判例検索β > 平成29年(ワ)第11295号
意匠権侵害差止等請求事件 意匠権 民事訴訟
事件番号平成29(ワ)11295
事件名意匠権侵害差止等請求事件
裁判年月日平成30年9月21日
法廷名東京地方裁判所
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平成30年9月21日判決言渡

同日原本領収

平成29年(ワ)第11295号

裁判所書記官

井上昌一朗

意匠権侵害差止等請求事件

口頭弁論終結日平成30年7月18日

当事者の表示


別紙当事者目録記載のとおり
主文1
原告の請求をいずれも棄却する。

2
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由

第1請求
1
被告O2ハリーテクノ株式会社は,別紙被告製品目録記載の各製品を製造し,
譲渡し,貸し渡し,輸出し,若しくは輸入し,又はその譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡又は貸渡しのための展示を含む。)をしてはならない。
2被告株式会社神戸メディケアは,別紙被告製品目録記載の各製品を譲渡し,貸し渡し,輸出し,若しくは輸入し,又はその譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡又は貸渡しのための展示を含む。)をしてはならない。
3被告O2ハリーテクノ株式会社は,その占有に係る別紙被告製品目録記載の各製品及び各製品製造のための金型を廃棄せよ。
4被告株式会社神戸メディケアは,その占有に係る別紙被告製品目録記載の各製
品を廃棄せよ。
5被告O2ハリーテクノ株式会社は,原告に対し,1億円及びこれに対する平成29年4月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。6被告株式会社神戸メディケアは,原告に対し,1億円及びこれに対する平成29年4月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
7訴訟費用は被告らの負担とする。
8第1項ないし第6項につき仮執行宣言
第2事案の概要
1本件は,高気圧酸素補給カプセルに関する意匠権を有する原告が,被告O2ハリーテクノ株式会社(以下「被告O2ハリーテクノ」という。)が製造し,被告株式会社神戸メディケア(以下「被告神戸メディケア」という。)が販売する別紙被告製品目録記載の各製品
(以下,
符号に従い
「被告製品1-1」
などといい,
併せて
「被告各製品」
という。の意匠は上記意匠権に係る意匠と類似するので,

これを製造,
販売等する行為は上記意匠権を侵害すると主張して,
各被告に対し,
意匠法37条1項に基づく侵害行為の差止め及び同条2項に基づく侵害の予防に必要な行為を求めるとともに,民法709条,意匠法39条2項に基づく損害
賠償として各自1億円及びこれに対する不法行為の後の日である訴状送達の日(被告O2ハリーテクノにつき平成29年4月13日,被告神戸メディケアにつき同月12日)
から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の各
支払を求める事案である。
2前提事実
(当事者間に争いのない事実又は文中掲記した証拠及び弁論の全趣旨
により認定することができる事実)
(1)当事者等

原告は,酸素機器事業の製造・販売・保守等の事業を行っていたが,平成28年9月に同事業を株式会社エア・ウィンズに譲渡し,その後は,酸素機器事業の知的財産管理等を営む株式会社である。(甲12,乙1)

被告O2ハリーテクノは,酸素カプセル等の製造・販売を営む株式会社である。


被告神戸メディケアは,被告O2ハリーテクノが製造した酸素カプセル等の販売を行っている株式会社である。

(2)原告の意匠権
原告は,以下の意匠権(以下「本件意匠権」又は「本件意匠」という。)を有している。
登録番号:意匠登録第1309357号
意匠に係る物品:高気圧酸素補給カプセル
出願日:平成18年9月12日
登録日:平成19年8月3日
本件意匠:別紙意匠公報(以下「本件公報」という。)の【図面】記載の
とおり
(3)被告らの行為
被告O2ハリーテクノは,平成22年9月頃から被告各製品を順次製造して被告神戸メディケア等に販売し,同被告は,同月頃から同各製品を販売している。
(4)被告各製品の意匠
別紙被告意匠目録記載のとおりである(以下,それぞれを符号に従い「被告意匠1-1」などといい,併せて「被告各意匠」という。)。
(5)消滅時効の援用

被告らは,平成29年7月3日到達の被告ら準備書面(1)により,原告に対し,
平成26年4月4日以前の損害に係る損害賠償請求権について消滅時効を援用する旨の意思表示をした。
3争点
(1)本件意匠と被告各意匠の類否

(2)本件意匠が意匠登録無効審判により無効にされるべきものか否か(3)原告の損害額
(4)消滅時効の成否
第3争点に関する当事者の主張
1争点(1)(本件意匠と被告各意匠の類否)について

(原告の主張)
(1)商品の同一又は類似
被告各製品は,
いずれも高気圧の酸素を供給する機能を有する酸素カプセル
であることから,本件意匠に係る物品である「高気圧酸素補給カプセル」と同一又は類似である。
(2)本件意匠の構成及びその要部

基本的構成態様(以下,原告主張に係る構成をその符号に従い「原告構成A」等という。)
A
仰向けに横たわっている利用者に高気圧の酸素を供給することのでき
る胴部及び側部からなる円筒状の構造体である。
B
胴部には,
長手方向には胴部の正面視左端側からほぼ中央の位置まで及
び,また,周方向には正面から上面を超えた位置まで及ぶ横長隅丸矩形状
の開口部が形成されている。
C
開口部には,
長手方向にスライドするドアが胴部の内周側壁側に設けら
れている。


具体的構成態様
a
円筒状の構造体の全長(胴部及び側部)は2.3mであり,胴部の直径は0.8mである。

b
開口部の下端及び上端,胴部の背面側,下面側の4か所に,胴部の長手方向に端部まで延びる棒状部が設けられている。

c
胴部の左端側,開口部の左端,開口部の右端及び胴部の右端側の4か所に,
胴部の周方向に胴部の周面よりわずかに隆起した帯部が設けられてい
る。開口部の左端の帯部は開口部の下端から上端の棒状部まで,その他帯部は胴部の全周に及んでいる。
d
側部は,透明な部分球形状であり,左端側には緊急用排気弁バルブが設けられている。

e
ドアは,透明な胴部の円弧に沿う形状であり,その外周壁側には左端側に取っ手が設けられ,
その内周壁側には両端の2か所にパイプ状のレール
に沿ってスライドが可能となるよう支持されるための略三日月形状の補強リブが設けられている。
f
胴部内の底部には,略半円柱状のマットレス(ベッド)が設けられている。

(斜視図)
棒状部
帯部
(開口部上端)
(開口部右端)

帯部(右端側)

側部(右端側)
開口部
帯部
(開口部左端)

胴部

上面側
側部(左端側)
正面側

背面側
緊急用
排気弁
バルブ

棒状部
(開口部下端)

ドア
下面側

マットレス(ベッド)

取っ手

補強リブ

棒状部
(下面側)

帯部(左端側)


