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商標権侵害差止等請求控訴事件 商標権 民事訴訟
事件番号平成30(ネ)2025
事件名商標権侵害差止等請求控訴事件
裁判年月日平成31年2月21日
法廷名大阪高等裁判所
裁判日:西暦2019-02-21
情報公開日2019-02-27 12:00:32
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平成31年2月21日判決言渡同日原本交付裁判所書記官
平成30年(ネ)第2025号商標権侵害差止等請求控訴事件
(原審大阪地方裁判所平成28年(ワ)第9753号)
口頭弁論終結日平成30年12月7日
判決
控訴人(一審原告)

シーシーエス株式会社

同訴訟代理人弁護士

小松
陽一郎

同大住洋
被控訴人(一審被告)

日進電子工業株式会社

同訴訟代理人弁護士

石下雅同江間
布実子

同渡辺知同永野
真理子

同益弘圭主1樹博文
原判決主文第4項及び第5項を次のとおり変更する。

(1)

被控訴人は,控訴人に対し,311万1970円及びこれに対する平成3
0年1月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。(2)

控訴人のその余の請求をいずれも棄却する。

2
本件控訴中その余の部分を棄却する

3
原判決の当事者の表示中,
被告代理人の氏名が
江間由実子
とあるのを
江間布実子と更正する。

4
訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを5分し,その1を被控訴人の負担とし,その余を控訴人の負担とする。
5
この判決は,第1項(1)に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由

第1

控訴の趣旨

1
原判決を次のとおり変更する。

2
被控訴人は,LED照明器具に関する広告及び取引書類に,原判決別紙被告標章目録1記載の標章を付し,又は,原判決別紙被告標章目録1記載の標章を付したLED照明器具の広告を展示し,あるいは頒布してはならない。
3
被控訴人は,LED照明器具又はその包装に,原判決別紙被告標章目録2記載の各標章を付してはならない。

4
被控訴人は,原判決別紙被告標章目録2記載の各標章を付したLED照明器具又はその包装に同標章を付したLED照明器具を譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引渡しのために展示し,輸出してはならない。

5
被控訴人は,原判決別紙被告商品目録記載の各商品を廃棄せよ。

6
被控訴人は,LED照明器具に関する広告を内容とする情報に,原判決別紙被告標章目録1及び2記載の各標章を付して,電磁的方法により表示してはならない。

7
被控訴人は,LED照明器具に関する広告,取引書類及びインターネット上のウェブサイトから,原判決別紙被告標章目録1及び2記載の各標章を削除せよ。

8
被控訴人は,控訴人に対し,5856万3079円及びうち1006万3230円に対する平成28年10月14日から,うち4849万9849円に対する平成30年1月23日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

9
仮執行宣言

第2

事案の概要
以下で使用する略称は,特に断らない限り,原判決の例による。
1
控訴人の請求と裁判の経過

(1)

本件は,控訴人が商標権を有している各登録商標について,被控訴人が,
これらと同一又は類似する標章を商標として使用しており,これは控訴人の商標権の侵害に当たると主張して,商標法36条1項及び2項に基づきその使用の差止め等を,民法709条,商標法38条2項及び3項に基づき損害賠償を,民法703条に基づき不当利得の返還を,それぞれ請求している事案である。
金銭請求の具体的内容は,以下のとおりである。

原判決別紙被告標章目録1記載の標章(被告標章1)の使用について4462万1303円(平成23年9月1日から平成25年10月31日までの期間については不当利得金,同年11月1日から平成29年7月31日までの期間については不法行為に基づく損害賠償金)及びこれに対する平成30年1月23日(原告第5準備書面を陳述した原審第8回弁論準備手続期日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求


原判決別紙被告標章目録2記載の各標章(総称は被告標章2)の使用について

(ア)

387万8546円(平成18年11月1日から平成25年10月31日までの期間の不当利得金)及びこれに対する平成30年1月23日から支払済みまで上記同様の遅延損害金の支払請求

(イ)

1006万3230円(平成25年11月1日から平成29年7月31日までの期間の不法行為に基づく損害賠償金〔商標法38条2項〕)及びこれに対する平成28年10月14日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで上記同様の遅延損害金の支払請求

(2)

