判例検索β > 平成29年(ワ)第15518号
損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟
事件番号平成29(ワ)15518
事件名損害賠償請求事件
裁判年月日令和元年6月26日
法廷名東京地方裁判所
裁判日:西暦2019-06-26
情報公開日2019-08-20 18:00:30
戻る / PDF版
令和元年6月26日判決言渡

同日原本領収

平成29年(ワ)第15518号

裁判所書記官

損害賠償請求事件

口頭弁論終結日平成31年4月19日
判原決告X
同訴訟代理人弁護士

石下雅江間布実子江間由実子渡辺知永野真益弘被告
IPsoft

樹博理子圭
Japan

株式会社
同訴訟代理人弁護士

荻忠
同補佐人弁理士

津小原菅林渡主雄二充一弘浩邉聡文1
原告の請求をいずれも棄却する。

2
訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第1請求
1被告は,原告に対し,4500万円及びこれに対する平成29年5月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2被告は,別紙1製品目録記載の製品を製造し,使用し,譲渡し,貸し渡し,輸入し,若しくは輸出し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。3訴訟費用は被告の負担とする。
4仮執行宣言
第2事案の概要
1本件は,原告が,原告の有する特許権に係る特許発明の技術的範囲に属する別紙1記載の製品(以下本件製品という。)を被告が製造販売等する行為が同特許権の直接侵害又は間接侵害に当たるなどと主張して,被告に対し,特許法100条1項に基づく本件製品の製造,譲渡等の差止めと,民法709条,特許法102条3項に基づく損害賠償として4500万円及びこれに対する不法行為
の後の日である平成29年5月18日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。2前提事実
(当事者間に争いのない事実又は文中掲記した証拠及び弁論の全趣旨により認定することができる事実。なお,本判決を通じ,証拠を摘示する場合には,特に断らない限り,枝番を含むものとする。)

(1)当事者

原告は,人工知能技術開発等を目的とする訴外株式会社オメガ・レゾンの代表取締役である。


被告は,米国法人IPsoft

Incorporated(以下米IPsoft社という。)の関連会社であり,ITシステムのサポートサービス事業等を営む株式会社である。(乙4)

(2)原告の特許権

原告は,以下の各特許権(以下,それぞれ符号に従い本件特許権1などといい,併せて本件各特許権という。)を有している(以下,本件各特許権に係る特許を,それぞれ符号に従い本件特許1などといい,併せ
て本件各特許という。)。
(ア)本件特許権1(甲5,8)
特許番号:特許第5737641号
発明の名称:自律型思考パターン生成機
出願日:平成26年5月24日
登録日:平成27年5月1日
(イ)本件特許権2(甲6,9)
特許番号:特許第5737642号
発明の名称:自律型知識向上装置
出願日:平成26年8月15日
登録日:平成27年5月1日

(ウ)本件特許権3(甲7,10)
特許番号:特許第5807829号
発明の名称:自律型知識分析器
出願日:平成27年2月2日
登録日:平成27年9月18日


本件特許1の特許請求の範囲の請求項1の記載は別紙3の特許請求の範
囲の同請求項のとおりであるところ,同請求項を分説すると,以下のとおりである(以下,同請求項に係る発明を本件発明1という。また,本件各特許の願書に添付した明細書及び図面を,特許の符号に従って本件明細書等1などという。)。(甲8)1A

画像情報,
音声情報および言語を対応するパターンに変換するパタ
ーン変換器と,パターンを記録するパターン記録器と,

1B

パターンの設定,変更およびパターンとパターンの結合関係を生成するパターン制御器と,

1C
入力した情報の価値を分析する情報分析器を備え,

1D

有用と判断した情報を自律的に記録していく自律型思考パターン

生成機。

本件特許2の特許請求の範囲の請求項1,3及び6の記載は別紙4の特許請求の範囲同各請求項記載のとおりであるところ,同各請求項を分説すると,以下のとおりである(以下,同各請求項に係る発明を,符号に従い本件発明2-1などという。)。(甲9)
(ア)本件発明2-1
2A

言語情報をパターンに変換するパターン変換器と,パターンおよびパターン間の関係を記録するパターン記録器と,

2B

処理を行うためにパターンを保持するパターン保持器と,パターン保持器を制御する制御器と,パターン間の関係を処理するパターン間処理器を備え,

2C

入力した言語情報の意味,新規性,真偽および論理の妥当性を評価し,自律的に知識を獲得し,知能を向上させる人工知能装置。

(イ)本件発明2-3
2A

言語情報をパターンに変換するパターン変換器と,パターンおよびパターン間の関係を記録するパターン記録器と,

2B

処理を行うためにパターンを保持するパターン保持器と,パターン保持器を制御する制御器と,パターン間の関係を処理するパターン間処理器を備え,

2C’入力した言語情報の意味,新規性,真偽および論理の妥当性を評価し,自律的に知識を構築し,

2D

不明な点があれば質問を提示し,質問に対し人間等が回答した場合はその回答を元に知識を更新していく人工知能装置。

(ウ)本件発明2-6
2A
言語情報をパターンに変換するパターン変換器と,パターンおよびパターン間の関係を記録するパターン記録器と,

2B’処理を行うためにパターンを保持するパターン保持器と,パターン保持器を制御する制御器と,パターン間の関係を処理するパターン間処理器と,
2E

パターンを変換し制御出力を生成するパターン逆変換器を備え,

2C”入力した言語情報の意味,新規性,真偽および論理の妥当性を評価し,自律的に知識を獲得し,知能を向上させ,

2F

その知能に基づき機械の制御を行う人工知能装置。

本件特許3の特許請求の範囲の請求項7~12の記載は別紙5の特許請
求の範囲の各請求項記載のとおりであるところ,同各請求項を分説すると,以下のとおりである(以下,同各請求項に係る発明を,符号に従い本件発明3-7などという。)。(甲10)(ア)本件発明3-7
3A

情報をパターンに変換するパターン変換器と,

3B

パターン,パターン間の接続関係,パターン間の関係およびパターンの励起の履歴を記録するパターン記録器と,

3C

パターンおよびパターン間の接続関係を人間の指示または自律的

に登録および変更するパターン登録器と,
3D

パターンの処理を制御するパターン制御器と,パターンを情報に変換するパターン逆変換器と,

3E

パターンおよびパターン間の関係を分析するパターン分析器を備

え,

3F

人間の指示および学習により情報および情報の構造を分析・記録する処理を実施し,情報間の関係をパターン間の接続関係およびパターン間の処理により自律的に構築していく人工知能として機能させるためのソフトウェア。

(イ)本件発明3-8
3A

情報をパターンに変換するパターン変換器と,
3B

パターン,パターン間の接続関係,パターン間の関係およびパターンの励起の履歴を記録するパターン記録器と,

3C

パターンおよびパターン間の接続関係を人間の指示または自律的

に登録および変更するパターン登録器と,
3D

パターンの処理を制御するパターン制御器と,パターンを情報に変換するパターン逆変換器と,

3E

パターンおよびパターン間の関係を分析するパターン分析器を備

え,
3G

人間の指示および学習により情報および情報の構造を分析・記録する処理を実施し,情報の処理において追加および変更が生じた場合に
おいてもプログラムの追加および変更をすることなく,パターンおよびパターン間の接続関係を追加および変更することにより対応することが可能な人工知能として機能させるためのソフトウェア。
(ウ)本件発明3-9
3A

情報をパターンに変換するパターン変換器と,

3B

パターン,パターン間の接続関係,パターン間の関係およびパターンの励起の履歴を記録するパターン記録器と,

3C

パターンおよびパターン間の接続関係を人間の指示または自律的

に登録および変更するパターン登録器と,
3D

パターンの処理を制御するパターン制御器と,パターンを情報に変換するパターン逆変換器と,

3E’パターンおよびパターン間の関係を分析するパターン分析器と,3H

パターンおよびパターン間の分析結果に応じて適切な処理を実行

するパターン処理器を備え,人間の指示および学習により情報および情報の構造を分析・記録する処理を実施し,情報間の関係をパターン間の接続関係およびパターン間の処理により自律的に構築するとともに,入力された質問,命令および問題・課題に対して適切な処理を実行する人工知能として機能させるためのソフトウェア。
(エ)本件発明3-10
3A
情報をパターンに変換するパターン変換器と,

3B

パターン,パターン間の接続関係,パターン間の関係およびパターンの励起の履歴を記録するパターン記録器と,

3C

パターンおよびパターン間の接続関係を人間の指示または自律的

に登録および変更するパターン登録器と,
3D

パターンの処理を制御するパターン制御器と,パターンを情報に変換するパターン逆変換器と,

3E’パターンおよびパターン間の関係を分析するパターン分析器と,3I

パターンおよびパターン間の分析結果に応じて適切な処理を実行

するパターン処理器を備え,人間の指示および学習により情報および情報の構造を分析・記録する処理を実施し,入力された質問,命令および問題・課題に対して適切な処理を実行するとともに,情報の処理
に関して追加および変更が生じた場合においてもプログラムの追加および変更をすることなく,パターンおよびパターン間の接続関係を追加および変更することにより対応することが可能な人工知能として機能させるためのソフトウェア。
(オ)本件発明3-11
3A

情報をパターンに変換するパターン変換器と,

3B

パターン,パターン間の接続関係,パターン間の関係およびパターンの励起の履歴を記録するパターン記録器と,

3C

パターンおよびパターン間の接続関係を人間の指示または自律的

に登録および変更するパターン登録器と,

3D

パターンの処理を制御するパターン制御器と,パターンを情報に変換するパターン逆変換器と,
3E’パターンおよびパターン間の関係を分析するパターン分析器と,3J

パターンおよびパターン間の分析結果に応じて適切な処理を実行

するパターン処理器を備え,
3K

入力した情報の価値を評価し,真理,真実,事実,定義,規則,常識,説明,仮説,予測,意見,感想に識別,分類し自律的に知識体系を構築する人工知能として機能させるためのソフトウェア。

(カ)本件発明3-12
3A
情報をパターンに変換するパターン変換器と,

3B

パターン,パターン間の接続関係,パターン間の関係およびパターンの励起の履歴を記録するパターン記録器と,

3C

パターンおよびパターン間の接続関係を人間の指示または自律的

に登録および変更するパターン登録器と,
3D
パターンの処理を制御するパターン制御器と,パターンを情報に変換するパターン逆変換器と,

3E’パターンおよびパターン間の関係を分析するパターン分析器と,3J

パターンおよびパターン間の分析結果に応じて適切な処理を実行

するパターン処理器を備え,
3K’入力した情報の価値を評価し,真理,真実,事実,定義,規則,常識,説明,仮説,予測,意見,感想に識別,分類し自律的に知識体系を構築するとともに,入力した情報を構築した知識体系と照合し,真理,真実,事実,規則および常識に沿った行動を実施する人工知能として機能させるためのソフトウェア。
(3)本件製品

本件製品は,
米IPsoft社が開発した人工知能プラットフォームである。
(甲11)
(4)先行文献
本件各特許の各出願日より前に,以下の文献が存在した。

発明の名称を会話処理装置および方法,並びに記録媒体とする公開特許公報
(特開2001-188784号,
平成13年7月10日公開。
乙7。
以下
乙7公報
といい,同公報に記載された発明を乙7発明という。)


発明の名称を知識ベースシステムとする公開特許公報(特開平11-327910号,平成11年11月30日公開。乙8。以下乙8公報という。)


発明の名称を知識ベース構築システムとする公開特許公報(特開平9-50377号,
平成9年2月18日公開。
乙9。乙9公報
以下
という。



発明の名称を原因探索装置とする公開特許公報(特開平1-251159号,平成元年10月6日公開。乙10。以下乙10公報という。)

発明の名称を概念獲得装置及びその方法,並びにロボット装置及びその行動制御方法とする公開特許公報(特開2006-12082号,平成18年1月12日公開。乙11。以下乙11公報といい,同公報に記載さ
れた発明を乙11発明という。)

WHOISAMELIA?と題するパンフレット(米IPsoft社作成,平成26年9月公開。乙12。以下乙12文献という。)

3争点
(1)被告による本件製品の製造販売等の有無(争点1)
(2)本件製品をインストールした装置(以下アメリアという。)が本件発明1の技術的範囲に属するか(争点2)
アイ
構成要件1Aの充足性(争点2-1)
構成要件1Bの充足性(争点2-2)


構成要件1Cの充足性(争点2-3)


構成要件1Dの充足性(争点2-4)
(3)アメリアが本件発明2の技術的範囲に属するか(争点3)
構成要件2C(2C’,2C”)の充足性(争点3-1)
(4)本件製品が本件発明3の技術的範囲に属するか(争点4)
アイ
構成要件3Cの充足性(争点4-2)


構成要件3E(3E’)の充足性(争点4-3)


構成要件3Bの充足性(争点4-1)

構成要件3K(3K’)の充足性(争点4-4)

(5)本件特許1が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか(争点5)
(6)本件特許2が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか(争点6)
(7)本件特許3が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか(争点7)
(8)差止めの必要性(争点8)

(9)原告の損害額(争点9)
第3争点に関する当事者の主張
1争点1(被告による本件製品の製造販売等の有無)について
(原告の主張)
被告は,平成27年9月頃から本件製品を日本国内で販売しており,少なくと
も,展示及び譲渡の申出を行っている。
すなわち,①本件製品を紹介するパンフレットの裏表紙に被告の電話番号,会社名及び住所が英語で表記され,米IPsoftの連絡先は記載されていないので,取引業者は,被告に連絡すれば本件製品を購入することが可能であると理解するのが通常であること(甲11の2),②本件製品の公式ウェブサイトのお問い合わせページのPreferredIPsoftOfficeをクリックすると被告の電話番号が表示されるようになっていること(甲29),③日本オラクル株式会社(以下日本オラクルという。)は,平成28年8月12日,被告と提携し,同社のクラウドサービスと本件製品を組み合わせて,消費者での電話での問合せに自動で応答するサービスを同年内に国内で提供すると発表し(甲14),そのウェブサイトにおいて,被告の当時の代表者のA(以下Aという。)による本件製品の特徴や機能についての説明が引用されていること(甲26),④平成28年7月27日に開催された日本オラクル主催のイベントOracleModernBusinessExperiences2016(以下本件イベントという。)において,Aが,米IPsoft社のチーフ・コマーシャル・オフィサーとともに新しいAI(人工知能)Amelia(アメリア)とサービスクラウドによる新しいカスタマー・エクスペリエンスの創造と題する講演を行い,また,同イベントにおいて,本件製品が被告の社名の下に展示され,Aが日本オラクルからのインタビューに応じて本件製品の特徴について語り,そのPRをしていること(甲27,28)
,⑤日本オラクルは,平成29年8月16日,原告からの照会に対し,アメリアとOracleServiceCloudとの連携は既に検証済みであると回答している
こと(甲33),⑥被告が本訴提起前の原告との交渉の際,実施行為の有無について特に主張をしていなかったことなどによれば,被告は,少なくとも,本件製品の展示及び譲渡の申出を行ったということができる。
(被告の主張)
被告は,本件製品の製造販売や販売の申出等の実施行為を行っていないから,
本件製品が本件各発明の技術的範囲に属するか否かにかかわらず,被告に対する原告の請求は理由がない。
本件製品は,
米IPsoft社が開発した人工知能プラットフォーム製品であ
る。被告は,米IPsoft社の関連会社であるが,その具体的な業務は,IPcenter
というIT運用自動化を支援するIT統合運用プラットフォーム製
品のサポートサービスである。被告は,日本国内において本件製品に関する事業を展開しておらず,本件製品を製造又は購入して顧客に販売したことはなく,本件製品に関する契約の締結や,見積書,発注書及び請書等のやり取りも一切行っていない。
現に,
被告の組織上も,
IPcenterSales&Operation
というIPcenter
の業務部門しか存在していない(乙1)。
本件製品の公式ウェブサイト(甲11,12)は,被告が運営・管理するウェブサイトではなく,本件製品の紹介動画も被告が作成したものではない。同ウェブサイト内に被告の電話番号,会社名及び住所が表示されているのは,日本国内の潜在的顧客が連絡を取る際の便宜的な窓口となるためであり,仮に顧客から問合せがあっても,被告は,関連会社の担当者を紹介するだけで,具体的な対応は行っていない。

米IPsoft社と米国のオラクル・コーポレーションとの間に,両社の製品の提携が企画されている事実は存するが,被告が日本オラクルと共同で本件製品に関するサービスを顧客に販売しているものではなく(乙4),日本オラクルのウェブサイト上の記載は,
被告が本件製品を販売していることを内容とするもの
でもない。

本件イベントは,日本オラクルのクライアントを対象として,同社取扱製品の販売促進を目的として開催されたイベントであり,被告の営業やマーケティングを目的とするものではない。被告代表者が講演を行い,被告のブースにおいて本件製品が紹介されたのは,日本オラクルからの依頼によるものであり,本件イベントでの被告の活動は,
いずれも米IPsoft社を含めたグループとしての会

社紹介や技術力の高さを示すための活動にすぎない。
被告訴訟代理人が本訴提起前に実施行為の有無等に関する回答をしなかった(甲21,乙2の1)のは,原告の指摘事項が不明確であり,被告訴訟代理人が米IPsoft社の代理人でもあったことによるのであり,
本訴提起前の被告の
対応が被告による実施行為の存在を裏付けるものではない。

以上のとおり,被告は,本件製品を販売したことがなく,本件製品を取り扱う事業上の人的・物的基盤を有しないのであり,譲渡の申出に当たる具体的な行為を行ったこともないから,
被告は本件製品の販売又は譲渡の申出に該当する行為
をしていない。
2争点2(アメリアが本件発明1の技術的範囲に属するか)について以下のとおり,
原告は,
本件製品を組み込んだ装置
(以下
本件装置
という。

は構成要件1A~1Dを充足するから,本件発明1の技術的範囲に属し,ソフトウェアである本件製品は,本件発明1の生産にのみ用いる物であるから,その譲渡の申出行為は特許法101条1号の間接侵害に該当すると主張するのに対し,被告は構成要件の充足性及び間接侵害の成否を争う。
(1)争点2-1(構成要件1Aの充足性)について

(原告の主張)
本件装置は,構成要件1Aの画像情報,音声情報および言語を対応するパターンに変換するパターン変換器パターンを記録するパターン記録器及び
を有しているので,同構成要件を充足する。

