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請求異議事件
事件番号平成30(受)1874
事件名請求異議事件
裁判年月日令和元年9月13日
法廷名最高裁判所第二小法廷
裁判種別判決
結果破棄差戻
原審裁判所名福岡高等裁判所
原審事件番号平成27(ネ)19
原審裁判年月日平成30年7月30日
判示事項共同漁業権から派生する漁業行使権に基づく開門請求の認容判決確定後,前訴口頭弁論終結時に存在した共同漁業権から派生する漁業行使権に基づく開門請求権が消滅したことのみでは当該確定判決に対する請求異議事由とはならないとされた事例
裁判日:西暦2019-09-13
情報公開日2019-09-13 18:00:05
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平成30年(受)第1874号
令和元年9月13日

請求異議事件

第二小法廷判決

主文
原判決中上告人らに関する部分を破棄する
前項の部分につき,本件を福岡高等裁判所に差し戻す。
理由
上告代理人馬奈木昭雄ほかの上告受理申立て理由第9項(上告受理申立て理由第7)について
1
本件は,国営諫早湾土地改良事業としての土地干拓事業を行う被上告人が,
佐賀地方裁判所及び福岡高等裁判所(以下,それぞれ佐賀地裁及び福岡高裁という。)の各確定判決(以下本件各確定判決という。)において諫早湾干拓地潮受堤防(以下本件潮受堤防という。)の北部及び南部各排水門(以下本件各排水門という。)の開放を求める請求が一部認容された上告人らに対し,本件各確定判決による強制執行の不許を求める請求異議訴訟である。2
(1)

原審の確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
上告人らは,佐賀県有明海漁業協同組合大浦支所,島原漁業協同組合又は
有明漁業協同組合(以下,併せて本件各組合という。)の組合員である。(2)

上告人らは,被上告人に対し,本件各組合の各共同漁業権の範囲内におい
て各自が有する漁業法8条1項の漁業を営む権利(以下漁業行使権という。)による妨害排除請求権又は妨害予防請求権等に基づき,主位的に本件潮受堤防の撤去,予備的に本件各排水門の常時開放を求めるなどする訴訟(以下前訴という。)を佐賀地裁に提起した。
前訴において,佐賀地裁は,平成20年6月27日,上告人らのうち一部の者に対する関係で,予備的請求の一部認容として,被上告人に対し,判決確定の日から3年を経過する日までに,防災上やむを得ない場合を除き,本件各排水門を開放し,以後5年間にわたってその開放を継続せよと命ずる判決をした。これに対し,その余の上告人ら及び被上告人が控訴したところ,福岡高裁は,平成22年8月9日に口頭弁論を終結した上,同年12月6日,被上告人の控訴を棄却するとともに,上記その余の上告人らとの関係でも,被上告人に対し,上記判決と同一の内容を命ずる判決をし,これらの判決は,同月20日の経過をもって確定した(本件各確定判決)。
(3)

本件各確定判決が認定した前訴の口頭弁論終結時における本件各組合の各
共同漁業権(以下本件各漁業権1という。)は,いずれも平成15年9月1日に免許がされたものであり,その存続期間は同日から平成25年8月31日までであった。
本件各組合は,平成25年9月1日,漁業種類,漁場の位置及び区域,漁業時期等が本件各漁業権1と同一内容であって,存続期間を平成35年8月31日までとする各共同漁業権(以下本件各漁業権2という。)の免許を受けた。3
原審は,要旨次のとおり判断して,被上告人の請求を認容した。