本件意匠の要部
(ア)本件意匠の要部は,原告構成A~Cである。
本件意匠に係る物品である高気圧酸素補給カプセルの取引者,需要者は,スポーツジム,酸素カプセルサロン,個人として酸素カプセルを使用する
者等であり,その使用方法は,開口部のドアを開けて中に入るというものである。このため,取引者,需要者の注意を最も惹きやすい本件意匠の要部は,全体形状並びに開口部及びドアの形状である。
(イ)被告らは,原告構成A~Cは公知意匠であると主張するが,本件意匠に係る物品の実機に関する証拠は存在しない。
これは,
本件意匠の出願当時,
高気圧酸素補給カプセルの実機はソフトタイプのみであり,本件意匠のようなハードタイプのものは存在しなかったからである。

また,本件意匠の各基本構成態様を個別に開示する公知意匠が存在していたとしても,本件意匠における胴部における開口部の配置及び位置とドアの構成の組合せ,
すなわち円筒状の胴部の所定位置に設けられた開口部
の内周側壁側にスライドドアを設けるという構成を開示する公知意匠は存在しない。

(ウ)本件意匠の側部が透明であることは,本件意匠の要部ではない。被告らは本件意匠の側部が透明であることは本件意匠の要部であると主張するが,側部が透明であることは,意匠を構成する形状を補足的に特定する素材を示すにすぎない。
被告らは,
医療用カプセルの素材の接合等の技術的な側面や安全性を強

調するが,
意匠の要部は取引者,
需要者の注意を最も惹く部分であるから,
要部の判断において技術的な観点や安全性の観点は重視されるべきではない。また,そもそも,筐体の一部を透明,半透明,不透明に変更する程度のことは一般的に行われており,本件意匠の透明の側部を半透明,不透明に変更したとしても,本件意匠の要部である原告構成A~Cによる美感
の共通性を上回る異なる印象を看者にもたらすものではない。
(3)被告意匠1-1,同2及び3(以下,これらを併せて「被告意匠1-1等」という場合がある。)の構成及び本件意匠との類否

基本的構成態様
A1-1

仰向けに横たわっている利用者に高気圧の酸素を供給すること

のできる胴部及び側部からなる円筒状の構造体である。
B1-1

胴部には,
長手方向には胴部の正面視左端側からほぼ中央の位置

まで及び,また,周方向には正面から上面を超えた位置まで及ぶ横長隅丸矩形状の開口部が形成されている。
C1-1

開口部には,
長手方向にスライドするドアが胴部の内周側壁側に

設けられている。

D1-1

胴部の下面側に脚部(2か所)又は台部が設けられている。

E1-1

胴部のほぼ中央から右端側の間に胴部を一部覆うように胴部の

背面側にコントローラが配置されている。

具体的構成態様
a1-1

構造体の全長(胴部及び側部)は2.1mであり,胴部の直径は

0.76mである。
b1-1

開口部の下端及び上端の2か所に,
胴部の長手方向に胴部の左端

側及び右端側帯部の手前まで延びる棒状部が設けられている。
c1-1
胴部の左端側,開口部の左端,開口部の右端,胴部のほぼ中央,

胴部の右端側の5か所に,
胴部の周方向に胴部の周面よりわずかに隆起し
た帯部が設けられている。開口部の左端及び右端の帯部は開口部の下端及び上端の棒状部まで,その他の帯部は胴部の全周に及んでいる。
d1-1

側部は,フライパン形状であるとともに不透明であり,左端側に

は緊急用排気弁バルブが設けられている。
e1-1

ドアは半透明な胴部の円弧に沿う形状であり,その外周壁側には

左端側に取っ手が設けられ,
その内周壁側には両端の上端及び下端の4か
所にパイプ上のレールに沿ってスライドが可能となるよう支持されるための円弧状の補強リブが設けられている。
f1-1
胴部内部の底部には,略半円柱状のマットレス(ベッド)が設け

られている。
g1-1

胴部のほぼ中央に手摺りが設けられている。

類否
被告意匠1-1等の基本的構成態様は,
脚部又は台部(原告構成D1-1)
とコントローラ(原告構成E1-1)という付加的な要素を含むものの,本件意匠の要部を完全に包含し,これを共通にしている。
両者の具体的構成態様は,
一部差異が存するものの,
多くが共通しており,

その差異も特に取引者,需要者の注意を惹くものでないから,美感を異にしない。
このように,本件意匠と被告意匠1-1等は,全体として,取引者,需要者に共通の美感を生じさせるから,
被告意匠1-1等は本件意匠に類似する。
(4)被告意匠1-2及び同4(以下,これらを併せて「被告意匠1-2等」という場合がある。)の構成及び本件意匠との類否

基本的構成態様
A1-2~D1-2
E1-2


原告構成A1-1~D1-1と同じ。

円筒状の構造体とは別にコントローラが設けられている。

具体的構成態様
a1-2~g1-2


原告構成a1-1~g1-1と同じ。

類否
被告意匠1-2等の基本的構成態様は,
脚部又は台部(原告構成D1-2)
とコントローラ(原告構成E1-2)という付加的な要素を含むものの,本
件意匠の要部を完全に包含し,これを共通にしている。
そして,両者の具体的構成態様は,一部差異が存するものの,多くが共通しており,その差異も特に取引者,需要者の注意を惹くものでないから,美感を異にしない。
このように,本件意匠と被告意匠1-2等は,全体として,取引者,需要
者に共通の美感を生じさせるから,被告意匠1-2は本件意匠に類似する。(5)被告意匠5の構成及び本件意匠との類否

基本的構成態様
A5~C5

原告構成A1-1~C1-1と同じ。

D5
E5
円筒状の構造体とは別にコントローラが設けられている。


胴部の下面側に台部が設けられている。

具体的構成態様
a5

原告構成a1-1と同じ

b5

開口部の下端及び上端の2か所に,
胴部の長手方向に端部まで延びる

棒状部が設けられている。
c5

開口部の左端,開口部の右端及び胴部の右端側の3か所に,胴部の周
方向に胴部の周面よりわずかに隆起した帯部が設けられている。これらの
帯部は胴部の全周に及んでいる。
d5~f5
g5

原告構成d1-1~f1-1と同じ。

胴部の左端側及びほぼ中央に手摺りが設けられている。

類否
被告意匠5の基本的構成態様は,(原告構成D5)
台部
とコントローラ
(原
告構成E5)という付加的な要素を含むものの,本件意匠の要部を完全に包含し,これを共通にしている。
そして,両者の具体的構成態様は,一部差異が存するものの,多くが共通しており,その差異も特に取引者,需要者の注意を惹くものでないから,美
感を異にしない。
このように,本件意匠と被告意匠5は,全体として,取引者,需要者に共通の美感を生じさせるから,被告意匠5は本件意匠に類似する。
(被告らの主張)
(1)物品が同一でも類似でもないこと

本件意匠に係る物品は,内部に酸素が充填されるのに対し,被告各製品に係る物品は,内部に大気が充填されるので,それぞれ物品の用途及び機能が異なり,
本件意匠に係る物品及び被告各製品に係る物品は,
同一又は類似ではない。
(2)本件意匠の構成及びその要部