原審は,控訴人の原判決別紙登録商標目録記載1(本件商標1)に係る商
標権に基づく請求については,商標法36条1項,同条2項に基づき,被告標章1を付した広告の展示等の差止め及び取引書類からの同標章の削除を求める限度,並びに,①民法703条に基づき,不当利得金25万3434円及びこれに対する請求(被控訴人が原告第5準備書面を受領した平成30年1月16日)の後の日である同月23日から,②民法709条,商標法38条3項に基づき,損害賠償金123万3943円(①との合計148万7377円)及びこれに対する不法行為後の日である同日から,各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度でそれぞれ認容し,その余は棄却し,原判決別紙登録商標目録記載2(本件商標2)に係る商標権に基づく請求はいずれも棄却した。
(3)
2
控訴人が,敗訴部分を不服として,控訴を提起した。

前提事実
以下の事実は,当事者間に争いがないか,文中に掲記の証拠(書証は枝番を含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により認められ,本件の争点を判断する前提となるものである。

(1)

当事者(甲1,乙4)
控訴人は,平成5年10月に設立された,製造物の生産・検査・観察用途
の照明機器の開発,製造及び販売等を目的とする株式会社である。被控訴人は,昭和40年4月に設立され,昭和50年5月に株式会社に改組された,一般電子通信用計測器の製造及び販売等を目的とする株式会社である。
(2)

控訴人の登録商標(甲3,4)
控訴人は,本件商標1及び本件商標2の登録商標権者である。本件商標1
及び2の出願日,登録日,指定商品等は,前記登録商標目録各記載のとおりである。
(3)

被控訴人による被告標章の使用(甲5,6)
被控訴人は,被告標章1を,被控訴人が製造,販売する画像処理用LED照明装置(被告商品)の平成27年12月版商品カタログの表紙及び裏表紙に付して使用している。
被控訴人は,その製造,販売する被告商品の一部の型式に,原判決別紙被告標章目録2記載の1-1-1ないし1-6-2の標章(LDRで始まる被告標章2の1),同目録2記載の2-1-1-1ないし2-2-4の標章(LDLで始まる被告標章2の2),同目録2記載の3-1-1ないし3-2-4の標章(LFRで始まる被告標章2の3),同目録2記載の4-1ないし4-4の標章(LFLで始まる被告標章2の4),同目録2記載の5-1ないし5-11の標章(LFVで始まる被告標章2の5)及び同目録2記載の6の標章(被告標章2の6)を使用し,被告商品を案内,宣伝するカタログ及びウェブサイトに,これを掲載している。3
争点

(1)

被告標章1は,本件商標1と類似するか

(2)

被告標章1は,商標として使用されていないと認められるか

(3)

被告標章2は,本件商標2と類似するか

(4)

被告標章2は,商標として使用されていないと認められるか

(5)

控訴人による本件商標1及び2に係る商標権の行使は,権利濫用に当たる

(6)
4
損害及び不当利得の額

争点に関する当事者の主張
当審における控訴人の主張を後記5に加えるほか,原判決事実及び理由第2の3(原判決4頁20行目から24頁24行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。

5
当審における控訴人の主張

(1)

被告標章2は商標として使用されている。

標章が商品の型式名の一部として使用されることは,商標として使用されていることを否定する理由とはならない。
(ア)被控訴人による被告標章2の使用態様は,従来の裁判例において商標としての使用が否定され得る使用態様のいずれにも当たらない。
a
商標法26条1項6号は,商標的使用に係る判例法理を明文化したものであるところ,同号を解釈するに当たっては,平成26年改正前の裁判例の解釈が前提となる。

b
平成26年改正前の裁判例において,商標としての使用が否定されるのは,①標章が単に商品等の属性・内容・由来等について説明するための表示として付されていたり,別の商品の名称,種類等を示す表示として付されていたりすると認識される場合,標章が商品等の装②
飾・意匠として付されていると認識される場合,標章が専ら商品の③
宣伝のためのキャッチフレーズや宣伝文句等として付されていると認識される場合とされている。しかし,本件はそのいずれにも当たらない。

(イ)需要者に対する顧客吸引力,出所表示力を有する本件商標2と類似する被告標章2を同種の商品に使用すれば,顧客吸引力,出所表示力を発揮せざるを得ない。
a
画像処理用LED照明装置の市場においてトップシェアを有する控訴人は,本件商標2の1ないし6を,長年にわたり,自らの商品のシリーズ名および型式の一部として用い,カタログ,ウェブサイト,パンフレット,プレスリリース,取引先への送付書,納品書及び請求書等に使用し続けてきた。その結果,本件商標2の1ないし6は,本件商標1とともに,当業者の間で周知となった。原審も,周知とは明言していないものの,本件商標2が需要者に対する一定の顧客吸引力,出所表示力を有するに至っていると説示する。

b
そして,同業他社がいずれも異なるオリジナルの標章を付して販売している同種の商品に本件商標2の1ないし6と全く同一の標章を含む被告標章2の1ないし6を同じように型式として付して販売すれば,需要者に対する顧客吸引力,
出所表示力を発揮することは当然である。

