判例検索β > 平成30年(ワ)第22646号
不正競争防止法に基づく差止・損害賠償請求事件 不正競争 民事訴訟
事件番号平成30(ワ)22646
事件名不正競争防止法に基づく差止・損害賠償請求事件
裁判年月日平成30年12月20日
法廷名東京地方裁判所
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平成30年12月20日判決言渡
平成30年(ワ)第22646号
口頭弁論終結日

同日原本領収

裁判所書記官

不正競争防止法に基づく差止・損害賠償請求事件

平成30年9月13日
判決原告
株式会社北里コーポレーション

同訴訟代理人弁護士

被日
株式会社リプロライフ


同訴訟代理人弁護士

松主人
訴訟費用は原告の負担とする。
事1賢男
原告の請求をいずれも棄却する。

2
第1

本修文1野実及び理由
請求
被告は,ガラス化凍結保存容器及びそれと共に用いる凍結液,融解液並びにそれらの広告若しくは取引に用いる書類及びウェブサイトその他の宣伝広告媒体において,「解凍後100%生存」,「100%survival」,「100%Post-warmS
urvival」,「achieving100%,literally100%,survival」及び「凍結卵を解凍した後の生存率100%を達成できる」旨の表示をしてはならない。2
被告は,インターネット上のアドレス「http://

以下省略」において開設

するウェブサイトから,別紙表示目録記載1及び2の各表示のうち「解凍後100%生存」と記載された部分を抹消せよ。

3
被告は,インターネット上のアドレス「http://以下省略」において開設
するウェブサイトから,別紙表示目録記載3ないし5の各表示のうち「生存率100%」と記載された部分,同目録記載6の表示のうち「100%の高い生存率」と記載された部分をそれぞれ抹消せよ。
4
被告は,インターネット上のアドレス「http://

以下省略」において開設

するウェブサイトから,別紙表示目録記載7の表示のうち「100%survivalvi
trification!」と記載された部分,同目録記載8の表示全部,同目録記載9の表示のうち「100%post-warmsurvivalrates」と記載された部分及び同目録記載10の表示のうち「100%survival」と記載された部分をそれぞれ抹消せよ。
5
被告は,インターネット上のアドレス「http://

以下省略」において開設

するウェブサイトから,別紙表示目録記載11の表示のうち「100%SURVIVAL」と記載された部分及び同目録記載12の表示のうち「achieving100%,literally100%,survival」と記載された部分をそれぞれ抹消せよ。6
被告は,ガラス化凍結保存容器及びそれと共に用いる凍結液,融解液並びにそれらの広告宣伝物から,別紙表示目録記載11の表示のうち「100%SURVIVA
L」と記載された部分,同目録記載12の表示のうち「achieving100%,literally100%,survival」と記載された部分,同目録記載13の表示のうち「100%survival」と記載された部分及び同目録記載14の表示のうち「100%SURVIVAL」と記載された部分をそれぞれ抹消せよ。
7
被告は,原告に対し,7591万7834円及びこれに対する平成30年7月26日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2

事案の概要
本件は,卵子等のガラス化凍結保存・加温融解に用いる医療関連器具を販売
する原告が,同種の医療関連器具を販売する被告の管理に係るウェブサイト又は被告の作成に係るカタログに表示されている別紙表示目録記載1ないし14の各表示(以下,各表示をそれぞれ「本件表示1」などといい,これらを総称して「本件各表示」という。)のうち「解凍後100%生存」,「生存率100%」,「100%の高い生存率」,「100%survivalvitrification!」,「100%postwarmsurvivalrates」,「100%survival」(大文字により表記されたものを含む。)及び「achieving100%,literally100%,survival」と記載された各
部分並びに本件表示8の表示全部(以下,これらを併せて「本件記載部分」という。)は被告が販売する製品の品質及び内容(以下「品質等」という。)を誤認させるような表示であって,不正競争防止法(以下「法」という。)2条1項14号の不正競争行為に当たり,それによって原告が営業上の利益を侵害されたと主張して,被告に対し,法3条1項に基づき上記表示の差止めと抹消
を求めるとともに,法4条及び5条2項に基づき損害賠償金7591万7834円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成30年7月26日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
1
前提事実(後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)⑴