基本的構成態様(以下,被告ら主張に係る構成をその符号に従い「被告構成A」等という。)
A
円筒形である。

B
胴部に開口部がある。

C
開口部をドアが覆っている。

D
胴部の左端側には,透明な半球状の左端側側部がある。

E
胴部の右端側には,透明な半球状の右端側側部がある。

F
胴部内の底部に平面(上面)視長方形状及び側面視略半円柱のマットレ
スがある。

具体的構成態様
a
開口部は,胴部において,正面視左右方向略中央から左端側及び正面視上下方向略中央から上端側にわたる。

b
開口部の隅部はR形状である。

c
開口部には,その形状が円筒形の一部であるドアがある。

d
ドアが透明である。

e
ドアの正面視左端及びドアの正面視右端のそれぞれ内側に側面視略三
日月形状の補強リブが一体的に設けられている。
f
胴部の正面視略中央,正面視左端側及び正面視右端側にそれぞれ胴部の周方向に胴部からわずかに隆起した補強用の帯部がある。

g
開口部上端及び開口部下端にそれぞれ正面視左右方向に延びかつ胴部
の略全長にわたり,
胴部からわずかに隆起した正面視左右方向に垂直な断
面が半円形状である棒状部がある。
h
胴部の背面側及び下面側にそれぞれ正面視左右方向に延びかつ胴部の
略全長にわたり,胴部からわずかに隆起した,正面視左右方向に垂直な断面が半円形状である棒状部がある。
ij
左端側側部の側面視略中央に緊急用排気弁バルブがある。

k
胴部の全長は,2.3メートルである。

l
胴部の直径は,0.8メートルである。

m
胴部内の開口部上端の内側近傍及び開口部下端の内側近傍にそれぞれ
正面視でドア左端側に取っ手がある。

正面視左右方向に延び,胴部の略全長にわたる直線状部材がある。n
o
胴部が直接床面に載置されている。


胴部内には,マットレス,補強リブ及び直線状部材がある。

本件意匠の要部
(ア)本件意匠の要部は,被告構成D及びE,すなわち,本件意匠に係る酸素カプセルの両端が,胴部と異なる素材で作成された半球形状となっており,少なくとも一方の端部が透明であることである。
(イ)本件意匠に係る高気圧酸素補給カプセルは,
内部の高気圧に耐え得る形

状を備え,内部で人が横たわる機能を有する。こうした物品は,そもそもは医療用として採用され発展してきたものであり,
酸素補給カプセルに関
する公知意匠(甲6,7,乙3,4,8,9)に現れているように,スライドドアを備える形状(甲7)や,カプセル胴部に内部を視認することが可能な横長隅丸矩形状の窓を備える形状(乙5)は,本件意匠の出願日以
前から存在していた。
こうした本件意匠に係る物品の性質,用途,使用態様等に鑑みると,原告構成A~Cは,取引者,需要者にとって自明の構成であってその注意を惹くものではない。
(ウ)被告構成要件D及びEは,従来の医療用カプセルと比較して新規な創作
部分であり,取引者,需要者の注意を最も惹く部分といえる。
すなわち,従来の医療用カプセルの側部は,胴部と同じ金属又は非鉄金属により接合され,半楕円形状(フライパン形状)であるのに対し,本件意匠に係る物品は,側部が胴部と異なる素材から形成され,透明の部分球形状に構成されている。本件意匠に係るこうした特徴は,通常の酸素カプセルには見られない顕著な特徴である。
また,本件意匠に係る物品は,側部が透明であることにより,外部から
内部のベッドを覗き見ることができるように構成されている。これは,外部からの監視,監督を容易にするとともに,利用者に対して,異常事態が生じても速やかに救出してもらえるとの安心感を与えるものであり,従来の医療カプセルにはない新規の創作部分である。
(3)被告各意匠の構成

被告意匠1-1,同2及び3
1-1-a
1-1-b

胴部に開口部がある。

1-1-c
胴部は,円筒形である。

開口部は,胴部において,正面視左右方向略中央から左端側及

び正面視上下方向略中央から上端側にわたる。
1-1-d

開口部の隅部はR形状である。

1-1-e開口部には,その形状が円筒形の一部であるドアがある。1-1-f
1-1-g
開口部を覆うドアは,半透明である。
ドアの正面視左端及びドアの正面視右端のそれぞれ内側に補

強リブがない(リブレス構造)。
1-1-h

胴部の正面視略中央,正面視左端側及び正面視右端側にそれぞ

れ胴部の周方向に胴部からわずかに隆起した補強用の帯部がある。1-1-i

開口部上端及び開口部下端にそれぞれ正面視左右方向に延び,

かつ胴部の略全長にわたり,正面視左右方向に垂直な断面が矩形状の胴部から隆起した,手づかみできる大きさの角状部がある。
1-1-j

開口部上端及び開口部下端のそれぞれの角状部において,正面
視略中央に掛けわたされた手すりがある。
1-1-k

手すりには,酸素カプセルの内部に向けられた気圧メーターが

ある。
1-1-l
胴部の正面視左端側及び正面視下端側並びに正面視右端側及

び正面視下端側にそれぞれ脚部がある。
1-1-m

胴部の正面視右端側及び正面視上端側に外部操作部が胴部と

一体的に設けられている。
1-1-n
1-1-o
正面視でドア左端側に取っ手がある。
胴部の左端側には,不透明な,断面が半楕円形状の左端側側部

がある。
1-1-p

胴部の右端側には,不透明な,断面が半楕円形状の右端側側部

がある。
1-1-q
1-1-r

胴部内の底部に平面(上面)視長方形状のマットレスがある。

1-1-s

胴部の全長は,2.03メートルである。

1-1-t

胴部の直径は,0.75メートルである。

1-1-u

左端側側部の側面視略中央に緊急用排気弁バルブがある。

胴部内の開口部上端の内側近傍及び開口部下端の内側近傍に

それぞれ正面視左右方向に延び,胴部の略全長に亘る直線状部材がある。1-1-v
胴部内には,マットレス,直線状部材及び内部操作部がある。

1-1-w

胴部の近傍に加圧ポンプがある。

被告意匠1-1の正面図


被告意匠1-2,同4及び5
1-2-a~l

被告構成1-1-a~lと同じ。

1-2-m~u

被告構成1-1-n~vと同じ。

1-2-v

胴部の近傍に加圧ポンプが内蔵された外部操作部がある。

被告意匠1-2の正面図

(4)類否
被告各意匠における側部は,いずれも胴部と同素材の平餅型の楕円形状にて構成されており,不透明であって,公知意匠における側部と同じ形状及び材質を備えているものであって,本件意匠の要部において相違するから,被告各意匠と本件意匠は類似しない。
2
争点(2)(本件意匠が意匠登録無効審判により無効にされるべきものか否か)
について
(被告らの主張)
(1)新規性の欠如による無効

乙25に掲載された意匠に基づく主張
(ア)

