判例検索β > 平成30年(ネ)第10045号等
商標権侵害行為差止請求控訴事件 商標権 民事訴訟
事件番号平成30(ネ)10045等
事件名商標権侵害行為差止請求控訴事件
裁判年月日平成30年11月28日
法廷名知的財産高等裁判所
原審裁判所名東京地方裁判所
原審事件番号平成29(ワ)9779
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平成30年11月28日判決言渡
平成30年(ネ)第10045号

商標権侵害行為差止請求控訴事件,同年(ネ)

第10070号同附帯控訴事件
(原審・東京地方裁判所平成29年(ワ)第9779号)
口頭弁論終結日平成30年9月26日
判決
控訴人兼附帯被控訴人

森島酒造株式会社
(以下「控訴人」という。)

訴訟代理人弁護士

茂木同茂木
被控訴人兼附帯控訴人

博男Y亮
(以下「被控訴人」という。)
訴訟代理人弁護士

武主1田彩織文
控訴人は,日本酒を含む酒類に別紙控訴人標章目録記載1ないし4
の各標章を付し,又は同標章を付した酒類を販売し,若しくは販売のために展示してはならない。
2
控訴人は,その製造する日本酒の宣伝用ポスター,チラシ,パンフ
レット,ウェブサイトに前項の各標章を付して,展示又は頒布してはならない。
3
控訴人は,第1項の各標章を付した包装並びに同標章を付した日本酒に関する宣伝用ポスター,チラシ及びパンフレットを廃棄せよ。
4
控訴人は,インターネット上のウェブサイト(http://www.taikan.
co.jp/)から第1項の各標章を削除せよ。
5
当審における訴訟費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由

第1被控訴人の当審における請求
主文第1項ないし第4項と同旨
第2事案の概要(略称は,特に断りのない限り,原判決に従う。)1
事案の要旨
本件は,「白砂青松」の標準文字からなる原告商標の商標権(原判決別紙商
標権目録記載の商標権。以下「本件商標権」という。)を有する被控訴人が,控訴人がその製造する日本酒(被告商品)に別紙控訴人標章目録記載1ないし4の各標章(以下「控訴人各標章」と総称し,それぞれを番号に応じて「控訴人標章1」などという。)を付して販売する行為が本件商標権の侵害に該当する旨主張して,控訴人に対し,商標法36条1項に基づき,控訴人各標章を付した日本酒を含む酒類の販売等の差止めを求めるとともに,同条2項に基づき,控訴人各標章を付した日本酒に関する宣伝用ポスター,包装等の廃棄及び控訴人のウェブサイトからの控訴人各標章の削除を求める事案である。被控訴人は,原審において,控訴人が被告商品に被告標章(原判決別紙被告標章目録記載の標章)を付して販売する行為が本件商標権の侵害に該当する旨主張して,控訴人に対し,同条1項に基づき,「白砂青松」の標章を付した日本酒を含む酒類の販売等の差止めを求めるとともに,同条2項に基づき,「白砂青松」の標章を付した日本酒に関する宣伝用ポスター,包装等の廃棄及び上記ウェブサイトからの「白砂青松」の標章の削除を求めたところ,原判決は,被控訴人の請求を全部認容した。
控訴人は,原判決を全部不服として控訴を提起し,被控訴人は,附帯控訴の方式により,当審において,差止めを求める対象を,被告標章を付した被告商品の販売等から控訴人各標章を付した被告商品の販売等に変更するなどの訴え
の交換的変更をした。
なお,原判決は,被控訴人の上記訴えの交換的変更により,失効している。2
前提事実
以下のとおり訂正するほか,原判決「事実及び理由」の第2の2記載のとお
りであるから,これを引用する。


