する情報をコード化した情報が保有される(甲14文献の【0008】)。
前記ア(ア)bのとおり,医薬品の添付文書には,その医薬品との関係
で相互作用を生じる医薬品が包括的に記載されているから医薬品相互作用チェックテーブル105が保有するのは,
自己医薬品に対し,
相手医薬品が広い範囲で特定され,
1対多の関係で構成された,相
互作用の有無や内容を判断するための基礎情報
(以下,
二重括弧で
『相
互作用の基礎情報』という。)である。
b
甲14文献の【0017】【0019】及び【図4】によれば,引用発明3の医薬品相互作用チェックテーブル105の自己テーブル部401や相手テーブル部402は,『相互作用の基礎情報』としての添付文書の内容を,一般名コード(一般名すなわち薬効成分となる化合物のコード),薬効分類コード(医薬品の効能効果を分類したコード),BOXコード(発明者が独自に体系化し,コード化したものではあるが,内容は,添付文書に記載された医薬品の構造式・薬理作用・剤型等からなるもの)という観点から整理・コード化した情報を記録するためのフィールドによって構成されているといえる。

c
さらに,医薬品相互作用チェックテーブル105に保有される
のは,添付文書の生の記載情報をコード化した情報であるから,適切なコード化が技術的に困難である事項及び添付文書にそもそも記載のない事項については,フィールドに記憶すべきデータが存在しない。医薬品相互作用チェックテーブル105において,自己医薬品
については,添付文書の記載によってこれらの全部が特定可能であるから,自己テーブル部401の一般名,薬効分類,BOXの全部
の組み合わせによって特定される。これに対し,相手テーブル部402には,一般名,薬効分類,BOXの少なくともいずれかひとつに情報が記録された状態になるため,相手医薬品は,添付文書の記載態様により,一般名,薬効分類,BOXのいずれか又はそれらの組み合わせによって特定されることとなる。
以上から,医薬品相互作用チェックテーブル105は,個々の
添付文書の記載態様に応じて,自己テーブル部401にある一の
自己医薬品が記録されるのに対して,
相手テーブル部402
には,
自己医薬品との間で相互作用が生じる可能性のある相手医薬品が包括的に記録される構造となっている。
d
なお,甲14文献の【図2】のとおり,自己医薬品テーブル102と相手医薬品テーブル103は,相互作用チェックを行う際に入力される医薬品を記憶するための構成であるのに対して,医薬品相互作用チェックテーブル105は,予め添付文書の情報をコード化して記憶するものであるから,両者は全く機能を異にしており,前2者と後1者を一体として取り扱う理由はない。

(イ)
a
引用発明3の検索過程の構成
引用発明3の検索処理のうち,検索前処理801は,医薬品相互作用チェックマスタ104から一般名コード等を取得するプロセスであり,実際の検索処理は相互作用チェックテーブルの検索処理802において行われるところ,その処理過程を単純化すると,次のとおりである(別紙被告ら主張の引用発明3の構成参照)。
①自己医薬品の一般名コード,薬効分類コード,BOXコードのそれぞれに基づき,医薬品相互作用チェックテーブル105の
自己テーブル部401を検索し,自己医薬品に関する情報が
記録されたレコードを抽出し,
これを
一時記憶テーブル110
に書き出す。
②相手医薬品の一般名コード,薬効分類コード,BOXコードのそれぞれに基づいて,一時記憶テーブル110内の相手テーブル部402を検索し,相手医薬品に関する情報が記録されたレコードを抽出する。
b
上記①の過程(以下自己テーブル検索過程という。)相互作用を確認する自己医薬品と同一の一般名コード,薬効分類コード,BOXコードが自己テーブル部401に登録されたデータ
を医薬品相互作用チェックテーブル105から抽出する作業であ
る。前記(ア)aのとおり,医薬品相互作用チェックテーブル105には,添付文書の内容をコード化した情報が格納されているから,自己テーブル検索過程で抽出されるのは自己医薬品に関する添付文書の内容であり,抽出結果が書き出された一時記憶テーブル110に
は,コード化された添付文書の内容が列挙されることとなる。
そして,医薬品相互作用チェックテーブル105には商品レベ
ルでの医薬品情報は格納されておらず,一般名(薬効成分)で情報が格納されているため,一般名で特定されるある医薬品に,先発薬のほか,薬効成分を同じくするいわゆるジェネリック医薬品が存在する場合には,複数のデータが抽出されることになる。
また,相互作用が問題になる相手医薬品の薬効分類コードが複数ある場合にも,複数のレコードが作成されることになると考えられるから,
この場合にも自己テーブル検索過程で複数のデータが抽出される。さらに,自己テーブル検索過程では,一般名コード,薬効分類コード,BOXコードのそれぞれの検索結果が全て抽出されるため,
入力された自己医薬品と同一の一般名,同一の薬効又は同一のBOXコードを有する医薬品の添付文書情報が全て抽出される。
したがって,自己テーブル検索過程では,自己医薬品及びそのジェネリック医薬品又は同一薬効若しくは同一BOXコードを有する医薬品に関する添付文書のデータが網羅的に抽出され,一時記憶テーブル110に書き出される。c
上記②の過程(以下相手テーブル検索過程という。)相手医薬品の一般名コード,薬効分類コード,BOXコードのそれぞれに基づいて一時記憶テーブル110の相手テーブル部402を検索し,相手医薬品に関連する情報の絞り込みが行われる。相手テーブル検索過程においても,自己テーブル検索過程と同様,一般名コード,薬効分類コード,BOXコードのそれぞれについて検索が行われる。そのため,相手テーブル検索過程を経て得られたデータは,入力された相手医薬品又はそのジェネリック医薬品若しくは同一薬効,同一BOXコードの医薬品等に関するデータとなる。

d
このように,引用発明3における検索過程において,相手医薬品を自己医薬品とする双方向の検索過程,すなわち,相手テーブル部402で絞り込まれた相手医薬品を自己医薬品として一時記憶テーブル110を構築し,自己テーブル部401から抽出された情報に基づき再検索する過程は一切開示されておらず,また,その示唆もない。

e
以上によれば,引用発明3における検索過程は,以下のとおり特定することができる。
i.

入力された新規処方データの各医薬品の一方を自己医薬品と
し,

ii.

自己医薬品,
そのジェネリック医薬品,
自己医薬品と同一薬効
コード又はBOXコードを有する医薬品を自己医薬品群とし,

iii.

相手医薬品,
そのジェネリック医薬品,
相手医薬品と同一薬効
コード又はBOXコードを有する医薬品を相手医薬品群とし,

iv.

自己医薬品群のいずれかの医薬品と,
相手医薬品群のいずれか
の医薬品との組み合わせが,
医薬品相互作用チェックテーブル
105に登録されているか否かを判断する

v.
f
相互作用の検索過程

審決は引用発明3の検索過程が本件発明1の相互作用チェック処理に該当するとしたが,甲14文献には,引用発明3で記載された検索を,
医薬品の主従を入れ替えて繰り返すという記載も示唆もない。
本件特許の出願時において,医薬品の相互作用の確認を目的とするシステムを提供する当業者の間に,医薬品相互作用チェックを行うとの観点からすると,医薬品の主従を入れ替えてチェックを繰り返すことは当然のことであるとの技術常識はなく,現に,そのような検索機能を実装したシステムは存在していない。2つの医薬品がある場合に,薬剤師が双方の添付文書を確認することの重要性は,本件特許の出願時においてようやく一部の専門家の間で認識され始めた状況であったし,ましてや,双方向からの添付文書の確認をシステムによって実現することが技術常識と呼びうる環境にはおよそなかった。審決の認定は,典型的な後知恵である。


本件発明1と引用発明3の対比
(ア)

引用発明3の医薬品相互作用チェックテーブル105は,自己医

薬品を一般名,薬効分類,BOXの全部の組み合わせによって特定するものである一方,相手医薬品は,一般名,薬効分類,BOXのいずれかによって特定されるため,一般名,薬効分類,BOXの組み合わせで特定される自己医薬品に対し,相互作用を生じる可能性のある医薬品を包括的に記録するものである。したがって,医薬品相互作用チェックテーブル105は,1対1ではなく1対多,多対多の相互作用情報を格納するものであるから,本件発明1の個別に格納の構成を有するものではない。
また,引用発明3の医薬品相互作用チェックテーブル105は,
特定の自己医薬品(一の医薬品)から見た特定の相手医薬品(他の一の医薬品の組み合わせを観念することはできない。)
このように,
一の医薬品から見た他の一の医薬品の組み合わせを観念できないから,前記他の一の医薬品から見た前記一の医薬品という組み合わせも観念することはできず,
2通りの主従関係が成立することは,
医薬品相互作用チェックテーブル105のデータ構造上論理的にあり得ない。
よって,引用発明3の医薬品相互作用チェックテーブル105は
本件発明1の相互作用マスタに相当するものではない。
(イ)
a
本件発明1と引用発明3の検索過程は次の点で相違する。
相違点1
引用発明3の検索過程は,入力された新規処方の一方を自己医薬品と(する)ものであるのに対し,本件発明1は,入力された新規処方データの各医薬品を自己医薬品及び相手医薬品と(する)ものであるから,この点において両者は相違する。

b
相違点2
本件発明1は,自己医薬品と相手医薬品の組み合わせを検索す
るものであるのに対し,引用発明3は,自己医薬品群のいずれかの医薬品と,相手医薬品群のいずれかの医薬品との組み合わせを検索するものであるから,この点において両者は相違する。なお,自己医薬品や相手医薬品は,一定の幅を持ちうる概念であり,その限りで一般名や薬効分類で抽象化することが不可能ではないが,本件発明1が入力された新規処方データの各医薬品の主従を入れ替えて検索を行うものであることを考えると,自己医薬品と相手医薬品の組み合わせを検索する上では,両者の抽象化の基準を同一にし,抽象化された限りでは1対1の対応関係が維持されていなければならない。引用発明3においては,自己医薬品群にも相手医薬品群にも,自己テーブル検索過程で抽出された複数のデータが含まれるから,多対多の関係が生じることとなる。そのため,引用発明3は,自己医薬品と相手医薬品の組み合わせについて検索を行うものとはいえない。c
相違点3
本件発明1は,前記相互作用マスタに登録した医薬品の組み合わせと合致するか否かを判断するものであるところ,上述のとおり,引用発明3の医薬品相互作用チェックテーブル105は,添付文
書情報をコード化したものであって,同一の基準で抽象化された医薬品の組み合わせが登録されているわけではなく,検索の過程においても,一般名コード,薬効分類コード,BOXコードのそれぞれについての検索が,自己医薬品及び相手医薬品について順次行われており,相互作用マスタに登録した医薬品の組み合わせと合致するか否かを判断する過程は存在しない。
したがって,
引用発明3の検索過程は,
前記相互作用マスタに登録した医薬品の組み合わせと合致するか否かを判断するものとはいえない。

小括
以上のとおり,審決は本件発明1と引用発明3の相違点を看過したものであり,この誤りは,本件発明1の進歩性を否定した審決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,審決の上記部分は取り消されるべきである。
(2)

容易想到性の判断について
審決は,引用発明3に甲6~10文献により認定された技術事項を適用することにより,相違点4-1に係る構成に容易に想到することができると判断したが,誤りである。


技術事項の認定
審決は,甲6~10文献から,薬物間の相互作用をマトリックス形式で表示する技術事項(以下技術事項甲6-10という。)を,また,特に甲7~10文献から次の技術事項(以下技術事項甲7-10という。)を認定できるとする。
m.相互作用をチェックするシステムにおいて,
n.医薬品の対象となる自己医薬品の名称と,
相互作用チェック処理の対
象となる相手医薬品の名称とをマトリックス形式の行又は列にそれぞれ表示し,
o.自己医薬品と相手医薬品の間の相互作用チェック処理の結果を,前記マトリックス形式の該当する各セルに表示する
しかし,甲6~10文献には,相互作用チェックとは無関係な発明や,双方向の相互作用のチェックを行うもの,あるいは,一方向の相互作用の確認を行うものが含まれており,その技術思想はそれぞれ異なり,ひとくくりに技術事項を読み取ることはできない。


相違点4-1の容易想到性
(ア)

甲6~10文献で用いられる相互作用チェックの意味内容はそれ

ぞれ異なり,これらから,相互作用のチェックの結果をユーザに提供するという共通の課題を認定したり,各薬品間の関係を一覧表示でき,ユーザの視認性を高めるとの共通の一般的効果を認定したりすることはできない。また,引用発明3の医薬品相互作用チェックテーブル105には,併用注意,併用禁忌といった情報が記憶されるフィールドは存在せず,そもそもマトリックス表示する意味がない。(イ)

相互作用チェックの結果をどのように表示するかは,
相互作用の確認

結果としてどのような情報を提供するかを前提問題とするものであるところ,引用発明3においては,本件発明に見られるような詳細かつ適切な情報を提供するという技術思想は開示されていない。相互作用の確認結果は,文字情報のみで表示する構成も考えうるところであり,それが特に見にくいというわけでもない(甲14文献の【図7】【図8】)。そもそも,引用発明3のように,一方向からの相互作用の確認を
行う場合には,マトリックス表示を行う必要がなく,むしろ,マトリックス表示は有害である。
すなわち,一方向からの相互作用チェックの結果をマトリックス表示した場合,その表示内容は,常に対角線を軸として線対称となるから,相互作用情報を一次元で表示する場合と比較して,なんら付加的な情報を提供しないばかりか,むしろ,データ量が増えたり,表示のためにより多くの画面上の面積が必要になったりするとのデメリットのみが残る。そのため,一方向からの相互作用チェックを行う発明に接した当業者には,
マトリックス表示を選択する動機付けが生じることがないのである。マトリックス表示が意味を持つのは,相互作用確認結果の表示一般ではなく,相互作用マスタによる双方向の相互作用確認の結果を表示する場合に限定されるのであるから,引用発明3とマトリックス表示を開示した副引例を組み合わせることに容易性はなく,この点を看過した審決には,容易性判断の誤りがあるものというべきである。
(ウ)

引用発明3における相互作用情報の検索に際しては,自己医薬品が,一般名コード,薬効分類コード,BOXコードのそれぞれについて,自己テーブル部と相手テーブル部が,一時ファイルを通じて順次検索されるため,自己医薬品群と相手医薬品群という多対多の検索結果が抽出される。つまり,引用発明3の検索結果は,1対1の対応関係を維持したものではなく,特定の自己医薬品と相手医薬品との組み合わせに関係する可能性のある添付文書情報が,当該自己医薬品や相手医薬品に関するものに限らず,自己医薬品群を主として片端から羅列され
る,というものである。このような状態を表示するには,添付文書情報を単純に縦1列に列挙するか,あるいは,添付文書情報ごとに相手医薬品の候補となり得る医薬品を列挙したツリー構造のような表示方法が適切であり,医薬品を縦横に並べたマトリックス表示を生成することはできない。さらに,仮に,この検索を双方向で行った場合には,
多対多
の組み合わせが2つ生じることとなるから,その表示手段としてマトリックス表示を用いることなど不可能になるし,何らかの工夫をして無理やりマトリックス表示をしたとしても,
利用に耐えるものとはならない。
したがって,引用発明3にマトリックス表示を組み合わせることには阻害事由がある。

小括
以上のとおり,審決の相違点4-1の容易想到性の判断には誤りがあるから,
審決のうち本件発明1を無効とした部分は取り消されるべきである。
(3)

結論
よって,審決のうち本件発明1を無効とした部分は取り消されるべきであ
る。
2
被告取消事由2(本件発明2に関する進歩性判断の誤り)について審決において,本件発明1と引用発明3の相違点を看過し,その誤りが本件発明1を無効とする審決の判断に影響するものであること,相違点4-1の容易想到性の判断にも誤りがあることは,前記1記載のとおりである。これらの点は,本件発明1を引用する本件発明2にも妥当するから,審決のうち本件発明2を無効とした部分は取り消されるべきものである。3
被告取消事由3(本件発明3に関する進歩性判断の誤り)について(1)

本件発明1について
審決において,本件発明1と引用発明3の相違点を看過し,その誤りが本
件発明1を無効とする審決の判断に影響するものであること,相違点4-1の容易想到性の判断にも誤りがあることは,前記1記載のとおりである。これらの点は,本件発明1を引用する本件発明3にも妥当する。
(2)

本件発明3の付加的構成について
審決は,本件発明3における本件発明1の付加的構成に係る相違点4-2の構成は容易に想到することができると判断したが,誤りである。すなわち,引用発明3は,相互作用表示の結果をマトリックス表示する構成を開示していないことから,マトリックス表示をまずは採用しなければ,詳細表示にまでたどり着くことができず,本件発明3の構成に想到することは一層困難である。
また,引用発明3と,甲9文献から明らかになるのは,相互作用チェックの結果をマトリックス表示し,かつ,必要に応じてその詳細情報を表示するとの構成にすぎず,どのようにして,詳細表示画面を呼び出すかについては何ら開示していないのであり,甲9文献に接した当業者は,マトリックス表示上のセルをクリックすることにより,詳細情報を表示する構成には想い到らない。


審決は,表示対象を指定する必要性から,マトリックス表示上のセルをクリックすることが当然に導かれるとするが,
論理の飛躍がある。
例えば,
タッチパネルが普及した平成30年現在であれば,マトリックス表示の内容の詳細を表示するために,画面をクリックするという構成は容易に想到であるといえるとも思われるが,本件発明4が出願された平成12年当時は,むしろ,画面外に詳細表示ボタン等のインターフェースを設けることが主流であったと考えられる。審決の判示は現在の技術水準により,当時の技術水準を置き換えるものであり,正に後知恵である。
(3)