本件各漁業権1は,その存続期間の末日である平成25年8月31日の経過により消滅したから,本件各漁業権1から派生する権利である上告人らの各漁業行使権に基づき本件各排水門の開放を求める請求権(以下開門請求権という。)も消滅した。したがって,本件各確定判決に係る請求権は前訴の口頭弁論終結後に消滅したのであるから,このことは,本件各確定判決についての異議の事由となる。4
しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次
のとおりである。
本件各確定判決が認容した前訴の訴訟物である請求権は,本件各組合の有する各共同漁業権から派生する上告人らの各漁業行使権に基づく妨害排除請求権又は妨害予防請求権としての開門請求権であるが,本件各確定判決は,本件各組合が有する各共同漁業権を特定するための事実として本件各漁業権1の発生原因事実を明示的に記載しているものの,その存続期間経過後の共同漁業権等については何ら触れるところがない。したがって,本件各確定判決の上記の明示的記載だけをみれば,本件各確定判決に係る請求権は,本件各漁業権1から派生する各漁業行使権に基づく開門請求権のみではないかとも解し得るところである。
しかしながら,本件各確定判決は,平成20年6月及び平成22年12月にされたものであり,かつ,その既判力に係る判断が包含されることとなる主文は要旨判決確定の日から3年を経過する日までに開門し,以後5年間にわたって開門を継続せよというものであるから,本件各漁業権1の存続期間の末日である平成25年8月31日を経過した後に本件各確定判決に基づく開門が継続されることをも命じていたことが明らかである。さらに,前訴において,上告人らは,もともと本件潮受堤防の撤去や本件各排水門の即時開門を求めていたのであるから,将来発生するであろう共同漁業権等について明示的な主張がなくても不自然ではない。そうすると,本件各確定判決を合理的に解釈すれば,本件各確定判決は,本件各漁業権1が存続期間の経過により消滅しても,本件各組合に同一内容の各共同漁業権の免許が再度付与される蓋然性があることなどを前提として,同年9月1日頃に免許がされるであろう本件各漁業権1と同一内容の各共同漁業権(本件各漁業権2がこれに当たる。)から派生する各漁業行使権に基づく開門請求権をも認容したものであると理解するのが相当である。
以上によれば,本件各確定判決に係る請求権は,本件各漁業権1から派生する各漁業行使権に基づく開門請求権のみならず,本件各漁業権2から派生する各漁業行使権に基づく開門請求権をも包含するものと解されるから,前者の開門請求権が消滅したことは,それのみでは本件各確定判決についての異議の事由とはならない。5
したがって,原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違
反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原判決中上告人らに関する部分は破棄を免れない。そして,本件各確定判決が,飽くまでも将来予測に基づくものであり,開門の時期に判決確定の日から3年という猶予期間を設けた上,開門期間を5年間に限って請求を認容するという特殊な主文を採った暫定的な性格を有する債務名義であること,前訴の口頭弁論終結日から既に長期間が経過していることなどを踏まえ,前訴の口頭弁論終結後の事情の変動により,本件各確定判決に基づく強制執行が権利の濫用となるかなど,本件各確定判決についての他の異議の事由の有無について更に審理を尽くさせるため,上記部分につき本件を原審に差し戻すこととする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官菅野博之の補足意見,裁判官草野耕一の意見がある。
裁判官菅野博之の補足意見は,次のとおりである。
私は多数意見に賛同するものであるが,本件訴訟を含む本件潮受堤防をめぐる紛争が長期化,混迷化していることなどに鑑み,更に審理を尽くさせるために本件を原審に差し戻すとした趣旨について考えるところを敷衍することとする。1
本件各確定判決が多数意見の指摘するとおり要旨判決確定の日から3年を経過する日までに開門し,以後5年間にわたって開門を継続せよという特殊な主文を採っていることや,そのような主文を採った理由,本件訴訟の審理経過等を踏まえると,本件訴訟の中核的な争点は,請求異議事由としての事情の変動による権利濫用の成否であると考えられる。そこで,これについて更に審理を尽くさせる必要があるが,その審理,判断に当たって留意すべき点として,以下のような点を指摘しておきたい。
2