本件明細書等1によれば,パターンとは,対応する事象の特徴を検出器が識別する信号の組合せにより表現したものであり(段落【0017】),画
像,音声又は言語の情報を,計算機で処理ができるような信号の組合せに変換したものである。
上記
信号
とは,
画像,
音声又は言語の情報の要素
(例えば
10


を意味しており,異なった事象や概念は,要素の組合せが異なったパターンとなるので,パターンを比較することにより,同じ事象や概念かど
うかを識別することができる。

本件製品のパンフレットには,アメリアは,人間の同僚と同じ研修資料を読んで理解することができます(甲11の2・3頁)とあり,この研修資料には言語が含まれることが明らかであるから,本件装置には,言語
を取り込む機能がある。
また,本件製品は,感情的な対応力を有しているとされ,アメリアの表情(甲11の2・5頁)は,EQ(共感指数)により変化させられ,ユーザがアメリアの感情を画像にて確認できるようになっている(甲11の2・10頁)。このこと及び本件製品の動画(甲34)からすれば,アメリアがその感情(喜怒哀楽)に対応した画像情報を計算機で処理できるデータの形態に変換して,処理を行う機能を有していることが明らかである。
さらに,本件製品は人間の同僚と顧客の間で行われるやりとりを観察して仕事を覚えることができるとされているから(甲11の2・3頁),本件装置は,音声情報を取り込む機能も備えている。
そして,本件製品も電子計算機で処理されるソフトウェア製品であるから,本件装置は,画像情報,音声情報および言語を対応するパターンに変換するパターン変換器を備えている。また,電子計算機において,信号の組合せであるデータの処理のために,これを記録することは当然であるから,本件装置はパターンを記録するパターン記録器を備えている。ウ
被告は,本件装置が,その感情に対応した画像を予め保有しており,状況に応じてその場に適した表情の画像を表示可能な構成を備えているにすぎないと主張するが,その場合であっても,構成要件1Aを充足する。本件明細書等1における画像パターンとは,画像情報から生成された一塊のデータを意味し,ビットマップ情報を含むが,これに限らず,画像情
報から生成され,人工知能を構成するソフトウェアが利用できる一塊のデータの全てを含む。本件製品は,
状況に応じてその場に適した表情の画像を表示させることが
できるところ(甲34),このような処理をするため,本件製品は,①アメリアの様々な表情(うれしい,悲しい,怒っている等)に対応する複数の画
像を作成し,アメリアを構成するソフトウェアが処理できるデータ形式で,各表情に対応した一塊のデータ(画像パターン)を記録し,②会話の状況に応じた感情を示す指数を計算し,指数に対応した表情のアメリアの画像を,①で記録した画像パターンの中から選択し,表示するという処理を行っていることが想定される。
上記のとおり,構成要件1Aにいう画像情報…を対応するパターンに変換するとは,各表情に対応した一塊のデータを計算機で処理可能な形態に変換することを意味するので,人工知能がアメリアの感情に対応する画像を表示する際に,画像作成時のデータ形式(例えば,STL)から別のデータ形式(例えば,BMP)に変換する場合も同構成要件を充足することになる。
本件製品は,
感情に対応する画像データの作成を行っていると考えられる

が,
仮にアメリアとは別の画像処理用のコンピュータにより画像データを作成したとしても,アメリアの感情に対応した画像を計算機で処理可能な形態(パターン)に変換するという工程を実施していることになるから,本件装置が構成要件1Aを充足することに変わりはない。
(被告の主張)
本件装置は,少なくとも画像情報をパターンに変換するパターン変換器,画像情報のパターンを記録するパターン記録器を有していないから,構成要件1Aを充足しない。

本件発明1は,人間の思考パターンを学習し,人間が考える一連の思考パターンと同様の思考パターンを生成する知能機械に関するものであり,構成要件1Aは,本件発明1が画像検出器,音声検出器及び言語入力器で検出された画像情報,音声情報及び言語を,それぞれ対応するパターン変換器でパターンに変換し,
これらのパターンを記録する構成を有することを特定した
ものである。

それゆえ,構成要件1Aを充足するためには,知識を取得するために画像検出器等から得られた画像情報をパターン化してこれを記録器に蓄積する構成を有することを要する。仮に,本件装置がアメリアの感情に対応した画像を予め保有しており,状況に応じてその場に適した画像を表示可能な構成を備えているとしても,それをもって構成要件Aを充足するものではない。本件装置は,画像検出器で画像情報を取得し,パターン変換する画像パターン変換器を有しておらず,これを有することを裏付ける証拠もない。

これに対し,原告は,アメリアがその感情に対応した画像を予め保有しており,
状況に応じてその場に適した表情の画像を表示可能な構成を備えていることをもって,本件装置が構成要件1Aを充足すると主張する。しかし,本件発明1は,有用と判断した情報を自律的に記録し,自律して
思考パターンを生成する機械に関するものであり,ここで記録の対象となる情報とは,パターン変換器でパターンに変換された画像情報等である。アメリアが感情に対応した画像パターンを表示する機能を有するとしても,単に画像を表示するための構成と,本件発明1における画像情報を知識として蓄えるためにパターン変換器でパターンに変換する構成とは全く異なる。
また,通常,画像データは,予め他の画像処理用のコンピュータなどで作成してパターン変換した後に,製品に組み込むことが多いと考えられるから,感情に対応した画像を表示できることから直ちに画像情報をパターンに変換するパターン変換器を有するということはできない。
(2)争点2-2(構成要件1Bの充足性)について

(原告の主張)
本件装置は,構成要件1B(パターンの設定,変更およびパターンとパターンの結合関係を生成するパターン制御器と,)を充足する。本件発明1のパターンは,人間の思考や文を表現することがで
きるので,概念を包含するものであるところ(本件明細書等1の段落【0
005】,【0055】~【0059】),本件発明1では,この概念や概念間の結合関係を設定し又は変更する手段としてパターンの設定,変更および結合関係を生成すると規定されている。このように,構成要件1Bでは,概念間の結合関係の変更の機能が特定されているところ,概念間の結合関係は,組合せを変えることにより容易に変更することが可能である。
本件製品は,思考プロセスをつなぐ概念や関係を把握して,マインドマップを構築するものであり(甲12・図4,図5,図7及び図8),また,起こっている出来事に関する処理マップを自分で作成し,その知識を保存・応用し,似たような状況を解決するための方法を自分自身で決定し,このように観察・理解し,その知識を自動的に応用できる能力(いずれも甲11の2・3頁)を備えているとされている。

こうしたマインドマップや処理マップを構築するためには,概念の設定,変更及び概念間の結合関係を生成する機能が必須であるから,本件装置は,パターンの設定,変更およびパターンとパターンの結合関係を生成するパターン制御器を備えており,構成要件Bを充足する。(被告の主張)
本件装置は,少なくともパターンの設定,変更…するパターン制御器で
はないので,構成要件1Bを充足しない。

本件発明1にいうパターンとは,アメリアにおいては,入力されて保存する各情報に対応して変換された,コンピュータ内に記録されている一塊の信号(ビットの組合せ等)を含むものと考えられるが,アメリアに既に記録さ
れている一塊の信号は,それ自身が何らかの情報と対応付けられた信号であるから,この信号に対して改めて何らかの設定を行い,又は変更をする必要はない。
例えば,犬として認識されていた画像パターンが実は猫であった
場合,犬として認識されていた画像パターンを猫の言語パターンに
結合し直すために結合関係を生成する動作は必要となるとしても,パターン自体の変更がされるわけではない。
したがって,本件装置がパターンの設定,変更機能を備えているとは考え難く,実際のところ,本件装置が同機能を有することを裏付ける証拠はない。

原告は,本件装置がマインドマップを構築する機能を有していることから,パターンを設定,変更し,パターン間の結合関係を生成する機能が必須であ
ると主張するが,
同製品がマインドマップを構築する機能を有するとしても,
パターンの設定,変更を行うパターン制御器を有することにはならない。また,原告は,パターンという語を概念に置き換えた上で,マイ
ンドマップを構築するためには概念の設定,変更及び概念間の結合関係を生成する機能が必須であるから,同製品が構成要件1Bを充足するとも主張す
るが,
本件発明1の構成要件上,
概念という語は使用されておらず,
パターンと特定されているのであり,パターンと概念は同一ではない。原告の主張は,請求項の文言から離れた独自の解釈である。
(3)争点2-3(構成要件1Cの充足性)について
(原告の主張)
本件装置は,本件発明1の構成要件1C(入力した情報の価値を分析する情報分析器を備え,)を充足する。ア
本件製品のパンフレットや紹介記事等には,以下の記載がある。

自然言語を読み取り,文脈を理解し,論理を適用し,暗示されている内容を推定し,経験を通して学び,感情すらも察知します。

(甲11の2・3頁)

アメリアは何を言われたかだけでなく,それが何を意味しているかも理解します。彼女は同じ言葉の異なる用法を見分けるために文脈をあてはめることで,暗示されている意味を完全に理解します

(甲11の2・3
頁)
・アメリアは人間の同僚と顧客の間で行われるやりとりを観察して仕事を覚えることもでき,起こっている出来事に関する処理マップを自分で作成します。彼女はその知識を保存・応用し,似たような状況を解決するための方法を自分自身で決定します。(甲11の2・3頁)・

仕事を与えられたあらゆる分野で瞬く間にエキスパートになることができます。

(甲11の2・3頁)・

どのような役割を与えられた場合でも,彼女は学習することで,人間の同僚や顧客の双方に対して価値のある提案やソリューションを提供できます。

(甲11の2・5頁)・

アメリアは顧客の質問を受け付け,顧客が求めていることを理解し,問題を明らかにするために必要な質問を投げかけることで,答えを提示することができます。

(甲11の2・6頁)・

伝えられていることの文脈や意図を理解していることを証明しています。

(甲11の2・11頁)・彼女は自分の知識の限界も認識しており,自力で問題に対処できない場合,人間の同僚にその問題を引き渡します。アメリアは,賢い従業員と同様に,同僚の様子を見て特定時の状況に対する最善の手順を見つけます。自分の知能を用いることで,彼女は観察したやりとりのナレッジマップを作成し,将来似たような場面に遭遇したとき人間が介入しなくともそのマップを応用できるようにします。(甲11の2・9頁)
・アメリアは人間と自然言語でコミュニケーションする。ことばの意味や文脈を理解し,論理の応用や含意の推測を行う。また多くの時間と労力を要するプログラミングを必要とせず,自分で与えられた情報の処理マップを作成し,解決しなければならない問題に応じて,どういう手段を講じたら良いか自分で判断する。そして,人ができる現場の作業を学習し自動化するが,業務に特化した情報を学習するため,業務に不要な情報での不必要な学習や成長はしない。(甲31・1頁)・アメリアは,それぞれの環境で既存のマニュアルや状況の前後関係や背景から学習するだけでなく,人間の同僚を観察したり,その同僚と一緒に行ったりする業務を通じて学習し,最適なビジネスプロセスの処理マップを自身で判別します。そして人間の同僚や顧客に,価値のある情報を提供します。(甲34の1・3枚目)

上記記載によれば,本件製品を組み込んだ本件装置は,①人間の同僚と顧客を識別するなど,誰から得た情報かを識別すること,②どの分野に関する情報かを識別し,あらゆる分野の業務を対象とした上で,その分野及び業務への必要性の識別をすること,③似たような状況を識別し,記録された情報との関係を分析すること,④多種多様な質問や要求に対して対応すること,⑤顧客と同僚のやりとりから「価値のある情報を識別して記録し,将来似たような場面に遭遇したときに応用することができるということができる。
本件装置が上記各行為を行うためには,自然言語に含まれる意味を読み取り,情報の種類や価値を分析する能力を有することが必須であるので,
同製品は,
入力した情報の価値を分析する情報分析器を備えているというこ
とができる。
したがって,本件装置は,構成要件1Cを充足する。
(被告の主張)
本件装置は,
情報の価値を分析する情報分析器を有しているということはで

きないので,構成要件1Cを充足しない。

構成要件1Cは,
取得した情報を取得先,
分野,
記録された情報との関係,
情報の種類等の観点から情報の価値を分析することを定めたものであるが,本件装置がこうした情報の価値を分析していることを裏付ける証拠はない。

ソフトウェアで構成される人工知能が真の意味で人間と同様に自然言語
に含まれる意味を理解したり,文脈や意図を理解したりできるかはともかく,そのような応答を行っていると感じさせるためには,情報間の関係性が把握されている必要はあるものの,個々の情報の価値まで分析する必要は必ずしもない。例えば,自然言語で提供された話題について応答する場合,当該話題に関連する情報について結合関係が締結されていれば,締結された情報を出力することで会話は進行する。本件装置が,自然言語の情報を理解してい
るように応答する能力を有するとしても,構成要件1C所定の情報分析器を備えることを意味しない。
また,
原告は,
本件装置が価値ある情報を提供する機能を有しているから,
情報の価値を分析する機能を有していると主張するが,価値ある情報を提供するからといって,情報の価値を分析していることにはならない。例えば,
情報の価値を分析しなくとも,入力されたそれぞれの情報について結合関係を生成しつつ知識体系を構築することは可能であり,ある質問事項について結合関係の高い情報を回答として提示することができれば,質問者にとっては価値ある情報の提供を受けたことになる可能性が高い。
したがって,本件製品の紹介記事やパンフレットに価値のある情報を提供
する旨の記載があるとしても,本件装置が情報の価値を分析する情報分析器を備えていることにはならない。
(4)争点2-4(構成要件1Dの充足性)について
(原告の主張)
本件装置は,構成要件1D(

有用と判断した情報を自律的に記録していく自律型思考パターン生成機。

)を充足する。ア
本件製品は,
人間の同僚と顧客の間で行われるやりとりを観察して仕事を覚えることもでき,起こっている出来事に関する処理マップを自分で作成します。彼女はその知識を保存・応用し,似たような状況を解決するための方法を自分自身で決定します。(甲11の2・3頁)とされているが,ここに記載されているように仕事を覚える,処理マップを自分で作成する,知識を保存・応用する,知識を自動的に応用するなどの行為を行うには,有用と判断した情報を自律的に記録していくことが必須であり,上記記載は,同製品が,情報を分析し,有用な情報を記録していることを示している。
また,前記のとおり,本件製品は,顧客との同僚のやり取りを有用な情報であると識別して自律的に記録し,全ての質疑応答に関する情報も有用な情報としてその知識や経験として自律的に記録している。
さらに,本件製品は,

人ができる現場の作業を学習し自動化するが,業務に特化した情報を学習するため,業務に不要な情報での不必要な学習や成長はしない。

(甲31・1頁)とされ,業務に不要な情報での不必要な学
習や成長はせず,有用と判断した情報を自律的に記録している。
したがって,本件製品を組み込んだ本件装置は,有用と判断した情報を自律的に記録していく自律型思考パターン生成機との構成を備えている。イ
有用性の判断方法に関し,信頼性のある情報源からの平常文は,真実や事実について述べている可能性が高いので,情報として価値が高いと考えられる(実施例につき段落【0046】,【0058】,【0059】)。また,
疑問文は,
質問に対する回答がパターンとパターンの結合
として関係づけられている場合,
質問
を発すると,
質問に対する回答
として有用な情報を得ることができる(質問とその回答の結合例につき段落
【0043】)。このように,文の種類を分析し,蓄積された知識は有用なものであるといえる。
また,情報源が信頼できるかどうかについての判断は,システムの構築時(システム内の知識がゼロの状態)においては,システム管理者が指定した分野における基本的な知識(事実,規則,業務フロー,マニュアル,質問と
その回答,研修資料等)を入力し,知識を構築するが,この時点で入力された情報は,信頼性のある情報と位置付けることができる。システム運用時においては,
例えば,
システム管理者が指定した
人物文献雑誌



パンフレット,マニュアル,研修資料等からの情報は信頼度が
高いと判断する等の方法が考えられる。
(被告の主張)
本件装置は,
有用と判断した情報を自律的に記録する機能を有していないか

ら,構成要件1Dを充足しない。

構成要件1Dは,自律型思考パターン生成機が,情報分析器による分析に基づき情報の価値が評価され,価値が高く有用と判断された情報がパターン記録器に構成されていく機能を有することを特定したものである。しかし,本件装置は,情報分析器を有しないから,当然,情報分析器によ
って分析された有用な情報のみを記録する機能を有していることもできず,そのような機能を有することを裏付ける証拠もない。

また,知識を保存し,保存した知識を応用するために,情報として得た知識を保存する機能,
関連する情報の接続関係を把握する機能を有する必要が

あるとしても,例えば,ある事例についての解を得る際に,問題となっている事例と関連・類似する事例を情報の結合関係から特定し,当該関連・類似事例の解として結合されている情報を提示することができれば,知識を自動的に応用したことになる。そうすると,このような過程を行う場合に,わざわざ有用性を判断した上で,有用な情報のみを記録する必要はないので,ア
メリアが知識を保存し応用する能力を有するとしても,有用と判断した情報を自律的に記録する機能を有するということはできない。
また,構成要件1Dで特定されているのは,有用と判断した情報を自律的に記録していくことであるが,記録していく情報中に有用な情報が含まれていたり,
その結果としてエキスパートになったり適切な解を得ることが

できたとしても,
有用と判断した情報を自律的に記録していることにはなら
ない。そして,本件装置が,情報について価値を判断し,有用と判断したものを記録する機能を有することを裏付ける証拠はない。
3争点3(構成要件2C(2C’,2C”)の充足性)について
原告は,本件装置は本件発明2-1,2-3,2-6の各構成要件を充足し,ソフトウェアである本件製品は,同各発明の生産にのみ用いる物であるから,その譲渡の申出行為は特許法101条1号の間接侵害に該当すると主張するのに対し,被告は,構成要件の充足性及び間接侵害の成否を争う。
(原告の主張)
本件装置は,
本件発明2-1の構成要件2C,
本件発明2-3の構成要件2C’
及び本件発明2-6の構成要件2C”
(入力した言語情報の意味,新規性,真偽および論理の妥当性を評価し,自律的に知識を獲得(構築)し,)を充足する。
(1)ア本件製品の言語情報の意味を評価する機能に関し,そのパンフレットには,

アメリアは自然言語を読み取り,文脈を理解し,論理を適用し,暗示されている内容を推定し,経験を通して学び,感情すらも察知します。

(甲11の2・3頁),アメリアの記憶は人間の記憶と全く同じように,エピソード記憶と意味記憶によって構成されています。アメリアはエピソード記憶によって,さまざまな経験や事象を認知することができます。また,意味記憶は,アメリアに顧客の世界に関する事実,概念,知識の体系的な記録をもたらします。(甲11の2・10頁),