当事者

原告は,医薬品,医療用具及び医薬部外品等の製造及び販売等を目的とする株式会社である(甲1)。


被告は,医療関連,実験関連器具,機材及び溶液の製造及び販売等を目的とする株式会社である(甲2)。

ガラス化凍結保存・加温融解に用いる医療関連器具の販売

原告は,「Cryotop(クライオトップ)」の名称でガラス化凍結保存に用いる容器,凍結液及び融解液(以下,これらを総称して「原告製品」という。)を販売している(甲19)。


被告は,「Cryotec(クライオテック)」の名称でガラス化凍結保存に用いる容器,凍結液及び加温液(以下,これらを総称して「被告製品」という。)を販売している(甲20の1,2)。ウ
なお,ガラス化凍結(vitrification)とは,不妊治療において採卵した卵子を凍結するに当たり,高濃度の凍結抑制剤を利用して細胞内の水分を相当部分除去して,これを液体窒素にすぐに浸す超急速凍結法であり,細胞の90%を占める水分がその凍結過程で鋭い結晶を形成して細胞を損
傷することを防ぐことができる。「ガラス化」とは,凍結過程で細胞内の水分と凍結抑制剤が結晶を形成しないガラスのようになる現象を指している。(甲3の1)
被告管理のウェブサイト(URLアドレス「http://
以下省略」。以下

「被告サイト1」という。)における表示

被告サイト1の「ヒストリー」のウェブページ(URLアドレス

「http://

以下省略」。甲11)には,平成27年(2015年)頃から,

本件表示1及び2が記載されている(弁論の全趣旨)。

被告サイト1の「製品紹介」のウェブページ(URLアドレス

「http://

以下省略」。甲28)には,平成27年(2015年)頃から,

本件表示3ないし6が記載されている(弁論の全趣旨)。
被告管理のウェブサイト(URLアドレス「http://

以下省略」。以下

「被告サイト2」という。)における表示

被告サイト2の「HOME」のウェブページ(上記URLアドレス。甲12)には,平成25年(2013年)頃から,本件表示7ないし10が記載されている(弁論の全趣旨)。なお,上記各表示の日本語訳は,次のとおりである。
本件表示7「クライオテックは生存率100%のガラス化凍結によって確かな幸福を創造します!」

本件表示8「加温融解後の生存率100%」
本件表示9「A博士のオリジナルのガラス化凍結/加温融解手順を厳密に守ることにより,だれでもヒト卵子及び胚について加温融解後100%の生存率を得ることができます。それは“クライオテック法”と呼ばれています。」
本件表示10「100%の生存が証明された溶液のみが提供されます。」


被告サイト2の「What'sCryotech」のウェブページ(URLアドレス
「http://

以下省略」。甲13)には,平成25年(2013年)頃から,

本件表示11及び12が記載されている(弁論の全趣旨)。なお,上記各表示の日本語訳は,次のとおりである。
本件表示11「ようこそ“100%生存クラブ”へ!」

本件表示12「クライオテック法の詳細な手順を厳密に遵守することにより,医療エンブリオロジストは,正常な卵子及び胚の100%生存,文字どおり100%を達成することが保証されます。」
被告作成のカタログ「SUPER-VITRIFICATION」(以下「被告カタログ」という。)における表示
被告カタログには,平成26年(2014年)6月頃から,以下のとおり,本件表示11ないし14が記載されている(甲20の1,35の1,35の2,弁論の全趣旨)。

被告カタログの表紙下段には,本件表示13が記載されており,その日本語訳は,「超・ガラス化凍結」「100%生存のガラス化凍結で確かな
幸せを創造する!」である。

被告カタログの見開き左頁の左下欄の表題には,本件表示11が記載されている。


被告カタログの見開き左頁の左下欄の下段には,本件表示12が記載されている。


被告カタログの見開き右頁の左下欄の表題には,本件表示14が記載されており,その日本語訳は,「クライオテックの強み;“なぜ100%生存?”」である。
2
争点


本件記載部分は被告製品の品質等について誤認させるような表示か原告は営業上の利益を侵害され,又は侵害されるおそれがあるか

被告の故意又は過失の存否
原告の損害の有無及びその額
3
争点についての当事者の主張


本件記載部分は被告製品の品質等について誤認させるような表示か(争点⑴)

