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廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反被告事件
事件番号平成31(う)70
事件名廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反被告事件
裁判年月日令和元年7月18日
法廷名広島高等裁判所
結果破棄自判
原審裁判所名東広島簡易裁判所
原審事件番号平成31(ろ)1
裁判日:西暦2019-07-18
情報公開日2019-09-10 12:00:18
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令和元年7月18日宣告
平成31年(う)第70号
原審

東広島簡易裁判所

広島高等裁判所判決
廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反
平成31年(ろ)第1号
主文
原判決を破棄する
被告人を罰金30万円に処する
その罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
理1由
控訴趣意
本件控訴の趣意は,弁護人橋本亮作成の控訴趣意書に記載されているとおりであ
るから,
これを引用する。
論旨は,
被告人を罰金50万円に処した原判決の量刑は,
焼却物の重量の認定を誤り,保護法益の対象外である焼却に伴う公共の危険の発生を重視するなどしており,重過ぎて不当であるというのである。そこで,記録を調査して検討する。
2
検討
本件は,被告人が,被告人方敷地内において,廃棄物である木材等を焼却したと
いう廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下廃棄物処理法という。)違反の事案である。原判決は,(量刑の理由)の項において,本件は被告人が約1.4立方メートル,重量換算約512キログラムの大量の廃棄物を焼却した事案で,環境に与えた影響は大きいとし,さらに,

その火が,被告人の所有地といえども隣地の枯草に燃え広がり,着火地点から約22.1メートル離れたコンテナが全焼するなど近隣周辺への延焼の危険を生じさせており,被告人の刑事責任を軽視することはできない。

などと説示(以下本件説示という。)して被告人を罰金50万円の刑に処した。
そこで,所論に鑑み検討すると,原審検察官は,冒頭陳述において延焼やコンテ
ナの全焼,公共の危険の発生を主張し,論告においても,犯行の結果(論告第2の3項)として,本件犯行により,火が枯草に燃え広がった上,本件犯行現場と水路を隔てた南側廃車置き場に延焼し,着火地点から南方約22.1メートルの地点にあったコンテナが全焼するなどしたが,同所周辺には山林が広がっていたため,山林火災に発展するおそれが高かったもので,現に公共の危険を生じさせており,犯行の結果も重いものがある。と主張し,原判決も,その主張を受けて,本件説示をしたものと推察される。
しかしながら,廃棄物処理法は,廃棄物の排出を抑制し,廃棄物の適正な分別,保管,収集,運搬,再生,処分等の処理をし,生活環境を清潔にすることにより,生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的としており(1条),焼却禁止の規定(16条の2)は,廃棄物の不適正処理の防止を図るため,廃棄物の処理基準に従わない焼却を一定の例外を除いて禁止し,直接罰の対象としたもので,焼却に伴う火力による危険惹起の防止を規制目的に含んでいるものではない。所論指摘のとおり,検察官が主張する公共の危険は,本来,放火失火罪による処罰の対象となるものであるから,焼却禁止違反の罪の刑を量定するに当たって,火力による公共危険の惹起の点を犯情として重視することは相当ではない。本件説示が,
あたかも刑法110条2項や刑法111条(109条2項)に該当する事実を具体的に摘示するかのようなものとなっていることも踏まえると,原判決は,本来,建造物等以外放火罪において処罰されるべき火力による危険惹起という要素を刑の量定に当たり不当に重視した疑いがある。
また,原判決が(量刑の理由)の項で説示する重量換算約512キログラムという数値も合理的な根拠があるとはいい難い。即ち,その認定根拠である甲6号証の内容は,被告人が実況見分の際,本件現場において,点火前に積み上げていた廃材等の東西方向の幅・南北方向の幅・高さについて警察官に説明した数値(甲4)を掛け合わせて廃棄物の体積を算出し,同体積をインターネットサイトで検索した平均的な床板一枚の体積で除して,廃棄物の体積が平均的な床板の何枚分に当たる
かを算出し,同枚数に,現場で発見された焼却した廃材と類似する廃材(甲6)1枚分の重量約0.9キログラムを乗じた,というものである。この数値が,上記体積分の木材が隙間なく詰め込まれていたことを前提としたものであり,実際にそのように隙間なく詰め込まれていたと認めるに足りる証拠がないことは所論指摘のとおりである。被告人が上記のとおり説明した幅・高さは,証拠上,廃材(木材)のみのそれでなく,被告人が廃材に加えて焼却したというダンボール(甲4・16頁)やビニール袋2つ分の家庭ゴミ(甲6)を含めたものである可能性も排斥できない。また,本件証拠上,前記の重量を測定した廃材は,その1枚(甲7・3頁)の体積が上記インターネットサイトで検索した平均的な床板一枚の体積と同等であるかは明らかになっていないのに,その重量(約0.9キログラム)を基準として廃棄物の重量を算定しているのは不正確といわざるを得ない。以上によれば,上記のとおり算出された廃棄物の重量は,廃棄物全部が廃材(木材)であったという仮定の下での大まかな概算に過ぎず,その数値は実際よりも過大である疑いがある。しかるに,原審検察官は,論告において,本件犯行が木材の廃材のみで容量約1.4立方メートル,重量換算約512キログラムと大量の焼却事案と主張し,
原判決は,重量換算の根拠の合理性を吟味することなく,これをそのまま是認したことにより,燃焼させた場合に環境への負荷の程度の指標となる廃棄物の重量という量刑上重要な要素の評価を誤った疑いがある。
そうすると,原判決は,情状として本来重視すべきでない公共の危険の発生を量刑要素として考慮し,実際よりも過大に算定された疑いのある廃棄物の重量を前提にして刑を量定したものであり,これに,被告人が,本件犯行後ほどなく119番通報し,消防から連絡を受けて臨場した警察官の事情聴取に対し,自分が廃材を燃やした旨を素直に供述したという事件発覚の経緯(甲1)をも踏まえると,原判決の量刑は重過ぎて不当と言わざるを得ず,破棄を免れない。
3
破棄自判
よって,刑訴法397条1項,381条により原判決を破棄し,同法400条た
だし書を適用して更に次のとおり判決する。
原判決の認定した罪となるべき事実に,原判決の挙示する罰条を適用し,所定刑中罰金刑を選択し,その所定金額の範囲内で被告人を罰金30万円に処し,その罰金を完納することができないときは,刑法18条により金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし,原審及び当審における訴訟費用は刑訴法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととして,主文のとおり判決する。
令和元年7月18日
広島高等裁判所第1部

裁判長裁判官


裁判官

裁判官

田隆史水落桃子廣和瀬裕亮
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