アメリアに命を吹き込むために意味役割の理解を実装したことで,彼女は文章をパーツに分解して,各単語の役割と,他の単語との関係を解釈できるようになりました。

(甲11の2・11頁),問題の根本を見極めるための的確な質問ができる(甲11の2・6頁),

知識に対して積極的に論理を当てはめることにより,アメリアは問題を解決することもできます。

(甲11の2・11頁)と記載されている。


このように,問題の根本を見極める,経験を通して学ぶ,知識に対して積極的に論理を当てはめるなどの行為をするためには,言語情報の新規性,真偽および論理の妥当性を評価する必要があるから,本件装置は,入力した言語情報の意味,新規性,真偽および論理の妥当性を評価しているということができる。また,本件製品の紹介ビデオ(甲12)の図5にはEveryqueryaddstoAmelia'sexperienceandknowledge(全ての質疑応答がアメリアの経験と知識に加えられる)とあり,本件製品のパンフレットには

彼女はその知識を保存・応用し,似たような状況を解決するための方法を自分自身で決定します。

(甲11の2・3頁)とあることからして,本件装置は,自律的に知識を獲得し,知能を向上させ,自律的に知識を構築していると
いうことができる。

構成要件2C,2C',2C”の入力した言語情報の意味,新規性,真偽および論理の妥当性を評価しと知識を獲得し又は知識を構築しとは,並列の関係にある。

すなわち,本件明細書等2の段落【0038】に,自律型知識向上装置は入力情報と既に記録している知識との整合・不整合,論理の妥当性を評価した際に,不整合または論理の飛躍が検出されると,入力された情報が正しいか否か,正しいならその根拠について質問を提示する。既に記録している知識との整合・不整合の確認は,入力された情報を検索キーとして記録されている関連情報が検索される。検索された関連情報と入力情報の整合・不整合の確認が実施され,不整合が検出された場合には,入力された情報が正しいのか質問を提示する。とあるように,入力した言語情報の意味,新規性,真偽および論理の妥当性の評価は,単に記録の目的のみに使用しているわけではなく,
問題とする概念や状況と記録している知識とを照らし

合わせて,どのような対応を行うのか決めることにも使用している(上記の例では質問を提示している)のであるから,上記の評価と知識の獲得(構築)とは,並列の関係にある。エ
したがって,本件装置は,本件発明2-1の構成要件2C,本件発明2-3の構成要件2C’及び本件発明2-6の構成要件2C”を充足する。
(2)意味の評価について
本件製品のパンフレット等において,

アメリアは人間の同僚と同じように自然言語のマニュアルを使って学習しますが,その所要時間はわずか数秒です。読み取った内容を個別の単語として認識するのではなく,その意味を完全に理解します。

(甲34の1・2頁),

情報を引き出すためにクエリーに使われている言葉を探知して適合させるだけの他のテクノロジーとは異なり,アメリアは何を言われたかだけでなく,それが何を意味しているかも理解します。

(甲11の2・3頁)とあるように,本件装置は,意味の評価を実施する機能を有している。
(3)新規性の評価について
本件明細書等2によれば,本件発明2において,新規性を評価する目的は,
問題とする概念や状況と記録している知識とを照らし合わせて,どのような対応を行うかを決めるためであり
(段落
【0037】【0038】【図19】,



単に,
新規に獲得した情報が有益であると判断した場合に知識に順次追加するためだけのものではない。
本件製品のパンフレット上,

アメリアは,プロセスの中核ナレッジを1度学習すれば,対応する顧客の言語でやりとりできます。(甲11の2・9頁)

とされており,これは,遭遇した課題に対し,過去に学習したナレッジを適用できるか否か識別する能力を有していることを示している。そして,過去に学習したナレッジを適用できないと判断することは,過去の事例ではないと識別することを意味する。

また,本件製品は,アメリアは人間の同僚と顧客の間で行われるやりとりを観察して仕事を覚えることもでき,起こっている出来事に関する処理マップを自分で作成します。彼女はその知識を保存・応用し,似たような状況を解決するための方法を自分自身で決定します。(甲11の2・3頁)とされるが,
これは,遭遇した状況に対し,似たような状況のナレッジを適用できるか否かを識別する能力を有していることを示すものであり,
似たような状況でない
と判断することは,過去の事例ではないと識別することである。

アメリアは顧客の質問を受け付け,顧客が求めていることを理解し,問題を明らかにするために必要な質問を投げかけることで,答えを提示することができます。

(甲11の2・6頁)とあるのも,本件製品が,顧客の質問に対し答えを生成する際,自己の知識と照らし合わせ不明な点があれば,問題を明
らかにするために必要な質問を顧客に対し投げかけ,顧客からの回答に応じて,適切な回答を示すことができることを意味するものであるから,この動作は,本件発明2の実施例(段落【0037】,【0038】,【図19】)の動作と同じである。
さらに,彼女は自分の知識の限界も認識しており,自力で問題に対処できない場合,人間の同僚にその問題を引き渡します。アメリアは,賢い従業員と同様に,同僚の様子を見て特定の状況に対する最善の手順を見つけます。自分の知能を用いることで,彼女は観察したやりとりのナレッジマップを作成し,将来似たような場面に遭遇したとき人間が介入しなくともそのマップを応用できるようにします。(甲11の2・9頁)とされているが,これは,問題
とされる概念や状況と記録している知識とを照らし合わせて,記録している知識と照合しない(新たな状況=新規である)と判断した場合,人間の同僚にその問題を引き渡すという対応を実施していることを示している。
これらは,本件装置が,まさに新規性を評価する機能を有していることを示している。

(4)真偽の評価について
本件製品のパンフレットによれば,

意味記憶は,アメリアに顧客の世界に関する事実,概念,知識の体系的な記録をもたらします。

(甲11の2・10頁)
とされているが,
これは,
アメリアが,
顧客の世界に関する事実,
概念,
知識を有しており,何が正しく(真),何が正しくない(偽)かを識別する機能を有することを示している。
また,

知識に対して積極的に論理を当てはめることにより,アメリアは問題を解決することもできます。

(甲11の2・11頁)とされているが,これは,本件装置が,事実,概念,知識を論理的に展開していく(論理を当てはめる)ことにより,新たな事実,概念,知識を導出する能力を有していることを示すもので,正しい情報(事実,概念,知識)に対し,正しい論理を適用し
て導出した情報も正しいと考えられるから,このようにして導出された情報は真偽が評価されていると考えられる。
さらに,

彼女が知っている情報の本体に立ち返ることで,自然言語で述べられた質問を元に事実を明らかにするための明確な質問を発し,人間と同じように問題の明確な性質を顕在化させることができるのです。

(甲11の2・
11頁)
とされているが,
これは,
本件製品が,
知っている情報の本体
(事実,
概念,知識)と照らし合わせ,何が正しいかを明確にする(事実を明らかにする)
能力及び不明な点を明らかにするために質問する能力を有することを示している。
そうすると,本件装置は,入力された情報の真偽を評価する機能を有してい
るということができる。
(5)論理の妥当性評価について
本件明細書等2の段落【0026】は,
論理:A⇒B
(AならばB)が,
言語パターンAから言語パターンBに向けて接続関係を生成することにより構成できること,すなわち,情報間で構築された関係性を基に,論理矛盾のな
い応答を行うことが可能であることを示している。そして,本件発明2における
論理の妥当性評価
は,
本件明細書等2
(段落
【0027】【0028】


【図11】)の記載内容からしても,被告が主張するような,単に入力した言語情報について既に蓄積している知識との整合を基に論理の妥当性を評価し,論理の飛躍が解消されると有益な情報として知識に順次追加するための構成であるというだけではなく,段落【0027】に記載されているような内部で行う処理にも適用されている。
本件パンフレットに,

アメリアは自然言語を読み取り,文脈を理解し,論理を適用し,暗示されている内容を推定し,経験を通して学び,感情すらも察知します。

(甲11の2・3頁),

知識に対して積極的に論理を当てはめることにより,アメリアは問題を解決することもできます。

(甲11の2・
11頁)とあることは,本件装置が,情報間で構築された関係性を基に,論理矛盾のない適切な回答をする能力を有していること,すなわち論理の妥当性評価を実施する機能を有していることを示すものである。(6)自律的に知識を獲得する機能について
本件製品のパンフレットにおける前記(1)ア及び(3)の各記載によれば,本件
装置は自律的に知識を獲得する機能を有しているということができる。(被告の主張)
本件装置は,入力された情報の新規性,真偽及び論理の妥当性のいずれの評価もしているとはいえず,これらの評価に基づいて知識を獲得するという構成も有しないから,本件発明2-1の構成要件2C,本件発明2-3の構成要件2C’
及び本件発明2-6の構成要件2C”をいずれも充足しない。
(1)新規性の評価について

本件発明2は,
新規性検出器により入力された言語パターンが既にパター
ン記録器に既存情報として記録されているか否かを判断することにより,当
該言語パターンを評価している(段落【0033】,【0034】)。この
主な目的は,新規な情報だけをパターン記録器に記録していくことにより,記録領域量や情報の処理量を抑えることにあると考えられる。
しかし,アメリアが新規性検出器のようなものを備え,入力された情報について新規性を評価する構成を有することを裏付ける証拠はない。近年のコ
ンピュータが有する記憶領域量は膨大であり,
処理能力も非常に高速化して
いるため,わざわざ入力された情報ごとに新規性を評価しなくとも,入力された情報を随時入力して知識を構築すれば十分であり,
仮にその容量を超過

しそうになった場合も,
単に記憶相違を大容量のものに入れ替えるなどすれ
ば足りる。そのような状況下で,わざわざ情報の新規性を評価するといった特別な技術を採用することは合理的でない。

原告は,アメリアは,遭遇した課題に対し,過去に学習したナレッジを適用できるか否かを識別する能力を有していると主張するが,
顧客とのやりと
りは,
一度でも学習して顧客からの質問事項と回答事項に結合関係が生成され,
知識として保有されていれば顧客に応答することができるのであるから,質問事項に結合している回答事項を検索する処理は新規性の評価に当たらない。

また,原告が指摘する

彼女はその知識を保存・応用し,似たような状況を解決するための方法を自分自身で決定します。

(甲11の2・3頁)との記載は,
人間同士の質疑応答を観察して情報間に結合関係を生成すること
により知識を蓄積し,
その知識を類似状況に対する質問事項についての回答
として検索可能としたことを意味するにすぎず,
そのような処理を行うため

に,新規性の評価,すなわち,過去の事例でないことを識別する処理は必要とされない。
原告は,アメリアは,現在の状況が問題解決の知識として記録している状況と似ているのかを識別する機能を有すると主張するが,上記のとおり,質問事項等に対応するには,
情報をカテゴライズして知識として蓄積していく

ことにより,
質問事項に対して積極的により近い回答事項を選択することが
最も簡便かつ適切な方法であり,
そのための処理に新規性の評価は不要であ
る。
したがって,アメリアは,入力した言語情報の新規性を評価し,自律的に知識を構築し,との構成を有しない。(2)真偽の評価について
本件発明2は,言語情報の接続関係を処理して記録する際に,入力された情報が正しいか否かを判断することにより真偽の評価を行っており,この評価のためにパターン記録器には真実等についての知識が記録され,これらの知識との照合により,
入力された言語情報の真偽の評価がなされる
(段落
【0019】。

この主な目的は,
真と判断される情報だけをパターン記録器に記録していくこ

とにより,正しい情報に基づく知識体系を構築し,質問等に対して正しい応答を行うことができるようにするためと考えられる。
しかし,本件製品のパンフレット等には,同製品が真実等についてのデータベースを備えており,
入力された情報をこのデータベースと付き合わせて真偽
を判断し,
真実と判断されたものを新たな知識として習得するように作動する
ことをうかがわせる記載は存在しない。
そもそも,入力された言語情報について,自律的に知識を獲得するため,本件発明2のように,いちいち真偽を評価しなくとも,入力された情報間で構築された関係性に基づき,
より多く強固な関係性を有する情報を抽出することに
より,真に近い情報を引き出し,より正しい応答をさせれば足りるのであり,
仮に構築されている情報の関係性が少なく,偽の情報に基づいた応答がされるおそれがあるときは,人間に判断を委ねることでこれを避けることができる。こうした手段によれば,その際に人間の行った判断内容を学ぶことで,次回同様な事態が生じた場合に正しい応答ができるようになる。
本件製品も,

単独で顧客を助けられない場合,彼女はその問題を人間のスタッフに引き渡し,問題解決を補助しながら,将来の状況に備えて問題解決の仕方を学習します。

(甲11の2・6頁)とされているとおり,まさにそのような手段を採用している。
(3)論理の妥当性評価について
本件発明2における論理の妥当性評価は,言語情報の接続関係を処理して記録する際に行われるものであり,入力された情報が既に記録されている情報との不整合がなく,
論理の飛躍が解消されたものを知識として追加するよう構成
されている(段落【0019】)。この主な目的は,論理に飛躍や矛盾のない情報だけをパターン記録器に記録していくことにより,妥当性が確認された情報を知識として蓄積して系統だった知識を構築し(段落【0011】,【0038】),質問等に対して矛盾のない応答を行うことができるようにするため
と考えられる。
しかし,本件製品のパンフレット等には,同製品が論理の妥当性を評価し,自律的に知識を獲得し,
知能を向上させていることについての記載は存在しな
い。
また,
入力される様々な言語情報について逐一論理の妥当性を評価する処理
を行うのは負担となり,その必要がない。そのような手間をかけずとも,入力された情報間で構築された関係性を基に,より多く強固な関係性を有する情報を抽出することにより,
論理矛盾のない適切な応答をさせることが可能である。
本件装置は,
知識として蓄積した情報間の結合関係からより適切な回答を検
索していると思われるが,それは同製品内部で行われている処理にすぎず,結
果として論理矛盾のない適切な回答となる可能性が高いとしても,それをもって,
入力した言語情報の論理の妥当性や論理の飛躍の有無を評価するような処理を行っているということはできない。
(4)評価と知識の獲得の関係について
本件明細書等2の段落【0001】,【0017】,【0019】,【00
23】,【0024】,【図1】等の記載によれば,本件発明2は,新規性,真偽,
論理の妥当性の評価に基づいて自律的に知識を獲得することにより知能を向上させる人工知能装置の発明である。
これに対し,本件装置は,例えば,真実などに関する知識を予め有し,入力された言語情報をこのような知識と比較して真偽を評価するような構成を有しておらず,
そのような評価に基づいて知識を獲得するといった構成も有しな
い。
原告は,評価と知識の獲得が並列の関係にあると主張するが,本件明細書等2において,評価はあくまでも有用な情報と判断して系統立った知識を獲得するための手段とされており,評価のみを遊離させた構成とはされておらず,そもそも評価のみをさせても知能の向上に結びつかないか
ら,原告の上記主張は失当である。
4争点4(本件製品が本件発明3の技術的範囲に属するか)について(1)争点4-1(構成要件3Bの充足性)について
(原告の主張)
本件製品は,本件発明3の構成要件3B(パターン,パターン間の接続関係,パターン間の関係およびパターンの励起の履歴を記録するパターン記録器と,)を充足する。ア
本件製品はパターン変換器(構成要件3A)を備えているところ,電子計算機において,信号の組合せであるデータの処理のために,これを記録することは当然であるから,同製品は,パターンを記録するパターン記録器を備えている。本件製品がマインドマップや処理マップを構築するためには,概念や関係の把握が必要であり,
電子計算機が処理可能な形態としての処理のためには,
パターン,パターン間の接続関係,パターン間の関係を記録する機能が必須である。

また,励起とは,記録モジュールが情報の照合等により活性化した状態のことを指すところ(段落【0025】),例えば,パターン登録器が,入力した情報をパターン記録器の記録モジュールと照合し,入力した情報と同一のパターンが記録されているか確認し,記録されていれば該当のパターンを励起し,
記録されていなければ新規パターンとして記録モジュールに記
録し励起するという処理に関係する。
本件製品が,処理マップを作成して保存応用し,似たような状況を解決するための方法を自分で決定する(甲11の2・3頁)には,入力された情報を,
記録器に記録されたパターン又はその組合せと照合することが必須であり,かつ,似たような状況の認識のためには,あるパターンが励起したことを記録しておくことも必須である。
したがって,本件製品はパターン,パターン間の接続関係,パターン間の関係およびパターンの励起の履歴を記録するパターン記録器を備えているということができる。
イパターン間の接続関係とは,パターン間の結合に関する情報という意味であり,パターン間の関係とは,パターン間の関わりがどのようなものであるかに関する情報という意味である。
接続関係(=結合)は,様々

な関係の一形態であるから,パターン間の関係は,パターン間の接続関係を包含する。これらの両者をともに記載したのは,思考パターンを生成するためには概念間の接続関係(=結合)が特に重要であり,その記録が必要であることによる。また,概念間の関係には,接続関係(=結合)と正反対の意味を有する無関係も含まれ得るので,そのよ
うな誤解を生じないためにも,両者を併記する必要があったのである。(被告の主張)
本件製品は,
パターン間の接続関係とパターン間の関係の両方のデータを記
録しているとはいえず,
パターンの励起の履歴を記録しているともいえないか
ら,本件発明3の構成要件3Bを充足しない。

本件発明3では,情報を知識体系として構築するために,情報と情報の関係を示すパターンとパターンの接続関係を記録するとともに,例えば,あるパターンを等価なパターンに変換するために用いられるために,パターン間の関係が記録される(段落【0017】,
【0023】,
【0026】,
【図
5】,【図6】)。パターン間の接続関係を記録するのは情報を知識体系として構築するためであり,パターン間の関係を記録するのは同じ意味のパタ
ーンを等価変換して記録領域を抑えたり,反対の意味を持つパターンを整理したりして情報の処理を効率的に行うためであると考えられる。
しかし,近年のコンピュータが有する記録領域は膨大であり,処理能力も非常に高速化しているから,
パターン間の接続関係を記録して情報を知識体
系として構築すれば足り,
これに加えてパターン間の関係をパターン記録器

に記録する必要はない。原告は,パターン間の接続関係がパターン間の関係に包含されると主張するが,両者は明らかに別個の概念である。本件製品がパターン間の接続関係を記録するとともにパターン間の関係を記録することを裏付ける証拠はなく,同製品が,これらをともに記録しているということはできない。