【原告の主張】

医療機器を使用するに当たって使用手順を厳格に遵守することは当然の前提であるから,本件各表示は,被告製品を使用する医療関係者にとって,使用手順を厳密に遵守して被告製品を用いて卵子を凍結保存し融解すると,
100%の生存率を達成することができる旨を表示したものといえる。これに対し,被告は,本件各表示が被告製品の品質等について表示したものではなく,卵子凍結保存の技法であるクライオテック法について言及したものにすぎない旨主張するが,本件各表示が記載されたウェブページやカタログを見てもクライオテック法がいかなるものか説明されておらず,
かえって,以下のとおり,生存率が100%である旨を表示して被告製品を販売しているのであるから,本件各表示が被告製品の品質等について記載されたものであることは明らかである。
本件表示3ないし6が記載されている被告サイト1のウェブページ(甲28)は被告製品を紹介するページであり,例えば,本件表示5は,
被告製品の特徴として記載されている。そして,本件表示1及び2が記載されている被告サイト1のウェブページ(甲11)は,本件表示3ないし6が記載されているウェブページと相互にリンクされて一体として被告サイト1を構成している。
したがって,本件表示1ないし6は,いずれも同ページで紹介されている被告製品の品質等について表示したものである。
本件表示7ないし10が記載されている被告サイト2のウェブページ
(甲12)には,被告製品の容器や溶液を使用することによって凍結保存して融解した卵子の生存率が100%になる旨の記載がされている。また,同ページと本件表示11及び12が記載されている被告サイト2のウェブページ(甲13)は,被告製品を紹介するウェブページと相互にリンクされており,一体として被告サイト2を構成している。

したがって,本件表示7ないし12は,同ページで紹介されている被告製品の品質等について表示したものである。
被告カタログ(甲35の1)は,その裏表紙に記載された被告製品の宣伝を目的としたものであるから,被告カタログに記載された本件表示11ないし14は,被告製品の品質等について表示したものである。

しかしながら,

各研究報告によれば,被告製品を用い

て卵子を凍結保存し融解するに当たり,クライオテック法の手順を厳密に遵守したとしても100%の生存率を達成することはできないから,本件各表示のうち本件記載部分は,需要者である医療関係者をして被告製品の品質等を誤認させるおそれがあるというべきである。
平成25年(2013年)7月に開催されたヨーロッパ生殖医学会の年次会議における「ヒト卵子の凍結保存のための二つの異なるガラス化法の比較」と題する研究報告(甲14,15。以下「研究報告1」という。)

平成26年7月1日発行の「日本生殖医学会雑誌」に掲載された「ヒト未受精卵凍結の検討-cryotopとcryotechとの使用経験-」と題する研究報告(甲16。以下「研究報告2」という。)平成27年(2015年)10月30日及び同年11月1日に開催された「生殖医療と婦人科内視鏡検査法の南アフリカ学会」の講演会における「Cryotecガラス化法実施に伴う卵子細胞及び胚盤胞の生存率」と題する研究報告(甲17。以下「研究報告3」という。)

「VitrificationinAssistedReproduction(訳:生殖補助医療におけるガラス化凍結)」の「3VitrificationofOocytes:GeneralConsiderations(訳:第3章

卵子の凍結にかかる一般的考察)」にお

ける「OurExperiencewithOocyteVitrification(訳:卵子のガラス化凍結の経験)」と題する研究報告(甲26。以下「研究報告4」とい
う。)
平成28年9月に開催された第34回日本受精着床学会の総会・学術講演会における「TheCryotecmethod:生存率100%を可能とする新戦略」と題する研究報告(甲33。以下「研究報告5」という。)
【被告の主張】

本件各表示は,その記載自体や本件各表示が記載されているウェブページやカタログの記載全体を読めば明らかなように,卵子を凍結保存し融解する技法であるクライオテック法について,専用の器具等を用いて正しい手順に従って実践した場合に臨床結果として100%の生存率を達成する
ことができる旨を言及したものであって,被告製品の品質等について記載したものでもなければ,手順を厳密に遵守したか否かを問わず常に100%の生存率が得られるなどと記載したものでもない。
被告製品の需要者は一般消費者ではなく,専門的知識を十分有する医療関係者や学者研究者であるから,そのような需要者が,これらの記載を見
て,手順を厳密に遵守したか否かを問わず常に100%の生存率が得られる旨が表示されていると誤認するおそれはない。イ