結論
以上のとおりであるから,審決のうち本件発明3を無効とした部分は取り
消されるべきである。
4
被告取消事由4(本件発明4に関する進歩性判断の誤り)について(1)

本件発明1について
審決において,本件発明1と引用発明3の相違点を看過し,その誤りが本
件発明1を無効とする審決の判断に影響するものであること,相違点4-1の容易想到性の判断にも誤りがあることは,前記1記載のとおりである。これらの点は,本件発明1を引用する本件発明4にも妥当する。
(2)

本件発明4の付加的構成について
前記1(1)のとおり,引用発明3の医薬品相互作用チェックテーブル105は,本件発明1の相互作用マスタに相当せず,また,引用発明3の検索過程は,本件発明1の相互作用チェック処理にも相当しないにもかかわらず,審決はこの点を誤り,そのため,本件発明4における本件発明1の付加的構成について新たな相違点がないとしているが,誤りである。すなわち,本件発明4における蓄積処方データは患者の全ての処方データを蓄積して記憶するデータであり,相互作用マスタを構築する際に相手医薬品として用いられるのに対し,引用発明3は,医薬品マスターコードを記憶装置に記録することまでは開示しているものの,これを医薬品相互作用チェックテーブル105の相手テーブル部402に格納することについて,何ら開示していない。
引用発明3の処方履歴を基に抽出した患者が服用している医薬品(相手医薬品)の医薬品マスターコードは,本件発明4の検索処理における相手医薬品に相当しない。
以上のとおり,審決には相違点の判断に誤りがあり,これは,本件発明4を無効とした審決の結論に影響を及ぼすものである。
(3)

結論
以上のとおりであるから,審決のうち本件発明4を無効とした部分は取り
消されるべきである。
5
被告取消事由5(本件発明6に関する進歩性判断の誤り)について(1)

本件発明1について
審決において,本件発明1と引用発明3の相違点を看過し,その誤りが本
件発明1を無効とする審決の判断に影響するものであること,相違点4-1の容易想到性の判断にも誤りがあることは,前記1記載のとおりである。これらの点は,本件発明1を引用する本件発明6にも妥当する。
(2)

本件発明6の付加的構成について
前記1(1)のとおり,引用発明3の医薬品相互作用チェックテーブル105は,本件発明1の相互作用マスタに相当せず,また,引用発明3の検索過程は,本件発明1の相互作用チェック処理にも相当しないにもかかわらず,審決はこの点を誤っている。そのため,審決が本件発明6における本件発明1の付加的構成について認定した相違点(相違点4-4)の認定にも誤りがある。


また,審決は,相違点4-4の構成は容易に想到することができると判断したが,誤りである。
審決は,表示される情報量を更に高めるために,引用発明3と甲8文献記載の技術事項を組み合わせることが容易想到であるとするが,併用禁忌,併用注意の文字を記号に置き換えたからといって,表示される情報量に変化はない。また,甲8文献記載のマトリックス表示は煩雑かつ識別性が低いから,引用発明3にこのようなマトリックス表示を組み合わせても本件発明6の構成に想到することはない。

以上のとおり,審決における,本件発明6の付加的構成に係る構成についての相違点の認定及び相違点4-4の構成の容易想到性の判断には誤りがある。

(3)

結論
以上のとおりであるから,審決のうち本件発明6を無効とした部分は取り
消されるべきである。
6
被告取消事由6(本件発明8に関する進歩性判断の誤り)について(1)

本件発明1について
審決において,本件発明1と引用発明3の相違点を看過し,その誤りが本
件発明1を無効とする審決の判断に影響するものであること,相違点4-1の容易想到性の判断にも誤りがあることは,前記1記載のとおりである。これらの点は,本件発明1を引用する本件発明8にも妥当する。
(2)

本件発明6の付加的構成について
前記1(1)のとおり,引用発明3の医薬品相互作用チェックテーブル105は,本件発明1の相互作用マスタに相当せず,また,引用発明3の検索過程は,本件発明1の相互作用チェック処理にも相当しないにもかかわらず,審決はこの点を誤っている。そのため,審決が本件発明8における本件発明1の付加的構成について認定した相違点(相違点4-6)の認定にも誤りがある。


また,審決は,相違点4-6の構成は容易に想到することができると判断したが,誤りである。
(ア)

甲18文献に記載の発明(以下甲18発明という。)の認定の誤


甲18文献の
処方監査
(構成a)処方された各医薬品について,
は,
薬品ファイルの薬物相互作用の欄を参照し,相互作用を起こす薬品が処方されているかを判別し(S28),相互作用を起こす薬品が処方されている場合には警告を発する(S29)(甲18文献【0052】)
ものである。審決は,
処方監査が,本件発明の相互作用チェック
に相当することを前提として,例外ファイルのみについて言及しているが,処方監査が相互作用チェックに相当することを論じな
い点で既に理由不備の違法がある。
また,処方監査により行われている薬品ファイルの薬物相互作用
欄の確認(甲18文献【0052】)は,あくまでも,自己医薬品から見た場合に,
相手医薬品に相互作用があるか否かを判断する一方向の
相互作用の確認
に留まり,
双方向の確認作業である
相互作用チェック
ではない。このように甲18発明における一方向の処方監査と本件発明における双方向の相互作用チェックは別個の概念である。
審決は,甲18発明において,相互作用除外マスタを論じる前提
として相互作用マスタに相当する構成について論じておらず,理由不備の違法がある。仮に,薬品ファイルが相互作用マスタに相
当するとするものであるとしても,薬品ファイルは個別の医薬品に作成され,薬物相互作用欄を有するものであるが(甲18文献【図6】【図7】),そこに格納される医薬品の数を1つに限定する旨の記載はないから,個別に格納の構成は開示されていない。また,甲18発明は,
一方向の
相互作用の確認
を行うものにすぎないことから,
薬品ファイルにおいて,医薬品の相互作用情報を各医薬品の2通りの主従関係について個別に格納する必要はない。そのため,甲18発明の薬品ファイルは相互作用マスタに相当する構成を開
示し,又は示唆するものではない。
審決は,甲18発明における例外ファイルが相互作用除外マスタに対応し得るとしている。しかし,本件発明の相互作用除外マスタは相互作用マスタと同一の構成を有するところ(本件明細書【0033】),上述のとおり,甲18発明には相互作用マスタに相当する構成がなく,かつ,甲18文献には例外ファイルの具体的な構成が開示されていないから,甲18発明が相互作用除外マスタを開示ないし示唆するものとはいえない。
また,本件発明8において相互作用除外マスタを採用したのは,
相互作用マスタを保持することによって従来技術と比較して詳細な情報が提供されることを前提に,重要度の高い相互作用だけを表示することができ,情報過多による弊害を阻止する(本件明細書【0045】)ためであるところ,甲18発明では,警告の除外を行う理由を処方監査が行われ,警告の対象となった場合,担当医師に確認するのが原則である。しかし,医師が承知の上で処方している場合はその必要はなく,毎回照会を行うと医師側及び薬局側の作業が停滞してしまう。この発明によれば,同一の警告が繰り返して発行される事態を防止でき,調剤作業を効率化することができる。(甲18文献【0021】)としており,その主眼はあくまでも,既に確認済みの情報について警告の表示が頻回にわたることを防止し,医師や薬剤師による確認作業を簡易効率化することにある。
このように,甲18発明の例外ファイルは,本件発明の相互作用除外マスタとは異なる課題を解決するために設けられており,
かつ,
構成にも同一性が認められないから,相互作用除外マスタを開示するものではない。
(イ)

審決は,
引用発明3と甲18発明とを組み合わせることについて,

に理由なく,容易想到であったと判示しているが,明らかに判断に遺漏がある。

以上のとおり,審決における,本件発明8の付加的構成に係る構成についての相違点の認定及び相違点4-6の構成の容易想到性の判断には誤りがある。

(3)

以上のとおりであるから,
審決のうち本件発明8を無効とした部分は取り

消されるべきである。
第4
1
原告の反論
被告取消事由1(本件発明1に関する進歩性判断の誤り)について(1)

相違点の認定について
本件発明1について
(ア)

被告らは,個別に格納が①同一粒度,かつ,②分離格納を意味す
ると主張するが,このような主張は,審判手続において現実に争われたものではないから,審決取消訴訟である本件訴訟において,審理の対象とされるべきでない。
(イ)

本件発明1の個別に格納とは,一の医薬品から見た他の一の医薬品と,前記他の一の医薬品から見た前記一の医薬品の2通りの組み合わせを,別々に格納したことを意味するものであり,それ以上のデータ格納構成を意味するものではない。
すなわち,特許請求の範囲の記載によれば,個別に格納されるの
は,一の医薬品から見た他の一の医薬品と,前記他の一の医薬品から見た前記一の医薬品の2通りの組み合わせであることが文理上明らかであり,また,本件明細書にはこれらの用語について特段の説明はない。
したがって,個別に格納とは,①A薬品からみたB薬品に関する相互作用情報と②B薬品からみたA薬品に関する相互作用情報を個別に格納することであり,①A薬品からみたB薬品に関する相互作用情報と③A薬品からみたC薬品に関する相互作用情報とを個別に格納することは意味しない。
(ウ)

本件発明の課題は,
医薬品の相互作用のチェック結果を,実用的に分かりやすく表示できる医薬品相互作用チェック装置を提供すること(本件明細書【0011】)であるから,課題の解決手段である本件発明の技術的特徴はマトリックス形式による表示にある。そして,本件発明は,ある2つの医薬品間の相互作用チェックの結果を,2通りの主従関係を区別して表示することを目的とするものであるから,ある2つの医薬品同士の相互作用が主従を区別して定義されていれば足り,その定義が同じレベルの概念(基準ないし粒度)同士の組み合わせでされていることは必要ではない。仮に異なるレベルの概念同士の組み合わせで相互作用が定義されていたとしても,それぞれの概念に当てはまる具体的な医薬品が定義されていれば,ある2つの医薬品同士の相互作用は,前記概念同士の組み合わせとしてチェックできるのであり,結果として,具体的な医薬品同士の相互作用として主従を区別して表示することができる。現に,引用発明3は,具体的な医薬品同士の相互作用が,主従を区別して表示される(甲14文献図7,8)。
そうすると,個別に格納とは,その表示の前提として,一の医薬品から見た他の一の医薬品と,前記他の一の医薬品から見た前記一の医薬品の2通りの組み合わせを別々に格納することを意味することは明らかである。そして,一の医薬品(薬品A)から見た他の一の医薬品(薬品B)の相互作用情報と,他の一の医薬品(薬品B)から見た一の医薬品
(薬品A)
の相互作用情報を格納する方式としては,
リレーショナルデータベースの格納方式も取り得るし,ツリー構造での格納方式も取り得るのであり,本件明細書の実施例がリレーショナルデータベースの格納方式であるからといって,個別に格納がデータ格納方式まで特定しているものと解釈することはできない。
(エ)

本件発明2は,
薬効コード同士の組み合わせで相互作用が発生する組

み合わせを定義する態様であるところ,その場合,各コードに該当する具体的な医薬品の数に応じて,1対1の場合もあれば,1対多
の場合もあれば,多対多の場合もあれば,多対1の場合もあり
うるのであり,本件発明が1対1であるということもできない。
(オ)
a
本件特許の出願経過からも,同様の理解ができる。
すなわち,被告らは,1回目の拒絶理由通知に対応して,平成21年12月25日付手続補正書(甲23)により一の医薬品から見た他の一の医薬品の場合と,前記他の一の医薬品から見た前記一の医薬品の場合の2通りの主従関係で,相互作用が発生する組み合わせを個別に格納する相互作用マスタを記憶する記憶手段と,という構成を追加し,同日提出の意見書(甲24)において,従来技術について

引用文献1から4では,処方された医薬品同士の組み合わせで相互作用が発生するものがあるか否かをチェックできるようにした点が開示されているに過ぎません。

これに対し,本発明では,相互作用マスタに,一の医薬品から見た他の一の医薬品の場合と,前記他の一の医薬品から見た前記一の医薬品の場合の2通りの主従関係で,相互作用が発生する組み合わせを個別に格納するようにしています。これは,相互作用の判断根拠となる作用発現の仕組み(作用機序)を記載した添付文書が医薬品毎に存在し,又,その内容が相違する場合があるためです。例えば,一の医薬品(A薬)と,他の一の医薬品(B薬)との関係で,A薬の相互作用情報にはB薬との服用には注意が必要となることが含まれている場合であっても,B薬の相互作用情報にはA薬との関係が触れられていない場合があります。と述べている。このように,個別に格納とは,A薬の相互作用情報にはB薬と
の服用には注意が必要となることが含まれている場合であっても,B薬の相互作用情報にはA薬との関係が触れられていない場合があるから,A薬とB薬の両方の相互作用情報を確認すべく,一の医薬品(A薬)から見た場合と,他の一の医薬品(B薬)から見た場合とを区別して格納するという意味であることを被告ら自らが明らかにしている。b
さらに,平成22年1月20日起案の拒絶理由通知書(甲34)で引用された主引例である引用文献1(甲13文献)の段落0012等には,生成されたすべての薬品名の組み合わせ(medn(i),medn(j)(i≠j))のチェックについて,medn(i),medn(j)を入れ替えて行うことが記載されており,
この点が,
上記通知書で指摘されている。
同時点の請求項1において,記憶手段,制御手段の構成は,本件発明1と同じであった。
上記通知書に係る拒絶理由通知において,本件発明のマトリックス表示に関する構成を除いた,2通りの主従関係で個別に格納する相互作用マスタ,双方向チェックでチェックは引用文献1(甲13文献)により公知とされ,被告らは,これに対し,マトリックス表示する旨の特定事項を加えた補正を行い
(平成22年3月29日付手続補正書。
甲35),同日付けの意見書(甲55)を提出し,被告らが主張する本件発明の作用効果は,マトリックス表示によりA薬品→B薬品と,B薬品→A薬品のチェックの結果を区別して表示できる点であることを述べた。このような作用効果を考えれば,相互作用が発生する組み合わせの定義にあたり,相互作用マスタに定義される相互作用が発生する医薬品の組み合わせの定義において,
用いられる概念の大きさは,
医薬品名でもよく,医薬品群(薬効コード等)同士でもよく,さらに概念が同じ大きさであっても異なる大きさであっても構わない,すなわち,A薬品→B薬品と,B薬品→A薬品とのチェックの結果を区別して表示できるという作用効果が得られるのであって,それが同一粒度であるか否か,また,リレーショナルデータベース方式なのかあるいは他の方式なのかは,前記作用効果と無関係である。
以上より,本件発明の個別に格納について,被告らの主張する
同一粒度かつ分離格納を意味するとすることは失当である。

引用発明3について
(ア)
a
医薬品相互作用チェックテーブル105の構成
引用発明3の医薬品相互作用チェックテーブル105は,添付
文書から抽出された
医薬品間の相互作用の有無をチェックする情報
が記載されている(甲14文献【0017】13~14行)。
各医薬品には該当する一般名コード,薬効分類コードが必ず存在すること,特定の医薬品の添付文書には,相互作用が発生する相手方医薬品が,商品名,一般名,薬効,その他の概念で記載されていることから,医薬品相互作用チェックテーブル105に記憶される情報
は,添付文書の記載から抽出されるこれらの情報の全てをコード化したものであって,添付文書から抽出される一般名コード,薬効分類コード,BOXコードから選ばれるコード同士の任意の組み合わせを含みうる。
薬品Aの添付文書に,
薬品B
(あるいはこれが属する医薬群)
と相互作用を有することが記載され,一方,薬品Bの添付文書に薬品A(あるいはこれが属する医薬群)と相互作用を有することが記載されている場合を想定すると,薬品Aの添付文書に基づく情報である薬品Aから見た薬品B
(あるいはこれが属する医薬群)
との相互作用と,
薬品Bの添付文書に基づく情報である薬品Bから見た薬品A(あるいはこれが属する医薬群)との相互作用の情報は,必然的に別の情報として記憶される。

b
また,薬品Aの添付文書に,薬品Bの医薬品名でなくても,薬品Bが属する医薬群(例えば,薬品Bの一般名,薬品Bの薬効+剤のような標記)との相互作用が記載されていれば,当該添付文書に基づいて,薬品Aの一般名コード及び薬効分類コード(これらは医薬品ごとに必ず存在する)並びにBOXコードを自己テーブル部401に,相
手方医薬群の概念から特定される(薬品Bの)一般名コード,薬効分類コード及びBOXコードを相手テーブル部402に,これらの
間の相互作用に関する情報をコメントテーブル部403に記憶す
ることになる。そして,薬品Bの添付文書に基づく情報についても,同じように各コードの組み合わせとして,医薬品相互作用チェックテーブル105の各テーブル部に記憶することになる。これによれば,医薬品相互作用チェックテーブル105には,
薬品Aから見た薬品Bの場合と薬品Bから見た薬品Aの場合とが,別の情報として記憶されることが明らかである。
(イ)