判例上,確定判決に基づく強制執行が権利の濫用に当たるとして請求異議訴
訟でその執行力を排除する余地が肯定されており(最高裁昭和35年(オ)第18号同37年5月24日第一小法廷判決・民集16巻5号1157頁,最高裁昭和59年(オ)第1368号同62年7月16日第一小法廷判決・裁判集民事151号423頁等),権利濫用に当たるか否かを判断するに当たっては,当該債務名義の性質,同債務名義により執行し得るものとして確定された権利の性質・内容,同債務名義成立の経緯及び同債務名義成立後強制執行に至るまでの事情,強制執行が当事者に及ぼす影響等諸般の事情を総合考慮することとなる(前掲昭和62年7月16日第一小法廷判決)。
このうち,債務名義の性質に関していえば,債務名義にも様々な性質・性格のものがある。その中には,例えば,被害者が将来失うであろう逸失利益の算定に基づき損害賠償金の支払を命ずる確定判決のように,将来予測に基づき一定の給付を命ずるものもあり,このような債務名義については,過去に生じた損害に関する場合とは異なった事情があることから,通常の債務名義とは異なった考慮も必要となる場合がある。
3
そこで,本件における債務名義の性質・性格や,これにより確定された権利
の性質・内容等についてみると,以下のような特殊性がある。
一般的にいうと,本件のような事案において妨害排除又は妨害予防請求権に基づく特定の作為又は不作為の請求(以下作為等請求という。)が認められるには,被侵害利益の性質と内容を踏まえつつ,対立する諸利益等との総合的な利益衡量を経た上,妨害が違法であると評価される状態が将来にわたって継続することが具体的に予測され,かつ,対立する諸利益を考慮しても,被侵害利益に対する救済を損害賠償にとどめるのでは足りず,作為等請求まで認める必要があると判断されることが必要となるであろう。このような判断の構造に照らすならば,本件各確定判決は,先に挙げた逸失利益の算定のような場合に比べても,次のような点で将来の予測に係る不確実性に対する考慮が一層必要なものであったといえる。第1に,本件各確定判決が漁業行使権に基づく開門請求を認める判断の前提とした諸事情(漁獲量の減少の程度,本件潮受堤防の災害防止機能の必要性等)は,自然環境や社会環境にも関わる本来的に可変的,流動的な性格を有するものである。こうした事情は,時の経過により変動する可能性があるが,本件各確定判決は,上記事情について前訴口頭弁論終結時における予測に基づいて,将来時点における妨害排除・予防請求を認容するものとなっているため,その判断は相当の不確実性をはらんでいるといえる。
第2に,上記妨害排除・予防請求の可否に係る判断は,被侵害利益と対立する諸利益との総合的な利益衡量の下にされたものである。このような諸利益には経済的な利益から生命・身体の安全に関わる利益に至るまで様々な性格のものがあるが,上記第1として述べたとおり,これらの諸利益の前提となる自然環境や社会環境は変動していく性質を有するものであるから,これらの諸利益の有り様も必然的に変動するため,総合的な利益衡量の結果が口頭弁論終結時のものと異なるものとなることもあり得るところである。
4
本件における債務名義の性質・性格について,まずは以上のようなことを指
摘し得るのであるが,本件各確定判決の主文と判断内容に即しつつ更に進んでその特殊な性格を検討すると,次のようなことがいえよう。
本件各確定判決の主文は,前記のとおり,要旨判決確定の日から3年を経過する日までに開門し,以後5年間にわたって開門を継続せよという特殊なものである。
まず,開門の時期を判決確定の日から最大で3年猶予したことに関し,本件各確定判決は,その理由中において,本件潮受堤防が果たしている洪水時の防災機能及び排水不良の改善機能等を代替するための工事(以下対策工事という。)に3年程度要することを考慮したとしている。これは,本件潮受堤防に防災機能があることを踏まえ,判決確定後直ちに開門を命ずることとすれば周辺住民の生命・身体に関する利益が損なわれるおそれがあることから,上記の期間中に対策工事が行われるであろうことを考慮に入れて総合的な利益衡量をしたものと解される。もとより,本件各確定判決は,対策工事が行われることを条件として開門を命ずるものではないから,対策工事がされていなくても被上告人に開門義務が生ずることとなるが,本件各確定判決が本件潮受堤防の果たしている防災機能に鑑み上記の主文としたことは,本件各確定判決のいわば留保付きの性格を示すものとして,権利濫用の成否の判断に当たり考慮されるべきこととなろう。