本件発明3においてパターンの励起の履歴を記録するのは,これを記録し,あるパターンが励起するごとにそのパターンが励起する前の励起履歴をそのパターンの接続情報記録部に転写することにより,あるパターンと,そのパターンが励起に到るまでのシナリオを記録するためと考えられる(段落
【0025】)。
しかし,生じた問題等に人工知能が自律して対応するために,情報間の接続関係が整理されて知識体系が構築される必要はあるかもしれないが,その
ためにパターンの励起の履歴を記録する必要はない。
パターン間の接続関係
を記録し,関連性の強い情報を追っていけば,シナリオに沿ったと感じられ
るような応答は可能であって,
そのためにパターンの励起の履歴を記録する
必要はない。
本件製品がパターンの励起の履歴を記録することを裏付ける証拠はなく,同製品がこれを記録しているということはできない。
(2)争点4-2(構成要件3Cの充足性)について
(原告の主張)
本件製品は,本件発明3の構成要件3C(パターンおよびパターン間の接続関係を人間の指示または自律的に登録および変更するパターン登録器と,)を充足する。

言語で表現された概念Aや概念Bは,計算機が処理できるように
パターン(概念A)やパターン(概念B)に変換され,マインドマップを構築する際に,概念や概念間の結合関係を登録したり変更し
たりする必要が生じるが,この概念や概念間の結合関係を登録したり変更したりする手段として,本件発明3は,構成要件3Cを規定している。アメリアがマインドマップや処理マップを構築するためには,概念や関係を把握して登録する機能が必須であるから,アメリアは,パターンおよびパターン間の接続関係を人間の指示または自律的に登録および変更するパターン登録器を備えている。イ
前記のとおり,
パターンやパターン間の接続関係の変更とは,
概念や概念間の接続関係の変更を意味する。様々な概念や
概念間の接続関係を設定して動作を確認している場面を想定すると,全
てが思いどおりの動作をすれば,当初の設定どおりでよいが,場合によっては,一部を変更したいことも生じ得るので,このような場合に,既に登録している概念の内容を変更したり,概念間の接続関係を変更したりすることがあり得る。
(被告の主張)

本件製品は,
少なくともパターンの変更を行うパターン登録器を有していな
いから,本件発明3の構成要件3Cを充足しない。
構成要件3Cのパターンとは,アメリアにおいては,入力されて保存する各情報に対応して変換された,コンピュータ内に記録されている一塊の信号(ビットの組合せ等)に相当する概念を含むものと考えられる。
しかし,前記2(2)(被告の主張)で述べたとおり,パターンに変換されて記録されたパターンに対して,改めて変更する必要はなく,アメリアがこうした機能を有することを裏付ける証拠はない。
したがって,本件製品は,構成要件3Cを充足しない。
(3)争点4-3(構成要件3E(3E’)の充足性)について
(原告の主張)
本件製品は,
本件発明3-7及び3-8の構成要件E並びに本件発明3-9

~3-12の構成要件E’のパターンおよびパターン間の関係を分析するパターン分析器と,との構成を充足する。ア
本件製品のパンフレット上,アメリアは自然言語を読み取り,文脈を理解し,論理を適用し,暗示されている内容を推定し,経験を通して学び,感情すらも察知します。…アメリアは何を言われたかだけでなく,それが何を意味しているかも理解します。彼女は同じ言葉の異なる用法を見分けるために文脈をあてはめることで,暗示されている意味を完全に理解します。(甲11の2・3頁),

伝えられていることの文脈や意図を理解していることを証明しています。

(甲11の2・11頁)とされているが,こうした行
為を行うためには,文脈に含まれる意味を読み取り,その関係を分析することは必須であるから,本件製品は,パターンおよびパターン間の関係を分析するパターン分析器を備えている。イパターンとは,情報を計算機が処理できるようにした形態のものであるから,パターンを分析するとは,情報を分析するという処理
を,計算機での処理として表現したものである。
本件製品のパンフレット等によれば,

アメリアは思考プロセスをつなぐ概念や関係を把握して,マインドマップを構築します。

(甲34の1・3頁),

アメリアに命を吹き込むために意味役割の理解を実装したことで,彼女は文章をパーツに分解して,各単語の役割と,他の単語の関係を解釈することができるようになりました。

(甲11の2・11頁),アメリアは人間の同僚と顧客の間で行われるやりとりを観察して仕事を覚えることもでき,起こっている出来事に関する処理マップを自分で作成します。彼女はその知識を保存・応用し,似たような状況を解決するための方法を自分自身で決定します。(甲11の2・3頁)とされているが,概念や関係を把握,文章をパーツに分解して,各単語の役割と,他の単語の関係を解釈する,人間の同僚と顧客の間で行われるやり取りを観察するという行為は,
まさしく
情報を分析する
という行為であるから,
本件製品は
パターンを分析する機能を有する。
(被告の主張)
本件製品は,
少なくともパターンを分析するパターン分析器を有していない

から,
本件発明3-7及び3-8の構成要件3E並びに本件発明3-9~3-12の構成要件3E’を充足しない。
構成要件3E(3E’)は,本件発明3の人工知能がパターン分析器を備えていることを特定したものであり,このパターン分析器は,パターンを分析する機能と,パターン間の関係を分断する機能を有するものとして特定されてい
る。ここでいうパターンとは,本件製品においては,保存する各情報に対応して変換された,コンピュータ内に記録されている一塊の信号(ビットの組合せ等)に相当する概念を含むものであると考えられるところ,本件製品はコンピュータ内に記録されている一塊の信号を元の情報に戻すためのパターン逆変換器は有するかもしれないが,記録されている一塊の信号は,入力された情報
と対応しているのだから,これ(パターン)を改めて分析する必要はないし,同製品がパターン分析器を具備することを裏付ける証拠もない。
したがって,本件製品は,構成要件3E及び3E’のいずれも充足しない。(4)争点4-4(構成要件3K(3K’)の充足性)について
(原告の主張)
本件製品は,本件発明3-11の構成要件3K(入力した情報の価値を評価し,真理,真実,事実,定義,規則,常識,説明,仮説,予測,意見,感想に識別,分類し自律的に知識体系を構築する人工知能として機能させるためのソフトウェア)及び本件発明3-12の構成要件3K’(上記3Kの構成に入力した情報を構築した知識体系と照合し,真理,真実,事実,規則および常識に沿った行動を実施するとの構成が付加されたもの)を充足する。

本件製品のパンフレットによれば,アメリアは自然言語を読み取り,文脈を理解し,論理を適用し,暗示されている内容を推定し,経験を通して学び,感情すら察知します(甲11の2・3頁),アメリアの記憶は人間の記憶と全く同じように,エピソード記憶と意味記憶によって構成されています。アメリアはエピソード記憶によって,さまざまな経験や事象を認知することができます。また,意味記憶は,アメリアに顧客の世界に関する事実,概念,知識の体系的な記録をもたらします。(甲11の2・10頁),

アメリアに命を吹き込むために意味役割の理解を実装したことで,彼女は文章をパーツに分解して,各単語の役割と,他の単語との関係を解釈できるようになりました。

(甲11の2・11頁)と記載されているところ,以上の
ような暗示されている内容を推定,感情すら察知,事実,概念,知識の体系的な記録,問題の根本を見極める,
経験を通して学ぶ,
知識に対して積極的に論理を当てはめるといった行為をするためには,情報の価値を評価し,真理,真実,事実,定義,規則,常識,説明,仮説,予測,意見,感想に識別,分類し自律的に知識体系を構築することは必須
である。
したがって,本件製品は,構成要件3Kを充足する。

さらに,本件製品のパンフレットによれば,

アメリアは…起こっている出来事に関する処理マップを自分で作成します。彼女はその知識を保存・応用し,似たような状況を解決するための方法を自分自身で決定します。(甲

11の2・3頁),

彼女は新たな従業員と同じように学習し,事実上どのような産業でも,従業員や顧客の助けとなるために自分の知識を応用し,様々なビジネスの課題に取り組みます。

(甲11の2・5頁)とされており,これは,入力した情報を構築した知識体系と照合し,真理,真実,事実,規則および常識に沿った行動を実施することを意味している。したがって,本件製品は,構成要件3K’を充足する。
(被告の主張)
アメリアないし本件製品は,少なくとも,入力した情報の価値を評価しておらず,入力された情報について,真理,真実,事実,定義,規則,常識,説明,仮説,予測,意見,感想に識別,分類していないから,本件発明3-11の構成要件3K及び本件発明3-12の構成要件3K’を充足しない。

構成要件3K及び3K’は,本件発明3-11及び3-12の人工知能が入力された情報について情報の価値を評価する機能を有することを特定したものであり,例えば,入力情報の源泉に信頼性があるか,情報が新規であるかなどを基に情報の価値を評価するものであるが,アメリアが,情報の価値を評価していることを裏付ける証拠はないから,アメリアがこうした機能
を有するとはいえない。
ソフトウェアで構成される人工知能が真の意味で人間のように暗示されている内容を推定したり,
知識に対して積極的に論理を当てはめたりできる
かはともかく,そのように感じられる応答を行うために,情報間の関係性が把握されている必要はあるが,個々の情報の価値まで評価する必要はない。
例えば,提示された質問に対して応答する場合,当該質問に関連する情報について接続関係が締結されていれば,締結された情報を出力することで,知識に対して論理を当てはめたように感じる応答が可能であるから,アメリア
が暗示されている内容を推定したり,
論理を当てはめたように応答する能力
を有するとされていても,
入力された個々の情報の価値を評価していること
にはならない。

構成要件3K及び3K’は,本件発明3-11及び3-12の人工知能が入力された情報について真理,真実,事実,定義,規則,常識,説明,仮説,予測,意見,感想に識別し,これらを分類する機能を有することを特定したものであり,入力された情報が上記11項目のいずれであるかを識別し,分類するものであるが,本件製品が,情報をこのような11項目に識別し,分
類していることを裏付ける証拠はない。
5争点5
(本件特許1が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか)について
別紙2の1記載のとおり。
6争点6
(本件特許2が特許無効審判により無効にされるべきものと認められる
か)について
別紙2の2記載のとおり。
7争点7
(本件特許3が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか)について
別紙2の3記載のとおり。

8争点8(差止めの必要性)について
(原告の主張)
被告は,少なくとも本件製品の譲渡の申出を行っており,既に譲渡等をしているか,今後譲渡等をする具体的なおそれがある。
(被告の主張)

被告は,本件製品の販売はおろか,譲渡の申出すらしておらず,平成29年2月頃以降は本件製品に関する何らの問合せも受けていない。また,被告は,本件製品の譲渡の前提となる営業基盤,人材その他の経営資源を有しないから,本件製品の譲渡の申出をする余地はなく,
被告が,
近い将来,
本件各特許権を侵害し,
又は侵害するおそれが生じることはおよそ想定することができない。9争点9(原告の損害額)について
(原告の主張)
被告は,
平成27年9月頃から本件製品を日本国内で販売していると考えられ,その売上げは,年間1億円を下ることはない(甲13~16)。ソフトウェア製品における実施料率は,一般にハードウェア製品に比して高率であり,50%を超えるものも少なくないが(甲23),被告が日本における販売会社であること
も考え併せると,
原告が特許法112条3項に基づき本件各発明の実施に対し受
けるべき金銭の額は,本件製品の売上げに対する30%を下回らない。したがって,
平成27年9月から平成29年3月までの1年6か月間の被告の
損害額は,4500万円(=1億円/年×1.5年×30%)となる。(被告の主張)

否認し争う。被告は本件製品を販売しておらず,その売上げは一切ない。第4当裁判所の判断
1争点1(被告による本件製品の製造販売等の有無)について
(1)前記前提事実,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。


米IPsoft社は,
平成26年9月,
本件製品のパンフレット
(英語版。
乙12文献)を発行した。


ビジネスワイヤ社がそのウェブサイトに平成26年10月2日に掲載し
た本件製品の紹介記事には,本件製品につき,この技術は既に多数のフォーチュン1000企業によって試験運用されており,米IPsoft社は同年内に新規顧客や業界をリードする提携企業を発表する予定である旨が記載されていた。

平成27年頃に発行された本件製品の日本語のパンフレットには,Amelia2.0が同年秋にリリースされた旨が記載され,その裏表紙に
は,被告の会社名,住所及び電話番号が記載されている。(甲11の2)エ
被告の当時の代表取締役であったAは,平成28年7月27日,米IPsoft社のチーフ・コマーシャル・オフィサーと共に,日本オラクルが開催
したセミナーOracleModernBusinessExperiences2016において新しいAI(人工知能)Amelia(アメリア)とサービスクラウドによる新しいカスタマー・エクスペリエンスの創造と題する講演を行った。そのセミナー会場には,アメリアを展示した被告のブースが設けられた。また,日本オラクルのウェブサイトには,AI(人工知能)「アメリア
がコールセンターを変える日」
と題する記事が掲載されているが,
これには,
本件製品の説明やAのコメントが記載され,上記インタビューの動画のリンクが設定されているほか,被告と日本オラクルが平成29年春を目標にして共同で実証実験を進め,英語など日本語以外の言語へも対応させながら金融機関を始めとする幅広い業種への導入を図っていく考えである旨の記載が
ある。(甲27,28,30,31,38)

平成28年8月12日の日本経済新聞電子版に,日本オラクルが,米IPsoft社と組んで,日本オラクルのクラウドサービスとAIアメリアを組み合わせ,
消費者の電話での問合せに自動で応答するサービスを年内に
も国内で提供する旨の記事が掲載された。そして,日本オラクルのウェブサ
イトにおける本件製品の説明記事中には,
本件製品の特徴や日本オラクルと
の提携についてのAのコメントが掲載されている。(甲14,26)カ
アクセンチュア株式会社は,平成28年10月24日,NTTコミュニケーションズ株式会社が同月31日に提供を開始する人工知能サービスCOTOHAの国内展開において,同社と協業した旨のニュースリリースを発表した。COTOHAには,最新の日本語処理技術と米IPsoft社が持つ世界先端の人工知能プラットフォームであるアメリアが組み合わされている旨の記載がある。
また,
NTTコミュニケーションズが同月24日に発表したニュースリリースには,同社が同月31日よりCOTOHAの提供を開始したこと,COTOHAは膨大な日本語データベースや日本語処理技術と,米IP
soft社のAIエンジンとを融合させたものである旨の記載があるほか,アクセンチュアの執行役員のコメントとして,アメリアの導入支援を開始しており,
日本国内の顧客に対しても最適なAIソリューションの導入を
支援していく旨の記載がある。(甲15,16)

日本オラクルは,平成29年8月16日,原告からの照会に対し,アメリアとOracleServiceCloudとの連携は既に検証済みであると回答した。(甲33)


米IPsoft社のウェブサイトの本件製品の日本語の紹介ページには,

アメリアは,いま市場で提供されているもっとも包括的なAIプラットフォームです。

との記載があり,少なくとも平成29年10月30日時点において,被告が問合せ先として表示されていた。(甲29)
(2)上記(1)の認定事実によれば,米IPsoft社が開発した本件製品について,その関連会社である被告は,平成27年頃以降には本件製品の日本語版のパンフレットに本件製品の問合せ先として表示されるようになり,平成28年
7月に日本オラクル開催のセミナー会場に本件製品を展示するなどしてそのPRを行い,
その後実際に本件製品を含む商品の提供が発表されたことなどが
認められる。こうした事実に照らすと,被告は,遅くとも平成27年頃に上記パンフレットが発行されて以降,
本件製品の譲渡又は貸渡しの申出を行ってい
たものと認めるのが相当である。

これに対して,被告は,被告が本件製品に係る単なる便宜的な窓口にすぎないと主張するが,
被告の代表取締役であったAが本件製品の具体的な特徴につ
いて説明し,
日本オラクルとの提携などの事業内容についても言及しているこ
とや,
被告が本件製品の日本国内における問合せ先として表示されている一方,米IPsoft社が日本国内で直接営業活動をしていたことはうかがわれないことなどに照らすと,被告が本件製品に係る単なる便宜的な窓口であるということはできない。
したがって,被告の上記主張は採用し得ない。
2争点2(アメリアが本件発明1の技術的範囲に属するか)について(1)本件発明1の内容
本件特許1の特許請求の範囲及び本件明細書等1の記載によれば,本件発明
1は,①自律型思考パターン生成機に関する発明であり,②従来,機械に動作を行わせる場合,人間が,計算機に専用のプログラム言語により作成した種々のプログラムを作成し,適切に条件を検出し,動作させるためにプログラムの修正をする必要があり,また,逐次,情報の価値を判断し,有用と判断した情報を機械に入力する必要があって,これらを行うには多大な時間を要する等の
課題を解決するため,③画像情報,音声情報及び言語を対応するパターンに変換して記録し,パターンの設定,変更やパターンとパターンの間に結合関係を生成する等の制御をするなどの構成を備えることにより,④機械に動作を行わせる場合に逐次人間がプログラムを設定する必要がないようにし,入力した情報の価値を分析し,
有用と判断した情報を自律的に記録することを可能にした

発明であると認められる。
(2)争点2-1(構成要件1Aの充足性)について
以下のとおり,本件装置が画像情報を対応するパターンに変換するパターン変換器を有すると認めることはできないので,同装置は構成要件1Aを充足しない。


構成要件1Aは,画像情報,音声情報および言語を対応するパターンに変換するパターン変換器と,パターンを記録するパターン記録器と,であるところ,本件特許1の特許請求の範囲の記載によれば,パターンは,本件発明1の自律型思考パターン生成機を構成するパターン変換器により画像等の情報から変換され,パターン記録器に記録され,パターン制御器において設定,変更がされ,あるいはパターン同士の結合関係が生成されるものであるから,これらにより処理可能なものであると解すること
ができる。
次に,本件明細書等1の記載を参酌すると,パターンは,対応する事象の特徴を検出器が識別する信号の組合せにより表現したものであり(段落【0017】),例えば,画像情報として犬を入力すると,犬の画像パターンが生成され,パターン記録器に犬の画像パターンとして記録さ
れることとなる(段落【0018】)。そして,本件発明の実施形態1について説明した段落【0039】においては,画像,音声及び言語の情報をそれぞれ識別する信号の組合せに変換したものをパターンと呼び,パターンの要素をON,OFF又は1,0で表現することにするとさ
れ,
【図2】
には,
画像パターンの例として