そして,国内外の学会や専門書(乙4ないし8)において,クライオテック法の手順を遵守して100%の生存率が得られたとの報告が数多く発表されているから,本件各表示の内容は真実であって,何ら誤認させるようなものではない。


原告が指摘する研究報告1ないし5は,古い時代のものであって今日において有意なデータとはいえないものか,個人クリニックのデータや個人的な見解であって学術性や客観性に欠けるものである。
原告は営業上の利益を侵害され,又は侵害されるおそれがあるか(争点)

【原告の主張】

原告製品と被告製品はいずれもガラス化凍結保存に用いる容器,凍結液及び融解液であり,競合する商品である。
被告は,原告製品が被告製品で代替することができない旨主張するが,学会等の報告において原告製品を用いた臨床結果と被告製品を用いた臨床結果とが比較されており,原告製品が被告製品と代替可能であることを示
している。

そして,卵子を凍結保存する医療機器にとって,解凍した卵子の生存率はその品質等を示す最も重要な基準であり,同機器の需要者が商品を選択する最も重要な基準として機能するものであるから,被告製品を用いて卵
子を凍結保存し融解すると100%の生存率を達成することができると誤認させる表示は,被告製品と競合する原告製品を販売する原告の営業に重大な影響を及ぼし,その営業上の利益を損なうものである。
【被告の主張】
被告は,被告代表者において,学会発表やセミナーを実施するなどしてク
ライオテック法による正しい卵子凍結技術の普及に努めており,原則として,これらの学会やセミナーを受講し,正しい技術を実践し得る医療機関に対してのみ,被告製品を販売する仕組みをとっている。これに対し,原告は,そのような学会発表やセミナーを実施したことはないし,そもそも,被告製品はクライオテック法を実践する専用の医療キットであって,厳密な意味では,原告製品で代替することができない。したがって,原告製品は,被告製品と同様の需要者に対し,同様の販売態
様で販売されている競合商品とはいえない。
被告の
【原告の主張】
被告代表者は,学会の講演において被告製品を用いて卵子を凍結保存し融解した場合に100%の生存率を得られないことを自認しており,本件記載部分が被告製品の品質等につき誤認させるような表示に当たり原告の営業上の利益を侵害することにつき,故意又は過失があった。
【被告の主張】
否認ないし争う。学会における被告代表者の講演は,クライオテック法の
手順を遵守した場合に100%の生存率を得られることを述べたものである。原告の
【原告の主張】

法5条2項による損害金

6901万6213円

被告製品を用いたガラス化凍結保存の方法による出生実績は過去12年間で34万人であるところ,被告製品の販売実績は増加傾向にあると思料されるから,直近3年間における被告製品の販売実績は,年平均2万8333件を下回らない。
また,被告製品の販売価格は1キット当たり7733円であり,その利益率は70%を下回らないと見込まれる。

そうすると,被告が過去3年間に被告製品の販売により得た利益の額は,次の計算式のとおり,4億6010万8086円となる。(計算式)7,733×28,333×0.7×3=460,108,086そして,本件各表示が被告製品の販売に寄与した割合は,15%を下回らないと見込まれるから,法5条2項による損害金の額は,次の計算式のとおり,6901万6213円となる。
(計算式)460,108,086×0.15=69,016,213

弁護士費用

690万1621円

ただし,前記アの損害金の10%相当額
【被告の主張】
法5条2項による損害金及び弁護士費用のいずれについても,否認ないし争う。

第3
1
当裁判所の判断
本件記載部分は被告製品の品質等について誤認させるような表示か(争点⑴)について
本件記載部分を含む本件各表示は,被告製品の需要者である医療関係者や
研究者において,使用手順を厳密に遵守して被告製品を用いて卵子を凍結保存し融解すると100%の生存率を達成することができると理解される表示であると認められる(弁論の全趣旨)ところ,原告は,研究報告1ないし5等を論拠にして,手順を厳密に遵守して被告製品を用いて卵子を凍結保存し融解したとしても100%の生存率を達成することはできない旨主張する。そこで,以下,これらの研究報告等について,順次検討する。