本件意匠は,出願日である平成18年9月12日より前である同年8
月25日に山梨県内で頒布された刊行物
「PaPick」
9月号
(乙25。
以下「本件刊行物」という。)の47頁左上に掲載された意匠(以下「乙25意匠」という。)と同一又は類似のものであるから新規性を欠き,意匠登録無効審判により無効とされるべきものである。
(イ)乙25意匠は,山梨県甲斐市所在のA鍼灸接骨院の出稿した広告として掲載された高圧酸素カプセルのイメージ図である。同図からは,乙25意匠の酸素カプセルが円筒形の形状をしていること,
その胴部の正面視左右
方向略中央に開口部があり,開口部には透明のドアが設けられていること,側部が透明な半球形状であること,内部にマットレスが載置されているこ
とが看取できる。このように,乙25意匠は,本件意匠と基本的構成態様及び要部が共通するから,本件意匠はその出願日前に頒布された乙25に記載されているということができる。
(ウ)原告の主張する差異点1-1については,そもそも乙25意匠の開口部の隅部が直角形状であるとはいえない上,
酸素カプセルの胴部を構成する

開口部の配置は,当該物品を見る角度による差異にすぎず,取引者,需要者の美感を左右する形状の相違ではないから,この程度の差異は本件意匠と乙25意匠の同一性に影響しない。
同差異点1-2については,両意匠に差異があることすら明確ではなく,仮に原告の主張するような差異があるとしても,
ドアが内側壁側に設置し
ているか外側壁側に設置されているかは,取引者,需要者にとっての関心事ではないから,両意匠の同一性に影響しない。

(エ)原告は,
乙25意匠は原告の意に反して公知になったものであると主張
するが,乙25意匠に係るデータは,原告自身がメール(甲19)によりA鍼灸接骨院に送信したものであり,原告は,その際,メール本文に「掲載の方,是非お願い致します。」と記載しているのであるから,乙25意匠が原告の意に反して公知となったものであるということはできない。

乙26に掲載された意匠に基づく主張
(ア)本件意匠は,
出願日である平成18年9月12日より前である同年7月
15日に作成・頒布された原告のチラシ(乙26。以下「本件チラシ」という。)に掲載された意匠(以下「乙26意匠」という。)と同一又は類
似のものであるから新規性を欠き,意匠登録無効審判により無効とされるべきものである。
(イ)乙26意匠は,高気圧酸素カプセル製品「O2シャトル」の全体が明瞭に把握できるイメージ図である。同図からは,高気圧酸素カプセルが円筒形であること,その胴部の正面視左右方向略中央に開口部があり,開口部
には透明のドアが設けられていること,
側部が透明な半球形状であること,
内部にマットレスが載置されていることが看取できる。このように,乙26意匠は,本件意匠と基本的構成態様及び要部が共通するから,本件意匠が記載されている。
(ウ)原告は,乙26はニュースリリース案にすぎず,第三者に配布されるこ
とが予定されていなかったと主張するが,原告からA鍼灸接骨院宛てのメール(甲19)に「宣伝用のニュースリリースも出来ました」と記載されていることからも明らかなように,本件チラシは原告において頒布を予定し,かつ頒布された刊行物である。

乙27に掲載された意匠に基づく主張
(ア)本件意匠は,
出願日である平成18年9月12日より前である同年9月
3日発行の山梨日日新聞の記事(乙27。以下「本件記事」という。)に
掲載された意匠(以下「乙27意匠」という。)と同一又は類似のものであるから新規性を欠き,意匠登録無効審判により無効とされるべきものである。
(イ)乙27意匠からは,円筒形であること,胴部の正面視左上部分にカプセル半面の表面積の4分の1ほどの面積の開口部が設置され,そのドア部分
が透明であること,側部が透明な半球形状であることなどが看取できる。このように,乙27意匠は,本件意匠と基本的構成態様及び要部において共通するので,
本件記事には本件意匠が記載されているということができ
る。
(ウ)原告の主張する差異点2-1については,仮に開口部の奥行きの長短の
差があったとしても,この程度の差異は異なる製品間において通常あり得る範囲内のものであるから,取引者,需要者の美感を左右しない。また,乙27意匠の開口部の隅部については,縁を覆うゴムにより隅丸形状が形成されているので,両意匠の形状は相違しない。
同差異点2-2についても,乙27意匠の内周側壁側には,開口部の長
手方向を構成する2辺のそれぞれ外側に平行してレール状の構造物が設けられているので,
乙27意匠の内周側壁面にドアが設けられているかど
うか不明という原告の主張は事実に反する。
(2)創作非容易性の欠如による無効

乙25意匠及び乙26意匠に基づく主張
本件意匠と乙25意匠は,
全体の形状が円筒形であること及び透明のスラ
イド式ドアが設けられている点で共通している。他方,両意匠は,①本件意匠のドアが斜め方向に設置されているのに対し,乙25意匠のドアは円筒形上部に水平に設置されている点,②本件意匠においては,ドア部の取っ手が半円状であるのに対し,乙25意匠の取っ手はL字状である点で相違する。上記相違点のうち,ドアの設置方向の相違は長手方向を回転軸として一定
方向に回転させれば一致するものにすぎず,新たな着想ないし独創性の現れとみることはできない。また,ドアの取っ手の形状に係る相違点も技術的な差異に基づくものではなく,当業者であれば容易に創作できる範疇にとどまる。
したがって,本件意匠は,当業者であれば乙25意匠に基づいて容易に創
作することができたものであり,乙25意匠と同様の構成態様の乙26意匠についても同様である。

乙27意匠に基づく主張
本件意匠と乙27意匠は,全体の形状が円筒形であること,側部の少なくとも一方が透明であること,
円筒形部に透明な窓様のものが設けられている

点で共通している。他方,乙27意匠は,側部の他方が半透明で構成されていること,ドアが設置されていない点において本件意匠と相違する。上記相違点のうち,乙27意匠の側部の他方が半透明である点については,透明度の差異にすぎない。また,乙27意匠にドアが設置されていない点についても,
酸素カプセルの内部を覗き見ることができるよう出入口の一部に

透明な窓を設け,ドアの全面を透明にするという構成態様は,本件意匠の出願日前に公然と知られていた。
したがって,本件意匠は,当業者であれば乙27意匠に基づいて容易に創作をすることができたものである。

その他の主張
一人用の酸素カプセルの場合,その形状は円筒状にならざるを得ず,長辺約0.7~0.8メートル程度の透明又は半透明のスライドドアを設置せざるを得ない。本件意匠も同様の構成であり,通常の知識を有する者が,公然知られた形状又はこれらの結合に基づいて容易に創作できる意匠であるので,本件意匠は無効である。
(原告の主張)
(1)新規性の欠如の主張について

乙25意匠に基づく主張について
(ア)乙25意匠は,秘密保持義務を負うことを前提として原告からA鍼灸接骨院に送信された原告作成のイメージ図に記載されていたものであるが,
同接骨院は本件意匠の出願後に同図を利用した宣伝を行うと約束しながら,
それに反して原告に無断で同図を利用して宣伝広告を行ったことから,原告の意に反して平成18年8月25日頃に公知となったものである。そして,同日から6か月以内に本件意匠に係る出願がされているから,本件刊行物に掲載されたことにより新規性を喪失しない。