原審は,現在の被控訴人のカタログやウェブサイトに被告標章2が原則として直接表示されていないと説示するが,これは,被告標章2が商標として使用されていることを否定する根拠とはならない。

(ア)現行のカタログ以外の取引書類や過去のカタログ等には被告標章2が直接表示されている。
a
被控訴人の製品価格表等には被告標章2の文字列が直接表示されているし,被控訴人の過去のカタログでも被告標章2の文字列が直接表示されている。また,被控訴人のウェブサイトにおいても,DR
シリーズ等の商品紹介ページにおいて,赤色のタブをクリックす
ることで,被告標章2の文字列が直接表示される。

b
被控訴人は,同業他社がいずれも本件商標2とは異なる標章を付している中で,控訴人が本件商標2を付しているのと同種の商品に,本件商標2の文字列をそのまま含む被告標章2を付している。しかも,被控訴人は当業者の間に周知である本件商標1と類似する被告標章1と併せて被告標章2を使用しているのであるから,インデックスページや商品の一覧表の中における使用であったとしても,本件商標2の出所識別機能が害されるおそれがある。

(イ)現行のカタログやウェブサイト上で,赤色を示すLの部分が空欄になっていても,需要者は,被告標章2を想起する。
a
本件商標2は,当業者の間で周知性を獲得しており,強い顧客吸引力・出所表示力を有する。

b
被告標章2が使用されている赤色の商品は,単なるカラーバリエーションの一種ではなく,対応する被告商品のシリーズを代表する商品である。
c
被告商品においては,赤色の商品が最も代表的であるから,被控訴人のウェブサイト上で被告商品を閲覧するに当たり,需要者は,まず赤色のタブを選択することが多いと考えられるところ,赤色のタ
ブをクリックしさえすれば,被告標章2が直ちに表示される。

(ウ)原審は,需要者は,特定の商品及び発光色を選択してから型式名に接すると指摘するが,そのような取引の実情は認められない。

画像処理用LED照明装置の取引の実情について
画像処理用LED照明装置の分野において,商品名(型式名)のみで商品を特定する取引が少なからず行われている。


被控訴人は,本件商標2の顧客吸引力にフリーライドする意図で本件商標2を模倣したとしか考えられない。

(2)

本件商標1に係る商標権についての損害額は,4667万9552円と算
定すべきである。

本件商標2に係る商標権に対する侵害が認められないのであれば,損害額算定の基礎となるのは,平成24年12月1日から平成29年7月31日までの期間に被控訴人が本件商標1を使用して得た売上の全額である15億5598万5078円とされるべきである。


許諾料相当額について
情報処理用の機械器具や光学式の機械器具等の分野では,商標権について,4~5%以上のロイヤルティ料が合意されているものも相当ある。控訴人と被控訴人は競業関係にあり,本件商標1を,後発メーカーであり市場シェアが1%にも満たない被控訴人のカタログ等に使用することを控訴人が許諾することなどあり得ない。
商標法38条3項に係る裁判例において1%を下回る低率の許諾料が認定されている事例は,本件とは全く事案が異なる。
本件商標1は,
当業者に周知なものであり,
十分な顧客吸引力を有する。
控訴人が受けるべき許諾料相当額は,基礎となる売上額の3%を下らない。第3

当裁判所の判断

1
当事者及び画像処理用LED照明装置
原判決事実及び理由第3の1(原判決24頁26行目から25頁25行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。

2
本件商標1に係る商標権侵害の成否について
当裁判所も,被控訴人による被告標章1の使用は,控訴人の本件商標1に係る商標権を侵害するものと判断する。その理由は,原判決事実及び理由第3の2から3の4まで(原判決25頁26行目から29頁4行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
ただし,原判決28頁25行目の本件標章1を本件商標1に改める。
3
本件商標2に係る商標権侵害の成否について
当裁判所も,被控訴人による被告標章2の使用は,控訴人の本件商標2に係る商標権を侵害するものではないと判断する。
その理由は,
次のとおり補正し,
後記4のとおり,当審における控訴人の主張に対する判断を加えるほか,原判決事実及び理由第3の5(原判決29頁5行目から41頁13行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。

(原判決の補正)
(1)