IG=[0.0.1.・・]1.・,とのパターン例が例示されている。Tこれらの記載によれば,本件発明1における「パターン

とは,画像,音声及び言語に係る事象の特徴を,計算機たる検出器が識別することができる1,0等の何らかの信号の組合せに変換したものを意味し,構成要件1Aは,少なくとも,画像情報・・・を対応するパターンに変換するパターン変換器,すなわち,画像情報を上記信号の組合せに変換する変換器を有することを特定したものであるということができる。

原告は,本件製品のパンフレットや動画において,アメリアが感情的な対応力を有するとされ,アメリアの表情がEQ(共感指数)により変
化させられ,
ユーザがアメリアの感情を画像で確認できるようになっている
ことなどを根拠として,本件装置は画像情報・・・を対応するパターンに変換するパターン変換器を有していると主張する。しかし,被告は,本件装置がアメリアの感情に対応した画像を予め保有しており,状況に応じてその場に適した表情の画像を表示可能であるとしても,画像情報を対応するパターンに変換する機能は備えていないと主張するところ,原告が指摘する本件パンフレットの記載や動画を総合すると,本件装置が様々な感情に対応する表情のアメリアの画像を保有し表示することができるとは認められるものの,本件装置が,外部から入力された表情等に関する画像をパターンに変換する機能を有していると認めるに足りる証拠はない。


原告は,本件装置が,その感情に対応した画像を予め保有しており,状況に応じてその場に適した表情の画像を表示可能な構成を備えているにすぎないとしても,構成要件1Aの画像パターンとは,画像情報から生成され,人工知能を構成するソフトウェアが利用できる一塊のデータの全てを含むのであるから,人工知能がアメリアの感情に対応する画像を表示する
際に,
画像作成時のデータ形式から別のデータ形式に変換する場合も同構成要件を充足すると主張する。
しかし,原告の主張するパターンの意義は,特許請求の範囲及び本件明細書等の根拠を欠くものである上,本件装置がアメリアの感情に対応した画像を予め保有しているのであれば,それは既にアメリアが利用できるデー
タ形式で保有しているものと解するのが自然であり,更に異なるデータ形式に変換する必要があるとは考え難い。そうすると,本件装置が様々な表情のアメリアの画像を表示し得ることをもって,本件装置が入力された画像情報からパターンに変換する機能を有するということはできず,他に本件装置において,
かかる変換をする変換器が存在することを認めるに足りる証拠はな
い。
なお,原告は,アメリアとは別の画像処理用のコンピュータにより画像データを作成したとしても,
アメリアの感情に対応した画像を計算機で処理可能な形態(パターン)に変換するという工程を実施していることになるから,
アメリアが構成要件1Aを充足することに変わりはないとの主張もするが,アメリアとは別のコンピュータが,アメリアが利用できるデータ形式の画像データを作成する場合に,
本件装置が上記工程を実施しているといえ

ないことは明らかである。

以上のとおり,本件装置は構成要件1Aを充足しない。

(3)争点2-2(構成要件1Bの充足性)について
以下に述べるとおり,アメリアがパターンの変更をするパターン制御器を有すると認めることはできないので,アメリアが構成要件1Bを充足するとは認められない。

構成要件1Bは,パターンの設定,変更およびパターンとパターンの結合関係を生成するパターン制御器と,であるところ,パターンとは,前記(2)アのとおり,
画像,
音声及び言語に係る事象の特徴を,
計算機たる検
出器が識別することができる信号の組合せに変換したものであるから,パターンの変更とは,かかる信号の組合せ自体を変更することを意味すると解するのが相当である。
本件明細書等1を参酌しても,パターンの変更の意義について上記解釈と異なる解釈を示唆する記載は存在しない。

原告は,本件装置がパターンの変更をするパターン制御器を有す
ると主張するが,本件装置に既に記録されているパターンとしての信号は,それ自身が何らかの情報と対応付けられた信号であるから,この信号に対して改めて何らかの変更をする必要性は乏しいと考えるのが相当であり,本件製品のパンフレット等の記載を総合しても,本件装置がパターンの変更をするパターン制御器を有すると認めるに足りる証拠は存在しない。

これに対し,原告は,本件発明1のパターンは概念を包含するものであるとした上で,構成要件1Bは,概念間の結合関係の変更の機能を特定していると主張する。
しかし,原告の上記主張は,特許請求の範囲及び本件明細書等1の記載から明らかということはできない上,構成要件1Bのパターン制御器はその文言に照らし,パターンの変更をするものであって,パターンの結合関係の変更をするものではないので,構成要件1Bが概念間の結合関係の変更の機能を特定しているということもできない。
また,原告は,マインドマップや処理マップを構築するためには,概念の設定,
変更及び概念間の結合関係を生成する機能が必須であると主張するところ,証拠(甲11の2・3頁及び9頁,甲12・図4,図5,図7及び図
8,甲34の1)によれば,本件装置は,思考プロセスをつなぐ概念や関係を把握してマインドマップを構築し,起こっている出来事に関する処理マップを自分で作成するものであることはうかがわれるが,
仮に概念がパターン
に相当するとしても,マインドマップ等を構築することから,パターンを変更することが必須であると当然にいうことはできない。


したがって,本件装置が構成要件1Bを充足すると認めることはできない。
(4)争点2-4(構成要件1Dの充足性)について
以下のとおり,本件装置が有用と判断した情報のみを自律的に記録していると認めることはできないので,本件装置は構成要件1Dを充足しない。ア
構成要件1Dは

有用と判断した情報を自律的に記録していく自律型思考パターン生成機。

であるところ,本件特許1の特許請求の範囲の記載によれば,自律型思考パターン生成機が自律的に記録していくのは,情報分析機により入力した情報の価値を分析した結果,
有用と判断された情報であるの
で,本件発明1に係る自律型思考パターン生成機が自律的に記録するのは,
情報分析器が有用と判断した情報に限られると解するのが自然である。そして,本件明細書等1には,入力した情報の価値を分析し,有益と判断した情報を記録して,有用と判断した情報を自律的に拡大していく機械は従来無い(段落【0006】),

この発明における思考パターン生成機は入力した情報の価値を分析する。…分析の結果,有用と判断した情報は,識別した分野に分析結果を追加して,パターン記録器に記録していく。(段

落【0022】),以上の▲1▼から▲5▼の分析により入力した情報は分析され,情報としての価値が評価される。・・・価値の高い情報は言語パターンとしてパターン記録器に記録し,価値の低い情報(判決注:誤記を修正)は記録しないこととする。これにより,有用な情報が逐次蓄積され,膨大な知識がパターン記録器に構成されていくことになる。(段落【0030】,【0046】,【0053】)などの記載があり,発明の効果の項に

第2の発明によれば機械に情報を記録する場合,人間が逐次,情報の価値を判断し有用と判断した情報を逐次,機械に入力し記録する等の作業を実施する必要がない。

(段落【0065】)と記載されていることからすれば,本件発明1は,有用と判断した情報のみを記録することが前提とされていると解するのが相当である。

そうすると,
本件発明1に係る自律型思考パターン生成機が自律的に記録
するのは,
情報分析器が有用と判断した情報に限られると認めるのが相当で
ある。

原告は,
本件製品のパンフレットの記載などに基づき,
仕事を覚える

処理マップを自分で作成する,知識を保存・応用する,知識を自動的に応用するなどの行為を行うには,有用と判断した情報を自律的に記録していくことが必須であると主張する。しかし,情報として得た知識を保存し,関連する情報の接続関係を把握する機能を有していれば,問題となっている事例と関連・類似する事例を情報
の結合関係から特定し,その解として結合されている情報を提示することができ,これにより上記の機能を発揮することは可能であるから,必ずしも,入力する情報の有用性について判断し,有用な情報のみを記録するとの機能を備えている必要はないというべきである。
かえって,本件製品のビデオ(甲12・図5)には,全ての質疑応答がアメリアの経験と知識に加えられる旨の記載があり,これによれば,仮にアメリアが情報分析器を備えているとしても,あらゆる情報をいったん記録しつつ,
その中から有用な情報を抽出等する構成を採用しているとも考えられるところ,本件製品のパンフレット等には,本件装置が入力された情報の入力性について判断し,
有用な情報のみを記録するとの機能を備えていることを
示す記載は存在しない。

そうすると,本件装置が仕事を覚えるなどの上記行為を行うことができることから,直ちに,同装置が入力された情報の有用性を判断し,有用と判断された情報のみを記録する機能を有するということはできない。したがって,本件装置は,構成要件1Dを充足しない。
(5)小括

以上によれば,本件装置が本件発明1の技術的範囲に属するとは認められないから,本件製品につき間接侵害が成立するとの原告の主張は理由がない。3争点3(アメリアが本件発明2の技術的範囲に属するか)について(1)本件発明2の内容
本件特許2の特許請求の範囲及び本件明細書等2(甲9)の記載によれば,
本件発明2-1は,①自律型知識向上装置に関する発明であり,②従来の人工知能では予めプログラムで設定された処理以外の実施はできず,入力された言語情報により機械自ら自律的に知識を獲得し,処理を改善,高度化することが困難であったという課題を解決するため,③パターンを保持するパターン保持器と,パターン保持器を制御する制御器と,パターン間の関係を処理するパタ
ーン間処理器を備え,入力した言語情報の意味,新規性,真偽および論理の妥当性を評価し,自律的に知識を獲得し,知能を向上させることにより,④人間の思考をパターンとして逐次学習し,状況に応じた動作を学習したとおりに実行するとともに,機械に構築した知識により新規に獲得した情報を評価し,機械内部に系統立った知識を構築することなどを可能にする人工知能に関する発明であると認められる。
そして,本件発明2-3は,自律的に知識を構築するに当たり,不明な点を人間等に質問して,その回答を元に知識を更新していくことを特徴とする発明であり,本件発明2-6は,パターンを変換し制御出力を生成するパターン逆変換器を備え,獲得した知識に基づいて機械の制御を行うことができることを特徴とする発明であると認められる。

(2)争点3-2(構成要件2C(2C’,2C”)の充足性)について以下のとおり,本件装置は,入力した言語情報・・・を評価したことに基づいて自律的に知識を獲得ないし自律的に知識を構築するものと認めることはできないので,本件発明2-1の構成要件2C,本件発明2-3の構成要件2C’及び本件発明2-6の構成要件2C”を充足しない。

構成要件2Cは

入力した言語情報の意味,新規性,真偽および論理の妥当性を評価し,自律的に知識を獲得し,知能を向上させる人工知能装置。,

構成要件2C’は入力した言語情報の意味,新規性,真偽および論理の妥当性を評価し,自律的に知識を構築し,,構成要件2C”は入力した言語情報の意味,新規性,真偽および論理の妥当性を評価し,自律的に知識を獲得し,知能を向上させ,というものである(以下,構成要件2C,2C’及び2C”を併せて構成要件2C等という。)。
上記各記載によれば,構成要件2C等は,本件発明2の人工知能装置が,入力した言語情報の意味,新規性,真偽および論理の妥当性を評価したことに基づいて,自律的に知識を獲得ないし自律的に知識を構築す
ることを特定したものと解するのが相当である。
本件明細書等2においても,
この発明における自律型知識向上装置は…入力された言語情報の新規性,既に記録している知識との整合・不整合,論理の妥当性等を評価し,有益な情報であると判断した場合には知識に逐次追加していく。これにより,自律型知識向上装置は有益な知識を蓄積し,知識の向上を実現することができる(段落【0017】,【0019】,【0021】,【0022】)との記載があるが,これは,入力した言語情報を
評価したことに基づいて,有益な上記言語情報を知識に加えていくことを示すものであるといえる。
また,本件明細書等2には,本件発明2-3の実施例に係る発明の実施の形態3について,

装置が自律的に言語情報の評価(新規性,真偽,論理の妥当性)を実施し,知識を自律的に構築していく。

,自律型知識向上装置は入力情報と既に記録している知識との整合・不整合,論理の妥当性を評価した際に,不整合または論理の飛躍が検出されると,入力された情報が正しいか否か,正しいならその根拠について質問を提示する…自律型知識向上装置が提示した質問に対し,人間等が回答すると,その回答内容は追加情報として入力され,再度評価される。追加された情報により,論理の飛躍が解消されると,新しく知識が追加,更新される…新規入力された情報は逐次,妥当性の確認を実施し,妥当性が確認された情報は知識として蓄積され,知識の拡大が実現される。(段落【0038】)と記載されているが,これも,入力した言語情報を評価したことに基づいて,自律的に知識を構築することを示すものであるということができる。

そうすると,構成要件2C(2C’,2C”)は,入力した言語情報の意味,新規性,真偽および論理の妥当性を評価し,その評価の結果に基づいて自律的に知識を獲得ないし自律的に知識を構築することを特定したものと認められる。

これに対して,原告は,本件明細書等2の段落【0038】などを根拠として,新規性等の評価と知識の獲得(構築)との関係は並列であり,上記評価は,単に記録の目的のみに使用しているわけではなく,問題とする概念や状況と記録している知識とを照らし合わせ,
どのような対応
を行うのかを決めることにも使用している(例えば,同段落に記載されている質問の提示等)と主張する。
しかし,前記のとおり,構成要件2C等は,入力した言語情報の意味,新規性,真偽および論理の妥当性を評価し,自律的に知識を獲得しと規定し,
評価し又は自律的に知識を獲得し,とはされていないのであるから,その文言の通常の意味に照らすと,入力した言語情報の意味等の妥当性を評価した上で,
その評価を踏まえて妥当性が確認された情報を知識として自律
的に獲得すると解するのが自然である。

また,本件明細書等2の段落【0038】には,入力された情報と知識との整合・不整合,論理の妥当性を評価した際に,不整合等又は論理の飛躍が検出されると,質問が提示される旨の記載があるが,同段落には,さらに,同装置は上記質問に対する人間の回答を踏まえて再評価を行い,論理の飛躍が解消されると新たに知識が追加等されると記載されており,これによれば,
入力した情報の意味等の妥当性の評価自体が使用されることにより知能が向上するのではなく,
その評価を踏まえて妥当性が確認された情報について
自律的に知識として獲得されることにより知能が向上させるものというべきである。

以上の解釈を踏まえ,本件装置が構成要件2C等を充足するかを検討すると,本件製品等のパンフレット等には,本件製品が入力した言語情報の意味等の妥当性を評価した上で,その評価を踏まえて妥当性が確認された情報について自律的に知識として獲得していることを示す記載は存在しない。これに対して,原告は,本件製品のパンフレット等の記載を根拠として,
問題の根本を見極める,経験を通して学ぶ,知識に対して積極的に論理を当てはめるなどの行為をするためには,言語情報の新規性,真偽および論理の妥当性を評価する必要があるから,本件装置は,構成要件2C等を充足すると主張する。
しかし,本件装置が原告主張に係る機能を有するとしても,これらの機能を有することは,必ずしも,本件装置が入力した言語情報の新規性等の評価をした上で,その評価を踏まえて妥当性が確認された情報について自律的に知識として獲得するとの構成を備えることを意味するものではない。本件発明2と異なり,入力された情報ごとに新規性等を評価することなく,入力された情報を随時入力し,情報間に結合関係を生成することにより,知識を蓄積し,
質問事項に対して積極的により近い回答事項を選択することを可

能にするという構成も考えられるところであり,前記のとおり,本件製品のビデオ(甲12・図5)には,全ての質疑応答がアメリアの経験と知識に加えられる旨の記載が存在することも考慮すると,原告の指摘する本件製品のパンフレット等の記載から,本件装置が構成要件2C等を充足すると認めることはできず,
他に同構成要件を充足していると認めるに足りる証拠はない。

(3)以上のとおり,本件装置が構成要件2C等を充足するとは認められないから,同装置が本件発明2の技術的範囲に属するとは認められず,本件製品につき間接侵害が成立するとの原告の主張は理由がない。
4争点4(本件製品が本件発明3の技術的範囲に属するか)について(1)本件発明3の内容

本件特許3の特許請求の範囲及び本件明細書等3
(甲10)
の記載によれば,
本件発明3-7は,①自律型知識分析機に関するソフトウェアの発明であり,②従来の人工知能では予めプログラムを設定する必要があり,知識の拡大及び構築を自律的機械に実施させることが困難であったという課題を解決するため,③情報をパターンに変換するパターン変換器,パターン等を記録するパタ
ーン記録器,パターン等を自律的に登録・変更するパターン登録器,パターンの処理を制御するパターン制御器,パターンを情報に変換するパターン逆変換器,パターン等を分析するパターン分析器を備え,人間の指示及び学習により情報及び情報の構造を分析・記録する処理を実施し,情報間の関係をパターン間の接続関係及びパターン間の処理により自律的に構築していく人工知能として機能させることにより,④プログラム等の設計を要することなく,情報及び情報の構造を分析・記録する処理を実施し,情報間の関係をパターン間の接続関係及びパターン間の処理により知識の拡大及び体系化を自律的に実施することを可能にする発明であると認められる。
そして,
本件発明3-8~3-12は,
いずれもソフトウェアの発明であり,
本件発明3-7の特徴に加え,
①本件発明3-8は,
情報の処理において追加・

変更が生じた場合でもプログラムの追加・変更をすることなく対応することができることを特徴とするもの,②本件発明3-9は,入力された質問,命令,問題・課題に対して適切な処理を実行することができることを特徴とするもの,③本件発明3-10は,入力された質問,命令,問題・課題に対して適切な処理を実行することができるとともに,情報の処理において追加・変更が生じた
場合でもプログラムの追加・変更をすることなく対応することができることを特徴とするもの,
④本件発明3-11は,
入力した情報の価値を評価し,
真理,
真実,事実,定義,規則,常識,説明,仮説,予測,意見,感想に識別,分類し自律的に知識体系を構築することを特徴とするもの,⑤本件発明3-12は,同3-11に加え,
入力した情報を上記知識体系と照合し,
真理,
真実,
事実,