原判決2頁15行目の「原告商標の商標権」を「本件商標権(甲1)」と改める。



原判決2頁17行目から24行目までを次のとおり改める。

「イ

控訴人は,平成11年10月以降,表側のラベルに控訴人標章1を,
裏側のラベルに控訴人標章3を付した1.8リットル瓶の日本酒及び表側のラベルに控訴人標章2を,裏側のラベルに控訴人標章3を付した720ミリリットル瓶の日本酒(以下,これらを併せて「被告商品」という。)を製造し,販売している。控訴人は,被告商品を収める木箱に控訴人標章4を付している。
また,控訴人は,控訴人の運営するウェブサイト(http://www.taikan.co.jp/)(乙41)において,控訴人各標章をラベル又は木箱に付した被告商品を掲載し,被告商品の広告宣伝を行っている(乙1~4,11,41)。」
3
争点
(1)

原告商標と控訴人各標章の類否(争点1)

(2)

先使用権の有無(争点2)

(3)

権利濫用の抗弁の成否(争点3)

第3争点に関する当事者の主張
1
争点1(原告商標と控訴人各標章の類否)について
(1)

被控訴人の主張
原告商標と控訴人標章1及び2の類否

(ア)

控訴人標章1及び2は,別紙控訴人標章目録記載1及び2記載のと
おり,中央上方に「白砂青松」,左側に「大観」の各文字が配され,各文字の下方に横山大観の日本画の絵柄が配された結合標章である。絵柄部分は,商品に貼付されたラベルのデザインというべきものであり,出所識別標識としての機能を有するものではない。
次に,「白砂青松」の文字部分と「大観」の文字部分は,いずれも毛筆体であるが,字体が異なり,「白砂青松」の文字部分は,中央に配され,「大観」の文字部分よりも,文字の大きさが明らかに大きく,文字間隔も広いから,上記各文字部分を分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているとはいえないし,また,「白砂青松」の文字部分は,需要者に対して商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものといえる。
そうすると,控訴人標章1から「白砂青松」の文字部分を抽出し,これと原告商標とを比較して商標そのものの類否を判断することも,許されるというべきである。控訴人標章2も,これと同様である。
(イ)

原告商標は,横書きの「白砂青松」の標準文字からなるのに対し,
控訴人標章1の「白砂青松」の文字部分は,横書きの毛筆体であり,各文字を崩すことなく,標準文字を多少アレンジした書体であるから,原告商標と控訴人標章1の「白砂青松」の文字部分は,外観において類似する。
原告商標と控訴人標章1の「白砂青松」の文字部分は,「ハクサセイショウ」の称呼が生じる点で,称呼において同一であり,いずれも白い砂と青々とした松(主にクロマツ)により形成される,日本の美しい海岸の風景との観念が生じるから,観念においても同一である。
以上のとおり,原告商標と控訴人標章1の「白砂青松」の文字部分は,外観が類似し,称呼及び観念が同一であること,原告商品と被告商品は,
価格がさほど変わらず,販売地域もほぼ同一であることからすると,原告商標と控訴人標章1が原告商標の指定商品である「日本酒」に使用された場合には,その商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるものといえるから,控訴人標章1は原告商標に類似する商標である。同様に,控訴人標章2も,原告商標に類似する商標である。

原告商標と控訴人標章3の類否
(ア)

控訴人標章3は,別紙控訴人標章目録記載3記載のとおり,「白砂
青松」の文字及び「大観」の文字を横書きしてなる結合標章である。次に,「白砂青松」の文字部分と「大観」の文字部分は,いずれも毛筆体であるが,字体が異なり,「白砂青松」の文字部分は,中央に配され,「大観」の文字部分よりも,文字の大きさが若干大きく,文字間隔も広いから,上記各文字部分を分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているとはいえないし,また,「白砂青松」の文字部分は,需要者に対して商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものといえる。
そうすると,控訴人標章3から「白砂青松」の文字部分を抽出し,これと原告商標とを比較して商標そのものの類否を判断することも,許されるというべきである。
(イ)

前記ア(イ)で述べたのと同様の理由により,原告商標と控訴人標章
3の「白砂青松」の文字部分は,外観が類似し,称呼及び観念が同一であること,原告商品と被告商品は,価格がさほど変わらず,販売地域もほぼ同一であることからするとからすると,原告商標と控訴人標章3が原告商標の指定商品である「日本酒」に使用された場合には,その商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるものといえるから,控訴人標章3は原告商標に類似する商標である。

原告商標と控訴人標章4の類否

(ア)