研究報告1について

ロタンダ・ヒト生殖センター(ムンバイ・インド)等の担当者らは,研究報告1において,平成22年(2010年)10月から平成24年(2012年)8月までの間に成熟卵子をクライオトップ法又はクライオテッ
ク法により凍結して融解した症例の生存率について,前者の方法では95.1%(336個中319個),後者の方法では97.1%(275個中267個)であったと報告している(甲14の1ないし3,15の1,2)。イ
しかしながら,研究報告1の対象期間は前記のとおりであるところ,被告が被告製品を用いて卵子・受精卵を凍結保存する手法を完成させたのは平成24年(2012年)であると認められる(甲11,28,33の1,弁論の全趣旨)から,クライオテック法により実施した症例には,その完
成前に実施されたものも含まれていた可能性がある。その上,当時前記センターの院長であったB氏は,その書簡(乙12の1,2)において,同年5月にクライオテック法により実施された症例について,同年1月に前記センターのチームに加入した胚培養士が担当し,卵子を粗悪に取り扱ったために結果が芳しくなく,生存率を引き下げたと説明している(なお,
原告は,この書簡について,作成日付が記載されていないことや,被告代表者の依頼に応じて,現在閉院となっている上記センターの研究室長の肩書で作成されたものであることから,成立の真正と信用性を争う旨主張するが,これらは成立の真正を左右する事情には当たらず,また,信用性を減殺すべき事情とも認められない。)。


そうすると,クライオテック法により実施した症例の生存率が100%にならなかったのは,クライオテック法が完成される前に実施された症例が含まれていたことや担当した胚培養士の技量が未熟であったことが原因であった可能性があるから,研究報告1によっては,手順を厳密に遵守して被告製品を用いて卵子を凍結保存し融解したとしても100%の生存率
を達成することができないとは認めるに足りない。
研究報告2について

セントマザー産婦人科医院の医師らは,研究報告2において,未受精卵を原告製品又は被告製品を使用して凍結した症例の蘇生率について,前者
の場合には70%(10個中7個),後者の場合には53.9%(13個中7個)であったと報告している(甲16の1ないし3,弁論の全趣旨)。イ
しかしながら,研究報告2において,被告製品について,操作に慣れていないこともあり胚が見えづらかったという欠点が指摘されていることからすると,被告製品を使用した症例には,担当した医師らが使用手順を遵守しなかったものも含まれている可能性があるから,研究報告2によっては,手順を厳密に遵守して被告製品を用いて卵子を凍結保存し融解したと
しても100%の生存率を達成することができないとは認めるに足りない。研究報告3について

VITALAB生殖補助センター(ヨハネスブルク・南アフリカ)の担当者らは,研究報告3において,平成26年(2014年)9月から平成27年(2015年)5月までの間にクライオテック法により凍結保存し
て融解した940個の卵子の生存率について,月ごとの生存率が63ないし100%であり,平均生存率が83.8%であったと報告している(甲17の1ないし4)。

しかしながら,研究報告3が,より最近の月における生存率が顕著にそれ以前の月よりも高くなっており,これはこの技術を用いた技師の経験が
有益であることを示唆している旨考察していることからすると,担当技師が被告製品を使用する経験を重ねて手順を遵守することにより,遅くとも前記期間の最終月までには,生存率が100%に至っていたことがうかがわれるから,研究報告3によっては,手順を厳密に遵守して被告製品を用いて卵子を凍結保存し融解したとしても100%の生存率を達成すること
ができないとは認めるに足りない。
研究報告4について

前記ロタンダ・ヒト生殖センターの担当者らは,研究報告4において,平成23年(2011年)1月から同年12月までの間にクライオテック
法により凍結して融解した544個の卵子の生存率について,94.5%であったと報告している(甲26の1ないし3)。イ
子・受精卵を凍結保存する手法を完成させたのは平成24年(2012年)であり,研究報告4はその完成前に実施された症例を対象としたものということになるから,研究報告4によっては,手順を厳密に遵守して被告製品を用いて卵子を凍結保存し融解したとしても100%の生存率を達
成することができないとは認めるに足りない。
研究報告5について