(イ)また,乙25意匠は,本件意匠の要部である基本的構成態様である原告構成A~Cを一体として備えておらず,本件意匠と乙25意匠には,基本的構成態様のみについてみても,以下の差異点があるから,同一又は類似する意匠ではなく,むしろ,異なる美感を生じさせるものである。a
差異点1-1
本件意匠では,開口部は,周方向には正面から上面を超えた位置まで
及び,隅部は丸形状(隅丸形状)であるのに対し,乙25意匠では,開口部は,
周方向には正面と上面との中間位置から上面と背面との中間位
置まで及び,隅部は直角形状である点
b
差異点2-1
本件意匠では,
開口部には長手方向にスライドするドアが胴部の内周
側壁側に設けられているのに対して,乙25意匠では,開口部にドアが設けられているものの,ドアの構成が明らかではない点

乙26意匠に基づく主張について
(ア)乙26は,原告製品の発売前に作成したニュースリリース案であり,一般の第三者に配布されることは予定されておらず,現に配布されていない。これは,秘密保持義務を負っていたA鍼灸接骨院等に対して送信されたも
のにすぎないから,「頒布された刊行物」に当たらない。
(イ)また,乙26号証に記載されているイメージ図は,乙25意匠と異なるものではないから,前記ア(イ)と同様の理由から,本件意匠と乙26意匠は,同一又は類似する意匠ではない。

乙27意匠に基づく主張について
乙27に掲載されているのは試作モデルであるから,カプセル内を密閉するためのドアが胴部開口部に設けられておらず,カプセル内を高気圧とするためのパイプやコントローラなども当然取り付けられていない。
そして,乙27意匠は,本件意匠の要部である基本的構成態様である原告
構成A~Cを一体として備えておらず,本件意匠と乙27意匠には,基本的構成態様のみについてみても,以下の差異点があるから,同一又は類似する意匠ではなく,むしろ,明らかに異なる美感を生じさせるものである。a
差異点2-1
本件意匠では,開口部は,長手方向には胴部の正面視左端側からほぼ中央の位置まで及び,隅部は丸形状(隅丸形状)であるのに対して,乙27
意匠では,開口部は,長手方向には胴部の正面視左端側からどの位置まで及んでいるか不明であり,隅部は直角形状である点
b
差異点2-2
本件意匠では,開口部には,長手方向にスライドするドアが胴部の内周
側壁側に設けられているのに対して,乙27意匠では,開口部にドアが設けられていない点
(2)創作非容易性の欠如の主張について

乙25意匠及び乙26意匠に基づく主張について
本件意匠と乙25意匠には前記差異点1-1及び1-2があるところ,これらを開示ないし示唆する公知意匠は存在せず,乙25意匠に基づいて本件意匠を容易に創作することができたことを裏付ける証拠は存在しない。
乙26意匠についても同様である。

乙27意匠に基づく主張について
本件意匠と乙27意匠には前記記載の差異点2-1及び2-2があるところ,これらを開示ないし示唆する公知意匠は存在せず,乙27意匠に基づいて本件意匠を容易に創作することができたことを裏付ける証拠は存在し
ない。

その他の主張について
本件意匠の構成態様は,酸素カプセルの機能から論理必然的に導かれるものではなく,原告の主張は創作非容易性の議論ではないので,主張自体失当
である。
3争点(3)(原告の損害額)について
(原告の主張)
被告神戸メディケアは,
平成29年1月までに4000台以上の酸素カプセル
を販売したが
(甲9)このうち被告各製品が占める割合は60%

(2400台)

を下回らない。同各製品は,被告O2ハリーテクノが製造して,被告神戸メディケアに販売したものである。
被告O2ハリーテクノが被告製品1台を被告神戸メディケアに販売することによって得た利益は1台当たり30万円を下らず,被告神戸メディケアが同製品を販売することにより得た利益は1台当たり100万円を下らない。
そうすると,被告らによる本件意匠権の侵害行為によって原告が受けた損害の額は,被告O2ハリーテクノにつき,少なくとも7億2000万円(=2400台×30万円),被告神戸メディケアにつき,少なくとも24億円(=2400台×100万円)となる(意匠法39条2項)。また,上記侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用は,3000万円を下回らない。
したがって,原告は,上記損害の一部請求として,被告O2ハリーテクノ及び被告神戸メディケアそれぞれに対して,1億円(被告各製品につき各1500万円と弁護士費用相当額として1000万円の合計額)の損害賠償を請求する。(被告らの主張)
争う。
4争点(4)(消滅時効の成否)について

(被告らの主張)
原告は,被告O2ハリーテクノに対し,平成20年10月10日,被告各製品が本件意匠権を侵害しているとして,通告書(乙18。以下「本件通告書」という。)により警告をしているのであるから,遅くとも同日までに,被告らが被告製品を製造及び販売したことを知っていた(甲1,4,5)。

したがって,原告の被告らに対する損害賠償請求権のうち,原告が訴状を提出した平成29年4月5日より3年以上前の平成26年4月4日以前の損害に係る損害賠償請求権は,時効により消滅した。
(原告の主張)
争う。本件通告書が対象としていたのは,被告各製品とは異なる「H2Oカプ
セル」であるから,被告らの消滅時効の主張は前提において失当である。第4当裁判所の判断
1争点(1)(本件意匠と被告各意匠の類否)について
(1)本件意匠の構成
本件公報によれば,本件意匠の基本的構成態様及び具体的構成態様(以下,
符号に従い
「構成A」
などという。は,

以下のとおりと認めることができる。

基本的構成態様
A
仰向けに横たわっている利用者に高気圧の酸素を供給することのでき
る胴部及び側部からなる円筒状の構造体である。
B
胴部には,正面視左右方向(長手方向)には正面視左端側から略中央まで及び,正面視上下方向(周方向)には略中央から上端を超えた位置に及ぶ横長隅丸矩形状の開口部がある。

C
開口部には長手方向にスライドするスライド式ドアが胴部の内周側壁
側に設けられている。
D
側部は,胴部の正面視左右両端にあり,外側に向けて膨らみのある形状をしている。


具体的構成態様
a
円筒状の構造体の全長(胴部及び各側部)は2.3mであり,胴部の直径は0.8mである。

b
側部はいずれも部分球形状であり,透明で内部のベッドを覗き見ることが可能とされ,正面視左側側部の側面視略中央には緊急用排気弁バルブが設けられている。

c
ドアは,透明な胴部の円弧に沿う形状であり,閉めた状態でも内部のベッドを覗き見ることが可能とされ,また,その外周壁側の正面視左端側には取っ手が設けられている。

d
ドアの内周壁側の正面視左右両端には,
略三日月形状の補強リブが設け
られるとともに,胴部の内周壁には,ドアのスライドを支持するための直
線パイプ状のレールが,
正面視左右方向にその略全長にわたり設けられて
いる。
e
胴部内の底部には,平面視長方形状で側面視略半円柱状のベッドが設置されている。

f
開口部の上端及び下端,胴部の背面側,下面側の4か所に,それぞれ胴部の長手方向に胴部の両端部まで延びる,胴部からわずかに隆起した長手方向に垂直な断面が半円形状である棒状部が設けられている。
g
胴部の正面視左端側及び右端側,
開口部正面視左端及び右端の4か所に,
それぞれ胴部の周方向にその周面からわずかに隆起した帯部が設けられており,
このうち開口部正面視左端の帯部は開口部の下端から上端の各棒
状部まで及び,他の帯部は胴部の全周に及んでいる。