控訴人標章4は,別紙控訴人標章目録記載4記載のとおり,「白砂
青松」の文字と「大観」の文字を縦書きしてなる結合標章である。次に,「白砂青松」の文字部分と「大観」の文字部分は,いずれも毛筆体であるが,字体が異なり,「白砂青松」の文字部分は,「大観」の文字部分よりも,文字の大きさが圧倒的に大きいから,上記各文字部分を分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているとはいえないし,また,「白砂青松」の文字部分は,需要者に対して商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものといえる。
そうすると,控訴人標章4から「白砂青松」の文字部分を抽出し,これと原告商標とを比較して商標そのものの類否を判断することも,許されるというべきである。
(イ)

前記ア(イ)で述べたのと同様の理由により,原告商標と控訴人標章
4の「白砂青松」の文字部分は,外観が類似し,称呼及び観念が同一であること,原告商品と被告商品は,価格がさほど変わらず,販売地域もほぼ同一であることからするとからすると,原告商標と控訴人標章4が原告商標の指定商品である「日本酒」に使用された場合には,その商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるものといえるから,控訴人標章4は原告商標に類似する商標である。

小括
以上のとおり,控訴人各標章はいずれも原告商標に類似する商標に当たるから,控訴人による控訴人各標章を付した被告商品の販売行為等は,本件商標権の侵害に該当する。

(2)

控訴人の主張
原告商標と控訴人標章1及び2の類否の主張に対し
(ア)

控訴人標章1及び2は,横山大観自筆の毛筆体による特殊な態様で
表示された「大観

白砂青松」の文字と横山大観の色彩付き日本画の絵

柄とが結合した結合標章である。
控訴人標章1及び2は,被告商品の瓶のラベルに使用されているところ,需要者が店頭で日本酒を購入する場合,日本酒の瓶のラベルにどのような絵柄や文字が記載されているかを確認して商品を識別するから,ラベルに表示されている文字や絵柄は,全体として自他商品識別機能を有している。しかも,被告商品の瓶のラベルに占める上記絵画部分の大きさは,全体の約60%程度であって,非常に大きい。
加えて,控訴人標章1及び2のうち,「大観

白砂青松」の文字部分

は横山大観の自筆のものであること,上記文字部分から,通常,横山大観が描いた「白砂青松」という作品名の絵画を連想させること,絵柄部分は横山大観作の「白砂青松」という作品名の絵画であることからすれば,上記文字部分と上記絵柄部分は,分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているといえる。
また,仮にそうでないとしても,「大観」の文字には,横山大観という人物を表す意味があること,「白砂青松」の文字には,横山大観が描いた絵画の作品名としての意味があることに照らすと,上記各文字を並べた「大観

白砂青松」の文字部分は,横山大観が描いた「白砂青松」

という作品名の絵画という意味となるから,「大観」の文字部分と「白砂青松」の文字部分は,分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているといえる。
以上によれば,控訴人標章1及び2からそれぞれ「白砂青松」の文字部分を抽出し,これと原告商標とを比較して商標そのものの類否を判断することも許されるとの被控訴人の主張は,理由がない。
(イ)

原告商標は,「白砂青松」の標準文字からなり,原告商標から「ハ
クサセイショウ」の称呼が生じ,需要者,取引者に対して白い砂浜と青
い松のような日本酒を連想させるものである。
他方で,控訴人標章1及び2は,「大観