被告代表者のAは,研究報告5において,クライオテック法について,平成24年(2012年)に一般患者由来の胚はもちろん,未成熟卵子や成熟卵子でも,また,がん患者や高齢患者由来の低グレードの卵子や胚で
あっても解凍後の生存率がほぼ100%となる極めて有効で安全な非侵襲的ガラス化法として完成した旨報告している(甲33の1,2)。イ
しかしながら,研究報告5の内容を子細に見ても,上記生存率がどのような症例を対象としたものか説明されておらず,手順を厳密に遵守して実施した症例のみを対象としたものか明らかでないから,研究報告5によっ
ては,手順を厳密に遵守して被告製品を用いて卵子を凍結保存し融解したとしても100%の生存率を達成することができないとは認めるに足りない。
その他

原告代表者は,陳述書(甲18)において,卵子の凍結保存と融解は卵子に対してマイナス196度からプラス37度までの温度変化を与えるものであることから,生存率が100%になることはあり得ない旨陳述している。
しかし,

研究報告1ないし5はこの

陳述を裏付けるものではなく,他にこの陳述を裏付ける的確な証拠はないから,これを採用することはできない。イ

また,原告は,クライオテック法の技術講習会の受講者らが,同講習会において正しい手順を習得し,卵子の生存率が100%であった旨記載した書面(乙20ないし25)について,いずれも信用性がなく,被告がそのような信用性のない書証を提出すること自体,原告の主張を裏付けるものである旨主張する。

しかし,手順を厳密に遵守して被告製品を用いて卵子を凍結保存し融解したとしても100%の生存率を達成することができないと認められるか否かは,客観的な証拠から判断されるべき事柄であるから,原告の上記主張はおよそ合理的とはいえず,採用することはできない。
小括

以上によれば,研究報告1ないし5によっては,手順を厳密に遵守して被告製品を用いて卵子を凍結保存し融解したとしても100%の生存率を達成することができないとは認めるに足りず,他にこれを認めるに足りる証拠もないから,被告から提出された証拠(乙4ないし10)の内容も考慮すれば,本件記載部分を含む本件各表示が被告製品の需要者である医療関係者や研究
者をしてその品質等を誤認させるおそれがあるとは認めるに足りない(なお,本件記載部分の表現については,紛争予防の観点から,研究報告1ないし5の内容も踏まえ,より慎重に検討することが望まれる。)。
2
結論
よって,争点

について判断するまでもなく,原告の本件請求はい

ずれも理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。東京地方裁判所民事第47部

裁判長裁判官

沖中康人
裁判官

横山真通
裁判官

髙櫻慎

(別紙)
表示目録

1
「ついに解凍後100%生存の画期的な凍結手法「TheCryotecMethod」の開発に成功!」(別紙1の黄色マーカー①部分)

2
「2012年、ついに解凍後100%生存の画期的な凍結手法の開発に成功。」(別紙1の黄色マーカー②部分)

3
「生存率100%を実現、クライオテックの凍結保存」(別紙2の黄色マーカー③部分)

4
「融解後の生存率100%と臨床成績の向上」(別紙2の黄色マーカー④部分)
5
「胚盤胞、分割胚そして卵子の生存率が100%になります。」(別紙2の黄色マーカー⑤部分)

6
「卵子と胚で同一のプロトコールで100%の高い生存率が得られます。」(別紙2の黄色マーカー⑥部分)

7
「CryotechCreatesureHappinessby100%survivalvitrification!」(別紙3の黄色マーカー⑦部分)

8
「100%Post-warmSurvival」(別紙3の黄色マーカー⑧部分)
9
「Anyonecanobtain100%post-warmsurvivalratesforhumanoocytesandembryosbystrictlykeepingDr.A'soriginalvitrification/warming
protocol.Itiscalled“theCryotecmethod”.」(別紙3の黄色マーカー⑨部分)
10

「Only100%survivalprovedsolutionsareprovided.」(別紙3の黄色
マーカー⑩部分)
11
「WELCOMETO“THE100%SURVIVALCLUB”!」(別紙4及び別紙5の各黄色
マーカー⑪部分)
12

「BystrictadherencetospecificdetailsofTheCryotecMethod,theclinicalembryologistisassuredofachieving100%,literally100%,survivalofnormaloocytesandembryos.」(別紙4及び別紙5の各黄色マーカー⑫部分)
13
「SUPER-VITRIFICATION」「CreatesureHappinessby100%survival
vitrification!」(別紙5の黄色マーカー⑬部分)14

「CRYOTECHADVANTAGE;"WHY100%SURVIVAL?"」(別紙5の黄色マーカー
⑭部分)

(別紙1ないし5

添付省略)

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