また,開門期間を5年間に限ったことに関しても,本件各確定判決自体,その理由中において,前記土地干拓事業が諫早湾ないし有明海の環境に及ぼす影響が全て解明されたとはいえず将来的に請求権の成否及び内容を基礎付ける事実関係が変動する可能性があることを認め,そのことや,開門による干潟生態系の変化とそれを受けての調査に要する期間等を考慮して,開門期間を5年間に限って請求を認容し,その余は理由がない旨判示している。これは,前訴においては,上記の点に関する将来予測が前記不確実性のために相当困難であり,その口頭弁論終結時において,期間を限定しない開門を命じ得るだけの事情があるとはいえないという判断を背景とするものと解される。このように,開門請求権の成否等に関する本件各確定判決の判断内容にはもともと仮定的な部分があり,期間を限った暫定的な性格が極めて強く,そのため前記のとおり特殊な主文としたものと考えられる。5
一般的にいえば,前訴の口頭弁論終結後の事情の変動等により確定判決に基
づく強制執行が権利の濫用となるということは,例外的な問題であって,安易に認められるべきものではないことは,論をまたないところであるが,本件においては,以上のような本件各確定判決の特殊性ないし暫定性を十分に踏まえた上で検討されるべきである。前記4でみたところによれば,本件各確定判決は,上記のような暫定的・仮定的な利益衡量を前提とした上で期間を限った判断をしていると解されるのであり,差戻審においては,前訴の口頭弁論終結後の事情の変動を踏まえて,このような判断に基づく債務名義により現時点において強制執行を行うことの適否についての検討を要しよう。
そして,前記将来予測の対象とされた期間が実際に到来し,更に前訴の口頭弁論終結時から長期間が経過した現在においては,このような期間の経過それ自体の評価とともに,上記判断の前提とされた事情に変動が生じているか否かが検討されなければならず,本件各確定判決の後も積み重ねられている司法判断の内容等も考慮して検討する余地もあろう。
以上のような諸事情を総合的に衡量し,本件各確定判決が暫定的な特殊な性格を有することを十分に踏まえた上で,本件各確定判決に基づく強制執行が事情の変動により権利の濫用となるに至っているか否かにつき,判断されるべきであると考える。
裁判官草野耕一の意見は,次のとおりである。
私は,多数意見に賛同し,同時に,本件訴訟の中核的な争点は請求異議事由としての権利濫用の成否であると考える点において菅野裁判官の補足意見にも賛同するものであるが,権利濫用の成否等について更に審理を尽くさせるため本件を原審に差し戻すこととした趣旨に関して思うところを次のとおり述べておきたい。1
一般論としていえば,物権的請求権の一形態である妨害排除請求権は,妨害
行為によって生じている権利侵害がもたらす損害が全額塡補されたからといって当該請求権の行使自体を否定すべきものではない。しかしながら,問題とされている物権的請求権が経済的利益を化体したものであり(すなわち,人格権等の非経済的権利の侵害を伴っておらず),しかも,権利侵害を除去するために債務者がとらなければならない措置に要する費用がこれをとることによって発生を回避できる債権者の損害額を上回る場合において,債務者が債権者の被った損害(侵害行為が排除されないことによって今後被るであろう損害を含む。以下同じ。)を全額弁済しているか,あるいは,これと同視し得る事態が生じている(例えば,債務者が損害全額の弁済を行おうとしたのに債権者がその受領を拒絶したために債務者が当該金額の弁済の提供を行った事態などがこれに当たるであろう。)とすれば,それにもかかわらず妨害排除を強制することは,あえてそれを認めるべき別段の事由がない限り,権利濫用の法理によってこれを抑止することが相当であると思料する。しかるに,本件各確定判決の訴訟物に係る漁業権(それは多数意見に記された理由により本件各漁業権1と本件各漁業権2の双方から成るものであり,以下,併せて本件各漁業権という。)は所定の漁場において所定の方法を用いて漁業を営み,それによって得られる利益を独占的に享受するという経済的利益をもってその中核的保護法益とするものである。したがって,仮に,①被上告人が本件各確定判決を履行するために支出しなければならない金額が,被上告人がこれを履行したことによって発生を回避し得る上告人らの損害の合計額を上回り,しかも,②被上告人の本件各漁業権に対する侵害行為によって上告人らが被った損害を全額弁済しているか,あるいは,それと同視し得る事態が発生しているとすれば,それでも本件各確定判決の履行を強制すべき別段の事由がない限り,これを強制することはもはや権利の濫用に当たると解すべきである。
2
そこで,原審が確定した事実及び記録からうかがえる事実に基づいて上記①
及び②の各要件の充足の有無を検討する。
(1)