規則及び常識に沿った行動を実施することを特徴とするものであると認められる。
(2)争点4-2(構成要件3Cの充足性)について
構成要件3Cは,
パターンおよびパターン間の接続関係を人間の指示または自律的に登録および変更するパターン登録器と,であるところ,本件発明
3のパターンの意義が本件発明1と同一であることについては,当事者間に争いがない。
また,本件特許3の特許請求の範囲及び本件明細書等3の記載に照らすと,パターンの変更の意義についても,本件発明1と異なるものではないと認められるところ,前記2(3)で判示したとおり,本件製品に既に記録されているパターンとしての信号は,それ自身が何らかの情報と対応付けられた信号であるから,この信号に対して改めて何らかの変更をする必要性は乏しく,本件製品のパンフレット等に記載を総合しても,パターンの変更をするパターン登録機を有すると認めるに足りる証拠は存在しない。そうすると,本件発明1の構成要件1Bについて判示したのと同様の理由から,本件製品がパターンの変更をする機能を有しているとは認められない
ので,同製品は構成要件3Cを充足しない。
(3)以上のとおり,本件製品ないしアメリアが構成要件3Cを充足するとは認められないから,本件製品が本件発明3の技術的範囲に属するとは認められない。5結論
以上のとおり,
本件装置又は本件製品は本件発明1ないし3の技術的範囲に属

するとは認められないので,その余の点につき判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとし,よって,主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官

佐藤達文
裁判官

三井大有今野智紀
裁判官

別紙1

製品目録

コンピュータ用ソフトウェア製品アメリア又はAmelia
別紙2

無効事由の存否に関する当事者の主張

1争点5
(本件特許1が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか)について
(被告の主張)
本件発明1は,乙7発明と同一の発明であるから,新規性を欠き,本件特許1は,特許無効審判により無効にされるべきものである。

(1)乙7発明の内容
乙7発明は,
ユーザと会話を行うロボットなどに用いて好適な会話処理装置
に関するものである(乙7公報の明細書段落【0001】)。

乙7公報の明細書(段落【0031】~【0036】,【0047】)及び図面(【図2】,【図3】,【図5】)の記載によれば,乙7発明では,
CPU10A,
メモリ10B等から構成されるコントローラ10が音声認識
部31Aを有し,歩け,伏せ等の指示内容を理解して行動するとともに,認識結果を,言語情報抽出機能を有する会話処理部38にも出力するようになっている。また,CCDカメラ16から与えられる画像信号を用いて画像認識処理を行う画像認識部31Bも備えており,これらの認識結果は
メモリに累積される構成となっている。そして,これらの認識結果は,CPU10Aが扱うことができるように信号化されていることは自明である。そうすると,乙7発明は,画像情報,音声情報および会話処理を行う等のために言語を所定の信号
(パターン)
に変換し,
この所定の信号
(パターン)
を記録するための構成を有している。

そうすると,
乙7発明は構成要件1Aの構成を備えているということがで
きる。

乙7公報の明細書(段落【0021】,
【0065】,
【0079】~【0
081】)及び図面(【図7】,【図8】等)の記載によれば,乙7発明のコントローラ10で全体制御されているロボット1は,通信で取得し話題メモリ76に記憶された最新の情報nを基にユーザと会話をすることが可能なように構成されており,その会話は話題管理部74内に作成されたロボッ
ト用フレーム141とユーザ用フレーム142で管理されている。このフレームには”いつ”,”どこで”,”だれが”,”どうした”,”なぜ”という5項目が用意されており,
例えば”
昨日,
成田で,
事故があったんだって”
という話題を提供できるようになっている。そうすると,乙7発明のロボット1は,情報nについて,いつ,どこで,だれが等についての結合関係を生
成し,話題メモリ76に設定や変更して記憶するするとともに,フレームにこの情報やその結合関係を設定したり変更したりする機能を有している。この話題メモリやフレームに記憶される情報はコントローラ10のCPU10Aで扱う事が可能な信号,すなわちパターンであるから,乙7発明のロボット1は,パターンの設定,変更及びパターンとパターンの結合関係を
生成するパターン制御器を有しているといえる。
そうすると,
乙7発明は構成要件1Bの構成を備えているということがで
きる。

乙7公報の明細書(段落【0069】,【0072】,【0079】)及び図面【図9】

等)
によれば,
取得する情報が全てのユーザに対して有効,
すなわち価値がある情報とは限らないことから,乙7発明のロボット1はユーザの趣向などの情報をプロファイルとして記憶しており,取得する情報がプロファイルに適した情報であるか否かを分析し,ユーザの趣向に合った情報のみを記憶する構成を備えている。

そうすると,乙7発明のロボット1は,入力した情報の有効性,すなわち価値を分析し,
有効と判断した情報を自律的に記録する機能を有していると
いうことができるので,構成要件C及びDの構成を備えている。
(2)本件発明1と乙7発明の対比
乙7発明の前記(1)アないしウ記載の各構成は,それぞれ,本件発明1の構成要件1A,同1B並びに同1C及び1Dと同一であるので,本件発明1は新規性を欠く。
(原告の主張)
乙7発明は,
構成要件1B及び1Dを開示するものでないから,
本件発明1は,
乙7発明と相違しており,新規性を欠くものではなく,本件特許1は,無効審判により無効にされるべきものと認められない。

(1)本件発明1と乙7発明の本質的な相違
本件発明1は,入力される情報の価値を評価し記録することにより,自律的に知識を拡大していくことができ,人間が思考遷移させながら情報を処理するという動作を,逐次,プログラミングすることなく実現することができるもので,情報の処理において,人間の思考や思考過程を真の意味で模擬しようとし
た情報システムである(本件明細書等1段落【0001】,
【0003】~【0
005】,【0021】,【0044】,【0064】)。
これに対し,乙7発明は,トップダウン的に人らしさのモデルを作り込むことで人らしさを作り出そうとする立場で作られたシステム・モデル・ソフトウェアであって,基本的に会話の内容について本質的に理解すると
いう課題を解決することを目的とした発明ではない(乙7公報の明細書段落【0004】~【0006】,【0056】)。
また,本件発明1は,人間の思考を学習する発明であって,その手法について開示するものであるが,乙7発明は,かかる機能について開示するものではなく,ユーザとの自然な会話を行うため,話題を遷移させる方法につ
き開示するものである。
このように,本件発明1と乙7発明は,本質的な技術思想において相違している。
(2)構成要件Bについて
乙7発明は,パターンとパターンの結合関係を生成することに関する開示はない。乙7公報の【図21】は,マインドマップを表したものではなく,概念間の結合関係を生成していることを示すものではない。
したがって,乙7発明は構成要件Bを備えていない。
(3)構成要件Dについて
本件発明1は,自律型思考パターン生成機に関するものであり,①人間の思考パターンに沿って,
条件及び対応する動作を言語で入力してパターンを

設定し,パターンとパターンの間に結合関係を生成していく機能,②励起したパターンは関連するパターンを逐次,励起するとともに,パターン記録機に記録したパターンと照合を行い,検索したい情報を得ることにより処理を進め,人間と同様の制御を言語を使用したパターンを使って実現する機能,③思考パターンは固定ではなく,
パターンとパターンの結合関係を変えることによ

り,容易に新しい思考パターンを学習することができる機能(人間が思考するように情報を処理するという動作を逐次,
プログラミングすることなく実現す
る機能)を有する(本件明細書等1段落【0001】,【0021】,【0044】,【0064】)。
これに対し,乙7発明は,会話処理装置および方法,並びに記録媒体に
関するものであって,上記機能のいずれも有していないから,構成要件Dを備えていない。
2争点6
(本件特許2が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか)について
(被告の主張)

本件発明2は,いずれも,乙7発明と同一であるから新規性を欠き,本件発明2に係る本件特許2は特許無効審判により無効にされるべきものである。仮に,本件発明2が新規性を有するとしても,本件発明2は,いずれも,乙7発明に乙8~10公報記載の周知技術を組み合わせることで,容易に想到し得たものであるから,進歩性を欠き,本件発明2に係る本件特許2は,特許無効審判により無効にされるべきものである。
(1)引用発明の内容

乙7発明の内容
(ア)乙7公報の明細書(段落【0031】~【0036】,【0047】)及び図面(【図2】,【図3】,【図5】)によれば,乙7発明では,CPU10A,
メモリ10B等から構成されるコントローラ10が音声認識

部31Aを有し,歩け,伏せ等の指示内容を理解して行動すると
ともに,認識結果を,言語情報抽出機能を有する会話処理部38にも出力するようになっている。この会話処理部38では,解析用文法データベース73に記憶されているデータ等を基に,単語間の関係を解析している。このような認識結果はメモリに累積される構成となっており,認識結果が,
CPU10Aが扱うことができるように信号化されていることは自明である。
そうすると,
乙7発明は,
言語情報を所定の信号
(パターン)
に変換し,
この所定の信号(パターン)および信号(パターン)間の関係を記録するための構成要件2Aを有している。

(イ)乙7公報の明細書(段落【0024】,【0032】,【0034】)及び図面(【図2】,【図3】)によれば,乙7発明では,マイク15で集音された音声信号がコントローラ10のセンサ入力処理部31送出されて保持され,
制御プログラムが実行されることによりCPU10Aがセ
ンサ入力処理部31を制御し,音声認識部31Aで音声信号を処理して
ボールを追いかけろのようにパターン間の関係を処理している。
そうすると,乙7発明は,処理を行うために音声信号(パターン)を保持し,保持している処理部を制御し,音声信号(パターン)間の関係を処理するための構成要件2Bを有している。
(ウ)a乙7公報の明細書(段落【0034】,【0043】)によれば,乙7発明は,辞書データベースや文法データベースなどを参照しながら入力された音声を認識し,歩け,伏せ等の入力された言語の意味

を評価している。
b
乙7公報の明細書(段落【0064】,【0065】)によれば,乙7発明は,
ユーザに話題を提供するために古い情報ばかりでなく最新の
情報を記憶する必要性があることから,最新の情報を取得するための機能,構成を備えており,最新の情報,すなわち新規性があると評価され
る情報を取得する構成を備えている。
c
乙7公報の明細書(段落【0047】)によれば,乙7発明は,会話処理部38に辞書データベース72を保有し,入力された言語情報をこれに突き合わせる処理を行っている。辞書には真とされている事項について,場合によっては偽とされている事項についても掲載され
ているから,この辞書との突合せ及び評価抽出作業は,入力した言語情報について真偽の評価を行っていることを意味する。
なお,乙7発明は,顧客の世界に関する事実の知識を有しており,知識に対して論理を当てはめており,質問を発して事実を明らかにする能力を有していること(乙7明細書段落【0071】,
【0079】,
【0

172】)からしても,入力した言語情報について真偽の評価を行っているといえる。
d
乙7公報の明細書(段落【0122】,【0127】)によれば,キーワード間の関連度からテーブルを作成して入力し,このテーブルを利
用して会話を進めており,
このテーブルは,
シソーラス
(Thesaurus)
(語
句を意味により分類し,配列したもの。分類語彙表)を参考に,大量のコーパス(言語学において,自然言語処理の研究に用いるため,自然言語の文章を構造化し大規模に集積したもの)から統計的に同じ文脈に現れやすい言葉の関連度を取得するなどして作成されるとされている。大量のコーパスから言葉の関連度を取得するのであれば,当然に論理の妥当性があると評価される言語情報がテーブルに入力されることになる。
なお,乙7発明に係る装置は,情報間で構築された関係性を基に,論理矛盾のない応答を行う能力を有していること(乙7公報明細書段落【0071】,【0079】,【0172】)からしても,論理の妥当性の評価を行っているということができる。
e
乙7公報の明細書(段落【0003】,
【0004】,
【0006】,
【0030】,【0161】)及び図面(【図26】)によれば,乙7発明は,
人間との会話内容を殆ど理解していなかったというコンピュー
タと人間との会話システムの課題を解決するもので,ユーザと自然な会話を行うことを目的とするものである。この会話システムを搭載したロボットは,自律的に行動することができ,未知の話題に接するとユーザ
に対して質問をすることで話題に関する情報を記憶していくことで新たな話題に対応することができるようにしている。
そうすると,このロボットが搭載している会話システムは,自律的に知識(情報)を獲得し,知能を向上させる人工知能装置であるということができる。

f
以上のとおり,乙7発明は構成要件2Cの構成を備えている。

(エ)乙7公報の明細書(段落【0161】)によれば,乙7発明のロボットが搭載している会話システムは,不明な点があれば質問を提示し,質問に対してユーザである人間が回答した場合はその回答を基に情報を記憶し,話題に関するテーブルを更新させることのできる人工知能であるので,構成要件2Dの構成を備えている。
(オ)乙7公報の明細書(段落【0057】,【0058】,【0060】)及び図面(【図6】)によれば,乙7発明は,音声情報を基にCPUで処理するためにテキストデータとして変換されている信号(パターン)を,規則合成部94において再び音声として出力するための音声データを生成しているから,パターンを変換し制御出力(音声データ)を生成するパ
ターン逆変換器(規則合成部)を備えている。そうすると,乙7発明は構成要件2Eの構成を備えている。
(カ)乙7公報の明細書(段落【0028】,【0029】)によれば,乙7発明では,判断結果(知能)に基づいて,歩行させたり音声を発したりの機械制御が行われるので,構成要件2Fの構成を有している。


乙8公報
乙8公報の明細書(段落【0002】,
【0012】,
【0026】には,
自然言語による入力情報を解析し,その内容によって知識ベースを検索し検索結果を出力する知識ベースシステムにおいて,知識ベースの整合性を確認して矛盾がないときのみ新規追加,修正,削除等により更新することが記載
されている。

乙9公報
乙9公報の明細書(段落【0006】,【0009】)には,知識ベースの構築過程で,知識入力の都度,その論理的な誤りや正当性をチェックし,不正当な知識の入力があったときに,
その旨を知識ベース構築者に警告する

ことが記載されている。

乙10公報
乙10公報の明細書(1頁右下欄)には,従来の技術として,質問事項を発生させて知識ベースを参照して真偽の判定を行っていることが記載され
ている。
(2)本件発明2-1と乙7発明の対比

乙7発明の前記(1)ア(ア)ないし(ウ)記載の各構成は,それぞれ,本件発明
2-1の構成要件2A,2B及び2Cと同一であるので,本件発明2-1は新規性を欠く。

仮に,乙7発明が,構成要件2Cを備えていないとしても,乙8~乙10公報に記載のように,知識データベースの構築に際して,言語情報の意味,
新規性,真偽及び論理の妥当性を評価することは,従来から普通に行われている周知技術である。
そうすると,乙7発明に上記周知技術を適用することで,構成要件2Cに関する構成は,当業者が容易に想到し得るものであるといえるので,本件発明2-1は進歩性を欠く。

(3)本件発明2-3と乙7発明の対比

乙7発明の前記(1)ア(ア)ないし(エ)記載の各構成は,それぞれ,本件発明
2-3の構成要件2A,2B,2C’及び2Dと同一であるので,本件発明2-3は新規性を欠く。

仮に,乙7発明が,構成要件2C’を備えていないとしても,前記(2)イと同様の理由により,本件発明2-3は進歩性を欠く。

(4)本件発明2-6と乙7発明の対比

乙7発明の前記(1)ア(ア)ないし(カ)記載の各構成は,それぞれ,本件発明
2-6の構成要件2A,2B’,2C”,2E及び2Fと同一であるので,本件発明2-6は新規性を欠く。


仮に,乙7発明が,構成要件2C”を備えていないとしても,前記(2)イと同様の理由により,本件発明2-6は進歩性を欠く。

(原告の主張)
乙7発明は,構成要件2C(2C’,2C”)を開示するものでないから,本件発明2は,乙7発明と相違しており,新規性を欠くものではなく,これに乙8~乙10公報に記載の事項を組み合わせても本件発明2に想到し得ないから,進歩性を欠くものでもない。
(1)本件発明2と乙7発明の本質的な相違
本件発明2は,入力された言語情報の意味,新規性,真偽,論理の妥当性を評価し,自律的に知識を獲得し,問題解決のための知能を向上させる人工知能に関するものであり,プログラムの変更を要することなく,装置が自律的に言語情報の評価(新規性,真偽,論理の妥当性)を実施し,機械内部に系統立った知識を構築することを可能としたものである(本件明細書等2段落【0001】,【0004】,【0005】,【0017】,【0024】,【0045】)。
これに対し,乙7発明は,会話処理装置および方法,並びに記録媒体に
関するものであって,
会話の内容について本質的に理解する
という機能も,
人間の思考を学習するという機能も開示していない。
このように,本件発明2と乙7発明は,本質的に相違している。
(2)構成要件2C(2C’,2C”)について
乙7発明は,構成要件2C(2C’,2C”)のうちの真偽および論理の妥当性の評価の機能や自律的に知識を獲得し,知能を向上させる機能を有するものではない。

真偽の評価について
被告が主張する乙7公報の明細書の記載は,いずれも真偽の評価を実施する機能について開示するものではなく,乙7発明は,かかる機能を有し
ていない。

論理の妥当性の評価について
被告が主張する乙7公報の明細書の記載は,いずれも論理の妥当性の評価を実施する機能について開示するものではなく,乙7発明は,かかる機能を有していない。


自律的に知識を獲得し,知能を向上させるについて
乙7発明は,①人間の思考をパターンとして表現し,思考の遷移をパターンからパターンへの変化として表現する機能,②パターン及びパターン間の接続関係はパターン記録器に記録され,状況に応じて対応するパターンが呼び出され,対応する処理が実行される機能,③思考パターンの変更はパターン記録器に記録したパターン及びパターン間の接続関係を変更することに
より実現できるため,
プログラムを変更することなく処理の変更を可能とす
る機能,④自律的に言語情報の評価(新規性,真偽,論理の妥当性)を実施し,機械内部に系統立った知識を構築する機能を有していない。
(3)進歩性について
乙7発明は,前記アないしウの構成を開示しておらず,乙7発明に乙8~乙
10公報記載の事項を組み合わせても,これらの機能に想到し得ないので,本件発明2は進歩性を欠くものではない。
3争点7
(本件特許3が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか)について
(被告の主張)
(1)乙11発明を主引例とする無効について
本件発明3-7~3-10は,
乙11発明と同一であるから,
新規性を欠き,
仮に,
新規性を有するとしても,
乙11発明に乙7発明を適用することにより,
当業者が容易に想到し得たものであるから進歩性を欠く。
また,本件発明3-11,3-12は,乙11発明に本件明細書等1に記載
の発明を適用し,あるいはこれに加えて乙7発明を適用することにより,当業者が容易に想到し得たものであるから進歩性を欠く。
したがって,本件発明3に係る本件特許3は,特許無効審判により無効にされるべきものと認められる。

