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廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反被告事件
事件番号平成31(う)75
事件名廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反被告事件
裁判年月日令和元年7月25日
法廷名広島高等裁判所
結果破棄自判
原審裁判所名山口地方裁判所
原審事件番号平成30(わ)109
裁判日:西暦2019-07-25
情報公開日2019-09-10 12:00:13
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令和元年7月25日宣告

広島高等裁判所判決

平成31年(う)第75号
原審

山口地方裁判所

廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反

平成30年(わ)第109号
主文
原判決を破棄する
被告人を罰金30万円に処する
その罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
理1由
控訴趣意
本件控訴の趣意は,弁護人前田知彦作成の控訴趣意書に記載されているとおりで
あるから,これを引用する(なお,事実誤認の主張は,量刑要素の評価を争うもので,実質的には量刑不当の主張と解される。)。論旨は,原判決について,①被告人が焼却した丸太等(以下本件丸太等又は伐採木という。)は燃料として保管されていたもので,廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下廃棄物処理法という。2条1項の廃棄物に該当しないのに,

これが廃棄物に該当するとした点,
本件丸太等の焼却行為(以下本件焼却行為という。)は罰則適用の除外事由を定めた廃棄物処理法施行令14条4号に該当するのに,これに該当しないとした点において,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,②被告人を懲役6月(2年間執行猶予)及び罰金30万円に処した原判決の量刑が重過ぎて不当であるというのである。そこで,記録を調査して検討する。
2
法令適用の誤りの論旨について
原判決は,本件丸太等は廃棄物(廃棄物処理法2条1項)に該当せず,仮に
これに該当するとしても,本件焼却行為は農業,林業・・・を営むためにやむを得ないものとして行われる廃棄物の焼却(廃棄物処理法施行令14条4号)として罰則適用の除外事由に当たるとする弁護人の主張について,被告人は,その供述
によっても,近隣住民からマムシが出ている旨言われたことを契機に,被告人方敷地内に山積みにして風呂用の薪としても使用していた本件丸太等を処分することにし,その手段として本件焼却行為に及んだものであるから,本件丸太等が,本件焼却行為の当時,不要物たる廃棄物に転化しており,本件焼却行為が同法施行令14条4号に該当しないことも明らかであるとした。この原判決の結論に誤りはない。関係証拠によれば,被告人は,平成28年10月頃,自宅敷地内の倉庫裏の雑木が邪魔になっていたことから,これを伐採し,倉庫近くの敷地に1か所にまとめて野積みにしていたが,平成29年10月11日,その伐採木の一部を被告人が管理する田や倉庫近辺の敷地の5か所に分散して運び,それぞれの箇所で焼却したことが認められる。この事実によれば,伐採された雑木は,不要物として廃棄物に該当することが明らかである。所論は,被告人の供述に基づき,伐採木が被告人方の風呂の燃料として利用されてきたことなどを指摘し,有価物であるとして廃棄物に該当しない旨主張するが,前記のとおり,伐採の目的,伐採木の種類,形状等に照らし,これを有価物と見る余地はなく,被告人の弁解は,せいぜい不要物(廃棄物)の処分のため,風呂の燃料に利用していたという程度の意味合いしかなく,そのような利用実態が仮にあったとしても,そのことにより伐採木全体の廃棄物性が否定されるものではない。原判決は,被告人の弁解を前提にして,野積み状態の伐採木を有価物又は有用物と見た上で,本件焼却の時点で,風呂の燃料として利用する意思が放棄されて不要物たる廃棄物に転化していたという法的評価の下に廃棄物該当性を肯定しているが,その判断は結論において誤りはない。
また,所論は,本件焼却行為は農業及び林業を営む被告人が,その管理する山林を保全するとともに被告人宅の敷地内にある農業機械を収納する倉庫を守るため,やむを得ず伐採し焼却したものであるから,本件焼却行為は廃棄物処理法施行令14条4号の農業,林業・・・を営むためにやむを得ないものとして行われる廃棄物の焼却に該当し,廃棄物処理法16条の2第3号により焼却禁止の対象から除外されると主張する。