引用発明3における検索処理の構成
引用発明3の医薬品相互作用チェックテーブル105は各コード

の組み合わせによって,相互作用が発生する医薬品群の組み合わせを定義するものであり(甲14文献の図4),これらの各コードと具体的な医薬品の紐づけは,医薬品相互作用チェックマスタ104でされているから,検索においては,処方された自己医薬品と相手医薬品の各コードを医薬品相互作用チェックマスタ104から抽出し,抽出した各コードの組み合わせが医薬品相互作用チェックテーブル105に存在するか否かを検索する。したがって,結果として処方された自己医薬品と相手医薬品との関係が,医薬品相互作用チェックマスタ105」に登録されている相互作用が発生する医薬群の組み合わせに合致するか否かを判断していることになることも明らかである(甲14文献の図7,8。図8のトリルダン,クラリシッドは,いずれも具体的な医薬品の商品名である)。したがって,検索の結果出力されるのは,当然に,「自己医薬品テーブル102と相手医薬品テーブル103に処方医薬品として入力した具体的な医薬品間の相互作用である。

本件発明1と引用発明3の対比
(ア)医薬品相互作用チェックテーブル105
に登録されている各コー
ドの組み合わせに着目すれば,一般名コード同士,薬効分類コード同士といった同じ概念同士のコードの組み合わせを含むことが当然に予定されている。一方,組み合わせに該当する医薬品の数という点でいえば,同じ概念同士か違う概念同士かにかかわらず,各コードに該当する具体的な医薬品の数に応じて,1対1の場合もあれば,1対多の場
合もあれば,
多対多の場合もあれば,
多対1の場合もありうる。
以上のように,引用発明3において,各コードに該当する具体的な医薬品の数が,1対多であるとの被告らの主張の根拠が不明である。
したがって,具体的な医薬品の数が1対1に限られるか,1対多を含むのか,という点で,本件発明と引用発明3は区別し得ず,かえって,引用発明3の医薬品相互作用チェックテーブル105は,具体的な医薬品間の相互作用を上位概念である各コード同士の関係によって定義している点で何ら相違はない。
仮に,被告ら主張のように解釈したとしても,引用発明3も本件発明と同じく,同じ概念のコード同士で相互作用が発生する組み合わせを記憶する構成を含んでいるものであって,両発明に相違はない。
(イ)

本件発明2や本件明細書記載の実施例と引用発明3から明らかなとお
り,相互作用マスタに記憶される情報は,相互作用が発生する医薬の分類に関するコード同士の組み合わせであり,データベースで定義される相互作用の情報は添付文書から抽出される医薬品(医薬品群)同士の相互作用情報であるから,その情報に違いはない。これは,本件発明も引用発明3も添付文書の情報に基づいて処方監査業務を行うことを大前提とするシステムである以上,当然である。
被告らは,
相互作用マスタ相互作用チェックテーブル105

に記憶される情報が,効能や薬効成分といった上位概念と医薬品名である下位概念とを紐づける作業(薬学的判断)を経たものであるか否かにおいて異なると主張するが,このような作業を経た情報を入力することは本件発明の特定事項とはなっておらず,このような基準によって両発明を区別することはできない。
また,引用発明3は,医薬品相互作用チェックマスタ104にお
いて,下位概念である個々の医薬品と,上位概念である一般名コード,薬効分類コード,BOXコードとの関係が定義され,医薬品相互作用チェックテーブル105における各コードが,具体的な医薬品と紐づけられている。医薬品相互作用チェックマスタ104における紐づけの際には,薬剤師等の専門知識を持った者による添付文書に記載された情報に基づく判断,すなわち,薬学的判断がされていることは明らかである。
なお,被告らの主張する薬学的判断が添付文書に記載された情報に基づかない判断という意味だとしても,そのような判断を経ることは,本件発明の特許請求の範囲,明細書のどこにも記載されておらず,何ら根拠のない解釈であって,失当であるし,データベースに入力するデータをどのような基準で用意するかは本件発明に含まれないから,特許請求の範囲に基づかない無意味な主張である。
(ウ)

被告ら主張の相違点1について,引用発明3は,処方された医薬品を
自己医薬品のみとするものではなく,自己医薬品及び相手医薬品とするものであるから,被告らの主張は失当である。
相違点2について,本件発明2における薬効コード同士の組み合
わせで相互作用を記憶する限り,多対多の関係が生じるし,一方で,引用発明3においても各コードと具体的な医薬品の紐づけが行われることにより具体的な医薬品間の相互作用をチェックできるのであって,この点で本件発明と引用発明3との間に相違はない。
相違点3について,引用発明3の検索においては,入力された処方医薬品である自己医薬品が医薬品相互作用チェックテーブル105の自己テーブル部401に存在するか否かを検索し,検索結果として得られたデータの範囲において同時に入力された処方医薬品である相手医薬品が医薬品相互作用チェックテーブル105の相手テーブル部402に存在するか否かを検索しているので,結果として,入力された処方医薬品を自己医薬品及び相手医薬品とし,
その組み合わせが
医薬品相互作用チェックテーブル105に記憶された医薬品群の組み合わせと合致するか否かを判断していることになるので,まさに本件発明と同一である。
(エ)

甲14文献の【0017】によれば,処方される医薬品は,自己医薬品テーブル102にも相手医薬品テーブル103にも記憶される。そして,自己医薬品テーブル102及び相手医薬品テーブル103に登録された医薬品の各コードを医薬品相互作用チェックマスタ104から読み出し,自己医薬品テーブル102に登録された医薬品の各コードが
医薬品相互作用チェックテーブル105自の己テーブル部401に存在するか否かを検索し該当するデータを一時記憶テーブル110に記憶し,続いて一時記憶テーブル110に記憶されたデータを対象として相手医薬品テーブル103に登録された医薬品の各コードが相手テーブル部402に存在するか否かを検索している。
したがって,引用発明3は,処方された医薬品を自己医薬品及び相手医薬品とし(図2の101,102,103),それぞれの各コードを確定し(図6の801),それらの各コードの組み合わせが医薬品相互作用チェックテーブル105内に存在するか否かを,自己テーブル部,相手テーブル部の順に検索することで判断しているのであるから,主従が入れ替わった双方向の検索を行っている。
(2)

容易想到性の判断について
甲6~10文献の記載事項に鑑みれば,技術事項甲6-10が薬物間の相互作用をチェックすることを目的としたものであり,技術事項甲7-10が相互作用チェックシステムを提供するものであることは明らかであり,これらの技術事項についての審決の認定に誤りはない。

本件発明は,本件明細書【0011】に記載のとおり,医薬品の相互作用のチェック結果を,実用的に分かりやすく表示できる医薬品相互作用チェック装置を提供することを課題とするものであって,
その背景には,
従来の相互作用チェックシステムにおける表示が実用的で分かりやすいとはいえないという問題があったとされている【0008】【0011】。(


また,医薬品相互作用チェックシステムは,医療機関において,医師や薬剤師が処方箋の発行や処方監査業務を行う際に利用されるものであり(甲
3文献258~259頁『医薬分業と医薬品情報』,甲14文献【0001】等参照),相互作用チェックの結果を医師や薬剤師に正確に知らせることが目的であることはいうまでもない。したがって,相互作用チェックシステムにおいて,チェック結果をユーザに分かり易く表示することは,当業者が当然に認識している普遍的,一般的な課題である。
そして,本件発明と引用発明3の対比の結果導かれる,引用発明3において未解決であった本件発明の課題は,相互作用チェックの結果を分かり易く一覧表示することにあることであり,これは,本件明細書の【0011】の記載とも一致する。


引用発明3から出発した当業者にとって,相互作用チェックの結果を分かり易く表示するという本件発明の属する分野における一般的・普遍的な課題を解決するために,その課題に対する解決手段が具体的に示唆された甲6~10文献を参照し,甲6~10文献のマトリックス表示についての技術事項を引用発明3に適用することは,容易に想到できたことである。薬品Aと薬品Bの間の相互作用について,いずれの添付文書から見るかによって,
結果が異なる場合があることは出願時の技術常識であり
(甲2,
5,
6文献)双方向チェックを行うシステムは出願時に周知であった

(甲
3文献表参照)。

甲7,8文献の記載に裏付けられる公知発明(公然実施発明)は,医薬品間でそれぞれ添付文書に相互作用の記載があるかどうかを検索してマトリックスで表示するものであって,薬品Aと薬品Bのいずれの添付文書から見るかによって,相互作用チェックの結果が異なる場合は,結果としてマトリックス表示が非対称となることは,甲8文献の別紙6-2からも明らかであるから,主従を入れ替えた場合に結果が相違する場合に,その違いを含めてマトリックス表示するという効果も既存のものであった。このように,双方向チェックにおいてマトリックス表示を採用した場合の効果についても,甲7,8文献から直ちに認識されるものであり,本件発明が従来技術から予測できない顕著な効果を有しているともいえない。

引用発明3で出力される相互作用についての情報は,具体的な2つの医薬品間の相互作用である(甲14文献図7,8)。そして,引用発明3の出力に含まれる情報は,自己医薬品名,相手医薬品名,それらの間の相互作用コメント(禁忌等の情報を含む),機序であり,マトリックス表示をするのに必要な項目を含む。被告らが主張する多対多が何を意味しているのか判然としないが,仮に,医薬品相互作用チェックテーブル105における各コード同士の組み合わせにおいて,各コードが示す医薬品群に属する医薬品が複数あるという意味だとしても,そのことがマトリックス表示することの阻害事由となる理由は不明である。現に,甲7,8文献に裏付けられる公知発明(公然実施発明)は,添付文書情報に基づいて相互作用をチェックするシステムであり,添付文書には相互作用を発生する相手医薬品が薬効群などの医薬品群で特定される場合があるが,その場合でも,特定の医薬品同士の相互作用についてのチェック結果を,マトリックスで表示している。
したがって,
引用発明3のテキスト表示に代えて,
マトリックス表示を採用することに阻害事由は存在しない。
2
被告取消事由2(本件発明2に関する進歩性判断の誤り)について本件発明2についての被告らの主張は本件発明1と同じものであるから,被告取消事由2についても理由はない。

3
被告取消事由3(本件発明3に関する進歩性判断の誤り)について被告らは,平成12年当時は,むしろ,画面外に詳細表示ボタン等のインターフェースを設けることが主流であったと考えられると主張するが,これを裏付ける証拠を提出していない。そもそも,セルを指定させずに,画面外に詳細表示ボタン等のインターフェースを設ける方法によって,どのように詳細表示が可能となるのか不明である。セルを指定しない限り,セルに紐づいた詳細表示を表示することはできないと考えるのが普通である。

4
被告取消事由4(本件発明4に関する進歩性判断の誤り)について相手医薬品テーブル103に格納された処方履歴を基に抽出した患者が服用している医薬品(相手医薬品)の医薬品マスターコードが,本件発明4にいう
患者データを含む過去の処方データを蓄積した蓄積処方データ
に相当し,相手医薬品テーブル103に格納されている以上,検索処理においては,相手医薬品として扱われる旨の審決の認定に誤りはない。
5
被告取消事由5(本件発明6に関する進歩性判断の誤り)について甲8文献の別紙6-2に示されるとおり,禁忌,注意の文字に代えて,◎,〇の記号を用いることは公知であり,引用発明3に甲8文献に基づいてマトリックス表示を適用する際に,記号の採用を行うことは設計事項に過ぎない。6
被告取消事由6(本件発明8に関する進歩性判断の誤り)について甲18発明の例外ファイルは,相互作用チェックを除外する処方(医薬品の組み合わせ)を除外するものである点で,本件発明8の相互作用除外マスタと一致する。甲18発明では例外ファイルが薬効コードの組み合わせで定義されていることは特定されていないが,医薬品同士の相互作用が発生する組み合わせを,薬効コード等の上位概念で定義することは,引用発明3に記載されているとおりであり,例外ファイルにもこれを適用することは設計事項に過ぎない。

第5
1
原告主張の取消事由
原告取消事由1(本件発明5,7,9に関する引用発明1に基づく新規性,進歩性判断の誤り)について
(1)

引用発明1の認定について
甲8文献別紙6-2によれば,
引用発明1は以下のとおりである
(以下
原告主張引用発明1という。)。
添付文書の情報をデータベース化した添付文書データベースを備え,A薬品とB薬品との間で,それぞれ添付文書に相互作用の記載があるかどうかを検索して,双方向でのチェックを行い,対象となる医薬品名とアルファベットを行に表示し,列にはアルファベットのみを表示したマトリックス表示において,相互作用チェック結果を該当するセルに表示し,さらに,相互作用チェック結果の表示画面には,医薬品名を入力可能な「テキストボックス及びチェック開始ボタンが配置され,テキストボックスに医薬品名を追加入力し,チェック開始ボタン
を押下することでテキストボックス入力された医薬品名が,チェック対象として設定され,チェック結果を表示すべきチェック対象としてマトリックスに表示され,相互作チェックが行われる,
相互作用チェックのシステム」
(2)

相違点の認定について
相違点1-1について
(ア)

本件発明1の相互作用マスタ
前記第4の1(1)アのとおり,本件発明1の個別に格納とは,①A
薬品からみたB薬品に関する相互作用情報と②B薬品からみたA薬品に関する相互作用情報を個別に格納することであり,①A薬品からみたB薬品に関する相互作用情報と③A薬品からみたC薬品に関する相互作用情報とを個別に格納することは意味しない。
(イ)
a
引用発明1の添付文書データベース
添付文書において,1つの医薬品に対して,相互作用が発生する医薬品が複数記載される場合であっても,これに含まれる相互作用が発生する組み合わせの情報は,1つの医薬品から見た他の1つの医薬品についての相互作用の情報であることに変わりない。例えば,A薬品の添付文書の情報に,A薬品に対して相互作用が発生する医薬品の情報として,B薬品のみならず,他の薬効の医薬品,例えばC薬品の情報が含まれていたとしても,添付文書に含まれる相互作用が発生する組み合わせの情報は,①A薬品からみたB薬品に関する相互作用情報と,③A薬品からみたC薬品に関する相互作用情報である。
b
このように,添付文書情報の一般常識に鑑みれば,引用発明1でも①A薬品からみたB薬品に関する相互作用情報と,③A薬品からみたC薬品に関する相互作用情報は別のものとして記憶されていることが明らかであるから,仮に,本件発明1の個別に格納が,①A薬品からみたB薬品に関する相互作用情報と③A薬品からみたC薬品に関する相互作用情報とを個別に格納することをも意味するとしても,引用発明1は個別に格納を満たしている。
c
したがって,引用発明1の添付文書データベースも一の医薬品から見た他の一の医薬品との相互作用データを含む添付文書データと,前記他の一の医薬品から見た前記一の医薬品との
相互作用データを含む添付文書データに表される2通りの組み合わせを,別々に格納している。

(ウ)

このように,引用発明1の添付文書データベースは,本件発明1

にいう
相互作用マスタ
に該当するから,
相違点1-1は存在しない。

相違点1-2について
甲8文献別紙6-1,6-2によれば,引用発明1は,当然に新規処方データ(複数の医薬品を含むもの)が入力されることを想定したものである。一つの新規処方薬と過去の処方薬のチェックを想定しているのであれば,新規処方薬の入力欄は一つで良いし,過去の処方薬については都度入力させることは考えにくく,患者ごとに蓄積された過去の処方データを利用してチェックするのが出願時の技術水準に鑑みれば自然である。また,甲3文献において,

病院,市中の薬局においては,患者に処方された薬剤の監査を怠る訳にはいかないのが現状である。このようなことから,人手,コンピュータにかかわらず相互作用のチェックシステムの必要性が要求されている

(259頁左欄6~11行)との記載があり,市販の相互作用のチェックシステムの紹介がされていることに鑑みても,相互作用のチェックシステムは処方における監査を目的としているものであることが技術常識であるから,
引用発明1において入力される医薬品は
新規処方データを含むものである。
したがって,相違点1-2は存在しない。


相違点1-3について
上記アのとおり,引用発明1の添付文書データベースは,本件発明にいう相互作用マスタに該当し,A薬品の添付文書データにB薬品との相互作用の記載があるか,B薬品の添付文書データにA薬品との相互作用の記載があるか,を判断しているのであるから,本件発明の構成と同様の構成を有している。
したがって,相違点1-3は存在しない。

相違点1-4について
引用発明1の列には,行に表示された医薬品の名称の横にアルファベットが表示され,列には対応するアルファベットが表示されている。列に表示されたアルファベットは,行に表示された対応するアルファベットの横に表示された医薬品の名称の代替記号であることは明らかであり,実質的に当該記号は医薬品の名称と同義であるから,列にも医薬品の名称が表示されているといえる。
したがって,相違点1-4は存在しない。


結論
以上のとおり,本件発明と引用発明1について,相違点1-1~1-4は存在しない。
したがって,無効理由1(新規性欠如)の判断には誤りがあるから,本件発明5,7,9についての審判請求は成り立たないとした部分は取り消されるべきである。
また,無効理由2(進歩性欠如)について,審決は,相違点1-1,1-3を根拠として本件発明5,7,9についての審判請求は成り立たないとしたものであり,上記相違点の認定の誤りが審決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,審決の上記部分は取り消されるべきである。
(3)

容易想到性の判断について
相違点1-1の容易想到性
(ア)

甲14文献の記載
甲14文献記載の技術常識に照らし,テキスト検索をリレーショナルデータベースに変更することは,当業者における設計事項であったことは審決の述べるとおりである。
(イ)