引用発明の内容
(ア)乙11発明
乙11発明は,
外界から得られた情報と装置内部に記憶されている知識
とに基づいて新しい概念を獲得し,その概念に基づいて行動,会話をするロボットに関連する技術についてのものであり,乙11発明のロボットは,CCDカメラで撮像された画像情報から認識した人物に関する情報と,当該人物との会話を通じて得られた好悪などの情報の関連性に関する認識から,事実などに関する新規の概念を自律的に獲得し,あるいは修正し,獲得した概念に基づいて対象人物に適した会話をしたり,行動をしたりするものである(乙11公報の明細書段落【0001】,
【0033】~【0
041】)。

a
乙11公報の明細書
(段落
【0021】【0023】及び図面【図



3】)によれば,乙11発明は,思考制御モジュール200を有し,この思考制御モジュール200は,画像入力装置251から入力される画像データや音声入力装置252から入力される音声データなど,外界からの刺激などに従って,ロボット装置1の現在の感情や意思を決定する
機能を有しており,思考制御モジュール200は,情緒判断や感情表現に関する演算処理を実行するCPU211や,RAM212,ROM213,及び外部記憶装置214で構成され,モジュール内で自己完結した処理を行うことができる独立駆動型の情報処理装置である。乙11発明におけるロボット装置1は,画像データや音声データ等を,CPU2
11を用いて情報処理するものであるが,CPUは電子回路であって画像や音声をそのまま処理することはできないから,各入力装置251,252において画像情報や音声情報を,CPUでデータを処理することが可能なようにパターン化した信号に変換して送信することは技術常識である。そうすると,乙11発明は,画像情報や音声情報をパターン
に変換する変換器を備えている。
そうすると,
乙11発明は構成要件3Aの構成を備えているというこ
とができる。
b
乙11公報の明細書
(段落
【0034】【0037】【0042】



【0043】)によれば,乙11発明におけるロボット装置1は,CCDカメラ41で撮像された人物の特徴を示す属性情報と人物IDを顔
認識器42から出力するとともに,
わたしはらーめんがすきです
等,
対象人物の発話内容を音声認識器44から出力し,Fact生成器45で関連付けて記録しているところ,ここで,属性情報,人物ID等は信号(パターン)化されている情報であるから,乙11発明はパターンを記録しており,対象となった人物の情報と,らーめん好きという情
報とを接続することにより人物についての知識体系を構築しているから,パターン間の接続関係を記録しており,属性情報と人物IDは同じ対象人物を意味する等価な情報であり,これらの関係を記録しているから,乙11発明はパターン間の関係を記録している。また,乙11のロボット装置1は,例えば人がCCDカメラ41の前で

私はラーメンが好きです。

と話しかけると,人物を特定し,髭が生えているか否か,
眼鏡をかけているか否かの属性情報をテーブル形式で出力する
ところ,これは,人物についてのIDを励起し,その後髭の状態に関する情報を励起し,更に眼鏡に関する情報を励起して,励起の関係についてテーブル形式で出力して概念を獲得しているといえるから,乙11発
明はID,髭,眼鏡の情報(パターン)について励起の履歴を記録している。
なお,乙11発明は,概念や単語(パターン)間の関係について識別する能力を有しており,先行するパターンの励起により後行のパターンが励起しやすくなる機能を有していること(段落【0039】,【00
67】)からしても,パターンについての励起の履歴を記録しているといえる。
そうすると,乙11発明は,構成要件3Bの構成を備えているということができる。
c
乙11公報の明細書(段落【0035】~【0040】,
【0043】

【0050】によれば,

乙11発明の思考制御モジュール200は,

目標概念決定器47を有しており,目標概念データベース48に格納された目標概念決定ルールに基づき目標概念を決定し,最も多くの事例が成り立つ仮説から概念を獲得している。この目標概念データベース48とは人間が設定したルールであり,例えばわたしはらーめんがすきですと入力されたテキストに対しては,likeを目標概念とするように規
定されているものである。目標概念決定器47はこのルールに従いlikeを目標概念として決定し,認識された人物の属性情報および人物IDに関する情報とらーめんがすきという関係から獲得した概念を知識記憶器51に登録している。その実例として,認識した人物が髭を生やしているか否か,とラーメンが好きか否かの関係について挙げて
おり,髭を生やしていない人の大部分が,ラーメンが好きであった場合には,髭を生やしていない人はラーメンが好きであるという概念を獲得して知識記憶器51に登録することが記載されている。
このように,乙11の思考制御モジュール200は,知識記憶器51に人物の属性情報等のパターンを登録し,また目標概念決定ルールに従
い髭を生やしていない人がラーメン好きであるというような情報(パターン)間の接続関係を登録しており,また,人物の属性情報を等価な人物ID
(パターン)
に変更すること,
あるいは髭を生やしていない人が,
ラーメンが好きと登録されていたものを,逆の経験の結果として髭を生やしている人がラーメン好きであるという情報(パターン)間の接続関
係を変更することなどを行うものである。
そうすると,乙11発明は,構成要件3Cの構成を備えているということができる。
d
乙11公報の明細書(段落【0023】,【0059】)によれば,
乙11発明におけるロボット装置1は,画像データや音声データなどから得たパターンの処理を,思考制御モジュール200が統合して制御しており,また,乙11発明は,例えば音声合成器67を備えており,行
動制御における行動選択器65にて発話行動が選択された場合,テキスト文章などを音声波形に合成し,合成された音声波形はスピーカ68から出力されるよう構成されているから,パターンの処理を制御する制御器(思考制御モジュール)と,テキスト文章に対応する信号パターンを音声情報に変換する逆変換器(音声合成器)を備えている。

そうすると,乙11発明は,構成要件3Dの構成を備えているということができる。
e
乙11公報の明細書(段落【0035】)によれば,乙11発明は,
CCDカメラ41から入力された画像(パターン)について,髭が生えているか,眼鏡をかけているか等の分析を行い,抽出した属性情報と人
物IDの関係を分析しているとされているから,画像(パターン)の分析,属性情報と人物ID(パターン)間の関係の分析を行っている。そうすると,乙11発明は,構成要件3Eの構成を備えているということができる。
f
乙11公報の明細書
(段落
【0022】【0039】【0041】



によれば,乙11発明の概念獲得装置やロボット装置に用いられる思考制御モジュール200は,CPU等情報処理装置から成るもので,目標概念決定器47を有しており,目標概念データベース48に格納された人間の指示による目標概念決定ルールに基づき目標概念を決定し,入力
された情報から最も多くの事例が成り立つ仮説を作り出し,情報間の関係からなる概念(例えば髭を生やしていない人はラーメンが好きである等)を自律的に獲得し,獲得した概念は知識記憶器51に登録して整理し,ロボット装置1の行動に反映させている。
このように,乙11発明は,人間の指示及び学習により,入力された情報について分析・記録する処理を実施し,情報間の関係をCPUで取り扱うことが可能なパターンの処理により自律的に構築する人工知能
であるということができる。
そうすると,乙11発明は,構成要件3Fの構成を備えているということができる。
g
乙11公報の明細書(段落【0004】,
【0022】,
【0039】
~【0041】,【0060】,【0061】)によれば,乙11発明は概念や知識などの獲得をプログラムにより与えていた従来システムの課題を解決するためのものであり,概念獲得装置やロボット装置に用いられる思考制御モジュール200は,
CPU等情報処理装置から構成
されるもので,目標概念決定器47を有しており,目標概念データベー
ス48に格納された人間の指示による目標概念決定ルールに基づき目標概念を決定し,
入力された情報から最も多くの事例が成り立つ仮説を
作り出し,情報間の関係からなる概念(例えば髭を生やしていない人はラーメンが好きである等)を自律的に獲得,変更している。また,これまで会ったことのない人物に遭遇したような場合は情報を追加し,
獲得した概念は,知識記憶器51に登録して整理し,ロボット装置1の行動に反映される。
そうすると,乙11発明は,人間の指示及び学習により入力された情報について分析・記録する処理を実施し,プログラムの追加変更することなく,情報間の関係をCPUで取り扱うことが可能なパターンの追
加・変更処理により自律的に構築して対応する人工知能であるということができるので,構成要件3Gの構成を備えている。
h
乙11公報の明細書(段落【0009】,
【0022】,
【0039】
~【0041】,【0064】)によれば,乙11発明の概念獲得装置やロボット装置に用いられる思考制御モジュール200は,CPU等情報処理装置から構成されるもので,目標概念決定器47を有しており,目標概念データベース48に格納された人間の指示による目標概念決
定ルールに基づき目標概念を決定し,入力された情報から最も多くの事例が成り立つ仮説を作り出し,情報間の関係からなる概念(例えば髭を生やしていない人はラーメンが好きである等)を自律的に獲得,変更している。獲得した概念は知識記憶器51に登録して整理され,ロボット装置1の行動に反映させている。

そのために,
真であると識別された概念を反映させる行動を選択する
行動選択手段を有し,例えばラーメンが好きと認識した人に対してそのように話しかける,あるいはダンスが好きと判断した人にダンスをしてみせる行動が選択されるなど,適切な行動を取るという命令あるいは課題等に対して適切な処理を実行するように構成されている。そして,当
然ながらこのロボット装置1は,質問や問題があれば適切な回答等を行うことも想定されていると解される。
そうすると,乙11発明は,人間の指示及び学習により,入力された情報について分析・記録する処理を実施し,情報間の関係をCPUで取り扱うことが可能なパターンの処理により自律的に構築して対応する
人工知能であり,入力された質問,命令および問題・課題に対して適切な処理を実行する機能を有しているということができるので,構成要件3Hの構成を備えている。
i
乙11公報の明細書
(段落
【0004】【0009】【0022】



【0039】~【0041】,【0060】,【0061】,【0064】)によれば,乙11発明は,概念や知識などの獲得をプログラムにより与えていた従来システムの課題を解決するためのものであり,概念獲得装置やロボット装置に用いられる思考制御モジュール200は,CPU等情報処理装置から構成されるもので,目標概念決定器47を有しており,
目標概念データベース48に格納された人間の指示による目標
概念決定ルールに基づき目標概念を決定し,入力された情報から最も多
くの事例が成り立つ仮説を作り出し,情報間の関係からなる概念(例えば髭を生やしていない人はラーメンが好きである等)を自律的に獲得,変更している。また,これまで会ったことのない人物に遭遇したような場合は情報を追加している。獲得した概念は知識記憶器51に登録して整理され,ロボット装置1の行動に反映させている。

そのために,
真であると識別された概念を反映させる行動を選択する
行動選択手段を有し,例えばラーメンが好きと認識した人に対してそのように話しかける,あるいはダンスが好きと判断した人にダンスをしてみせる行動が選択される等,適切な行動を取るという命令あるいは課題等に対して適切な処理を実行するように構成されている。当然ながらこ
のロボット装置1は,質問や問題があれば適切な回答等を行うことも想定されていると解される。
そうすると,乙11発明は,人間の指示及び学習により,入力された情報について分析・記録する処理を実施し,プログラムの追加変更することなく情報間の関係をCPUで取り扱うことが可能なパターンの追
加・変更処理により自律的に構築して対応する人工知能であり,入力された質問,命令および問題・課題に対して適切な処理を実行する機能を有しているということができるので,構成要件3Iを備えている。j
乙11公報の明細書(段落【0009】,
【0022】,
【0039】
~【0041】,【0064】)によれば,乙11発明の概念獲得装置やロボット装置に用いられる思考制御モジュール200は,CPU等情報処理装置から構成されるもので,入力された情報を分析して最も多くの事例が成り立つ仮説を作り出し,情報間の関係からなる概念(例えば髭を生やしていない人はラーメンが好きである等)を自律的に獲得し,獲得した概念は,知識記憶器51に登録して整理され,ロボット装置1の行動に反映される。

そのために,
真であると識別された概念を反映させる行動を選択する
行動選択手段を有し,例えばラーメンが好きと認識した人に対してそのように話しかける,あるいはダンスが好きと判断した人にダンスをしてみせる行動が選択される等,適切な処理を実行するように構成されている。

そうすると,乙11発明は,CPUで取り扱うことが可能なパターンとした情報間の関係についての分析結果に応じて適切な処理を実行する機能を有しているということができるので,構成要件3Jを備えている。
k
乙11公報の明細書
(段落
【0006】【0009】【0040】



【0050】)によれば,乙11発明は,外界から得られた情報と装置内部に記憶されている知識とに基づいて新しい概念を獲得する(【0006】)ものであり,獲得した概念の真偽を識別する(【0009】),仮説を作り出す(【0040】),髭を生やしていない人はラーメンが
好きというような定義,規則,説明を作り出す(【0050】)ことなどを行っている。
そうすると,乙11発明は,入力した情報の価値を評価し,真偽を識別できるように真理,真実,事実,常識に分類し,また定義,規則,説明,仮説を判断して自律的に知識体系を構築する人工知能であるが,情
報を予測,意見,感想に識別,分類しているとまではいえないので,構成要件Kの一部を備えているということができる。
l
乙11公報の明細書(段落【0009】,【0013】)によれば,
乙11発明のロボット装置は,概念識別手段にて真であると識別された概念を反映させる行動を選択する行動選択手段を有するとともに,人間が行う基本的な動作を表出できるロボットである。そして,真と識別されるのは,真理,真実,事実,常識に沿った行動であるし,人間が行う基本的な動作は,規則,常識に沿った行動である。
そうすると,乙11公報は,構成要件3K‘のうち,構成要件3Kに付加された構成を有するということができる。
(イ)乙7発明

乙7公報の明細書(段落【0081】,【0121】,【0134】,【0141】,【0143】,【0144】)によれば,乙7発明のロボットは,ユーザの発話や画像を認識し,話題を遷移させるための処理として,自分用のフレームとユーザ用のフレームの各フレームで,いつ,どこで,だれが,どうした,なぜという5項目について

既知の度合いを記憶し,また,現在の話題の情報と話題メモリ内の話題情報の関連度を計算し,新たな話題に遷移し会話の自然性を増し,以前の話題遷移の評価の妥当性を判断して関連度テーブルの更新を行うものであるが,このロボットは,適切に話題を遷移するための話題管理部74を有しており,同じ話題が繰り返されるという不自然さを防ぐために,会話履
歴メモリ75を調査し,最近話した話題ではないと判断された場合に選択した話題に遷移するよう構成されている。すなわち,話題とされたということが当該情報が励起されたことを意味し,話題が繰り返されないように励起されたことが会話履歴メモリに記録されることを意味するから,乙7発明は,励起の履歴を記録する構成を有している。

(ウ)本件明細書等1
本件明細書等1に記載されているのは,人工知能である自律型思考パターン生成機に関するものであるが,その段落【0053】には,情報を推測,噂,感嘆文に分析することが記載されている。推測は予測の一種であり,
噂は意見の一種であり,
感嘆文は感想の一種であるから,
情報を予測,
意見,感想に識別,分類することが示されている。

本件発明3-7と乙11発明の対比
(ア)乙11発明の前記ア(ア)a~fの構成は,それぞれ本件発明3-7の構成要件3A~3Fと同一であるので,本件発明3-7は新規性を欠く。(イ)仮に,乙11発明が,本件発明3-7の構成要件3Bのパターンの励起の履歴を記録する構成を有しないとしても,
乙11発明と乙7発明は,
共にユーザと会話が可能なロボット装置に関する技術であり,会話の不自
然さを防ぐ必要があるという乙7発明の課題は,乙11発明においても妥当する。そうすると,会話の不自然さを防ぐために,励起された情報である話題となった情報に関する履歴を記録するという,乙7発明に開示された会話履歴メモリ75に関する技術を適用することは,当業者であれば容易になし得る事項である。

したがって,励起の履歴を記録するという乙7発明に記載された事項を乙11発明に適用して,本件発明3-7を行うことは,当業者にとって容易になし得たことであるので,本件発明3-7は進歩性を欠く。ウ
本件発明3-8と乙11発明の対比
(ア)乙11発明の前記ア(ア)a~e及びgの各構成は,それぞれ本件発明3
-2の構成要件3A~3E及び3Gと同一であるので,本件発明3-8は新規性を欠く。
(イ)仮に,乙11発明が,本件発明3-8の構成要件3Bのパターンの励起の履歴を記録する構成を有しないとしても,前記イ(イ)と同様の理由により,本件発明3-8は進歩性を欠く。


本件発明3-9と乙11発明の対比
(ア)乙11発明の前記ア(ア)a~e及びhの各構成は,それぞれ本件発明3-2の構成要件3A~3E’及び3Hと同一であるので,本件発明3-9は新規性を欠く。
(イ)仮に,乙11発明が,本件発明3-9の構成要件3Bのパターンの励起の履歴を記録する構成,あるいは構成要件3Hにおける質問,命令および問題・課題の全てに対して適切な処理を行う機能を有しないとしても,これらの構成は乙7発明が有しており,乙11発明に乙7発明を適用することにより,本件発明3-9を容易に想到し得たものであるので,本件発明3-9は進歩性を欠く。

本件発明3-10と乙11発明の対比
(ア)乙11発明の前記ア(ア)a~e及びiの各構成は,それぞれ本件発明3-10の構成要件3A~3E’及び3Iと同一であるので,本件発明3-10は新規性を欠く。
(イ)仮に,乙11発明が,本件発明3-10の構成要件3Bのパターンの励起の履歴を記録する構成,あるいは構成要件3Iに係る構成を有しな
いとしても,これらの構成は乙7発明が有しており,乙11発明に乙7発明を適用することにより,本件発明3-10を容易に想到し得たものであるので,本件発明3-10は進歩性を欠く。

本件発明3-11と乙11発明の対比
(ア)a一致点
乙11発明の前記ア(ア)a~e及びjの各構成は,それぞれ本件発明3-11の構成要件3A~3E’及び3Jと同一であり,また,乙11発明と本件発明3-11は,入力した情報の価値を評価し,真偽を識別できるように真実,真実,事実,常識に分類し,また定義,規則,説明,
仮説を判断して自律的に知識体系を構築する人工知能である点(構成要件Kの一部)において一致する。
b
相違点
乙11発明は,情報を予測,意見,感想に識別,分類しているとはいえない点で,本件発明3-11と相違する。

c
容易想到性
前記相違点は,
乙11発明と同じ技術分野に属する本件明細書等1に

記載されているから,当業者は,乙11発明に本件明細書等1に記載の発明を組み合わせることにより,容易に本件発明3-11に想到することができたものであるので,本件発明3-11は進歩性を欠く。
(イ)仮に,乙11発明が,本件発明3-11の構成要件3Bのパターンの励起の履歴を記録する構成を有しないとしても,かかる構成は乙7発明
が有しており,乙11発明に乙7発明を適用することにより,本件発明3-11を容易に想到し得たものであるので,本件発明3-11は進歩性を欠く。