白砂青松」の文字と横山大

観の色彩付き日本画の絵柄とが結合した結合標章であり,控訴人標章1から「タイカンハクサセイショウ」の称呼が生じ,需要者,取引者に対して横山大観が描いた「白砂青松」という絵画のような日本酒を連想させるものである。
したがって,原告商標と控訴人標章1及び2は,外観,称呼及び観念がいずれも異なる。
加えて,①控訴人は,60年以上にわたり,商標「大観」を使用した「清酒(地酒)」を横山大観とゆかりのある茨城県北部で製造販売しているので,少なくとも,茨城県北部を中心に,商標「大観」は控訴人の「清酒」の商品に係る商標であると認識されるに至っていること,②控訴人は,平成11年10月から,控訴人標章1及び2を瓶のラベルに付した被告商品の製造販売を開始し,この新酒の販売は,同月10日付けの茨城新聞の記事で紹介されたこと,③被告商品の瓶のラベルに控訴人の所有する横山大観の絵画「白砂青松」が用いられたことは,同月21日付けの読売新聞でも紹介されたこと,④控訴人標章1及び2が付された被告商品は,現在に至るまで相当数販売されており,清酒「大観」と被告商品の需要者,取引者が共通することによれば,これらの取引者,需要者は,控訴人標章1及び2を付した被告商品に接した場合,控訴人標章1及び2の「大観」の文字部分からその出所が控訴人であることを当然認識できるという取引の実情がある。
以上のとおり,原告商標と控訴人標章1は,外観,称呼及び観念がいずれも異なること,上記取引の実情があることからすると,原告商標と控訴人標章1が原告商標の指定商品である「日本酒」に使用されたとしても,その商品の出所について誤認混同を生ずるおそれはないから,控
訴人標章1は原告商標と非類似の商標である。同様に,控訴人標章2も,原告商標と非類似の商標である。
(ウ)

仮に控訴人標章1及び2における「大観

白砂青松」の文字部分と

横山大観の色彩付き日本画の絵柄部分が分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているといえないとしても,控訴人標章1及び2の「大観

白砂青松」の文字部分は,原告商標と外観

及び称呼が異なり,また,上記文字部分から需要者,取引者に対して横山大観が描いた「白砂青松」という絵画のような日本酒を連想させる点で,原告商標と観念も異なる。
したがって,前記(イ)と同様の理由により,控訴人標章1及び2は原告商標と非類似の商標である。

原告商標と控訴人標章3及び4の類否の主張に対し
(ア)

前記ア(ア)と同様の理由により,控訴人標章3及び4における「大
観」の文字部分と「白砂青松」の文字部分は,分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているといえる。
したがって,控訴人標章3及び4からそれぞれ「白砂青松」の文字部分を抽出し,これと原告商標とを比較して商標そのものの類否を判断することも許されるとの被控訴人の主張は,理由がない。
(イ)

前記ア(イ)と同様の理由により,控訴人標章3及び4は原告商標と
非類似の商標である。

小括
以上によれば,控訴人による控訴人各標章を付した被告商品の販売行為等が本件商標権の侵害に該当するとの被控訴人の主張は,理由がない。
2
争点2(先使用権の有無)について
以下のとおり訂正するほか,当事者の主張は,原判決5頁10行目から7頁
1行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。

(1)

原判決5頁11行目及び6頁6行目の各「被告標章」をそれぞれ「控訴
人各標章」と改める。
(2)
3
原判決6頁21行目の「被告製品」を「被告商品」と改める。

争点3(権利濫用の抗弁の成否)について
以下のとおり訂正するほか,当事者の主張は,原判決7頁3行目から8頁1
6行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)

原判決7頁5行目,8行目,17行目,同頁末行から8頁1行目にかけ
て,8頁3行目,4行目及び11行目の各「被告標章」をそれぞれ「控訴人各標章」と改める。
(2)原判決7頁15行目の「原告製品」を「原告商品」と改める。(3)

原判決7頁18行目及び8頁1行目の各「被告の標章」をそれぞれ「控
訴人各標章」と改める。
(4)

原判決7頁20行目,8頁4行目及び15行目の各「原告の商標権」を
それぞれ「本件商標権」と改める。
(5)

原判決8頁16行目末尾に行を改めて次のとおり加える。

「(5)

被控訴人の本件商標権の権利行使により,控訴人は,現在販売して
いる被告商品のラベルの張り替えなどの作業を行わなければならず多大な不利益を受けるのに対し,控訴人が控訴人各標章を使用していることにより原告商品の売上げが減少しているといった事情がない。」
第4当裁判所の判断
被控訴人の当審における請求は,いずれも理由があるものと判断する。その理由は,以下のとおりである。
1
認定事実
以下のとおり訂正するほか,原判決「事実及び理由」の第4の1記載のとお
りであるから,これを引用する。
(1)原判決8頁22行目から9頁6行目までを以下のとおり改める。
「ア