そして,
前記(2)アのとおり,
引用発明1においても,
一の医薬品
(薬

品A)から見た他の一の医薬品(薬品B)の相互作用情報と,他の一の医薬品(薬品B)から見た一の医薬品(薬品A)の相互作用情報とが,別々に格納されているのであるから,引用発明1にリレーショナルデータベースの格納方式を採用すれば本件発明1の構成に至ることは明白である。
上記(ア)のとおり,
引用発明1の添付文書に含まれる医薬品の相互作用
情報の格納方式としてリレーショナルデータベース格納方式を採用することは単なる設計事項であるから,相違点1-1に係る構成は容易に想到できたものといえる。
(ウ)

審決は,
特に相違点1-1の構成についての容易想到性が否定される

ことを根拠として本件発明5,7,9についての審判請求は成り立たないとしたものであり,上記相違点1-1の容易想到性の判断の誤りが審決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,審決の上記部分は取り消されるべきである。

本件発明5の追加の構成について
(ア)

本件発明5は,本件発明1に加えて,
前記表示手段は,自己医薬品の名称と相手医薬品の名称をマトリックス形式の行又は列にそれぞれ表示し,相手医薬品が新規処方データの医薬品である場合と,相手医薬品が蓄積処方データの各医薬品である場合とで切り替え可能に表示するという限定を付加した発明である。
本件発明5と引用発明1はこの点において相違する。
(イ)

そして,
甲22文献,
甲46
(特開平11-65804号公報)【0

002】,【0003】),甲47(特開平8-147316号公報)(【0001】等)の記載によれば,複数の項目(カテゴリー)に分類された情報の中から必要な項目に関連する情報を操作者が選択して表示させたい場合が存在することは,アプリケーションソフトウエアなどのソフトウエアによる表示における普遍的な課題であった。そして,当該課題の解決手段としてタブによる切り替えが周知であったことも明白である。このような周知技術ないし技術水準に照らせば,相互作用チェック結果を表示する上でも,必要な項目に関連する情報を表示させる方法として,甲22文献等に記載されるようなタブでの画面切り替えという周知技術を採用することには十分な動機付けがある。また,相互作用チェックシステムが処方監査の一つの機能であることを考慮すると,情報の分類を新規処方データと蓄積処方データとで区分けすることも当業者が適宜設計可能な事項に過ぎない。

本件発明7の追加の構成について
本件発明7は,本件発明1に加えて,前記表示手段は,表示するマトリックス形式の画面中,新規処方データの各医薬品に加えて,新たに医薬品を追加表示可能とする薬品追加ボタンを備え,前記制御手段は,前記薬品追加ボタンが操作されることにより,前記表示手段に表示したマトリックス形式の画面中,新規処方データの各医薬品の名称が表示された行又は列に,新たな医薬品の名称を追加し,追加表示した自己医薬品と,相手医薬品との相互作用を再チェックするという限定を付加した発明である。引用発明1の「チェック開始ボタン」は,本件発明7における新たに医薬品を追加表示可能とする薬品追加ボタンに該当するし,引用発明1の「テキストボックスに医薬品名を追加入力し,
チェック開始
ボタンを押下することでテキストボックス入力された医薬品名が,チェック対象として設定され,チェック結果を表示すべきチェック対象としてマトリックスに表示され,相互作用チェックが行われる」構成は,本件発明7における前記制御手段は,前記薬品追加ボタンが操作されることにより,前記表示手段に表示したマトリックス形式の画面中,新規処方データの各医薬品の名称が表示された行又は列に,新たな医薬品の名称を追加し,追加表示した自己医薬品と,相手医薬品との相互作用を再チェックするに該当する。
したがって,本件発明7と引用発明1との間には相違点は存在しない。エ
本件発明9の追加の構成について
(ア)

本件発明9は,本件発明1に加えて前記記憶手段は,相互作用が発生する医薬品の組み合わせについてのデータを薬効コードの組み合わせとして格納する相互作用共通マスタとは別に,各医療施設に応じて作成した相互作用個別マスタを記憶し,前記制御手段は,前記相互作用共通マスタに優先して,前記相互作用個別マスタに基づく相互作用チェック処理を実行するという限定を付加した発明である。本件発明9と引用発明1とは,この点において相違する。
(イ)

甲15文献
(86
(296)
頁)
の記載によれば,
添付文書上には
併用禁忌と記載されていなくても,適正使用の観点から併用禁忌と扱うべき組み合わせがあること,それが相互作用チェックシステムを導入する場合の,一般的な課題であることが指摘されている。
(ウ)

出願日当時の周知技術と技術水準
相互作用チェックシステムにおいて,独自の相互作用データを搭載で
きる機能(ユーザ登録機能)を有する相互作用チェックシステムは多数市販されており,実際に,相互作用データを搭載する共通マスタと別に個別マスタを利用するシステムが市販されていた(甲3文献)。
したがって,出願日当時の技術水準に照らせば,ユーザ登録機能を有する相互作用チェックシステムにおいて共通に搭載される共通マスタとは別に,ユーザが独自に登録するための個別マスタをもつことは当然のことであった。
処方監査や医薬品処方管理という,本件特許の属する技術分野において,患者データ,薬品データといった,処方監査に必要なデータを,病院や薬局といった医療機関ごとに作成したマスタ(個別マスタ)と,複数の医療機関で共通して用いることができるマスタ(共通マスタ)とで別に管理することは周知であった
(甲18,
19文献)
し,
その場合に,
個別マスタを優先して用い,ここにデータがない場合に共通マスタを用いることも公知であった(甲18文献)。
甲48(特開平1-145789号公報),甲49(特開平3-296163号公報)が本件の出願日より約10年前に発行された特許文献であることも考慮すると,
システムが事前に備えている標準データ標(準辞書,一般辞書)より,ユーザーが登録した個別データ(ユーザ辞書,ユーザー辞書に登録したもの)を優先してデータ処理に用いることは,本件特許の出願日において周知技術であった。
ユーザ登録機能を設ける意義は,いうまでもなく当該登録した情報を提供することにあるから,データベースの分野全般の技術水準に照らせば,ユーザ登録された内容を優先的に処理,出力することは当然のことであった(甲48~50)。
(エ)

容易想到性
上記(ウ)のとおりの出願時の周知技術,
技術水準に照らせば,
甲3文献

の記載に接した当業者は,ユーザ登録機能を有する商品は,共通マスタとは別に個別マスタをもつと理解するのが自然である。そして,ユーザ登録機能は,ユーザが独自に登録したデータを利用させることが当然の目的であるのであるから,甲3文献のユーザ登録機能についての記載に基づけば,共通マスタに対して個別マスタを優先させることも当業者に自明である。
仮に,甲3文献から,そこまで理解できなかったとしても,甲18,19文献に記載されるとおり,相互作用チェックシステムを含む薬品の情報検索システムにおいて,全病院に共通のデータベースと,院内独自のデータベースを分け,院内独自のデータベースを優先的に利用するシステムは公知であったのであるから,そのような公知技術をさらに適用して,本件発明9の構成に至ることは,当業者が容易になし得ることである。

結論
以上のとおり,審決の相違点1-1,1-3についての容易想到性の判断には誤りがあり,その誤りは,本件発明5,7,9についての審判請求は成り立たないとした審決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,審決の上記部分は取り消されるべきである。

2
原告取消事由2(本件発明5,7,9に関する引用発明2に基づく進歩性判断の誤り)について
(1)

相違点の認定について
相違点3-1について
前記1(2)アのとおり,
個別に格納とは,
一の医薬品から見た他の一の医薬品と,前記他の一の医薬品から見た前記一の医薬品の2通りの組み合わせを,別々に格納したことを意味するものであり,それ以上のデータ格納構成(例えば,リレーショナルデータベースの格納方式で記憶していること)を意味するものであると解する根拠はない。そして,添付文書において,1つの医薬品に対して,相互作用が発生する医薬品が複数記載される場合であったとしても,これに含まれる相互作用が発生する組み合わせの情報は,1つの医薬品から見た他の1つの医薬品についての相互作用の情報であることに変わりない。
そうすると,引用発明2の添付文書データベースも一の医薬品
から見た
他の一の医薬品
との相互作用データを含む添付文書データと,
前記他の一の医薬品から見た前記一の医薬品との相互作用データ
を含む添付文書データに表される2通りの組み合わせを,別々に格納していることに変わりはない。
したがって,引用発明2の添付文書データベースは,本件発明1にいう相互作用マスタに該当するものであって,審決が認定する相違点3-1は存在しない。

相違点3-2について
前記1(2)イと同様に,引用発明2も,当然に新規処方データ(複数の医薬品を含むもの)が入力されることを想定したものである。
したがって,相違点3-2は存在しない。


相違点3-3について
前記1(2)ウと同様に,引用発明2の添付文書データベースも,本件発明にいう相互作用マスタに該当するものであり,A薬品の添付文書データにB薬品との相互作用の記載があるか,B薬品の添付文書データにA薬品との相互作用の記載があるか,を判断しているものであって,本件発明1の構成と同様の構成を有している。
したがって,相違点3-3は存在しない。


相違点3-4について
前記1(2)エと同様に,
引用発明2の列に表示されたアルファベットは医
薬品の名称と同義であるから,列にも医薬品の名称が表示されているといえる。
したがって,相違点3-4は存在しない。


結論
審決は,相違点3-1,3-3を根拠として無効理由3に係る本件発明5,7,9についての審判請求は成り立たないとしたものであり,上記相違点の認定の誤りが,
審決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,
審決の上記部分は取り消されるべきである。
(2)

容易想到性の判断について
相違点3-1について
前記(1)アのとおり,
相違点3-1の認定には誤りがあるから,
審決の容
易想到性の判断にも誤りがあることは明白である。


相違点3-3について
前記(1)アのとおり,
相違点3-1の認定には誤りがあるから,
これを前
提とした相違点3-3の容易想到性の判断にも誤りがある。
甲13文献には,全ての医薬品の組み合わせ(主従入れ替えたものも含め)について,データベースに登録がないか否かを検索する構成が開示されているから,これを引用発明2に組み合わせることで,相違点3-3の構成に想到することは容易である。


結論
審決の相違点3-1,3-3についての容易想到性の判断には誤りがあり,その誤りは,本件発明5,7,9についての審判請求は成り立たないとした審決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,審決の上記部分は取り消されるべきである。

3
原告取消事由3(本件発明5,7,9に関する引用発明3に基づく進歩性判断の誤り)について
(1)

本件発明5についての容易想到性の判断
前記1(2)イのとおり,甲22文献,甲46,甲47等から認定できる周知
技術,技術水準に照らせば,相互作用チェック結果を表示する上で,必要な項目に関連する情報を表示させる方法として,甲22文献に記載されるようなタブでの画面切り替えという周知技術を採用することには十分な動機付けがある。また,相互作用チェックシステムが処方監査の一つの機能であることを考慮すると,情報の分類を新規処方データと蓄積処方データとで区分けすることも当業者が適宜設計可能な事項に過ぎない。
したがって,相違点4-3に係る構成は当業者が容易に想到することができたものである。
(2)

本件発明7についての容易想到性の判断
前記1(1)のとおり,甲8文献には,原告主張引用発明1の構成が記載され
ているといえる。そうすると,相違点4-5に係る構成は,甲8文献記載の上記事項を組み合わせることにより容易に想到することができたものである。(3)

本件発明9についての容易想到性の判断
前記1(3)エと同様に,本件特許の出願時の周知技術,技術水準(甲48~
50)に照らせば,甲3文献の記載に接した当業者は,ユーザ登録機能を有する商品は,商品に共通に搭載される共通マスタとは別に個別マスタをもつものと理解するのが自然である。そして,ユーザ登録機能は,登録したデータを利用させることが当然の目的であるのであるから,共通マスタに個別マスタを優先させることも自明である。
仮に,甲3文献から,そこまで理解できなかったとしても,甲18,19文献に記載されるとおり,相互作用チェックシステムを含む薬品の情報検索システムにおいて,全病院に共通のデータベースと,院内独自のデータベースを分け,院内独自のデータベースを優先的に利用するシステムは公知であったのであるから,甲3文献にそのような公知技術をさらに適用して,相違点4-7に係る構成は,当業者が容易に想到することができたものである。(4)

結論
審決の相違点4-3,4-5,4-7についての容易想到性の判断には誤
りがあり,その誤りは,本件発明5,7,9についての審判請求は成り立たないとした審決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,審決の上記部分は取り消されるべきである。
第6
1
被告らの反論
原告取消事由1(本件発明5,7,9に関する引用発明1に基づく新規性,進歩性判断の誤り)について
(1)

引用発明1の認定について
甲8文献別紙6-2からは,
チェック開始
ボタンの機能が不明である。

また,画面クリアのボタンにより医薬品の入力内容が削除可能であるとしても,そのことは,チェック開始ボタンの機能と無関係である。さらに,チェック開始ボタンを押下することにより入力された医薬品に対して医薬品の相互作用チェックが実施されるとしても,そこには追加入力の要素は開示されていないし,原告が主張する追加入力が何を示すかも不明である。
なお,後記(3)ウのとおり,原告の本件発明7の薬品追加についての理解は誤っており,追加入力した医薬品名と共に再度同じ形式で表示されることも自明であるとはいえない。(2)

相違点の認定について
相違点1-1について
(ア)

前記第3の1(1)ア(ア)のとおり,本件発明1の個別に格納は,一
の医薬品と他の一の医薬品を1対1の組み合わせ,すなわち,同一の基準又は粒度で格納し(同一粒度),かつ,他の組み合わせと分離して格納すること(分離格納)を意味するから,A薬品からみたB薬品に関する相互作用情報とA薬品からみたC薬品に関する相互作用情報が分離されて格納されることを要する。
(イ)

引用発明1の添付文書データベースは,単なる添付文書のデータ

ベースを有するに過ぎないため,A薬品からみたB薬品に関する相互作用情報とA薬品からみたC薬品に関する相互作用情報は同一文書内に格納されており,これらの情報が分離して格納されていないことは明らかである。

相違点1-2について
甲8文献からは,入力された医薬品間の相互作用情報を確認する機構を備えていることが明らかになるにすぎず,入力されたデータが新規処方データであるか,それとも,過去の処方データなのかは定かではない。原告は,①新規処方データ間の相互作用チェックを想定していないのであれば,新規処方データの入力欄は1つでよいこと,②過去の処方データについては蓄積データを用いることが当時の技術水準にかない,都度入力させることは考えがたいことを主張するが,甲8文献の入力データが特定されていない以上,このようにいうことはできない。
また,原告は,引用発明1を紹介する甲3文献には

患者に処方された薬剤の監査を怠るわけにはいかないのが現状である。…相互作用のチェックシステムの必要性が要求されている

との記載から,相互作用のチェックシステムは処方監査を目的としていると述べ,引用発明1において入力される医薬品は新規処方データを含むと主張するが,論理の飛躍が甚だしく趣旨が不明である。そもそも原告が主張する相互作用のチェックシステムの意味内容が不明であり,かつ当該システムが処方監査を目的とすることと引用発明1との関係も不明であり,さらに,かかる記載がなぜ,引用発明1における医薬品の範囲を特定するのかも不明である。

相違点1-3について
原告は,引用発明1の添付文書データベースは,本件発明の相互作用マスタに該当すると主張するが,このようにいえないことは,上記アに記載したところから明らかである。


相違点1-4について
引用発明1のマトリックス表示に,医薬品名称そのものが表示されていないのであるから,相違点1-4の認定に誤りはない。アルファベットが医薬品名称の代替記号であったとしても,そのことによって審決の結論が左右されるものではない。
(3)

容易想到性の判断について
原告の主張するリレーショナルデータベースの格納形式の構成は特定されておらず,その主張は意味不明である。審決は,リレーショナルデータベースによる1対多の構成が実現可能であるため,これをあえて1対1
に限定することが自明ではないとしているところ,
原告は,
1対1の構造が容易想到であることを主張していない。


本件発明5について
(ア)

本件発明5は本件発明1に新たな構成を付加したものであるが,
引用

発明1は本件発明1の相互作用マスタの構成を有していない点で相違し,
この相違点に係る構成は容易想到性を欠くのは上記(2)のとおりであるから,審決の判断に誤りはない。
(イ)

また,
仮にタブによる切り替えが一般的な技術として周知であったと

しても,これをマトリックス表示に適用する発明思想は原告が挙げるいずれの文献にも開示されていない。また,相互作用システムが処方監査の一つの機能であることと引用発明1等との関係が明らかではない。ウ
本件発明7について
(ア)

本件発明7は本件発明1に新たな構成を付加したものであるが,
引用

発明1は本件発明1の相互作用マスタの構成を有していない点で相違し,
この相違点に係る構成は容易想到性を欠くのは上記(2)のとおりであるから,審決の判断に誤りはない。
(イ)

また,
本件発明7における薬品追加操作は,
既に実行された相互作用

チェックの対象に,新たな自己医薬品を追加して,当該自己医薬品との関係でのみ,新たに相互作用チェックを行う機能である(請求項7の記載,
【0034】)。これに対し,原告の主張する引用発明1の構成は,相互作用チェックを実行する際,対象となる自己医薬品を自由に入力できること(チェック開始ボタンを押下するまでは,自己医薬品の追加・削除が可能なこと)を示すに過ぎず,既に実施された相互作用チェックの結果に対して,追加的に相互作用チェックを行うことや,当該追加部分のみについて,
相互作用チェックを行うことは開示されていない。

本件発明9について
(ア)

本件発明9は本件発明1に新たな構成を付加したものであるが,
引用

発明1は本件発明1の相互作用マスタの構成を有していない点で相違し,
この相違点に係る構成は容易想到性を欠くのは上記(2)のとおりであるから,審決の判断に誤りはない。
(イ)