しかしながら,前示のとおり,本件伐採は林業の一環として行われたものではなく,また,田での稲わらの焼却のように,農業を営む上でやむを得ないものとして行われたものでないことも明らかであるから,所論は失当であり,この点の原判断にも誤りはない。
以上のとおり,法令適用の誤りをいう論旨は,いずれも理由がない。3
量刑不当の論旨について
所論は,本件焼却行為は野積みにされていた伐採木の辺りでマムシを見たと近隣
住民から指摘され,近くに通学路があったことから,付近住民の生命身体の安全確保のため急を要すると判断して行ったものであることを量刑上酌むべきであると主張する。
しかしながら,被告人の弁解を前提に,野積みされた伐採木の辺りにマムシが棲息していると仮定しても,その棲息を防ぐには,伐採木を他に移動させて野積みの状態を解消させれば足りることであり,焼却の必要まではなく(なお,被告人が行ったように移動・分散させて焼却したのでは,マムシを焼殺して駆除する効果がないことも明らかである。),所論の点は,さして酌むべき程の事情とはいえない(それゆえ,マムシを見た人物が実際にいたかどうかを含め,この点の証拠調べは不要であったといえる。)。
そこで,更に進んで原判決の量刑判断について調査する。
本件は,自己の管理地内において,伐採木合計約600キログラム余りを焼却したという事案であり,これに対し,原判決は,被告人を懲役6月(2年間執行猶予)及び罰金30万円に処したものである。確かに,被告人が手間と処分費用を惜しんで本件焼却行為に及んだことは身勝手であり,焼却した廃棄物の量も比較的多量ではある。しかし,その焼却の対象としたのは,自己の敷地内で不要木として伐採し約1年間野積みにしていた伐採木の一部であり,その中には,環境への負荷の高いビニール等の化学製品は含まれていない。また,焼却場所も人家が比較的疎らな農山村地域にあり,煙害が地域に生じた形跡もうかがわれない(なお,焼却する過程
で,風に火勢をあおられて山林への延焼の危険を感じた被告人が119番通報したという事情はあるが,延焼という公共の危険の発生防止自体は,本罰則の規制目的には含まれておらず,この点は,量刑上さほど重視すべきものではない。)。これに加え,被告人には古い罰金前科しかないことも考慮すると,本件につき,罰金刑に加え,懲役刑までも科すことが相当であるかどうかは,行為責任の観点から慎重に検討されるべきことといえる。
検察官は,懲役10月及び罰金50万円の求刑意見を述べたが,その理由の一つに,被告人が不合理な弁解をし,公判期日に出頭しないなど刑事裁判を軽んじる態度を取ったことを指摘している。これらの点は,被告人の反省の情の乏しさをうかがわせる事情としての関連性はあるとはいえ,これをことさら悪情状と見て,懲役刑を科す根拠とするのは,本件事案の内容に照らし相当とはいい難い。原判決は,検察官の求刑意見を参考に前記の刑に処したものと推察されるところ,その(量刑の理由)の項を見ると,基本的に懲役刑が相当であることを前提にした上で,正規の廃棄処分によらないと経済的に割に合わないことを示すため罰金刑を併科したという趣旨の説示をしている。しかし,本罰則(廃棄物処理法25条1項15号,16条の2)の法定刑は5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し,又はこれを併科するというものである。営利目的の規制薬物事犯の罰則に見られるような情状により懲役刑に加えて罰金刑を併科できるという規定とは異なり,本罰則は,罰金刑のみの適用が相当な事案も当然想定している。家庭内で発生した少量のごみの焼却事案から職業的に有害物質を含む多量の廃棄物を焼却して環境に多大の害を及ぼした事案まで,本罰則の適用対象には,行為自体の悪質性において相当の幅があるところであり,本件焼却行為は,その中にあって,比較的軽い部類に属し,罰金刑相当の領域にあると見るのが相当である。原判決の量刑は,懲役刑をも選択した点で重きに過ぎるというべきである。量刑不当の論旨はその限りで理由がある。
4
結論

よって,刑訴法397条1項,381条により原判決を破棄し,同法400条ただし書を適用して更に次のとおり判決する。
原判決の認定した罪となるべき事実に,原判決の挙示する罰条を適用し,所定刑中罰金刑を選択し,その所定金額の範囲内で被告人を罰金30万円に処し,その罰金を完納することができないときは,刑法18条により金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置し,原審及び当審における訴訟費用は刑訴法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととして,主文のとおり判決する。
令和元年7月25日
広島高等裁判所第1部

裁判長裁判官


裁判官

裁判官

田隆史水落桃子廣和瀬裕亮
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