控訴人は,平成11年10月以降,被告商品(表側のラベルに控訴人
標章1を,裏側のラベルに控訴人標章3を付した1.8リットル瓶の日本酒及び表側のラベルに控訴人標章2を,裏側のラベルに控訴人標章3を付した720ミリリットルの日本酒)を製造し,販売している。また,控訴人は,被告商品を収める木箱に控訴人標章4を付している。」
(2)

原判決9頁7行目の「前記第2,2のとおり,原告商標の商標権を有
し,」を削り,同頁8行目末尾に行を改めて次のとおり加える。


また,被控訴人は,同年4月19日,原告商標について,第30類「和菓子」及び第33類「日本酒,焼酎,果実酒」を指定商品として商標登録出願をし,平成19年1月12日,本件商標権の設定登録を受けた。」
(3)

原判決10頁5行目の「販売している」から6行目末尾までを「販売し
ている。」と改める。
(4)

原判決10頁8行目から9行目にかけての「原告商標」を「本件商標
権」と改める。
(5)

原判決10頁15行目末尾に行を改めて次のとおり加える。

「ウ

被控訴人は,平成29年3月24日,東京地方裁判所に本件訴訟を提
起した。その間の平成28年5月6日,控訴人は,控訴人標章2とほぼ同様の構成の商標について商標登録出願(商願2016-49449号)をした後,平成29年4月24日付けの拒絶査定(乙56)を受けたため,同年8月18日付けで拒絶査定不服審判(乙57)を請求した。」
2
争点1(原告商標と控訴人各標章の類否)について
(1)原告商標と控訴人標章1の類否について

原告商標は,「白砂青松」の標準文字からなり,原告商標から「ハクサセイショウ」又は「ハクシャセイショウ」の称呼が生じ,「白い砂と青い
松」(広辞苑第七版)という観念が生じ,海岸などの美しい風景を連想,想起させる。
イ(ア)

控訴人標章1は,別紙控訴人標章目録記載1のとおり,図形部分と,
その上方に毛筆体で横書きした「大観」の文字部分及び「白砂青松」の文字部分とからなる結合商標である。
図形部分は,長方形の黒色の枠線の中に,背後に白い山が見える,白い砂浜に松林の続く海岸の風景画を図形化したものであり,図形部分の大きさは,控訴人標章1全体の約5分の4を占めている。
しかるところ,「大観」の文字部分及び「白砂青松」の文字部分は,図形部分と重なっていないこと,「大観」の文字部分は図形部分の長方形の黒色の枠線からやや離れた上方に配置されていることから,長方形の黒色の枠線で囲まれた図形部分と「大観」の文字部分及び「白砂青松」の文字部分は,明瞭に区別して認識することができる。
また,図形部分の左下部には毛筆体で縦書きした「大観」の署名及び落款印の印影が表記されており,図形部分は,横山大観作の「白砂青松」という作品名の絵画を図形化したものであることが認められるが(乙68ないし82),横山大観作の上記絵画が,原告商標の指定商品「日本酒」の需要者である一般消費者の間に広く認識されるに至っているものと認めるに足りる証拠はないことに照らすと,需要者の多くは,図形部分の風景画は,「白砂青松」の文字部分から連想,想起させる風景を描いたものと認識することはあっても,横山大観作の上記絵画であると認識するものと認めることはできないし,「大観」の文字部分及び「白砂青松」の文字部分は,図形部分の絵画の作者が横山大観であり,その作品名が「白砂青松」であることを表示するものとして図形部分と一体的な関係にあると認識するものと認めることもできない。
そうすると,図形部分と「大観」の文字部分及び「白砂青松」の文字
部分は,分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているものとは認められない。
次に,「大観」の文字部分及び「白砂青松」の文字部分から全体として「タイカンハクサセイショウ」又は「タイカンハクシャセイショウ」の称呼が生じるが,「大観」の文字部分は,控訴人標章1の上方左端に,「白砂青松」の部分は,「大観」の文字部分よりも大きな文字で控訴人標章1の上方中央にそれぞれ表示され,「大観」の文字部分は「白砂青松」の文字部分よりもやや上方に位置していること,「大観」の文字部分を構成する文字と「白砂青松」の文字部分を構成する文字は,字体が異なり,文字の間隔は「白砂青松」の文字部分の方が広いことに照らすと,「大観」の文字部分と「白砂青松」の文字部分は,明瞭に区別して認識することができるから,分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているものとは認められない。
そして,「白砂青松」の文字部分は,控訴人標章1の上方中央に毛筆体の大きな文字で表示され,「白砂青松」の文字部分から「ハクサセイショウ」又は「ハクシャセイショウ」の称呼が自然に生じること,「白砂青松」の文字部分の下方に表示された図形部分は,需要者の多くによって「白砂青松」の文字部分から連想,想起させる風景を描いたものと認識されることからすると,控訴人標章1が原告商標の指定商品である日本酒に使用された場合には,控訴人標章1の構成中の「白砂青松」の文字部分は,取引者,需要者に対し,被告商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。
以上によれば,控訴人標章1から「白砂青松」の文字部分を要部として抽出し,これと原告商標とを比較して商標そのものの類否を判断することも,許されるというべきである。
(イ)