甲3・表1チェック機能使用者が相互作用対象医薬品を独自に搭載できるか?とメンテナンス体制との記載から,共通マスタと個別マスタの構成を読み取ることはできない。また,共通マスタと別に個別マスタを利用するシステムが市販されていた旨の原告の主張は裏付けを欠く。そのため,ユーザー登録機能を有する相互作用チェックシステムにおいて,共通マスタ・個別マスタを備えることは当然であったとはいえない。
甲18文献の【0036】【0037】からは,あくまでも,患者の氏名性別等の情報を薬局サーバ12の自薬局用のデータベース
から先に検索するとの発明思想が開示されているにとどまり,薬局サーバ12とマスタサーバ11との間の関係は不明であるから,これらが,
個別マスタと共通マスタの関係に立つのか定かではなく,
また,
優先関係に関する発明思想も開示されていない。
甲19文献【0018】の薬品マスターは薬品基本マスター
の部分的な情報の集合体にすぎず,独自の情報を格納しないから,個別マスタと共通マスタの関係に立っておらず,ましてや,これらマスタ間の優先関係に関する発明思想の開示もない。
このように,甲18,19文献の記載からは,処方監査や医薬品処方管理という本件特許の属する技術分野で個別マスタと共通マスタを別に管理することは周知であり,かつ,個別マスタを優先して使い,データがない場合に共通マスタを用いることは公知であったとは到底いえない。甲48~50からも,一般的に標準データよりも個別データを優先して処理することが周知技術であったとはいえない。
(ウ)

甲3文献のユーザ登録機能の記載から,本件発明9の相互作用マスタという具体的な機構を前提とした
相互作用共通マスタ相と互作用個別マスタという構成に想到することはない。甲18,19文献には共通マスタと個別マスタの発明思想は開示されていないし,仮に全病院共通と院内独自のデータベースを分け後者を優先利用するシステムが知られていたとしても,そのことのみをもって,当業者が相互作用共通マスタと相互作用個別マスタに想到
することはない。
2
原告取消事由2(本件発明5,7,9に関する引用発明2に基づく進歩性判断の誤り)について
無効理由1はEDISに関するものである一方,無効理由2は甲7文献に基づくものである。甲7文献はEDISの構成に関する文書であるから,そこに開示される構成を仔細に検証しても,無効理由1で引用されたEDISの構成以上の具体化は期待できない。
したがって,引用発明2を主引用例とする無効理由2については,上記1において主張したところが妥当する。

3
原告取消事由3(本件発明5,7,9に関する引用発明3に基づく進歩性判断の誤り)について
審決における本件発明1と引用発明3の相違点の認定に誤りがあることは前記第3の1(1)のとおりであるが,
引用発明3を主引用例とした本件発明5,

件発明7及び本件発明9の進歩性が否定されないとした審決の結論に誤りはない。
第7
1
当裁判所の判断
本件発明について
(1)

特許請求の範囲の記載
本件発明の特許請求の範囲の記載は,
前記第2の2に記載のとおりである。

(2)

本件明細書の記載
本件明細書には以下の記載がある(甲44,乙14)。

【0001】【発明の属する技術分野】
本発明は,病院や調剤薬局などの医療施設で処方箋監査業務や処方設計業務に使用する医薬品相互作用チェック装置に関するものである。【0002】【従来の技術】
従来,病院などのホストコンピュータ上で稼働する処方オーダリングシステムでは,患者に投薬する医薬品の処方を医師が指示して,その処方データを入力する際に医薬品間の相互作用,すなわち医薬品の効能が相殺される等をチェックすることが行われている。
・・・・
【0008】【発明が解決しようとする課題】
しかしながら,前記いずれのものでも,医薬品間の相互作用のチェックに主眼が置かれ,表示内容はA医薬品とB医薬品は併用禁忌等の簡単なものに過ぎない。したがって,同一患者の過去の処方データも含めて処方全体を監査したり,不都合な医薬品の代替品を検討するなど,処方データの詳細を分析するような薬剤師向けの用途には不十分である。
この場合,
単純に相互作用のチェック内容を表示するだけでは,複雑で見にくいものとなり,実用的でない。
・・・・
【0011】そこで,本発明は,医薬品の相互作用のチェック結果を,実用的に分かりやすく表示できる医薬品相互作用チェック装置を提供することを課題とする。
【0012】【課題を解決するための手段】
本発明は,前記課題を解決するための手段として,
医薬品相互作用チェック装置を,
一の医薬品から見た他の一の医薬品の場合と,前記他の一の医薬品から見た前記一の医薬品の場合の2通りの主従関係で,相互作用が発生する組み合わせを個別に格納する相互作用マスタを記憶する記憶手段と,入力された新規処方データの各医薬品を自己医薬品及び相手医薬品とし,自己医薬品と相手医薬品の組み合わせが,前記相互作用マスタに登録した医薬品の組み合わせと合致するか否かを判断することにより,相互作用チェック処理を実行する制御手段と,
対象となる自己医薬品の名称と,相互作用チェック処理の対象となる相手医薬品の名称とをマトリックス形式の行又は列にそれぞれ表示し,前記制御手段による自己医薬品と相手医薬品の間の相互作用チェック処理の結果を,前記マトリックス形式の該当する各セルに表示する表示手段と,を備えた構成としたものである。
【0013】この構成により,表示画面を簡素化し,新規処方データと蓄積処方データの各医薬品について相互作用を一目で把握可能に表示させ,必要な情報を簡単に得ることが可能となる。・・・・
【0020】【発明の実施の形態】
以下,本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。
図1は,本実施形態に係る医薬品相互作用チェック装置を示す。この装置は,液晶ディスプレイなどの表示装置1,キーボード・マウスなどの入力装置2,及びハードディスクなどの記憶装置3を備える。医薬品相互作用チェック装置全体としては中央処理装置(CPU)4によってプログラム制御する。また,必要に応じて,レーザプリンタなどの印刷装置5,及びホストコンピュータ(処方データ送信装置)6を接続する。これらの装置はパーソナルコンピュータで構成してもよい。但し,ハードウェア機器の種類と台数は任意である。・・・・
【0023】記憶装置3には,各種データをファイルやデータベースとして記憶する。各種データには,過去の処方データを蓄積して記憶する蓄積処方データ,相互作用の薬効組合せと作用を登録して記憶する相互作用共通マスタ,医療施設毎に相互作用を登録して記憶する相互作用個別マスタ,相互作用チェックを除外する薬効組合せを登録して記憶する相互作用除外マスタ,作用・機序内容を登録して記憶する作用マスタ,処方データを入力する際などの関連情報を記憶する各種マスタがある。各種マスタには,医薬品マスタ,患者マスタ,診療科マスタ,医師マスタ,病棟マスタ,処方箋区分マスタ,用法マスタなどがある。コードと名称などを格納するような簡単な構成のマスタなので図は省略する。
【0025】蓄積処方データは,患者の全ての処方データを蓄積して記憶するデータである。
その記憶内容を図2に示す。
この蓄積処方データ
(図2)
は,単独チェック動作の場合には,新規の処方データをキーボード入力して書き込み(図13のステップS66),連続チェック動作の場合には,ホストコンピュータ6から処方データを受信して相互作用の発生が無ければ自動的に書き込む(図14のステップS78)(相互作用の発生が有れば単独チェック動作と同様に操作者の判断で書き込む。)。図2の3/10内科処方の例では,病院薬局なので医療機関コードはデータ無し状態の空であり(調剤薬局ならば,多くの医療機関から発行される院外処方箋を受け付けるので,その識別が必要になる。),外来処方箋なので病棟コードと病室番号は空である。医薬品コード(例:4490008F1020)には,厚生省が定めた薬価基準収載用医薬品コード12桁を使用しているが,独自体系のコードでもよい。但し,その場合は,医薬品マスタに薬効コードを登録して,医薬品コードから薬効コードを求める処理が必要になる。なお,蓄積処方を検索する場合は患者番号と投薬期間を検索キーとする。
【0026】相互作用が発生する医薬品の組合せについてのデータは,データ量を抑えるために医薬品コードではなくて薬効コードの組合せで表現する。これらのデータには,添付文書データから作成して医療施設に配付する共通マスタ,
各医療施設が個別に相互作用を登録する個別マスタ,
及び,
各医療施設が相互作用チェックを除外する除外マスタがある。これらの3種類のマスタはデータ構成が同じであり,相互作用共通マスタの記憶内容を図3に示す。図3中,主薬効コードとは,組合せの主となる薬効コードを意味する。薬効コードは厚生省が定めた薬価基準収載用医薬品コードの先頭7桁でも何でもよい。従薬効コードとは,組合せの従となる薬効コードを意味する。危険度とは,薬剤相互作用の危険度を意味する。併用注意であれば1,併用禁忌であれば2を入力する。作用コードとは,作用マスタ(図4)の作用コードを意味する。なお,これらの相互作用のマスタ(図3)のデータは,メニュー画面(起動ボタンが並ぶだけの画面なので図示省略)から起動される相互作用共通・個別・除外マスタ登録の画面(データ構成と同じ画面構成なので図示省略)で入力する。
【0027】作用マスタは,作用・機序などの詳細情報を記憶するデータである。
その記憶内容を図4に示す。
相互作用共通マスタ
(図3)
と同様に,
作用マスタは添付文書データから作成して医療施設に配付するが,各医療施設で個別に登録することもできる。作用マスタ(図4)のデータは,メニュー画面(起動ボタンが並ぶだけの画面なので図示省略)から起動される作用マスタ登録の画面(データ構成と同じ画面構成なので図示省略)で入力できる。図4中,作用コードとは,作用の詳細情報を特定するための一意なコードを意味する。作用・機序内容とは,作用,処置,文献書誌事項などのあらゆる詳細情報を意味する。
【0028】次に,単独チェック動作の処理について,図7のフローチャートに従って説明する。ここに,単独チェック動作の処理とは,医薬品相互作用チェック装置とホストコンピュータ6とを接続しない場合の処理を意味する。
【0029】この処理では,まず,メニュー画面(起動ボタンが並ぶだけの画面なので図示省略)から起動し,図5(新規処方内チェック結果)又は図6(蓄積処方内チェック結果)に示す相互作用チェック画面を表示させる(ステップS1)。この状態では,対象日欄に本日の日付が表示され,患者番号欄と新規処方欄とが空となっている。そこで,
患者番号と新規処方の医薬品とを,キーボードやマウスで入力する(ステップS2)。患者番号欄に入力すると,図2に示すデータ構成と同様の画面構成のサブウィンドウ(図示省略)が表示され,処方データの詳細が新規処方データとして入力される。そして,患者処方チェック手続き(図8)を呼び出し,新規処方内の相互作用チェックと,新規処方と蓄積処方の相互作用チェックとを行う患者処方チェック処理を実行する(ステップS3)。但し,チェックの対象日欄に任意の日付を入力し,対象日を指定して相互作用チェックを実行することもできる。続いて,チェック画面処理手続き(図12)を呼び出し,相互作用チェック画面(図5)での画面操作によりチェック画面処理を実行する(ステップS4)。この処理は,相互作用チェック画面(図5)の終了ボタン
がマウスでクリックされるまで繰り返す(ステップS5)。
【0030】前記ステップS4のチェック画面処理では,図8のフローチャートに示すように,まず,作業データの自己処方に新規処方を設定する(ステップS11)。また,作業データの相手処方に新規処方を設定する(ステップS12)。そして,処方間チェック手続き(図9)を呼び出し,自己処方と相手処方の相互作用チェック(処方間チェック)を実行する(ステップS13)。また,蓄積処方データ(図2)から同一患者の蓄積処方を検索する(ステップS14)。その後,蓄積処方データが終了したか否かを判断し(ステップS15),終了していれば,図7の単独チェック動作の処理に復帰し,
終了していなければ,
作業データの
相手処方に次の蓄積処方データを設定して(ステップS16),前記ステップS13の処方間チェックから繰り返す。
【0031】前記ステップS13の処方間チェックの処理は,図9のフローチャートに示すように,作業データの自己医薬品に自己処方の1行目(行#1)の医薬品を設定する(ステップS21)。続いて,複数相手医薬品チェック手続き(図10)を呼び出し,自己医薬品と相手処方の複数医薬品との相互作用チェック(複数相手医療品チェック)を実行する(ステップS22)。ここで,自己処方内の医薬品のチェックが全て終了したか否かを判断し(ステップS23),全て終了していれば,図8の患者処方チェック処理に復帰し,終了していなければ,作業データの自己医薬品に自己処方の次行目の医薬品を設定し(ステップS24),前記ステップS22に戻って前記処理を繰り返す。
【0032】前記ステップS22の複数相手医薬品チェックの処理は,図10のフローチャートに示すように,作業データの相手医薬品に相手処方の1列目(列#1)の医薬品を設定する(ステップS31)。そして,医薬品間チェック手続き(図11)を呼び出し,自己医薬品と相手医薬品の相互作用チェック(医薬品間チェック)を実行する(ステップS32)。ここで,相手処方内の医薬品のチェックが全て終了したか否かを判断し(ステップS33),全て終了していれば,図9の処方間チェックに復帰し,終了していなければ,作業データの相手医薬品に相手処方の次列目の医薬品を設定し(ステップS34),前記ステップS32に戻って前記処理を繰り返す。
【0033】前記ステップS32の医薬品間チェックの処理は,図11のフローチャートに示すように,自己医薬品と相手医薬品が同じか否かを判断し(ステップS41),同じであれば,図10の複数相手医薬品チェックの処理に復帰する。また,同じでなければ,自己医薬品と相手医薬品の薬効コードの組合せについて,自己-相手と相手-自己の2通りの
主従関係で相互作用個別マスタ(データ構成は図3と同じ)を検索し,該当する行データを取得する(ステップS42)。そして,自己医薬品と相手医薬品の薬効コードの組合せについて,相互作用除外マスタ(データ構成は図3と同じ)を検索し,該当する行データを除外する(ステップS43)。ここで,取得した中から除外した残りの相互作用データが有るか否かを判断し(ステップS44),有れば,チェック画面処理(図12)が処理するための相互作用データ(チェック結果)を設定する(ステップS48)。一方,残りの相互作用データがなければ,自己医薬品と相手医薬品の薬効コードの組合せについて,自己-相手と相手-自己の2
通りの主従関係で相互作用共通マスタ(図3)を検索し,該当する行データを取得する(ステップS45)。そして,自己医薬品と相手医薬品の薬効コードの組合せについて,相互作用除外マスタ(データ構成は図3と同じ)を検索し,該当する行データを除外する(ステップS46)。ここで,再度,取得した中から除外した残りの相互作用データが有るか否かを判断し(ステップS47),有れば前記ステップS48でチェック結果を設定し,無ければ,図10の複数相手医薬品チェックの処理に復帰する。【0034】また,図7のステップS4に於けるチェック画面処理は図12及び図13のフローチャートに示すように,まず,相互作用チェック画面(図5)での医薬品マトリックス表示部に新規処方のチェック結果を表示する(ステップS51)。具体的には,マトリックスのセルに表示する記号で表現し,△印が併用注意であり,×印が併用禁忌で
ある。そして,△印または×印のセルをマウスでクリックす
ると,作用表示欄に作用・機序などの詳細情報を表示させることが可能である。図5の例では,ハルシオン錠とイトリゾールカプセルの×印のセル
をマウスでクリックして詳細情報を表示させている。
続いて,
薬品追加ボタンがマウスでクリックされれば(ステップS52),新規処方の次の行に新規の医薬品をキーボード・マウス入力する(ステップS53)。次いで,作業データの自己医薬品に追加医薬品を設定する(ステップS54)。さらに,複数相手医薬品チェック手続き(図10)を呼び出し,
追加医薬品と相手処方の複数医薬品との相互作用チェック
(複
数相手医薬品チェック処理)を実行する(ステップS55)。その後,前記ステップS52に戻って薬品追加ボタン判断から繰り返す。
タブ
(図
5の新規処方3/10内科)がマウスでクリックされれば(ステ
ップS56),タブに該当する相手処方を列項目とするマトリックス表示に切り替え(ステップS57),新規処方に追加医薬品が有るか否かを判断し(ステップS58),有れば前記ステップS54及びS55を実行する。図5の例では,3/10内科のタブをマウスでクリック
して図6の表示に切り替える。セルがマウスでクリックされれば(ステップS61),
セルに該当する作用・機序内容を作用マスタ(図4)
から取得して作用表示部に表示する(ステップS62)。作用表示部の除外チェックボックス
(□)
がマウスでチェックされれば
(ステップS63)

チェックボックス内に∨印でチェックされたデータを相互作用除外マスタ(データ構成は図3と同じ)に登録する(ステップS64)。これは,数が多く,重要性の低い医薬品について,相互作用チェックの対象から除外することにより,
併用注意が多くなり過ぎる弊害を防止するために行う。
処方登録ボタンがマウスでクリックされれば(ステップS67),新規処方の処方データを蓄積処方データ(図2)に登録する(ステップS66)。印刷ボタンがマウスでクリックされれば(ステップS65),相互作用チェック画面(図5)の内容を印刷装置5で印刷する(ステップS68)。そして,前記各動作が実行された後は,前記ステップS52に戻って薬品追加ボタン判断から繰り返す。なお,
処方消去
終了
ボタンがマウスでクリックされれば(ステップS69),図7の単独チェック動作に復帰する。・・・・
【0039】なお,前記実施形態では,新規処方データ間,新規処方データ・蓄積処方データ間で,医薬品の相互作用をチェックできるようにしたが,蓄積処方データ間で再チェック可能としてもよいことは勿論である。【0040】【発明の効果】
以上の説明から明らかなように,本発明によれば,相互作用のチェック結果を,新規処方データの各医薬品と蓄積処方データの各医薬品とのマトリックス形式で表示するようにしたので,相互作用を詳細にチェック可能となると共に,直感的にも分かりやすくすることができる。・・・・・(3)