まず,①に関しては,被上告人が本件各確定判決を履行するためには,そ
れに先立って,本件潮受堤防が果たしている洪水時の防災機能及び排水不良の改善機能等を代替するために多額の経費をかけて工事を行う必要があり,その経費は納税債務の支払を通じて最終的には納税者全般の負担に帰するものであることがうかがわれるが,その支出額が具体的にいくらに上るのかを原審は認定していない。一方,被上告人が本件各確定判決を履行することによって上告人らは本件各漁業権の侵害によって被る損害の発生を全体でいくら回避し得るかに関しては,後記(3)において述べるように上告人らが被る損害が全体でいくら程度となるのかをうかがうことは記録上可能であるものの,原審はこの点に関する具体的な事実認定を行っておらず,したがって,被上告人が本件各確定判決を履行することによって発生を回避し得る損害の合計額についても具体的な事実認定はなされていない。(2)
次に,②の要件のうちの損害全額の弁済又はこれと同視し得る事態に
ついて考えるに,本件各確定判決の勝訴当事者らが受領した間接強制金(以下本件間接強制金という。)の合計額は原審の口頭弁論終結の直近である平成30年2月9日時点で合計10億6830万円に上っている。本件間接強制金は被上告人をして本件各確定判決を履行せしめることを目的として課されたものであるが,民事執行法172条4項の反対解釈として間接強制金の支払は損害賠償額の支払に充当されるものであり,しかも,間接強制金の受領者は,支払額が賠償を要する金額を上回っても差額の返還を行う必要がないと解されることに鑑みれば,被上告人は,本件各確定判決の勝訴当事者である上告人らに対して,上告人らが支払を受けた本件間接強制金の金額の限度において本件各漁業権の侵害に対する損害賠償金を弁済した場合と同視し得る事態が発生していると評価できる(なお,本件間接強制の決定が確定した平成27年1月22日から本件間接強制金の支払累積額が10億6830万円に達した平成30年2月9日までの間に3年以上の時間が経過していることに鑑みれば,現時点において本件間接強制金支払の事実をもって同等額の損害賠償金が弁済されている事態と同視したからといって間接強制制度の趣旨が損なわれるような慣行が生み出されることはないであろう。)。
(3)

次に,②の要件のうちの,本件各漁業権に対する被上告人の侵害行為によって上告人らが被った損害額はいくらであるかという問題について考えるに,被上告人は,損害額の現在価値は上告人らが受領した本件間接強制金の合計額をはるかに下回る旨主張しており,その主張を支える諸事実があることも記録からうかがえはするものの,原審は上告人らが被った損害額の現在価値が具体的にいくらであるのかを認定していない。
3
以上の検討結果等を踏まえると,権利濫用の成否について法律審である当審
がただちに判断を下すことは不適切であり,本件を原審に差し戻して更なる審理を尽くさせる必要があると判断した次第である。(裁判長裁判官

菅野博之

裁判官

山本庸幸

草野耕一)
裁判官

三浦


裁判官

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