これに対し控訴人は,①控訴人標章1は,被告商品の瓶のラベルに
使用されているところ,需要者が店頭で日本酒を購入する場合,日本酒の瓶のラベルにどのような絵柄や文字が記載されているかを確認して商品を識別するから,ラベルに表示されている文字や絵柄は,全体として自他商品識別機能を有しており,しかも,被告商品の瓶のラベルに占める上記絵画部分は,非常に大きいこと,②「大観

白砂青松」の文字部

分は,横山大観の自筆のものであり,この文字部分から,通常,横山大観が描いた「白砂青松」という作品名の絵画を連想させるところ,絵画部分は横山大観作の「白砂青松」という作品名の絵画であることからすれば,上記文字部分と上記絵画部分は,分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているといえるから,控訴人標章1から「白砂青松」の文字部分を抽出し,これと原告商標とを比較して商標そのものの類否を判断することは許されない旨主張する。
しかしながら,控訴人標章1を構成する図形部分と「大観」の文字部分及び「白砂青松」の文字部分とを明瞭に区別して認識することができることは,前記(ア)認定のとおりである。
また,上記①の点については,日本酒を購入する場合,瓶のラベルにどのような絵柄や文字が記載されているかを確認することがあるからといって,一般に,ラベルに表示されている文字や絵柄が全体としてのみ自他商品識別機能を有しているということはできない。
さらに,上記②の点については,仮に控訴人標章1の「大観」の文字部分及び「白砂青松」の文字部分が横山大観の自筆のものであったとしても,そのことが需要者である一般の消費者の間に広く認識されるに至っているものと認めるに足りる証拠はない。また,前記(ア)認定のとおり,需要者の多くは,控訴人標章1の図形部分から,その図形部分の風景画が横山大観作の「白砂青松」という作品名の絵画であると認識するものと認めることはできない。

したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
(ウ)

次に,控訴人は,「大観」の文字には,横山大観という人物を表す
意味があること,「白砂青松」の文字には,横山大観が描いた絵画の作品名としての意味があることに照らすと,上記各文字を並べた「大観白砂青松」の文字部分は,横山大観が描いた「白砂青松」という作品名の絵画という意味となり,「大観」の文字部分と「白砂青松」の文字部分は,分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているといえるから,控訴人標章1から「白砂青松」の文字部分を抽出し,これと原告商標とを比較して商標そのものの類否を判断することは許されない旨主張する。
しかしながら,控訴人標章1を構成する「大観」の文字部分と「白砂青松」の文字部分とを明瞭に区別して認識することができることは,前記(ア)認定のとおりである。
また,前記(ア)認定のとおり,需要者の多くは,控訴人標章1の図形部分から,その図形部分の風景画が横山大観作の「白砂青松」という作品名の絵画であると認識するものと認めることはできない。
したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。