本件発明の特徴
発明の属する技術分野
本件発明は,病院や調剤薬局などの医療施設で処方箋監査業務や処方設計業務に使用する医薬品相互作用チェック装置に関する【0001】。(



背景技術
従来,病院などのホストコンピュータ上で稼働する処方オーダリングシステムでは,患者に投薬する医薬品の処方を医師が指示して,その処方データを入力する際に医薬品間の相互作用,すなわち医薬品の効能が相殺される等をチェックすることが行われている(【0002】)。

本件発明が解決しようとする課題
従来は,
医薬品間の相互作用のチェックに主眼が置かれ,
表示内容は
A医薬品とB医薬品は併用禁忌等の簡単なものに過ぎず,したがって,同一患者の過去の処方データも含めて処方全体を監査したり,不都合な医薬品の代替品を検討するなど,処方データの詳細を分析するような薬剤師向けの用途には不十分であり,この場合,単純に相互作用のチェック内容を表示するだけでは,複雑で見にくいものとなり,実用的でない(【0008】)。
そこで,本件発明は,医薬品の相互作用のチェック結果を,実用的に分かりやすく表示できる医薬品相互作用チェック装置を提供することを課題とする(【0011】)。


課題を解決するための手段
本件発明は,前記課題を解決するための手段として,
医薬品相互作用チェック装置を,
一の医薬品から見た他の一の医薬品の場合と,前記他の一の医薬品から見た前記一の医薬品の場合の2通りの主従関係で,相互作用が発生する組み合わせを個別に格納する相互作用マスタを記憶する記憶手段と,入力された新規処方データの各医薬品を自己医薬品及び相手医薬品とし,自己医薬品と相手医薬品の組み合わせが,前記相互作用マスタに登録した医薬品の組み合わせと合致するか否かを判断することにより,相互作用チェック処理を実行する制御手段と,
対象となる自己医薬品の名称と,相互作用チェック処理の対象となる相手医薬品の名称とをマトリックス形式の行又は列にそれぞれ表示し,前記制御手段による自己医薬品と相手医薬品の間の相互作用チェック処理の結果を,前記マトリックス形式の該当する各セルに表示する表示手段と,を備えた構成としたものである(【0012】)。

本件発明の効果
本件発明の構成により,表示画面を簡素化し,新規処方データと蓄積処方データの各医薬品について相互作用を一目で把握可能に表示させ,必要な情報を簡単に得ることが可能となる(【0013】)。
本件発明によれば,相互作用のチェック結果を,新規処方データの各医薬品と蓄積処方データの各医薬品とのマトリックス形式で表示するようにしたので,相互作用を詳細にチェック可能となると共に,直感的にも分かりやすくすることができる(【0040】)。

2
被告取消事由1(本件発明1に関する進歩性判断の誤り)について(1)

引用発明3の認定について
甲14文献には次の記載がある。
(ア)【発明の属する技術分野】本発明は,医療機関において処方情報の監査処理をコンピュータ上で行う処方鑑査システムに係り,医師あるいは薬剤師が行う処方箋の発行や処方鑑査業務を効率的に行えるようにした医薬品相互作用チェック方法及びその装置に関する。【0001】(

(イ)

本発明は上記問題に着目してなされたもので,
各医薬品に付される添

付文書から抽出された医薬品に関する情報をコード化することによりデータの処理時間を短縮し,容易に医薬品相互作用のチェックを行うことができる医薬品相互作用チェック方法及びその装置を提供することを目的としている。(【0008】)
(ウ)

図1は,
本発明の装置の一形態を示す構成図である。
本発明に係る装

置は図1に示すように,医薬品相互作用チェック結果を表示するための表示装置10と,
チェックする医薬品を入力するための入力装置11と,
CPU及びメモリ等の処理部12と,あらかじめ用意された全ての医薬品に関するデータが作成記憶されているディスク13(記憶手段としてはこの他に,CD-ROM14,フロッピーディスク15を使用することもできる。)と,医薬品に関するデータ,あるいはチェックした医薬品の相互作用に関するデータ等をプリントアウトするための出力装置16とから構成されている。
図2は,医薬品相互作用チェック処理に使用される各機能ごとのデータの構成,すなわちファイル構成を示しており,それぞれがメモリ上では区分されてファイルとして記憶されている。自己医薬品テーブル102には,予め医薬品入力101の過程により入力された処方される医薬品(自己医薬品)の医薬品マスターコード(後述する)が記憶され,相手医薬品テーブル103には,処方履歴を基に抽出した患者が服用している医薬品(相手医薬品)及び処方される医薬品の医薬品マスターコード,調剤日,医療機関名が記憶される。医薬品相互作用チェックマスタ104には,予め医薬品固有の情報が全て記憶され,医薬品相互作用チェックテーブル105には,医薬品間の相互作用の有無をチェックする情報が記憶されており,自己医薬品に対する自己テーブル部401と相手医薬品に対する相手テーブル部402
(図4を参照)
とを含む。
また,
医薬品相互作用コメントファイル106には,医薬品の相互作用の結果をコメントとして提供するための文字情報がコメントコードと共に記憶され,医薬品相互作用機序ファイル107には,医薬品相互作用の機序が文字情報として相互作用機序コードと共に記憶されている。
そして,前記のファイルに基づく医薬品相互作用チェック108の過程では,上記入力データ及び記憶データを基に自己医薬品及び相手医薬品の一般名コード,
薬効分類コード,
BOXコード
(いずれも後述する)
を医薬品相互作用チェックマスタ104から取得して,処方医薬品相互作用チェックマスタSの形態で一時記憶テーブル110に記憶され(図3を参照),自己医薬品の前記各コードに対して相互作用を有する全ての医薬品(相手医薬品,相手飲食物等)と相互作用コメント等が処方医薬品相互作用チェックテーブルTの形態で一時記憶テーブル110に記憶される(図4を参照)。図3に示すように,処方医薬品相互作用チェックマスタSの形態は,入力された処方医薬品の医薬品マスターコードに対応する医薬品名称,一般名コード,薬効分類コード,BOXコードが記憶される構成となる。また,図4に示すように,処方医薬品相互作用チェックテーブルTの形態では,自己テーブル部401に入力された処方医薬品の一般名コード,
薬効分類コード,
BOXコードが記憶され,
相手テーブル部402に前記自己テーブル部のそれぞれのコードと相互作用を持つ医薬品の一般名コード,薬効分類コード,BOXコードが記憶される。そして,コメントテーブル部403には,それぞれの相互作用に対するコメントと重篤区分に対応するレベルコードと相互作用の機序コードが記憶される。(【0016】~【0018】)
(エ)

次に,
医薬品相互作用のチェック方法の実施の一形態を図6に添って

詳しく説明する。検索前処理801では,ステップ810において,前述したように処方される医薬品として入力装置11に入力された自己医薬品の医薬品マスターコードを基に,一般名コード,薬効分類コード,BOXコードを医薬品相互作用チェックマスタ104から検索して(ステップ811),処方薬品相互作用チェックマスタSの形態(図3を参照)で自己医薬品のそれぞれのコードを確定する。また,ステップ812において,処方履歴等を基に抽出された相手医薬品の医薬品マスターコードを基に一般名コード,薬効分類コード,BOXコードを医薬品相互作用チェックマスタ104から検索して(ステップ813),処方医薬品相互作用チェックマスタSの形態で相手医薬品のそれぞれのコードを確定する。
相互作用チェックテーブルの検索処理802では,ステップ820において,医薬品相互作用チェックテーブル105から自己テーブル部401の検索が行われる。まず,検索前処理801で検索した自己医薬品の一般名コードが,医薬品相互作用チェックテーブル105の自己テーブル部401に存在するか否かの検索が行われる(ステップ821)。同様にして,
薬効分類コードとBOXコードについても検索が行われ
(ス
テップ822,823),それぞれの検索で存在したコードに関するデータは処方医薬品相互作用チェックテーブルTの形態で一時記憶テーブル110に記憶される。また,ステップ824において,前記ステップ820で検索して一時記憶テーブル110に記憶したデータから相手テーブル部402の検索が行われる。まず,検索前処理801で検索した相手医薬品の一般名コードが前記一時記憶テーブル110の相手テーブル部402に存在しているかの検索が行われる(ステップ825)。同様にして薬効分類コードとBOXコードについても検索が行われ(ステップ826,827),それぞれの検索でコードが存在する場合には,処方する自己医薬品には患者が服用している医薬品あるいは処方する医薬品(相手医薬品)との間に相互作用を有する組み合わせが存在することになる。
検索後処理803では,ステップ830において,前記相互作用チェックテーブルの検索処理802で相互作用を有する医薬品の組み合わせが存在した場合のコメントテーブル部403の作成が行われる。まず,相互作用を有する医薬品の組み合わせから相互作用コメントが確定され(ステップ830),相互作用の重篤レベルに対応する重篤区分が確定する(ステップ832)。そして,同様に医薬品の組み合わせに対する相互作用機序が確定される(ステップ831)。
以上のように検索された医薬品相互作用チェック結果は,図7に示すような形態で表示装置10に画面表示される。表示欄901には,入力された自己医薬品名が,検索されたコードを基に医薬品相互作用チェックマスタから抽出され,表示される。また,表示欄902には,患者の処方履歴に記載された調剤日と医療機関名,及び,前記自己医薬品名に対して検索されたコードを基に相手医薬品名が,医薬品相互作用チェックマスタから抽出され,表示される。更に,表示欄903には,検索された相互作用コメントコードを基に相互作用コメントが相互作用コメントファイルから抽出されて表示され,表示欄904には,検索された機序コードを基に相互作用機序が医薬品相互作用機序ファイルから抽出され,表示される。そして,前記画面表示は,検索した相互作用コメントの重篤レベルコードに対応して,重篤のコメントの場合には色付けにより強調して表示するようにしている。尚,上記の表示画面及び検索過程におけるデータは,必要に応じて接続された出力装置16からプリントアウトすることができる。(【0021】~【0024】)
(オ)

処方医薬品相互作用チェックテーブルの形態を示す図である。
(【図

4】)

以上によれば,引用発明3については,前記第2の3(2)ウ(ア)記載のとおり認定することができる(この点については当事者間に争いがない。)
(2)

相違点の認定について
本件発明1について
(ア)

技術常識
後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の出願時の技術常識を認め
ることができる。
a
医薬品は,一般に,販売名(商品名)ないし一般名により特定される。厚生労働省が定める薬価基準収載用医薬品コードは,12桁
からなるコードであり,下図のとおり,12桁すべてによって商品名までが特定される。このうち,先頭の4桁は薬効分類番号であるが,薬効分類のみからは,医薬品の有効成分を特定することができない。これに対し,先頭の7桁を特定すれば,薬効,有効成分及び投与経路が特定できる。

b
一般に,製薬会社が作成する添付文書には,医薬品毎に作用発現の仕組み(作用機序)が記載され,相手方医薬品との関係が,併用禁忌,併用注意に分けて明記されている。もっとも,医薬品の添付文書の記載には統一されたフォーマットがあるわけではなく,相互作用を生じる可能性のある医薬品の特定方法として,商品名による場合もあれば,一般名(主成分)や効能による場合もある。
例えば,医薬品の添付文書の相互作用の項目には,医薬品の一般名ではなく降圧剤等薬効に着目した記載や,化合物の名称のみを記
載することは少なくないし,飲食物や飲酒などの情報も記載されることがある(乙8~10,13)。

(イ)
a
相互作用マスタについて
一の医薬品と他の一の医薬品
特許請求の範囲には,一の医薬品と他の一の医薬品におけ
る医薬品が,販売名(商品名),一般名,薬効分類等のいずれの
レベルの概念を意味するのかについて明示的な特定はない。
(a)

しかし,一の医薬品と他の一の医薬品は,いずれも医薬品という同一の文言が用いられていることからすれば,これらは医薬品について同一のレベルの概念であると解するのが自然である。
(b)

また,
本件発明1の特許請求の範囲には,
①入力された新規処方

データの各医薬品を自己医薬品及び相手医薬品とすること,②自己医薬品と相手医薬品の組み合わせが,前記相互作用マスタに登録した医薬品の組み合わせと合致するか否かを判断することにより,相互作用チェック処理を実行することが記載されている。
このように,
入力された新規処方データの各医薬品に当たる医薬品を自己医薬品にも相手医薬品にもすることとされ,その組み合わせが相互作用マスタに登録した医薬品の組み合わせと合致するか
を判断するのであるから,相互作用マスタに登録した医薬品,
すなわち,一の医薬品と他の一の医薬品は,同一のレベル
の概念であることを要することが理解できる。
(c)

さらに,
相互作用マスタに登録された医薬品の組み合わせと

の合致の有無を判断する新規処方データの各医薬品は,医師の
交付する処方せんのデータを示すものと解されるところ,医師の交付する処方せんには販売名(商品名)か一般名が記載されるものである。そして,本件発明の医薬品相互作用チェック装置は医療施設での処方箋監査業務や処方設計業務に使用されるものであるから,新規処方データの各医薬品は,医薬品の有効成分すらも特定で
きない薬効分類を基準とするものであるとは考えられない。したがって,
相互作用チェック処理において
新規処方データの各医薬品
の組み合わせとの合致を判断する対象たる相互作用マスタに格
納される一の医薬品及び他の一の医薬品は,薬効分類など
の上位レベルの概念でないことは明らかである。
他方,本件発明2は,本件発明1の相互作用マスタの構成に
ついて,相互作用が発生する組み合わせを,各医薬品の効能を定めた薬効コードの組み合わせとするものに限定するものであるところ,
この
薬効コード
は例えば
薬価基準収載用医薬品コード
の先頭7桁とするものでよいとされ(【0026】),これにより薬効,
有効成分及び投与経路は特定されているから
(上記(ア))医,薬品については,薬効,有効成分及び投与経路を特定するコードである場合を含むものといえる。
(d)

以上によれば,本件発明1の相互作用マスタにおける一の医薬品及び他の一の医薬品は,同一のレベルの概念によるものに統一され,そのレベルは,薬効分類のような上位レベルの概念は含まず,販売名(商品名)か一般名かこれを特定するコードや,薬効,有効成分及び投与経路を特定することができるコードのレベルであると解するのが相当である。
b
2通りの主従関係で個別に格納
本件発明1の相互作用マスタについて,特許請求の範囲には,
2通りの主従関係で,相互作用が発生する組み合わせを個別に格納すると記載されている。個別とは,「個々別々。」(乙4)ないし

一つ一つ。それぞれを別々に扱うこと

(乙5)を意味し,2通りの主従関係でとは,一方の医薬品を主,他方の医薬品を従とするほか,他方の医薬品を主,一方の医薬品を従とすることを意味すると解される。
また,特許請求の範囲には一の医薬品,他の一の医薬品と
記載され,医薬品について一のと特定されているのであるか
ら,相互作用マスタに相互作用が発生する組み合わせが格納
される医薬品同士の関係は,
1対1であり,
1対多や多対1で対応するものではないと解される。
そうすると,①A薬品から見たB薬品に関する相互作用が発生する組み合わせについての情報と,②B薬品から見たA薬品に関する相互作用が発生する組み合わせについての情報とが,
データとして個々別々,
すなわち,
A薬品から見たB薬品に関する相互作用の有無等の情報が,
他の相互作用の有無等の情報とは別に1つのデータとして格納され,また,B薬品から見たA薬品に関する相互作用の有無等の情報が他の相互作用の有無等の情報とは別に1つのデータとして格納されるものと解される。
また,一の医薬品から見た他の一の医薬品の相互作用が発生する組み合わせは個別に格納されるのであるから,①A薬品から見たB薬品の相互作用の有無等の情報と,②A薬品から見たC薬品の相互作用の有無等の情報のデータとは,個々別々に格納されると解される。
c
以上によれば,本件発明1の相互作用マスタの一の医薬品
及び他の一の医薬品は,両者とも,販売名(商品名)か一般名か
これを特定するコードや,薬効,有効成分及び投与経路を特定することができるコードのレベルの概念で統一して格納され,①A薬品から見たB薬品の相互作用が発生する組み合わせについての情報と,②B薬品から見たA薬品の相互作用が発生する組み合わせについての情報とは,データとして個々別々のものとして格納され,また,①A薬品から見たB薬品に関する相互作用が発生する組み合わせについての情報と,③A薬品から見たC薬品の相互作用が発生する組み合わせについての情報とも,データとして個々別々のものとして格納されると解するのが相当である。

引用発明3について
(ア)

