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営利略取、逮捕監禁
事件番号平成30(わ)231
事件名営利略取,逮捕監禁
裁判年月日平成30年12月20日
法廷名静岡地方裁判所  浜松支部
裁判日:西暦2018-12-20
情報公開日2019-01-17 12:00:06
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平成30年12月20日宣告
平成30年(わ)第231号
主文
被告人を懲役4年に処する
未決勾留日数中120日をその刑に算入する。

理由
【罪となるべき事実】
被告人は,A及びB(平成30年6月15日死亡)と共謀の上,被害者(当時29歳)を営利の目的で略取し,逮捕監禁しようと考え,平成30年5月26日午後6時21分頃,浜松市a区b町c番d号パチンコ店C北側駐車場において,被害者が同所に駐車中の普通乗用自動車の運転席に乗車するや被告人及びAがそれぞれ同車の運転席及び助手席から乗り込み,被害者を押さえ込むなどの暴行を加え,被害者を被告人らの支配下に置くとともに逮捕し,同日午後6時22分頃,同車を発進させ,その頃から同月27日午前4時20分頃までの間,同所から静岡県掛川市,静岡市等
を経て浜松市a区ef丁目g番h号Dビル東側路上まで走行させ,その間,被害者の身体を押さえ込み,あるいは被害者の両上肢を結束バンドで縛るなどし,被害者を同車から脱出することが著しく困難な状態に置き,もって被害者を営利の目的で略取するとともに不法に逮捕監禁した。
【証拠の標目】
省略
【法令の適用】


営利略取の点
逮捕監禁の点

刑法60条,225条
包括して刑法60条,220条

科刑上の一罪の処理

刑法54条1項前段,10条(1個の行為が2個の罪名に
触れる場合であるから,1罪として重い営利略取罪の刑で
処断)
未決勾留日数の算入

刑法21条

訴訟費用の不負担

刑事訴訟法181条1項ただし書

【量刑の理由】
本件は,被告人が,B及びAと共謀の上,営利の目的で,平成30年5月26日の夕刻,駐車場において,自動車に乗り込んだ被害者を車ごと連れ去り,約10時間にわたり車中で監禁したという営利略取逮捕監禁の事案である。被告人は,同年6月8日,別件で警察官から取調べを受けた際,自ら進んで本件犯行を打ち明け,Aは,同月11日,自ら警察署に出頭したが,Bは,同月15日,捜査機関に逮捕される前
に死亡した。なお,被害者は,同月9日,山中から遺体で発見されたが,被害者死亡の事実は本件の訴因には含まれていない。
以上を前提に,以下,本件の量刑要素について検討する。
まず,犯行全体の悪質性についてみると,本件は,インターネットの匿名掲示板におけるBの呼びかけに応じ,それまで見ず知らずであった被告人らが集まり,互いに
偽名を名乗り合うなどしながら共同して犯罪を実行したものであり,捜査機関による追跡を困難にする匿名性の高い犯行といえる。そして,被告人らは,あらかじめ,役割分担を謀議し,対象者の拘束に用いる結束バンド,
下見用
実行用などの複数
の服装,変装用のかつら,帽子,軍手を用意した上,別の駐車場において予行演習をするなどして本件を敢行したものであり,
周到に準備された計画性の高い犯行であっ

たといえる。被告人らが対象者として被害者を選んだ経緯については,本件の首謀者とみられるBが死亡したため不明な点も残るが,被告人らとは縁もゆかりもない若い女性を標的にした無差別的な犯行と考えられ,社会に与えた不安感等の悪影響は極めて大きい。被害者は,夕刻の未だ明るい時間帯に,判示のパチンコ店に併設されているスポーツジムから出てきて,多数の自動車が駐車され,しばしば客も行き来する駐
車場に駐車していた自分の自動車に乗り込んだところを,
突然助手席側から乗り込ん
できたAに体を押さえ込まれ,
運転席側から乗り込んできた被告人に勝手に自動車を
発進させられ,自動車ごと連れ去られた。そのような経緯において,被害者に落ち度はもとより,
被害の誘因となるような不注意も全く認められない。
そして,
被害者は,
監禁当初,
助けて
殺さないでと繰り返し述べたり,足を動かして暴れたりして
必死の抵抗をしたものの,
ほどなく自動車に乗り込んできたBから結束バンドで両手
首を拘束されるなどして抵抗できない状態にさせられた。その後,被害者は,約10時間もの長時間にわたり,一度も車外に出ることなく,Bから,口封じのためとして屈辱的な姿態を撮影されたり,後部座席の足元に横臥させられるなどして,監禁状態を継続されたものであるから,本件の態様は誠に悪質というほかない。その間に被害者の味わった恐怖は著しいものであり,被害者が負った肉体的,精神的苦痛は極めて
重大であったと考えられ,
被害者の遺族が峻烈な処罰感情と憤りをあらわにしている
ことも至極当然のことである。犯行後の情状をみても,被告人が離脱後再合流した同年5月27日午後5時頃以降,被告人らは,犯行に使用した衣服や自動車内にあった被害者の荷物等を投棄して証拠隠滅を図るなどした上で解散しており,その後,被告人及びAが犯行を自供した経緯を踏まえても,
事後情状は芳しくないというべきであ

る。
次に,被告人に固有の事情についてみると,被告人は,自動車に乗り込もうとする被害者をAとともに追尾し,
Aが助手席側から自動車に乗り込んで被害者を押さえ込
んでいる間に,運転席側から自動車に乗り込んで自動車を発車させ,そのまま,約10時間にわたり,Bの指示に従って自動車を運転するという犯行に不可欠の役割を担
っている。被告人は,Bから人さらいの仕事と告げられた上で,報酬目的で運転手役を引き受けることを決意し,本件犯行に加担したものであるから,その犯意は強固であり,動機に酌量の余地はない。そして,被告人は,Bから質問をするなと言われていたため,略取後に被害者がどのような扱いを受けるかについては尋ねなかったなどと述べるが,長時間にわたって監禁行為を続けた挙げ句,未だ解放されない被害
者を車内に残したまま,同日午前4時20分頃,漫然と運転をAと交代し,犯行から離脱したというのであるから,身勝手かつ無責任な経緯というほかない。また,被告人は,犯行後,Bと連絡がつかなくなったことなどから,実際に報酬を受け取ることができなかったものであるが,
Bから犯行前後の飲食代等の提供を受けるなどしてお
り,全く利益を得ていないものではない。
以上の事情を考慮すると,
本件犯行は同種事案の中でも重い部類に属するといわざ
るを得ず,被告人が,犯行の首謀者ではなく,犯行を主導したわけでもないことに照らしても,相当期間の懲役刑の実刑を科すべき事案というべきである(もっとも,検察官の求刑は,従前の同種事案の量刑傾向からすると,重きに過ぎると考える。。)
その上で,被告人が,前記のとおり,自ら進んで捜査機関に本件犯行を打ち明け,その後も犯行を認めて反省の態度を示していることなどの弁護人が主張する事情も
踏まえ,主文の刑期が相当であると判断した。
(求刑-懲役7年)
平成30年12月20日
静岡地方裁判所浜松支部刑事部

裁判長裁判官

山田直
裁判官

横江麻
裁判官

村島裕之里子美
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