(2)被告各意匠の構成

被告意匠1-1等(被告意匠1-1,同2及び3)の構成
証拠(甲4,5,乙17の1・3・4)及び弁論の全趣旨によれば,被告
意匠1-1等の基本的構成態様及び具体的構成態様は,以下のとおりと認めることができる。
(ア)基本的構成態様
A1-1

仰向けに横たわっている利用者に高気圧の酸素を供給するこ

とのできる胴部及び側部からなる円筒状の構造体である。
B1-1
胴部には,長手方向には正面視左端側から略中央まで及び,周

方向には正面視略中央から上端を超えた位置に及ぶ横長隅丸矩形状の開口部がある。
C1-1

開口部には長手方向にスライドするスライド式ドアが胴部の

内周側壁側に設けられている。
D1-1
側部は,胴部の正面視左右両端にあり,外側に向けて膨らみの

ある形状をしている。
E1-1

正面視左端側及び右端側の各下部にあり胴部底面を支える脚

部又は胴部の正面視下部にあり両端部にわたり胴部底面を支える台部がある。
F1-1
胴部の正面視略中央と右端側の間に,胴部の上側から背面側を

覆うように外部操作部が設けられている。
G1-1

胴部の近傍に円筒状の構造体とは別体の加圧ポンプがある。
(イ)具体的構成態様
a1-1

円筒状の構造体の全長(胴部及び側部)は2.03mであり,

胴部の直径は0.75mである。
b1-1

側部はいずれも不透明な断面が半楕円形状(フライパン形状)

であり,正面視左端側部の側面視略中央には緊急用排気弁バルブが設け
られている。
c1-1

ドアは,半透明な胴部の円弧に沿う形状であり,その外周壁側

の正面視左端側には取っ手が設けられている。
d1-1

胴部の内周壁には,ドアのスライドを支持するための直線パイ

プ状のレールが,
正面視左右方向にその略全長にわたり設けられている。

e1-1

胴部内の底部には,平面視長方形状のベッドが設置されている。

f1-1

開口部の上端及び下端の2か所に,それぞれ胴部の長手方向に

胴部の左右端側帯部の手前まで延びる,
胴部から隆起した長手方向に垂
直な断面が矩形状である角状部が設けられている。
g1-1

胴部の正面視左端側,右端側及び略中央,開口部正面視左端及

び右端の5か所に,それぞれ胴部の周方向にその周面からわずかに隆起した帯部が設けられており,このうち開口部正面視左端及び右端の帯部は開口部の下端から上端の各角状部まで及び,他の帯部は胴部の全周に及んでいる。
h1-1

胴部の正面視略中央に,周方向に各角状部に掛けわたされた手

すりがあり,手すりには,酸素カプセルの内部に向けられた気圧メーターが設けられている。
i1-1

胴部内に内部操作部がある。

被告意匠1-2等(被告意匠1-2及び同4)の構成
証拠(甲4,5,乙17の2・5)及び弁論の全趣旨によれば,被告意匠
1-2等の基本的構成態様及び具体的構成態様は,次のとおりと認めることができる。
(ア)基本的構成態様
A1-2~E1-2
F1-2

上記構成A1-1~E1-1と同じ。

胴部の近傍に円筒状の構造体とは別体の,加圧ポンプが内蔵さ

れた外部操作部が設けられている。

(イ)具体的構成態様
a1-2~i1-2

上記構成a1-1~i1-1と同じ。

被告意匠5の構成
証拠(甲4,5,乙17の6)及び弁論の全趣旨によれば,被告意匠5の
基本的構成態様及び具体的構成態様は,次のとおりと認めることができる。(ア)基本的構成態様
A5~E5
F5

上記構成A1-1~E1-1と同じ。

上記構成F1-2と同じ。

(イ)具体的構成態様
a5~d5,i5
f5

上記構成a1-1~d1-1,i1-1と同じ。

開口部の上端及び下端の2か所に,それぞれ胴部の長手方向に端部
まで延びる,
胴部から隆起した長手方向に垂直な断面が矩形状である角
状部が設けられている。
g5
胴部の正面視左端側,右端側及び略中央の3か所に,それぞれ胴部
の周方向にその周面からわずかに隆起した帯部が設けられており,これらの帯部は胴部の全周に及んでいる。
h5

胴部の正面視左端側及び略中央の2か所に,周方向に各角状部に掛
けわたされた手すりがあり,後者の手すりには,酸素カプセルの内部に向けられた気圧メーターが設けられている。
(3)本件意匠と被告各意匠の対比
上記(1)(2)によれば,本件意匠と被告各意匠との共通点及び相違点は,以下のとおりである。

被告意匠1-1等について
(ア)基本的構成態様について
(共通点)

本件意匠と被告意匠1-1等は,いずれも本件意匠に係る上記構成A~Dを有する点
(相違点)
本件意匠と被告意匠1-1等は,被告意匠1-1等が上記構成E1-1~G1-1の構成を有するのに対し,本件意匠はそのような構成を有しな
い点
(イ)具体的構成態様について
(共通点)
本件意匠と被告意匠1-1等は,以下の点で共通する。


正面視左側側部の側面視略中央に緊急用排気弁バルブが設けられ

ている点(構成b,b1-1)



ドアは,胴部の円弧に沿う形状であり,その外周壁側の正面視左端側に取っ手が設けられている点(構成c,c1-1)



胴部の内周壁には,ドアのスライドを支持するための直線パイプ状のレールが,
正面視左右方向にその略全長にわたり設けられている点
(構成d,d1-1)



胴部内の底部には,平面視長方形状のベッドが設けられている点

(構成e,e1-1)


少なくとも開口部の上端及び下端の2か所に,それぞれ胴部の長手方向に少なくとも胴部の左右端側帯部の手前まで延びる,
胴部から隆

起した棒状の部材が設けられている点(構成f,f1-1)


少なくとも胴部の正面視左端側及び右端側並びに開口部正面視左
端及び右端の4か所に,それぞれ胴部の周方向にその周面からわずかに隆起した帯部が設けられており,このうち開口部正面視左端の帯部は開口部の下端から上端の各棒状部まで及び,正面視左端側及び右端側の帯部は胴部の全周に及んでいる点(構成g,g1-1-1)
(相違点)
本件意匠と被告意匠1-1等は,以下の点で相違する。