医薬品相互作用チェックテーブル105について
医薬品相互作用チェックテーブル105に記憶される医薬品間の相互作用の有無をチェックする情報は,各医薬品に付される添付文書から抽出された医薬品に関する情報である。これによれば,自己テーブル部401の自己医薬品の添付文書から抽出された情報により,当該自己医薬品と相互作用が発生する医薬品の情報が相手テーブル部402相手医薬品の
の情報として格納され,
一方で,
この相手医薬品として格納された医薬品においても,同様に当該医薬品を自己医薬品とした添付文書から抽出された相互作用が発生する医薬品の情報を相手医薬品の情報として,医薬品相互作用チェックテーブル105に格納されることは明らかである。そして,
前記ア(ア)のとおり,
医薬品の添付文書の相互作用の項目には,
相互作用が発生する医薬品名だけでなく,降圧剤のような上位の薬効分類での記載がされることも通常であるから,A薬品の添付文書の情報は,A薬品に対して相互作用が発生する医薬品の情報として,医薬品名ではなく,薬効分類のみの記載も含むものと解される。
引用発明3では,相手テーブル部を相手医薬品の一般名コード,薬効分類コード及びBOXコードのそれぞれで検索し,いずれかが存在する場合に相互作用があると判断するものである。相手テーブル部に相手医薬品の一般名コードが必ず存在するのであれば,薬効分類コード,BOXコードでは検索する必要はないから,引用発明3の相手テーブル部の一般名コード,薬効分類コード,BOXコードの各欄には,必ずしもすべてにコードが格納されているとは限らないものと認められる。
(イ)

検索処理について
引用発明3は,
医薬品相互作用チェックテーブル105
において,

①自己テーブル部に自己医薬品の一般名コードが存在するか,自己医薬品の属する薬効分類コードが存在するか,自己医薬品に付与されたBOXコードが存在するかをそれぞれ検索して,いずれかのコードが存在していれば,処方医薬品相互作用チェックテーブルTの形態で一時記憶テーブル110に記憶し,②一時記憶テーブル110に記憶したデータの相手テーブル部に,相手医薬品の一般名コードが存在するか相手医薬品の属する薬効分類コードが存在するか,

相手医薬品に付与されたBOXコードが存在するかをそれぞれ検索して,いずれかのコードが存在していれば,自己医薬品と相手医薬品とが相互作用を有する組み合わせが存在すると判断するものである。

以上によれば,本件発明1と引用発明3の一致点及び相違点は次のとおりであると認められる。
(ア)
a
対比
前記ア(イ)のとおり,本件発明1の相互作用マスタは,一の医薬品及び他の一の医薬品が販売名(商品名)か一般名かこれを特定するコードや,薬効,有効成分及び投与経路を特定することができるコードのレベルの概念で統一して格納され,①A薬品から見たB薬品の相互作用が発生する組み合わせについての情報と,②B薬品から見たA薬品の相互作用が発生する組み合わせについての情報とは,データとして個々別々のものとして格納され,また,①A薬品から見たB薬品に関する相互作用が発生する組み合わせについての情報と,③A薬品から見たC薬品の相互作用が発生する組み合わせについての情報とも,
データとして個々別々のものとして格納されるものである。
これに対し,
前記イ(ア)のとおり,
引用発明3の相手テーブル部の一般
名コード,薬効分類コード,BOXコードの各欄には,必ずしもすべてにコードが格納されているとは限らない。
したがって,引用発明3の医薬品相互作用チェックテーブル105と,本件発明1の相互作用マスタとは,一の医薬品から見た他の医薬品の相互作用が発生する組み合わせを個別に格納する相互作用をチェックするためのマスタである点で共通するが,本件発明1が一の医薬品から見た他の一の医薬品の場合と,前記他の一の医薬品から見た前記一の医薬品の場合の2通りの主従関係で,相互作用が発生する組み合わせを格納するのに対し,引用発明3では,一の医薬品から見た他の医薬品の一般名コード,薬効分類コード,BOXコードかの少なくともいずれかについて,相互作用が発生する組み合わせを格納し,また,他の一の医薬品から見た医薬品の一般名コード,薬効分類コード,BOXコードかの少なくともいずれかについて,相互作用が発生する組み合わせを格納する点で相違する。b
本件発明1は自己医薬品と相手医薬品との組み合わせと,
相互作用マスタに登録した医薬品の組み合わせについての合
致の有無を判断するものであるのに対し,
前記第2の3ウ(ア)及び上
記イ(イ)によれば,引用発明3は,①医薬品相互作用チェックテーブル105において,自己テーブル部に,自己医薬品に係る一般名コード,薬効分類コード,BOXコードが存在するかをそれぞれ検索し,②いずれかのコードが存在していれば,処方医薬品相互作用チェックテーブルTの形態で一時記憶テーブル110
に記憶し,③一時記憶テーブル110に記憶したデータの相手テーブル部に,相手医薬品に係る一般名コード,薬効分類コード,BOXコードが存在するかをそれぞれ検索し,④いずれかのコードが存在していれば,自己医薬品と相手医薬品
とが相互作用を有する組み合わせが存在すると判断するものである。そうすると,引用発明3の検索処理と本件発明1の相互作用チェック処理とは,いずれも,入力された新規処方データの各医薬品を自己医薬品及び相手医薬品とし,自己医薬品と相手医薬品の組み合わせについて,相互作用をチェックするためのマスタに基づいて相互作用をチェックするための処理を実行する点で共通するものの,引用発明3の検索処理は,自己医薬品
と相手医薬品と間で,一般名コード,薬効分類コード,BOXコ
ードのいずれかの組み合わせが存在すれば相互作用を有する組み
合わせであると判断するものであり,自己医薬品と相手医薬品と
の組み合わせと相互作用マスタに登録した医薬品の組み合わせと
の,医薬品の組み合わせ同士の合致を判断しているとはいえない
から,本件発明1の自己医薬品と相手医薬品との組み合わせと相互作用マスタに登録した医薬品の組み合わせが合致するか否かを判断することにより,相互作用チェック処理を実行する相互作用チェック処理とは相違する。(イ)

一致点及び相違点
以上によれば,本件発明1と引用発明3は,次の一致点において一致
し,前記第2の3(2)ウ(ウ)記載の相違点4-1のほか次の相違点において相違することが認められる。
a
一致点

一の医薬品から見た他の医薬品の相互作用が発生する組み合わせを個別に格納する相互作用をチェックするためのマスタを記憶する記憶手段と,入力された新規処方データの各医薬品を自己医薬品及び相手医薬品とし,自己医薬品と相手医薬品の組み合わせについて,上記マスタに基づいて相互作用をチェックするための処理を実行する制御手段と,前記制御手段による自己医薬品と相手医薬品の間の相互作用をチェックするための処理の結果を,表示する表示手段と,を備えたことを特徴とする医薬品相互作用チェック装置b
相違点

〔相違点4-8〕
相互作用をチェックするためのマスタが,本件発明1では,一の医薬品から見た他の一の医薬品の場合と,前記他の一の医薬品から見た前記一の医薬品の場合の2通りの主従関係で,相互作用が発生する組み合わせを格納するのに対し,引用発明3では,一の医薬品から見た他の医薬品の一般名コード,薬効分類コード,BOXコードかの少なくともいずれかについて,相互作用が発生する組み合わせを格納し,また,他の一の医薬品から見た医薬品の一般名コード,薬効分類コード,BOXコードかの少なくともいずれかについて,相互作用が発生する組み合わせを格納する点。〔相違点4-9〕
相互作用をチェックするための処理が,本件発明1では,自己医薬品と相手医薬品との組み合わせと相互作用マスタに登録した医薬品の組み合わせが合致するか否かを判断するのに対し,引用発明3では,自己テーブル部に自己医薬品の一般名コードが存在するか,
自己医薬品の属する薬効分類コードが存在するか,自己医薬品に付与されたBOXコードが存在するかをそれぞれ検索して,いずれかのコードが存在していれば,処方医薬品相互作用チェックテーブルTの形態で一時記憶テーブル110に記憶し,一時記憶テーブル110に記憶したデータの相手テーブル部に,相手医薬品の一般名コードが存在するか,相手医薬品の属する薬効分類コードが存在するか,相手医薬品に付与されたBOXコードが存在するかをそれぞれ検索して,いずれかのコードが存在していれば,自己医薬品と相手医薬品とが相互作用を有する組み合わせが存在すると判断するものである点。

以上のとおりであるから,審決は,本件発明1と引用発明3の相違点の認定に際し,相違点4-8,4-9を看過したものであり,相違点の認定の誤りがあるというべきである。

(3)

相違点4-8,4-9に関する容易想到性について
相互作用をチェックするための処理について,引用発明3においては,自己医薬品について,一般名コード,薬効分類コード,BOXコードのそれぞれについて検索を行い,相手医薬品についても,一般名コード,薬効分類コード,BOXコードのそれぞれについて検索を行うため,6回の検索が必要であり,一時記憶テーブルを必要とするのに対し,本件発明1においては,医薬品と医薬品の組み合わせ同士の合致を判断するため,1回の検索(双方向の検索をそれぞれ別の検索と考えても2回の検索)により行うことができる。
また,得られる検索結果について,本件発明1においては,処方された医薬品の組み合わせと相互作用をチェックするためのマスタに登録された医薬品の組み合わせとが合致したものを検索結果とするのに対し,引用発明3においては,医薬品相互作用チェックテーブル105に登録された自己医薬品と相手医薬品の一般名コードが一致するものだけではなく,自己医薬品と薬効分類コードやBOXコードの一致する他の医薬品の相互作用チェックテーブルも一時記憶テーブルに記憶し,相手医薬品の一般名コード,薬効分類コード,BOXコードが存在するかを検索するため,薬効分類コード,BOXコードのいずれかのみの一致するものも検索結果とし,本件発明1よりも多くの検索結果を得るものと解され,両発明において得られる検索結果は異なる。
このように,引用発明3は,添付文書の相互作用の項目に記載された医薬品の情報をそのままコード化してデータベースを構築し,相互作用をチェックするための処理において,データベースの各項目(一般名,薬効,BOX)それぞれについて検索を行うことにより漏れのない相互作用チェックを行うのに対し,本件発明1は,添付文書の相互作用の項目に記載された医薬品の情報に基づいて医薬品と医薬品との組み合わせについてデータベースを構築し,相互作用チェック処理においては,医薬品と医薬品との組み合わせのみで単純に検索するため,1回の検索(双方向の検索をそれぞれ別の検索と考えても2回の検索)で相互作用チェックできるというものであるから,両発明はその技術思想を異にするものである。

そして,相違点4-8,4-9に係る構成を開示する他の証拠も示されていないから,本件発明1の相違点4-8,4-9に係る構成を,当業者が容易に想到し得たとはいえない。

(4)

原告の主張について
本件発明1について
(ア)

原告は,被告らによる個別に格納が,①同一粒度,かつ,②分離
格納を意味するとの主張について,審判手続において現実に争われたものではないから,本件訴訟において審理の対象とされるべきでないと主張する。しかし,上記被告らの主張は,審判手続において審理判断された公知事実との対比における相違点の認定の誤りに関する主張であって,これは,審決取消訴訟の審理の対象にほかならないから,原告の主張は失当である。
(イ)

原告は,本件発明1の個別に格納とは,①A薬品からみたB薬品
に関する相互作用情報と,②B薬品からみたA薬品に関する相互作用情報を個別に格納することであり,①A薬品からみたB薬品に関する相互作用情報と,③A薬品からみたC薬品に関する相互作用情報とを個別に格納することは意味しないと主張するが,
この点に関する判断は前記(2)
ア(イ)に説示したとおりである。
(ウ)

原告は,
本件発明の技術的特徴はマトリックス形式による表示にあり,

本件発明の目的は,ある2つの医薬品間の相互作用チェックの結果を,2通りの主従関係を区別して表示することにあるから,本件発明においては,ある2つの医薬品同士の相互作用が主従を区別して定義されていれば足り,その定義が同じレベルの概念(基準ないし粒度)同士の組み合わせでされていることは必要ではないと主張する。しかし,各医薬品を自己医薬品及び相手医薬品として相互作用マスタに登録した医薬品の組み合わせと合致するか否かを判断するという相互作用チェック処理における検索処理を前提にすれば,2通りの主従関係で個別に格納といえるためには,医薬品が同一のレベルの概念で統一される必要があることは前記(2)ア(イ)に説示したとおりである。また,原告は,仮に異なるレベルの概念同士の組み合わせで相互作用が定義されていたとしても,それぞれの概念に当てはまる具体的な医薬品が定義されていれば,結果として,具体的な医薬品同士の相互作用として主従を区別して表示することができると主張するが,結果として同一の検索結果が得られるからといって,データの格納の構成が同一であるとはいえないことは明らかである。
さらに,原告は,本件発明1はデータ格納方式を特定するものではなく,ツリー構造での格納方式も含まれると主張する。しかし,本件発明1がデータの格納の構成について特定するものであることは,
前記(2)ア
(イ)に説示したとおりである。
(エ)

原告は,
本件発明2が薬効コード同士の組み合わせで相互作用が発生

する組み合わせを定義する態様であることから,各コードに該当する具体的な医薬品の数に応じて,1対1の場合もあれば,1対多の
場合もあれば,多対多の場合もあれば,多対1の場合もありう
るのであり,本件発明が1対1であるということもできないと主張する。しかし,相互作用が発生する組み合わせを各医薬品の効能を定めた薬効コード同士の組み合わせとして格納する本件発明2についても,同一のレベルの概念で統一して,個々別々に格納されているといえるのは,前記(2)ア(イ)a(c)に説示したところから明らかである。(オ)

原告は,本件特許の出願経過からも,同様の理解ができると主張する
が,原告の指摘する意見書の記載は,本件発明の個別に格納が同一のレベルの概念で統一して,個々別々に格納することを意味することと矛盾するものではなく,原告の主張は採用できない。

本件発明1と引用発明3の対比について
(ア)

原告は,引用発明3の医薬品相互作用チェックテーブル105の

各コードの組み合わせに着目すれば,一般名コード同士,薬効分類コード同士といった同じ概念同士のコードの組み合わせを含むことが当然に予定されているから,引用発明3も本件発明と同じく,同じ概念のコード同士で相互作用が発生する組み合わせを記憶する構成を含んでいるものであって,相違はないと主張する。しかし,本件発明1の相互作用マスタにおいて,医薬品は同一のレベルの概念で統一して,その組み合わせが個々別々に格納されているといえる必要があるところ,引用発明3の医薬品相互作用チェックテーブル105においては,相手テーブル部の一般名コード,薬効分類コード,BOXコードの各欄には,必ずしもすべてにコードが格納されているとは限らないことは前記(2)イ(ア)のとおりである。
(イ)

原告は,相互作用マスタに記憶される情報と相互作用チェックテーブル105に記憶される情報は,いずれも相互作用が発生する医薬の分類に関するコード同士の組み合わせであり,違いはないと主張する。しかし,本件発明1において相互作用マスタにおけるデータの格納の構成が発明特定事項とされていることは前記(2)ア(イ)のとおりであり,引用発明3の医薬品相互作用チェックテーブル105がこれと同じ構成を有するといえないことは明らかであって,この点は,医薬品相互作用チェックマスタ104において医薬品とコードの紐づけがされていることによって左右されるものではない。
(ウ)

原告は,
引用発明3は,
処方された医薬品を自己医薬品及び相手医薬

品とすることから,その検索過程は本件発明1と異ならないと主張するが,前記(2)ウ(ア)に説示した点に照らせば,処方された医薬品を自己医薬品及び相手医薬品とすることは上記相違点の認定に関する判断を左右するものではない。原告の主張するその余の点も,以上に説示したところに照らし,上記相違点の認定に関する判断を左右するものではない。(5)

小括
以上のとおり,審決の相違点の認定の誤りは,本件発明1の進歩性を否定した審決の結論に影響を及ぼすものであることが明らかであるから,被告取消事由1は理由がある。

3
被告取消事由2~6(本件発明2~4,6,8に関する進歩性判断の誤り)について
本件発明2~4,6,8は,いずれも本件発明1を間接又は直接に引用するものであり,相違点の認定の誤りについて上記2に述べたところが妥当する。そうすると,本件発明2~4,6,8における追加の構成に係る相違点の有無や容易想到性について判断するまでもなく,本件発明2~4,6,8の相違点の認定には誤りがあり,その誤りは,これらの発明を無効とした審決の判断の結論に影響を及ぼすものといえる。
したがって,被告取消事由2~6はいずれも理由がある。
4
原告取消事由1(本件発明5,7,9に関する引用発明1に基づく新規性,進歩性判断の誤り)について
(1)

引用発明1の認定について
甲3,7,8文献の記載
(ア)

甲3文献
甲3文献には,現在市販されている相互作用チェックのためのシステムについて,院外の薬局などを対象としたものをいくつか紹介する(表1)。ここでは,各システムについて紹介することを目的とし,内容は各社から頂いた回答をほぼそのままの表現で記載した。(259頁右欄14
~19行)と記載され,表1には,福神株式会社の医療用添付文書情報サービス『EDIS』について,A薬品とB薬品との間で相互作用がある場合,双方向でのチェックが可能か?に対して,可能とある。
(イ)

甲7文献
甲7文献からは,福神株式会社のインターネット医療用医薬品添付文
書情報サービス
EDIS(エディスEthicalDrugInformationService):ForWWWの,相互作用チェックシステムという画面には,相互作用検索・マトリックス表示と記載され,マトリックス表示された画面が見て取れ,当該画面において,対象となる医薬品名とアルファベットを行に表示し,列にはアルファベットのみを表示したマトリックス表示において,相互作用チェック結果を該当するセルに表示することが見て取れる。
情報サービスの概要(インターネット版)のページにおいては,
医療用添付文書情報サービス(EDIS)は,添付文書の情報をデータベース化した添付文書データベースを備え,医療用添付文書情報サービス(EDIS)が備える相互作用チェックシステムは,