原判決38頁23行目の甲24,26の次に,乙63,64を加

える。
(2)

原判決38頁24行目のものと思われるをのが通常であるに改め

る。
(3)

原判決39頁12行目の発光力を発光色に改める。

(4)

原判決40頁12行目の型式名でにを型式名にに改める。

(当審における控訴人の主張に対する判断)
控訴人は,被控訴人が,被告標章2を商標として使用していると主張し,当審においては,その理由として前記第2の5(1)のとおり述べる。しかし,次のとおり,いずれの主張も採用することはできない。
(1)

標章が商品の型式名の一部として使用されることについて
控訴人は,従来の裁判例において商標としての使用が否定され得る使用態
様として,①標章が単に商品等の属性・内容・由来等について説明するための表示として付されていたり,別の商品の名称,種類等を示す表示として付されていたりすると認識される場合,②標章が商品等の装飾・意匠として付されていると認識される場合,標章が専ら商品の宣伝のためのキャッチフ③
レーズや宣伝文句として付されていると認識される場合を挙げ,本件はそのどれにも当たらないと主張する。
そこで,本件における被告標章2の使用態様を検討すると,上記②,③に当たらないことは明らかである。
しかし,
引用に係る原判決
事実及び理由
第3の5(5)イのとおり,被告標章2は,専ら,極めて多数の型式が存する被告商品の中で,基本となる型式,発光色,寸法等を間違いなく発注,納品等し得るようにするための型式名の一部として用いられており,それ以外の役割を果たしていると認めることができないので,上記①に準じて考えることができる。また,この点を措くとしても,後記(2)のような使用態様に照らすと,被告標章2は,商品の出所を表示したり,顧客を吸引したりする機能を有していないというべきである。
したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
(2)

被告標章2の使用態様について
控訴人は,現在の被控訴人のカタログやウェブサイトに被告標章2が直接
表示されていないからといって,被告標章2が商標として使用されていることを否定する根拠とはならないと主張する。
しかし,商標としての使用というためには,出所表示機能を発揮する態様での使用でなければならないので,どのような態様で表示されているかが重要であるところ,引用に係る原判決事実及び理由第3の5(5)のとおり,被控訴人が現在使用する本件カタログに被告標章2が表示されていないだけでなく,被告標章2に相当する記載は,製品の仕様の詳細を示す一覧表における型式名の一部として,あるいは製品の仕様及び価格を列挙した価格表における型式名の一部として表示されるにとどまっている。
以上によると,被告標章2が商標として使用されていると認めることはできない。
(3)

画像処理用LED照明装置の取引の実情について
控訴人は,画像処理用LED照明装置の分野において,商品名(型式名)
のみで商品を特定する取引が少なからず行われていると主張し,証拠(甲26,27,29)を提出する。
たしかに,甲26(現品票)及び甲27(請求書)には,同装置の売買に際し,型式名をもって商品を特定していることが認められる。しかし,これらの文書は,
商品の購入が決まり,
注文があった後に作成されたものである。
そして,当該商品を注文するに至るまでの間,どのようなやり取りがされたか不明であり,上記各文書に記載された型式名だけで注文が行われたとまで認めることはできない(これらの文書に記載された型式名は,前記(1)のとおり,基本となる型式,発光色,寸法等を間違いなく発注,納品等し得るようにするために使用されているものということができる。)。
また,甲29によれば,インターネット通販サイトにおいて,日進電子工業直接照射照明リング型DRシリーズCCS(シーシーエス)リとング照明LDR2シリーズの表示のもとに,各商品が販売されていることが認められる。
このようにメーカー名も左上部に表示されていることからも,
需要者において型式名のみで商品を買い受けているとは認め難い。(4)

以上のとおりで,被告標章2は,商標としては使用されていないと認められる。
4
本件商標1に係る商標権の損害額について
被控訴人が被告標章1を使用したことによる控訴人の損害額,被控訴人の不当利得額について検討する。なお,本件商標1登録後の平成23年9月1日から平成29年7月31日までの被控訴人の売上を算定の基礎とすることは争いがない。

(1)損害の基礎となる金額

被告商品の売上総額
被控訴人における平成24年12月1日から平成25年10月31日までの被告商品の売上高は3億0191万5347円,同年11月1日から平成29年7月31日までの売上高は12億5406万9731円,合計15億5598万5078円であった(争いがない)。
なお,控訴人は,平成23年9月1日から平成25年10月31日の間について不当利得の返還を請求するが,被控訴人は,平成24年12月1日から平成25年10月31日までの間の売上高を開示し,その額は上記のとおり3億0191万5347円である。控訴人は,同額を平成23年9月1日から平成25年10月31日までの算定の基礎とすることとした。