本件発明3-12と乙11発明の対比
(ア)a一致点
乙11発明の前記ア(ア)a~e及びjの各構成は,それぞれ本件発明3-12の構成要件3A~3E’及び3Jと同一である。また,乙11発明と本件発明3-12は,入力した情報の価値を評価し,真偽を識別できるように真実,真実,事実,常識に分類し,また定義,規則,説明,仮説を判断して自律的に知識体系と照合し,真理,真実,事実,規則及
び常識に沿った行動を実施する人工知能である点(構成要件3K’の一部)において一致する。
b
相違点
乙11発明は,情報を予測,意見,感想に識別,分類しているとはいえない点(構成要件3K’の一部)で,本件発明3-12と相違する。
c
容易想到性
前記相違点は,
乙11発明と同じ技術分野に属する本件明細書等1に
記載されているから,当業者は,乙11発明に本件明細書等1に記載の発明を組み合わせることにより,容易に本件発明3-12に想到することができたものであるので,本件発明3-12は進歩性を欠く。
(イ)仮に,乙11発明が,本件発明3-12の構成要件3Bのパターンの励起の履歴を記録する構成を有しないとしても,かかる構成は乙7発明が有しており,乙11発明に乙7発明を適用することにより,本件発明3-12を容易に想到し得たものであるので,本件発明3-12は進歩性を欠く。
(2)乙12発明を主引例とする無効について
本件発明3-7~3-10は,乙12発明と同一であるから新規性を欠き,仮に新規性を有するとしても,乙12発明に乙7発明を適用することにより,当業者が容易に想到し得たものであるから,進歩性を欠く。
本件発明3-11,3-12は,乙12発明に乙11公報や本件明細書等1
に記載の発明を適用し,
あるいはこれに加えて乙7発明を適用することにより,
当業者が容易に想到し得たものであるから,進歩性を欠く。

引用発明の内容
(ア)乙12発明
a
乙12文献の3頁には,アメリアは,人間の同僚と同じ研修資料を読んで理解することができますとの記載があるが,これは,乙12発
明が構成要件3Aと同一の構成を有することを意味する。
b
乙12文献の3頁等には,起こっている出来事に関する処理マップを自分で作成します。彼女はその知識を保存・忘用し,似たような状況を解決するための方法を自分自身で決定します。このように観察・理解し,その知識を自動的に応用できる能力(がある)との記載があるが,これは,
乙12発明が構成要件3Bと同一の構成を有することを意味す
る。
c
乙12文献の3頁等には,前記bの記載があるが,これは,乙12発明が構成要件3Cと同一の構成を有することを意味する。

d
乙12文献の3,6,9,11頁には,前記bの記載のほか,

アメリアは顧客の質問を受け付け,顧客が求めていることを理解し,問題を明らかにするために必要な質問を投げかけることで,答えを提示することができます。

,知っている情報の本体に立ち返ることで,自然言語で述べられた質問を元に事実を明らかにするための的確な質問を発し,人間と同じように問題の明確な性質を顕在化させることができるとの記載があるが,これらは,乙12発明が構成要件3Dと同一の構成
を有することを意味する。
e
乙12文献の3,11頁には,アメリアは,自然言語を読み取り,文脈を理解し,論理を適用し,暗示されている内容を推定し,経験を通して学び,感情すらも察知します。…アメリアは何を言われたかだけでなく,それが何を意味しているかも理解します。彼女は同じ言葉の異なる用法を見分けるために文脈をあてはめることで,暗示されている意味を完全に理解します。,

伝えられていることの文脈や意図を理解していることを証明しています。

との記載があるが,これは,本件発明12が構成要件3E(3E’)と同一の構成を有することを意味する。f
乙12文献の3,9頁には,人間の同僚と同じ研修資料を読んで理解することができます…人間の同僚と顧客の間で行われるやりとりを観察して仕事を覚えることもでき,起こっている出来事に関する処理マップを自分で作成します。彼女はその知識を保存・応用し,似たような状況を解決するための方法を自分自身で決定します。このように観察・理解し,その知識を自動的に応用できる能力と,その学習スピードにより,彼女は仕事を与えられたあらゆる分野で瞬く間にエキスパートになることができます。,アメリアは,時間がかかるプログラミングを介さずに,与えられた情報の処理マップを自分で作成します。・・・自分の知能を用いることで,彼女は観察したやりとりのナレッジマップを作成し,将来似たような場面に遭遇したとき人間が介入しなくともそのマップを応用できるようにします。との記載があるが,これらは,乙
12発明が構成要件3Fと同一の構成を有することを意味する。
g
乙12文献の3,9頁には,前記fの記載があるが,これらは,乙12発明が構成要件3Gと同一の構成を有することを意味する。

h
乙12文献の3,6,9頁には,前記b,fの記載があるが,これらは,乙12発明が構成要件3Hと同一の構成を有することを意味する。
i
乙12文献の3,6,9頁には,前記b,fの記載があるが,これらは,乙12発明が構成要件3Iと同一の構成を有することを意味する。
j
乙12文献の3,9頁には,前記bの記載があるが,これは,乙12発明が構成要件3Jと同一の構成を有することを意味する。

k
乙12文献の3,5,9,11頁には,アメリアは自然言語を読み取り,文脈を理解し,論理を理解し,暗示されている内容を推定し,経験を通して学び,感情すらも察知します,

アメリアに命を吹き込むために意味役割の理解を実装したことで,彼女の文章をパーツに分析して,各単語の役割と,他の単語との関係を解釈できるようになりました。

彼女は仕事を与えられたあらゆる分野で瞬く間にエキスパートになることができます。

コンプライアンスが重要な産業では,企業はガバナンスルールを的確に守るうえでアメリアを利用することができます。

彼女が知っている情報の本体に立ち返ることで,自然言語で述べられた質問を元に事実を明らかにするために的確な質問を発し,人間と同じように問題の明確な性質を顕在化させることができるのです。

どのような役割を与えられた場合でも,彼女は学習することで,人間の同僚や顧客の双方に対して価値のある提案やソリューションを提供できます。

との記載があるが,これらからすれば,乙12発明は,定義,規則,説明,仮説,予測,感想に識別,分類する構成を備える。
l
乙12文献の3,5頁には,前記bのほか,

彼女は新たな従業員と同じように学習し,事実上どのような産業でも,従業員や顧客の助けとなるために自分の知識を応用し,様々なビジネスの課題に取り組みます。

との記載があるが,これらは,乙12発明が,構成要件3Lと同一の構成を有することを意味する。

(イ)本件明細書等1に記載の発明

本件明細書等1の段落【0029】には,方法の種類を真実,事実等に分析することが記載されている。

本件発明3-7と乙12発明の対比
(ア)乙12発明の前記ア(ア)a~f記載の各構成は,それぞれ本件発明3-7の構成要件3A~3Fと同一であるから,本件発明3-7は新規性を欠
く。
(イ)仮に,乙12発明が,本件発明3-7の構成要件3Bのパターンの励起の履歴を記録する構成を有しないとしても,
かかる構成は,
前記(1)ア
(イ)のとおり乙7発明が有しており,乙12発明に乙7発明を適用することにより,本件発明3-7を容易に想到し得たものであるから,本件発明
3-7は進歩性を欠く。

本件発明3-8と乙12発明の対比
(ア)乙12発明の前記ア(ア)a~e及びgの構成は,それぞれ本件発明3-8の構成要件3A~3E及び3Gと同一であるから,本件発明3-8は新
規性を欠く。
(イ)仮に,乙12発明が,本件発明3-8の構成要件3Bのパターンの励起の履歴を記録する構成を有しないとしても,
かかる構成は,
前記(1)ア
(イ)のとおり乙7発明が有しており,乙12発明に乙7発明を適用することにより,本件発明3-8を容易に想到し得たものであるから,本件発明3-8は進歩性を欠く。

本件発明3-9と乙12発明の対比
(ア)乙12発明の前記ア(ア)a~e及びhの構成は,それぞれ本件発明3-9の構成要件3A~3E’及び3Hと同一であるから,本件発明3-9は新規性を欠く。
(イ)仮に,乙12発明が,本件発明3-9の構成要件3Bのパターンの励起の履歴を記録する構成を有しないとしても,
かかる構成は,
前記(1)ア

(イ)のとおり乙7発明が有しており,乙12発明に乙7発明を適用することにより,本件発明3-9を容易に想到し得たものであるから,本件発明3-9は進歩性を欠く。

本件発明3-10と乙12発明の対比
(ア)乙12発明の前記ア(ア)a~e及びiの構成は,それぞれ本件発明3-
9の構成要件3A~3E’及び3Iと同一であるから,本件発明3-10は新規性を欠く。
(イ)仮に,乙12発明が,本件発明3-10の構成要件3Bのパターンの励起の履歴を記録する構成を有しないとしても,
かかる構成は,
前記(1)
ア(イ)のとおり乙7発明が有しており,乙12発明に乙7発明を適用する
ことにより,本件発明3-10を容易に想到し得たものであるから,本件発明3-10は,少なくとも進歩性を欠く。

本件発明3-11と乙12発明の対比
(ア)a一致点

乙12発明の前記ア(ア)a~e及びjの各構成は,それぞれ本件発明3-11の構成要件3A~3E’及び3Jと同一であり,また,乙12発明と本件発明3-11は,定義,規則,説明,仮説,予測,感想に識別,分類する構成(構成要件3Kの一部)を備える点で一致する。b
相違点
乙12発明は,真理,真実,事実,常識の識別,分類に関する構
成を有しない点で,本件発明3-11と相違する。

c
容易想到性
乙11発明は,前記(1)ア(ア)kのとおり,入力した情報の価値を評価し,真偽を識別できるように真理,真実,事実,常識に分類し,また定義,規則,説明,仮説を判断して自律的に知識体系を構築する人工知能に関するものであり,また,人工知能である自律型思考パターン生成機
に関する本件明細書等1に記載の発明には,前記ア(イ)のとおり,情報の種類を真実,事実等に分析することが記載されているから,これらを乙12発明に適用することは,当業者が適宜選択する程度の事項にすぎず,当業者は,本件発明3-11発明を容易に想到し得たものである。したがって,本件発明3-11は,進歩性を欠く。

(イ)仮に,乙12発明が,本件発明3-11の構成要件3Bのパターンの励起の履歴を記録する構成を有しないとしても,
かかる構成は,
前記(1)
ア(イ)のとおり乙7発明が有しているから,これを乙11発明に適用すれば,本件発明3-11発明を容易に想到し得たものであるから,本件発明3-11は,いずれにしても進歩性を欠く。


本件発明3-12と乙12発明の対比
(ア)a一致点
乙12発明の前記ア(ア)a~e及びjの各構成は,それぞれ本件発明3-12の構成要件3A~3E’及び3Jと同一である。また,乙12
発明と本件発明3-12は,定義,規則,説明,仮説,予測,感想に識別,分類する構成及び
入力した情報を構築した知識体系と照合し,真理,真実,事実,規則および常識に沿った行動を実施する人工知能として機能させるためのソフトウェアである構成(構成要件3Kの一部)を備える点で一致する。b相違点乙12発明は,「真理,真実,事実,常識の識別,分類に関する構
成を有しない点で,本件発明3-11と相違する。
c
容易想到性
前記カ(ア)cのとおり,乙11発明及び本件明細書等1に記載の発明を乙12発明に適用することは,当業者が適宜選択する程度の事項にす
ぎず,当業者は,本件発明3-12を容易に想到し得たものである。したがって,本件発明3-12は進歩性を欠く。
(イ)仮に,乙12発明が,本件発明3-12の構成要件3Bのパターンの励起の履歴を記録する構成を有しないとしても,
かかる構成は,
前記(1)
ア(イ)のとおり乙7発明が有しているから,これを乙11発明に適用すれ
ば,本件発明3-11発明を容易に想到し得たものであるから,本件発明3-12は,いずれにしても進歩性を欠く。
(原告の主張)
本件発明3は,新規性,進歩性のいずれも欠くものでないから,本件発明3に係る本件特許3は,
特許無効審判により無効にされるべきものとは認められない。

(1)乙11発明を主引例とする無効について
乙11発明は,
本件発明3の構成要件3B,
本件発明3-7の構成要件3F,
本件発明3-8の構成要件3G,本件発明3-9の構成要件3H,本件発明3-10の構成要件3I,本件発明3-11及び3-12の構成要件3J,本件発明3-11の構成要件3K,本件発明3-12の構成要件3K’を開示する
ものではないから,本件発明3は,乙11発明と相違しており,新規性を欠くものではないし,
これに乙7発明を組み合わせても本件発明3のいずれにも想
到し得ないから,進歩性を欠くものでもない。

本件発明3と乙11発明の本質的な相違
本件発明3は,①人間の思考を表現する言語をパターンに変換し,パターン及びパターン間の関係を分析し,文の種類(平常文,疑問文,命令文等)
および特徴(真理,真実,事実,定義,規則,常識,説明,仮説,予測,意見,感想)に識別する機能,②人間の指示および学習により情報及び情報の構造を分析・記録する処理を実施し,情報間の関係をパターン間の接続関係及びパターン間の処理により生成し,知識の拡大及び知識の体系化を自律的に実施する機能,③パターンは文を表現し,文の構成要素間の関係(位置づ
け)
を表現し,
さらに文と文の関係
(論理関係,
原因と結果,
目的と手段等,
論理関係以外の様々な関係を含む)を表現する機能,④励起したパターンの履歴を記録し,あるパターンが励起する毎に,そのパターンが励起する前の励起履歴をそのパターンの接続情報記録部に転写することにより,あるパターンと,そのパターンが励起に到るまでのシナリオが記録される機能,⑤文
脈(コンテキスト)を考慮して思考を遷移させる機能,⑥構文分析,5W1Hの整理,文の種類及び構造に対応したパターン間接続を実施し,人間の思考遷移に対応する動作を模擬する機能,⑦情報の処理において追加及び変更が生じた場合においてもプログラムの追加及び変更することなく,パターン及びパターン間の接続関係を追加及び変更することにより対応する機能,⑧
平常文であれば情報の価値が評価され,重要な情報又は興味のある分野,テーマの情報であれば,
整理して知識体系に記録する機能,
⑨質問文であれば,
質問の意味を分析し,知識体系から情報を検索する。回答の候補となる可能性がある関連情報が検索されると,その情報の特徴,属性等につき分析し,回答として適切であるか否かを判断し,回答を生成する機能,⑩命令文であ
れば,その命令の意味を分析し,どのような処置が要求されているのかを分析する。その処置の実施の可否,実施した場合の影響および実施の可否を評価して判断する機能を有している(本件明細書等3段落【0001】,【0004】,【0017】,【0021】,【0025】,【0027】~【0029】,【0031】)。
これに対し,乙11発明は,上記①~⑩のいずれの機能も有しないから,両者は本質的に相違している。


構成要件3Bについて
(ア)被告が指摘する乙11公報の明細書の記載は,乙11発明がパターンの励起の履歴を記録していることの根拠とはならず,乙11公報にこの構成を開示する記載はないから,
乙11発明は,
構成要件Bを開示していない。
したがって,乙11発明は,本件発明3と同一の発明ではない。

(イ)本件発明3における励起の履歴の記録は,文脈の理解を実現するために必要な構成要件であるが(本件明細書等3段落【0025】),乙7発明における会話履歴は文脈理解に関して使用されているものではないから,乙7発明は,励起の履歴の記録について開示するものではない。

したがって,乙11発明に乙7発明を組み合わせても,構成要件3Bに想到し得ないから,本件発明3は,いずれも進歩性を欠くものではない。ウ
構成要件3Fについて
乙11発明は,構成要件Fを開示していないから,この点でも本件発明3-7と相違する。


構成要件3Gについて
乙11発明は,入力した情報から概念を獲得する又はこれまでにあったことがない人物に関する情報を追加する機能について開示するのみであって,
情報の処理において追加および変更が生じた場合においてもプログラミングの追加および変更することが可能とする機能については全く開示していないから,この点でも本件発明3-8と相違する。

構成要件3Hについて
乙11発明が開示するのは真と識別された概念に対応した行動が選択されるという機能であり(乙11公報の明細書段落【0032】,【0058】),マインドマップや処理マップを構築する機能について開示しておらず,構成要件3Hについても全く開示していないから,乙11発明は,
この点でも本件発明3-9と相違する。
また,乙7発明もマインドマップや処理マップを構築する機能について開示をするものではないから,乙11発明に乙7発明を適用しても,構成要件3Hを想到し得ない。

構成要件3Iについて
乙11発明が開示するのは前記オの機能に限られており,マインドマップや処理マップを構築する機能について開示しておらず,構成要件3Iについても全く開示していないから,乙11発明は,この点でも本件発明3-10と相違する。
また,乙7発明もマインドマップや処理マップを構築する機能につい
て開示をするものではないから,乙11発明に乙7発明を適用しても,構成要件3Iを想到し得ない。

構成要件3Jについて
乙11発明が開示するのは前記オの機能に限られており,マインドマップや処理マップを構築する機能について開示しておらず,構成要件3Jに
ついても全く開示していないから,乙11発明は,この点でも本件発明3-10と相違する。

構成要件3K(3K’)について
乙11発明は,構成要件3K(3K’)について開示していないから,こ
の点でも本件発明3-11,3-12と相違する。
(2)乙12発明を主引例とする無効について

本件発明3と乙12発明の本質的な相違
本件発明3は,
前記(1)アの①~⑩の機能を有するが,
乙12発明は,
この
うち③~⑩の機能を有しないから,両者は本質的に相違している。

構成要件3Bについて
乙12発明は,パターンの励起の履歴を記録するという機能が全く開
示されていないから,本件発明3と同一ではない。
また,前記(1)イのとおり,乙7発明もかかる構成を開示するものではなく,乙12発明に乙7発明を適用しても構成要件3Bに想到し得ないから,本件発明3は,進歩性を欠くものではない。

構成要件3K(K’)について
乙12発明は,構成要件3K(3K’)について開示していないから,この点でも本件発明3-11,3-12と相違する。

別紙3ないし5(省略)

トップに戻る

saiban.in