本件意匠の全長が2.
3m,
胴部の直径が0.
8mであるのに対し,
被告意匠1-1等の全長は2.03m,胴部の直径は0.75mである点(構成a,a1-1)



本件意匠の側部は,透明な部分球形状であるのに対し,被告意匠1-1等の側部は,
不透明な半楕円形状
(フライパン形状)
である点
(構
成b,b1-1)



本件意匠のドアは,透明で,内周壁側の正面視左右両端に三日月形状の補強リブが設けられているのに対し,被告意匠1-1等のドアは,半透明で,補強リブが設けられていない点(構成c,d,c1-1,
d1-1)


本件意匠のベッドは側面視略半円柱状であるが,被告意匠1-1等のベッドはそのような形状ではない点(構成e,e1-1)


本件意匠にのみ胴部の背面側及び下面側にも棒状の部材が設けら

れており,本件意匠の部材は胴部の長手方向に端部まで延びているのに対し,
被告意匠1-1等では胴部の左右端側帯部の手前までであり,
また,
同部材の断面は,
本件意匠においては半円形状であるのに対し,
被告意匠1-1等では矩形状である点(構成f,f1-1)


被告意匠1-1等の開口部正面視右端にある帯部は全周ではなく

開口部の下端から上端の各棒状部まで及んでおり,これに加え,被告意匠1-1等においては胴部の略中央にも帯部が設けられている点(構成g,g1-1)


被告意匠1-1等にのみ,胴部の正面視略中央に,気圧メーターが設けられた手すりが周方向に各角状部に掛けわたされている点(構成h1-1)



被告意匠1-1等にのみ,胴部内に内部操作部がある点(構成i1-1)


被告意匠1-2等について
(ア)基本的構成態様について
(共通点)
いずれも本件意匠に係る上記構成A~Dを有する点

(相違点)
被告意匠1-1等が上記構成E1-2及びF1-2の構成を有するのに対し,本件意匠はそのような構成を有しない点
(イ)具体的構成態様について
(共通点)

本件意匠と被告意匠1-1等の共通点と同じ
(相違点)
本件意匠と被告意匠1-1等の相違点と同じ

被告意匠5について
(ア)基本的構成態様について
(共通点)
本件意匠と被告意匠1-1等及び被告意匠1-2等の共通点と同じ(相違点)
本件意匠と被告意匠1-2等の相違点と同じ

(イ)具体的構成態様について
(共通点)
本件意匠と被告意匠5は,本件意匠と被告意匠1-1等及び被告意匠1-2等との上記共通点①~④のほか,以下の点で共通する。⑤’開口部の上端及び下端の2か所に,
それぞれ胴部の長手方向に胴部
の端部付近まで延びる,
胴部から隆起した棒状の部材が設けられてい
る点(構成f,f1-5)

⑥’少なくとも胴部の3か所に,
それぞれ胴部の周方向にその周面から
わずかに隆起した帯部が設けられており,
これらの帯部が胴部の全周
に及んでいる点(構成g,g1-5)
(相違点)
本件意匠と被告意匠5は,
本件意匠と被告意匠1-1等及び被告意匠1

-2等との上記相違点①~⑤及び⑧のほか,以下の点で相違する。⑥”本件意匠においては,胴部の正面視左端側及び右端側,開口部正面視左端及び右端の4か所に帯部が設けられているのに対し,被告意匠5では,胴部の正面視左端側,右端側及び略中央の3か所に帯部が設けられており,本件意匠にのみ,開口部正面視左端にも,開口部の下
端から上端の各棒状部まで及ぶ帯部がある点(構成g1-1,g5)⑦”被告意匠5にのみ,胴部の正面視左端側及び略中央に,気圧メーターが設けられた手すりが周方向に各角状部に掛けわたされている点(構成h1-5)
(4)本件意匠と被告各製品の物品としての類否
本件意匠に係る物品は,
高気圧酸素補給カプセルであり,
中に人が横たわり,
高気圧の酸素を補給する装置であるが,前記前提事実,証拠(甲4,5,乙14の1・2)及び弁論の全趣旨によれば,被告各製品も同様の装置であることが認められるから,
本件意匠に係る物品と被告各製品は,
物品として類似する。

(5)本件意匠と被告各意匠の構成態様の類否

本件意匠の要部
(ア)本件意匠の基本的構成態様及び具体的構成態様は前記のとおりであるところ,原告は,基本的構成態様である構成A~Cが要部であると主張する。
a
そこで検討するに,本件意匠に係る物品は,高気圧酸素補給カプセルであるところ,高気圧酸素補給カプセルは,酸素を装置内部に充填する
ことによりその内部空間を高気圧状態にし,利用者がカプセル内部に配置されたベッドに横たわり酸素を補給するという方法で使用されるものである。このような高気圧酸素補給カプセルの使用方法,機能等に照らすと,
その全体形状が正面視左右方向に長い円筒状の形状とすること
は一般的であると考えられる。

実際のところ,酸素や大気等を充満させた中に人が入る装置において,その全体の形状が胴部と側部から形成される円筒状のものは本件意匠登録出願前に公知であると認められる(甲6(酸素浴機),甲7(サウナ装置),乙3(高圧医療用高圧室),乙4(高気圧酸素治療装置),乙5(新生児蘇生装置),乙8(高圧チャンバー),乙9(高気圧酸素
治療装置),乙15(カプセル式サウナ))。そして,上記先行意匠には,
その側部が外側に向けて膨らんでいるものも存在する
(甲6,
乙4,
5,9)。
そして,本件意匠は,これらの先行意匠における円筒形状と同様の形状であり,側部も含めその全体形状が特に特徴的で取引者,需要者の注
意を惹くとは考え難い。
b
また,上記のとおり,高気圧酸素補給カプセルは利用者が出入りするものであるから,
同カプセルには利用者が出入りすることのできる開閉
可能な開口部を設ける必要がある。そして,利用者が入って横たわるこ
とを考えると,開口部を利用者の上半身側,すなわち長手方向には胴部の正面視左端側からほぼ中央に設けるのが合理的・一般的であり,また出入りするのに十分な大きさを確保するという観点からは,開口部を周方向には正面から上面を超えた位置まで及ぶようにすることも自然であると考えられる。
酸素や大気等を充満させた中に人が入る装置の胴部において,このような開口部を設けた先行意匠は少なくなく(甲6,7,乙3のFig.
17及び23,乙15),そのうち,甲7及び乙15に係る意匠には,長手方向左端側から略中央まで,周方向下部から上端を超えた位置に及ぶ開口部が示され,また,乙3に係る意匠には,横長隅丸矩形状の開口部の内周側壁側に長手方向にスライドするスライド式ドアが設けられていることが示されている。