被告標章2を付した商品の売上額
一方,被告商品のうち,被告標章2を付した被告商品1-1-1ないし6の,平成18年11月1日から平成25年10月31日までの売上高は4848万1830円,同年11月1日から平成29年7月31日までの売上高は2012万6460円,合計6860万8290円であった(争いがない)。


算定の基礎となる金額
被告標章1は,被告商品に付されているのではなく,カタログに使用されているので,これによる個別の損害額を算定することは困難であるが,商標の自他識別機能を害する形態で使用されているので,不法行為に基づく損害賠償として使用料相当額の請求が認められる
(商標法38条3項)

また,不当利得返還請求としても使用料相当額を認めることができる。ところで,前記3に説示したとおり,被告標章2については商標権侵害が成立しないところ,被告標章1の使用にかかる販売額を算定するに当たり,前記イの額を控除する必要はない。
したがって,控訴人が算定の基礎として主張する,平成23年9月1日から平成29年7月31日までの被告標章1固有の販売額は,前記アの15億5598万5078円ということになる。
(2)使用料相当額
被告標章1は,
本件カタログの比較的目立つ位置に掲載されているところ,
顧客がこれに目にする可能性は高いが,照明の解決という意味内容は,被告商品及び役務の特長を直接的に表すものであり,一定の顧客吸引力を有すると認められるものの,照明装置のカタログに付すものとしては,常識的な発想の範囲内の言葉である。
引用に係る原判決事実及び理由第3の5(4)のとおり,画像処理用LED照明装置の需要者取引者が商品に求めるものは特定の機能や性能であり,・
一定期間の検討を経て購入の決定に至るのが一般的と考えられ,一般家庭用の商品でもないから,カタログに記載された文言が顧客を強く吸引し,購入の有無に強く影響するということも考え難い。また,被告標章1は,平成27年の本件カタログには使用されているものの,
従前のカタログ
(平成8年,
11年,15年,16年)には使用されておらず,価格表やウェブサイト,あるいは被告商品自体に付された事実もなく,被告標章1が,被告商品に関する惹句として,あるいは企業としての被控訴人自体を需要者に印象付ける語句として,継続的に,あるいは広範囲に使用されたとの事実を認めることはできない。
よって,上記認定した被告標章1の顧客吸引力の程度,被告標章1使用の態様を総合すると,被告標章1が被控訴人の取引に影響した程度は極めて低いというべきであり,支払うべき許諾料相当額は,不法行為及び不当利得に基づく請求のいずれの期間においても,算定の基礎となる被控訴人の売上高の0.
2%と認めることが相当であるから,
その額は311万1970円
(不
当利得につき上記3億0191万5347円の0.2%である60万3831円,不法行為につき上記12億5406万9731円の0.2%である250万8139円)となる。
5
差止めの必要性について
被控訴人は,本件カタログに被告標章1を付して頒布しているところ,これが商標権侵害であることを争っており,今後も被告標章1を付したカタログ等の広告や取引書類を展示・頒布したり,被告商品の広告を内容とする情報に被告標章1を付して電磁的方法により表示したりするおそれがあるから,その差止めと,本件カタログからの被告標章1の削除を命ずる必要がある。
第4

結論
以上によれば,控訴人の本件商標1に係る商標権に基づく請求は,商標法36条1項,同条2項に基づき,被告標章1を付した広告の展示等の差止め及び取引書類からの同標章の削除を求め,並びに,①民法703条に基づき,不当利得金60万3831円及びこれに対する請求(被控訴人が原告第5準備書面を受領した平成30年1月16日)
の後の日である同月23日から,民法7

09条,商標法38条3項に基づき,損害賠償金250万8139円(①との合計311万1970円)及びこれに対する不法行為後の日である同日から,各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却し,本件商標2に係る商標権に基づく請求はいずれも理由がないから棄却すべきである。したがって,当裁判所の上記判断と一部異なる原判決を変更すべきである。なお,原判決の当事者の表示中,被告代理人の氏名が江間由実子とあるのは江間布実子の誤りであることが明らかであるから,民事訴訟法257条により更正し,その旨を明らかにすることとする。
よって,主文のとおり判決する。
大阪高等裁判所第8民事部

裁判長裁判官

山田
裁判官

中尾
裁判官

三井陽三彰教匡
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