医薬品間でそれぞれ添付文書に相互作用の記載があるかどうかを検索して,マトリックスで表示します。併用禁忌は赤色で,併用注意は黄色で表示されます。検索項目商品名,一般名,薬効名など

と記載されてい
る。
(ウ)

甲8文献
甲8文献によれば,EDISによる相互作用検索・マトリックス表示
の画面において,対象となる医薬品名とアルファベットを行に表示し,列にはアルファベットのみを表示したマトリックス表示において,相互作用チェック結果を該当するセルに表示すること,チェック開始ボタン,画面クリアボタンが表示され,相互作用検索マトリックスの行には,アルファベットに対応させて,医薬品名を入力可能なテキストボックスがあることが見て取れる。また,チェック結果を,併用禁忌のセルを赤色とし,記号◎で表し,併用注意のセルを黄色とし,記号○で表すことが記載されている。

これによれば,本件出願日前に公然実施されていたEDISの構成として,前記第2の3(2)ア(ア)記載の引用発明1を認めることができる。

さらに,甲8文献の別紙6-2からは,EDISの相互作用検索・マトリックス表示の画面において,テキストボックスに医薬品名を入力して
チェック開始
ボタンをクリックすると,
相互作用チェックが行われ,
画面クリア
ボタンをクリックすると,
入力された
テキストボックス
がクリアされ,相互作用チェック結果もクリアされると理解できる。また,テキストボックスに医薬品名を入力してチェック開始ボ
タンをクリックして相互作用チェック結果が表示されている状態で,さらに,
空欄の
テキストボックス
に医薬品名を入力して
チェックボタン
をクリックすると,新たに追加して入力された医薬品を含めた相互作用チェック結果が表示されると理解できる。
これによれば,
引用発明1のほか,
前記第5の1(1)記載の原告主張引用
発明1を認めることができる。
(2)

相違点の認定について
本件発明1の相互作用マスタの意義は前記2(2)アに説示したとおりであり,本件発明1と引用発明1の一致点は前記第2の3(2)ア(イ)記載の一致点のとおりであり,以下のとおり,相違点は同(ウ)記載の相違点(相違点1-1~1-4)のとおりであると認められる。
(ア)

相違点1-1
甲7文献,乙6,7の記載によれば,引用発明1の添付文書の情報をデータデース化した添付文書データベースは添付文書の相互作用の項目に記載された情報を全文検索できるように構成したものである。そして,添付文書には,医薬品に対して,相互作用が発生する医薬品等が記載されているが,添付文書の相互作用の項目には,1つの医薬品に対して,降圧剤のような上位の薬効分類での記載,また,1つの医薬品に対して相互作用が発生する複数の医薬品が記載されることが通常であることは,前記2(2)ア(ア)のとおりである。
そうすると,A薬品の添付文書の情報は,A薬品に対して相互作
用が発生する医薬品の情報として,B薬品のみならず,他の医薬品や薬効分類の情報も含むことになる。
引用発明1の
添付文書データベース
は,このような添付文書の情報を全文検索可能にデータベース化したものであるため,A薬品に対するB薬品の相互作用のデータは,A薬品に対する他の医薬品や薬効の相互作用のデータとは,個々別々のデータということができない。
したがって,引用発明1の添付文書データベースは,本件発明1
の相互作用マスタの構成を有するとはいえない。
(イ)

相違点1-2
甲3,7,8文献のいずれにも,入力画面における医薬品名が新規処
方データであることは記載されていない。
また,
甲8文献の別紙6-1,
6-2においては,新規処方データとはいえないグレープフルーツジュースが入力されている。そうすると,引用発明1において,入力され,チェック対象となる医薬品は任意のものであり,新規処方データとは特定されていない。(ウ)

相違点1-3
上記(ア)のとおり,引用発明1の添付文書データベースは,添付文
書の相互作用の項目に記載された情報を全文検索できるように構成したものである。
引用発明1で行われる医薬品Aと医薬品Bとの相互作用のチェック処理においては,まず,医薬品Aの添付文書を特定し,次に,医薬品Aの添付文書の相互作用の項目を医薬品Bで全文検索を行い,医薬品Bが存在していれば,医薬品Aと医薬品Bの組み合わせが相互作用を有すると判断していると解される。
したがって,引用発明1の検索処理が,本件発明1の相互作用マスタと同様の構成を備えるものに対して実行されてはいない。(エ)

相違点1-4
甲7文献及び甲8文献別紙6-1,6-2によれば,列には,アルフ
ァベットのみが表示され,医薬品の名称は表示されていない。

以上のとおりであるから,審決が相違点1-1~1-4を認定したことに誤りはない。


なお,上記(1)のとおり,甲3,7,8文献からは,引用発明1のみならず原告主張引用発明1を認定することができるが,
原告主張引用発明1は,
引用発明1にさらに,相互作用チェック結果の表示画面には,医薬品名を入力可能な『テキストボックス』及び『チェック開始』ボタンが配置され,『テキストボックス』に医薬品名を追加入力し,『チェック開始』ボタンを押下することでテキストボックス入力された医薬品名が,チェック対象として設定され,チェック結果を表示すべきチェック対象としてマトリックスに表示され,相互作用チェックが行われるとの構成(以下,引用発明1付加構成という。)を付加したものである。そして,原告主張引用発明1は,引用発明1の構成をすべて備えるものであり,本件発明1と引用発明1とを対比したときの一致点,相違点と,本件発明1と原告主張引用発明1とを対比したときの一致点,相違点とは,同じものとなる。このように,上記の引用発明1付加構成は,本件発明1との一致点,相違点の認定には関係しない構成である。
以上のとおり,審決の引用発明1の認定に誤りはないし,また,本件発明1の新規性,進歩性の判断において,原告主張引用発明1を対象とする必要もないから,この点は,審決の結論に影響を及ぼすものではない。(3)

容易想到性の判断について
相違点1-1,1-3について
(ア)
a
文献の記載
甲14文献には,医薬品相互作用チェックの為のファイルもしくはデータベース等の作り方において,従来の方法は大きく二つの形態に分けられる。第一の方法は,相互作用を有する医薬品の関係を個々の医薬品に対し設定する方法であり,それは川合等による「処方支援(相互作用チェック)システム(月刊薬事Vol.38,No.2(1996)79-86頁)に記載されている。第二の方法は,相互作用を有する医薬品の関係を文字情報(テキストデータ)で構築する方法であり,特開平8-275988号公報あるいは特開平9-99039号公報に開示されている。」との記載がある(【0003】)。
b
甲15文献は,甲14文献における第一の方法を示すものであ
り,甲15文献には次のとおりの記載がある。
北大病院での処方オーダリングシステムの概略当院はホスト・コンピュータとして2台のACOSシステム3600/8(主記憶容量32MB)を配置している(図1)。処方オーダによる処方作成は,薬剤基本・検索・コメント・DIなどの各テーブル,患者データファイルなどを用いる。・・・・相互作用チェック機能相互作用のチェックは,処方を発行する直前の画面上で必ず行われる。相互作用をチェックしたい組み合わせについては,併用禁忌である各薬剤の基本テーブルに,対象薬剤のコードなどを登録することでお互いにチェックが可能となる。本システムでのチェック機能は,すでに処方発行(あるいは予約登録)されている薬剤のうち,服用期間が重複するものについて,院内・院外,入院・外来,自科・他科などの処方せんの種類を問わず,処方開始日より30日前のものから投薬終了日までチェックをかけるように設定した(図2)。・・・(1)相互作用のチェック対象と代替薬の提示相互作用に関してはチェックをかけるべき組み合わせは多々報告されている。しかし,登録品目数が多くなるほど,処方監査に費やされる応答時間が延長すること等により,成書や添付文書等に記載されているすべての相互作用例を登録することは現段階では現実的ではない。したがって当院では,処方オーダに登録されている医薬品(一部,注射薬を含む)のうち,添付文書上に「~との併用を避ける。あるいは

~との同時服用を避ける。

などのように明確に記載されているものを採択した。・・・
(2)基本テーブルの設定
相互作用をチェックする源となるテーブルとして,既存の薬剤基本テーブル中に相互作用欄を新たに設けた(図3中央)。この欄は
監査区分・パターン・コード・コメントコードの4
つの欄を1セットとして構成する。薬剤基本テーブル中には相互作用欄が5セット分あり,最大5種類まで対象薬(群)を登録することが可能である。その他に成分,同効類似,相互禁忌の
欄を今回,新たに1個ずつ設けた。
監査区分欄ではチェックをかけたものをエラー(併用禁忌と明記されている場合)として処方の変更を促すのか,警告(

同時服用を避ける。

のように併用禁忌に準ずると判断される場合)として確認を促すのかの2段階のうちのどちらかを選択できる。パターン欄はどの項目を対象にして相互作用をチェックするか
を設定するもので,対象項目には①(薬品)コード欄,②成分欄,③同効類似欄,④相互禁忌欄,⑤薬効欄の5種類がある(図3の①~⑤)。
コード欄には対象項目のコードが最大6桁まで登録できる。対
象項目を(薬品)コード(図3の①)とした場合では数字6桁であり,薬効欄(図3の⑤)では日本標準商品分類番号の下4桁を用いている(バクシダール錠では876241のうち,6241)。また,対象が成分,同効類似,相互禁忌の場合では,英文字あるい
は数字を最大6桁まで新規に登録することで利用可能となる。なお,6桁目まで登録しない場合にはコードの最後に*を追加することにした。
コメントコード欄には,処方チェック時に画面上に表示させる
コメントのコード3桁を登録する。
これらを登録すると,たとえば図中U,1,221091,033では,対象薬剤の薬剤基本テーブル中の(薬品)コード欄(図3の①)をチェックし,221091と登録されている薬剤(商品名:ナパノール)が処方されていた場合にはエラー(U)とし,コメントテーブル
に登録されている
033
のコメントを画面表示する。G,3,AL*,081
また,
では,同効類似の欄(図3の③)をチェックし,ALと登録されている薬剤(アルミニウムを含有する制酸剤)が併用されていれば警告(G)とし,081のコメントを画面表示する。
相互作用の登録欄は5セット分であり,チェック対象が一成分で数品目ある薬剤や,グループである場合には医薬品コードを登録していくと不足が生じる。その対策として,今回の機能追加に伴い新規に設定した成分,同効類似,相互禁忌の各欄を対象項目とす
ることにより,対象薬剤が5品目を超える場合にも対処した。たとえば,対象薬からチェックがかかるようにバクシダール錠では成分
欄(図3の②)に略号のNFLXを登録した。・・・相互作用チェック機能の実際
例としてバクシダール錠とナパノール錠,
マーロックス
を処方すると,
処方登録時に,
バクシダール錠ナパノール(相):にスパラ,他の抗生物質へナパノール錠バクシダール,には(相):ポンタール等へ変更マーロックス,
には
ニューキノロン(相):セルベックス等へ
のコメントが各々,
画面表示される
(図4)・・
。・
相互作用の詳細を知りたい場合は,当該薬剤の用量入力の所でH
(Helpの頭文字)を入力することにより,DI情報を画面上で参照できる(図5)。ここでは併用禁忌の対象薬,その理由,代替薬などの情報をさらに詳しく知ることができるようにDIテーブルへ登録している。・・・」
以上によれば,甲15には,薬剤基本テーブルに,相互作用を有する対象薬剤のコードを5セットまで登録でき,処方された薬剤に関して,基本テーブルに登録された相互作用の対象薬剤のコードと,処方された他の薬剤のコードとが一致すれば,相互作用があると判断することにより,相互作用チェックを行うことが記載されている。
(イ)

容易想到性
以上のとおり,甲14,15文献には,一の薬剤の薬剤基本テーブル
に,相互作用を有する対象薬剤のコードを複数セット登録することは記載されているが,前記2(2)ア(イ)に認定した,本件発明1の相互作用マスタにおける
個別に格納
の構成をとることは記載されていない。
したがって,甲14,15文献に,相違点1-1,1-3に係る構成が開示されているということはできない。
加えて,引用発明1の添付文書データベースを,文字情報(テキ
ストデータ)でない他のデータ構造に変更すると,引用発明1の,商品名や一般名の両方でチェックすることができ,名称に限らず,相互作用欄に記載されている言葉で検索できるという,相互作用を有する医薬品の関係を文字情報(テキストデータ)で構築したことによる特徴を失うことになるから,引用発明1において,このような変更を行う動機付けもない。
このように,甲14,15文献は,相違点1-1,1-3に係る構成を開示するものではないし,引用発明1の添付文書データベースを他のデータ構造に変更する動機付けもない。
よって,引用発明1において,相違点1-1,1-3に係る構成を当業者が容易に想到し得たとはいえず,相違点1-1,1-3に係る構成の容易想到性についての審決の判断に誤りはない。
(ウ)

原告の主張について
原告は,引用発明1において,一の医薬品(薬品A)から見た他の一
の医薬品(薬品B)の相互作用情報と,他の一の医薬品(薬品B)から見た一の医薬品(薬品A)の相互作用情報とが,別々に格納されているのであるから,引用発明1にリレーショナルデータベースの格納方式を採用すれば本件発明1の構成に至ると主張する。
しかし,医薬品の添付文書の相互作用の項目には,医薬品名だけでなく,降圧剤のような上位の薬効分類での記載,飲食物や飲酒などの情報,1つの医薬品に対して相互作用が発生する複数の医薬品が記載されることが通常であり(前記2(2)ア(ア)),これらの相互作用をデータベースに格納する際にリレーショナルデータベース形式を採用したとしてもデータベースへの格納の形式は一意に定まるものではなく,リレーショナルデータベース形式に変更することが,一の医薬品と他の一の医薬品との相互作用が発生する組み合わせを個々別々に格納することに直ちには結びつかない。
そして,引用発明1の添付文書データベースについてリレーショ
ナルデータベースの格納方式を採用すると,商品名や一般名の両方でチェックすることができ,名称に限らず,相互作用欄に記載されている言葉で検索できるという,添付文書データベースを文字情報(テキストデータ)で構築したことによる特徴を失うことになるから,引用発明1において,このような変更を行う動機付けがないことは,上記(イ)に説示したとおりである。

本件発明5,7,9について
本件発明5,7,9は本件発明1を間接又は直接に引用するものであるから,相違点1-1,1-3の構成を有しているところ,これらの構成について当業者が容易に想到することができたといえないのは上記アに説示したとおりである。
そうすると,本件発明5,7,9における追加の構成の容易想到性について判断するまでもなく,本件発明5,7,9について,引用発明1及び原告の主張するその他の文献(甲3,14,15,18,19,22文献,甲46~50)に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(4)

小括
以上のとおりであるから,本件発明5,7,9について,新規性及び進歩
性を欠如するとはいえないとした審決の判断に誤りはなく,原告取消事由1は理由がない。
5
原告取消事由2(本件発明5,7,9に関する引用発明2に基づく進歩性判断の誤り)について
(1)

引用発明2の認定について
前記4(1)ア(イ)の甲7文献の記載によれば,前記第2の3(2)イ(ア)記載の
引用発明2を認めることができる。
(2)

相違点の認定について
前記4(1)及び上記(1)によれば,本件発明1と引用発明2の一致点は,前記第2の3(2)イ(イ)のとおりであり,
相違点は同(ウ)のとおりであると認
められる。


原告の主張について
原告は,相違点3-1~3-4は存在しないと主張するが,本件発明1と引用発明2の対比においても前記4(2)に説示したところが妥当するから,原告の主張は採用できない。

(3)

容易想到性の判断について
甲13文献の薬品相互作用テーブルは,
各医薬品に対し,
添付文書に記載
されている併用薬品を全て登録したものであるから,
本件発明の
一の医薬品から見た他の一の医薬品の場合と,前記他の一の医薬品から見た前記一の医薬品の場合の2通りの主従関係で,相互作用が発生する組み合わせを個別に格納する相互作用マスタの構成を開示するものではない。そうすると,
引用発明2と甲13文献記載の発明を組み合わせることによ
り,当業者が相違点3-1,3-3に係る構成に容易に想到することができたということはできないから,審決の容易想到性の判断に誤りはない。(4)

小括
以上のとおりであるから,本件発明5,7,9について,進歩性を欠如す
るとはいえないとした審決の判断に誤りはなく,原告取消事由2は理由がない。
6
原告取消事由3(本件発明5,7,9に関する引用発明3に基づく進歩性判断の誤り)について
本件発明5,7,9は,いずれも本件発明1を間接又は直接に引用するものであり,相違点の認定及び相違点4-8,4-9の容易想到性について前記2に述べたところが妥当する。
そうすると,本件発明5,7,9における追加の構成に係る相違点の有無や容易想到性について判断するまでもなく,本件発明5,7,9は引用発明3,甲3,6~10,18,19,22文献,甲46~50に基づいて容易に想到できたものであるとはいえない。
したがって,本件発明5,7,9について,引用発明3に基づいて進歩性を欠如するとはいえないとした審決の判断は結論において誤りはなく,原告取消事由3は理由がない。

7
結論
以上のとおり,原告取消事由1~3はいずれも理由がないから,原告の請求は棄却すべきものである。他方,被告取消事由1~6はいずれも理由があるから,被告らの請求を認容すべきものである。
よって,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部

裁判長裁判官
鶴岡稔彦山門優高橋彩
裁判官

裁判官

別紙
本件明細書図面目録

別紙
甲8文献図面目録
別紙6-1

別紙6-2

別紙
甲14文献図面目録

別紙
被告ら主張の引用発明3の構成

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