原告商標と控訴人標章1の要部である「白砂青松」の文字部分を対比すると,原告商標は,「白砂青松」の標準文字からなるのに対し,控訴人標章1の「白砂青松」の文字部分は,毛筆体の「白砂青松」の文字からなり,字体は異なるが,構成する文字は同一であるあることから,外観において類似するものと認められる。また,原告商標と控訴人標章1の「白砂青松」の文字部分は,いずれも「ハクサセイショウ」又は「ハクシャセイショウ」の称呼が生じる点及び「白い砂と青い松」という観念が生じ,海岸などの美しい風景を連想,想起させる点において同一である。
したがって,原告商標と控訴人標章1の要部である「白砂青松」の文字
部分は,称呼及び観念が同一であり,外観は,同一ではないが,類似するものといえる。
そうすると,原告商標及び控訴人標章1が原告商標の指定商品である日本酒に使用された場合には,その商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるものといえるから,控訴人標章1は全体として原告商標に類似する商標であるものと認められる。
(2)原告商標と控訴人標章2の類否について
控訴人標章2は,別紙控訴人標章目録記載2のとおり,図形部分と,その上方に毛筆体で横書きした「大観」の文字部分及び「白砂青松」の文字部分とからなる結合商標である。控訴人標章2は,「大観」の文字部分と「白砂青松」の文字部分が並んで表示され,両文字部分の間には1文字分の間隔があるが,それ以外の構成は,控訴人標章1とほぼ同一である。
したがって,前記(1)イで説示したのと同様の理由により,控訴人標章2から「白砂青松」の文字部分を要部として抽出し,これと原告商標とを比較して商標そのものの類否を判断することも,許されるというべきである。そして,前記(1)ウで説示したのと同様の理由により,原告商標と控訴人標章2の要部である「白砂青松」の文字部分は,称呼及び観念が同一であり,外観は,同一ではないが,類似することからすると,原告商標及び控訴人標章2が原告商標の指定商品である日本酒に使用された場合には,その商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるものといえるから,控訴人標章2は全体として原告商標に類似する商標であるものと認められる。(3)原告商標と控訴人標章3の類否について
ア(ア)

控訴人標章3は,別紙控訴人標章目録記載3のとおり,毛筆体で横
書きした「大観」の文字部分と「白砂青松」の文字部分とからなる結合商標である。
「大観」の文字部分は,控訴人標章3の左端に,「白砂青松」の文字
部分は,控訴人標章3の中央にそれぞれ表示されていること,「大観」の文字部分と「白砂青松」の文字部分との間には1文字分の間隔があること,「大観」の文字部分を構成する文字と「白砂青松」の文字部分を構成する文字は,字体が異なり,文字の間隔は「白砂青松」の文字部分の方が広いことに照らすと,「大観」の文字部分と「白砂青松」の文字部分は,明瞭に区別して認識することができるから,分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているものとは認められない。
そして,「白砂青松」の文字部分は,控訴人標章3の中央の目立つ位置に表示され,「白砂青松」の文字部分から「ハクサセイショウ」又は「ハクシャセイショウ」の称呼が自然に生じることからすると,控訴人標章3が原告商標の指定商品である日本酒に使用された場合には,控訴人標章3の構成中の「白砂青松」の文字部分は,取引者,需要者に対し,被告商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。
以上によれば,控訴人標章3から「白砂青松」の文字部分を要部として抽出し,これと原告商標とを比較して商標そのものの類否を判断することも,許されるというべきである。
(イ)

これに対し控訴人は,「大観」の文字には,横山大観という人物を
表す意味があること,「白砂青松」の文字には,横山大観が描いた絵画の作品名としての意味があることに照らすと,上記各文字を並べた「大観
白砂青松」の文字部分は,横山大観が描いた「白砂青松」という

作品名の絵画という意味となり,「大観」の文字部分と「白砂青松」の文字部分は,分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているといえるから,控訴人標章3から「白砂青松」の文字部分を抽出し,これと原告商標とを比較して商標そのものの類否を判
断することは許されない旨主張する。
しかしながら,前記(1)イ(ウ)で説示したとおり,控訴人の上記主張は採用することができない。