そうすると,本件意匠の開口部の位置,大きさ,形状や,ドアの設置位置等は,その使用方法や機能から合理的に導き出せるものにすぎず,特に特徴的で取引者,需要者の注意を惹くものであるということはできない。
c
以上のとおり,高気圧酸素補給カプセルにおいて,その全体形状が胴部及び側部からなる円筒状をしていること(構成A),胴部の長手方向に正面視左端側から略中央まで及び,周方向に略中央からから上端を超えた位置に及ぶ横長隅丸矩形状の開口部を設けること(構成B),胴部の内周側壁側に開口部の長手方向にスライドするスライド式ドアを設けること
(構成C)いずれも先行意匠にみられるものであるところ,
は,

その構成態様はその機能や使用方法に基づくありふれた態様であり,取引者,
需要者の注意を惹く程度はそれほど大きくないということができ
る。
d
これに対し,原告は,本件意匠の基本構成態様を個別に開示する公知意匠が存在していたとしても,本件意匠における胴部における開口部の配置及び位置並びにドアの構成の組合せを開示する公知意匠は存在しないと主張する。
しかし,
上記各構成は先行意匠に普通に見られるありふれた態様であ
り,取引者,需要者の注意を強く惹くものであるとはいえないことは前記判示のとおりであり,同各構成を組み合わせることにより,取引者,需要者に強い印象を与えるような構成となるということもできない。
また,原告は,上記各先行意匠は本件意匠に係る物品とはその性質を異にするので,
本件意匠の美感を検討するに当たりこれらの意匠を参照
することは相当ではないと主張する。
しかし,上記各先行意匠に係る物品は,いずれも酸素や大気等を充填させた空間を有し,利用者が同装置内に入り横たわるなどした状態で充
填された酸素や大気等の補給を受ける点で本件意匠に係る物品と用途及び機能を共通にするものであるから,本件意匠と被告各意匠の類否の検討に当たり,これらの意匠を参照することを妨げる理由はないというべきである。
e
したがって,構成A~Cは,基本的構成態様を構成するものではあるが,これらの構成が要部であるということはできない。

(イ)a他方,
本件意匠は,
前記のとおり,
側部がいずれも部分球形状であり,
透明で内部のベッドを覗き見ることを可能にする構成態様(構成b),ドアは透明な胴部の円弧に沿う形状であり,
閉めた状態でも内部のベッ
ドを覗き見ることを可能にする構成態様(構成c)を備えている。この点について,本件公報(甲3)の【意匠の説明】には,以下のとおりの記載がある。
「カプセル両端の部分球形状に突出した部分は透明であり,内部のベッドを覗き見ることができる。カプセルの胴部分の出入口に設置されて
いるドアは透明であり,閉めた状態でも内部のベッドを覗き見ることができる。
ドアを閉じた状態の参考斜視図及びドアを途中まで開けた状態
の参考斜視図において,
透明部分には円弧状の平行斜線を施している。

上記のとおり,本件公報の【意匠の説明】には,カプセル両端の部分及びドアが透明であり,内部のベッドを覗き見ることができる構成となっていることが強調され,胴部における開口部の配置及び位置やドアの構成との組合せについての記載は存在しない。そして,上記各参考斜視
図には,透明な側部部材及びドアの構成態様とともに,これらの透明な部分越しに見ることのできる高気圧酸素補給カプセル内部のベッドや補強リブの構成態様などが示され,透明部分を設けることによって,物品外部の構成要素と物品内部の構成要素が一体となって,本件意匠全体の美感を形成している様子が示されている。

本件意匠のこのような特徴,特に,胴部のドア部分にとどまらずドアより大きな部分球形状の側部全体が透明となっているという構成態様により,利用者は,外部から同物品を見る場合にはこれらの透明な部分を通じて内部のベッドや補強リブなどを目にすることのできるとともに,内部に横たわった場合は,同部分を通じて内部の構成要素に加えて
外部の景観を目にすることができる。かかる特徴を備えることにより,本件意匠は,透明な部分がない又は少ない同種物品と比較して,利用者を含む取引者,需要者に対し,開放感があって明るく広々した印象を与えるとともに,物品外部の構成要素と物品内部の構成要素の形状が一体となって本件意匠全体の美感を形成する点において看者に強い印象を
与えると考えられる。
b
これに対し,原告は,側部が透明であることは,意匠を構成する形状を補足的に特定する素材を示すにすぎないと主張する。
しかし,本件意匠に係る物品の側部が透明であることは,単に意匠を構
成する素材を特定するにとどまるものではなく,その美感に大きな影響を与えることは前記判示のとおりである。
また,原告は,筐体の一部を透明,半透明,不透明に変更する程度のことは一般的に行われており,本件意匠の透明の側部を半透明,不透明に変更したとしても,美感に大きな影響を与えないと主張する。
しかし,上記先行意匠においても,胴部のドアを透明にした上で,更に側部全体を透明にしているものは存在しないので,酸素カプセル等の側部
及び胴部のドアを透明にすることが一般的でありふれたものであるということはできない。そして,側部及びドアを透明にすることにより,外部の構成と内部の構成が一体となって本件意匠の美感を形成し,また,本件意匠に係る物品が明るく開放的な印象を与えることは,前記判示のとおりである。

c
したがって,
本件意匠の要部は,
物品の側部全体及びドアが透明であり,
内部のベッド等を覗き見ることができる構成(構成b,c)にあるというべきである。


本件意匠と被告各意匠の類否
被告各意匠の基本的構成態様及び具体的構成態様は前記のとおりであるところ,本件意匠と被告各意匠は,その要部において構成態様が相違することは明らかである。これにより,被告各意匠においては,取引者,需要者が本件意匠のような開放感があって明るく広々とした印象を受けることはなく,
また物品外部の構成要素と物品内部の構成要素が一体となって本件意匠
全体の美感を形成することもない。このように,本件意匠と被告各意匠とはその美感が大きく異なるものである。
したがって,
本件意匠と被告各意匠がその構成態様において類似している
ということはできない。
(6)まとめ

以上のとおり,本件意匠が被告各意匠と類似するとは認められないから,その余の争点について判断するまでもなく,原告の被告らに対する請求は,いずれも理由がない。
2結論
よって,原告の請求をいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第40部

裁判長裁判官

佐藤達文三井大有今野智紀
裁判官

裁判官

別紙

当事者目録

原告
株式会社エア・テクノロジーズ
上義隆井友章大江修子佐藤力哉
同訴訟代理人弁理士

鈴木
同訴訟復代理人弁護士

金本恵子
同補佐人弁理士

加藤真司齋藤拓也瓜本忠夫
茜ヶ久保

井安
同訴訟代理人弁護士

公二守被告
O2ハリーテクノ株式会社

被告
株式会社神戸メディケア

被告ら訴訟代理人弁護士

木景田俊明植俊

同訴訟代理人弁理士

本鈴山村貴昭
別紙

被告製品目録

下記型番の酸素カプセル
1-1OXYRIUM(カプセル本体・コントローラ一体型)
1-2OXYRIUM(カプセル本体・コントローラ別体型)
2
PLUS

3
OXYRIUM
OXYRIUM

MEDICAL1.5

4
HYBRID

OXY

5
HYBRID

OXY

75SB

★別紙意匠公報添付省略★

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