前記(1)ウで説示したのと同様の理由により,原告商標と控訴人標章3の要部である「白砂青松」の文字部分は,称呼及び観念が同一であり,外観は,同一ではないが,類似することからすると,原告商標及び控訴人標章3が原告商標の指定商品である日本酒に使用された場合には,その商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるものといえるから,控訴人標章3は全体として原告商標に類似する商標であるものと認められる。
(4)原告商標と控訴人標章4の類否について
ア(ア)

控訴人標章4は,別紙控訴人標章目録記載4のとおり,毛筆体で縦
書きした「大観」の文字部分と「白砂青松」の文字部分とからなる結合商標である。
「大観」の文字部分は,控訴人標章4の上方右端に表示され,「白砂青松」の文字部分は,「大観」の文字部分よりもかなり大きな文字で控訴人標章4の中央に表示されていること,「大観」の文字部分を構成する文字と「白砂青松」の文字部分を構成する文字は,字体が異なることに照らすと,「大観」の文字部分と「白砂青松」の文字部分は,明瞭に区別して認識することができるから,分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているものとは認められない。そして,「白砂青松」の文字部分は,控訴人標章4の中央の目立つ位置に「大観」の文字部分よりもかなり大きな文字で表示され,「白砂青松」の文字部分から「ハクサセイショウ」又は「ハクシャセイショウ」の称呼が自然に生じることからすると,控訴人標章4が原告商標の指定商品である日本酒に使用された場合には,控訴人標章4の構成中の「白砂青松」の文字部分は,取引者,需要者に対し,被告商品の出所識別標
識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。
以上によれば,控訴人標章4から「白砂青松」の文字部分を要部として抽出し,これと原告商標とを比較して商標そのものの類否を判断することも,許されるというべきである。
(イ)

これに対し控訴人は,「大観」の文字には,横山大観という人物を
表す意味があること,「白砂青松」の文字には,横山大観が描いた絵画の作品名としての意味があることに照らすと,上記各文字を並べた「大観
白砂青松」の文字部分は,横山大観が描いた「白砂青松」という

作品名の絵画という意味となり,「大観」の文字部分と「白砂青松」の文字部分は,分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているといえるから,控訴人標章4から「白砂青松」の文字部分を抽出し,これと原告商標とを比較して商標そのものの類否を判断することは許されない旨主張する。
しかしながら,前記(1)イ(ウ)で説示したとおり,控訴人の上記主張は採用することができない。

前記(1)ウで説示したのと同様の理由により,原告商標と控訴人標章4の要部である「白砂青松」の文字部分は,称呼及び観念が同一であり,また,横書きと縦書きの違い及び字体の違いがあるが,構成する文字が「白砂青松」の漢字4文字である点で共通することから,外観は,類似するといえる。
そうすると,原告商標及び控訴人標章4が原告商標の指定商品である日本酒に使用された場合には,その商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるものといえるから,控訴人標章4は全体として原告商標に類似する商標であるものと認められる。

(5)

小括
以上のとおり,控訴人各標章はいずれも原告商標に類似する商標であるも
のと認められる。
3
争点2(先使用権の有無)について
以下のとおり訂正するほか,原判決13頁25行目から15頁13行目まで
に記載のとおりであるから,これを引用する。
原判決13頁25行目,末行,14頁6行目,15行目,21行目,23行目,15頁1行目から2行目にかけて,7行目及び9行目の各「被告標章」をそれぞれ「控訴人各標章」と改める。
4
争点3(権利濫用の抗弁の成否)について
以下のとおり訂正するほか,原判決15頁15行目から16頁4行目までに
記載のとおりであるから,これを引用する。
原判決15頁15行目,19行目及び16頁1行目の各「被告標章」をそれぞれ「控訴人各標章」と改める。
5
結論
以上によれば,控訴人による控訴人各標章をラベル又は木箱に付した被告商
品の販売行為等は,被控訴人の本件商標権の侵害に該当するものと認められる。したがって,被控訴人の当審における請求は,いずれも理由があるから,認容することとし,主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第4部

裁判長裁判官

大鷹一郎
裁判官

古河謙一
裁判官

関根澄子
(別紙)

控訴人標章目録

12
4下記のうち,線で囲んだ部分

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